水掻き
ふづき
春や土起こせば縺れくるひかり
雲呑麺なみなみ梅のほころびぬ
解氷の朝をきんいろなる羽音
アコーディオンひらいてとじて鳥の恋
ロベリアに蝶来ゼウスの子だくさん
女系三代蛤に振る大吟醸
叱られて菫より母小さくなる
蝌蚪の足伸びる速さで炉に亀裂
木の芽ほつほつ仏の飯は高く盛る
のどけしや墓場のそばに墓石屋
湯屋の戸に禁忌あれこれ亀鳴けり
引きこもります丘をたんぽぽ占めるまで
推敲の百枚干鱈焦げ臭し
句帳まだ白紙ぞ花粉噴く杉ぞ
春陰の角曲がるたび貰うビラ
側溝へ飛花や神父は愛を説き
情死見し柳をすべる雨のつぶ
ベル押してお待ちください花の雨
湯にゆらぎ春宵の茶葉ふくらみぬ
前列より配るテキスト朝桜
試験管振れば気泡の立つ薄暑
サイダーの泡消えるまで謝らない
ゼリーぷるるん訳あって休職中
締切厳守ハンカチきちと四つ折りに
母屋よりとどく五分粥花うつぎ
青葉雨止んで産みたて卵に血
豌豆のころがる先に邪馬台国
帆を上げよ夏蝶の翅閉じぬ間に
潮と潮ぶつかり夏の月あかあか
龍の尾のごとき早瀬や雷去りぬ
水盤のさざ波猫のしわざらし
作兵衛に果つる涼夜の系図巻く
蛍火や時にこころを刺して詩は
俳人A蔵の窓より蜘蛛放つ
空の鮓桶戸口に積まれ昼のBAR
遅番や火蛾の粉浮くカップ麺
すててこの傷口に酒吹きかける
皆に手を振る候補者へ蝉の尿
西瓜冷すてんでばらばらでも家族
瀬を井守下り災害伝言板
赤紙ガ来タゾ 守宮ヨ野ヘ逃ゲロ
シーサーの牙欠け基地の灼くる灼くる
汗のシャツ重し肩組む反戦歌
サルビアや( )を埋めてノート閉ず
白杖は夕蝉の杜抜け来しか
銀漢やヒトに水掻きありました
月落ちて阿修羅の腕また伸びん
ゴールに入る義足は爽やかに撓る
朝顔は萎みパスタに崩す黄身
喉通過するは厄日のバリウムぞ
カンナカンナ自動連結器のがっしゃん
ンゴロンゴロ保護区のヌーは月を追う
古墳までコスモスうねる野を犬と
名水のこんこん新絹すべらかに
月白や潮騒を巻く真珠核
北京ダック取り分け名月の華燭
秋薔薇や禁煙席を分かつ玻璃
石榴ぱっくり首に吊る社員証
本名は知らねど句友木の実降る
子規歌集秋の彼岸の灯にひらく
秋蝉の流れて雨後の溝きれい
高台へ逃げる訓練鵙猛る
火山灰積もる桜もみじに城跡に
夕すすき淋しき爪はすぐ伸びて
菊なます苦し遺稿の八百字
父の忌はいつも晴れます柿羊羹
銀杏落葉を来て古都に傘たたむ
百年の寺に筋交い足す小春
花八手一生に炊く飯の数
レジ袋に入れよセロリも後悔も
すみれ色の湯を抜きボーナス日の終わる
着信の点滅木菟の耳立つ夜
旋回し機体は冬の虹壊す
病む肺の落葉かざせば蒼く透く
雪や臥すははに繋がる管五本
マスク外したのは涙ふくためか夫よ
鎖骨寒し眼下にふる里の波濤
星冴えて鰭より石となる人魚
白鳥の水輪は櫂にとどかざる
次の間より水仙の香や経写す
鬼やらい御堂の裏へ鶏かくれ
作者プロフィール
1961年愛媛県松山市生まれ。
2007年秋に組長のカルチャー教室に入会し、俳句を始める。
好きなことば「楽しくなければ俳句じゃない」