100年俳句計画 2018年9月号(No.250)


100年俳句計画 2018年9月号(No.250)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


巻頭リレーエッセイ
小野 睦

特集
雅に詠もう! 甦る中世の連歌 体験編

レポート 三瀬明子

特集
AIのMIRAI、俳句の未来
俳句対局 in 北海道大学 報告(下) 未来に向けて編




好評連載


作品

百年百花
 桜井教人/中町とおと/クズウジュンイチ/十亀わら

新 100年の旗手
 天野姫城/みつよ

新 100年への軌跡
 俳句 川嶋健佑/板尾奈々美
 評  樫の木/山澤香奈


読み物

美術館吟行/恋衣

小西昭夫の愛誦百句/小西昭夫

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

らくさぶろうの呑む呑め呑もう句/らくさぶろう

近代俳句史超入門/青木亮人

鑑(み)るという冒険/猫正宗

The HAIKU's Glass/古川千栄子

クロヌリハイク/黒田マキ


読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画/桜井教人、阪西敦子、関悦史
 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/マイマイ
 100年投句計画 投句方法

短歌の窓/渡部光一郎

百人百様E-haiku/菅紀子

100年公募計画

疑似俳句対局/美杉しげり

THE BEATLES 213 PROJECT/夜市

100年俳句計画 掲示板

鮎の友釣り



告知

編集後記

次号予告





巻頭リレーエッセイ



カーテンこすり事件
小野 睦

 「ユニットバスのカーテンをこすると泡が出るらしいよ」と、中学の修学旅行で同室の彼女が教えてくれた。さすが都会のホテルは洒落ているなと感心。湯に浸かりながら浴槽に張り付いたカーテンをこすった。必死でこすった。変化なし。「おかしいな、シャワーで熱湯かけながらこすってみて」そうかそうか、温度が低かったのか。ってイヤイヤ殺す気ですか。やってみたけどね。
 その後も彼女と「ピカピカウインドー激突事件」「爆睡中先生怒鳴り込み事件」「太秦集合早過ぎ事件」等々を起こすことになる。
 せっかくの秋の京都、せっかくの修学旅行なのに、ロクなことが無かったな。楽しかったけどね。
 そして去年、二人で京都旅行をした。新たに「嵐山で再会のトルコ人と閉じ込められる事件」を起こす。楽しかったけどね。

秋天や旅の寝押しの下手っくそ


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特集

雅に詠もう! 甦る中世の連歌 体験編


レポート 三瀬明子


0.はじめに

 去る7月22日、にぎたつ連歌会に参加しました。にぎたつ連歌会とは、松山南高校の昭和41年卒業の同級生を中心とし十数名が月一回お稽古塾を開催、10年近く続く歴史ある会です。折しもこの日は高校野球愛媛県大会開催中。松山南高校が二回戦を突破した試合直後であったため、興奮冷めやらぬ状況で駆けつけたみなさまで会場は熱気に包まれておりました。


1.連歌と連句、そして俳句のDNAはここにあり

 さて、これまで連句会に参加したことはありましたが、連歌会は初めて。そもそも、連句と連歌とは、根本的になにが違うのだったっけ? 連歌のルールって複雑すぎない?? そんな不安だらけの超初心者のために、まず、にぎたつ連歌会代表の宮武さんから、「雅に詠もう、甦る中世連歌─俳句のDNAを考えてみる─」と題する卓話を頂きました。

 宮武さんのご用意された資料の、なんとわかりやすいこと。そこからかいつまんでまとめると、和歌⇒連歌⇒俳諧連歌(連句)⇒俳句(俳諧連歌の第一句、発句)という流れが見えてきます。そうか、私が体験してた連句は、俳諧の連歌が源だったのですね。
 連歌は、そもそも和歌作りのお稽古や、息抜きとして始まりましたが、次第にまじめな文芸として、人々を夢中にさせていったそうです。そののち、堅苦しい連歌から、より自由で遊びの要素を持つ俳諧連歌(連句)が江戸時代に大流行します。和歌や連歌は、美しいやまと言葉(歌語)しか使わないのに対して、俳諧連歌は優雅でない語彙(俳言)をわざと交ぜるので、自由でリアルでおもしろい。そりゃ庶民は盛り上がったんでしょう。こぼれ話ですが、連句には、貴族や武士や僧侶だけでなく町民が加わり楽しむようになりました。当時は姓のない町民が参加するので、俳諧の世界では下の名前で呼び合うようになったのだそうです。
 その後、俳諧連歌の第一句(発句)が独り立ちしたものが俳句です。俳諧の発句だから、「俳句」と広めたのは、正岡子規だというのは有名な話。
 つまり俳句のDNAは、和歌と連歌と連句の相互作用で生まれた、ということ。
 和歌が俳句に残したもの⇒歌ことばとその本意
 連歌と俳諧連歌が俳句に残したもの⇒発句の独立性と開放性
 俳諧連歌が俳句に残したもの⇒平俗性と意外性
宮武さん、素晴らしい講義でした。


2.実作

 理論はここまで、次は実践です。参加者が17名いらっしゃったので、梶野哲司さんの哲司座と宮下智さんの智座の二座に分かれて巻くことになりました。私は哲司座に参加させて頂きました。
 捌く人を宗匠、宗匠の手助けする執筆とホストの3人がこの座のお世話役、そして、ゲストを加え、だいたい9人で巻くのが理想的な座なのだそうです。
 当日は、初折の裏の五句目からと、懐紙が配られましたが、それをみると懇切丁寧に、この次に詠むべきもの、季節、詠んではいけないものなど、びっちり記載してあります。「宗匠、これすべて覚えているんですかっ?」すべては覚えていなくても、だいたいみなさん頭に入っている模様。
 「十句目が月、十三句目が花だから、ここは冬の句いっときましょう」と哲司宗匠。宗匠の導きでひとつの絵巻物が編まれてゆく。今日は出勝ちですとのことで「よっしゃ、一句目とったるー」と、意気込んで投じてみました。「ほろほろと身の内に降る雪明り」
しかし、二句前に時分の夜が詠まれていて、同じ夜は五句空けないといけない句去りというルールにひっかかる。残念、撃沈。それ以降も、やまと言葉や、歌ことばが身についていないため、本格的な中世連歌のルールに著しくひっかかる事態が連発しました。

初折表
1   夏 千木に添ふ色深みゆく若葉かな  智
2   夏 斎ふ社のあやめ生ふ庭  愛子
3     入り江には波ゆるゆると寄するらむ  久美子
4     駒の蹄の跡を追ひつつ  錯錯
5   秋 遠くより蜩の声ほの聞こゆ  久美子
6   秋 山装ひて錦織りなし  哲司
7 月 秋 中空にとどまる月の白々と  恭子
8   秋 庵のうちにも秋風の吹く  久美子
初折裏
1     雨だれのあまた形ぞ地に咲け  錯錯
2     旅の道みち眺めたる雲  哲司
3     夕さればつとめの鐘の音響み  愛子
4     軍の幣いやし休らふ  久美子
5   冬 しんしんと寒さ身にしむ年の瀬ぞ  久安
6   冬 千鳥鳴く空都は遠く  哲也
7     衣衣の朝の長さを恨みたる  一幸
8     水底深く文や捨てつる  明子
9   夏 芍薬の散りていろいろ想ひ出し  錯錯
10 月 夏 山の端に見ゆ夕月涼し  恭子
11     清らなる八雲いつしか流れ消え  良春
12   春 東風友として語り続ける  一幸
13 花 春 花盛り野は広らかに色たたへ  良春


3.終わって

 こんなに脳を酷使した疲れは久しぶりでした。興奮状態の脳と疲れていない体のバランスを無意識でとろうとしていたのか、会場のコムズから黙々と30分歩いて自宅に戻っていました。
 俳句は、座として楽しむ句会はあるけれども基本的には個人競技。連歌は、座でひとつのものをつくりあげる団体競技なのだと思いました。宗匠という監督の采配で、ルールは逸脱せず、個を突出させず、チームプレイに徹しひとつの作品を仕上げていくよろしさ。にぎたつ連歌会のみなさんが、このような時間を毎月一回日曜にずっと共有されていることに、心からの感動を覚えました。この知的で素敵な会が続く限り、みなさんずっとずっと健康でいらっしゃると思います。
 連歌という新しいことに出会えた喜びと、思うように作れなかった悔しさが混じり、次回のリベンジを密かに誓っている今日この頃。知的好奇心をかなりくすぐられる遊びを、みなさんも是非体験してみてください。


にぎたつお月見連歌会開催

日時 9月22日(土) 10時〜16時(予定)
場所 松山市男女共同参画推進センター(コムズ)
 愛媛県松山市三番町6丁目4番地20
参加費 500円(初参加の方、見学の方は無料) 
 昼食は各自持参、ただし外食中座も可
申込締切 9月5日(水)
問合せ先 100年俳句計画編集室(担当 キム)


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特集

AIのMIRAI、俳句の未来


俳句対局 in 北海道大学 報告(下) 未来に向けて編


 先月号に引き続き、去る7月13日に開催された「AIのMIRAI、俳句の未来」(主催 SAPPORO AI LAB、100年俳句計画(マルコボ.コム)、日本OR学会北海道支部、北海道大学大学院情報科学研究科 調和系工学研究室)の報告を行う。
 本イベントに関わったAI研究者、AIオペレータ(北大学生)、AI側俳人、審査員(俳人)、人類側俳人それぞれから、イベントに向けての準備や感想などを頂いた。今号では、それらをまとめて一挙報告。


AIによる「人間らしさ」を目指し
北海道大学大学院情報科学研究科准教授 山下倫央

 札幌側の開催準備と当日の司会を担当しておりました山下です。普段は調和系工学研究室で川村秀憲教授、横山想一郎助教とAI俳句をはじめとする人工知能技術を実社会に応用するための研究に取り組んでいます。AI俳句の研究では、国語学が専門の伊藤孝行先生(北海道大学大学院メディア コミュニケーション研究院 准教授)と連携しています。
 今回の俳句対局では100名近い来場者があり、盛況に終わりました。特に俳句対局後の評点の発表では、各俳句の評点が発表される度に会場がどよめき、一種独特な盛り上がりを見せました。ご来場いただいた方々、開催準備に尽力していただいた関係者の方々にこの場を借りてお礼を申し上げます。誠にありがとうございました。
 本稿では、「凄ワザ!」での敗戦のリベンジをはたすべく、俳句対局に向けてAI俳句に加えた二つの改善点を説明いたします。
 一つ目の改善点は、AI俳句の学習データに現代俳句の採用です。「凄ワザ!」では、小林一茶、正岡子規、高浜虚子の計4万句を学習データにしていましたが、AIが生成した俳句では、切れ字に「哉」を多用する点や使われている語が全般的に古いという点で評判が良くなかったため、学習データを現代俳句4万句に切り替えました。
 二つ目の改善点は、AI俳句評価器を用いた選句支援の導入です。今回のしりとり俳句は一句の選句時間が実質2分程度と短く、3人の選者でも200句から一句を選ぶのが限界でした。そこで、選者の選句を支援するためにAI俳句評価器を開発して、俳句を特徴ごとに分類、順位付けをして、その結果を選者に提示するという方法を取りました。
 AI俳句評価器は、人間が作った俳句とAIが作った俳句を判別する学習をおこない、ある俳句の「人間らしさ」という評価値の算出を可能にしました。そして、この評価値を使って、AIが生成した俳句を、「人間らしさが高い」、「人間らしさが低い」、「人間らしさが高くも低くもない」に分けて、各群から60句を抽出して、計180句を選者に提示することにしました。
 俳句対局本番では二つの改善が上手く機能して、しりとり俳句対局には敗れたものの、AI俳句側5句目の「かなしみの片手ひらいて渡り鳥」が対局中の最高評点をいただけました。ただ、この結果は選者の俳句集団【itak】林佑さん、村上海斗さん、千貫幹生さんの選句に依るところが大きかったと思います。
 興味深い結果として、AI俳句評価器はAI俳句として選ばれた5句に対して「人間らしさが高くも低くもない」という評価をしていました。この結果からは、人間が良いと思う俳句は、「人間の作った俳句と大きく異ならない」が「人間らしさが高くない」という類似性と新規性をバランス良く満たしている可能性が示唆されます。
 今後の目標は、席題や画像を入力すれば人間の手を借りずに、俳句の生成、選句、推敲を全自動でおこなうAIを開発することです。人間と切磋琢磨して、ともに高めあえるAI俳句の研究開発を進めていきますので、句会にお邪魔したり、対決イベントを開催する機会があるかと思います。今後ともよろしくお願いいたします。


人間でも難しい俳句の評価
北海道大学大学院情報科学研究科修士 米田航紀

 「AIのMIRAI、俳句の未来 ー 俳句対局 in 北海道大学 ー」にてAIオペレータを担当しておりました。本稿では、「AI一茶くん」(以下、一茶くん)の開発者の一人として今回のイベントに関する感想を述べさせていただきます。
 今回のイベントにあたり、私たちは一茶くんの作った俳句と俳人が実際に読んだ俳句かどうかを評価するAI(以下、評価用AI)を作りました。この評価用AIを使用して、一茶くんの作った俳句それぞれに対し、その俳句が俳人の詠んだ俳句にどれだけ近いかという評価値を付けました。もし俳人の詠んだ俳句に近いと評価された俳句であるならば、出来の良い俳句になっているはずだと考えました。
 対決本番では単純に評価値の高い俳句を選択するのではなく、俳句集団【itak】の方々に選句していただきました。選者の方々の苦労の甲斐もあってか一茶くんの作った俳句は概ね好評で、特に「かなしみの片手ひらいて渡り鳥」の句は今回の対決の俳句全体の中で最高得点を獲得し、一茶くんの作る俳句の中には良いものがしっかりと存在するということを確認することができました。
 しかし、今回の対決を通して痛感した問題点があります。それは開発者の私自身の選句能力が低いという問題です。評価用AIを作成したのに、そのAIの付けた評価値が妥当なものなのか、よく分からないのです。実際、一茶くんの俳句として選ばれた俳句は評価値の高い俳句ではありませんでした。今回の評価用AIは一茶くんの作った俳句と俳人の詠んだ俳句を見分けるように作りましたが、今後はより正確に俳句を評価するために、俳人の詠んだ俳句の中から良い俳句と良くない俳句を見分けるようにデータを変える必要があると考えています。そのデータを作るために、良い俳句と良くない俳句の基準を作る必要がありますが、そのような基準を作ることは困難です。そのため、私が主観で振り分けることが最良なのですが、私の選句能力が低いため現在はそれも難しいです。
 また、私の選句能力が低いことにより起こる問題として、一茶くんが良い俳句を作っても良さが分からないということがあります。「かなしみの片手ひらいて渡り鳥」が何故最高得点をとれたのかも残念ながら理解できているとは言い難いです。せっかくこのようなイベントを開催していただき、様々な方々に参加して頂いているのにこれではあまりにも勿体ありません。そのため、今後はAIの開発のためにも、一茶くんの作った俳句に対する感動を皆様と共有するためにも、私自身の俳句の勉強にも注力していこうと思います。
 最後にこの場を借りて、AIの開発に協力していただいた皆様、本イベントに協力して頂いた皆様に感謝を申し上げます。


AIの進化に感動した
俳句集団「itak」会員 村上海斗

 AIと人間は、将棋や囲碁など、様々な場面で競わせられることが多い。そしてついに、AIは俳句を作り始め、NHKの「超絶 凄ワザ!」の俳句コーナーにおいて、人間の作った俳句を相手に戦った。私がAI俳句を知ったのは、「超絶 凄ワザ!」のAIチームのサポートをしたときが初めてだった。AIは、上手い下手にしろ、小説を書きはじめたりしているので、俳句を作っていてもおかしくはないだろうとは思っていたが、どのような句を詠むのだろうかと、興味が湧いた。
 AIの俳句を目にする前に、私はAIの俳句の作り方を大学の方たちから伺った。AIの作る俳句は、データ上にある五 七 五の中から、五 七 五を無作為に抽出し、作り出すものだった。最初、私は何か難しいことをしているのかと思ったが、作り方はいたって人間の俳句の作り方の一つと同じであった。「超絶 凄ワザ!」においては、人類チームに惨敗してしまったが、私は、AI俳句に伸びしろがあると確信していた。
 「超絶 凄ワザ!」のときのAIに蓄積されていたデータは、一茶や虚子の俳句など、古めのデータが多かった。そうすると、佳い句はできるのだが、古典的な句が多く、時代に沿った作品ができづらくなってしまっていた。そこに、新しめのデータを入れたら、今の時代に沿った作品ができるのではと、私は踏んでいた。
 そして、北海道大学で行われた「AIのMIRAI、俳句の未来」のしりとり俳句対決では、大塚凱氏の俳句を、データの一部として蓄積されたAIで対決に挑んだ。対決の前に、研究者の方々とオペレーターとで、打ち合わせをしたのだが、そのときに、勝負に挑むAIの俳句を見た。私は、AIの進化に感動した。佳い句が前よりもたくさん出来ていて、心を揺り動かされるほどの句もたくさんあり、私はひょっとしたら人間に勝ってしまうのではと思った。
 試合でAIチームは、語尾の二音から始まる句をAIが作りだし、その中から私たちオペレーターが句を選び出すという流れで句を提出していた。つまり、私たちはAIの句の選句をしていたのだ。二分程度で百句ほどの中から選句をしなければならないので、とても大変だった。途中、AIがしりとり出来なくなってしまう語尾が出てきて、減点されてしまう場面もあったが、手ごたえはあった。
 試合は、人類チームの勝利で終わったが、最高得点句は、AIチームが奪って、何とか面子を保つことができただろう。最高得点句の「かなしみの片手ひらいて渡り鳥」は、三人のオペレーターが満場一致で送り出した句だった。
 対決は、盛況の中で終わり、とても面白いものとなった。AIがもっとデータを蓄えれば、AIが人類を脅かすような、人類に火をつけたような句が生まれるのではないだろうか。そして、巨人と阪神の因縁のライバルとまでいかなくてもいいが、この対決が、今後も行われることを私は期待している。


AI俳句会に参加して
雪嶺主宰 石本雪鬼

 記録的な大雨被害直後にもかかわらず、周到な準備を重ね、遠路はるばる松山から札幌まで足を運び、AI俳句会を成功させた松山の皆様にまず深く感謝したい。
 俳句会の前にNHKのディレクターや大学関連のAI研究者からこれまでの経緯をお聞きできたのはありがたかった。
 私たちは松山の俳句集団とAIの俳句会の選者、評価者として今回の俳句会に参加させていただいた。私はこれまでも選者として俳句大会に関わったことはあるものの、AIと人間との競合を主目的とする行事に参加するのは初めてであり、主催者の期待に応えられるのか不安もあった。AI俳句を支えるシステムにはこれまでの俳句に加え、俳句甲子園優勝者の新しい俳句も資料に加えられたそうで、以前と比べ戦力を増しているようだった。
 ただAIシステムは短時間に大量の俳句を作れてもその中からどの句で勝負するかという選句は苦手なようで、三人の大学生のAI支援担当者が力を発揮したようだった。それでも短時間に大量の俳句を作る作業はAIが得意なはずであり、人が俳句を作り評価する過程に貢献できる場面が増えてくるように思う。仮に膨大な既存俳句の資料にアクセスできるなら、今見ている俳句に類句が無いかどうか常に調べやすくなる。今でもある程度はインターネットで調べられるが、まだ入力してある俳句が十分とは言えない気がしていた。
 碁や将棋のように論理的に展開を想像できるものはAIが得意だろうと思う。俳句は人が何かに感動したり、共感することで一句を授かるので、論理的な推論ではその完成度に限界があるように思う。でも、最初から完成度の高い新技術は無い。地元の大学のAI関係者が俳句に興味を持っていただけているのも、俳句の街松山の方々が、その伝統を発展させ続けていることを知る機会を得られたことにも感謝するとともに、私自身も興味を持ち続け、周りにも発信し続けたい。
 北大の情報系研究者は気象力学とは別な観点から気象衛星の雲やレーダー画像を解釈する研究に挑戦している。また函館未来大学は言葉以外にも、車の自動運転に関する研究でも公道を使える段階にまで研究を進めている。
 今回、俳句についても挑戦を続けていただけており、その一端に触れさせていただいたことに感謝したい。


mhm通信番外編

AI俳句で人を知る
俳句集団「いつき組」組員 須賀あねご

 ここ数年俳句集団「itak」の皆さんが松山のまる裏俳句甲子園に参加してくれ、代表の五十嵐秀彦先生には審査員までお願いしている。先生のこのご厚意に応えるにはいつかきっと北海道へ行かねば、と話していたが思ったより早くその機会が訪れた。七月十四日、札幌で開催される俳句結社藍生と「itak」の合同イベントに、まつやま俳句でまちづくりの会(mhm)メンバーからキムさん、日暮屋さん、マーペーさん、私の四人と、香雪蘭さん、さとしさん、しゃげさん、ともぞうさん、なぎささん、南行ひかるさん、らまるさんが参加させていただくこととなった。
 「itak」の方々と再会を喜び合い、さらに来年のまる裏俳句甲子園にまた五十嵐先生をはじめとしたチームを結成して参加するという嬉しい予告をいただいた。遠いところからほんとうにありがたいことである。開催に向けてそろそろ準備を始めよう。
 その前日、北大のAI一茶君と半年ぶりに再会し俳句対局の大一番に臨んだ。一茶君という名前があるせいか、俳句仲間という感覚で妙に情が沸いて再び対戦できることが嬉しくもあり、どんなに進化して手強くなっているかと思うと不安にもなった。
 俳句対局は十分で五句という制限があり、時間切れで試合が終わってしまうことだけは避けたかったので、事前練習でもなるべく短い時間で作ることを心がけた。対戦順一番手のあねごと三番手の自由律俳人、日暮屋さんは句の出来よりも時間をかけないで作る、そして二番手のなぎささん、五番手のらまるさんへ時間を残して詩情あふれる句を作ってもらうという作戦に出た。0番句が子規の句から選ばれるので末尾の二文字が「かな」「けり」で終わる可能性が高いと予想した。思惑ドンピシャ! 北大チームが「かな」で終わる句を引いてくれた瞬間身震いが起きてしまった。だって人間だもの! それを受けて選択した季語は「金葎」で一分という早業の作句であったが、一句の中に小花を使い植物を重ねてしまった。失敗に気づくのは、えてして短冊を披露し、相手が作句に入るタイミングである。手直しはもうできない。
 四番手の哲史君は禁じ手とも言えそうな下二文字が「れま」で終わる句を出し一茶君を追い詰めた。
 五番手のらまるさんは出発前の地元新聞で「人類の期待を背負って」とまで書かれ、ハードルがあがってしまったなぁと戸惑いと、チームリーダーとしてのプレッシャーを感じていた。しかも一茶君はどんどん調子を上げて俳諧味があったり映像が立ち上がってきたりと読み手に想像を膨らませてくれる句が出てくるようになっていた。
 結果的に人類チームの勝利となったが対戦後の鑑賞会での会場の評価では一茶君が大健闘していた。試合に勝って勝負に負けたというのはこういうのを言うのだろうが、メンバーが支え合いそれぞれの持ち味は出し切れたと思う。肌寒い北の大地でヘンな汗をかきかき一茶君と闘い時間と闘いみんな自分と闘った。
 一茶君は単に俳句を作るためだけに開発されたのではなく、将来人の心に寄り添えるように俳句を通じて研究が進められていると聞いた。俳句の種蒔きの裾野にいる一人として俳句をこのように捉えてもらえていることはこの上もない感動である。
 最後に、西日本豪雨によりごく身近なところで甚大な被害が発生した直後のこのツアーに参加することにそれぞれに戸惑いがあったが、被災地の野村町に住むらまるさんのお母さんから「こんな時だからこそ未来を語る明るい話題が嬉しい」という言葉のおかげで頑張れたと思う。


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美術館吟行


第46回

町立久万美術館
「生誕100年記念 デッサンの虫 古茂田守介」展 吟行会

取材協力 町立久万美術館
本展覧会は、8月31日(金)まで開催。


文 恋衣


 何回目の久万美術館だろう。開館間もないこの美術館に初めて訪れたのは、多分、春。木の香り漂う展示室には、柔らかな光がさしこんでいた記憶が……。
 今日は、2018年7月21日。俳人との美術館吟行。このように俳句を作る日々が来るとは、思ってもいなかった。
 松山より幾分涼しいはずの久万が暑い。
 さあ、『デッサンの虫 古茂田守介』展。学芸員中島小巻さんの涼しき解説が始る。
 松山市出身の洋画家守介は、兄 公雄の影響で絵を描き始める。今回のデッサンは、約70点。古茂田美津子夫人のコメントが付記されている。「コメントも楽しんでください(学芸員)」の言葉に、参加者4人先ず、注目はこちら。これは何。

「無題」
インク瓶ひねるきしみや秋時雨  日暮屋又郎
見てるから見られる黒い月もそう  チャンヒ
そのふたをひらかば白き鯨来る  恋衣

 美津子さんのコメント。
 「瓶の口とまるいふたを描いているうちに、目のような模様を描きたくなったものと思います」。

 1950年代後半、画壇では抽象表現を主とするモダニズム絵画が流行する中、守介は、独自の具象表現を追求し続ける。
 展示作品は、無題の作品が多い。各々が、気になる作品の前にしばし立ちどまる。見つめる。

「生物」(野菜)
球根の芽吹きや画家は未完成  日暮屋又郎

「無題」(多くの球)
満月の次々果てる地の果てる  マーペー

「壺二つ」
秋の夜を壺は裸のままでいる  チャンヒ

 油彩画では、表現が難しかったデフォルメや新しい手法の数々の試作。題材は食卓の一品も。

「鰤の照焼き」
皿食み出す鰤の照焼き食べぬまま  マーペー

 猪熊弦一郎や脇田和に認められ、制作を進めた守介は、イタリアの彫刻家 画家 版画家マリノ マリーニに触発される。絵の具とクレヨンで描いた赤と緑の一作。

「マリノ マリーニの『馬に乗った人』から」
異郷とは馬の晩夏の輪郭線  チャンヒ
秋の日をゆらゆら馬の背にいます  マーペー

 そして数々の裸婦のデッサンを。

「二人裸婦」
月光に二人の裸婦の溶けゆくを  チャンヒ
真四角のけふの月見るための窓  恋衣

「三人の裸婦」
秋蝶になりゆく裸婦のため息は  恋衣

「裸婦三人」
冬銀河誰も僕など見てゐない  恋衣

 裸婦のデッサンに惹きつけられた後、いつものように藤田嗣治の「マドレーヌ」と村山槐多の「裸婦」に挨拶している時、日暮屋さんが「今日は古茂田守介の忌日です」と教えてくれた。

古茂田の忌人馬西日をもてあます  日暮屋又郎
ひとつぶの夏茱萸を喰む守介忌  恋衣

 今年、久万美術館は30周年。記念展で出品される守介作品に逢いに秋の久万美術館へ。是非。

恋衣
JAZZと絵画を愛する俳人。



古茂田守介「無題」1957-58年頃、インク、墨、コンテ/洋紙
銀漢や澱を残して瓶の底  マーペー

古茂田守介「鰤の照焼き」1956年頃、インク、墨、コンテ/洋紙
肉片の裂け目に冬が生まれ影  チャンヒ

古茂田守介「マリノマリーニ『馬に乗った人』から」1957-58年頃、クレヨン、水彩/紙
瑠璃色の眼の馬が月へゆく  恋衣

古茂田守介「二人裸婦」1957年、インク、墨、コンテ/洋紙
牢獄に吐血し四角い月明かり  日暮屋又郎



次回吟行会

9月2日(日)
愛媛美術館「巨匠が愛した美の世界 川端康成と東山魁夷」吟行会
(学芸員による解説を受けて作句します)

朝10時現地集合
参加費無料(入館料は別途)
事前に100年俳句計画編集室までお申し込み下さい。
TEL 089-906-0694


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大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠

百年百花


2018年度 第二期
第二回


仏心
桜井教人

紅蓮の数許されぬ罪の数
空也仏あり風葬の地の真中
御仏の声か奈落の風音か
涼しかり優しき貌の馬座の馬
すれちがふ僧のしづけさ夏燕
夕涼の寺御朱印を以て辞す
葛切の来世見通すため透ける
秋気とは観音の手の分の隙間
漆黒の秋声千体千手仏
銀河よりもらふ五眼の眼のひとつ
月光に開く阿形の大胸筋
仏心やこのかなかなのなきがらも

某寺前の駅のホームで転倒した。腿の筋肉を傷めたので宿泊所に戻ることにした。
地下鉄で前にいた女性が降りるときに私に何か差し出した。
バンドエイドだった。仏心は目の前にもあった。


ものするものども
中町とおと

三伏の桃めろめろとめくりけり
不純異星交遊朝涼を帰る
うすもののママンに声をかけそびれ
遠縁の蝦蛄といつたん理解する
歯を立ててすずしいマリービスケット
かよひ路のあけつぴろげを初嵐
花カンナそれはみごとに剥離して
目ざめればとんばうの大群のなか
美しき国のかたむき あ、せきれい。
いなびかり孕める腹の昏き照り
なめらかにすすむ粛清葛の花
物すればものわびしけれ芋虫も

1979年生まれ、千葉県在住。句集『さみしき獣』。
諸事情により、予定していた俳句甲子園観戦に行けず、失意の日々。また来年!


日向水
クズウジュンイチ

標本の色の褪せをり姫女苑
青黴や土間はどこかに発条秤
掌に受けて駄菓子や夏の川
納豆へ倍の辛子を夏に火事
とうきびのぽくりと青き血の匂ひ
鮎のほかに饅頭食つてひとごろし
借家より借家へ移る巴旦杏
ただ単に生きて器の日向水
指先を傷が新し麻の服
いくたびもちぬのひらうつ沖の波止
味噌蔵のへくそかづらをまづ剥がす
優曇華や水もて透くる磨り硝子

いろいろなものに刺されているが、ひどかったのはスズメバチとヤマビル。
アブは大したことがないと思っていたが、今年は腫れた。
刺された場所によって異なるらしい。


紙の鳥
十亀わら

詩の言葉ひたひた苺潰しけり
炎昼や子は雲梯に身を揺らす
言い過ぎた夜をほぐして髪洗う
青に白走るブローチ秋立ちぬ
新涼や最後の金魚翻る
正直に生きたし西瓜の種吐いて
星月夜くるぶし二つ分を泣く
王様の命にて架ける秋の虹
こんな日の窓に秋星光るなよ
足首のつめたいままに花野行く
月光や卓に傾く紙の鳥
薔薇の実となって言葉を待っている

1978年愛媛県松山市生まれ、現在イスタンブール在住。
トルコは明るくておおらかな人が多く、シミットというパンとオリーブとレモネードが美味しいです。


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読者投稿による3ヶ月連載作品集

新 100年の旗手


(2018年7月号 〜 2018年9月号 3/3回目)


ニッポン
天野姫城

ニッポンに蒸発の人鰯雲
隠しごと打ち明けられた烏瓜
秋の雲小さき穴開け糸電話
秋日傘犇く野次馬をサイレン
苔地蔵の匂いだろう賢治の忌
館長のオススメ本や星祭
母屋の土蔵百年目の笑栗
T字路を左へ曲がる生身魂
新築の合鍵探す大花野
鈍色のパックスジャポニカ花野風

 天の川銀河句会、総長。街俳句会会員。第100回全国高校野球選手権記念大会、選手宣誓より。「甲子園は勇気、希望を与え、日本を平和にしてきた証です」何事も、続くということは、平和の証です。


日焼子
みつよ

長雨のあとの暑さでありしかな
今し方出来た茅の輪をくぐりけり
湯上がりに妣のかたみのゆかたかな
冷房の部屋にこもりてひとりごと
遠き日の如く夾竹桃花盛り
水をのみ覚悟の炎天出でにけり
木綿といふ白のハンカチありがたく
夏の海見つめて心ひろくなる
日焼子のよくしゃべりよく食べにけり
沖にまだ子の二、三人夕焼浜

 昭和12年、福岡県八女郡福島町生まれ。花鶏俳句会所属。平成29年度、第19回NHK全国俳句大会入選。


2018年度 第4期連載者募集中
締切 2018年11月15日(木)

応募内容
2019年1月号に掲載できるタイトル付の10句

応募先
Eメール magazine@marukobo.com
 件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
 (郵送またはFAXでも受け付けております。詳しくは編集室までお問い合わせ下さい。)


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新 100年への軌跡


2018年度 第二期
第二回


氾濫と破綻
川嶋健佑

七月七日信号機つねに雨
どこも大雨かなたから刈る稲穂
出水迫って薄くなる糸の影
とても真みどり晩夏の非常口
廊下ぬらりぬらり濡れる夏帽子
タオル敷き詰め廊下から緑陰に
和室に吊るす七夕の車椅子
すでに用無し流星と家の鍵
避暑にぴったり避難所の写真展
水面輝く扇風機置くデルタ
常に明るいそこに蚊がいてだるい
君を置き去る立秋の集積所
龍淵に潜む長靴干し眠る
断水続く秋霖の椅子で寝る
蛇口とはダム湖の出口水が澄む

川嶋健佑(かわしま けんすけ)
 大阪市出身。愛媛県松野町在住。船団の会、里、大阪俳句史研究会所属。つくえの部屋発行人。


サボタージュ
板尾奈々美

変わらない月を理想に死ぬまでを
にぎやかは列のおわりに二学期来
ぱつぱつと前髪つむや初嵐
前世捨て猫かも秋晴をねむり
言い訳ができない口に桃をやる
サルビアやじゃあちょっとだけ逃げますね
窓に朝を与えて清き九月来る
失恋は百舌鳥に食わせて忘れなさい
柘榴もぐ理由体育サボタージュ
秋薔薇知らないふりをしてあげる
王さまのいない王国大根蒔く
冷ややかに廊下の続く講義棟
流星をまっさかさまで見ていたい
梨切ってきゅっと寂しくなってくる
死ぬときはおじぎしながら秋桜

板尾奈々美(いたお ななみ)
 一九九九年生まれ。松山大学経営学部在学中。愛大俳句研究会所属。



災害と日常との距離
樫の木

 先の西日本豪雨災害で被害にあわれた方にお見舞いを申し上げます。被災地が一刻も早く復興しますように。

 川島さんの作品はまさにこの災害の現場で作られた。

七月七日信号機つねに雨  川嶋健佑
 「信号機」は雨に遮られて見えないのか、或いは停電で消えてしまっているのか。青でも赤でもなく「つねに雨」なのだ。雨音に掻き消される空、街、「七月七日」。

廊下ぬらりぬらり濡れる夏帽子  川嶋健佑
 「ぬらりぬらり」に粘度、皮膚にまとわりつく様な湿度がある。泥水かも知れない。「廊下」も「夏帽子」の下の顔もじっとりと「濡れ」ている。

 板尾さんの作品は日常を切り取ったスナップ写真のよう。

ぱつぱつと前髪つむや初嵐  板尾奈々美
 忙しい朝の鏡の前だろうか。気になった「前髪」をさっと整える。「ぱつぱつと」が手際の良い感じ。ドアを開いて外へと踏み出せば「初嵐」の風が新しい前髪を乱す。

王さまのいない王国大根蒔く  板尾奈々美
 「王さまのいない王国」では「王さま」が亡くなってしまったのか、政争に嫌気が差して行方をくらませてしまったのか。いずれにしても一大事であるが、我関せずと「大根蒔く」姿が飄々としている。実はこの人物が王さまだったりして。

樫の木(かしのき)
 1965年愛媛県生まれ。大分県在住の家具職人。第5回、第11回選評大賞優秀賞、第10回選評大賞最優秀賞。


それぞれに、生活
山澤香奈

とても真みどり晩夏の非常口  川嶋健佑
 非常口を意識せざるをえないかすかな不穏感。真みどり、という表現が、晩夏のジリジリ感と響き合っています。

すでに用無し流星と家の鍵  川嶋健佑
 持っていても仕方ないんだよなあ、なんて思いながら手放せない。流星も用無しと言いながら、きっとまた探してしまうのでしょう。

蛇口とはダム湖の出口水が澄む  川嶋健佑
 澄んだ水が出てくる、その当たり前が当たり前でなかったからこその表現だと思います。
 豪雨のことを思い起こしました。一日もはやい復興を願ってやみません。
 
前世捨て猫かも秋晴をねむり  板尾奈々美
 「猫」ではなく、「捨て猫」というところが、板尾さんの世界観だと思います。きっと、丸まって寝ているのでしょう。

言い訳ができない口に桃をやる  板尾奈々美
 その口を持つのは作者か誰かか。桃を「やる」という表現は、正直さ加減にあきれつつも受け入れているように思います。

梨切ってきゅっと寂しくなってくる  板尾奈々美
 梨を切るときの感触、そこに感じる寂しさの「きゅっと」という表現になんだか納得。
 「死」への思いから始まり終る作品、板尾さんの「中」を少し覗かせていただいたようです。

山澤香奈(やまざわ かな)
 1983年愛媛県生まれ。伯方高校在学中、第3回俳句甲子園優勝。句集シングル『線路とぶらんこ』 (マルコボ.コム)。


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小西昭夫の愛誦百句


第3回


炎天へ打つて出るべく茶漬飯  川崎展宏

 炎天はこれから打って出る場所の困難さを予感させるが、おそらくは汗をダラダラ掻きながら茶漬飯をかき込んでいるのだ。
 一体どこへ打って出るのだろうか。おそらく選挙などではあるまい。もっと生々しい戦いの場所に違いない。大袈裟に言えば、生きるか死ぬかの戦いの場である。腹が減っては戦はできぬが、ゆっくり飯を食っている暇などはない。茶漬飯にはそんな戦い前の食事に相応しいリアリティがある。
 というのは、ちょっと生真面目に読み過ぎただろうか。この句は炎天下への外出の気力を打って出ると大袈裟に表現し茶漬飯で受けた滑稽句とも読める。その読みの幅の広さもこの句の魅力である。『秋』所収。
 川崎展宏は一九二七年広島県呉市生まれ。本名は「てんこう」ではなく「のぶひろ」。加藤楸邨に師事し、「寒雷」に投句、後に同人。森澄雄の「杉」創刊に同人参加、編集長。「貂」代表、主宰。句集に『葛の葉』『義仲』『観音』『夏』『秋』等。その他の著書に『俳句初心』『昭和俳句回想』『虚子から虚子へ』等がある。「読売文学賞」、「詩歌文学館賞」、「俳人協会評論賞」受賞。二〇〇九年没。


水中花山並ばかりの窓に置く  熊本良悟

 窓からは山並が見える。山並は窓の大半を蔽っている。その山並は青々として生命力に溢れている。高原の別荘のようにも読めるが、自宅でもいい。自宅の場合、山並の深い緑は少々鬱陶しい時もある。植林された一年中緑の山が窓を占めていて、季節の変化を感じにくいのだ。それは時には部屋の住人を圧迫するようにも感じられる。もちろん、青年期特有の夢や希望、自信を持っているが、同じ程度に悩みや不安も持っているのだ。そんな若い男の部屋が想像できる。
 この水中花は夜店ででも買ったのだろうか。それとも誰かにもらったのだろうか。それは分からないが、自分を励ますために、殺風景な部屋をささやかに飾ろうと思ったことは間違いないだろう。窓際にグラスを置いて水中花を咲かせる。赤、青、黄それともピンク。何色の花かは分からないが窓際に開いた水中花は、その部屋の住人の夢であり希望の象徴でもある。『静かな宇宙』所収。
 熊本良悟は一九五二年愛媛県伊予郡砥部町生まれ。松山工業高校俳句会で豊田晃の指導を受け、その後愛媛大学俳句会に参加。「いたどり」「水煙」「砂山」等で活躍。現在は「Bearの会」を主宰。「水煙賞」受賞。句集に『静かな宇宙』。砥部町在住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博(俳号 蛇頭)

第90話
ニューヨーク マイ ハート
メル トーメ

 「ギャラは先払いじゃないと歌わなかったらしいよ。1988年の初来日コンサートの時もそうだった。よほど痛い目にあったんだろうね。僕はそのことを高知の会場で親しいプロモーターの人から聞いた」とJAZZ句会の最中にマミコンさんが語ってくれた。が、作句タイムは終盤。残念ながら、これをネタとする句は生まれなかった。

桃の実を紐育てふ夜に置いて  恋衣

 しかし、歌手、俳優、ミュージシャン(特にドラマー)、作詞 作曲家、アレンジャー、プロデューサー、ライターと、何をやっても一流のショー ビジネス界の大スター、メル トーメがマミコンさんの楽屋話によって少しだけ身近な存在に思えてきた。

スキャットが秋天を突くニューヨーク  チャンヒ
メガロポリス暮れ新涼の甜きこと  猫正宗
9 11墓標のごとく摩天楼  加藤いろは

 今回のメインテーマ「ニューヨーク マイ ハート」に併せ、この大都市を匂わせる句が全33句中11句。内人気ベスト3句がこれ。
 アルバムのディスク1、A面2曲目「ニューヨーク ステイト オブ マインド」は1975年にビリー ジョエルが自身のアルバム「ニューヨーク物語」のために書いた曲で、円熟の頂点でメル トーメが残したこの名盤においても象徴的なナンバーである。録音は1980年。ニューヨーク3番街の「マティーズ」という主に歌手を出演させることで有名だったジャズクラブでのライヴ盤。

ラブフォーセール歌艶やかに月鈴子  南行ひかる

 同ディスク2、B面5曲目。つまりラストナンバーのコール ポーター作曲「ラヴ フォー セール」は1930年のミュージカル「ザ ニューヨーカーズ」におけるヒット曲。トーメは歌唱中「すてきなあなた」「シング シング シング」「夜のブルース」などを引用してユーモアのセンスで盛り上げ50歳代半ばの圧倒的歌唱力を披露する。

朝寒の街ビロードの詩まとう  蕪榴子

 一方、サブテーマ「メル トーメ スウィングズ シューバート アレイ」は30歳代半ばのトーメ魅力満載のアルバム。シューバートはニューヨーク、ブロードウェイ劇場街の大ボスにちなむ俗称で、ミュージカルのヒットソング集であることをトーメ流に洒落て表現したもの。編曲と指揮はトーメが当時、最も信頼を置いていたマーティ ペイチである。集められたミュージシャンはウェスト コースト ジャズを代表する錚々たる顔ぶれで、中でもアルトサックスのアート ペッパーはアルバム1曲目「トゥ クロス フォー カムフォート」をはじめ5曲で素晴らしいソロを聴かせる。

荒鷹にトーメ聴かせて眠らせろ  マミコン
ヴェルヴェットヴォイス色なき風の色  蛇頭
艶やかにしなやかに消ゆ秋花火  南行ひかる

 トーメのジャズ歌手本格デビューは1940年代半ばといっていいが、その頃から彼の歌声は「ヴェルヴェット ヴォイス」と呼ばれていた。その味わいを詠んだ句が全33句中12句。内代表3句がこれ。


Today's Turntable
『ニューヨーク マイ ハート』1980年/fainess
『メル トーメ スウィングズ シューバート アレイ』1960年/verve


「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

次回JAZZ句会のお知らせ
9月16日(日)13時より、JAZZ BLENDにて。
テーマ ミュージシャンはジョニー ハートマン。アルバムは「ジョン コルトレーン&ジョニー ハートマン」をメインとします。参加希望の方は、本誌の句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU』vol.1〜vol.4(マルコボ.コム)を発売中。


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らくさぶろうの

呑む呑め呑もう句


第2回

選句、文 らくさぶろう


今月のお品書き 枝豆


 大変わがままな呑み助で申し訳ないのですが、居酒屋で枝豆を注文して冷たいのが来るとがっかりしてしまいます。作りおきか……と思うのと、枝豆はやっぱり熱々のを「アチ、アチ、」と言いながらぷちゅっと口に放り込んで塩っ気と共に楽しむのが醍醐味と信じていますので……。
 先日、新潟の小ぶりな枝豆をいただいたので食べてみると我が人生で最高にうまい枝豆でございました。何が違うのかしらん?
 よし、今宵は熱々の枝豆だ。乾杯!

枝豆や翡翠の色の謎を食う  ともぞう
 ホント、なんなんでしょうあの豆の美しさといったら。
 何も考えずに手を伸ばして食っていると気付かないのに、ふとこの色の“謎”を想うと、様々なことが頭をよぎる。色って不思議。

お隣に枝豆持って行ったきり  ソラ
 「ちょっと行ってこーわい」と行ってからはや二時間。何を話しているのやら。ひょっとしたらダンナ(自分)の悪口言われてるかも。都会ではなかなか見なくなった懐かしい光景でもある。

行儀よくお月見豆とお品書き  うさの
 ちょっと高そうな紙に筆(筆ペンじゃダメ)でしたためた縦書きのお品書き。「ねえねえ、この“お月見豆”って何?」「ああ、これね、枝豆のことさ。八月十五夜にそなえるからこう呼ぶんだよ。」「まあ、かっこいい! 物知りねえアナタ」
 ああ、俳句やってて良かった。

青々と枝豆茹でて帰り待つ  空山
 ある日のらくさぶろう家。LINEで「20時ごろ帰る」と送ってて、少し早めに仕事が終わり19時30分ごろ帰ったら「どしたん!! 早いね!!」と大きな声で言われました。それから私は時間通りに帰るようにしています。「帰り待つ」……憧れの下五ですネ。

枝豆や男所帯に鍋ひとつ  久我恒子
 味噌汁もラーメンも肉じゃがも花への水やりもこの鍋ひとつ。もちろん枝豆茹でるのも。ひとつで何でもやれちゃうから便利なんだかどうなんだか。鍋ごと卓に置き、冷蔵庫から缶の発泡酒をとり出している後ろ姿の見える一句。

集会所の大鍋えだ豆をゆでる  フラゴナール
枝豆はマメ目マメ科ダイズ属  ルーク
枝豆やひとつぶ毎に出るよもだ  藍植生
枝豆も堪らずダイヴ大ジョッキ  風来松
子らもワクワクプランターに枝豆  ボンド
枝豆の妻の塩梅子は知らず  内藤羊皐


今月の呑!!

枝豆に免じて注ぐ三杯目  有瀬こうこ
 これだけうまい枝豆なら、しゃあない、許そう、三杯目の生ジョッキ。枝豆って他のつまみ要らない、枝豆の主役感が“免じて”という一言でよく表現されている、まさに「呑みたくなる」一句に拍手。

 次の兼題は「レモン」。
 あくまでも「呑む」ためのレモンで一句をお願いします!!


兼題「レモン」…11月号掲載予定
 今月の「呑」に選ばれた方には「ハタダ金時のさぶ」をプレゼント!!

投句に俳号、本名、住所、電話番号を書き添えて、編集室「呑む呑め呑もう句」係までお寄せください。
メール nomu@marukobo.com
フォーム http://www.marukobo.com/nomu/
投稿締切 9月20日


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会話形式でわかる

近代俳句史超入門


近代俳句史超入門
第30回

文、構成 青木亮人

 大学で俳句を研究する青木先生と、その教え子で俳句甲子園の出場経験もある大学生の俳子さんが雑談を交えながらの近代俳句史超入門。


大正初期の三俳人

 青木先生と俳子さんが大学教室で話しています。


前田普羅

青木先生(以下青) 大正初期「ホトトギス」で活躍した俳人編、今回は前田普羅(1884〜1954)でいきましょう。十代半ばに両親が台湾に渡ったので東京の親戚に預けられ、早稲田大学に進学するも中退。文学好きで、早くから正岡子規たちの句も読んでいたらしい。横浜で石油会社や裁判所に勤め、「ホトトギス」に投句し始めるや高浜虚子に注目されます。
俳子(以下俳) イケメンで踊りも上手だった?
青 いや、「ホトトギス」はそういう事務所じゃない。虚子は次のように称賛しました。「大正二年の俳句界に二の新人を得たり。曰く普羅、曰く石鼎」(1)。
俳 褌垂らした石鼎さん! 懐かしいわ。
青 ひどい覚え方ですね。石鼎と並ぶ大型新人と称賛された普羅の句は、例えば〈春雪の暫く降るや海の上〉(2)。春の雪がしばらく海上に降っている……冬の雪と違い、水気を含む重ための雪が湾に降るという感じで、舟や家がチラホラ見える風景がいいかも。
俳 細かく描かれていないので、広々とした海の上もやはり想像されます。静かで人気のない海の上、春雪が降っては消える感じ。
青 そうですね。普羅は大景が得意で、有名なのは〈雪解川名山けづる響かな〉(2)。山国の雪解水が集まり、奔流となった川が名山を削るように轟々と流れる。怒濤の響きを立てる川のうねりが凄い。
俳 「名山削る」、大づかみで力がありますね。ドーンと直球で迫ってくる感じ。
青 他も〈春更けて諸鳥啼くや雲の上〉〈春尽きて山みな甲斐に走りけり〉(ともに2)等、細かい技巧や緻密な描写を重視せず、大きく景色をつかみながら人間界と違う自然界の荘厳さや激しい美を高揚感とともに詠むのが彼の特徴でしょう。
俳 うぉぉ、分かった!
青 野太い声でビックリ……前に仲良かった犬を急に思い出して遠吠えする犬みたいですよ。


「写生」

俳 何言っているんですか。普羅さんたちの「写生」が分かったんです。
青 というと?
俳 川や山、鳥たちは人間社会と無関係なんですよね。そのツンツンした自然を淡々と描くと見せかけて「名山削る」と詠んだり、「山みな甲斐に走り」と詠むところに主観がある、と。前にやった飯田蛇笏さんの「写生」も同じで、「見せかける」が大事なんだ!
青 開眼しましたな。「写生」は主観を漂わせながら客観描写に見せるのがミソ。「名山」と詠む時点で主観が滲み出るし、「名山削る」「山みな甲斐に走りけり」には作者の昂奮がビシビシ乗っている。開眼した気分はどうですか?
俳 朝ご飯を済ませ、茶碗を洗った気分であります。
青 それ、禅問答じゃないですか(3)。知的なのか、的外れなのか。(人差し指をすっと立てる)
俳 そ、それは一指頭の禅! 指を切るからお待ち!
青 いや、ノリがおかしい。戻って下さい。でも、「写生」と禅問答は似ているかも。自然を描くと見せかけて主観を滲ませるのが「写生」としても、やはり見えていないとダメな気がします。
俳 あ、分かる。嘘はしょせん作り物というか。
青 嘘がダメというより、妙な迫力やこだわりは体験しないと出にくい、という感じ。普羅でいえば、〈雨水は溝を走れり桜餅〉(2)。不思議な句で、なぜその内容で桜餅なのかピンと来ない。でも、「走れり」に妙に実感があるため、句意が分かりにくいのに気になる。
俳 普羅さんは動詞に力がありますよね。「名山削る」「甲斐に走りけり」「溝を走れり」等、感情そのものが走っている気がします。
青 単にそういう景色を見た、体験したという話でなく、ズンと心に飛びこんできた印象が強烈で、その感情の昂ぶりが動詞に乗り移っている。〈立山のかぶさる町や水を打つ〉(2)の「かぶさる」もそう。「写生」は見えていないと見せられない、というわけです。


大正初期の俳人たち

俳 そこだけ聞くと禅問答みたいですが、なるほど。少し分かった気がします。
青 禅問答風に追加すると、大正初期の「写生」はズバリ迫力。迫力で句を押し通すのが「写生」。
俳 暖簾に腕押し?
青 正反対。
俳 明日は我が身?
青 何の反対ですか。そうじゃなくて、大正初期の「ホトトギス」で脚光を浴びた俳人の「写生」は迫力が凄いんですよ。臨場感や感情の高ぶりが満ちている。
俳 蛇笏さん、石鼎さん、鬼城さん、水巴さん、普羅さん……確かに二郎系ラーメンより濃そう(4)。
青 皆さんをエキスにスープを作ったら、脂がギトギトしそう。大正初期の彼らを振り返ると、例えば蛇笏。〈月いよいよ大空わたる焼野かな〉(5)、「月いよいよ」といきなり異常興奮状態で始まります。こんな詠み方、普通はできませんよ。
俳 「大空わたる」の張った調子や掴み方もデカい。しかも「焼野」でビシッと情景を定める。プロねえ。
青 「月いよいよ」で高揚感を謳い上げ、「大空わたる」は客観描写に見せかけた主観の把握で、後は季語と切字でスッと流すように「焼野かな」。下五がキチッと着地するので、上五の字余りが活きるんですよね。
俳 蛇笏さんなりのバランス感覚がある、と。
青 そう。同じ「〜かな」でも、原石鼎は〈山川に高浪も見し野分かな〉(6)。海ではなく、川に「高浪」。どれだけデカい川なんだと。
俳 吹き荒れる雨風で山中の川が凄いことになってそう。「高浪も見し」、他も何か見た……?
青 台風で山川に高浪が逆巻くように立っただけでなく、他も景色が一変して山中が大変で、いつも見慣れた風景が恐ろしいことになった、という感じかも。
俳 山暮らしで台風に遭った時、「山川に高浪も見し」とまで感じられたんですね。そういう風に見えたから「高浪」と見せた、と。
青 そう、その調子です。村上鬼城の〈蚊柱やふきおとされてまたあがる〉(7)。
俳 鬼城さんらしい弱者への感情移入型写生ね。「またあがる」が濃いッス。
青 下五が「写生」の本領で、驚きや共感に満ちている。蛇笏の〈流燈や一つにはかにさかのぼる〉(5)に近い体験かも。渡辺水巴の〈水無月の木蔭に寄れば落葉かな〉(8)にも驚きがある。
俳 ワォ、「水無月、落葉」がセット。「木蔭に寄れば」がジロリアン系(4)の主観ね。
青 木の存在感も凄い。樹木の生命感と無常迅速のような季節のうつろいが濃く漂っています。
俳 「すれば」系はわざとらしくなるので難しいです。でも、水巴さんはわざとらしくない。下五「落葉」の強烈な意外さが打ち消しているのかも。
青 たぶん。大正初期「ホトトギス」の彼らの共通点は驚きの純度が高く、喜怒哀楽が深いこと。「私」自身を振りきるような感情の昂ぶりを丈高い有季定型で謳った彼らは、近現代俳句史上、最も濃い俳人群でした。
(この項、了)


解説

1、「ホトトギス」大正三年一月号で虚子が前年を総括した論の一節。
2、いずれも『普羅句集』(昭和5)所収。
3、禅の公案。高僧に入門したての弟子が、真理を教えてほしいと尋ねた。僧が朝飯は済んだかと聞くと、弟子は済んだと答える。僧は、では茶碗を洗っておきなさいと言っところ、弟子は卒然と悟ったというヘンな話。俳子が指を切ろうとするのも公案の一つ。
4、東京の「ラーメン二郎」系統の味。豚骨のきいた醤油スープと太麺で、とにかく味が濃い。ファンはジロリアンと称される。
5、『山廬集』(昭和7)収録。
6、『花影』(昭和12)所収。
7、『鬼城句集』(大正6)所収。
8、『水巴句帖』(大正11)所収。


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100年投句計画

選者三名による 雑詠俳句計画




先選者 阪西敦子

 区役所の石畳の庭にびっしりと何段にも提灯が飾られ、七夕祭りがやってくる。とくに踊りもなくて(今年は駅前で少し盆踊があったようだけど)、飾りの下を通り過ぎるだけの趣向。普段その区役所の広場には、水平に伸ばした手に林檎を乗せた少女へ歩み寄る少年の像がある。こないだ、夢でもその横を通ったので、ずいぶんリアルな夢を見たなと、思っていた。が、まったく違うポーズであった。思い込みとは夢の中まで。




夏の原行進の手で歩きけり  砂山恵子
 遮るもののない原っぱをゆかねばならないのは、何の用事なのだろう。行進の手とは指先までをピンと伸ばした規則正しい腕の振りだろう。行進の手というからには、行進ではないのだろう、おそらくは一人。景色はクリアだけれど、謎の多い句である。自らを鼓舞するようでもあり、それに興じているようでもあって、委縮させているようでもあり、個を失ったようでもあって、歩いている本人にもそれはわからないのかもしれない。




冷蔵庫の中に小さき妻の部屋  藍人
 冷蔵庫に妻の好きなものばかりを集めて、ほかの家族の手を触れてはいけない部分があるのかもしれないと思う、でも、もしかしたら小さな妻の部屋があるのかもしれぬ。そこで涼むのかもしれぬ。そう考えるとなんだか楽しく、自分も冷蔵庫に部屋が欲しくなる。

オブラート一枚飛んで夕端居  ゆき
 薬を入れたり、菓子を包んだり、舌に触れてすぐ溶けてしまうオブラートはもちろん薄く軽い。しかし、その薄さ軽さによって、互いがしかと重なり、なかなか一枚風に浮くという事がない。それが風に飛ぶというほどの、ちょうどいい風が来たのだろう。そこで行われていたはずの、細やかなオブラートの用途も思われるのである。
自転車の鍵かりりとす今朝の秋  くらげを
 わかるだろうか、自転車に取り付けられた錠に細い鍵を挿して押し込むと、錠が外れて車輪を囲う発条が開くのだ。その時の、鍵と錠の摩擦の「かりり」ではないかと思うのだ。日々、乗る人だけが知る、かすかな秋の予兆のオノマトペ。

かけっこの子供の像や夏木立  ぴいす
 林檎を背中の後ろに隠しもつ少年へ少女が歩み寄るのが、近所の区役所の像なのであったが、街灯に照らされるのを目にするとぎょっとすることがある。句の像は子供たちが駆ける。像はあたりの動きで、その動きを得るのかもしれない。動かない像を描いて、かえって夏木立の躍動が句のすべてに行き渡る。

まだ何か噛んでゐるなり三尺寝  凡鑽
 どんな噛みようかで、その夢が思われる。ものを食べているのかもしれないし、何かと戦うのかもしれない、ずっと咥えているのかもしれない。どちらにしても何かくっきりした夢の姿である。昼寝の眠りの近さとはこんなものかもしれない。




一番になりたくない子朝曇  青海也緒
結べない射手座の線や天の川  ひでやん
手土産にクロワッサンと青林檎  れんげ畑
夏祓母の好物買いにけり  柊の花
漁船みな西日に唄ふ鎮魂歌  松田夜市
男かもしれぬと思ふ裸かな  松田夜市
日晒しのブラシに憩ひたる蜻蛉  一走人
したたりの少し柔らかな色合  小木さん
ほどきゆく仕付けの糸や夕端居  さらさ
轢き逃げの立て看板立つ夏の草  24516

阪西敦子(さかにし あつこ)
 1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。



先選者 関悦史

 大雨災害で被災されている方々にお見舞い申し上げます。津波被災地のいわき市に先日「復興いわき海の俳句全国大会」の選者として行ってきました。海洋生物学者が本業の俳人ドゥーグル J リンズィーの講演があって、ドゥーグルさん、海の生物が詠まれた句を収集しているのですが、大部分が食べ物としてしか詠まれていないので、意外と難渋しているようです。日本人はある意味、本当の自然は見たくないのかもしれません。




玉虫や女性に話しかけられた  或人
 「や」が入っているので文語、口語の混じった感じの句ではありますが、これはそういう文体と取ることとします。「女性に話しかけられた」の、大したこともないはずの出来事に対する驚きは、口語調でなければ出ません。「玉虫」でその女性のきれいさや、話しかけられたことの素朴な感動が出てきて、それが輝かしい記憶へと凝集される。連想の働き方をうまく生かした季語の使い方になっています。




昼顔のつる竜骨に届きけり  芳香
 「竜骨」は船体を縦に貫く構造材の他、帆船の下部の腹鰭のような部分、大型哺乳類の化石等の意味もありますが、つるが伸びる曲線と成長のイメージからして船の構造材でしょう。変身の瞬間のような秘蹟感あり。

東洲斎写楽の寄り目平目食ふ  鯉城
 写楽の大首絵は寄り目のものが多く、目自体が一方に寄る「平目」と意味で通じてしまいますが、案外つき過ぎ感はない。食べつつ平目の形状に注意がいき、平目が役者絵に化けつつあるような動的なユーモラスさあり。

避難所のトイレ明るし火取虫  ひでやん
 避難所になっているのは体育館などの施設でしょう。トイレ以外はすでに消灯した夜間、異常事態のなかで際立つ明りで、そこに立つと虫も来ているのが目に入る。避難所の緊張感、不安感が背後に感じられます。

瓜の蔓予備校生の如く揺れ  小市
 蔓の揺れ方の、何となく頼りない、情けない感じを句にしようとする人がまずあまりいなさそうで、さらに「予備校生」という比喩の飛躍が面白い。「予備校生か!」という自然に対するツッコミ芸。

薔薇捨てに能登半島へ行くところ  小川めぐる
 ロマン性の強い句ですが、背景事情は謎。「能登半島」の薄暗い喚起力と、そこまで薔薇を捨てに行くという現実にはありえない行動。それをそのさなかの態で詠み、幻想的な劇性を立ち上がらせることに成功しています。




日も撥ねつけ十四才の更衣  中山月波
アイスティーローランサンの絵の下で  砂山恵子
冷蔵庫の中に小さき妻の部屋  藍人
熱風のマカオバンジーの綱跳ね上がる  あいむ李景
大出水昨日も明日も押し流す  とべのひさの
民宿のライス山盛り雲の峰  ケンケン
蜜豆や独身と聞き騒めきぬ  ゆりかもめ
男かもしれぬと思ふ裸かな  松田夜市
青柿やドイツ語で読む資本論  ぐずみ
白日傘追ひをりクアラルンプール  土井探花

関悦史(せき えつし)
 1969年茨城県生。「翻車魚」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。2017年第二句集『花咲く機械状独身者たちの活造り』、評論集『俳句という他界』刊行。共著『新撰21』『俳コレ』他。



後選者 桜井教人

 仏像が大好きで先日は京都へ行った。平日でも観光客があふれかえっているが、それは一部の場所だけだ。ほんの少しルートを外れるだけで仏様にゆっくりと会える。それも日本三大文殊の文殊菩薩さま、宋朝伝来の五大虚空蔵菩薩さまなど国宝、重文級のすばらしい仏様だ。しかし食事となると勝手が違う。ラーメンにせよ鰻にせよ評判の店は大行列だ。
 それでも並んでまで食べたいと思うのはまだまだ私の修行が足りないからだ。


特選

終戦日全力で少年だった  花紋
 私が少年だった頃、祖父や祖母から戦中、戦後の話をよく聞かされた。それこそ少年だけでなく大人も全力で大人であった時代だ。物には恵まれてなかっただろうが、少年にとって最も大切な「夢」だけは今よりあったのかも知れない。

原爆忌陽に透けうすき猫の耳  のり茶づけ
 猫の耳は薄くて毛細血管までよく見える。猫の耳に流れる血から原爆へと意識が飛躍したとき、失われたのは人の命ばかりではなかったことにも気づかされた。命を詠むのは難しいが、俳句の詩形を信じるとこれほどの想いを伝えることができることを学んだ。

おひさまがないてゐるよなほたるの黄  緑の手
 黄緑色に明滅する蛍の光。あの何とも言えない儚さを誘う色はお日様が泣いている色なのだと言われると納得してしまう。人の心を引きつける理由が分かった気がしてしまう。そのお日様も一度蛍の光を見てみたいと思っているのではないかと思う。


並選

秋の蚊とYouTube観てゐたりけり  或人
万緑を食む縞馬の歯茎かな  中山月波
三体の如来の像や水芭蕉  芳香
横抱きの白百合朱には交わらぬ  桂奈
ひまわりの中に迷へる平和かな  不耳男
やや老人まこと老人かき氷  藍人
ピースする四人揃いの夏帽子  笑松
夏草を乱し円盤離陸する  花伝
鰯雲見上ぐる背に影宿る  レモングラス
天目に至らず夏の星の屑  風来松
野分去り始まつている暮らしかな  青海也緒
獣めく湿原の瘤苔青む  あいむ李景
半夏生振り向く女人の小袖かな  ゆき
六階に聞く避難指示梅雨出水  野良古
記念撮影白靴のハレーション  斎乃雪
御赦免花泰然として豪雨の中  健次郎
同級生がいて薄荷水の町   七瀬ゆきこ
ここよりは黄泉比良坂立葵  みやこまる
お弁当今日はギリギリ糸蜻蛉  松浦麗久
水見舞い現実と知る道すがら  とべのひさの
落選の板で知る蟻林檎齧る  KIYOAKI FILM
よさこいや黒き単衣の女子衆  冬のおこじょ
ヘレンケラーのような老猫梅雨深し  ねもじ
なみのかげなほねむりをりうみびらき  明惟久里
デイサービス絵を描く嫗のチューリップ  ケンケン
船虫の隠れかねたる石畳  人日子
雲の峰のぞき込んでる胸の内  未貫
病葉よ水に落ちろと言はれしか  風海桐
秋の昼箏弾く先生友と我  巴
海の日の風待ち港猫又猫  哲白
花菖蒲パドル危うきUターン  ゆりかもめ
高速の追い越し車線夏匂う  有瀬こうこ
倒れてもまた伸びゆくや秋桜  ミセウ愛
夏の空を目指して歩く一歩ずつ  アンリルカ
夕焼や漁船行き交う今出港  れんげ畑
月今宵点滅信号まで行かうよ  くらげを
避難所の子らの笑顔やかき氷  すみ
山芋や祖父の呪文のするすると  久我恒子
掌に収まるほどの水着かな  ヤッチー
ラヴェンダー浅き眠りのモルモット  うに子
蝉しぐれ人声のなきライブラリ  小市
ヘラヘラするな初参加の山笠舁き  かのん
梅雨晴やタイムセールの最後尾  柊の花
蝉生る片翅のまだのびきらず  ぴいす
鼻声のヘップバーンと枝豆を  すりいぴい
交るみたる蜻蛉水面を八叩き  一走人
炎天や肌に貼り付く野良着脱ぐ  しのたん
やはらかにしがみつくのは守宮かな  小木さん
南京割る娘と吾の二重奏  次郎の飼い主
水神にまつる卵や梅雨明ける  南亭骨太
明易し栞かはりに挿す写真  柊月子
あさがほの花ひらくとき眠るとき  さらさ
始まれば終わる恋です凌霄花  小川めぐる
「羅生門」の頁繰る音夏の果  24516
城跡の井戸の階段夏深し  喜多輝女
ホコリ立つ道道道に汗しみる  ぺぷちど
夏星や心拍音と時の音  和音
さみどりの命へ蝉の呼気やはら  一斤染乃
ポリポリと辣韮を食む耳朶の奥  おせろ
家裁へと向かうタクシー柘榴割る  洒落神戸
冷まじや海王星からの一波  薄荷光
縁側に舐めるアイスの蓋の裏  立志
運命の第四楽章心太  ぐずみ
炎熱や車内に煮えたコカコーラ  元旦
団扇手に籠る厠の「みつを」かな  凡鑽
透きとほる薄緑から黒葡萄  大槻税悦
教室に汗の子汗の子朝の会  さより
おじぎ草おきる間もなく児童館  誉茂子
ふよふよと三半規管蝉しぐれ  ちゃうりん
番台をおりるをんなの裸足かな  彼方ひらく
被災地のまっ青な空花蜜柑  ぎんなん
たこ焼きに大量のネギ半夏生  青柘榴
羊水を傾けてゐる昼寝かな  内藤羊皐
サルビアのかなり風営法違反  土井探花
朝涼や街並ギリシァ色の白  遊人
江戸川を夏の夜中の二時三時  まんぷく
初蝉の力強さよ復興よ  ミセスコナン
封筒の角の縒れたる溽暑かな  花節湖
城砦と見て取れる寺きりぎりす  暮井戸
潮待ちの港の床屋花ふくべ  彩楓
夏服の腕だらりと刺す点滴  テツコ
網窓の先の一本道は海  ラーラ
白玉や悲しい時に笑う癖  空山
棗喰ふかしゅかしゅ喰らひ渇く喉  マカロン星人
ぬつと出る鵜の嘴にく魚  坊太郎


桜井教人(さくらい きょうと)
 1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回、29回俳壇賞候補。


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100年投句計画

自由律俳句計画


きむらけんじ

 自分で宣伝。きむらけんじ新刊「あしたも世間はややこしい(象の森書房)」。一休宗純の遺言から近大ナマズまで、ややこしい話とややこしい俳句とそれなりの写真満載。ついでに未発表自由律40句一挙掲載。読めばますますややこしい。書店になければアマゾン本で検索を(電子書籍もあるらしいです)。またはマルコボ オンラインショップか象の森書房(06-6131-5781/zonohana@gmail.com)へ。




しんしんとして炎天の道が白い  ちゃうりん
 太陽が照りつけるものすごい暑さの道だろう。その強烈な暑さの道を表現するのに、何ひとつ強烈な言葉は出てこない。行き着くところまで行けば言葉はかえって抑制され、その抑制下にある静かなエネルギーだけが沸々と煮え立っている……この句を拙い言葉で言い表そうとすればそんなところだろうか。強烈な太陽にさらされた道は、色さえ溶けてすでに白い。音さえ消えてしんしんと静まり返っている。有名なウイスキーのコピーではないが、まさに「なにも足さない、なにも引かない」、そんな趣があります。




大福売れ残る日盛り   ゆき
 日盛りを表現するのになにをもって比喩とするか……単純明快な構造の句です。日盛りに大福が売れ残っておれば、これは心身ともに暑いな……。読む方は、な〜んだの思いなのでしょうが、この絶妙の感覚は、本人の持つ能力以外のなにものでもありません。

浄土を見てきた蛍が光る   みやこまる
 暗闇に漂う蛍の光のはかなさは、なるほど浄土とのつながりを感じさせます。浄土から来たのではなく浄土を見てきた蛍、という視点が現実的で写実感があります。

拗ねた子に校庭が広い夏   ゆりかもめ
 拗ねた子が向かう先は、夏休みの校庭……妙に納得感がある。夏休みの誰もいない校庭のその広さが、拗ねた子の孤独を包み込むのだろうか。孤独の子に切迫感がないのは、夏のせいか。

追い抜けば終われる人となる  洒落神戸
 追い抜く人自身がその時点で目標を終えるということか、あるいは追い抜かれた人が終わってしまうということか……解釈が悩ましいが当然後の方に深みはあると思うけれど……。引退をかけたレースなのか、人生の比喩なのか……。

そうめんをすすろうにも夫は留守  一走人
 典型的なスライス オブ ライフというか、日常の一ページを何の気負いもなく切り取ってある。こういう表も裏もない句というのは、人間としてはどうしても作意が入るのでなかなかムツカシイ。詠みすぎか足りなさすぎに陥るのですが、これはいい感じでそこにすっと立ってる。




フローリングに団栗が転がつてゐる  青海也緒
ボタン取れてると言えず驟雨   七瀬ゆきこ
波低き野分動かぬ雲   明惟久里
草間彌生好きのてんとむし  ヤッチー
順次抹殺されてゆく昭和   南亭骨太
終戦や水にかえる土に還る  ぐずみ
また「暑い」って言うたら百円な   凡鑚
尺取虫のΩ熟考のかたち   ちゃうりん
蝉に成っている夕まぐれに紛れ  青柘榴
梔子の香つよく白い花びらでいる   多満


並選

結婚詐欺師のルーチンワーク   中山月波
最後のさいごに梅雨嵐  芳香
モナリザの笑み炎天に崩る  桂奈
笑ゥせえるすまんも夕端居  藍人
ぎっくり腰の季節忌む  レモングラス
選挙ポスターらの上に胡瓜封じの告知   風来松
風鈴も耳障り熱帯夜   健次郎
側溝の蓋の上に裏返りしは亀の子だった  松浦麗久
これでもかと雨これでもかと太陽   とべのひさの
歯が折れて快楽   KIYOAKI FILM
腹を見せ蝉   冬のおこじょ
鹿角解頃の奈良公園   ねもじ
ぐんぐん打球の伸びる向こうの青空  ケンケン
翡翠の光鋭き青   人日子
西条柿あをし先祖は広島爆心地  鯉城
何年経っても落石注意  花紋
部長の軽にレッカー車  有瀬こうこ
一緒に見た花火二十六年目はひとり  すみ
折鶴は迷惑ですといふ論議  うに子
ドア開けたままのクルマは猥褻  小市
青嵐またお山に試される   のり茶づけ
草いきれ敵か味方か   小木さん
広島いつぱいの羽音   次郎の飼い主
暑さで時空が歪んだらいいのに  小川めぐる
黒のTシャツ塩を吹く  喜多輝女
美し美し美しと無人駅の夏夕日  ぺぷちど
ゼリー舐める猫の舌の音   和音
蜜豆へキュビスム展の無言  一斤染乃
砂場の鈴なりの雀  薄荷光
星星星星星月夜星星星星星  立志
宇宙人の声に昼寝覚め  元旦
心配じゃなく信頼するね夏燕   さより
望遠鏡買う月恋しと云う妻に   彼方ひらく
向日葵の拘束着を纏う夕   内藤羊皐
一秒経てば過去   遊人
夏の夜中に江戸川に突き当る   まんぷく
炎帝や魂が溶けていく  ミセスコナン
いま食べられるのはトマトだけ  花節湖
牛の眼まで洗われている   暮井戸
体は水分を欲しているのに  彩楓
暑いといったら罰金   テツコ
紅バラはただの空き瓶に   ラーラ
優しくね傷ある頭髪洗う   空山
「コーヒーコーヒーうるさい」と詠う茶房で飲むソーダ水  マカロン星人
遅々として進まねど美しく笑ふ男と大文字   きさらぎ恋衣
茂りの中の一本の母よ  緑の手
斬首の蛇を水葬す  坊太郎


自由律で再挑戦を!

サイン会影武者のやふ梅雨の宵  ねもじ
ひまわりの活けある方が上座なる   みつよ
盆僧の裾からげ待つ雨しきり   みつよ
夕焼の有明軋む戦利品  次郎の飼い主
影重ね抱きしめられて抱きしめて   さらさ
母逝って初潮の朝がよみがえる  多満


きむらけんじ
 1948年生まれ。第一回放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。


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100年俳句計画

詰め俳句計画


選者、問題作成 マイマイ


今月の問題
次の(   )の中に共通する秋の季語を入れてください。

単線に沿つて草ある(   )かな
開けはなち(   )の窓の宇宙まで


単線に沿つて草ある絵日傘かな
開けはなち絵日傘の窓の宇宙まで
 藍人さん。残念。夏の季語でした。級外です。小市さんの愁思は秋思の誤変換? 歳時記には見つかりませんでしたので級外とします。さとしさんは斑蜻蛉。私の持っている歳時記やインターネットの検索では斑蜻蛉という季語は見つかりませんでした。とりあえず蜻蛉の傍題だということにして捌きます。前後句とも長すぎ!! 7級。KIYOAKI FILMさんの秋の蝉も長い。前句「かな」いらんでしょう。後句も全然リズムに乗れない。同じく7級。

単線に沿つて草ある芒かな
開けはなち芒の窓の宇宙まで
 さらささん。前句この「草」は芒? それとも芒とは別に「草」がある? 景がよく分からない。後句は詩的。5級。レモングラスさん、きなこもちさんは花野。前句、花の目立たない草むらが線路に沿って伸びているということなのでしょうか。ややわかりにくい。後句はロマンチック。4級。健次郎さんは秋野。前句、違和感はないが、予定調和的。後句、秋のしみじみとした感慨あり。3級。猫楽さん、遊人さんは刈田。前句、この光景は確かに見たことがある。後句は刈田から宇宙に飛ぶのがある種哲学的かも。2級。

単線に沿つて草ある夜庭かな
開けはなち夜庭の窓の宇宙まで
 斎乃雪さん。知らなかったので調べると農家が土間でする籾すり仕事のことを夜庭というそうです。前句、土間なのに単線が出てきたりして意味不明。後句は籾すり作業と宇宙が実は繋がっているというのは面白い発見。5級。或人さん、みやこまるさん、河原撫子さん、久我恒子さんは秋思。前句、地味な風景がこの季語と合っている。後句、宇宙の広さを思えば愁いも軽くなるかもしれない。1級。

単線に沿つて草ある銀河かな
開けはなち銀河の窓の宇宙まで
 ねもじさん、次郎の飼い主さん。前句、「銀河」が出てきて一気にダイナミックな光景になった。後句は「宇宙」と近すぎる。4級。
洒落神戸さん、彩楓さん、空山さんの月夜は前句落ち着いた光景。後句、やはり「宇宙」と近い。花節湖さんの月下も同様。同じく4級。松浦麗久さんは雨月。砂山恵子さん、青海也緒さん、とべのひさのさんは無月。前句、出ていない月を思う少しうら寂しい気分が出ている。後句の窓は雨や雲で隔てられていて「宇宙まで」という感じはしない。同じく4級。野良古さんの夜霧も後句、同様。同じく4級。七瀬ゆきこさん、明惟久里さん、ひでやんさん、ゆりかもめさん、すみさん、ほろよいさん、一走人さん、喜多輝女さん、一斤染乃さん、内藤羊皐さんは良夜。前句、月光に浮かび上がって印象的な景になった。後句、「月」という言葉を使わないことで「宇宙」との近さは緩和されている。2級。

単線に沿つて草ある九月かな
開けはなち九月の窓の宇宙まで
 ジュミーさん、笑松さん、ミセウ愛さん、ヤッチーさん、うに子さん、すりいぴいさん、小川めぐるさん、24516さん、坊太郎さん。9月号に寄せた回答多数頂きまして感謝です。前句、フレーズのちょっと茫漠とした感じが、夏過ぎの季語と合う。後句、「九月」にはそれなりの感慨もあるが、詰め俳句としては決め手に欠ける感じがする。2級。元旦さんの葉月、青柘榴さんの初秋も同様。同じく2級。芳香さん、桂奈さん、立志さん、誉茂子さんは秋気。前句、この季語によって風景に爽やかさが感じられる。後句、気持ちいい。同じく2級。ちゃうりんさんの残暑は、前句、むっとするような実感がある。後句も残暑が宇宙まで続いているようで好き。1級。中山月波さん、冬のおこじょさん、小木さん、きさらぎ恋衣さんは夜長。前句、その単線を長い貨物列車が夜を徹して移動しているような光景が浮かんできて良かった。後句も実感があって良いが「夜」が「宇宙」と近い発想なので、句に「宇宙」という単語が出てきたときのインパクトにやや欠ける。同じく1級。

単線に沿つて草ある夜学かな
開けはなち夜学の窓の宇宙まで
 薄荷光さん。前句、通学の一場面をただ描写することで作中主体の心情や人生もなんとなく想像させる力がある。後句、勢いがあって気持ちいい。初段。のり茶づけさんは蜻蛉。前句、ぼんやりとした背景を描いておいてそこに蜻蛉を出現させることでちょっとした驚きがある。後句、開け放ったその窓が「蜻蛉の窓」となり、そして蜻蛉の群れが連なりつつ宇宙まで続いていく。二段。


今月の正解

単線に沿つて草ある白露かな
開けはなち白露の窓の宇宙まで
 しげこさん、あいむ李景さん、ゆきさん、矢野リンドさん、人日子さん。白露は時候の季語ですが、当然露のイメージを伴います。前句は草の露を思いますし、後句は露を結びつつある清浄な空気の存在を感じます。初段。
 

解答募集中!
次の(   )の中に共通する秋または冬の季語を入れてください。

切り口の縞茫漠と( )かな
しんしんと( )を通ふ海の水

このコーナーは『新日本大歳時記』(講談社)を参考にして、選者が勝手にランク付けをしています。新しい季語などを投稿される際は、歳時記、季寄せ名を併せて明記していただけると助かります!

9月20日締切 …結果は11月号に掲載


マイマイ
 2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回百年俳句賞(旧大人コン)優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。宇宙と生命を題材に詠んだ句集『宇宙開闢以降』マルコボオンラインショップにて発売中。


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100年投句計画 投句方法



雑詠俳句計画
自由律俳句計画
詰め俳句計画

 「雑詠俳句計画」では、寄せられた投句を一括して、各選者が選句します。各選者に宛てて個別の投句を行うものではありません。

11月号掲載分締切 9月20日(木)

投句方法

 投句先コーナー名
 俳号(無ければ本名の名前のみ)
 本名
 電話番号
 住所

 以上の必要事項を書き添えて、編集室「100年投句計画」係までお寄せください。メールの場合は、件名を「100年投句計画」としてください。
 「雑詠俳句計画」「自由律俳句計画」はそれぞれ2句ずつまで投句できます。また、「詰め俳句計画」は季語1つのみを投稿できます。
 各コーナーの投句は、ひとつにまとめて送っていただいても構いません。

メール宛先
magazine@marukobo.com

投稿専用ページ
http://marukobo.com/toukou/

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(「100年公募計画」のコーナー参照)


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短歌の窓


選者
短歌誌『未来』会員 渡部光一郎


特選

早天の路上に蝉がたえだえに風に吹かるる早緑の翅  きさらぎ恋衣
 どういうわけか、蝉は死にかかっているところを目にすることが多い生きものである。この歌もそんなところに注目してのもので、歌意もよくわかり共感できるが、類想がけっこうありそうだ。「たえだえ」「風にふかるる」といった、よくある言い回しを避けてみてもいい。ほか、助詞の「に」を二度使っているのが気になった。


並選

おこりんぼだったあなたがこのごろはなんだかやさしくなってさみしい  小川めぐる
 定型感覚のしっかりした作者。ひらがな表記も明確な意識のもとに用いていてよいが、もう少し謎をふくんだ内容でもいい。

百日紅咲きて我らの古稀祝う生かされしこと生き抜きしこと  ゆき
 下の句が力強い。「生かされしこと」に対して「生き抜きしこと」とは、出そうで出ない。


コメント

きにならぬわけてはなしになにこともきにせぬこととねじはなのいう  台所のキフジン
 「きにならぬわけてはなしに」の部分が、やや浮いている。面白くなりそうなのでもう一度調整をしてみてください。

炎昼の工事現場に角材の積まれて白くそこだけ涼し  久我恒子
 おもしろい発見。そこだけ「白く」て「涼し」いというのが不思議で、白昼夢のようでもある。疑問をさしはさむ余地がない説得力がある。

紫陽花の花慎ましく咲きにけり色を周りの萼に委ねて  藍植生
 紫陽花の花と萼は異なる部位。ここでは「色を周りの萼に委ねて」と表現した。

六月のショートステイの母を訪う姥捨て山に捨てし心地す  一走人
 「六月」が効いている。歌意の分りやすい作品であるが、はじめの「六月」ですがたがよくなった。

生意気に標準語にて喋りをる友と並んで盆踊の夜  24516
 帰省した子のことだろうか。夜に友人と話しているのを傍で聞いている。子の友人も「標準語」を使っているのかもしれない。この歌では主語をおぎなった方がよい。

とりあえず暑いですねと六人目ATM順六人ぬかす  うさの
 ATMの前に列を作って並んでいるときに「暑いですね」とか言われながら抜かれたのだろうか。ちょっと評者にはわからなかった。もう少し整理をしてみてください。

年下といえど上司はきっちりと我に意見す桃の頬して  久我恒子
 「桃の頬して」は、「上司」への好感の表現として受取ったが、独特な感覚。

我妻のトボけた老境見せ始め大胆に為す不意の転換  暮井戸
 具体がないので、「老境」の内容がちょっとわからない。

高三の孫の進路の漸くに決まり安堵の夏休み前  一走人
 波は次々来るけれど、ひとまずは本人も家族も安心。

白秋も聴きしニコライ堂の鐘遠くに響き子産しわが母  明惟久里
 ニコライ堂の鐘と、母がどうつながるのかが分りにくい。もう少し情報の取捨選択を。

身ぐるみを剥いで頭をもぎ取って妻は食いたるひよこ饅頭  有瀬こうこ
 時々見る発想だが、しっかりとまとめた。


自作の短歌(2首まで)を下記までお送り下さい。締切は毎月20日。
専用フォーム
http://www.marukobo.com/tanka/
専用Email
tanka@marukobo.com


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自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



文、訳例 菅 紀子


沖縄忌青すぎる海ありにけり
The memorial day of Okinawa, it was deeply impressed with the blue sea.
ケンケン

紀訳
The Memorial Day of Okinawa,
the deep blue sea was there


あの時の少女も老いぬ沖縄忌
The memorial day of Okinawa, she grew old , the girl from that time.
ケンケン

紀訳
the girl has gotten old,
the Memorial Day of Okinawa


アメリカのジャンクフードや夏の鳥
America is junkfood sumer vacation of bird.
KIYOAKI TOYOHARA

紀訳
junk food in America, birds in summer


ブラジルのボクサー夏の煙の上がる店
Brazil boxer sumer of smoke up shop.
KIYOAKI TOYOHARA

紀訳
a Brazilian boxer
a shop where the summer heat comes up


ジンジャーの花一両の終電車
ginger flowers
the last train
only a car long
久我恒子

紀訳
ginger flowers
the last train
with a single coach


三日月や停戦の銃磨く子ら
a sickle moon
children polishing
guns under the truce
久我恒子

紀訳
the crescent moon
children who polish guns
after cease-fire


青りんご雨をかけだす十五歳
green apple
rush in the rain
15-ish
ほろよい

紀訳
green apple
a fifteen-year-old
dashes in the rain

お便り
ほろよい 今月は「rush into」だと「〜へ」となるのでは?と「雨を」を表現したく「rush in」としてみました。また年齢表現について、ネットで見つけた「〜歳くらい」の「-ish」を使ってみました。


はじまりは秋思のギターソロそして
the beginning is
guitar solo on blue in autumn
and then
チャンヒ

紀訳
the beginning is
a guitar solo under the autumnal melancholy
and


惑星に詩を生むための鶏頭花
for make poetry
on the planet,
the cockscombs
チャンヒ

紀訳
the cockscombs flower
in order to create poems
on a planet


竹の春絵本の魔女と同い年
budding of a bamboo,
as old as a witch
of a picture book
明惟久里

紀訳
budding of bamboos
the same age as the witch
in a picture book


うづもるる靴下の象青芝生
elephants of socks
are buried
in the green grass
明惟久里

紀訳
a pair of socks
with an elephant pattern
buried in the grass


南風や耳の後ろのむず痒し
the south wind blows
itches
back of the ear
彩楓

紀訳
the south wind,
itchiness
behind the ear


隊列を離るる蟻の冒険心
ants
leave the file
with enterprise
彩楓

紀訳
an ant in disarray
its adventure spirit


堆積す土掻き出して島の夏
rake out
the piled up soil
summer of Nakajima
すずき徳三郎

紀訳
digging out
the piled-up soil
summer in an island


御巣鷹の焦土8月12日
burnt ground
of Osutaka
August 12th day
すずき徳三郎

紀訳
scorched ground
Mt. Osutaka
August twelfth



Column

 今月の原稿は米国東海岸ニュージャージー州にて書いています。ニューヨークへは1時間ほどで何度も行き来しているので、このコラムで既にご紹介したNY在住の英語俳句紹介者で翻訳家の佐藤さんに連絡しました。私はちょうど俳句を英語で紹介した最初期の人物ブライスについての特別寄稿を仕上げているところなので、試読のうえ最終コメントをいただけたのはラッキーでした。
 折しも佐藤氏は新刊の俳句エッセー『On Haiku』を出版する直前でした。俳句が海外で受容される現場をこのコラムにてご披露できることに何か縁を感じます。以下は裏表紙の賛辞からの一部:「数多くの様式やジャンルの俳句を芭蕉や一茶や禅法師らの伝統的な俳句から水着や原爆を詠む現代俳人、サリンジャーやケルアックなどの著名作家の俳句まで、太平洋の両岸で探究されています」「俳句とは何か、また俳句ではないものとは何か(単にシラブルを数えたに過ぎないもの)を伝え」「単純化に抗う複雑な問題に対し見事に取り組まれています」
 百人百様E-haiku投稿者のみなさんは環太平洋の一端から自作の英訳を発信しているフロンティアです。英語の音節を一生懸命575の数に揃えただけでは俳句とはいえず、短い詩とはいえ単純にすればいいというものでもありません。
 言葉という記号と俳味(漱石が言った語だったかな)をどう絡ませるか、挑戦は続きます。


菅 紀子(かん のりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通、翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学非常勤講師。(Hailstone Haiku Circle blog ICEBOX Contributor)(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)

自作の俳句およびそれを英語俳句にしたもの(2句まで)を募集!
応募先
 WEB http://www.marukobo.com/eigo/
 Email eigo@marukobo.com

11月号掲載分締切 9月20日(木)


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今回のお題句に対する投句から次のお題句を選び繋げてゆく

疑似俳句対局


選者 美杉しげり


今回のお題句
白露から橋は人魚の閨となる  薄荷光


候補句

 今回の最速投句はこちら。「落陽や」のカッコ良さと中七下五のギャップが愉快。

落陽や金魚の糞の長きこと  中山月波

 新ルールでは漢字以外からいただけるのは「となる」しかありませんが、さて。

龍の背は石段となる炎天下  一斤染乃
季語なんぞ雑音となる大暑かな  青柘榴
露天風呂満月我のものとなる  花節湖
となると、犯人は誰冬怒涛  凡鑽

 皆さん、それぞれ個性的な句を詠まれてます。季節も真夏から秋、冬へ。そして、凡鑽さんのようなやり方もあるのだと楽しませていただきました。

高潮警報の報す雑魚場の蟋蟀  天野姫城
夏深し急く玻璃越しの回遊魚  武井かま猫
雨の月目無きてふ深海魚  桂奈
魚の目の痛み堪えて霜の朝  健次郎
魚の目と言ふ目の覗く天の川  柊月子
夏終る魚雷に朽ちし船の命  冬のおこじょ

 今回はお題句からいただいた漢字、皆さんいろいろ選ばれていたのですが、比較的多かったのが「魚」。前半三句は生きてる魚ですが、後半三句は「魚の目」と「魚雷」! こういう展開もありですね。

雲懸かるな鵲の橋架かるまで  藍植生
にわか雨橋の下から見る花火  芳香
この橋を越さば戻れぬ虎が雨  倉形さらさ
盆東風や佃小橋に醤油の香  洒落神戸

 こちら「橋」句の皆さん。洒落神戸さんの句を読むと美味しい佃煮がいただきたくなります(笑)

炎昼や贈収賄の暴露記事  すみ
新涼や石笛を吹く露天商  小川めぐる
形無き露積の家財碇星  あいむ李景
夏祭り露西亜帰りのコメディアン  すぎ本たかし
火の山にザクザク登る露宿人  七瀬ゆきこ

 続いて「露」の句。暴露、露天商、露積、露西亜、露宿人……「露」って、ずいぶん多様な使い方ができるのだと意外でした。
 ちなみに七瀬ゆきこさんは「露、人」とお題句から漢字二字を選択。こういう挑戦も、もちろん歓迎です。

郁子垣や寡黙な人の思ひやり  明惟久里
ひかり揺れ祭の夜の人いきれ  笑松
秋気澄む雲採りに行く小人たち  青海也緒
風光る友は明日カナダ人になる  野良古

 こちらは「人」を選んだ句。明惟久里さんの句は「郁子垣」に「寡黙な人」の取合せが似合います。笑松さんの句はさりげなく景を切り取っています。
青海也緒さんの句は発想が素敵ですねぇ。野良古さんの句は、結婚か何かで戸籍が変わるという事でしょうか。カナダ人というのが妙にリアル。

閨房のランプは消さで星逢ふ夜  ひでやん
きぬぎぬの閨や朝日と溢蚊と  ぐずみ
はつあきの独りの閨のひろさかな  星埜黴円
水澄むや岩陰にある魚の閨  ねもじ

 「閨」ひでやんさんやぐずみさんの句は、ちょっと艶っぽい展開がいいですね。洒落神戸さんの句、季語の「はつあき」が効果的。ねもじさんは「魚、閨」と二文字をいただいての投句。

秋蝶の白き骸に巣食う闇  斎乃雪
鍵穴を探す稲光の真白  24516

 白い骸にある闇、稲光が真っ白という把握。それぞれ詩的で印象的な「白」。

閨の月翅あるものは逝き易く  久我恒子

 「翅あるものは逝き易く」まさに。個人的には蛾、それも月みたいな色合いの美しい蛾を思いました。

真つ直ぐな魚の背骨菊日和  すりいぴい

 上五中七の措辞が気持ちいいですね。菊日和なので、たとえば結納か披露宴そういう改まった席での食事を連想しました。

百舌鳥啼けば空は魚の死の匂い  薄荷光

 この作者らしい世界を描いている一句。「空は魚の死の匂い」は、意表をつかれながらも、同時に納得させられた措辞。


次回お題句

名人の餃子焼きをり鰯雲  大槻税悦

 今月も様々な句が並びましたが、お題句にはこちらを。投句も早かった!
 有名なお店でしょうか。名人の焼く餃子、さぞや美味しいでしょう。季語が鰯雲ですから、テイクアウトの餃子かもしれませんね。
 選んだ後で(漢字以外でとなると、「きをり」しか無い……)と気づきました。「きをり」を詠むのはかなりハードル高いですね。申し訳ない!


美杉しげり
 第8回俳句界賞受賞。数年前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。


毎月25日頃に、投句フォームにてお題句を発表します。投句締切は毎月末日。

疑似俳句対局投句フォームアドレス
http://marukobo.com/taikyoku/


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THE BEATLES 213 PROJECT


第12回
「 ループ! ザ ビートルズ 」

文 夜市


 7枚目のアルバム「リボルバー」からの5曲です。ライブバンドからレコーディングアーティストへと完全なる変貌を遂げたビートルズ。サウンドはもとより録音技術の面でも数多くの革新的な試みがちりばめられています。 


タックスマン

風死セリ5.75%俳句税  風十六九
 俳句を詠むのにも税金がかかるという恐ろしくもSF的な状況。よほどの自信作しか投句できないなあ。読み方は「ごーしちごぱーはいくぜい」でいいんですかね。

めなもみに垂れ目のギターひっついた  六没
 初めてアルバムの巻頭を飾ったジョージの名曲。しかしながら、かっ飛んだリードギターは実はポール。神がかり的なベースプレイともあいまって、さながらジョージ制作、ポール主演といった趣でもあります。

油照煉瓦造の官公庁  斎乃雪
一山に万の空蝉資産税  万穂


エリナー リグビー

弦楽に逝かれよ草の花揺れよ  ロックアイス
 ポールのバラードの中でこの曲が一番好きという人も多いのでは。二組の弦楽四重奏団による緊迫感あふれるストリングスサウンド。ジョンとジョージはバックコーラスで参加しています。

句会果て畳踏みゆく子規忌かな  久我恒子
 拝察するにあまり好成績の句会じゃなかったのかも。総じて日本的な光景を詠みながら、教会の前で米粒を拾うエリナー リグビーの世界としっかり響きあっています。

六月の花嫁を待つ生も死も  マーチン
宿命のストリングスや秋彼岸  暮井戸
寂しさのままに揺れ合い夕芒  時計子


ヒア ゼア アンド エヴリホエア

傍にいてただ傍にいて姫女苑    花伝
 どのパートも驚くほどに美しいコーラス。技巧を排しあえて稚拙な雰囲気も醸し出しつつ唄うポール。若いカップルを見守る姫女苑の季語が動きません。

乞巧奠ヒアゼアアンドエヴリホエア  暮井戸
 この曲名が12音で読み下せることにけっこうな感動を覚えてしまいました。乞巧奠は七夕関連の季語だそうですね。

秋の色相も変わらず愛の歌  立志
 相と愛の言葉合わせ。多用されるア行にア音の頭韻。なかなかにテクニカルな立志さんの一句です。

ここよりもすべてに花野雨やみて  井玉
ここもそこもどこもかしこも夏旺ん  れんげ畑


アンド ユア バード キャン シング

駆け抜けり緑雨のツインギターなら  ツバメ号
 この曲のウリは、何といってもジョージとポールによるノリノリのツインリードギター。「ホテルカリフォルニア」に先立つことちょうど10年、1966年のアルバムなのです。

三声でハモる守宮やドンゲットミー  ツバメ号
 「ノーウェアマン」などのテイストを受け継ぐジョンのメッセージソング。何もかもを手に入れた「歌う鳥」たちが未だゲットしてないものってなんだったんだろう。

歌とギター強く絡まる夏終わり  越境島
大切な音の聴こへぬ蝉時雨  明惟久里


トゥモロー ネバー ノウズ

くりかえし鳴く鳥なべて霧の中  きさらぎ恋衣
 ビートルズのサイケデリックサウンドの原点とも言うべきジョンの野心作。鴎の鳴き声のように聞こえるのはテープループで作成したファズギターの音だそうです。

野分だつテープループのダライラマ  ロックアイス
 ジョンは自分の声を、山頂から説教するダライラマっぽく採ってくれと言ったそう。はたしてそう聞こえますでしょうか。

蓮咲くやカモメたゆたうCコード  猫正宗
メメントモリ色なき風の渡る河  立志


第14回 兼題曲 ホワイトアルバム(ポール編T)
 バック イン ザ U.S.S.R
 オブ ラ ディ、オブ ラ ダ
 ブラックバード
 バースデイ
 ハニー パイ

 兼題曲を詠んだ俳句をお送り下さい。

専用フォーム http://marukobo.com/beatles/
専用Email beatles@marukobo.com
締め切り 9月20日


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100年俳句計画編集室セレクト

100年公募計画



掲載は応募締切順。
選者は順不同、掲載名は敬称略。
各公募情報の詳細につきましては、主催者発表の最新情報ならびに問い合わせ先でご確認ください。


第25回「壺の碑」全国俳句大会

主催 「壺の碑」全国俳句大会実行委員会
募集内容 【一般の部】当季雑詠未発表3句一組1000円。【小、中学生の部】未発表3句以内、投句無料。
宛先 〒985ー0835 宮城県多賀城市下馬3丁目7ー1ー1301 小松温美方 「壺の碑」全国俳句大会事務局
締切 平成30年9月1日(土)当日消印有効
 ※小、中学生の部は、平成30年9月20日(木)当日消印有効
選者 【一般の部】高橋睦郎、鈴木八洲彦、西山睦、高野ムツオ 【小、中学生の部】高野ムツオ、小松温美、熊谷山里
賞 【一般の部】特別選者賞(多賀城市観光協会長賞)、選者賞、他 【小、中学生の部】特別奨励賞=10名、佳作=若干名
大会 日時/平成30年10月14日(日)、場所/多賀城市文化センター小ホール
詳細問合先 電話022-365-0492(「壺の碑」全国俳句大会事務局)


第15回はぴかちゃん歯いく大賞

主催 一般社団法人 愛媛県歯科医師会
募集内容 愛媛県在住の方のみ応募可。「歯」または「口」に関する俳句。
宛先 〒790ー0014 愛媛県松山市柳井町2ー6ー2 愛媛県歯科医師会事務局「第15回はぴかちゃん歯いく大賞」係
締切 平成30年9月14日(金) 当日消印、発信有効
選者 夏井いつき
賞 はぴか大賞=5万円&音波振動ハブラシ「ドルツ」、優秀賞=1万円、ユニーク賞=ジェットウォッシャー「ドルツ」、団体賞=賞状
表彰式 日時/平成30年11月11日(日)、場所/テレビ愛媛ロビー
詳細問合先 電話089-933-4371(愛媛県歯科医師会事務局)


第22回 毎日俳句大賞

主催 毎日新聞社
募集内容 【一般の部】ならびに特別企画 金子兜太記念【いのちの俳句】は投句数無制限、1句につき1000円。【こどもの部】【国際の部】は2句まで、投句無料。
宛先 〒102ー0074 東京都千代田区九段南1ー6ー17 千代田会館5階 毎日新聞出版内「毎日俳句大賞」事務局
締切 平成30年9月23日(日)当日消印有効
選者 有馬朗人、井上康明、宇多喜代子、大串章、小川軽舟、小澤實、高野ムツオ、津川絵理子、夏井いつき、芳賀徹、正木ゆう子、石寒太
賞 大賞1名=30万円&記念盾、準大賞1名=15万円&記念盾、一般の部優秀賞2名=10万円&記念盾、一般の部入選20名=記念盾、ほか
詳細問合先 電話03-6265-6983(毎日新聞出版内「毎日俳句大賞」事務局)


第20回 NHK全国俳句大会

主催 NHK、NHK学園
募集内容 【自由題、題詠「天」】自由題2句一組2000円、自由題2句+題詠1句(計3句)一組3000円。海外在住者は1人一組まで、投句無料。【ジュニアの部】小、中学生対象。1人1句、投句無料。【飯田龍太賞】15句一組5000円。
宛先 〒186ー8001 東京都国立市富士見台2ー36ー2
NHK学園「NHK全国俳句大会」事務局
締切 平成30年10月1日(月)
 ジュニアの部は、平成30年9月10日(月)
 当日消印有効(海外在住者の応募は必着)
選者 【自由題、題詠】稲畑廣太郎、宇多喜代子、大串章、小澤實、櫂未知子、片山由美子、岸本尚毅、小島健、高野ムツオ、柳克弘、寺井谷子、夏井いつき、西村和子、坊城俊樹、星野高士、堀本裕樹、正木ゆう子、宮坂静生 【ジュニアの部】小学生=神野紗希、中学生=木暮陶句郎 【飯田龍太賞】稲畑汀子、宇多喜代子、鷹羽狩行
賞 【自由題、題詠】選者特選、秀作、佳作(各選者毎に自由題特選2句、題詠1句、秀作25句、佳作)、大会大賞 【ジュニアの部】団体賞、個人賞 【飯田龍太賞】飯田龍太賞、選者賞(各選者一組)
大会 日時/平成31年1月20日(日)、場所/NHKホール(東京都)
詳細問合先 電話042-572-3151(NHK学園「NHK全国俳句大会」事務局)


春夏秋冬笑顔まつやま福祉五七五《秋》

主催 松山市社会福祉協議会、マルコボ.コム(ふくし句会、ハイクライフマガジン「100年俳句計画」)選句
募集内容 福祉をテーマにした秋季の句を、専用フォーム(http://www.marukobo.com/egao/)より応募。
締切 平成30年11月4日(日)
賞 「松山トリコ」 大賞(松山市社協会長賞)1点=道後温泉湯玉トートバッグ、優秀賞3点=ブックカバー、入賞4点=紙の湯カードケース
詳細問合先 電話 089-921-2111(松山市社会福祉協議会)


第7回 星野立子新人賞

主催 公益財団法人 上廣倫理財団
募集内容 20歳以上50歳未満(応募締切時)対象。未発表50句。※別途「星野立子賞」(女性対象、刊行済句集を応募)の募集も有り。
宛先 〒248ー0002 神奈川県鎌倉市二階堂231ー1 「星野立子賞」事務局
締切 平成30年11月30日(金)※必着
選者 岸本尚毅、中西夕紀、星野高士
賞 星野立子新人賞2名(男女各1名)=賞状、記念品、30万円
詳細問合先 電話0467-22-9676(「星野立子賞」事務局)


夏井いつきの一句一遊

協力 南海放送

南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句宛先
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/

投句募集中の兼題
9月9日  漢字「胃」、月光
9月23日  江鮭、渋取

7月度「天」獲得句

雪渓
べんがらの一筋天へ大雪渓  テツコ


蚋膨る淋しき人の血は甘し  あいむ李景

かちわり
正午のサイレンかちわり置き黙祷  オルソ

漢字「井」
うぶゆせんれいひけししにみず井戸さらえ  七瀬ゆきこ

掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとにしたものです。俳句ならびに俳号が実際とは異なっている場合がありますのでご了承ください。


俳都松山
俳句ポスト365

協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/

8月の兼題
8月23日〜9月5日 無花果
9月6日〜9月19日 色鳥

7月度「天」獲得句

赤潮
赤潮を貫く雨の太きかな  星埜黴円

海の日
海の日のカーナビ恐るべく寡黙  蟻馬次朗


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鑑(み)るという冒険


映画篇 演劇篇

文&俳句 猫正宗


第七十一回
 『ハン ソロ/スター ウォーズ ストーリー』&『ヒロシマ 原爆詩集』

 『ハン ソロ/スター ウォーズ ストーリー』は、『S W』の大立者ハン ソロが、ルークやレイアと出会う前の若き日のお話。
 公開前から悪評粉々、興行収入も『S W』関連としては今一つな本作。私も鑑賞済みの編集長から幾度か「観た?」と問われながら、(経済的理由が第一ながら)なんとはなしに後回しに。不振の理由は色々分析されてますが、多くのファンが「俺のハン」を否定されることを嫌ったのでしょう。発表された作品、しかも『S W』程の歴史と広がりがあると、既に「作品はファンのもの」でもある。しかしながら、作り手がこう作ると決めてしまえば、所詮ファンには何の手出しもできないわけで、どうしても「俺のハン」を永久保存しておきたければ、観ない、もしくは観ても無視するという選択肢しかない。
 ところで、『S W』生みの親、ジョージ ルーカスは「作品は作者のもの」という立場。自分が気に入らなくなったシーンがあると何度も改変。改変前の作品の上映、流通、アーカイブへの保存も基本認めないという徹底ぶり。そんなわけで、『S W』第一作でのハン登場時、ならず者同士のいさかいで、相手が撃つ前にハンが発砲したシーンが、後に相手が先に撃つ/ほぼ同時に発砲と改変。ファンには『ハンが先に撃った(Han shot first)』として物議を醸しているのだが、本作にはそこに一つの答えを出すかのシーンが。ルーカス、もしくはルーカスフィルムがチェックしていないわけがないのだが……。ルーカスも丸くなったのか、あるいは、スピンオフゆえ目こぼしされたか。
 まあ、そんなことどうでもいい人にとっては、若干もやもやを残しつつも、ちょっと小気味いい、お手軽痛快(少し)ピカレスクアクション。『S W』を知らない人の方が純粋に楽しめるかも。とは言え『S W』の冠がなきゃ作られなかったんだよなあ。

親知らぬ銀河無宿の熱線銃

 『ヒロシマ 原爆詩集』(出演:まい、黒田美奈子、岩市莉歩、中林ゆき、高橋創、スオウアキラ、'18年8月12日、シアターねこ)は、主催のく☆すのライフワークとして6年目になる原爆詩集の朗読会。しかし、く☆すの鈴木恵美子氏が、より「命」「生きること」を考えるようになったとの挨拶通り、今回、題材は必ずしも原爆に限らないものとなり、それに伴いテキストには詩集以外のものも。読み手も増え、年齢層、人となり、表現法も多彩に。松山在住の舞踏家による舞踏も。
 継続が、その原動力である想いと意思が、新たな接合、接続を作り、そこに変化を生む。
 冒頭の挨拶ではこんなことも語られていた。戦争になれば罪のない人が巻き込まれるが、本当にみな罪がないのだろうか。私たち一人々々戦争にならないようにしなければならないのではないか、と。
 実際に大きな流れが起きてしまえば、個人でそれに抗することは難しい。この場であったこと、集まった人は、無力かもしれない。現実はいつだって容赦がない。それでも、私たちは流れが起こる前にできることをするしかないのだろう。

踊り続けよ例え手遅れだとしても


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今月の俳句カクテル

The HAIKU's Glass


文&カクテル 古川千栄子
協力 Riff


秋麗やカクテルグラスにあるくびれ  岡田一実

カクテルグラスは女性の美を表現し、秋麗なイメージはピオーネ。更にベースのウオッカとクランベリージュースを合わせてシェークすると品格のある甘酸味が口の中に流れ込んでくる。旬真っ只中のピオーネを是非ご賞味あれ。


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新聞記事に隠された俳句を発掘する

クロヌリハイク


黒田マキ


1枚の鶏むね肉 とシソ の 味 (2018年8月6日 愛媛新聞より)

ももクロが ぽむぽむと跳ね 夏になる (2018年8月6日 デイリースポーツより)

激動 の最後の夏に、第100回 (2018年8月6日 朝日新聞より)

1945年夏。 の朝 (2018年8月6日 日本経済新聞より)


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100年俳句計画 掲示板



テレビ、ラジオ

NHK 総合テレビ(四国四県域)
 「四国 おひるのクローバー」内 隔週火曜『夏井いつきのムービー俳句!』
9月11日(火)、25日(火)11時30分〜

TBS系列局 全国ネット
 『プレバト!!』
毎週木曜 19時〜
 夏井いつきが俳句の査定を担当

南海放送
 松山市政広報番組『大好き!まつやま しあわせ実り庵』
毎週火曜 20時54分〜21時(再放送:日曜11時40分〜11時45分)
 夏井いつきがナビゲーターとして出演

南海放送ラジオ
 『夏井いつきの一句一遊』
毎週月〜金曜 10時〜10時10分
 投句募集の詳細は「100年公募計画」のページを参照。

FMラヂオバリバリ
 『俳句チャンネル』
毎週月曜 17時15分〜17時30分(再放送:火曜7時15分〜7時30分)
投句募集兼題
「秋扇、雁渡し」…9月2日締切
「居待月、無花果」…9月16日締切
「冷ややか、色鳥」…9月30日締切
 WEB http://www.baribari789.com/
 mail radio@baribari789.com
 FAX 0898(33)0789
 投句には本名、住所をお忘れなく!
 「天」の句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。

 各番組の放送予定は変更される場合がございます。新聞やWEBなどで最新情報をご確認ください。


執筆

松山市『俳句ポスト365』
http://haikutown.jp/post/
 投句募集の詳細は「100年公募計画」を参照。

テレビ大阪俳句クラブ
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」(夏井いつき選)
 毎週日曜タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井いつき選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。
 裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。
 朝日新聞松山総局(〒790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。


イベント、講演等

道後俳句塾2018
9月1日(土)13時〜 俳句塾
9月2日(日)10時〜 吟行会
 松山市立子規記念博物館(愛媛県)
 講師…宇田喜代子、黒田杏子、夏井いつき
 申込受付は終了しています。
問合先 松山市立子規記念博物館友の会
電話 089(931)5566

神奈川21世紀の会 第116回講演会
 夏井いつき講演会「あなたも今日から俳人です」
9月5日(水)18時〜
 ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル(神奈川県)

第33回日本乾癬学会学術大会懇親会内
 夏井いつきミニ句会ライブ
9月7日(金) 20時頃〜
 松山全日空ホテル(愛媛県)

第38回広島県文化団体連合会文化講演会
 夏井いつき句会ライブ
9月8日(土)13時〜
 三次市民ホールきりり大ホール(広島県)
問合先 三次市民ホールきりり
電話 0824(62)2222

志布志市生涯学習講演会
 夏井いつき句会ライブ
9月9日(日)15時〜
 志布志市文化会館(鹿児島県)
問合先 NPO志布志生涯学習センター
電話 099(472)3050

国際観光文化フォーラムin道後
 記念講演「俳句を知れば世界が変わる」
9月13日(木) 講演は15時30分頃〜
 松山市立子規記念博物館(愛媛県)
 講師…夏井いつき

第39回日本公認会計士協会研究大会内
 夏井いつき俳句講評会
9月15日(土)15時〜
 リジェール松山(愛媛県)

夏井いつき句会ライブin滝野
9月17日(月 祝)14時〜
 滝野文化会館ホール(兵庫県)
問合先 (公財)加東文化振興財団
電話 0795(42)7700

SBC秋の講演会
 夏井いつきの句会ライブ
9月19日(水)13時〜
 キッセイ文化ホール(長野県)
 前売券発売 9月18日(火)まで。
販売状況によっては当日券の販売あり。全席指定 一般2000円、高校生以下1000円。
問合先 SBC信越放送松本放送局
電話 0263(32)3813
 
土佐女子中学高等学校
 夏井いつき句会ライブ
9月21日(金)13時〜
 土佐女子中学高等学校(高知県)

松山中学校、松山東高等学校 創立140周年記念事業
 創立140周年記念文化祭
 夏井いつき講演会
9月22日(土)9時〜
 愛媛県立松山東高等学校(愛媛県)

俳都松山×俳句ポスト50周年 〜秋高し俳句ポストの五十年〜
9月29日(土)13時〜
 松山市民会館中ホール(愛媛県)
 一部 トークショー(櫛部天思×夏井いつき)
 二部 俳句対局エキシビションマッチ
 申込受付は終了しております。
問合先 松山市 文化 ことば課
電話 089(948)6952

第114回 四国中央ふれあい大学講座
 夏井いつき句会ライブ
9月30日(日)14時〜
 土居文化会館(ユーホール)(愛媛県)
入場料
 大人1000円(当日1500円)
 高校生以下500円(当日1000円)
問合先 四国中央ふれあい大学事務局
電話 0896(28)6043


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鮎の友釣り


第242回


俳号 あるきしちはる


俳号について ほとんど本名。季語を俳号にすることに憧れていた時期もあったが、この俳号に愛着がわいてしまい変更予定は今のところなし。

前回…彼方ひらくさんへ お話していると柔和な印象のひらくさんですが、表現者として信念やこだわりを持って模索し続けている人。小説を書かれているひらくさんが俳句でどんな世界を築き上げていくのか、とても興味深い!

長男けいご 真面目で頑張り屋。優しい。乗り物、特に新幹線が大好き。発想を飛ばしたり比喩を考えるのは苦手で、体験したことや好きなものを素直に詠む。

次男たくみ 愛嬌よし要領よしの自由人。切り替え上手。動物昆虫恐竜など生き物大好き。フィーリングで詠むので幼児らしい可愛いポエムとなる。

次回…土井探花さんへ 客観写生を意識して句作していると「詩情はあるのか」問題にぶち当たります。「でもどういうのが詩情なのよ〜」と悩むとき、思い浮かぶのは探花さんの句の空気感です。美しくて豊かで、時にお茶目な探花さんの句が大好きです。



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告知



春夏秋冬(しき)笑顔
松山福祉五七五

主催
松山市社会福祉協議会
有限会社マルコボ.コム(ふくし句会、ハイクライフマガジン『100年俳句計画』選句)

協賛
株式会社 ラコッタ 社会福祉協議会賛助会員


福祉をテーマにした
夏の五七五
結果発表


会長賞
被災地の球児頼もし梅雨明ける  むつみ(松山市)

優秀賞
独り居の母の規律や雲の峰  藤ア由希子(福岡県)
立てぬ子の浮輪の中にある自由  斎乃雪(三重県)
百歳の母のおかわり夏燕  有瀬こうこ(大阪府)

入賞
じいちゃんの頑固が好きだ甲虫  蒼鳩(愛知県)
救助ヘリ待つ分校や虹の橋  矢野主税(松山市)
車椅子押して加はる端居かな  近藤久光(松山市)
夏椿わがまま言っていいんです  誉茂子(東温市)





JAZZ句会主催
ハイクライフマガジン『100年俳句計画』共催

NORIKO KOJIMA TRIO LIVE at JAZZ BLEND 2018

10月13日(土)
13:30 OPEN 14:00 START


参加費 3,500円(ワンショット付)
会場 白方ビル1階「JAZZ BLEND」
 松山市中央2丁目1238 井村歯科医院の久万川を挟んで東隣

ライブ終了後16:30ごろよりジャズ句会を行います。
最優秀句にはキム チャンヒによる俳画をプレゼントします。

お問い合わせ先
蛇頭 090-2828-8657 または 100年俳句計画編集室(キム





第八回 百年俳句賞

主催 マルコボ.コム
共催 朝日新聞社(予定)


既作新作を問わず50句の作品集を募集
締切は8月31日!

 百年俳句賞は、「百年後の未来に残したい作品を、私たち自らが作り、自らが選ぶ」というコンセプトで毎年開催しております。
 8回目を迎える今回より、今まで以上にオープンな俳句賞として新たなスタートを切ります。多数の応募お待ちしております。


募集要項

応募資格
 15才以上(高校生以上)の方なら、本誌購読の有無に関係なく、どなたでも応募できます。

応募方法
(1)Eメールでの応募の場合
  応募用のエクセルファイルに必要事項を全て入力し、Eメールの添付ファイルにして、応募して下さい。
  応募用ファイルのダウンロード先 http://50ku.marukobo.com/
(2)郵送の場合
  B4判四百字詰め原稿用紙に50句とその表題、俳号、本名、年齢、住所、電話番号を必ず明記して応募して下さい。

スケジュール 
(1)9月中旬より特設サイトに応募作品を発表
  作者名を含め全句を発表します。規定を満たしてない作品など応募作品全てを発表するとは限りません。
(2)10月、百年俳句賞選考会員(選抜)により予選審査
  予選審査にて最優秀賞候補作品を決定します。最優秀賞候補作品は、本誌11月号にて発表予定。
(3)11月、百年俳句賞選考会員により本選審査
(4)12月1日、百年俳句賞表彰式にて最優秀賞を発表

応募期間
 2018年7月3日(火)〜2018年8月31日(金)必着


 賞状および応募作品による句集20冊
 賞品句集は縦横135o、36ページとなります。句集は本誌付録などとして配布します。

発表
 本誌2019年1月号誌上(予定)

送り先
 〒790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
 有限会社マルコボ.コム
 月刊俳句マガジン『100年俳句計画』

 編集室Eメール 50ku@marukobo.com


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編集後記


キム チャンヒ

 8月に句集シングル『少年期』を上梓した。一年以上前から児童文学のような句集を目指し、コツコツと俳句を作り続けていた。今回急遽タイミングが合い出版が実現した。
 水仙が香る学校には行けない
 母親を泣かせる夏の夜をいつも
 黴の弾けて宇宙とは原色
 たとえ俳句であっても、心の内を世に晒すのは危険なことだと子供たちは知っている。ときには子供たちの気持ちを代弁し、ときには未知の世界に誘う、そんな句集になればと作ったつもり。
 松山では子供たちに俳句の作り方を教える機会は沢山ある。また、俳句を投句する機会も数え切れないほどあり、その中から優秀な俳句は何らかの形で評価される。それは、子供たちの側から見れば、俳句は作らされるものであり、いちいち評価されるものでもある。
 自分が子供の頃、漫画が好きで読みあさり、好きなキャラクターを描いては友だちに見せ喜んでいた。誰にやらされるわけでもなく、俳句を面白がってくれる子供たちを育みたい。それには、子供たちに向けた俳句を作ることや、評価に直結しない俳句作りの楽しみを伝えることも必要だと思う。やるべき事はまだまだある。


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次号予告


251号 10月1日発行予定

第21回俳句甲子園観戦記 & 俳句対局 第四回松山市長杯 第六回龍淵王決定戦報告



お得で便利なマルコボ.コム直販定期購読! 巻末の案内をご覧ください
お申し込みの方へ、毎月末頃に最新号を送料無料でお届けいたします!
(住所変更の際は必ず編集室までご連絡ください)

『HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画』は以下の書店でもお買い求め頂けます。

愛媛県
 明屋書店(一部店舗のみ)
 ゆらり内海(愛南町)
 原田書房(今治市)
 子規記念博物館(松山市)
 紀伊國屋書店松山店
 ジュンク堂書店松山店


HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
2018年9月号(No.250)

2018年9月1日発行

編 集 水谷雅子
    有谷まほろ
    松本昌子
    山澤香奈

編集長 キム チャンヒ

発行人 三瀬明子