100年俳句計画 2018年4月号(No.245)


100年俳句計画 2018年4月号(No.245)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


巻頭リレーエッセイ
鉄人


特集1
第七回 百年俳句賞 結果報告

第七回百年俳句賞 最優秀賞「囀のまなか」
矢野リンド


特集2
瀬戸内 松山 写真俳句コンテスト 結果報告



好評連載


作品

百年百花
 鈴木牛後/津田美音/中村阿昼/ふづき

新 100年の旗手
 石川焦点/久野はすみ

新 100年への軌跡
 俳句 樫本由貴/若林哲哉
 評  とりとり/亜桜みかり


読み物

美術館吟行/南行ひかる

Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳 朗善)

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

ラクゴキゴ。/らくさぶろう

mhm通信/若狹昭宏

近代俳句史超入門/青木亮人

鑑(み)るという冒険/猫正宗

クロヌリハイク/黒田マキ


読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画/桜井教人、阪西敦子、関悦史
 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/マイマイ
 100年投句計画 投句方法

短歌の窓/渡部光一郎

百人百様E-Haiku/菅紀子

俳句ポスト365

一句一遊情報局

疑似俳句対局/美杉しげり

THE BEATLES 213 PROJECT/夜市

100年俳句計画 掲示板

魚のアブク

鮎の友釣り



告知

編集後記

次号予告





巻頭リレーエッセイ



日常力
鉄人 

 なぜ走るんですか?
 と、よく聞かれます。
 若いときは未来への準備と言っていました。
 今は……
 走るコトが生活の一部だからと答えられる。
 だから近年、大きな怪我をしたときも走りながら直そうと思ったし、それがいたって普通だったから。
 毎日歯を磨くように
 毎日俳句を詠むように
 毎日走るんです。
 今はそれが習慣になり生活なんです。
 なぜ……
 愉しいから!
 好きだから続くんです。
 俳句と同じです。
 詠みたいから
 なにかを伝えたいから
 5 7 5に想いを込める。
 その気持ちが「日常力」
 生活習慣で病気になるなら、日常力で笑顔になれるはずと信じています。
 毎日を愉しむように生きる。


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第七回

百年俳句賞


結果報告


 百年俳句賞は、「百年後の未来に残したい作品を、私たち自らが作り、自らが選ぶ」というコンセプトで、毎年開催しております。
 今回の第七回百年俳句賞には、五十三作品の応募がありました。俳句集団いつき組組長夏井いつき氏と本誌編集長キム チャンヒによる予選審査を経て、作品の方向性の異なる七作品が最終選考に進みました。その後、二十八名による百年俳句賞選考会員の審査により、矢野リンドさんの『囀のまなか』が最優秀賞に決定しました。また優秀賞は、下記の通りです。
 今月号では、最優秀作品を付録の句集と共にご紹介し、次号より、優秀賞作品を掲載いたします。
 なお、来る4月1日に、松山市立子規記念にて表彰式を開催いたします。受賞の皆様のみならず、ご自由にご参加いただけます。

最優秀賞
「囀のまなか」 矢野リンド

優秀賞(エントリー順)
「しまうまとうみうし」 有櫛くらげを
「綺麗な波」 鞠月けい
「水の花」 此花 悠
「僕のカタチ」 日暮屋又郎
「黄色」 片野瑞木
「点景」 野風 

表彰式
日時 2018年4月1日(日) 午前10時
場所 松山市立子規記念博物館 視聴覚室


最優秀賞『囀のまなか』選考評抜粋
百年俳句賞選考会員


 対象の捉え方や語り口がユニーク。とても楽しく読ませていただいた。


 今回候補作の中で詩的な視線、俳句的な描写の技術双方において独自の世界観が垣間見え且つ最も佳作が多かった本作を2点で推したい。毎回当賞応募作については視野が狭く過去俳句作品への敬意のなさが問題だと思っていたが、この作品は過去俳句作品からの学びが多く取り入られているように感じた。
 一月の庭に大きな鳥が来る
田中裕明を思わせるような透明感で始めるのは魅力的。1句目は重要である。
 鰭酒やぽぽと押し込む燐寸の火
「ぽぽ」という俳句らしい擬音語を「押し込む」というオリジナルな感覚で受けているのも良い。
 薄氷を砕けば影の生まれけり
 菜種梅雨切り絵の蝶に囲まれて
 軽口を積み上げてゐるレタスかな
 蛍火の軌跡に始まりと終り
 あめんばう水面へ同心円の皺
 どれも「俳句らしい」良さがある。「俳句らしさ」に自分の息吹をいれられるか、という点が明暗を分かつところであるが、本作の作者は今後に期待ができる資質があるように思える。


 身の回りの出来事と季語と結びつけた、新鮮な感覚の句が多い。


 私の中では文句なく一位。冒頭「一月の庭に大きな鳥が来る」という大掴みなイメージの提示から始まって、「白鳥は眠るしづくの形して」「水鳥のこんがらがつてゐる領土」と独創的な比喩と飛躍で畳みかける。この3句ですっかり掴まれてしまった。
 また、「冬眠の星はあなぽこだらけかな」の「あなぽこ」、「葉牡丹の頭ポムポム叩きゆく」の「ポムポム」などの措辞も面白いし、「網かけて蜘蛛には帰る家がない」「蜻蛉生るたちまち空は立体へ」というような新鮮な把握もすばらしい。
 一方、「眠る子の睫毛の濡れて桃の花」「愛づる石探す子とゐる花曇」「乗れるだけ乗せて日焼の子を送る」という子どもを詠んだ句は、情緒に流されずしっかりとした俳句になっている。特に「二人ほど園児も生りて烏瓜」には園児と烏瓜を同一のものとして見るような視点があってとても楽しい一句。
 全体として瑕疵のある句も少なく非常に完成度の高い作品になっている。


 豊かな発想と生活の中の何気ないひとこまを俳句にしている。
 湯灌してもう湯冷めより自由なる
この発想に脱帽。句の並びも非常に上手く配されている。


 冒頭の鳥の句群から引き込まれ、一気に楽しく読めた。難しい表現を使わずに、明るく機知に富んだ世界を描ける方だと思う。


 全体に詩情のありながら、しっかりとした「私」がその中心にあり、また身体感覚の
表現に共感が持てた。句柄や句の型もバラエティに富んでいて、構成もしっかりしていると思った。特に好きな句は「白鳥は眠るしづくの形して」「春の雪奪ひきれない舌の熱」「秋風に眠れば魚になりゆくよ」「苦うるか奥まで使ひ切る味蕾」など、多数。


 この句群の中で特に惹かれたのは実感のある句。リアリティーのある句はやはり強いし、感動もある。
 鰭酒やポポと押し込む燐寸の火
 花を待つすべてのシーツひつぺがし
 花曇むんずと掴む鰹節
 差し入れる指に植田の生ぬるし
 色ごとに違ふ落葉の音を踏む
 苦うるか奥まで使ひ切る味蕾


 実感を伴う句群、その中に優しさや淋しさなどが垣間見られ、惹き寄せられる。
 一句一句の奥深さと詩性は抜きん出ていた。
 スペインの神父のために煮るセロリ
 眠る子の睫毛の濡れて桃の花
 象を駆り春駆け抜けて行くつもり
 さよならを入れる封筒花曇
 花種を撒く学校へ行けぬ子と
 夏蜜柑生まれなかつた子が二人
 乗れるだけ乗せて日焼の子を送る
 夕焼を待つためだけの椅子二つ
 満月へ尾を持つ者として跳ねよ


 丁寧に景が描写され、完成度の高い句が多く、読者を惹きつける。
 詩情豊かな句群の中に、俳諧味ある句がアクセントとなっていて楽しい。
 中盤で「花曇」四句を含んだ「花」に関する句が続いたことにより、構成に弛みが続いた点が少し残念である。
 水鳥のこんがらがつてゐる領土
 湯灌してもう湯冷めより自由なる
 馬の子の放す乳首の濡れてをり
 菜種梅雨切り絵の蝶に囲まれて
 蛍火の軌跡に始まりと終り
 空の膜たやすく溶けてさみだるる
 満月へ尾を持つ者として跳ねよ


 竹馬や父にも次郎物語
 春の雪奪ひきれない舌の熱
 アネモネは空を掴みてまた眠る
 まんまんと放電を待つ青葉かな
 繊細な感性と優しい心情が随所に表現され、そこから滲み出てくる温かみのある詩情は句の個性ともなっている。


 一読して作者の見た光景や考え方がすっと理解できる句が僕には多く、七作品の中ではひとつ抜けているとも思った。
 81句読み終えて、内容の多彩さなどからアルバムを見せていただいたような実感のある句に惹かれた。
 水鳥のこんがらがつてゐる領土
 鰭酒やぽぽと押し込む燐寸の火
 どこが口どこが肛門海胆へ波
 菜種梅雨切り絵の蝶に囲まれて
 赤い羽根囲み取材の真ん中に
 苦うるか奥まで使ひ切る味蕾
などの句がよいと思った。


 生活の喜び、悲しみもプラスのイメージと意志の力で、宇宙に生きていることを楽しみ、与えられ、そうして句が生まれている。
 蛍火の軌跡に始まりと終り
 待ち侘びし冷房の早やうとましく
 夕焼を待つためだけの椅子二つ
 網かけて蜘蛛には帰る家がない
 蜻蛉の群の真中にでくのばう
 囀のまなかは平和に満ち溢れている。


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第七回百年俳句賞 最優秀賞

囀のまなか


矢野リンド


一月の庭に大きな鳥が来る
白鳥は眠るしづくの形して
水鳥のこんがらがつてゐる領土
寒卵割り惑星の数増やす
冬眠の星はあなぽこだらけかな
噂より小さき猪降ろし来る
鰭酒やぽぽと押し込む燐寸の火
スペインの神父のために煮るセロリ
葉牡丹の頭ポムポム叩きゆく
恐竜の絵本毛布にくるまりて
石蕗の花見てゐる他は無き話題
竹馬や父にも次郎物語
湯灌してもう湯冷めより自由なる
風へ風重ねて夜の薄氷
薄氷を砕けば影の生まれけり
中年の危機はひたひた菊菜喰ふ
春寒の指は拳の中にある
春の雪奪ひきれない舌の熱
下萌の色繋がりてより速し
紅梅やお先にどうぞお姉様
啓蟄のパジャマのままの日曜日
どの子にも光る琴線土佐水木
春キャベツ抱へて帰るひとさらひ
パンジーを咲かせ書割めく家よ
どこが口どこが肛門海胆へ波
磯巾着ほらだんだんと眠くなる
眠る子の睫毛の濡れて桃の花
囀のまなか心臓めく野鳩
象を駆り春駆け抜けて行くつもり
馬の子の放す乳首の濡れてをり
花を待つすべてのシーツひつぺがし
火曜日の女ばかりの花見かな
花曇膝にまつはる静電気
花筏分けて真白き鳥の来る
愛づる石探す子とゐる花曇
花曇むんずと掴む鰹節
さよならを入れる封筒花曇
生まれくる誰にも花の記憶かな
琺瑯の白の水差しライラック
花種を撒く学校へ行けぬ子と
アネモネは空を掴みてまた眠る
菜種梅雨切り絵の蝶に囲まれて
夏蜜柑生まれなかつた子が二人
まんまんと放電を待つ青葉かな
空豆の一つは椅子の下にあり
軽口を積み上げてゐるレタスかな
差し入れる指に植田の生ぬるし
太陽は中段にあり立葵
獣めく雨の残り香蛍の夜
蛍火の軌跡に始まりと終り
地下にある水の王国夏木立
昨日入りし穴より蜥蜴太り出づ
待ち侘びし冷房の早やうとましく
乗れるだけ乗せて日焼の子を送る
あめんばう水面へ同心円の皺
空の膜たやすく溶けてさみだるる
帰省子の眠りへ落つる速さかな
夕焼を待つためだけの椅子二つ
海が意志持つ手始めの海月かな
遠雷や卵の殻の中にゐて
清潔に落蝉乾ききつてをり
網かけて蜘蛛には帰る家がない
蜻蛉生るたちまち空は立体へ
オクラ果てしなく実る逆縁の家
鏡には布掛けられて糸瓜水
スプーンへ掬ふ蜂蜜獺祭忌
蜻蛉の群の真中にでくのばう
赤い羽根囲み取材の真ん中に
二人ほど園児も生りて烏瓜
秋風に眠れば魚になりゆくよ
月光に影を貰ひてあばら骨
満月へ尾を持つ者として跳ねよ
後の月僅かに銀の混じりたる
青空のそこだけ静か昼の月
蛹へと芋虫溶けて行く準備
ヴィーナスの失くした腕の持つ秋果
その底にキリストの像秋の海
売人のやうだざざ虫手に入れて
村にある鍬製作所秋の雨
色ごとに違ふ落葉の音を踏む
苦うるか奥まで使ひ切る味蕾

矢野リンド
 1958年愛媛県松山市生まれ。転勤族の家の子供だったので、ほぼ二年ごとに香川と愛媛を行ったり来たりして育ちました。俳句を初めた頃の、自分の住んでいる世界をもう一度五七五で定義しなおす楽しさが、忘れられません。


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瀬戸内 松山 国際写真俳句コンテスト


結果報告

 去る2月3日(土)、松山市立子規記念博物館に於いて、国際写真俳句フェスティバル(松山市、松山はいく国際化推進委員会、朝日新聞社、朝日カルチャーセンター主催)が行われました。前EU大統領で松山市特別名誉市民のヘルマン ファン=ロンパイさんと俳都松山大使 夏井いつきさんによるトークショー、国際俳句交流協会会長 有馬朗人さんによる基調講演では、俳句の可能性について熱く語られ、観客を魅了しました。
 その中で、第7回となった「瀬戸内 松山国際写真俳句コンテスト」の表彰式も行われました。募集内容は、写真も俳句もオリジナル作品で応募の「日本語自由句部門」「英語自由句部門」、12点の課題写真にオリジナル俳句で応募の「日本語課題句部門」「英語課題句部門」の4部門。審査員は、【写真俳句】の提唱者でもある森村誠一さん(作家)、夏井いつきさん(俳人)、デビッド マクマレイさん(国際俳人)、山口亜希子さん(俳句編集者)、キム チャンヒさん(俳句マガジン「100年俳句計画」編集長)の5名。
 本特集では、全部門3568作品の応募の中から選ばれた各部門の最優秀賞作品4点と優秀賞8点をご紹介いたします。
 なお、その他入賞作品など詳しい内容は、ホームページにて紹介されています。

第7回瀬戸内 松山 国際写真俳句コンテストホームページ
http://matsuyamahaiku.jp/contest/


「海」をテーマとした日本語自由句部門

最優秀賞
子鯨を自由にさせて旅に出る  愛知県 宙のふう

優秀賞
わだつみや儀式のごとく鰯干す  イギリス 中原久遠
あいにくだがかかあは留守つぼ焼きで良かろうか  愛媛県 日暮屋又郎


「海」をテーマとした英語自由句部門

最優秀賞
the sea
silent as lips of men
sleeping in its depths
海静寂水底に眠る者等の口のごと
Mexico(メキシコ) Mel Goldberg

優秀賞
low tide
a child tiptoeing
across the clouds
干潮や爪先で歩く子雲横切りつ
Indonesia(インドネシア) Lucky Triana

white sand
left on the soap
marine cabin
白い砂石鹸についている船客室
Japan(日本) Jiro Oba


日本語課題句部門

最優秀賞
課題写真 熊本城(熊本県熊本市)
十年は城に短し緑さす  富山県 富山の露玉

優秀賞
課題写真 クリスマスマーケットと雪景色(ドイツ フライブルク市)
サヨナラの欠片が雪と化すドイツ  北海道 酒井おかわり

課題写真 広島城大菊花展(広島県広島市)
言霊をしづめてぽぽと菊かをる  愛媛県 渡部秀美


英語課題句部門

最優秀賞
課題写真 クリスマスマーケットと雪景色(ドイツ フライブルク市)
Christmas market
a little boy looks
for matching snowflakes
クリスマスマーケット同じ雪の結晶探し男の子
U.S.A(アメリカ) Ann Magyar

優秀賞
課題写真 博物館明治村 帝国ホテル(愛知県犬山市)
grand hotel
the loneliness
of tea for one
高級ホテル一人きりのお茶の淋しさ
Ireland(アイルランド) Roberta Beary

課題写真 道後温泉本館 神の湯(愛媛県松山市)
the bathtub
without those floating A, B, and C
short day
ABCのおもちゃ浮かべぬ湯舟や日短
Japan(日本) Emiko Miyashita


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美術館吟行


第41回

愛媛県美術館 所蔵品展 吟行会

取材協力 愛媛県美術館

文 南行ひかる


メインテーマ
「しずかなもの―静物画への視線」

 県美術館のメインの企画展は著名な作者の作品展が多いが、同時並行で開催の所蔵品は、著名でなくとも愛媛県出身の優れた作者の味わい深い作品が常時展示されている。ぜひ企画展と並行して鑑賞したい。今回の所蔵品展のメインテーマは「しずかなもの 静物画への視線」。事前に学芸員から次のような解説を受けた。
 「静物画は何の変哲もない日常の一角を切り取ったかのような絵画。しかし画家が室内で時間をかけて対象と向き合うため、その個性が際立ち、ものの見方、思考、技術が隠しようもなく表れる、実はおしゃべりな絵画」

 以下に作品と吟行俳句を紹介する。

 古茂田守介「静物(2)」(松山市出身)
静物は傷を隠して春の色  蓮睡
水差しに溜まりけり寒明けの水  恋衣
机上の空論みずからに酔って秋  日暮屋又郎
幾億の視線が描く冬暮光  猫正宗
霾ぐもり窓辺に古代臭の土器  ひかる

 古茂田守介「干魚」
反り返る干魚二匹涅槃西風  ひかる
パステルとコンテと箸と春隣  猫正宗
拷問のごとき干魚を春光に  蓮睡
万策の挙句の果てに干鰈  日暮屋又郎
ぎしぎし干す骨あからさま干鰈  マーペー

 古茂田守介「柿」
その中のひとつ渋柿あててみよ  恋衣
木守柿と知っての狼藉か  日暮屋又郎
影を生む葉の枯れかけた柿を置き  チャンヒ
余白に折り目守介のしわぶきか  蓮睡
弟の好んで食す熟柿かな  猫正宗

 古茂田守介「静物(1)」
こっそり瓶に仮想通貨凍返る  日暮屋又郎

 古茂田公雄「ほご」(古茂田守介の兄)
蠅のとまって誰のものでもないほご  チャンヒ

 古茂田公雄「カボチャ」
春夕焼甘く熟れたる宇宙船  吉井潤

 古茂田公雄「静物」
聖ニコライゆらめく春色の燭  吉井潤

 古茂田公雄「柿」
甘そうな渋柿描きまだ余罪  日暮屋又郎

 石崎重利「窓辺静物」
潮の香に負けじ秋の果匂ひたつ  マーペー
瀬戸内のレモン補色としての青  猫正宗

 石崎重利「砂上静物」
呼吸して魚は色を取り戻す  蓮睡
あきらめぬ瞳の鱶や砂の上  吉井潤
嘘だろと鮫のつぶやく浜白し  猫正宗

 吉田勝彦「コップに挿したシクラメン」
生きざまと死にざま模様シクラメン  ひかる
根を断たれしづかなものへシクラメン  マーペー

 吉田勝彦「ワイングラスに挿した春の野草」
手折られて気付かぬ春の野草かな  吉井潤
花は皆水を欲しがる春の闇  チャンヒ

 野間仁根「静物」(今治出身)
春宵の卓のピエロが踊りだす  恋衣

 中山巍「月と静物」
月光に晒し万物さめてをり  マーペー
動かざる春月玻璃に揺れており  ひかる
月光に焼きつけられし金魚たち  猫正宗


南行ひかる
各地に転勤、平成15年から今治に6年在住、いつき組員に。26年4月、俳都松山への移住計画を実現。


古茂田守介「静物(2)」
秋の水汲みて寂しき部屋となる  マーペー

古茂田守介「干魚」
あの世でも夫婦喧嘩ようららけし  吉井潤

古茂田守介「柿」
仙人のもぎたる柿を食はぬまま  ひかる


ご紹介した「しずかなもの―静物画への視線」展は4月2日(月)まで開催中。


次回吟行会 4月14日(土)
愛媛県美術館「開館20周年記念
没後40年 熊谷守一 生きるよろこび」展吟行会
(学芸員による解説を受けて作句します)
朝10時現地集合
参加費無料(入館料は別途)
事前に100年俳句計画編集室までお申し込み下さい。
TEL 089-906-0694


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大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠

百年百花


2018年度 第一期 第一回


凸凹
鈴木牛後

愛の日を牛の貪欲かぎりなく
春浅きからだ体よく飼ひ馴らす
陸封のわれら雪解を目覚めけり
雪解水人に濁りてまた澄めり
春雪のひかりつぎつぎ降り積もる
荒れし手を拳と呼んで雪の果
獣への愛を語りし春炉かな
残雪に凸凹のあり凸に鴉
亀鳴くや夕さり明日もあるやうに
先つぽを他人と思ふ朧かな
残雪の消ゆる間際の透けゐたる
春雪光手を触れさうに影と影

1961年生まれ、北海道在住。
第1回「大人コン」(現「百年俳句賞」)最優秀賞。句集スタイル「根雪と記す」「暖色」。
「まる裏」ではたいへんお世話になりました!


再現(ツァイチェン)
津田美音

斜に折る銀紙強き雪の果
息ひとつ吐き春星の中に入る
三人の数の重たき弥生かな
ジャングルジムに囚われている風船
春塵とロジンバッグと降板と
卒業のスパイク小石噛みしまま
臥して書く進退伺春の昼
春愁乳液瓶の不透明
子の留守の午後暮れやすき桜貝
永日の疲れを捨つる脱衣籠
演習の爆音近き三鬼の忌
再現と返し春燈影深し

香川県さぬき市生まれ、愛媛県松山市在住。
きっかけはRNBラジオ「夏井いつきの一句一遊」への投句。
その当時の俳号はピアノフォルテ。


春を走る
中村阿昼

さあ起きやう雀の声が春だから
ええ天気朝寝の目玉動かせば
生きてゐる足の温さも二月かな
魚は氷に買い物メモに歯磨き粉
ビデオ屋のフェンスの下や草萌ゆる
春炬燵大人の声の息子ゐて
紙風船ついて頑な十二歳
散る梅やかつて小さな遊園地
走れない日々も抱へて春を走る
はこべらや宮部みゆきの本重く
あたりめに春が好きとか嫌ひとか
梅散つて鳩行く前を向いて行く

1966年2月生まれ。「童子」所属。
句集『でこぽん』(マルコボ.コム)。
気が付けばアヒルになって20年たちました。


よく振って
ふづき

粥に落とすは立春大吉の黄身ぞ
囀や爪立ちて取るシャガール集
初蝶を射抜くひかりの矢とならん
殉教のたとえばリラを横抱きに
ヒヤシンス真白胸へ背へ聴診器
よく振って吸うステロイド梅の夜
蜜すくう匙春愁をくずす匙
夕東風や奥の間に袈裟たたまるる
ぴいぷうと豆腐屋新芽立つまちを
蜂の巣を払い屋根まで組む足場
土筆の胞子飛ぶや子犬のリード引く
星落ちて河口ふくらむ初桜

愛媛県松山市在住。
楽しく観戦したオリンピックが終わると、花粉の季節と百年百花の締切がどーんと待ち受けていました。
どうぞよろしくお願いします。


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読者投稿による3ヶ月連載作品集

新 100年の旗手


(2018年4月号 〜 2018年6月号 1/3回目)

焦点
石川焦点

若芝や光るセンバツ記念の碑
陽炎の揺れる奥射て一の黒
甘藍や歯形の美しき誘導馬
廃れたるプールへ刻む自己ベスト
銃口がオーデコロンを狙いおり
三伏や酢に浸したるダーツの矢
菊日和千秋楽の掬い投げ
ラグビーを裁く腕(かいな)の手話めきて
侘助や竜王戦の第五局
百敷の札から仕舞う歌留多札

 句ゼミ所属。俳句歴2年半。趣味はスポーツ観戦。俳句甲子園企画運営委員。第21回大会の応援よろしくお願いいたします。


旅鞄
久野はすみ

春虹や君の先端恐怖症
クレソンはサラダに夢は曖昧に
眼鏡踏むごとき悪口花ミモザ
パニーニの軽き歯ざはり春の波
めがねごとあいしたひとよ鳥曇
いつならば行ける海市のあたりまで
紙風船ポンと打つたび消えてゆく
旅鞄(トランク)はしまはれぬまま不器男の忌
春ともし指いつぽんのメヌエット
とめどなく噛みたくなつて亀の鳴く

 未来短歌会所属、「遊子」同人の歌人です。イメージでいうと短歌はナガレル、俳句はトメル。トメタイものは何だろうと思いながら詠みました。


2018年度 第2期連載者募集中
締切 2018年5月15日(火)

応募内容
2018年7月号に掲載できるタイトル付の10句

応募先
Eメール magazine@marukobo.com
件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
(郵送またはFAXでも受け付けております。詳しくは編集室までお問い合わせ下さい。)



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新 100年への軌跡


2018年度 第一期
第一回


酔ひの残り
樫本由貴

春来たるらし植込みが鳥に鳴り
料峭や波均しつゝ船来たる
浴槽の四方はまひるの余寒かな
菓子焼くに背のまつすぐや木の芽時
鳥雲に入る卵液のまだらなり
春二才バナナを口に塗りてけり
さへづり止みて黐の木をつらぬく陽
酒息や卒業までを数へだし
陽のすぢを蝶すぎ酔ひの残りをり
アイドルの写真張り替へ卒業す
卒業の畦の浅黄や酔ひ残る
ひとゝきは逆巻くあぶく雪解川
雪残る出雲やとほく牛を見て
鳥の巣のひとゝころ濃し芽ぐむ山
残る鴨をりひき汐の川のあを

樫本由貴(かしもと ゆき)
 一九九四年生まれ。広島県在住。「小熊座」所属。



若林哲哉

日暮してうすむらさきの焚火かな
白鳥に脚なきものと思ひけり
川底へ届く風なし枯葎
春を待つ手首をミサンガのひかり
くらがりに立てば二月の木のこころ
地球とは巨きな時計牡丹雪
どの梅も吾より低く兜太の忌
兜太忌を手とはつめたくやはらかく
竹林の夜を残雪のすきとほる
沈丁花うしろに鍵の閉づる音
春泥の匂ふ鞄や背負ひ直す
標識の傾いてゐる遅日かな
内股や交る雀を見るうちに
空を向くこと恋鳩は知らざらむ
残る鴨川のとろりとしてきたる

若林哲哉(わかばやし てつや)
 一九九八年生まれ。金沢大学人間社会学域人文学類在学中。
 「萌」、「奎」、「金沢大学俳句会」所属。



早春
とりとり

鳥雲に入る卵液のまだらなり  樫本由貴
 卵液のまだらが、鳥たちの帰ってゆく空を思わせて、面白い取り合わせでした。
春二才バナナを口に塗りてけり  樫本由貴
 春二才という言いかたに無理があるし、季語二つで成功しているとは言い難いのでは。「春のバナナ」としてはどうですか。日常のおかしみを韻文で表現する意図はいいなあと思います。
アイドルの写真張り替へ卒業す  樫本由貴
 もう気持ちは明日を向いている卒業の実感がお見事です。

どの梅も吾より低く兜太の忌  若林哲哉
兜太忌を手とはつめたくやはらかく  若林哲哉
 人が亡くなったとたんに忌日になるのでしょうか。よくわからないんですが、今は「兜太逝く」等のほうが実感がこもると思いました。
標識の傾いてゐる遅日かな  若林哲哉
 標識の傾くことと遅日には何の関係もないけれど、こう言われると関係があるような気がする。不思議な説得力がありますね。
残る鴨川のとろりとしてきたる  若林哲哉
 「とろり」がおだやかな光を反映して、春の実感が詩的です。

とりとり
 1957年生まれ。三重県在住女性。第1回選評大賞優秀賞。


浅き春を自由に   亜桜みかり

鳥雲に入る卵液のまだらなり  樫本由貴
 お菓子作りの過程で卵を割りほぐすことはよくある作業であり、鳥が渡る課程で雲に入っていく光景との響き合いがある。さらに卵液がまだらであるという描写が、簡単ではない鳥の渡っていく道中の不安も想像させる。
 「酔ひの残り」を詠み込んだ表題句とそれに関連した「酒息」「酔ひ残る」の句は、卒業と酔いを重ね合わせて作者の心を表現しているのだろうか。
雪残る出雲やとほく牛を見て  樫本由貴
 この句を含めた最後の四句は旅行吟だろうか。卒業旅行かもしれない。雪解川、鳥の巣、芽ぐむ山、残る鴨を見て、新しい人生の幕開け、そして俳句を傍らにした暮らし……次回以降も楽しみにしています。 

白鳥に脚なきものと思ひけり  若林哲哉
 水に浮かんだ白鳥の姿をじっと見ていて、ふとこんな風に思ってしまう。俳人の目だなあとまず感じた。
どの梅も吾より低く兜太の忌  若林哲哉
兜太忌を手とはつめたくやはらかく  若林哲哉
 先頃帰天された金子兜太氏の追悼の二句と読んだ。「兜太忌」を詠まずにいられなかった作者。「梅咲いて庭中に青鮫が来ている」という氏の句を下敷きに、あえて若い背の低い梅を詠んだのは、作者が未来へ歩き出す覚悟ととらえた。「手」はつめたくやわらかく詩を紡ぎ出すのだろう。
 使われた季語もさまざまで次回以降も楽しみです。

亜桜みかり(あさくら みかり)
 1961年俳都松山市生まれ。今治市在住。第2回、第7回、第8回選評大賞優秀賞受賞。第3回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞受賞。


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳 朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.57

Soft ground melting
Snow and old leaves
Dogs dig for tasty treats

やはらかき啓蟄の土掘る犬よ

(直訳)
柔らかく土は解け
雪と 落葉と
犬達はご馳走を探して掘る


 We are recovering from ski season, exciting but bruising. I hope we will both be more careful next winter. We are resting and taking medicine: modest amounts of hamburgers, pain pills, and champagne.

 僕達はスキーシーズンの興奮と痛手から回復しつつある。次の冬は二人共もっと気をつけたいものだ。今はひたすら身体を休め、薬を飲んでいる。ハンバーガーと、痛み止めと、シャンパンと、どれもほどほどに。


ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博(俳号 蛇頭)

第85話
ジェイ ウォーキン
ニールス ヘニング エルステッド ペデルセン


 「松山聖陵高校野球部センバツ初出場」を寿ぎ詠んだ句が悉く不発となりへこんでいたら、同マガジンの「THE BEATLES 213 PROJECT」へ投じた一句に主宰の忖度があったとの噂。その句は同紙面で日の目を見ることとなるらしい。経緯は微妙だが、同校同部所属経験者の筆者としては誠にありがたい。この勢いで是非とも甲子園初勝利も果たしてほしい。

名前書くだけで字余る蝿生る  南亭骨太

 と、無縁の話題からスタートしたが、今回のテーマ ミュージシャンの名前がやたら長い。これに元プロミュージシャンが食いついた。

春光を追跡すればペデルセン  マミコン

 最初で最後のペデルセン。その生音に接したのは1982年のこと。当時、北欧を拠点に演奏、音質ともに魅力的なアルバムを次々とリリースしたデンマークのレーベル「スティープル チェイス レコード」の看板ピアニストはケニー・ドリューで、その傍らには必ずと言ってよいほどペデルセンのベースが鳴っていた。この二人にエド シグペンのドラムとフロントにクラーク テリー(トランペット、フリューゲルホルン)が加わる豪華なユニットを招聘したのは、まだ俳号を持たない頃のマミコンさんこと堤宏文さん。会場は松山市内のアオノホールだった。

春深く密度の増してゆくベース  暮井戸
リラ咲けばウッドベースのよく歌う  チャンヒ

 ステージのペデルセンは腰痛が酷くてカウンターチェアに腰掛け、最初は一音一音を確認するかのように演奏した。カルテットの演奏はクラーク・テリーの華やかなプレイを中心に徐々にヒートアップした。一方、ペデルセンもベースソロの要所で3フィンガー速弾き超絶プレイを披露した。しかし、全体としてはバッキングの妙味で主張していたように思う。やはり腰の具合が影響していたのだろう。翌日、東京出張のため乗り込んだ僕と同じ航空便にペデルセン一行が乗り込んできた。しかも直前席に。これには驚いたが、さらにペデルセンが倒れ込むようにシートに腰掛けた。やはり。

地底より根太きビート地虫出ず  南行ひかる
菜の花は蝶にベースはメロディーに  猫正宗

 サイドメンとしてのペデルセンはデューク・ジョーダンやテナーサックス奏者のデクスター・ゴードン名義のスティープル チェイス盤で十分に堪能できるが、彼ほどのビッグネームだと、やはり本人名義のアルバムも聴いてみたい。今回のメインテーマ「ジェイ ウォーキン」は、よい意味でポップな雰囲気もあり作曲家としての彼のセンスが垣間見える初リーダー作。サブテーマ「ダンシング オン ザ テーブルズ」は、やはり彼のオリジナルナンバーが並ぶ煌びやかさとハードさを備えたアルバム。1970年代前半にマイルス デイヴィス グループのリード奏者として活躍したデイヴ リーブマンと、このセッションの後にマイルスに迎えられる新進気鋭のギタリスト、ジョン スコフィールドが参加しているペデルセン名義としてはスティープル チェイス最終作。


Today's Turntable
『ジェイ ウォーキン』1975年/steeple chase
『ダンシング オン ザ テーブルズ』1979年/steeple chase

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

次回JAZZ句会のお知らせ
4月15日(日)13時より、JAZZ BLENDにて。
テーマ ミュージシャンは女性ヴォーカリストのアーネスティン アンダーソンです。アルバムは「ユア ムーヴ トゥ スーン」をメインとします。参加希望の方は、本誌の句会カレンダーを参照してください。

このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU』vol.1〜vol.3(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ。


第八十五話
文、俳句 らくさぶろう


さくらんぼ
 ケッタイな噺ですわ(笑)

 芳という男が患っていると聴き、本人を訪ねた徳さん。
 顔を見ると特に病んでる風もなく、血色もいい。ただ、オジンの被るような頭巾みたいなものを頭につけているのが不思議。ワケを訊くと、「ワシが頭巾取ったら笑うと思うねん。取っても笑わんといてや」と言う。
 笑うはずがない、と答え実際に頭巾を取ってみるとビックリ、なんと頭のてっぺんから木が生えているではないか。
 なぜこんなことになったのか?
 一月ほど前、嫁のおばちゃんからさくらんぼがたくさん取れたのをおすそ分けでもらった。大好物だったので鉢いっぱいあったのをペロッと平らげてしまった。あんまり慌てて食べたものでどうやらその中の種の一つまで食べてしまったらしい。
 その呑み込んだ種が腹の中でじんわり芽を吹き出し、頭の皮を破ってドンドン成長し。ここまで大きくなってしまった、と。
 医者に診せても事例が無いので分からないと言われ、植木屋を勧められたので行ってみたが「植え替えることは出来るが、土台(頭)の方までは責任持てまへん」と言われ。とりあえずこのまま放っておくことにしたと言う。
 その後徳さんは何度か芳を訪ねるが桜は行く度に成長し、春には満開になり、うわさを呼んで「あたま山の桜」と評判が立って花見客まで来てしまう始末。
 これはいかんと、抜いてしまう決心をした芳。思い切って桜の木を抜いたのはいいが、そこに出来た大きな穴に水がたまり、池が出来てしまった。
 それがまたウワサを呼び、池の中で船遊びをする者、夏には花火をあげる者……。
 しかしそのさわぎも秋になると落ち着き、自分の身のふびんを感じる季節になってしまった。
 嫁さんに「何でこんな目にあわないかんのやろなあ。ワシの頭の上で毎年こんなことが繰り返されると思ったら……いっそのこと死んでしまおうと思う」と話していたら嫁も「あんたがそない思うなら私も一緒に……」と。
 夫婦、手を取り合って自分の頭の池へ、ドボーン!!

 すみません、あらすじをお読みになって、「なーんや、ナンセンスも甚しいなあ」と思った方と、「?????」とまだよくお分かりになっていない方がいらっしゃると思います。
 まあ落語というのは本来バカバカしいものですので、しょうがないといえばしょうがないのですが、この噺はバカバカしさの究極だと思われます。
 頭の上に桜の木が生え始めるというくらいまでは理解できます。が、それが花を結ぶぐらいまで成長し、人間が頭の上で花見をして宴会が……とまでなると、まず物理的なところで「?」と思い始める人が出て来ます。
 そして桜の木を抜いてそこに出来た穴に水がたまり池が……でパートUの「?」。で、最後に自分の頭の池に自分が飛び込む……というスペシャル「?」。
 しかし! これこそ落語しか出来ない技であり、ナンセンスであり。
 だからもしこの噺が寄席や落語会で出ても「そんなはずないやろ!」と怒らず、笑ってやって下さい。
 実際「そんなはずないやろ!」という事ばかり今の生活で起こっているではあーりませんか。
 さて、今年の大お花見大会、私はまたまた参加出来そうにありません。残念ですが別の場所で道後のほうに向かってグラスを差し上げておきましょう。
 乾杯!!

この花散っても実にならんよねえと母


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mhm通信


第85回
文 若狹昭宏


松山東高校合同練習会

 俳句甲子園に関わっている高校や俳人たちには大分耳に馴染んできたのではないかと思われる、俳句甲子園出場&優勝を目指す高校生対象(中等教育学校などで中学生の参加も可能)の練習会。以前から、愛媛県内全体の俳句力アップを目指し、愛媛県から優勝校や最優秀賞を出そうと、松山東高校が音頭を取って、俳句甲子園出場校に呼びかけて集まっている。四国全体も視野に入れ、高知の土佐高校が参加することもあった。近年は、その活動が高校文芸連盟の公式なものへと発展している。
 練習会の審査員として、mhm前代表のあねごさんを筆頭に、恋衣さんや鯛飯さんなど、有志の俳人たちが旗を上げていたのだが、しばらく前からはmhmの活動として、有志の審査員の取りまとめを正式にお引き受けすることとなったため、ここで改めて紹介したい。
 毎年、俳句甲子園の直前直後を除いて5回以上行われており、3年生が引退したばかりの新体制での参加や、「5人揃っていないけれど地方予選までには揃えるぞ」と部内外 校内外で混合チームを作って参加する高校、入部したばかりの初々しい面々での参加などなど。俳句の楽しさに触れる目的から、全国に通用するディベートを身に付ける目的まで、様々な想いの、様々な顔ぶれが集う。
 2月に行なわれた練習会では、「葱」「七日」「寒稽古」などの6つの兼題が出され、初めてその季語を使ったという声を沢山聞いた。多くが句作にもディベートにも四苦八苦している中、目を引いたのは松山西中等教育学校の日高隆介くん。練習会でも俳句甲子園でも活躍している彼は、試合の前の意気込みの段階で「まる裏俳句甲子園に参加し、全力で勝ちに行く高校生以外に、全力で楽しむ大人を見てきた。その経験を活かしたい」と、葱を抜いた後の穴の香りにまで着目する独創的な作風と、お笑い芸人の如き軽快な喋りで、チームの後輩だけでなく相手チームや審査員まで巻き込むようなパフォーマンスを行った。勝ち負けにそこまでこだわらない場だからかもしれないが、お互いの句の本質を認めた上で「助詞を変えたらどう変わるか、作者の立ち位置が変われば景がどう変わるか、この季語を選んだ際により適している言葉は……」と作者の本意に沿った句の形を楽しく模索していく姿は、教育の場でもある俳句甲子園という大会に望ましいものだと感じた。その時の俳句やディベートを細かく載せられないのが残念である。是非この新しい俳人が生まれる瞬間、成長を遂げていく瞬間を多くの俳人に見ていただきたいと思う。
 参加する高校も生徒も増加傾向にあり、20名ほど登録している審査員も足りていない状況であるので、これまで関わっていなかったが手伝うくらいならという方、興味があって見学だけでもという方、また、高校生におすすめしたい懐の広い俳人がいるという方は、是非ご一報いただきたい。
 さらに、小学生でも中学生でも、こういった俳句の集まりや講習会に参加したいが都合が合わない、近くに無いという場合は、何か協力できる体制を作っていきたいので気軽に問い合わせてほしい。


 mhmでは松山市内外問わず会員を募集中です。原則、毎月最終金曜日19時からマルコボ.コムにて定例会を行います。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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会話形式でわかる

近代俳句史超入門


第25回

 大学で俳句を研究する青木先生と、その教え子で俳句甲子園の出場経験もある大学生の俳子さんが雑談を交えながらの近代俳句史超入門。


飯田蛇笏 1 経歴

 青木先生と俳子さんが教室で話しています。

出自

青木先生(以下青) 大正時代の俳人シリーズ、ついに開始です。今回は飯田蛇笏さん! パチパチ。
俳子(以下俳) 番組を盛り上げようと空回りしがちな司会みたい……先生はいつも通り、覇気のない室内犬みたいにおとなしい方がステキ。それはともかく、蛇笏とは凄い名前ですよね。本名ですか?
青 中年の多感な心をえぐるとは、ひどい。蛇笏は俳号で、本名は飯田武治。山梨県境川村の大地主の長男で、明治18年に生まれました。
俳 地主というと江戸時代な感じですけど、明治時代にもあったんですね。
青 昭和戦前期までは多かったんですよ。飯田家は江戸期から数百年続く豪農で、名字帯刀を許された身分です。地元の名士ですね。
俳 土地持ちの御曹司。急にいい男に見えてきたわ。
青 また分かりやすい反応を……豪農の長男として生まれた蛇笏は自活しなくてよかった分、家を継ぐ宿命を背負わされた。それが彼の俳句にもよく出ています。

大学中退まで

俳 その蛇笏さんが俳句にハマッたのは暇だったからですか? 若隠居のような暮らしかしら。
青 というより、昔から続く豪農や庄屋は経済的に余裕があり、文芸好きが多いんですよ。飯田家もそう。蛇笏は幼い頃から父や村の人と句会に出たりしました。
俳 ほぉ……現代のお金持ちはゴルフや海外旅行に勤しむイメージがありますが、昔の財産家は風流ねえ。
青 飯田家のように、各地の有力者は俳諧や和歌、茶等の教養を身につけて江戸や京の文化人と交わり、芸術家を庇護する人も多かった。飯田家は俳諧好きだったらしく、蛇笏も早くから文芸に親しんだわけです。
俳 文化的にも恵まれた家庭環境だったんですね。
青 ええ。彼は早稲田大学まで進学しますが、当時は大部分が小学校卒業後に働きに出た時代。大学進学は成績優秀だけでなく、実家が高額の学費等を払えるかどうかが大きい。蛇笏は特権階級の秀才です。
俳 ご両親、鼻が高かったでしょうねえ。私の親なんて、「深夜に蓑笠姿で帰宅するのは心臓に悪いから止めなさい」とか小言ばかり。吟行で佳句を得るのがいかに難しいか、両親には分からないのよ。(愁いを帯びた顔で淋しそうに微笑む)
青 どんな吟行ですか……かっこつける前に事前連絡しましょうよ。ただ、蛇笏の父は子に政治家を目指してほしかったのですが、蛇笏は幼い頃から句を詠んだり、東京の早稲田大学英文科に入学して小説執筆や詩作に熱中……というので、一族は「家を継がないのでは?」と不安になったようです。
俳 何の役に立つか分からない文学にハマるインドア派は、社会不適合者の香りが立ちこめますよね。
青 まあ、蛇笏は中学時代にスポーツ好きで、腕力も強く正義漢だったらしいので、破滅型文学者とは違うかも。大学の時も周りはラフな格好だったのに、蛇笏はきちっと羽織姿で通学するなど真面目だったとか。大学生の彼は小説や詩を雑誌に投稿し、若山牧水と親交を結び、国木田独歩の『武蔵野』を愛読しつつ句作にも励むなど文学に浸る日々。
俳 文学三昧! 最高の若気の至りね。蛇笏さんも安酒を呷ってカフェに屯する芸術家気取りだったりして。
青 それは19世紀末に西欧で流行したグダグダな芸術家たちで、蛇笏は好きな浪曲を聞きに寄席に通う他は勤勉に文学に打ちこんでいたらしい。俳句方面では早稲田吟社に出入りし、その関係で高浜虚子と知り合い、俳諧散心に参加します。
俳 そこで虚子さんが登場ですか。散心? 俳諧で幽体離脱するんですか。
青 そう、夜中の密室に集い、蝋燭を立て集中しつつ席題で句を詠むうちに一人、また一人と魂が離れ……じゃなくて、夏の一ヶ月間、無休で一日数十句詠むという鍛錬会で、蛇笏は最年少メンバーでした。ところが……
俳 中年の虚子さんと青年の蛇笏さんが淡い恋心を抱き合ってしまった?
青 BL(※1)的な妄想を当てはめてどうするんですか。虚子は俳諧散心の最終日、俳句から身を退く宣言を突然して会は解散。翌年に蛇笏は大学を中退、帰郷します。蔵書全てを売り払って郷里に戻ったとか。
俳 ええっ、どうして?
青 実家に呼び戻されたのか、自分から戻ったのか、両方なのか。真相は分かりませんが、実家は蛇笏が東京の大学に進学する時から反対だったらしく、家を継ぐ関係で帰郷させられたのかも。その後、蛇笏は地元の女性と結婚し、飯田家当主として生涯を過ごします。

失意の帰郷後

俳 何だかかわいそう。蔵書を売り払ったというのは、心の闇が深そうですね。
青 文学者飯田武治は死んだ、今後は飯田家の長として生きる、という感じでしょうね。ただ、彼は家業や村の政治云々に加わらず、蔵にこもって読書をしたり、養蚕を始めたり、東京から蓄音器を買って皆に聴かせたりしていた……と、蛇笏の弟が回想していますね。
俳 それだけ見ると楽しい若隠居ですが、内心モヤモヤした気がします。
青 ええ、相当葛藤や悩みがあったようです。蛇笏の晩年、弟子が山廬(※2)を訪れて文学談義を交わすと、蛇笏は小説や詩の創作の未練を語り続け、「俺をこんな山中に呼び戻し、あんな家内をもたして」と不満タラタラなのを聞いた奥さんが、「どうせそうでしょうよ」と返したとか。その手の逸話がかなり残っています。
俳 生活には困らない、でもしたい事はできず、周りに共感者もいなさそう……人生、ままならない感じねえ。
青 ただ、蛇笏は虚子の俳壇復帰で救われたんですよ。虚子の居ない間も「国民新聞」俳句欄(松根東洋城選)に投句しましたが、蛇笏は虚子復活を聞くや東京にすぐ会いに行き、「ホトトギス」雑詠欄に猛然と投句を始めます。すぐ雑詠欄巻頭の常連となり、大正初期「ホトトギス」の最重要俳人の一人となりました。
俳 疑問があるんですが、蛇笏さんの中で「文学者/俳人」は違うんですか? 「ホトトギス」で脚光を浴びるほど俳句に打ちこむのは、立派な文学者な気が。
青 小説家や詩人が今をときめく「近代」とすれば、俳人は封建時代以来の古臭い宗匠や隠居の嗜み事という感じで、全然かっこよくないんですよ。蛇笏や虚子、子規も最初から望んで俳人になったのでなく、俳人の道しか残されていなかった……という消極的な選択。
俳 明治期は皆さんが小説家に憧れますよね。私は俳句甲子園時代から堂々と俳人ラブ! でしたけど。
青 だから彼らは俳句に冷静でしたし、「俳句」らしい先入観に縛られず、ルールを平気で破る傑作も詠めたんです。蛇笏は代々の豪農を継ぐ宿命を受け止め、都会の東京から土の匂いがする山村に戻り、一帯を治める長として自身を律し、謹厳さと責任感を全身に行き渡らせようと努力した節がある。彼は有季定型をゆるがせにせず、背筋がビシッとした句が多いのも、豪農の長男という宿命の重みと対峙するように戦いつつ、一生をその宿命に捧げた気迫が出ているためでしょう。言葉の重みや言外の空気感がとにかく凄いんですよ。村の生活で抑えられたマグマが句に噴出した感じで、触れたら火傷する感じ。
俳 昨日カラオケで歌ったB'zの「GOLD」は蛇笏さんのための曲かも。「火傷しそうな焦げついた体丸めて/ゆっくりと目を閉じよう〜」。さようなら、蛇笏さん。あなたのこと、一週間ほどは忘れないわ……。
青 いや、まだ句も紹介していないのに感傷的に終わらせようとしないで下さい。次回は、蛇笏俳句を実際に見てみましょう。
(続く)

解説
(1)BL=「ボーイズ ラブ」の略で、主にマンガ等で若き男達の同性愛を描いた作品。
(2)山廬=元々あった「草廬」を蛇笏風に言い換えた造語で、彼の家を指す時によく使われる。


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100年投句計画

選者三名による 雑詠俳句計画




先選者 桜井教人

 学生時代まで花束というものが好きじゃなかった。花は自然のままが美しいと思っていた。就職一年目教師になり中学一年生の担任をした。修了式の日に生徒たちから花束をもらった。とにかく嬉しかった。その時に初めて気づいた。花束は単なる花ではなく、贈る人の心の形そのものなのだ。二年後の卒業式ではクラスの生徒一人一人からもらった。その二年後の離任式では卒業生までやって来てもらった。送り出しても送り出されても花束をもらえるこんな仕事は他にはないと思っている。その仕事もあと一年となった。




紅梅や毘沙門坂の上の雲  喜多輝女
 毘沙門坂とは、加藤嘉明が松山城を築城した際、鬼門に毘沙門天を祀ったことに由来する。今はゆるやかな坂でしかないが、子規の「牛行くや毘沙門坂の秋の暮」の句碑もある。
 早春の紅梅を目前に、その向こうには春の雲が広がる。「毘沙門坂」から後半の「坂の上の雲」に展開した瞬間にこの句は時空を超える。
この場所で、正岡子規が、秋山兄弟が同じ紅梅、同じ春の雲を見ていたのだ。紅梅の匂やかさから新しい時代の転換が実に気持ちよい。




ジャム甘しコーヒー苦し受験宿  桂奈
 ジャムは甘い、コーヒーは苦い、一読当たり前なのだが、受験宿が出てきたところで、妙な安っぽさにシフトする。受験生のちょっとした苦さ切なさを客観的に表現する手法として秀逸だ。私の世代ならみんな共感。

靴底へ返る力の氷踏む  しのたん
 語順が実に巧妙。踏みかけた氷の反発を確かめつつ、なお力を込めて踏み込む。氷の厚さ、靴底の感触にリアリティーがある。特に中七の「返る力」の表現は見事だ。余分なことを読まない句はやはり力がある。

公魚を釣つてゐるのがスパイです  土井探花
 このタイプの句はまず季語を別の魚に替えてみる。鮭、秋刀魚、鮎……どれも成立しない。公魚の独特の釣り方、隠れようのない結氷湖上だからこそ生きる「スパイ」。読者はこの後の展開が気になって仕方ない。

台本のト書きにあつたヒヤシンス  天野姫城
 やられましたと言うしかない。意外な場所に花を置く句はよく見るが、この句の発想は次元が違う。季語の実体の有無が議論されるが「あった」とすることにより、このヒヤシンスはまさに目の前にあり問題ない。「ト書き」というだけの情報から読者それぞれが想像する場所にヒヤシンスは現れる。

九百の螺髪右巻き目借時  久我恒子
 「先生、あの頭にあるのは何ですか」「螺髪と言います」「いくつあるのですか」「約九百です。実は全部右巻きです」「仏様は眠いのですか」「いえ、そうではありません。半眼と言いますが説明は難しいです」のどやかな春のこんな光景が浮かんできたのは季語目借時の力だろう。




昭和の日籾殻敷きし卵かな  ちろりん
春の水とつぶやけばもうそれなりに  小木さん
薄氷光を放しつつ溶けて  斎乃雪
末黒野に生まれて小さきつむじ風  樫の木
ごふごぶとひと掻きごとに泣くな雪  テツコ
風信子数理科学科教授宅  小川めぐる
花冷や大きく双子と書く手帳  24516
効能は春暁といふ露天風呂  みやこまる
白梅やシルバーカーの試運転  えつの
星の底めくるがごとく山を焼く  緑の手


桜井教人(さくらい きょうと)
 1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回、29回俳壇賞候補。



先選者 阪西敦子

 しまった、またトイレットペーパーがなくて、ティッシュボックスを開ける、もう二週間。買い物を忘れないようにメモを携帯に貼っておこうとして、ずっと前に出したと思っていた封筒を見つける。出汁の顆粒を買うのもずっと忘れていて、毎日昆布と鰹節で取ることになる。別にいいのだけれど、今必要なのは丁寧な生活ではなくて、簡便な生活なのに。なのに本を買うのは忘れない、それどころか、読む時間が取れないとかえって本を買ってしまうのだ。




二ン月の嘴甘し実をつつく  ゆりかもめ
 二月、立春もあり、旧正月もあり、目には見えずとも、おのおののなかで胎動は始まっている。次の冬までの力を蓄えた体は、もしかしたら甘さを充満させているのかもしれない。実にもまた力が充実している。甘いのは嘴か、実か、区分のあいまいなままに、甘さが往来し続ける。その透き通った距離感もまた二月のもの。




凍雲や児は怪獣になるという  波野
 大きくなったら…という仮定は、いつ、しなくなるものなのだろう。バリエーションはさまざま、職業でも、家族でも、いろいろの選択のある中で、怪獣を選んだ子。凍雲さえその大望をとどめることはできない。

薄氷光を放しつつ溶けて  斎乃雪
 薄氷は溶けるもの、薄氷は光のもの、そんな当たり前のことを、一転させる「放す」。光を纏うのでもなく、放つのでもなく、吸うのでもなく、放し続けて、尽きたとき、氷も消えているのだろう。

満員の車窓にちらり春の虹  大槻税悦
 春は冬の終り、寒さも終わって日が差し、花の咲く開けた季節と思いがちだけれど、それは変化の激しい季節でもあって、それに体がついてゆけないこともある。満員電車のことに憂鬱な季節、虹の出現はそれだけで貴い。

菜の花を翳し少年登校す  さより
 怖いくらいに明るい菜の花、春の花の中でもその広がりと香りによって、存在感が強い。おそらくは本能的に少年はその一枝を手に取った。群れから持ち出された一本は、少年に影を作る。得意の武器を手に入れたような小さな旅出。

春霜の予兆の膝を通夜の隅  プリマス妙
 人の死を悼む通夜、死者の記憶と、普段会わない人との遭遇と、着なれない服と、座り馴れない畳、何度も気になるのは膝。その膝が、久々の地であっても霜が降りることを感じる。人間の必ずしも合理的ではない行動に、本当の感慨が表されている。




ジャム甘しコーヒー苦し受験宿  桂奈
野焼する男の影も野に焼かれ  風来松
寒木瓜の濡れたる色のうすく濃く  人日子
朧より女いでにしつかつかと  不耳男
紅梅や毘沙門坂の上の雲  喜多輝女
待春の浅黄の空や月痩せて  さより
風船や餃子パエリア参鶏湯  凡鑽
岬から風の残骸冬薔薇  柊 月子
木の芽みな太りて風を育てをり  彩楓
草焼くや息吹き返す池の水  あおい


阪西敦子(さかにし あつこ)
 1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。



後選者 関悦史

 金子兜太がついに亡くなってしまって、私にも関連記事の依頼がいくつか来たので、兜太との関わりを思い出しています。印象的だったのはまず、私の第一句集が宗左近俳句大賞にノミネートされたとき、選考委員だった兜太に「全部韻文じゃなくて散文だ、作者が目の前にいたらぶっとばしてやる」と公開選考会で言われたこと。後には兜太がやっていた秩父道場に講師として呼んでもらえたりもしたのですが。何もかもみな懐かしい。


特選

くまモン跳ぶイルミネーション春来たる  すみ
 その辺にある、いかにも現在ふうの物件や眺めを句にすると、あざとくなりがちなのですが、何となく許せてしまうのは「イルミネーション」が「くまモン」より後に来て、即物性に寄せているためでしょう。

春の雨私の街は繭の中  かのん
 雨の街が「繭の中」に思えるという見立てで「私の」の意味が、たまたま住んでいる場所というだけではない内面的なものに変化。上五下五とも「〇の〇」の形になると弛緩しやすいので、やや調整したいところ。

ジャム開ける用のなにかや冴返る  くらげを
 ジャムなどの固い蓋を開けるためのビン蓋オープナーのことでしょうが、正式名称にあまりなじみがない身近な道具への、ごく軽い疎外感が「冴返る」で出て、しかしそれもどうでもいいというルーズな詠み口の面白み。


並選

目を瞑り農の空腹春の雪  KIYOAKI FILM
呼気を手に受けるや春の化粧室  桂奈
出航は雷雨決行岩燕  中山月波
囀りや棚田に水の引かれをり  健次郎
歓声のリンクの隅にチューリップ  砂山恵子
花の香や中学カバン太き腕  レモングラス
風船売糸の束より選む色  ヤッチー
辿り来ていま冬落暉印度洋  柝の音
白亜紀も未来世紀も海鼠なり  藍人
とつぷりと磯匂ひたる春夕焼  出楽久眞
雪の原くぼみの黄色のほんのり  小市
それぞれの空のあるはず猫柳  しのたん
其其に風の記憶と化し樹氷  風来松
子雀のスポイトめきて糞温し  あいむ李景
冴え返る360度空のブルー  笑酔
ドングリころころいのちをつなぐ地へ  大阪野旅人
唄ふごと春手袋の指踊る  内藤羊皐
しらうをやしんのしんまでぴゆあなひと  明惟久里
ほとんどが平成生まれの初句会  ケンケン
草餅の香生薬研究室  ミセウ愛
新しき梁や立春大吉と  ひでやん
花は咲くにまかせよ散るにまかせよ  八かい
唸る軋む跳ねる春泥の四駆  風海桐
荒れる雪に逆らう気合生きる今日  みちこ
寒夕焼結願寺に身の染まり  鯉城
下萌や明日香石造遺跡群  笑松
鞦韆になだらかな風遊ぶ午後  蓼科川奈
大鍋を囲み憲法記念の日  すりいぴい
探梅や君と揃いのスニーカー  とべのひさの
春といふほかに眠れる訳が欲し  野良古
返し縫の跡ありありと春の昼  幸
山茶花の屑といへども掃かれたる  松田夜市
蛍光ペンでスニーカー描く春うらら  点額
しゃぼん玉に閉じ込めきれぬ青空  のり茶づけ
晝食と看板にある長閑さよ  暮井戸
春月や海の記憶に古代都市  久我恒子
納屋で生まれし猫の子に罪はなし  柊の花
猫の舌進めぬ先の春氷  和音
風早の万の足音春立てり  一走人
節分やお面をかじる一才児  ぴいす
雪卸喉が渇けば雪を噛む  テツコ
トランクに望遠鏡と春の夜  立志
歩行器の足取り軽し冬うらら  夏柿
人妻にペディキュアを塗る春の昼  24516
凍る橋手前で車は皆右折  青蛙
きんせんか機上の君を探す夜  薄荷光
薄紅梅たんすの奥のセーラ服  誉茂子
直千を追う騎手の鞭春疾風  次郎の飼い主
別々に食べる朝です寒卵  根本葉音
麗かや「金」と書かれた丸い絵馬  洒落神戸
大人なら秘密はまもるヒヤシンス  うに子
競艇に嵌る長女やヒヤシンス  ぐずみ
凍てし夜や倭王の墓の暴かるる  元旦
少しずつ長くなる夕麦を踏む  ぺぷちど
同じ海なれど建国記念の日  青柘榴
わらわらと町へ老人水温む  ゆりかもめ
マゼンタの光を見たり春来る  アンリルカ
明日から歩くと決める春一番  台所のキフジン
路地裏に見たきものあり西行忌  クラウド坂上
駅弁の蓋の米粒啄木忌  有瀬こうこ
桜押す百科辞典や女子高生  未貫
ヒール九センチの痩躯春寒し  遊人
欣然と枝張る霧氷深き空  哲白
春障子締めればクスクス座敷ぼこ  妹のりこ
躓いて転べば春の土匂う  空山
啓蟄や鴉餌なり落とし物  マカロン星人
春寒の上弦の月猫が駆けゆく  まんぷく
店先にしょんぼり白しシクラメン  坊太郎
厄を焼く煙に春の匂いかな  ミセスコナン


関悦史(せき えつし)
 1969年茨城県生。「翻車魚」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。2017年第二句集『花咲く機械状独身者たちの活造り』、評論集『俳句という他界』刊行。共著『新撰21』『俳コレ』他。


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100年投句計画

自由律俳句計画



 ついに設楽悠太選手が16年ぶりにマラソン日本記録を破って、日本陸連より報奨金1億円を手に入れた。「オレこんなしんどいマラソンやめて、この1億円で商売やります」なんてなことを今のところ設楽選手は言ってないけど、そんな考えはアタマをよぎらないのだろうか。次のマラソンでさらに自己記録を更新して日本新なら、また1億円だろうか。こんどこそマラソンやめてこの2億円で……こんな不純な妄想やめとこ。




春の雁あんた出遅れたんやな  蓼科川奈
 「非は常に男が負ひぬ帰る雁/加藤楸邨」という句を思い出す。日本で冬を過ごした雁は、春にはまたシベリアとかアラスカの北へと帰って行く。ほとんどの雁が旅立ったのに目の前でうろうろ取り残されたようにいる雁は、ひょっとして何かの非を負うた雁なのかもしれない。事情はわからないが出遅れてしまった雁への視線が人間味に溢れている。既存の俳句を超えた独特の口語感が、なおさら雁との距離を縮めています。こういう口語感を一行詩的ととらえ通常の自由律俳句と一線を画す結社や俳人もいるが、自由律俳句に対する思考が狭量なだけだ。話はそれたが、目の前の雁に「あんた」呼ばわりが意表を突いて秀逸。




君の告白微炭酸  有瀬こうこ
 炭酸ではいかにも刺激的で強すぎる……いまや数々のソフトな「微炭酸」系飲料の出現で市民権を得た「微炭酸」という言葉。いかにも初々しい青春の告白を、みごとに言い得ている。君の告白を、微炭酸の一語でおさめてしまった軽さも青春らしい。

誰も研がない氷柱が黙って尖る  鈴木牛後
 「誰も研がない」は人間の視点。「黙って」は氷柱の視点。二つの視点を交差させて複雑にもならず成立している。単なる氷柱が尖っているという単純な現象が、ひとつの物語に膨らんだ。テクニックというのだろうか……。

寄書きははしっこが好き  うに子
 共感する人は結構いるのではないかと思う。できれば真ん中に堂々と書きたいタイプの人もいれば、揚句のように静かな思いをさり気なく、という人もいる。冷静に考えれば自己愛かもしれないけど。

宇宙船めく栄螺から宇宙人めく栄螺  風来松
 栄螺のカタチを宇宙船とみただけでは、やや強引すぎて稚拙感はあるが、引っ張り出したその中身を宇宙人とたたみかけた執拗さが、妙なインパクトを生んでいる。宇宙船に醤油垂らしたのかな……。

ましゆまろには明るき春陰が  緑の手
 マシュマロの考察……という俳句。「春陰」とは、春にあって憂いを帯びた陰りとある。あの白いポヨヨンとしたマシュマロに、春陰、それも明るい春陰を見て取ったその感性に感心する。マシュマロがましゆまろなのも、俳味があります。




春色のパンケーキ弧のいびつ  出楽久眞
通り雨と一緒に歩いている  小市
また同じ色のセーターを買う  のり茶づけ
ひとり剥く冬林檎赤すぎる  和音
宣誓のように立つ猫の尾  樫の木
石のベンチさっきまで誰かいた  ちゃうりん
琥珀の中の浮遊感  誉茂子
短針は長針に追いつけず  洒落神戸
新聞紙広げれば猫が来て  ゆりかもめ
雪の降る日の鉄格子  遊人


並選

ヒカリゴケ隠す翠玉月光に暴かるる  冬のおこじょ
寒き手を湯に漬けし夜  KIYOAKI FILM
薇の三角関係を断ち切る  中山月波
推敲重ねて駄句  健次郎
合格の知らせ待つ間も数独開く  レモングラス
深呼吸して田螺鳴く  ヤッチー
鍋焼きうどんが昨日で終わっていた  柝の音
ありありと在る蜃気楼  藍人
カーブミラーの焦点研ぐ紅椿  内藤洋皐
イルクーツクマイナス五十度なので休校  ちろりん
冬ごと復路で河童に越され  明惟久里
塩鱈を甘く含める飯  人日子
初特選の祝杯上げる一月尽  ケンケン
二匹目の猫の子の目が開く  きさらぎ恋衣
龍も欲しがる佐保姫のチョコレート  八かい
一人で冬の蚊を見てゐる  鯉城
あっと思う春の水  小木さん
また隣でカレーうどんを  くらげを
ささくれに泣く  幸
窓越しの陽のてなずける犬  点額
雨水てふ日の雨のあたたかや  喜多輝女
花あれば花の中に入る  暮井戸
南こうせつ好きの母は硬派  一走人
姫の御門へつづく小径に椿つばき  さより
鐘霞む環海へ軽やかに  立志
カスタードクリーム好きで寝坊助で  小川めぐる
ボッティチェリの女神も朝寝  24516
産もうが産むまいが冷たき内診台  薄荷光
ヤフオクで買ったと涅槃図ひけらかす僧  凡鑚
わたしの目ばかり蛙借りていく  プリマス妙
春暁をつれて逃げる矢切の渡し  みやこまる
神々の疲れ春遅し遅し  ぐずみ
ほとほと疲れ果て余寒  元旦
地域を耕せ誰にでもくる春はくる  ぺぷちど
歩く雲雀を立ち止まり見届けん  青柘榴
春の朝一杯のお茶に茶柱  彩楓
まないたの人になりたいけど  台所のキフジン
フラフープ土星は時々輪を落す  妹のりこ
空を見上げている春のあくび  多満
へこたれて眩しき春の海  空山
銀粉はベッドの下妖精は鱗粉纏う  マカロン星人
へっ俺は梅など見ぬわ唯眠むいだけ  まんぷく
車売られて籠の鳥  坊太郎
春一番吹いたベレー帽飛んだ  ミセスコナン
小松クン作業用紙に反省文  小松慎吾


自由律で再挑戦を!

孵そうに抱えこみけり寒卵  ねもじ
うす目あけ猫が見ている盗み酒  大阪野旅人
きな臭き基地に数多の火打石  大阪野旅人
梅の花旧道に沿ふ寺二つ  みつよ
白梅に吊されてゐる落し物  みつよ
春の日のなんじやもんじやの樹の由来  あおい


きむらけんじ
 1948年生まれ。第一回放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。


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100年俳句計画

詰め俳句計画



 半年間のお休みを頂きました。体調が悪いのではと心配して下さる方もいて申し訳なかったですが元気です。結構激務なので時々お休みを下さりませ。香奈ちゃんありがとう。またよろしくお願いいたします。


今月の問題
次の(  )の中に共通する春の季語を入れてください。

スカラベの尻高々と(   )
(   )チョコの卵の中もチョコ


スカラベの尻高々とバレンタイン
バレンタインチョコの卵の中もチョコ
 喜多輝女さん。歳時記に記載してある季語は「バレンタインの日」あるいは「バレンタインデー」。「細かいこと言うなよ」と私も思うのだが「歳時記を開けば誰でも解ける」のコンセプトに従い粛々とルール違反を摘発せねばならないのが立場上つらいところ。季語を短縮した季語アレンジとして捌きます。前句、糞を転がすスカラベの姿勢の可笑しみが意外とバレンタインデーと合う。後句、「バレンタインチョコ」と繋がってパワーアップ。手紙とかじゃなくてさらにチョコが入っていたというオチも面白い。1級(-1)。久我恒子さんは茎立時。私の調べた限りでは茎立という季語はありましたが、茎立時は見つかりませんでした。前句、茎立とスカラベの取合わせは立体感がある。後句も季語がウキウキしている感じでナイス。4級(-2)。載せている歳時記があったら教えてください。人日子さんは山覚める。春の山は「笑う」んだよと書こうと思ったら、ナント私が初めて買った歳時記に載ってました。ここで捌いちゃいます。前句、動きがあっていい。後句も中のチョコが目覚めるようで面白かった。1級。

スカラベの尻高々と染卵
染卵チョコの卵の中もチョコ
 ねもじさん。前句スカラベの転がす糞とイースターエッグが重なって何とも嫌な感じ。後句、ナンセンスな卵の重ね方は好きではあります。6級。KIYOAKI FILMさんは残る寒さ。この字余りは前句「高々と」のあとなので腰砕け感があります。後句、余寒と同じでチョコも持て余しているのだろうか。4級。

スカラベの尻高々と涅槃西風
涅槃西風チョコの卵の中もチョコ
 鈴木牛後さん。前句、復活の神とされたスカラベと浄土を思わせる風とは合うような合わないような……。後句、フレーズの滑稽味とは合わない気がする。5級。凡鑽さんは朧月。前後句とも丸いものと合わせるのは面白い。前句、「高々と」に対して「朧」が勿体ない気がする(後出の春の月や春満月と比較されたし)。4級。藍人さん、ミセウ愛さん、きさらぎ恋衣さん、ゆりかもめさん、彩楓さん、空山さん、マカロン星人さんは風光る。前句、季語のおかげで清々しい光景に見える。後句も少し浮き立つような心情が出ているか。3級。くらげをさんは桜東風。前句に彩りが加わって良い味。後句も爽やか。1級。

スカラベの尻高々と豆の花
豆の花チョコの卵の中もチョコ
 冬のおこじょさん。前句きれいな取り合わせ。後句もほのぼのとした味わい。ほろよいさんのふきのとうも同様。しかし何にでも合ってしまうというか……。4級。とべのひさのさんは鳥交る。前句「高々と」が前後に係っているようにも読めてそれをどう評価するか。後句チョコの卵がそれ自身で繁殖しているようで可笑しい。3級。ちゃうりんさんの木の芽時は後句、この季語のちょっとそわそわする感じがフレーズと合っている。同じく3級。妹のりこさんは木の芽晴。「晴」としたことで前句の「高々と」が前後に係ってきてそれも良さそう。2級。小市さんはしゃぼん玉。これも前句「高々と」が前後に係る感じ。丸いもの尽し。同じく2級。

スカラベの尻高々と夢見月
夢見月チョコの卵の中もチョコ
 洒落神戸さん。陰暦三月弥生の傍題。ロマンチック過ぎる言い回しの季語で合わせるのが難しいが、後句は割と「夢」っぽいかも。4級。レモングラスさんは冴え返る。かっこいい季語だがフレーズがやや滑稽味があるのでどうか。同じく4級。遊人さんはあたたけし。こちらの方が前後句ともほんわかして好き。2級。桂奈さん、瑞木さん、次郎の飼い主さんは四月馬鹿。一走人さん、天野姫城さんは万愚節。フレーズに滑稽味があるのでこの季語はよく合う。1級。柊 月子さんは弥生尽。「弥生」から桜が連想されるのでそのやや狂騒的なイメージがフレーズと合う。同じく1級。

スカラベの尻高々と春の土
春の土チョコの卵の中もチョコ
 みやこまるさん。ここから「春」の方々。「土」は前句実感はあるが付き過ぎか。後句も「土」が私にはピンと来なかった。4級。小木さんは春愁。私はこのフレーズから「愁」とはならないのだが、人生色々あります。同じく4級。八かいさんは春の夢。前句はせっかくの面白い景が「夢」と言われて少しがっかり。後句は「夢」に逆にリアリティー。同じく4級。夏柿さん、根本葉音さん、うに子さんは春の星。前後句ともかわいらしい。3級。内藤羊皐さんは春夕焼。前後句ともに美しい。同じく3級。斎乃雪さんの春の空もさりげなくて好き。同じく3級。健次郎さん、出楽久眞さん、ひでやんさん、笑松さん、24516さん、幸さんは春の昼。前後句とものんびりした気分が出ていい。2級。大阪野旅人さんは春の虹も美しい。同じく2級。ちろりんさんは春の雲。雲もスカラベも漂泊していくのだろうか。同じく2級。しげこさんは春きざす。春に動詞がくっつくと句に流れが生まれる。ただ、昆虫が動き出すには季節的に寒すぎるか。同じく2級。童夢2世さんは春動く。春きざすの傍題なので同じ季節だが、「きざす」よりも前句寒い感じがしない。後句もチョコが生き物のように動いている感じがして好きだった。1級。のり茶づけさん、明惟久里さんは春深し。青柘榴さんは春愉し。「深し」はしみじみとした感慨。「愉し」はストレートで力強い。同じく1級。坊太郎さんは春祭。前句、祭とスカラベの営みの対比。後句、さもありなんのお祭り感。同じく1級。

スカラベの尻高々と春の月
春の月チョコの卵の中もチョコ
 誉茂子さん、プリマス妙さん、元旦さん、あいむ李景さん、蓼科川奈さん、立志さん。樫の木さんは春満月。「春」の柔らかさも「月」の丸さも前後句ともピッタリ。そしてかっこいい。初段。野良古さんは四月来る。「四月」の桜やら万愚節やらの浮き足だった感じが前後句に合う。特に前句「来る」のが4月だけでなくスカラベのその姿勢も一緒にやってくるように読めて良かった。同じく初段。中山月波さんは山笑う。山を擬人化した季語で愉快。特に前句「高々と」が「笑う」に係って爽快。二段。


今月の正解

スカラベの尻高々と復活祭
復活祭チョコの卵の中もチョコ
 ジュミーさん、すみさん、笑酔さん、河原撫子さん、すりいぴいさん。砂山恵子さん、ヤッチーさん、矢野リンドさん、猫楽さん、小川めぐるさん、薄荷光さんはイースター。古代エジプトではスカラベは再生や復活の象徴として崇拝されており、前句そのイメージを重ねてみました。後句、卵はやや付き過ぎでしたか。1級。


解答募集中!
次の(  )の中に共通する夏の季語を入れてください。

脚組めば軋む(   )のソファ
(   )その日輪を毀す波

このコーナーは『新日本大歳時記』(講談社)を参考にして、選者が勝手にランク付けをしています。
新しい季語などを投稿される際は、歳時記、季寄せ名を併せて明記していただけると助かります!

4月20日締切
結果は6月号に掲載


マイマイ
 2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回百年俳句賞(旧大人コン)優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。宇宙と生命を題材に詠んだ句集『宇宙開闢以降』マルコボオンラインショップにて発売中。


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100年投句計画 投句方法



雑詠俳句計画
自由律俳句計画
詰め俳句計画

 「雑詠俳句計画」では、寄せられた投句を一括して、各選者が選句します。各選者に宛てて個別の投句を行うものではありません。

6月号掲載分締切 4月20日(金)

投句方法

 投句先コーナー名
 俳号(無ければ本名の名前のみ)
 本名
 電話番号
 住所

 以上の必要事項を書き添えて、編集室「100年投句計画」係までお寄せください。メールの場合は、件名を「100年投句計画」としてください。
 「雑詠俳句計画」「自由律俳句計画」はそれぞれ2句ずつまで投句できます。また、「詰め俳句計画」は季語1つのみを投稿できます。
 各コーナーの投句は、ひとつにまとめて送っていただいても構いません。

メール宛先
magazine@marukobo.com

投稿専用ページ
http://marukobo.com/toukou/

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(「俳句ポスト365」のページ参照)


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短歌の窓


選者
短歌誌『未来』会員 渡部光一郎


特選

海にほふ夜のシンクにかさこそと砂を吐いては浅蜊も泣いて  きさらぎ恋衣
 とってきた浅蜊に砂を吐かせる夜のシンク。ときどき殻ごと動く音がする。まことにアサリを漬ける入れ物はちいさな海である。初句の「海にほふ」はインパクトがあるが、結句でこの歌の評価はわかれるだろう。特に「泣いて」の言いさしがポイント。


並選

帰りたき思いつのりて本籍をすらすら言いし認知症の母  幸
 なぜか認知症になると、「帰りたい」という人が多いのが不思議であり、また悲しいことである。

最後なる言葉「テレビを消してくれ」まさかの別れ父と私の  幸
 「テレビを消してくれ」がまさか父親の最後の言葉になるとは。事実の重み。この歌には後悔の念も含まれているかもしれない。


コメント

動画では臭も重さも伝わらぬ瓦礫撤去のボランティアかな  明 惟久里
 きっと現場はそうなのだろう。震災だけでなく、伝わらないことばかりの「現場」を我々は生きている。

終わりなき介護に心折れる時「公子ガンバレ」声にしてみる  ミセスコナン
 「公子ガンバレ」と声にして、自分を奮い立たせる。「終わりなき介護」が重い実感。

南国と呼ばれる伊予の宇和島に雪積む里の在るを知らずや  藍植生
 全国各地、なんともよく降った冬だった。松山でも降った。まして実は寒い南予にはもっと降った。他県のひとには伊予は雪が降らないところだと思われていることだろう。

狼は弊衣蓬髪無帽なる独り旅とて切り通し往く  暮井戸
 弊衣蓬髪とか、バンカラとかはもう死語になってしまった。それでも「狼」でありたいと思う人はいつの時代にも絶えることはないだろう。作者もそのひとりだ。ひとりで切り通しを抜けて旅を続ける。

コンタクトレンズをはづす午後十時自分にあらぬ自分あらはる  出楽久眞
 コンタクトをはずしたら鏡にうつった顔が自分ではないように見えたということだろうか。少し分かりにくいかもしれない。あと、「午後十時」にはどんな意味があるのだろう。

祝金婚と大どら焼きの金の文字メダルのやうに抱へて我ら  だりあ
 大らかでユーモラスな歌。どら焼きに金の文字を入れてくれるところがあるのだろうか。なかなかイキなはからいである。あらためて言われてみれば、金婚をむかえるというのは、まさに人生のメダルを手にするということだなあ。

甘やかに髪香らせて乙女らの闘つてゐるRPG  久我恒子
 初句から四句まで、何をしているのかと思えばRPGだったのでずっこける。なお評者は現在までRPGというものを一回もしたことがないのであった。

師と仰ぐ卒寿の人の亡くなりて二月某日まる一年になる  一走人
 ある歌人が、「いつまでもあると思うな師の歌会」という狂句?を作っていたがほんとうにそのとおりだと思う。評者もそういうひとを失ってきたし、これからもうしなっていくのだろうなとため息をついてしまう。「二月某日まる一年になる」の字余りはととのえた方がよい。

ひと言が悲しみだけを作り出すそんな一夜に雨滴滲みゆく  蓼科川奈
 抽象的な表現が多い。「悲しみだけを作り出す」のはどんな「ひと言」か分からないと共感は得られにくいので、雰囲気に流されず読者に伝える工夫を。

欠けて満つブルームーンのあかね色いにしへ人の畏れは続く  八かい
 上の句が、下の句とどうつながっていくのか分らないのでもう一工夫を。「いにしへ人の畏れ」とは何か。それが「続く」とはどういうことか。なお、「満つ」は「満つる」と連体形に。


自作の短歌(2首まで)を下記までお送り下さい。締切は毎月20日。
専用フォーム
http://www.marukobo.com/tanka/
専用Email
tanka@marukobo.com


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自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



文、訳例 菅 紀子


 こんにちは。E-haikuが3年目の春を迎えるとは思いもよりませんでした。そこで読者のみなさまにより広く楽しんでいただける誌面をめざし、俳句バーほやけんにて編集部と店主ご夫妻を交えて話し合いました。その結果、個別のコメントは割愛し、毎月テーマを決めてコラムを書かせていただくことになりました。


龍の面毎日祈祷春の月
mask of Dragon
Agrandmother pray everyday
spring moon
KIYOAKI FILM

紀訳
dragon mask
daily prayer
the spring moon


鳥帰る吾が名探さん小さき人
birds is home coming
my name watching
little human
KIYOAKI FILM

紀訳
birds going home
a little kid looks for
his name

お便り
辞書を少し読むようになり、ノートを作りました。英訳聖書で旧 新の対訳を読み、少しだけ、単語齧りました。文はさっぱりです。洋画を見ても早口なので、聞き取りにくいです。(KIYOAKI FILM)


自動改札抜けたる先の朧月
go through crowded
automatic ticket gate
to a hazy moon
片野瑞木

紀訳
passing through
the automatic ticket gate
toward the hazy moon


春深し床を転がる綿ぼこり
in the best part of spring
ball of dust
roll on a floor
片野瑞木

紀訳
mid spring
a ball of lint rolling
on the floor


身ごもったお日様ぱちん石鹸玉
Blowing bubbles in the sky
Get pregnant with the Sun
That will just go pop
ほろよい

紀訳
a soap bubble
pregnant with the sun
goes pop


譲り合ふ春分の日のエアポート
mutual concessions
at the airport-
the Vernal Equinox
久我恒子

紀訳
after you
each other at the airport
Vernal Equinox Day


へこませるブリキの金魚冴返る
denting
a tin goldfish-
cold had returned
久我恒子

紀訳
dented
goldfish made of tin
metallic sharpness


水玉の象は泣きます春の昼
a polka-dotted elephant cries
at noon in spring
チャンヒ

紀訳
a polka-dotted elephant cries
daytime in the spring


重心の微かにずれて蝶の舞う
a center of balance
slide just a little,
a butterfly flies
チャンヒ

紀訳
a butterfly
dances around slightly off
its center of balance


手水にて耳よりぬくむ焚火かな
having a washbowl
a crackling sound
warming by a bonfire
明 惟久里

紀訳
at the washbowl
sounds of the bonfire
warm my ears


戌年のおほきな望の二日かな
the supermoon
on January 2nd of 2018
the year of the Dog
明 惟久里

紀訳
year of the dog
big resolution to the super moon
on the second day


お便り
1句め、原句では手水の細かい設定はしていません。2句め、自分では判らないのでいつもどこかで(師匠の方々に)選んで頂いた句を英訳しているのですが、これはなんだかNASAかJAXAのメモ書きみたいに(呆)。(明 惟久里)


春の峠ここから風が生まれるの
wind is born
flom here
that of spring pass
彩楓

紀訳
here
the wind is born
a pass in the spring


茶畑の空は水色鳥の恋
birds in love
light blue in the sky
the tea plantation
彩楓

紀訳
the tea field
the sky is light blue
birds in love


会計士論点多し春浅し
accountant
so many arguing points early spring
すずき徳三郎

紀訳
an accountant
lots left to argue
early spring

お便り
現在31年度からの公認会計士監査導入のための準備として経済内部統制などに取り組んでいます。国家試験の勉強を続けているため、様々な論点について会計士の先生と対話できるのはありがたいのですが、その昔、菅先生にお誓いした合格の約束がまだ果たせていません。8月へ向けて気合いを入れ直します。(すずき徳三郎)


春の風皆に感謝のメダルかな
pring wind medal for gratitude to everyone
すずき徳三郎

紀訳
spring wind
medals with the full appreciation
to all

お便り
本当はオリンピックには脇目もふらず勉強しないといけないのですが、自分の目標に向かって周りに感謝しながら努力する姿勢は見習わなければいけません。
 沙羅ちゃんのメイクの濡れて春メダル
 春一番絶対王者の謙虚かな(すずき徳三郎)


コラム
省略について

 英語の文には命令形を除き必ず主語、述語が必要です。主語が無い場合は無理矢理「it」などを置いて主語+動詞(S+V)を貫きます。この「it」を仮主語と言います。
 しかし、俳句は「世界一短い詩」、真面目に構文を踏襲していると長くなってしまいます。だから省略をします。省略の例としては新聞の見出しがあります。少ない文字数で記事内容が一目でわかる工夫をしているのです。その結果意味を損なわないでギリギリまで削り取った言葉は情報が少ないにもかかわらず粒立ちます。
 例えば受身形「be動詞+過去分詞」の be動詞を省略したり、a や the などの冠詞をカットしたり、関係代名詞を使わないようにするのも一案です。俳句もある意味同様。わんちゃんの毛をトリミングしたり盆栽を剪定したりするように。とはいえ究極の短詩形文学の名に恥じない省略を心がけてください。また複数の単語を使うイディオムより一語で多くを語る言葉を選ぶと語数を節約できます。
 今回のほろよいさんの句の場合、That will just go pop という完全な文を、中句からの繋がりで goes pop と現在形の動詞のみで処理してみました。


菅 紀子(かん のりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通 翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学非常勤講師。(Hailstone Haiku Circle blog ICEBOX Contributor)(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)


自作の俳句およびそれを英語俳句にしたもの(2句まで)を募集!
応募先
WEB http://marukobo.com/eigo/
Email eigo@marukobo.com

6月号掲載分締切 4月20日(金)


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俳句の街 まつやま

俳句ポスト365



協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


金曜日優秀句
2018年1月度


金曜日優秀句
2018年2月度


ラグビー


ラグビーの髭に芝生の切れつぱし  クズウジュンイチ
ラガー等の掴みし縞の歪みおり  くめ仙人
ラグビーや二人ぶら提げなだれ込み  すりいぴい
円陣のラガーひしゃげた耳の湯気  月の道
なま熱き唾で磨かれラグビーボール  鈴木牛後
ラガーらの塊ほぐれ前歯吐く  一阿蘇二鷲三ピーマン
後ろへ後ろへラグビーボールは不発弾  妹のりこ
ラガー等の撃たれしやうに倒れをり  ラーラ
ラグビーの空17メートルの青  すみっこ忘牛
ラグビーやぶちのめされて黄ばむ空  那須新香


ラグビーのキック一瞬とは長し  ちゃうりん


石蓴(あおさ)



潮を視る暮しに揺れる石蓴かな  ぐずみ
石蓴掻き海は豊かに濁りおる  シュリ
探鳥の長靴に寄る石蓴かな  かまど
透きとほる子蟹を宿す石蓴かな  つぎがい
やどかりの引きずつてゐる石蓴かな  ときこ
三代目石蓴専用脱水機  かつたろー。
石蓴干す目視雲量三の空  くりでん
干されたる石蓴ちりちりそそけだつ  はまゆう
宮島の杓子を垂るる石蓴かな  かもん丸茶


わたつみのこごりそこねしあをさかも  とおと


4月の兼題
公式サイト内の「俳句投稿」より作品をお寄せください。
投句期間を過ぎますと投稿ページは次の兼題の募集に自動的に切り替わります。ご投稿はお早めに。

投句期間 3月22日〜4月4日
蟻(あり)
三夏/動物
アリ科の昆虫の総称。非常に種類が多く様々な生態を持っており、女王蟻を中心に多数で独自な社会生活を営む。詩歌の季題としては比較的新しく、大正以降であるといわれる。

投句期間 4月5日〜4月18日
初鰹(はつがつお)
初夏/動物
黒潮に乗って回遊する鰹は、地域によってはもっと早い時期から出回る場合もあるが、一般的には初夏とされる。現代でも人気の魚だが、特に江戸期においては、ほかの魚と違って「初」の字を冠するほどに待望していた。

参考文献 『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


 「俳句ポスト365」は携帯電話からもご参加いただけます。
 「俳句ポスト365」公式Facebookページ開設中! 公式サイトに設置しておりますリンクよりお入りください。毎回の兼題のお知らせを中心にお伝えしながら、皆様の返信欄への書き込みもお待ちしております。


 募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。


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一句一遊情報局



協力 南海放送


金曜日優秀句
2018年2月度


ボブスレー

ボブスレー四人の背中波打てり  てん点
靴底の鑢のごとしボブスレー  百草千樹
ボブスレーただ空を見て風を聞く  雪花
一点に向かう眩暈やボブスレー  むめも
青空を撃ち抜きさうなボブスレー  大槻税悦
青空は鏡のごとしボブスレー  ひそか
百四十キロてふ風の舵得しボブスレー  青柘榴
ボブスレー光の中にある速度  小野更紗
ボブスレーの橇にひかりの尾の刹那  野良古
ボブスレー解き放つ位置エネルギー  石川焦点
逆さまのボブスレーから人引き抜かる  マイマイ


真っ白な勇気が四つボブスレー  だんご虫




発心の団子の甘さ春立ちぬ  えるも
もう四がつちいさい子にはもどれない  むらさき5歳
子を攫う昔ばなしや草朧  あねご
冬うらら会社休んで買う束子  夏柿
凍つる夜のぎゅんぎゅんと水切る束子  門田なぎさ
大寒やベットに子機のずっとある  クラウド坂上
ひかりより軽き声して猫の子は  小泉岩魚
ここいらの子猫ねこのこここかしこ  まるにっちゃん
菓子折で詫び連れ帰るうかれ猫  笑松
炬燵から子犬どんどん現るる  宗本智之
フィリピンの子守唄聞く七日かな  理酔
母豚の子袋洗う冬の朝  桃猫
風花や踏切をいま車椅子  ひそか
ふらここの子日向と影を蝶むすび  紫水晶
蛙の目借時捩子穴がばかになる  小野更紗
芽の吹くをきかむ硝子の耳あらば  緑の手
春障子そろそろ生まる付喪神  霞山旅


本分を説く掃除機に猫の子に  抹茶金魚


建国記念の日(けんこくきねんのひ)

紀元節弓の形の島に住む  灰色狼
北海道は突き上ぐ拳建国日  ドクトルバンブー
尖閣の空は鈍色建国日  葦たかし
太陽の生まれた理由建国日  太郎
青空へ黄ばむ日の丸紀元節  青柘榴
岬まで歩く建国記念の日  一走人
若者は野へ出よ建国記念の日  花南天
鳥声のふくらみ清し建国記念日  朝日
御陵にうたふ鳥あり梅花節  ひでやん
藩校の光る廊下や建国日  誉茂子
ただ眠し建国記念日の凡夫  松ぼっくり
アンパン割れば餡わきだしぬ建国日    一阿蘇二鷲三ピーマン
建国記念日朝の全き漆椀  天玲


行軍を終へ建国の日の湯舟  きとうじん


薄紅梅(うすこうばい)

胸開く運動薄紅梅三つ  だんご虫
薄紅梅やさしゴリラの手のやさし  かなた 高2
薄紅梅さやかささやくサヌカイト  としなり
薄紅梅雨にも色のあることを  霞山旅
薄紅梅歩けばついてくる心  天玲
薄紅梅湯あたり癖は母ゆずり  めいおう星
もう誰の娘でもなく薄紅梅  七草
薄紅梅申請用紙に妻と記す  妙
薄紅梅棺は空を反射して  むぎみち
由緒書千年伝う薄紅梅  松山やすお
姫御子に甘き悔いあり薄紅梅  越智空子
薄紅梅ときに棋聖の目を逸らし  紀貴之
水は猫映してしづか薄紅梅  ひそか


薄紅梅新書を覆うグラシン紙  樫の木


投句募集中の兼題

投句締切 4月8日

蝌蚪の紐(かとのひも)
晩春/動物
「蝌蚪」とは一般にお玉杓子と呼ばれる蛙の幼生で、蝌蚪が生まれてくる卵のこと。池や水田などに見られるゼリー状の物質に包まれた卵は、紐状をはじめ、蛙の種類によって様々な形をしている。

聞茶(ききちゃ)
晩春/人事
新茶の香りを嗅いで、出荷前に鑑別をすること。香味や風味によって等級が決められる。


投句締切 4月22日

テーマ「サッカー」
サッカー吟行をしての一句を募集しています。特定の語を詠み込む題ではありません。

余花(よか)
初夏/植物
まだ春の内の、春の終わり頃になって散り残っている桜の花を「残花」(春季)というのに対して、夏になっても、青葉若葉の中に咲いている桜の花のことをいう。

参考文献『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句宛先
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとにしたものです。俳句ならびに俳号が実際とは異なっている場合がありますのでご了承ください。


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今回のお題句に対する投句から次のお題句を選び繋げてゆく

疑似俳句対局


選者 美杉しげり


今回のお題句
雪だるま想ひ出いつも不格好  柊 月子


候補句
 ……の前に今月の「残念!」句。「悪びれず淡雪羹の萌黄色」は「雪」を自立語としていただいたとのことですが、お題句の季語の一部を季語として頂いた場合は減点対象。雪だるまも淡雪羹も季語なので、俳句対局的には減点になってしまいます。ただ、淡雪羹は掲載されていない歳時記も多いでしょうから、微妙といえば微妙ですけれど。
四年後の雪辱期して春の月  すみ
雪洞を消しては点けて雛祭  凡鑽
 同じく「雪」を使っていても「雪辱」「雪洞」は季語ではないので、こちらはOK。それぞれ上手く「雪」を使っておられますね。

不格好死掛け愛しい金魚  すぎ本たかし
掻揚は不格好なり八重桜  桂奈
 「不格好」を自立語として詠んだ二句。すぎ本さんは今月の最速投句。桂奈さんの句の掻揚、不格好だから逆に美味しそう。

格段の六段藤井藤の花  芳香
初桜格子の窓の狭き空  星埜黴円
 「格」を自立語としていただいた方、多かったですね。いろいろな花との取合せが目につきました。芳香さんの句はリズムが楽しい。黴円さんの句は古民家の窓かも。
格子戸を開ければそこに春の宵  笑松
格子戸は開かず実梅の落ち尽くす  あいむ李景
格子戸をふうわり抜けて沈丁花  斎乃雪
宵山や格子戸の灯の馨しき  冬のおこじょ
カラカラと格子戸軽し風光る  夏柿
 なぜか「格子戸」句が多数。どこか懐かしい風情です。俳人は格子戸がお好き?
鉄格子はまりし窓や二月果つ  小市
まんさくの花の便りや鉄格子  ぐずみ
 格子は格子でも、こちらは鉄格子。それでも春はやって来る。

不自然な沈黙ありて春の月  蓼科川奈
南予路や不器男の里の山桜  藍植生
種選七十歳の不発弾  すりいぴい
不合格だけどたんぽぽならいいや  天野姫城
花筏君の不実をまた許す  柝の音
恋猫といへど不埒なやつもゐて  ひでやん
不躾に渡す山独活すきとほる  かま猫
 「不」も多かったですね。それぞれ違う言葉を選んでおられるのが意外。「不自然」「不器男」「不発弾」「不合格」「不実」「不埒」「不躾」……一つくらいはかぶりそうなものですのにね。「不」ですから負のイメージが強いのですが(人名の「不器男」はさておき)、春の季語との取合せで「明るい虚しさ、淋しさ」のような味わいになるのが面白い。
華鬘草噛む猫好きな峰不二子  大槻税悦
 そして「こう来たか!」と笑ってしまったのが、まさかの峰不二子。俳句対局って、連句の面白さに通じるところがあると思うのですが、この句なんてまさにそうでは?

早く出た芽が途惑いのチュウリップ  健次郎
蒲公英や出立を待つ雲の上  中山月波
出航の三声春の神戸港  洒落神戸
 「出」を自立語として選んだ皆さん。春は「出てゆく」季節でもあるのだなぁと再認識。

いつもいつも踏んずけられて蕗の薹  青柘榴
春うれひ空が嫌ひで星が好き  土井探花
啓蟄や連想ゲームは終はらざる  野良古
 こちら少数派。踏んづけられてばかりの蕗の薹、春愁、終わらない連想ゲーム……3句ともどこかしら淋しさを感じるのは偶然でしょうか。それとも春という季節だから?
想ひ出は暗がりの血色のダリア  薄荷光
 「想ひ出」を自立語としていただいている句。いろいろと深読みを誘う句です。ダリアという花自体、明るさの中に暗さを孕んでいるようでもありますし、ましてや血色。どこか官能的な気配も……。
月おぼろ雪駄に口遊む「柔」  久我恒子
 「柔」は美空ひばりが歌ったあれでしょうね。おぼろ夜、雪駄でそこいらをぶらつきながら、ふっと口をついて出る「柔」。一昔前の懐かしい景色でしょうか。
春はやて出鱈目ばかり言ふ鴉  柊 月子
 童話の場面のようでもあり、寓話のようでもあり。九官鳥のように喋れる鴉もいるので、もしかしたら本当に出鱈目を言っているのかも。春疾風との取合せがいい距離感。


次回お題句
雪隠の紙の白さやあたたかし  24516
 そして今回、お題句にいただいたのがこちら。この紙はトイレットペーパーではなくて、昔なつかしい「ちり紙(落とし紙)」でしょう。純白というよりは、柔らかであたたかみのある白。雪隠の紙という俗なものだって、こうしてちゃんと句になるのが楽しい!
 というわけで、まずは減点対象じゃないかどうか確認してから、どんどん投句してくださいね。


美杉しげり
 第8回俳句界賞受賞。数年前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。

毎月25日頃に、投句フォームにてお題句を発表します。投句締切は毎月末日。

疑似俳句対局投句フォームアドレス
http://marukobo.com/taikyoku/


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THE BEATLES 213 PROJECT


第7回
ヒット! ザ ビートルズ

文 夜市


 ビートルズは、シングルレコードで発表した曲は基本的にアルバムに収録しませんでした。レコードを買ってくれたファンにすべて新曲を届けたいとの配慮からだといいます。なんと良心的かつ自信に満ち溢れたバンドだったことでしょう!


フロム ミー トゥ ユー

いつだって姫君たちへ桜餅  時計子
 1963年発売、3枚目のシングル。前作「プリーズ プリーズ ミー」をヒットさせてくれた英国のファンへ感謝のメッセージでしょうか。この後ビートルズは「シー ラブズ ユー」「抱きしめたい」とロック史に残るメガヒットを連発。いよいよアメリカ進出、世界制覇へと旅立っていきます。
ハモニカとドラムのリズム木の芽晴れ  越境島


シー ラヴズ ユー

囃し立てられ挙句の果てがクロッカス  れんげ畑
 1963年発売、4枚目のシングル。イェイイェイと囃し立てているご本人もきっと彼女のことが好きなんでしょうね。三人称のラブソングは今に至るも珍しいのじゃないでしょうか。
暖かく軽くフィルインそして歌  暮井戸
 ドラムスから入る意表をついたイントロ。そして2秒後にはこの曲の虜になってしまっているのです。
シックスの和音に星の恋降れり  ツバメ号
 そしてエンディングの斬新きわまりないG6のハーモニー。アイデアを出したのはジョージだったといいます。
シー ラヴズ ユー密かに赤き兵営に  風来松
 前年のキューバ危機、この年にはケネディ暗殺、そしてベトナム戦争へと続いていく激動の時代のヒット曲でもありました。
シーラヴズユー開いた春の甲子園  蛇頭
 この「シー(She)」は高校野球の女神様のことであると、あくまでも自説を曲げない元高校球児の蛇頭さんなのですが。
かげろふの中にゐるのは僕ひとり  きさらぎ恋衣
マダスキとリフレインせり遠花火  明惟久里


キャント バイ ミー ラヴ

この薔薇を買っても愛じゃありません  ロックアイス
 1964年発売、6枚目のシングル。アルバム「ア ハード デイズ ナイト」に収録。初めてポールがリードボーカルをとったシングルナンバーです。その後のポールの爆発をファンに強く予見させました。
早速にサビで始まる花の歌  暮井戸
 イントロなしの唄始まりはビートルズの得意技。しかしサビから始めるパターンは珍しく、キャッチーなフレーズとの自信のほどがうかがえます。
春天へギターに乗せて叫ぶ愛  斎乃雪
 間奏はそれ自体が独立した一曲のよう。ジョージのリードギターの真骨頂です。
龍天に昇れど届かぬものばかり  猫正宗
 若くしてミダス王となってしまった4人。常人にはうかがい知れない苦悩も多かったことでしょうね。
それぞれの愛に愚かさ春灯  久我恒子
 お金で買える愛は虚しい。しかし買えない愛が愚かでないとも限らない。なんだか切なくなってしまう久我恒子さんの一句です。


アイ フィール ファイン

高揚を誘うノイズや蜃気楼  中山月波
 1964年発売、7枚目のシングル。初期のビートルズの集大成ともいうべき名曲です。イントロの不思議なノイズは、偶然のハウリングを面白がったジョンが、それを再現させてレコーディングしたものだそうです。
リフにリフぶつけて深き雪解川  ツバメ号
 「涙の乗車券」「デイ トリッパー」と並ぶギターリフ御三家の筆頭と個人的には思います。
ハミングに目刺次々焼き上がる  時計子
 コーラスワークの見事さも聞きどころのひとつ。特にサビのウーアーコーラスがゴキゲンなんですよね!


第8回 兼題曲

ジョージ ハリソン特集(初期編)
 ドゥ ユー ウォント トゥ ノウ ア シークレット
 ドント バザー ミー
 デヴィル イン ハー ハート
 みんないい娘
 アイ ニード ユー

兼題曲を詠んだ俳句を左記までお送り下さい。

専用フォーム http://marukobo.com/beatles/
専用Email beatles@marukobo.com
締め切り 4月20日


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鑑(み)るという冒険


〜映画篇 演劇篇〜

文&俳句 猫正宗


第六十六回
『ユーリー ノルシュテインのアートアニメーション映画』&『授業』

 ユーリー ノルシュテインはロシアのアニメーション作家。切り紙を少しずつ動かしながら撮影した短編アニメで世界中に知られる。今回上演されたのは『キツネとウサギ』『アオサギとツル』『霧の中のハリネズミ』の3編。いずれも手作りの素朴さとともに、様々な意味で大人の仕事が垣間見える作品であった。
 今回は「キラキラ子ども映画館」という、子どもゆめ基金の助成を受けた職業体験プログラムとして無料での上映('18年2月25日、松山市総合コミュニティセンターこども館コスモシアター)。子どもたちと映画の仕事を学び、一カ月後に上映会を行うというもの。また、チェコアニメ作家の山内知江子氏とともに、子どもたちがつくった切り絵アニメを、氏の作品と一緒に上映(午後の部のみ、筆者未見)。
 上演場所がプラネタリウムであったため、「霧の中のハリネズミ」劇中の星を見るシーンから続くようなプラネタリウム上映も。
 本企画が素敵なのは、子どもたちにとって、見知らぬ映画との出会いになることだ。
 私の子どもの頃、見知らぬ映画との主な出会いの場はテレビ(今でいうところの地上波)だった。とんでもないB級から古典的名作、スペクタクル大長編まで、ときにはひどい編集があっても色々なタイプの映画と日常的に接していたように思う。そしてそこには、映画のことが大好きな大人淀川長治さんとかが映画の見方や魅力を教えてくれていた。もちろん今の方が、レンタル、配信、専門チャンネルなど、出会いの場はずっと豊富だ。しかしそれらには、偶然、もしくはうっかり出会えてしまうことが少ないような気がする。それは例えば、ジブリファンやディズニーファンは育てても映画ファンには育たないのではないか、なんてのはロートルの杞憂にすぎないのだろうけど。かく言う私とて自慢できるほど映画ファンというわけでもないしなあ。
 なお、今回上演された作品を含む6作品を収録した「ユーリー ノルシュテイン作品集 2K修復版」が、DVD ブルーレイで販売されており、どこか異質で悲しい、初めての懐かしさに触れることができる。

霧の馬想わば星空新たなる

 ノルシュテインはユダヤ系ロシア人だが、こちらは、フランスのルーマニア人、イヨネスコの『授業』(双身機関公演、構成 演出:寂光根隅的父、出演:獅子見琵琶、ポチ、大路絢果、寂光根隅的父、'18年1月27日、28日、シアターねこ)。ベケットと並ぶ不条理演劇を代表する作家の作品だが、「台詞偏向に陥る近代以降の演劇状況に対して、身体や空間との関わりから表現の手段を捉えなおし、前近代と近代、西洋と東洋の二元論を超克する。」と劇団H Pにあるように、冒頭、全体の筋を一人芝居でなぞった後、ほぼ台詞のない、身体性の表現だけで上演。表現自体は刺激的だったが、観念に言葉というのは非常に重要な地位を持つものだと改めて感じた。特に、配役を本来の三人から二人に改編した二日目は、健全な身体性が作品の観念を裏切っていたようにも思えた。身体と観念と言葉。その関係性を考えさせられた公演であった。

病葉に変わるそのとき誰も見ず


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新聞記事に隠された俳句を発掘する

クロヌリハイク


黒田マキ


負の遺産 どこにしまったか、忘れてしまった。 (2018年3月5日 朝日新聞より)

飼い猫が他界してしまい 薄紅梅 (2018年2月19日 朝日新聞より)

チューリップ あえて伏兵 で 挑むのか (2018年3月3日 デイリースポーツより)

スキンケア3割増産 日 向 ボ コ (2018年3月5日 日本経済新聞より)


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100年俳句計画 掲示板



テレビ ラジオ

NHK 総合テレビ(四国四県域)
「四国 おひるのクローバー」内 隔週火曜『夏井いつきのムービー俳句!』
4月10日(火)、24日(火) 11時30分〜

TBS系列局 全国ネット
『プレバト!!』
毎週木曜 19時〜19時56分
 夏井いつきが俳句の査定を担当

南海放送
松山市政広報番組『大好き!まつやま しあわせ実り庵』
毎週火曜 20時54分〜21時(再放送 日曜11時40分〜11時45分)
 夏井いつきがナビゲーターとして出演

南海放送ラジオ
『夏井いつきの一句一遊』
毎週月〜金曜 10時〜10時10分
  「一句一遊情報局」のコーナー参照

FMラヂオバリバリ
『俳句チャンネル』
毎週月曜 17時15分〜17時30分(再放送:火曜7時15分〜7時30分)
投句募集兼題
「沈丁花、春の虹」4月1日締切
「おたまじゃくし、独活(うど)」4月15日締切
「芝桜、夏料理」4月29日締切
 WEB http://www.baribari789.com/
 mail radio@baribari789.com
 FAX 0898(33)0789
  投句には本名、住所をお忘れなく!
  「天」の句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。

各番組の放送予定は変更される場合がございます。新聞などで最新情報をご確認ください。


執筆

松山市の俳句サイト『俳句ポスト365』
http://haikutown.jp/post/
 「俳句ポスト365」のコーナー参照

テレビ大阪俳句クラブ
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」(夏井いつき選)
  毎週日曜タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井いつき選)
投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。
裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。
朝日新聞松山総局(〒790-0003 松山市三番町4-9-6 NBF松山日銀前ビル)まで。


イベント 講演等

第七回 百年俳句賞表彰式
4月1日(日)10時〜
 松山市立子規記念博物館 1階視聴覚室(愛媛県)
問合先 マルコボ.コム
電話 089(906)0694

NHK文化センター福岡教室
夏井いつきのカンタン俳句塾
4月14日(土) 13時30分〜15時30分
 NHK文化センター福岡教室(福岡県)
問合先 NHK文化センター福岡教室
電話 092(271)2100

夏井いつき句会ライブin中津
4月15日(日)14時〜15時30分
 中津文化会館 (大分県)
問合先
 中津文化会館 電話 0979(24)1155
 NPO法人中津文化協会 電話 0979(53)7303

NHK文化センター京都教室
夏井いつきの赤ペン俳句講座
4月20日(金)10時〜12時
 NHK文化センター京都教室(京都府)
問合先 NHK文化センター京都教室
電話 075(254)8701

NHK文化センター神戸教室
夏井いつきの赤ペン俳句講座
4月20日(金)15時30分〜17時30分
 NHK文化センター神戸教室(兵庫県)
問合先 NHK文化センター神戸教室
電話 078(360)6198

夏井いつきの句会ライブ 〜十七音に想いを込めて〜
4月21日(土) 13時〜15時
 セレモニーホール野々村(岐阜県)
問合先 (株)野々村葬儀社
電話 0120(07)9222


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魚のアブク



砂山恵子 dolce@地味ーずから砂山恵子に俳号を直します。

健次郎 故郷宇和島の三間地区に、多いところで40センチ程の積雪。立春の土産にしてはちと多すぎる、早い雪解けを祈るのみ。

喜多輝女 この冬は暖かだったり凄く寒かったりで大変な冬でしたが、春はもうそこまで来てるようです。洗濯物を干すベランダの風も日差しも暖かな気がして、何か心もぽっとあたたかくなるような〜、とは言え、三寒四温、インフルエンザなどお気を付け下さいませ。

元旦 いつもながら旧暦の季語と現実の季節とのズレに悩む日々です。特に今年の寒さに、旧暦の春はまだ先のはずではなかったかと、身をもって感じています。

うに子 やっと春らしくなってきました。スギ花粉まみれの三月切りぬけたら外に出ていけそう!

小野更紗 福井のテツコさん&第二まる安の皆さんが大雪の被害に遭われ、テツコ農場のハウスは13棟倒壊。作物の被害に加え、植付にも影響するため、経営の危機です。他人事と思えず、広くカンパを募っております。小野更紗(電話09013291269)まで、ショートメール等でご連絡をお願いします。


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鮎の友釣り


第237回


俳号 洒落神戸(しゃれこうべ)

前回、凡鑽さんへ 多彩な俳句(発想が凄い)、多彩な才能(オリジナルの俳句Tシャツを作ったり、編み物をしたり)にいつもビックリしています。今度はお店の方にトンカツを食べに伺いますね。

写真 夫婦揃って酒好きで……メタボを隠すために夫婦で着物を着たりしています。

俳号 去年の四月、ほとんど俳句を詠んだ事がない状態で句会ライブに参加しました。妻のおかげで俳号を名乗る機会があったのですが、「しゃれこうべ」(漢字の説明はせず)という俳号にいつき組長は「その俳号じゃ出世しないと思うよ?」と。しかしその後、事あるごとに「しゃれこうべ!」、「しゃれこうべ!」と弄って頂きました。

次回、テツコさんへ 一句一遊で組長を「あんたオッサンだったの!?」と驚愕させたテツコさん。まる裏俳句甲子園でお会いしましたがオッサンと言うかオトコマエの男性でした。経営されている農園が先日の福井の大雪で大変な被害を受けたとの事。早く再建できるようお祈りしています。


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告知



春夏秋冬(しき)笑顔
まつやま福祉
五七五

主催 松山市社会福祉協議会
   有限会社マルコボ.コム(ふくし句会 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』)選句


福祉をテーマにした
春の五七五募集

年4回、福祉をテーマにした五七五を募集します。
人に優しくなれるような、575をお待ちしています。

第1回締切 2018年5月6日

2017年度 春の五七五 会長賞
花屑を拭きて畳みし車椅子  ヤッチー


応募方法
インターネットの応募フォームにて応募してください。
専用フオーム http://www.marukobo.com/egao/

賞品「松山トリコ」
 大賞(松山市社協会長賞) 道後温泉湯玉トートバッグ(1点)
 優秀賞 ブックカバー(3点)
 入賞 紙の湯カードケース(4点)

発表 ハイクライフマガジン「100年俳句計画」6月号ほか

問い合わせ TEL 089-921-2111





今年もやります!大お花見大会

日時 4月1日(日)8時〜17時 雨天決行

場所 道後公園内(松山市)

お問い合わせ まつやま俳句でまちづくりの会
mhm_info@e-mhm.com


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編集後記


キム チャンヒ

 俳句を楽しむ方法として、投稿欄に投句をされる方が多いと思う。そんな読者が一歩進んで、俳句の送り手になって欲しいという思いから、本誌では2006年6月号より「100年の旗手」の連載を始めた。そして、更なる高みを目指す俳人を輩出すべく、2011年より「大人のための句集を作ろう!コンテスト(現百年俳句賞)」を開始した。
 本コンテストの一番の特徴は、最優秀作品が一冊の句集となり、付録して出版されること。このコンテストをきっかけに、「句集を編むなんて、まだまだ先」と思っていた方々が、応募してくださるようになった。俳句を大切にまとめる方が増えていることを、嬉しく思う。
 そんなこの賞も今回で7回目。
 今までは、この世に俳句作家を送り出す、新人賞としての役割を果たしてきた。しかし今後は、全ての俳人が目指すべき賞へと育ててゆきたいと思う。次回コンテストでは、大きく仕組みを変えて、俳句のアカデミー賞を目指す予定だ。既にその計画は、着々と進みつつある。近いうちに紙面にてお伝えする予定。お楽しみに。


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次号予告


246号 5月1日発行予定

しまなみ海道俳句まつり 結果報告 & 第七回 百年俳句賞 表彰式



お得で便利なマルコボ.コム直販定期購読! 巻末の案内をご覧ください
お申し込みの方へ、毎月末頃に最新号を送料無料でお届けいたします!
(住所変更の際は必ず編集室までご連絡ください)

『HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画』は以下の書店でもお買い求め頂けます。

愛媛県
 明屋書店 ※一部店舗のみ
 ゆらり内海(愛南町)
 原田書房(今治市)
 子規記念博物館(松山市)
 紀伊國屋書店松山店
 ジュンク堂書店松山店


HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
2018年4月号(No.245)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子

2018年4月1日発行