100年俳句計画 2017年12月号(No.241)


100年俳句計画 2017年12月号(No.241)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


巻頭リレーエッセイ
依里


特集1
JAZZ HAIKU at JAZZ in 四国(愛南町)


特集2
選評大賞2017



好評連載


作品

百年百花
 神楽坂リンダ/キム チャンヒ/松本だりあ/三島ちとせ

新 100年の旗手
 風来松/吉井潤

新 100年への軌跡
 俳句 鈴木総史/松本千鶴
 評  都築まとむ/樫の木


読み物

美術館吟行/恋衣

Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳 朗善)

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

ラクゴキゴ。/らくさぶろう

近代俳句史超入門/青木亮人

百年歳時記/夏井いつき

鑑(み)るという冒険/猫正宗

句集の本棚/岡田一実

mhm通信/雪花

朝の見る句/蜂谷一人

クロヌリハイク/黒田マキ


読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画/桜井教人、阪西敦子、関悦史
 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/山澤香奈
 100年投句計画 投句方法

短歌の窓/渡部光一郎

百人百様E-Haiku/菅紀子

俳句ポスト365

一句一遊情報局

疑似俳句対局/美杉しげり

THE BEATLES 213 PROJECT/夜市

100年俳句計画 掲示板

魚のアブク

鮎の友釣り



告知

編集後記

次号予告





巻頭リレーエッセイ



来世は多分イタリア人
依里 

 ふとした切っ掛けでヨーロッパ史を受講し、二十年近くになる。
 中世ヨーロッパの様々な国の歴史や人物を学ぶうちに、私はイタリアに魅了された。その気持ちは遺跡めぐりで訪れた南イタリアで爆発する。
 富? 名声? それって何? という大らかさ。たむろしている太陽のようなオヤジ達。どんどん増える体重を物ともしないマンマ。(結婚前は抜群のスタイルだったらしい……)
 出会った若いイケメンから「ジャポーネ! アモーレ! 愛してる!」と突然のハグ。昔は相当イケメンだったであろうオジ様から「おいしいよ」と貰ったオレンジのひとつ。
 思い出全部が、クヨクヨなんてしないでと私の背中を押してくれる。
 もうすぐ十二月。来世はイタリア人にしてくださいってサンタさんにお願いしてみよう。


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JAZZ HAIKU at JAZZ in 四国(愛南町)




俳句の文字が踊(ジャズ)り出すJAZZ俳句

JAZZ in 四国(愛南町)2017実行委員会
実行委員長 岡田 一男


 それは中間英敏さん(NHK松山放送局プラネット エグゼクティブプロデューサー)との出会いがきっかけでした。
 2月のNHKロビー展JAZZ in 四国(愛南町)2016の写真展を見て声をかけていただき、JAZZ in 四国のスタンスはジャズファンに喜んでもらえるジャズライブをすること、地元の子供達に生の音楽を聞かせ愛南町の文化の振興に音楽面でお役に立てることをお話しし、今後の展開について相談をしました。その後7月上旬に中間さんより「ジャズ俳句というのがある。ジャズの生演奏中にリアルタイムで俳句を後ろに映しだす。これを検討してみては」とキム チャンヒさんを紹介して頂きました。俳句について素人の私はうまくイメージが出来なかったのですが、音を文字で表現する、それもピアノソロの時はピアノの俳句が、ドラムの時はドラムの俳句が、実際の演奏とうまく重なれば面白いぞ!と直感しました。

 10月22日は台風の中開催決定。
 いよいよその時がきました。私のイメージは、バックスクリーンの風景としてジャズ俳句があるというものでした。
 本番は全く違いました。演奏に乗って魅惑的な言葉(俳句)が映し出され、演奏とうまくマッチして進んでいるではありませんか……。私はバックのスクリーンの中から俳句だけ抜け出し、ステージに出てきてミュージシャンと一緒にジャズってるように思われ非常に新鮮でした。生演奏とジャズ俳句の組み合わせはジャズの楽しみ方として非常に有望だと考えています。ジャズ俳句には演奏のイメージをふくらます要素があります。奏者と意図は異なることはあるかもしれませんが感じ方は人それぞれ……。

 アンケートの中でも60%以上の人が面白かったと答えています。来年もやって下さいという意見もありました。
 ジャズの生演奏とジャズ俳句のコラボは、ジャズライブの新しい楽しみ方になれるように思います。



「コラボ」、というか「闘い」!

JAZZ句会メンバー 南行ひかる


 ついにその時が来た。これは間違いなく世界初の試みだ。それは、ジャズと俳句のガチンコライブ。つまり即興ジャズと即吟俳句の「コラボ」、というか、「闘い」。はたしてどんなものだったか。

 時は平成29年10月22日。場所は愛南町御荘文化センターのホール。折しも今年最大の台風21号が四国沖をまさに通過せんとし風雨荒れ狂う時、それをものともせず集まった愛南町の親子達の前で行われた。
 リハーサル開始。当日のジャズメンは、著名一流バンドの秋吉一将トライアルトリップと峰厚介、栗田敬子トリオ、それに地元の南宇和高校吹奏楽部。対するジャズ俳人はジャズ俳句会メンバー有志6名。
 まずジャズメン達が一通りジャズセッションを終えた後、即吟のコラボは最後の目玉企画という設定。
 ジャズ俳句チームは舞台のサイドステージに上がり、パソコン入力担当のキム チャンヒを真ん中にして二手に分かれた。それぞれが葉書大の紙に即吟句を書き、すぐにキムさんに提出、キムさんがそれを直ちにパソコン入力、するとたちどころに大型プロジェクターで舞台の背後の壁に俳句が映し出されるという仕組み。
 試しにリハーサル句を映し出して準備万端。

台風裡ラッパの寝ぐせ正したる  蛇頭
台風が来るリハーサルの余白  チャンヒ

 そしてついに午後2時、ジャズと俳句のコラボライブが始まった。ジャズバンドの生演奏に合わせて、また各楽器(ピアノ、トランペット、サックス、ギター、ベース、ドラム)のパートに合わせて、怒涛となって、即吟句を作句してたたみかけた。

 以下抜粋。

いきなりのホーン野分の駆け巡る  チャンヒ
ドラムまず秋蝶一羽連れてくる  恋衣
ジャズという実をついばみに小鳥来る  猫正宗
ハイノート私を月に連れてって  蛇頭
サックスは秋の稲穂の色したる  南亭骨太
僕らにはスイングがある秋黴雨  猫正宗
夜は深しベースの指にある秋思  恋衣
シンバルへ愛ふるわせる野分波  ひかる
三連府たたきつけたり朝寒に  南亭骨太
秋の昼休符に味のあるギター  蛇頭
スイングスイング岬を越えて秋の虹  ひかる
喝采や野分の後の海に月  恋衣

 ジャズ俳人6名は精根尽き果てた?! いやいやそれどころか初の試みに全員が誠に心地よき陶酔感を味わって終了となったのであった。観客は世界初めての試みに酔いしれていた(はず)。やがて台風もいつしか大阪へ向け通り過ぎていったのであった。

野分過ぐ愛南俳句ジャズコラボ  ひかる

(完)


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選評大賞2017




 毎年恒例の選評大賞。本誌「百年百花」「新100年の旗手」に掲載された作品の中から好きな俳句を選び、20文字×15行(計300文字)の書式の中で、選評という創作に挑む企画である。
 今回の応募総数は14点。審査は、詩人 堀内統義氏、愛媛大学教育学部教員 中西淳氏、俳人 夏井いつきの3名にて行われた。(進行はキム編集長)


 審査の方法

 審査は、各投稿作品に1〜14番までの番号を振り、作者無記名で行った。
 各審査員が事前に推薦する作品を選び、議論によって、各入賞作品を決定した。
(文中、応募者の名前の後にある番号は、審査に使用した番号) 



入選作品


小野更紗 7

流れ星鞄を前に抱いて寝る  希望峰

 若者は夢を見ていた。公園のベンチで。大きなキャンバスに好きな色で描く自分の世界。何を描こうと自由。誰にも邪魔されない、大好きな時間。若者の鞄にはスケッチブック。
 若者は夢を見ていた。フェリーの甲板に寝転がって。潜っても潜っても飽きない碧い海。カラフルな魚たち、生きている海草、眩し過ぎる太陽。若者の鞄には水中カメラ。
 若者は夢を見ていた。終電のホームで。筆一本で頑張っていきたいと出した辞表。まだ早い、考え直せと飲み屋で諭してくれる上司。理解してもらうまでの数時間、呑み過ぎた。若者の鞄には何度も何度も読み返している本。
 空に流れ星の尽きることなく、夢もつ若者もまた尽きることがない。

中西 この作品は二段落目、私はこのような解釈はしなかったのですが、こう読んでいけばこの句が豊かに読めるかなと思い、一押しとしました。構成は単純ですが、最後の二行は句の構成を生かしている。この二行で三つのパラグラフを受けると同時に句の説明をしている。上手なまとまりだなと思います。漱石の夢十夜を彷彿とさせるような構成で、一つの物語が生まれこの句に広がりができていると思いました。

夏井 まとまっているとは思います。自分の意図を持って構成していますし、それぞれのケースの展開もよいと思います。私が食い足りないなと思ったのは、「鞄を前に抱いて寝る」の所です。この句を読んだ際に、例えば海外旅行の際に鞄を抱えて守る姿勢の様な思いを私は持ったので、夢語りだけでいいのかなと。不穏感のようなものと若者との心理的な拮抗のような要素がもう少しあってもよいのではないか。

堀内 今回の応募作品は、それぞれ取り上げた俳句をなぞるだけの文章が多かったように感じました。句とどういう風に出会ったかといったことを自分で問いかけて書いている文章の方が、読んでいていいなと思いました。僕もこの句の展開には引っ張られました。フォレスト ガンプを思い出しました。一押しではないのですが…。

中西 「前に」をどう解釈するかが気になりました。「抱いている」だけで鞄を前にしている。句の作者は「前に」を意識的に入れていると思うので。選評の内容は夢を持ってという前向きな姿勢なので、「前に」をそこで説明しているのかな、と思いました。

夏井 絶対に取られない、盗難にあわないようにするための「前に」ですよね。だから「前に」は作者は絶対に必要だったんだと思うんです。

キム 何の為に「前に」なのか、の解釈が多少違ったのかと思いました。取られないためなのか、前に進むためなのか。

夏井 もしそうなったら、「前に」というのは中西先生がおっしゃったように説明の言葉になりますよね。未来にむかって、っていうことになって。これは、映像として、いつもなら後ろに背負うリュックを前に、という映像じゃないと、句としてはダメだと思いますね。

中西 「前に」の点は選評者は十分説明しているんじゃないかな、と。


樫の木 4

懐かしき痛みよ末黒野の月よ  井上さち

 痛み。二年前、私の家には十六歳になる大きな銀色の雄猫がいた。ある夜、彼は餌を食べなくなった。それからは寝てばかりで少しずつ痩せて弱っていった。最初の異変から二週間ほど経った暖かな午後に彼は二、三度引き付けを起こしたかと思うと四肢を突っ張らせてあっけなく逝ってしまった。
 懐かしき痛みとは何だろう。私には死の別離の痛みだと思える。この句の末黒野は月下に暗く静かで生き物の気配がしないから。
 別離の痛みは時が経っても折に触れて何度でも立ち上がる。もっと長い時が経てば平静に懐かしさを持って感じられるのだろうか。
 春の月は穏やかにされど人に寄り添うでもなく中天にある。不死なる存在として。

夏井 懐かしき痛みって、死の別離の痛みなんだろうか……と、その辺りの解釈には疑問があるのですが。猫の死のことを先に述べておいて、そこから独自の解釈を展開していこうとする構成はわかります。ただ、二段落目の最初の一文が出た途端、解釈の違いが出て寄り添えなくなってしまうんです。でもそこは解釈の違いがあるので認めない、という訳にはいきませんので。ただの痛みではなく「懐かしき傷み」が詩の言葉として一番大事なポイントなので、ここを丁寧に読み解かなければいけないと思います。

堀内 夏井さんが感じた違和感というものは僕も少しあります。僕は18歳でうちのネコを看取ったので、そいうシンパシーもあって、猫を悼むという気持ちもよくわかりました。経験を重ねて書いたんだな、と。その面では共感がありました。

夏井 前半はいいと思うんです。もっと猫の話に寄せて解釈してもいいんじゃないかな、一般論に拡げないで。

中西 私は最後の「不死なる〜」の所がすっと入ってこなかった。解釈は筋が通っていて、丁寧に述べられていると思います。書き出しが「痛み。」となっているので、第二段落は「懐かしき。」とは何なんだろう、と組み立てるともう少し全体の構成が合ったのではないかと。


彩楓 5

若返る呪文むにゃむにゃ木下闇  大塚迷路

 公園の木下闇の中で、若返りの呪文を「むにゃむにゃ」と唱えてみました。
 実は、夢を見たのです。空の広い明るい所でした。九十九才まで生きた、働き者の大好きな祖母が居ました。祖母は若くして夫を亡くし、戦争で息子を一人亡くしたのですが、農業で二男三女を育て上げたのです。その祖母が私に、若返りの呪文を教えてくれたのです。この呪文を唱えて、祖母は少し若返り、前向きに生きたのでしょうか。
 それから私、家の中でも外出先でも「むにゃむにゃ」と唱えているのです。唱える度に祖母の事を思い出し幸せになり、元気が出るのです。若返っているかどうかは……。
 木下闇では隣に祖母が居たようです。

堀内 詩の本質とは「うた」だと思うんです。「うた」は肉声だと思います。この句の「呪文むにゃむにゃ」というのが面白いと思いました。自分なりにこの俳句と向き合って書かれたのでしょう。今回読んだ中ではこれが一番いいなと思いました。

中西 一番最後の一行の「では」がぴんとこない。「には」ではないのか、わかるようでわからない。その前の展開は面白いと思いました。

夏井 むしろ俳句と切り離して読んだ方がこの文章は面白い。「若返っているかどうかは……」の箇所と最後の一行はちょっとピンと来なかったですが、祖母語りとしてほのぼのとしているし、この文章にはとても好感を覚えています。が、この俳句の選評としていいか、という根本的なところで立ち止まってしまいました。このほのぼの感で木下闇という季語を把握できているのかどうか。緑陰と木下闇って場所も季節も一緒なんだけど明暗が全然違う。木下闇の暗くて怪しくて奥へと引かれるような感じなどを最後の一行だけで表現しているのかもしれませんが、そこがもう少し欲しいかな。

中西 最後の一行、木下闇に祖母がいたような気がした、「私はそういう風に解釈した」ということを述べようとしているんですよね。

夏井 選評者は木下闇では常に祖母と会ってきた、という意味かと私は読んだんです。となると、「では」だと、「居たようです」が変だなと思ったんです。そこの叙述があやふやになっているのではないかと。

堀内 僕も「居たようです」というのが、やはり気になるかな。ただ、おばあちゃんに若返りの呪文を教えてもらったという出来事をずっと心の中に抱えていて、そういう思いがこの俳句と出会った時に、「呪文」という言葉の力かもしれないけれども、おばあちゃんとの事を引き合いに出しての解釈となった、というのは自然かな、と僕は思いました。


紫水晶 6

雛同士目の合ふこともなかりけり  岡田一実

 側にいるのに触れることも見つめ合うこともできないという切なさは、究極と言えるかもしれない。女の子の幸せを祈る雛が、内に究極の切なさを秘めているとは、どれほどの業なのか。この句を読むまで考えたこともなかった。淡々と事実を描いているだけのようでいて、最後を「けり」で締め括ることで、作者は気付きと感動を凝縮させている。それが、読み手の共感をさらに深めていくのだ。病と共に生まれた娘と、混乱する私。穏やかな微笑みの雛に成長を見守られてきたのに、三十年を経て飾り忘れる年さえある。そんな私にこの句は刺る。雛を飾ろう。見つめ合えないままに。祈りと切なさ。それらが同時に内在すればこそ、雛は美しさを増すから。

堀内 後半から自分の置かれた位置に引きつけてこの俳句を解釈したんだなと思いました。選評を書いた方の実感がずっと展開されている。そのことに少し気持ちを動かされました。

夏井 10行目からですよね。

中西 10行目から行をかえてもいいのでは。そこからが読む側が着いていきにくくなっているように思いました。雰囲気は伝わってくる。「祈りと切なさ」「美しさ」「感動」といった感情的に強い言葉が選評の中に入り込んでいるので、少なくとも、最後の一行の雛の美しさというところまで言わなくてもいいのじゃないかな、と。

夏井 前半でこの句の言おうとしていることを一生懸命語ろうとしていて、それが10行目から自分の経験に切り替わる。その間に溝が生まれているんじゃないかと思います。でも、筆の力として、強い力を持っているのは10行から後なので、そこが悩ましいところだなと思います。

中西 後ろから三行目の「見つめ合えないままに」というのが、もしかしたら娘と私なのかなという風な気もしなくもなくて。

夏井 私はそう読みました。

中西 でも最後は雛に持って行っているんですよね。

夏井 ここは意味を被せているのでは。それと五行目の「この句を〜」の文、八行目の「それが〜」の文、選評の上でのさらなる説明はなくてもいいのでは。4行目の「内に〜業なのか。」から、6行目の「淡々と〜」の文に行っていいのではないかと思いました。


 いよいよ最優秀賞作品決定!

キム 7番の作品が皆さんの中では一番高評価でした。

夏井 全体的に前回の作品に比べて俳句自身の読み解きが弱いかなと思って。あくまでも選評なので、出ている言葉を丁寧に読み解くという作業が第一段階にあって、そこから後の様々な展開ではないかな、と思うので、そういう意味では昨年に比べて食い足りないかなという気持ちは正直あります。賞に押すなら、7でしょうか。

堀内 個人的にはフォレストガンプの映画を思い出させてくれるような作品でした。

キム では異論がなければ、7で。

中西 読み解きについて、夏井さんが言われていることは大切だと思う。作品の解釈を基本として、それに乗っかって、いろいろな書き方をしてもいいと思うのですが、全体的に解釈が弱かったような気がします。始めの頃は言葉を丁寧に全部説明するという選評が多くて、解釈が強いものを選んだという傾向があったのですが、そういう傾向をうけて、こうなってきているのかな、と。基本的には句の一つ一つの言葉を読み解く、ということが基本になっているということはきちんと押さえておくことが必要だと思う。

夏井 解釈と鑑賞の違いですよね。何となく解釈をしないで鑑賞をふくらませているといった傾向が今回は多かったと思います。

最優秀賞  小野更紗
優秀賞  樫の木、彩楓、紫水晶


参考作品

片野瑞木 12

クリスマスカードに綿が乾いてゐる  岡田一実

むかーしむかし子を産んだ
産んで育てて働いて
食べさせ眠らせ夢見させ
褒めて叱つて叱られて
いつの間にやら私と
夫を越して子どもらは
大きな人と成り上がり
迷ひもせずに巣立ち行く
静かな家に残りたる
私たちに届くのは
遠き異国の神さまの
聖誕祝ふ小さき紙
きよしこの夜
クリスマス
カードに綿が乾いてゐる

中西 一つ、意欲作というか、気になった作品として13をあげます。俳句の解釈を詩にする、と。これを選評と取るかどうか、というのが一番の大きな問題にはなります。詩になっているかどうかは堀内先生にお任せしますが(笑)。独創性はあるかなと思いました。

堀内 改行が安易すぎると思いました。

夏井 さすが詩になると責任感が(笑)

堀内 一種の言葉の実用性と指示性というところで、何かを指示するというものが詩になっているんだと思うのですが、選評なのにこれにするのはずるいなと。それがすごくよければいいのだけれども、こういう詩のような選評にしたことの意味は感じられないので……。詩ってやはり改行が命だと思うんですが。ただこれは詩のような形に改行しているだけだな、と。

夏井 内容が、誰でも書けそうなことを書いてあるなと感じました。

堀内 そういったところで、作者が言いたいことを指し示すというようなポエジーのようなものが出ているかというと。

夏井 この句は、もっと即物的に読む句だと思うんですよ。チャレンジ精神はいい。

中西 コンセプトや方法はやり方は面白かったですが、もう少しポエジーが欲しかったですね。



堀内統義
詩人。「戦争 詩 時代 平和が平和であるために」は愛媛出版文化賞、詩歌句随筆評論大賞奨励賞を受賞。今年も2017平昌 韓日中詩人祭に招待され参加。

中西 淳
愛媛大学教育学部教員。国語教育学担当。

夏井いつき
俳人。俳句集団いつき組組長


12月2日開催の大忘年会内で、「選評大賞2017」の授賞式を行います。


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美術館吟行


第37回


愛媛県美術館
レオナルド ダ ヴィンチと『アンギアーリの戦い』展吟行会

文 恋衣

取材協力 「アンギアーリの戦い」展愛媛展実行委員会(愛媛県、愛媛新聞社、南海放送)、愛媛県美術館 
ご紹介した作品展は12月24日(日)まで開催中。



 冬ほのかににおい立つ土曜の朝、愛媛県美術館へダ ヴィンチに逢いに。レオナルド幻の巨大壁画の謎をめぐる旅へ──。私の中のレオナルド ダ ヴィンチと結びつかない戦いの絵のチラシを手に。日本初公開の「タヴォラ ドーリア」とは?
 先ず、私たちを迎えてくれたのは、

金風よダビデにハートの目の光   チャンヒ

 フィレンツェ共和国の『ダヴィデの頭部(石膏模造) 』( 原作1501ー1504年、ミケランジェロ ブオナローティの原作に基づく)高さ118センチの頭部。4メートルを超える原作の頭部のみであるからこそ間近に鑑賞できる。
 1504年、シニョリーア宮殿前でダヴィデの瞳は、何を捉えていたのだろうか。暫く眺め同じ方向を見て佇み、次の作品へ。

 1章 歴史的背景ーアンギアーリの戦いとフイレンツェ共和国。
 『シニョリーア広場におけるサヴォナローラの処刑』、絵の真中の火刑と広場の人々と青い空。そして同じ広場を描いた作品。
 『シニョリーア広場での「敬意の祝祭」』
広場には犬猿道化師秋麗  猫正宗

 次は、肖像画。今回の美術館のテーマであるダ  ヴィンチとミケランジェロにシニョリーア宮殿の壁画競作を委嘱したピエロ ソデリーニ(フィレンツェ共和国の国家主席)をはじめに6点。マキアヴェッリの1点以外は全部同じ大きさ(60×45p)のクリストーファノ デッラルティッシモによる「ジョーヴィオ連作」なので比較しながら鑑賞する楽しさあり。
 最後の2点レオナルド ダ  ヴィンチとミケランジェロの肖像画は互いに向き合った展示になっていて魅力的。

ダ ヴィンチとミケランジェロの声涼し  恋衣

 1440年6月29日、アンギアーリの戦いでフィレンツェと戦ったヴィスコンテイ、ピッチニーノのブロンズのメダルとその原型になった二人の肖像画(デッラルティッシモ作)。
 その先にある横長の一作。

『ピュドナの戦い』
寒風に揺るる二 や赤と黒  恋衣
直線に並べ兵士よ冬晴よ  チャンヒ
白風や馬も眠りし古戦場  猫正宗

 アンギアーリの戦いの大壁画計画の参考になったのではと考えられてもいる板絵である。

 2章 失われた傑作── 二大巨匠の幻の競演。愈々謎へ迫る。シニョリーア宮殿の「五百人大広間」を飾るはずだったダ ヴィンチとミケランジェロの絵画は存在するのか。
 大広間の写真に圧倒されたその先に背景金色の『タヴォラ ドーリア(『アンギアーリの戦い』の軍旗争奪場面)』作者不詳(レオナルド ダ ヴィンチに基づく)。
霧が明け絶叫ここは戦場だ  チャンヒ
闘いの真中寒気の白馬の眼  恋衣
軍旗争奪人馬楯鉾寒雷来  ひかる

 タヴォラ ドーリアは、ダ ヴィンチがその作成を断念した壁画の中心部分で作者不詳のままドーリア家に伝来、その後1992年に東京富士美術館が購入。2012年にイタリア共和国に寄贈された。一方、ミケランジェロのカッシナの戦いは、下絵を描いた後、ローマに呼び戻され未完に終わる。

 下絵の模写等による作品より
 『カッシナの戦い』
冬隣肉の固まり肉の壁  猫正宗
戦いの裸身の両手天に伸ぶ  遊人

 『岸をよじ登る男たち』
秋蝶をみたぞあの辺あの茂み  チャンヒ
岸這い上がる男の臀部冬の森  ひかる

 アンギアーリの戦いをめぐるダ ヴィンチの文書資料も描かれている女性たちも見逃せない。

 幕間 優美なるレオナルド。
 『聖アンナと聖母子』レオナルド ダ ヴィンチの工房、おそらくサライ
聖母子と山羊とワイルドストロベリー  遊人

 聖母を見る聖アンナ、聖母マリアの見つめるその子、そして山羊を握りしめ振り返り見るキリスト、その全ての目の優しさは、見ているものを包み込む。
 続く3章では、二人の15世紀の巨匠の美の確実な引き継ぎが伝えられ、終章では、レオナルドを求めて──
 『タヴォラ ドーリア』の立体復元研究による彫刻が展示されている。この彫刻を見たら再びその絵画を見にいかずにはいられない。500年後は、謎が解けているかもしれない。

秋高し芸術家には天使の名  ひでやん

 ダ ヴィンチの習作と手稿(鏡文字)の美しさに、原画を見に天才に逢いに、ヨーロッパへ行きたいと思ったのは、私だけではないはず。
同時開催の「天才ダ ヴィンチのひみつ」展は、子どもたちにおすすめ。

『画家は万能でなければ賞賛に値しない』
レオナルド ダ ヴィンチ



マルカントニオ ライモンディ「岸をよじ登る男たち」(ミケランジェロ ブオナーティ「カッシナの戦い」の一部分に基づく)
1510年 大英博物館版画素描部 (c)The Trustees of the British Museum

愛か憎か裸の男のさす方は  恋衣


アンドレ  デル ヴェロッキオと工房 「ピュドナの戦い」1475年頃
ジャクマール=アンドレ美術館
Paris, Muse Jacquemart-Andr-Institut de France
(c)Studio Sbert Photographes

対戦の一方向より秋の風  遊人


作者不詳(レオナルド ダ ヴィンチに基づく)「タヴォラ ドーリア」(「アンギアーリの戦い」軍旗争奪場面)
16世紀前半、ウフィツィ美術館蔵 Gabinetto Fotografico delle Gallerie degli Uffizi

秋風を斬るいななきと土埃  ひでやん



恋衣 俳句とjazzと絵画を愛する俳人

参考文献 レオナルド ダ ヴィンチと「アンギアーリの戦い」展 図録


次回吟行会
12月3日(日)
畦地梅太郎記念美術館「松本秀一の仕事 版画 米 言葉」吟行会
朝10時現地集合
参加費無料(入館料は別途)

事前に100年俳句計画編集室までお申し込み下さい。
TEL 089-906-0694

次々回12月24日(日)愛媛県美術館吟行会(予定)


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2017年度 第三期 第一回


冬林檎
神楽坂リンダ

名はハルコ十一月の猫を抱く
手のひらをすべる猫の尾ラ フランス
ゆきずりの秋の蝶なら許しませう
約束の重たし団栗のかろし
冬薔薇を愛すことから始めけり
かいつぶり鳴くや心に鈴を持ち
猫ひとつはまる蒲団の窪みかな
ピアノ弾くよりも白鳥鳴かせたき
ポップコーンほどかさばらず枇杷の花
空き瓶を吹けばシリウスおりてくる
ひとりゐの息やはらかし冬林檎
屑籠の底を占めたる冬日かな

句集「りんご飴」(マルコボ.コム)を上梓してはや7年が来ようとしています。あれから4人の子供たちは皆結婚し、2018年2月には6人目の孫が生まれます。


冬菫の記憶
キム チャンヒ

はじまりは秋思のギターソロそして
惑星に詩を生むための鶏頭花
石けんが半月となりまた独り
流星の見えた校舎が壊される
オルガンが秋の波へと沈み、音
澄む水よ尻尾で愛を語りましょ
秋空が明るくカフェにジョン レノン
雁が来る空も地球も檻なのに
立冬の廃墟よ白い太陽よ
冬空のノイズに俺が消えかかる
讃美歌のように枯葉の翻る
脳みその裏には冬菫の記憶

1968年生まれ、愛媛県出身。本誌編集長。句集『COSMOS』(マルコボ.コム)。『桝形浩人とキム チャンヒの超俳句入門』(マルコボ.コム)


柵に鞍
松本だりあ

サーカス発ちテントの跡の穴まどひ
行く秋の提灯ひしゃげ影ひしゃげ
冬木の実大きい秘密の放牧場
馬の眼の晩秋の木の騒ぎたつ
冬日ふはり厩に首の並びをる
やまんばの家はここです実南天
鬣はダンデライオンの綿毛
柵に鞍干され冬日の積まれゆく
落葉降る祭祀の部屋の窓小さく
冬の飛蝗甕棺の胴ゆたかなり
出土せし馬具に緑や冬の雲
画家になりそこぬ凍星かこうたる

1942年生まれ。双子座。句集『ダリア』(編集アトリエまる工房)。句集『海に遊んで』、詩集『おばあちゃんの魔法の苺』(有限会社マルコボ.コム)。


落選通知
三島ちとせ

揃はざる箒の長さ神無月
初冬の落選通知から燃ゆる
冬ざれや橋より変はる河川の名
家業継ぐやうに猟犬歩みけり
水洟を拭ふ拳の硬さかな
平熱の人にマフラー貸されけり
蓮根掘る足よりみづの流れあり
強火から変へず大根と鰤と炊く
マスクして互ひに実家より戻る
かはぎぬを着まし出張前夜かな
教員の仮の住まひに蜜柑畑
夜火事の何度炎を見間違ふ

昭和六十三年生まれ。北海道在住。


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読者投稿による3ヶ月連載作品集

新 100年の旗手


(2017年10月号 〜 2017年12月号 3/3回目)


戒破者たち
風来松

鯉口を切り冬ざれの辻に入る
桂浜蓆の男鯨の目
牡蠣五十背徳的に喰らう妻
熊となり原野の星の道を行く
戒破女マタギ入山

大天狗
石鎚山眠る 二
小天狗 一

ノスリにもこんな夜もあり暖鳥
四季超えて高度一万メートルの霜
冬晴れの底白き影音もなく
片足の遮光器土偶春を待つ

1970松山市生。好きなもの、旅、酒、映画、本、宇宙、
懐手してカープ観戦。「ハイミー句会」参加。


獣めく
吉井潤

冬銀河男の子ばかりの二人乗り
獣めく地下入り口の室の花
護送車に厚きカーテン冬の暮
横たわるデュシャンの便器涸るる水
枯葎引き倒されて畳の間
押入れにトロフィー残す十二月
這い上がる電飾の青日短か
虹彩に深海宿る雪女郎
引き絞りさっと広がる冬の雁
退かしても退かしても乗る竃猫

俳句で豆本やペーパークラフトを制作しています。
本日のタナカファクトリー http://blogs.yahoo.co.jp/tns26095 です。


2018年度 第1期連載者募集中
締切 2018年2月15日(木)

応募内容
2018年4月号に掲載できるタイトル付の10句

応募先
Eメール magazine@marukobo.com
*件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
(郵送またはFAXでも受け付けております。詳しくは編集室までお問い合わせ下さい。)


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新 100年への軌跡


2017年度 第三期
第一回


聴けばなほ
鈴木総史

砂浜はひかりを余し秋初め
しづかなる町を知りたし草雲雀
鳩吹の暗がりへ風吹き込んで
郁子の実は山腹の陽を賜りぬ
実柘榴や触れればくづれさうな家
眠くなる素秋の川を聴けばなほ
県道はだらしなく伸び曼珠沙華
綿繰の上手な人はやさしき人
十六夜や黒曜石の磨かれて
上品にくづして長き夜の積み木
月白や家は屋根より衰へぬ
散り初めて雨後の木犀よく匂ふ
梅擬こんなところに家が建つ
おほかたの橋錆びてゐる紅葉狩
瀬音より鳥声大き秋の暮

鈴木総史(すずき そうし)
 1996年生まれ。21歳。立教大学3回生。大学入学より櫂未知子・佐藤郁良に師事、以後本格的に句作を開始する。俳句同人誌「群青」同人、企画部長。『鷹』会員。「俳句対局 第五回龍淵王決定戦」優勝。


銀座へと
松本千鶴

梳くたびに髪に光やクリスマス
家閉づる鍵の冷たく雪催
地下道を抜け冬晴の銀座へと
聖菓持つ子の重さうに嬉しさうに
三越のライオン像も冬めきぬ
人止めて人屈ませて冬薔薇
通りの名銀座にあまた冬木立
眠りたる猫にふくらみ冬日向
雪暗や時計塔まだ時告げず
暮早しリボンの光る贈り物
引き直す口紅赤く聖夜来る
白息の人と目が合ふすれ違ふ
本読みて人を待ちたる聖夜かな
珈琲に映れる冬の月白し
来客の靴下赤しクリスマス

松本千鶴(まつもと ちづる)
 1990年徳島県出身。「狩」所属。職業、コピーライター。



なだらかな時間
都築まとむ

鳩吹の暗がりへ風吹き込んで 鈴木総史
 「鳩吹の暗がり」は両手を合わせた隙間。「風」は息。小さなものを大きく描くとその世界が変わってくる。

散り初めて雨後の木犀よく匂ふ 鈴木総史
 雨で木犀が散り始めた。木犀とは咲いているときよりも散るときの方が印象的。匂いもまた。語順の巧さがそれを証明。

眠りたる猫にふくらみ冬日向 松本千鶴
 声に出して読むと音の繰り返しが楽しい句。「ふくらみ」という表記も猫の姿をよく表している。陽だまりは猫の好きな場所だ。

本読みて人を待ちたる聖夜かな 松本千鶴
 いつもと同じ時間、同じ場所でいつものように本を読みながら人を待つ。何でもない光景が最後の「聖夜」という季語によって劇的に動き出す。

都築まとむ(つづき まとむ)
 1961年愛媛県八幡浜市生まれ。第3回選評大賞優秀賞。


ひかり或いは光
樫の木

 「聴けばなほ」は柔らかさと静けさの漂う作品。
砂浜はひかりを余し秋初め 鈴木総史
 「砂浜は」空からと海からの「ひかり」に満ちていてその熱量と「ひかりを余し」ているのだろう。未だ夏のようだが鋭敏な感覚は「秋初め」の微かな気配を捉える。
月白や家は屋根より衰へぬ 鈴木総史
 「月白」の明るむ東の空と暗く古びた家並(或いは廃屋)との対比。中七・下五で家の性質を的確に描写している。

 鈴木総史さん、俳句対局第三回松山市長杯準優勝おめでとうございます。会場で熱戦を堪能しました。

 「銀座へと」は街の光景と時間経過を描いた作品。
梳くたびに髪に光やクリスマス 松本千鶴
 「梳くたびに髪」が「光」るというだけではなく、髪の一本一本に光を纏わせるような豊かさ。季語とも響き合う。
聖菓持つ子の重さうに嬉しさうに 松本千鶴
白息の人と目が合ふすれ違ふ 松本千鶴
 中七・下五に前句は形容詞を後句は動詞を重ねることで人の様子・動作を生き生きと描いている。

 松本千鶴さんがウェブマガジン「週刊俳句」に昨年寄稿された「学生俳句」を考えるという記事を読みました。未読の方は是非検索を。

樫の木(かしのき)
 趣味の合唱で十二月はコンサートに出演します。フランスの作曲家プーランクのモテットが難しくて苦戦中です。


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳 朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.53

Autumn Leaves Festival
Bicycle riding into hotto tent
Smell of burning wood

自転車楽し紅葉祭の匂ひの中


(直訳)
紅葉祭り
自転車で走る ほうとうテント村
炭火の匂い

(ほうとうは、山梨の郷土料理。かぼちゃ入り太麺うどん。)


 Culture Day and a busy weekend are over. We celebrate in Yamanakako by keeping moving, bike riding, and enjoying the lakeside. That is what Culture Day means in our village.

 文化の日と賑やかな週末が終わった。僕らは自転車で山中湖を走り回り、湖畔の景色を楽しみながら祝った。僕らの村では、文化の日はそういう風に過ごすもんだ。


ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博(俳号 蛇頭)

第81話 ジャコ パストリアスの肖像


身にゲバラ宿したるやに冬入日  南亭骨太

 「ジャコ パストリアスの肖像」を手にして、ベレー帽の英雄的ゲリラ「チェ ゲバラ」の勇姿を連想する人もいるだろう。アルベルト コルダが1960年に捉えた肖像は、20世紀中最も複製された写真と言われている。一方、ジャコのアルバムも1976年に全米でリリースされて以来、ベーシスト名義としては異例のロングラン ヒットを記録した。そして二人は「革命」というキーワードで結ばれ、衝撃的な夭折など共通点が多い。

ピュアな指はじけて冬の星うごく  時計子

 「〜肖像」の1曲目はジャコのベースとドン アライアスのパーカッションとのデュオによる「ドナ リー」。チャーリー・パーカーの難解な曲をベースが粒立ち豊かにパーカッシブでいて粘っこい音色のフレーズを弾き出す。打楽器との驚異のインタープレイが煌く2分28秒。

雪虫のゆわんやわんとたゆたえり  猫正宗

 多分、猫さんは3曲目、ジャコが19歳の時に作曲した「旅の連続」という意味の「コンテニューム」と5曲目のジャコ夫人の名前からとったタイトル「トレイシーの肖像」あたりのプレイに誘発されてこの句を詠んだにちがいない。二曲ともハーモニクス奏法を用いたバラードナンバー。

冬の虹フレットレスの優しさよ  南亭骨太

 ジャコは理想のサウンドを求め試行錯誤を重ねた。そして、驚異的テクニックに暖かなサウンドを共存させた。その象徴が愛用のベースからフレットを取り去ったことだ。ただフレットを抜いただけではまともな音がでないので、できた溝を船舶塗装用の樹脂で埋め、全体をエポシキ樹脂でコーティング。仕上げに名うてのギター職人が手を入れ完成させた。
 句会では「エレキベースのフレットを抜いたりしたら、演奏し難いんじゃないの?」という質問に、元プロミュージシャンの南亭骨太さんが「意外とそうでも無いらしい、と知り合いのベーシストが言ってた。むしろ、音程と技術が確かなら、フレットが無いことで滑らかな運指が可能となり、柔らかな音づくりができるかもね」と。

ベース音大地をうねり天狼へ  サテンドール

 なるほど、ジャズフュージョン・バンド「ウェザーリポート」のリーダー、ジョー ザヴィヌルが初めてジャコのサウンドを耳にして、ウッドベースと間違ったというエピソードもある。
 で、この句は正に「ウェザーリポート」時代のジャコのサウンドのイメージ。「ブラック マーケット」や「ヘビー ウェザー」というヒット・アルバムを脳裏に浮かばせてくれる。大音量で何度も繰り返し聴いたアナログLP盤。

くりかえし右手の甲へ鎌鼬  恋衣

 今回のサブテーマ アルバム「ジャコ パストリアス ビッグ バンド トゥインズT」の映像ヴァージョンを句場で視聴した。画面はジャコが17歳の時から生涯にわたってプレイしたピー ウィー エリス作曲「ザ チキン」の冒頭。やや猫背でベースを抱え込むようなスタイルのジャコがステージを歩き回りながら何ともカッコいいビートをバンドに送り込む。それに呼応しテナーサックスのボブ ミンツァー、トランペットのランディ ブレッカー、スチールドラムのオセロ モリノーの順でソロを展開。その合間にジャコの手元がアップとなる。恋衣さんはその一瞬を見逃さなかった。


Today's Turntable
『ジャコ パストリアスの肖像』1975年/epic
『ジャコ パストリアス ビッグ バンド トゥインズ T』1982年/wb


「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

次回のJAZZ句会は、12月10日(日)13時よりJAZZ BLENDにて開催の、ジャズ・ハープ奏者、古佐小基史ソロ ライヴと兼ねて行います。
句会は15時〜16時30分頃。参加希望の方は、本誌の句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU』vol.1〜vol.3(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ


第八十一話
文、俳句 らくさぶろう

死神
 サゲいろいろ

 借金がかさみ、嫁にも追い出された男、もう生きているのがイヤになってしまった。
 首をくくってしまおうとすると、後ろから誰かに声をかけられる。
 その誰かとは、死神。
「恐がらなくていい。おまえに相談がある。」
 何かと尋ねると、人間には寿命というものがあるのでおまえはまだ死ねない。それより、医者になって金儲けをしてみないかと言われる。
 死神が教えるには、長くわずらっている人間には足元に必ず死神がいるものだ。それが見えたら手を二つ打って「テケレッツのパ」と唱えれば死神ははがれ、病人は助かる……というもの。
 ただ、死神が枕元にいるときはもう寿命がきているのでダメだという。
 これさえ使えば、名医といわれること間違いなし、金はどんどん入ってくるといわれ、ダメもとで医者の看板を出してみたら大きな家の主が大病をしているのでと、早速患者の相談が来た。
 行ってみるとその病人の足元に死神の姿。
「これだ!」と思い、教えられた通りにすると不思議に病人はケロッと治ってしまった。
 これが評判を呼び、往診の依頼が相次ぎ、たちまち大金持ちになってしまう。
 ある日、往診に出かけると、死神は枕元に。「これは助かりません」と言うが、「助けてもらえたら一万両を」とお願いされ、大金に目がくらんでしまい、死神が居眠りをしているすきに布団をくるっと反回転し、死神が足元にいるようにしてしまい呪文を唱えると、死ぬ直前の病人が生き返った。
 だまされた形となった死神は怒り心頭、男をうす暗い地下室に連れ込む。
 そこには無数のローソク。これはすべて人間の寿命だという。燃え尽きたら死んでしまうというのだ。
「お前は生と死の秩序を乱してしまった。さっき助けてやった者の寿命とお前が入れ替わったんだ。だからお前はもうすぐ死ぬ。」
 泣いて助けてくれと願うと、「じゃあ、お前のその消えそうな火を別の長いローソクに継ぎ足すことが出来たら寿命が伸びる。やってみろ。」
 男、一旦は成功するが、寒かったとみえてクシャミをしてしまい、ローソクの火が消えた……。


 古典落語を代表する噺の一つとしてよく演じられています。
 幕末から明治時代にかけて活躍した三遊亭円朝が、グリム童話をヒントに創作したといわれています。
 噺の最後の部分(サゲ)のヴァリエーションがこれほどある噺は他にありません。
 もともとは男がローソクを継ぎ足そうとするが「ア……消える」と言って高座にバタンとたおれ、死を表わすやり方です。
 この「クシャミ」ヴァージョンは、当代柳家小三治師のパターンで、主人公の男が風邪気味だという伏線が張られます。「笑点」のピンクの着物で人気の三遊亭好楽師は、継ぎ足した安心感から気が抜けてしまい思わず出たため息で火を消してしまうパターン。
 立川志の輔師は、継ぎ足したローソクを持って洞窟を出ると、死神から「もう明るいところだから消したらどうだ」と言われ、自分で消して死んでしまうやり方。
 立川志らく師は、火の継ぎ足しに成功した男に死神が「今日がおまえの新しい誕生日だ。ハッピーバースデイトゥーユー」と言うと、男がつられてバースデーケーキのように火を吹き消してしまうという、現代的なパターンを作っています。
 他にも様々、演者によってやり方が違いますが、それぞれよく考えられ、工夫が面白いものです。
 ずいぶん前になりますが、テレビ番組の「世にも奇妙な物語」でこの噺を現代におきかえてストーリーが作られたものを観たことがあります。
 舞台で劇にしても面白いかも知れません。
 僕ならどんなサゲにしようかなと、思いめぐらすのも酒の肴になりましょうか。

くしゃみして誰か居ぬかとふり返る


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会話形式でわかる

近代俳句史超入門


第21回

 大学で俳句を研究する青木先生と、その教え子で俳句甲子園の出場経験もある大学生の俳子さんが雑談を交えながらの近代俳句史超入門。


大正、昭和期の碧梧桐


 青木先生と俳子さんが教室で話しています。


碧梧桐の印象

青木先生(以下青) 前回は明治期の碧梧桐をまとめたので、今回は大正期以後の動向を見てみましょう。
俳子(以下俳) よく考えると、碧さんは昭和時代まで生きておられたんですね。子規さんに「赤い椿白い椿と落ちにけり」を誉められた後、碧さんが何をしていたか知らなくて。アイドルグループが解散した後、元メンバーの動向が分からなくなるのと似ています。
青 たまにテレビに出たかと思えば、良くない話題で……というパターンですね。
俳 ええ。子規グループ時代に「赤い椿」句をヒットさせた後、「新傾向俳句して俳壇引退」でニュースになる、というのが碧さん。
青 うーん。子規没後の「日本」派(1)を引っ張ったのは碧梧桐で、明治末期の俳壇で最も注目されたのは彼でした。俳句以外に魅力的な活動も多く、可能性を秘めた俳人なので、忘れられるのはもったいない。


全国旅行

青 では、明治末期から大正初期の碧梧桐に話を進めましょう。この頃の彼の魅力は、三点セットで覚えておくといいですよ。
俳 ラーメン、餃子、チャーハン?
青 女子らしからぬ中華セット……そうじゃなくて、碧梧桐のポイントです。「旅、書、自由律」が子規亡き後の碧梧桐の特徴ですね。
俳 旅はラーメンのようにはかなく、書と餃子の元祖は中国、そしてチャーハンは自由律だ、ということ?
青 全然違う。中華から離れて下さい。碧梧桐が新傾向俳句運動を展開した時、全国を旅行したのは前回もお話しましたよね。
俳 北海道や沖縄にも行かれたとか。飛行機がないのは当然として、電車とかあったんでしょうか。
青 明治終わり頃の各地には、鉄道は急速に発展しますが、碧梧桐は道なき道をガンガン歩く力任せの旅行。頑丈で超健脚だったとか。
俳 子どもの頃に腕白ヘイさんと言われただけのことはありますねえ。
青 子規の後継者として使命感に燃える彼は旧俳句を打破せんと各地を訪れ、「枸杞の芽を摘む恋や村の教師過ぐ」(2)という句こそ革新! と全国で句会を行い、その様子を新聞や雑誌に逐次発表します。ブログやツイッターで日々近況報告するようなものですね。
俳 そうか、当時は新聞あたりがブログの感じなんですね。ネットやテレビがないから、情報を素早く届けるのは新聞や雑誌だったと。
青 その通り。新傾向俳句時代の碧梧桐は革新俳人兼ジャーナリスト兼紀行作家と華やかで、メディアでも知られていました。同時期の虚子が穏健俳人兼小説家兼「ホトトギス」編集人だったのと対照的ですね。


書道革新

青 そして、彼が俳句以外で最も力をいれたのが書道革新だったんです。
俳 書道でも革新運動をしたんですか? 革マル派(3)なみの革命男ですね。
青 そんな感じです。碧梧桐はある時、子規の友人だった画家の中村不折から中国六朝期の拓本を見せてもらい、感動したらしい。
俳 六朝期?
青 日本の古墳時代あたりに、今の中国南京市を中心に栄えた古代文化です。古代の拓本に感動した碧梧桐は不折とともに六朝風の書をしたため、それと俳句革新をセットにして全国各地を練り歩いたんですよ。
俳 そんなに革新的な書だったんですか? 
青 ええ。ゴツゴツして、形のいびつな奇妙な書きぶりで、見た瞬間に「ヘンだ! 碧梧桐だ!」と分かる佶屈な書体。彼は革新者として、安定と洗練が支える表現の型を常に壊し、新奇で未知の可能性を追い求めなければならない! と信じていました。子規時代の「写生」句すら月並に陥りかねない現状を打破するため、「道の霜拾へるを近江聖人へ」(4)といった句を従来の書法と違う古代の荒々しい書で示すのが、彼の俳句革新でもあったんです。


消費専門家

俳 あ、そうだ。今思いついたんですけど、書道は筆や紙、硯や墨汁なんかに凝るとお金がかかりますよね。
青 よくご存知ですね。骨董と同じで、ハマるとお金が大変なことになります。
俳 祖父が書に凝って、年金その他をつぎ込むので家族の悩みだったんです。碧さん、全国を旅したり、書道に凝ったりして、お金は大丈夫だったんですか?
青 ご安心を。彼は芸術至上主義かつ革命家ですからお金は使うばかりで、筋金入りの浪費活動家です。
俳 安心できませんよ! 絶対結婚したくないタイプ。
青 ただ、彼を支援するパトロンが各地にいたんですよ。旅費や俳誌運営費、書道関係も援助してくれる支援者がいたので、碧梧桐は自分のしたいことができた。彼は結社経営や商売に煩わされず、自分の信じる芸術観を突き進めばよく、弟子が付いてこようと付いてこなかろうとあまり関係がない。碧梧桐は純粋に理念を追いすぎて、弟子を育てようとか、結社での共通理解を育もうとか、そういう組織経営や継続の発想がゼロだったので、新傾向俳句が分裂していったんです。
俳 碧さん、熱情あふれる純粋芸術家にして消費専門家だったのかなあ。裏表のない良い人だけど、周りへの迷惑には気付かなさそう。
青 だから庇護者が温かい目で彼を見守ったのかも。彼の句に読者を置き去りにする作品が多いのも、原因は同じでしょうね。


定型破壊

俳 で、碧さんの特徴はあと一つ、自由律でしたよね。
青 そう。旧態依然とした型に縛られてはいけない、人間の真のリズムや表現意欲に忠実であるには季語や定型は邪魔だ! となります。碧梧桐が音頭を取ったというより、彼の俳論や作品に接した弟子の中塚一碧楼や荻原井泉水が自由律の可能性に気付き、詠み始めたところ、リーダーの碧梧桐が「それは革新的だ」というので後追い的に詠むようになります。それが大正初期あたりで、すでに碧梧桐一派はそれぞれの主張が飛び交って誰も調整や妥協をしないために分裂しまくり、碧梧桐も俳誌を出しては廃刊の繰り返し。その間に幼い養女を亡くし、意気込んで就職した新聞社も一瞬で倒産し、傷心の西欧旅行に出かけたりして、昭和の初めになるとルビ俳句まで突き抜けてしまう。
俳 ルビ俳句?
青 漢字の読みを複雑にして深みのある世界を詠もうとした句で、例えば「紫苑野分今日とし反れば反る虻音まさる」。昭和初期の句で、全てにおいて微妙な句です。
俳 素人でないのは分かりますが、狙いどころが分かりません……読者としては、確かに置き去りにされた気がします。
青 俳句観や句調が数年で丸ごと変化してしまうと、少数の新しい支持者が増えても、昔からの多数の門人は去っていく。あまりに急進的すぎた碧梧桐は、昭和期になると賛同者もほぼ居なくなり、昭和七年に俳壇引退を宣言します。
俳 何と典型的な負け組……でも、パトロンさんも居たり、やりたいことを貫いた幸せ感もあったのかしら。
青 熱心な支援者は彼の最期までいたんですよね。晩年には、弟子達が碧梧桐先生に新居を進呈しよう! と奔走して家を建て、碧梧桐夫婦は喜んで引っ越します。でも、引っ越してすぐ彼は急逝してしまった。数え年で六十五歳でした。
俳 うーん、何だか子どもの頃のあだ名そっくりの人生ですねえ……腕白ヘイさん。
青 確かに。次回はそんなヘイさんの句を時期ごとに区切りながら、少し詳しく見てみましょう。

(続く)


解説

1.「日本」派=子規一派のこと。子規は新聞「日本」に就職し、句や論を多数発表したため、そう呼ばれた。
2.「枸杞の芽を摘む恋や村の教師過ぐ」=明治四十三(一九一〇)年作。自然主義小説のような句。
3.革マル派=戦後左翼運動の過激派で、革命的にマルクス共産主義を実践するとして、あらゆる「主義」を否定した。
4.「道の霜拾へるを近江聖人へ」=明治四十三年作。六朝風で揮毫した鮮やかな色紙が現存。


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100年投句計画

選者三名による 雑詠俳句計画




先選者 阪西敦子

 冬が来てしまった。秋が短かった、とは、天気があまり良くなかったことを恨んで言うことだけれど、そのせいもあるんだろうか、記憶自体がうすい。日記を買ったら、そんなこともなくなるんだろうか。冬のうちに次の年もやってきてしまう。そんなことを考えるのは、風邪が悪化してきたからだろうか、薬が効いてきたからだろうか。




狗尾草見しより終点まで睡る  鯉城
 狗尾草を目にしたのが、終点からどのくらい手前であったかは知らない。ほとんど終点の側であったのか、乗ってすぐに現れたのか。それが知れないのが狗尾草だともいえる。そのあたりから、景色は変化を失い、平坦となり、また懐かしくもなり、退屈にもなる。妙な安堵を与え、催眠するのかもしれない。目覚めたのちに残る最後の記憶は狗尾草。ひろびろとした眠りの時間である。




観覧車秋の光へひとつづつ  すりいぴい
 観覧車ひとつとは、全体のことではなくて、ゴンドラのうちのひとつのこと。ひとつひとつがあるところを起点として闇から光へ転じるところを通過して光の側へはいってゆく。省略によって生まれた余韻が秋の光を際立たせて美しい。

ジャグリング無重力なる秋の空  元旦
 ジャグリングのピンなり、駒なり、投げ上げられたものが、今、上がるでもなく、落ちるでもなく、秋の空にぴたりと止まったところ。きりりと張った秋の空が、宙の一点に留めているようだ。感覚から導かれた「無重力」に妙な実感。

金木犀朝の女の耳朶薄し  内藤羊皐
 寝ている間は知覚されていない金木犀が、朝、また私たちに戻って来る。昨夜の内はもっとふくよかに感じられていた女の耳たぶは、朝になるとほっそりしている。どの把握が正しいかはわからない、満ち、また引いてゆく。

停電の闇にラフランスの香り  有瀬こうこ
 停電にかかわらず、闇は視覚以外の聴覚を覚醒させる。中でも停電は唐突な闇。全く予期せぬ場で感覚の逆転が起こる。食卓であろう、飾りのように置かれていたラフランスが、急にその植物の実、あるいは食物としての存在を取り戻す。

冬木立アーモンドチョコレート噛む  あるきしちはる
 アーモンドチョコレートはアーモンドが中に包まれたチョコのこと。食べ方は様々だけれど、まずはあたりから溶かしてゆく。冬木立に入って歩みはそのままに、歯をアーモンドへ立てる。新たな味わいに進みながら、冬木立は続いている。




汀女忌の終わらぬ百均の話  港のヨーコ
行く秋や来たばかりだと思ひしに  健次郎
代休の駅に立ちけりそぞろ寒  野良古
日当たりてそこだけ無色生身魂  みやこまる
秋園や展望台へ砂利の道  波野
ネクタイが変(それ恋や)蔦紅葉  くらげを
パステルを広げる指や秋の雨  すみ
うたた寝の足へ日の射す秋の昼  あいむ李景
頬杖はジャズ聴く形秋の夜  藍人
木の実独楽ころり飯盒から蒸気  どかてい

阪西敦子(さかにし あつこ)
 1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。



先選者 関悦史

 先日、全国学生俳句合宿という催しがあって、神野紗希さんと一緒に講師として参加してきました。場所は私の家からさほど遠くない筑波山と霞ヶ浦でした。
 大学を出てしまうと合宿なるものに参加する機会はまずないので楽しかったのは楽しかったのですが、普段、句会には滅多に出ないのに、おかげで今年はもう六回も句会に出席してしまい、句会に出ない俳人というアイデンティティが崩れつつあります。




木犀や渡り廊下に二人きり  すみ
 関係は明示されていませんが、恋の気分の句でしょう。甘い匂いの強い「木犀」があることから、「二人きり」も、居心地の悪いそれではなく、期待感のあるものとなります。「渡り廊下」は空中の場合も地上の場合もありますが、「木犀」との関わりからすると、ガラスで両サイドが密閉される空中のものではなく、地上に密着した、古い校舎などの建築を思わせる。区切られながらも密閉されない空間が二人の距離感に見合い、爽やか。




観覧車秋の光へひとつづつ  すりいぴい
 どうということもない景色の写生ですが、「〜へひとつづつ」で、くどくど説明しなくてもゴンドラが次々に上がっていくさまが感じられ、ゆったりした時間の流れと、その中での観覧車の動きが感じられます。

日当たりてそこだけ無色生身魂  みやこまる
 あまり動きのない、おそらく室内の光景。目が室内の明るさに慣れているので、日の当たっているところは白飛びして見える。老親の人格的な要素は飛ばした、身体の実在感と危うさが拾えています。

やさしい怪物みたいにきのこ、毒茸  くらげを
 きのこが怪物みたいという比喩もあまり見かけず新鮮ですが、それだけだと子供っぽい見立てに終わる。「やさしい」と、最後の「毒茸」で一連の語りが生じ、その中で転調していて、どきりとさせます。

秋遍路古き駅舎にアイパッド  点額
 取り出して使っていることを表すのが「に」だけなので、やや詰まった言い方な気もしますが、現在の遍路はこうなのだろうというリアリティはあり。俗世との縁が全然切れない観光旅行のような秋遍路という皮肉も。

大流星ぼくも首相も難民に  土井探花
 「難民」というと日本人は大体、外から来るもの、あるいは海外の出来事としかイメージしませんが、国が壊されれば「ぼく」だけでなく、首相(≒破壊者)も母国を喪うという認識が鮮烈。「大」もこの場合良い。




青鮫の頭蓋を磨く神の手よ  KIYOAKI FILM
ゴンドラからゴンドラへ放られし檸檬  幸
さざめくや人より案山子多い村  あいむ李景
コスモスのその角を曲がることも旅  松田夜市
秋深し星みる会に黒い猫  てん点
末枯に日差し当たるを見る術後  のり茶づけ
攫猿と成るかも知れぬ後の月  内藤羊皐
七輪の秋刀魚に歓声ガーナ人  ケンケン
狗尾草見しより終点まで睡る  鯉城
秋鮭の皮はがるるや吾を評す  未貫


関悦史(せき えつし)
 1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。2017年第二句集『花咲く機械状独身者たちの活造り』、評論集『俳句という他界』刊行。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』他。



後選者 桜井教人

 念願だった一口馬主になった。父はディープインパクト、母の父はキングカメハメハという超良血の血統、しかも池江調教師の管理馬となれば期待するなと言う方が無理。まだ2歳でデビューもしていないが、夢ばかりが膨らむ。武豊を鞍上にGTにでも出走しようものなら仕事を休んででも応援に行ってしまうかもしれない。競馬は経済的傷みを伴う知的な推理ゲームだ。しかもその結果には運、不運という非科学的な要因も加わる。しかしその結果としての悲喜を仲間と共有するほうが楽しいということにおいては俳句と共通している。


特選

某私立女子大付属愛の羽根  ヤッチー
 「某」の部分は読み手に任されるが、付属という言葉から清楚で品のある生徒たちが浮かんでくる。登校の光景ともとれるし、募金活動ともとれる。紺の清楚な制服と赤い羽根の色の対比がきれいだ。募金活動ならきっと私も協力しそうだ。

長月や琥珀の中の虫の息  柊月子
 琥珀の中のごく小さな気泡、それが虫の息だと作者は言う。琥珀の中に閉じ込められた虫にも生命があったという事実、死して経つ長い年月。生物的には死かも知れないが、作者の発見によって今も生かされていると思うのは私だけではないだろう。

晩秋や訛りの重き郷の犬  風海桐
 訛りが重いとまで言ったところがいい。それと季語とのバランスがとても取れている。きっとこの地方は人の訛りもあるところなのだろう。温かな人たちと共に、犬もそれにふさわしく暮らしているのだ。


並選

龍淵に潜めり獏は夢を食ふ  港のヨーコ
無残やな無報酬の古案山子  芳香
けふあすに日記止めたしけらつつき  すりいぴい
十六夜や一気に切りしロングヘア  dolce
クリスマスわざわざ夜を作りたり  桂奈
よよと泣くお宮は倅村芝居   柝の音
戯言のいざ参らんや鷹の羽に  KIYOAKI FILM
胃に優し葛湯持ち来る末娘  レモングラス
失恋の三ヶ月後や渡り鳥  野良古
黙といふ誇示ある古碑や秋茜  出楽久眞
鶏千羽揺るる車や十三夜  もね
北斎の波の崩れて野分くる  みやこまる
秋雨後雲は恐竜鰐蜥蜴  しのたん
秋霖や立つも座るもどっこいしょ  波野
邯鄲へ燐寸振り消す小商人  暮井戸
赤子泣く鵙の泣く声いよよます  幸
湿地茸浮気せぬ人少数派  小市
木犀や昼のラブホのネオン管  凡鑽
茱萸の酒飲んで足裏マッサージ  ヤッチー
ソリストにハモリの増えて秋の虫  おせろ
秋澄めり糺の森を駆ける馬車  斎乃雪
ポケットの中の明日を烏瓜  小木さん
秋空に風の在り処やしらす雲  武彦
「ああちゃん」と呼びつつ歩みたき秋野  さより
霧産まる肺の奥よりまだ深く  不耳男
秋気澄むひとり至福のカフェオレ  ぴいす
霊峰へ頂き遙か落葉踏む  たあさん
いとこ婚の慣わしの村赤まんま  テツコ
舞茸のきしゅきしゅ口の中できゅるり  一走人
犬の息確かめている秋燈下  和音
天高く地にコーチャーの胴間声  松田夜市
木漏れ日を掴む手ちさし秋の風  てん点
蛍光灯一人唸れる夜寒かな  笑松
しぐるるやカフェの香りのにじみをる  点額
秋園やはしゃぎぶり良き異国人  24516
鵯のそこは牛舎だった処  のり茶づけ
極月の白くかがやく枕花  久我恒子
刺繍する吾子のイニシャル冬北斗  小雪
秋深しページ一枚めくる音  夏柿
紅葉して大人の玩具箱に鍵  ぐずみ
小走りで飲み屋へ向かう懐手  洒落神戸
秋園や指を折りつつ花数ふ  喜多輝女
秋天にくるり銀巴里てふ床屋  葉音
かくれんぼ君は太陽ぼくは月  うに子
宵闇や歩きスマホに浮かぶ貌  元旦
山間の空き家の庭に柿ひとつ  ぺぷちど
秋高し米寿迎え県庁  どんぐりばば
洗はれて仏の顔へ新甘藷  松ぼっくり
奥山に木地師一軒櫨紅葉  ひでやん
死ぬる日を思うて今日の冬支度  台所のキフジン
鬼女に問う黄落急ぐ理由など  藍人
秋ナスの木になりたくて伸び始む  青柘榴
取り除く煮干しの頭そぞろ寒  どかてい
コスモスやゆうらゆらゆら自分軸  かのん
口笛の風となりけり秋遍路  有瀬こうこ
百畳の野に群青の天高し  彩楓
金波銀波秋思の比率求めよ  土井探花
禅寺の眼下に揺れる破芭蕉  カシオペア
幸せを運ぶ鳩二羽秋の川  アンリルカ
御朱印にいならぶ寺の秋行くぞ  マカロン星人
窓枠に積もるため息冬銀河  クラウド坂上
吾が庭の実は鵯のアラカルト  ゆりかもめ
蓑虫や鼻をかめない次男坊  あるきしちはる
秋高し架橋工事の基礎の穴  空山
かじりかけの林檎ペンケースのことり  あおい
まらうどの真白きうなじ櫨紅葉  緑の手
あんパンとあんマン食べる子規忌かな  ケンケン
小鳥来るとなりの姉と立話  人日子
好きといふ手足と顔を阿波踊  鯉城
墓まいりあと一つなりいわし雲  柊つばき
落し水して防獣ネット外しける  ちろりん
一両車に居眠る油断秋の昼  坊太郎
起きぬ母待てばくしゃみやのど自慢  未貫
十六夜に少し緩んだ琴の爪  ぎんなん
稲刈の青き香を空に干す  ミセスコナン
降り止まぬ雨に火灯す金木犀  まんぷく
通販のカタログ毛布に○をつけ  エノコロちゃん


桜井教人(さくらい きょうと)
 1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回、29回俳壇賞候補。


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100年投句計画

自由律俳句計画



 君原、瀬古,宗兄弟、中山……の頃からのマラソンフリークとしては、気になるマラソンの季節になった。しかし今や日本選手は、マラソンがお金になると知って参戦しだしたアフリカ選手に到底太刀打ちできない。世界のトップとの差は五分以上もある。これはもうプロとアマチュアくらいの差に等しい。もはやサッカーのように子供の頃から留学してトップを目指したほうがよろしい。留学先はやっぱりケニアかエチオピアか……いっそ裸足で行け……。




父さんだって母さんだって穴惑う  もね
 秋の季語「穴惑」は、彼岸頃を過ぎても穴に入らず徘徊している蛇のこと。動詞なら「蛇穴に入る」という季語がある。したがって「穴惑う」とい言い方自体たぶんお目にかかったことがない。けど、そんな理屈を超えて「穴惑う」ということばに不思議なインパクトがある。事は蛇のことではなく、穴惑の季節のことでもなく、まったく現実的な父母のことである。「穴惑う」と言う不思議な言葉が妙に生々しく実生活の父母、あるいは人間の迷い多い人生を一気に浮き彫りにしている。まさに自由律の面白味がここにあると思う。




かたつむり踏んで途方に暮れる  あいむ李景
 「かたつむり甲斐も信濃も雨の中」と詠んだ飯田龍太先生が揚句をみれば、どんな顔をするのだろうか、と思わせるような魅力がある。ただ単に困っているのではない、途方に暮れているのだ。句に揺るぎがない分、途方に暮れるなら絶対かたつむり踏むしかない……そんな不条理な気にさせる。

辞書に挟みおくペラペラ愁思  さより
 「ペラペラ」という表現が、性懲りもなく秋の寂しさにとらわれ物思いにふけってしまう自分を俯瞰し揶揄していることを、上手く表していると思う。「辞書に挟む」ことで、かろうじてペラペラにならずに済んでいます。

蓑虫のワンルーム  ゆりかもめ
 なるほど、そう言われればの納得の句。それで、ともうひとひねり欲しいような気もするのですがこのあたりの潔さがこの句の魅力かもしれません。ぎりぎりのところで自由律俳句として成立しています。蛇足ながら、なるほど!というこの納得がなければ単なるメモになります。

鯨の肋骨空いちめんに秋  多満
 うろこ雲、いわし雲、ひつじ雲、さば雲……と秋の雲の呼称を詠むということは今更珍しくはありませんが、「鯨の肋骨」はなかなか迫力。いかにもありそうで、なにより秋の空の高さ広さとよく溶けあっています。それ以外はなにも詠んでいない素直さがなにより秋の空らしい。

くつしたがそろわぬふしぎ  出楽久眞
 洗濯機に残っているのか風で飛んだか、どこかで脱ぎ散らかしたか……当然対であるべきものが揃わぬことは不思議といえば不思議。ひらがなで書き切ったことで作意は消え、軽妙洒脱、禅問答のような妙な深みを得ています。




秋風通りすぎて鹿の糞  みやこまる
団地の果て秋桜揺れている  暮井戸
特急待ちの間にスリーアウトか  くらげを
全身全霊の蟷螂  小木さん
薄紙をぐように物忘れする母  一走人
窓越しに飛蝗の歯  和音
マラソンの前に新米研ぐ  ケンケン
力なく茶碗を膝に秋  人日子
虫鳴くと妻のこゑ  鯉城


並選

心開いて天日干し  中山月波
解説の要る句は苦手  芳香
我が身には無し名月に名句の力  健次郎
褒めれば又もやペペロンチーノ  柝の音
眼に水をぶつかける  KIYOAKI FILM
懸命なるはただただ美しき  レモングラス
自分の誤字はきづけない  野良古
秋麗ってどこに  幸
海面の芥へ小便する  小市
忖度を覚えた後妻の子  凡鑚
噂話の震源何処ああそぞろ寒  ヤッチー
持ってくる間引大根と土と噂話と  テツコ
百舌鳥絶叫すこれでもかこれでもか  笑松
カンパリソーダ舐める憂鬱  点額
楽しい句良い句面白くない句秋の雨  24516
門灯が切れかけていますよって言いたい  のり茶づけ
信号が狂ったように青  ちゃうりん
トイレットペーパーの芯も万華鏡  夏柿
山師の請負牛蒡掘る  ぐずみ
花一輪咲かず糸瓜の水取る  洒落神戸
空家に香る金木犀  喜多輝女
繰り出して小さき旗ふる胸のまえ  うに子
ノンアルで酔う十六夜  元旦
発電機の音消す秋雨あるオフグリッドの家  ぺぷちど
紅葉が枯れ野の色にそまる頃  どんぐりばば
秋より買い物難民  松ぼっくり
銀杏の実を唇に転がす  内藤洋皐
嫌が集った二日酔い  台所のキフジン
十月は三十日でよい  藍人
突然降り出した雨と金木犀  青柘榴
鼻炎の君に用はない  有瀬こうこ
声が出ない眼鏡が冷たい  彩風
魚跳ね水鳥跳ねて船頭の歌しずと流るる  マカロン星人
もう笑うしかない秋の長雨  空山
凩とあすなろと  きさらぎ恋衣
林檎かじれば北の空を吸い込む  あおい
七分おくれて朝寒の高速バスは  緑の手
赤い羽根黄帽子緑帽し黄色い声  ちろりん
意外に軽し烏瓜  坊太郎
見上げれば鈴なりの蓑虫  ぎんなん
花カンナ枯れ恋成就す  ミセスコナン
こんだけ燃やせばおかしくなるわさ化石燃料  まんぷく
空っ風ハンドル握れば人が変わる人多し  エノコロちゃん
ボールがあれば蹴る  遊人


自由律で再挑戦を!

ついて来て廻れ右して赤蜻蛉  みつよ
突然に一本だけの曼珠沙華  みつよ


きむらけんじ
 1948年生まれ。第一回放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。


「放哉賞」再興。自由律を動かせ!
第一回尾崎放哉賞 作品募集

応募締切 2017年12月10日(日)必着
投句料 
 一般の部 2千円(2句1組 何組でも可)
 高校生の部 無料(2句1組まで)

 一般の部 大賞 賞状、10万円 ほか
 高校生の部 最優秀賞 賞状、クオカード5千円分 ほか
送り先
 〒545−0041 大阪府大阪市阿倍野区共立通1−1−9
 (株)たまてばこ内 尾崎放哉賞事務局
主催 自由律俳句結社「青穂(せいほ)」

詳細は……
http://www.hosai-seiho.net/


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100年俳句計画

詰め俳句計画



今月の問題

次の(  )の中に共通する冬の季語を入れてください。

浜に寄す獣の骨や(   )
(   )魚の目に踏むBB弾


 詰め俳句ピンチヒッター歴も3カ月になりました。問題が出来たときは「これしかない!」って自信満々なんですが、皆さんの回答をいただくと「あれ……? この季語もいいんじゃない……?」と揺らいでしまいます。出題初心者なので、どうぞ暖かい目で応援(つまり解答)をよろしくお願いします!

 というわけで早速ですが……空山さんの野分立つ、柝の音さんの冬隣、うに子さんのそぞろ寒、こちら秋の季語です。今回は冬の季語を解答にしておりましたので、級外です。そして、24516さんの星銀河……冬銀河でもなく、銀河でもなく……。うーん、ごめんなさい、色々調べたのですが季節がはっきりしないので、級外とさせてください。

浜に寄す獣の骨や寒稽古
寒稽古魚の目に踏むBB弾
 しげこさん、三島ちとせさん。寒稽古の景として、ストイックな感じが伝わってきます。横目でああ骨だと確認しながら浜を走るのでしょうか。きっと裸足の寒稽古、びびんっと痛さが伝わってきました。1級。どかていさんは憂国忌。ゆりかもめさんは三島の忌。ちょっと荒々しいイメージとか、武器を連想させるところとか、似合っているように思います。2級。葉音さんは針供養。前句、もしかしたら、昔の釣り針が骨だったことを思い起こしている? 後句、つながりが見えにくい。4級。遊人さんは冬座敷。前句、座敷から見えるかどうか。後句、誰です遊んで片づけしてないのは! 3級。

浜に寄す獣の骨や寒鴉
寒鴉魚の目に踏むBB弾
 ジュミーさん、ちゃうりんさん。前句、骨に群がっているのかも。少し不穏。3級。後句は生き物の季語だと景がつかみにくいように思いました。出楽久眞さんは都鳥。前句、浜の景が見える。3級。青柘榴さんは冬の蠅。前句、骨の周りを飛び回っていると思うと、視点が骨に近くて浜がとらえにくい。4級。ぎんなんさんは冬の蝶。こちらは前句、力なくも浜を飛んでいるので、少し広がるか。3級。のり茶づけさんは石蕗の花。前句、石蕗の花は悼むかのように揺れているのでしょう。3級。小木さんさんの枇杷の花は優しいんだけど、枇杷の花の位置がわかりにくい。3級。

浜に寄す獣の骨や寒昴
寒昴魚の目に踏むBB弾
 KIYOAKI FILMさん、くらげをさん、元旦さん。久我恒子さんは冬北斗。天文系(星)の場合は、後句は冬の星の鋭さのような空気が痛さをぴりっとさせるように思います。前句、骨からの視点の切り替えをどう取るか。星を絞ってしまうと、視点がせわしないかも。3級。佳葉さんの冬銀河は骨の向こうに広がる星空が見えるように思います。斎乃雪さんの冬の星も、どの星か限定しない分、浜に広がりが見えます。2級。猫楽さんは冬の月。前句、冬の月光が獣の骨を幻想的にしそう。後句、月を見てたら踏んでしまった? 3級。あいむ李景さん、内藤羊皐さんは冬の朝。朝の散歩の結構驚く状況を想像しました。2級。

浜に寄す獣の骨や冬の雷
冬の雷魚の目に踏むBB弾
 みやこまるさん、凡鑽さん、ほろよいさん、夏柿さん、人日子さん。前句、何やらドラマティック。激しい音、そしてなんの獣か、海獣か。そして足に刺す傷みはまさに冬の雷のごとくって……すごい大きな痛みっぽい。2級。あるきしちはるさんは雪起し。こちらはさらに暗い空を思わせて、思くずっしりと湿った空気感もプラス。2級。レモングラスさんは冬の風。浜に吹く風の景が見えます。3級。片野瑞木さんは空つ風。冬の風に比べると、乾いている具合は後句に寄り添えるか。3級。小市さん、すみさん、鈴木牛後さん、河原撫子さんは虎落笛、明惟久里さんはもがり笛。前句、寒々しい感じ、骨に吹き付ける風が見える。獣と虎という漢字のつながり。後句、音に特徴のある季語なので、それが少し効いてないように思えました。2級。坊太郎さんは鎌鼬。後句、痛いの二乗ですけど、鎌鼬の方が痛くないですか!? 3級。ヤッチーさんは御講凪。親鸞己のあたりの穏やかな日和、前句は弔うようなそんな青空が見えそう。後句、穏やかな日の中の刺激。3級。かま猫さんは冬日和。冴えわたった晴天、前句ちょっと明るすぎる気が。後句、痛いけど、小さなものだから、これくらいあっけらかんとした感じでもいいのかも。2級。ちろりんさんは冬嵐。こちらはまた、浜も痛さも荒れている感じ。3級。エノコロちゃんは冬旱。寒く乾いた太陽との日々。前句は骨がだんだん乾いて軽くなっていくさまを思う。3級。健次郎さんは凍霞。こちらは前句、さらにしんしんと冷えていく海に骨。きゅっとする。2級。芳香さんの雪催、前句のどんよりひんやり加減がいい。後句、こんな天気だと踏んでしまいそう。2級。桂奈さんは六花。前句、六花としたことで獣の骨を優しく包む雪を思う。dolce@地味ーずさん、藍人さんは初時雨。前句、しっとりと濡れた感じがいい。どちらも後句、足の裏の感覚と季語が少し離れているのかな、ということで3級。

浜に寄す獣の骨や神無月
神無月魚の目に踏むBB弾
 中山月波さん、洒落神戸さん。前句、神と生死のようなものの繋がりを感じる。後句はどう取ればいいのか少し悩んだ。こんなに痛いのは神様がいないせいだ!みたいな? 3級。野良古さんの神送りは行事に分類されて、神が旅立つことなので、となると後句がわかりにくい。4級。彩楓さんは年つまる、柊月子さんは年の暮。前句、年末のちょっとさみしい感じ。後句、こちらは年の暮のせわしさの中で、なんでこんなところに!感。季語の味わいが違ってくる。2級。ひでやんさんは冬に入る、前句、冬に入ったことで浜の様子や質感が鋭くなる。後句、痛いのも冬に入ったせいだ! 1級。笑松さんは冬浅し。前句、浜、骨に対しての印象が少し軽いかな。後句は「うわーふんじゃったー!」くらいの痛み。2級。一走人さんの冬深しは前句、浜の冬を獣の骨は余計深めているよう。後句、冬の進み具合で痛みの伝わり方が違う気がする。1級。すりいぴいさんは春近し。前句、骨の向こうにまた生命が見えてくるのは春の文字の効果。後句、痛いけどちょっと救われる。2級。


今月の正解

浜に寄す獣の骨や冬ざるる
冬ざるる魚の目に踏むBB弾
 たあさんさん、きさらぎ恋衣さん。今回は、冬ざるるという懐の深い季語に包まれた世界観を目指してみました。骨の海に濡れた感じや冷えていく感じ、浜全体の静けさを引き出してくれたかな、と。後句は小さな痛みなんですけど、冬である鋭さと、これも冬になったせいだ!というちょっとしたくやしさのようなものも詠みたいな、と……。どうでしょうか。えいっ、初段にさせてください……!

 今回は皆さんの解答にしっくりくるものがいろいろあってううう、となっています。推敲って難しいなあと改めて思います。なお、今回はマイマイ師匠からの解答はいただけませんでした。来月は押しかけて解答もらおうかな……。


解答募集中!

次の(  )の中に共通する冬の季語を入れてください。

(   )を朝日の窓に無人駅
潮騒に鳴り出しそうな(   )よ

12月20日締切 …結果は2月号に掲載


山澤香奈(やまざわ かな)
 第3回俳句甲子園出場。句集シングル『線路とぶらんこ』(マルコボ.コム)。


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100年投句計画 投句方法



雑詠俳句計画
自由律俳句計画
詰め俳句計画

 「雑詠俳句計画」では、寄せられた投句を一括して、各選者が選句します。各選者に宛てて個別の投句を行うものではありません。

2月号掲載分締切 12月20日(水)

投句方法

 投句先コーナー名
 俳号(無ければ本名の名前のみ)
 本名
 電話番号
 住所

 以上の必要事項を書き添えて、編集室「100年投句計画」係までお寄せください。メールの場合は、件名を「100年投句計画」としてください。
 「雑詠俳句計画」「自由律俳句計画」はそれぞれ2句ずつまで投句できます。また、「詰め俳句計画」は季語1つのみを投稿できます。
 各コーナーの投句は、ひとつにまとめて送っていただいても構いません。

メール宛先
magazine@marukobo.com

投稿専用ページ
http://marukobo.com/toukou/

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(「俳句ポスト365」のページ参照)


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短歌の窓


選者
短歌誌『未来』会員 渡部光一郎


特選

鼻歌の芒の束を得意げに門にばさりと置いて立ち去る だりあ
 「鼻歌の」がたくみで、助詞「の」がよく機能している。主客の省略もここでは効いている。


並選

遥かなるスワニー河を下りゆくサーフボードで波を掻き分け 暮井戸
 「遥かなる」とあるから、「スワニー河」はアメリカ民謡だろうか。大きい情景が浮かぶ。

いちまいにおもてとうらがあることをしらないままにあなたをつつむ 時計子
 なかなか哲学的な一首。「おもてとうらがあることをしらない」の主客は作中主体と考えてよいのだろうか。「おもてとうら」があることを自覚しながら「あなた」をつつんでいるが、それを「しらない」と言っている。おもしろい。

カトレアの花芽ふくらむ窓際の仕舞忘れの秋の風鈴 芳香
 「秋の風鈴」は当然しまい忘れなので言わずもがな。歌意はよくわかる。


コメント

美しき四季を宝の秋津洲神も仏も永の住処に 二宮健次郎
 大きいものを材にしているが、下の句までもあまりにおおきく、難しい。

秋飛ばしいきなり顔を出す寒気試運転兼ねストーブに火を 青柘榴
 言いたいことはよく分かるが、上の句だけでほとんど言い切ってしまった。直接説明してしまうことなく、上句の内容を読者に伝えてほしい。

ふっつりと古き絵本は閉ぢられて少年すでに作り笑ひす 久我恒子
 ドラマが始まるようで始まらない。残念。

母送る日のそれぞれにそれぞれにスカートの裾話し相手に 台所のキフジン
 「それぞれにそれぞれに」が、十音節も使った割には効いていない。もう少しわかりやすい表現を。

難病の我の両足両手首氷のようだ冬の来訪 幸
 「両足両手首」が「氷のようだ」では少し弱い気がした。ほかに譬えるもので適切なものはないか再考を。

夏はぜの葉っぱ落とした枝添えて秋の気配を生けてみました 彩楓
 下の句でずっこけてしまった。上句のと下句がまるきりお互いの説明になっていて、たいへんもったいない。

君の香のリンスインシャンプー探しても戻れはしない二十歳の秋 有瀬こうこ
 大きく字余りだがなぜか押し込まれるように読んでしまった。

 みなさまこんにちは。もうずいぶん寒くなりました。惰弱な選者はすでにエアコンをきかせ、半纏まで出して、今からこんなに冷えるのでは真冬は一体どうなるのだろうと心配しています。さて、短詩形文学は観念的・説明的な物言いをきらいます。短いかたちの中に、手触りのあるものを詠みこんで余情を出すのが常道といえます。それと、自分が作るばかりではなく、どうかひとの書いたものを読んで、どんどんいろんな手法を取り入れてください。かならずよくなります。ではまたごきげんよう。


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自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



評 菅 紀子


 はや師走、今年は10月下旬に台風に祟ら れました。私は東京に足止めされフライトを3度変更し、遅延した便にやっと乗機するもさらに滑走路で待たされる始末。季節がずれると日本語の俳句は作りにくそうですが、英語だとかえって自由に作れるかもしれません。
 さて先日あるところから、外国人のため例になる子規の俳句を選ぶよう頼まれました。急なので子規全集を開いている暇はなし、考えあぐねているときたまたま路面電車に乗ると車内の俳句ポストに俳句が書いてありました。これだ、と英訳して伝えました。外国人ビジターの方、作句のヒントになればいいですが。

汽車道をありけば近し稲の花

walking
close to rice flowers
by the railroad


1.
skill in both
literary and sports
as principle
a snake gourd swing

建前は文武両道烏瓜  片野瑞木

supposedly
good at both studies and sports,
a snake gourd


2.
wild geese migrate
a can is kicked
sound the tone F

蹴り上げる缶はファの音雁渡る  片野瑞木

Wild geese migrate
a can kicked up with the sound
of F scale


3.
My mother sick down,
O happy morning!
stand up,scarecrow!

病む母の幸いな朝案山子立つ  KIYOAKI FILM

a better morning
for my bedridden mother,
a scarecrow stands up


4.
i like playing
Whats change heaven?
my lord... winter!

よく祈り天地変わるか神よ冬  KIYOAKI FILM

I've prayed my Lord,
will the universe change?
winter

KIYOAKI FILM クイズがしたくて、クロスワードしてますが、根気続かず。単語暗記の本とか、英語参考書のほうが役に立ちそうな……個人的には英語、聞くより読むほうが続きます。

紀 祈りはpray。playは遊ぶです。受身的に聞くより主体的に読むということは根気がある証拠でしょう。


5.
Ducktail hairstyle
at the age of sixteen
Brown-eared Bulbul has come

鵯来十六歳のリーゼント  ほろよい

ほろよい 「リーゼント」の英訳には、[regent hairstyle]、[regent cut]などがありましたが、鳥つながりで[Ducktail hairstyle]が面白いかな……と選んでみました。

紀 つながっていいと思います。


6.
foghorn
decently
to foreign cementery

きつちりと外人墓地へ霧笛かな  久我恒子

foghorn
reaches the foreigner's cemetery,
unerringly


7.
borrowed
a dog eared volume-
Indian summer

小春日の借り来し本の折り目かな  久我恒子

Indian Summer
dog ears in the book
I borrowed

久我恒子 菅先生、HAIKU MASTERS の日本語での放送は、黒羽編でした。愛媛編は、Archivesより観たものです。言葉足らずで失礼いたしました。
 そしてニュースです。拙句が、HAIKU MASTERSで紹介されました。本名での投句ですが、夢のようです。ずっと菅先生の教えのもとにここまで来ました。ありがとうございます。今回はまぐれかもしれませんが、これからも投句し続けますので、ご指導をよろしくお願いいたします。

紀 久我さん、HAIKU MASTERS デビューおめでとうございます。私は寄り添っただけ、久我さんの感性と実力のなせるわざです。投句を続けてくださいね。


8.
morning after a rain
gushing sping gushing
with shuffle-beats

雨後の朝シャッフルビート泉かな  明 惟久里

morning after rain
a spring along with
shuffle-beats


9.
Mom sings modestly
""Mommy in the Sunset""
as for the evening cicala

うるはしくかなかなのうたうたふはは  明 惟久里

mom sings lovely
"Mummy in the Sunset"
song of the evening cicala

明 惟久里 菅紀子先生、No239でも、ご教示ありがとうございました。
 なるほど「lawn」にすると「afternoon」と脚韻に近くなり「radio」とも収まりよくなりますね♪ 勉強になります。
 「楝」は栴檀です。栴檀の実は秋に黄熟し、暫くするとまさに麹塵色になり、落葉後もかなり長く枝に残る石果です。数珠に使う実のひとつだからでしょうか、お寺の方や祈りの句で見かけたりします。私は、新しい環境でこの実のように末長く……という祈りを込めて詠みました。
 今回提出の1句め、シャッフルビートのリズムに合わせた2行目にしてみました。
 2句め、「かなかなのうた」童謡「夕方のおかあさん」です。2行目は既訳されたタイトルで、時代的にでしょうかMummyでした。が、Mommyに代えました。蝉も音の具合と神話の背景イメージでcicadaではなくcicalaを使ってみました。お忙しい毎日でいらっしゃると思いますが、どうぞ笑顔で10月をお迎え下さいませ。

紀 明さん、おかげさまで多忙でも笑顔で過ごしています。
 泉の綴りはspring ですね。それからmummyはミイラの意味なので、既訳の誤字ではないでしょうか? 引用符はシングルかダブルで。かなかなの歌を短い俳句の中で説明するのは至難の業でしょう。


10.
Town chairman
finish soup-kitchen
in autumn festival

町会長炊き出し終えし秋祭り  すずき徳三郎

autumn festival
the town head finishes
food distribution


11.
Autumn festival is over
gat glad tidings
the seventeenth nigh

祭すみうれしき便り十七夜  すずき徳三郎

a joyful letter came
Luna's seventeenth evening,
autumn festival is over

すずき徳三郎 1句目、『プレバト』の俳句査定で、三遊亭圓楽師匠が詠んで一発で特待生になった「盆踊り」がお題の句が「町会長犬を預かる盆踊り」でした。自分の同年代の知人が町会長をされててそのままの俳句です。
 2句目、祭りの日が誕生日だった同知人のお祝い兼慰労会お誘いに快諾の返信あり。


紀 すずきさん、1句目のchairmanは少し大げさ、soup kitchenは貧者のための給食施設で少し意味合いが異なるようです。2句目、夜の綴りはnight、ですね。


12.
grass turns red
the rivers flows to the see
while changing the name

川は名を変えて海へと草紅葉  彩楓

changing the name
the river flows into the sea
grasses turn red

紀 一本の川が名を変えて海へ流れ込むので川は単数形にしました。海の綴りはseaですね。


13.
the sound of wind
blowing the sky
a persimmon which was left

天空を渡る風音木守柿  彩楓

sound of wind
blowing high in the sky,
a persimmon guarding the tree

彩楓 今回は何だか上手く詩にならなくて……説明になってしまいました。むつかしいですね。


14.
It's dark to the inside in a house,
and then
winter strawberries

家の奥まで暗く、そして冬苺  チャンヒ

darkness
to the back of the house,
and the Rubus buergueri

紀 冬苺の正式名はRubus buergueriです。winter strawberryという単語はなく、winter berryはありましたが、冬期に紅い漿果をつける北米産のモチノキとあり、別ものでした。


15.
in the winter sky,
the Plastic bag is
still floating

冬空に浮かんだままのレジ袋  チャンヒ

winter sky
a plastic bag is
still in the air


菅 紀子(かん のりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通 翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学非常勤講師。(Hailstone Haiku Circle blog ICEBOX Contributor)(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)


自作の俳句およびそれを英語俳句にしたもの(2句まで)を募集!
応募先
WEB http://marukobo.com/eigo/
Email eigo@marukobo.com
2月号掲載分締切 12月20日(水)


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百年歳時記


夏井いつき

第54回


 有名俳人の一句を紹介するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月紹介鑑賞していきます。

烏瓜あれは迷い家だつたのか  小川めぐる
 「迷い家」とは山中に忽然と現れる幻の家。そこを訪れた人に不思議な富をもたらすという『遠野物語』の伝承です。
 「あれは」やはり「迷い家」だったのか。山中にあった豪奢な屋敷。立派な黒い門、牛小屋には牛、馬小屋には馬、広い庭には紅白の花、鶏の遊ぶ庭、朱と黒の膳と椀、火鉢にたぎる鉄瓶の湯。人のいない静けさ。恐ろしくなって逃げ帰ってきたけれど、気が付けば手には「烏瓜」だけが握られていた。あれ以来、「烏瓜」を見る度に、やはり「あれは迷い家だつたのか」という思いが去来する。
 季語「烏瓜」の本意を『遠野物語』の中に見つけた一句。この「烏瓜」はいつまでもいつまでも虚の世界に鮮やかな朱を吊るします。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』10月27日掲載分)

まひたけはてんぐのなづきもりはみづ  クズウジュンイチ
 「なづき」ってなんだろう?と首をかしげます。辞書を引きます。「なづき=脳、脳髄、脳蓋骨などの古名」と分かった瞬間、ハッ!と心が慄きます。「舞茸」を脳に喩える句はいくらでもありますが、「なづき」という言葉で表現されるとしっくりきます。しかも「てんぐ」のそれとなると、いよいよ山の空気が滲んできます。
 さらに下五の着地がきれいです。「まいたけ」は「てんぐ」の「なづき」みたいな色と形で育っているよ、そしてこの「もり」は「みづ」でできているような美しい湿気に包まれているよ。こんな森でとれた「まひたけ」はさぞ生き生きと大きいに違いありません。そしてシャキシャキと美味いに違いありません。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』11月10日掲載分)

まひたけはやうにほとほるほとのやう  凡鑽
 眼球に映る平仮名を一字一字認識しつつ、単語として理解しようと脳が動き出します。「舞茸はやうに?」知っている単語を脳が検索します。「夜雨?」さらに続く「ほとほるほと」……なんだか分からない。諦めて、下五から推測していこうと頭を切り替えます。
 「ほとのやう」あ!「陰(ほと=女性の陰部)」か。そこが分かれば、「ほとほる」が「熱る(ほとぼる=ほてる。熱気を発する )」であると解読ができます。判じ物を解いた快感と共に、意味が押し寄せてきます。「まひたけ」のひらひらした印象、「やう」を喜びつつひっそりと熱を帯びつつ育つ舞茸。「ほとほる」は「まひたけ」にも「ほと」にも意味を広げつつ、妖しい存在感を醸し出します。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』11月10日掲載分)

横這払ひ開票の灯の煌々と  このはる紗耶
 「横這」とは、半翅目ヨコバイ上科の昆虫の総称。3〜5oほどで農作物に害を与える虫だと言われています。灯に集まる横這を払いながら「開票」作業が始まります。上五「横這払ひ」の七音は鬱陶しさが表現された字余り。中七「開票」の一語で、一気に映像が立ち上がります。慌ただしく、しかし慎重にすすむ開票作業。さわさわと開かれる紙の音、人の動き、声。後半「〜の灯の煌々と」によって、上五「横這」がぶつかってくる感触、手で払う感触などが読者の皮膚に再生されます。開票をすすめながら、心ひそかに応援する党は横這いの状態が続いている……かのような気分も醸し出す。「横這」という名の面白さも加味して読みたくなる一句。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』11月3日放送分)

大豆煮る泡たくましき新麹  かま猫
干されゐる晒し千枚新麹  樫の木
 「麹」は、酒や味噌等を醸造する原料である米や大豆等に麹黴を生やしたものの総称。「新」の一字がついて晩秋の季語となります。前句、「大豆」を「煮る泡」のなんと「たくましき」ことか。その「泡」から生まれる今年の「新麹」のなんとかぐわしいことか。「泡たくましき」という措辞が季語「新麹」の鮮度を上げます。
 後句は「干されゐる」から始まりますが、それが「晒し」であること、「千枚」も干されていることによって、何かの作業現場に違いないと想像が動き出します。下五に季語「新麹」が出現したとたん、酒蔵か味噌蔵かと映像が立ち上がってきます。「晒し」というモノと「千枚」という数詞で労働の現場がありありと再生されます。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』10月27日放送分)


百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
松山市公式サイト『俳句ポスト365』http://haikutown.jp/post/
などに投句された俳句を紹介します。


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俳句の街 まつやま

俳句ポスト365



協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


金曜日優秀句
平成29年10月度


櫨紅葉(はぜもみじ)


塩飴を舐め百名山の櫨紅葉  ぐわ
櫨紅葉噴く変電所疼き出す  小泉岩魚
はぜもみぢ曲がればおかめ蕎麦の店  くらげを
櫨紅葉B群の猿帰りゆく  さるぼぼ@チーム天地夢遥
櫨紅葉おほきな猿は殿を  クズウジュンイチ
櫨紅葉ここでは犬を喰つたといふ  ぐ
櫨もみぢ将門の首飛んだとか  ヒカリゴケ
櫨紅葉千年積もる都かな  霞山旅
あめゆじゆとてちてけんじや櫨紅葉  めいおう星
櫨紅葉恋の終わりは晴れが良い  柝の音


ゆゆしくもこれも喪の色櫨紅葉  花屋


烏瓜(からすうり)


烏瓜採るかんばせを蔓が殴つ  Kかれん
烏瓜さうだかう云ふ朱だつた  さとうりつこ
鳥は知る風の抜け道烏瓜  うに子
烏瓜錆びゆく風の種子として  めいおう星
烏瓜跨いで猫又の帰還  理酔
烏瓜空がだんだん苦くなる  24516
烏瓜いくつ浮かべてみづ昏し  長谷川凜太郎
どの蔓にどの子吊るすや烏瓜  呑舞
貧乏はなかなか死ねず烏瓜  田中耕泉
苦いのか甘いか死ぬか烏瓜  谷元央人


烏瓜あれは迷い家だつたのか  小川めぐる


12月の兼題
公式サイト内の「俳句投稿」より作品をお寄せください。(※投句期間を過ぎますと投稿ページは次の兼題の募集に自動的に切り替わります。ご投稿はお早めに。)

投句期間 11月30日〜12月13日
ラグビー
(三冬/人事)
1823年、イギリスのラグビーという町の学校で、サッカーの授業中に生徒がボールを抱えて走り出したことをきっかけに誕生した。日本には明治32年(1899年)、イギリス人の英語教師により伝えられた。

年末年始は「俳句ポスト365」の更新をお休みさせていただきます。12月14日より募集を開始する兼題(「石蓴(あおさ)」を予定)の投句締切は新年1月10日となります。また、兼題「探梅」の結果掲載は、新年1月15日〜の週となります。

参考文献 『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


 「俳句ポスト365」は携帯電話からもご参加いただけます。
 「俳句ポスト365」公式Facebookページ開設中! 公式サイトに設置しておりますリンクよりお入りください。毎回の兼題のお知らせを中心にお伝えしながら、皆様の返信欄への書き込みもお待ちしております。


 募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。


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一句一遊情報局



協力 南海放送


金曜日優秀句
平成29年10月度


立待月(たちまちづき)

最終のシャトルバス立待月と  八木ふみ
立待や臨時ニュースがなお続く  石川焦点
靴擦れの小さき疼き立待月  どかてぃ
逆剥げは小さな痛み立待月  妹のりこ
実験を終えてコーヒー十七夜  莎草
竜脳香焚かれ立待の月へ  妙
懐に猫眠らせて十七夜  ひなぎきょう
尾を立てて立待月を纏う猫  鞠月
立待月ほのかに湿る猫の耳  ラグナ
立待月子規の湿った咳ひびき  犬のコロ
気づかれぬように立待月を貼る  江口小春
立待や守衛と交わす鍵の音  咲く空色
夜勤も楽し立待月とカフェオレと  かをり
立待のハープ波打つ楽器店  野風
とふとふと立待月を産んだ海  豊田すばる
あちこちに切株ほのか立待月  マーペー


立待月妻はときどき木と話す  香野さとみ


秋園(しゅうえん)

立ち上がる蔓の香青し秋の園  ほろよい
せせらぎは光の破片秋の園  樫の木
ビル風の底や三坪の秋の園  蓼蟲
ビルに映る雲豊かなり秋の園  マイマイ
永遠に空は借り物秋の園  鞠月
秋園を奏でる指のよく動く  だんご虫
このご縁まとまりそうよ秋の園  抹茶最中
秋園に花嫁を待つ白い椅子  松山雪水
乳飲子を囲む人の輪秋の園  柳児
親権の話は尽かず秋の園  葦たかし
術前の髭剃る窓に秋の庭  浜の富ちゃん
乱丁を揃へる司書や秋の園  高尾彩
秋園の廃船からっぽの空  一走人
透明な翅を拾いて秋の園  あるきしちはる
見えぬもの真昼ゆきかふ秋の苑  ひそか


たれかれのチェスの駒めく秋の苑  めいおう星
秋園やキリンはときどき泣くのです  月の道




島蜜柑摘んで屋号は団子石  ほのぼのオムライス
ヒロシマの話へゆっくり団扇風  妹のりこ
相撲部は蒲団の足りぬ合宿所  土井探花
魂の半分移る布団かな  抹茶金魚
団子屋に集う文豪菊日和  下町おたま
十六夜の背黒腰広団子虫  だんご虫
火焔型土器団栗をいっぱいに  富山の露玉
団栗のときにころがる車内かな  華緒
団栗を拾った右手だけは無垢  一斤染乃
団栗を踏んだ足から眠くなる  のんしゃらん
文机に団栗君の来た証  野風
特老に空きなく屋根を打つ団栗  まぴこ
菊香る船出岩倉使節団  はまのはの
息を呑む記者団爽籟を王手  このはる紗耶
合唱団一行月光の中帰る  篠原そも


数学者の旅団北京の秋へ発つ  野良古


新麹(しんこうじ)

初代梅吉九十六歳新麹  小野更紗
三河屋の四百年や新麹  越智空子
千年のもやしもふもふ新麹  ほろよい
納屋の藁くしゅりと眠り新麹  遠音
空に雲生まるるやうに新麹  ひそか
しんかうぢ星生まれつつ滅しつつ  めいおう星
新麹息づく熱や月に暈  小泉岩魚
神孕むための熱もて新麹  海田
八百の神に長き名新麹  富山の露玉
霊峰の麓ひかめく新麹  薄荷光
金剛峯寺二石釜あり新麹  ふぢこ
新麹尾留川とは小さき川  篠原そも
龍の欠伸か新麹の香甘たるし  土井探花


大豆煮る泡たくましき新麹  かま猫
干されゐる晒し千枚新麹  樫の木



投句募集中の兼題

投句締切 12月3日


季語ではない兼題です。「川」という字が詠み込まれていれば、読み方・用い方は問いません。季語は当季を原則として自由に選んでください。

(テーマ)中予
「中予」をテーマとして俳句を詠んでください。特定の語を詠み込む題ではありません。また、季語は当季を原則として、自由に選んでください。


投句締切 12月17日

年の夜 (としのよ)
(仲冬/時候)
大晦日の夜のこと。「除夜」ともいい、除夜の鐘を鳴らしたり除夜詣に出掛けたりなど、越年行事が行われる。

正月(しょうがつ)
(新年/時候)
一年の最初の月。陰暦の時代には「一月」(冬季)ではなく「正月」や「睦月」(春季)と呼ぶことが一般的だった。


投句締切 12月27日
※年末のため締切日が早まっております。


季語ではない兼題です。「場」という字が詠み込まれていれば、読み方・用い方は問いません。季語は当季を原則として自由に選んでください。

(テーマ)南予
「南予」をテーマとして俳句を詠んでください。特定の語を詠み込む題ではありません。また、季語は当季を原則として、自由に選んでください。

参考文献『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句宛先
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとにしたものです。俳句ならびに俳号が実際とは異なっている場合がありますのでご了承ください。


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今回のお題句に対する投句から次のお題句を選び繋げてゆく

疑似俳句対局


選者 美杉しげり


今回のお題句

赤とんぼ母さん爪を切りましょね  柝の音


 今月も多彩な句が揃いました!


候補句

いつの日か世界征服鷹の爪  すぎ本たかし
 例によって一番乗り句のご紹介。鷹なら世界征服できそう……ですが、まさかトウガラシの方の鷹の爪だったりして。それはそれで面白いかも?

赤まんま遠きあの日のあの香  芳香
 しみじみとした句なのですが……残念ながら、俳句対局には「前句の季語の一部を季語として頂くのは不可」というルールがあります。お題句の季語が「赤とんぼ」なので、この句の季語の「赤まんま」だと、実戦の俳句対局ですと減点の対象。かなり早い投句だったので、こういう事もありますよね。ドンマイ!
 さて。今回は「爪」を自立語として選んだ方、多数。発想も味わいもそれぞれ違います。

爪たてて瓜に爪ありからす瓜  凡鑽
深爪をわびて柔らかめの蜜柑  青柘榴
爪先で出来確かめる霜柱  笑松
爪切りて赤子湯船へ冬うらら  斎乃雪
爪を磨ぐ音のみ響く霜夜かな  越智空子
 「爪」と「瓜」だけを漢字表記にした、機知あふれる凡鑽さんの楽しい句。青柘榴さんの句のふんわり優しい味わい。子供時代に戻ったような(私にも覚えがあるある〜)、笑松さんの句。赤ちゃんの小さな小さな薔薇色の爪が見えてくる斎乃雪さんの句。そして、越智空子さんの句は霜夜の静けさがしみじみと描かれて。爪の句、まだまだ続きます。

爪立ちて探すレコード秋灯  あいむ李景
爪先のしびれる祖母の干菜風呂  星埜黴円
独立の銃を置く爪哇星冴ゆる  大槻税悦
大釜の秘薬へ涙と鷹の爪  中山月波
漱石忌硯に猫の爪の痕  ぐずみ
爪に残る黒き刹那や初時雨  鈴木牛後
 しまいこんでいて、久しぶりに聴くレコードでしょうか。あいむ李景さんの句は秋の夜ならではの味わいという気がします。星埜黴円さんの句のお風呂はかなり熱そう、そして芯から温まりそう! 大槻税悦さんの句の「爪哇」はジャワですね。爪でこういう言葉が出てくるとは、意表をつかれました。中山月波さんの句の「鷹の爪」はトウガラシと思ったけれど、秘薬ならば鳥の方の鷹の爪も有り? ぐずみさんの句、傍らには漱石のあの小説が置かれているのかもしれないですね。そして牛後さんの句、「黒き刹那」がいろいろ深読みできそう。とりあえず、私の脳内では火曜サスペンス劇場的な音楽が流れております。
きつぱりと切りし一枝寒椿  健次郎

秋暑し縁を切れたるためしなく  野良古
指切りの小指の熱や秋の宵  小市
小鳥来る切妻屋根の小窓かな  柝の音
蔦色の切手貼る指風爽か  出楽久眞
寒暁や菜切りの音と味噌の香と  洒落神戸
 「切」を選んだ方も多かったですね。
 健次郎さんの句、「きつぱり」が寒椿によく似合います。野良古さんの句は、やるせない気分が季語に託されて。どこか初恋の連想させる小市さんの句。さりげなく、でも爽やかに「小鳥来る」を描いた柝の音さんの句。出楽久眞さんの句は「蔦色」が季語ときれいに響き合ってます。洒落神戸さんの句はどこか懐かしい、昭和の台所という印象。

父母の墓行きも帰りも草紅葉  藍植生
凍雲や雲母ばかりを集めをり  小川めぐる
母音あええあえっていえあ息白し  ひでやん
 「母」三句。藍植生さんは正攻法で「(父)母」を詠まれたのに対して、小川めぐるさんは「雲母」と球種を変えてきました。ひでやんさんは更なる暴……いや変化球!めぐるさんの他の投句「小便の程良く切れて冬夕焼」もなかなか大胆な句でしたねー。

赤き闇鍋靴下をまづ掬ふ  土井探花
コーランと聖書を読む真っ赤な冬  24516
睦月かな赤べこの尻のびやかに  久我恒子
 土井探花さんの句、「赤き闇鍋」が只事でない感じですねえ。案の定、いきなり靴下を掬うとは。24516さんの句も「真っ赤」が意味深。冬には「赤」という色がよく似合います。
 久我恒子さんの句、赤べこは郷土玩具でしょうが、もしかしたら本物の牛かもしれませんね。お尻から腿への線がのびやかでまろやかで、鳴く声ものんびりと。
乾鮭を噛み切る夜の芯澄みて  すりいぴい
 この句、団欒というよりは、なんとなく独りの食卓を連想させますね。「夜の芯が澄む」という発想のせいでしょうか。そこに惹かれました。


次回お題句

凩や母の名を持つ考の船  夏柿
 迷いましたが、次回お題句は夏柿さんのこの一句に。既に亡くなられたお父様の船についている名は、今も健やかでおられるお母様の名――という事なのでしょう。「母」と「考」だけで、そのあたりを表現している点が上手いなあ、と。しかも早い投句でした!
 ご紹介できるスペースがなくて申し訳ないのですが、お便りも嬉しく拝読しております。
 来月もよろしくお願い致します。


美杉しげり
 第8回俳句界賞受賞。4年ほど前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。

毎月25日頃に、投句フォームにてお題句を発表します。投句締切は毎月末日。

疑似俳句対局投句フォームアドレス
http://marukobo.com/taikyoku/


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THE BEATLES 213 PROJECT


第3回
「ロックンロール! ザ ビートルズ」

文 夜市


 リバプール時代からビートルズが繰り返し演奏してきたカバー曲の数々。中でも特にロックンロールの名曲、名演と言われるものをピックアップしてみました。今回聞き返してみて、ある意味オリジナル曲以上にメンバーの個性が際立つ部分もあるのだなと驚いたりもしました。


ツイスト アンド シャウト

若獅子の咆哮枯れて冬の月  斎乃雪
 デビューアルバム「プリーズ プリーズ ミー」のラストナンバー。オリジナルは黒人ボーカルグループのアイズレー ブラザーズ。いわゆる一発採り、ワンテイクのスタジオライブで収録されたジョン レノン一世一代の絶唱です。
 一日を唄いづめでジョンの声は潰れる寸前。採り直しのきかない極限状況下で見せた恐るべきハイテンションのシャウト、そしてビートルズというライブバンドのクオリティーの高さ。それはまさに若獅子の咆哮、そして最後に冬の月の静寂がやってくるのでしょう。

大渦の海よりやがて鷹柱  久我恒子
 こちらのジョンは若獅子ではなく鷹。シャウトという大渦の海からやがて渡って来るのでしょう。

ジョンの声潰れ満月へシャウト  チャンヒ
アイズレーの黒を挟みて白き秋  井玉


ロング トール サリー

底抜けの乱痴気騒ぎ鳥頭  猫正宗
 ジョンにツイスト アンド シャウトあらばポールにはロング トール サリー。イントロなし、アタマから熱狂のハイトーンボーカルが響き渡ります。オリジナルはロックンロールの大御所リトル リチャード。1964年に4枚組EPのタイトル曲として発売されました。
 ツイスト アンド シャウトと同様、ジョンやポールが最高のボーカルを見せた時には4人そろってハイレベルな演奏になだれ込むのがスタジオライブ時代のビートルズの特徴。ことに二度目の間奏以降の疾走感、ドライブ感はまさに乱痴気騒ぎとしか言い表しようがありません。

居待月ドリフ踊るサリーダメだこりゃ  風来松
 ビートルズの武道館公演で前座のザ ドリフターズがこの曲を演奏したのだそう。仲本工事氏がなかなかの美声で歌ってます。

秋の虹のっぽの君は優しかった  だりあ


ロール オーバー ベートーベン

運命も悲愴も汗もぶっとばせ  ツバメ号
 セカンドアルバム「ウィズ ザ ビートルズ」収録。ボーカルはジョージ。オリジナルは元祖ロックンローラーとも言うべきレジェンド、チャック ベリーの代表曲です。
 「ベートーベンをぶっとばせ、チャイコフスキーに言っときな!」みたいなかなりぶっとんだ感じの歌詞なのですが、ジョージのボーカルはあくまでもきっちりと優等生風。オリジナルなどはるかに凌駕して異次元の演奏へ導くジョンやポールのボーカルと比べるといかにも規格内といった感じです。しかし逆にそれがジョージ ハリソンのロックンロールの味になっているような気もしてきます。

木の実独楽踊り跳ねたる台の上  暮井戸


ロック アンド ロール ミュージック

闇汁や先客の名はチャック ベリー  時計子
 4枚目のアルバム「ビートルズ フォー セール」収録。ボーカルはジョン。こちらも大御所チャック ベリーのオリジナルで、武道館公演の幕開けに演奏された曲でもあります。ライブバンド時代、どうやらジョンがチャック ベリー派、ポールがリトル リチャード派という棲み分けがあったのかもしれません。
 それにしても闇汁にチャック ベリーとは妙なことを考える人もいるもの。実際にいたらびっくりするだろうけどなあ。

初雷のロックに揺れる武道館  ツバメ号


第5回 兼題曲
テーマ「アルバム『ヘルプ』より」
 ヘルプ
 涙の乗車券
 アクト ナチュラリー
 イエスタデイ

兼題曲を詠んだ俳句を左記までお送り下さい。
専用フォーム http://marukobo.com/beatles/
専用Email beatles@marukobo.com
締め切り 12月20日


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鑑(み)るという冒険


〜映画篇 演劇篇〜

文&俳句 猫正宗


第六十二回
『ワンダーウーマン』&『廃墟』

 世界興行収入850億円を越え、女性監督の歴代最高興行収入を打ち立てた『ワンダーウーマン』。それは同時に、稼げない、ヒーロー物、アクション物は撮れないと言われていた女性監督の立場をも変えたかもしれない。
 ヒットの理由の一つは、それまであまりヒーロー映画に興味を示さなかった女性層が多く足を運んだことだ。
 そんな本作、当初日本での宣伝活動は批判を浴びることが多かった。なぜなら主人公をラブストーリーやロマコメのヒロイン的な扱いをしていたからだ。ほとんどの観客はヒーローとしての彼女を観に来ていたのに。確かに本作にはラブもコメディもあった。(監督のお気に入りが『スーパーマン』〈リチャード・ドナー監督〉というのは、まさに納得)だが、それは主人公が現実と出会うことによって、正義や悪が少女時代に信じていたほど素朴ではないと知る入口であり、絶望に打ちのめされながらも再び自分の信じるものの基準とするものが愛だということにすぎない。思うに、日本の映画会社は米国本社辺りから女性にアピールせよと厳命されたのだろう。しかし今までヒーロー映画を宣伝してきた人たち、おそらく男たちは、それをあまりに雑に安易にやってしまった。結果、それは観客の求めるものから最も遠いものに。事実、日本での初動はやや鈍いものであった。
 もし、本作の広報を女性が担っていたならば、日本でもより観客が増えたのではないか。いま日本で働き盛りの女性たちは、とっくに愛と正義の女性ヒーローを体験した世代だからだ。男たちだってそれを知らないはずはない。何しろ予告のナレーションに月野うさぎを演じていた三石琴乃を起用し、かえって皮肉な結果を招いていたのだから。

人も無き枯野に凛とマグノリア

 映画は第一次大戦の欧州を舞台にした作品だが、こちらは第二次大戦後が舞台の演劇。
 『廃墟』(サラダボール公演、構成・演出:西村和宏、出演:横関亜莉彩、藤原薫、たたらともみ、他、'17年9月23日、24日、シアターねこ)は、敗戦直後の日本、歴史学者で民族主義者の父、活動家の長男、特攻崩れのアプレの次男がそれぞれの戦争に対する向きあい方、戦後の生き方で激しく対立する。作者の三好十郎は玉音放送を前に、悲しみでも怒りでもなく子供のようにただ泣き、その理由を知りたくてこの戯曲を書いたという。三人の言葉は、程度の差こそあれ、おそらくどれも三好の本音なのだろう。正直ここまでむき出しの本音だけで演劇って成立するものかと驚かされた。むろん下手を打てば、それはただ陳腐なものになるだろう。戯曲、演出、役者、みな力があるからこそ作品として成立していたのだ。そして僕たちは突き付けられる。結局この三人の誰の言葉ともまともに向き合ってこなかったのではないか。今そのつけを支払おうとしているのではないか、と。
 もしかしたら、ちょっと前まで「いや、そんなわかりきったことわざわざ言うのはやめようよ。それはダサすぎるよ」と言わずにすませてきたことを、今、敢えて言わなければならないのではないか。そんな風に思わされた作品だった。

廃墟たる心にもあれ秋桜


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岡田一実の

句集の本棚



平面
金田咲子 著

発行:ふらんす堂(2017年初版)
179ページ
定価:本体2,400円+税

 著者の第二句集。
葬りなかちらりときのこ山が見え
梅を見に来て山滝のおつる音
見えてゐて童女の首に凧の糸
端正な真昼とおもふ夏の雨
 夏の昼に雨が降る。雨だけの世界に包まれると安らぎにも似た心地だ。「端正な真昼」という感覚が瑞々しい。
白牡丹おほぶりな夜が来つつあり
人いつか上流にむき花芒
 なぜだか風を感じる。微かな一体感によって希望のようなものが感じられるのは「上流」という方向のせいだろうか。
秋日濃し樹木とおのれいとしき位置
木に倚れば木もよりて来よ十三夜
寒の最中に石を見て石に触れ
校廊の匂ひ花冷えより静か
やはらかき猫のお腹と榠の実
おのが眼が外に向くときひゆるなり
野焼けしてたつぷりとある土と星
冬眠の地にもの降らす小鳥たち
外科病棟ときに産声鳥渡る
死は平面しづかに春の逝きにけり
囀りのことさら甘し葬儀場
 「郭公」同人。



小野あらた 著

発行:ふらんす堂(2017年初版)
199ページ
定価:本体2,400円+税

 著者の第一句集。
しぼませて浮輪の紐の長きかな
水筒の暗き麦茶を流しけり
弁当の醤油の余る小春かな
店先の小雨に濡れし日記買ふ
 路面の文房具屋か本屋、年末には平積みで日記が売られている。日記を買うには雨に濡れていない綺麗なものを多くの人は買うが作中主体は小雨による濡れを受け入れている。新しい日記と自分を繋ぐ小雨。ささやかな抒情を感じる。
母の日やマッサージ機に顔震へ
秋冷やチーズに皮膚のやうなもの
春光や飯にかけたる塩見えず
白菜を震はせてをる鍋の泡
川底に引つ掛かりたる夏蜜柑
梅の無きところ反りをり梅筵
 皆が見ていて通り過ぎてしまう景色であるが、このように俳句にされると驚く。すっきりした描写によってその背景である梅を干す人の生活感をも想起させる。
冬ぬくし注ぐと動く紙コップ
壺焼の一滴垂るる炎かな
扇風機ややありて飛ぶメモ用紙
遠山のかりそめのあを麦を蒔く
鉢植に何も咲かせず冬日向
 「銀化」「玉藻」「群青」所属。装丁、中原道夫。


岡田一実(おかだ かずみ)
 2014年「第三回 大人のための句集を作ろう!コンテスト」優秀賞受賞。2014年「浮力」にて現代俳句新人賞受賞。現代俳句協会会員。「いつき組」所属。「らん」同人。第二句集『境界 border』(マルコボ.コム)。


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mhm通信


第81回

文 雪花


「白猪の滝祭り」句会ライブ

 秋晴れの11月3日。私たちが白猪の滝祭り会場に着いた時には、既に多くの人が集まり、句会ライブの発案者であり依頼者の烏天狗さんによって投句箱も賞品も用意されていました。
 参加賞の蜜柑食べたさに投句をする人もいます。それ以上に、毎年の事ながら賞品の箱には、てっぺん米、白菜、大瓶の梅干し、大袋の銀杏等があふれていて、助っ人のいつき組強力メンバーも羨ましがる事しきりです。
 白猪の滝に来たからには、いざ滝吟行!
 投句箱を烏天狗さんに任せて滝へ向かいます。台風で橋が流された事など被害が報道されていましたが、橋は直り、道も整備されていました。
 「ゼイゼイ、ハアハア」30分以上登ったご褒美は、滝といっぱいのマイナスイオンと、色づき始めた木々と、滝まで来た者だけが引ける、くじ引。
 私達が滝を楽しんでいる間にも、投句は次々と進みます。
 以前は「句会ライブやりますよ。」「投句しませんか?」と声を掛けるのに忙しく、滝に行く時間もなくなったり、評判のつきたてお餅を買い損なったりしましたが、今は、毎年ここで句会ライブがある事が認知され、組長の種蒔き、プレパト効果絶大で、積極的に投句してくれます。
 なかなか句の作れない子にはしんじゆさんがアシストしました。
 1時半に投句を締め切り、いよいよ選句。投句数は、先生がまとめて持ってきて下さったのも入れて70句になりました。滝祭りを楽しむ句、台風の被害を心配した句、祭りで売っている農作物、おにぎり、お餅の句など、心暖まる句が集まりました。
 あねごさんの軽妙な話術で入賞句が発表されます。
 「天」の句は、

ランドセルリュックに代えて文化の日

 選句者の一同が絶賛の、小学4年生、そお君の句でした。
 「地」の句

爪痕を横たへ白き秋の川

は、なんと、そお君一人で持ちきれない賞品を手伝って持ったお父さん、踏野正東風さんの句でした。
「地域住民の方が守り育てている地域イベントに俳句が彩りを添えられる事を嬉しく思います。個人的にはスポーツを始めて俳句から離れていた息子が、即吟で天を取ったことに驚きと悔しさが……。」と正東風さん。
 今年もアットホームな白猪の滝祭りで句会ライブができ、参加して下さった皆さん、依頼・準備等々して下さった烏天狗さん、手伝って下さったいつき組の方々、ミニシクラメンを賞品に出して下さった越智空子さん、ありがとうございました。
 秋の日差しで顔がヒリヒリするほど焼け、うどん、おにぎり、お餅、お汁粉を完食して、烏天狗さんに「何しに来たんか」と笑われましたが、滝でマイナスイオンをいっぱい浴び、沢山の笑顔に会え、楽しい句に出会い、元気をもらいました。
 皆さん、来年も11月3日文化の日に、白猪の滝祭り句会ライブでお待ちしております。ぜひご参加を。


 mhmでは松山市内外問わず会員を募集中です。原則、毎月最終金曜日19時からマルコボ.コムにて定例会を行います。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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朝の見る句


最終回

文 蜂谷一人


月冴ゆる超絶技巧練習曲  加根兼光

 「常々思っていたのが、ポリーニの弾くショパンのエチュード全曲のこと。硬質に内在する叙情」。句集のあとがきにそう作者は記しています。硬質と叙情。この言葉を目にして私が思い浮かべたのは、「受胎告知」でした。新約聖書に記された一場面。ある日天使ガブリエルがマリアの前に舞い降りて、やがて「大いなる者、いと高き者の子」と呼ばれるべき男の子を産むことを告げます。ダヴィンチ、フラ・アンジェリコら多くの画家がこのシーンを描いてきました。向かい合う天使とマリア。理知的な天使に対して驚きの表情を浮かべるマリア。言葉に対して感情で応じる彼女。知と愛。硬質と叙情。そこには二項の対立と融合が描かれています。相容れない二つを同時に満たすこと。それは宗教や芸術の世界でしか達成できないこと。冴える月と練習曲は硬質と叙情の象徴なのでしょうか。そうだとすれば、作者が俳句に求めるものの大きさに驚かされる一句なのかもしれません。


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新聞記事に隠された俳句を発掘する

クロヌリハイク


黒田マキ


子規 随筆評価 淋しげに

子規 あずまやに愛 置かれて る

7 人 の清水 を題材にした俳句

「日本」 の陸羯南 が作った 毛布

子規 碁を楽しんだ 庭 の 石

囲碁 棋士ら 3月下旬 に 野球 した

(2017年10月26日 愛媛新聞より)


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100年俳句計画 掲示板



テレビ、ラジオ

NHK Eテレ『NHK俳句』
 日曜6時35分〜7時(再放送 水曜15時〜15時25分)
 夏井いつきが第3週選者を担当
12月17日(日)、再放送20日(水)
募集兼題 「凍鶴」または自由
投句締切 12月10日必着
投稿は葉書1枚に1句。選者名、兼題、俳句1句、名前、年齢、電話番号明記。
宛先 〒150ー8001 NHK「NHK俳句」係
ホームページからの応募も可
http://www4.nhk.or.jp/nhkhaiku/

NHK 総合テレビ(四国四県域)
 「四国 おひるのクローバー」内
 隔週火曜『夏井いつきのムービー俳句!』
12月5日(火)、19日(火)11時30分〜

TBS系列局 全国ネット
 『プレバト!!』
毎週木曜 19時〜19時56分
 夏井いつきが俳句の査定を担当

南海放送
 松山市政広報番組『大好きまつやま〜しあわせ未来塾〜』
毎週火曜 20時54分〜21時(再放送 日曜11時40分〜11時45分)
 夏井いつきが塾長として出演

南海放送ラジオ
 『夏井いつきの一句一遊』
毎週月〜金曜 10時〜10時10分
  「一句一遊情報局」のページ参照

FMラヂオバリバリ
 『俳句チャンネル』
毎週月曜 17時15分〜17時30分(再放送 火曜7時15分〜7時30分)
投句募集兼題
「冬館、熊」12月3日締切
「数え日、手鞠」…12月17日締切
 WEB http://www.baribari789.com/
 mail radio@baribari789.com
 FAX 0898(33)0789
  投句には本名、住所をお忘れなく!
  「天」の句にはキム・チャンヒのイラストポストカードが贈られます。

 各番組の放送予定は変更される場合がございます。新聞などで最新情報をご確認ください。


執筆

松山市の俳句サイト
 『俳句ポスト365』
http://haikutown.jp/post/
 「俳句ポスト365」のページ参照

テレビ大阪俳句クラブ
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」(夏井いつき選)
  毎週日曜タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井いつき選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。
 朝日新聞松山総局(〒790−0003 松山市三番町4−9−6 NBF松山日銀前ビル)まで。


イベント、講演等

100年俳句計画大忘年会
12月2日(土)18時30分〜21時
・いよてつ高島屋9Fローズホール(愛媛県)
 参加申込受付は終了しています。
問合先 マルコボ.コム
電話 089(906)0694

第16回瀬戸内海俳句大会表彰式
12月3日(日)
 当日句募集 9時〜12時15分
 表彰式 13時30分〜16時30分
・中島総合文化センター(愛媛県)
問合先 瀬戸内海俳句大会実行委員会
電話 089(997)1181

愛南町三校合同句会ライブ
12月6日(水)13時30〜15時30分
問合先 内海公民館
電話 0895(85)1021

帝塚山学院PTA学芸講演会
 夏井いつき句会ライブ 〜あなたも今日から俳人です〜
12月8日(金) 13時30分〜15時30分
・帝塚山学院同窓会ホール(大阪府)

夏井いつき句会ライブ 八女市
12月10日(日) 14時〜16時
・八女市民会館 おりなす八女(福岡県)
 一般 1500円
 友の会 1000円
 高校生以下 500円
問合先 八女市民会館おりなす八女
電話 0943(22)5332

長崎県平戸高校 夏井いつき句会ライブ
12月11日(月) 10時〜12時
・平戸中部地区公民館(長崎県)
問合先 長崎県立平戸高校
電話 0950(28)0744

夏井いつき句会ライブ 西川アイプラザ
12月16日(土) 14時〜16時
・西川アイプラザ(岡山県)
 前売り 2500円(全席指定)
 当日 3000円
問合先 西川アイプラザ3階総合事務室
電話 086(234)5877

夏井いつき講演会 南あわじ
12月17日(日) 14時〜15時30分
・南あわじ市中央公民館(兵庫県)
問合先 南あわじ市中央公民館
電話 0799(43)5038

NHK Eテレ「俳句王国がゆく」公開収録
12月23日(土)13時30分〜15時30分
・板野町文化の館 さくらホール(徳島県)
 要観覧申込。入場無料。
 「郵便往復はがき(私製をのぞく)」に以下を記入してお申し込みください。
 往信用裏面 郵便番号、住所、名前、電話番号
 返信用表面 郵便番号、住所、名前
 返信用裏面  何も書かないでください。(抽選結果を印刷してご返送いたします)
宛先 〒770−8544 NHK徳島放送局「俳句王国がゆく」係
問合先
NHK徳島放送局
 電話 088(626)5970
板野町役場
 電話 088(672)5980

夏井いつきのクリスマス句会ライブ
12月24日(日) 13時〜15時
・アサコムホール(大阪府)
受講料
 会員 4212円
 一般 4644円
申込み WEB、電話、窓口にて
問合先 朝日カルチャースクール中之島教室
電話 06(6222)5222
https://www.asahiculture.jp/


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魚のアブク



読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは他の投稿に添えてお寄せください。


すみ 初めて投句します。ドキドキです。

片野瑞木 青木先生、俳子さん、お帰りなさい。電波系の雑談に頑張ってついて行きます。

KIYOAKI FILM 映画コラム読むと映画見たくなる。今年二回しか映画館に行けず。

出楽久眞 今年も「壺の碑」全国俳句大会に参加してきました。昨年は組長の講演でしたが、今年の宮坂先生の芭蕉についての講演も興味深いものでした。小中学生の表彰もあるのですが表彰だけなので、大会に若い参加者が増えるといいなあと思います。

ほろよい 香奈さんの詰め俳句、「魚(さかな)の目に踏む」ってどんな景??……って悩んでたら、一走人に「うおのめ」じゃないん……とは言え、さてどうなりますやら。

点額 今回より俳号を点額と変更いたします。南亭骨太はJAZZ句会のみになります。

元旦 上京の折、子規庵に行ってまいりました。偶然にも10月14日の子規の誕生日でした。思わぬ誕生日プレゼントで、絵葉書と記念切手をいただきました。春に訪れたときは、昼休みで閉まっており、中に入ることができませんでした。再訪してようやく庭のヘチマと鶏頭を見ることができました。



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鮎の友釣り


第233回


俳号 誉茂子(よもこ)

前回、アンリルカさんへ 木曜カルチャーのアイドル乙女のアンリルカさん。繊細な感性で丁寧に読み解く選評にいつも引き込まれます。夢見る少女の句から、人間の内面を深く掘り下げた句まで句柄の広さにも驚かせされます。

写真 今年、矢野リンドさんとベルフラワーさんと念願の居酒屋「ほやけん」へ行きました。俳号を付けていただき、ドキドキの即吟にも挑戦。俳句バー「キャラバン」では、その俳号をイメージしたカクテルを作っていただきました。また、行きたいなあ。

俳号 父母の名前「茂」と「誉」をいただいて、誉茂子としました。

次回、あいむ李景さんへ 平成28年のオフ会で席が隣同士になり、帰りの電車も一緒だったというご縁が始まりです。李景さんは、私には思いも付かぬことを考えていたり、感じていたり……。私はいつも感心したり驚いたりです。さりげなく詠まれる愛猫の句は優しいお人柄が溢れていて大好きです。これからもよろしくお願いします。


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告知



春夏秋冬(しき)笑顔
まつやま福祉
五七五

主催
松山市社会福祉協議会
有限会社マルコボ.コム(ふくし句会・ハイクライフマガジン『100年俳句計画』選句)

協賛
JAえひめ中央 社会福祉協議会賛助会員


福祉をテーマにした
秋の五七五結果発表


会長賞
 秋霖や母を誘ひて飛鳥乃湯  撫子(松山市)

優秀賞
 あばあばとばあちゃんわらう秋うらら  ちま(徳島県)
 補装具を着けて花野の人となる  渡邉竹庵(千葉県)
 天高し空気を入れる車椅子  森田欣也(松山市)

入賞
 缶コーヒー今日は買はずに赤い羽根  dolce(西条市)
 秋日和盲導犬の尾の高く  蒼鳩(愛知県)
 祖父はまだ秋の神輿を担ぐ役  竜胆(松山市)
 ドア押さへ交はす会釈に竹の春  すりいぴい(大阪府)





JAZZ句会主催
ハイクライフマガジン『100年俳句計画』共催
MOTOSHI KOSAKO
SOLO JAZZ LIVE

ジャズハープ奏者、古佐小基史さんのソロライヴ!

12月10日(日) 13:00開演 開演30分前開場

参加費 3,500円(ワンショット付)
会場 白方ビル1階 JAZZ BLEND 
 松山市中央2丁目1238 井村歯科医院の久万川を挟んで東隣

15:00〜16:30頃、(ライブ終了後)第117回JAZZ句会を開催します。(参加希望者のみ)
最優秀句にはキム チャンヒによる俳画をプレゼントします。

お問い合わせ先 蛇頭 090-2828-8657 または 100年俳句計画編集室(キム)





生まれてから現在までの代表句募集

 1月号特集は毎年恒例、皆さんからお寄せいただく自選3句を掲載する「代表句集」です。代表句は、来年10月制作予定のスケジュール帳(裏表紙)にも掲載予定です。沢山の方の参加をお待ちしております。


募集内容

対象者 本誌をマルコボ.コムで定期購読されている方のみ
「あなたの生まれてから現在までの代表句3句」一人一俳号
「代表句についてのコメント」コメント全体で100字以内を厳守
お名前、俳号(ふりがな)、年齢、住所、電話番号を必ず明記の上、
郵便、メール、FAXで、宛先、件名を「代表句集2018」として本誌編集室までお送り下さい。また、インターネットの専用応募フォームもご用意しています。

 俳号と俳句には、読み仮名を付けてお送り下さい。年齢は鑑賞の参考とするため句集に掲載させていただきます。御了承下さい。

応募締切 12月5日(火)必着

専用応募フォーム http://www.marukobo.com/3ku/





大人げないって、言われたい。(お花の妖精さん作)
第16回まる裏俳句甲子園

日時 2018年1月7日(日)
  予選 9時30分集合
  本戦 13時00分〜(12時30分開場)
場所 松山市立子規記念博物館(松山市道後公園1-30)
入場料 500円
エントリー料 700円(エントリーには別途入場料500円が必要です)

当日パンフレット広告募集中(1口3000円〜)

お問い合わせ
  Eメール mhm_info@e-mhm.com
  電話 089-906-0694 マルコボ.コム内(担当:キム)





律川エレキ 掛軸展

12月1日(金)〜 10日(日)
愛媛県美術館 南館2F
入場無料
開館時間 9:40〜18:00(最終日は16:00まで)
休館日 12月5日(火)

律川エレキ(桃ライス)
自分のことをワシとよぶ婦人グループ会員。
ハイクライフマガジン『100年俳句計画』にて「俳人に捧げる愛のつぶやき」連載中。


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編集後記


キム チャンヒ

 今月号の特集の当初の企画では、子供たちのためのジャズライブを開催し、そのライブを観た子供たちに俳句を作ってもらおうというものだった。ライブの途中に俳句を集め、優秀賞を選んではどうかという意見もあった。しかし、「折角のプロフェッショナルのミュージシャンによるジャズライブなのに、子供たちがライブを観ながらひたすら俳句を考えるなんてもったいない」というのが、僕が打ち合わせの最初に思ったこと。子供たちには、その演奏を無心に全身で味わって欲しい。
 実行委員会の方々と何度か話し合う中で、JAZZ句会メンバーが即吟し、ジャズの演奏の背後にその俳句を表示する、ジャズ俳句セッションを行うことになった。そして、そのセッションを見て、俳句が作りたくなった観客の方のみ俳句を作って頂き、後日広報誌などで発表をする予定。実際のライブでは、ジャズと俳句が融合し、ジャズ初心者も、俳句初心者も楽しめるイベントとなった。
 ジャズのリズムに無意識に体が動き出すように、俳句のライブで出てくる俳句に感化され、自分も無性に俳句が作りたくなってくる。そんな新たな俳句イベントの可能性を感じた日でもあった。


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次号予告


242号 1月1日発行予定

生まれてから現在までの代表句2018


お得で便利なマルコボ.コム直販定期購読! 巻末の案内をご覧ください
お申し込みの方へ、毎月末頃に最新号を送料無料でお届けいたします!
(住所変更の際は必ず編集室までご連絡ください)

『HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画』は以下の書店でもお買い求め頂けます。

愛媛県
 明屋書店 ※一部店舗のみ
 ゆらり内海(愛南町)
 原田書房(今治市)
 子規記念博物館(松山市)
 紀伊國屋書店松山店
 ジュンク堂書店松山店


HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
2017年12月号(No.241)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子

2017年12月1日発行