100年俳句計画 2017年11月号(No.240)


100年俳句計画 2017年11月号(No.240)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


巻頭リレーエッセイ
三瀬明子


特集
子規 漱石生誕150年記念
第五回龍淵王決定戦


好評連載


作品

百年百花
 都築まとむ/高橋白道/希望峰/樫の木

新 100年の旗手
 吉井潤/風来松

新 100年への軌跡
 俳句 宇佐美友海/小鳥遊栄樹
 評  平山南骨/十亀わら


読み物

美術館吟行/マーペー

Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳 朗善)

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

ラクゴキゴ。/らくさぶろう

近代俳句史超入門/青木亮人

百年歳時記/夏井いつき

鑑(み)るという冒険/猫正宗

句集の本棚/岡田一実

mhm通信/蓮睡

朝の見る句/蜂谷一人

クロヌリハイク/黒田マキ


読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画/桜井教人、阪西敦子、関悦史
 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/山澤香奈
 100年投句計画 投句方法

短歌の窓/渡部光一郎

百人百様E-Haiku/菅紀子

俳句ポスト365

一句一遊情報局

疑似俳句対局/美杉しげり

THE BEATLES 213 PROJECT/夜市

100年俳句計画 掲示板

魚のアブク

鮎の友釣り



俳画プロレス



告知

編集後記

次号予告





巻頭リレーエッセイ



二人組の法則
三瀬明子 

 どうでもよいことなんだけど、何年も前から気になっていることがある。吾が松山の、街ゆく二人組の、特に同年代同性二人組は、かなりの確率で似たテイストのファッションをしているという法則。連れだって歩いているわけだから、それなりに気が合うのだろうし、気が合うから服の好みも似てくるのだろうと理屈はわかる。休日の大街道を歩いてみてほしい。女子も男子も、マダム世代も、多種多様なペアルックが出現するから、街歩きと人間観察が面白くて仕方ない。意外とおじさんペアは少ない。そもそもおじさんはペアで街を歩かないのかも。もちろん制服は法則の対象外だ。
 私のこの密かな楽しみを、最近、高2の娘に打ち明けたところ、娘もこの人間観察にはまってしまったらしいが、二人で歩くと少しめんどくさい。「お母さんガン見しすぎ」。二人組を発見しようとウハウハしている母の方が、娘にとっては気になってしまうようだ。


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子規 漱石生誕150年記念

第五回龍淵王決定戦ト




 去る8月26日坂の上の雲ミュージアムにて、第五回龍淵王決定戦(主催マルコボ.コム、共催松山市)が開催された。今回の龍淵王決定戦は、11月5日(日)に松山で行われる俳句対局イベント「第3回松山市長杯」への出場を掛けた大会でもあり、会場は静かな熱気に包まれていた。

 今大会の審査員は4名。
松本勇二さん(愛媛県現代俳句協会会長、海程、吟遊所属)
青木亮人さん(愛媛大学教育学部准教授、本誌「近代俳句史超入門」連載中)
岡田一実さん(らん同人、いつき組所属、本誌「句集の本棚」連載中)
神野紗希さん(現代俳句協会青年部部長)
 予選を含め、全試合の俳句にそれぞれ点数をつけて頂いた。

予選
 まずは、予選。龍淵王決定戦のトーナメント進出をかけて集まったのは、恋衣さん、川又 夕さん、若狹昭宏さん、きとうじんさん、ひでやんさん、脇々さん、猫正宗さん、鈴木総史さんの8名。ひでやんさん、脇々さん、鈴木総史さんは、当日観戦に来て、急遽参加となった。
 予選は席題句から、俳句対局のルールに従って(俳句対局のルールは、本誌9月号特集を参照)、漢字または自立語を頂いて、ぞれぞれ一句作り、その自分の俳句から、同様に更に一句作る。2句作るための制限時間は、4分。2句の俳句の合計点が高い方から4名が、トーナメント戦に勝ち抜ける。また、俳句点が同点の場合は、作句の早い順番に勝ち抜ける。ちなみに本大会の席題句は、生誕150年を記念して、全て正岡子規の俳句。
 会場が息を飲む無音のまま4分が過ぎ予選が終了。
 点数の高い順に、脇々さん、鈴木総史さん、恋衣さん、きとうじんさんの4名が勝ち抜けた。
 トーナメント戦は予選1位の4位、2位と3位とが対決。また全ての対局が、制限時間10分の5句勝負となる。


予選内容

席題句 桃太郎は桃金太郎は何からぞ

恋衣
あかときの泉に投げる金貨かな
  俳句点7.75(松本7、青木8、岡田7、神野9、減点0)
様々な人の金曜日の秋思
  俳句点7.25(松本8、青木8、岡田6、神野7、減点0)
合計 15.00

川又 夕
からうじて反論の国金盞花
  俳句点6.75(松本7、青木8、岡田6、神野6、減点0)
檸檬しりしり台所より異国
  俳句点6.75(松本8、青木8、岡田7、神野4、減点0)
合計13.50

若狹昭宏
金色になりたし油虫の居る
  俳句点7.25(松本8、青木8、岡田6、神野7、減点0)
金風の大街道の真中行く
  俳句点6.50(松本7、青木8、岡田6、神野5、減点0)
合計13.75

きとうじん
金太郎飴食うて秋声を味あう
  俳句点7.75(松本9、青木8、岡田6、神野8、減点0)
食うてからかまきりの葛藤よ
  俳句点7.00(松本8、青木9、岡田6、神野5、減点0)
合計14.75

ひでやん
秋風や太郎は跳んで伊予の海
  俳句点7.00(松本7、青木9、岡田7、神野5、減点0)
さわやかに鹿島の海へ飛び込みぬ
  俳句点6.75(松本7、青木8、岡田6、神野6、減点0)
合計13.75

脇々
鈍感な幾何学者なり蚯蚓鳴く
  俳句点8.50(松本9、青木9、岡田7、神野9、減点0)
鈍色に果つ七月の発電所
  俳句点7.75(松本8、青木9、岡田7、神野7、減点0)
合計16.25

猫正宗
炎天や太陽射落とせるものなら
  俳句点6.50(松本7、青木8、岡田7、神野4、減点0)
噴射炎の風来るロケットの夏
  俳句点6.75(松本7、青木8、岡田6、神野6、減点0)
合計13.25

鈴木総史
椋鳥は太し夕空は重し
  俳句点8.00(松本8、青木8、岡田7、神野9、減点0)
秋雨の重さの姪を抱いてをり
  俳句点8.00(松本8、青木9、岡田7、神野8、減点0)
合計16.00


第一試合
先手 脇々
後手 きとうじん

 予選の勢いに乗って、最初から飛ばす脇々さん。「ひかりよりみづは流れて原爆忌」で7.5の高得点をたたき出す。きとうじんさんは「流れ流れて良夜をほくそ笑む」「小鳥来る出陣式を終へてから」で追い上げるも、序盤の差を詰められず、脇々さんの勝利。


第一試合内容

席題句 生身魂七十と申し達者也

先手 脇々
何者になるか青虻の祠
  俳句点6.50(松本7、青木8、岡田5、神野6、減点0)

後手 きとうじん
祠よりひかりは何を秋の虹
  俳句点6.50(松本7、青木5、岡田5、神野5、減点0)

先手 脇々
ひかりよりみづは流れて原爆忌
  俳句点7.50(松本8、青木7、岡田7、神野8、減点0)

後手 きとうじん
流れ流れて良夜をほくそ笑む
  俳句点6.75(松本7、青木6、岡田6、神野8、減点0)

先手 脇々
泣いてきて笑って帰る大花野
  俳句点6.75(松本8、青木8、岡田5、神野6、減点0)

後手 きとうじん
夕月夜笑うそばから去りし猫
  俳句点6.00(松本7、青木6、岡田7、神野4、減点0)

先手 脇々
猫の出て猫の帰ってゆく紅葉
  俳句点6.50(松本7、青木6、岡田6、神野7、減点0)

後手 きとうじん
小鳥来る出陣式を終へてから
  俳句点6.75(松本8、青木7、岡田5、神野7、減点0)

先手 脇々
陣取り合戦雪のつもっているところ
  俳句点7.25(松本7、青木9、岡田7、神野6、減点0)

後手 きとうじん
戦いの後の流星はこうこうと
  俳句点6.00(松本6、青木6、岡田6、神野6、減点0)


結果

先手 脇々
  俳句点34.50 残り時間3分48秒 時間点0.0
  合計34.50 勝

後手 きとうじん
  俳句点31.00 残り時間4分58秒 時間点0.0
  合計31.00 負


第二試合

先手 鈴木総史
後手 恋衣

 大きく動いたのが、鈴木さんの3句目「残菊や夜明けの色のカフス持ち」。それに対し恋衣さんは「秋の夜を尾翼やリンドバーグの忌」。当日がリンドバーグの忌であったことが明かされると、会場にどよめきが起こった。季語の「龍」の字がかぶり、季語から季語への使用の減点が加わったが、安定した作句で鈴木総史さんの勝利。


第二試合内容

席題句 其人の名もありさうな花野哉

先手 鈴木総史
名人も胸に付けたる赤い羽根
  俳句点6.00(松本6、青木7、岡田6、神野5、減点0)

後手 恋衣
名月に付けたき名前ありまして
  俳句点5.75(松本6、青木5、岡田6、神野6、減点0)

先手 鈴木総史
前屈が少し苦しき茸狩
  俳句点6.50(松本7、青木6、岡田7、神野7、減点0)

後手 恋衣
秋の夜は少々寂し二人ゐて
  俳句点5.25(松本6、青木5、岡田5、神野5、減点0)

先手 鈴木総史
残菊や夜明けの色のカフス持ち
  俳句点7.75(松本7、青木8、岡田7、神野9、減点0)

後手 恋衣
秋の夜を尾翼やリンドバーグの忌
  俳句点7.25(松本8、青木6、岡田7、神野9、減点0)

先手 鈴木総史
初鮭の尾びれをやはく引きちぎる
  俳句点6.50(松本7、青木7、岡田6、神野6、減点0)

後手 恋衣
高々と尾をあげ龍淵に潜む
  俳句点6.25(松本8、青木5、岡田6、神野6、減点0)

先手 鈴木総史
みづはみな山より生まれ龍太の忌
  俳句点6.50(松本7、青木6、岡田8、神野9、減点-1)

後手 恋衣
みなみづをほめてみあげる月である
  俳句点6.50(松本7、青木5、岡田6、神野8、減点0)


結果

先手 鈴木総史
  俳句点33.50 残り時間3分39秒 時間点0.0
  合計33.50 勝

後手 恋衣
  俳句点31.00 残り時間3分46秒 時間点0.0
  合計31.00 負


決勝戦

先手 脇々
後手 鈴木総史

 脇々さんの「秋思たっぷり庭に日本人形の腕」と鈴木さんの「案山子みなおもてもうらもありにけり」が共に7 75点の高得点。攻めの俳句で押す脇々さんに対し、安定した作句で5句中4句で7点台をたたき出した鈴木さんが、3点の差をつけ勝利し、第五回龍淵王の座を射止めた。


決勝戦内容

席題句 枝豆ヤ三寸飛ンデ口ニ入ル

先手 脇々
入口は海飛魚とんでゆく
  俳句点6.25(松本6、青木6、岡田6、神野7、減点0)

後手 鈴木総史
灯籠のための昏さの海なりけり
  俳句点7.25(松本7、青木7、岡田7、神野8、減点0)

先手 脇々
昏しザクロ部屋に人間おらぬこと
  俳句点6.75(松本5、青木8、岡田6、神野8、減点0)

後手 鈴木総史
湖に近き部屋なり檸檬切る
  俳句点7.25(松本6、青木7、岡田8、神野8、減点0)

先手 脇々
金魚玉湖の底よりいろを得て
  俳句点6.25(松本8、青木6、岡田6、神野5、減点0)

後手 鈴木総史
底冷の色々散つてゐる庭よ
  俳句点7.00(松本7、青木9、岡田7、神野5、減点0)

先手 脇々
秋思たっぷり庭に日本人形の腕
  俳句点7.75(松本7、青木9、岡田6、神野9、減点0)

後手 鈴木総史
門広く菊人形の積まれゐて
  俳句点6.75(松本6、青木7、岡田6、神野8、減点0)

先手 脇々
おもてうらうらおもて緑積まれけり
  俳句点6.00(松本6、青木7、岡田7、神野4、減点0)

後手 鈴木総史
案山子みなおもてもうらもありにけり
  俳句点7.75(松本7、青木8、岡田7、神野9、減点0)


結果

先手 脇々
  俳句点33.00 残り時間3分21秒 時間点0.0
  合計33.00 負

後手 鈴木総史
  俳句点36.00 残り時間3分25秒 時間点0.0
  合計36.00 勝


縁と感謝と挑戦と
鈴木総史

 この大会に出ることになったのも、何かの縁なのだろう。たまたま、前日まで宇和島にある祖父母の家に帰っていたこと、そしてたまたま、この日松山にいる友人たちと遊ぶ予定だったこと、これらの偶然が重なって今回大会に出ることになった。もともと観戦に来るだけの予定だったが、夏井先生に「あんた、なんでそんなとこ座ってんのよ」と言われ、出場することに決めた。完全なる飛び入り参加だった。そのため、「俳句対局って何だろう?」というレベルであり、当初はルールも知らない状態であった。今、振り返っても、我ながら無謀かつ挑戦的なことをしたと思う。
 8人が出場する大会ということもあり、まずは4分で2句を作るという予選から始まった。松山の俳人たちを相手にするというアウェーな状況だったのだが、無事に2位で予選を突破することが出来た。その時、1位で突破したのが、一緒に飛び入り参加した脇々であったことも嬉しかった。4人が勝ち残り、本戦のトーナメントへ。実際に、俳句対局をやってみるととても楽しく、すらすらと俳句を作ることが出来た。自分でもまさかの展開ではあったが、準決勝に勝利した。決勝の相手は、飛び入り参加組の脇々だった。僕にとって彼は特別な存在で、仲が良く普段から電話をしながら句作をしたり、お互いの句を見せ合ったりしている。同じ俳句甲子園出身者ということもあり、僕にとって大切な同級生なのである。そんな彼と戦うのは、とても光栄だったしこんな形で勝負できることに嬉しさを感じていた。お互いに手の内を知り尽くしている状態だったので、苦戦したのだが、なんとか優勝をもぎ取ることが出来た。
 今回、出場して改めて、俳句の面白さに気づくことができた。時間をかけて作ることだけでなく、俳句対局のように瞬発力で俳句を作ることも必要だと思った。短時間で集中して絞り出すことでいいアイデアが生まれたと思う。
 11月の松山市長杯では、俳句歴の長い方たちと戦うことができる。特に、北大路翼さんは句集も出されており、その句集で賞を取っている方だ。そのように経験豊富な方々と一緒に句を戦わせることができる機会は、貴重であり、僕の俳句人生にとって大きなことだと思う。11月までまだまだ時間があるので、鍛錬を積み重ねたいと思う。
 最後に、普段から「群青」でお世話になっている櫂先生や佐藤先生、一緒に句座を囲んでいる仲間たちへの感謝の気持ちを忘れずに、チャレンジ精神を持ち、下克上をするべく戦いたいと思う。


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美術館吟行


第36回


町立久万美術館
2017年度自主企画展「シュらん2017」吟行会

取材協力 町立久万美術館 
 作品展は11月23日(木 祝)まで開催中。

文 マーペー


 えひめ国体の最中、子供神輿をやり過ごしながら向かったのは久万高原町。霧の中を抜け、吟行会参加者6名は久万美術館に到着した。

久万山の素足で上がる美術館  遊人

 愛媛にゆかりある3名の若手アーティスト、海野貴彦 西武アキラ 八木良太による企画展「シュらん2017」は若者はもちろん年輩の方にもぜひ見て 聞いて 感じていただきたい展覧会である。

美術館に足を踏み入れると、正面に小屋と櫓が目に飛び込む。

 「家」海野貴彦
秋天や昭和の家の現わるる  マーペー
火の見櫓できましたバンジージャンプ飛びなさい
  日暮屋

 会期中、海野はこの中庭に制作された家で創作活動をしながら生活をしている。

 伊丹万作、中村草田男らが制作した同人誌「朱欒」を同館が所蔵しており、今回、全9冊が公開されている。その横では、プロジェクターから映写された朱欒の紙面が目まぐるしく流れていく。

年ふれど朱欒の種の多きこと  猫正宗
ましら酒に狂い草田男は亡霊  日暮屋

 鉛筆のみで描かれた作品群に釘付けになる。
 「大地の根」 海野貴彦
鉛筆の鉛の重さだけの秋  チャンヒ

 「Cosmic Air 2」 海野貴彦
もう来ないはずの未来に小鳥来る  猫正宗

 松山出身の西武アキラは、絵画、マンガ、アニメーションなど幅広く活動している。

 「EUNOIA」 西武アキラ
鉤裂きの混じり合いたり秋の虹  マーペー
草の花解体されている僕ら  猫正宗

 閲覧コーナーでは、作品を手に取ることができる。

ルービックキューブ廻し百物語  恋衣

 「Pool loop」 西武アキラ
 回文ともなっている。

プールの鮭が今朝のループ  チャンヒ
輪廻転生百万回目は蜉蝣  日暮屋

 「OHP(脳内ループ)」は八木と西武のコラボ作品である。ヘルメットにプロジェクター、メディアプレーヤーが装着され、映像が不規則に映し出される。

工夫眼を閉じ黄泉を照らす月光  日暮屋

 今治出身の八木良太は、「見えないものの可視化/聞こえないものの可聴化」をテーマに映像 音響などを駆使して制作している。

 「The Spinning Dancer」 八木良太
ねずみ花火ひとつ左に回りだす  恋衣
秋思とは無限に彷徨うバレリーナ  チャンヒ

 ロビーに戻るとどこからか蝉の声。

 「Cicada」八木良太
霧雨の木のうつせみが鳴きそむる  恋衣
空蝉の棘に声だけ置いてきた  猫正宗

 短い時間ではあったがさまざまな仕掛けに驚き、現代アートの多方向への可能性を感じたひと時であった。
 大正の「朱欒」 平成の「シュらん」、時空を超えたコラボを実現させた久万美術館の学芸員の方々へ感謝の気持ちでいっぱいである。
 益々の活躍が期待される3名の若手アーティストへ、そしてシュらんへ、乾杯。

マーペー
美術館は好きだが、即吟と文章を書くことが苦手。

参考文献 シュらん2017チラシ


「家」海野貴彦
火の見櫓できましたバンジージャンプ飛びなさい  日暮屋

「The Spinning Dancer」 八木良太
ねずみ花火ひとつ左に回りだす  恋衣

「Cicada」八木良太
空蝉の棘に声だけ置いてきた  猫正宗

「EUNOIA」 西武アキラ
鉤裂きの混じり合いたり秋の虹  マーペー



次回吟行会

11月4日(土)
愛媛県美術館
「レオナルド・ダ・ヴィンチと『アンギアーリの戦い』展」 吟行会
朝10時現地集合
参加費無料(入館料は別途)
事前に100年俳句計画編集室までお申し込み下さい。
TEL 089-906-0694


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2017年度 第二期 最終回


日土 秋
都築まとむ

地へ還す那由他の果実星流る
三日月になろうと秋の守宮らは
医王寺の桜紅葉を真向かいに
蓑虫を新聞受けからむしり取る
青蜜柑にも人差指にも鋏傷
爽やかに荷台を飛び越えるロープ
収穫の腕を虫時雨にひやす
労働や月の荷台へ積むタンク
了月院山門風鳴くか鹿鳴くか
からすうり熟れて正直者の家
鵙の贄雲を動かしてゆく風
烏飛ぶ霧飛ぶ銅が鳴の峰へ

1961年愛媛県生まれ。八幡浜市日土町で柑橘栽培を
しながら季語にまみれて暮らす。
今年も蜜柑の収穫がはじまりました。


友達
橋白道

西鶴忌福耳に皺寄りにけり
逃ぐる魚大きく見ゆる蘆火かな
秋彼岸船一杯の供養塔
血糖値下げつつ蛇は穴に入る
一輪が団栗に乗る乳母車
スキップを踏みて裾踏む龍田姫
ゐのこづち友達の友達は犬
略式のラジオ体操草相撲
無理すれば入れる小径昼の虫
糸瓜垂る夜は書斎になる厨
灯火親しスプーンの使い回し
Uターンする台風であつたのか

平成10年より「いつき組」組員。
句集『涅槃図』(マルコボ.コム)。


コキアの風
希望峰

屈伸す緑の烏瓜の下
水吸はぬ敬老の日の竹箒
嗚呼嗚呼と後の彼岸の鴉かな
神棚を課長が触る秋の虹
ももいろの鳩の足首水の秋
もみいづるコキアは風を孕まざる
破蓮や屈まずにとるフリスビー
すぐ帰りけり通草の実呉れし人
石榴割れ中古車二十二万円
秋の蚊の刺すサンダルぢやないところ
団栗を握りし拳ぶつけ合ふ
あしうらにメタセコイヤの根や夜寒

1990年神戸市生まれ。「いつき組」「街」所属。
第5、6回石田波郷新人賞奨励賞。


つねひごろ
樫の木

あかとんぼ「あ」としか言はぬ赤ん坊
よく吠ゆる子犬と金木犀の家
コスモスを噛みて子犬の名は小豆
稲刈機駆るは郵便配達夫
曼殊沙華乾き銅線めく花弁
鶺鴒の三たび横切る通学路
遠くより聞こゆる演歌体育の日
栗飯のおにぎり三つ二年生
蟷螂の膨るる腹の葉巻めき
閉ぢし翅の鼈甲色に秋の蜂
妻と言ふしなやかなもの檀の実
匕首のごとき秋刀魚を焼く妻よ

御向いの家が犬を飼い始めた。生後三か月のラブラドール(♀)で人懐っこい。
ちなみに我が家には元気が良いキジトラのソックス猫(♀)がいる。
家中の柱に上るので柱は傷だらけになってしまったが憎めない猫柄である。


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読者投稿による3ヶ月連載作品集

新 100年の旗手


(2017年10月号 〜 2017年12月号 2/3回目)


冬はじめ
吉井潤

小麦粉にバター牛乳冬はじめ
炉開や所作のあれこれまた新
扮装を解けば議長よ文化の日
まんなかのひと粒でもて栗おこわ
迷彩の行き交う街の黄落期
後悔はしない旅立ち帰り花
冬耕の暮れて夫の女舞
言い方を変えれば大根づくしかな
冬うらら母は上品中生印
前歯よりカリフラワーの軽き音

11月1日〜30日「手のひらの自由豆本展」Box Gallery Make Merry! で開催中です。タナカファクトリーで『絶品甘味俳句in香川』を出品しています。
詳細は087-835-5818(Box Gallery Make Merry!)。


星を接ぐ色
風来松

ソユーズ軟着陸ハッチの外は千草の花
地に着きし稲穂から伸ぶ根の獰猛
櫨紅葉Tレックスの強き顎
優勝をスクラップする獺祭忌
稲つるび乳鉢に擂る色探す
木犀の植木屋の肩染めてゆく
秋晴を撃つスターター二丁拳銃
金風にデッキの黒髪されるまま
秋の燈や百塔の街百萬のマリオネット
神々と二十三夜と湯に浮かぶ

1970松山市生。好きなもの、旅、酒、映画、本、宇宙、
懐手してカープ観戦。「ハイミー句会」参加。


2017年 第4期連載者募集中
締切 2017年11月15日(水)

応募内容 2018年1月号に掲載できるタイトル付の10句

応募先 Eメールmagazine@marukobo.com
 件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
(郵送またはFAXでも受け付けております。詳しくは編集室までお問い合わせ下さい。)


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新 100年への軌跡


2017年度 第二期
最終回


もうじふぐわつ
小鳥遊栄樹

暑中見舞いまさら受くやもうじふぐわつ
ボトルシツプ未完しうせつを眠りゐる
夜勤冷ゆ火傷の皮を薄く剥き
前掛けを柚子の匂ふる酒屋かな
牛蒡引く十指隅々まで汚し
寂しさを水底にゐる紅葉鮒
店主不在拉屋出てそぞろ寒
しりとりに語尾のゆるやか紋鶲
なんにもない日を豺の祭りかな
よなべ果つ脱ぎ捨てゝ靴下が邪魔
窓際に置く灰皿の露寒し
新書早や古書となりしを十日菊
田のおほよそ犬の高さかな
名残の月を傘立てに挿す竹箒
焼秋刀魚ほぐしつゝ聞く進路のこと

小鳥遊栄樹(たかなし えいき)
 1995年生まれ。「里」「群青」同人、沖縄俳句会「若太陽」所属。


林檎
宇佐美友海

合歓の花ギター教室窓開きて
無花果と砂糖と薬味女の子
自由てふ不自由を知る小鳥来る
コスモスの電話のベルに震へけり
長き夜や泡の最期を見届けむ
母親に似て女なり水蜜桃
真夜中の電波の混ざる虫の声
朝寒やシガーキスといふ沈黙
べつたりと俗世をまとふ林檎かな
流星を使い捨てたる贅沢や
彼岸花昨日の吾を弔ひぬ
秋愁にヒール突き立て丸の内
本能のままに割れたる柘榴の実
月までの道のり明き首都高速
二百十日美女となりぬる隣の子

宇佐美友海(うさみ ともみ)
 1996年生まれ。新潟大学在学中。高校から俳句を始める。第16回松山俳句甲子園全国大会出場。



俗世はつらいか楽しいか
平山南骨

 「もうじふぐわつ」は冒頭の表題句の影響も強いのだろうけど、粗雑な印象を受けた。その中で、
牛蒡引く十指隅々まで汚し  小鳥遊栄樹
寂しさを水底にゐる紅葉鮒  小鳥遊栄樹
の二句は妙に丁寧に思えて違和感を感じた。暴れ通した方が良かったのではないか。
夜勤冷ゆ火傷の皮を薄く剥き  小鳥遊栄樹
 深夜労働が心身を蝕んでゆくような感じが怖い。「薄く」がリアルな感触をもたらす。
名残の月を傘立てに挿す竹箒  小鳥遊栄樹
 取り合わせ自体は「俳句的情緒」の範疇に収まるが、「を」が工夫なのだろう。
田のおほよそ犬の高さかな  小鳥遊栄樹
 「深さ」かなと思った。「おほよそ」に生真面目な面白味を感じた。

 「林檎」にもなんとなく投げやりな雰囲気を感じる。
べつたりと俗世をまとふ林檎かな  宇佐美友海
 俗世をまとふという言い回し自体がべたべたで俗っぽい気がした。
母親に似て女なり水蜜桃  宇佐美友海
 この「女」は生物学的なそれではなく、「女の性」などの類の女なのでしょう。中七まで読んだところで、女であることの愁いのようなものを感じたのだが、「水蜜桃」。うれしいのか?
本能のままに割れたる柘榴の実  宇佐美友海
 あまり植物に対して「本能」は使わないのだけど、なるほど繁殖のために割れるのだと考えると、おそらくは元々有していたであろう柘榴のエロチックな面が顕在化されてくる。

平山南骨(ひらやま なんこつ)
 1968年生まれ。2005年より作句開始。「鷹」同人。


靴下が邪魔、窓開きて
十亀わら

よなべ果つ脱ぎ捨てゝ靴下が邪魔  小鳥遊栄樹
 脱いだ靴下をそのへんに放っていたのだろう。夜なべを終えた後の自分が、自分の脱ぎ捨てた靴下を邪魔だと見なす勝手さがいい。格好良く言わず、正直に靴下としたのが良かった。
夜勤冷ゆ火傷の皮を薄く剥き  小鳥遊栄樹
 ぞぞっとする。夜勤中という状況に、火傷の皮を剥くときのピリピリとした感覚が重なって迫ってくる。ずっとこれだと疲れるが、一句こういう句を入れてくるのが小鳥遊さんの上手さ。
 一句目、「じふぐわつ」表記を生かすには暑中見舞いが今更だ、としない方が良かったのでは。最後の句、食卓で家族が、あるいは学食で友人が話しているのだろうか、いい終わり方だった。
 
合歓の花ギター教室窓開きて  宇佐美友海
 合歓の花の道でギターの音を聴いた。立ち止まってみると教室の窓が開いている。「窓開きて」が気持ち良く、大らかな明るい教室や町を想像した。十五句のスタートにもぴったり。
長き夜や泡の最期を見届けむ  宇佐美友海
 最後まで残っていた泡が消える瞬間というのは確かにある。「泡の最期」を見届けようという小さな目が良かった。
 十一句目、彼岸花は季語として近すぎるのでは。十句目の流星の句、「使い捨て」で読者をひるませて、「贅沢や」の感傷に導く。流星の悲哀に踏み込まずとどまったことが宇佐美さんの句を成功させた。

十亀わら(そがめ わら)
 1978年愛媛生まれ、今秋よりトルコ在住。「いつき組」。2005年「俳句界賞」受賞。


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳 朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ

No.52

Indian summer
Fuji-san like a ghost
She waits we run

小春日の富士より逃げてゐる如し

(直訳)
小春日の
富士は幽霊のように
我らを待つ 我らは逃げる


 The fall concert season is upon us, and I am working hard so that the audience can be happy. I have faith that if I can make myself happy, they will be happy, too.

 秋の演奏会シーズン真っ最中。僕は観客をハッピーにしたくて頑張っている。僕は信じてる、もし僕自身が僕の演奏にハッピーなら、お客さんもハッピーだろうとね。


ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博(俳号 蛇頭)

第80話 小島のり子トリオ live at JAZZ BLEND 2017


天空より猛雨落下す指の轍に  りほ

はるばると音を織り来し花野あり  ケルン
 ライヴが台風18号最接近の時間帯と重なったけど大丈夫。瀬戸内さえ通らなければ石鎚山が守ってくれるから、って。それ、昨夜のライヴでも誰かが言ってた。今日が四国最後のライヴ、そしてJAZZ句会。ここを目指して来てると言っても過言じゃない。1曲目は砥部の初雪盃というお酒を呑んで作った「ルッキン アップ トゥ ザ スカイ」。

秋果つる爪弾く指のしめりかな  光海
弦揺れて虹見たくなる神の留守    ドクトルバンブー

 ビル エヴァンスの「ワルツ フォー デビィ」の三拍子は最初だけで後はスウィング。でも今日はいつの間にかワルツに戻っていた。今日ヴァージョンのジャズ。
 貴方があの高い山を壊せ、と言えば私は壊しちゃう。そう言うと、君は変だねぇ、と彼は言う。次はバラードで「クレイジー ヒィ コールズ ミー」。

フレーズとフレーズの会話秋の夜  こじのり

 次はセロニアス モンクの曲「ウイ シー」。「アイ シー」の複数形。相変わらず不思議な曲を書くモンク。

ギター哭く旅路の果に天の河  蕪榴子

 四国最後って言ったから、ぎゅっと皆にスイッチが入って大変濃い演奏になってる。全国各地を旅する私達。ファーストステージ最後の曲は全世界を旅するパット メセニーの「トラベルズ」。

フレットを舐める手癖と月光と  南亭骨太

 JAZZ句会って世界的にもこんな句会は無い。義理の父が俳句やってて参加したいなあって。セカンドステージ最初の曲はギターをフューチャーして「星影のステラ」。

神渡し口遊みしと黙せしと  猫正宗
フレットをなぞり奇才は冬の旅  蛇頭

 オン ギター天野丘。このツアー最大のウニウニだったかも。サックスの竹内直さんと天野がデュオをやった時、二人が奇才≠ニ紹介された。そうか天野君は奇才なんだ。2曲目は私のアレンジもの。熊本地方の「五木の子守唄」。この働く小さな女の子のブルースは「いそしぎ」という美しい映画音楽に旋律が似ている。メドレーで「いそしぎの子守唄」。

磯鷸を眠らせ奇禍を祈ろうか  チャンヒ

 ジョニー マンデルという作曲家が熊本県に行って、この子守唄を聴き、いたく感動して「いそしぎ」を作ったという都市伝っぽい話がある。次の曲はチャールズ・ミンガスのエリントンへのオマージュ「デューク エリントン サウンド オブ ラヴ」。

野分過ぐ十弦しなやかに浮遊  南行ひかる

 オンベース澁谷盛良。物静かだけど、盛良さんの凄いところは、パリに行ってもバリに行ってもブラジルに行っても、徳島でも和歌山でも地元の人に見られる。よく現地で道を尋ねられる。アーシーでニュートラル。で、サウンドに対する好奇心がとても深い。曲は覚えないと弾けないから、というのが信条で三人の中で一人譜面を見ないでやってる。

細きと太き絡んで振るう紫苑  照造

 次が最後の曲。日本酒をテーマにしたオリジナル曲でブルース。日本四大盆踊りの一つ、秋田県西馬音内の盆踊りを見に行ったんだけど素晴らしかった。笠で顔を隠してて着物が揃いではなく皆違う。パッチワークしてる。お婆ちゃん、お母さん、叔母さんからもらった着物を組み合わせてる。赤とか朱色とか紫とか。鶴の柄なんかもある。その着物の色や柄で、地元の人は踊っている子が誰なのか分る。そのお囃子を何とかジャズにしたくて作った曲「パッチワークブルース」。


Today's Turntable
『ア スィート ディルージョン/天野丘』2004年/wn


「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

 次回のJAZZ句会は、11月18日(土)13時より。テーマのミュージシャンは愛媛県愛南町出身のベーシスト、岡田勉。アルバムは「アコースティック デュオ ラッシュ ライフ − ビリー トーキョー」ギターの増尾好秋とのデュオです。これをメインとします。参加希望の方は、本誌の句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU』vol.1〜vol.3(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ


第八十話
文 俳句 らくさぶろう


馬のす
  これぞ落語。サゲの極み

 釣りが大好きな男、女房に文句を言われながらも今日も釣りに出かけていく。
 釣場に着いて、道具を調べてみると、おもりも浮きもいいのだが、肝心のテグスがダメになっている。
 これでは釣りにならないと困っていたら、そこへ馬方が馬を引いて通りかかる。
 その馬が言うことをきかず、どうもこれ以上前へ歩きそうもないので、馬方は男に「ちょっとの間お願いします。」と馬を木につないで行ってしまった。
「そんなのダメだよ。……あーあ、行っちまいやがった」
 ふと見ると、馬の尻毛がふさふさと。「おう、これだ!」
 テグスの代わりに馬の尻毛を使ってやろうと、三本ほど抜いてみたところへ通りかかったのが友達の勝ちゃん。
 勝ちゃん「お前、とんでもないことをした。馬の尻毛を抜いたらどういうことになるか知らないんだろ」
 不安になって教えてくれと頼んでも、「俺だってタダで習ったわけじゃないんだから、酒でもごちそうしてくれたら教えてやるよ。」と言われ、仕方なく家まで帰り、枝豆をつまみに酒を飲ませてやる。
 すぐ教えてくれるのかと思いきや、何杯飲んでもはぐらかし、話をそらして一向に教えてくれない。
 とうとう一升瓶の酒を全部空け、枝豆も一粒残さず食べてしまった。
「ごちそうさん。じゃあ教えてやろう。」
「どうなるんだ?」
「馬の尻毛を抜くと……」
「うん」
「馬がね」
「うん、馬が?」
「痛がるんだよ」

 故八代目桂文楽師の得意な噺でした。
 「馬のす」というタイトルですが、「馬尾毛」とも書き、一説では群馬県のある地方の方言ともいいます。
 上方から江戸へ渡った噺で、上方ではそのまま「馬の尾」という演題で演じられますが、あまりやり手が居ません。
 初めてこの噺を聴いたとき、「やられたー!」と思いました。
 馬の尻毛を抜いたら大変なことになる……何だろう?と聴き手の興味を引かせ、最後は「なーんだ」という終わり方。
 これぞ、落語の醍醐味。演ってるほうは気持ちいいんだろうなあ。
 落語は、途中は爆笑モンなのにサゲが分かりにくく、きょとんとされて終わってしまう噺と、途中はあまり笑いが無いのにサゲでどっかーんと来る噺があります。まあ、両方ウケるのが一番ですが(笑)。
 冒頭に書いた八代目文楽師。有名な話ですが、昭和46年8月31日、国立劇場の舞台で「大仏餅」という噺を演じている途中でセリフが思い出せず、「台詞を忘れてしまいました。申し訳ありません。もう一度勉強をし直して参ります」とあいさつし、それから二度と高座に上がることはありませんでした。
 完璧主義の八代目らしい話ですが、自分に置き換えてみたら……何度仕事を諦めなくてはならないか。

馬肥ゆるこんなとこまで選挙カー


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会話形式でわかる

近代俳句史超入門


第20回

文、構成 青木亮人

 大学で俳句を研究する青木先生と、その教え子で俳句甲子園の出場経験もある大学生の俳子さんが雑談を交えながらの近代俳句史超入門。


明治期の碧梧桐

 青木先生と俳子さんが教室で話しています。

クイズ
俳子(以下俳) 今回は碧さんのどんなところをお話下さるんですか?
青木先生(以下青) 選択形式でいきましょう。次の三つから選んで下さい。
俳 お、バラエティ番組みたいでいいですね。
青 「1.碧さん、島でお医者ごっこ」「2.味噌汁にされかかった碧さん」「3.碧さん、妻の頭をクールビズに?」
俳 3! 
青 いや、やはり普通に経歴をお話するところから始めましょう。松山に生まれた碧梧桐は……
俳 ちょ、ちょっと待って下さい! 3のお話は?
青 話を盛り上げるためのアメリカン ジョークです。碧梧桐が妻の頭髪をクールビズに仕立てた話はどうやら存在しないようですよ。
俳 何だ、ホラ話か……それにどこがアメリカンなんですか。どうりで魅力的すぎる人生と思いました。

松山藩士の息子
青 では、本題に入りましょう。碧梧桐の本名は秉五郎、松山藩士で朱子学者の河東静渓の五男として明治六年に生まれます。松山に行くと分かりますが、河東家は子規や虚子の家より良い場所にあり、しかも父静渓は松山藩校の明教館教授。幕末には藩命で諸国の動向を探るなど文武両道で、息子の碧梧桐が果断な行動派で書に優れたのも、父に似たところがあったのかも。
俳 そういえば、碧さんの家があった場所からは城が近くに見えますよね。
青 ええ。碧梧桐は幼少時から元気な腕白で、松山中学校では「ヘイ」とあだ名が付いたとか。同じ中学校の虚子のあだ名は「聖人」。
俳 ぷっ、聖人……虚子さんの背中から後光が射したりしたんですか。
青 おとなしく成績も良かったので「聖人」。で、二人は同じ学校だったので仲が良くなり、文学の趣味もあったのでともに文学者の夢を育むようになります。

文学者への道
俳 あ、知ってる! 二人は東京にいた子規さんに手紙を出したりと、熱く文学を語りあったんですよね。
青 そう。東京の帝国大学に進学して小説家志望だった子規は二人にとって憧れでした。その後、碧梧桐と虚子は京都の高校に進学し、下宿も一緒で、酒と女と文学の話ばかりして「将来は大文豪に!」と息巻く日々。
俳 「聖人」はどこへ?
青 影も形もなく消えました、合掌。学制が不安定な時期だったので二人は京都から仙台の高校に転校しますが、あっさり退学します。
俳 ええっ、どうして?
青 早く小説家になりたいのと、先輩子規の真似をして辞めたことも大きい。
俳 あ、子規さんも帝大を中退して新聞社に入ったんですよね。後追い中退?
青 そんな感じです。退学した二人は東京に出て同宿し、小説家になる勉強に勤しむかと思いきや……
俳 分かった! お二人は小説より俳句の方が向いていることに気付いて、子規さんの下で句作に頑張ったんですよね。
青 ……小説も俳句も放り出し、無職で放蕩三昧、遊郭でも健やかに遊ぶ日々。活発なニートという感じで、子規は相当怒ったそうです。
俳 おやおや……子規さん、複雑だったでしょうねえ。

俳人として有名に
青 東京でも碧虚コンビは若気の至り的に毎日を浪費していましたが、子規の俳論「明治二十九年の俳諧」(注1)で状況が一変します。
俳 「赤い椿白い椿と落ちにけり」!
青 そう。子規が碧梧桐句を「印象明瞭」と評し、油絵を思わせる新調と絶賛したため、彼は明治俳句の寵児として有名になります。
俳 碧さん、子規さんのおかげで更正できたのね。
青 ただ、碧梧桐は小説家になりたかったので、俳人と認められるのは戸惑ったようです。あと、彼は下宿の大家の娘に想いを寄せたのですが、彼が入院中に虚子がその娘と結婚しちゃったので、かなり凹んだとか。
俳 元「聖人」が略奪愛とは……碧さん、傷心をバネに俳人活動に勤しんだのかしら。負け組っぽくていいなあ、ゾクゾクします。
青 Sッ気な嗜好ですね……ただ、彼は俳人としては虚子以上に華やかで、雑誌俳句欄選者や新聞記事執筆、俳句評釈書も出したりと活躍の場は広がり、明治三十三年にはきちんと結婚して一家を構えます。
俳 どんな方と結婚したんですか? 逆略奪愛?
青 どんな形の愛ですか。相手は大阪の俳人青木月斗の妹、茂枝さん。碧梧桐に惚れた茂枝さんが月斗に懇願して結婚に至ったようで、二人は晩年までオシドリ夫婦だったとか。
俳 えーと、明治三十三年に結婚ということは……
青 碧梧桐は二十八歳。その頃は子規派最強の俳人として虚子より注目され、子規が明治三十五年に早世後は新聞「日本」俳句欄の選者も任されるなど、子規派のリーダーと目されました。
俳 「日本」俳句欄の担当は凄いことなんですか?
青 子規は論や作品の多くを「日本」に発表しましたし、俳句欄選者も務めていました。「日本」俳句欄を碧梧桐が継ぐということは、子規の後継者をほぼ意味したんですよ。

新傾向俳句運動
俳 碧さん、凄いじゃない。惚れられて結婚するわ、子規さんの後継者として認められるわ……見直しました。
青 確かに運命は彼に微笑んだ感がありますが、その後の碧氏が突き進んだのが、新傾向俳句運動(注2)です。
俳 俳句史でよく聞きますが、何だか分からないアレですね。簡単にいうとどんな運動なんですか?
青 子規の「写生」を過激かつ徹底した運動です。
俳 もっと簡単にいうと?
青 腕白ヘイさん。
俳 全く分かりません。
青 次回以降に詳しく見ますが、碧梧桐は子規の後継者として俳句革新をガンガン進めてしまったんです。
俳 まさに子規さんの後継者で、いいことじゃないですか。先生は革命嫌い? 私は血が騒ぎます。ああ、サンバのリズムが私を追い立てる……
青 フランス革命とブラジルのカーニバルが混じったような感性ですね。碧梧桐は従来の子規派が培った俳句観をさらに乗り越えようと次々に新機軸を打ち出しながら、北海道から沖縄まで全国各地を旅行し、行く先々で句会を催して古い俳句観を一掃しようと意気込みます。ただ、それが急すぎたんですよ。「赤い椿」句が「写生」の典型として知られた時代に、「煤名残戸袋に簪くことや」(注3)とか言われても、子規派の読者ですら分からない。
俳 うん、気持ち良く把握できません。「赤い椿」句のスカスカ感と比べると、一句に素材がギュウギュウ詰めになってますね。
青 碧梧桐が「写生」を過激に進めた新傾向俳句は、「作者が体験した面白い事実を文字通り事実そのまま詠むと、意味深な暗示になる」という傾向で、確かに従来の類想やパターンを打破する「写生」句にはなりますが、読者が付いていけない句になってしまった。
俳 独りよがりの腕白小僧なヘイさんという感じ?
青 そう。ただ、彼の革新運動が面白いのは、現実の新鮮な事実を詠むのが尊いのならば伝統的な季語も定型も不要では……となり、自由律を発生させてしまったんですよ。
俳 碧さんの運動からザ フリーダム律が生まれた?
青 実際は碧梧桐の弟子達が始め、碧氏も次第に自由律を詠むんですけどね。ここらまでが明治期の碧氏の活動で、大正以降は次回にまとめましょう。
(続く)

解説
注1 「明治二十九年の俳諧」=子規が「日本」明治三十年に連載した長編俳論。碧梧桐、虚子句を江戸期に存在しない新調と礼讃した。
注2 新傾向俳句=明治末期〜大正期初めに碧梧桐を中心に起こった革新運動。従来の俳句観を打破しようと新奇で複雑な現実世界を「写生」した結果、俳句が一気に難解になった。
注3 「煤名残戸袋に簪くことや」=碧梧桐の明治四十二年作で、当時の新傾向俳句らしい作品。意味はさっぱり分からない。


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100年投句計画

選者三名による 雑詠俳句計画




先選者 関悦史

 九月二十一日の「プレバト!!」で、芸人チーム初の対外試合、俳句甲子園でその日優勝したばかりの開成高校との対決というものが放映されて、私が芸人チームの句を講評しているシーンも、終了間際の二、三分ほどですが映ってしまった。人気番組らしいと知ってはいましたが(震災以後テレビがないままだったのでよく知らない)、終わってから父とか近所の人とか出入りの左官屋さんとかからメールが来て人気のほどを思い知りました。




大風の日に朝顔の開くひらく  あるきしちはる
 大風の日に合わせて朝顔が開いたわけではなく、たまたま朝顔が幾つも開いている朝に大風になったということでしょうが、その因果関係が捩じってあることで印象的な句になりました。大風のエネルギーを受けて花がつぎつぎに咲いていくような、ありえない祝祭的な光景を日常のなかから彫り出した句となり、下五「開くひらく」の字余りのリフも、その高揚に合っていて、子供の頃、台風などが来ると妙にはしゃいだことも想起させます。




Jアラート鳴る庭先に鳳仙花  藍人
 時事詠なので少し経ったらわからなくなる可能性はありますが、空襲警報による日常の亀裂のようなものが捉えられています。すぐ避難できる先もなく、庭に出ていたとしても鳳仙花が妙にはっきり見えるだけという。

捨案山子責務果たした誇りあれ  武彦
 人型の物が捨てられているのには特有のあわれさがありますが、それを陰惨だったり寂しいものとして詠むのではなく、責務を果たしきったと捉え、捨案山子への励ましに転じたことが世界への肯定になっています。
老犬の骨格露わ秋灯  和音
 長く飼ってきた愛犬のことでしょうが、老いて骨格が浮くようになり、遠からず別れの時が来るであろう状況。「秋灯」に痩せが目立つ老犬の体のみにしぼった詠み方で甘さがなく、会者定離の認識が句にしみています。

文化祭主役の鼻の神話めく  久我恒子
 文化祭での演劇のようですが、演目はわからない。付け鼻でもしているのかもしれませんが、神話めいているのは劇全体ではなく鼻だけ。この鼻こそが文化祭の祝祭空間全部を支えているような可笑しな存在感あり。

月光の舗道を蟹の影動く  内藤羊皐
 題材としてはさほど新鮮味はないのですが、「影」が入ったことでちょっとリアリティが出ました。文体がやや一本調子なので「を」の代わりに「や」で切ってみるとか、倒置法にしてみるとか推敲の余地はありそうです。




みかん手に核戦争を待つ茶の間  不耳男
ゴンドラの揺れや眼下の草の花  野良古
薔薇の香の蚊取り線香犬の傍  しのたん
小春日へぱちと切り込む飴細工  久我恒子
群れ鰯今クラインの壺となり  笑松
秋澄めり雲に繋がるエレベーター  24516
給食は茸のキッシュ海光る  さより
秋天の深みへ一人観覧車  元旦
秋時雨お絵かき板に描く裸婦  葉音
井戸場より裏庭ぬけて萩の原  誉茂子

関悦史(せき えつし)
 1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。2017年第二句集『花咲く機械状独身者たちの活造り』、評論集『俳句という他界』刊行。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』他。



先選者 桜井教人

 小川軽舟「掌をかざす」を読んだ。一年間三百六十五日一日一句に短いエッセイが添えられている。「俳句はささやかな日常を詩にすることができる文芸。日常をおろそかにせず俳句にしていく」との言葉どおりの句集。俳句とほんの少しの事実報告のエッセイだけなのに「俳句への思い」「仕事への姿勢」「家族への愛」「日常への向き合い方」が読み手に伝わってくる。この本そのものが俳句であり、小川氏の存在、生き方そのものが俳句ではないかという気がしている。




傍らに海を連れ双輪の秋  富士山
 夏の句は「涼やかに」秋の句は「爽やかに」読むものだと上田五千石が言っている。この句を一読した時の爽やかさはこの上ない。傍らに広がる青い海、潮の匂いのする風を切って進む作者、紅葉し始めた山、まだ青く匂いを放つ蜜柑、様々な景が見え五感を刺激する。これも自転車という設定だから生まれる効果だ。車でも徒歩でもない独特の速度を上手く生かしている。大きな自然を擬人化するのは至難だが、この句の擬人化は本当に見事だ。




白桃の本気に圧倒されている  中山月波
 白桃の本気とは何だろう。白さなのか、甘さなのか、とにかくそこにあるのは紛れもなく立派な白桃なのだ。白桃のこと以外は言っていない一物仕立ての句として、とても面白い表現だ。「本気」「圧倒」のたたみかけが成功している。

窓叩く銀杏黄葉や歯型噛む  斎乃雪
 下五の設定がよい。歯科だと分かった瞬間に景が広がって来る。行く度に痛い思いをする歯の治療、その不安感を和らげてくれる銀杏黄葉。治療が終わって銀杏黄葉の中を帰る景も見えて来る。

口角を上げるリハビリ小鳥来る  もね
 リハビリはまず笑う練習から。リハビリをする本人は大変なのだろうが、なんだかすごく優しい気持ちになれる。実は私は口角を上げるのが苦手だ。今から練習をしておきたい。小鳥来るの季語は予定調和だが必然性がある。

脱水音の響く山小屋秋の虹  のり茶づけ
 脱水音から始まる場面設定が秀逸。縦走では一週間くらい洗濯をせず、同じ下着を着るらしい。ようやく洗濯ができる山小屋に着いたのだろう。秋の虹はこれまでの疲れを癒すとともに、明日からの縦走の続きのエネルギーになっていることだろう。

松山の天高くして糸瓜の忌  喜多輝女
 忌日の季語を見事に生かした。子規の「松山や」の句との呼応がとても心地よい。この句があるから糸瓜忌の松山の空はより高いのだという作者の思いに賛同できる。それにしても忌日の句を見事に詠んだものだ。




黒葡萄今宵はどこに隠れやう  dolce@地味ーず
文化祭主役の鼻の神話めく  久我恒子
勾玉は胎児のかたち月の秋  出楽久眞
黄落の平和通りを直進す  あいむ李景
尺長き小津の映画や菊日和  笑松
空指してゐる子の未来大花野  てん点
店先に商売っ気のなき新米  みやこまる
名作は二冊とも自死初時雨  クラウド坂上
寂しさを鳴らす風なり鳥威し  西原みどり
ぼた山は汗の髭面らの墓標  松ぼっくり

桜井教人(さくらい きょうと)
 1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回 29回俳壇賞候補。



後選者 阪西敦子

 部屋のベランダの前は車が入れない(本当は自転車も降りなければならない)商店街。引っ越してすぐ電話線か何かの工事があって、石畳の真ん中にコンクリートのかさぶたがあった。金木犀の香りと共に一段の工事の人が現れ、かさぶたは草色の煉瓦によってふたたび石畳となってゆく。直線ではない道には煉瓦を斜めに割って、手でなだめるように嵌めてゆく。部屋にいても音が変われば見に行ってしまって、しばらく目が離せなくなる。


特選

針穴に糸の通らぬ鰯雲  波野
 糸は季節によってそのやわらかさが少し変わるように思う。光が変われば、人の視力も変わろう。窓辺で、縁側で、針仕事をする上を鰯雲が渡る。そのまだらな光に迷いながら、糸通しに焦れるのも悪くない季節でもある。

天の川サラダを滑る酢と油  凡鑽
 ドレッシングは買わない。余すし、飽きてしまう。家にあるビネガーとオイルとそのほかの調味料で作ればよい。作者もそういう一人かもしれない。いくら攪拌してもその雫は分離して、ひとつひとつがサラダを滑る。センチメンタルサラダ。

食堂へ向かふ学生石蕗の花  どかてい
 同じような食欲をもって、同じような年齢のひとびとが、同じ方向へ向かってゆく。そんなに飢えていないとは言っても、それなりの賑わいはあろう。そんな流れに対して、石蕗は姿をはっきりと咲いている。


並選

秋扇陽注ぐ日の核兵器  KIYOAKI FILM
名も知らぬ五つばかりが虫集く  健次郎
林檎つむ齧れば脳の目覚めたる  レモングラス
朝寒や箒の音の永保寺  夏柿
ありの実をさしだす婆の金指輪  幸
露草をハイソックスのひとつ飛び  ヤッチー
風音の清まる朝よ稲を刈る   柝の音
甘言の犬の歯磨き良夜かな  おせろ
口なくしただとまりゐる山繭蛾  小市
鶏頭を剪る手でつくね捏ねてゐる  くらげを
野分中ざりと砂噛む握り飯  凡鑽
ボルドーのコルクの匂ふ夜這星  柊月子
鶏頭の確信犯のごとく赫  松田夜市
爽やかやひろげてとじて足の指  ぴいす
秋麗決勝戦は2対1  とべのひさの
クォーツの風防光る秋麗  暮井戸
トロンボーン城に向かひて秋を撃つ  南亭骨太
早朝の機影高くに野分去る  青蛙
曼珠沙華実習生のかたき礼  青蛙
取り壊す建具屋神野白槿  一走人
唇に光るバターや獺祭忌  樫の木
雨の香の残れる庭や法師蝉  喜多輝女
青々と紅葉と黄葉分けにけり  洒落神戸
敬老の日のおしゃべりなフラダンス  うに子
吾亦紅あれは大正写真館  ぐずみ
瑠璃色の空や友逝く雪蛍  桂奈
谷根千へころがりでたる秋となり  台所のキフジン
流れ星追いて口紅ひく琵琶湖畔  西条の針屋さん
秋の薔薇眉ひく指の細くなり  かのん
七輪で魚焼く夕べ落し水  大阪野旅人
大水過十度傾く彼岸花  青柘榴
日曜の空の広さよ曼珠沙華  彩楓
拾うても拾うてもなほ名の木散る  ひでやん
無花果を食うて独りの夜となる  有瀬こうこ
透明の野分来たりて空うねる  アンリルカ
富士に来て山頂見えぬ花野かな  ゆりかもめ
十五夜や大きゲップの孫の背な  マカロン星人
瓢の実やここら辺りが僕の家  あおい
秋雨の秋の匂ひや鮨ランチ  未貫
追伸の長くなりたる夏の果  ケンケン
桔梗の花へながるゝ月の風  人日子
豊年や目を遊ばせる赤ん坊  鯉城
振り向けば頬を流れる洗い髪  野田康生
黍嵐葉っぱ千切れて棒と立つ  エノコロちゃん
稲妻や厄除け石の穴潜る  坊太郎
鰯雲キャリーバックの立ったまま  風海桐
おんどりのとさか縮みて秋を待つ  ちろりん
酔ふよう子供の成長の早さ  柊つばき
薄原濁流の跡生々し  ミセスコナン
島陰へ滴る夕日秋遍路  哲白
秋風や振り分け荷物降りてゆく  遊人

阪西敦子(さかにし あつこ)
 1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。


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100年投句計画

自由律俳句計画



 お知らせ。「第一回尾崎放哉賞」の応募締切りまで一か月余りとなりました(12月10日必着)。この賞は諸般の事情で暫く中断していた嘗ての「放哉賞」を再興させたもので、主催結社が変わるので新めて「第一回尾崎放哉賞」となっています。今回は高校生の部も設け広く自由律俳句を募集しています。
 詳しくは、この自由律俳句計画のコーナーに載せられている募集要項およびホームページ http://hosai-seiho.net/ をご参照に是非ご応募ください。




南瓜旨く秋になってくる身体  多満
 有季定型の俳句なら、さしずめ揚句は「南瓜」と「秋」の季重なり。基本的にはルール違反となるところでしょうか。自由律では頓着しない。読んでみて違和感なく充足しておればそれでよし。むかしから女性の好きな「芋たこなんきん」の、ことに南瓜のおいしくなってきた秋(もちろん芋もたこも旨いのでしょうが)に、ひょいと気が付けばなんだか身体ぜんたいの肉付きがナハハ……みたいな。そんな食欲の秋の女性のあっけらかんとした心情が、秋空の様にすっきり表現されています。ちなみにワタクシ南瓜嫌い。関係ないけど。




鬼と暮らして秋風の中にゐる  もね
 鬼と暮らすの鬼とは、普通に考えれば嫁姑の姑のことだろう。最近ではそんな確執のある関係もあまり聞かなくなってきたけれど、「秋風の中にゐる」が運命を受け入れた人の凛とした佇まいを上手く表現している。

どうしようもなき炎昼に納骨  鯉城
 故人の遺骨を納めるのにとやかく文句をつける筋合いはない。とは思うけれど……と思わず声が出てきそうな炎昼。納骨と言う絶対的状況を取り合わせることで、よけいどうしようもない感が膨らむ。

フリーターにもなれず九月来  ミセスコナン
 働き方もいろいろあるとして、フリーターは自分としては最悪滑り止めの働き方スタイルだったのか……。新しく始まる季節の中で、そんな小さな挫折感がフリーターという語感とよくマッチしている。

星が集まっている散らばっている  暮井戸 
 天の川のことでしょう。天の川をよく観れば、確かに、と合点がいきます。このように天の川を具体的に分解表示されれば新鮮です。俳句の言うところの「発見」があるということでしょうか。

出さなかった手紙をまとめて括る  ちゃうりん
 ラブレターなのか……。書いたもののとうとう出さなかった手紙。それらをまとめて処分しようとすれば、普通は捩じる。のに、揚句は括る。破らず捩じらず、括るとは……まだ未練があるということか。どうも引っかかる句です。




難民キャンプの上に銀漢  藍人
観光望遠鏡100円分の銀河  ヤッチー
蔓に意思あり烏瓜  小市
驚きやすいものに鹿と母  凡鑚
なめとんのかとおこられそうでやめた  笑松
重力にまだ捕まらぬ秋蝶  みやこまる
愛の軌跡がだだ漏れに  うに子
じゃあまたねこれでいいのよ後ろ向けない  台所のキフジン
多数決だからこまる  大阪野旅人
孫の尻婆の尻拭いてひと秋  マカロン星人


並選

糸瓜咲きて父を追う背中  KIYOAKI FILM
富士は何時何処からも不二の山  健次郎
日サロ通いの地下鉄  中山月波
幾度も秋の七草唱えけり  芳香
秋立つ 僕寝る  野良古
竹馬軽々園庭かける  レモングラス
運動会てるてる坊主のドヤ顔が好き  夏柿
転がってくる病にくるくるくる  幸
曼珠沙華に不意打ちをくらう  柝の音
飯炊けて風呂の湯入って曲同じ  くらげを
布団に夫の寝相  和音
笑ふことしか知らぬコスモス  出楽久眞
理由はないが訳のある解散  南亭骨太
カウンターに傷その客の帰る度  のり茶づけ
曼珠沙華咲いた真琴君来た  一走人
馬陸は白く朽ちる  樫の木
ひかり降れ無花果のコンポート  さより
入り花を立てるなと言ひし母のゐし秋彼岸  喜多輝女
彼岸花もう参られぬと母  元旦
新米ごんごう炊いている  洒落神戸
コスモスと風見鶏と飛行船  ぐずみ
夕陽に立つひまわりに涙  青柘榴
石垣に蛇の抜け殻のかけら  彩風
君をうしなひ黒髪をとかす  有瀬こうこ
猫にやる草を買う  ゆりかもめ
秋園という鈴が鳴る  きさらぎ恋衣
打球ぐんぐん伸びて炎天の場外へ  ケンケン
ふき出し笑ふ運動会  人日子
貝割菜に木霊熟れるよ  内藤羊皐
声々を消す新学期  松ぼっくり
ミルキーウェイいかにも甘そうで  エノコロちゃん
台風に耳そばだてる  坊太郎
夕焼けの今日の一日を惜しみけり  みつよ
おつまみは腐っていない豆腐  ちろりん
万歩計の歩数が今日を生きている  遊人
仲秋の満腹  まんぷく

きむらけんじ
 1948年生まれ。第一回放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。


「放哉賞」再興。自由律を動かせ!
第一回尾崎放哉賞 作品募集

応募締切 2017年12月10日(日)必着
投句料 
 一般の部 2千円(2句1組 何組でも可)
 高校生の部 無料(2句1組まで)

 一般の部 大賞 賞状、10万円 ほか
 高校生の部 最優秀賞 賞状、クオカード5千円分 ほか
送り先
 〒545−0041 大阪府大阪市阿倍野区共立通1−1−9
 (株)たまてばこ内 尾崎放哉賞事務局
主催 自由律俳句結社「青穂(せいほ)」

詳細は……
http://www.hosai-seiho.net/


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100年俳句計画

詰め俳句計画



今月の問題
次の(  )の中に共通する秋の季語を入れてください。

(   )の裂け目に夜が入りこむ
海へ行きたい(   )の転げ出す


 今回も沢山お答えをお寄せいただき、ありがとうございます。マイマイ師匠が帰ってくるまで、このコーナーを守る(?)所存ですので、皆様暖かいご支援(つまり回答)、よろしくお願いいたします!

今月の??
 笑酔さんの実珊瑚なのですが、手持ちの歳時記には記載がみられず、インターネットでも調べたのですが、たどり着けませんでした。秋珊瑚(山茱萸の実)かとも思ったのですが、力不足で申し訳ありません。

べいごまの裂け目に夜が入りこむ
海へ行きたいべいごまの転げ出す
 おせろさん。前句激しくぶつかり合った二つの駒の間には、もしかしたら空間の裂け目が?! 後句、あの形だと、その場でぐるぐるまわっちゃいそう。5級。レモングラスさんはひぐらし。蜩の裂け目、そして転がる蜩……既に息絶えている蜩を思い描いてしまいました。ただ、前句、蜩の声が、空間を引き裂いている。3級。とべのひさのさんは蓑虫。蓑虫の蓑の中の謎に夜との親和性があります。後句、意思を持って海を目指している姿が見える気がします。転がれるかな……頑張れ蓑虫。3級。誉茂子さんは虫の音。虫の音の裂け目、とは? そして転げ出すのは虫じゃなくて、虫の音……。音に意識がいくと、転がりにくいかも。4級。久我恒子さんは坂鳥、出楽久眞さんは渡り鳥。渡り鳥は五音で、リズムが悪いです。渡り鳥 坂鳥の裂け目とは? 後句、海を目指したい気持はとてもよくわかります。が、翼で飛んで行ってください! 5級。

鬼灯の裂け目に夜が入りこむ
海へ行きたい鬼灯の転げ出す
 中山月波さん、のり茶づけさん。前句、夜が入ってきそうなのは、鬼の字の効果かも。後句、転がるにはちょっと軽いかとは思ったけど、鬼灯の鮮やかさが海まで届きそう。2級。かま猫さんは苦瓜。苦瓜の裂け目ってすごいですよね。ただ、夜よりは炎とか夕日の感じ。後句、沖縄を思えば海へ行きたいのはわかるが、果たして海まで転がっていけるか……。4級。明惟久里さんは枝豆。前句、夕方から長々と飲んでいるとすると、ちょっと納得。そして飛び出した豆が海を目指して転がるんですね。3級。

今月の師匠
台風の裂け目に夜が入りこむ
海へ行きたい台風の転げ出す
 さすが師匠、予測のななめ上です! 確かに、空の不穏な雲の裂け目に夜が入っていきそうな気持ちもわからなくはないですけど、後句、台風海で生まれるでしょ? 転げだすみたいな可愛い表現じゃないでしょ? 師匠の意図を汲み切れない弟子(自称)で申し訳ありません。4級。エノコロちゃんはおしあな……えー、台風に伴う南東の暴風のこと。裂け目はあるのかもしれませんが、転がるかなあ……。喜多輝女さんは秋の日、KIYOAKI FILMさんは秋天。前句、秋の日や秋天の裂け目、正直こういった表現好きです。夜に浸食されていく感じ。でも、後句、転がるか……、というところで、3級。元旦さんは秋色。秋の気配、気分、気配。うをー、後句は大きすぎてどう解釈すれば……! 5級。清人さんは秋麗、マカロン星人さんは晩秋、ちゃうりんさんは十月。後句、やっぱり転げ出さないと思うんですよね。4級。凡鑽さんの三日月は空の裂け目感。一走人さんの流星は尾が裂け目を作っているよう。内藤羊皐さんは月白、こちらも光が夜空の裂け目。なんですが、後句、転げ出すかなあ……と思ってしまいます。3級。葉音さんは不知火、片野瑞木さんは龍燈。前句、幻想的な不知火にちらと走る裂け目。そこに入り込む夜が、不知火をまた美しくするのかも。後句、不知火があるということは海にいるということなので、ちょっと難しいか。3級。青柘榴さんは朝露。朝を迎えているのに、夜が入り込む景が少し難しいと思います。けど、朝露が転がろうとしている感は好き! 海の一滴になりたい。3級。

実石榴の裂け目に夜が入りこむ
海へ行きたい実石榴の転げ出す
 幸さん、柊月子さん、樫の木さん、どかていさん、芳香さん、あいむ李景さん、あるきしちはるさん。ぎんなんさんは実ざくろ。あの裂け目のちょっと得体の知れない感、夜が入っていっても納得できそう! なんですが、実柘榴、ちょっと転げ出すには重たいかな、と。もう少し、軽やかに海を目指してほしい気もします。1級。彩楓さんは柘榴、三音、物足りない感がします。2級。夏柿さん、ふじみんさん、洒落神戸さん、うに子さん、ゆりかもめさんは無花果。こちらも、あの裂け目から覗く中身を思うと夜が入り込みそう。ただ、後句、転がるにはちょっと瑞々しくて、海に着くまでにつぶれそうです。1級。きさらぎ恋衣さんは数珠玉。ざらざらと一斉に転げ出したらそれは可愛いかも。前句、数珠玉は裂け目、というよりは上下穴? でも、夜が入り込みそうなのは、数珠ということばの効果かも。2級。

山梨の裂け目に夜が入りこむ
海へ行きたい山梨の転げ出す
 桂奈さん。今回、沢山の実を回答にいただきました。これ、前句「裂け」てるわけです。割れ目でなく。そのあたり、伝わるといいなあ、と思ったんですが、どうでしょうか。山梨、画像検索すると固そう。どちらかと言えば割れる? 3級。もねさんはなし。二音はやっぱりリズムが悪い、と。4級。河原撫子さんは木天蓼。実、結構詰まっているようですが、裂けるのかなあ……。海まで転がるにはちょっと形が悪いか? 3級。人日子さんは桃の実。果汁が滴っていて、入り込む隙間なさそう?転がるには傷だらけになるかも。3級。斎乃雪さん、笑松さんは蓮の実。飛び出した後に転がりたいという勢いはわかるかも。2級。ひでやんさんは瓢の実。瓢の実はどちらかといえば、裂け目というよりは穴かなあ、と。でも、転がり出すと音を響かせながら楽しそうに海を目指しそう! 2級。ほろよいさんの無患子は、あの黒さは夜が作り出しているかも。2級。くらげをさんは栃の実、さよりさんは橡の実。裂け目に夜が入って押し広げそうだし、山から海までころころと転がるの上手そうだし。1級。小市さん、坊太郎さん、遊人さんは毬栗。毬の隙間に入り込む夜は栗を太らせているのかも……と想像しました。で、毬で頑張って転がる栗。何か納得。1級。健次郎さんは笑栗。熟して毬が開いているから、裂け目には大きいし、転がれるか……2級。ちろりんさんは栗の実、しげこさん、やっちーさんは山栗。後句、転げ出すんだけど、どうも止まっちゃいそうなのは形のせいか。2級。

今月の正解
団栗の裂け目に夜が入りこむ
海へ行きたい団栗の転げ出す
 dolce@地味ーずさん、野良古さん、柝の音さん、みやこまるさん、大阪野旅人さん。藍人さんはどんぐり。つるんとした団栗に、走る裂け目。いつもは気にしない中身が見えそうで、夜が入り込んで、少しずつ隙間を広げているのかも。そして、後句はシンプルに童謡的イメージ。山に生まれた木の実たちは、きっと海を見たい、そして一番に目指し始めるのは、転がり上手な団栗。うーん、ちょっと他の実との差が付きにくかったでしょうか。反省。1級。


解答募集中!
次の(  )の中に共通する冬または新年の季語を入れてください。

掃き癖の強き箒や(   )
(   )寄れば始まる子の喧嘩

 11月20日締切  結果は1月号に掲載


山澤香奈(やまざわ かな)
 第3回俳句甲子園出場。句集シングル『線路とぶらんこ』(マルコボ.コム)。


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100年投句計画 投句方法



雑詠俳句計画
自由律俳句計画
詰め俳句計画

 「雑詠俳句計画」では、寄せられた投句を一括して、各選者が選句します。各選者に宛てて個別の投句を行うものではありません。

1月号掲載分締切 11月20日(月)

投句方法

 投句先コーナー名
 俳号(無ければ本名の名前のみ)
 本名
 電話番号
 住所

 以上の必要事項を書き添えて、編集室「100年投句計画」係までお寄せください。メールの場合は、件名を「100年投句計画」としてください。
 「雑詠俳句計画」「自由律俳句計画」はそれぞれ2句ずつまで投句できます。また、「詰め俳句計画」は季語1つのみを投稿できます。
 各コーナーの投句は、ひとつにまとめて送っていただいても構いません。

メール宛先
magazine@marukobo.com

投稿専用ページ
http://marukobo.com/toukou/

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(「俳句ポスト365」のページ参照)


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短歌の窓


選者
短歌誌『未来』会員 渡部光一郎


特選

庭付きの家に転居の荷を解いて赤き煉瓦の花壇ひき継ぐ  きさらぎ恋衣
 転居の際のちいさなドラマを過不足無く詠んでいる。結句、「赤き煉瓦の花壇」という語の選択、「ひき継ぐ」で詠いおさめた点など随所に技あり。


並選

新しいミシンで何を作りましょう赤いチェックの布を広げて  彩楓
 リズムがよく、余分な力が入っていない歌。楽しい気分がよく伝わってくる。

食パンの湿りのような白い腹なでても良しと猫のねころぶ  時計子
 「食パンの湿り」とは言い得ている。猫でも犬でも、背にはない湿りが腹側にはある。

苔生して文字幽かなる石仏色無き風の中馬街道  藍植生
 風を「色なき」と感じた点が面白い。固有名詞を取り入れた下句もしまっている。やや上句が絵葉書のようなのが気になる。


コメント

その昔天狗住むとて御社の古木の枝葉に目を凝らし立つ  藤田あき
 「枝葉に」というところがいい。「枝」に「葉」を加えることで「目を凝ら」す対象として説得力が出た。

戦国の面影残す武家造かすかに漂う檜の香り  有瀬こうこ
 てらいのない詠みぶりがよい。

高知沖スピード上げて台風はひ弱なる国舐めて縦断  青柘榴
 「なめて」に二つの意味をもたせた。ここではわざわざ「舐めて」という表記にしないほうがよい。「ひ弱なる国」と言い切ったのはよい。

パーティーを台無しにした僕だけどまさか君まで馬鹿と言うのか  暮井戸
 どういうふうに「パーティーを台無しにした」のか、「君」が誰なのか、これだけだと状況がつかめないので再考を。

単線の各駅停車一人旅それぞれの駅コスモスの花  芳香
 「各駅停車」「一人旅」「それぞれの駅」「コスモスの花」と、各フレーズどうしがぷつぷつと切れているので、助詞をおぎなって言いたいことを絞るとよい。

千二百数十円の毎月の同志と言へなくもなき二誌よ  久我恒子
 「同志」というのはどういうことだろう。また雑誌が二つというのは必要な情報だろうか。少し難解である。

ためらいの文字と余白に遅れ来る残暑見舞いの色は黄昏  港のヨーコ
 「残暑見舞い」についての情報が一首の中に散らばっていてわかりづらい。語順を入れ替えるなどして、歌意をもう少しよく伝えるようにするとよい。

シマウマの縞をきっちり数え上ぐ「個体差あるよ」の答え響けり  土井探花
 テーマは面白い。上句と下句の終りの活用を変えるといい歌になる。


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自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



評 菅 紀子


 現代人。忙しくて詩を詠む暇がない、と言いたくなる時もあります。私は今秋海外出張、国内出張ともに立て続けにありますが、先日移動の機内で拘束されている間に経験したばかりの旅を題材に没入してみますと一気に書き留めることができました。かたや日常生活の間心に浮かんだ句や歌。できた!と喜んでもその時書き取れなくて消えてしまったものが沢山あります。みなさんどのようなシーンで句作されてるのでしょう。

1.
cry is woman
i can not eat cat's
Autumn In mountain

鳴く婦人猫喰えぬよと秋の山  KIYOAKI FILM

crying woman
unable to eat cats,
autumn mountains

紀 婦人は人間であるという前提で「鳴く」ではなく「泣く」として語を選びました。
シュールですね。


2.
My left foot
I Love you
Autumn kellogg

左足我は愛さん秋蛙  KIYOAKI FILM

My left foot
I love this film,
an autumn frog

KIYOAKI FILM 基礎英語を続けることを怠けています。単語の記憶が浅く、今週から何としても続けよう。英語して、海外の女性と話すのが夢。アメリカホームドラマを毎日見ています。面白くて笑っています。


3.
cockscomb come out
internal organs are
not line symmetry

鶏頭や臓器は左右不対称  片野瑞木

cockscomb
asymmetric
is its organs

紀 line symmetryだと線対称で二次元的なので、単に対称的なという形容詞にしました。


4.
untidy cosmos
giraffe have a
long tongue

コスモスの荒れてキリンの長き舌  片野瑞木

ravaged cosmos field
long tongue of
a giraffe

紀 「荒れて」は一面のコスモス畑が風などで乱れた感じになっている様子でしょうか。untidy cosmos だとコスモスが主体的にだらしなくしている感があるので変えてみました。


5.
a typhoon to approach-
the crowded
smoking room

野分近づく喫煙室の混み具合  久我恒子

a typhoon approaching
a smoking room
crowded

紀 「具合」が表現できませんでした。


6.
rubbed marks by cats
on each of corners-
hot in autumn

角角に猫の擦りあと秋暑し  久我恒子

autumn heat,
cat's marking
at every corner

紀 最後に発句と結句を入れ替えてみました。


7.
Intimidating of a kingfisher in autumn
Time freeze

威嚇する秋の翡翠止る刻  ほろよい

kingfisher intimidating in autumn
frozen time

紀 ほろよいさんの二行詩を尊重し、より原句に忠実に訳しました。「刻は止る」だとtime freezes と三人称単数の s がつきます。


8.
The poison
in October
has no colors

十月の毒には色がないのだよ  チャンヒ

the poison
of October
lacks colors

紀 小説名「色彩をもたない田崎つくると……」を思い出します。口調も村上春樹みたい。チャンヒさんの英語句でもいいのだよ。


9.
turning rusty key,
and Winter comes

錆びついた鍵を回して冬に入る  チャンヒ

turning
a rusty key, and
winter's in


10.
burning nights in August,
reading ""War and Tanka""
again and again

風死す夜「戦争と短歌」再読  明 惟久里

nights in doldrums
War and Tanka
reading again


11.
virgin shoes
for lauching ceremony,
beautiful Sunday

白靴や進水式は日本晴  明 惟久里

brand-new
white shoes for a launching ceremony
clear sunny day

明 惟久里 No.238でもご指導ありがとうございました。poemではなくHaiku、やはり季語はしっかり考えるのですね。1句目、「風死す」は、sultryとburningで迷いましたが、ご教示いただく韻と俳句に使う格(どちらもまぁまぁですが)を考え、後者にしてみました。またテーマがテーマなので、敢えて「8月の」と付けてみました。

紀 明 惟久里さん、「風死す」はその言葉自体が詩的で生かしたいなと思ったので、それを表す無風状態という意味の単語を調べるとdoldrumsという語がありました。また、英語でもthe wind died down(風が凪いだ)と言います。英語で書名はイタリック体にする決まりがあります。そのままなら” ”(2個づつ)をつけます。「8月に」はなくても鑑賞者が想起できそう、Haikuなので言葉は少ない方が綺麗かも。


12.
autumn night,
let's write a letter
to my mother

母さんに手紙書きましょ秋の夜  彩楓

autumn night,
I shall write (a letter)
to my mother

紀 彩楓さん、素直で素朴でほっとします。ダブルスペースになっているところがあるので縮めました。また「ましょ」は let's ですが、これは let us の短縮形で、自分を含めた複数の人と一緒にという意味。この句は作者が独り言のように言っているので I shall と意思を表しました。また、write to 人 で「人に手紙を書く」という意味になります。


13.
one bench faces the sea
a sky filled with
rows of cirrocumulus

海を向くベンチ一脚鰯雲  彩楓

a bench
facing the sea,
mackerel sky


14.
Osmanthus
to lie in a row
bicycle

金木犀つながっていく二輪かな  すずき徳三郎

Osmanthus,
a chain of bicycles
goes beyond the horizon


15.
I decide
to lose weight
this autumn

胴回り2寸絞ると決めて秋  すずき徳三郎

my waist
to size down by 2.4 inches
autumn resolution

すずき徳三郎 「金木犀つながっていく二輪かな」←これは松山の放置自転車をモザンビークに送り武器と交換するなどしている団体が、四国で海外の方を含むサイクリングのイベントをしたときの夜の交流会で披露する俳句を考えてと請われて詠んだものです。通訳の人が英訳したそうですが、結局どんなになったか知らせてもらってありません。
 気持ちとしては、自転車がつらなって走っているという意味と友情がつながっていくという意味を掛けていますが、とても英語では表現しきれません。菅先生ならその団体のこともある程度理解していただいてますので、添削が楽しみです。没になりませんよう宜しくお願いします。

紀 徳三郎さんこんにちは。金木犀の句には、海外援助交流とわかるように語を補ってみました。減量の句は、2寸=6.0606 cm=2.38606 インチ でしたので、とりあえず英語圏用に直し、「秋の抱負」としておきました。


菅 紀子(かん のりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通 翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学非常勤講師。(Hailstone Haiku Circle blog ICEBOX Contributor)(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)


自作の俳句およびそれを英語俳句にしたもの(2句まで)を募集!
応募先
WEB http://marukobo.com/eigo/
Email eigo@marukobo.com
1月号掲載分締切 11月20日(月)


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百年歳時記


夏井いつき

第53回


 有名俳人の一句を紹介するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月紹介鑑賞していきます。


立待月妻はときどき木と話す  香野さとみ
 「立待月」は十五夜の翌々日。日に日に少しずつ遅くなっていく月の出を愛でるのも俳人の楽しみです。「立待月」は立って待っているうちに出る月。月を待っているのは、若い夫婦でしょうか。
 傍らの「妻」が何かつぶやいた。ん?と聞き返そうとしたけれど、それは自分に向かってつぶやかれたものではないことに、夫は気づきます。月の出を待つ二人の傍らには美しい「木」が一本。我が「妻」はその「木」と語り合っているのだと気づくのです。「妻はときどき木と話す」とは、なんと愛情に満ちた言葉でしょう。「妻」を見つめる夫の視線のなんと優しいことか。やがて上ってくる「立待月」。しなやかな「木」の傍らに立つ妻のなんと匂やかなことか。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』10月6日放送分)


瘤雲は萎み行水名残かな  旧重信のタイガース
 「行水名残」とは、今最後の行水をしているという意味と、気が付けば行水をしなくなっているなあという感慨、二つのニュアンスを持つ季語のようです。季語だけで七音ですから、この季語を上五中七下五のどこに置くかもなかなか悩ましい。この句は「行水名残かな」と詠嘆した九音の上に、眼前の光景だけを述べているのですが、前半の「瘤雲は萎み」という描写が、見事に季語の世界を描いています。入道雲ではなく「瘤雲」という言い方がまたいいですね。夏の象徴でもあった「瘤雲」は萎んでしまった、そして「行水名残」の頃になったよ。シンプルな叙述ですが、季語の持つ二つの意味のどちらの解釈も成立する。なかなかの名品になりました。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』9月15日放送分)


おほきみの恋の広野をいなつるび  きさらぎ恋衣
 「おほきみ」「恋」「広野」とくれば、『万葉集』の歌人額田王を思い出します。「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」の一首を本歌取りした世界が広がる作品です。「おほきみ」が「恋」をなさった「広野」を、今、美しい「いなつるび」が走っております、という詠いぶりはおおらかにして格調があります。
 季語「いなつるび」は稲妻の傍題。稲光が起こることで、稲の花がつるび(交尾して)稲の実がみのるのだよという意味を持つ季語です。「いなつるび」に「おほきみ」の大人の「恋」を匂わせるあたりが、実に巧い取り合わせ。三十一音の和歌と、十七音の俳句の根本的な表現の違いを、お手本のように見せてくれる一句です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』9月8日放送分)


秋園やきりんは時々泣くのです  月の道
たれかれのチェスの駒めく秋の苑  めいおう星
 前句、動物園に行くたびに、キリンの目ってなんであんなにぬれぬれ濡れてるんだろうと思ってましたが、キリンは瞬きができないので、たまに涙を流して潤すんだそうです。そのさまを「きりんはときどき泣くのです」と呟いただけなのですが、季語「秋の園」の寂しさや切なさが、読み手の心にひたひたととどきます。
 後句、お城の窓から見るイギリス庭園というイメージで読みました。散策している人たちの「たれかれ」はまるで「チェスの駒」みたいという比喩にオリジナリティがあり、その視点に共感します。「秋の園」は明るさや親しさがありますが、「秋の苑」には奥行のある静けさやきちんと整えられた庭の印象があります。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』10月13日放送分)


ゆゆしくもこれも喪の色櫨紅葉  花屋
 「ゆゆし」とは、「神聖でおそれおおい」「忌まわしい」という二つの相反する意味を持った言葉。なんとまあゆゆしきことに、これも「喪の色」なのですよ、この激しい「櫨紅葉」の赤は。
 本来は黒白が「喪の色」ですが、「櫨紅葉」の赤であれば「喪の色」となり得る。なぜならば、「櫨紅葉」は神聖さと禍々しさを共有しているからだと。「櫨紅葉」の葉の形状の美しさ、赤の鮮やかさ。加工すれば蝋となる櫨は、人間に火を与えてくれると同時に、近寄ればカブレてしまう危険な植物。神聖さと禍々しさ。その二つを有していなければ、あのような暗く激しく美しい赤にはなり得ない。そんな作者の詩的発見に、読者の心はハッと揺さぶられます。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』10月13日掲載分)


百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
松山市公式サイト『俳句ポスト365』http://haikutown.jp/post/
などに投句された俳句を紹介します。


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俳句の街 まつやま

俳句ポスト365



協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


金曜日優秀句
平成29年9月度


菊日和(きくびより)


漣の半分は影菊日和  鞠月けい
菊日和影もハシビロコフの形  くらげを
はたらいている象つなぐ菊日和  酒井おかわり
金糸猴の上向きの鼻菊日和  初蒸気
菊びよりかんときつねのとびさうな  緑の手
本山の銅鑼じやんじやんと菊日和  どかてい
受付の硯の乾き菊日和  いまいやすのり
婦人部ときつねうどんと菊日和  赤馬福助
菊びより月の抱く水地の抱く火  めいおう星


ひかひかと手話の一団菊日和  とおと


鰯(いわし)


無線にがなりナブラに放つ鰯網  ほろよい
鰯焼く煙国見の煙かな  ひでやん
昼からは釣れた鰯を餌にして  石川焦点
鰯拾う鍋の取っ手の外れけり  未貫
拇指に添うて鰯に流す水  剣持すな恵
ほうたれを千匹割きて手の脂  大塚迷路
鰯焼く一人はたまにだからよし  かをり
朝な夕な鰯を焼いて牧師館  樫の木
鰯焼くナザレの浜の女たち  朶美子


満月の尻着くあたり鰯寄る  めいおう星


11月の兼題
公式サイト内の「俳句投稿」より作品をお寄せください。(※投句期間を過ぎますと投稿ページは次の兼題の募集に自動的に切り替わります。ご投稿はお早めに。)

投句期間 10月19日〜11月1日
水涸る(みずかる)
三冬/地理
冬に晴天の多い太平洋沿岸地方や、雨ではなく雪が降る北日本や北陸地方では、川の水が著しく少なくなる。この時期を待って護岸工事や砂利採取などが行われる。

投句期間 11月2日〜11月15日
炭(すみ)
三冬/人事
ナラ、クヌギ、カシなどの木の幹や枝を適当な長さに切り、窯で蒸し焼きにして作る。作り方によって様々な種類があり、用途も様々である。

投句期間 11月16日〜11月29日
探梅(たんばい)
晩冬/人事
梅林や庭園などに植えらたものではなく、まだ雪深い山などに、春の知らせとして春に先駆けて咲く梅を尋ねることをいう。

参考文献 『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


 「俳句ポスト365」は携帯電話からもご参加いただけます。
 「俳句ポスト365」公式Facebookページ開設中! 公式サイトに設置しておりますリンクよりお入りください。毎回の兼題のお知らせを中心にお伝えしながら、皆様の返信欄への書き込みもお待ちしております。


 募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。


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一句一遊情報局



協力 南海放送


金曜日優秀句
平成29年9月度


ささげ飯

ささげ飯三つ握って僧へ施す  立志
ゆふぐれのいろに炊きあげささげ飯  ひそか
ささげ飯色を匂ひという雅  越智空子
白髪を品よく結いてささげ飯  とし丸
結納の水引清しささげ飯  まゆ熊
興行の合間しゃふしゃふささげ飯  朝日
山賊の隠れ家は山ささげ飯  宵嵐
列島の荒ぶる神へささげ飯  沢田朱里
焼け跡の朝始まらんささげ飯  たぁさん
ばあちゃん倒れてたささげ飯炊けてた  小泉岩魚
青々と神宮の空ささげ飯  まどん
討論果てぬ松下村塾ささげ飯  このはる紗耶


ささげ飯長寿の水を溢れさせ  マーペー


柳散る

トラックを掠め無音の柳散る  小雪
柳散る川の名を持つ橋に立つ  あるきしちはる
柳散る屋号で通す寄合所  不知火
屋号のみ残りし倉庫柳散る  てん点
巫女さんが煙草を吹かす柳散る  吉井ともこ
城壁のうんぬと反りて柳散る  お手玉
柳散るずちゃり河童のひとりきり  凡鑽
柳散るごぷんと溝に吸い込まる  豊田すばる
柳散るほどの泣き声にはあらず  ひそか
おかあさま柳散るころかへります  緑の手
床擦れの肉のもどりや柳散る  菊池洋勝


柳散るお堀は帽子かえさない  紫水晶


行水名残

行水名残飯場に星はすぐ乾く  天玲
行水名残盥は昏き湖を秘め  小泉岩魚
箍白く乾き行水名残かな  ほろよい
ぎょうずいなごりたらいをいれたなやをずっとみてる  たくみ4歳
行水の名残や粗朶を焚く匂ひ  蓼蟲
行水名残終へてかの日へ撒く光  一斤染乃
行水名残北半球に捨てる水  松山雪水
行水名残山姥も山彦も  まどん
物干に日の射す角度行水名残  あるきしちはる
行水名残伏せる盥に蝉の翅  アルクマン堀家
鬼の子のきらきら行水名残らし  ひそか


瘤雲は萎み行水名残かな  旧重信のタイガース




家賃払えず広々と月明かり  人見直樹
終戦日すぱんと広げ干す襁褓  このはる紗耶
海広く鳥を迎へる構へかな  もも
広場にて腑分け始まる小鳥来る  桃猫
銀漢の尻尾つかみに行く広場  マイマイ
広口瓶底に酢匂う秋湿り  紫水晶
蚯蚓鳴き夜の患部を広げたる  小泉岩魚
広島のおばにおてがみかく月夜  モッツァレラ2号
広重の百景青き九月かな  ひそか
花嫁は広東訛り水の秋  小雪


おほきみの恋の広野をいなつるび  きさらぎ恋衣


宗太鰹

海が光つた宗太鰹が来たのだらう  蓼蟲
巡礼は岬を廻る宗太鰹  ドルチェ
海賊のこがつお捌く唄低し  土井探花
宗太鰹宿毛フェリーの談話室  さくら
異国語のラジオ流れる宗太釣る  洒落神戸
宗太鰹フィリピンにも残留孤児  一走人
千本の宗太鰹を締め終へぬ  すりいぴい
節納屋へ宗太鰹の五千匹  石川焦点
節納屋へ宗太鰹の怒涛めく  伊奈川富真乃
ニッポンに宗太鰹と出刃がある  天玲


二番競りの目当ての宗太鰹かな  テツコ



投句募集中の兼題

投句締切 11月5日


季語ではない兼題です。「強」という字が詠み込まれていれば、読み方 用い方は問いません。季語は当季を原則として、自由に選んでください。

テーマ 東予
「東予」をテーマとして俳句を詠んでください。特定の語を詠み込む題ではありません。また、季語は当季を原則として、自由に選んでください。


投句締切 11月19日

藷粥(いもがゆ)
三冬/人事
小さく切ったさつまいもを入れて炊いた粥。

侘助(わびすけ)
三冬/植物
ツバキ科の常緑高木。中国系の椿の交配種。白、淡紅、赤白混じりなどの花は、小ぶりの一重咲きで全開せず、花の数も乏しい。葉も細く、いかも控えめな印象から、茶花として珍重される。

参考文献『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句宛先
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとにしたものです。俳句ならびに俳号が実際とは異なっている場合がありますのでご了承ください。


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今回のお題句に対する投句から次のお題句を選び繋げてゆく

疑似俳句対局


選者 美杉しげり


今回のお題句
ねぢ花の空と指切りするごとく  かま猫

 今月も「初めて参加します」という方が複数おられて嬉しい限り。そこで……というわけではないのですが、ルールの再確認をしておきたいと思います。
 と言うのが、実は今回、お題句の「ねぢ花」から「ねぢ」を自立語としていただいたという方が何人もおられたから。(「ねぢる」「ねじ」「ねぢ」など)
 俳句対局のルールの一つに「前の句から頂くのは漢字または自立語」というのがあります。かま猫さんの句の「ねぢ花」はこれで一つの言葉ですから、「ねぢ」だけで自立語というのは、少々苦しいかと。実際の俳句対局では、減点の対象ですね。でも、失格というわけではありませんので、次回はそのあたりにもちょっと注意して投句なさってくださいね〜。


候補句

名も知らぬ花一輪へ秋の風  芳香
木犀の一枝切つて亡き父母へ  健次郎
秋深し指示語に笑ふ立ち話  越智空子
 少しの風にもふるえるような可憐な野の花。亡き父母のために薫る木犀の花。優しい二句が並びました。越智空子さんの句、親しい者同士が「あれがねー」と指示語ばかりで話しているのでしょうか。第三者には、きっとちんぷんかんぷんですね。

10月や空きスケジュールなかりけり  杉もとたかし
空海の声か室戸の秋の潮  藍植生
秋雨や空芯菜の皿大き  野良古
 お三方とも、かなり早い投句でした。手帖に予定びっしりの十月、いいですね。室戸に聞く空海の声は若き日のそれかもしれません。空芯菜、音の響きも楽しくて美味しそう。
 「空」の句はそれぞれ個性的。読んでいて楽しくなります。
秋の空鳥居は緩く反りにけり  すりいぴい
ハレ色の招き猫買ふ空高し  斎乃雪
天空てふ名付くカクテル月の秋  出楽久眞
 すりいぴいさんの句、さりげないですが、描写が確かですね。斎乃雪さんの句の招き猫、思わず欲しくなります。「天空」と名付けられたカクテルはどんな色なのでしょう。
荒鷹の空砕きては爪の銀  土井探花
心臓の膜を夜空に龍淵に  蓮睡
 探花さんの句は何ともカッコイイ。もちろん現実の景ではないのですが、鷹の本意のひとつの形でしょうね。蓮睡さんの句がまた異色にして大胆。「心臓の膜を夜空」で読み手を驚かせ、下五の着地が「龍淵に」とは。す、すごい。

指切りを出来る恋なり秋の午後  たぶん
秋天と胸のあひだで指切りす  鈴木牛後
秋茱萸も幼き夢も指切りも  小川めぐる
 「指切り」という言葉には郷愁を感じますね。三句それぞれ遠い日の切ない恋を連想してしまったのですが、さて……?

義母からの切れない電話大根干す  洒落神戸
「それからね」電話切れない夜長かな  中山月波
 切りたいのに、なかなか切れない電話。浮世の義理ですねえ。それぞれの季語に個性が。

シナプスの切れさうになる夜寒かな  久我恒子
踏切の警音とほき暮の秋  夏柿
茸狩やポリープ切除したる予後  ぐずみ
輪切り免れし間引き大根美味し  青柘榴
 「切」という語には、やはり冷ややかな印象があります。久我恒子さんと夏柿さんの句は季語とあいまって、どこか不安をかきたてられるような句。ぐずみさんと青柘榴さんの句は、逆に「茸狩」「間引き大根」が何だかユーモラス。

記念日は薩摩切子に今年酒  ひでやん
屈折を酒に委ねて江戸切子  柊 月子
江戸切子喉滑りゆく今年酒  笑松
 このお三方で心ゆくまで酌み交わしていただくしかないでしょう! 美しい切子のグラスで。

さんざめく縁切り寺の吾亦紅  凡鑽
 実は、今回の一番乗り投句でした。吾亦紅という名を聞くと、誰しも「我も恋う」を連想するのではないでしょうか。その吾亦紅と「縁切り寺」の取合せ、なかなか意味深。お題句を読んで、即座にこんな句が詠めるというところに作者の力量が。


次回お題句

赤とんぼ母さん爪を切りましょね  柝の音
 切なくも優しい句を今月は選ばせていただきました。ある年代以上の人にとっては、胸にぐぐぐっとくる一句ではないでしょうか。それなりの年齢のお母様で、自分ではもう爪も上手に切れないのでしょうね。赤とんぼがまた、自分の幼い日と若かった母親の姿を思い出させて……。
 というわけで、さらりとルールにも留意しつつ、来月も意欲作をぜひ!


美杉しげり
 第8回俳句界賞受賞。4年ほど前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。

毎月25日頃に、投句フォームにてお題句を発表します。投句締切は毎月末日。

疑似俳句対局投句フォームアドレス
http://marukobo.com/taikyoku/


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THE BEATLES 213 PROJECT


第2回「シネマ! ザ ビートルズ」
文 夜市


 ビートルズ初の主演映画「ア ハード デイズ ナイト」の日本公開は1964年8月、アルバムの発売は同年9月。今回は映像とコラボした句も多く寄せていただいて楽しかったです。


ア ハード デイズ ナイト

幕開けのギター飛び出す四人組  猫正宗
 映画の冒頭シーン。あまりにも有名なジャーンという解放弦めいたイントロ。ポール以外の3人はこの曲をバックに走りに走って列車へと駆け込みます。そこで彼らが見たものとは?

爽籟やギターの余韻重なりて  斎乃雪
 こちらはエンディングでタラリラタラリラとフェイドアウトしていくリードギターと読みました。猫正宗さんの句と一対を成す感じ。

猫のように働きピーナツのように眠る  時計子
 「犬のように働き丸太のように眠る」という歌詞のインパクトは強烈。しかしそれをナナメから句にするところがビートルズ的だなあと感心させられた次第。「ピーナツのように眠る」が詩的だよなあ。ちょっと村上春樹的な感じもします。

ハードデイズナイトにハーゲンダッツ白桃  風来松
短夜や犬と丸太の日々も良し  中山月波
木から落ち犬に噛まれた林檎かな  洒落神戸


恋する二人

君がため爪弾くコード月に舞う  齋乃雪
 サビでジョージがコードの変わり目ごとにジャラーンと12弦ギターをかきならす。そのきらびやかな音色を託せるものはやはり月の光しかないですよね。

内股で軽く踏み入る花畑  暮井戸
 映画の演奏シーンでジョージが内股で軽やかにステップを踏む。この時期一番アイドルだったのは実はジョージなのかもしれない。にしてもこんな些末な一コマが俳句になるなんて、ファンとしてはゾクゾクしてしまいます。


恋に落ちたら

暖炉燃ゆデュオという名の酒甘し  ツバメ号
 超一流の男声デュオでもあるジョンとポールの出発点をなす佳曲。複雑怪奇なコード進行でジョンのパートは毎回微妙に違って聞こえる。なにか魔法でもかかってるんでしょうか。

元カノのことばかりだね枯葉道  猫正宗
 確かに(笑)。ちょっぴりナサケナイ歌詞ですよね。ジョンの詩がだんだんと内省的になってゆく兆しなのかもしれませんね。

一目惚れ恋に落ちたら虹の橋  雲水


すてきなダンス

コーラスの花圃に水やりするごとく  暮井戸
 アルバム中唯一ジョージのリードボーカル。そうなるとコーラスに回ったジョン&ポールの艶っぽさはまさに圧巻。ダルビッシュと田中将大が中継ぎで1イニングずつ投げているみたいな感じです。花圃に水やりという措辞に年少のジョージへの愛情が垣間見えるのもいいですね。


アンド アイ ラヴ ハー

弦月を転がし半音高き空  井玉
 間奏から転調する瞬間のカタルシスをうまくとらえた井玉さんの一句。シンプルかつソリッドなアコスティックサウンドがいっそう冴え渡ります。

乾杯のシャンパン宵待の窓へ  久我恒子
 楽曲のイメージを絶妙の距離感で句に昇華させる久我恒子さんワールド。どれも素敵なのですが今回はこの句をいただきました。

歌ってよ銀杏散るよにアンドアイラブハー  だりあ


第4回 兼題曲
テーマ「アルバム『ラバー ソウル』より」
 ドライブ マイ カー
 ノルウェーの森
 ひとりぼっちのあいつ
 ミッシェル
兼題曲を詠んだ俳句をお送り下さい。
専用フォーム http://marukobo.com/beatles/
専用Email beatles@marukobo.com
締め切り 11月20日


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鑑(み)るという冒険


〜映画篇 演劇篇〜

文&俳句 猫正宗


第六十一回
『スパイダーマン:ホームカミング』&『吾輩はウツである』

 みんな大好きスパイダーマン。二度目の再起動で遂に「マーベル シネマティック ユニバース」(所謂『アベンジャーズ』の世界)に。十代のヒーローである彼の父代わりを、今回はアイアンマンことトニー スタークが務めるためもあり、「知ってるでしょ?」とばかりに、誕生の経緯、ヒーローを自覚するきっかけの叔父の死をばっさりカット。さらに年齢も引き下げられ、より明るめな雰囲気に。十五歳のオタク高校生が、ある日突然特殊能力を得て憧れのヒーローに。そんな矢先、先輩ヒーローに声をかけられ、もうすぐ緒先輩方のチームに加入できるかも。ほのかな思いを抱く美人先輩は「あのヒーローちょっと気になるわ」とかなんとか……。舞い上がるなって方が無理ってもんでしょう。でもそんな能天気な世界だって、そこに生きてる彼にとっては現実です。普段のイケてない自分、学校とヒーロー活動の両立、ホームカミング(米国の高校におけるプロムに次ぐイベント)のパーティーにどう美人先輩をエスコートするか……。そんなたわいもない、しかし、十代にとっては悩ましき問題の数々の先に、本当に大きな決断が待っていました。そこで彼は「大いなる力には大いなる責任が伴う」ことを知り、いつものようにスパイディの本当の物語が始まります。
 ところで、本作には、美人先輩とは別に、個性派少女が登場します。気のない素振りながらどうにも主人公が気になっているらしい彼女。最後にスパイダーマン好きには意外なことを明かします。彼女こそ、今回の再起動を最も象徴した人物のように思いました。今後、本シリーズの重要な役どころを担いそうで要注目なのです。

青春という煩悶も蜘蛛の網

 悩むのは若者ばかりではありません。いい大人だって悩むのです。松山市民劇場第318回例会『吾輩はウツである』(劇団朋友公演、原作 長尾剛、演出 西川信廣、出演 芦田昌太郎、荘田由紀、他、'17年9月11日、松山市民会館中ホール)は、『吾輩は猫である』を下敷きに、夏目金之助が漱石になるまでを描きます。折しも子規 漱石生誕150年。タイムリーな上演となりました。松山に対する漱石の思いは良いものばかりではなかったようですが、この地で本作が上演できたというのは、劇団にとっても特別な思いがあったようです。なんと脚本家、瀬戸口郁が予定外の来松。上演終了後の交流会にも参加というサプライズも。さて、本作の肝は迷い込んできた黒猫を筆頭に次々と夏目家に増えてくる猫たちの言葉をなぜか解することができる夏目先生が、その猫と交わす会話。そして当時の教え子、「厳頭之感」を書き残し華厳滝に身を投げ、若者のみならず社会に衝撃を与えた、藤村操との交流が描かれることでしょうか。この二つのかかわりによって、金之助は、自らが為すべきこと、為したいと思うことを知り、漱石へとなるのです。
 因みに出演者の一人、堀元宗一朗は松山の劇団出身で、本作が凱旋公演に。市民劇場にはそんな役割もあるのだなと思った次第。

猫たちのひげも秋思に少し揺れ


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岡田一実の

句集の本棚



あんこーる
後藤比奈夫 著

発行 ふらんす堂(2017年初版)
128ページ
定価 本体2,000円+税

 著者の第十五句集。
萩ありて芒なかりし月の庭
スーパームーンなどと囃されいさよふ月
寄る港右顧し左眄し花筏
どちらから涸れしともなく夫婦滝
句机にを競へる愛のチヨコ
 「」とは優美で美しいこと。色とりどりのチョコレートが句机に集う。その華やぎたるや。
これはビル風六甲颪ではなかり
レンタルといふといへども花衣
梅椿桜桃あと濃山吹
美しく曲がる街道夏つばめ
ながむしは嫌ひそれほど長くなきも
舞洲ゆり園
園に帯造る五色の百合をもて
沖膾包丁滅多矢鱈かな
ところどころ渇筆雨の大文字
思はざるところで開き揚花火
茅の輪めきたれどもクリスマスリース
あらたまの年ハイにしてシヤイにして
フエールセーフフールプルーフ四月馬鹿
蘖に咲かせ如何にも老桜
百歳をクリアーしたる朝寝かな
 自由で柔軟な発想は現代を生きる人の感覚である。大らかで大胆な句風は読者に新鮮な驚きと確かな共感をもたらす。「諷詠」名誉主宰。



木簡
山口昭男 著

発行 青磁社(2017年初版)
191ページ
定価 本体2,400円+税

 著者の第三句集。
薄氷の表の方が暗かりき
餅筵みかんの皮の落ちてをり
東の空の色なる杜若
金亀子もんどり打つてもとの位置
葛咲くや雨はとぐろをまく匂ひ
 葛の蔓はうねる。雨が「とぐろをまく匂ひ」なのは、葛のつるに巻かれるからかもしれない。雨に葛の花が匂い、さらに雨の濃い匂いが漂う。
大根に大根の葉のはりつきぬ
葉から葉へとびちる雨も厄日かな
ふりむいて蟷螂の貌かたむいて
 一句の中に切れを置かないことで「かたむいて」→「ふりむいて」と輪廻する。蟷螂の貌の動きが永遠のものとなる。
砂利道に遠足の列入りけり
見えてゐる水鉄砲の中の水
竹の根のみどりうきたる良夜かな
箒目に白き羽根浮く秋祭
うなじよりかんばせくらき踊かな
湯豆腐の湯のゆるやかにふくらめり
歩みつつ止まることなき蠅の貌
 「秋草」主宰。


岡田一実(おかだ かずみ)
 2014年「第三回 大人のための句集を作ろう!コンテスト」優秀賞受賞。2014年「浮力」にて現代俳句新人賞受賞。現代俳句協会会員。「いつき組」所属。「らん」同人。第二句集『境界 border』(マルコボ.コム)。


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mhm通信


第80回

文 蓮睡


白石の鼻夕日鑑賞会吟行
 9月といえば、お彼岸、秋分の日。そして、秋分の日の恒例行事といえば、そうです。白石の鼻夕日鑑賞会吟行! そうですよね。
 去る9月23日、mhmメンバーとその他参加者、計4名で、松山市の高浜町に向かいました。
 お天気はあいにくの曇り空。夕日を見られるかどうか心配ではありましたが、「毎年続けることに意味がある、行ってみなければわからない」とキムさん。ご案内 解説をしてくださるのは、おなじみ、松山 白石の鼻巨石群調査委員会の方。鑑賞会を始めてからもう10年にもなるそうで、今まで綺麗に夕日を鑑賞できた確率は60パーセント!
 昨年も参加させていただきましたが、その時は曇り空で全く見えなかったので、今年こそは夕陽を見られますように、と祈っていました。
 解説では、まず鑑賞会の歴史に始まり、巨石群の謎の解明へ向けた経緯などを教えてくださいました。
 そして、タイミング良く出現していた、引き潮の時にしか現れない岩を伝って、足場は悪いながらも、巨石に近づきます。例年、岩を上手く渡れなかったメンバーが怪我をしたりすることもありましたが、今年は全員無事に渡ることができました。
 まさに動き出しそうなほどの迫力で、巨石が目の前に迫ってきます。
 果たしてこの巨石群は、人の手で置かれたものなのだろうか? でも、勝手に積みあがることはないであろう岩々。そうだとするならば先祖の意図とは……?
 実は、この白石の鼻、秋分の日だけではなく、春夏秋冬(春分 夏至 秋分 冬至)と、場所を変えて楽しめるのだそう。
 「人工的に作ったのなら、一か所から楽しめるように作ってよ!」なんていう意見もありましたが、さて、先祖の真意とはいかに!

秋分の夕焼け巨石群に意図  蓮睡

 解説を聞きながら、なかなか現れてくれない夕日。鑑賞ポイントで夕日を待ちながら、あきらめかけていたその時! 薄雲の向こうからうっすら差してきた光が、巨石の隙間を通って筋のようにお目見えしてきたではありませんか!

龍淵に潜まんとして陽を呑みぬ  昭宏
秋分の海を光は龍となる  キム

 継続は力なり! 得るもの多い一日でした。


決定! まる裏キャッチコピー
 まる裏俳句甲子園のキャッチコピーの募集にご応募いただきました皆様、本当にありがとうございました。おかげさまで23点もの作品が集まり、先日、mhmで選考会を開催しました。
 一同、悩みに悩みましたが、厳正なる審査の結果、お花の妖精さん考案の「大人げないって、言われたい。」に決定いたしました。
 今回の傾向としましては、「裏」をもじったフレーズや、流行語に寄せたものが多くあり、もし読点や「!」の位置などが違っていれば……と悔やまれる作品も見受けられました。
 また、大変心のこもったお便りも併せていただいていました。

 「大人げないって、言われたい。」
 そして勝ちたい大人たち。これこそが真のまる裏!?


 mhmでは松山市内外問わず会員を募集中です。原則、毎月最終金曜日19時からマルコボ.コムにて定例会を行います。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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朝の見る句


No.8

文 蜂谷一人


ぬばたまの月のしたたる猫の水  ミル

 俳句は17音の短い詩。余分な言葉を入れるのは難しいと思っていました。例えば枕詞。和歌に多用され俳句に乏しいのは、やはり音数に限りがあるからでしょう。ところがこの句。「ぬばたまの」という枕詞が見事に活かされています。ぬばたまはヒオウギの種子。黒い光沢があることから「黒」「夜」「月」などを修飾し語調を整えるために用いられてきました。掲句の場合しらべをよくするばかりではなく、一句に闇が寄り添う効果まで生んでいます。猫はもちろん黒猫でしょう。夜の闇に気配を消し、目だけが青く燃えています。そこは月と猫の眼だけが輝く暗黒の世界。微かな水音が遠い記憶を呼び覚まします。
 ところで月の光は水のようだと思ったことはありませんか。濡れているように光り、流れたりしみこんだりします。心に注ぐ月光ほど危険なものはありません。やがて息ができなくなる程にすき間を満たしてしまいます。その狂おしさは誰かに恋焦がれる思いに似ていると思いませんか。


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新聞記事に隠された俳句を発掘する

クロヌリハイク


黒田マキ


リオ 五輪 1位 の 馬 に 虹 懸かる  (2017年10月6日 デイリースポーツより)

春に イヌ型 ロボット 発売す  (2017年10月8日 日本経済新聞より)

万作 の情熱継承 朱欒 か な  (2017年10月6日 愛媛新聞より)

夕焼け は見あきることがありません 2017 10 9  (朝日新聞「天声人語」より)


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100年俳句計画 掲示板



テレビ ラジオ

NHK Eテレ『NHK俳句』
 日曜6時35分〜7時(再放送 水曜15時〜15時25分)
 夏井いつきが第3週選者を担当
11月19日(日)、再放送22日(水)
募集兼題 「クリスマス」または自由
投句締切 11月10日必着
★投稿は葉書1枚に1句。選者名、兼題、俳句1句、名前、年齢、電話番号明記。
 《宛先》〒150ー8001
NHK「NHK俳句」係
 *ホームページからの応募も可
http://www4.nhk.or.jp/nhkhaiku/

NHK 総合テレビ(四国四県域)
 「四国 おひるのクローバー」内 隔週火曜『夏井いつきのムービー俳句!』
11月14日(火)、28日(火) 11時30分〜

TBS系列局 全国ネット『プレバト!!』
毎週木曜 19時〜19時56分
 夏井いつきが俳句の査定を担当

南海放送
 松山市政広報番組『大好きまつやま 〜しあわせ未来塾〜』
 毎週火曜 20時54分〜21時(再放送:日曜11時40分〜11時45分)
 夏井いつきが塾長として出演

南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』
毎週月〜金曜 10時〜10時10分
  「一句一遊情報局」のページ参照

FMラヂオバリバリ『俳句チャンネル』
毎週月曜 17時15分〜17時30分(再放送 火曜7時15分〜7時30分)
投句募集兼題
「麦蒔、初冬」11月5日締切
「金糸魚、消防車」11月19日締切
 WEB http://www.baribari789.com/
 mail radio@baribari789.com
 FAX 0898(33)0789
  投句には本名 住所をお忘れなく!
  「天」の句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。

各番組の放送予定は変更される場合がございます。新聞などで最新情報をご確認ください。


執筆

松山市の俳句サイト『俳句ポスト365』
http://haikutown.jp/post/
 「俳句ポスト365」のページ参照

テレビ大阪俳句クラブ
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント「集まれ俳句キッズ」(夏井いつき選)
  毎週日曜タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井いつき選)
★投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。
 裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。
 朝日新聞松山総局(〒790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。


イベント、講演等

『夏井いつきの「雪」の歳時記』発売記念! トークショー
11月2日(木)19時〜(18時30分開場)
 八重洲ブックセンター本店(東京都)
 定員80名(申し込み先着順 整理券配布。定員になり次第、締め切らせていただきます。)
(1)八重洲ブックセンター本店1階カウンター、(2)お電話、いずれかにてお申し込みください。
 参加条件 11月1日発売『夏井いつきの「雪」の歳時記』を購入の方。書籍の発売前でも(1)または(2)の方法で予約可。
問合先 八重洲ブックセンター本店
電話 03(3281)8201
http://www.yaesu-book.co.jp/

第25回生涯学習うわじまフェスティバル事業 
 第20回宇和島文学歴史講座 夏井いつき句会ライブ
11月3日(金、祝) 14時〜
 コスモスホール三間(愛媛県)
 入場料500円
問合先 宇和島市生涯学習課
電話 0895(25)7514

俳都松山宣言2017 〜17音が未来を変える〜
11月5日(日)13時〜(12時開場)
 松山市民会館 大ホール(愛媛県)
 参加申込受付は終了しています。
問合先 松山市 文化 ことば課
電話 089(948)6952

子規 漱石 極堂生誕150年記念
 道後俳句塾2017「一日集中講座」徹底的に俳句を語り合おう
11月11日(土) 10時〜
 松山市立子規記念博物館(愛媛県)
講師…竹田美喜、宇多喜代子、黒田杏子、相原左義長、夏井いつき
定員90人
参加費 4000円、高校生以下1000円(未就学児不可)
申込締切 11月8日(水)必着
投句締切 11月1日(水)必着
問合先 松山市立子規記念博物館友の会「道後俳句塾」係
電話 089(931)5566

愛媛県歯科医師会 いい歯の日イベント
 はぴかちゃん歯いく大賞表彰ライブ
11月12日(日) 13時30分〜15時30分
 いよてつ高島屋 8F スカイドーム(愛媛県)
 参加無料(記念品、当日投句あり)
問合先 愛媛県歯科医師会事務局
電話 089(933)4371

全国高等学校国語教育研究連合会
 第50回研究大会兵庫大会 夏井いつき句会ライブ
11月16日(木) 15時10分〜
 神戸芸術センター(兵庫県)
問合先 兵庫県高等学校教育研究会国語部会(兵庫県立猪名川高校内)
電話 072(766)0101

第19回フォーラム「医療の改善活動」全国大会 in松山 特別講演
 夏井いつき講演会「100年俳句計画」
11月17日(金) 17時30分〜
 松山市総合コミュニティセンター キャメリアホール(愛媛県)
問合先 大会事務局(愛媛県立中央病院内)
電話 089(947)1111

生きもの五七五 スペシャル句会ライブ
11月18日(土) 13時30分〜
 NIFREL(ニフレル)(大阪府)
対象 18歳以上
定員 60名
参加費 1000円(別途ニフレル入館料が必要となります)
申込方法 メールまたは往復はがき(11月9日必着)
問合先 NIFREL事務局
電話 (0570)022060(ナビダイヤル)

トレッキング ザ 空海あいなん
 20周年記念 夏井いつき句会ライブ
11月19日(日) 15時〜
 御荘文化センター 大ホール(愛媛県)
 参加無料
問合先 内海公民館
電話 0895(85)1021

現代俳句協会 創立70周年記念全国大会
11月23日(木、祝) 13時〜
 帝国ホテル 3階富士の間(東京都)
 参加無料(本大会に投句なさり、投句時にご出席とご連絡下さった方が優先です)
問合先 現代俳句協会
電話 03(3839)8190

第16回鎌倉全国俳句大賞記念講演
 夏井いつき講演会「100年俳句計画」
11月26日(日) 13時〜
 鎌倉鶴岡八幡宮 直会殿(神奈川県)
問合先 鎌倉虚子立子記念館
電話 0467(61)2688


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魚のアブク



読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは他の投稿に添えてお寄せください。


誉茂子 「へたうま仙人」コーナー終了のお知らせに驚いています。へたうま仙人様は俳句を始めて間もない私の背中を押してくれました。勇気をくれました。どうもありがとうございました。今年も庭にたくさんの鶏頭の花が咲きました。

とべのひさの マイマイ様、二年間ありがとうございました。俳句初心者の私がこれなら参加できるかな?と詰め俳句コーナーから投稿を始めました。今では、俳句の投稿も頑張っています。良いきっかけをありがとうございました。

清人 『さえずり句会』で学ばせてもらっています。ひよっこ1年生です。歳時記を開くのが楽しくなってきました。

葉音 9月17日、NHK Eテレ放送の「俳句甲子園2017」を見ました。自分の三分の一以下の年齢である高校生たちに、多くのことを教えられた思いです。ばあちゃんだって、まだまだ負けないぞ! 来年の俳句甲子園は、絶対に応援に行くからね!

喜多輝女 俳句甲子園も終わってあっと言う間に秋になったような……今年の夏はものすご〜く暑くて短かった様な気がします。


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鮎の友釣り


第232回


俳号 アンリルカ

前回 れんげ畑さんへ れんげ畑さんの句は、優しくてあたたかで、癒しをいただいています。お人柄が表れているのだと思います。私もれんげ畑さんのようなあたたかな句を詠めるように、がんばっていきたいと思います。

写真 この可愛いカードは、カラーセラピーの一種のポコアポコカードです。全部で39枚あります。その中から、アンリルカを表すカードを選びました。中央のハートのカードです。裏に、自分の深層心理からのメッセージが書かれています。ハートのカードの裏には「ありがとう 嫌なことがあったときこそありがとうって言ってみて。 どうか笑って 大きな声で ありがとうって言ってみて。」と書かれていました。いろいろな人に、ありがとうと言いたいです。

俳号 インスピレーションで決めました。俳号に意味を持たせようとは思いませんでした。

次回 誉茂子さんへ 木曜カルチャーでいつもお世話になっております。誉茂子さんの感性の鋭さと優しさを併せ持つ句を、楽しみにしています。これからもよろしくお願いします。


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初タイトルマッチ

「俳画プロレス」開催!



文 三瀬明子

 平成29年9月2日、第2回えひめ県民文化祭というイベントの中で、それは初披露された。その名も「俳画プロレス」。
 俳画プロレスとは、簡単に言えば俳画の即興対決。その対決の舞台に、愛媛プロレスさんの本物のリングとゴングを使わせてもらったというところが、このたびの演出のミソであろう。
 対決したのは、俳画ライブペイントのパイオニア、本誌編集長キムチャンヒと、本誌「ラクゴキゴ。」のコーナーにイラストを掲載中の画家の富久千愛里さん。そしてレフェリー(進行)は、縦縞耕作さん(本誌クロヌリ俳句執筆者の黒田マキさんらしい)がつとめた。
 会場の投句箱から、縦縞さんが俳句を選び、その俳句を見て、二人が即興で俳画を描く。それを3対戦行った。即興で仕上がっていく絵に、会場は興味津々。双方、絵のタッチが全然違うのも見ていて楽しい。絵が描き上がった後の判定は会場のみなさんの挙手なのだが、負けた方の俳画を勝った作者が破り捨てるという演出に、会場はどよめき、若干引いた。結果は、2対1で、挑戦者千愛里さんの勝利となった。
 まだまだ改良の余地はあるが、興業としてありじゃない?という手応えを感じたマルコボであった。あなたの街にも俳画プロレス、お邪魔する日が来るやもしれません。


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告知



JAZZ句会主催
ハイクライフマガジン『100年俳句計画』共催
MOTOSHI KOSAKO
SOLO JAZZ LIVE

ジャズハープ奏者、古佐小基史さんのソロライヴ!

12月10日(日) 13:00開演 開演30分前開場

参加費 3,500円(ワンショット付)
会場 白方ビル1階 JAZZ BLEND 
 松山市中央2丁目1238 井村歯科医院の久万川を挟んで東隣

15:00〜16:30頃、(ライブ終了後)第117回JAZZ句会を開催します。(参加希望者のみ)
最優秀句にはキム チャンヒによる俳画をプレゼントします。

お問い合わせ先 蛇頭 090-2828-8657 または 100年俳句計画編集室(キム)





大人げないって、言われたい。(お花の妖精さん作)
第16回まる裏俳句甲子園

日時 2018年1月7日(日)
  予選 9時30分集合
  本戦 13時00分〜(12時30分開場)
場所 松山市立子規記念博物館(松山市道後公園1-30)
入場料 500円
エントリー料 700円(エントリーには別途入場料500円が必要です)

当日パンフレット広告募集中(1口3000円〜)

お問い合わせ
  Eメール mhm_info@e-mhm.com
  電話 089-906-0694 マルコボ.コム内(担当:キム)





12月の第1土曜日は恒例の……!!
100年俳句計画大忘年会 のお知らせ

毎年12月の第1土曜日は「大忘年会」の日。今年も盛大に開催致します。
抱腹絶倒まちがいなし。たくさんのご参加をお待ちしています。

日時
2017年12月2日(土)
18:30〜21:00(予定)
 正式な時間は追ってご案内いたします。

場所
いよてつ島屋 9F ローズホール
愛媛県松山市湊町5丁目1−1
089-948-2111(代表)

会費
 大人 6,500円
 大学生以下 4,000円
 小学生以下 2,500円

参加申込締切
11月20日(月)必着!


参加方法
 忘年会参加希望の旨と、〒住所 氏名 俳号 会費区分(大人/大学生以下/小学生以下) 連絡先電話番号を明記して、ハガキ、FAX、Eメール、または電話にてお申し込み下さい。ご家族等複数でお申し込みの場合は、代表の方の〒住所 連絡先電話番号に加え、全員の氏名 俳号 会費区分をお知らせ下さい。

投句 投稿に添えてのお申込はお控えください。
受付対応が遅れる場合があります。

 お申し込みをいただいた方には11月上旬頃より順次、ご案内のハガキを郵送いたします。
 締切までにお申込いただいた方で、11月27日(月)までにハガキが届かない方は、お手数ですがマルコボ.コムまでご連絡ください。

問い合わせ、申し込み先
(有)マルコボ.コム
〒790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
TEL 089-906-0694
FAX 089-906-0695
E-mail bounen@marukobo.com





春夏秋冬(しき)笑顔まつやま福祉五七五
福祉をテーマにした 秋の五七五募集

主催
松山市社会福祉協議会
有限会社マルコボ.コム(ふくし句会、ハイクライフマガジン「100年俳句計画」)選句

協賛
JAえひめ中央 社会福祉協議会賛助会員


2016年度 秋の五七五 会長賞
ばあちゃんの外泊燕帰る朝  竜胆

年4回、福祉をテーマにした五七五を募集します。
人に優しくなれるような五七五をお待ちしています。
(第3回 2017年11月3日締切)


応募方法
インターネットの応募フォームにて応募してください。
専用フォーム http://www.marukobo.com/egao/]

賞品「松山トリコ」
 大賞(松山市社協会長賞) 道後温泉湯玉トートバッグ(1点)
 優秀賞 ブックカバー(3点)
 入賞 紙の湯カードケース(4点)

発表
ハイクライフマガジン「100年俳句計画」12月号 ほか

問い合わせ
TEL 089-921-2111





作品募集
第七回 百年俳句賞

主催 マルコボ.コム
共催 朝日新聞社


 百年俳句賞は、「百年後の未来に残したい作品を、私たち自らが作り、自らが選ぶ」というコンセプトで毎年開催しており、今回で7回目を迎えます。 既作新作を問わず81句の作品集を募集を行っており、最優秀賞作品は句集スタイル形式の句集にし、本誌および俳句新聞いつき組の付録として配布します。


募集要項

応募資格
15才以上(高校生以上)の方なら、本誌購読の有無に関係なく、どなたでも応募できます。

応募方法
1 Eメールでの応募の場合
 応募用のエクセルファイルに必要事項を全て入力し、Eメールの添付ファイルにして、応募して下さい。
 応募用ファイルのダウンロード先 http://81ku.marukobo.com/
2 郵送の場合
 B4判四百字詰め原稿用紙に81句とその表題、俳号、本名、年齢、住所、電話番号を必ず明記して応募して下さい。

予選審査員 
 俳句集団いつき組組長 夏井いつき 
 『100年俳句計画』編集長 キム チャンヒ

本選審査員
 百年俳句賞選考会員

締め切り
 2017年11月30日(木)必着


 賞状および応募作品による句集20冊
 *賞品句集は縦横135o 36ページとなります。句集は本誌付録として配布します。

発表
 本誌2018年4月号誌上(予定)

送り先
 〒790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
 有限会社マルコボ.コム
 月刊俳句マガジン『100年俳句計画』編集室
 Eメール 81ku@marukobo.com


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編集後記


キム チャンヒ

 先日、本誌についてミニアンケートをしたところ、他の俳句雑誌にはないオリジナリティのある企画が魅力という意見が多かった。
 今回の特集の「俳句対局」も、今秋新たに加わった「俳画プロレス」も、完全無欠の独自企画。他にも、歳時記さえあれば投稿できる「詰め俳句」、アートとコラボする「美術館吟行」、架空のキャラクターとの会話形式で学ぶ「近代俳句史超入門」などなど、他の雑誌では決して読めない独特の俳句の世界。これらに共通するのは、俳句という文芸を楽しく魅力的にどう伝えるかということ。
 俳句の読者が全て俳句作家である必要はどこにも無い。俳句が作れなければ、俳句の楽しさが分からないとも思わない。むしろ、俳句は作れなくても、俳句を読みたい、楽しみたいと思う読者をどう育むかが、百年先を見越した仕事だと思う。
 それを実現するには、俳句の広い裾野だけでは難しく、目標となる俳句作品が必要。逆説的だが、魅力的な俳句作品を生み出す土壌があってこそ、面白い俳句の企画が成立する。楽しい企画をやるためには、高い頂上も目指さねばならない。というわけで、「百年俳句賞」の応募も待ってます。


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次号予告


241号 12月1日発行予定

選評大賞2017結果発表


お得で便利なマルコボ.コム直販定期購読! 巻末の案内をご覧ください
お申し込みの方へ、毎月末頃に最新号を送料無料でお届けいたします!
(住所変更の際は必ず編集室までご連絡ください)

『HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画』は以下の書店でもお買い求め頂けます。

愛媛県
 明屋書店 ※一部店舗のみ
 ゆらり内海(愛南町)
 原田書房(今治市)
 子規記念博物館(松山市)
 紀伊國屋書店松山店
 ジュンク堂書店松山店


HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
2017年11月号(No.240)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子

2017年11月1日発行