100年俳句計画 2017年10月号(No.239)


100年俳句計画 2017年10月号(No.239)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


巻頭リレーエッセイ
灯馬


特集
第20回俳句甲子園レポート
 ちびつぶぶどう/田中憂馬

好評連載


作品

百年百花
 高橋白道/樫の木/都築まとむ/希望峰

新 100年への軌跡
 風来松/吉井潤

新 100年への軌跡
 俳句 小鳥遊栄樹/宇佐美友海
 評  都築まとむ/谷さやん


読み物

美術館吟行/日暮屋又郎

Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳 朗善)

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

ラクゴキゴ。/らくさぶろう

近代俳句史超入門/青木亮人

百年歳時記/夏井いつき

鑑(み)るという冒険/猫正宗

句集の本棚/岡田一実

mhm通信/若狹昭宏

朝の見る句/蜂谷一人

クロヌリハイク/黒田マキ


読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画
  桜井教人/阪西敦子/関悦史

 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/山澤香奈
 100年投句計画 投句方法

短歌の窓/渡部光一郎

百人百様E-Haiku/菅紀子

俳句ポスト365

一句一遊情報局

疑似俳句対局/美杉しげり

THE BEATLES 213 PROJECT/夜市

100年俳句計画 掲示板

魚のアブク

鮎の友釣り



告知

編集後記

次号予告





巻頭リレーエッセイ



猫の目草
灯馬 

 仔猫を見つけた。烏に狙われ、うなだれているのを捨て置けずにつまみ上げたものの、「飼う」という発想は当初は全くなかった。
 ある雨の晩、こっそり部屋にあげてみた。仔猫は喉を鳴らしながら辺りを探検して回った。昼間は近所の野良猫と遊び、夜は部屋に泊っていく、通い婚のような暮らしがしばらく続いた。その間、何度か連れて行った動物病院でも「地域猫です!」と言い張った。
 ある日、猫は深手を負ってきた。片眼失明。絶望する私を尻目に、猫は四肢を伸ばし、鼻を天に向けて眠った。食欲もすぐに回復した。
 一連の経緯を半笑いで見守ってくれていた友人や獣医の「もうそろそろ、どう?」という声を潮に、正式に同居?を始めた。あれから八年になる今も、時々、家に猫がいるという現実をうまく呑みこめない。別種の生き物同士が日々生活を共にし、お互いほんの少し理解したり、信頼したり、折り合いをつけたりしていることが、考えるほどに不思議に思えてくるのだ。


目次に戻る




第20回 俳句甲子園レポート


ちびつぶぶどう&田中憂馬


俳句甲子園観戦記
 大花野勝ちたい句らと負けない句

ちびつぶぶどう

一、はじめに
 今年の俳句甲子園は、第二十回子規  漱石生誕百五十周年記念大会であり、我が母校が四年連続四回目の本戦出場を決めたこともあって、初めて観戦することとした。
 句友あつちゃんに、同行を快諾いただき、七年連続観戦で今年はついにボランティアでの参加を決めた笑松さんと、ひさびさの立待ブラザースでの松山訪問である。

二、予選リーグ
 今大会は、記念大会ということで、全国四十校の参加で、初日は、大街道に十のステージを作り、四校リーグでスタートする。
 ここは、母校応援優先で、I会場での観戦とした。このリーグは、母校の福岡県立筑紫丘高校のほか、仙台白百合、結城第二、飛騨神岡が対戦する。
 ちなみに、前日の全国ニュースで、「対馬で絶滅危惧種日本カワウソ発見か」と報道されていたが、発見した琉球大学の井沢教授は、まさに我が校OG、同級生。丘女(おかめ)と総称される母校女子の快挙は、まさしくチームに吉兆をもたらすはず。
 しかし、結果は残念ながら敗退。作品点は各試合とも互角以上ながら、鑑賞点がまったくもらえず、二連敗。やっと、三戦目で一矢を報いるにとどまった。
 なかなか緊張がほぐれない母校に対し、鬼百合(失礼)の強さと勢いでディベートする白百合、リーダー一人で、攻めも守りも立ち回る結城と飛騨。戦術を持ってディベートを戦う大切さを痛感できた。
 後輩よ、来年こそは、一年かけてその力を目いっぱい高めてまた挑戦してほしい。

三、予選トーナメント
 リーグ戦で勝ち残った十校が、二校一組で雌雄を決し、残った五校が翌日の決勝リーグに進むのが今年のルールである。
 会場を見渡して、一番観客が集まっている、開成高校と松山東高校という、決勝戦と見まがう対戦を見守ることとした。
 見始めてすぐ、その句の出来栄えと、なによりお互いのディベート力の凄さに圧倒される。「すげえな、こいつら。」質問も、回答も理路整然と話し、それでいて熱く、観客に語り掛け、巻き込んでいくその力。これが、優勝するチームなんだ。 
 熱く語る松山東と、雄弁に整然と語る開成の勝負は、副将戦を勝利し三勝目を上げた開成高校が、決勝リーグに進んだ。

四、決勝リーグ
 二日目は、松山市総合コミュニティセンターでの優勝を賭けた戦いである。前日勝ち残った、開成、松山西、宮崎西、水沢、幸田の五校と、敗者復活戦で、「ヘチマサヘタベルモノセンチュウニッキ」という大胆な勝負の句で勝ち上がった会津高校の計六校が、二つのブロックで試合を行う。
 抽選の結果、開成、松山西、水沢高校が子規ブロック、残る三校が漱石ブロックとして決勝を目指すこととなった。
 ここでも、開成高校が、丁寧で安定感のある句と、それに裏打ちされた圧倒的なディベート力で、着実に勝ち進んで、決勝戦にコマを進めた。漱石ブロックからは、過去準優勝三回の、しあわせの田んぼ、幸田高校が元気に勝ち進んできた。

五、決勝戦
 決勝戦は、まさに今回の俳句甲子園を象徴するような戦いであった。
 幸田高校の「勝ちたい!という気持ちがいっぱい詰まった句とディベート」、に対して、開成の圧倒的な安定感の「負けない句とディベート」の戦いは、中盤、幸田高校が押し返したかとも思えたが、開成の副将が詠んだ、「月天心倉庫はあかあかと飢ゑて」という、あの厳しいいつき組長が満点をつけてしまった、懐深い、情感溢れる句で押し切り、優勝を果たしたのであった。

六、戦い終えて
 タイトルに書いた通り、負けない句で横綱相撲をとる開成と、勝ちたいという思いを、斬新な表現や言葉に込めたチャレンジャーとの戦いだったと総括できる。
 講評で、高校生らしい句と評すのは、禁句、などと言われていたが、この大会は、これからも高校生らしい元気いっぱいの句、勝ちたい思いがギラギラした句を持ってきて、戦ってほしいと強く思った。
 最後の講評で、高橋睦郎先生が、開成高校に対して、「言葉余りて心足らず」とも感ずる、と指摘されていた。
 勝ちたい句と負けない句の戦いは、これからも続くはずである。どちらにも、継続してエールを送り続けたい。
 そして、願わくは、せっかく審査員として毎年、へそ曲がりで面白がりのサッチャーいつき組長が座っているのである。おもいっきり覚悟を決めて、あっと驚く勝ちたい句をぶつけて勝利するチームの出現を心から期待したい。そして、「よい句にであうと血がサラサラきれいになる」とか、すまし顔で言っている組長の血が、ぼこぼこと音を立てて沸騰するところを、ぜひ見せてほしい。
 それが、たった三年間しかない高校生の特権でもあり、義務でもあるのだから。

七、終わりに
 初めて俳句甲子園を現地で観戦して、その活気、大会の質の高さに圧倒された。
 こんな大会を生み出し、育てた、関係者のみなさんのご尽力に、心からの拍手を送りたい。
 ありがとう。問題児ちびつぶぶどうも、稀には心から褒めることもあるのである。

ちびつぶぶどう
松山俳句ポスト365の問題児。実は、いつき組長の大学時代の悪友。数年前に、俳句の世界に引っ張り込まれる。



俳句甲子園を振り返って

田中憂馬

 今年はたまたま金曜日にお休みを頂くことができたため、俳句甲子園の前日に松山に向かうことができました。例年当日のお昼頃に松山に入っていましたが、移動の疲れでろくに予選を観戦できないのが悩みでした。
 土曜日の朝、今回はゆっくり観戦できるぞと思い、ウキウキしながら大街道に繰り出したところ、幸か不幸か編集長殿に出会いまして、本執筆に至ります。
 予選はまず、お世話になっている福岡から出場の学校の試合を見ると決めていたため、Tブロックの筑紫丘高等学校の試合を観戦しました。

福岡県立筑紫丘高等学校
笹百合の根本に埋める乳歯かな  平田萌夏

 笹百合の根本に乳歯を埋めるという光景が妖艶で印象的でした。私が子供の頃は上の歯が抜けたら床下に、下の歯が抜けたら屋根の上に投げていたと記憶していますが、この句の場合、自生している笹百合の根本に埋める景を想像すると、ミステリアスな色気が漂うような気がしました。
 二戦目は、同じく福岡から出場の明善高等学校の試合を見るため、Fブロックへ。

福岡県立明善高等学校
ママ会のドレスコードは百合の花  良永うめか

 大変面白味のある句で、ママ会のドレスコードを百合の花として見る発想がユニークだと思いました。
 二戦目を観戦し終え、三戦目はどの試合を見ようかなと思っていたところ、お隣のEブロックで、私の地元である宮崎から出場の宮崎西高等学校の試合があることに気づき、その試合を観戦することにしました。

宮崎県立宮崎西高等学校
髪洗う頃には終わる今日の恋  末吉駿斗

 等身大な青春性溢れる内容に惹かれました。ちょっと年取ると、もうこのような内容の句は詠めないよなぁとしみじみと思いました。
 三戦目の後、昼食のため、元祖伊予うどんのお店へ。一度紹介してもらってから、俳句甲子園の予選のお昼は毎年来ております。基本土日のみ開いていて、メニューは一つしかないのですが、とてもおいしいです。
 昼食の後は、私の毎年恒例である、会社の人へのお土産購入タイム。もちろん会場限定サブレクッキーを購入します。いったんホテルで休憩して、四戦目、五戦目、六戦目と福岡や宮崎から出場の学校の試合を観戦。予選トーナメントに宮崎西高等学校の出場が決まったため、その試合を最後に観戦しました。

宮崎県立宮崎西高等学校
かまきりや防犯カメラと相対す  山礼海

 かまきりと防犯カメラ。この一匹と一機が相対しているだけで、とても滑稽味のある景が広がるように思いました。やはり独特のフォルムと動きが特徴のかまきりが利いていて、それが無感情な防犯カメラと相対することで、物語が生まれるようです。
 夜はとある会のお誘いを頂いたため、大変おいしい郷土料理とともに俳句を楽しむことができました。ありがとうございました。
 翌日曜日、朝八時に同じホテルに泊まっていた方々と、松山市総合コミュニティセンターへ向かいました。
 決勝リーグは、昨日に引き続き、宮崎西高等学校の試合を中心に観戦しました。兼題「水蜜桃」の試合です。

宮崎県立宮崎西高等学校
身にあった浮力わきまえ水蜜桃  山礼海
夜もすがら水蜜桃の皮を剥ぐ  末吉駿斗

 一句目、重力なら林檎かもしれませんが、浮力なら水蜜桃だなと感じさせる魅力があるように思いました。二句目、夜もすがら皮を剥ぐという狂気じみた光景を水蜜桃が引き立てているように感じます。同試合での会津高等学校の、

福島県立会津高等学校
腐敗する地に焼き付いた桃の影  保志昌世

も印象的でした。原発事故の爪痕をまじまじと感じさせる実景の句だと思いました。
 続いて、兼題「花野」の試合。

宮崎県立宮崎西高等学校
五円玉穴の向こうの花野かな  帖佐光浩

 五円玉に当たったフォーカス。そこから、五円玉の穴を覗いた先にある花野の景へ切り替わる。五円玉が、一句の奥行きを効果的に作り出しているように思いました。同試合での幸田高等学校の句で印象的だったのは、

愛知県立幸田高等学校
花野へとタイヤリレーの突っ込みぬ  青木彩夏

で、とても躍動感があり、花野へと突っ込んだ後に舞い上がる花弁が見えるようです。
 決勝戦は、兼題「心」で、開成高等学校と幸田高等学校の試合でした。

開成高等学校
ランナーの万の心臓雲の峰  板倉 健
愛知県立幸田高等学校
夏季補習この心情を答えなさい  井原千恵理

 一句目、道に犇めくランナーとその背景としての雲の峰が互いにエネルギッシュなイメージを高めあっています。二句目、経験しなければ分からない等身大な心情が、巧みに「夏季補習」と中七下五で表現されていると思いました。
 帰りの船の関係で、決勝戦後バタバタと松山を出発しましたが、俳句甲子園の歴史の一頁に立ちあえたことを、本当に感謝致します。


田中憂馬(たなかゆま)
一九九〇年宮崎県生まれ。
大学での講義をきっかけに俳句を始める。
「いつき組」「天日」所属。


目次に戻る




美術館吟行


第35回

愛媛県美術館 所蔵品展 吟行会

取材協力 愛媛県美術館 
紹介の作品展は10月9日(月 祝)まで開催中。


文 日暮屋又郎


 ちがう、明らかに違う。同じ30℃でも暑さの質が違う。
 涼新たなる九月の愛媛県立美術館ロビーの、大きなガラス越しに見える中庭に、透き通る陽射しと、おちつきのある緑が心地良い。
 本日の吟行メンバーは七名、早速二階の常設展示室へ移動。比較的こじんまりとしてはいるものの美術館特有の雰囲気が漂う。
 先ず、入り口付近で出迎えてくれた作品は西洋美術。20世紀の挑戦:ヨーロッパ美術の新展開と表し、絵画と彫刻が絶妙なバランスで配置されている。

 本誌への掲載を許されている2つの作品の一つとしてクリオネにも見える抽象画。
 「生き生きとした白」ヴァシリー・カンディンスキー
ミジンコの中に都会よ秋は澄む  チャンヒ
はるかな道化師月夜のつなわたり  猫正宗
爽やかに未来予想図は白  マーペー
 メンバーのほとんどがこの画に挑んだものの、つかみどころを翻弄されたまま歩を進める。

 すると、この秋にジャストフィットといった具合で、秋思の気分が伝わる作品。
 「マルグリットの肖像」 アンドレ・ロート
尖つて又尖つて秋さびし  遊人
どの刻の君とも出会い秋灯し  猫正宗

 続き90度、右に目をやると彫刻が展示されており、鉛とブロンズ、材質の違う彫刻が立っている。
 「踊り子」マリノ・マリーニ
バレリーナ目指すは常に高き天  猫正宗
 「恋人達 または、2つのトルソの親密性」オシップ・ザッキン
5pの距離を保ちつ冬に入る  恋衣

 いよいよここからが本日のメインテーマ、「正岡子規生誕150年記念・柳原極堂生誕150年記念 子規門下の人々 阿部里雪コレクションを中心に」と題し、絵や書簡、短冊などの作品が並ぶ。

 俳人であれば、すぐに目を引かれるのがこの作品。
 「子規庵句会写生図」下村為山
飲みもののこぼれたままの句会かな  シャビ
秋の日の子規の句会の拍手なり  遊人
大ごけの句もまたよろし新酒汲む  日暮屋

 そして掲載を許された二つ目の作品
 「梅花図」 正岡子規
快方へ向かうか影の中に梅  シャビ
梅の香の明りに僕は死ぬそうだ  チャンヒ
闇ニ闇重ネユキタル梅白シ  恋衣

 つづいて団扇に描かれた透明感のある作品。
輪郭のあいまいなままいて金魚  マーペー
水に吐く金魚の息の大きさよ  恋衣
夕暮の秋の金魚の滲みをり  遊人

 ほかにも興味を引かれる作品の数々。
 「上海風景」長谷川竹友
水のにぎわう街を大陸は遥か  チャンヒ
 「蕗の薹・かけ稲」平福百穂
稲の葉の色を持ちたる飛蝗かな  遊人

 安部里雪は、俳句は子規門下の極堂、霽月らに教えを受けたのち、昭和7年、極堂が主宰した俳誌「鶏頭」の編集に協力する中で、下村為山、河東碧梧桐らの先輩の指導を得て、俳人としての才能をのばしていった。しかし特筆すべきは彼の俳句そのものより、極堂らの世話や連絡係りを任されるほど、人々に敬慕された穏やかで高潔な人格があったからこそ、彼の下にこれらのすぐれた作品が委ねられたということであろう。

(伯方島出身の先輩である里雪コレクションという展示テーマを受けて)
天高し我が先輩は書に眠る  シャビ


ヴァシリー・カンディンスキー「生き生きとした白」1934年
爽やかに未来予想図は白  マーペー

正岡子規「梅花」
快方へ向かうか影の中に梅  シャビ



日暮屋又郎
この八月に定年後、毎日が日曜日の自堕落を楽しんでいる。



次回吟行会

10月7日(土)
町立久万美術館2017年度自主企画展「シュらん2017」 吟行会

朝10時現地集合
参加費無料(入館料は別途)
事前に100年俳句計画編集室までお申し込み下さい。
TEL 089-906-0694


目次に戻る




百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2017年度 第二期 第三回


施餓鬼
橋白道

棟上げや草の香移る祝餅
料亭も外湯の横も盆の路
百円で三頭揃ふ茄子の馬
蛾に亜種の有りて施餓鬼の薄明り
世阿弥忌や獣の骨の大の字に
消化器は夏バテ知らず泌尿器も
水盤の亀小競合ふ秋の昼
手に取りて先端しなふ牛蒡掘り
瓶ふせて色なき風に乾きけり
積読の背後に既読茶点虫
仏の名書きし硯を洗ひけり
天の川片足宙に覗き込む

平成10年より「いつき組」組員。
句集『涅槃図』(マルコボ.コム)。


博多
樫の木

かぼすの荷背負ひて博多駅秋暑
灯籠を流すや固き膝折りて
楽水園秋の蚊だけを道連れに
秋園の地層のごとき博多塀
裂け目から蟻に食はれる椿の実
おきうとの物足りなさに足す生姜
秋天を掴む櫛田の大銀杏
酔芙蓉朝青龍の力石
海風爽か開演を待つ人に
秋夕焼マリンメッセは硝子箱
露草を食みし男の声ならむ
鶴乃子のまろみよ金風の博多よ

8月27日に博多で「おらぶ俳人の会」という句会に一人で参加しました。
兼題は「灯籠流し」で大分からの道中は川ばかり見ていました。
9月2日は同じく博多、マリンメッセで「スピッツ」のコンサートがあり
妻と二人で聴きに行きました。組長風に言えば血がきれいになりました。


銀色
都築まとむ

露けしや白片となる蝶の翅
狗尾草の倒れる先に立つ櫓
推敲のペン先錆びる虫時雨
アルミ缶ベコベコ秋思とはいかに
百の赤蜻蛉突っ切って銀輪
納骨の一部始終を葛嵐
針山の待針は実よ小鳥来る
正直者なんだか秋の蜘蛛なんだか
苦瓜をつまんで食べて義母に似る
望の夜の銀の袋のイースト菌
秋霖やあん片寄っている枕
藤は実に養老院へ参ります

草の実はみんな金色。
これらが来年もまた次の年も次の年も畑に蔓延るのだなぁ。
でもひとつひとつの実は綺麗。


とほくの霧
希望峰

蜩やいくたび逢はば友なるか
白露や音なく母の振り返り
こほろぎの奥なる放置自転車よ
母象の後ろ足秋なかばなる
スカートも鶏頭になら触れてよし
まんじゆしやげ子の名瑞穂か薫子か
骰子のぞろ目ばかりや台風圏
もそもそと麺麭食ふ女椿の実
通草の実膝を使はず拾ひけり
山人に荷を囃さるる走り蕎麦
鶺鴒の発ちし巌の夕かな
大き鳥とほくの霧を横切りぬ

1990年神戸市生まれ。「いつき組」「街」所属。
第5、6回石田波郷新人賞奨励賞。


目次に戻る




読者投稿による3ヶ月連載作品集

新 100年への軌跡


2017年10月号 〜 2017年12月号 1/3回目


狐の為業
風来松

狐面ばかりの踊の輪の中へ
お隣の秋風鈴を撃ち落とす
秋霖の中檻の中虎斜眼
火の玉を殴りし祖父の墓洗う
血の川を辿れば吊られ猪一頭
赫き刃をすうとしずめる秋の水
花の名の茶杓にて待つ菊日和
二投目は十六夜色のボウルほうる
木星の月の淵龍潜む
この空き地前は何ぞね狗尾草

1970松山市生。好きなもの、旅、酒、映画、本、宇宙、
懐手してカープ観戦。「ハイミー句会」参加。


菊日和
吉井潤

たこ焼きをころがす係菊日和
どの林檎取っても崩れそうな棚
竜田姫錦玉羹のなか流る
蟷螂やいちにちそうの側で枯る
休職の心支えし相撲かな
黄落期金の話で終わりけり
流星や母なき後の身の薄さ
猫じゃらし背中くすぐる手の欲しさ
秋寒や鍛えよ猫のポーズなど
登高や城の姿のかき消えて

香川県在住。
涼野海音さんの高松木の芽句会に第1回より参加。
2017年より海光にも投句しています。


2017年 第4期連載者募集中
締切 2017年11月15日(水)

応募内容 
2018年1月号に掲載できるタイトル付の10句

応募先
Eメール magazine@marukobo.com
件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
郵送またはFAXでも受け付けております。詳しくは編集室までお問い合わせ下さい。


目次に戻る




新 100年への軌跡


2017年度 第二期 第三回


異国の人混み
宇佐美友海

香水まみれの外国人まみれ
ランドリールーム涼しや仮住まひ
原爆忌手の造形を確かめむ
夕立や言葉は人を構築す
忘れても良いよサンダル流さるる
国境の兵士のあくび雲の峰
アイス売りどこより出でてどこに消ゆ
敗戦忌異国の人混みの真中
死の近くいつとう紅き蕃椒
宵闇に高く積まれし牛の肉
幼子の両手に余る林檎かな
稽古道具置いて高きに登りけり
京劇の化粧の哀し星迎
長城を歩み続けど天高し
秋日や笑へば歯無し老博徒

宇佐美友海(うさみ ともみ)
1996年生まれ。新潟大学在学中。高校から俳句を始める。第16回松山俳句甲子園全国大会出場。


一昼夜
小鳥遊栄樹

二百十日木の匙の木の味を舐む
穴惑ひビールケースに瓶疎ら
どぶろくや窓際にゐて窓冷た
桃吹くや箱詰めに売る文庫本
一昼夜干して布団の野分匂ふ
太腿に重きサドルや居待月
竜胆や帆布に刺せるピンバッジ
おしなべて鮭の切り身の皮厚き
赤い羽根財布に小さく仕舞ひけり
敬語未だ抜けぬ手紙や桜紅葉
水澄むを甘やかされて育ちけり
貸してゐる服そのままに花カンナ
民宿に匂ふカレーや秋黴雨
各々に提灯を吊り村祭
ビル多き街に勤めて秋の虹

小鳥遊栄樹(たかなし えいき)
1995年生まれ。「里」「群青」同人、沖縄俳句会「若太陽」所属。



個性
とりとり

「異国の人混み」
 海外詠は勇気がいるけど、興味深いですね。中国でしょうか。光景を想像して楽しませてもらいました。

夕立や言葉は人を構築す 宇佐美友海
 これわかります。人の思考は言葉です。夕立のなか降り
注ぐ外国語に囲まれて困惑する作者。
宵闇に高く積まれし牛の肉 宇佐美友海
 宵闇に感じる本能的な恐怖感。牛の肉の血のにおい。生の罪悪感のある深い句でした。

「一昼夜」
 格調高く個性的な句が多いです。小鳥遊さん腕を上げましたね。

二百十日木の匙の木の味を舐む 小鳥遊栄樹
 木のアイスクリームスプーンのざらつきと「二百十日」の呼応が新鮮です。「木」の重複が成功していると思います。
一昼夜干して布団の野分匂ふ 小鳥遊栄樹
 一昼夜干すと布団が自然と一体化しそうですね。野分の句としてとてもユニークでした。

とりとり
1957年生まれ。三重県在住女性。第1回選評大賞優秀賞。


「異国」と「街」
亜桜みかり

 どちらの作品も評を書きたい句がとても多かった。充実した第三回。

国境の兵士のあくび雲の峰 宇佐美友海
 「国境の兵士」の「あくび」から「雲の峰」への景の見せ方がとてもうまい。平和を願う心が読み取れると思うのは私だけだろうか。
敗戦忌異国の人混みの真中 宇佐美友海
 句頭の重い季語「敗戦忌」、破調で景を描いて「真中」とおさめたことで、読み手がその居心地の悪い場所へ落とし込まれたような感覚になる。

穴惑ひビールケースに瓶疎ら 小鳥遊栄樹
 取り合わせが絶妙。穴にすんなり入らなかった蛇に飲み屋街の水路でひょっこり出会いそうな気分。表題句の「一昼夜干して布団の野分匂ふ」も独特の雰囲気に魅力があるが、推敲により更にひと化けしそうな気配。
赤い羽根財布に小さく仕舞ひけり 小鳥遊栄樹
 以前は上着に着けるための針があった赤い羽根。シールに変わっているが、受け取った後財布に仕舞うという。それも「小さく」。人物の繊細な指先がクローズアップで見えて来る。

亜桜みかり(あさくら みかり)
1961年俳都松山市生まれ。今治市在住。第2回、第7回、第8回選評大賞優秀賞受賞。第3回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞受賞。


目次に戻る




Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳 朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ

No.51


Cold fish jello
I eat it and like it
Where is my dinner?

煮凝ヤ今日ノ夕飯コレデスカ

(直訳)
冷たい魚の煮凝り
食べてみた 美味かった
でも夕飯はどこにあるの?


 We are going to play a concert on Jeju Island. Some people say that this place is interesting and others say that it is not. We will find out soon. Though I will be working hard, we will bring our swimming clothes.

 済州島でコンサートをする事になった。ある人は是非行ってみたい土地だと言い、またある人はそうでもないと言う。どっちかすぐにわかるだろう。相当ハードワークしなきゃいけないんだけど、とりあえず水着も持って行こう。


ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。2013年7月より山梨へ移住。


目次に戻る





JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博(俳号 蛇頭)

第79話
オンリー トラスト ユア ハート 水橋孝

 今夏、移転新装成った八幡浜の老舗ジャズバー「ロン」の音に大いに刺激された。今秋、ジャズ喫茶「ATEZ」(アット イーズ)のオープンで僕のオーディオ熱再燃が決定的となった。知人が所有する市内三番町5丁目のビル地階にあった22坪のライヴハウスをリニューアル。その空間はカフェというより理想のオーディオ ルームという趣である。僕はオープンの9月1日に訪れ、ベストポジションに腰掛けた。

始まりはためらいがちに長き夜  猫正宗

 店のオーナーらしき人の勧めで、僕は躊躇わず水橋孝、愛称GONさん名義のアルバム「オンリー・トラスト ユア・ハート」の1曲目をリクエストした。が、タブレットの画面にそのナンバーは現れなかった。

時越えて届く残響鳳仙花  力造

 結果はオーライ。後日、僕が持参した1976年収録のアナログの音源は、GONさんのベースソロで徐に始まる。ウーハーは低弦の躍動を忠実に再現する。ユニークな形状のスコーカーとツイーターが弦の軋みや残響までもリアルに捉える。

グルーヴィーな色無き風を呼ぶベース  南行ひかる

 「黒いオルフェ」のベースソロの余韻から絶妙なタイミングで飛び出るリズミックなピアノトリオの「フェリシダージ」。この「画面」は何度聴いても鳥肌モノなのだが、当然音の良し悪しでその度合いが違ってくる。「迫力の中の解像度」という表現が近いのかもしれないが、正にこの日の体験は「音は見るもの、絵は聴くもの」を再認識させてくれた。こうなると、ジャズファンだろうがオーディオマニアだろうが入り混じって愉しいのである。

龍淵に潜むや四弦を揺らし  恋衣

 この句の出どころは、明らかにメインテーマのレコードジャケットのデザインだろう。GONさんが愛用するベースのヘッドは龍じゃなく獅子の頭部の彫刻が施されている。ここから発想を飛ばし、神秘的な季語に四弦の揺らぎを共鳴させた。

ベースから紡がれ旋律の秋思  チャンヒ

 今回のサブテーマ アルバムは「アーリー サマー イン トーキョー」である。A面1曲目、スティービー ワンダーの「愛しのアイシャ」が話題となりヒットした。前年に録音されたソニー・ロリンズの「イージー リヴィング」収録の同曲との聴き比べも面白い。同じサックスでもテナーのロリンズ、ソプラノのアーチー シェップ、両者の異なるざらざら感が心地良く甲乙付け難い。これは、初夏薫る1曲目のバックで堅実にパルスを刻むGONさんが、2曲目ジョニー マンデル作曲の「いそしぎ」で一転、哀愁の旋律が爪弾かれた瞬間に紡がれたJAZZ句であろう。


Today's Turntable
『オンリー トラスト ユア ハート』1976年/rca
『アーリー サマー イン トーキョー』1978年/denon


「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

次回のJAZZ句会は、10月15日(日)13時より。テーマのミュージシャンはジャコ パストリアス。アルバムは「ジャコ パストリアスの肖像」をメインとします。参加希望の方は、本誌の句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU』vol.1〜vol.3(マルコボ.コム)を発売中。


目次に戻る





ラクゴキゴ


第七十九話
文、俳句 らくさぶろう

平林
 小学生の前で演るならコレ

 ある店の主が丁稚を呼んでいる。呼ばれた定吉、何の用事かと思えば、横町の平林さんのところへ手紙を持って行ってほしいとのこと。
 いつものようにテキトーな返事をして外へ出た定吉、横町に近づいたのはいいが、手紙をどこに持って行くのかを忘れてしまった。
 宛名には「平林様」と書いてあるのに定吉は漢字がまだ読めないので分からないのだ。
 分からないことは人に訊こうと、向こうから歩いてくる少し年上に見える丁稚さんに尋ねてみると、「上がタイラ、下がハヤシ。タイラバヤシさんやな。」と言われる。??? 定吉、ちょっと違う気がして、もう一人に尋ねてみようと、男の人を呼び止める。するとその男、「上がヒラ、下がリン。ヒラリンさんや。」と言われる。??? またちょっと違う気がして、今度は美しい女性に訊いてみると、「漢字というのはその成り立ちを考えてみたらよろしい。上の字はイチ、ハチ、ジュウに分けられて下の字はモクが二つ。これはイチハチジュウのモクモクさんやわ。」と。??? 全然違う気がする……。ええい、もう一人に訊いてみよう。お年寄は色々と物知りだからお婆さんにと話しかけると、「上はヒトツとヤッツとトォと読んで、下はキが二つ。ヒトツとヤッツでトッキッキさんや!」とのこと。
 定吉、もう何が何だかわからなくなり、全部大声で言いながら歩けば誰かが「おい、ひょっとしてそれうちのことかいな」と声でもかけてくれるだろうと思って歌のように大声で連呼しながら歩き始めた。
「タイラバヤシかヒラリンか、イチハチジュウのモックモク、ヒトツとヤッツでトッキッキー!!」
 向こうから歩いてきた男性は定吉の知り合いで、声をかける。
「定吉どん、何を大声で歌とんねん。祭ばやしの稽古でもしてんのか?」
「いえ、ヒラバヤシですわ……」

 このサゲ(落ち)は、最近作られたもので、もともとは
「定吉どん、気ぃでもちごたか?」
「いえ、字がちがいます。」でした。
「気がちがう」という表現があまりよろしくないのと、そこまでハマる落ちでもないということで、噺家さんが色々と工夫してこしらえているようです。
 時代の流れで、落語のサゲも変化しているのですねー。
 僕も県内の小学校や中学校で落語教室をたのまれることがあり、呼ばれたら喜んで出かけて行っております。
 教科書の中に、小4国語で落語を取り上げているものがあり、子供たちの前で落語の成り立ちや動作、言葉遊びなどを話して、最後に一席演るのです。
 動作でウケるのは“うどんの食べ方”。子供にも演じてもらうと、その子はクラスのヒーロー(笑)。
 最後に演る一席は「寿限無」「桃太郎」「ちりとてちん」などありますが、一番の鉄板ネタはこの「平林」です。
 何より、分かりやすい。「平」と「林」なら4年生でも理解できますから。
 子供たちが足をバタバタさせながら大笑いしているのを見ると、こちらもうれしくて涙が出そうになります。
 あと、給食も楽しみだったりしますので、学校関係の方、お気軽にお声がけ下さいね。
rakupro@nifty.com

爽やかや弟子にとりたき四年生


目次に戻る





会話形式でわかる

近代俳句史超入門


文、構成 青木亮人

 大学で俳句を研究する青木先生と、その教え子で俳句甲子園の出場経験もある大学生の俳子さんが雑談を交えながらの近代俳句史超入門。


連載再開、河東碧梧桐

 青木先生と俳子さんが松山宝塔寺で再会します。

碧梧桐の墓前で

俳子(以下俳) 碧さん……さぞ無念でしょう……安らかにお眠り下さい、必ずやこの私が……ムニャムニャ。
青木先生(以下青) お、俳子さん! 久しぶりですね。碧梧桐の墓前で何をしているんですか。
俳 あっ、先生! ごぶさたしています。今、碧さんにご挨拶していたんです。子規門の二巨頭だったのに歴史は虚子さんばかりに味方して、今や碧さんを振り返る人は少なくなり……私だけでも碧さんの存在を世間に訴えなきゃと思い、墓参にうかがったんです。
青 虚子は作品も含めて今も多々言及されますが、碧梧桐は過去の俳人という扱いで、確かに作品が取り上げられるのは少ない。俳子さんのような方がいれば、碧氏も喜んでいるでしょう。それにしてもお久しぶりですね。二年前あたりに、大学の教室や食堂で虚子について語り合っていたような。
俳 あの時は大変でしたねえ。特に食堂でお話した後は秋の夜祭で、町に彗星が落ちてくるから皆を助けなきゃと私と先生で奔走して……それから離ればなれになって二年。先生、改めてご無沙汰しておりました。
青 映画『君の名は』そのままじゃないですか。しかも大学食堂で虚子の話をしていたのは真冬ですよ。たくましすぎる妄想癖に私を取りこまないで下さい。
俳 あらまあ、先生。ちょっとした挨拶ですよ。そういえば、先生はなぜここへいらっしゃったんですか。先生も隠れ碧梧桐ファン?
青 彼の書体が好きなんですよ。碧梧桐の俳句作品はあまり顧みられなくなりましたが、彼は俳句以外に魅力がたくさんあって、独特の書体や紀行文、江戸の俳諧研究や子規の回想録等々、面白いものが多いんです。特に彼の短冊や掛軸はファンが多くて、古書や骨董関連でも有名。
俳 なるほど! この「碧梧桐墓」の字が変わっているのは、書道に凝っていたからなんですね。
青 そう。松山宝塔寺のお墓の字は彼が生前に揮毫した書を刻んだものなので、迫力があります。それでたまに訪れて、墓石の書体を眺めながら俳人碧梧桐とは一体何だったのだろう……と思いを馳せるのも研究者の使命かな、と。
俳 以前、虚子さんについて熱く語り続けておられたので、虚子贔屓とばかり思っていましたが、少し安心しました。(墓前に向きなおり)碧さん、よかったですね。先生には至らない点も多々ありますが、私の方からよく言ってきかしますので、今日のところはこれで勘弁して下さい。どうぞ安らかに成仏を……。
青 こらこら、人を至らない人間にした上に碧梧桐を浮遊霊みたいに扱うのはやめましょう。ところで、俳子さんは碧梧桐のどの点がお好きなんですか?
俳 負けちゃった感がムンムンするところ。歴史でいうと、虚子さんが藤原道長とすれば、碧さんは新撰組ね。それが私の判官贔屓をくすぐるんです。
青 時代がかなり違うのでは……まあ、言わんとするところは分かります。ただ、個人的には「虚子=勝ち組/碧梧桐=負け組」という構図でなく、違う見方をした方がいいと思うんですよ。
俳 虚子さんが矢沢永吉で、碧さんがジョニー大倉という構図?
青 往年のロックバンド、キャロルの二人! 微妙に古い例えを……バンドは二人の確執で解散、その後は矢沢永吉がシンガーとしてヒットを飛ばし、ジョニー大倉は隠遁に近い日々を過ごす。それ、先ほどと同じ構図じゃないですか。
俳 近所のおじさんが犬を連れて散歩する時によく歌うので詳しくなっちゃって。チワワを連れて「かわぁいい あの娘ォは ルイジアンナ〜」とか叫んでいました。犬の名前もキャロル。
青 チワワの名がキャロル……すごいセンスですね。ところで、墓前であれこれ話し合うのも何だか憚られますし、まだお昼過ぎなので今から大学の教室に移動して、碧梧桐や俳句史のことなど話し合いませんか。
俳 やったぁ! 子規さん、虚子さんのお話をうかがった後、私も先生も俗事の多忙に紛れて諸行無常でした。実作修行やノウハウも大事ですが、昔のいい作品や俳句史の流れも知りたいと思いつつ、でもどんな風に昔のことを捉えていいか分からなくて。その点、先生は象牙の塔で誰も顧みない資料に囲まれて魑魅魍魎なので、色々なことを教えていただけるのが南無三宝です。
青 熟語その他がどうもおかしい……まずは一時間後に前と同じ教室に集合しましょう。
俳 アディオス、先生!

教室で講義再開

青 何だか懐かしいですね。この教室で俳句史について話し合った時は明治期あたりの子規と虚子で止まっていたので、まず碧梧桐から再開し、近代俳句初期の動向を押さえましょう。それから少しずつ大正、昭和戦前の俳人たちを取り上げることで俳句史の発展を知る、というのでいかがでしょう。
俳 ありがとう、瀧くん!
青 いや、この町に彗星は落ちないから。でも、あの映画は凄く預言的ですよ。
俳 ? 
青 才能と運に恵まれた芸術家は、神々の言づてに近い内容を描く場合もあるということです。これを碧梧桐に当てはめると、彼の場合は俳句の神にそこまで必要とされなかった悲劇の俳人といえるかも。
俳 いつもと周波数が変わったような、妙なことを……先生、まさか電波系ですか?
青 失礼、先走ってしまいました。碧梧桐を語る前に、子規の俳句革新と彼の関係について確認しておきましょう。前もお話しましたが、明治俳句革新は子規個人の偉業ではなく、子規とその一派のチームプレーと捉えた方がいいんですよ。
俳 あ、思い出しました。先生風に捉えると、子規さんは凄腕の批評家で、虚子さんや碧さんが自分でもよく分からなかった自作の魅力を、子規さんがズバッと指摘したんですよね。
青 ええ。子規はスポーツチームの監督兼選手に近い存在で、彼がチームの花形である虚子や碧梧桐に的確な指示を与えつつ、俳句革新というゴールに向けて試合展開を運んだと考えると分かりやすい。
俳 ということは、今のお話と先ほどの「虚子さん=勝ち組/碧さん=負け組」というイメージを重ねると、どうなるんでしょうか。
青 どちらが歴史に残ったかという話と、二人の俳人の価値や可能性は別問題ということです。どちらが勝ったかと考えるより、子規監督に感化された選手の虚子と碧梧桐がそれぞれのやり方で突き進んだ結果、両者の俳句観が両輪となって近代俳句の拡大につながった、と捉えた方が面白い。「結局どちらの作品が今なお魅力的なのか」と二人の軽重を早急にはかることより、碧梧桐が俳句に何を求め、何を必要としなかったかを考えることがそのまま近代俳句のあり方を探ることになる、ということです。
俳 おぉ、何だかかっこいいですね。何を仰りたいのか今一つ想像しにくいのも深遠かつ縹渺としています。
青 微妙なほめ方ですね。とにかくそういうわけで、次回から俳人碧梧桐の特徴や可能性を、「経歴」「作風」「俳句史への影響」といった角度で一緒に考えていきましょう。
(続く)


解説

君の名は。 二〇一六年公開のアニメ映画。東京の少年と飛騨高山の少女の魂が入れ替わりつつ、彗星落下による町の破滅を回避させようと二人が奮闘する物語。
キャロル 一九七〇年代の硬派バンド。矢沢永吉とジョニー大倉が在籍し、それぞれボーカルを務めた。
瀧くん 『君の名は。』の少年の名。
電波系 突拍子もない妄想や発想を脈絡なく主張する人々のこと。


目次に戻る




100年投句計画

選者三名による 雑詠俳句計画




先選者 桜井教人

 今年も俳句甲子園の審査員をさせていただいた。正直なところとても疲れた。理由は簡単だ。審査をするということは審査をされているということだからだ。自分自身の俳句の知識、鑑賞力、ディベートを聴いて判断する力、今まで自分が培って来た俳句力全てを一戦ごとに問われるからだ。さらに判定後に講評が当たった時は、それを言葉にすることが求められる。力不足の自覚、諸々のプレッシャーもあっての結果だ。しかし、この感動的なドラマに関わらせてもらい、幸せこの上ない。




秋風とすこし離れて行く明日  小木さん
 なんだろう、この句を読んで感じるこの感覚は。実体を持たない上五の季語、中七下五も具体物がない。抽象的でこんなに漠然としているのに、読めば読むほど何故か心に秋風を感じるのだ。何といっても巧いのは「少し離れて」という言回し。一人きりの作者は秋風を擬人化するが、その秋風とも少し距離を置くのだという。でも、その行き先は「明日」、ここがまた絶妙に巧み。句に奥行きと希望をもたらしている。




驚いた飛蝗の作る放物線  和音
 平面幾何学における放物線は規則正しく美しい軌跡を描く。飛蝗の軌跡、しかも驚いた飛蝗はどんな軌跡を描くのだろうか。それを数式に表せるのだろうか。動物と数学との意外な衝撃により想像はどこまでも広がる。

ひまわりのうしろの恋をしりたい  どんぐりばば
 向日葵の恋に前と後ろがあるのだとしたら、確かに前よりは後ろの方を知りたい。いつも明るい太陽に向く向日葵だからこそ、その逆の闇は深いのかも知れない。恋以外を平仮名表記にしているのも内容との対比を生んでとても巧み。
放埒な踝数多星祭  内藤羊皐
 七夕での下駄、浴衣姿なのだろうか。男女ともむき出しの踝に対して放埒の措辞がとても異質かつ適切。普通は注視することのない踝から、下五で急に空へと視線が展開する。星祭の季語がとても生きている。

ばあさんに先に逝かれたカンナ咲く  空山
 絶妙な擬人化が成功している。きっと故人が大切にしていたのだろう。その死を悼むようにいつもと同じ鮮やかな色のカンナが咲いている。色が鮮やかであればあるほど、死との対比が際立つ。さりげない思いを上手く託している。

青柿の小さき頃より尻四角  風海桐
 時々尻が四角い柿を見かける。確かにその柿は小さなときから四角なのだろう。発見の句であると同時にユーモアがバランスよく配合されている。ただ、一番の問題は熟した時に美味しくなるかどうかだ。




風船蔓いつか一人になる家に  dolce@地味ーず
犬吠えて簾越しなる回覧板  しのたん
さみどりの句集の付箋夏の果  柊月子
炎天の足場より声かけらるる  凡鑽
鉄骨を葛にゆだねてゐる世紀  くらげを
指揮棒のなめらか秋蝶の碧し  樫の木
天に星地にひまわりと争いと  一走人
熊除けの鈴ここよりは夏の果て  みやこまる
長崎忌星を配するマンホール  うに子
残暑果てなし口笛は「異邦人」  土井探花


桜井教人(さくらい きょうと)
 1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回、29回俳壇賞候補。



先選者 阪西敦子

 「睡眠負債」なる恐ろしいものがあるときいて、ここのところ寝てばかりいる。溜まった寝不足が脳を滞らせるという。気分というのは本当に不思議なもので、早い時間に眠れるようになったし、すごく早く寝てもずっと寝ていられるようになった。早く寝ると頭の回転が何十パーセントか上がるらしいし、寝過ごしても必要だったんだと思えば悔いもない。といっても、効果はまだでていない。溜まるものは溜まるし、滞るものは滞る。




炎天の足場より声かけらるる  凡鑽
 炎天の視線の記憶は意外に低いところにある。前を行く人、日を返す地面、せいぜいが眩しい遠くのビル。日光を避けてうつむくのかもしれない。そんなときにふと少し高い、そう遠くはないところから声をかけられた。不意を突かれて見回すけれど、なかなかそれを見つけることはできない。その眩しさと熱にまみれて朦朧とした一瞬が、句の中から立ち上がる。




虫採りて図鑑広げしままの部屋  藍植生
 部屋の主は不在にしている。今だけのことか、次の休みに来るまでのことか、ずっとなのかはわからない。ただ、いつかはいて虫取りに夢中になりながらそれを途中で放棄している。描かれているのは「中断」の時間。

鉄骨を葛にゆだねてゐる世紀  くらげを
 「科学の世紀」「映像の世紀」「愛の世紀」「戦争の世紀」とさまざまあるなか、今がどういう世紀かというと、「鉄骨を葛にゆだねてゐる世紀」という。「世紀」としながら、見えてくるのは葛にまとわりつかれて少し浮いた鉄骨の実景。

よろよろと電車近づく溽暑かな  松ぼっくり
 速度を失った電車はあまりバランスの良いものではない。あの大量の人々をたった二本のレールで支えるのだ。別に夏に限ったことではないけれど、見る者の気が変わればその失速の様子はなるほどよろよろと見える。

蓼の花水へ寄りくる山羊の舌  緑の手
 ちろりとその花を滴らせている蓼は野の草で、群れていれば逞しそうであるけれど、近くで見ればひとつひとつはなかなかに可憐である。下を出した山羊の視線に立てば、もちろんその近さに蓼が咲く。相似形もたのしい。

鈍行へ流れ込む子ら玉の汗  あおい
 流れるのは汗ではなく子供たち。涼しさと空いている座席に向かって勢いよく乗り込む。ひとりひとりは汗に濡れて、やわらかな体の連続はますます流れのようなのである。




さみどりの句集の付箋夏の果  柊月子
かなかなや影絵の如きお母さん  凡鑽
氷菓選る指のつけ根のタトゥーかな  松田夜市
青空の青を吸い込むソーダ水  和音
星月夜お持ち帰りのビザはL  ヤッチー
羅にキャリーバッグの三味続く  かま猫
積ん読にルンバ入れぬ獺祭忌  元旦
友からの不意の電話や鳳仙花  どかてい
高原へ長きトンネル秋の草  あおい
八時十五分力を抜かず蝉しぐれ  鯉城


阪西敦子(さかにし あつこ)
 1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。



後選者 関悦史

 子供の頃うちにドリフターズが入れたソノシートがあって、いかりや長介が「遠くの大きな氷のうえを多くの狼と蟋蟀が十、通った」というフレーズを教えていました。これ全部O音を伸ばす箇所の表記が「う」ではなく「お」になる言葉です。「とおく」「おおきな」等。この「お」はハ行転呼音で歴史的仮名遣いではハ行でした。「とほく」「おほきな」等。「ほおずき(ほほづき)」を「ほをづき」と誤記した投句があり、思い出しました。


特選

ザハザハと律の調べよ洗濯機  暮井戸
 「律の調べ」が季語で秋らしい趣きのこと。「律の風」となると秋らしい感じの風となります。雅な言い方に俗な「洗濯機」を付けたコントラストが見どころの句ですが、さほど嫌味もなく暮らしの中の季感が出ています。

七十の母に怒鳴られ盆休み  24516
 母が七十となると本人は四十代くらいでしょうか。いい年になっているはずなのに、盆休みで帰ると親子の関係はあまり変わらない。母が弱っていたらおのずと変わるので、怒鳴られることが幸福感にも繋がります。

無花果や吾子の中にはきれいな血  あるきしちはる
 吾子の中に「は」なので、この「きれい」には遺伝的な意味は含まれない。血液検査で異状が出ない健やかな血といった程度でしょう。この直観的な断定と、やや内臓じみた断面を持つ無花果とが響きあいます。


並選

今朝の秋手櫛にかかる白髪かな  藍植生
地球にも夜なる酔ひや猿酒  海田
奥入瀬の清き流れや草紅葉  芳香
秋さやか見知らぬ駅に降りもして  小川めぐる
秋に入る里に母ゐて父の生  KIYOAKI FILM
広重の青の世界や夕立来  藍人
胸騒ぐ海へ檸檬を投入す  桂奈
枝豆の端切り落とすお手伝い  レモングラス
炎昼や切手逆さの手紙来る  波野
母となる娘に譲る藍浴衣  とべのひさの
本当にこれでいいのか猫じやらし  小木さん
秋蝶の翅に重たき鳥の影  もね
蜩の躯体しだいに透けゆけり  笑松
カンヴァスに描き写したる柿二つ  武彦
数多の死掃いてをりたる酷暑かな  小市
いわし雲延命拒否の署名せり   柝の音
読みきれぬ言葉の裏や胡瓜揉  中山月波
夏の昼逃げたイグアナ捜索中  ぴいす
色鳥や婚約指輪の紅き石  幸
老人に自死の権利やななかまど  くらげを
五分しか眠らぬ麒麟星月夜  出楽久眞
頚動脈ぴくぴく動く大暑かな  おせろ
郷土史の五十二ページ紙魚の這う  のり茶づけ
アンツーカーを真向勝負大夕焼け  ほろよい
龍淵に潜むいつまで研ぐ米ぞ  久我恒子
空蝉のすがりつきたる青ホース  さより
秋茄子といやに愛想の良き義母と  テツコ
サーカスの天幕緩く月明り  富士山
糸瓜の伸びゆく先の隣家かな  洒落神戸
少年の葉書に絵文字小鳥来る  小雪
遠花火窓へと寄せる選果台  プリマス妙
御巣鷹の尾根に張り付く天の川  葉音
長ナスは具合のわるい茄子の牛  南亭骨太
絵画館まで黄葉の道続く  喜多輝女
秋立つや少女は胸に真珠貝   ぐずみ
羊水の記憶弄る熱帯夜  みやこまる
突貫の工事は止まず遠花火  うに子
水色のキャンパスに秋雲ひとつ  ぺぷちど
真夜中の授乳のあとや虫の声  ぎんなん
鎖骨縮む風に公孫樹の散る季かな  大阪野旅人
蜩や宿に残れる血判状  彩楓
無月なる中に雨音さがしをり  台所のキフジン
鉛筆を剣のごと持つそぞろ寒  ひでやん
口角の上がりバラ園折り返す  青柘榴
われからや火星の氷融ける音  あるきしちはる
七夕祭独り手荷物退院日  マカロン星人
架空とも言へぬ請求秋の夜  土井探花
短夜や朝の動線やや鈍し  かのん
哀愁の行進曲や夏の宵  アンリルカ
爽やかやご飯おかわりその辺で  ゆりかもめ
金銀のトランペットや秋澄めり  ゆりかもめ
それは金星人の眼金魚の眼  緑の手
ブルペンの控え投手に晩夏光  ケンケン
記念てふ言葉が要るの終戦日  ミセスコナン
土佐弁のどつと飛び交う夏まつり  エノコロちゃん
緑蔭のラベルのボレロ車椅子  えつの
蓮の花覗けば月と日と星と  坊太郎
台風の進路も医師に問ひにけり  みつよ
夏終わるやさしくなりし反抗期  柊つばき
煌めきの人影退り秋の色  童夢U世
ラベンダーうす紫の空に入る  人日子
八月の長雨に冷える黄泉の門  まんぷく
もこもこがすじすじとなり秋の雲  ちろりん


関悦史(せき えつし)
 1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。2017年第二句集『花咲く機械状独身者たちの活造り』、評論集『俳句という他界』刊行。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』他。


目次に戻る




100年投句計画

自由律俳句計画



 この夏、紫外線アレルギーというビョーキに突然なった。首筋から体中に湿疹が広がって、痒みがでてステロイド飲んで塗って、気がついたら夏が終わっていた。先日会った友人が、赤外線にやられたらしいなと言う。おっさんになったら平気でこんな会話になる。紫外線と赤外線とはぜんぜん違うぞ! よう知らんけど……。




九月の雲の整う  暮井戸
 夏の酷暑もようやく終わり、月が替わってなんだか秋らしくなってきたという感じを捉えるのに、草木や雲や虫の声……などいろいろ素材はある。その素材の在り様をどう捉えるかが俳句の肝というところか。揚句は素材にした雲をその在り様や仔細ではなく、「整う」というコトバに置き換えて,えいっ!とばかりにまとめて鷲掴みにしてしまった、いわばそのちから技がお見事というところでしょう。「整う」は、いよいよらしい状態になること。そういう意味合いから、九月の雲とした「九月」も単純に存在するのではなく動かぬ力を蓄えていると思います。




夜濯ぎは追剥のごとくに  さより
 汗だらけの夏の洗濯物は、夜のうちに洗濯しておけば朝には乾く。子供や家族が多ければ母としては有無を言わさず服を脱がして一気にと言うところでしょう。その様子を「追剥のごとく」とはうまい。

三伏に突っ伏したままの母  一走人
 三伏と言われる極暑の時期なら、天井むいてごろんごろん……というのが尋常な状態。突っ伏したまま……というのは夏の気にやられすぎた母の異常を暗示させます。三伏と言う季語が、よく効いていると思う。

今日も足裏で聞くかなかな  みやこまる
 「足裏で聞く」がこの句の全てです。寝ている状態が想像されます。「今日も」とあるからには、憶測すれば病床にあるのかもしれない。単なる昼寝のし過ぎであればよいのですが。

ビルよりも明るい闇を終電車ゆく  多満
 深夜になったとしても、都心のビルの谷間が真っ暗闇になることない。そんな中途半端な闇の中を、車内だけ煌々とさせて終電車が走る。都会の不思議な闇が伝わってきます。

何時の間に虫の音どしゃ降りが止んでいた  ゆりかもめ
 いまは虫の声が聞こえるけど、たしかさっきまでものすごいいきおいで雨降ってたよね……そんな何気ない時間経過がよどみなく表現されている。句の雰囲気を思うなら「いつの間」のほうが……。




知りませんねん分かりませんねん五十年  小川めぐる
ドーナツの穴に残暑  藍人
つくつくつくつく法師と言えず行っちゃった  もね
親族にもれなく一人偏屈  柝の音
そういえばばかりを闇に繰り返す  台所のキフジン
赤い種十戒のごと割れて苦瓜は  マカロン星人
花野へ名を知らぬ鳥と私と  恋衣
滝落ちながら真蒼なる  人日子
幸福と思へばしあわせ短夜明ける  まんぷく
電卓の窓へ流星の跡  内藤羊皐


並選

秋蝶のごと投票用紙投票箱へ死んでいく  海田
神も仏もおわしますそれでいいのだ  芳香
花火殻散りゆく陽が叫ぶ  KIYOAKI FILM
竜胆と似る色形なり束ねをく  レモングラス
ふるさとの穴に秋の  小木さん
もう夜だから眠れない  笑松
断面は丸赤鉛筆  小市
去年の金魚はすでに鮒  中山月波
喫茶店のマスター占い始めたってよ  凡鑚
暑いなんて言うな敗戦忌  幸
うつくしい一旦停止だつた  くらげを
カキンカキンと鳴る扇風機毀れない  のり茶づけ
花火果てて足音と嬌声  樫の木
あああんなこと言わなきゃよかった夜長  テツコ
誰そ彼時看板の築地直送  洒落神戸
ゴミ捨ては甚平がお似合い  南亭骨太
豪雨あと蜘蛛の巣のキラリ  喜多輝女
シャム猫に見つめられて停止  和音
切る前に母だけが知る黄色い西瓜  ヤッチー
こけた墓おこさず通る  ぐずみ
後出しで負けるとは  うに子
ディベートに震える友の背を支える  元旦
朝はやし初孫に色なき風が流れ込む  ぺぷちど
人の溶ける臨界気温  松ぼっくり
昨日と同じ色に朝顔咲いた飯喰  大阪野旅人
老母と弔いの話など  彩楓
穏やかな側道ヤマカガシらしとぐろ  青柘榴
ストレスたまるばかり横顔の金魚  緑の手
問題は心の場所や愛と恋  空山
岩塩とライムテキーラ暑気払い  あおい
ランナー同士会釈する炎天下  ケンケン
ほろほろ酔ふて蚊を叩く  鯉城
八月を夢遊病者の様に歩いてる  ミセスコナン
まばたきをこらえて揚げ花火  エノコロちゃん
蛇捕まえて見れば何だか喰えそうな  坊太郎
過去進行形絵葉書も暑中見舞も  ちろりん
蟻はいつも動いているのですぐ見つかる  遊人


自由律で再挑戦を!

逝く時は春の花より草の花  藍植生
遠雷や我この先をどう生きる  藍植生


きむらけんじ
 1948年生まれ。第一回放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律・地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技・妄想、泥酔。


「放哉賞」再興。自由律を動かせ!
第一回尾崎放哉賞 作品募集

応募締切 2017年12月10日(日)必着
投句料 
 一般の部 2千円(2句1組 何組でも可)
 高校生の部 無料(2句1組まで)

 一般の部 大賞 賞状、10万円 ほか
 高校生の部 最優秀賞 賞状、クオカード5千円分 ほか
送り先
 〒545−0041 大阪府大阪市阿倍野区共立通1−1−9
 (株)たまてばこ内 尾崎放哉賞事務局
主催 自由律俳句結社「青穂(せいほ)」

詳細は……
http://www.hosai-seiho.net/


目次に戻る




100年俳句計画

詰め俳句計画



 今回より、詰め俳句を担当させていただきます山澤香奈です。正直めちゃくちゃドキドキしています。なお、期間はマイマイ師匠が復帰されるまで(半年程を想定)と聞いておりますので、不慣れな点も沢山ありますが、何とぞお付き合いの程よろしくお願いいたします。ぺこり。
 解答を沢山お寄せいただき、ありがとうございます! では、行ってみましょう!

今月の問題
 次の(  )の中に共通する秋の季語を入れてください。

太陽は住み処のひとつ(   )
一斉に子供一斉に(   )


太陽は住み処のひとつ日雷
一斉に子供一斉に日雷
 河原撫子さん。えー、早速ですが、ごめんなさい、稲妻は秋ですが、日雷だと夏の季語。泣く泣く級外に……。

太陽は住み処のひとつくさのはな
一斉に子供一斉にくさのはな
 ほろよいさん。草の花はどうしても地面に視線が行くので、太陽と距離がありすぎる気がします。後句、子供を見守るように優しく揺れています。4級。ぎんなんさん、ちろりんさんはななかまど。ちょっと住み処には無理があるかなあ……、でも実の集まっているところは一斉の感じ。4級。ヤッチーさんは蕎麦の花。あの白さはどちらかと言えば月かも。4級。海田さん、おせろさん、うに子さんは鳳仙花。種の勢いは子供に通ずる!? 3級。dolce@地味ーずさん、小木さんさんは曼珠沙華。住み処という表現は気になるけど、曼珠沙華の炎のような形は太陽とつながっているように思う。曼珠沙華の一斉に湧いている感もわかる。2級。

太陽は住み処のひとつ生身魂
一斉に子供一斉に生身魂
 マイマイさん。……何やってるんですか師匠! 絶対面白がってるでしょ! 生身魂が太陽に住んでそうな仙人みたいな感じとかわからなくもないですが、一斉に出てこられたらびっくりじゃないですか! 5級。マカロン星人さんは運動会。前句、住み処となるとちょっと意味が取りにくい。後句ストレートすぎです。5級。小市さんは赤い羽根、幸さんは愛の羽根。前句、なぜ住んでるんでしょう……謎。後句、小学生がもらった羽を付けてワイワイしているのを想像した。5級。大阪野旅人さんは休み果て、桂奈さんは休暇明け。前句、夏休みは太陽燦々の別荘に行っていたんでしょうか、いいなあ。後ろ、そのまますぎる。4級。童夢U世さんは送り舟。前句、太陽まで行くの……かな? 後句の子どもたちがちょっと元気良すぎて合わない気がする。4級。人日子さんは秋祭。後句はわかります。前句、主体が秋祭なので、景が分かりにくい気がします。3級。ふじみんさんは小鳥狩。後句、子どもが小鳥狩している? 前句の太陽を見上げて小鳥を探す感じは好きです。2級。ジュミーさんは秋遊。前句、秋の太陽の下で楽しく野遊している感がいいと思います。となると、子供と秋遊はちょっと近いかも。2級。

太陽は住み処のひとつ鰯雲
一斉に子供一斉に鰯雲
 柝の音さん、内藤羊皐さん、青柘榴さん。前句、確かに天文系の季語は、太陽があってこそ、一方でそれは近いということか……と悶々。それに、住んではないかも。前句、鰯雲の優しいイメージに対して、太陽はちょっと激しいように思います。後句のワッと湧いている感じは納得。4級。元旦さんは秋夕焼。後句、みんな一斉に家に帰っているようです。4級。緑の手さんは秋麗。後句がちょっと漠然としている感。4級。芳香さんは星祭、テツコさんは星の歌。後句の親和性はなるほど。前句、星そのものならまだわかるけど、行事になると読み取りにくい。4級。明惟久里さんは秋の潮。前句、太陽の住み処が秋の潮なら景が見える気がします。後句、子供たちはきっと楽しいですね。4級。KIYOAKI FILMさんは秋の虹。後句、一斉にという感じではないかな。5級。藍植生さんは天の川。猫楽さんは流れ星。前句、夜になることで景が広がるように思う。後句、天文観測かな。3級。

太陽は住み処のひとつ赤とんぼ
一斉に子供一斉に赤とんぼ
 しげこさん、とべのひさのさん、くらげをさん、のり茶づけさん、樫の木さん、プリマス妙さん、空山さん、坊太郎さん、遊人さん。中山月波さん、柊月子さん、出楽久眞さん、あいむ李景さん、片野瑞木さん。ゆりかもめさんは赤蜻蛉。小川めぐるさん、かま猫さん、どかていさんは秋茜。わあ、こんなに赤とんぼの方が沢山。あ、本当はこれが回答だったっけ?と一瞬思ってしまいました。が、太陽と赤とんぼは季語の距離が近い気がします。あと、太陽と平行に飛んでる感じがするので、そこまで太陽に近づけないのかも。でも、子供の勢いの中でも動じずに飛んでいる感じは納得。1級。久我恒子さんはこぬかむし。うんかですよね……ちょっと太陽にうんか、小さすぎません? 湧いてる感じは一斉に通じます。4級。凡鑽さん、喜多輝女さんはつくつくし。レモングラスさん、彩楓さんは法師蝉。太陽を住み処にするとなると、秋の蝉はちょっと弱いように思えます。でも、子供の気配にわっと逃げ出す様子はわかるかも。2級。それから、エノコロちゃんさんからは蜩や、でいただきましたが、基本的には切字は使わず季語のみが回答になるようにしています。季語アレンジになりますので、3級(-1)。

太陽は住み処のひとつ鳥渡る
一斉に子供一斉に鳥渡る
笑松さん、葉音さん、恋衣さん。藍人さん、洒落神戸さん、ひでやんさん。あるきしちはるさんは渡り鳥。渡っているので住み処にはちょっと難しいかな? でも、渡ってくる途中で住んでるかも。後句、子供たちの勢いと、群れなして渡る鳥たちがいいと思います。空を見上げて見送っているのでしょうか。初段。斎乃雪さんは秋燕。秋燕が空に舞い上がり、そして降りてくる勢い。元気に駆ける子供たちの足音と、それをすり抜けていくような秋燕たちを思いました。1級。


今月の正解

太陽は住み処のひとつ稲雀
一斉に子供一斉に稲雀
 一走人さん、みやこまるさん。正解がお二人も! よかった……! 前句、高く舞い上がり、太陽を背にきゅーんと降りてくる稲雀たち。太陽に一瞬見失うような感覚。それから子供たちの足音に、一斉にばたばたっと飛び立つイメージ……いかがでしょうか。私が田舎育ちなので、遊び場が畑や田んぼだったんですよね。初段。

 師匠ー! どうだったでしょうか!
解答につけさせていただく級に頭を悩ませ、出題に頭を悩ませ、歳時記を見つめ、解答にした季語を見つめ……。これを続けてきたマイマイ師匠のすごさを実感しております。師匠ー! いつでも帰って来てくださいー! 


解答募集中!
 次の(  )の中に共通する冬の季語を入れてください。

浜に寄す獣の骨や(   )
(   )魚の目に踏むBB弾

10月20日締切 結果は12月号に掲載


山澤香奈(やまざわ かな)
 第3回俳句甲子園出場。句集シングル『線路とぶらんこ』(マルコボ.コム)。


目次に戻る




100年投句計画 投句方法



雑詠俳句計画
自由律俳句計画
詰め俳句計画

 「雑詠俳句計画」では、寄せられた投句を一括して、各選者が選句します。各選者に宛てて個別の投句を行うものではありません。

12月号掲載分締切 10月20日(金)

投句方法

 投句先コーナー名
 俳号(無ければ本名の名前のみ)
 本名
 電話番号
 住所

 以上の必要事項を書き添えて、編集室「100年投句計画」係までお寄せください。メールの場合は、件名を「100年投句計画」としてください。
 「雑詠俳句計画」「自由律俳句計画」はそれぞれ2句ずつまで投句できます。また、「詰め俳句計画」は季語1つのみを投稿できます。
 各コーナーの投句は、ひとつにまとめて送っていただいても構いません。

メール宛先
magazine@marukobo.com

投稿専用ページ
http://marukobo.com/toukou/

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(「俳句ポスト365」のページ参照)


目次に戻る




短歌の窓


選者
短歌誌『未来』会員 渡部光一郎


特選

おはようを言って転んですりむいでたんこぶ出来た楽しいぞ今日 ミセスコナン
 いろいろあるけれど、「楽しい」今日。「おはよう」からはじめて「今日」でおさめた。見事。


並選

さくらいろの骨に成りたる弟よ葬祭場の蝉のひた啼く 広木虎之進
 挽歌。お骨がさくらいろだというリアリティ。

あのひとがついえてしまうあのひとがついえてしまうわたくしもつい 暮井戸
 最後に「わたくし」が顔をのぞかせるあたりがミソ。こういう技法を用いた歌の場合、「ついえる」という古い語をよしとするか否かで評価が分かれるのかもしれない。

秋草のわれもわれもと顔を出す廃車の窓は笑ひのかたち 久我恒子
 秋草が「われもわれもと顔を出す」様子はよくわかる。「笑ひのかたち」とはどんなかたちかちょっとわからない。


コメント

父逝きしこと知らぬ身の蓑虫の風まかせなる声ぞ哀しき 芳香
 この歌がうたわれた背景など、もう少し情報がおぎなわれていればよい。

シャーペンのノックする度出る芯の如くに君の悋気が痛い 凡鑽
 悋気という語は面白いのだが、これがベストの選択かどうかちょっと分からない。また、直喩にかなりの文字数を使っている点も難しいところだ。

半眼の瞼に朝を蔵しつつ休日寝床小鳥来る音 海田
 「半眼の瞼に朝を蔵」するというのは面白い表現。下の句に助詞がなく体言がならんだのが残念。せっかくの上の句を活かすために、下句をととのえるとよい。

朝練の野球部員と並走し最後は追い抜く長居公園 ケンケン
 すごい体力だ。「長居公園」という固有名詞とのからみが面白い

誕生日同い年なる糠床をそろりと起すあれから五年 明 惟久里
 自分と全く同じ年月を生きてきた糠床。「あれから五年」というのはどういうことだろう。

山羊を飼ひ海に潜りて海老を捕り最南端におじいと暮らす 風
 ドラマが感じられるが、歌の主格が何かわからないのが残念。

眠剤の空色殊に美しく君も何かの出来損ないか 土井探花
 「君」は「眠剤」のことと読んでいいのだろうか。ややわかりにくいが、美学のようなものは感じる。

墓洗う確かにいたり父と母声の聞きたし笑顔の見たし 幸
 歌意はよくわかる。語と語の連絡がうまくいけば、すっと流れるいい歌になるので、活用形をととのえたり助詞をおぎなってみてもよい。
 ではごきげんよう。


目次に戻る




自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



評 菅 紀子


 投句をくださった久我さんによると、NHK World(NHK国際放送)の HAIKU MASTERS エピソード3(愛媛編)が栃木県内で、しかも日本語で放映されたそうです。去年6月松山ロケに出演したことは私にとって貴重な宝物になりました。後日英語に吹き替えるので日本語で話すという指示で準備も日本語でしていたのに、スタンバイしカメラが回る直前急にやはり英語で喋ってくれと言われたので忘れもしません。道後温泉本館2階で収録中窓の外にクレーンカメラがぬっと上がってきたときは本当に驚きました。
 当番組はインターネットでも一定期間動画が視聴できます。YouTubeにもいくつかアップされているとか。
 当コラムの俳句も英語になった途端世界を駆け巡ることができます。どこかで紹介されるかもしれません。


1.
The young swallow
now able to ultra low flying
at high speed

超低空飛行もこなし夏燕  小川めぐる

a young swallow
now able to fly ultra low
at a high speed


2.
Afternoon
I have a promis
whiteroses are swaying

人に逢ふ午後白薔薇の揺りやまず  小川めぐる

an afternoon
with an appointment
white roses keep swaying

小川めぐる ちょっと季節がズレてしまいましたがよろしくお願いします!

紀 「人に逢う」約束は appointment があると言った方がいいです。promise は「果たす」約束の場合でしょうか。keep 〜ing で 「〜し続ける」で「揺りやまず」を表現してみました。


3.
O France, autumn
It cool girls!
left turn right turn

フランスの秋素敵な少女左右  KIYOAKI FILM

autumn in France
oh cool girls
on my right and left

紀 冒頭の O は感嘆の「おぉ!」の意でつけたのなら「素敵な少女」の前に移動してあげましょうか…… 韻を踏んだ感じになりました。


4.
church,
kingdom of heaven
autumn in bird

教会の天の御国よ秋燕  KIYOAKI FILM

in a church
the Kingdom of heaven
autumn swallows

KIYOAKI FILM 英訳聖書を読んで、少しずつ単語を覚えていってます。辞書を使えば分かるのですが、面倒くさくてあやふやで終わっているのが、残念。

紀 英語を勉強するとき、一つはこまめに辞書を引くやり方と、単語毎の意味にこだわらずどんどん読み進めて行って言わんとするところを掴む、という両方のやり方があります。


5.
a talisman
with his eyes open full
in the bracing air of autumn

爽やかや魔除けは目玉ひんむいて  片野瑞木

a talisman
goggling his eyes
in the bracing air of autumn

紀 「爽やかや」を3行目に持ってきて秋の空気を描写したのはいい処理ですね。
「ギョロ目で見る、目玉をギョロつかせる」という意味で goggle という動詞もあります。


6.
a peach is bright
do not sink into
water of bucket

水底に沈まぬ桃の明るさよ  片野瑞木

how bright
a peach that never sinks
to the bottom of the water

紀 「明るさよ」という切れ字を含む表現を感嘆の語で how bright 「なんて明るいんだ」とし、その感動を冒頭に置いてみました。


7.
Migrating birds
navigate using
a lamp of guidance and promise.

鳥渡る神の啓示のごとく灯よ  ほろよい

ほろよい 先生、いつもご指導ありがとうございます。先月投句した俳句の結果はまだ届いていませんが、今回は、「鳥渡る」を生かし「渡り鳥」ではない事を考えて、navigate と動詞を使ってみました。

migrating birds
using a lighthouse
to navigate

紀 ほろよいさん、こちらこそチャレンジありがとうございます。私も勉強させていただいています。
参考訳は鳥が「神の啓示のごとく」従う灯りを、灯台が持つ形而上的な意味も込めて一言で表現するとしたらと発想して lighthouse という単語を使った例です。ただし英語句から逆に日本語の原句通り訳すことは難しいかもしれません。でも俳句的なシンプルさの美と気持ちを伝えることはできると思います。


8.
drooping over
face to face-
scarecrows

うなだれて向き合ふてゐる案山子かな  久我恒子

tete-a-tete
two scarecrows
drooping

紀 久我さんの英訳で結構ですが、変化球としてフランス語からきた「差し向かいで」という語も使ってみました。音感が案山子のちょっと滑稽な軽さを彷彿とさせてくれそう。


9.
a pine cricket-
spreading out
trousseaus

松虫や嫁入り衣装広げゐて  久我恒子

a pine cricket-
chirping
the trousseaus spread out

紀 秋に松虫が子孫を残そうと盛んに羽を広げて鳴く姿を嫁入り衣装を広げると表現された感性が素敵です。「ゐて」で松虫の誇らしげな様子も伝わります。その行為は羽を震わせて鳴いているので 文法上 chirping を補足したのですが、それを言語化しない久我さんの訳もいいと思います。

久我恒子 菅先生、6月に栃木県内で、NHKの「HAIKU MASTERS」が日本語で放映されました。過去にチェリストのナサニエル・ローゼンさんが、そして菅先生も出演されたのですね。お着物がとてもよくお似合いで、うっとりしてしまいました。私のリスニング能力が低いため、英語の放送はすべて聞き取ることはできませんが、英語の優秀句を見ることができるので勉強になります。これからも「HAIKU MASTERS」のページを覗いて、投句してみようと思います。

紀 情報ありがとうございます。知りませんでした。ローゼンさんの太山寺ロケにも立ち会っていたんですよ。「HAIKU MASTERS」は全世界に配信され各国から投句されています。ぜひ参加してください。


10.
Saturday afternoon
mowing the green grass
listening to the day game radio

デーゲーム聴きつ青芝刈る土曜  明 惟久里

紀 grass を lawn にしてもいいかも。


11.
a new place
moss green chinaberries
as long-term berries

新天地麹塵色の楝の実  明 惟久里

紀 この植物に不案内でごめんなさい。新天地の空気感があります。


12.
Autumn noon
nobody
in the park

公園にだあれもいない秋の昼  彩楓

midday in autumn
not a soul
in the park

紀 noon、midday 共に正午、真昼という意味です。bodyの代わりにsoulも人を表します。


13.
a red dragonfly stays
edge of the glow
the sunset

赤とんぼ夕日の端にとまりけり  彩楓

a red dragonfly
lights on the edge of the glow
at sunset

紀 stay は止まっていますが、lightに舞い降りるという意味があり動きを込めるのにいいかもしれません。動詞を中句に移動した方がリズムがいいのでは。 


14.
i don't have any ways,
and
i hold the autumn cat

どうしようもなく秋の猫を抱く  チャンヒ

no other way
holding a cat
in autumn

紀 「私」はいつでも大文字ですが、I を敢えて小文字の i にしたところに何かありそう……。


15.
if it's loved even,
if it's loved even,
the moon is waning

愛されても愛されても月の欠けてゆく  チャンヒ

no matter
how much I am loved,
the moon is waning

紀 私の参考訳は例文的ですが、チャンヒさんのからは嘆きが聞こえてきます。


菅 紀子(かん のりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通・翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学非常勤講師。(Hailstone Haiku Circle blog ICEBOX Contributor)(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)


自作の俳句およびそれを英語俳句にしたもの(2句まで)を募集!
応募先
WEB http://marukobo.com/eigo/
Email eigo@marukobo.com
12月号掲載分締切 10月20日(金)


目次に戻る





百年歳時記


夏井いつき

第52回


 有名俳人の一句を紹介するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月紹介鑑賞していきます。


満月の尻着くあたり鰯寄る  めいおう星
 「満月の尻着くあたり」とは? 完全な虚の世界、ファンタジーかと思いきや、下五「鰯寄る」で一気に現実世界に叩き込まれる感覚です。「満月の尻着くあたり」は、未明の光景。満月に近い月が沈むのは夜明け前。暗い内に出港した鰯漁の船が漁場に着く頃です。
 「鰯」の群れを探すのは魚群探知機ですが、かつては目視による魚見の判断。「満月の尻」が「着くあたり」の方向に、「鰯」の群れを見つけたのです。鰯船は一気に船足を速めます。「鰯寄る」海面のさざ波も見え、鰯網を放つ準備に甲板が活気づきます。
 「満月の尻着くあたり」という措辞もさることながら、「鰯寄る」の五音のみで一気に光景を立ち上げる。見事な力技の一句です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』9月15日掲載分)

ひかひかと手話の一団菊日和  とおと
 「ひかひか」という不思議なオノマトペに惹かれます。しかも「ひかひか」が、交わされる「手話」に対する擬態語であることに驚きます。ひらひらと動く手、目に見えない言葉がその空間を飛び交っている感覚。「一団」とありますから、人数のイメージもまた「ひかひか」という音のない空間の厚みとなります。
 どんな会話が「ひかひかと」交わされているのかと思った瞬間に出現する季語「菊日和」が、なんとも鮮やか。「菊」を愛でる会話か、頭上に広がる秋晴れの美しさを称える会話か。「菊日和」という匂やかな季語が「手話の一団」という人たちを包み込む。その様子もまた「ひかひか」というオノマトペに収斂していくかのよう。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』9月1日掲載分)

耳掻けば蜩の澱出るわ出るわ  堀口房水
 「蜩」のカナカナカナカナという音の積もり積もってできた「澱」が、「耳」の奥から次々に出てくる。「出るわ出るわ」という虚の詠嘆にクスリと笑いつつも、その実感にうなずかされます。
 「蜩」の林に立った時のことを思い出します。静かな水底にいるような心持でした。「蜩」の声という水が、我が耳を満たし、その音が水底に沈み、静かな「澱」となっているという幻想。そんなイメージを背後に抱きつつ、「澱」が掻きだされたとたん、「澱」たちがカナカナカナカナと小さな音を立てる!?と思うと、またまた愉快になります。「耳掻けば」は偶然条件。耳を掻いてみると「出るわ出るわ」の愉快を、たまたまという気分がさらに掻き立てます。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』8月18日掲載分)

棒読みのごとくはららご搾りおり  立川六珈
 「はららご」とは「」と書き、魚類が産卵する前の卵塊です。特に鮭のそれを指し、秋の季語となっています。
 鮭の腹を割き「はららご」を取り出し、卵を搾りだす光景ですが、比喩と語順にこの句の工夫があります。「棒読みのごとく」って何だ?と思うと、「はららご」という季語が出てきて、最後に「搾りおり」という状況が描かれる。この語順に臨場感があります。
 「はららご」から出てくる卵はイクラ。搾りだされる赤い卵を思い浮かべると「棒読みのごとく」という比喩に納得がいきます。ビューッって出てくる感触をこう表現したのですね。比喩の力とはこういうことなのかと、発想に驚かされた作品です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』8月18日放送分)

金秋や天寿全うしたる鍋  だんご虫
 「金秋」は秋の季語。辞書には【五行の一つである「金」を季節にあてはめると秋に当たるところから】と解説してありますが、秋の実りのイメージもある美しい季語です。
 「金秋や」のあとに「天寿全うしたる」と言ったら、当然お爺さんかお婆さんを思い浮かべますが、そこからの展開が実に愉快。「天寿全うしたる」ものが「鍋」であることが分かると、使い古した「鍋」がただ壊れただけではなくて、長く丁寧に「鍋」を使い込んでいる家、台所、人物が見えきます。この台所で生み出される日々の健康的な食事も想像できます。それもこれも「金秋」という時候の季語が持つ豊かな秋のイメージが醸し出す効果に違いありません。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』8月25日放送分)


百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
松山市公式サイト『俳句ポスト365』http://haikutown.jp/post/
などに投句された俳句を紹介します。


目次に戻る





俳句の街 まつやま

俳句ポスト365



協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


金曜日優秀句
平成29年8月度


夏越(なごし)


夏越の水雲取山に発す水  山香ばし
夏越かなごひきのりゅうがみずをはく  ちま(3さい)
もっちりと夏越の菓子の透けにけり  時雨
心宿ばうばう脈打てる夏越  土井デボン探花
船で行く社なりけり夏祓  松尾千波矢@チーム天地夢遥
膝上げてくぐる茅の輪や砂利香る  魚ノ目オサム
匂ひ立つ茅の輪の先に力石  夏柿
山靴の夫婦茅の輪を潜りけり  らくさい
背番号順に茅の輪をくぐらせる    さるぼぼ@チーム天地夢遥


水かけて白飯うまき夏越かな  剣持すな恵


蜩(ひぐらし)


蜩や今何歳と山に聞く  むらさき(5さい)
蜩へ無言の雲を寄せ集む  Y雨日
かなかなや無言は無音とは違ふ  大塚迷路
かなかなや反古悶えつつ火に巻かれ  めいおう星
かなかなや開かずの蔵に誰かいる  あいだほ
蜩や実験棟に開かずの間  小泉岩魚
蜩や剖検室の饐えた床  上里雅史
かなかなや爺ちゃんの木が枯れました    今治 しゅんかん
来世また蜩として君の手に  こま


耳掻けば蜩の澱出るわ出るわ  堀口房水


10月の兼題
公式サイト内の「俳句投稿」より作品をお寄せください。(※投句期間を過ぎますと投稿ページは次の兼題の募集に自動的に切り替わります。ご投稿はお早めに。)

投句期間 9月7日〜10月4日
舞茸(まいたけ)
仲秋/植物
サルノコシカケ科に属するきのこで、日本各地で楢などの広葉樹の老木や、椎の大木などの根もとに生える。無数に分岐した、先端が扁平なへら型の柄が特徴で、食用として大変美味。

投句期間  10月5日〜10月18日
鰭酒(ひれざけ)
三冬/人事
河豚の鰭を炭火で焦がすぐらいにあぶり、湯呑みに入れて熱燗の清酒を注いだもの。蓋をしてしばらく置いた後、揮発したアルコール分をマッチの火で燃やしてから飲む。

参考文献 『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


 「俳句ポスト365」は携帯電話からもご参加いただけます。
 「俳句ポスト365」公式Facebookページ開設中! 公式サイトに設置しておりますリンクよりお入りください。毎回の兼題のお知らせを中心にお伝えしながら、皆様の返信欄への書き込みもお待ちしております。


 募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。


目次に戻る





一句一遊情報局



協力 南海放送


金曜日優秀句
平成29年8月度


三伏(さんぷく)

三伏のツーアウトからまた長し    ももたもも
三伏を俯瞰から見る影が濃い  江口小春
台北の三伏に濁りたる池  野良古
三伏や熱と怒号の換気扇  七草
三伏や窯出しの壺土間に百  もも
三伏の鍛冶屋の舐むる神の塩  彩楓
三伏の山羊吐く息の青臭し  てん点
三伏や賽銭箱に鳥の羽  お手玉
三伏の市場に鶏の足垂れて  樫の木
三伏の湿り波打つ頁かな  穂美
三伏や洗車の水の盛り上がり  城内幸江
三伏にさみしい母と食うカレー    えるちき
三伏や鉛煮るごと厨ごと  彼方ひらく


三伏やホルモンの泡立つバケツ    トポル


菜虫(なむし)

代々の器用貧乏菜虫採る  一走人
滑らかに動く菜虫へ曲がらぬ手  斎乃雪
菜虫にも働き過ぎがおるのです    ひでやん
かしましき井戸端菜虫放りつつ    このはる紗耶
さはあれど菜虫云ひたきことのあり    宮坂変哲
菜虫取る農婦ロザリオゆらんゆらん    猫アイスクリーム
妻恋村はときどき曇り菜虫採る    こころな鹿
清かなる緑菜虫も勾玉も  立川六花
菜虫ふと金星へ頭をもたげをり  ひそか
月下なる万の菜虫の咀嚼音    ひなぎきょう
星まりて葉脈のぼりゆく菜虫  月の道


菜虫十匹川のアマゴにくれてやり    エノコロちゃん


はららご

はららごを割く手の白し湯の白し    柊月子
はららごの丁度収まる腹の洞  鞠月
はららごや太陽千個飲み込んで    まめたこまめ
はららご抜く弾丸二千発のごと    ひでやん
はららごを鼻歌ララと煮てくずす    だんご虫
はららごや子のなき妻の中将湯  柳児
はららごを掻かれてウヨロ川遠し    小田寺登女
はららごやホロホロ山へあと五キロ    鯛飯
はららご食らうや知床に活火山    逆ベッカム
はららごのからくれなゐにあらはるる    ひそか


棒読みの如くはららご絞りをり    立川六珈


天(漢字一文字兼題)

秋天や法事の煮物番拝命  都乃あざみ
天かすをざくりと混ぜて残暑かな  華緒
天婦羅へボリビアの塩秋立ちぬ    小泉岩魚
柿ひとつ天は動くと説いている  ときこ
天井に動かざる蠅寝台車  小市
五グラムの天秤皿へ置く秋思  鯛飯
霊山は天の入口天の川  雪花
初嵐ドドウと唸る天狗岳  あいは
地震の夜の天幕打ちて打ちて竈馬    樫の木
豊かなるある朝轟天の蝗  めいおう星
鎌濯ぎ終ふれば天を朱鷺の群    このはる紗耶


金秋や天寿全うしたる鍋    だんご虫


投句募集中の兼題

投句締切 10月8日


季語ではない兼題です。「団」という字が詠み込まれていれば、読み方・用い方は問いません。季語は当季を原則として、自由に選んでください。

新麹(しんこうじ)
晩秋/人事
麹とは酒、味噌、醤油などを醸造する原料となる米や大豆などの穀類に麹黴を生やしたものの総称だが、新酒を造るために新米で作る麹のこと特にいう。


投句締切 10月22日

横這(よこばい)
三秋/動物
浮塵子によく似た鮮緑色の小さい虫で、蟹のように横行することからこの名がある。稲の若葉や花茎などの汁液を吸い、稲の萎縮病を媒介伝播する。

水始めて氷る(みずはじめてこおる)
初冬/時候
中国古代天文学による七十二候のひとつ。二十四節気では立冬の初候に当たる。

参考文献『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句宛先
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとにしたものです。俳句ならびに俳号が実際とは異なっている場合がありますのでご了承ください。


目次に戻る




今回のお題句に対する投句から次のお題句を選び繋げてゆく

疑似俳句対局


選者 美杉しげり


今回のお題句
春愁や送信ボタンに指の影  野良古


候補句

芋食ってルビーの指輪を熱唱す  すぎもと恭

 今月の一番乗り句。「芋食って」と「ルビーの指輪」の取合せが愉快。あの歌、流行りましたよねぇ。

 今月、多かったのが「指」の句。映像を立ち上げやすい、というのも理由の一つかも。

指切りを信じたあの日白い秋  健次郎
流れ星指折り数へガムを噛む  葉音
勝利者の指差す先や秋の雷  洒落神戸
指で追ふ御殿場ルート星月夜  凡鑽
深爪の指の不器用しゃぼん玉  小田寺登女

 こうしてみると、指の表情もさまざまです。どの句もなぜか明るい淋しさのようなものを感じるのは季語の作用でしょうか。「白い秋」「流れ星」「秋の雷」「星月夜」は秋の美しい季語。「シャボン玉」は春の季語ですが、これも儚さを感じさせます。

水蜜桃指につたふは昼の夢  柊月子
蜻蛉捕る指のネイルは茜色  芳香
餌をまく端居の指のやはらかき  中山月波

 水蜜桃の甘さ、綺麗に彩られた指のネイル、そして餌をまく白い指。どの句も女性のしなやかな指を詠んで、艶めいた趣。

凹凸の本走る指星月夜  大槻税悦
蚯蚓鳴く指で読む村上春樹  土井探花

 どちらも点字の本を読んでいる景だろうかと思いました。白いページにびっしりとある凹凸をたどる指が見えてきます。探花さんの句は、点字というのではなく、指でなぞりながら味わうようにゆっくり読んでいるのかもしれませんが。

 「影」の句も多かったですね。

星月夜水面にはねる銀の影  斎乃雪
見あげれば雲影うすき十三夜  藍植生
月仰ぐ里の小径に影三つ  笑松
月影やまだ残ってる貸本屋  小市
鏡面の鋭角のビル夏日影  出楽久眞

 天文系の季語との取合せが目立ちました。「星月夜」「十三夜」「月」「月影」秋の季語と取り合わせると、やはり独特のムードが生まれますね。「まだ残ってる貸本屋」のレトロな風情など良いですねー。対して、出楽久眞さんの「夏日影」の句は硬質な味わいが魅力。

撮影は佳境秋夜の自主映画  ひでやん

 「撮影」というアプローチはあまりなかったですね。学生でしょうか、現場の熱気が想像されます。

自信より自惚れならば秋の空  青柘榴
君からの返信のごと木の実降る  恋衣

 こちら「信」なお二人。青柘榴さんの句はいろいろ深読みできそうですね。やや屈折した思いも秋空を見ていれば消えてしまうのかも……。恋衣さんの句はまるで野良古さんのお題句への返しのよう。木の実降るような返信とは、さてどんな言葉が並んでいたのでしょう。

ローランサンの女の愁眉薄紅葉  柝の音
愁眉して葡萄ひと房たいらげて  小川めぐる

 偶然お二人とも「愁眉」という言葉をチョイス。柝の音さんの句、ローランサンの女はいかにも「愁眉」の言葉が似合いますね。薄紅葉の「薄」あたりが、あの絵の色調と響きあうのでしょう。対して小川めぐるさんの句は「愁眉して」の思わせぶりな出だしから一転、「葡萄ひと房たいらげて」のギャップが愉快。一人でひと房たいらげるって、なかなかやりませんよね(笑)

月光やくるみボタンの革割れて  久我恒子

 秋も深まった頃、コートでも取り出しているのでしょうか。焦げ茶か黒のくるみボタンの質感と月光の取合せがなんとも素敵。同時投句の「たましひの影のかたちの糸瓜かな」にも惹かれました。


次回お題句
ねぢ花の空と指切りするごとく  かま猫

 迷いましたが、かま猫さんのこの句を次回お題句に。ねじ花のあの姿を「空と指切りする」と捉えた発想が魅力ですね。まるで童画のようですが、ただ可愛いだけではない、不思議とどこか淋しさも感じられるところに惹かれます。

 今月も「初投句です」という方がおられて、嬉しい限り。常連の皆さまもさらに発想飛ばしてまいりましょう!
 ……と、気になりつつ、次回もよろしくお願いいたします。


美杉しげり
 第8回俳句界賞受賞。4年ほど前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。

毎月25日頃に、投句フォームにてお題句を発表します。投句締切は毎月末日。

疑似俳句対局投句フォームアドレス
http://marukobo.com/taikyoku/


目次に戻る




THE BEATLES 213 PROJECT



第1回「デビュー! ザ ビートルズ」

文 夜市


 はじめまして。ビートルズが残してくれた数多の名曲を俳句に切り取って楽しんでいきたいと思います。ビートルズが大好きな方もそれなりにお好きな方もどうかよろしくお願いいたします!


「ラブ ミー ドゥー/LOVE ME DO」

単純に愛せよルーズな月ならば チャンヒ

 1962年10月リリース。記念すべきデビュー曲でありながら以降のどの作品とも似通っていない独特の世界感。それを「ルーズな月ならば」と喝破したチャンヒさんはやはりスルドい。ダルなスキッフルビート、ほぼラブ ミー ドゥーしか言っていない歌詞、哀愁をおびたハモニカに身をゆだねシンプルに愛することがラブ ミー ドゥーの正しい鑑賞法なのでしょう。

ハモニカや律の調べに口説かれる   井玉
新しい誰かに届け遠き雷  風来松


「プリーズ プリーズ ミー/PLEASE PLEASE ME」

恋心月まで螺旋に駆け上がり  猫正宗

 1963年1月リリース。ラブ ミー ドゥーに続くセカンドシングル。瞬く間にヒットチャートを駆けあがり、ビートルズ初のナンバーワンヒットとなりました。
 この曲の持つ疾走感、若々しさ、荒削りさ、あっけなさ(笑)といった魅力を余すところなくとらえた猫正宗さんの一句。なにしろ月まで駆け上ってしまうのだからね(しかも螺旋状に!)。カモンカモンと懇願しつつ、実はもう俺のもんだぜオーイェイとジョンはほくそ笑んでいたのじゃないだろうか。

駆け抜けし二分五秒の初時雨  ツバメ号
雲の峰の音階プリーズ プリーズ ミー  天冷


「抱きしめたい/I WANT TO HOLD YOUR HAND」

オーイェイで始まる恋のうた檸檬  時計子

 ビートルズ5枚目のシングル。我が国においてはデビューレコードとして1964年〈昭和39年〉2月に発売されました。
 時計子さんの句は、オーイェイ旋風の吹き荒れたこの時代の楽しさに満ち溢れている。恋の歌だから檸檬でしょというレトロな青春性も朝ドラ「ひよっこ」を思わせてナイスだ。オーイェイから始まったビートルズ旋風が、やがてはロックの垣根を飛び越して様々なムーブメントに発展していったのだと思う。
 ファンとしては、この時代を生きてビートルズ上陸をリアルに経験してみたかったなと切に思う。わしは知っとるぞという諸先輩方からの投句もぜひお待ちいたしております。よろしくお願いします。

夏花火手と手の距離が無限大  キャンディ
夕焼けた砂文字に手は遠のきて  壁無心


「アイ ソー ハー スタンディング ゼア/I SAW HER STANDING THERE」

爽籟にカウントは四つ楽鳴りぬ  暮井戸

 デビューアルバム「プリーズ プリーズ ミー」のA面1曲目、ボーカルはポール。いろんな意味でこの曲こそがすべての始まりだったように個人的には思う。冒頭のポールによる「ワン、トゥー、スリー、フォー!」のカウントは、デビューアルバム全体というにとどまらず、8年間にわたるビートルズの冒険すべての始まりを告げているかのようだ。
暮井戸さんの句は爽籟の季語のもと、高らかに鳴り響くフォーカウントとそれに続く斬新この上ないロックンロールとを格調高く詠っている。

星月夜4カウントで落ちる恋  猫正宗
野分立つフォーカウントの神話かな  夜市
新涼の踝あえかなる渚  久我恒子


第3回 兼題曲
テーマ「ロックンローラー! ザ ビートルズ」

「ツイスト アンド シャウト」
「ロング トール サリー」
「ロール オーバー ザ ベートーベン」
「ロック アンド ロール ミュージック」

 すべてカヴァー、いずれ劣らぬロックンロールの古典的名曲です。各メンバーの歌唱力に注目。
 兼題曲を詠んだ俳句をお送り下さい。

専用フォーム http://marukobo.com/beatles/
専用Email beatles@marukobo.com
締め切り 10月20日


目次に戻る





鑑(み)るという冒険


〜映画篇 演劇篇〜

文&俳句 猫正宗


第六十回
『ザ マミー 呪われた砂漠の女王』&『いかけしごむ』

 目白押しだった夏休み大作も、そうでない作品も、貧しさに負けて軒並み見逃した今夏。辛うじてすべりこんだのが、『ザ・マミー 呪われた砂漠の女王』。なぜかって? だってチケットが当たったんですもの。さて、日本ではマイナーなミイラですが、欧米では、ドラキュラ、狼男、フランケンシュタインと並ぶビッグ4らしい。本作は、ユニバーサル映画がかつてお家芸としていた古典的モンスター映画を現代的にリブート、それぞれを関連付ける“ダークユニバース”の皮切りとなる作品。ソフィア・ブテラ演じる悪の王女・アマネットはなかなか魅力的なのですが、映画自体は平板。特に終盤、トム君と延々殴り合いが続くのが冗長で……。え? トム君って? そう齢55歳になろうと、つい君付けしてしまう、永遠の青年、トム・クルーズですよ。今やすっかり功なり名なり遂げたにもかかわらず、最近やたらとジャンルムービーに主演し続ける彼。しかもほとんどの作品がシリーズ化。本作では、永井豪×石ノ森正太郎的人を越えた存在となり“ダークユニバース”のレギュラーとなる模様。果たしてトム君は一体どこに向かっているのでしょう。そういう意味では目の離せない企画となりそうです。因みに、各作品を繋ぐもう一つの存在として、あのジキル博士率いる英国の対モンスター組織も登場。『HELLSING』かよっ、と思った方も追いかけてみては?

熱砂巻く木乃伊となりて木乃伊取り

 “ダークユニバース”は、「この世に存在する悪を識別、分析、拘束、破壊する」ような作品なわけですが、一方こちらは……
 「夜、街外れの公園、『座るな』の注意書きのベンチに座る女。息も絶え絶えにやってくる男。男は、いかを原料につくる消しゴムを発明したため、ブルガリア暗殺団から命を狙われ逃げているのだという。だが、女はそれを否定して言う。男は自分の娘を殺し警察から逃げているのだと。そんなはずはないと男が取り出したのは、しかし、原料のいかでも特許申請書でもなく、バラバラの死体?」
 『いかけしごむ』は、別役実の戯曲を、京都の劇団このしたやみの広田ゆうみと二口大学のユニットにより上演('17年8月18日、19日、シアターねこ)。別役といえば不条理劇である。演出も務めた広田は、別役の作品でこの世界で生きるための身構えを教わったという。例えそれがどのようなものであれ世界はそのようにできており、そしてそこには初めから居場所などない。それでもここにいるためにどう対峙していくか、そのための身構えを学んだのだと。
 女と男の二人芝居として進む本作だが、最後に現れるもう一人の人物によって、ある結末が告げられる。それは通常ならば悲劇的なものだろう。しかし、私はその結末にほっとしたのだった。私達は、良かったのか悪かったのか、正しいのか正しくないのか、幸せなのか不幸なのか、そんな具合に、つい割り切ってしまいたくなる。しかしこの芝居はそれを拒否する。世界とはそんな風に割り切れるものではないのだと。ならば不条理こそがこの世界の条理なのだろう。

何杯のイカでできている消しゴム


目次に戻る




岡田一実の

句集の本棚



カムイ
櫂未知子 著

発行 ふらんす堂(2017年初版)
174ページ
定価 本体2,800円+税

 著者の第三句集。
誰からもひとしくとほく真葛原
卒業や見とれてしまふほどの雨
地吹雪や蝦夷はからくれなゐの島
火事かしらあそこも地獄なのかしら
 火事が起こると騒ぎが起こる。消防車がサイレンを鳴らしてけたたましくやってきて、火事の周りをぐるりと群衆が囲む。その騒ぎを察知した瞬間、火事現場の地獄と作中主体にとっての今ここの地獄とがリンクされる。「かしら」と繰り返される軽やかな感慨が却ってこの世の地獄を際立たせて恐ろしい。
水やれば咲くかもしれずかたつむり
遠ざかる炎のやうに花氷
遠足の列平凡な海に着く
一瞬にしてみな遺品雲の峰
立秋や意匠を凝らす霊柩車
 悲しさと気づきは別のところにある。それが例え近しい人を運ぶ霊柩車だとしても、霊柩車を具体的に観察してしまうのもまた性だろう。悲しい気持ちと可笑しい気持ちは両立するのだという気づきがここにはある。
ストーブが花の代はりに置いてある
 「群青」共同代表、「銀化」同人。


音符
金子敦 著

発行 ふらんす堂(2017年初版)
193ページ
定価 本体2,200円+税

 著者の第五句集。甘やかな抒情と一抹の淋しさが日常のふとした瞬間に立ち上がる。
春惜しむ画鋲を深く刺し直し
ハーモニカにあまたの窓や若葉風
 ハーモニカの音色とその「窓」。比喩としての「窓」が実際の外へ開かれる「窓」のイメージを引き、一気に若葉の瑞々しい空気が流れ込んでくるようで清々しい。
マネキンの手に本物の花芒
ピアノ弾くごと指動く昼寝の子
雛あられ盛ればざざざと波の音
もう一度部室に戻る卒業子
折紙の裏は真つ白昼寝覚
短日やぱたぱた畳むパイプ椅子
 何かのイベントだろうか。全てが片付けられていく中でパイプ椅子も片付けられてゆく。「た」「ぱ」「た」「ぱ」「た」「た」「た」「パ」「プ」とT音とP音が重ねられることによってパイプ椅子そのものが楽器のように感じられる。
朝や練乳缶に穴二つ
ひとすぢの藁の突つ立つ夏帽子
招き猫ずらしてポインセチア置く
 「出航」所属。


岡田一実(おかだ かずみ)
 2014年「第三回 大人のための句集を作ろう!コンテスト」優秀賞受賞。2014年「浮力」にて現代俳句新人賞受賞。現代俳句協会会員。「いつき組」所属。「らん」同人。第二句集『境界 border』(マルコボ.コム)。


目次に戻る




mhm通信


第79回

文 若狹昭宏


まる裏俳句甲子園

 本家「俳句甲子園」が大盛況に終わり、スタッフとして多数参加していたmhmのメンバーもようやく自身の俳句活動や仕事に手をつけられるようになりました。巷の高校生(と、一部の大人)は「俳句甲子園ロス」であったり「松山ロス」になっているようですね。そんな人たちの話を聞いていると特に多いのが
「もうこんな俳句で熱く戦う大会はない……」
 ……ん? もしかして、まる裏俳句甲子園のことが知られてない!?
 もっとメディア戦略に力を入れていくべきだったかと少々不覚でしたが、ともかく俳句で熱く戦うといえばこの「まる裏俳句甲子園」を忘れてはならないと皆さんに今一度感じていただきたい! いつき組の俳人をはじめ、関西の有名俳人や北海道の俳句集団itak、県外に散らばった俳句甲子園OBOGなど、夢のエキシビションマッチが実現する大会はまる裏俳句甲子園だけであると!
 そんなわけで、今回の見所などを徐々に発信していけたら良いなと思っているのですが、先ず、今年が子規・漱石生誕150年記念ということで、松山市と連携して新しいブースを設置するなど企画しています。また、前回変わった大会の形式を調整し、完成形として実施を目指しています。前回変更点の一つ、予選の方法では、インターネットフォームを使用し、複数の審査員にバックヤードで審査をしてもらう形式に変更になりましたが、フォーム入力をする際に投句を直すチームがあるということで、投句方法を改善します。審査員については協議中ですが、トーナメントの際の審査員は、毎年前年度の優勝チームから一人選出してもらっております。前回の終了時点で家藤正人さんを予定しており、先日お会いした時にも改めて確認いたしました。
 エントリー順に前列からの指定席になるため、前の方の席を希望するチームはお早めにお並び下さい。
 ほとんどの方が前もってチームを組んで来場されますが、初めてお一人で来られる方など、当日のチームコーディネートがありますのでご安心ください。「高校生以外のための」と銘打っておりますが、高校生でもチームに大人や中学生以下のメンバーがいればエントリーできます。今回もその場の俳人でチームを組んで出場するお手伝いをさせていただきます。1人でも5人でもお気軽にお越し下さい。その他ご意見ご質問などもございましたらフェイスブックなどを使ってmhmの方までご連絡いただけるとありがたいです。

まる裏俳句甲子園 キャッチコピー募集

 昨年、キャッチコピーの募集期間が分からなかったという声をいただいておりました。大変申し訳ないことに今回も募集が遅れてしまいましたが、誌上では今号より募集を開始しました。インターネット上でも募集いたします。短い期間にはなりますが、一瞬のひらめきで気軽にご応募下さい。全力でお待ちしています!

過去のキャッチコピー 
 13回「裏を取れ!」作 大塚迷路
 14回「裏から堂々と来い!」作 梶浦公靖
 15回「裏からGO!!」作 藤田夕加

 mhmでは松山市内外問わず会員を募集中です。原則、毎月最終金曜日19時からマルコボ.コムにて定例会を行います。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


目次に戻る





朝の見る句


No.7

文 蜂谷一人


梨剥きしナイフ梨より甘からむ  鈴木牛後

 梨を剥けば汁が零れます。それは致し方ありません。しかし、この句の場合は舌がひりひりします。それはナイフという言葉があるから。ナイフを甘いと感じるためには舐めなければなりません。刃に舌をあてなければなりません。それが怖い。舌は身体の中で最も鋭敏な部分。鋭利な刃に鋭敏な部分をあてるのですから自ずと緊張感が走ります。考えてみれば、こんなことになったのは梨が甘かったからです。甘くなければそもそもナイフを舐めてみようなんて料簡は起きないでしょう。甘いものというのは大抵身体に悪いのです。わかってはいても「少々の毒がない人生はつまらない」とか言って危険を承知で近づくのです。シュガーとかハニーとか呼ばれ、ちやほやされるからわがまま。でもいい匂いがするから自分のものにしたくなるし、そうなるとお金もかかります。身を滅ぼす輩だって出てしまうのですから罪な存在です。梨のことですよ。


目次に戻る





新聞記事に隠された俳句を発掘する

クロヌリハイク


黒田マキ


だいこん や映画に引っ張りだこ になる
(2017年9月2日 愛媛新聞より)

4連勝 9月も進撃 止まらない。
(2017年9月2日 デイリースポーツより)

夕焼けと 名乗っていたという 庶民
(2017年9月7日 愛媛新聞より)


目次に戻る





100年俳句計画 掲示板



テレビ ラジオ

NHK Eテレ『NHK俳句』
 日曜6時35分〜7時(再放送 水曜15時〜15時25分)
 夏井いつきが第3週選者を担当
10月15日(日)、再放送18日(水)
募集兼題 「鹿」または自由
投句締切 10月10日必着
投稿は葉書1枚に1句。選者名、兼題、俳句1句、名前、年齢、電話番号明記。
宛先
〒150ー8001 NHK「NHK俳句」係
ホームページからの応募も可 http://www4.nhk.or.jp/nhkhaiku/

NHK 総合テレビ(四国四県域)
  「四国 おひるのクローバー」内
  隔週火曜『夏井いつきのムービー俳句!』
10月10日(火)、24日(火) 11時30分〜

TBS系列局 全国ネット
 『プレバト!!』
毎週木曜 19時〜19時56分
 夏井いつきが俳句の査定を担当

南海放送
 松山市政広報番組『大好きまつやま〜しあわせ未来塾〜』
毎週火曜 20時54分〜21時(再放送 日曜11時40分〜11時45分)
 夏井いつきが塾長として出演

南海放送ラジオ
 『夏井いつきの一句一遊』
毎週月〜金曜 10時〜10時10分
  「一句一遊情報局」のページ参照

FMラヂオバリバリ
 『俳句チャンネル』
毎週月曜 17時15分〜17時30分(再放送 火曜7時15分〜7時30分)
投句募集兼題
「団栗、放屁虫」10月8日締切
「新酒、美術展」10月22日締切
 WEB http://www.baribari789.com/
 mail radio@baribari789.com
 FAX 0898(33)0789
  投句には本名、住所をお忘れなく!
  「天」の句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。

各番組の放送予定は変更される場合がございます。新聞などで最新情報をご確認ください。


執筆

松山市の俳句サイト
 『俳句ポスト365』
http://haikutown.jp/post/
 「俳句ポスト365」のページ参照

テレビ大阪俳句クラブ
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」(夏井いつき選)
  毎週日曜タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井いつき選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。
 裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。
 朝日新聞松山総局(〒790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。


イベント、講演等

平成29年度 菊池市市民会館自主事業
 夏井いつき句会ライブ 100年俳句計画
10月1日(日)14時〜16時
 菊地市文化会館大ホール(熊本県)
 全席指定
 一般2000円、高校生以下1000円
 当日券各500円増
 (未就学児の入場はできません)
問合先 菊地市文化会館 電話 0968(24)1101

第101回 千代女全国俳句大会
10月7日(土)
 8時30分〜 受付 席題発表 吟行
 13時15分〜 記念講演およびトークショー
 千代女の里俳句館、松任学習センターコンサートホール ほか(石川県)
 夏井いつきが席題選者のひとりです。記念講演あり。
 定員に達したため、募集は締切りました。
問合先 千代女の里俳句館 電話 076(276)0819

泉野図書館交流祭 記念講演会
 夏井いつきの句会ライブ
10月8日(日)14時〜16時
 泉野図書館 2階オアシスホール(石川県)
 参加申込の受付は締め切られております。
問合先 金沢市立泉野図書館 電話 076(280)2345

平成29年度北海道鷹栖高等学校PTA文化講演会
 夏井いつき句会ライブ
10月16日(月) 13時45分〜15時30分
 たかすメロディーホール(北海道)
 参加無料(要入場整理券)
問合先 北海道鷹栖高等学校 電話 0166(87)3020

平成29年度全国私立中学高等学校
 全国私学教育研究集会愛媛大会 記念講演
 夏井いつきの句会ライブ 認めあう、伝えあう、俳句の力
10月19日(木) 15時30分〜17時
 松山全日空ホテル(愛媛県)
問合先 大会事務局 電話 03(3222)1621

新居浜市市制80周年記念事業
 夏井いつきと巡る別子銅山産業遺産
 第3回 俳句ing Walking
10月21日(土) 8時30分〜16時10分
 山根公園 体育館前集合(愛媛県)
 参加費1000円(バス代及び傷害保険代)中学生以下は無料。
 往復はがきでお申込みください。(9月29日締切。定員に達し次第締め切ります。)
問合先 新居浜市観光協会 電話 0897(32)4028
http://niihama.info/archives/995/

平成29年度 全国高等学校校長協会家庭部会
 第118回研究協議会(秋季)愛媛大会
 夏井いつき句会ライブ
10月23日(月) 13時〜14時30分
 にぎたつ会館(愛媛県)

第21回 京都女子学園同窓会 藤陵会 愛知支部総会
 夏井いつき講演句会ライブ
10月27日(金) 12時45分〜14時
 THE KAWABUN NAGOYA 2F BALL ROOM(愛知県)
問合先 京都女子学園同窓会 藤陵会 愛知支部 電話 090(7953)8838(三浦)

NHK文化センター名古屋教室
 夏井いつきのカンタン俳句塾
10月29日(日) 10時30分〜12時
 NHK文化センター名古屋教室(愛知県)
問合先 NHK文化センター名古屋教室 電話 052(952)7330

花里小学校句会ライブ
10月30日(月) 13時30分〜15時
 花里小学校(岐阜県)


目次に戻る





魚のアブク



読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは他の投稿に添えてお寄せください。


海田 クロヌリハイク特集、面白く拝読しました。普通の新聞のみならず、日本農業新聞などいろんな業界紙でやってみても面白いかもしれません(うちの職場に来ている新エネルギー新聞や環境新聞で試しにやってみましたが、季語が日付しかなく難しかった……)。大きな話をするなら、業界紙の協会・日本専門新聞協会さんと何がしかのイベントができる可能性もある……かもしれません。

葉音 俳句甲子園、お疲れさまでした。来年は、ぜひ松山に行って見学したいと思っています!

元旦 俳句甲子園の2日目を観戦しました。2年ぶりに目にする高校生たちの句に刺激を受けました。大会後のおまけに、まさかのプレバトメンバーの登場。行って良かった(笑)。また来年が楽しみです。

みやこまる へたうま仙人様、お疲れさまでした。いつかどこかで会えますことを楽しみにしています!

ひでやん マイマイさん、詰め俳句お疲れ様でした。毎回歳時記とにらめっこして何が入るか考えるのがとても楽しくかつ勉強にもなります。コーナーがなくなってしまうのかと危惧しましたが、山澤さんが引き継ぐということなので安堵しました。山澤さんよろしくお願いします。


目次に戻る





鮎の友釣り


第231回


俳号 れんげ畑

前回 うに子さんへ 木曜カルチャーで、いつも素敵な句をありがとうございます。また、時事ネタ・テレビネタを上品に句の中に忍ばせる達人でもあります。これからもよろしくお願いします。

写真 今治市大三島町宮浦の大山祇神社に咲いていたれんげの花を携帯電話で撮影しようとしているところです。

俳号 れんげの花・れんげ田が好きなので、れんげ畑という俳号にしました。

近況 俳句を初めて4年半です。投句締切に追われつつ、木曜カルチャーに通っています。鮎の友釣りの釣り人がここ数か月、木曜カルチャーの句友の周りをうろうろしているナーとは思いましたが、まさか……いつの間にか釣り上げられていました。釣り上げていただきありがとうございました。

次回 アンリルカさんへ 木曜カルチャーで夢のある素敵な句をいつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします。


目次に戻る





告知



春夏秋冬(しき)笑顔まつやま福祉五七五
福祉をテーマにした 秋の五七五募集

主催
松山市社会福祉協議会
有限会社マルコボ.コム(ふくし句会、ハイクライフマガジン「100年俳句計画」)選句

協賛
JAえひめ中央 社会福祉協議会賛助会員


2016年度 秋の五七五 会長賞
ばあちゃんの外泊燕帰る朝  竜胆

年4回、福祉をテーマにした五七五を募集します。
人に優しくなれるような五七五をお待ちしています。
(第3回 2017年11月3日締切)


応募方法
インターネットの応募フォームにて応募してください。
専用フォーム http://www.marukobo.com/egao/]

賞品「松山トリコ」
 大賞(松山市社協会長賞) 道後温泉湯玉トートバッグ(1点)
 優秀賞 ブックカバー(3点)
 入賞 紙の湯カードケース(4点)

発表
ハイクライフマガジン「100年俳句計画」12月号 ほか

問い合わせ
TEL 089-921-2111





だれもが句集を出版できるかたち
句集Sytle

あなたの句集を20,000円〜制作します
(完全デジタル入稿、30冊制作の場合。価格は税別。)
仕様 135mm×135mm、36ページ、オンデマンド印刷、表紙PP加工

2017年 第4期
11月30日(木)申し込み締切
(原稿締切11月5日、2018年1月末納品)

詳しくは
http://www.marukobo.com/style/

通常の句集Styleの倍のページ数による「句集Style-W」の募集も行っております。
お気軽にご相談下さい。





第16回 高校生以外のための まる裏俳句甲子園

主催 まつやま俳句でまちづくりの会


裏っぽいキャッチコピー募集!!

第16回まる裏俳句甲子園キャッチコピーを募集します。
応募締切は10月10日(火曜日)(必着)。
作品の応募先は

メール
mhm_info@e-mhm.com

郵送
790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
マルコボ.コム内「まる裏キャッチコピー募集」係

詳しくは専用ホームページまで http://e-mhm.com/maruura/


第16回まる裏俳句甲子園

日時 2018年1月7日(日)
  予選 9時30分 集合 本戦 13時00分〜 (12時30分開場)
場所 松山市立子規記念博物館(松山市道後公園1-30)
入場料 500円
エントリー料 700円(エントリーには別途入場料500円が必要です)
当日パンフレット広告募集中(1口3000円〜)
お問い合わせ
Eメール mhm_info@e-mhm.com
電話 (089)906-0694 マルコボ.コム内(担当 キム)





12月の第1土曜日は恒例の……!!
100年俳句計画大忘年会 のお知らせ

毎年12月の第1土曜日は「大忘年会」の日。今年も盛大に開催致します。
抱腹絶倒まちがいなし。たくさんのご参加をお待ちしています。

日時
2017年12月2日(土)
18:30〜21:00(予定)
 正式な時間は追ってご案内いたします。

場所
いよてつ島屋 9F ローズホール
愛媛県松山市湊町5丁目1−1
089-948-2111(代表)

会費
 大人 6,500円
 大学生以下 4,000円
 小学生以下 2,500円

参加申込締切
11月20日(月)必着!


参加方法
 忘年会参加希望の旨と、〒住所・氏名・俳号・会費区分(大人/大学生以下/小学生以下)・連絡先電話番号を明記して、ハガキ、FAX、Eメール、または電話にてお申し込み下さい。ご家族等複数でお申し込みの場合は、代表の方の〒住所・連絡先電話番号に加え、全員の氏名・俳号・会費区分をお知らせ下さい。

投句・投稿に添えてのお申込はお控えください。
受付対応が遅れる場合があります。

 お申し込みをいただいた方には11月上旬頃より順次、ご案内のハガキを郵送いたします。
 締切までにお申込いただいた方で、11月27日(月)までにハガキが届かない方は、お手数ですがマルコボ.コムまでご連絡ください。

問い合わせ、申し込み先
(有)マルコボ.コム
〒790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
TEL 089-906-0694
FAX 089-906-0695
E-mail bounen@marukobo.com





選評大賞2017 作品募集

 今年も選評大賞を行います。
 300字以内でビシッと決まった選評をお寄せください。
 多数の応募をお待ちしております。

最優秀賞(賞金1万円)、他
締切 10月20日必着


応募方法

選句の対象となる句
 2016年10月号〜2017年9月号までに掲載された「百年百花」「100年の旗手」の中から、心を打たれた俳句を1句選んで、選評をお寄せ下さい。

記載事項
 掲載句1句(掲載号、作者名を必ず明記)
 選評 20字×15行(300字)以内厳守(多すぎても少なすぎても減点の対象となります)
 俳号、本名、住所、電話番号(必ず明記)

最優秀賞 賞金1万円(来年の第八回「百年俳句賞審査委員会」への参加資格も得ます。)
優秀賞(数名) 賞金3千円

締め切り 10月20日(金)必着
応募先 100年俳句計画編集室まで、ハガキ、封書、FAX、メールでお送り下さい。

送付の際、件名、タイトルに「選評大賞2017」と明記下さい。
ご応募の際、他の投稿とは別にお願いいたします。

結果は12月号にて発表します。





作品募集
第七回 百年俳句賞

主催 マルコボ.コム
共催 朝日新聞社


 百年俳句賞は、「百年後の未来に残したい作品を、私たち自らが作り、自らが選ぶ」というコンセプトで毎年開催しており、今回で7回目を迎えます。 既作新作を問わず81句の作品集を募集を行っており、最優秀賞作品は句集スタイル形式の句集にし、本誌および俳句新聞いつき組の付録として配布します。


募集要項

応募資格
15才以上(高校生以上)の方なら、本誌購読の有無に関係なく、どなたでも応募できます。

応募方法
1 Eメールでの応募の場合
 応募用のエクセルファイルに必要事項を全て入力し、Eメールの添付ファイルにして、応募して下さい。
 応募用ファイルのダウンロード先 http://81ku.marukobo.com/
2 郵送の場合
 B4判四百字詰め原稿用紙に81句とその表題、俳号、本名、年齢、住所、電話番号を必ず明記して応募して下さい。

予選審査員 
 俳句集団いつき組組長 夏井いつき 
 『100年俳句計画』編集長 キム・チャンヒ

本選審査員
 百年俳句賞選考会員

締め切り
 2017年11月30日(木)必着


 賞状および応募作品による句集20冊
 *賞品句集は縦横135o・36ページとなります。句集は本誌付録として配布します。

発表
 本誌2018年4月号誌上(予定)

送り先
 〒790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
 有限会社マルコボ.コム
 月刊俳句マガジン『100年俳句計画』編集室
 Eメール 81ku@marukobo.com


目次に戻る




編集後記


キム チャンヒ

 6月のシンポジウム「俳句県みんなで詠むぞ575」を行ったあとの打ち上げで、子規新報の創刊に関わる方々から話が聞けたのは、大きな収穫だった。
 その中で最も興味深かったのは、俳句甲子園誕生の話。愛媛文化振興財団が企画した俳句甲子園を、どのような経緯で子規新報が受け継ぎ、どのようなことが起こって当時の青年会議所が開催するに至ったかなどなど。個人的には、俳句甲子園開催当初から、20年寄り添うように大会を見てきたが、それ以前の具体的な話というのは、なかなか聞く機会が無く、知らないことばかり。特に印象的だったのが、5対5の団体戦にした経緯。当時子規新報の編集にも関わっていた菊池修さんが、飲み会の席で発案したのが最初だとのこと。後日ほとんど忘れかけていた頃、坪内稔典さんから菊池さんに突然電話があり「あのとき話した俳句甲子園、進めることになった」という。
 その頃の子規新報の主なメンバーは30代から40代の若い俳人たち。そしてその意思を受け継ぎ開催にこぎ着けたのも、若い青年会議所のメンバー。俳句甲子園が20回を迎え、開催当時の若い力が、俳句の世界や街の風景を変えたという事実を感慨深く思う。


目次に戻る





次号予告


240号 11月1日発行予定

第5回龍淵王決定戦


お得で便利なマルコボ.コム直販定期購読! 巻末の案内をご覧ください
お申し込みの方へ、毎月末頃に最新号を送料無料でお届けいたします!
(住所変更の際は必ず編集室までご連絡ください)

『HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画』は以下の書店でもお買い求め頂けます。

愛媛県
 明屋書店 ※一部店舗のみ
 ゆらり内海(愛南町)
 原田書房(今治市)
 子規記念博物館(松山市)
 紀伊國屋書店松山店
 ジュンク堂書店松山店


HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
2017年10月号(No.239)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子

2017年10月1日発行