100年俳句計画6月号(no.223)


100年俳句計画6月号(no.223)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


巻頭リレーエッセイ
牧草ロール/鈴木牛後


特集
俳句対局 第四回龍天王決定戦



好評連載


作品

百年百花
 谷さやん/亜桜みかり/中町とおと/十亀わら


新100年の旗手
 海田/松尾千波矢


新100年への軌跡
 俳句 脇々/中西亮太
 評 都築まとむ/樫の木




読み物

美術館吟行/猫正宗

mhm通信/暇人

Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳:朗善)

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

ラクゴキゴ。/らくさぶろう

歳時記「無季」がバイブル/日暮屋又郎

クロヌリハイク/黒田マキ

百年歳時記/夏井いつき

鑑(み)るという冒険/猫正宗

続 南極を詠もう!/源泰拓



読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画
  関悦史/阪西敦子/桜井教人

 へたうま仙人/大塚迷路
 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/マイマイ
 100年投句計画 投句方法

短歌の窓/渡部光一郎

百人百様E-Haiku/菅紀子

俳句ポスト365

一句一遊情報局

100年俳句計画 掲示板

魚のアブク

4月号訂正

鮎の友釣り

告知

編集後記

次号予告





牧草ロール
鈴木牛後

 北海道では六月は一年でいちばん良い季節。周知のことと思うが北海道には梅雨がなく、それなりに暑い盛夏もまだ来ない。からっと広く晴れた空、そのなかをトラクターが忙しそうに行き来する。酪農家にとっては一年でもっとも忙しい一番牧草の収穫のときだ。
1.2〜1.5メートルの円筒形に梱包するロール方式。作業効率を考えたら前者なのだが、観光資源としての農村風景のためには後者が欠かせないと個人的には思う。
 そう、牧草ロールは北海道の初夏の風物詩。歳時記にはまだ立項されていないが、北海道歳時記というものがあれば必ず載ることだろう。
光ごとごろり牧草ロールかな


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特集

俳句対局 第四回龍天王決定戦



 去る4月23日、松山市立子規記念博物館にて、マルコボ.コム主催、松山市共催による俳句対局第四回龍天王決定戦が開催されました。
 過去の大会と異なり今大会では、10月に開催予定の松山市主催による「俳句対局第二回松山市長杯」(予定)への出場をかけた大会となりました。
 そんな当日の熱戦の模様を、お伝えいたします。


トーナメント戦出場をかけた予選

 今回大会に出場されたのは、初出場の天玲さんを始め、俳句対局常連の川又 夕さん、きとうじんさん、若狹昭宏さん、久しぶりに参加した山澤香奈さん、そして、昨秋に開催した第四回龍淵王決定戦の勝者恋衣さんの計6名。
 トーナメント戦に出場できる4名の席をかけ、予選を行いました。
 予選は、席題の一句から、俳句対局のルールに基づき漢字または自立語を頂き、その場で一句俳句を作りました。そして、その自作の俳句に対して、更に一句作句。制限時間4分の間に、計2句を作成し、その合計点で競い合いました。
 今大会の席題は全て夏目漱石の俳句。予選の席題「春風や女の馬子の何歌ふ」がその場で発表され、各自作句を開始しました。
 全員2句4分以内で作句完了。それぞれの俳句に対して審査員が審査を行いました。
 今回審査を行ったのは、岡本亜蘇さん(船団)、藤田ありこさん(椋)、愛媛大学教育学部教授中西淳さん、昨年俳句対局第一回松山市長杯で優勝された片野瑞木さん(いつき組)の計4名。
 審査の結果トーナメント戦に出場したのは、1位の恋衣さん、2位の天玲さん、3位の若狹昭宏さん、そして、俳句点では若狹さんと同点ではあったが作句時間の差で4位の山澤香奈さんの4名。川又 夕さんときとうじんさんは、ここで敗退となった。

席題句
 春風や女の馬子の何歌ふ

川又 夕
 歌声の色ありつたけしやぼん玉
 糸瓜蒔くいつしか声のうしなはれ

きとうじん
 春日傘揺れて女一人旅
 揺れ揺れて花は間合を奏でる

恋衣
 桜蘂降る歌ふやうに降る朝
 春雨は降るただただむらさきへと

天玲
 夏めいて馬のひづめの堅さかな
 ひづめより蒼立ち上がる日雷

山澤香奈
 園庭に歌のあふるる花の昼
 昼間からそんなにぶらんこをこいで

若狹昭宏
 エチュードに合わせて歌い花は葉に
 春星や合作といふ起爆剤


一回戦 第一試合
 先手 天玲
 後手 若狹昭宏

 「冒険の匂ひの砂に蟻の列」「龍天に登る世界は色めきぬ」など瑞々しい俳句で攻める若狹さんに対して、天玲さんが「列柱へ熱砂の風の立ち登る」「登壇のカサブランカに負けそうだ」などの多彩な俳句で圧倒。「抱卵の白鳥まぶた重たかり」で時間点の減点0.5を全く問題にせず圧勝。
 「負けたものの、岡本亜蘇さんにチャレンジ精神を褒めてもらったのが収穫です」との若狹さんの言葉が印象的でした。

席題句
 むくむくと砂の中より春の水

 砂浜を辿るや花筏の波は  天玲
 冒険の匂ひの砂に蟻の列  若狹昭宏
 列柱へ熱砂の風の立ち登る  天玲
 龍天に登る世界は色めきぬ  若狹昭宏
 登壇のカサブランカに負けそうだ  天玲
 むつ五郎海抜3mに登る  若狹昭宏
 げんげ田の3mは靴脱いで  天玲
 抱擁の如く草餅田に畑に  若狹昭宏
 抱卵の白鳥まぶた重たかり  天玲
 一般を脱却朧月重し  若狹昭宏


二回戦 第一試合
 先手 恋衣
 後手 山澤香奈

 「子を抱いて春菊さげてずんずんと」「味の素振って泣きたし春の夕」など、自分の身近な題材を丁寧に読み進める山澤香奈さんに対して、恋衣さんは出身地でもある熊本に対する思いを託し読み進める好対照な対戦。「父に逢いたし春満月抱きたし」「裏木戸の閂開けて素足の子」など、家族や故郷の原風景を想起させる句群で、恋衣さんが1回戦を勝利。山澤さんは久しぶりの参加でコツがつかめず、時間点や俳句の減点などを重ねてしまったのも敗因でした。

席題句
 陽炎の落ちつきかねて草の上

 熊本の落ちつきかねて龍なり  恋衣
 本棚にまず教科書を春うらら  山澤香奈
 花の雨漱石の書を売りにゆく  恋衣
 しゃぼん玉父なんて石頭なんだ  山澤香奈
 父に逢いたし春満月抱きたし  恋衣
 子を抱いて春菊さげてずんずんと  山澤香奈
 裏木戸の閂開けて素足の子  恋衣
 味の素振って泣きたし春の夕  山澤香奈
 有明の磯巾着に手を振って  恋衣
 また会いましたね春の野の好敵手  山澤香奈


決勝戦
 先手 天玲
 後手 恋衣

 決勝戦は、昨秋の龍淵王恋衣さんと初出場の天玲さんの戦い。さくさくと時間内に俳句を進める恋衣さんに対し、時折じっと一点を見つめて動かない天玲さん。余りに動かないので、自分の番と気づいていない風にも見え、観客に声を掛けられる場面も。
 「避難所に生まるる子らや月朧」「夏来る地震の果ての明るさへ」など恋衣さんの故郷熊本への思いを託した俳句に対し、天玲さんの「難産の果て十六夜の灯かな」「春の夜を磨き明るき酸化銀」、そして恋衣さんと同様熊本への思いを読んだ「暮春なる祈りよ地震の地へ届けよ」など、多彩な作句で対戦。結果天玲さんが1点差で勝利を掴みました。
 ちなみに、今回出場された方全員に、烏天狗さんの「てっぺん米」が賞品として授与されました。

席題句
 日は永し三十三間堂長し

 三十三才あらぬ所を眺め居て  天玲
 避難所に生まるる子らや月朧  恋衣
 難産の果て十六夜の灯かな  天玲
 夏来る地震の果ての明るさへ 恋衣
 春の夜を磨き明るき酸化銀  天玲
 銀ねずの色に暮れけり鳥曇に  恋衣
 暮春なる祈りよ地震の地へ届けよ  天玲
 逃水に届けまさうかお水でも  恋衣
 朝顔の水を爪に塗ってみる  天玲
 新しき塗料は青で春の夢  恋衣



優勝のコメント

着て行く服がありません
天玲

 「着て行く服がありません」というのは、以前お声かけいただいたときお断りしたまじな理由でしたが、そればかりか出場者が必ずといっていいほど携えている(ように見える)三種の神器 「電子辞書」「スマホ」「使い慣れたコンパクトな歳時記」を何一つ持ってないんじゃあ、格好つかんやろ、というのも内心ありました。いや、それ以前に、句会ライブの5分で一句ですらテンパる自分に即吟なんてムリムリムリ…!と、いうのは言わずもがな。
 そんな私がなぜ俳句対局に出場し、ひょうたんからコマ的に龍天王になってしまったか、その顛末を完全自分目線で解説いたします。
 おととしのまる裏俳句甲子園会場で急きょ結成した「天空の皿」チーム。「次もでましょう」「ちょっとでも練習しましょう」と始まったフェイスブック上での練習会。と言っても、それぞれ勝手な時間に、先の句から言葉をもらって詠んだ句を、コメント欄に書いていく、というだけの(一応俳句対局方式)気ままなものではありました。メンバーは空さん、更紗さん、天玲。サザエ同盟トップ3とも目される3人だけに、当然脱線しつつの笑い転げつつの楽しい道中でした。
 まる裏本戦出場は、惜しくもかないませんでしたが、この練習会の中で、最もヒマ人がゆえにがんがん句を書きちぎっていた末っ子の私に、二人の尊敬すべきお姉さま方から、俳句対局出場の命令が下ったのでした。
 かくして、懸案の「着るもの」は、前年の覇者 瑞木さんのアドバイス「子供の入学式に着たのでいいのよ」を参考に、歳時記その他については、「ナシでがんばる」と覚悟を決め、俳句対局の座布団に座ることとなったのです。
 対局の内容と結果については、きっと別途報告があると思うので割愛。

出場してみてわかったこと

 時間制限とかいろんなプレッシャーで心拍数があがる。若干手もふるえる。にもかかわらず周りからは「平気そうに見える」と言われる。
 座高が高いため、相手が書いている途中の短冊が見えそうになり、目をそらす。
 持ち時間のシステムは、実際対戦してみるとわかる。(わかってなくてもどうにかなる)
 脳のエネルギー消耗がはげしく、糖分が欲しくなるタイミングでチョコを配ってくれるスタッフさんが天使に見える。

出場してみた感想

 審査をされた瑞木さんも言われていましたが、前句の一語をいただき自句をつくるこの方式で、この場に座ると、自分でも、思いも及ばない句が出て来ることがある。自分の脳ミソのみならず、潜在意識も動員して、瞬間的にイメージしたものを言葉にし、ちょいと整えてぽんと出す、それがうまくいった時の心地よさ。
 決勝戦第1句目、漱石の句をうけての先攻の第1句がどうしても出ず、1句も詠めないままの時間切れも覚悟した中、夏井組長が発した解説の一言がまさかの1句に。
 会場で私に丁寧にご挨拶くださった男性の俳号に「蓮華」の語があったことで、、若狭さんとの対局の「げんげ田」の句につながったということもありました。(その方は私を別人と間違えられていたのですが)
 対戦相手でもあり、熊本への祈りをすばやく句にして繰り出してくる恋衣さんは、終始なごやかに話かけられ、リラックスさせていただきました。それらを思いおこすと、やはり、見えない「言霊」とでもいうべきものがそこかしこにいて、たまたまそれをうまくキャッチした私が今回優勝させていただいたけれど、「対局」と言って戦いではない、会場みなさんの想いが良い感じで循環するような、まことに楽しい時間でございました。
 秋の大会もがんばります。

(サザエ同盟 財布を忘れて買い物行く的うっかりやらかし系俳人による同盟)


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美術館吟行


第18回

愛媛県美術館 
高畑 宮崎アニメの秘密がわかる。
スタジオジブリ レイアウト展
吟行会

文 猫正宗


 レイアウトとは、アニメ制作における設計図のようなものだ。作品の各場面毎に、人物や背景など、その場面に現れるものが、どのように配置されているか、等を描いたもの。そうすることで分業化された各パートに監督のイメージを具体的に伝えるのである。
 因みに絵コンテは、文字で書かれた脚本を映像として成立するよう絵解きしていくものだ。作品全体の流れを絵コンテで設計し、その絵コンテで必要とされたカットをより細かく設計していくものがレイアウトだともいえる。
 ジブリ作品の制作では、特にそのレイアウトが重視されている。それは、宮崎駿と高畑勲の東映動画での出会いから始まる。高畑が、それまでのアニメーター主導から、演出主導の作品作りをし、宮崎は主要スタッフとして活躍する。

分業の夏野を駆けだしたハイジ  チャンヒ

 テレビに進出した高畑は過密なスケジュールの中、玉石混交の外注スタッフに対してクオリティーを保つために優れたレイアウトマンであった宮崎を招聘、『アルプスの少女ハイジ』で本格的にレイアウト制を導入する。

ナウシカの眼に決意青あらし  恋衣

 当時、やや埋もれた存在であった宮崎が、再び脚光を浴びたのが『風の谷のナウシカ』だ。

憎悪の目燃やし切り裂く夏の空  ころん

 大国に故郷を滅ぼされた少年が復讐を果たさんと戦闘機を駆る。
 この場面を担当したのは金田伊功。極端に誇張されたパースやポージング等で独自の表現を確立した80年代のスターアニメーター。ジブリ作品ではその作風に合わせているが、それでも滲み出る不穏な気配。2009年に永眠。享年57歳であった。
 閑話休題、『ナウシカ』のヒットを契機に、宮崎、高畑が作品を作るための場として、スタジオジブリが設立される。

夏の夜をシータは1K/0.5ミリ降りてきた  チャンヒ

 『天空の城ラピュタ』では少年パズーが空から降りてきた少女シータと出会うところから始まる。1K/0.5ミリはレイアウト中に書かれた、一コマ0.5ミリで動かすという指示。フィルムは1秒間に24コマなので、この場合、シータは1秒間に12ミリの速度で降りてくる。

大木のゆがみ海老反り夏来る  ころん

 巨木を見上げるようなカットでは、二次元の絵に見掛け上の遠近感を与えるため、消失点が二つある奇妙に歪んだ絵となる。

夏に入る気づけば森の精の影   猫正宗

 大量のレイアウトと情報量に疲れた時、「となりのトトロ」のトトロとねこバスの影と出会う。

薫風の飛行機全て僕のもの  未悠
風が風追いかけて来る麦の秋  恋衣
ゴーグルの団栗眼や雲の峰  ころん

 飛行機好きの宮崎の趣味が濃く表れた『紅の豚』

一枚の絵からはじまる大夏野  恋衣

 中世の日本と思しき森深き世界が舞台の『もののけ姫』エミシの少年アシタカと山犬に育てられた少女サンとの出会い。

南吹く少女の瞳迷ひなし  しんじゆ

 本展が「美術展」として成立しているのは、レイアウトが肉筆の鉛筆画であるということも大きい。動き、色、音と引き換えに失われてしまったものが脈打っている。

夕立ちやセル画の走る走る走る  しんじゆ

 ジブリでセル画を使った最後の作品でもある。

幽霊の赤色の熱夏真昼  未悠

 ジブリのもう一つの柱である、高畑勲の作品『火垂るの墓』。終戦前後にただ二人で生きようとし、そして死んでいった兄妹の物語。生前の記憶をたどる幽霊の二人が現れるシーンでは画面が赤く演出されている。

熱風と大岩の間を揺れる舟  猫正宗

 作風が大きく違う二人だが、それぞれが影響を与えあっていることがレイアウトからも見て取れる。高畑、宮崎以外の演出家では、その影響はさらに顕著。その一人である宮崎吾朗が監督を務めた『コクリコ坂から』は、少女漫画を原作に70年代の青春を描いたラブストーリー。

さよならの汽笛の長し夏柳  しんじゆ

あまりの展示物の多さに、今回の吟行では、みな、全てをフォローすることができなかった。
 それにしても、監督という一人の頭の中の世界を形にするため、これだけの数のレイアウトが描かれ、さらに膨大な動画や美術が描かれるかと思うと気の遠くなる思いだ。

ただ一人の妄執に幾万の虹  猫正宗

 あなたも、ぜひこのイメージの奔流に飛び込んでみてほしい。


炎昼に向けられた矢は鉛筆画    チャンヒ



次回美術館吟行会

愛媛県美術館 再興第100回院展吟行会
7月2日10時現地集合
参加無料(入館料は別途)
申込締切:6月29日

『100年俳句計画』編集室まで
お申し込み下さい。TEL 089-906-0694

吟行ナビえひめ
http://iyokannet.jp/ginkou/


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百年百花



大人コン選考会員4名による 4ヶ月間競詠
2016年度 第一期 第三回


壮年
 谷さやん

蜂が来る素顔のようなポスターに
壮年の細き顎鬚夏来る
新緑を行くこと倒木をくぐること
緑陰のマイクロバスの子どもたち
半島に原発青葉だってある
蛍籠買って単身赴任の夜
豆ごはん懸賞品の届きたる
初蝉や書籍注文書の控
本を読むとき退屈な金魚たち
靴下を選る薔薇に水やるように選る
ふとわれの国籍を問う枇杷すする
文庫本濡れてヨットを降りてくる

1958年生まれ。「いつき組」所属。「船団の会」会員。『不器男百句』坪内稔典 谷さやん共編(創風社出版)。句集『逢ひに行く』(富士見書房)で宗左近俳句大賞受賞。『芝不器男への旅』(創風社出版)。


りらんりろん
 亜桜みかり

一片の花びらもまだ手放さず
言ひ訳のごと渡すまんぢう桜時
燭台を蝋のあふれて花祭
花の雨止まぬか萬両精肉店
りらんりろん臆病窓へ花びらは
残花騒ぐや駅頭に集合す
山桜咲いて遠見(おみ)山近見山
右ききの鋏小さき汐まねき
磯遊太陽へ向く膝がしら
城置くにふさわしき島夏近し
ペンを持つ指先オランダ苺の香
けふはもうなんぢやもんぢやの花盛

2020年の東京五輪が四年後とか。開催決定時には随分先だなと思ったのに。俳句を始めたのが2001年なので、開会の頃には俳句歴が二十年目の大台に乗る。ほお……


青嵐
 中町とおと

新樹一叢掠めて地下鉄は地下へ
肋骨はひとへの帯を悦べり
羽衣ジャスミン女子に嫌はれやすい女子
食べられぬさくらんばうの赤きれい
瞬きの隙さへ惜しい虹の時
夏蝶の影のおほきく過りけり
闇を出てあをすぢあげは闇へ入る
青嵐エスパドリーユ投げ出して
く くる こよ空低く来る夏鴉
わけもなく泣いて悪いか棕櫚の花
指先の汚るるままに枇杷の昼
シャワー浴ぶあふれた分をありつたけ

1979年生まれ、千葉県在住。句集「さみしき獣」で第4回大人コン最優秀賞。今年も夏が来ました。一年でいちばん好きな季節です。


桐の花
 十亀わら

夏立ちぬ朝の黒板艶やかに
ブランコの鎖に夏の絡みだす
金色の目玉欲しがる鯉幟
泣くための目玉と思う五月来る
夏きざすベーグル焼けて夕の色
小説の帯ごと借りる桐の花
桐咲くや回転木馬の影淡し
比喩嫌う夜の甘夏割きにけり
出荷待つカーネーションの赤き群れ
母の日の歪む癖ある傘差して
不揃いの手捏ねパン焼く愛鳥日
麦秋や思えば一度きりの握手

1978年松山市出身。千葉在住。2000年「詩学」新人。2005年「俳句界賞」受賞。詩集『燃える野』。


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新 100年の旗手


読者投稿による3ヶ月連載作品集
(2016年4月号 〜 2016年6月号 3/3回目)


高さ
 海田

夏めくや地底に血汐蠢きつ
海溝の色映したる黒南風来
熱帯魚胎内記憶めく光
半夏生表土総熱量をもて
梁の見る夢として守宮
白南風の屋根を瞑想させるらし
樹冠群の高度夏至の彩度満つ
大瑠璃の稜線天の膚(はだえ)とし
熱圏の閂として虹一つ
額へと夏の大三角容れぬ

1979年生まれ。八幡浜市日土町、日土東地区出身。
この3か月の間、ありがとうございました。


凹み
 松尾千波矢

白玉の凹みを愛し黄瀬戸かな
日帰りの旅のバックへ古扇
栗の花猫と老いゆく覚悟して
はたた神過ぐるを居留守して待てる
尼様の日曜学校新茶汲む
虹立つや漕ぐリハビリの自転車
ラムネ壜鳴らし宿題ノートとぢ
宮内庁お買ひ上げなる竹簾
炎昼やカレー匂へる懺悔室
解体を待つ分校の誘蛾灯

1965生、山口県萩市在住。「今年は句集を出す」が夢でしたが、四月に句集が出来上がります。「いつき組」「山彦」所属。



2016年度第3期連載者募集中  締切8月15日(月)
応募内容 10月号に掲載できるタイトル付の10句
応募先  Eメール magazine@marukobo.com 件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
      (郵送またはFAXでも受け付けております。詳しくは編集室までお問い合わせ下さい。)


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新 100年への軌跡



2016年度 第一期
第三回


深海へ
 脇々 

青葉若葉帰って遊びに出ようか
更衣終えてあおいものが多い
夏桜飛んで帰れそうな坂を
薔薇をくわえたようなくちびるの傷
深海へ還す花のような貝
入梅やふっくらとした花を描く
六月を水族館に通い込む
梅雨晴や見上げれば飛行機の街
夏の月人は厚さの減ってゆく
峰雲に閉じ込められて一人っ子
時の日やピアノは水晶ほどの朝
甚平のじいちゃんマッサージチェアでぐう
倒木の倒木のまま万緑へ
夕焼や獣は魚をくわえたる
この夏を抱きしめるごと水を飲む

脇々
 1996年、愛媛県宇和島市生まれ。第16回 17回俳句甲子園出場。愛媛大学俳句研究会所属。


骨格
 中西亮太 

ぷちぷちと裂ける切手や梅林 
菜種梅雨ちさき陶器の深さかな
春暁を踏む靴底の擦れてゐて
春深し手を置いてみるポストかな
新聞の晒されてゐる花疲れ
てふてふや就活子の声透き通る
ささくれのすつと伸びたるめかり時
骨格の凭れてゐたる朧かな
晩春や骨格走り抜ける道
駅員の背筋伸びたる花水木
春の灯や生え乱る葉のやはらかさ
学び舎に双子ひと組花林檎
指折つて数える老や夏近し
黄金週間鏡の頬の痩せてゐて
夏めくやぷくと泡吐く神田川

中西亮太
 1992年岐阜県生まれ。東京都在住。東京大学大学院在学中。「艀」同人。



躍と悠
 都築まとむ

 脇々さんは全体に破調の句が多く、それが躍動を生んでいて夏らしい。
深海へ還す花のような貝  脇々
 「深海へ還す花のような」が美しい。最後に「貝」が出てきたところはちょっと残念。もっと意外なものを置けば詩の量が増すと思う。
倒木の倒木のまま万緑へ  脇々
 倒木が倒れたまま芽吹き、緑を増して万緑のひとつとなっていく様子と読んだ。「倒木」からズームアウトしていき森を俯瞰しているような光景。
 
 中西亮太さんは切れ字の「かな」を多用しゆったりとした春を表現している。
ぷちぷちと裂ける切手や梅林  中西亮太
 「ぷちぷちと裂ける切手」が手の感触としてリアル。下五の「梅林」で一気に光景が広がる。「ぷちぷち」はたくさんの梅の蕾の開く音のような気もしてくる。
春暁を踏む靴底の擦れてゐて  中西亮太
 「春暁を踏む」というのはどういうことだろう? この不思議な感覚に惹かれた。その「靴底が擦れてゐて」作者はどこをどう彷徨ってどこに行こうとしているのか?
 春暁はまだ春の夜の妖しさを引き摺っている。

都築まとむ
 1961年愛媛県八幡浜市生まれ。第3回選評大賞優秀賞。


破調と定型 柔らかさと硬さ
 樫の木

 脇々さんの作品には破調の句が半分ほどと(季語を比喩として使った)無季の句が少しあります。
青葉若葉帰って遊びに出ようか  脇々
 ひとり言なのか親しい誰かへの呼びかけなのか、口語の平明な語り口が「青葉若葉」の明るさと響いています。
薔薇をくわえたようなくちびるの傷  脇々
 眼前にあるのは「薔薇」ではなく「くちびるの傷」です。しかし読者には血のにじむ「くちびる」の向こう側に真っ赤な「薔薇」とその棘とが見えてきます。

 中西さんの作品はほぼ定型の句で構成されています。
骨格の凭れてゐたる朧かな  中西亮太
晩春や骨格走り抜ける道  中西亮太
 タイトル句です。初めに「骨格」という言葉から骨格標本(理科室の骸骨)を想像しましたがそれでは変です。それでこう考えました。例えば木に「凭れ」る時、頭骨や肩甲骨が木に当たるとゴリゴリと硬い感触があります。また、舗装された「道」を「走り抜ける」時には足裏から骨を伝い膝に硬い衝撃が上ってきます。ですから「骨格」は「硬さ」の感覚を伴う自分自身の事で、「朧」や「晩春」という柔らかい季語と対比をなすのだと。それとも?

樫の木
 1965年愛媛県生まれ。大分県在住の家具職人。第5回選評大賞優秀賞。


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まつやま俳句でまちづくりの会 mhm通信


第63回
文 暇人


mhm総会報告

 mhmが、若狹氏を新たな代表とする新しい体制になってから一年が経った。
 この一年、新体制による様々な活動を行ってきたが、そこにあった、ある男の活躍を忘れてはならない。
 ある男とは、前回のmhm通信の著者、蓮睡氏である。会計担当として雪花氏と共に活躍し、事務のとりまとめやFacebookへの活動報告など、多岐にわたって活躍をしてくれた。今回の総会も彼の活躍が無ければ成功しなかっただろう。
 総会をあと一週間後に控えた4月15日、総会の事前打ち合わせの会合が行われた。この日は総会用資料の原案が蓮睡氏によって用意され、それに基づいての打ち合わせが進められた。そんな蓮睡氏の努力を知ってか知らずか、資料にダメ出しを繰り返すメンバー。この時の彼は、どんな思いだっただろうか。
 そして一週間後。総会に用意された、修正が施された資料。総会の直前まで資料の作成に奮闘した蓮睡氏の姿がそこにはあった。
 
 それでは、その総会で決まった今年度の活動予定をご紹介。今年度開始の新事業はこの二つ。

大豆を育てるプロジェクト吟行会
 昨年度、本誌の誌面企画にもなった「蕎麦打ち企画」の第二弾。烏天狗さんのご協力をいただき、大豆の播種から収穫、加工(豆腐など)まで行っていく予定。

中学生向け俳句イベント企画
 mhmに限らない俳句イベントとして例年、高校生には「俳句甲子園」、大人には「まる裏俳句甲子園」や「大人のための句集を作ろう!コンテスト」などがある。小 中学生にも「夏休み句集を作ろう!コンテスト」が開催されてはいるが、キム氏によれば応募の中心は小学生とのことで、中学生向けの俳句イベントは手薄なのが実情。そこでmhmが、中学生向けイベントを新たに立案していくことになった。今年度中にプレイベントまで開催できればと思っている。

 その他、例年どおりのメイン事業として、「まる裏俳句甲子園」や「道後花見チャリティー句会ライブ」なども引き続き行う予定。また、昨年度はほとんど活動が無かった「松山城歳時記化計画データ整理」も、引き続き行っていく。

 総会は、蓮睡氏の努力もあり無事終了した。
 総会終了後には慰労会が行われ、お互いの労をねぎらいながら、今後への英気を養った。

 mhmには、蓮睡氏をはじめ新しいメンバーも加わりつつある。今後、この通信で紹介したり、また著者として登場くれることもあるだろう。
 今年度もmhmの活動に、ぜひ皆様の応援とご協力を!



 mhmでは引き続き松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終金曜日19時からマルコボ.コムにて定例会を行います。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳 朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ

No.35


Golden Week on lake
American election
Fun for everyone

ゴールデンウィークに浮かれ選挙にも

(直訳)
ゴールデンウィークの湖
アメリカ大統領選挙
全ての人が楽しむ時


 As the cherry blossoms fall from our tree, I have a new Japanese language teacher. She comes to our cabin and we speak read, and write together while the trees sway in the breeze. I am hoping for improvement.

 我が家の桜が散り、僕は新しい日本語の先生を迎えている。彼女はこの山小屋に来て、木々がそよ風に揺れる時間、僕らは会話し、読み書きをする。きっと上達しますように。

(訳:朗善)


ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博
(俳号 蛇頭)

第63話
プリーズ リクエスト  オスカー ピーターソン


弾む音地中に届き蝉生る  ころん

 オスカー・ピーターソン トリオの「プリーズ リクエスト」は、すこぶる音が良いので僕の初代オーディオチェック用アルバムとなった。最初に、あれはピーターソンがピアノ線を爪で擦った音じゃないか思うのだけれど、その余韻が消えかかる頃、おもむろにベースがリードするボサノヴァのピアノトリオが聴こえて来る。「コルコヴァード」のレイ ブラウンが弾き出す軽快なパルスに呼応して、地中の蝉の幼虫達がむずむずし始めるなんて面白い。

薔薇の日々無論ピアノは愛される    チャンヒ

 1曲目には申し訳ないが2曲目で真打登場。「酒バラ」ってのはこんな風に弾くんだ、とばかりにピーターソン。調べたわけじゃないけれど、数多のジャズピアニストがテーマからアドリブまでコピーし、演奏したんだろうな。正統派ジャズ入門セレクションだな。

底なしのブルー空弾ませる翠雨  千栄子

 出た!! 千栄子さん得意の火遁の術句。句会では煙に巻かれた選者三様の解釈がなされた。おじさん達は「ぶるー」をカタカナに変えることで一矢を報いた。

芯のあるピアニシモ梅雨はじまりぬ    時計子

 あのジャズ喫茶ベイシーの店主、菅原昭二さんが敬愛するオーディオ評論家、故岩崎千明氏といえば、1940年代半ばに開発されたJBL社の代表的な38cmコーン型ワイドレンジスピーカーユニットD130を平面バッフルに組込み、大音量でアナログレコードをドライブするというイメージがある。で、ある時オーディオファンの一人が「なぜそんな大音量でレコードを聴くのですか?」と彼に質問した。「ピアニシモがちゃんと聴きたいから」と彼は即座に答えた。この句はそんな記憶を辿らせてくれた。

ソーダ水泡粒ごとの鍵盤音  こもれび

 斯く言う僕も本格的な、という意味の初代スピーカーユニットはD130であった。100デシベルという高能率のユニットだから低パワーのアンプでも良く鳴ってくれた。6畳の部屋に大型スピーカーを据え、梅雨時のクーラーの無い部屋で窓を締め切り、トランクス一枚で芯のあるピアニシモの粒立ちを探していた頃が懐かしい。

空梅雨の弾むベースを食むピアノ  蛇頭
雄弁をくるむベースの白きシャツ  蛇頭

 ピーターソンとレイ・ブラウン、このトリオの両雄が紡ぎ出す珠玉のサウンド。これを絶妙にサポートするエド シグペンのドラムス。ライヴ録音においてもこの名人芸は決してぶれる事は無い。シカゴにおけるライヴ盤「ザ トリオ」で一聴瞭然。


Today's Turntable
『プリーズ リクエスト』1964年/verve
『ザ トリオ』1961年/verve


「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

◇次回のJAZZ句会は、6月25日(土)13時より。テーマは「ミスティ/山本剛」です。句会への参加をご希望の方は、本誌44ページの句会カレンダーを参照してください。


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ラクゴキゴ


第六十三話
文 俳句 らくさぶろう


『干物箱』
 落語の中の父と子は…… 

 遊び好きの若だんな銀之助は、あまりに遊びが過ぎて親父から外出禁止令が出されている。
 銭湯へ行くのだと嘘をつき、貸本屋の善公の家をたずねる。
 この善公は他人の物真似がとても上手いので有名。以前、宴会で銀之助の声色を真似たところ、厠から宴席に戻ってきた銀之助の親父が、「家で留守番をしろと言ってたのに、またてめえ来やがって!」と間違えて怒ったほどに似ていたという。
 この話を思い出した銀之助は自分が色街に行っている間、善公に家に居てもらって身代わりをしてもらおうと頼みに来たのだ。その礼として羽織一枚と十円もらうという条件で善公は引き受けることにした。
「お父っつぁん、帰りました。おやすみなさい。」と最初はうまくだまし二階に上がったが、下から親父が色々と話しかけてくる。「おい、今朝いただいた北海道からの干物は何の干物だった?」という話に「お魚の干物です。」と答える。「当たり前だ。青物の干物があるか。その干物はどこに入れた?」「……干物箱です」そんな箱があるものか、と次々に答えにくい話をふられ困り果てる善公。
 何かおかしいと親父は二階に上がって来て、とうとう善公だということがバレてしまう。そこへ、忘れ物をして取りに帰った銀之助。二階から聴こえる親父のどなり声を聴いて、「はーっ、善公は器用だ。親父そっくりだ。」

 落語では、母と子の噺より父と子の噺の方が圧倒的に多いです。しかも、きっちりしたまじめな親父と、遊び好きの道楽息子というパターンが多いですね。
 芝居が好き過ぎる息子をたしなめる「七段目」や、親父の葬式の方法を三人の息子に提案させる「片棒」など、様々な噺があります。中には、遊び好きな息子を叱ってばかりいる親父の方が一枚上手で、偶然にお茶屋で会ってしまう「親子茶屋」てなのもあります。
 親と子の複雑な心のやりとりを描いた噺に「子はかすがい」というのもありますが、この噺を先日、月亭方正さんの生高座で聴くことが出来ました。
 方正さんは山崎邦正という名でタレント活動をしていましたが、四十歳を過ぎて一念発起し、月亭八方師の門に入り、噺家に主軸を置く人生を選びました。
 十回目を迎えた「爆笑! 小松寄席」のスペシャルゲストとして来られた方正さん。半日ご一緒させていただきましたが、ずっと落語のことを考え、真剣に取り組む姿に感動しました。
 ともすればお涙ちょうだいになりがちな人情噺「子はかすがい」を、笑いをそこかしこに入れ、笑わせながらもグッと胸にくる演出でホロリとさせる方正落語に、満員の会場が唸りました。
 噺家 月亭方正から目が離せませんぞっ!

父の日を忘れることも父譲り


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歳時記「無季」がバイブル



第8回
文 現代俳句協会会員  日暮屋 又郎

 若いころ夢見たのはミュージシャンである。動機は不純にも女の子にもてたい一心で、中古のギターを手に入れた。しかしながら、やがて本気でのめり込んだのだが、その時はいわゆるスターともてはやされる存在ではなく、スタジオミュージシャンを目指していた。売れ続けなくても、テクニックに確かなものがあれば、とりあえずの食いっぱぐれはないのでは?と考えたからだ。そして勝負とばかりに都会へ出てみると、自分程度のギタリストなんて、掃いて捨てるほどいることを早々に気がつく。3年で結果が出なければ諦めるつもりでいたが、見切りは1年と少しでついた。
 それからというもの、アルバイトだけを転々とする空虚な日々が続いていたところ、就職難の時代にもかかわらず、親戚のコネで、誰でも知っている一部上場の企業へと就職が決まった。ただそれを喜んでいるのは、自分の周りだけで、当の本人はちっとも嬉しくもない。オンザレールの人生を退屈に過ごしていた。生きているという感じが全くないのだ。この会社で出世レースを繰り広げるつもりはない、もっと自分の身の丈にあった仕事はないものか……。
 学生の頃、美術の先生から言われた言葉が
「絵かきにだけはなるな、生涯喰えずに難儀するぞ、看板屋になれ。」
だった。ひょんなことから色、カラーという無限の可能性を持った塗料の世界を知ることとなるのだが、これがおもしろいのなんのって。ぶつけて困り果てた人の車の色を調合してドンピシャに合わせ、どこを塗ったのか判らなくするテクニックや、全面塗装に対して、メーカー色には有りえないオリジナル色の提案、作成。これなら何とか飯が食えるし、なにより自分に生きている実感が持てる。人もうらやむ大企業をやめるほどのことかと、周りの説得、大反対をふりきって辞表を提出した。
 当時の同僚、先輩たちの見せしめ的転勤やリストラの噂を聞くたび、間違いのない選択だったと思える。一度だけの人生、人に迷惑をかけないのなら自分の道は自分で決める。
 
ついに決断亀が車道へ歩き出す 竹村雀宝


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新聞記事に隠された俳句を発掘する

クロヌリハイク



作 黒田マキ


バラ色の愛の楽園8日まで。
(愛媛新聞より)

シャクナゲやピンクの札所横峰寺
(愛媛新聞より)

春に散る椅子とソファーを壁際に
(2016年5月2日 朝日新聞より)


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超初心者から中上級者まで楽しめる

100年投句計画



 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。選者は、関悦史さん、阪西敦子さん、桜井教人さんです。

 「へたうま仙人」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は大塚迷路さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。

(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)


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選者三名による 雑詠俳句計画




先選者 関悦史

 ゴールデンウィーク中は勤め人の俳人たちが時間が自由になるので、私も何やかや誘い出されることになる。「週刊俳句」ウラハイの連載でおなじみのニース在住の女性俳人、小津夜景さんが帰国したので都内で会ったのもその一つ。「どどいつ文庫」という洋書&古書店を一緒に探訪したのですが、ホームページに住所がなく、看板もなし。予約を入れるとアパートの一室に招き入れられ、本を見られるという妙に濃い品揃えの店でした。


八重桜海を遥かにして帰る  遊人
 帰省中なのか、単なる旅先なのかといったこまごまとした具体的な状況は何も書かれていないものの、それで不足ということがない句で、「八重桜」「遥か」な「海」「帰る」といった要素だけで、たっぷりとした空間も情感も含み込まれています(関心が主に遙かな海に行っているようなので、一人旅の帰路という感じはしますが)。
 「八重桜」という選択も合っているのでしょう。普通の桜では遙かな海のボリュームを受け止めきれません。


春の野へ犬山羊家鴨死んだ鳥  和音
 「春の野に」ではなく「へ」で色んな生き物が繰り出している句となります。「死んだ鳥」もただそこに落ちていたというのではなく、他の動物と一緒に出てきたようで、やや異界的な「春の野」になっています。

陶枕やシルクロードに湖の城  久我恒子
 陶枕はもともと大陸から日本に伝わってきたもののようで、それと「シルクロード」は付かず離れずの良い距離感。「湖の城」は甘くなりそうですが、夢幻性が「陶枕」のひんやりした即物性に返りまとまっています。

コーヒーとカレーパンさげ花見かな  ぴいす
 あまり気張らない、おそらく一人での花見。写生性にこだわらない江戸以前の俳諧を現代に移したようで、手応えには乏しくとも嫌味もなし。食品が簡素で、ホームレスなども連想範囲ですが、淡い気分の浮き立ちあり。

新宿は狭くなりけり修司の忌  南亭骨太
 新宿が物理的に狭くなったということではなく、寺山が街頭演劇などやっていた頃の混沌とエネルギーが失せ、妙に見通しがいいつまらない街になってしまったという感慨。「は」の冷静さがよく、「も」だったらアウト。

囀や遮断機越せぬ消防車  池田喜代持
 普通の車道なら信号を無視して急行できますが、踏切はそうはいかない。笑っている場合ではないのだがという可笑しみあり。「囀」の長閑さは別に火災発生中ではないのだとも、自然の非情さとも取れ、軽く謎を導入。


「酢リンスをちょうだい」湯殿に夏兆す  さより
麦秋を駆けて絵本の端に居る  みちる
剃り上げし巨頭ぬつくと日に灼けて  みちる
電気工金属じゃらと花宴  幸
若冲の孔雀の匂ひ白牡丹  もね
送電線のたわみ等しく燕来る  ポメロ親父
螺髪すべて右巻きといふ桜東風  越智空子
手を伸ばしベビーカーの子蝶を生む  松尾千波矢
ヘルメット白の並んで風薫る  ひでやん
大中小犬の寝息や花の下  西条の針屋さん
湯に放つ若布一瞬のきらめき  ミセスコナン


先選者 阪西敦子

 新幹線に乗って出かけて帰ってくると、東京駅か上野駅で実家のある町行きの電車を探す。東京駅と実家の間に、今住んでいる町があるからだ。と、そういえばその終点の町には実家がなくなってしまったことを思い出す。なくなってしまったことを感じるのはそんな時。


春愁小籠包のたぷんたぷん  小雪
 「飯テロ」という平和に矛盾する言葉があって、夜中に食欲を刺激する画像 映像を見せてしまうことなのだそうだけれど、これを書いている今はまさにその丑三つ。これに食欲を感じるのであれば健康なことだけれど、春愁の小籠包は物質感があるのみであって、匂いや温度は感じられない。そのこと自体が春愁の実感を再規定して我々に伝えている。


マスゲームしてる広場のチューリップ  小市
 ある時期、私の誕生日に、とある外国で必ずマスゲームが行われていた。その国の偉い人の誕生日でもあったからだ。チューリップは交配によって色形を変えられ、異常な投機の対象となった花。無邪気でいて狂気をはらむ景色だ。

ぼんやりと硝子戸の中春驟雨  かのん
 硝子戸の中がぼんやりと見える春の雨の日の明るさを言っているのだろうけれど、語順の不安定さによって、自身があるいは読む者も硝子戸の中にいるようでもある。別の空間にいて感じるのにふさわしいのが春の驟雨。

ネットなきゴールリングを花吹雪  ヤッチー
 実直な、実直過ぎる句。バスケットゴールはもとは瀟洒な庭先などにあって、子供の成長や、家族の変容によって、その枠のみが残っている。降るものが何かを通過するのは常にぞくぞくするけれど、この景の引き起こすものは大きい。

ヘルメット白の並んで風薫る  ひでやん
 白いヘルメットのもっとも主要な特徴は、色ではなくて質感ではないか。つるつるとした上を、薫風が過ぎて、まったく勢いをそがれる様子もない。その色はかえって空色や、草木の緑を映しているようだ。

百千鳥ダムへダムへと道しるべ  プリマス妙
 山に横たわるダムは、すでに工業の象徴ではなく、一つの景色として愛好家を引き付けるらしい。古くは坂道鑑賞、さらには工場夜景などの、人造景愛好の一種だろう。交錯する鳥声と案内板のベクトル。


黄水仙きのう少女の自爆テロ  藍人
麦秋を駆けて絵本の端に居る  みちる
剃り上げし巨頭ぬつくと日に灼けて  みちる
庭若葉コーヒーの香の澄みにけり  樹朋
手水舎をいっぱいにする落椿  波野
父の日や山羊の飼われし保育園  ゆりかもめ
地震の夜の闇へと砂を吐く浅蜊  樫の木
大中小犬の寝息や花の下  西条の針屋さん
人の海見下ろす花のただ静か  さざなみ真魚
湯に放つ若布一瞬のきらめき  ミセスコナン


後選者 桜井教人

 日本で一番売れているらしい「ほぼ日手帳」を愛用しているが、今回特別限定カバーを購入した。岡本太郎「太陽の塔」の裏の顔のデザインだ。同年代の方には共感していただけると思うが、大阪万博のインパクトは普通ではなかった。ゲートをくぐれば全てが異国で全てが未来であった。しかし、一番印象に残っているのは、ケチャップとマスタードをたっぷりかけたアメリカンドッグを初めて食べたことだ。あれから半世紀近くになるが、美味しいものが優先であることは未だに変わらない。

特選句
初蝶や路地にまぼろし探偵社  凡鑽
 初蝶に誘われて、ふと入った路地で見つけた探偵社。きっと不倫調査などではなく、謎の事件を解決している探偵社なのだろう。なぜだか次の日に同じ路地に入っても、この探偵社は見つからない気がする不思議なつくり。

花屑の踏まれてやわらかに唄う  夜市
 地面に落ちて踏まれるだけの桜の花弁。作者はそこから唄が聞こえたのだ。散っても尚気高さを失わない桜の描写に、やさしい死生観さえ感じる。作者独特の詩の感性を感じさせる一句。

春煙草喫うてまた穴開くパンツ  山崎ぐずみ
 季語がどうのとか、煙草を吸って何故穴が開くのかなどの議論は無用。素直に言葉とリズムを楽しみたい。のどかな春の季感で十分。
 俳句では使いにくい副詞の「また」が実に効果的。ウ音便のリズムへの影響も計算されたものだろう。挑戦的な句だ。

並選句
去る友に真実言えぬまま春夜  風更紗
水切りの音や輝く蝌蚪の紐  dolce
花曇あと十年は生きたいな  小市
ご自慢の心太持ち良き便り  レモングラス
花曇り夕べの夢も花曇り  しのたん
クロッカス君との軽い軽いキス  藍人
たんぽぽのものかたりきくさんぽみち  桂奈
惜春と相似を保つ寝姿に  海田
小糠雨菜の花畑遠くする  喜多輝女
「ばあばほら元気あげるよ」花なずな  さより
山茶花や咲きながら散るミサの道  迂叟
獣喰う獣の臭い朧月  和音
檻越しの子犬の上目粽結ふ  久我恒子
今生は人をあやめず落椿  青萄
春ゆくや話しころがす少女たち  かのん
4Bのトンボ鉛筆春たける  幸
羊蹄の一面の田や二反五畝  ぴいす
燕来る一期一会と円を描く  おせろ
桜鯛螺鈿細工の夫婦箸  ヤッチー
兄ちゃんの後泣きながら夏帽子  旧重信のタイガース
百本に百の彩り樟若葉  樹朋
空に向けこぶしの花はずっとずっと  富士山
廻らない水子供養の風車  波野
常節のこしゃくにななつ呼吸口  ほろよい
ことほぎの万の言葉を花こぶし  一走人
箱庭の丸太の橋を架けにけり  ゆりかもめ
山吹の白きを誉めて抹茶飲む  もね
入居の日まず猫の子にあいさつす  小雪
大らかに埴輪の乳房山笑う  てん点
モンタンは泣かせ笑はせ春日傘  南亭骨太
地震静まれよそこは若草の道  のり茶づけ
春月の窓を揺すりて夜半の地震  樫の木
百均の遅るる時計のどけしや  青蛙
一輛に思い出し笑いちらほらり  多満
個々の木々を一色として芽吹く山  ポメロ親父
貝寄風やさらさら星のまはる音  緑の手
雪柳風の後ろをつれてゆく  誉茂子
糸繰草キルトの家の備忘録  うに子
セロは春風闘うごと微笑むごと  越智空子
生まるるはこの水の中春の海  台所のキフジン
骨壺の蓋の緩める朧かな  内藤羊皐
登山口金剛杖と立つ五月  松ぼっくり
肉球柔らかし春眠の吾を  松尾千波矢
隣室に母居る気配朧月  彩楓
麦の穂の雨後の陽吸うて太りけり  青柘榴
唯一本筋の通るや藤の房  ひでやん
大と小天に届くやしゃぼん玉  西条の針屋さん
銅像の指先空へ聖五月  西原みどり
竹の子の香り厨に広がりぬ  カシオペア
花吹雪わっと乱れて子らの列  さざなみ真魚
山頂は切り取られゆく葱坊主  八木ふみ
清明の底現れるジャムの瓶  プリマス妙
造船の町消してゆく春霞  ミセスコナン
菜の花の花弁にまみれ春の犬  アンリルカ
風の子と遊ぶ花びら永久螺旋  まんぷく
地獄の釜の蓋強風も何のその  エノコロちゃん
春宵のエレベーターといふ孤独  池田喜代持
号砲や春光差すままゴールへと  まるにっちゃん
蛇穴を出づ石垣の道明り  人日子
雪解野や栗鼠のまなこの全方位  童夢U世
廃鉱の社宅の庭に紫木蓮  ちろりん
連休の楽し疲れや春の風邪  みちこ
桜散る母の寝息の安らけく  未貫
白かべや桜の切りはりコーヒ飲む  夏江
妻と居て妻と異なる青き踏む  鯉城
山若葉平和主義者になつてゐる  遊人
立ち止まりまたよちよちと桃の花  哲白


関悦史(せきえつし)
 1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
 1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

桜井教人(さくらいきょうと)
 1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回 29回俳壇賞候補。


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へたうま仙人


文 大塚迷路


 薫風を体全体に浴びた次の日、空気がちょっと変わったのを感じたぞ。おう、これは茅花流しぢゃ。この空気が今度は梅雨を呼ぶんぢゃな。そんな日々、みなさまいかがお過ごしかのう?
 俳句を知って梅雨が嫌いではなくなった、という人を何人も知っておるが、俳句ると嫌いなものがだんだん無くなってくるから不思議ぢゃ。
 今月も嫌いなものが一つもない句が集まったぞ。性根を据えて読んで頂けたら嬉しいぞ。
 
君といてあたまがちがちカーネーション  KIYOAKI FILM
芥子の花抱き合いたしと一人者 KIYOAKI FILM
 あたまがちがちの人も、見る角度によってそのがちがちに魅力を感じてもらえるようになるかもしれんが、何事にも限界がある。せめて君といる時だけはふにゃふにゃで居って欲しぞ。ところで、脳みそみたいな花の筆頭は鶏頭ぢゃが、カーネーションも見方によってはアフロな脳みそにも見えるのう。がちがちとふにゃふにゃを玉石混淆させたら、カーネーションの花びらのような肌触りになるかもしれんぞ。風に揺れて芥子の花同士が絡み合う様は、芥子の花という名前も相まって法を犯す淫靡な雰囲気を醸し出すのう。幻想の世界から一気に一人者という現実の世界に帰ってきたときの気分は、まさに落差社会ぢゃ。そんなことも考慮しつつ、これからは一人者の第一人者を目指していくのも一つの手ぢゃぞ。

後からけりを入れよか四月馬鹿 柊つばき
竹の子を取ってやるぞと腕まくる 柊つばき
 前からけりを入れたられっきとした犯罪ぢゃが、後ろからぢゃとどうなんかのう? しかし、四月馬鹿の日ほどセンスが試される日は無いのう。昔からの友人に俳句の神様というのが居るんぢゃが、四月馬鹿の日にはそいつと馬鹿さ加減を競ったものぢゃ。わしゃそれほど馬鹿ぢゃないからいつも後塵を拝しておったが、それはそれなりに悔しかったぞ。「こんなこと思い出したよ四月馬鹿 仙人」。里山の竹林も世の流れで荒れてきておるのう。「自然を取り戻そう」と言うだけなら簡単ぢゃが、いざ実行となるとどうしてなかなか大変ぢゃ。腕まくりして威勢よく掘って頂けたら竹林も喜ぶぞ。そうやっていくうちに自然も徐々に回復してくるというもんぢゃ。家計も何かと大変そうぢゃから、これからもどんどん山に入って、この世を逞しく生き延びて下され。

時鳥モールス信号打ちにけり 元旦
鯉のぼり三十階のベランダに 元旦
 時鳥の啼き声のカ行とタ行の組み合わせはなるほどモールス信号のようぢゃのう。夜も惜しんで、おまけに飛びながらでも啼く時鳥の生命力と、今でも短波放送から二十四時間流れているモールス信号のけたたましさと不気味さが程よい距離で絡んでおるぞ。はっきりと三十階と数えた訳では無いぢゃろうが、ずいぶんと高いところの鯉のぼりぢゃのう。マンションの資産価値も高そうぢゃ。高層の風と世間の風に飛ばされないように、しっかりと縛り付けていてほしいものぢゃ。貧乏人としてはそれくらいの感慨しか出てこんのが遺憾ぢゃ。

栓なきこと思いめぐらす春の月 森子
 「さまざまなこと思い出す桜かな 芭蕉」をどことなく彷彿とさせる句ぢゃのう。どこか妖艶な春の月の下では、万の人の万の思いが巡っておるのぢゃろうな。その中にはいくつの詮なき思いが漂っておるのかのう。栓なきことを思いめぐらすのも春の月の仕業かもしれんのう。そんな時はとことん春の月に付き合ってみるのもまた一興ぢゃ。

春うらら普天間訛りの人といる ケンケン
幸せはちょっぴりでいい春の風 ケンケン
 「春うらら」自体が季重りだという意見も広くあるが、この句の場合、その「春」と「麗」の脳天気的長閑さが、普天間訛りとの衝突を数倍増幅させておるぞ。遠く離れた地で普天間訛りの人といる、という状況だけの報告を淡々とすればするほど切羽詰まって来るぞ。まったくもって身の丈に合った幸せほど幸せなことはないのう。春の風の中に居ると、幸せとというものは案外こんなことかもしれんぞ、と思ってくるのう。人それぞれの幸せに乾杯ぢゃ。

春田打女鍬重き空仰ぐ 真歩
チューリップ球根の皮押し上げて 真歩
 冬の間に締ってしまった田を鍬で起こすのは本当に重労働ぢゃのう。この作業は終わりなく永遠に続くようで、思わずふーっと空を仰いだ時の孤独感は絶望にも似ておったのう。田がまるで孤島のようぢゃったのう。年々重くなっていく鍬がますます心を萎えさすが、なあにいつかは終わるのぢゃ。始まったら終わるのぢゃ。ファイト! 土から出てきた芽には生命の眩しさとど根性をいつも感じるのう。ましてや可憐な花をつけるであろうチューリップならなおさらぢゃ。土中に目をやり慈しむところが、凡人とはちょっと違う詩人たるスプリットぢゃ。うんうん。

桜まじ曲げわっぱの香を散らしけり みやこまる
さくら花賽銭箱に惜しみなく みやこまる
 桜まじと曲げわっぱの出会いが最高ぢゃのう。桜に触れたほんのり湿った風を曲げわっぱが吸い、ほんのりと杉の香を放つのぢゃ。ご飯の艶まで見えてくるぞ。惜しむらくは中八と、切れ字の「けり」がちょっと強すぎるとこかのう。「賽銭箱」だけで情景がインプットされるところが達者ぢゃ。満開の情景か飛花落下の情景かちょっと考えたが、満開の花の影の陰影が賽銭箱に惜しみなく降り注いでいる情景と読んだぞ。白と黒の濃淡と賽銭箱の木の質感とうっすら桜色に染まった境内が織りなす風景が圧巻ぢゃ。おっと、酔いしれてばかりではいかん。こんな香と色彩が惜しみなく溢れる句は、賽銭箱に鍵を掛けなくてもよくなるような正直な未来へ、無記入の小切手帳に乗せて追放!

 今月も追放者を出してしもうた。迂闊ぢゃった。とは言えへたうまの裾野は広大である。無限大と言い換えても良い。いつも裾野をこつこつと耕し、へたうまの名に恥じぬよう襟を正して正直に力を出し切れば、巷の垂涎の的間違いなしぢゃ。
 ぢゃが、くれぐれも油断召されるなよ。


へたうま仙人
年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き)
嫌いなもの 上手な俳句
将来の夢 大器晩成


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ


 有名人や芸能人が愛用していることで知られるスイスの高級腕時計「フランク ミュラー」が、「フランク 三浦」というパロディ商品をつくった大阪の会社を訴えた。結果は三浦の勝訴。消費者が「フランク ミュラー」と「フランク 三浦」と間違えるとは思えないし、たかだか4〜5千円のお笑い時計と高級腕時計を混同するとは思えない……との旨。あたりまえだ。パロディは文化だ。大人げない。もうフランク ミュラーなんかぜったい買ってやらない。(高すぎて買えないけど……ゲボゲボ)


六月の妻プカプカ茄子洗う 暮井戸
 六月は、素直に詠めば妻にかかるのだろう。六月といえば梅雨、陰湿……のイメージだけれど(近年はそうでもないけど)、この六月の妻は、これから訪れる本格的な夏を前に明るく屈託がないように見える……そこが明解でよいと思う。おそらく「プカプカ」という、水に浮かぶ茄子への表現が効いているからだろう。プカプカ浮かぶ茄子は、あくまでつややかで、それを洗う妻もいつしか同化して新鮮な季節の塊になっている。「声立てて喜ぶ茄子を洗ひけり(近藤酔舟)」


春惜しむやうに天津飯崩す もね
 不思議な句。天津飯を崩す時春を惜しむような感慨を抱くということは、「天津飯」を春の象徴としてとらえているということになる。そう言えば甘酢あんがたっぷりかかった玉子の小山は、春そのものと思えなくはない。少なくとも炒飯ではないな……。

晩春埋める螺子として我 海田
 「行く春」、「春惜しむ」……に通じる晩春は、人によっては「愁い」を含んでいるのかもしれない。何かを失ったり、満たされないまますぎゆく季節の虚しさが大仰にもならず姿形よくおさまっている。「埋める螺子」が上手い。

精一杯なれど何分尺取虫なので 風更紗
 尺取虫では精一杯がんばっても、なかなか前には進まないわけで。ちょっと謙遜して自分を尺取虫にたとえてしまえば、なんとか誤魔化せるかも……。そんな心のありようがよく描けていると思う。自由律にして面白味の出る句かもしれない。

レントゲンに春風いっぱいの肺ふたつ みやこまる
 肺がん検診なのか、レントゲン写真に写った自分の肺。おそらく「異常ありません」の判定に、暗いモノクロ写真に春の風が吹いたような気分なのかもしれない。「肺」ではなく、「肺ふたつ」で俄然リアリティを持った。

牛一頭動きぬ春の雲うごきぬ 鯉城
草原をながめていた記憶でしょうか。静止画像のように動かぬ一頭の牛。空にぽっかり浮かんだ雲も同じように動かない。その風景が頭の中で、いまも動かないである。「動きぬ」と「うごきぬ」の反復でよけい動きが止まっている。


長きフランスパンに翻弄され 幸
図書館の紙の匂いに埋もれる 誉茂子
四月尽できぬ約束ばかり 元旦
白シャツ白ズボン自信家となる るこう
夏近し四股踏んで待つ みやこまる
春愁にいて思出し笑いもする 多満
玻璃崩れ落つる時蛍に 恋衣
何もない空しかない 青萄
鞦韆の下の潦 ヤッチー
抱かれる猫はおじさんの歳になっている  ゆりかもめ

並選
挫折しそうな私に八重桜 ケンケン
緑色のインクの手紙来る春昼 小市
大タンスかい段もちろんおろせません  レモングラス
遠くで地震希望ヶ丘にハナミズキ 凡鑚
目を閉じても花明かり 藍人
開花宣言満開宣言もあり 喜多輝女
理科難問を制す道草春の川 さより
先輩へ書く長い手紙秋の蝶 迂叟
大きなトートバッグ抱へ独り呟く女 みちる
血の雫が苺 和音
蒲団に寝君いるとして夏 KIYOAKI FILM
胡瓜ポキン塩山へ刺し 旧重信のタイガース
目に春風を入れたぽこぽこ 一走人
地の揺れて犬の眼にとまどい 南亭骨太
蔓張れよ隠れキリシタンの里 のり茶づけ
まんまるな石を猫の墓石に 樫の木
花筏は流れ底には動かぬ花弁もある ポメロ親父
穀雨は遠く地震のにほひして 緑の手
綺羅綺羅した名前にたじろぐ うに子
畦に昼まま雀の鉄砲 山崎ぐずみ
鮮やかに春のつどいの声がする 台所のキフジン
菜の花の波に見えつ隠れつの帽子 松ぼっくり
てふてふは青空に消えて 彩楓
かぎしっぽ猫は渡り鳥の化身 青柘榴
背比べしている如く姫女苑 カシオペア
おぼろ夜は君にかけし魔法 ミセスコナン
地にへばりつきゆさぶられて生きてゆく まんぷく
山整いて五月 エノコロちゃん
いそぎ人呼びおこす春の山 人日子


きむらけんじ
 1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。


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詰め俳句計画


出題 文 マイマイ


今月の問題
次の(  )の中に共通する
夏の季語を入れて下さい。

天に虹地に(  )のよく映える
(  )の主の不在や引っかかる


 今月は後句の「引っかかる」をどう考えるかがひとつのポイント。物理的に「引っかかる」つもりで出題しましたが、心理的に気になることにも使う表現ではあります。ただ心理的な意味で用いる場合は詩として弱いような気がします。

天に虹地に水田のよく映える
水田の主の不在や引っかかる
 のり茶づけさん。前句映像が鮮やかで、後句も農村の担い手問題を提起しているようで面白い。ところが水田は季語ではないようです。級外。久我恒子さんは苗代。内容は好きですが、苗代は私の歳時記では晩春の季語です。同じく級外。もし夏に載せている歳時記がありましたらお許しください。

天に虹地に白髪太郎のよく映える
白髪太郎の主の不在や引っかかる
 人日子さん。白髪太郎とは栗の木などに発生するクスサンの幼虫でいわゆる毛虫。毛が白いので「よく映える」かもしれない。後句、「白髪太郎の主」がよくわからない。また、季語が長すぎてリズムが良くない。6級。ケンケンさんは夏野原。これもリズムにやや難がある。「夏野原」は美しいが「地」と意味がかぶっているところがある。同じく6級。レモングラスさんは雷。リズムは整ったが雷は「地」よりもむしろ「天」に属する気がする。後句の「雷の主」もわかりにくい。5級。さよりさんは玉虫。前句虹との類似性が生きている。が、後句やはりわかりにくい。4級。桂奈さんは勝馬。京都の上賀茂神社で行われる賀茂競馬を競べ馬といってその傍題にある。前句、勝った馬を誇らしく思う気持ちが良くでている。が、後句「引っかかる」をどうしたものか。3級。喜多輝女さんは夏山。後句は「主」と呼ばれるような人物例えば山小屋のご主人などが想像できて面白かった。前句も映像が描けていて良いが「夏山」は「地」の一部なので意味の飛躍がないところが不満。同じく3級。

天に虹地に夏座敷のよく映える
夏座敷の主の不在や引っかかる
 童夢U世さん。後句の意味は通っているが、前句、座敷は室内なのでこの表現には違和感がある。リズムにもやや難。5級。カシオペアさんは吹き流し。これもリズムにやや難がある。前句の内容は面白い。後句、「吹き流しの主」がわかりにくいが、その家の「主」ということか。4級。青萄さんは白日傘。これもリズムに問題あり。前句は納得。後句は白日傘の持ち主が不在なのか。同じく4級。KIYOAKI FILMさんはメーデー。前句、メーデーを俯瞰して見ているような面白さがある。後句「メーデーの主」とは労働者のこと? 同じく4級。海田さんは滝殿。いやに大掛かりな季語ですが、前句「映える」感じでしょうか? どちらかというと滝が主役なのではと思うのだが……。4級。うに子さん、台所のキフジンさんは噴水。前句は美しく決まっているが、後句やはりわかりにくい。3級。河原撫子さんは虫干し。前句、意外性があって面白い。後句確かに虫干しの途中で「主」が居なくなったら困るかも。同じく3級。みやこまるさんは花茣蓙。前句は色鮮やかでいい。後句、心理的に「引っかかる」のだと思うがやや弱いか。おなじく3級。牛後さん、杉山久子さんは羅、元旦さんは夏帯。エノコロちゃんは夏服、みちるさんは白服。いずれも着るもので、前句はそれぞれに味わいがある。後句の「引っかかる」がどれも「気になる」という意味なのか洋服掛けに「引っ掛けてある」のか、ちょっと「引っかかる」表現になってしまう。同じく3級。小市さん、ひさのさん、ヤッチーさん、プリマス妙さんはパラソル。前句映像が鮮やか。2級。藍人さん、幸さん、おせろさん、矢野リンドさん、ひでやんさん、さざなみ真魚さんは白靴。前句虹の色との対比が利いている。後句実際に木の枝か何かに引っかかっている景が想像され、これは何かの事件? 1級。

天に虹地にたけのこのよく映える
たけのこの主の不在や引っかかる
 池田喜代持さん。たけのこは見つけるのに苦労するくらいで「映える」感じではないでしょう。「生える」ならわかりますが……。後句「引っかかる」をどう読むか悩ましい。5級。一走人さんの緑陰も「映える」? 同じく5級。内藤羊皐さんは万緑。迂叟さんは新緑。前句は納得だが、後句「主」がなにを指しているのか不明。4級。ポメロ親父さんは夕顔。前句はちょっと控えめ。後句は「夕顔の主」が不明ですが、源氏物語を連想させてなまめかしい。3級。ほろよいさんは青芝。前句鮮やか。後句もはっきり持ち「主」がいますが、やはり「引っかかる」をどう読むか。同じく3級。彩楓さんは牡丹。ちろりんさんは芍薬。前句は華やかでいい。後句も育て「主」がいるのは確か。ただ、「引っかかる」が引っかかる。同じく3級。dolceさん、南亭骨太さん、まるにっちゃん、笹百合さんは紫陽花。前句虹と紫陽花の色の類似が効いて深い味わいになっている。2級。緑の手さんは白薔薇。誉茂子さん、松尾千波矢さんは薔薇園。樫の木さんは夏茱萸。薔薇も茱萸も棘があるので後句「引っかかる」に実感がある。1級。

天に虹地に釣掘のよく映える
釣掘の主の不在や引っかかる
 遊人さん。前句の意外性にはやられました。後句、釣りの針が何かに引っかかってしまい、その釣堀の主人が不在というとほほな情景を想像して可笑しかったです。よくこの季語を思いついたと思います。初段。

今月の正解
天に虹地に蜘蛛の囲のよく映える
蜘蛛の囲の主の不在や引っかかる
 恋衣さん、坊太郎さん。青柘榴さんの蜘蛛の巣も正解とします。雨上がりの水滴のついた蜘蛛の囲を思い浮かべて頂ければ、「よく映える」に納得して頂けるのでは。後句もかすかに触れる嫌な感じが句に深みを与えてくれると思う。二段。なお、ゆりかもめさんの蜘蛛の糸も内容はほぼ同じですが、リズムが合わないので3級と致します。残念!


8月号掲載分の問題(6月20日締切)
次の(  )の中に共通する
秋の季語を入れて下さい。

出張の夜の(  )の冷え切って
(  )や篠突く雨を友来たる



マイマイ
 2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回大人コン優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。大人コン落選の問題作『宇宙開闢以降』発売に向け準備中。出たらみんな買ってね。


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100年投句計画 投句方法




 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可) 俳号(なければ本名の名前のみ) 本名 電話番号 住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙人」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、6月20日(月)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがき FAXでも投句できます。

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。


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短歌の窓


短歌投稿ページ
選者 短歌誌『未来』同人 渡部光一郎


◆特選
繰り返し真青なる夢みし夫の旋毛湿りて海の匂ひす 時計子
 シュールであるが説得力のあるこの作者特有の世界感。「夫の旋毛」に「湿り」と「海の匂」いを感じ、そのあとで「真青なる夢」を想起しているが、その感じ方と発想を逆の順番で記述して作品化した。夢を見たのが一度だけでなく「繰り返し」であるところが良い。

◆並選
あしひきの山藤垂るる宵闇に羽音まづ来て花虻の見ゆ 岡田一実
 古典的な修辞を積極的に取り入れている。ここで「あしひきの」は単に「山」に掛けるというだけでなく、「垂るる藤」をふまえて用いており良い。羽音の次に虻が見える、というのは実感としてもよく分かるが、「宵闇」があるためややリアリティから遠ざかってしまったかもしれない。

地下街の噴水時に高々と淋しいからと噴きあがります 高木風華
 高々と、淋しいからと、と重ねたところにこの歌の味わいがある。結句を「…ます」で止めてあるのも効果的。「噴水時に」という表現には一考の余地あり。

花吹雪ただ歩いてる二人なりこれまでの時これからの時 彩楓
 花は人間の運命についての認識を呼びさまさずにおかない。「二人」がそれぞれ抱く思いと「花吹雪」の組み合わせががっちりと決まった。「花吹雪」が初めに来てきちんとまとまる歌はそれほど多くないと思う。

◆コメント
人生をまるごと売つたアイドルをテレビの前で少しづつ買ふ 鈴木牛後
面白い。上の句までは出るかもしれないが、この下句の、テレビの「前で」とか「少しづつ」とかいうのがなかなか思いつかない表現。うまいなあ。
筍の手間賃分の安さかな皮は嵩張るわ排水口は詰まるわ マイマイ
 筍の皮をはぐとまことにかさばる。その辺一杯になる。そのたまらん感じが存分に出ている。下二句の大幅な字あまりが効果的。ここまでの字余りで成功する例は少ないかもしれない。
天災は避けられぬものとは言へど遠く離れて気をもんでます 喜多輝女
 こうした歌は詠み手の立ち位置が問われることがあり難しいと思うが、機会詠を避けて通れないのが短歌。
花の下集える人の背後にはここになき人必ず存す 幸
 誰もがうすうす感じているものを捉えた歌。少しはっきりと言い過ぎている点が勿体ないかもしれない。
芒種より父焼く日より白南風も黒南風もただ灰の色して 海田
 いろいろな技巧が散りばめてある歌。芒種と父焼く日を並列させたのは、「芒」の中に「亡」の字があることによるものだろう。白南風と黒南風で灰色を作ったのも面白い。歌の調子も整っている。
菜の花を分けて一人で走りゆく真正面より友走り来る 一走人
 あっさりとした描写に味わいがでた。「真正面より友走り来る」は実景なのかもしれないが、どこか不思議な読後感をもたらしている。「菜の花」も効いた。
神のみぞ知ると応えし花日和花咲けば人ひと寄れば陽の 台所のキフジン
 上の句はよく解らないが、「花咲けば人ひと寄れば陽の」とH音の多用が面白い。
母の手を握りて立ちし花の下見あぐる先の光優しき 森子
 下の句における、視線の先の設定が良い。あえて特定の物を置かず、「光優しき」として適切。

 今月はみなさんからの投稿歌がかなり増え、のけぞりました。うれしい悲鳴です。俳句でできるけれど短歌では難しいことや、短歌で言いやすくって俳句では言いにくいことがあると思います。違いを楽しみながら、どうか色々な挑戦をお続け下さい。力作、実験作、何でもお待ちしています。またお元気で!


自作の短歌(2首まで)、下記までお送り下さい。締切は毎月20日。
専用フォーム http://marukobo.com/tanka/
専用Email: tanka@marukobo.com


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自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



評:菅紀子


1.
 Spring of maunten silent is stone yaw father king
原句 春山の静かな石や父の顔 KIYOAKI FILM

一行詩の効果をさほど感じないので、遠景から近景、さらに個人的心象へと視線が移動した順に三行詩にするのも一考でしょうか。

 Spring mountains
 A silent stone
 My father's face

2.
 Sunflower… sukusuku grow grow grow mykid
  原句 向日葵やすくすく育つ吾が児かな
 KIYOAKI FILM

Sunflower, steadily growing up is my buddy

 オノマトペだから英訳も単語を繰り返せば感じが出るという発想も一理ありますが、効果が出てうまくいく場合もあれば、凡庸になったり時には稚拙に見えるきらいもあります。多用しないほうが無難です。Buddyは愛する人への親しみを込めた呼び方。

3.
 a sad raindrop appears in iris
  原句 あやめ悲しい雨水を載せている 暮井戸

a raindropだと一滴の雨雫、雨水ならrain waterでしょう。
appear は目の前に現れる意なのであやめの上に水が載りません。

Iris is holding on to sad rain water

4.
 the headless goddess
 throwing her chest out
 longing for the summer
  原句 胸広げ夏へと首のなき女神 久我恒子

 throw out だと自分の胸を掴んで外に投げ捨てるかのよう。それはそれでドラマチックですが。
女神が自ら胸を肌蹴たのならopens かopeningですが、見る人が女神に呼び掛けたつもりで命令形にしてみました。

 Open up her breast
 Toward the coming summer
 A headless goddess

5.
 the rescued cats
 fall asleep blissfully
 a wind-bell rings
  原句 風鈴や保護猫すでに寝静まる 久我恒子

 保護された猫は疲れ切って眠りに落ちており辺りは静けさに包まれている、そこに風鈴の音が鳴ったのだけれども猫は起きない、と解釈して

 deep in silence
 rescued cats fallen asleep
 a wind bell rings

6.
 Don't call me aunty
 Don't spill shaved ice
  原句 おばちゃんて呼ぶなかき氷こぼすな
 片野瑞木

おばちゃんと呼ばれた人がかき氷をこぼす子供を叱っているのかな

 Don't call me aunty
 Don't spill over your shaved ice

7.
 after a party left here
 lingering scent of perfume
 like a sediment
  原句 一団の去り香水が澱のごと 片野瑞木

 Scent of perfume
 lingering like a sediment
 where a party left

8.
 Falling cherry stamens
 As if burying the spring in red
  原句 桜蘂降る春赤々と葬らる 海田

リズムもありいいと思います。別バージョンで3行にしてみますと

 Cherry stamens
 Fall burying the spring
 In red

9.
 I put an ink pot
 in the corner
 of blue rain
  原句 青梅雨の隅へ置かるるインク壺 時計子

 Fresh rainy season
 An ink pot put away
 at a corner end

 (居酒屋ホヤケンの)時計子さん、先日は外国人モニターツアー俳句バー吟行でお世話になりました。みんな寛いだ中元気に批評しあっていました。またよろしくお願いいたします。
青梅雨を表す英単語がありません。直訳ではニュアンスが伝わりませんし、一言で表現するのは難しいですね。

10.
 scarlet parapet
 birds singing in the sky
 chirp cheep cheep

  原句 欄干の紅緋の上に囀れり 実峰

Birds chirp Birds
on the scarlet colored on the scarlet parapet
parapet of a bridge cheep cheep

左の訳ではchirp は囀るという動詞のなかに囀る音感も含まれているのでcheepをはずし、右の訳では擬音語を生かして動詞をはずしました。

11.
 Cherry tree in leaf of the park has seen.. then I feel the gentle wind.
  原句 公園の葉桜とゐる風とゐる  ほろよい

 Standing by
 A cherry tree in young leaves and I
 through a gentle breeze

12.
 Cherry blossoms has become a leaf.
 However
 I'm going to walk with the gentle wind in the park.
  原句 公園の葉桜とゐる風とゐる  ほろよい

 こちらの説明的な方も一つの試みとしていいと思います。が花そのものが葉に変身するわけではないのでCherry blossoms have been replaced by young leaves.
また風が人と連れ立って歩くわけではないのでwalk along the park in a gentle wind かな。でも俳句というより散文に近いですね。語を削ぎ落とすと俳句らしくなるのでは。

13.
 At midnight
 The goldfish of Matisse
 Begins to swim
  原句 真夜中をマチスの金魚泳ぎだす 恋衣

 OKです。

14.
 first and foremost,
 I told about
 death of the goldfish
  原句 真っ先に伝えたことは金魚の死 チャンヒ

 death の前に定冠詞のtheを付け、goldfish の前にmy などをつければ(その場合theは取る)、誰の飼っている真っ先に伝えないといけない特定の金魚、ということが伝わると思います。「〜のことを話した」はtold ~ かtalked about ~

first and foremost first and foremost
I told the death of I talked about
my goldfish the death of the goldfish


15.
 the scaled plastic toy
 for use in the water
 is Barbara
  原句 水垢のある浮人形はバーバラ チャンヒ

 第2連は水中で使う玩具というより水に浮いている人形のニュアンス、また、水垢の訳にwaterが入っているので繰り返しを避けて浴槽の中に浮くとしてみました。

 the water stained doll
 floating in the bathtub
 is Barbala


菅 紀子(かんのりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通 翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学、愛媛大学非常勤講師。(Hailstone Haiku Circle blog ICEBOX Contributor)(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)

●応募内容 自作の俳句およびそれを英語俳句に
  したもの(2句まで)
●応募先  フォーム http://marukobo.com/eigo/
      Email: eigo@marukobo.com
●8月号用応募締切 6月20日(月)


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百年歳時記


夏井いつき

第37回


 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。

手に負えぬ松と言われし緑摘む  ばーりん
 「松の緑摘む」のような長い季語を「松」と「緑摘む」に分解して使うのはなかなか難しいテクニックです。が、この句は非常に自然に書かれているので、読後の違和感がありません。
 「手に負えぬ松」という措辞が巧いですね。剪定が大変難しい。ちょっと油断すると形が変になったり、枝が暴れたり、あるいは枯らせてしまったり。とはいえ、名高い「松」なんでしょうね。「手に負えぬ松」を、親方から任せてもらえた弟子でしょうか、「手に負えぬ松」に挑む親方自身かもしれませんね。「言われし」の「し」は過去の助動詞。かつて「手に負えぬ」と言われた「松」を、今この手で慈しむ思いが「緑摘む」という下五に読み取れます。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』4月28日放送分)

墓石へ西日皆健やかに居りまする  ポメロ親父
 一読、父の「墓石」かと想像しました。中七下五「皆健やかに居りまする」という言葉は、父の死後、家族を引き受ける立場となった長男(あるいは長女)の台詞ではないかと思ったのです。
 「皆健やかに居りまする」という報告だけを抜き出せば、一見明るく安寧な言葉のように受け止められますが、字余りで置かれている上五「墓石へ西日」を丁寧に読む必要があります。
 一家の支えであった父を亡くした悲しみ、父の役目を果たさねばならぬことへの不安、さまざまな残念無念が真っ赤に滲み出るかのような「西日」が「墓石」に照り映えます。呟かれた言葉が、季語「西日」によって重層的な意味を持ち始める。これが季語の力です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』5月6日放送分)

海胆にまだ流星だった頃の色  酒井おかわり
 ムラサキウニの暗紫色、バフンウニの暗緑色、ガンガゼの黒紫色。どこが流星?と思った瞬間、我が脳内に宇宙が出現しました。惑星のような形をした海胆たち、暗い蒼い海底、闇にそよぐ海藻。
 「流星」とは、宇宙塵が地球の大気中に高速で突入し発光する現象なのだそうです。となれば、「流星」のうちの幾ばくかが海に墜ち、「海胆」となったのかもしれないではないか。海底という過酷な環境で生きるために、「海胆」には小さな五つの歯が生えてきて、ガジガジと昆布をかじり始めたのかもしれないよ。その証拠に、「海胆」の殻を割って中を見てごらん。燃える「流星」の色をした卵巣が、五弁の花のように並んでいるだろ。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』4月15日掲載分)

菜種梅雨切り絵の蝶に囲まれて  矢野リンド
 「菜種梅雨」とは、菜の花が満開となる頃にしとしとと降り続く雨。長雨の手持ちぶさたに「切り絵」をしてみる。幾つもいくつも「蝶」を作ってみる。「切り絵の蝶に囲まれて」という措辞は明るい雰囲気を持ちつつ、退屈で憂鬱な気分をも表現します。
 菜の花は強い花ですから、長雨に打たれても花を保ちます。雨が止んだ日、一面の菜の花たちは太陽へ首をもたげます。そんな菜の花の光景へ最初に解き放たれるのが「切り絵の蝶」たちかもしれないと、そんな幻想も抱かせてくれます。「梅雨」とは違う「菜種梅雨」が内包する明るさ。その明るさの芯にある愁いめいた湿度。それら季語の成分を余すところなく描いている作品です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』4月29日掲載分)

二千ミリレンズに巨象かぎろへる  三重丸
 いきなり出現する数詞「二千ミリ」。それが「レンズ」であると分かった瞬間、「巨象」が映り込んでくるのですから驚きます。「レンズ」が捉えた光景は、下五「かぎろへる」という措辞によって、より迫力のある映像となって読者の脳裏に再生されていきます。
 名詞「陽炎(かげろふ かぎろひ)」の「かぎろひ」は陽炎を指すだけではなく、明け方の空の明るみも意味します。それを動詞化した「かぎろふ」の用法には賛否ありますが、日本古来の季語「陽炎」を逸脱し、サバンナの豪快な「陽炎」を切り取り得た力量と胆力に敬服します。「かぎろへる(ことよ)」という詠嘆を含んだ連体形で終わる下五もまた、ゆらゆらと揺れつづける映像を想起させます。
(NHK Eテレ『NHK俳句』4月第3週放送分)



*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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俳句の街 まつやま

俳句ポスト365



協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


金曜日優秀句
2016年4月度


「貝寄風」

潮甘くなつてきた貝寄風吹くぞ 緑の手
貝寄風や神獣鏡の青き錆 樫の木
貝寄風の名のある島へなき島へ まどん
貝寄する風に目蓋をうすく閉づ  えらいぞ、はるかちゃん!
貝寄風の波色月の死んだ色 海田
貝寄風やワスレ貝とかマクラ貝 らっこマミー
こんなのを貝寄風やとか云うてます 軌一
貝寄風やいづれ化石となるホルン 紆夜曲雪

貝寄風と記す龍涎香の欠片 めいおう星


「海胆」

どこが口どこが肛門海胆へ波 矢野リンド
静かなる混雑海胆の棘動く ぱむだ木下
メルカトル図法の海へ放つ海胆 長緒 連
水槽に海胆が沈んでゐて雨も Y音絵
海胆の香やゆふべ孕みしこと確か 妙
海胆ひとつ思考の明り灯したり ジャンク洞
ラジオより避災地のこと海胆のこと 誉茂子
海、白磁、雲丹、我が浦の三色旗 関野無一
超新星爆発 海胆に刺 みちる
さて海胆は爆発三十五秒前 JRもちずきん

海胆にまだ流星だった頃の色 酒井おかわり


「菜種梅雨」

菜種梅雨きのふはもはやうすあをし 鈴木牛後
菜種梅雨紀州は雲を産める国 可不可
菜種梅雨とこしなへなる土へ礼 クズウジュンイチ
菜種梅雨砂場の砂の量を思ふ Y音絵
スコッブに錆の花咲く菜種梅雨 和笑
菜種梅雨返却ポストの底深し ぼたんのむら
菜種梅雨鉱物標本庫に光 海田
猫に似る扉のきしみ菜種梅雨 睡花
ゆううつは胎児のかたち菜種梅雨 岩魚
ワイパーのラルゴ刻むや菜種梅雨 クラウド坂上
なたねづゆ河童ぽろぽろ生まれくる 中原久遠

菜種梅雨切り絵の蝶に囲まれて 矢野リンド


6月の兼題
公式サイト内の「俳句投稿」より作品をお寄せください。(※投句期間を過ぎますと投稿ページは次の兼題の募集に自動的に切り替わります。ご投稿はお早めに。)

投句期間 5月26日〜6月8日
「冷麦」ひやむぎ(三夏/人事)
原料は小麦粉で、作り方はうどんと同じだが、うどんより細く、また素麺よりは少し太い。茹でて冷やし、様々な薬味を添えて、濃いめの麺つゆで食べる。

投句期間 6月9日〜6月22日
「月見草」つきみそう(晩夏/植物)
アカバナ科の越年草。北アメリカ原産で、19世紀半ば日本に渡来した。夕方、細い茎に白色の四弁の花を開き、朝方には閉じる。野生化はせず園芸用として栽培されている。待宵草のことを呼ぶ場合もあるが、本来は別種である。

参考文献 『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


 「俳句ポスト365」は携帯電話からもご参加いただけます。
 「俳句ポスト365」公式Facebookページ開設中! 公式サイトに設置しておりますリンクよりお入りください。毎回の兼題のお知らせを中心にお伝えしながら、皆様の返信欄への書き込みもお待ちしております。


 募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。


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一句一遊情報局



協力: 南海放送


金曜日優秀句
平成28年4月度


常節

常節と名付けたるこそめでたけれ ひでやん
常節や青竹の箸清らなり 長緒連
常節は今岩になる途中やも 不知火
常節は哀しからずや小さき闇 更紗
凪の夜の常節の藻を食む音や 秋尾
海面のひかり常節吸うひかり てん点
常節や浜にどこにも行けぬ階 華緒
波裏に常節の姫いたような 小雪
山彦のオカリナ海彦の常節 紫水晶


常節にひらかなほどの穴七つ 甘泉




源流の石へ花屑貼り付きぬ 鯛飯
春の山すべての石に神おわす 麦仙人
花冷えの一献青き石神へ 越智空子
石積みのゆるやかな反り夕蓮 ほろよい
石垣の反りは桜を愛づるよう 小雪
石となる子猫に花のひとつでも 凡鑚
亀鳴くや石に花咲くごときなり せんとく
ひび割れし石鹸ならぶ寒き春 紅紫
結石の美しき棘万愚節 更紗
億年の石の体温桜まじ てん点
光年の遥かに石や夜の朧 もも
春の雪祈る小石とタルチョかな まどん


絵踏みせし足を河原の石責むる 天玲


雀の鉄砲

雀の鉄砲「ミ」と「ラ」の音を探すまで 抹茶モナカ
雀の鉄砲そこは白ヤギさんの畑 青萄
打球どんどん逸れて雀の鉄砲 殻嵩はるお
雀の鉄砲サトシは走るのも速い 善哉よしこ
雀の鉄砲無人機の目の無機質 マイマイ
スズメノテッポウ全隊狙え空 トポル
すずめのてっぽう引き金はいりません 鈴木牛後
雀の鉄砲狼神社まで一里 あいむ李景
野ネズミが雀の鉄砲借りにくる 樫の木


モトクロス迎え撃つ雀の鉄砲 てんきゅう


海胆

いくらでも食べよと雲胆を割り呉るる 遊人
海胆漁や眼鏡に透ける利尻富士 太郎
海胆送る小さきオホーツクとして かつたろー。
どうしろと言うんだ生きた海胆よこし 笑松
神々の降り立つ岬海胆美味し 富山の露玉
海胆八つ神の目玉のごときかな 真っ青な色紙
海胆毬や峻厳なりし父の愛 ターナー島
海胆割れば混沌友の説くニーチェ 樫の木
海胆すする人間嫌いはばからず 華緒
海胆食ってそこに捨ておけちっちゃな孤独 殻嵩はるお


渤海の百年知るかこの海胆は 恋衣


松の緑摘む

松の緑摘む寺の笠松任される さくら
暴るる芽窘むるごと緑摘む 樹朋
松の緑摘んで酸素の匂い濃し 依里
紙垂巻く神の幹松の緑摘む 富士山
緑摘む痛みのごとく脂香る あいむ李景
得爺の入院摘まれぬ松の緑かな ひなぎきょう
理髪店定休松の緑摘む 亜桜みかり
おでん屋の裏の稼業と松の緑摘む 西条の針屋さん
松の緑摘むや景観制作課 だんご虫
見遥かす二号炉松の緑摘む マイマイ
緑摘む月読の神来ぬうちに 篠原そも
松の緑摘む海神は声荒げ ターナー島


手に負えぬ松と言われし緑摘む ばーりん


投句募集中の兼題

投句締切 6月5日

アイスコーヒー
(三夏/人事)
冷やしておいたコーヒーに氷やシロップを入れたり、また、いれ立てのコーヒーを直接氷に注ぎ急激に冷やしたりして飲む。

巴旦杏
はたんきょう
(仲夏/植物)
バラ科の落葉小高木で、スモモの一種。兜形の実の皮は緑黄色。果肉は薄く黄色。アーモンドのことをいう場合もあるが、アーモンドは別種で季語ではない。


投句締切 6月19日


季語ではない兼題です。「研」という字が詠み込まれていれば、読み方 用い方は問いません。季語は当季を原則として、自由に選んでください。

ペーロン
(仲夏/人事)
中国から伝わった競漕。細長い舟を30人ほどで漕いで競う。江戸時代より、主に長崎や、熊本、沖縄などで行われている。

参考文献『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句宛先
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとにしたものです。俳句ならびに俳号が実際とは異なっている場合がありますのでご了承ください。


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鑑(み)るという冒険


〜映画篇 演劇篇〜

文&俳句 猫正宗


第四十四回
『セーラー服と機関銃〜卒業〜』&『あしたの空き地であいましょう』『月の上の夜』


 また、アイドルかと思ったでしょ? 世間もそう思ったようで『セーラー服と機関銃〜卒業〜』は興行的には厳しかったよう。それでも長年ジャンルムービーを追っかけてると、魂が「観ておくべき」と囁く時があります。
 劇中、子分を失い消沈する女子高生で目高組組長の星泉を、彼女に与するヤクザが叱咤します。「あいつら何のために死んでいったと思ってるんだ! シマを守るためだろっ!!」

 否、断じて否。
 彼らが死んでいったのは、シマのためなどではありません。ただただ、星泉を、そしてそれを演じた橋本環奈を輝かせるためです。彼らだけではない。彼女の行くところ、敵も味方も(主に)男たちは、それが彼女の花道を飾るのだと言わんばかりに殺し合い、血しぶき上げて倒れていく。
 地方から一躍全国区になった十代アイドル初主演の方法論として、明らかに間違ってます。しかし、マーケティングとか大人の事情とかを逸脱してそういう映画にならざるをえなかったであろうところがたまらなく愛おしい。
 そんな屍山血河の中、当の橋本環奈の目は戸惑わない、怯えない、揺らがない。時には(石坂浩二の金田一耕助の様に)虚無さえも湛えてみせる。もしかしたら(『モスラ2』出演の満島ひかりの様に)何かどエライものの誕生(もしくはその予兆)を目撃してしまったのかもしれません。
 正直、多々欠陥がある作品です。よい映画ではない。それでも、ある種の「自分を破裂させるような何かを求めている」「孤独な魂」には「光輝く星」(「」内、ミゲル デ ウナムーノ)になるかもしれません。
麦星や紛い物でもジャンクでも
 一方、高校生たちが健全に演じたのが、愛媛県立東高等学校演劇部 定期公演『あしたの空き地であいましょう』(作:越智優、演出:曽我部マコト、'16年3月30日、シアターねこ)「本作品は、第40回四国地区高等学校演劇研究大会において、全国高等学校演劇協議会会長賞を受賞、第10回春季全国大会出場権を獲得した作品です。」(チラシより)
 今は失われてしまっている空き地―生きるために大事な、必要な何か―から、始まる人生の物語。かなりの人数が出ているにもかかわらず誰もが生き生きとし、無駄な役がありません。しかもフレッシュ。場面転換も巧みで、しかもその転換自体が見せる構成になっています。楽しく見せながら、おそらく多くの人が抱えている不安、焦燥といったものを突くような作風。下手なプロの芝居観るくらいなら、うまい高校演劇のほうがずっと面白い。ただ、ラストは賛否が分かれるかも。私はちょっとひっかかった口。なんというか、どんな人生も何らかの形で肯定されるべきじゃないかしらとか『月の上の夜』(愛媛大学演劇部 演劇研究会合同4月公演、脚本:渡部えり、演出:吉本航平、'16年4月16日、17日、愛媛大学城北キャンパス構内大学会館3階305号室)を観ながら思ったのでした。
空き地なき僕らに月という空き地


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続 南極を詠もう!



No.1

一般研究観測担当隊員
源 泰拓(俳号 源笑)


 「100年俳句計画」の読者のみなさま、はじめまして。「南極を詠もう!」を渡辺さんから引き継いだ、源と申します。越冬隊員として主にオーロラなどの観測を担当しています。これまでに「源笑」との号で、いくつか拙句を載せていただいていますが、俳句を詠むのは小学校の授業以来、約40年ぶりです。
 昭和基地では6月には太陽が昇らなくなります。渡辺さんと過ごした夏は、ほとんど昼でしたが、これからほとんど夜、「極夜」に向かってゆきます。昭和基地の写真をご覧いただいて、読者のみなさまによる「南極吟行句」発想のきっかけになれば幸いです。
 では、よろしくお願いします。

氷海の空に融けゆく蜃気楼
 地上よりも上空の気温が高くなっているとき、光が屈折して、水平線の向こう側にある氷山が見えることがあります。これが蜃気楼で、日本では富山湾で見られるものが有名です。

オーロラに裾を呑まるる天の川
 昭和基地ではオーロラ観測のじゃまにならないように、夜は外灯を消して、窓の灯もカーテンで塞がれます。なので、星空はとてもきれいで、天の川も肉眼で見ることができます。そこにオーロラが絡んできた一枚です。

噴煙と見紛う今朝の吹雪かな
 前の日までブリザードが吹き荒れていました。朝、雪はやんでいましたが、強い風が積もったばかりの粉雪を吹き飛ばしていました。

氷海に向かひて跳ねる鯉のぼり
こいのぼり腹を抜けゆくカタバ風
 五月の空にこいのぼりが泳いでいます、というより、大陸から吹きこむ強風で跳ねまわっています。
 「カタバ風」とは、南極大陸の上で冷やされて密度が大きくなった空気が、地面を滑り降りて吹き下ろす風です。


今月の南極吟行句
希望峰 編

 源笑隊員、赤田隊員、読者の海田さんからの俳句をご紹介します。

氷海の空に融けゆく蜃気楼  源笑

 融けゆく、という言葉があるように、蜃気楼のもわもわしたした感じが写真からわかります。

南極を 肌で感じる カタバ風  赤田幸久
こいのぼり腹を抜けゆくカタバ風  源笑

 「『カタバ風』とは、南極大陸の上で冷やされて密度が大きくなった空気が、地面を滑り降りて吹き下ろす風」とのこと。下五にこの言葉を置くことで、鯉のぼりの体を抜けた風が尾をはためかせている姿がありありと伝わってきます。写真も、吹き流しも含めて勢いがあります。

噴煙と見紛う今朝の吹雪かな  同

 「前の日までブリザードが吹き荒れていました。朝、雪はやんでいましたが、強い風が積もったばかりの粉雪を吹き飛ばしていました。」だそうです。「噴煙」と比喩的に表現しているので、雪が束になって襲いかかってくる様を見せたいのだと思います。俳句で比喩表現を表す語彙は「ごとく」「ように」「似て」「ふさわしい」など、様々ありますが、「見紛う」には驚きの気持ちも含まれているのだと解釈しました。吹雪が終わった写真は対照的に静かですね。この吹雪が北海道や世界の雪国のそれとどう違うのかも興味深いです。

オーロラに裾を呑まるる天の川  同

 「昭和基地ではオーロラ観測のじゃまにならないように、夜は外灯を消して、窓の灯もカーテンで塞がれます。なので、星空はとてもきれいで、天の川も肉眼で見ることができます。そこにオーロラが絡んできた一枚です。」とのこと。
 確かにオーロラが見えるときは星が見えるでしょう。「呑まるる」と表現したことに発見が現れています。オーロラは季語か微妙なところなので、同じく季語である天の川とぶつかってしまう気もしました。これだけ美しい写真ならオーロラをメインにして天の川は「星」とか「星々」と表現することもできるかと思います。
 ちなみに、希望峰もスウェーデンでオーロラを見たことがありますが、南の方に住んでいたのでここまでくっきりとは見えませんでした。

夏隣夜明けは琥珀色の波  海田

 読者の海田さんも最後まで投句いただきありがとうございました。太陽に照らされた琥珀色の海が、隊員のみなさまの心のやすらぎの一つになっていたのでしょうか。
 連載を通して、写真と隊員のみなさんの俳句から、南極の持つ自然の奥深さに圧倒されっぱなしでした。

トウガモも 背景よければ 男前  赤田幸久

 氷山をバックに岩に立ち尽くす鴨、確かに男前です。俳句的にするなら、まず上五 中七 下五を分けずに一行で書き、説明的な「背景よければ」を「山を背にして」とか「氷山を背に」となるかと思います。

今日は来る 今日も信じて ヘリを待つ  同

 赤田隊員は、FA(フィールドアシスタント)といって、隊員の安全面を支えるのが仕事だとうかがっています。、過酷な状況の中、一心にただ待つことだけを遂行する隊員の皆さんの姿にも胸をうたれました。
 南極観測も俳句も、「自然とともに生きるということ」という根っこでつながっています。


投句募集
今回より、源 泰拓隊員(第57次日本南極地域観測隊 越冬隊)がこの連載を引き継ぎます。したがって、引き続き俳句を募集します。投句された俳句は、スウェーデンに留学した経験のある希望峰さんが紹介します。
俳句は専用の投句フォームにて受け付けます。http://marukobo.com/antarctic/ 投句締切6月3日(金)。


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100年俳句計画 掲示板




テレビ ラジオ     

NHK Eテレ『NHK俳句』
 日曜6時35分〜7時
 (再放送:水曜15時〜15時25分)
 夏井いつきが第3週選者を担当
6月19日(日)、再放送 22日(水)
 兼題 「百物語」または「幽霊」
投句締切 6月10日必着
投稿は葉書1枚に1句。選者名、兼題、俳句1句、名前、年齢、電話番号明記。
  宛先 150ー8001 NHK「NHK俳句」係
  ホームページからの応募も可
http://www4.nhk.or.jp/nhkhaiku/

NHK 総合テレビ(愛媛のみ)
「えひめ おひるのたまご」内
隔週火曜
 『みんなで挑戦! MOVIE俳句』
6月7日(火)、21日(火)11時40分〜

NHK 総合テレビ(四国のみ)
 『学生俳句チャンピオン決定戦2016』
前編:6月19日(日)13時05分〜13時48分
後編:6月26日(日)13時05分〜13時48分

TBS系列局 全国ネット
 『プレバト!!』
木曜19時〜19時49分
 夏井いつきが俳句の査定を担当

南海放送ラジオ
 『夏井いつきの一句一遊』
毎週月〜金曜10時〜10時10分
 「一句一遊情報局」のページ参照

FMラジオバリバリ
 『俳句チャンネル』
月曜17時15分〜17時30分
(再放送:火曜7時15分〜7時30分)
 投句募集兼題 
「夏木立 梅雨空」…6月5日締切
「サーフィン 七月」…6月19日締切
 WEB http://www.baribari789.com/
 mail fmbari@dokidoki.ne.jp
 FAX 0898(33)0789
 投句には本名 住所をお忘れなく!
 各兼題「天」の句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。

 各番組の放送予定は変更される場合がございます。新聞などで最新情報をご確認ください。


執筆           

松山市の俳句サイト
 『俳句ポスト365』
http://haikutown.jp/post/
 「俳句ポスト365」のページ参照

テレビ大阪俳句クラブ
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 『集まれ俳句キッズ」
  毎週日曜タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。朝日新聞松山総局(〒790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。

愛媛県《吟行ナビえひめ》句&写真
俳句選者…夏井いつき
写真選者…キム チャンヒ
 募集期間 毎月1日〜 25日頃締切
 応募先 http://www.iyokannet.jp/ginkou/
 問合せ 愛媛県観光物産課
TEL 089(912)2491


句会ライブ 講演等


伊香保俳句大会
6月2日(木)13時〜16時
 伊香保温泉 ホテル天坊(群馬県)
 夏井いつきが選者、ならびに対談に参加します。
 NHK学園「伊香保俳句大会」事務局 電話 042(572)3151

伊香保川柳大会
6月3日(金)13時〜16時
 伊香保温泉 ホテル天坊(群馬県)
 夏井いつきが対談に参加します。
 NHK学園「伊香保川柳大会」事務局 電話 042(572)3151

国際ソロプチミスト下松
 チャリティ講演会
「夏井いつきの句会ライブ」
6月4日(土)14時〜(開場13時)
 スターピアくだまつ 大ホール
(山口県)
 一般:2千円/高校生以下:千円
 国際ソロプチミスト下松事務局 電話 0833(44)2590

第15回北海道東北地区
 国立病院機構 国立療養所
 看護研究学会特別講演
6月11日(土)14時〜15時30分
 札幌国際ビル 8階 国際ホール

済美平成中等教育句会ライブ
6月17日(金)14時30分〜16時20分

第27回黒羽芭蕉の里全国俳句大会
6月26日(日)10時〜16時
 ホテル花月(栃木県)
 夏井いつきが選者をつとめます。
 参加費:500円
(昼食希望は別途1000円)
 黒羽芭蕉の里全国俳句大会事務局 電話 0287(98)9768


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魚のアブク



読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは他の投稿に添えてお寄せください。


宣言! 挑戦!

ケンケン 今年も俳句、続けます!
旧重信のタイガース いつき組となり、ようやく五年が過ぎました。初めて百年投句計画へ投句してみました。宜しくお願いいたします。

編集室 「続けてみよう」「挑戦してみよう」と湧き起こった気持ちを、ぜひ大切にしてくださいね!


大人の句集コンテスト最優秀賞大塚迷路さんへ

森子 大人コン最優秀賞おめでとうございます。
みやこまる 4月号の付録「大人のための句集を作ろう!コンテスト」最優秀作品、大塚迷路さんの『誰か居る』はとても味わい深い句集で、いっぺんに大ファンになってしまいました。いつか句集にサインをお願い致します! というわけで今回はへたうま仙人様に投句させて頂きました(笑)

編集室 4月号で付録句集となった大塚迷路さんの最優秀賞『誰か居る』と、その迷路さんが単独インタビュー(?)に応えた5月号、いかがでしたか? 次回からは名称が「百年俳句賞」と改められることも発表された当コンテストに、今度はどんな作品が寄せられるでしょうか。


投稿ありがとうございます!

松尾千波矢 今月の詰め俳句は(  )に入るものが浮かばなくて困りました(涙)
ひでやん 地面に関係する季語で主が居そうなもの、ということで「白靴」にしました。主不在ということは、脱いで置かれた靴かと。置かれた場所や状況によっては、なんでそこにあるのかとか気になると思う。

編集室 詰め俳句は、いわば俳句の連立方程式。片方には当てはまりそうな季語でも、両方の俳句に……となると絞られてくるはず!

うに子 新コーナー「短歌の窓」「E-haiku」楽しいです。俳句より短歌に似合う内容とか俳句を英語に直すとこうなるとか……眼から鱗が少しはげました。

編集室 俳句を英語にしてみたり、また短歌にも挑んでみたり、新しい表現に挑んでみると、自分の中にある詩の世界が広がるかも……。


九州での地震

エノコロちゃん 熊本 大分の方で大地震がおこっていますねー。余震がひっきりなしに続いていますね。今は、一日でも早くおさまることを祈ることだけしかできませんね……。
喜多輝女 連日、九州の地震の報道が流れております。身の縮む思いで皆様のご無事を祈っております。今、自分に出来る事をよく考え、普通に生活の出来る事の幸せを思い、日々を大切に送らねばと思っております。

編集室 まだまだ連日、地震に関する様々な報道が続いています。被災された方々に心よりお見舞いを申し上げるとともに、復興を応援してまいりましょう!


元旦 春から選者一新のNHK俳句。第3週の組長の放送見ました。やはり組長ならではの雰囲気になってましたね。添削コーナーでは、かつてあったその場での赤ペン入れの復活にニヤリ。話も弾んで司会の岸本葉子さんが時間を気にする様子にもニヤリ。投句もしていきたいと思っています。

編集室 「プレバト!!」の反響もあってか、今、空前の添削ブームが到来!? 添削から、俳句上達のコツを掴もう!


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本誌2016年4月号(通巻221号)におきまして、以下の誤りがございました。関係の方々には大変ご迷惑をおかけいたしました。お詫びの上、訂正いたします。また、お知らせが遅れてしまいましたことにつきましても、あわせてお詫び申し上げます。

特集 大人のための句集を作ろう!コンテスト
 誤 「見出し」得票10名 合計15点
 正 「見出し」得票16名 合計21点
※なお、この誤りは掲載上の誤りであり、今回の「大人のための句集を作ろう!コンテスト」の選考結果に影響するものではございません。ご了承ください。

雑詠投句計画
 誤  蒲春だねと消えていく子がおりました  dolce
 正  春だねと消えていく子がおりました   dolce

短歌の窓
 誤  薔薇園に薔薇咲く午後の日の中に薔薇の芽に出づ薔薇の芽の伸ぶ 岡田一実
 正  薔薇園に薔薇咲く午後の日の中に薔薇の芽の出づ薔薇の芽の伸ぶ 岡田一実


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鮎の友釣り




俳号 野兎(やと)

同志 蓮睡さんへ ゲスの極み三十路カラオケ(仮称)企画してくれてありがとう! 発散したくなったらまた一緒に行きましょう!

ブランクと俳句 13年前に第六回俳句甲子園に出場して以来、全く俳句に触れることもなく、合唱に明け暮れた大学時代。若狭の呼びかけで玉川俳句合宿を再開したのが3年前。10年近くのブランクに「もう俳句なんて作れないよ」と尻込みする私に「いいから一緒にやろうよ!」としつこく(本当にしつこく)誘ってくれたのも若狹。いざ作ってみると、大学や職場で俳句以外の経験値を何かしら得ていたおかげか、高校時代とは全く違う句作ができるように。日々の経験全てが俳句の栄養。なので、ブランクなんてあってないようなもの。

写真 我ら双星句会の秘密基地、玉川の千疋小屋。築19年。

次回…心友 若狹へ 遅ればせながら結婚おめでとう&俳句春合宿お疲れ。君らのジュニアが将来あの山小屋で俳句を詠むところを想像すると、胸が熱くなるぜ。


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告知




愛媛県美術館 特別展
ブータン しあわせに生きるためのヒント
開催記念
「しあわせ」俳句コンクール


 特別展「ブータン〜しあわせに生きるためのヒント〜」の愛媛開催を記念して、「しあわせ」をテーマにした俳句を募集します。
 “えひめ人”が感じる“しあわせ”を俳句の形で表現することにより、ブータンと愛媛県民の友好関係の発展に資することを目的とします。 

応募資格
 愛媛県内在住の方ならどなたでも応募できます。

募集締切
 平成28年7月15日(金)必着

募集内容
 展覧会のキーワードとなっている「しあわせ」をテーマに、自由に表現してください。また、作品は未発表のものに限ります。

応募方法
 ハガキまたは所定の応募用紙に、 俳句(お一人5句まで)、住所、氏名、電話番号、職業(学校名 学年)を記入して応募して下さい。
(応募用紙は愛媛県美術館、愛媛新聞社 県内支社、テレビ愛媛、マルコボ.コム受付に用意してあります)

選者
 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』
 編集長 キム チャンヒ

各賞
 応募いただいた皆さん全員に、特別展「ブータン〜しあわせに生きるためのヒント〜」の招待券を贈呈します。
 入賞者には、賞状及び記念品を贈呈し、作品を展覧会会期中、愛媛県美術館に掲示します。

その他
 応募された作品の著作権は、主催者に帰属します。
 作品を広報のために使用することがあり、使用に際して改変することがあります。
 応募された作品は、原則として返却しません。
 応募者の個人情報は、適正に管理します。

応募先&お問い合わせ先
 特別展「ブータン」愛媛実行委員会事務局
(愛媛新聞社読者事業部内)
 松山市大手町1丁目12の1
 電話 089(935)2355

主催
 特別展「ブータン」愛媛実行委員会(愛媛県、愛媛新聞社、テレビ愛媛、東映)




春夏秋冬(しき)笑顔
まつやま福祉
五七五

福祉をテーマにした夏の五七五募集
(第2回 7/31締切)

年4回、福祉をテーマにした五七五を募集します。
人に優しくなれるような、五七五をお待ちしています。


募集要項

応募方法
 ハガキまたはFAX、または、インターネットの応募フォームにて応募してください。
 (専用フォーム http://www.marukobo.com/egao/

賞品 「松山トリコ」製作
 大賞(松山市社協会長賞) 道後温泉湯玉トートバッグ(1点)
 優秀賞 おじゃみくっしょん エコバッグ付き(2点)
 入賞 紙の湯カードケース

発表
 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』10月号(予定)ほか

主催
 松山市社会福祉協議会
 有限会社マルコボ.コム
 (ふくし句会、ハイクライフマガジン『100年俳句計画』)




だれもが句集を出版できるかたち
句集Style

あなたの句集を20,000円〜制作します
※完全デジタル入稿 30冊制作の場合。価格は税別。

仕様 135mm×135mm、36ページ、オンデマンド印刷、表紙PP加工


2016年 第3期
8月31日(水)申し込み締切
(原稿締切 9月5日、10月末納品)
※次回募集は11月末締切予定

詳しくはhttp://marukobo.com/style/


通常の句集Styleの倍のページ数による「句集Style-W」の募集も行っております。
発行は、10月末の予定です。お気軽にご相談ください。




100年俳句計画
大豆プロジェクト始動

 昨年好評を得た蕎麦打ち企画に引き続き、今年は大豆を育てる吟行会を行います。
 大豆と言えば、枝豆に豆腐、時間を掛ければ味噌もつくれます!?
 大豆プロジェクトの第一弾として、6月5日(日)種まき体験&吟行会を行います。
 参加希望の方は、6月1日(水)までに100年俳句計画編集室(担当キム)までお申し込み下さい。

大豆プロジェクト第1弾 種まき体験&吟行会
日時:6月5日(日)午前8時30分、マルコボ.コム集合
内容:大豆の種まき&吟行
申込み締切:6月1日(水)

主催 烏天狗&ハイクライフマガジン『100年俳句計画』
協力 まつやま俳句でまちづくりの会



100年俳句計画作品集
100年の旗手
第3期連載者募集のお知らせ


 「100年の旗手」は、年齢や俳句の経歴に関わりなく、本誌にて作品集の発表が出来る場として、新たにスタートを切りました。
 そこで、毎月10句3回の連載に挑戦する方を募集します。10月号に掲載できるタイトル付きの10句の作品集を、Eメール、または郵送 FAXにて本誌編集室までお送り下さい。
 編集室にて連載者を決定し、掲載いたします。
 多数の挑戦者をお待ちしております。

募集内容 10月号に掲載できるタイトル付きの10句

応募先  
 Eメール magazine@marukobo.com
      件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
 郵送  790ー0022 愛媛県松山市永代町16ー1
     有限会社マルコボ.コム「100年の旗手」応募係 
 FAX  089ー906ー0695

2016年度第3期締切 8月20日(土)



俳都松山キャラバン2016 in 新宿 〜十七音が景色を変える〜

 俳句と俳都松山の魅力を伝えるため、俳都松山大使 夏井いつき氏によるトークと、囲碁や将棋の対局のような形式で俳句の出来を競う「俳句対局」のイベントを新宿四谷区民ホールで開催します。

日時 7月17日(日曜日)13時〜15時30分(予定) 12時30分開場

内容 第一部 講演会「十七音が景色を変える」
 俳都松山大使 夏井いつき氏が俳句と俳都松山の魅力を語ります。
 第二部 俳句対局 新宿トーナメント

場所 新宿区四谷区民ホール(東京都新宿区内藤町87)

主催者 松山市

観覧定員 450人(先着順)

入場料金 無料(入場には整理券が必要です)

申込方法 
「キャラバン新宿会場希望」と明記し、(1)郵便番号(2)住所(3)代表者氏名(4)電話番号(5)申込人数を文化 ことば課まで郵送 電話 メールのいずれかでお申し込みください。
申込専用メールアドレス
 haito@city.matsuyama.ehime.jp



会話形式でわかる近代俳句史超入門
文 構成 青木亮人
単行本化準備中!



100年俳句計画 編集会議開催
 編集会議は、2ヶ月に1度開催しています。年間購読をされている方なら、どなたでも参加できます。また、Eメールなどでのご意見もお待ちしております。

次回編集会議

日時 2016年7月15日(金)18時〜
場所 マルコボ.コム
   松山市永代町16-1
対象 本誌年間購読者
申込先 100年俳句計画編集室
E-mail magazine@marukobo.com




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編集後記


キム チャンヒ


 今月号の特集は、俳句対局第四回龍天王決定戦。松山市主催の秋の大会への出場権を懸け、白熱した試合となった。
 以前一句勝負で行った予選を、今回2句勝負にし、新たにルールも整理して行った。予選を行うこと自体、出場者に負荷を掛けてしまうが、今回はスムーズに運営でき、出場者からも観客からも高評価を得た。
 その他ルールも、回を重ねるごとに、整備されてきているが、まだ大きく手を加えたいところがある。それは俳句の審査基準。
 現在の審査基準では、俳句点の上限が8点となってしまう場合が多い。下が5点だとすれば、点数の幅は5〜8点の4ランク。一観客としては、もっとダイナミックな点数を見てみたいと、単純に思ってしまう。
 その旨を岡本亜蘇さんに相談したところ、今の審査基準自体が辛すぎるんじゃないかと仰っていた。
 俳句点を単純に水増しするようなルールは如何なものかとも思う。しかし、今回舌を巻くようなスピードであれほどのレベルの俳句を作った方々の俳句を、もっと評価できる仕組みを作りたい。俳句対局は、まだまだ面白くなる可能性が大いにある。


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次号予告



224号 7月1日発行予定

次回特集
100年俳句計画大豆プロジェクト第一弾
種まき体験&吟行会


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(住所変更の際は必ず編集室までご連絡ください)

『HAIKU LIFE 100年俳句計画』は以下の書店でもお買い求め頂けます。

愛媛県
(2015年7月号より紀伊國屋書店、ジュンク堂書店にて取扱開始)
 明屋書店 ※一部店舗のみ
 ゆらり内海(愛南町)
 原田書房(今治市)
 子規記念博物館(松山市)
 紀伊國屋書店松山店
 ジュンク堂書店松山店


HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
2016年6月号(No.223)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子

2016年6月1日発行