100年俳句計画5月号(no.222)


100年俳句計画5月号(no.222)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


表紙リレーエッセー
五月の鷹


特集1
第5回大人のための句集を作ろう!コンテスト 表彰式


特集2
第55回愛媛マラソン 吟行会体験記



好評連載


作品

百年百花
 十亀わら/中町とおと/亜桜みかり/谷さやん


新100年の旗手
 松尾千波矢/海田


新100年への軌跡
 俳句 中西亮太/脇々
 評 平山南骨/十亀わら




読み物

美術館吟行/小野更紗

mhm通信/蓮睡

Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳:朗善)

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

ラクゴキゴ/らくさぶろう

歳時記「無季」がバイブル/日暮屋又郎

ホンヤクサイホンヤク/翻田訳蔵

百年歳時記/夏井いつき

鑑(み)るという冒険/猫正宗

南極を詠もう!/渡辺浩志


読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画
  関悦史/阪西敦子/桜井教人

 へたうま仙人/大塚迷路
 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/マイマイ
 100年投句計画 投句方法

短歌の窓/渡部光一郎

百人百様E-Haiku/菅紀子

俳句ポスト365

一句一遊情報局

100年俳句計画 掲示板

魚のアブク

鮎の友釣り

告知

編集後記

次号予告





五月の鷹
此花悠

 青葉輝く陽光の五月、決まって思い出されるのが、寺山修二の「目つむりていても吾を統ぶ五月の鷹」である。
 一見、写生という基本を大きく踏み外したかにも思える句だが(何しろ目つむりているのだから)この滴るような若さ、生々しさは、真に五月そのもの。どこか性的なエネジーの迸りすら感じさせる。
 敢えて視覚をシャットダウンすることで、五月の鷹舞う自縄自縛の境地を、盲目と恍惚のうちに獲得している。
 詩の中で寺山は詠う。僕は二十歳。僕は五月に生まれた。寺山の体内で、五月の鷹は、破壊され再構築され、彼自身を突き破って大空へ舞う。その猛禽がどれほど自身に遠く羽ばたこうとも、彼と鷹は、決して逸れない血の糸で縛られ合っている。
 吾を統ぶ五月の鷹こそは、詩人が追い求めたミューズの化身なのかもしれない。


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特集1

第5回大人のための句集を作ろう!コンテスト 表彰式




第5回大人のための句集を作ろう!コンテスト
 主催 有限会社マルコボ.コム
 共催 朝日新聞社、松山市教育委員会

 4月3日、「第5回大人のための句集を作ろう!コンテスト」表彰式が松山市立子規記念博物館(以下、子規博)にて執り行われました。当日は、最優秀賞の大塚迷路さんはじめ、優秀賞の5名が出席、その栄誉を讃えられました。
 本コンテストの最大の特徴は、既存の俳句賞入賞などの実力を兼ね備えた36名の選考委員による投票制による審査。その選考委員を代表し、俳句集団「いつき組」夏井いつき組長が、各受賞作品の魅力や作家の特徴、俳句への取り組み方を語りました。また共催の子規博・竹田美喜館長より心のこもったお祝いの言葉を頂きました。
 来年、本コンテストは、「第6回百年俳句賞(大人コン)」と名称が変わります。今後も、多くの魅力的な作品と俳人がこの俳句賞より生まれてくることを願ってやみません。


最優秀賞受賞者 大塚迷路さんへの単独インタビュー!?
文責・大塚迷路

 突進レポーターの隠多美遊子です。今月号は「第五回大人のための句集を作ろう!コンテスト」に於いてみごと最優秀賞を受賞された大塚迷路さんに突進しま〜す。

隠多(以下「隠」) まずはおめでとうございます。
迷路(以下「迷」) まずはどうもありがとうございます。
隠 今回のテーマはなんだったのですか?
迷 いきなり突進してきたね。テーマはいつも「愛」だよ。それしかありません。永遠のテーマですよ。
隠 え〜〜、本当ですか?特にどの句が「愛」ですか?
迷 どの句って……特に一句一句に愛があるのではなく、さらっと読み終わった後の「愛」の余韻を楽しんでもらったらそれでいいんだよ。
隠 私には余韻など感じられませんでしたけど……。
迷 う、と、とにかく今回のテーマは「観念」です。
隠 発言がぶれてません?
迷 ぶ、ぶれてないです。移動しているだけです。
隠 で、観念と申されますと?
迷 句というのは私の場合いつもフィクションなんだよね。創作しているんだよ。ぶっちゃけ机上。だって、ノンフィクションで自分をさらけ出すのもなんだし、作品で人の人生を背負うのもなんだし、私の句を人に背負ってほしくもないし、ただの作品として独立させないと作品に気の毒でしょう? 作者の境涯がわからないと読みが深まらない句って可哀そうだろう? もちろんそんな句を頑なに否定はしないよ。でも、今回はあえて「観念」に挑戦したんだよね。
隠 その辺は良くわからないのでスルー。で、今の発言が自句自解という名の自句自慢ですね。このくらいわからないのか、と。完全に上から目線ですね。何様のつもりでしょう。
迷 迷路様のつもりだよ。
隠 一番イヤなパターン……。
迷 ん? なんか言った?
隠 別に! で、今後の迷路様の展望は?
迷 展開がいやに早いね。そうだな〜、句友に恵まれていることは確かなんだ。性格を言わなかったら稀に見る実力者揃いだよ。そのことに気付いて欲しいんだけど、もし気付いたらそれからどうするかだよね。気付かないふりをしていたらこの先楽なんだけどね。謙遜もいいけどね。もっとねぇ……おっと、これは自分自身に言っているんだよ。
隠 この辺も良くわからないのでスルー。ところで句集のあとがきで「変態します」って言っちゃいましたね?
迷 う、うう……言っちゃったよ。言いましたよ。はい言いました。
隠 よく言えましたね。
迷 毎年確実に歳は取っていくわけだし、ここらで燻ぶる狼煙をぶち上げて我が身を奮い立たせないとね。
隠 狼煙は上げた本人が一番見えないんですよね。とどのつまり「はったり」と理解してもいいですよね。本日はどうもありがとうございました。
迷 はったりとは何だ、はったりとは! おい、待てよ、待って下さい!


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特集2

第55回愛媛マラソン 吟行会体験記



レポート 蓮睡

プロローグ
 今年も愛媛マラソンが終わった。我がマラソン部からは逆ベッカム部長をはじめ、蛇頭、鉄人、まるにっちゃん、千栄子、中澤、北尾、まこ、竹久、若狹、チャンヒ、蓮睡の計12人が参加し、その全員がフィニッシュを決めた。
愛媛マラソンが終わってひと月が経とうとする頃、スマホに一本の電話が。「遅くなって申し訳ないんだけど、蓮睡君愛媛マラソンについての記事を書いてくれん?一番ゴールがドラマティックだったからねぇ」とキムさんから。「……はい」
 さて、どうやって書こうと迷っていると、ふとテレビから愛媛マラソンの特集がながれてきた。皆様々な思いを背負ってゴールしている、来年も是非多くの参加者をお待ちしていますー。のような締めくくりの映像だったような気がする。あぁ、そういえば自分も色々な思いを巡らせたな、という所から始めたいと思う。

遡ること大会の半年前
 自分が練習を始めたのは半年前くらいから。月に一度開いてくださるマラソン部の練習を中心に、最初はウォーキングからジョギングに変えて徐々に進めた。といっても、自分は熱しやすく冷めやすい性格で、毎日コツコツ練習はできないタイプだ。そんな中、マラソン部で、「練習のあとにみゅんへん(ビアホール)で打ち上げするぞ」とか、「城山公園から梅津寺の海の家まで走って、そこで飲むぞ」、とか。アルコールを飲むと太るのではという意見はともかく(笑)、「皆で練習して、その後楽しく飲む。」という目的があるから、普段練習できなくても、この時だけは参加させてもらおうという意欲が湧いた。このおかげで継続して練習できたというのは自分にとって大きかった。

空からのシャワーを浴びて走り行く 照造

 実は私蓮睡は五年前に愛媛マラソンに挑戦している。きっかけは親友のシャビに誘われたからではあったが、最初は軽い気持ちだった。練習は方法が分からず、ひとりきりで中々行なえずにいた。結局マラソンは30キロ地点でリタイア。あの噂の重苦しいバスを経験している。リタイアした地点にある歩道橋を見るたびに、あぁ。。。と自分の中にくすぶる思いがあったのを覚えている。

息切れの襷渡しや鱗雲 ころん

 今回なぜエントリーすることになったかというと、友人やマラソン部のみんなと一緒に挑戦できるのならば、あの嫌な記憶のリベンジができるのでは、という思いがあった。また、これは余談だが、愛媛マラソンのリベンジの目的としては、もう一つ、自分を変えたいという思いもあった。フルマラソンを走りきれば、なにか自分の中で突発的に変わるのではないか、という、今思えば甘い考えも持っていた。

初の長距離練習
 本番の約三か月前、愛媛マラソンの試走として城山公園から夏目のフジまでの往復約26キロをマラソン部の皆さんと走った。この時から応援の皆さんに、補給物資や荷物の移動、差し入れ・声援を頂いていた。応援に感謝しつつ、それぞれに汗を流した。平田の坂を上る練習の時、一走人さんに颯爽と抜かれた。その姿は脳裏に焼き付き、奮起する自分がいた。この頃になると、体重を落とすため、打ち上げのメニューはキノコ中心の鍋に変わることもあった。まあ、酒がなくなることはないが(笑)、また、その時に本番への傾向と対策を相談させてもらい、ほろよいさんからアドバイスを頂くこともできた。
 しかし、ここで個人的な話だが、本番約一ヶ月前に股関節を痛め、以降治療に専念するため練習は一度もできなかった(しなかった)。

ランナーや痛みを友として小春 蓮睡


2月7日当日!
 さて、本番当日。恒例となった激励会にみなさま参加くださり、組長の激励で全員気合充分! 当日おもてなしの西条の針屋さんをはじめとした方々にテーピングと針をしてもらって準備万端。出走直前には高橋尚子さんをはじめとした応援サポーターの方々のコメントで場が一気に盛り上がる。一方の自分は、走る前の緊張と寒さで簡易トイレに行くタイミングを伺っていてそれどころではない状況(笑)。それを紛らわすためにフェイスブックにスタート直前報告を上げるとみなさまから応援メッセージが。とても勇気をいただいた。

試走のランナー増えゆく寒の内 ひでやん

 けがと、それによる不安でいっぱいの中スタートを切る。自分の中の目標は、とりあえず6時間走りきる事、それだけを考えて行けるところまで挑戦しようと思っていた。

春寒のどの足もみな主人公 ほろよい

走音の雑多寒鯉押し黙る 青柘榴

 走り始めると迎えてくれたのは、汽笛をほぼ、ずーっと鳴らし続ける坊ちゃん列車、びっしりと詰まった沿道の応援の皆さん。そして見渡せば救護や医師のゼッケンをつけた人たち。マラソン中の救急車は、自分が見かけただけで2台。いざという時の事を考えると本当に心強かった。
 そして心待ちにした、あの瞬間は突然やってきたのである。それは、平和通りでのこと、後ろがざわついてきたなと思い、振り返った時に行った、Qちゃんとのハイタッチ!どんなにこれからの道のりがきつく、沿道の方とのハイタッチは難しいと考えていた自分。しかしこの時ばかりは笑顔でパチン!いやぁ、5年前にはない、いい経験をさせてもらい、元気をもらった。

十分の間に百人に声かける春 暮井戸

ランナーの息吹きらきら春光に 一走人

 元気をもらったといえば、忘れろと言われても絶対忘れられないのがいつき組のみなさんからの暖かい声援。平田の坂と夏目のフジで、マラソン部の中ではビリのわたしを往復待ち続けて下さった心優しい方々。走っている最中にいつき組の旗を見つけた瞬間、気力がわき上がり、声援に勇気をもらったのを鮮烈に覚えている。

春風や手を振る赤い応援旗 一走人

 そしてここに、重大なお詫びを宣言する。私蓮睡は、ドーピング(?)という名の痛み止めを服用した。最初は2つのトンネルを抜けた12キロ地点、怪我の痛みが出始めた頃。あらかじめ摂取すればいいという意見もあると思うが、実は痛み止めを飲むと脱水が引き起こされるリスクがある。脱水になると身体が極端に重くなり、走れなくなるそうだ。それを防ぐため、甘く感じる伯方の塩を舐めて塩分補給をし、かつ経口補水液を背負って走る。そして、栄養を補充するため、即補給できるものを重くならない程度に準備。マラソンでは如何に知識と準備が重要であるか、これを知ったのもマラソン部での飲み会もとい、練習会での情報収集のおかげだ。そう、無駄なものは何一つないのだ(物は言いようである)。
 身体がきつくなってきたのは折り返し地点付近から。思うように体が動かず、リタイアが頭をよぎり、気持ちが負けて歩いてしまった。そんな時、マラソンの応援のメッセージ、職場の子供たちへの完走宣言、そしてマラソン部・応援してくれる方々の顔が頭に浮かんで来た。くり返し思い出すうちに、気が付いたら覚悟を決めていて、口では「絶対ゴールする」と必死につぶやいていたのを覚えている。

春遠からじゴールテープの遠し ひでやん

 といっても関門の時間が1秒で、過ぎればリタイアになってしまう過酷な競技、それがマラソン。今できることはただ一つ、腕を振って前へ進むしかない(これじゃあ二つか)。ヘロヘロになりながらも、弱い心と戦いながら関門をくぐり抜けていった。復路の平田の坂を降りる途中「まだ間に合う」という声援をきっかけに、できるところまで頑張った。その結果、自分の中で諦めかけていた38・5キロの関門を閉鎖2分前通過。
 この後、なんとか自分の弱い心と戦ったご褒美がもらえた。それはなんと、先ほど平田の坂での応援者が、沿道を伴走してくれた事だ。的確にペースや水分補給の指示をくれた照造さん、「自分の気持ちしだいで、まだ完走ができる」と心を奮い立たせてくれた青柘榴さん、このお二人に背中を押され、最終関門を約20秒前にギリギリで通過。絶対にゴールするぞという強い意志で、ボロボロの身体をつなぎ止め、腕振りとストライドに最後の力を込めた。

引きずるへ叱咤歩くな冬帽子 青柘榴

関門を開く男に風光る 照造


 気が付いてみれば制限時間の23秒前に完走できていた。突き上げたはずの拳は斜め45度に。天を仰いだ空は、生暖かい涙を纏っていた。すぐに関係者の方に完走報告・応援感謝連絡を行い、そしてまわりには応援してくれた人たちが集まってくれて、喜びのあまりハグをしていた。
 自分の感想を一言、フルマラソンを完走して劇的に人生が変わるのではないか、という希望的観測は予想通りなかった。しかし、仲間で取り組むことの大切さ、たくさんの方にお世話になり、湧いた感謝の気持ち、自分の努力次第で達成できた自信、そして何かを背負ったり、誰かの為に生きていくこと。これらが人生において本当に大切なんだと改めて、そして強く思った一日であった。
 今年のマラソの反省は、一句一遊で紹介された部長のお言葉「フルマラソンを歩かない」ということと、怪我に対する痛み止め未服用(今回は3錠使用)について達成できなかった点である。よって来年はリベンジしなければならないと思っている。その決断は来年の愛媛マラソンの抽選までは保留ということでよろしくお願いしたい。
 まだまだ他にも突拍子もない応援をする方々や、珍ランナーの様子など、書ききれない事がたくさんあるが、是非生で感じて欲しいため割愛する。
 応援の皆さん、ランナーの皆さん、本当にありがとうございました。そして、お疲れ様でした。

苦しみの果ての感動木の芽風 ほろよい

料峭のゴールテープの空駆ける 蓮睡


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美術館吟行


第17回

畦地梅太郎記念美術館 らいちょうとともに&河内政義 日本画展 吟行会

文 小野更紗


 今回の吟行は宇和島市三間町「畦地梅太郎記念美術館」。畦地氏は山と山男を主題にした版画で知られる。
 三間インターチェンジを降りてすぐ、のどかな田園風景のなかの「道の駅みま」、その一角「畦地梅太郎記念美術館」へ。吹き抜けの天井、その美しい木組、木肌。明るく温かい家のようなこじんまりした空間。
 まず畦地氏の年譜と詩が目に入る。貧しい家に育った氏は1918年、16歳でふるさとを離れる。早朝見送ってくれた母、宇和島まで12キロの暗い道をとぼとぼと一緒に歩いてくれた父、そして故郷への思いにほろり。

故郷の黎明の青春浅し あねご

 氏の幸運は上京してありついた職が内閣印刷局の活版係だったこと。不要となった鉛版を使って版画を試み、やがて「棟方(志功)は刀で魅せ、畦地は色で魅せる」と評されるほどとなる。だが昭和の前半は版画が売れる時代ではなかった。畦地は生活のために木版によるマッチのレッテルや書票、木活字本など、さまざまな版の仕事をこなしていった。
 風景版画から四国巡礼の旅を経て山の版画家へ。「ルンペンの山歩き」と称してあちこちの山歩きをした畦地は噴煙をあげる浅間山に衝撃を受けたという。

新緑に煙ひと筋浅間山 ころん
春の山にこすりつけた煙でるほどのバレン 日暮屋

 エキゾチックな赤を用いたり、丸かったり直線的だったりと、デフォルメされた山の表現がなんとも個性的。畦地いわく「山が一つくらい足らなかろうが余計にあろうが、それはかまわない。全体的に山の感じがそこから出てきていればいい」。

土色の絵具ざりと塗るあたたかさ 天玲
重ね刷る山のせつなさ鳥曇 ひかる

 やがて山の風景に飽き足らなくなった畦地は、山を愛する山男の姿を描くようになる。

春光に小さく白い山男 猫正宗
寂しければとぼとぼ山を春の雲 ひかる
夏の夜のカップはいつまでも空っぽ チャンヒ
雪山にいったんは溶け山男 猫正宗

 今回の企画展テーマは「らいちょうとともに」。雷鳥を抱き、雷鳥と遊ぶ山男の家族、そのユーモラスかつ温かみのある作風に癒される。

山の鳥連れて行きたい花見かな ころん

 館内には町田市のアトリエが再現され、氏が愛用した道具や書籍類が生前そのままに置かれている。あまりに雑然としているのでどうやら片付けようとする入館者がいるらしく「整理せいとんをしようとご心配いただかないようお願いします」との注意書き。絵具や筆、刷毛、色見本、ルーペ、鉈、手紙、たくさんの蔵書。壁には牛鬼(南予地方の祭りに登場する頭のひとつ)、水筒、かんじき、ランプ。机も椅子もすべて畦地自身が作ったもの。道具類も修理しながら大切に使っていたという。

冴返る乳鉢にある山の色 日暮屋

 彫刻刀や竹べら、ペン先などとともにケースに展示されていたバレンは24歳の頃に10万円で購入したもの。半世紀以上使われたとは思えないほど綺麗な状態。大事に大事にしてきたのだなぁと心がジンとした。他の版画家が機械でやる工程もすべて自身での手作業にこだわった畦地。高齢になっても手を抜くことはなかった。「後戻りしたような仕事はでけん。仕事は常に先へ先へと進んだものじゃないといけん」。アトリエ内に流れるビデオのなかの畦地の言葉を心に刻もう。
 真面目にひたむきに歩いた畦地の人生、なんの奢りたかぶりもない清貧を生きた人の作品に心洗われたひとときであった。

胸蒼く透くまで春草になった 天玲

 同時に展示されていたのは同じく三間町出身の日本画家河内政義氏の美人画。たおやかでかつ冷たいまでの静けさを感じた。

雷のきそうな噂してそうな チャンヒ
十二単白き指さす先へ蝶 ひかる

 外は眩しいほどの春光に満ちていた。同じく三間町出身の藤部吉人氏の石のオブジェをみて解散。道の駅併設レストランのランチバイキングがまた美味しいのである。

春光を泳ぐは石の魚かな 更紗


春寒や時間を持たぬ青絵の具  あねご
アトリエに飯盒二つ春の闇 更紗


小野更紗
九州育ち。東京に行ったつもりが旦那につかまり宇和島へ。息子の俳句甲子園出場をきっかけに俳句に心つかまれ、じゃこ天句会へ。



次回美術館吟行会

愛媛県美術館所蔵品展
What's going on in the pictures? どこからそう思う? 中学生のための美術鑑賞吟行会
杉浦非水《三越呉服店 春の新柄陳列会》大正3年(1914)

5月14日10時現地集合
参加無料(入館料は別途)
申込締切:5月11日

『100年俳句計画』編集室までお申し込み下さい。
TEL 089-906-0694

吟行ナビえひめ
http://iyokannet.jp/ginkou/


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2016年度 第一期 第二回


跳躍
 十亀わら

麗かや影から影へ跳ぶ遊び
風光る子は倒立の肘伸ばす
くちばしを隠して眠る夜半の春
跳躍の薄き膝なり春の空
火の傷のむくりと花の盛りかな
ゆく春の鉄の檻なる昇降機
躑躅燃ゆ赤子の指を押し広げ
メーデーや先輩の子のサングラス
花薊泣けば済むとは思うなよ
手の甲に試す新色夏きざす
相槌を打たぬ一族薔薇の邸
フライパン底をがさりと夏立てり

1978年愛媛県松山市出身。千葉在住。2005年「俳句界賞」受賞。詩集『燃える野』。


めざめ
 中町とおと

わななきて鱗をこぼす牡丹の芽
飛花落花見失つても構はない
眉太く引き春塵の丸の内
茎立菜くくたちなどこなとお行き
さへづりの高みは末の揺るるのみ
触れられて正気にもどるアマリリス
かるがると地を捨ててゆくひばりかな
運指表窓辺にひらく夏近づく
幻聴にしるき呼び声鉄線花
いとけなき薔薇盗人を見赦しぬ
汕頭の鳳の縫取り夕薄暑
ぼうたんの玉なす蕾目覚めるな

1979年生まれ、千葉県在住。句集「さみしき獣」で第4回大人コン最優秀賞。気がつけばどこもかしこも花まみれ。呆けたように、花の句ばかり作ってしまう。


にはたづみ
 亜桜みかり

海老天の尻尾ほどなる春愁ひ
花粉症の気象予報士から苦言
亀鳴くや話合はせておきました
鍵盤へのばす小指や姫辛夷
象の仔の鼻に受けとる春にんじん
永き日のマントラ洞窟からロケ隊
佐保姫へさし出した星夕星は
龍天に昇るにはたづみへ鱗
「ばら」よりも「さくら」の手話を覚えたし
砲台の守衛は猫と山桜
桜南風栄転祝ひを述べらるる
花冷や幸福ビルに日章旗

最近一回り下の俳句に無関係な方に俳句の話をしたら、「排句」とメモされた。詠めども詠めども捨てる俳句だらけの今の私にぴったり?!「応援お願いします」


ネムの木
 谷さやん

水たまり探して歩く桜咲く
浅き春雲もネムの木も裸
球審の欠伸を見たよつばくらめ
性格良しハシブトガラスもつばくらも
手に飛礫菜の花畑の真ん中で
挿画家の鳥打帽や梨の花
銅像のボール転がる遅日かな
鳥曇り休み時間の「三四郎」
ひとシャワー浴びるまだおる海雲舟
海雲食う昨日デイゴの島の波
夜へおすボートにのせる星ひとつ
蜂がもう来ている洗面台の窓

1958年生まれ。「いつき組」所属。「船団の会」会員。『不器男百句』坪内稔典・谷さやん共編(創風社出版)。句集『逢ひに行く』(富士見書房)で宗左近俳句大賞受賞。『芝不器男への旅』(創風社出版)。


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新 100年の旗手


読者投稿による3ヶ月連載作品集
(2016年4月号 〜 2016年6月号 2/3回目)


きんぽうげ
 松尾千波矢

蟻地獄仏間にありて成長す
庫裡に引く水は翡翠去りし水
代掻のぺたぺたと父の足跡
ドラム缶浮かぶダム湖のきんぽうげ
最小の火山笠山南吹く
歳時記をめくる外縁燕の子
ジャングルジム登る手のひら夏に入る
琴線に触るるとは金雀枝に雨
多佳子忌の君になら嘘吐き通す
黒人やオープンカーに凭れ夏

1965生、山口県萩市在住。「今年は句集を出す」が夢でしたが、四月に句集が出来上がります。「いつき組」「山彦」所属。



 海田

行く春のひとびと日没色の影
二十時の夜景も抱卵期の一つ
桜蘂降り二十一時の埋められる
たゆたふFM二十二時を晩春
鈴懸の花二十三時間分の回顧
二針とも天指す正時夏立ちぬ
籐椅子へ深夜一時の嬰児へ
夜二時を拓くダイヤル星涼し
三時の喉へプレーンソーダ奔らせる
朝焼けは声なき産声日輪へ

1979年生まれ。八幡浜市日土町、日土東地区出身。
今年、地元の福岡分区の副区長まで兼任する羽目に。



2016年度第2期連載者募集中 締切5月20日(金)
 応募内容 7月号に掲載できるタイトル付の10句
 応募先  magazine@marukobo.com
 *件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
 (郵送またはFAXでも受け付けております。詳しくは編集室までお問い合わせ下さい。)


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新 100年への軌跡


2016年度 第一期
第二回


手摺の太さ
 中西亮太 

春駒や都は窓の上に窓
マンモスの牙の白くて長閑かな
制服の胸張つてゐる春障子
卒業の日は懐かしき椀の傷
春水の散らばつてゐる上野かな
春水やビルの灯火奪はれて
地下鉄の窓に吾のかほ月おぼろ
さくらちる異国の人にはにかまれ
さくらさくら露西亜文学ちるさくら
さらさらと街を抜けたる春夕焼
ゼンマイのブリキの動くめかり時
貯金箱開け放つてゐる万愚節
仲春の手摺の太さ確かめる
春闘やこぼるる水を惜しむ指
紫雲英咲く木星の輪の話から

中西亮太
 1992年岐阜県生まれ。東京都在住。東京大学大学院在学中。「艀」同人。


だあれもいない
 脇々 

晩春の烏なにを語るのか
ぶらんこを裏返す裏返す帰る
猫の子を抱えて第三講義棟
花月夜にいるお誕生日の人
持ち帰ったら春日傘になった
赤レンガ通りを抜けてバイトかな
春がゆくだあれもいないけれど家
花は葉に詩の書き出しはららら
子らのわらわら夏めいたベンチかな
はつ夏の鳥語よく聞いたら博愛
聖五月地名に包まれながら住む
夜の明けて若葉に湖の匂いして
たとえばプリンのたべかたくずしかた
なつはじめ琉球はあついだろうか
浚ったものから花束にする夏よ

脇々
 1996年、愛媛県宇和島市生まれ。第16回・17回俳句甲子園出場。愛媛大学俳句研究会所属。


評文

いてほしい
 平山南骨

地下鉄の窓に吾のかほ月おぼろ 中西亮太
 「手摺の太さ」のなかでは比較的わかりやすく、かつ共感を覚えた。この月は「吾のかほ」の後にぼーっとみえていたのである。もちろん、現実には地下鉄(の地下区間)で月が見えるわけがないのだが、この感覚は春日三球さんにも理解して頂けるのではないか。

紫雲英咲く木星の輪の話から 中西亮太
 せっかく地下鉄で月をみたのだから、「話から」咲かせて欲しくなかったのだが、他者との関わりを示したかったのかもしれない。


 「だあれもいない」。「赤レンガ通り」も「琉球」も気にはなるのだが遠い存在。「ぶらんこ」も結局は乗らずに帰る。「疎外」という言葉が頭に浮かぶ。

春がゆくだあれもいないけれど家 脇々
 行く春と無人の家。「だあれもいないけれど」という言い回しが切ない。だれかにいて欲しいのだ。

はつ夏の鳥語よく聞いたら博愛 脇々
 世間の言葉は白々しいのである。

平山南骨
 1968年生まれ。2005年より作句開始。「鷹」同人。


木星の輪と花束
 十亀わら

春水の散らばつてゐる上野かな 中西亮太
 上野公園だろうか。歩いていると春の水を発見した。散らばっているというから、あちらこちらに見つけたのだろう。「上野」という地名も、尖りすぎずのどかすぎず、うまく合っている。上野公園の正岡子規記念球場には「春風やまりを投げたき草の原」という子規の句碑があった。そういう上野の風土も生きているようだ。
紫雲英咲く木星の輪の話から 中西亮太
 紫雲英は花を輪状につける。木星の輪の話から繋がっていったのは、それ故だろうか。木星の輪から紫雲英に話が飛ぶのはお喋りの楽しさだろう。「地下鉄」の句も好きだった。タイトル句は少々もったいないか。
春がゆくだあれもいないけれど家 脇々
 脇々さんの十五句には、無季が少し、破調の句は少し多めに入り混じる。私たちは詠みたいものを自由に詠めばいいし、実際フレーズとしても一つ一つ面白いが、俳句でなくても詩や短歌でも楽しめる人なのかなとも思った。「春がゆく」の句は、誰かがいるから家になるのかと気付かされた句。
はつ夏の鳥語よく聞いたら博愛 脇々
 面白い感覚。この場合は破調が生きているかどうか迷った。
浚ったものから花束にする夏よ 脇々
 そうか、水底から浚われてきたもの、それは花になり、束ねられていくのか。美しい想像。 

十亀わら
 1978年松山生まれ。2005年俳句界賞。「俳句に一歩近づこう」(WEB誌シノドス)対談記事出ています。



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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第62回
文 蓮睡

毎年恒例の大花見大会!

 開催当日、開始時刻の8時前から荷物を運んでいると、会場には80枚のゴザと十数名のシラフの参加者が、大花見大会の開始を今かと待ち詫びていました。
 開始記念の写真を撮ると、早速理酔の兄貴がいざ酒盛り、と見せかけてからの朝風呂宣言、その後、道後温泉へ颯爽と向かわれました。
 集まったメンバーで乾杯している中、喫茶店のオープン準備に勤しむ看板娘のしんじゅさん! メニューは幅広く、子供から酔っ払いまで対応。女川の桜守の会への募金をしてくださった方に、しじみスープやコーンスープ、コーヒーや和菓子まで提供してくれました。
 そして待ちに待った組長の登場に、みなさんから歓声が湧き、場も一層盛り上がります。
 私も負けじと始動。初参加で緊張しているご夫婦には輪の中に入るように勧めたり、緊張をほぐすため写真を撮ったり、雪花さん特製の手羽先のコーラ煮を配ったりなどなど。そんな中、まる裏俳句甲子園常連の日土の皆様方から、手作りの美味しいお料理を頂きました。美味! 感謝!
 大人の皆さんの酔いが回ってきて、笑松さんがとても楽しそうに過ごしている頃、一際目立っていたのは子供たち。元気いっぱいのそうそう君は、20代のお兄さんに桜の花びらを投げつけては、身体を宙に持ち上げられとても楽しそう。一方のまこち君は会場に来るなり句会ライブの句を、五感を使って一生懸命創作。そうそう君を相手にお兄さんぶりを発揮していました。
 この二人が大活躍をした「女川の桜を復活させよう!チャリティー句会ライブ」が始まったのは13時過ぎ。まず、女川の桜について、昨年現地を訪れたキムさんから写真の説明があり、みなさん真剣に聞いてくださいました。
 句会ライブは、選ばれた10句の、句合わせでの勝ち抜け方式。そして残った5句の中から多数決で最優秀句が選ばれました。最優秀句にはキムさんの絵が送られましたが、実はキムさんも投句していたことは秘密です。
 多数決の際、マイクを持って東奔西走してくれたのが先ほどの二人。インタビューだけでは物足りず、自分でも喋っていたのは気のせい? 最後の方はヘロヘロでしたね。ご苦労様。
 句合わせの俳句を、前に立って皆さんに見せてくれていたのは、花香さんと、ケミカル君。最後は持った腕が痛かったよね。長い時間ありがとう。
 最優秀に輝いたのは、こちらの一句。
我ラハ百年ノ花守トナラム 竜胆
 私たちにふさわしい、本当に様々な想いが込められた一句が選ばれました。
 ボルテージが最高潮の中、急な春雨が降りだし、駆け足で終了。何とか東屋へ移動して、春驟雨がやって来たのはその移動後。退席する人も増える中、東屋の中も、やいのやいのと大盛り上がり。
 しかし、雨足は強くなるばかり。まだこの後に来る予定だった方には連絡を取って、やむ無く18時に継続断念。予期せぬ結末となりました。大雨の中、少ししか参加出来なかった灯馬さんをはじめ、片づけにご協力下さった皆さん、ありがとうございました。
 まだまだ書ききれないことが多くありますが、当日は天候が心配される中、県内外からたくさんの方にお越しいただき、本当にありがとうございました。段取りが悪くバタバタしてしまいましたが、改善していく所存ですので、今後ともお見守り頂けると幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
 必要経費を除いた花見の参加費と、当日皆様から頂いた募金、合わせて合計46248円。4月5日に、女川の桜守の会に送らせていただきました。皆様からの温かいご協力、本当にありがとうございました。


 mhmでは引き続き松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終金曜日19時からマルコボ.コムにて定例会を行います。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.Facebook.com/mhmhaiku)まで。


4月3日まつやま俳句でまちづくりの会主催大花見大会にて募った「女川・桜守の会」への募金は46248円となりました。
ご協力頂きました皆様、ありがとうございました。


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳 朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ

No.34


High-floor hotel room
Tiny space typhoon blowing
Cello is too big

台風とセロ吹き荒れし塔の中

(直訳)
ホテルの高階
狭い部屋で弾くには大きすぎるチェロ
台風が吹き荒れる


 It is the wrong season for a typhoon, but Osaka is very windy and wet. We are enjoying ourselves on the train to Matsuyama but I am trying to forget that I must play a concert tomorrow. Nobody feels like a hero before performing.

 台風の季節じゃないのに、大阪は暴風雨。僕らは松山行きの列車にくつろぎ、僕は明日のコンサートで弾かなきゃいけない事を忘れようと努めてる。本番前に英雄みたいな気分になれる人はいないと思うよ。


ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博
(俳号 蛇頭)

第62話 スタンダーズ  キース・ジャレット


緩やかに音の流れて花曇 ころん

 同級生Sのオーディオ・ルームは、彼の家業である木工場の2階にあり、音響一点に絞れば誠に良い環境にあった。その部屋でデンオン(現デノン)のアナログプレイヤーとアンプで駆動するスピーカーが、ヤマハの名機NS1000M。クラシック・ファンの彼であったが、ジャズ・ファンの僕に聴かせてくれたのが当時、新しい音楽ジャンルとして登場したフュージョン<~ュージックとキース・ジャレットのピアノだった。

静寂を求めて高き桐の花 時計子

 キースは71年のヨーロッパ・ツアーでECMレコードのマンフレッド・アイヒアと出会い、以降このドイツのレーベルに30年以上所属。レーベル随一の売れっ子となる。僕はその大きな要因が“The Most Beautiful Sound Next To Silence(沈黙の次に美しい音)”というECMの音作りのコンセプトにあると思っている。これはそのままキースのスタイルと同化する。いや、キースの音がECMサウンドを決定付けたのかも知れない。

月涼しピアノは雫こぼすごと 光海

 てなことで、僕の中ではキースのピアノとヤマハNS1000MとECMレコードがワンセットとなっている。光海さんの句は、正にこのセットの趣がある。

革命のスタンダーズの中に初夏 蛇頭

 ピアニストやピアノ・トリオのスタイルを語るとき、よくバド・パウエルとビル・エヴァンスが比較される。誠に大雑把ではあるが、これはとても分かりやすい。トリオだとバドやオスカー・ピーターソンに代表されるピアノが主役の形式。ソロパートは与えられるが、基本的にベースとドラムスはピアノのアシスト役で、かつてはこれが主流だった。
 そこに革命が起こる。三者が対等の立場でインタープレイ(対話)を重視する。ソロパートは存在するのだが、常に三者は語り合う。さらに対話はしばしば白熱して、互いのソロを刺激し誘発する。エヴァンスのトリオが元祖これ。キースのトリオは、さらにこれを洗練させた。

旋律の銀色めいてきざす夏 チャンヒ

 どう洗練させた、と問われればちゃんと説明できないけれど、チャンヒさんの句を手がかりに「スタンダーズ第1〜2集」や「ウィスパー・ノット」で堪能できる。

初夏をうねりのごとく泣くキース 恋衣

踊る様に演ずる様に夏の立つ 南亭骨太

薔薇の香と霊媒のごとピアニスト 暮井戸

 以上の3句は今回の句場で詠まれたキースの形態模写生句。DVDから飛び出るキースの雄叫びやスタンダードじゃなくスタンドアップする奏法は、メンバーの眼を釘付けにした。百聞は一回見たら分かる、のである。


http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

◇次回のJAZZ句会は、5月28日(土)13時より。テーマは「バリー・ハリス・アット・ザ・ジャズ・ワークショップ」です。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU』vol.1、vol2(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ



第六十二話
文 俳句 らくさぶろう


大工調べ  
〜 江戸落語ならではの立て弁 〜

 大工の与太郎が最近仕事に出て来ないのを案じた棟梁の政五郎。
 与太郎の長屋にやって来て何故かと訊ねると、大家に家賃のかわりに道具箱を持っていかれたと言う。
 四ヶ月分の一両八百文のうち、一両を与太郎に渡し、大家のところまで道具箱を取り返しに行かせたが、失礼な物言いをした与太郎に大家は怒り、残りの八百文を持ってくるまで渡せないと。与太郎が「じゃあその一両を返せ」と言うと、大家は「これは内金でとっておく」と言う。
 これを聞いた政五郎、与太郎を連れて大家のところにのりこんで行く。怒った政五郎は「ものがわからねえから丸太ん棒ってえんだ!つらぁ見やがれ!!」と次から次へと立て弁で啖呵を切り、大家をあわてさせる。そして政五郎は奉行所へ訴えることにした。
 お白州でそれぞれの言い分を聞いた奉行、与太郎に政五郎から八百文を借りて大家に払うようにと申し渡す。
 大家は喜んだが、奉行はこう続ける。「一両八百文のかたに道具箱を持って行ったのなら、質株はあるのか?」
大家「質株はない」
奉行「質株なくして他人の物を預かることは出来ぬ。不届き至極である。」
 このおさばきにより、質株を持たずに道具箱をかたにとったということで、大家は与太郎に二十日間分の大工の手間賃として二百匁払うように命じる。
奉行「政五郎、一両八百のかたに日に十匁の手間賃とは、ちと儲かったようだな」
政五郎「へえ、大工は棟梁、調べをごろうじろ(細工はりゅうりゅう、仕上げをごろうじろ)」

 この噺は、先日松山で開催された「寄席まつやま亭菊志ん百席其の八」で、古今亭菊志ん師匠が見事な一席を披露し、客席を大いに沸かせました。
 菊志ん師に続けとばかりに、最近愛媛出身の噺家が増え、皆競いあうように芸を磨いております。
 まず、柳家花ん謝さん。彼は愛媛大学在学中に柳家花緑師の落語を生で観て感動し、そのまま大学を中退して弟子入りしました。現在二ツ目(前座と真打ちの間)で、自分の落語会を企画したりCDを出したりと活動しています。先日、若年の登竜門「さがみはら落語選手権」で優勝し、注目を浴びています。
 続いて、入船亭遊京さん。彼は僕の高校の後輩(松山東高)で、京都大学に進学した優秀なお方。落語の魅力にとりつかれ、京大卒業後、入船亭扇遊師の門を叩きます。この度前座修行を終え、二ツ目になったばかり。この前僕の店を訪ねてくれました。男前で見栄えも良いので、女性ファンがつきそうです!
 次なる男は快楽亭ブラ坊さん。松山大学を卒業し、一旦就職したもののふらりと立ち寄った寄席で落語に目覚め、快楽亭ブラック師に入門します。前座から二ツ目になったばかり。四月十六日に松山市民会館小ホールで「ブラ坊ニツ目昇進落語会」を開き、たくさんのお客様でにぎわいました。私もゲストで出演させていただきましたが、お祝いのムードに満ちあふれ、とてもいい会になりましたよ。
 最後は立川志ら門さん。彼は大洲市出身で、桂文治師の弟子として噺家になりましたがとある事情で破門。しかし噺家の夢は捨て切れず、文治師にも了解を得て立川志らく師に入門し、ただいま前座として修業中の三十三才。これからが期待されます。
 ぜひ皆様、愛媛出身の江戸っ子噺家達を応援してやって下さいませ!!

棟梁の啖呵鋭く吹流し


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歳時記「無季」がバイブル



第7回

文 現代俳句協会会員  日暮屋 又郎


 いまでこそ、おおよそ庶民的な生活を送るかぎりにおいては、何不自由することもなく暮らさせていただいている。しかし、今をさかのぼること二十五年前までの独身時代はと言えば、どうしてこれほど貧乏なんだろうか? けっこう切りつめてやっているのに、いつも支払いに追われていて、周りと見比べてもあきらかに苦しい暮らし向きであった。
 世は空前のバブル景気に沸きあがっていて、ジュリアナトウキョウでは毎晩ドンぺリがポンポンと栓を抜かれ、BMWの高級外車が、六本木のカローラとまで言われていたほど狂乱の時代にあった。
 とある熱帯夜に病弱な母が、内職で得たわずかな賃金を割いて「久しぶりにジュースでも飲もう、買っておいで。」と百円玉を渡してくれ、最寄りの自販機で買ってきた。それをコップに分け合って飲んだ清涼飲料水のピーチ味の記憶が今でもなつかしい。また、お祭りの日に母が買ってくれた、一本のアサヒスーパードライ500mlのおいしかったこと。それ以来、えらべるならアサヒと決めている。
 友達付き合いにおいても、何とか周りとレベルを合わそうと貧乏をひた隠し、ちょっとした休憩でみんなが自販機でジュースを買う時などは、こっそりと近くの公園などで水道の蛇口に口を近づけていた。
 そんな貧乏暮らしが激変する出来事が起こった。いっこうに結婚する気配のない僕を見かねて、母が内緒で知人にたのんでいたお見合いだ。二人あっという間に意気投合し、あれよあれよで結婚とあい成り、信じられないほどに生活のレベルが上がった。結婚後、母が二年ほどで他界したのは痛恨の極みだが、妻は母からの最期にして最高のプレゼントだったと思い、だいじにしている。
 現在、キャリアの最終章を締めくくるため、自分なりにがんばっているつもりだが、周りの協力をなくしてはそれもままならない。コミュニケーションをとるために、時には部下と昼飯を食い、夜は飲みにも連れ歩き、それなりの出費もかかるが、財布の中身を一切、気にもかけずにそれができる事を、当然だとおごり高ぶる事だけは絶対にしない。
 同僚や部下との休憩のときは、迷うことなく自販機に、人数分のコインを投入するのだが、自分ひとりのときには水道水で上等だ。かつて、母と難儀した時代の自分を今でも忘れず、なにか一本、芯のようなものを大切に持っていたい。そう願う日暮屋課長である。

貧乏や蒼茫といふ水を飲む 田中亜美


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ホンヤクサイホンヤク


著 翻田 訳蔵


 俳句初心者、翻田訳蔵がネット上の翻訳ソフトを使って名句を翻訳、再翻訳し、そこからインスパイアされた(パクッた)句を発表していこうという馬鹿馬鹿しくも実験的で図々しいコラムです。

 今回の俳句
 やれ打つな蝿が手をすり足をする 一茶 

 先月号から自作の俳句を英語俳句にしたものの連載が始まっていましたね。自作の英訳に挑戦されるみなさまもぜひ、ネット上の翻訳ソフトで翻訳、再翻訳してみてください。そこから何か生まれるかもしれませんよ。

 ではさっそく、Google翻訳(日→英)から

Fly to shuffle the hand Do not do it beat

 再翻訳(英→日)

それは打つんしないでください手をシャッフルするフライ

 「打つん」? どこかの方言でしょうか? 確かに「手をシャッフルするフライ」はかなり貴重ですから大切にしましょう。

 続いて、エキサイト翻訳(日→英)

It can be done and don't strike it, a fly, a hand, I shuffle.

 再翻訳(英→日)

それはされえて、それを打ってはならない。飛行、手、私はまぜる。

 「されえて」という何かを打ってはならないという事でしょうか?

 最後に、Yahoo!翻訳(日→英)

Do it, and do not beat, and a fly does a shuffle by a hand

 再翻訳(英→日)

それをしてください、そして、打たないでください、そして、ハエは手によってシャッフルをします

 とにかく、打ってはダメなようです。
「打つ」と「シャッフル」から「賭博」をイメージしてしまいますが……。

 それでは、この3つを受けて一句。


蝿打つな打てば大変なことが起きる 翻田訳蔵


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超初心者から中上級者まで楽しめる

100年投句計画



 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。選者は、関悦史さん、阪西敦子さん、桜井教人さんです。

 「へたうま仙人」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は大塚迷路さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)


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選者三名による 雑詠俳句計画




先選者 桜井教人

 この春の人事異動で職場が他市へ移動した。職務内容は基本的に同じなのだが、とにかくシステムが異なる。たくさんの新しいやり方を次々と記憶していかなければならない。何だかパソコンのデータ上書きのような気がしてきた。ただパソコンと異なるのは、前のデータが上手く消えず、新しいデータとしばらくの間混在することだ。などと考えること自体、時代が変わったのだろう。とても便利なようで何だか難しい時代だ。しかし通勤時間が5分になったことは単純にありがたい。




犇めき立つ菜花北土手までくるむ 青柳
 毎年のことながら、菜の花の生命力には驚かされる。丘の斜面、河川、畑の隙間が鮮やかな黄色で埋め尽くされる。その光景を表現するには、複数の動詞に加え複合動詞まで使わざるを得なかったことに共感できる。特に「北土手」の表現により、河川或いは池の規模まで推し量ることができ、更に動きを加えるという働きが生まれた。上五の字余りもその効果の意図が明確だ。最後の「くるむ」は単に漢字にしたときの読みの問題だけでなく、句全体を柔らかく収束させる働きももつ。




研ぎ水の温むや母に電話来る 風更紗
 米を研いでいるのは作者、電話が来たのは母。その二人の距離感と季語との調和がとてもよい。母に誰から電話が来たのか、どんな話だったのかまで想像できる。この後の食卓もきっと温かいものだったのだろう。

遠霞とつかかりなきものに海 遊人
 海の向こうをぼんやりとおおっている霞。その海を見て「とっかかりがない」と感じる作者。その作者の心中は遠霞のように想像し切れず、つかみどころがない。抽象的なようで景が見える句である。

御落胤てふ開祖なり余花の寺 松尾千波矢
 季語が余花であるから、御落胤という言葉が確かになる。立夏を過ぎてなお花を残す境内。葉桜の生命力と、余花の儚さがこの寺の歴史を物語っている。御落胤説に永く支えられたであろうこの寺の桜を私も見てみたい。

カレー屋の出窓すみれとまもるくん 明日嘉
 「まもるくん」とは子どもの安全を守るために作られた愛媛県警のキャラクターである。
 そのステッカーが貼られたカレー屋なのだろう。昔から地元の人に愛されたカレーの味とご主人。季語のすみれはさりげないが適切。

亀鳴くや腋に鼻腔をひらくツボ プリマス妙
 この句を読んで、どこだろう、押してみたいと思うのは私だけではないだろう。取り合わせとして非常に距離感が良い句であるが、表記においても漢字、平仮名、カタカナが計算されている。




自転車の僧戻り来る蝶の昼 さより
とらえどこない人といて鶯餅 幸
駐車場空けば埋まる日花の昼 和音
春泥へ一目散に追う母も 波野
春の山窯出し市の便り添え 小雪
さえずりの色画布へ足し完成す のり茶づけ
馬鈴薯を植う北欧の王の錫 緑の手
梅を見て梅梅目白梅雀 さざなみ真魚
山笑ふ紙漉き村の水車 彩楓
朧月出船の汽笛たっぷりと 八木ふみ



先選者 関悦史

 花粉症のさかりもぼちぼち過ぎつつありますが、代わりに今度は「春眠」という大敵が襲ってきました。もともと睡眠障害で始終夜中に起きているからだいたいいつも眠いのではありますが、道端で倒れて寝入りそうなレベルで眠い。今年は句集と評論集をまとめる予定だったのに、いったいいつになることやらと。書いた原稿だけはやたらに溜まっているので、質を問わずに製本したら何冊分にもなるのですが、選抜・編集作業が……。




落ちて来てそこら明るし蝶の翅 人日子

 落ちてきたのは蝶ではなく「蝶の翅」なので、蝶はおそらく死んでいる。不意に意外なものが視野に介入し、それによって世界が一変してしまった場面を、「そこら明るし」という気取らず、過不足のない(つまり思い入れが先走っていない)言い方で適切に句にしています。「落ちて来て」と始まった動きを追うと「蝶の翅」という着地した物件に収まる句の姿も決まっていて、死骸の一部により世界が華やぐという逆説含みの内容も高雅。




自転車の僧戻り来る蝶の昼 さより
 僧がバイクや自転車に乗っている句はわりとよくあるのですが、変なものが通りすぎただけになっていることが多い中で、戻ってきたことと「蝶の昼」で完結した世界ができ、「自転車」の違和感も生きることに。

薔薇の芽のさ緑ゆるみなき朝 てん点
 いつ咲くかと思いながら毎朝薔薇の芽に注意を払っている心情が想像できます。「まだ咲き始めない」ではなく「ゆるみなき」という把握で句自体も引き締まり、薔薇の芽を中心に清冽な「朝」となっています。

かたまりて老人遊ぶはこべかな ゆりかもめ
 「かたまりて」が「老人」と「はこべ」どちらにかかるとも取れてしまいますが、直結している「老人」たちのことと取ります。あまり動きのない緩やかな「遊び」で「かな」止めも効き、天国的な安息感あり。

蛇穴を出て生物部に捕まる 越智空子
 蛇が穴を出たら何か思いもかけない物や事態にぶつかるというのはこの季語でよく見る作り方ですが、「生物部に捕まる」は過剰な虚飾もなく、面白さとあわれさあり。中高生らしき生物部の心の弾みもあって愉快な句。

東風よ吹け合格絵馬を打ち鳴らせ  ミセスコナン
 俳句の語調としては強過ぎの感もないではなく、天神様=失脚した道真の「東風」と「合格絵馬」は意味で結び付いていますが、「打ち鳴らせ」で不意に沢山下がった絵馬の質感に着地し、物の手応えが出ました。




ラフティングしたき雪解の三途川 藍人
我が名忘れし妻を訪ふ冬日向 迂叟
黄砂ふる老人多きニュータウン 小市
昭和より平成遅日実母散 青萄
二杯目の味の濃くなる浅蜊汁 みちる
人目を避ける恋猫の肘に傷 一走人
槍鉋の痕ざらざらと春の寺 越智空子
川光る窓や二月のクラス会 松ぼっくり
春愁をこねくりまわす洗濯機 青柳
たましひの召さるる形白木蓮 プリマス妙



後選者 阪西敦子

 五月連休をめどにと考えていたことが、何にも進まないまま、連休の浮かれた気分だけが迫ってきて恐怖だ。迫ってくるのは、何のことはなく時間を(楽しく)過ごすからで、例えば愛媛の酒蔵さんがそこのお酒をもって東京に来たから来るかと問われればもちろんゆく。その機会の貴重さもあるけれど、その方が次にその地を訪ねるときがうれしいから。連休が終わればもう夏だ。


特選句

草を食む愛犬の尻のどかなり ミセスコナン

 犬にとって草を食べることが、ヘルシーなのかどうかはわからないけれど、もっとおいしいものも与えられているだろうに、目の前の草に執心している機嫌のよい犬。その喜びは尻にもあふれている。春の嬉しさは犬にも人にも。

空を指す蕾紅梅ママの声 未貫

 目にとまった空を指す蕾は紅梅のものらしい。色からか札からか、それを知った作者もまた空を見ている。空への心に割って入るのはママの声。句も季節も、出来上がる寸前の強さというものがあることを思わせられる。

窓からの風は緑に暗き間も 台所のキフジン

 木々に吹く風を感じるのは、昼間の事が多い。その光に目をとられるからだろう。しかし夜や早朝であっても、風が吹けば木々は葉を揺らし、香り立つ。光の少ない時分こその、葉の音、香り、そして色を、驚きとともに描く果敢。


並選句

夏立ちて内耳の気密やや増しぬ 海田
淡雪やポストはけふもあかいまま 出楽久眞
ワンアウトスクイズサイン春の塵 dolce
さくらさくら長長と喪のクラクション 凡鑽
子供の日すこし歯がゆい声がわり レモングラス
日陰ほど立ち込めたるや沈丁花 みやこまる
黒濡れたアスファルトかな雨水来る 富士山
閏日のひとつあまった桜餅 多満
北開くゲームアプリを消去せよ ヤッチー
花茣蓙に猫の香箱ほぐしけり 久我恒子
霾や互いの不調零す午後 かのん
卯波たつ人魚の声は失せしまま うに子
うりずんやますます暮れてゆく浜辺 夜市
新玉葱をザクと切り込む春カレー 南亭骨太
日柱へ吸ひ込まれゆく雲雀かな もね
まだ暗き厨とはいえど水温む 山崎ぐずみ
吾子の歯の下から二本つくしんぼ ぴいす
桃色に馬手の傷口猫の恋 ほろよい
石槨から領地へ降りし桜東風 おせろ
膨らんで薄紅色に桜の芽 ポメロ親父
天下布武安土の城も春霞 喜多輝女
啓蟄のガマの背中に雌のガマ まんぷく
書く指の露のガラスに春の雪 池田喜代持
行商の鰆かかえて里帰り ちろりん
履歴書のわかる嘘あり忘れ霜 童夢U世
無人駅錆びた鉄路や冬茜 まるにっちゃん
甘やかなる草の香りや春の風 アンリルカ
本日は晴天なり梅満開なり エノコロちゃん
水仙の同じ方見て咲きにけり エノコロちゃん
人の死をまたも見てゐる懐手 鯉城
よなぐもり被ばくの村の深き黙 哲白
赫々と己が翳追ひ椿落つ 内藤羊皐
サグラダ・ファミリアの先端より夏近し  ひでやん
春の雷苦き心を打ち砕く カシオペア
土降るや教会の門固く閉ず 明日嘉



関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

桜井教人(さくらいきょうと)
1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回・29回俳壇賞候補。


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へたうま仙人


文 大塚迷路


 春にどっぷり浸かっていたら、おやまあ暦はもう夏ぢゃ。歳時記の更衣はお済みですかのう?
 今年の晩春の列島は地震の衝撃に打ちのめされておるが、被災地の方々に心からお見舞い申し上げます。早く鎮まって一秒でも早く平穏な日常に戻られることをひたすら祈っております。
 今月も彩とりどりの句が集まっておるぞ。行く春を惜しみながら、少し心をざわめかせて下され。


行き帰りポーカーフェイス恋の猫 小木さん
恋猫の困ってしまう平和主義 小木さん
 この猫はなかなかの曲者手練れぢゃ。何食わぬ顔をして広範囲に手を染めておるぞ。末は歌舞伎役者か議員さんぢゃ。世の中は同姓に遠慮されている輩が異性にひっぱりだこなのぢゃ。到底納得いかんのう。のう。
そうか……猫も困っておるのか……平和主義が肩身が狭くなっているようでうすら寒いのう。こうなれば、平和主義者だけがモテるようになるかもしれないいつかの日に思いを馳せましょうぞ。そうなるときっと争いもなくなるぞ。争う人間だけが異性に嫌われたら、争いなんてアホくさくなるぞ。その時こそ大チャンスぢゃ。今までの憂さを一気に晴らそうぞ。のう。

鳥飛べば海見えるじゃろじゃろうじょう  KIYOAKI FILM
林檎無き家や貧乏父母の里 KIYOAKI FILM
 中七から下五を「じゃろじゃろ雨情」と読めば野口雨情へのオマージュとも取れるし、下五を「じゃ篭城」と読めば戦術を後の世のためにわかりやすく説いた句にも取れるのう。鳥瞰図のように広がる海がなんともはやぢゃ。貧乏だから林檎が無い訳ではなく、林檎が無いから貧乏だという視点のずれを深く味わえばツボに入ればツボに従うぞ。その上、作者も共有している里ではなく、あくまでも「父母の里」だ!と言うこだわりと屈折感の虜になったらもう抜け出せんぞ。それが怖くて、みんなこの作者を遠巻きに見ておるぞ。それでいいのぢゃ。

ぽっぽの湯薪ストーブの柔らかさ 真歩
うぐいすや木と木の間かくれんぼ 真歩
 ゆるやかな時間に身を任せて、穏やかに生きている作者がまぶしいぞ。ゆっくりと燃え尽きていく薪の柔らかい炎の揺らめきが、至福の時を感じさせるのう。湯で火照った体に炎の濃淡が妖艶ぢゃ。うぐいすはああ見えてもパワフルな鳥らしいのう。飛びながらあの声量であの鳴き声を発するらしいのぢゃ。木立に入ると、鳴き声の移動は鮮明に聞こえるが姿が見えないというのが常ぢゃが、その様子を「かくれんぼ」とはなかなかの表現ぢゃ。これからも自然の営みをもっと教えて下され。

下流にて皆掬わるる流し雛 元旦
倒したるかぶれの木にもひこばゆる 元旦
 最近は環境のことを考えて流し雛はさっさと掬われておるらしいが、これも世の流れ。川の流れと世の流れには抗らえんのう。こんな良い瞬間の報告、これからもお願いしますぞ。
 倒した事への少しばかりの後ろめたさが「ひこばゆる」で鮮明になっておるのう。その後ろめたさが、ひこばえによっていくらか緩和される感覚は庶民的で素敵ぢゃ。「かぶれの木」も自然界では無くてはならない存在であることを暗に示しているところなんぞ、憎い限りぢゃ。

木棺は王のゆりかご春の月 坊太郎
朧夜や鏡の前の月下香 坊太郎
 「春の月」のおぼろ加減がゆらゆらゆりかごにぴったりぢゃ。悠久の時の流れと木棺の朽ち具合が、王の時代の栄華と後の世の盛衰を暗喩しておるのう。月下香は見たことないが、鏡に映る月下香と実物の月下香との妖しい虚と実の世界が、淫靡を増幅させておるのう。朧夜の正体をようやく見つけたような気がしたぞ。

見守りも介護のひとつ水温む ケンケン
認知症の聞き手となりし端居かな ケンケン
 仕事からにじみ出る世界が良いのう。仕事の句の場合、今の仕事がよっぽど満足しているかよっぽど嫌か、両極端のような気がするが、この句群は間違いなく前者ぢゃろうな。よっぽど仕事に対する誇りと充実が無いと「水温む」「端居かな」とは言えんぞ。見守り上手と聞き上手がこれからのキーワードぢゃのう。おっと、感心ばかりしてはおれんぞ。こんな福祉の現場と、今まさに喘いでいる介護社会を鑑みた句は、ペガサスに乗せて、歯を食いしばらなくても介護ができる世界へ仮追放!

金のいる電話に怒る年度末 柊つばき
ババア死ねいまは死ねんとミカン喰む  柊つばき
 ますます極めていらっしゃるのう。「年度末」でこういう句を出されたら、後に続く者が「年度末」には近寄れんようになるぞ。大変ぢゃ。それにつけても、電話が無くとも平気で暮らしていけた世の中が恋しいのう。
 そうぢゃそうぢゃ、まだまだ死ねんぞ。さしあたりミカンの全種類喰走破を達成して、死ねと言った奴らを見返してやるのぢゃ。それにつけても、鬼気迫る迫真の仲の良い家族ぢゃのう。うらやましいぞ。ぢゃがこんなうらやましい句は、若葉青葉が迫り来る裏山椎の木の天辺へ、草矢に乗せて追放!!


 今月も思慮深く追放者を出してしもうたが、なに悲観することは無い。へたうまの園は下萌え過ぎて木下闇寸前ぢゃ。安心安心。
 ぢゃが、くれぐれも油断召されるなよ。



へたうま仙人
 年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
 好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き)
 嫌いなもの 上手な俳句
 将来の夢 大器晩成


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ


 拾われてきて21年間家にいた猫が死んだ。人間でいえば百歳は優に超えているらしい。いつものようにヨボヨボとごはんを食べてトイレに行ったあと寝床に入って、ウ〜と小さく二〜三度唸って息絶えた。これが大往生というやつだろうか。お見事と言うしかない。健康のために特別なにかやっていたわけでもなし。人間はなかなかこうはいかないのは、なぜなんだろうか。




眠れないキリンのまつげに春愁 一走人

 希望あふれる季節とはうらはらに、そこはかとない愁いを感じるという「春愁」の思いは、あくまで精神世界のことだけに俳句として捕まえる時その守備範囲は結構広い。作者はこの「春愁」をキリンのまつげに感じたと言うのだろう。キリンのまつげをじっくり見たことはないが、なるほど「春愁」を受け止めるほど長いような気がする。しかも眠れないまつげなら尚更のような気もする。理屈ではなくキリンのまつげと春愁の微妙な脈絡をみつけて着地させたところが、この句のお手柄ということだと思う。




黄砂ばくばくと蒔きながらやってくる爆買い  ひかるん
 爆買いツアーの中国の人たちが、実際に黄砂を撒き散らしながらやってくるわけではないが、「黄砂ばくばく」と「爆買い」という強烈な言葉がみごとに一体化してしまった。型にはまらない傍若無人のインパクトがある。「爆買い黄砂ばくばくと蒔きながら」では、おさまりすぎなのかな……。

猫のあくびもうつる好日 多満
 なんの作意も感じられない。肩の力が抜けてすっと出てきたような句。こういう自然体の句が、いつも作りつづけられればよいのですが、人間の思考はそう簡単にはいかない。本当は試行錯誤してできたのかもしれないが、そう感じさせないところが佳句ということ。

うぐひす日蓮宗であったか みやこまる
 一読すれば、「うぐいす=ホケキョウ=日蓮宗」の諧謔はすぐわかる。裏表の意を表すのに、もったいぶってないところがよい。「であったか」と、ひとりで納得しているのも嫌味がなくて良いと思う。
植田の中の雲の中にあめんぼ のり茶づけ
 苗を植えるために水を張った田……そこに映る雲にあめんぼが居る。天気の良い日の水田の風景が想起されます。「植田の中の雲の中……」の「の中」のリズムが心地よい。さらに雲の「中の」とする手もあっただろうけど、あめんぼに視点が集中しすぎる……。

春の通夜赤ちゃんはよく眠り うに子
 通夜や葬儀を題材にした句にしてはめずらしく、哀切感がまったくない。故人は天寿を全うされたのか、赤ちゃんはその方のひ孫というところか……。死と生の交差が、粛々として感じられる。春の通夜なればこそかもしれない。




告白は芹の白和えの味 ほろよい
点滴のいつしか力伝えくる レモングラス
春の昼水母の月がスカイツリーを見おろしている  まんぷく
春の光まみれのプーさん ポメロ親父
花粉症のせいだということにしておく 小市
細君とラッコが海胆を啜っている 暮井戸
撫で肩の春愁に巴投げ 藍人
上の空で生きてきた五十年目の卒業式だ  さより
春夕焼けとハムライスの下宿 もね
帽子が転がって笑う 遊人


並選

寒晴の余呉湖は鏡湖となる ケンケン
繍線菊ほどの悔いなのでいい 海田
春めけどしかめつらの銅像 出楽久眞
旅に出て人間鳥やケンタッキー  KIYOAKI FILM
粧し込んで今夜はどちらへ徘徊ですか 凡鑚
青春の日々ボートレースの一直線 迂叟
ゆるむ固まるのくりかえし 幸
騒ぎすぎる春の鳥 和音
人の心は見えやしない朧 富士山
白河の関越え六根清浄 青萄
花粉症の厚化粧 ヤッチー
母親達よ鱗粉を落とすな みちる
犬に憐れまれる宿酔 南亭骨太
じゃが芋の花を茶室に 山崎ぐずみ
言い訳は相撲を見ると言って帰る ゆりかもめ
機窓より稜線の残雪 喜多輝女
明るく思うはくれん 小木さん
この薔薇はあの病棟より見えた薔薇の芽  緑の手
恋猫やこっそり見るビデオ 元旦
吾が出生の秘密知りたる人ら逝き 坊太郎
頭上の鴨の声を二度見 さざなみ真魚
吉備人のいう鰆は尾っぽの方が美味い ちろりん
黙祷の重さよ3.11よ ミセスコナン
霞の中を黙りこむ 人日子
マンサクの花と老眼鏡 エノコロちゃん
言い訳はかけつけ三杯女正月 鯉城
面影に時間と皺と白髪と 松ぼっくり
憎らしく順にくるもの冬のうしろに春のくる  台所のキフジン
春キャベツバリバリ甘い 彩楓
曇天へ吸われ行く冬日 青柳
過去帳の高祖父の高祖父は寛延人 カシオペア
春満月が味方 恋衣
山羊の乳搾れば朧月 プリマス妙


きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律・地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技・妄想、泥酔。


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詰め俳句計画


出題 文 マイマイ


今月の問題
次の(  )の中に共通する夏の季語を入れて下さい。

しどけなき陽よ(  )をくぐり舟
借景に(  )店の名に銀座


しどけなき陽よ青柳をくぐり舟
借景に青柳店の名に銀座
 彩楓さん。いいと思ったのですが青柳は春の季語でした。八木ふみさんは桜。これもいわずと知れた春の季語。残念、級外です。KIYOAKI FILMさんは暖簾。夏暖簾とか麻暖簾とかは夏の季語になっているようですが、暖簾だけでは季語になっていないようです。カシオペアさんの柳川は地名? 単に柳としても晩春の季語ですし……。同じく級外。

しどけなき陽よ夏山をくぐり舟
借景に夏山店の名に銀座
 一走人さん。前句、夏山をくぐるのはちょっと難しい。藍人さんの雪渓も同様。6級。小市さんは夏富士。やはり前句くぐれないが、後句の景の大きさを評価して5級。

しどけなき陽よ滝殿をくぐり舟
借景に滝殿店の名に銀座
 うに子さん。前句、建物の下をくぐって行く舟ってあるのでしょうか。後句はありうるが、銀座と滝はあまりにもミスマッチでは?6級。さざなみ真魚さんは花茣蓙。前句は橋の上に誰かが花茣蓙を敷いて座っている? かなり特殊な状況。後句の花茣蓙が借景なのも変。もしかして「借景に」は「銀座」に掛かり「花茣蓙店の名に」も「銀座」なのか?この辺で思考停止して5級。台所のキフジンさんの籐椅子も同じ扱いにて5級。童夢U世さんは昼花火。昼花火のちょっと間の抜けたような感じと「しどけなき陽」が良く響き合う。後句の借景も儚いが面白い。2級。河原撫子さんはパラソル。前句、パラソルを持った人が橋に居ると思えば情景は浮かびやすい。後句もおしゃれ。1級。

しどけなき陽よスコールをくぐり舟
借景にスコール店の名に銀座
 エノコロちゃん。後句は借景が何かはわからないが、そこにスコールがきて、スコールを含めた借景になっていると読めてとても良かった。ただ、前句、「スコール」と「しどけなき陽」に時間的なずれがあり、それが一句をわかりにくくしている。松尾千波矢さんの夕立も同様。4級。ケンケンさんは初夏。実体のないイメージの季語で「初夏をくぐり」、「借景に初夏」といった表現は詩的に感じるが、句全体を見たときに像を結ばないもどかしさがある。ひかるんさんの夕凪も同様。3級。ちろりんさんは夏雲。前句、空の高いところにある雲を「くぐり」という表現にやや無理を感じる。同じく3級。おせろさん、ひでやんさんは雲海。前句、作中主体は山の上から見下ろしているように思えるが、雲海の上の太陽がしどけないことになってしまい、雲海の感動が薄れてしまう気がする。後句は全くのミスマッチで良いのか悪いのか? 同じく3級。遊人さん、人日子さんは夕焼。後句の借景としては面白いが、前句「しどけなき陽」とは両立しないと思う。やはり3級。出楽久眞さん、はなゆきさん、南亭骨太さんは夕虹。前句、後句ともロマンチックでよくまとまっている。ただ「しどけなき陽」と「夕」のイメージがダブってしまうのがもったいない。2級。牛後さんは白虹。霧虹(ブロッケン現象でできる虹等)や月光によってできる虹あるいは日や月にかかる暈のことをいうようだ。白が印象的でいい味だが、やはり「しどけなき陽」をもう一度説明しているようにも感じた。同じく2級。

しどけなき陽よ十薬をくぐり舟
借景に十薬店の名に銀座
 小木さん。前句の状況が想像できません。橋の上に十薬を干してる? それに後句の借景がショボ過ぎる。7級。まるにっちゃんは青芝。後句はきれいだが、前句やはり想像がつかない。6級。みちるさんは睡蓮。これも後句が美しい。前句は睡蓮に高さがないだけに「くぐり」に違和感。5級。のり茶づけさん、青柳さんの紫陽花も前句、高さとしては少し「くぐり」難いか。4級。幸さんはのうぜんの花。これは十分な高さがあって「くぐり」易い。また後句も鮮やかな晩夏の風情があるが、いかんせん字余り。同じく4級。山崎ぐずみさんは茂り葉。前句、茂りのやや暗いイメージがしどけなき陽と良く合っている気がするが、後句、借景としては特徴がない。3級。喜多輝女さんは緑陰。前句「陰」が面白く、舟が緑陰を抜けて光を浴びた瞬間が切り取られていてよい。ただその場合太陽はもっと力強い方が良かったか。後句の借景としての力はやや弱いか。同じく3級。レモングラスさん、みやこまるさん、矢野リンドさんは葉桜。このように樹種がはっきりしているほうが映像が浮かびやすい。2級。青萄さんは若竹。特に後句、都会的なセンスを感じる。1級。久我恒子さん、ほろよいさんは金雀枝。枝垂れて咲く花なので前句「くぐり」にぴったり。色も華やか。同じく1級。海田さん、迂叟さん、ヤッチーさん、恋衣さんは新緑。すがすがしい季語で特に後句に合っている。同じく1級。

しどけなき陽よ噴水をくぐり舟
借景に噴水店の名に銀座
 dolceさん、ポメロ親父さん、片野瑞木さん、プリマス妙さん。後句は洗練された都会の涼しさを感じて素晴らしかった。前句、噴水を舟でくぐれる所があるのかわからないが、ボート遊びをしているカップルの嬌声が聞こえてくるようで好きだった。初段。


今月の正解

しどけなき陽よ葉柳をくぐり舟
借景に葉柳店の名に銀座
 凡鑽さん、さよりさん、ゆりかもめさん、緑の手さん、越智空子さん、元旦さん、誉茂子さん、坊太郎さん。後句、ベタですが「銀座」には「柳」でしょう。前句「しどけなき陽」に対して少し重苦しい感じの葉柳がやはり合うと思う。二段。


7月号掲載分の問題(5月20日締切)
 次の(  )の中に共通する夏の季語を入れて下さい。

冷たさは最後の龍のゐた(  )
星満つや(  )へ下る草の道



マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回大人コン優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。大人コン落選の問題作『宇宙開闢以降』発売に向け準備中。出たらみんな買ってね。


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100年投句計画 投句方法



 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)・俳号(なければ本名の名前のみ)・本名・電話番号・住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙人」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、5月20日(金)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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短歌の窓


短歌投稿ページ
選者 短歌誌『未来』同人 渡部光一郎


特選

のばしたりゆるめたりして街中の音が止んだらそれは春です 時計子
 思い切った詠い方。とくに詠い出しがかなりアクロバティック。不条理だがリアリティも感じさせる作品となっており、春をこのように把握・表現のできる人は少ないと思う。


並選

その画廊は元石炭置場ですだから黒い絵が似合うのです 暮井戸
 不思議な力を持って迫ってくるダメ押しがよく、生命力と黒い笑いを含んでいる。この歌については、破調はあまり気にならなかった。

六人の幼な子ごにょごにょ春風にくるまれ歩むたんぽぽ通り 高山真由美
 「ごにょごにょ」がうまく、なかなか出ないオノマトペである。幼な子の数が「六人」であることや、「たんぽぽ通り」という地名など、随所に工夫がある。

返信を「ん」の一文字で終わらせる吾子はおそらくそこそこ元気 片野瑞木
 まだ書き言葉にしばられることのない時期の子供は「そこそこ」どころかうんと元気だろう。読んで嬉しくなる歌。


コメント

正確に月に一分進みますこんな時計がお似合いの家 青柘榴
 面白い素材。「お似合いの家」というのが共感を得にくいかもしれないので、この「月に一分」進む時計は別のものと組み合わせて使ってもいいかと。
たましひの通り道かも雪解水の山より浸みてここに涌き出づ 鈴木牛後
 「たましひの通り道」と言われてはっとなる。「山より浸みてここに涌き出づ」という、姿勢の良い言いきりが良い。
生まれ来ていつかは死ぬる定めとて何故に子猫は道中に死す 凡鑽
 「とて」の使い方がやや苦しいが、歌意はよくわかる。定型感覚がしっかりあるので、もう一工夫を。
古書店の『海潮音』に封書あり再び閉じる誰かの時間 高木風華
 『海潮音』の名のもうすこし活きる使い方があったかもしれない。ただ下句は達者。
呆けてなお左右確認ヨシといい我を気遣う助手席の父 実峰
 認知症になってもお父さんはえらく、ありがたい存在。歌としてもきれいにおさまっている。
公園のベンチに座り猫を抱くおみなの頬へ春の日のさす 高山真由美
 もう少し、何かの狙いを明確に打ち出してもよいかもしれない。ただ、色々な読み方のできる歌でもある。
父母は勤労感謝も休めずにせっせと働くこの世憎らし まるにっちゃん
 まことにもって、昔も今も休めない。
お遍路の一期一会の礼深し路地裏に子を叱る声して ケンケン
 「お遍路」は難しい題だが、下句のあっさりした描写がよく、いい歌になった。

 今月もたくさんの歌をありがとうございました。力作ばかりで、かなり悩みました。いい歌が多かったのです。先月につづき、みなさんの個性がはっきりと出ていて、スリリングでした。今月はじめましての方、どうぞよろしくお願いします。


応募内容 自作の短歌(2首まで)
応募先  フォーム http://marukobo.com/tanka/
      Email: tanka@marukobo.com
7月号用応募締切 5月20日(金)


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自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



評:菅紀子


 あらためてはじめまして。先月は私自身初めての試みのため荒海に投げ出された感がありました。ここで基本方針を述べます。まず、翻訳されたものは既にオリジナルとは別物となり新たな創作と言える場合さえあります。ですから表題のように百人百様の翻訳があり、私はその中のほんの一人一様としてお手伝いしているに過ぎないことをお含み下さい。
 多言語の俳句に統一ルールのようなものはありません。英語で句作をする際、私は1.必ずしも季語はなくてもよく 2.3行である必要はないし 3.何行かある場合の各行の長さにも決まりはない、という方針を取っています。でも翻訳なら体裁を原句に似せて対応させるのも一つの手ですし、先月手をつけなかったタイプの句については原形をとどめない「超訳」を試みるのも一つの手だと考えています。
工夫を楽しんでください。

1.
 Showering with timbres.
 Raindrops as notes.
 Summer-beginning tones in.

原句 通り雨夏立つ音階変化して 海田

 A shower passes by
 Playing the scale of summer
 As it shifts Nori訳

2.
 Like kids into fields
 Survival kits into the bag
 Children's day

原句 サバイバルキットを鞄こどもの日 海田

 子供が子供の日に救命具を鞄に入れてアウトドア行事に出かけようとしている情景でしょうか。

 Ready to go
 Survival kit in the bag
 Children’s day Nori訳

3.
 flower fire old boy dance dance aron

原句 花咲いて老年の父踊るかな KIYOAKI FILM
お便り 英語は難しくてカタコトです。(KIYOAKI FILM)

 カタコトを生かしてカタコトらしい形にするのもいいかも。

Flowers bloom and my old father is dancing, dancing Nori訳

4.
 In the budding mountain
 the ropeway which is regular intervals
 is going up gently

原句 山笑う等間隔のロープウェイ 出楽久眞
お便り 先日、中2の息子と一緒に英検を受けました。筆記はともかく、二次試験は、しどろもどろ、かつ出鱈目な英文法での強引なスピーキング。それに対して、授業で普段から英語を使っている学生は強い。いいんだ、それでも私は、英語俳句計画、強引に投句してゴー!(出楽久眞)

 出楽久眞さん、Nice challenge spirit!
 原句と英訳の意味を変えましたね、英語句を日本語訳するとまた新しい俳句ができそう。
 ちなみに原句に忠実に訳すと

 Mountain smiles
 As the ropeway goes up and down
 Regularly Nori訳

 これはロープウェイが規則的な時間割で運行しているととっての訳ですが、もしや等間隔に並ぶリフトのことでしたら、liftとしましょう。

5.
 skyscrapers nearby
 a spring in Japanese garden
 quiet and graceful

原句 摩天楼まぢかに楚々と泉殿 久我恒子

 Close by the skyscraper
 Graceful water from spring
 In a Japanese garden Nori訳

6.
 take off a boater
 beautiful pudding lamode
 with an ice-cream cone

原句 カンカン帽脱ぐやプリン・ア・ラ・モードにコーン
 久我恒子
お便り 前回は音節をあまり気にしなかったのですが、今回は五七五になるようにしてみました。
そこで質問です。音節が五七五でない場合は、中七にあたる部分は必ず一番音節が多くなければならないのでしょうか? また、二句目でプリンアラモードの美味しそうなさまを表現するのに、appetizing(美味しそうな)では面白みがないのでbeautiful(素敵な)を使ってみましたが、不適切でしょうか。あるいは、よりぴったりな単語があるのでしょうか。(久我恒子)

 久我恒子さん、英語俳句で厳密に音節を踏襲するのはそもそも不可能です。ですからどうぞ気にしないで。中七を長くするのは形を真似て日本語俳句に近い感覚を得るため。そういえば中七を長くすると気のせいか座りもよさそうに感じますね。「美味しそうな」はyum-yumやmouth-wateringなどカジュアルな表現もあります。アラモードはフランス語。「脱ぐや」を擬人化し疑問形にして強調してみました。

 Are you taking off the boater?
 Pudding a la mode
 with an ice cream cone on top Nori訳

7.
 After dark
 white plum blossoms
 become bright

原句 暮れてから白梅明るくなっている 暮井戸

8.
 It was march
 sake and the touhu are good
 at normal temperature

原句 酒も豆腐も常温にする三月 暮井戸

お便り 英語に自信がないので、よければ添削してください。(暮井戸(void))

 voidさん、7はOK、8はIt was march In March、the touhu tofu でOKです。

9.
 be Tokyo dude
 waiting for you
 myosotis

原句 東京の女になれよ藍微塵 実峰
お便り 故郷を離れる若者たちに都会でもまれてかえってきてねの気持ちをこめて(実峰)

 実峰さん、原句とお便りを足して作ってみました。dudeは男向けの語のよう、原句では「女」お便りでは「若者たち」なのでニュートラルな語に変えました。

 Be a sophisticated Tokyoite
 Waiting for her to come back
 Myosotis   Nori訳

10.
 A horn gores the sky
 There is an ox-drawn carriage
 Fair for the Doll's Festival

原句 雛市の牛車の角が空を突く 恋衣

 Parade of the Doll Festival
 A horn of an ox-drawn carriage
 Gores up the sky Nori訳

11.
 the rose might artificial flower
 If you throw away
 the red shoes

原句 赤い靴投げ捨て薔薇は造花かも チャンヒ

 Red shoes
 The rose you threw away
 might be fake Nori訳

12.
 most of the fruit is
 obscene,
 especially loquat

原句 大抵の果実は卑猥とくに枇杷 チャンヒ

 この訳は卑猥(ひわい)と枇杷(びわ)の音遊び、韻を踏むことがコツかも。というわけで隠喩を使ってみました。伝わったかな? ロッカールームで猥談をするからでしょう。

 most of the fruits are
 locker-room, especially
 loquat



菅 紀子(かんのりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通・翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学、愛媛大学非常勤講師。(Hailstone Haiku Circle member)
(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)


●応募内容 自作の俳句およびそれを英語俳句にしたもの(2句まで)
●応募先  フォーム http://marukobo.com/eigo/
      Email: eigo@marukobo.com
●7月号用応募締切 5月20日(金)


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百年歳時記


夏井いつき

第36回



 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。

捨頭巾たちまち返す鳥木霊 ターナー島
 「捨頭巾」とは、脱ぎ捨てた頭巾そのものを指すのではなく、頭巾を脱ぐ、仕舞うという行為を意味します。暖かくなってもう頭巾は要らないねというのが、まさにこの季語の春の気分なのです。
 掲出句の巧さは、中七「たちまち返す」という描写にあります。頭巾を脱いだとたんたちまち鳥の囀りが木霊してくるよ、私の耳に返ってくるかのように聞こえてくるよという感動が、「たちまち返す」という措辞によって生き生きと伝わってきます。
 「鳥木霊」のように言葉と言葉をくっつける表現は、下手をすると寸詰まりな印象になるのですが、この句ではむしろ臨場感のあふれる言葉となっているのも、見事なバランス感覚だと思います。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』3月25日放送分)

絵踏せし足を河原の石責むる 天玲
 「絵踏」がなぜ春の季語なのか。江戸時代、陰暦一月から三月頃に九州各地で禁制のキリシタン狩として行われたことに由来します。陰暦一月八日、長崎丸山遊郭の着飾った遊女たちの絵踏には、沢山の見物人も集まったそうです。
 掲出句はこの「絵踏」の世界にワープ。作者自身がさっきキリストの絵を踏んできたかのような真情溢れる作品です。「河原の石」が「絵踏」した我が「足」を責めているよという嘆きが、読み手の足裏に「石」の感触を再現。「責むる」という連体形の後の空白を、足はジンジンと痛み続けます。虚の季語「絵踏」をリアルな肉体感覚で表現できる、俳人の強靱な想像力が生み出した逸品です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』4月8日放送分)

常節にひらかなほどの穴七つ 甘泉
 「常節」とはミミガイ科の巻き貝。「万年鮑」という傍題もあるように、形は鮑に似ていますが、鮑よりは小さく、七センチ程度の貝です。春季が美味しいということで春の季語になっています。
 「常節」の殻にチョンチョンチョンと空いてる穴は本当に愛らしい穴ですが、あれをまるで「ひらかな」みたいな穴だと受け止める感覚が楽しい一句です。「ひらがな」ではなく「ひらかな」と濁らない書き方をしている点も優しく柔らかな印象。この心遣いも一句の雰囲気をよく把握してこその配慮ですね。
 「常節にひらかなほどの」何?と思った瞬間にでてくる「穴七つ」という映像も効果的。いかにも「常節」らしい愛すべき一句です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』4月1日放送分)

貝寄風と記す龍涎香の欠片 めいおう星
 「貝寄風」とは、陰暦二月二十日前後の西風。この風が吹き寄せた貝で、精霊会の造花を作ることからこの名があります。
 「貝寄風」と記す箱に入っているのは「龍涎香(マッコウクジラの腸内からとった松脂状の物質。麝香に似た芳香)」。龍神が吹かせる風という伝説に通じる「龍」の一字、海のイメージを重ねるマッコウクジラ。これらの要素は「貝寄風」の由来や伝説と付かず離れずの味わいを醸し出します。「貝寄風」という名の「龍涎香」は、龍神に捧げるお香であり、貝殻で作る供養の花の香のようにも思われます。「龍涎香」を焚いて始まる精霊会を思う時、貝を砂浜に運ぶ「貝寄風」という雅な風が、我が心にも吹く心地が致します。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』4月1日掲載分)

一面の焦土女は馬鈴薯植う 中原久遠
 世界は戦いに満ちています。時代を越えて、さまざまな理由で紛争が起こり戦争が繰り広げられています。「一面の焦土」となった故国にて、最初に行動を起こすのは「女」たちかもしれないとハッとします。戦争を起こす男たち、戦争に興奮する男たち、戦争で死ぬ男たちを横目に、「女」たちは、我が子を産み育てることを考えます。「一面の焦土」に打ちひしがれている暇はない。今はまず「馬鈴薯」を植えねばならぬと立ち上がる「女」たち。
 「貧者のパン」と呼ばれていた「馬鈴薯」を「植う」作業は、まさに命を繋ぐための仕事。台所の食材を超えた季語「馬鈴薯」本来の存在感を、読者の胸に打ち込んでくれる力強い作品です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』3月18日掲載分)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や、松山市公式サイト『俳句ポスト365』などに投句された俳句を紹介します。


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俳句の街 まつやま

俳句ポスト365



協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


金曜日優秀句
平成28年3月度





雉低くよぎって空港まで5キロ カリメロ
雉子鳴くや給水塔の光るなり かをり
父の手に仕留めた雉の垂れにけり いもとやへえ
吊られたる雉蒼蒼と腥し くらげを
雉寄り来天地返しの土の香に たんじぇりん金子
雉鳴くや犬目、猿橋、鳥沢宿 関野無一
雉の声火のにおいする不動尊 28ひろきち
雉過ぎり若沖の絵に戻りけり 雪うさぎ
日の本の春連れ雉は天中へ 理酔


雉鳴けりこれより雪の無き林 井上じろ


馬鈴薯植う


馬鈴薯植う風におろしやの訛りあり 夜市
馬鈴薯植う芽がないやつは山へ放る 初蒸気
穴めがけ馬鈴薯を蒔くちと外す 大塚迷路
植ゑ終へし馬鈴薯畑星の餐 みちる
故郷まで二百五十里馬鈴薯植う 雪うさぎ
馬鈴薯植うる喉彦の鉄臭し 長緒 連
馬鈴薯植ゑし手で髭を剃る妻を抱く 可不可
馬鈴薯植う馬/鈴/薯に分けて植う 比々き
だんしゃくを蒔いてて今を悔しんだ くらげを


一面の焦土女は馬鈴薯植う 中原久遠



5月の兼題

公式サイト内の「俳句投稿」より作品をお寄せください。(投句期間を過ぎますと投稿ページは次の兼題の募集に自動的に切り替わります。ご投稿はお早めに。)

投句期間 4月28日〜5月11日
蜻蛉生る(とんぼうまる)
蜻蛉の幼虫は「やご」と呼ばれ、水中で数ヶ月〜1、2年を過ごすが、このやごが羽化し、成虫になることをいう。

投句期間 5月12日〜5月25日
ごきぶり
ゴキブリ目に属する昆虫の総称。油虫。体は扁平で幅広、触覚は糸状で長い。夏になると台所などに出て人に嫌われる。「御器噛り(ごきかぶり)」が転じた名だとされている。

参考文献『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


「俳句ポスト365」は携帯電話からもご参加いただけます。
「俳句ポスト365」公式Facebookページ開設中! 公式サイトに設置しておりますリンクよりお入りください。毎回の兼題のお知らせを中心にお伝えしながら、皆様の返信欄への書き込みもお待ちしております。

募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。


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一句一遊情報局



協力: 南海放送


金曜日優秀句
平成28年3月度


眼張

今月の表紙を飾る赤眼張 八幡浜発
乗り合いの舟や眼張の釣り日和 朝日
眼張煮る島の分校再開す  このはる紗耶
波音のとろりとぬくき眼張釣り  ターナー島
テトラの根の闇に見開く眼張の目  越智空子
釣り上げし眼張に人の目の太る 小市
生簀より上目遣いを選る眼張 樫の木
赤眼張朝は漁師となる板場  のり茶づけ
完膚無きまで食い尽くされて眼張  ひでやん
相場師の験担ぎてふ眼張の日  てんきゅう


禁酒者へ煮付け眼張の白目かな  唐平




確実な証拠はないが猫の夫 恋衣
どう見てもあれは確かに熊の糞 もも
確たる我なくて朧月の仲間 越智空子
腸の不確かにある春の闇 ラグナ
遠足や確かに三十人のはず 一走人
止まらないブランコ確信犯の名は  紗蘭
一点を射抜く春日の確かなり  八木ふみ
確約の水より軽き石鹸玉 てんきゅう
確かめるクレソンのことべクレルのこと  あどどけなく
千の田鼠化してとなる確率 妙
確信した春は俺を嫌ってる 理酔
陽炎の奥や確かに砂時計 天玲


花びらは確かにおちる石の上  伯方児童館俳句キッズ 小学校1年生・ありあ


種物

花種と太陽握り明日を待つ  はなみずき
種物や光にこぼす五万粒 緑の手
旧道は奥から暮るる種物屋 蓼蟲
種物や北向きにある明り取り  逆ベッカム
種物や鍬磨きいる宵の納屋 カンナ
種物の五年隠れしお仏壇 小市
マントラのごと種物の名を復唱  のんしゃらん@東京
花種をミレーのごとく蒔きにけり  依里
種物屋眠りの時間あずかりぬ  矢野リンド
千軒の農村を一手の種物屋 痛快
種物千袋五ミリリットルずつ詰めよ  越智空子


花の種配る献血一号車  さくら


捨頭巾

素晴らしき耳たぶ実る捨頭巾  豆腐太郎
捨頭巾新しき耳生まれけり 笑松
中に顔ありやと思ふ捨頭巾 鈴木牛後
捨頭巾白蝋病の指を以て 矢野リンド
哈爾浜の雨に逃げ込む捨頭巾  きとうじん
捨頭巾西へ三里の標石 風
脱ぎ捨てし頭巾に篭る一壺天  山中憶良
捨つる物に殻やら名やら頭巾やら  てんきゅう
切株に此は佐保姫の捨頭巾 マイマイ


捨頭巾たちまち返す鳥木霊  ターナー島



投句募集中の兼題

投句締切 5月8日

べら
ベラ科の海魚の総称。種類が多く、釣り魚としても人気。体色は赤、青、紫など派手で、特に雄は美しく、観賞用の魚として水族館などで飼われる。

枇杷葉湯(びわようとう)
枇杷の葉に肉桂など七種の薬草を同量ずつブレンドし、煎じて作る薬湯。暑気あたりや急性の下痢に効く。

投句締切 5月22日


季語ではない兼題です。「砂」という字が詠み込まれていれば、読み方・用い方は問いません。季語は当季を原則として、自由に選んでください。

筍流し(たけのこながし)
「流し」とは、湿気を含み雨を伴うことの多い南風で、5月の筍が生える頃に吹くものをいう。静岡県駿豆地方の方言といわれる。

参考文献『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句宛先
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


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鑑(み)るという冒険


〜映画篇 演劇篇〜

文&俳句 猫正宗

 第四十三回
『スター ウォーズ/フォースの覚醒』&『Be My Baby いとしのベイビー』


 May the 4th→ May the force(be with you.)ということで、5月4日は「スター ウォーズの日」。そんなわけで、『スター ウォーズ/フォースの覚醒』美術館吟行にも行った手前、無視するわけにもいきますまい。
 新たな三部作の皮切りとなる本作は、手数の多いジャブのような映画でした。それを軽快で巧いと取るか、軽くて過剰と取るかで評価が分かれるように思います。私は些か貫目が軽いように感じてしまいました。理由は色々あるのですが、一番は、ダース ヴェイダーの不在に尽きます。私にとって『スター ウォーズ(以下、S.W.)』は、思った以上にヴェイダーの映画だったようです。
 さて、続編の常套として旧作(特にエピソード4、5)をなぞっている本作。今の所ダース ヴェイダーに当たる存在として登場しているのがカイロ レン。劇中であっさり明かされるその正体は、自分の心の隙間を埋めるため、ヴェイダーに憧れ、フォースの暗黒面に堕ちてしまう若者として描かれています。IS(イスラム国)などに走ってしまう先進国の若者、そんな世相を反映したともいわれるキャラクター。確かにそうなのでしょうが、私には、私を含む旧『S.W.』(特にエピソード4〜6)に囚われ、新しい『S.W.』を認められない自称『S.W.』ファンの姿にも見えてしまったりなんかもしちゃったりして。
 となると、シリーズの今後で、そんな自称ファンを大きく裏切ってくれるのではないか、切り捨ててくれるのではないかと、期待の止まぬ今日この頃なのです。
 ところでヒロイン、レイを演じるデイジー リドリーはよく探してきたと思う程、『S.W.』のヒロイン顔。(ナタリー ポートマンとキャリー フィッシャーの間に並べてみたら……ね)彼女、キーラ ナイトレイにそっくりと言われるのに辟易してるらしいのですが、無名時代のキーラ ナイトレイはナタリー ポートマン演じるアミダラ女王の影武者を演じてたわけで、似てるのも当たり前なのです。

古馴染み新しい連れわが銀河

 『S.W.』といえばフォースの光明面と暗黒面の対立(と融和?)ですが、演劇『Be My Baby いとしのベイビー』[加藤健一事務所公演、作:ケン ラドウィッグ、演出:鵜山仁、出演:加藤健一、阿知波悟美、他、'16年3月22日、ひめぎんホール(県民文化会館)サブホール]もまた、対立と和解の軽快なコメディでした。犬猿の仲のジョンとグロリアは若い夫婦のための養子として引き取りに行った赤ちゃんを仲立ちに距離を縮めていきます。
 イングランドとスコットランド、男と女、田舎と都会、信仰と無信仰、欧州と米国、様々な二項を立てながら、最後には(神の?)愛によって和解するという筋立て。もっとも、その辺りのことはあまりシリアスには描かれず、むしろ芸達者な主役二人を中心に、役者達の丁々発止が見所だったように思いました。
※本作は6月25日まで、各地の観賞会(市民劇場)及び、兵庫、京都、所沢で上演。

霧まく世の光赤子の眼に映えて


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南極を詠もう!



最終回

愛媛県立新居浜西高等学校教諭
渡辺浩志


 「100年俳句計画」の読者の皆様、こんにちは。新居浜西高校の渡辺です。
 疾病発症したしらせ乗組員の早期帰国のため、急遽アフリカのケープタウンまで向かうことになった「しらせ」。2月26日、8日間かけて極寒の南極から真夏のアフリカに辿り着きました。私たちは上陸することもなく、すぐにUターン。「俺たちも一緒に帰らせてくれ〜」「泳げない距離じゃないよな。水温高いし」街並みを背に、喜望峰を眺めながら微かな希望を摘み取られた私たちは再び南極へ。ところがその夜のMTG。オーストラリアのモーソン基地沖で2日前に座礁したオーロラオーストラリス号。乗船予定だったオーストラリア隊員66名を救出し、しらせでケーシー基地まで送り届けるという人道的支援が決定したとの連絡。激しい揺れを耐え忍び、暴風圏をくぐり抜け、3月6日に氷山漂うモーソン基地に到着。オージーとの共同生活が始まったのでした。
 二段ベッドを三段仕様に変え、私たちの部屋にやってきたのは、英国はセントアンドリュース大学の物理学者Tomさん。英語はまるっきりできない私。片言英語に身振り手振り、飲めば言葉の壁なんか……と、日本のうまいビールを渡し国際交流。英語力の無さ、不勉強さを悔いた一週間となりました。世界にも浸透している「HAIKU」。愛媛発「100年俳句計画」を世界へ。オージーたちにも是非一句……。いやいや、そんな心のゆとりはありませんでした。面目ない……。
 いろんなことがあったJARE57の活動もまもなく終了です。と同時に、「南極を詠もう」もひとまず終わります。読者の皆様、短期間ではありましたが、ご愛読ありがとうございました。今後とも、南極、そして観測隊に関心を持ってもらえれば幸いです。また、新居浜西高校のHPに通信文「南極ものがたり」を連載中です。お時間があれば、御一読をお願いします。


今月の南極吟行句   希望峰 編

 隊員の皆様のレポートを聞くと、予定外の事態がたくさん発生して大変だったようですね……どうか復路の穏やかな時間を過ごしていただければと思います。
五十五度超えた昔と戻る今 門倉昭
 南緯55度のことだそうです。渡辺さんの補足によると「往路は12月12日に通過し、復路は3月19日に通過しました。」とのこと。一度通過するのではなく、復路があるからこその感慨なのでしょう。
氷山の寒色薄く春めきぬ 海田
 読者の句。「春めきぬ」にどことなく日本への思いがあるように感じました。一方で隊員の方はというと……。
荒波のかなたの桜がわれらまつ 土井浩一郎
 もうすぐ帰国して見られるかもしれない桜に思いを馳せています。眼前にある季語を詠まないと俳句ではない、という意見を持つ俳人もいるかと思いますが、この句においては桜がくっきりと見えるかと思います。下五の「われらまつ」は「われら」がなくても「待ってをり」などで、締まった表現にできるかと思います。
海氷に測深音鳴くしらせかな 住吉 昌直
 「海洋観測担当の隊員です。海底地形調査のために、休む暇もなく、海底探査ソナーの解析やXCTDと呼ばれる機器の海洋投入を行っていました。」とのこと。「測深音」という言葉が俳句に出てきたのは初めてではないでしょうか。地形調査のために音が鳴るのですね。高い音なのか、響く音なのか…とても気になりました。
帰国までもつかタバコと酒の数 後藤 猛
 この句、吸い過ぎて飲み過ぎた倦怠感のある句なのか、と思いきや、補足コメントによると「タバコや酒などの嗜好品は、消費量を考えて、自分で準備します。船内では販売していません。船旅も後半に差し掛かると、残量を考えながら、消費していきます。」ということでした。残りの嗜好品と相談しながら使うからこそ、寂しさが際立ってくるかと思います。季語がどこかに入れば「立った俳句」になると思います。
帰国まで指折り数えるビールかな 宙空夏隊員
 こっちは「ビール」を夏の季語として読むことができます。
じわじわと昼縮みゆく彼岸入り 源笑
 昼という空間そのものが「縮む」と表現したところにオリジナリティーがあります。写真「減りゆく太陽」と一緒にご覧ください。毎日太陽と向き合う船上だからこそ、「じわじわ」と感じるかもしれません。
しらせゆく闇夜の海上十字星 佐藤良晴
 「海上十字星」という漢字を続けた書き方に、星が夜空一面にあるインパクトを感じました。
ケープタウンみんな元気だ降りれない 川村賢二
 疾病者の方以外の隊員も降りたかったのに……という気持ちが「みんな元気だ」という表現から逆説的に感じられます。船上で何日も過ごすことの過酷さを想像します。
去り際に虹の架け橋ケープタウン 渡辺浩志
 去り際、というのが一瞬を切り取った表現かと思います。何度もこの虹を反芻するのでしょう…
絶滅の記憶氷下のバクテリア 雨蛙
氷海で日豪熱狂シャチの群れ おるか
 雨蛙さんは読者の方です。対しておるかさんは隊員の方です。どちらも生物に注目しています。雨蛙さんの句はバクテリアが絶滅の記憶をもっているよ、と読みました。詩情のある表現です。おるかさんは「日豪熱狂」にそこでしか書けなかった臨場感があります。
しらせヘリダウンウォッシュ飛ばないで ホンザン
 「ヘリコプターのダウンウォッシュは凄まじいものがあります。運搬物資は必ず人が覆いかぶさって、飛散を防ぎます。近くで立っていると、体が飛ばされます。」とのこと。そんなに激しいのですね。「飛ばないで」は直接的すぎる表現かとも思いますが、「ヘリダウンウォッシュ」は俳句の材料になるかと思いました。
船旅に倦むことすらももう飽いて 非凡ならぬ凡人
ワタナベさん吟行句編集お疲れさん 同 
 まさに同感です。渡辺さん、ありがとうございました!


投句募集
渡辺先生による連載は今回で最終回となりました。次回より、源 泰拓隊員(第57次日本南極地域観測隊 越冬隊)が新たにこの連載を引き継ぎます。したがって、引き続き俳句を募集します。投句された俳句は、スウェーデンに留学した経験のある希望峰さんが紹介します。
俳句は専用の投句フォームにて受け付けます。
http://marukobo.com/antarctic/
投句締切 5月3日(火)。


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100年俳句計画 掲示板




テレビ ラジオ     

NHKEテレ 「NHK俳句」
 日曜6時35分〜7時
 (再放送 水曜15時〜15時25分)
5月15日(日)、18日(水)予定

NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
 5月10日(火)、24日(火)11時40分〜

あいテレビ(TBS系列 全国)
 『プレバト!!』
   毎週木曜 19時〜19時49分
組長がゲストの俳句ランキングづけで出演! 放送日番組欄を要チェック!

南海放送ラジオ
 夏井いつきの一句一遊
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
投句募集中の兼題や投句宛先は「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FMラジオバリバリ
 俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜7時30分
兼題「青嵐 くわがた虫」5月8日〆
   「アイスコーヒー 蚯蚓」5月22日〆
 HP http://www.baribari789.com/
 mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898ー33ー0789
必ず、お名前(本名) 住所をお忘れなく!
各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆           

松山市の俳句サイト
 俳句ポスト365
 毎週水曜締切/翌々週月曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
  http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
毎週日曜発刊タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。朝日新聞松山総局(790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。

愛媛県《吟行ナビえひめ》句&写真
俳句選者…夏井いつき
写真選者…キム チャンヒ
【募集期間】毎月1日〜 25日前後締切
【応募先】http://www.iyokannet.jp/ginkou/
【問い合せ】愛媛県観光物産課
TEL 089ー912ー2491

NHK俳句 組長放送回俳句募集
 兼題「緑陰」または「木下闇」。
 締切5月10日必着。
投稿は葉書1枚に1句。選者名、兼題、俳句1句、名前、年齢、電話番号明記。送り先 〒150-8001 NHK「NHK俳句」係まで。ホームページからの応募も可


一句一遊15周年記念パーティー
 5月1日(日)18時30分〜
 東京第一ホテル松山2Fコスモホール(松山市南堀端町6-16)
会費5000円。参加 問合は南海放送広報視聴者センター TEL 089-915-3819

NHK文化センター広島 福山教室
 5月8日(日)10時〜12時(広島教室) 14時〜16時(福山教室)
 費用…広島3996円(会員3564円)、福山3780円(会員3240円)
参加 問合は広島教室082-242-1151、福山教室084-925-4110

夏井いつき人権句会ライブ
 5月13日(金)12時30分〜
 東大阪市立荒本人権文化センター ホール
入場無料 申込先着順404名。申込 問合は東大阪市人権文化部人権室人権啓発課 06-4309-3156

コープこうべ文化講演会句会ライブ〜楽しくないと俳句じゃない〜
 5月14日(土)14時〜16時
 生活協同組合コープこうべ 生活文化センター
コープこうべ会員400名を対象にした句会ライブ。申込 問合は電話(無料)0120-44-3100

岡山県井原市民大学講座
 5月15日(日)14時〜16時
 井原市民会館ホール
参加費 受講料1000円(2講座)。申込 問合は井原市民会館文化事業実行委員会0866-62-3313

俳都松山キャラバン2016 in 明治村 〜十七音が景色を変える〜
 5月22日(日)13時〜15時30分(予定) 12時開場
 博物館明治村呉服座(くれはざ)(愛知県犬山市字内山1番地)
 第一部 講演会「十七音が景色を変える」俳都松山大使 夏井いつき
 第二部 俳句対局 明治村トーナメント 14時10分〜15時30分
 申込みはこちらをご覧下さい。(松山市公式ウェブサイト内)

問合 松山市 文化ことば課 089-948-6524


NHK文化センター神戸 京都教室
 5月28日(土)10時〜12時(神戸教室) 15時〜17時(京都教室)
 費用…神戸3996円(会員3456円)、京都3996円(会員3456円)
申込 問合は神戸教室078-360-6198、京都教室075-254-8701


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魚のアブク



読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは他の投稿に添えてお寄せください。


もうビックリぽん!

松尾千波矢 三月号では雑詠の坂西さんに『地』に選んでいただいてありがとうございます。いつも波にちゃぷちゃぷだったので、もう『並』から見る癖がついて、気がつきませんでした苦笑。マイマイさんの「詰め俳句」 も名前が無いなぁ!?と思っていたら、なんと正解。最後のビックリぽんは「魚のアブク」に顔文字付けたら縦書きで、おしまいの顔文字は猫なのに、眠たそうな顔になってるし。

編集室 大活躍! 顔文字って基本横書きだからね仕方ないね。


今年のお花見は

喜多輝女 今年のいつき組大お花見大会は丁度桜の見頃ではないかと思います。例年だと3月27日、やった〜!仕事休みの日。と思ったら一週間ずれて4月3日……仕事……でも、終わってから駆け付けます! 楽しみ〜!! お天気いいと良いですね。

レモングラス 2か月ばかり点滴のお世話になり、指を折りつつ俳句をとゆうきりょくがなくぼんやり過ごし、やっと3月半ばおさんどん復帰、五七五と指折り俳句もスタートです。お花見にいける体力つくります

編集室 無事来られた人も来られなかった人もお疲れ様です。花の盛りが見事!……けど途中で雨がね……。


いろいろなはじめて

うに子 短歌&英語俳句の新コーナー楽しみです。

編集室 勝手が違う新コーナー2種類、投稿どうぞよろしく!

はなゆき 100年俳句計画3からの読者です。まだ、しくみがよくわからないので「100年の旗手」の推薦ができません。すみません。でも、内容が豊富で毎日楽しく読ませてもらってます。これからもよろしくお願いします。

編集室 どうぞよろしくお付き合い下さい! 「新・100年の旗手」では自薦他薦問わず作品見たい人・出したい人募集中です♪


温泉の街 松山

山崎ぐずみ こんにちわ!『山崎ぐずみ』と申します。松山の「俳句ポスト365」や「一句一遊」には、昨秋からお世話になってましたが、こちらは本日が初めてです。手土産はな〜〜〜〜〜〜〜んにも、ありませんが、よろしく、おたの申します。実のところ、この俳誌100年俳句計画、先日松山・勝山の交差点まで、吾句が掲げられる日に備えての下見にいつになるかは、……歯を喰いしばって苦笑……行った際、泊まった椿館に「自由にお持ち帰り下さい。」として置いてあったのをいただいてきた次第。恥、曝すようですが、購読の実行予算は大臣の承認、未だ得るに至ってはおりません。けども、ええい、なんとかなるであらう、と見切り発車した次第、です。いまのところ「ただ見」の通りすがりですが、大目に見て下され!「俳句百年!」そんな客の一人や二人、絶対計画に見込まれている、はずと、……。以上まずは、ご挨拶まで。

編集室 道後の一部ホテルにはお届けさせていただいております。毎月松山に遊びに来て持って帰ってもいいのよ?笑


自由律ってこんな感じ?

元旦 相変わらず自由律に苦戦しています。五七五という日本人に染み付いた心地よいリズムから脱却するのは、結構な冒険のような気がします。自由律のリズムはレッドツェッペリンのBLACKDOGという曲のリフみたいに、違和感を感じながらも、先でストンとうまく落ちるような感じでしょうか。いや違うかな。

編集室 レッドツェッペリンっていうとロックなイメージ。あってる?


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鮎の友釣り


第214回

俳号 蓮睡

妙様へ ご無沙汰しております。プリマスロック句会では、楽しく、高得点を叩き出し、そして一句一遊金曜日常連の妙さんを尊敬しております!

母 以前母が句会におじゃまして以来、一句一遊の話題になると、今日はプリマスロック句会の方が読まれたよ!と話してくれます。今度行こう!と誘うと、なかなかねぇ、と言葉を濁す。母(新居浜のちーちゃん)のあまのじゃくぶりをしっかり引き継いでいる蓮睡であります!是非また参加させて下さい!
俳縁を感じる日々 俳句が縁で、様々なことが起こっています。1、身長が伸びた(ガセ情報)2、性格が明るくなった(俳句関係者談)3、福山から松山へ帰って来られた(昨年4月、俳友3人のおかげ)4、帰ってきたその日にmhmの会計になった(あねごさんに救われる)5、とある山小屋で俳句を語り合えた(野兎さん所有)「後俳縁で足りないのは嫁さんだけじゃ」(笑)
蓮睡31歳、絶賛彼女募集中!

次回…親分肌の野兎さんへ 前回の龍天王での優勝おめでとうございます(一年遅れ)。同類の悩みを抱えては、カラオケで一緒に発散しましたね(一回だけ)。これからのご活躍、松山への移住を期待しております。


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告知



「さくらひめ」俳句コンテスト 結果発表

主催 愛媛県
特別協賛 伊予銀行


 愛媛県「吟行ナビえひめ」と伊予銀行とのコラボ企画。愛媛県が開発したデルフィニウム新品種「さくらひめ」を、伊予銀行大町支店(西条市)のリニューアルオープンにあわせロビーに展示、「さくらひめ」をテーマに俳句を募集しました。

 応募期間 平成28年2月26日〜3月25日
 選者/選評 いつき組組長 夏井いつき

吟行ナビえひめ
http://iyokannet.jp/ginkou/



海へ翅ひらけば春やさくらひめ 西原みどり
 蝶なのか蜂なのか、海へと飛び立つように翅を広げている瞬間を捉えました。その瞬間がまさに春であるという表現も美しいものです。その広げた翅をさくらひめの花になぞらえたのでしょう。翅を広げるように咲くさくらひめの姿と飛び立つ翅の相似形は新しい花の門出を祝うようでもあります。


うすくれなゐの媛の裳裾や春兆す 久我恒子
 媛の着物の裾のうす紅に着目しました。媛の姿から視線をすっと下に送ると裾のうす紅が眼に飛び込みます。裾の色だけでなく、着物全体も淡い紅のグラデーションに染められて春を彩っているのでしょう。その裾の先には、やはりうす紅のさくらひめが楚々として咲いているのです。裳裾とさくらひめが渾然一体となって春の兆しを讃えているようです。


春の日のバーバーさくらひめと鋏 松本だりあ
 春の一日。おそらく客もいない理容店でしょう。暖かな日が差し込み店主はうとうとと時間を過ごしているのかもしれません。そんな店内を視線はゆっくりと動いてゆく。鏡の前にはきれいに揃えられた鋏とさくらひめ。店主の優しさとともに活けられたさくらひめの色を映すように鋏も薄桃色に光っているのでしょう。うららかな一日です。

入選句(15句)
この街に春めく城やさくらひめ 童夢2世
さくらひめハルウララカを連れてきた kiru20170121
シャンプーの浚う春風さくらひめ しまにゃん
さくらひめ初孫のごと春近し なおろーず
眉太く心清らに卒業す ぼたんのむら
春分の日の産声やさくらひめ みやこまる
花貝のやうに透きたるさくらひめ ゆきこ
さくらひめブーケは春の伊予灘に アリマノミコ
さ く ら ひ め得意げに読む新入生 唐草大
さくらひめ大きなやかんまだ沸かぬ 天玲
さくらひめ贈られ春愁とさよなら 小野更紗
春の夢淡きピンクの花千本 村重香霞
さくらひめほどの揺らぎを目借時 海田
複雑な遅日に清き交配種 紗蘭
春炬燵花瓶の花の強き意思 赤塚昌弘





100年俳句計画作品集
100年の旗手
第2期連載者募集のお知らせ

 「100年の旗手」は、年齢や俳句の経歴に関わりなく、本誌にて作品集の発表が出来る場として、新たにスタートを切ります。
 そこで、毎月10句3回の連載に挑戦する方を募集します。7月号に掲載できるタイトル付の10句の作品集を、Eメール、または郵送、FAXにて本誌編集室までお送り下さい。
 編集室にて連載者を決定し、掲載いたします。
 応募締切は5月20日(日)。多数の挑戦者をお待ちしております。

応募内容 7月号に掲載できるタイトル付の10句
応募先  
 Eメール magazine@marukobo.com
      *件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
 郵送  〒790ー0022 愛媛県松山市永代町16ー1
     有限会社マルコボ.コム「100年の旗手」応募係 
 FAX  089-906-0695

2016年度第2期締切 5月20日(日)



夏井いつきとともに俳句を楽しみ学ぶ季刊新聞
俳句新聞いつき組
発行 有限会社マルコボ.コム いつき組編集室

4月〜6月の間に新規購読を開始される方には
6号(2016年4月号)よりお届けします!
※7号は2016年7月中旬頃発行予定です!

ご希望の方は、ひとつ前の号からの購読開始とすることもできます。
購読料のお支払い時に、ご希望の旨を編集室までご連絡ください。

A4サイズ8ページフルカラー仕様
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俳都松山キャラバン2016 in明治村 〜十七音が景色を変える〜

 俳句と俳都松山の魅力を伝えるため、俳都松山大使・夏井いつき氏によるトークと、囲碁や将棋の対局のような形式で俳句の出来を競う「俳句対局」のイベントを博物館明治村で開催します。

日時 5月22日(日曜日)13時〜15時30分(予定)※12時開場
内容 第一部 講演会「十七音が景色を変える」
 俳都松山大使 夏井いつき氏が俳句と俳都松山の魅力を語ります。
 第二部 俳句対局 明治村トーナメント
場所 博物館明治村 呉服座(くれはざ)(重要文化財)(愛知県犬山市字内山1番地)
主催者 松山市
観覧定員 150人(先着順)
入場料金 無料(入場には整理券が必要です)※整理券で明治村入村料が無料となります
申込方法 
「キャラバン明治村会場希望」と明記し、(1)郵便番号(2)住所(3)代表者氏名(4)電話番号(5)申込人数を文化・ことば課まで郵送 電話 メールのいずれかでお申し込みください。
申込専用メールアドレス
 haito@city.matsuyama.ehime.jp



会話形式でわかる 近代俳句史超入門
文 構成 青木亮人
単行本化準備中!

連載は暫くお休みします。ご了承ください。



HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
編集会議開催
 編集会議は、2ヶ月に1度開催しています。年間購読をされている方なら、どなたでも参加できます。また、Eメールなどでのご意見もお待ちしております。

次回編集会議
日時:2016年5月20日(金)
   18時〜
場所:マルコボ.コム
   松山市永代町16-1
対象:本誌年間購読者
申込先:100年俳句計画編集室
E-mail:magazine@marukobo.com


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編集後記


キム・チャンヒ

 今年も4月3日、まつやま俳句でまちづくりの会主催による12時間大花見大会(雨のため、10時間となってしまったが)の同日、第5回大人のための句集を作ろう!コンテスト(以下「大人コン」)表彰式を行った。
 満開の桜の元、ヘタウマ仙人こと大塚めろ(迷路?)さんを始め、大人コン受賞者へ受賞を祝福し、それと同時に、未だ復興の道半ばである東北に思いを馳せ、「女川・桜守の会」への募金を募るチャリティー句会ライブを行った。
 この日は毎年、俳句の高みを目指し切磋琢磨することも、俳句で知り合った仲間達と気兼ねなく飲み合うことも、かけがえのない時間であり、そんな俳句で世の中が少しでも明るくなれば、こんな素敵なことはない、そんな思いを起こさせる日でもある。
 そんな折、熊本で大地震が起きた。先日の南楽園句会ライブに於いて、句友の恋衣さんが熊本の実家を案じる言葉を仰った。人の繋がりは、どんなに離れていようとも、地続きのように繋がっている。
 今の熊本に、俳句でできることはとても限られる。それでも、何かやれることはあるはず。それを考えずには居られない。


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次号予告(223号 6月1日発行予定)



次回特集

俳句対局 第四回 龍天王決定戦報告


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2016年5月号(No.222)

2016年5月1日発行
価格 617円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子