100年俳句計画12月号(no.217)


100年俳句計画12月号(no.217)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
日土町日土東地区12月の案内 海田


特集1
選評という名の創作!
選評大賞2015


特集2
俳句対局 第1回松山市長杯


特集3
日暮屋の蕎麦を食べよう!プロジェクト 第3弾



好評連載


作品

百年百花
 杉山久子/鈴木牛後/遊人/朗善千津


新100年への軌跡
 俳句/児嶋ほけきよ/幌谷魔王
 評/都築まとむ/樫の木


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/桜井教人


へたうま仙人/大塚迷路

自由律俳句計画/きむらけんじ

詰め俳句計画/マイマイ



読み物
愛媛県美術館吟行会/岡田一実
Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
クロヌリハイク/黒田マキ
お芝居観ませんか?/猫正宗
歳時記「無季」がバイブル/日暮屋又郎
百年歳時記/夏井いつき
近代俳句史超入門/青木亮人
mhm通信/暇人

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




日土町日土東地区12月の案内
海田

 日土東の12月は何もない。皆ミカン採りや選果で忙しくイベントの類はほぼない。地区公民館での月一の公民館運営審議会すら省略される。しかしそれ故、一切の喧騒を排し冬の夜空の美しさを味わえる穴場かもしれない。
 四国だと大概どこでも星空は綺麗に見えるといわれるが、街灯が邪魔なことこの上ない。日土東地区の中でも、私が住む福岡分区から横尾地分区へ通じる道(車は一応通れるが、狭く街灯もない)の途中、キウイ畑が眼下に広がる、北西に大きく空の開けた地点は冬の夜空を満喫する所として一押しである。ただ猪には注意すべし。一台程度なら駐車も出来るため、暖かい飲み物持参でいらっしゃってみてはいかが。冬の沈黙と独り相対し、冬の句を生み出すための瞑想の場としてはこの上なく適していると信じてやまない。そして大事なことなのでもう一度。猪対策はぜひ十分に。


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特集1

選評という名の創作!
選評大賞2015




 毎年恒例の選評大賞も、今回で9回目。本誌「百年百花」「100年の旗手(休載中)」に掲載された作品の中から好きな俳句を選び、20文字×15行(計300文字)の書式の中で、選評という創作に挑む企画である。
 今回の応募総数は13点。審査は、詩人 堀内統義氏、愛媛大学教育学部教員 中西淳氏、俳人 夏井いつきの3名にて行われた。
 第9回となり選評の質は高いレベルでの安定を見せつつある。審査の様子をお届けする。
(進行は編集長)



 審査の方法

 審査は、各投稿作品に1〜13番までの番号を振り、作者無記名で行った。
 各審査員が事前に推薦する作品を選び、議論によって、入賞作品及び優秀作品を決定した。
(文中、応募者の名前の後にある番号は、審査に使用した番号) 


 入選作品

樹朋 12
 夏蝶の影しんかんと鉄工所 美杉しげり

 いつも通る道筋にある鉄工所が今日は休業日で静かである。普段は鉄骨を切断する音、溶接の閃光、鉄の焼ける異臭など雑然とした空気が鉄工所を包み込んでいる。今日のような深閑とした鉄工所を見ていると、山積みされた建築用の骨材が、まるで破壊された都市のような不思議な感覚に襲われる。そこに不意に夏蝶の影が現れた。
 この深閑とした無機質な空間で、動いているものは夏蝶の影だけである。その影を眺めていると、この蝶が雑然とした骨材のどこかで羽化したように思えてきた。そして、目の前の光景と静寂が空想をさらに増幅させ、多くの蝶が一斉に羽化し、白昼の構内を音もなく乱舞し始めるのである。


中西 4つ最終候補を選んだ中で、一押しするならこの作品。文章に破綻がなく、解釈が丁寧。夏蝶の影の説明もよくわかる。典型的といったら典型的な評ではありますが、よくまとまってます。
夏井 一段落目がとても丁寧に書かれていることは評価してます。句の世界を丁寧に再生してる。気になったのが二カ所。一つは一段落の三行目と二段落の三行目にそれぞれ「雑然とした」という言葉が出てくる点、少しもったいない。もう一つは締めに向かう12行目終わりからの部分。句の解釈を発展させていってるんだけど、この句の表現したいことってそこまで広がるのか?
堀内 僕も最後の三行は、選評の書き手の世界に引っ張って言っているように思った。悪く言えばやや独断。でも筆者なりに句の世界に入り込んで、こういうイメージに持って行った。この世界に引き込まれる様子が、やや独断でありつつ、無理なくたどり着く様子が書かれている。最終的にはこの人の解釈だからそれでいいかな、と思ったんだけど。
夏井 その鑑賞を否定するわけではないんですけどね。でも本来句が言いたかった内容と齟齬があります。この句が表現したいのはあくまで生身の夏蝶の存在です。深閑とした鉄工所に、音なく深閑と飛ぶ夏蝶の影の鮮やかさ。それがこの句の描く光景です。
中西 続きの物語として最後のくだりを許容できるかどうかでしょうね。
堀内 個人的な体験だけど、佐田岬にいった時に道に迷って、こんな光景を見たことがあります。それで受け入れやすかったみたいなところはあるかな(笑)。
編 「しんかん」の表記については?
中西 普通は漢字で書くでしょうけど、あえてひらがな表記。いくつか当てはめる漢字はありますよね。そこはわざとやってるんじゃないかな。
夏井 加えて、句の読みとしては二通りありますよね。「夏蝶の影」で切れるか切れないか。選評でそれについて触れてもよかったか。


鈴木牛後 6
 子規の忌のきりきり捻子を巻く玩具 夏井正人

 晩年の子規の精神の透明さを思う。辛い闘病生活の傍ら、画を描き、俳句を作り、旺盛な食欲を示したというその強さと柔らかさ。
捻子を巻く玩具といえば、子どもが小さい頃に風呂で遊んでいたイルカを思い出す。子どもの力では捻子を巻けず、何度も何度も巻いてやった。イルカは尾鰭をばたつかせながら狭い風呂の中を泳ぎ、そして力尽きて動かなくなる。
父親の腕の力がイルカの推進力に変わるということを、ひとつの世界の法則として子どもは理解していたと思う。ものが動く、人が生きるということの背景には必ず何かしらの「力」が必要なのだ。子規は死ぬ直前まで、「力」のために己にきりきり捻子を巻いていた。
 死に向かってすべてを解放するために。


堀内 真ん中あたりの表現、筆者の日常性 経験の力が豊か。そういう地平の中でこの句と向き合った良さがある。三段落目頭の一文は少し理屈っぽい気もするけど、許せる範囲。
夏井 三段落構成が興味を持って読めた。いきなりの語りだしから子規について語り、二段落目で日常性。どうやって子規の透明さに着地していくんだろう?と思っていると、三段落目で「こういう解釈で最初の一行目に到達したのね」とわかる。三段落目頭はたしかに理屈っぽくはあるんだけど、取り合わせを解釈していった結果、「力」にフォーカスしていった、という作者の意図が伝わってきた。
中西 評価はお二人とおおむね同じ。三段落目頭には少しついていきにくかったところはあります。ここも自分の体験と結びつけられたらよかったのですが。最後のまとめ方がうまいのも同意見です。
夏井 季語が子規の忌だから、日常性だけで読み切るのはたしかに無理があるんですね。取り合わせの接点を説明できなければ、どうしても選評として片手落ちになってしまう。難しい流れをよくこれだけの行数で書かれました!という賞賛が大きい(笑)。
堀内 日常性を持ち出してうまく書いているのが良かった。
編 どんな玩具を設定するかで読みが広がりそう。プラスチックとかブリキとか。
堀内 僕最初読んでて母親を思ったんだけど、読み進めていると、父親だとわかるんですよね。えらいなあ、父親(笑)。
中西 私のイメージとしては難しいまき方でないものを思ってたから少し違和感もあったんですけど。そんなに力が必要になるのかな?と。でも解釈の部分なので想像の範囲で自由ですから破綻はない。
夏井 ねじをまく系の玩具って物によっては結構力いりますよ。オノマトペが変わったらまた違う想像も広がるんですが、句に文句を言っても仕方ないので(笑)。ともあれ、俳句に対してこの選評は破綻なし、ってところでしょうか。


雨月 7
 ラ フランス食べ頃わからない二人 幸

 一緒に暮らし始めて最初の日曜日。小さなテーブルにはラ フランスがひとつ。昨日、二人で出掛けたデパ地下で購入したのだが、やたら固くて食べられそうな気がしない。軽やかな名に似合わぬくすんだ薄緑色のでこぼこのそれは、フランス原産の洋ナシ。明治時代から日本で栽培されていたらしいがスーパーなどでも見かけるようになったのは最近だ。そんな馴染みのないそれを手に取ったのは、始まったばかりのこの暮らしに少なからず甘い夢を見ているからかもしれない。
 今朝は目玉焼きで揉めた。私はまだ彼の多くは知らない。彼もまたしかりだろう。二人のあわいに石のようなるラ フランス。やがては芳醇な香りを放つらしいのだが。。。


夏井 最後の「。」3つは「…」にしたかったんだろうか? 全体としては理屈こねてるわけでもないし、自分の中で思い浮かんできた「二人」の日常を淡々と描きつつ、物語を生み出してる。ラ フランスという季語が生み出す二人の生活であり、未来であります。それが見えてくるのがよかった。
中西 無理のない文章になってるところが一番評価のポイント。句に対しての読みは「食べ頃がわからない二人」なのか、「食べ頃」で切れて、「わからない二人」がいるのか、二通りあります。切れるのかどうかわからないところがこの句のおもしろさ。この内容に対して香りある季語を取り合わせてるところも味わいです。その点に対する説明があったらよかった。また、最後の四行を書き出しにして解釈を作ってもよかったのかな、という気もしていますが。最終的に、「わからない二人」に対する解釈が面白く出てたのでいただきました。
堀内 この二人って、若い二人なのかな、老いた二人なのかな?どうだろうな?(笑)
夏井 人物に想定できる幅は広いですね。
堀内 今の「二人」ってこんなこともわかり合えないものなの? なんで目玉焼きでもめてんの? いろいろ考えちゃう(笑)。
編 食べ頃はラ フランスなら触ればわかりそうな気もします。
夏井 食べ頃を知りたい知りたくないというよりも、このラ フランスがおしゃれな二人の生活を夢見ている象徴のように扱われてますよね。そこが普通の梨とは違うところ。日常的に食べるというよりも、手にとってるわたくしを楽しんでるような果物。一段落の「わたしたち」と、もめた現実の「わたしたち」という落差も現実感としてリアルかなと思います。


めいおう星 9
 手を繋ぎ生まるる双子朝の月 てん点

 中天にしらしらと月残る朝、地上の一隅で上がる産声の輪唱。双子は知らない、親が何者であるかを、此処が何処であるかを、ましてや慈しみや残酷を。
 ある日突然、二人だけのふれあいに優しく漂っていた淡紅色の世界を搾りだされ、恐ろしいまでの光明界に相次いで零れ落ちる。その刹那、双子はひしと手を繋ぎ合い、転落の恐怖に堪えんとするのだ。
 魂消る叫びを発した口から肺へ、どっと流れ込む新世界の息吹き。その青く澄んだ気体は、双子の五体隅々までをも満たす。同時に、彼らの時計は、密やかに時を費やし始める。
 ますます儚い朝月が、握り合った手が弛み、いつしか離れゆく様を、見届けて消えた。


夏井 腹の中をここまでのぞき見て書くか!というささやかな驚き。ただ、するするこっちに言葉が入ってきてくれるタイプではなく、一語一語脳の中で描こうとしてる世界を再現するのに読み手として力がいる、負担がある。決して嫌な負担ではなかったのも事実ですが。ささやかに疑問を感じるのは、この句が表現しようとしたものと選評の世界との差異。本来句が表現しようとしたのはシンプルで明るいものであるのではないかな?という点で、選評が描こうとしてる世界とは差があるんじゃないかな。
堀内 句の情景がシンプル。選評はそれに対して仰々しいというか濃い。でもいやな感じはせず、筆者の文体で自分なりの世界を作り上げてるのが不思議で魅力がある。句に対する選評というよりも、選評が独立した作品のようで。
夏井 選評が独立した詩のようですね。
中西 表現世界は面白いんですけどね。文体の独特がすっと頭に入ってこないところで僕は選べなかったです。産声の輪唱とか。あとは朝月という言い方など。無理のない、一貫性のある表現であったら作品の世界としては面白いしいいんですけど。
堀内 表現が過剰というか……。
夏井 力が入りすぎてるところはありますね。
編 手を繋いで生まれることはあり得ないですよね。句自体が一種のファンタジー。
堀内 生まれた子を受け取る側の心理なんでしょうね、その辺は。


 議論の末に

編 最優秀賞を決めていきます。6番は三段構成の良さ、親子の関係の見える点などが評価されています。7番は登場人物の描き方が自然であること、句への読み解きが面白い点など。9番は俳句の世界を忠実に選評してるとは言い難いけど、逆にやりすぎ感が評価されてます。ここまでは三人中二人が選んだ作品。唯一、三人ともが評価した作品であるのが12番。典型的であり破綻や傷がない。最終段落の、書き手が脳でふくらませた部分を許容するかどうかという問題はありつつの評価です。最優秀賞に選ぶならどれ?
中西 私は12番を推したいですね。
堀内 同じく。
夏井 私は6番か7番を推します。12番の最終段落、発展のさせ方が句の世界とは違ってしまってるのはやはり気になる。6番や7番はちゃんと作品の世界を押さえた上で選評を展開しているので、私の中での席次ではこれらの方が評価が圧倒的に上です。12番は唯一3点入っている作品ではありますが、再検討はしておきたい。
編 選評の世界だけでなく、元となった句をどれだけ押さえているか。評の出来としてはどれか一作がこれぞ!と突出しているわけではない?
中西 最終選考の俎上にあがった四作品はどれもどれですね、拮抗してる。
堀内 句の世界を押さえるということなら、6番には僕も魅力を感じてます。子規って日常を大切に生きた人だと思う。6番の句から、おもちゃを介して遊ぶという日常の大切な輝きを結びつけてきたのは素直でいいと思うんだよね。自然。でも12番と6番なら、前者の方が詩的解釈の要素は強い。最後三行への飛躍を受け入れるか受け入れないか、そこが評価の分かれ目だろうね。
夏井 句を原点として評という世界が生まれ、その豊かな発展として最終段落がある、というのが、お二人の考えですね。
  私は、読みを「豊かにする」ことと「逸脱すること」は意味が違うと考えます。もし私が句の作者だったら、この最終段落には苦笑いします。有り難い空想だけど、そういうことじゃないんだよな、って。
中西 初読では12番、乱舞というのはたしかに思い至らなかった。文章を読んでいくと、結論には納得いくんだけど。6番か7番かというと、6番の父親の理屈っぽさの強引が気になって、7番を推したくなる。素直に句を表現してるのは7番がもっとも優れてるかな。自分の感覚を素直に押し出してる。句の世界感としては7番をもっとも評価しているというのもあり。何に着目して選ぶか、ってところなんでしょうね。
編 結局、拮抗。議論の感触からすると、三人が推してる12番がやはり最優秀賞ということで良いかと思います。最終段落の強引さを許容する人は、「思えてきた」の断定していない語りがあるから許容しやすいのかも。
夏井 異論は大いにありますが、三人が票を投じているという意味での一定評価はある、という言い方で矛を収めるべきなんでしょう。


最終結果

最優秀賞 樹朋

優秀賞 鈴木牛後
  雨月
  めいおう星

入賞 ひでやん
  浅川芳直
  松尾千波矢
  蓮睡

*各賞の表彰は、12月5日開催の100年俳句計画大忘年会にて行います。



100年俳句計画作品集
100年の旗手
連載者募集のお知らせ

 「100年の旗手」は、年齢や俳句の経歴に関わりなく、本誌にて作品集を発表が出来る場として、来春新たにスタートを切ります。
 そこで、毎月10句3回の連載に挑戦する方を募集します。来年4月号に掲載できるタイトル付の10句の作品集を、Eメール(magazine@marukobo.com)、またはFAX(089-906-0695)にて本誌編集室までお送り下さい。
 編集室にて連載者を決定し、掲載いたします。
 応募締切は来年2月20日(土)。多数の挑戦者をお待ちしております。


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特集2

俳句対局第一回松山市長杯




 去る10月31日、松山市立子規記念博物館にて、松山市主催「俳都松山宣言2015〜十七音があなたを変える〜」が開催されました。
 第一部は全国TBS系列で放送中の「プレバト!!」の出張版。第二部は、大阪と東京で開催した俳句対局の頂上決戦、「俳句対局第一回松山市長杯」が行われました。
 本特集では、第二部の結果と共に、今回俳句対局に出場された俳人の岸本尚毅さんの体験記をお届けします。
 
毎日放送制作、全国TBS系列で放送中の人気番組が松山にやってきました。「プレバト!!」でアシスタントを務めるMBSアナウンサーの豊崎由里絵さんの司会でイベントがスタート。番組でおなじみの梅沢富美男さん、武井壮さん、ノンスタイル井上さん、安田美沙子さんからビデオレターで寄せられた俳句を、俳都松山大使としても活躍する夏井いつきさんが生添削しました。


 俳句対局第一回松山市長杯は、今年7月に大阪と東京で開催された俳都松山キャラバン俳句対局トーナメント戦での優勝者中山奈々さんと大塚凱さんの2名と、昨年8月に松山市で開催された俳都松山宣言俳句対局エキシビションマッチで勝利した片野瑞木さん、そして昨年のそのイベントで出場宣言をした岸本尚毅さんの4名によるトーナメント戦にて、優勝を争いました。
 審査員は、高野ムツオさん、今井聖さん、森賀まりさんが務めました。
 まずはくじ引きをし、対戦を決定。
 第一試合は片野瑞木さんと大塚凱さん、第二試合は岸本尚毅さんと中山奈々さんの対戦となりました。

*俳都松山キャラバン、および俳句対局のルール等については、本誌8月号をご参照ください。 


一回戦 第一試合
 先手 片野瑞木
 後手 大塚 凱

席題句 つとのびてほちりとさくや女郎花 点数(平均) 高野 今井 森賀 減点
片野瑞木 大郎と呼んで狩人山奥へ 5.6 (5 6 6 )
大塚 凱 受験子が廊下の奥に来て嗤ふ 5.6 (6 5 6 )
片野瑞木 母は今母のなき子や赤のまま 6.3 (7 5 7 )
大塚 凱 大鷹の下に眠れる乳母車 7.3 (8 6 8 )
片野瑞木 地下足袋の名は力王ぞ豊の秋 7.6 (8 7 8 )
大塚 凱 灯台は寒くて丹田に力 6.3 (6 7 6 )

 名前 俳句点 残り時間 時間点 合計 勝敗
先手 片野瑞木 19.5 00:02:33 0 19.5 勝
後手 大塚 凱 19.2 00:02:21 0 19.2 負

 一句目「太郎」を「大郎」と書き間違えて投句した片野瑞木さん。むしろリズムが整い、大きなダメージとなりませんでした。大塚凱さんの高得点句「大鷹の下に眠れる乳母車」を地下足袋「力王」のリアルさでかわし、僅差で片野瑞木さんが勝利しました。


一回戦 第二試合
 先手 岸本尚毅
 後手 中山奈々

席題句 すてつきに押し分けて行薄哉 点数 高野 今井 森賀 減点
岸本尚毅 押し合ひつつ森無き秋の独逸へと 6 (6 5 7 )
中山奈々 独り言増えたるにごり酒どろり 6 (7 5 6 )
岸本尚毅 鶏頭咲き増え米国金利浮上せず 6 (7 5 6 )
中山奈々 色変へぬ松や国立美術館 5.6 (6 5 6 )
岸本尚毅 空美し秋水に我映り消え 6.6 (7 5 8 )
中山奈々 幸水や喪服以外の黒き服 5.3 (7 5 7 -1)

 名前 俳句点 残り時間 時間点 合計 勝敗
先手 岸本尚毅 18.6 00:02:31 0 18.6 勝
後手 中山奈々 16.9 00:02:49 0 16.9 負

 いよいよ岸本尚毅さんの登場。「押し合ひつつ森無き秋の独逸へと」「鶏頭咲き増え米国金利浮上せず」など、時事俳句で攻める岸本尚毅さんに対し、「独り言増えたるにごり酒どろり」など実感の句で攻める中山奈々さん。それぞれ3句目が高評価を得たものの、中山奈々さんの季語「幸水」が、前句の季語「秋水」の一部を季語として使用してしまったことにより減点1となり、思わぬ点差で岸本尚毅さんが勝利しました。


決勝戦
 先手 片野瑞木
 後手 岸本尚毅

席題句 星一ツ飛んで音あり露の原 点数 高野 今井 森賀 減点
片野瑞木 飛ぶためのホウキを作る秋の昼 7 (6 8 7 )
岸本尚毅 飛ぶほどに日に消ゆる鳥秋の空 5.3 (6 6 7 -1)
片野瑞木 消去法で今夜は牡丹鍋とする 6.6 (7 7 6 )
岸本尚毅 夜の山風音水の音寒く 6.3 (6 6 7 )
片野瑞木 鵙高音ミイラのような贄二つ 5.3 (5 5 6 )
岸本尚毅 手はいづこミイラの如く日向ぼこ 6.3 (6 7 6 )

 名前 俳句点 残り時間 時間点 合計 勝敗
先手 片野瑞木 18.9 00:02:30 0 18.9 勝
後手 岸本尚毅 17.9 00:02:55 0 17.9 負

 岸本尚毅さんの一句目、片野さんの季語「秋の昼」に対し「秋の空」としてしまい、痛い減点1。
 両者譲らずの好勝負でしたが、最終的にこの減点1点が物を言い、片野瑞木さんが優勝を果たしました。ちなみにこの減点がなければ同点となり、残り時間の多い岸本尚毅さんが勝利していました。



俳句対局参戦の記
岸本尚毅

 審判を二回つとめた。俳都松山宣言のエキシビションマッチと東京会場である。エキシビションマッチのとき久保田牡丹さんと片野瑞木さんの対戦の採点をしながら自分も俳句を作ってみた。それなりに作れた。見ていると面白そうだ。チャンスがあれば参戦したいと話半分に宣言したところ、引っ込みがつかなくなった。
 東京会場では関悦史さん、中町とおとさん、大塚凱君、青本柚紀さんがわずか数十秒で凝りに凝った句や表情豊かな句を作った。それをまのあたりにしたときは「こいつらと勝負するのか」と、かなり後悔。はるか年下の中町さんに敗れた関さんは「自分のような年寄りは負ける役回りですよ」とぼやいた。その関さんより私の方がさらに年上だ。五十四歳のオッサン岸本が、若者の瞬発力と柔軟な脳みそにどう対抗するか。
 九月初旬の海外出張に備えて英語の練習をしていた。それが終ったら本番当日まで毎日、俳句対局の特訓をしようと思っていた。だが取り紛れて練習が出来ない。ずるずると日が経った。結局、松山に発つ前夜に家内を相手に模擬対局を二回やっただけ。調理用タイマーを一分経過のアラームに使った。家内が『子規句集』をパッと開いた。そこにあった「吉原の太鼓聞ゆる夜寒哉」をゼロ番句にした。「太鼓」を頂いて作ったのが「撥もなき狸の太鼓あはれなり」。こんな句では大塚君にとても太刀打ち出来ない。目の肥えた松山の観客の皆様にも失礼だ。それどころか一分経っても句が出て来ないときもある。
 第一に時間切れによる失格を避けること。第二に作品の上で多少の存在感を示すこと。これを目標に作戦を考えた。審判の高野ムツオさんや今井聖さんの難しそうな顔を思い浮かべた。結局、小難しい時事ネタを試みることにした。シリア難民と米国の金利据置。この二つのニュースを頭の抽斗に入れておいた。相手の句の言葉尻をつかまえて強引に時事ネタに持ち込む。句形の乱れは気にしない。ただし時事ネタは二句まで。残りの一句は自然体で作る。中山奈々さんとの対戦にはこの作戦で臨んだ。
 そもそも、サイボーグのように句が出来る大塚君、地元松山の実力者の片野さん、大阪を勝ち抜いた中山さんの誰と当っても勝てそうな気がしなかった。そのため決勝の作戦はただの自然体。その結果、緊張が緩んだ。相手の句の季語と共通の字を季語に使ってしまうというチョンボが出たのは自然体のなせるわざであった。

 俳句対局には興業的な面白さがある。短時間でパッと結果が出る。審判のしゃべりが面白い。というより、面白くしゃべる人が審判をしている。勝負事である。賞状や賞品があり、名誉欲や物欲を刺激する。大勢のお客さんがリアルタイムで観戦する。ギャラリーの夏井母子が上手に場を盛り上げる。若くて威勢のいい俳人が登場する(岸本は別)。短時間で句を作るという、大道芸的な面がある。
 「興業」というと商売気があって不純だと思う人がいるかもしれないが、江戸時代の俳諧は多く「興業」であった。
 俳句対局を挟む三日間、私は俳句漬けだった。対局の前日は会社を休み、芭蕉とその弟子の支考を祖とする美濃派(結社名「獅子吼」)の文台開筵俳諧に参加させて頂いた。当代の大野鵠一宗匠は芭蕉から数えて四十一代。旧派俳諧の座に子規派(新派)の末裔たる岸本が参加し、花の定座を務めさせて頂いたのである。さらに対局の翌日は、現代俳句協会青年部の三橋敏雄を語るシンポジウムに参加した。
 文台開筵俳諧では十八公という形式の連句を行った。十と八と公で「松」という字になる。連句の発句は有季。付句には雑(無季)の句もある。近代俳句が原則有季であるのは、いわば発句が独り立ちして俳句になったから。発句が有季であるのは連歌以来の約束事である。ところが三橋敏雄は、発句は俳句の一部に過ぎないと言う。近代俳句は無季の付句の持つ豊かな世界を置き忘れたのではなかろうか、と。
 俳句対局はいわば「発句対局」である。松山は子規派の故郷。俳句対局の俳句は有季を原則とする。前述の通り、私は季語で失敗して対局に負けた。
 その一方、俳句対局は連句にも僅かに似ている。ゼロ番句が発句。前句の語や字を頂くのは連句の付合に似ている。また、前句の季語との重複を忌むルールは、連句の打越や去り嫌いを連想させる。
 しかしつまるところ、対局は作家対作家の「対局」である。句対句の「句合せ」ではない。山本健吉は俳句文芸の特徴を滑稽、挨拶、即興という三語で語った。俳句対局は俳諧文芸の即興性をクローズアップした仕組みだと言えよう。
 俳句対局のルールは季語を要に据えた完成度の高いもの。さらなる改訂を検討するさいには、実践的な観点のみならず、連句をも視野に入れた大きな意味の俳諧文芸としての視野の中で、対局というゲームの性質を見定める必要があるだろう。


岸本尚毅
1961年岡山県生。「天為」「屋根」同人。山陽新聞、石田波郷新人賞、星野立子新人賞、田中裕明賞などの選者。著書『高浜虚子 俳句の力』『十七音の可能性』『生き方としての俳句』『俳句のギモンに答えます』等。


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特集3

日暮屋の蕎麦を食べよう!プロジェクト


第3弾 蕎麦刈り吟行
文 あねご


 八月八日に種蒔きをした蕎麦二種類だったが、七十七日目にはや刈り取りの運びとなった。というか保険に蒔いた北海道産の「ぼたん」は先に開花し、ひと足先に刈り取られすでに稲木に干されとった。参加メンバー数名は見事な方向音痴でこの蕎麦畑にたどり着くのに毎回苦労している。かくいう私も何度か通り過ぎたことがある。そして今回もハプニング発生と相成った。

秋桜と山羊と実りと俳人と ひでやん

 畑のずっと手前で迷子になって集合時間ギリギリに到着した雪花、野風、あねごを見て日暮屋さんがガツンと一言「戦力外メンバーが来た」とは! な〜にをおっしゃいますやらと言いたいところだが、当然のことながら自前の鎌もなく、いでたちはお洒落なレインブーツ。とても役に立つとは自分でも思えんわい。

戦力外てふ温情の柿日和 あねご

 一足先に作業に入っていたのは日暮屋、マーペー、烏天狗、ひでやん、きとうじん、笹百合母さん(いつの間にかお母さんになっている)、すっかり蕎麦畑に馴染んでいる。蕎麦の花は真っ白だったのに茎は血を吸ったように赤い。笹百合母さんの刈り跡はひときわ規則正しくて実に美しい。刈り取った束は同じ分量で綺麗にまとめられて置かれていく。しかもよお見ると鎌で畝の草を掻き取りその上に蕎麦の束を等間隔に置いていきよる。ちょっとの要領の違いが他の刈り跡とは違う美を形成している。長年の農作業の成せる技にしばし見とれてしもうた。

一握り愛しむように蕎麦を刈る 笹百合
蕎麦と一緒に土まで刈ったの誰だ 日暮屋
蕎麦刈の風澄む畝へ紅き積む 野風

 俳句米を作った時の刈り取りに使ったのと同じギザギザの鋸刃のついた鎌を借りてやっと出陣。期待も何も蕎麦の茎はスカスカのストロー状態で素手でも折り取ることができるくらいだ。乾いた音を立てながら一握りずつ刈り取っていった。その後藁で束ねていくのだが、これも笹百合母さんは魔法みたいに手際よく作業を進めていく。簡単そうに見えてなかなかせせつこしい作業である。ちゃんとゆわえてないと稲木に架ける時に抜け落ちてしまう。そうして蕎麦の束を運んで稲木に掛けていくのだがここではきとうじんさんが大活躍。一気に大量の束を運んでくれた。稲木に架け本日の作業は無事終了。

淡々と蕎麦を揃へて鵙日和 きとうじん
影長き昼の休み田蕎麦を干す 烏天狗
七三に分けたる蕎麦の稲架となる マーペー

 蕎麦の種蒔きをした時からすでに食べることばかり想像していたのでここまでくるといてもたってもおれず、日暮屋さん行きつけの蕎麦屋まで車を走らせた。ここでキムさん合流。十割蕎麦っちゅうのはこんなんじゃという蕎麦を堪能し、ますます自分たちで育てた蕎麦を早く食べとうて実食の日程の調整に熱が入った。

秋麗の収穫祭の下準備 きとうじん

 この日、しんじゅさんと新メンバーの大学生のはぐはぐ君が蕎麦畑を目指してやってきたのだが、すぐ近くまで来ていたのに辿り着くことができなかった。磁場がはたらいているのか、はたまた狸の仕業か?

干した蕎麦痩せゆく青空の淋しさ 日暮屋
刈り取りし畝間に残る千草かな ひでやん


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2015年度 第三期 第一回


「灰色山羊」 杉山久子

秋澄むや魚のかたちの醤油入れ
花野まで灰色山羊を連れだしぬ
秋蝶の影にかさなる髪の影
第十二代王墓ぺんぺん草さかん
女王に目ぢから空に雁の声
秋冷やトロイの木馬より間者
イワシショー果てて秋思のごときもの
耳掻きの先のふはふは小鳥来る
入札予定地刈りのこされし芒
コピー機をなだめて秋の時雨かな
身に入むや鳴りてすぐ止むオルゴール
煮玉子の黄身のとろんと冬に入る


第2回芝不器男俳句新人賞受賞。「藍生」「いつき組」「ku+」所属。最新句集「泉」発売中。




「牛の胞衣」 鈴木牛後

産みたるか牛戻らざる霧の牧
にれかめる山羊と秋思の目を合はす
秋草はまだあたたかき色をして
軽トラの轍に釣瓶落しかな
ひとすぢのライトの抉る夜の霧
光る鹿の眼光らぬ眼もて見てをりぬ
霧の奥に牛が動く夜が動く
牛の尿月光を浴びすぐに消ゆ
草紅葉歩けばひらく牛のつめ
冷やかや人工乳首に螺子がある
紅葉かつ散りぬぎゆるんと牛の胞衣
朝寒や小さき仔牛の大きこゑ


1961年生まれ。第1回大人コン最優秀賞。北海道の片田舎でほそぼそと牛飼いをしている。この号が出るころはもう冬景色だろう。




「回転台」 遊人

小六月バスの向き変ふ回転台
山中のよく見通せて冬の滝
綿虫や呼んで答へぬ人のゐる
帰り道には山茶花の散つてをり
納豆の糸を引きたる別れかな
置き手紙あれば冬波見にゆけり
河口とふ寂しきものに水鳥は
裏返す松藻のうらの濡れてあり
冬雲や天使の羽も龍の尾も
冬川の己の貌を突く鳥
冬夕べ足音に啼く室内犬
絨毯を踏めば枯葉をふむごとし


最近インターバル歩行を始めた。痩せている人は、運動をすると体重が増えると聞いていたのだが、一キロ減った。年齢のせいか。




「茸狩」 朗善千津

棺桶の如き荷を負ふ霧の門
濡れ髪の磔となる冬の月
或る人の告白を聞く虫の闇
夜の駅菊の花束膝に薫る
弁当をひらく嬉しさ谷紅葉
紅葉且つ散る犬小屋にぶつかりて
雲浮かぶ茸林の中の空
老父子の一心同体茸狩
茸狩り茸の声を聞くやうに
茸狩俳句の話ばかりして
一杯にして茸籠やや重き
茸茶の温かく雨降るらしく


棺桶の如き荷とは、夫ナサニエル ローゼンの楽器です。来春四月九日松山市民会館にてバッハ無伴奏チェロ組曲全曲コンサート、命懸けで弾きます。聞いて下さい。




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新 100年の軌跡


2015年度 第三期
第一回


500キロドライブ 児嶋ほけきよ 

助手席の石鹸香る寒昴
息白し高速道路慎重に
ラヂオから知らないリズム寒牡丹
しりとりの続かぬ気配隙間風
トンネルを抜け咳一つの安堵かな
山眠るテールランプの近づかず
サービスエリア緊張解けぬおでん喰ふ
冬銀河脚の伸ばせぬ仮眠かな
暖房の強弱左手で変へる
トラックに囲まれ加速手足荒る
エンジンの音の穏やか冬雲雀
梟やまだ唇の腫れてゐて
四車線一番乗りの冬の朝
橋の上風受け走る冬の波
冬景色500キロとて陸続き


児嶋ほけきよ
 句歴2年。「櫟」所属。『WHAT vol.2』、『WHAT vol.3』共著(コジマアキラ)。




 死体安置室 幌谷魔王 

水鳥に生まれ変はるための自殺
感情のなくなつてゆく毛糸編
葬送のメロデイきりたんぽ齧る
帰り花指さす指に絆創膏
食道のあらはにホツトドリンクス
神の留守ゆゑに暴動多発中
牡蠣飯の飯の汚く残りたる
咳止んで咳また咳の誕生日
くだら野に身体吸ひ込まれてをりぬ
雨を抱くことは叶はず初時雨
散るちるチル言葉でさへも紅葉散る
おしくら饅頭とほくに死体安置室
無色てふ色のありけり鐘氷る
死にさうなほど軽くある今日の雪
住人の数よりおほく柳葉魚焼く


幌谷魔王
 1995年生まれ。高校3年より句作を始める。「いつき組」所属。




肉体感覚 都築まとむ


助手席の石鹸香る寒昴 児嶋ほけきよ
 助手席に乗る人の石鹸の香りに「寒昴」が取り合わされたことで、高まる気持ちが表現された。季語の効果は絶大だ。

梟やまだ唇の腫れてゐて 児嶋ほけきよ
 思わず自分の唇を舐めてみた。「唇の腫れ」という肉体感覚を追体験している。梟のくぐもった鳴き声は、唇の腫れのような重たさ。

食道のあらはにホツトドリンクス 幌谷魔王
 舌とか胃はいろんな場面で確認するけれど「食道」の存在は至って地味だ。確かに暖かい飲み物はジジジーと食道を伝わって落ちていく。この句で「あらは」な食道を実感できた。

くだら野に身体吸ひ込まれてをりぬ 幌谷魔王
 この感覚にも共感。夏草なら勢いに押し返される感があるが、「くだら野」には身を預けたくなるような懐かしさがある。いつかは自分も土に返るという感覚か。朽野ではなく「くだら野」としたところも「吸ひ込まれ」る感じ。


都築まとむ
 1961年愛媛県八幡浜市生まれ。第3回選評大賞優秀賞。



終着点 樫の木


 「500キロドライブ」を読み進めると車内の空気、車窓の風景などが次々に立ちあがってくる。
助手席の石鹸香る寒昴 児嶋ほけきよ
 「助手席」にいるのは友達だろうか、恋人だろうか。「石鹸」の「香」の清々しさが旅立ちに相応しい。頭上に「寒昴」、ヘッドライトの光の先には深い闇がある。
冬銀河脚の伸ばせぬ仮眠かな 児嶋ほけきよ
 「冬銀河」の下、冷気は車内に染み込んでくる。高速道路のサービスエリアでの「仮眠」だろう。伸ばせない「脚」や腰が強張ってだんだんと痛んでくる。

葬送のメロデイきりたんぽ齧る 幌谷魔王
 「葬送のメロデイ」は携帯の着信音だろう。一方、こんがりと焦げた「きりたんぽ」を「噛る」人物には生命力を感じる。そのギャップが魅力となっている。
おしくら饅頭とほくに死体安置室 幌谷魔王
 「おしくら饅頭」には生身の体の熱や弾力、喧騒がある。そこから最も遠い場所として「死体安置室」がある。
 表題「死体安置室」を見た時に次の句を思った。
雪はしづかにゆたかにはやし屍室 石田波郷
 作者には何時かこの句を越える世界を見せて欲しい。


樫の木
 1965年愛媛県生まれ。大分県在住の家具職人。第5回選評大賞優秀賞。


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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。選者は、関悦史さん、阪西敦子さん、桜井教人さんです。

 「へたうま仙人」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は大塚迷路さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:藤


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 関悦史

 神田古本まつりにしばらくぶりに行ってきましたが、同時開催の神保町ブックフェスティバルで出版各社が在庫処分本を並べていたワゴンを別にすると、どうも以前ほど面白くない。ネットが普及してから基本的に掘り出し物というのがなくなってしまい、たまに出てもいいものは相応の高値がついているので手が出せないということになる。この十何年か古本屋をいくら見ても全く出なくなった後藤明生は、今回もやはりありませんでした。


隙間風天使がひとり通り過ぐ 小市

 詩的な(俗にいう「ポエマー」な)言い回しというのは大体詩でも俳句でもダメにしてしまうものなので、この句の「天使」などかなり危ういのですが、「隙間風」が天使らしからぬもの寂しいもので、その上触覚的に実感できてしまう。その辺の要素とポエマーな部分がうまく潰し合って成り立っています。英語で「天使が通る」といえば会話が途切れて気まずくなるという意味。そういう人の気配も間接的に含まれていて、膨らみあり。



振り向けば別の空あり秋桜 夜市
 振り向いたら秋桜越しの空があったということか、あるいは雲の様子が違っていたか、それともはや日暮れの兆す空になっていたか。解は幾つかありますが、秋桜は取り合せ的に取った方が空の広さが感じられそうです。

天高し光生まれる生まれゆく アンリルカ
 「天高し」という、わりと抽象性の強い季語の一物仕立てがやや珍しい。「生まれ」の反復は、空に見入る/魅入られるときの感覚を反映しています。文語「高し」と口語「生まれる」の混在が難といえば難。

蔵のある家の欲しかり秋の雨 遊人
 金持ちになりたいという意味ではなく、「秋の雨」との組み合わせで、物件として、秋雨に濡れたら絵になりそうな蔵のある家が欲しいとの意味になる。さして必要もない変なものを欲しがる句に変じ、微妙に俳諧味あり。

コンバイン遠巻きに鳩お昼時 青柘榴
 軽い意外性を感じたのは、個人的に田畑で鳩を見たことがあまりないからで、雀、鴉、鷺などだったら当たり前過ぎて通り過ぎたでしょう。三段切れとか、「お昼時」の「お」とかが若干気にならないでもありませんが。

葛の花木の頂きに咲きにけり カシオペア
 一見ただ事や報告句みたいに見える句ですが、当欄の投句のなかではちゃんと物を見ていて、余計なことを言わず、型ができているというのは稀少。古拙な詠み方が素材と相俟って「木の頂き」がじわじわ効いてきます。



古希迎へ河豚づくしなり青き皿 レモングラス
金木犀いい匂いねと十回目 和音
秋鯖とトリスの小父さんのグラス ポメロ親父
赤い羽根回覧板に刺され来る 喜多輝女
漆喰へ吸い付く指や天高し 越智空子
名月や遠くへ行くかもしれぬと言ふ 野兎
秋麗猫の目線で島歩き ミセスコナン
猫じやらしわははわははと笑ひヨガ 鯉城
鴨来る始めは二羽の鳴き合へり 遊人
成りゆきに任す独りの冬支度 西条の針屋さん
風は紋人は足跡晩夏光 大阪野旅人



先選者 阪西敦子

 その日は都内からタクシーで帰宅していた。お堀から言問通りをゆるゆると抜けて、日光街道へ出る道。刻々と移り変わる古い地名も気に入っている。帰宅は午前三時半ごろだったか。風呂に入って洗濯機と炊飯器のタイマーをセットして布団に入る。最後に閉じたのはiPhoneの時計の画面。「世界時計」という機能は、見たい主要都市の時刻を並列しておくことができる。これを使い始めてから訪ねたパリが東京の午前四時と並んで前日午後八時を指す画面を閉じて眠りにつく。


振り向けば別の空あり秋桜 夜市

 「別の空」とは何と別なのか、定かではない。光か、色か、単に方角なのか、二つの空は何によってわけられているのか、振り向いたのは私なのか、秋桜なのか。結局それが、ただ秋桜であるという。言葉はやさしくて、とても明解であるのに、詳細な実景があまり明かされることのない句。それなのに、空を仰ぐ秋桜の姿がひろびろと見えてくる。一陣の風で軽々とその光を変え、ある一定以上の広がりを持つ花、秋桜ならではの「別の空」なのだろう。



そのことはひとまず置いて月見かな 凡鑽
 日常的な作業かもしれないし、折悪しく持ち上がった問題かもしれない。月見の直前までは、だいたいみんなそんな具合。しかし、いざ月見となれば、そこは別物。月見のあとでは、世界だって変わっているかもしれない。

運動会終はつてからの元気かな みちる
 緊張と、期待感と、人々の視線と、いろいろの交錯する運動会のややこしさを、何となく感じてしまってどうもいま一つな子が、終わると同時に元気を取り戻す。集まった家族で御馳走を囲みながら、武勇譚も饒舌に。

縄跳びの大波小波金木犀 もね
 大波小波はどんな跳び方であったかと思うのだけれど、不思議にその縄跳びは今もそこで続いているような気がする遊び。その傍らにはいつも金木犀が香って、波に揺らされるうちに、それ自体も波となるようでもある。

蔵のある家の欲しかり秋の雨 遊人
 どういった欲求なのだろうか。広さであれば庭の方がよく、財産であればその中身の方がよく、居住性は家が続いている方がいい。ヒントとしては「秋の雨」。囲われている安心感なのか、壁に垂れる雨の模様か、確かに欲しくなってくる。

甘し甘し無花果甘し葉の広し カシオペア
 知っている、無花果の実が甘いことも、その葉のかたちも。しかし、不規則なリフレインの中に無花果がおかれて、最後にその葉へ視線を移すと、甘みが一層広がって、無花果というのは、なるほどそういう実だったかと改めて思うたのしさ。



一ピース欠けしパズルや秋の雲 小市
城壁を滴るごとく曼珠沙華 夜市
秋繭や白き匂ひに薄き影 一走人
天空のホテルの果ての秋澄みぬ うに子
犬の影我影となる秋の暮 ミセスコナン
十月の風聴きたくてここにいる  まるにっちゃん
猫じやらしわははわははと笑ひヨガ 鯉城
鳥渡る会議終りし西の空 哲白
鴨来る始めは二羽の鳴き合へり 遊人
葛の花木の頂きに咲きにけり カシオペア



後選者 桜井教人

 四国遍路を世界遺産にという動きがある。お遍路の一人として、なぜ世界遺産にする必要があるのかわからなかったので少し調べてみた。推進協議会の会長は経済連の会長、副会長は四県の知事だった。目的は構成資産の保護と文化的価値の国内外への発信だそうだ。世界遺産になって喜ぶのは誰なのだろう。考えてみてもやはりわからなかった。わからないことが多いからお遍路をしているのだ。少しだけわかっているのは、自分にとってお遍路は「自分の心遺産」だということだ。

特選句

パスタの名はビーナスの臍秋めける  ゆりかもめ

 食べ物の句は美味しそうにが原則だが、この句はそこを目指してはいない。名詞の強いオリジナリティーとそこからの想像力が楽しい。そう言えば某番組で「尼さんのおなら」という有名な洋菓子があることを知った。

由布岳の継ぎ目に霧のあと一片 小雪

 活火山である所以なのか、由布岳は形も色合いも何だか歪である。それを「継ぎ目」と表現したところが言い得て妙である。その継ぎ目にあと少しだけ霧が残っている。景の描き方、現場証明が確かである。

秋風や天水華座に親子亀 てん点

 「秋風」「天水華座」「親子亀」の言葉と景の響き合いがとてもよい。天水華座は一般的な言葉ではないようだが、寺に関係するものであろうことは容易に想像できる。抽象的なものから具体物への語順もよい。


並選句

抹茶碗に射す冬日までのみ干しぬ みやこまる
凩は海なりを連れ母恋し レモングラス
国境月見る人に幸あれと 迂叟
霧深し符牒言い合うルパン三世 藍人
妻とゐてふたりの月となりにけり 凡鑽
螻蛄鳴くやベリーダンスのシルクの香 ヤッチー
小田代に貴婦人てふ樹大根干す 青萄
参宿や宙を見上ぐる時の増ゆ 南亭 骨太
水の秋山に山影映りたり 富士山
だんじりの並ぶ参道稲稔る 樹朋
行く先へこおろぎの声が闇になる 多満
貸切の小さな寿司屋萩の花 みちる
コスモスの丘にコスモスみあたらず 和音
猪を鍬一撃した男 ぴいす
年金や車窓に速し秋の暮 ほろよい
秋灯下スマホ片手に小論文 おせろ
剛毛のオクラさみどり色に硬く 一走人
栗を剥く哀しみよりも先に剥く もね
秋麗の風や梢へからみ已む 緑の手
この話今朝した話名の木枯る 緑の手
碁敵をもてなすための濁り酒 ポメロ親父
小鳥来る噂まみれの格納庫 うに子
桜もみじ拾ふ園児の声高し 喜多輝女
螻蛄鳴くやバイブ幽きスマートフォン 越智空子
高速の闇何処までも虫時雨 野兎
暮れ行きてキンエノコロの光喰ふ ちろりん
空瓶につぶやき糸瓜の水取る 人日子
ふる里の稲架は昭和のにほひかな  さざなみ真魚
反骨の気力でこぼこ榠の実 池田喜代持
小僧らしき子の頭突つけり鶏頭花 省三
金木犀咲き了へし朝靴を洗う まんぷく
精霊より授かりしこの秋爽や アンリルカ
初孫やうれし恥かし天高し まるにっちゃん
街行けば監視カメラとコスモスと  エノコロちゃん
一周忌紅白に咲くまんじゆしやげ 鯉城
言祝ぎてやをら食さん茸飯 哲白
十月や革命を秘め逝きし君 未貫
雨降れどビール飲もうとつい笑顔 みちこ
秋江の敷き詰められし乱反射 瀬戸 薫
寝て果報待つ蓑虫の寝言 西条の針屋さん
退屈で泣きたくなる日一位の実 松尾千波矢
良寛に賜る月を持ち帰る 松ぼっくり
居て欲しき人が傍ら月涼し 大阪野旅人
敗北の弁をコオロギ讃えおり 青柘榴
あれ取ってなんでえそれはみかんです まこち
寒月やクロワッサンにかぶりつく ひでやん
秋出水薩摩の国を被ひけり 春告草
村中の案山子総立ち鳥日和 ターナー島
緋袴を余すおさなき鈴神楽 P,妙




関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

桜井教人(さくらいきょうと)
1958年愛媛県生まれ。松山市公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回、29回俳壇賞候補。



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へたうま仙人


文 大塚迷路

 十二月ぢゃ。師走ぢゃ。デッセンバーぢゃ。月日は百代の過客、とは李白も芭蕉もよう言ったもんぢゃ。なに、ワシもそれくらいのことは思っておったが、油断しとったら先を越されてしもうた。全くもって言ったもん勝ちぢゃ。
 それはそうと、今月もこの一年をゆっくりと振り返る暇も余裕も振り払うような句が集まったぞ。行く年を惜しみつつ、さまざまな思いを馳せていただければ本望ですぞ。


小春日のエスケープして椿湯へ 誉茂子
 理由があってもなかっても、エスケープしたいときは多々あるのう。道後温泉には「椿の湯」というのがあるが、この句の「椿湯」はおそらく町角の銭湯ぢゃろうな。小春日にエスケープしたくなるのがまさに俳人仕様ぢゃ。更にエスケープの先が昼の銭湯とは、俳人仕様のなかでも特別限定仕様ぢゃ。感心感心。

女郎花たとへば阪神ファンの人 ケンケン
男郎花芭蕉のようにはなれません ケンケン
 先月の句と同じかと思へば、今月は「たとえば」から「たとへば」に微妙にスライドする変化球を投げてをる。ただでは起きん根性は、俳人俳人してをるぞ。
 男郎花は永遠に男郎花ぢゃ。無理をして芭蕉になる必要もないし、誰もそれを望んではいないぢゃろう。男郎花は毎年ご近所の土手の同じ場所で咲いておるが、男郎花は知らんかもしれんが、ワシは咲くのを楽しみにしておるのぢゃ。これでいいのだ。

空真青うちそろいたる鰯雲 森子
雑然と並びし地蔵露しとど 森子
 鰯雲の白と灰色の濃淡は壮観ぢゃのう。隙間なく広がる鱗雲と真青な空は相反するようで想像し難いが、秋の空の広がりと雄大さが心地良いのう。風まで感じてしまうぞ。
 「雑然」という言葉をぐっと飲み込んで、お地蔵さんの様子を素朴に言えたらお地蔵さんも喜ぶと思うぞ。露をたっぷりと浴びて鎮座しているお地蔵さんの佇まいに朝日のスポットが眩しいぞ。

サボテン育て夜の人工の木清明 KIYOAKI FILM
窓の静けさ夜の人工の木清明 KIYOAKI FILM
 初冬に晩春の季語とはオシャレぢゃ。なかなか出来る事ではないぞ。石田波郷にプラタナスの句があったが、それをちょっと思い出させてもろうたぞ。人工の木のちょっとした屈折感と、人工の街の中のとある部屋に違和感無く溶け込む「人工の木」に対するかすかな驚きと安心感がアヴァンギャルドぢゃ。清明の夜のしじまの奥から、夏への胎動が伝わってくるぞ。

検診を受けたしこわし秋の空 柊つばき
秋深しサイフの中が冷えている 柊つばき
 これが梅雨の空ぢゃったらちと考えるが「秋の空」ぢゃからあまり深刻ではないと思うが、世の中気になったらまづ受診ぢゃ。一時的にサイフの中は冷えるぢゃろうが、背に腹はくっつかん。転んだあとの医者ぢゃ。よいな。
 しかし、秋深しぢゃろうが冬浅しぢゃろうが春爛漫ぢゃろうが、年ごとに冷え込みが厳しくなるサイフは何とかして欲しいもんぢゃのう。

秋天へうれし嬉しと稲の声 坊太郎
爺婆も猫も出で来る里祭り 坊太郎
 今年も豊作で嬉しい限りぢゃ。田にも米櫃にもお米が豊かにあると、心まで豊かになりますのう。お米に手を差し入れたときの満ち足りた気分は何ものにも代え難いですのう。そんな豊作に感謝する秋祭りが過疎地ではひっそりと消えていき、かたや都市部での大イベント化していく様はなんとも言えませんのう。猫まで出てくる里祭りの素朴さをこれからも忘れてはいけませんぞ。

木犀の香で人の死見送りて 真帆
庭の隅ひっそりと咲くほととぎす 真帆
 俳句の世界では他の言葉で言いくるめられる「人の死」をこう「人の死」とストレートに言われると、軽いショックを覚えると同時に言葉の力を考えさせられますのう。まっすぐな言葉は時として傷つけたりもするが、本気のまっすぐな言葉にはそれだけの力が宿っているような気がするのう。
 「ひっそりと咲く」とだけ言われたらせっかく咲いたほととぎすがちとかわいそうな気もするので、もうちょっと庭の隅のほととぎすを見つめて、最後のピースにぴったり合う言葉が見つかれば良いと思うぞ。辛抱と忍耐ぢゃ。

ビル風や裾めくりたる十三夜 元旦
文化の日地下のシネマの客四人 元旦
 妖しいのう。これはビル風の仕業かのう? 十五夜でこんな風景は勘弁して欲しいが「十三夜」の中ではこのまま化かされてもいいとさえ思ってくるぞ。いやはや、言葉の妙ぢゃ。
 地下ではどんな映画が上映されているのか興味がわくぞ。あんなのもこんなのも良いのう。集客の関係か最近の映画は派手派手で、勢いだけで都合よく辻褄合せしているとつい感じてしまうが、それでもその勢いに負けてその場では納得しているワシがちと悲しいぞ。地下に潜って見る映画をその場の四人で共有しているというこそばゆい連帯感は、まさに文化の日そのものぢゃ。
 ぢゃが、映画館を出たら他人よ。的こんな句は、半券と一緒に日活フィルム保管庫へ追放!


 おっと、今月も心ならずも追放者を出してしもうた。十二月はどうしても十二月な気分になってしもうていかんのう。二0一五年の反省点ぢゃ。
 さあ、気分を変えて都合の悪いことは全部忘れて新しい年を迎えようぞ。
我々の未来は前途洋々の底無し沼ぢゃ。未来は根拠なくほぼワシらのもんぢゃ。
  ぢゃが、くれぐれも油断召されるなよ。




へたうま仙人
 年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
 好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き)
 嫌いなもの 上手な俳句
 将来の夢 大器晩成


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 体操世界選手権をTVでみた。「後ろ向きで跳躍板を踏み切り、体を半分ひねって跳馬に前向きに手をつき……」という内村航平選手の演技をスローモーションでみせられても、なにがどうだかわからない。子供のころバク転(宙返り)できないままおっさんになってしまった身には理解不能だ。とても同じ人類とは思えない。運動神経の本数が違うのだろうか。「内村航平あたしゃひとつもできないよ(水木ユヤ)」。


釣人の隣に秋 人日子

 たった十一音の短律句。しかしある種の秋の静寂を言い当てて過不足ないように思う。たぶんこの釣り人は,釣れない釣り人なのだろう。ただじっと座ってひたすら浮きを見ている……そんな光景が浮かんでくる。そんな釣り人を包むかのような季節は、冬でも春でもなく秋しかないような気がする。釣り人は語らず秋も騒がず、景も無駄に広がることもなくただ余韻の深さを獲得した。言葉をはめ込み過ぎないことで静止画像のような趣を持ったと思う。



月取って来いと言う母いつしか睡る 凡鑚
 「名月をとってくれろと泣く子かな」という一茶の有名な句があるけれど、それと重ね合わせて読むと、尚更母の悲しい境遇が浮き彫りになる。おそらく余命短い母がポツンともらしたひと言……気がつけばすでに眠っている。母と子にしかわからぬ時間が上手く切り取られています。

正しく曲がれずに真っ直ぐ行く 青萄
 精神世界のことかもしれないし、あるいは自転車とかスケボーとか実際の行動のことかもしれない。「正しく」と「真っ直ぐ」という言葉が、妙な硬直感、息苦しさを演出して、反って人間の不器用さを焙り出して可笑しみさえ漂わせています。

深呼吸している秋がきている 多満
 この句も「天」に揚げた句と同様、ある種の秋を言い得ていると思う。深呼吸して実感するのは秋がふさわしいような気がする。「秋がきて深呼吸している」では句にならないところを二節合体のちから技で、句に広がりを得た。

月冴ゆる三日月の端の痛そうな 喜多輝女
 三日月の端を痛そう……ととらえたところがなにより面白い。しかしほぼ定型。また「月冴ゆる」と「三日月」がうるさすぎるし、「月冴ゆる」が必要なのかとも思う。「三日月の端の痛そうな夜だ」くらいで十分だと思いますが……。

音もなく踵に大蚯蚓 みちる
 これはゾッとしますね。素足の踵ならなおさらです。好みかもしれませんが「大蚯蚓」の「大」に若干作意を感じてしまいます(自由律俳句の性質の問題かもしれませんが)。「音もなく踵に蚯蚓いる」くらいで句の様子も落ち着いてよくなると思うのですが……。



とにもかくにも冬が後ろに ケンケン
仕事は途中秋の蝶 迂叟
歯がぼきりぼきりぼきりと牛蒡噛む  KIYOAKI FILM
開店休業の蛸壺 もね
高すぎる秋草抱きしめてやる 緑の手
食べたこと無い大きな葡萄を観てゐる  ポメロ親父
何十年もそこに佇む樹にそつとふれている  さざなみ真魚
ふぐりいまでんと据りぬ甘藷焼酎 鯉城
持つと重い 遊人
終電車一輌海へ傾き冬ざるる 恋衣


並選
今日から私だけの海 みやこまる
余白なきカレンダーに書き足す夫よ  レモングラス
閉じても閉じてもパンドラの箱の蓋の開く  藍人
紙に切られた小指切られた 小市
アルゼンチンタンゴとちんちろりん ヤッチー
駐車禁止の車に毬栗落ちる ゆりかもめ
また曜日忘れる離職者に 南亭 骨太
彼岸花天界よりこぼれ落つ花地にひらく  誉茂子
籠にひとつしわしわの青蜜柑 和音
残り火の一房曼珠沙華 ほろよい
こつこつと歩く曼珠沙華枯れた 一走人
柿の爆弾落とし鴉の高嗤い 元旦
天を突くための骨折り組体操 うに子
その話は鬼門父の妾 坊太郎
葛根湯を飲んでみる ミセスコナン
水族館にアール ブリュット鮫の歯のびほうだい  まんぷく
コンビニのおでんについつられ エノコロちゃん
無月の森を阿闍梨となる猫 松ぼっくり
置き忘れ黙って探せば猫が見ている 大阪野旅人
金木犀揺れて溢れ出す情熱 青柘榴
鹿の声問われても鳴けず P、妙
名月赤しスーパームーンと大騒ぎ カシオペア



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。



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詰め俳句計画


文と出題 マイマイ


今月の問題
 次の(  )の中に共通する冬の季語を入れて下さい。

森閑と佇つ(  )の家
(  )満つ家庭裁判所


 今月の(  )以外の音数は十音。従って七音の季語を探すのが常道かと思われます。が、まずそれ以前に問題のある投稿から……。

森閑と佇つ紅葉且つ散るの家
紅葉且つ散る満つ家庭裁判所
 大阪野旅人さん。緑の手さんは酔芙蓉。レモングラスさんは紅葉鮒。どれも秋の季語ですね。残念、級外。また次回の応募をお待ちしています。

森閑と佇つマスク純白の家
マスク純白満つ家庭裁判所
 エノコロちゃん。「歳時記を開けば誰でも解ける」のコンセプトの下で季語アレンジは有段としないというルールでやってきましたが(季語アレンジについては十月号同コーナーを参照のこと)、かなり強引なケースが登場して参りましたのでルールを変更し減点方式とさせて頂きます。季語アレンジの場合その強引さ加減(あくまでマイマイの主観)により1〜3の級の降級を行います。エノコロちゃんのこのケースでは内容的には5級ですが3級の降級で8級となります。以後、8級(−3)のように表示します。迂叟さんの寒梅の香は3級(−1)。藍人さんの赤い絨毯は可笑しくて笑いましたが、やはり3級(−1)とさせて頂きます。

森閑と佇つ御用納の家
御用納満つ家庭裁判所
 ささゆりさん。六音の季語。字足らずでリズムがしっくりこない。後句の「満つ」にも違和感。5級。ケンケンさんの大晦日、シャビさんの神の留守は五音だがやはりリズムが悪く「満つ」にも無理がある。同じく5級。喜多輝女さんは空風。これだと「満つ」への違和感は減るが、吹き抜けるものなのでやはり適切な動詞とはいえないか。4級。小市さんの木枯、どんぐりばばさんの冬ざれは四音の季語。前句七 七のリズムになったのは評価できるが、後句やはりリズムがぎくしゃくする。同じく4級。片野瑞木さんは臘梅。後句の「満つ」に納得。3級。青柘榴さんは銀杏落葉。ややリズムは悪いものの前句後句ともにはっきり景が見える。同じく3級。
 
森閑と佇つ枯葎の家
枯葎満つ家庭裁判所
 ヤッチーさん。前句、廃墟か? 後句こんがらがった愛憎劇を予感させてシュール。おせろさん、うに子さんは冬将軍。前後句ともに擬人化された季語が効果的。2級。この二つはリズムの点だけが少し残念。

森閑と佇つ三寒四温の家
三寒四温満つ家庭裁判所
 青萄さん、さざなみ真魚さん。では七音ならばリズムが良いかというと必ずしもそうでもありません。後句の「満つ」にもやはり無理があるか。遊人さん、ひでやんさんの冬木の桜も同様。4級。矢野リンドさんは涙の時雨。しかしまあよくぞこんなマニアックな季語を……。前後句ともに辛そうなのになぜか可笑しい。3級。ゆりかもめさんの神帰月はリズムは整ったが、後句「満つ」がやはり難点。同じく3級。誉茂子さん、みちるさんのインフルエンザには意表を突かれた。前句は誰も近寄れない感じ。後句、早く散会して帰ったほうがいいと思う。2級。ほろよいさんはクリスマスイブ。前句、清らかなイメージ。後句やや強引だが、皮肉が効いている。1級。

森閑と佇つ鷹の家
鷹満つ家庭裁判所
 KIYOAKI FILMさん。ここまで短くなると前句七 五、後句五 七のリズムも整って悪くない。後句の「鷹満つ」に前衛的な面白さも感じる。1級。この際、ちろりんさんの木菟も「ずく」と読んで短くしたい。同じく1級。

森閑と佇つ石蕗の花の家
石蕗の花満つ家庭裁判所
 元旦さん、ポメロ親父さん、P,妙さん。最初、ツワノハナと五音で読んでリズムが合わないと思っていたが、ツワブキノハナと七音で読めばよいことに気付いた。前句、少し湿ったようなこの家のたたずまいが見えてくる。後句、群生して咲く花なので「満つ」が生きる。初段。

今月の正解
森閑と佇つ柊の花の家
柊の花満つ家庭裁判所
 人日子さん、みやこまるさん、和音さん、一走人さん、鈴木牛後さん、越智空子さん、だりあさん、坊太郎さん、池田喜代持さん。今月は正解者多数。前句、清楚な感じ。後句、嗅覚に訴える季語であるところを石蕗の花よりも評価した。二段。


2月号掲載分の問題(12月20日締切)
 次の(  )の中に共通する春の季語を入れて下さい。

レシートを捨て(  )の雑踏へ
(  )やカツをはみ出すカツサンド



マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回大人コン優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。




【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)、俳号(なければ本名の名前のみ)、本名、電話番号、住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙人」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、12月20日(日)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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美術館吟行12:愛媛県美術館
特集展示
石鎚国定公園指定60周年記念
石鎚と美術−霊峰への眼差し
吟行会


文 岡田一実


 秋うららかなる10月23日、チャンヒ、猫正宗、恋衣、toku229、一実の5人が愛媛県立美術館に集まった。目的は石鎚国定公園指定60周年を記念した特別展示「石鎚と美術―霊峰への眼差し」を鑑賞するため。薄暗い入口を抜けるとすぐに霊峰石鎚を描いた作品が迫ってくる。

あたりまえに夏 石鎚瓶ヶ森 チャンヒ

 畦地梅太郎の「石鎚山」は唐突に木々が突っ立つように石鎚の前に描かれどこか殺風景。

 世良猛の「瓶ヶ森の春」はどこか寂しげ。

瓶ヶ森白骨ぬっと竹の秋 toku229

 館内の奥へ少し進むと古茂田公雄作品の面河渓の澄み切った水と岩の連作が並ぶ。

水面に錦秋流る面河渓
 toku229
滑らかに岩を研ぎゆく秋の水
 チャンヒ

 限られたモチーフを厳密に写実的に描いたこれらの作品は、自然の持つ清らかなエロチシズムをも捉えているかのようだ。
 そして一行は長谷川竹友「霊峰石鎚」の前に来る。
 長谷川竹友。愛媛県温泉郡拝志村下林(現 東温市)出身。京都の都路華香に学ぶ。25歳で上京し、日本画の新しい画技を修得。「ホトトギス」の挿絵、裏表紙絵も描いており、虚子とも親交があった。インドや中国に何度も写生旅行に出かけ、雄大な風景画を多数残している。当時の最前線を行く革新的な画境に挑み、その才能を発揮した。

間をとりて秋惜しむごと法螺貝は 恋衣
小さきを集めて霊峰山開き 猫正宗

 「霊峰石鎚」の構図は極めて大胆。石鎚に集う修験者達がまるで祝祭のように法螺貝を吹いたりしている。

酷寒の山から神は生まれるよ チャンヒ
石鎚にほら吹き鳴らす山開 toku229

 竹友作品は続く。「石鎚山麓熊鷹図」の前で猫正宗さんがブロッケン現象について解説してくれる。ブロッケン現象とは太陽などの光が背後から差し込み、影の側にある雲粒や霧粒によって光が散乱され、見る人の影の周りに、虹と似た光の輪となって現れる大気光学現象。そのブロッケン現象と共に熊鷹が見事に描かれている。

早天の熊鷹息をととのえて 恋衣
熊鷹は円虹などは目指さねど 猫正宗
鷹照らす五光のありや雲うすく 一実

 ブロッケン現象を真っ向から描いた絵はもう一枚ある。「石鎚御来迎図屏風」である。神々しさが屏風に宿る。

人か山か神宿るのは御来迎 猫正宗
光輪は山の冷気を吸ふ標 一実

 竹友の中にあって坂田虎一の「霊峰石鎚」も光る。

白雲ノ包ム霊峰冬ニ入ル 恋衣
神の山いま雪雲を讃へけり 一実

 武田耕雪の「面河渓図」は静か。

冬紅葉冷えて谷間を射す光 一実
法螺貝を吹きもて石鎚荒れて雪 一実

 会場奥に唯一あったブロンズ像エミリオ グレコ「うずくまる女(大)No.5」は会場全体の霊気を受けて憂いを含んでいるようであった。

ぽってりとうずくまっているのは秋思 恋衣



岡田一実
音楽は好きだけれどBGMはちょっと苦手。何事にものめりこんでしまわないと気がすまないのは困ったところです。賞罰多少。句集に『小鳥』『境界‐border‐』(マルコボ.コム)



「特集展示 石鎚国定公園指定60周年記念 石鎚と美術 −霊峰への眼差し」は、愛媛県美術館にて12月27日まで開催中。


取材協力:愛媛県美術館



次回美術館吟行会
いずれも『100年俳句計画』編集室までお申し込み下さい。(TEL089-906-0694)

愛媛県美術館所蔵品展吟行
日時: 12月12日10時〜
場所:愛媛県美術館
参加無料(入館料は別途)
申込締切:12月10日

http://iyokannet.jp/ginkou/



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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.29


Bad cold, stuffy nose
Steam treatment, bed rest, eyes itch
I annoy everyone.

悪い風邪引いてまはりを困らせて


(直訳)
悪い風邪引き 鼻づまり
湯気立て 寝床で 痒い眼で
回りの人を 鬱陶しがらせた



 I am doing my writing chores: program notes for upcoming recitals, liner notes for my new compact disc, and stories from my life for professional journals. All are in response to requests, but I also feel some desire to share my experiences and, hopefully, to entertain my readers.

 僕は今せっせと書き物をしている。それは来る演奏会のプログラムノーツと、新しいCDのためのライナーノーツと、それに音楽専門誌に寄稿するための自叙伝だ。これらはみな頼まれてやってることなんだけど、そのためだけじゃなくてさ、僕の経験をシェアしたい気持ちもあるからね。読者を楽しませたくて、やる気満々なんだ。
(訳:朗善)



ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第57話 モーニン ボビー・ティモンズ 

モーニンの流行りし冬の新生児 まこ

 「モーニン」はアート ブレイキー&ジャズ メッセンジャーズ(JM)の看板チューンである。58年当時JMに所属していたピアニスト、ボビー・ティモンズが作曲し、我が国でも「そば屋の出前持ちまでが鼻歌で歌った」というエピソードが残るほどの大ヒットナンバーだ。モーニンが米国で同年にヒットして、翌年早々にJMがファンキー ブームの種を携え渡欧。パリ、サンジェルマンでの演奏が大きな反響を呼び、ヨーロッパでも一挙に開花。そのライヴ盤が我が国でもプレスされ評判となる。そして61年1月のJM初来日でファンキー ブームが決定的となった。新生児は今50歳台半ばを迎えている。

朝じゃない冬ざれの呻き声 蛇頭

 「モーニン」訳して「朝」だと思ってません? 朝聴くには「黒」過ぎへんかな、なんて思いつつ長年僕は「朝」だと思ってました。てなことで本当の訳は「呻き」みたいな。で、レコード・ジャケットのブレイキーの表情にも合点がいった。あれは絶対に「朝」仕様じゃない。

ブロックコード叩いて抜ける冬の風 南亭骨太

 ブルーノート レコード「4003番」と言われるほど「モーニン」はアルバムとしても超人気盤である。この盤から「モーニン」をA面に、このバンドのテナーサックス奏者だったベニー ゴルソン作曲の「ブルース マーチ」をB面にプレスしたドーナツ盤が日本で発売された。南亭骨太さんは、これを擦り切れるほど聴きコピーして中学校ブラス バンドで演奏した。トロンボーンを吹く少年の耳にはティモンズの黒いブロックコードが呻っていたのだろう。

完璧なモダン枯葉を踏む音も チャンヒ

 句会でファンキー ジャズはモダン ジャズなのか?がちょっと論議となった。結論は、チャーリー・パーカー等がバップを演り始めた40年代からマイルスがエレクトリック サウンドを追求し始めた60年代末、その真っ只中に起こったムーブメントであり、サブジャンルの一つであるには違いないだろうとした。今回のサブテーマ「ボビー ティモンズ トリオ イン パースン」の1曲目「枯葉」に針を落とせば、確かにファンキーだけじゃないモダンが聴こえる。

短日の大地にぶち込む三連符 うさ

 やってくれました、うさちゃん。加賀からの投句がダントツ一番人気句となりました。クールに叩きつけるティモンズのブロックコードが聴こえてきそうだよ。

宵闇や本気なのかと影に問い 俊坊

 今回、江戸から初参加してくれた俊坊さんも、メンバーが抱いていた疑問に「はい、艶っぽい句は必ず一句は出すようにしてます」とあっさり白状してくれ感謝です。



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。

次回のJAZZ句会は、12月20日(日)13時より。テーマは「ジェリコの戦い/コールマン ホーキンス」です。句会への参加を希望の方は、本誌44ページの句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU vol.1』(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ


第57話
『風の神送り』
〜 米朝師が蘇らせた噺の一つ 〜


 町内で悪い風邪が流行しているので、何とかまじないはないか?と、親分肌の男のところへ相談を持ちかけられる。
 それでは、“風の神送り”をやろうではないかとまとまる。(風の神送りとは、江戸時代の風習で、風邪が流行したときに風邪の疫病神に見立てたわら人形を作り、鉦や太鼓ではやしたてながら隣の町 村に送り出したり川に流すなどしたもの。)
 奉加帳をまわして、名前を書いて志としてお金を受け取りながら町内を回る。
 中には、“やぶ医者”ならぬ、やぶまでもいかぬタケノコ医者とよばれている腕の悪い医者のところを訪ねると、「要らざることを」など言われながらも、志を少しばかり出してくれる。
 行くところ行くところドタバタの話がつづき、ざっと町内中を一周すると、空き家へ立てこもる。
 そこにみんなが集まり、それから竹を買いに行く、ワラを買いに行く、縄を買いに行く、紙、筆、墨を用意する。で、張りぼての人形をこしらえて顔を書いたりして風の神ということにする。
 お供えものの酒、もちなど人形の前に置いて「どおぞ風の神さん、ご退散願います」とお祈りをする。
 そして夕方になるとみんなでその人形を川へ運び、
♪ かーぜのかみおくろ
♪ かーぜのかみおくろ
と歌いながら人形を川へ放り込む。
 放り込んだ方は「これで町内の風邪も治るやろ」と一安心だが、川下の方には船を出して魚を獲っている者がいて、その網に人形がひっかかってしまう。
 大物か?と喜んであげてみると、皆の想いのこもった人形がすっと立ってきたのでびっくり。
「なんじゃいおまえは?」
「わしは風の神じゃ」
「ああ、それで、夜網につけこんだか。」



 ま、下げ(オチ)は完全なダジャレでございますね。夜網と弱み。
 昔は、「風邪は人間の弱みにつけこむ」と言われていたそうで、その部分のシャレということになります。
 米朝師は、うもれていた噺を復活させる功労者でもありました。
 この噺も、本来は短い噺で、江戸ではマクラとして使われることが多かったようですが、前半の町内を回っていく部分をふくらませ、立派な一席として再現しました。
 現在は演り手は少なく、直弟子の桂米二師らが引き継いでいらっしゃいます。
 私も子供のころから風邪には弱く、祖母が「となりの人がくしゃみしたらお前はもう風邪引いとる」と言っていたものです。
 今ならすぐに薬でも飲もうということになりますが、私が子供のころはネギを焼いてそれをのどに貼りつけたり、熱があるときにはぼんのくぼをカミソリで少し切って悪い血を出したりしておりました。
 今考えるとゾッとしますが、民間療法の一つだったのでしょうか。
 ちなみに落語のこの時代に流行した悪い風邪は、今のインフルエンザではないかとも考えられています。
 注射が嫌いな私。まだ今年は予防接種に行けておりません。

風邪の神送りし主が風邪を引く


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新聞記事に隠された俳句を発掘する
クロヌリハイク


黒田マキ


秋の砥部女性作家のティアラかな
(愛媛新聞より)


料理メモ大豆モヤシとニラサラダ
(2015年10月17日朝日新聞より)


登校日イノシシ1頭侵入し
(愛媛新聞より)


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第38回『平田オリザ演劇展』&『公共劇場のつくり方』

 '15年10月21日(水)、22日(木)に開かれた「平田オリザ演劇展」。松山での演目は『走りながら眠れ』『ヤルタ会談』『忠臣蔵 武士編』。さすがは世に名だたる平田氏率いる青年団。シアターねこで、初めて予約が取れず当日券で入場という体験をしました(笑)。

現代口語演劇の夜青蜜柑

 さて、その平田氏が10年前「これからの文化政策と愛媛の舞台芸術の未来」というシンポジウムで来松された折のこと。私は行けなかったのですが、伝え聞くところによると、地元のパネラーから地域文化としての演劇がなかなか盛り上がっていかないといった話があがったのに対し、氏は「別に演劇である必要はないんじゃないですか。これだけ俳句が盛んなのだから俳句でいいんじゃないですか」と言ったとか言わなかったとか。その卓見通り、本誌もその一角を担う俳句による地域振興(?)は「俳都松山宣言」にまで至っています。一方演劇の方は、点としての盛り上がりは見せつつも、未だ線としての繋がりや、面としての広がりはないように感じます。そんな中、もしかしたら状況に変化を促す可能性がある構想が持ち上がりました。JR松山駅周辺の再開発の一部として公共ホールの建設が正式に決定したのです。公共ホールは、計画と構想、運営と企画が適切なものであれば、地域文化に大きく貢献するものであることは、本誌'15年6月号(211号)の当コーナーでも軽く触れた通り。というわけで、NPO法人シアターネットワーク愛媛主催の「公共劇場のつくり方、もっといろいろ聞いてみよう」{'15年9月13日、伊藤正示氏(株式会社シアターワークショップ)、徳永高志氏(アートNPOカコア)}に参加しました。そこでの話はざっくり言うと、莫大な血税で建設 運営 維持される公共ホールは、多くの市民が日常的に使える「自分たちの場」でなければならない。ゆえにできるだけ多くの人の意見を集め、最終的に文化 芸術や行政のプロと共にそのすり合わせをすることで、その土地に本当に必要なものにしていかなければならない、といったところでしょうか。

小鳥来る場所あればこそ小鳥来る

 そんなわけで、本誌読者諸氏にもぜひ関心を持って対応してほしいのです。俳句にホールは関係ない? いえいえ、俳句に関わる方も活用できるものにすればいいのですから。



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。


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歳時記「無季」がバイブル


第2回
文 現代俳句協会会員  日暮屋 又郎


 生業は塗料とそれに伴う副資材の卸販売業である。
 今から約30年近く前になるが、ガラス繊維に樹脂を浸し、硬化させて成型したり、穴を塞いだりするための材料(グラスファイバー)を販売のため小分けしていた時のことだ。
 今でこそ作業用に安全靴を履くのだが、そのころはと言えばまだ、会社組織が成熟しておらず、ずさんにも事もあろうにスニーカーで作業をしていた。
 ごく少量ながら、その樹脂がズックの親指付近にこぼれた。そのときは何でもなかったので、放置したまま配達へと向かったのがまずかった。
 最初少しの違和感が生じ、それが鈍く疼きに変わり、やがて激痛へと。すっかり夜になっており病院は閉まっている。かといって救急搬送されるほどのことでもないだろうと甘く見ていた。激痛をごまかそうと、たらいに氷を張り一晩中冷やし続けた。
 翌朝、病院に急行。医師曰く
 「なぜ早く来なかった。もう少しで骨に達して溶けるところだったぞ。」
日頃、自分の仕事がどれほどの危険を伴うものであるかとの認識不足に猛省した。
 治療の翌日、包帯換えに病院へ。ぐるぐる巻きの包帯と違ってリストバンドのようにゴム入りの履かせるタイプだ。傷口に優しく、丁寧にそーっと剥がそうとする看護婦の慎重な配慮がわかる。その刹那、ゴムの便利が災いして、クルリンと勢いよく包帯が裏返った。
 あ―痛―っ。目をひんむいたと同時に、看護婦も目をひんむいてお互いの目が合う……。瞬時にうずくまった看護婦の背中が小刻みにヒクヒクと震えている。
 この句に当時の思い出がよみがえってきた。

ストッキング裏側にぬげて明日も看護婦 鈴木和枝

看護婦を笑はせて淋しき日始まる 十河霞崖

 同じ看護婦というテーマで、あっけらかんとした中にも悲哀を内包している句と、悲哀をストレートに表し、表面だけはあっけらかんとした句の対比も面白いと思う。
 その後、数回の通院で事なきを得たが、その看護婦と目が合うたびに、互いが思い出し笑いであいさつを交わし、なんだかおかしな連帯感ができた。時には生死を争う場面に立ち会うであろう看護婦の、束の間の癒しになれたとしたら良いのだが。


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百年歳時記


第31回 夏井いつき

 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。


花街の乾風休みの三味多忙 しんじゆ
 「乾風」と書いて「あなじ」。主に、西日本で冬の北西の季節風をこう呼びます。「あなじの八日吹き」という言葉もあり、吹き出したらなかなか止まない風として怖れられています。
 今日も「乾風」が吹き荒れている港には、たくさんの船がぎしぎしと舫われています。風が止まなければ船を出すことはできない漁師たちは、これも骨休めだと港の「花街」に繰り出します。「乾風休み」とは実に巧い言い方ですね。「乾風休み」で賑わう「花街」はかき入れ時。三味線の音、手拍子、歌。三味線を小脇にかかえた芸者さんたちは、小走りに次の店に走ります。「三味」の音の向こうに、吹き止まぬ「乾風」の音も聞こえてくる花街の夜であります。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』11月13日放送分)

ななかまど二昼夜攻むる登り窯 ポメロ親父
 「登り窯」の近くに真っ赤な実をつけた「ななかまど」があるのでしょうか。「ななかまど」は、七回竈で燃やしても燃え残るのでこの名がついたという説もありますが、ゆっくり燃えて高温の火力を保つという話を聞いたことがあります。だとすれば「登り窯」を焚く薪として「ななかまど」を使っているのかもしれませんね。
 「登り窯」を焚き始めてすでに「二昼夜」。窯の火力は衰えることなく轟々と燃え続けています。「二昼夜攻むる登り窯」の傍らに積み上げられている薪は「ななかまど」の木でしょうか。薪を掴んで放り込めば、強い火の粉が熾ります。その火はまるで「ななかまど」の実の赤のように強烈に「登り窯」を攻め立てるのです。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』11月6日放送分)

水の秋石磨き上げ神にする 富士山
 「水の秋」は「秋の水」の傍題ですが、季語としてのニュアンスは随分違います。「秋の水」は秋らしい冷たさをもった澄んだ水ですが、「水の秋」はそんな水の広がる光景に秋らしさを感じ取るという感覚でしょう。この句の場合、「秋の水」だと、その水で「石を磨き上げ」というふうに関連づけて読まれる可能性がありますが、「水の秋」は、澄んだ冷たい水の光景を静かに広げます。
 かつて日本人たちは「石」にも木にも山にも神が宿っていると考えました。「石」を「磨き上げ」て村の守り石として崇めるという行為は、まさに「石」を「神にする」ことを意味します。自然への畏怖の念は、「水の秋」の美しさにも心をおののかせるのです。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』10月23日放送分)

東国の荒ぶるこころ葱鮪鍋 井上じろ
 眼前の「葱鮪鍋」はグツグツ煮えたぎっています。鍋を囲んでいるのは、「東国」の荒々しい武士か、はたまた「東国」の「荒ぶるこころ」をDNAに残した企業戦士たちか。「東国の荒ぶるこころ」という措辞は、関東という土地を意味するだけでなく、男という種族が持つ荒々しい闘争心をも思わせます。「鮪」と「葱」だけの質素な鍋が醸し出す旨味は、「東国の荒ぶるこころ」が生み出した逸品。酒を飲みながら交わされる議論もまた次第に熱を帯び、荒々しくなっていくに違いありません。「東国」名産の太い葱、「東国」を吹き荒れる乾いた空っ風。「東国」の一語から広がるそれらのイメージが、目の前の「葱鮪鍋」をますます美味そうに滾らせます。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』11月13日掲載分)

海鼠噛む千にひとりの歯と言はれ 竹本俊夫
 「海鼠」ってやつが美味いと思えるようになったのは、お酒を飲むようになってから。子どもの頃は、あんな怖ろしげな色したゴムみたいな食べ物を大人たちはよく食べるもんだと訝しく思うばかりでした。「海鼠噛む」から始まるこの一句は、いかにも大人の食べ物として大人が噛んでいるに違いないと思うのですが、中七下五の展開が痛快です。「千にひとりの歯と言はれ」という十二音の措辞のみで、この人物の人並みならぬ「歯」の丈夫さを述べ、歯科医との会話までをもありありと想像させてしまうのですから、大したものです。「歯だけは誉められます」と笑う作者は90歳。天晴れな一句は、天晴れな歯から生まれてきたのですね。
(第12回「はぴかちゃん歯いく大賞」一般の部優秀賞)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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会話形式でわかる
近代俳句史超入門


第18回
文 構成 青木亮人

 大学で俳句を研究する青木先生と、その教え子で俳句甲子園の出場経験もある大学生の俳子さんが雑談を交えながらの近代俳句史超入門。

選句と読者層の開拓

 二人は大学食堂で高浜虚子について論じあっています。

虚子の選句

青木先生(以下青) そういうわけで、虚子は選者としても凄かったんですよ。
俳子(以下俳) 「も」?
青 選者として抜群の目利きだったし、実作者としても凄かったということです。
俳 当然じゃないですか? 虚子さんは優れた実作者だったから選者としても鋭かったんですよね。
青 そこが微妙で、才能ある実作者が常に素晴らしい選者とは限らないし、パッとしない実作者が相当な目利きという例もあります。目のさめる句を詠み続けた俳人が、結社主宰になると色々な状況が重なり普通の選句しかできなくなることも多い。句作の才能と選句のセンスはある程度分けて考えた方がいいかもしれませんね。
俳 ……おやじギャグ。クスクス。
青 落語のマクラでよく使われるので、たまに言いたくなるんですよ。「隣の空き地に囲いが出来たよ」「へぇー」とか。
俳 あ、知ってます!「おや、蟹ってやつぁ横に這うもんと思ってたが、こいつぁ縦に這ってるなあ」というと、蟹が「えぇ……少し酔ってますから」とかですよね。
青 そ、それは古今亭志ん生の十八番のマクラ! 昔のネタをよく知っていますね……どこでそれを?
俳 子どもの頃、父がよく寝言で言っていたんです。起きた後にそのことを伝えるたびに父は照れたような嬉しいような顔で、「そうか、パパも寝言で落語を言うようになったんだなあ」と感慨にふけってましたよ。今考えると訳の分からない感慨ですけど。
青 寝言で落語……凄い家庭環境ですね。で、虚子に戻ると、彼は選者の俳句理念を押し付けずに、投句者の才能や限界や方向性等々に応じた幅広い選句ができました。これは自信があるか、または謙虚か、あるいは醒めた聡明さがなければ難しい。普通、結社主宰は弟子を自分色に染めたがるし、弟子も師匠になりたがることも多い。ところが、虚子はそうしなかった。「技術さえしっかりしていれば何を詠んでもよい、手堅くともよし、奇抜でもよし。さあ、かかってきなさい」という構えで投句を捌けたんです。虚子は戦略家で経営者だから「ホトトギス」は成功したという批判もありますが、それだけで原石鼎や飯田蛇笏、山口誓子や中村草田男等が投句し続けるはずがない。彼らは「ホトトギス」全体や結社主宰としての虚子には多々思うところがあったとしても、選者や実作者としての彼に一目も二目も置いたはずです。
俳 分かる気もしますが、虚子さんは「客観写生」「花鳥諷詠」とか主張し続けましたよね。あれは俳句理念じゃないんですか?
青 ざっくり言うと、虚子の「写生」は「固定した理念を設けないという理念」で、「花鳥諷詠」というのは「小説や詩と異なる俳句の独特さ」に近くて、「俳句はこうあるべきだ」という主張と違う気がします。彼の実作や選句を見ると「何でもあり?」と感じる幅広さですし、虚子は句の内容にほぼ関知せず、「俳句として強いかどうか」を主に見ていたのでは。
俳 それにしても先生は虚子さん好き? 虚子さんについて熱く誉めますよね。あの微妙なヒゲが好みだったりとか。
青 うーん。それよりは板垣退助系の「ここまで伸ばしてしまいました」的な古風なヒゲがいいですね……いや、ヒゲはいいんです。好き嫌いというより、虚子は影響力がとにかく巨大なんですよ。近代俳句史を考えるというのは、「私に響く俳人、響かない俳人は誰か」を語ることでなく、「近代俳句はどのように成立し、発展し、またいかに可能性を獲得し、失ったのか」と冷静に考察した時、虚子はまさに巨人なんです。その是非や功罪も含めて、影響力は子規と肩を並べるはずです。
俳 巨人……あの進撃の?
青 そう、素っ裸で俳句を詠みながら街の壁を破壊しようとする巨人、虚子……街に残された人類の運命はいかに? と、そんなマンガが売れたら日本崩壊ですよ。いや、逆に教養の高さを示しているかもしれない。
俳 「春風や闘志抱きて丘に立つ」とか詠みながら街の壁に向かって突進する風流巨人。カッコイイ。
青 ……話を戻すと、虚子をとりあえず批判するのも片手落ちですし、だからといって無暗にありがたがるのも良くない。近代俳句で実作者、選者、経営者の三拍子がかなりのレベルだったのは虚子以外にそういません。中村草田男も結社「万緑」を率いた後の選句結果はパッとしなかったし、逆に加藤楸邨の「寒雷」門下は多士済々でしたけど、楸邨自身の句がどれほど凄かったというと微妙です。
俳 虚子さんがヌボーッとした雰囲気で映っている写真を見ると、あまり偉大な感じがないんですよね。

新しい読者層

青 虚子は「芸術家」「文豪」のイメージに振り回されない現実感を持っていましたから、普通のおじさんに見えなくもない。俳句を稼業として成り立たせようと彼なりに経営努力もしたし、営業活動もすれば掛軸の頒布会も大いにしました。「俳句でお金を稼ぐのは邪道、文学は純粋でなければならぬ!」と本業を別に持ちつつ俳句に携わる人々はお金儲け主義と批判しましたが、虚子は俳句を仕事にした専業俳人ですから、ある意味当然といえば当然です。
俳 そのあたりが子規さんと違うところですよね。「白い子規に黒い虚子、碧い梧桐は碧梧桐〜♪」とか昔のコマーシャルにありそうなキャラの雰囲気があります。
青 いいですね。俳句より才能を感じました。
俳 ムキーッ! 丑の刻参りで報復しますよ!
青 頭と心臓の所には釘を打たないで……いや、どこもイヤ。すいません、冗談ですってば。
俳 プンプン。で、虚子さんの経営努力といいますと、例えばどういうことをしたんでしょう。訪問販売?
青 まさか。色々ありますが、例えば、彼は俳壇に復帰した大正中期頃から、主婦を中心とした女性層と帝国大学生等のエリート学生層を重要と見なし、積極的に関西その他各地に赴いて句会等を開き、彼らと交流を重ねました。大正六年創刊の「主婦之友」が一万単位で売れまくった時代の流れに虚子は敏感だったのと、東京 京都帝大生やその予備軍の高校生で頭脳明晰かつ努力を厭わない秀才を励ましつつ、句作に熱中させたんです。水原秋桜子、高野素十、日野草城、山口誓子等はいずれも東大、京大メンバーですよ。今の時代に置きかえると、茶道や舞踊の芸事や海外旅行が好きな、暮らしに余裕があり向学心も強い主婦の方々と同時に、俳句甲子園で優勝校の開成とか松山東の学生を「ホトトギス」に取りこむ感じでしょうか。それも、俳句が今よりずっと地味な男の文芸と見られ、隠居の慰みごとめいた暇つぶしに近かった時代に女性層や若きエリート層を引きこもうとした手腕はけっこう大胆で、またカンの働く経営者だったようにも思います。
(ここで食堂終了の放送が流れる)
俳 あ、気付けば晩近くに。すっかり暗くなりましたね。
青 確かに……今日は朝からずっと子規や虚子についての俳句談義でした。彼らについては他にもたくさんあるのですが、ひとまず区切りにしましょう。
俳 虚子さんはとりあえず終わりということで、次は誰ですか?
青 もちろん、「碧い梧桐は碧梧桐〜♪」の碧さん。乞うご期待。


青木亮人(あおき まこと) 1974年、北海道生まれ。現在、愛媛大学准教授。著書に『その眼、俳人につき』(邑書林)など。



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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第57回 文 暇人

日帰り宮島の旅

 11月1日(日)、冬の到来かと思わせるような寒い朝の松山観光港。そこに集まった若狭代表と参加メンバー(キム、輝女、雪花、しんじゅ、佐川、蓮睡そして私)で、これから広島に渡り、宮島を巡る。
 午前8時発の船で広島港まで移動。天候が不安定だったからなのか、波風の影響を受けて船は少し揺れ気味。定刻より少し遅れて広島港に到着。すぐさま9時25分発の宮島行き高速船へと乗り換える。そこでメンバーから「昼食は観光客でおそらく混み合うので、到着したら先に済ませよう」という提案があった。
 10時頃、船は宮島港へ到着。案の定、目の前には多くの観光客。食事できるところを探すが、この時間、ほとんどの飲食店はまだ準備中。ようやく見つけた店に入って、目的の「あなご飯」をいただく。これがまた旨い。
 おなかを膨らませた参加者、まずは宮島といえば……と「厳島神社」へ。いつ来ても神秘的だ。
 そして、今回のメイン(?)である「弥山」へ。まず紅葉谷駅まで無料リムジンバスに乗り、そこから二つのロープウェイを乗り継ぐ。ロープウェイから観る紅葉もまたいい。降り立った獅子岩駅は標高521m。あとは山頂まで登るだけと軽い気持ちでいたのだが……。
 当初は意気揚々と山道を歩いていた我々。出くわす人の悲痛そうな顔や、用意されている杖に「何事や」と思っていたが、山道を歩くにつれ、寒空にもかかわらず上着を脱ぎたくなるような暑さ、そして疲労が……。
 歩くこと約30分。「くぐり岩」を抜けると、ついに弥山展望台に到着。展望台から眺める宮島、手が届きそうな広島市街地や瀬戸内の島々。これが晴れの天気ならばと思いながらも、暫く眺めていた。
 まだまだ景色を眺めていたかったが、次の目的地へ向かうため、いざ下山。下りは登りに比べて早いものの、足への負担は、実は下りの方が大きかったりする。久々に「膝笑う」というフレーズが頭に浮かぶが、なんとか紅葉谷駅まで降りてきた。ここで、残念ながらメンバーのうち二人が松山に戻ることに。
 残るメンバーで向かった先は「宮島水族館」。様々な魚や、トド、カワウソ、スナメリ、そしてペンギンたちを見てまわる。宮島水族館といえば、かつてはラッコが有名だったが、現在はいないとのこと。残念。
 商店街まで戻り、最後の目的地である、しんじゅさんオススメの「揚げもみじ」(もみじ饅頭を揚げたもの)のお店へ。アイスと共に頂く。さらに宮島といえば「牡蠣」ということで、焼き牡蠣も。牡蠣といえばこの日の道中「牡蠣入りのカレーパン」なるものを購入したメンバーが、その牡蠣の大きさに感動していた場面も。
 予定を少し延ばし、17時発の高速船で宮島から広島港へ。松山へ向かう便の時間までは、事前に予約をしておいたお好み焼で夕食。
 最終フェリーに乗った我々は、みんな爆睡でした……。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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俳句の街 まつやま
俳句ポスト365


協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


優秀句
平成27年10月度


【秋風】
《地》
秋風は月の裏側より戦ぐ めいおう星
飛び降りるなら秋風の曲がるところ Y音絵
秋風の輪護謨よく飛ぶ六道へ 紆夜曲雪
鏡のなかの鏡のなかを秋の風 とりとり
漆彫る刃先の光秋の風 ぐわ
秋風や交換しあふ貝の殻 葦信夫
秋風の纏はりつくよ老人に 井上じろ
秋の風乾されし魚乾きし実 むじーじ
秋風を噛みくたびれて結婚す 中原久遠

《天》
秋風や死者に優しき晴れ三日 きらら☆れい


【秋の雲】
《地》
草の果てここは秋雲製造所 とおと
秋雲は秋雲にしかぶつからず 大塚迷路
千仭を跳ねゆく山羊や秋の雲 長緒 連
柩には繪筆も入れよ穐の雲 百草千樹
家壊す音と匂いと秋の雲 田中ようちゃん
道草を食って秋雲を味方にす 吟爾郎
偶数は二つに割れる秋の雲 酒井おかわり
秋雲とほろほろ鳥のパスタです けんG
尚妻の通話圏外秋の雲 大阪野旅人

《天》
秋の雲海から揚がる象の骨 ポメロ親父


【栗】
《地》
栗に穴一瞬虫の尻の見ゆ ポメロ親父
栗の虫潰せば栗の匂ひする 雪うさぎ
山姥と熊に分けをく栗拾ひ 老人日記
笑栗やほほを豊かに道祖神 ほろよい
栗の毬裂けはるかなる弥勒かな トレ媚庵
銅像にもたれて栗を喰う広場 スズキチ
犬吠える的屋は栗を売りまくる 理酔
栗を剥くこんな村より力士かな もね
栗はなぜ仇討ちに身を投じたか ウェンズデー正人
家ぞくひく父の数だけ栗がある そお

《天》
いにしへのいのちの甕や栗集む クズウジュンイチ


【秋刀魚】
《地》
けぶらせて泣かせて秋刀魚まつりてふ 毛利あづき
秋刀魚焼け酒は一升息子来る とりとり
ボタ山のストの終わりの秋刀魚食ふ さんさん珊瑚
失職や秋刀魚の骨は軽く折れ ウェンズデー正人
秋刀魚の香サーカス団は父さらふ 酒井おかわり
居続けのセンセイ露地に焼く秋刀魚 めいおう星
東北に荒ぶる火あり秋刀魚焼く 樫の木
秋刀魚焼くデモクラシーのこゑの底 今野浮儚
参加賞秋刀魚三匹もらいけり 八十八五十八

《天》
火の玉の秋刀魚七輪轟かす もね




俳句ポスト365作品集2015

冊子のお問い合わせは……
 松山市役所 観光 国際交流課
 TEL 089−948−6556



12月の兼題

投句期間:11月26日〜12月9日
歌留多 かるた【新年/人事】
正月の遊びのひとつ。最もオーソドックスで競技会なども行われる「小倉百人一首」の「歌がるた」のほか、「花がるた」、「いろはがるた」などがある。「トランプ」を含めていう場合もある。

投句期間:12月10日〜12月23日
冬凪 ふゆなぎ【三冬/天文】
とかく風が強く吹きすさび、海の荒れる日が多い冬にあって、風向きの変わるときなどに、しばらく風が止んで、海の波がおだやかになること。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


※募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。



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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成27年10月度


【菊の酒】
山神にまずは一献菊の酒 樫の木
風神のひと舐めしたる菊の酒 みさきまる
菊の酒天狗倒しに零れたる 瀑
雲取山の空の広さや菊の酒 更紗
皇后の御髪銀色菊の酒 更紗
高殿に詩の生まれし菊の酒 ターナー島
菊の酒一山音を断ちにけり ターナー島
灯ともせば猿訪ふ庵菊の酒 雪うさぎ
月光の底まで菊の酒を乾す マイマイ
菊の酒呷り恩賜の煙草かな 理酔

《天》
みづうみに龍のうろこや菊の酒 雨月


【秋の服】
浜風は無色となりて秋の服 よもこ
キャンバスは湖面の富士や秋の服 もね
肩先に小雨の記憶秋の服 矢野リンド
秋の服硝子に映る独りかな 江刺乃かな女
マネキンの視線は遥か秋の服 笑松
タラップを降りて母国や秋の服 一走人
秋の服砂漠の果ての町想ふ 天玲
秋の服一ペニーで聞くオルゴール 妹のりこ
美しく使うスプーン秋の服 風
彫刻を眺めるマダム秋の服 和吉
半券にドガの踊り子秋の服 更紗

《天》
秋の服皮の釦の生臭き 篠原そも


【新麹】
新麹まず神棚の三宝へ ほろよい
神棚へ拍手二つ新麹 マイマイ
千年の室に神棚新麹 稲穂
新麹高天原の白のごと 海田
白山は神呼ぶ山や新麹 一走人
新麹風のぬるきに揺るる幣 緑の手
宿坊の裏の家業と新麹 西条の針屋さん
月は欠けまた更に欠け新麹 豆腐太郎
新麹この世に濁りつつ匂う 青萄
夜雨の香にまじる甘さや新麹 妙

《天》
芳しき新麹先代に妾 きとうじん


【磨】
糠釜の七つ磨かれ豊の秋 このはる紗耶
鵙の寺仏具磨きの者募る 篠原そも
コンチネンタルタンゴ床磨かれて秋の夜 太郎
手の中に磨くもの欲し虫すだく 遊人
火の色に磨かれ唐辛子揺るる 露玉
球磨村の狐の鳴かずの月の庭 青萄
達磨さんころんで秋の七草よ 逆ベッカム
達磨さんがころんだ烏瓜の鈴 豆腐太郎
斬られ役ばかり磨けり村芝居 もね
どんぐりと土中の磨製石器かな なおき
金秋を磨く最古の天文図 天玲
磨研紙に尖る光や原爆忌 樫の木

《天》
水の秋石磨き上げ神にする 富士山


【ひしこ】
俎板にひしこひしこの頭五六十 だんご虫
高速船全速ひしこ右往左往 理酔
鰹船生餌のひしこ空へ撒く 樹朋
大漁のひしこ干せ干せ一里がほど お手玉
青空の皺を伸ばしてひしこ干す 亜桜みかり
猫の手も奥の手も借り干す 犬のコロ
ひしこ欲し猫は糸月見上げけり 篠原そも
火星にも水があるらしひしこ干す 波野
ひしこ干し終え夜間中学の課題 このはる紗耶

《天》
味噌壺にひしこ仰山裂きにけり ちいち
ひしこ裂く昼餉疼ぐ指の先 ほろよい
ひしこ噛み締め反撃に遭う朝餉 みいみ



※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

投句締切:12月6日

季語ではない兼題です。「磯」という字が詠み込まれていれば、読み方 用い方は問いません。季語は当季雑詠を原則として、自由に選んでください。

年の市 としのいち【仲冬/人事】
かつては12月に入ると、大晦日まで町の辻々や社寺の境内などで年越しに向けてさまざまな市が立った。現代では小売店が歳末セールなどを催している。

投句締切:12月20日
第九 だいく【仲冬/人事】
ベートーヴェン作曲の交響曲第九番ニ短調の略称。年末に各地でコンサートが開かれ、第四楽章でシラーの詩「歓喜に寄す」を大合唱で歌い上げる。

楪 ゆずりは【新年/植物】
高さ4〜10mのユズリハ科の常緑高木。つやのある長楕円形の葉に紅色を帯びた葉柄がついている。新しい葉が生え整ってから古い葉が落ちるので、世代交代や子孫繁栄の縁起物とされる。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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100年俳句計画 掲示板



NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  12月1日(火)、15日(火)11時40分〜

あいテレビ(TBS系列、全国)
 『プレバト!!』
   毎週木曜 19時〜19時49分
※組長がゲストの俳句ランキングづけで出演! 放送日番組欄を要チェック!

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

NHKラジオ第1 四国四県「四国おはようネットワーク」内『俳句ネットワーク』
  12月26日(土)7時43分〜
※組長のブログ上で集めたいつき組の皆さんの「虎落笛」の中から数句をご紹介。

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「鋤焼き/鯨」11月29日〆
   「枇杷の花/冬休」12月13日〆
 インターネットでも配信中。詳しくは番組webサイトへ。
  HP http://www.baribari789.com/
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)、住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。朝日新聞松山総局(790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。

愛媛県《吟行ナビえひめ》句&写真
 俳句選者:夏井いつき
 写真選者:キムチャンヒ
【募集期間】毎月1日〜 25日前後締切
【応募先】http://www.iyokannet.jp/ginkou/
【問い合せ】愛媛県観光物産課
TEL 089ー912ー2491


句会ライブ、講演など

100年俳句計画大忘年会
 12月5日(土)18時30分〜
 場所…いよてつ高島屋ローズホール
※参加費6500円。要整理券。問合 申込はマルコボコム089-906-0694

四国ブロックカントリーミーティング
 12月10日(木)9時〜11時40分
 場所…東京第一ホテル松山
※参加費12000円(四国ブロック内高齢者福祉施設に勤務する方々)。問合 申込は愛媛県社会福祉協議会089-921-8566

愛南町3校合同句会ライブ
 12月11日(金)

コープこうべ主催 夏井いつき句会ライブ
 12月12日(土)13時30分開演
 場所…コープこうべ生活文化センター2階ホール
※参加費…前売り2700円(当日3240円)(中学生以下無料)。問合 申込はコープこうべ生活文化センター078-431-5273

NHKカルチャー大阪 梅田教室夏井いつきの赤ペン俳句講座
 12月13日(日)10時〜12時
 場所…梅田教室
※参加費…会員3456円(一般3996円)。問合 申込はNHK文化センター梅田教室06-6367-0880

朝日カルチャー名古屋 俳句 575の楽しみ〜夏井いつきの句会ライブ
 12月19日(土)13時30分〜
 場所…朝日ホール
※参加費:会員3240円(一般3780円)。問合 申込は朝日カルチャーセンター名古屋052-249-5553

静岡 SBS学苑 夏井いつきの句会ライブ〜楽しくないと俳句じゃない〜
 12月20日(日)13時30分〜
 場所…SBS学苑 パルシェ校
※問合 申込はSBS学苑 パルシェ校054-253-1221



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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

自由律の世界
多満 きむらけんじ師匠、百年の百花妄想、楽しんでおります。
編 さすがプロの風格ですな。四ヶ月の連載お疲れ様でした!

元旦 自由律でいつも悩みます。五七五よりも言葉のセンスと切れが試されるようです。それで、せきしろ 又吉直樹の自由律俳句の本を読み、刺激を受けながら勢いでつくっています。いや、勢いはないか 笑
編 あとは発想とか? きむらけんじさんの百年百花を読んでると「なんでこんな発想できるんや〜!」と感心しきり。

今月の詰め俳句
ひでやん 字数からみて7文字。「の家」と来るから、おそらく名詞か体言あたりが入りそう。ということでサンタクロースだったら面白いと思いながら、無難な冬木の桜。銀杏落葉も迷うなあ。
編 惜しい、植物系はあってたのになあ!

エノコロちゃん マイマイさん、スタッフさん、とてもたのしみです。本当にありがとうございます。まずは「秋の石」5級からです。さて、今回はとってもむづかしいです。季寄せの「冬」の季語を、最初から最後まで、また反対に、終わりからはじめまで、一往復してしまいましたが、しっくりくる7語の季語が見つかりませんでした。くやしいですが、降参です。まいりました。出さないのはもっと悔しいですので、級外覚悟で、恥をしのんでの投稿です。よろしくおねがいします。
編 結果、チョイスは「マスク純白」。無理ありすぎちゃうか!?(笑)でもおかげで(?)新ルールも誕生しました。マイナス!

たとえられるとわかりやすい
片野瑞木 「近代俳句史超入門」の虚子の「選は創作」についてのお話、分かりやすかったです。特に「なんでも鑑定団」の例えが素晴らしいです。
編 有名な言葉ではありますが、真意をどこまで理解できるか、みたいな。噛み砕いて言って貰えると助かりますよね。

季語付スケジュール帳2016
さざなみ真魚 2016年の季語付スケジュール帳、ありがとうございました。何が嬉しいって、毎日の季語にふりがなも記載されているところ。たすかります!
編 読めないのありますものねえ。ぜひ毎日一句に挑戦を♪

大忘年会迫る
喜多輝女 もうすぐ恒例の「いつき組大忘年会」ですね!楽しみにしています。この欄で参加申し込みしてもよろしいでしょうか? よろしくお願いいたします。急に寒くなったので風邪を引いてしまいました。皆様もお気を付けて…。
編 おっと、危ない。申し込みはお便りではなく、個別でのご連絡を頂いております。ともあれ、後日無事お申し込みいただきましたので結果オーライ。

人違い!?
神楽坂リンダ 元旦さま、11月号で「神楽坂リンダさんの曼珠沙華の句」というのを見て「え?わたしの句?」と思いました。記憶にないというか、私の句ではないような気がします。曼珠沙華の句はめったに作りません。良かったら私の曼珠沙華の句「抜刀のごとく提げゆく曼珠沙華」の方を覚えてくださいませ(はぁと)。
編 結局誰の句だったのだろう……。

ドラマと俳句
うに子 秋晴れが続きます。お天気と朝ドラがいいと気持ちよく一日を始められますね。
編 結構当たり外れがあると噂の朝ドラ。今やってるのは面白いんですかね?

みやこまる 毎週楽しみにしていたNHK木曜時代劇「まんまこと」が先日終わってしまいました。庶民的なお話も大好きでしたが、ドラマの最後に主人公麻之助が師匠の庵りで詠む俳句が毎回楽しみでもありました。いつか私も和服を着て短冊に一句したためることが出来るようになれたらいいなと思っています。
編 NHKでドラマで俳句といえば『夜ノぷちどらま「恋と俳句とデメキンと」』。組長がデメキン役で出演してたほか、組員さんがちらほら出演してたんですよ。(宣伝)http://www.nhk.or.jp/matsuyama/demekin/

詩と俳句
KIYOAKI FILM 13歳の春に書いた詩「夜の人工の木/清明」を思い出す。自由があった。今は理解不明の俳句を書いて、酸欠状態。古典ばかりを読み、時代遅れの感深し。
編 むしろKIYOAKI FILMさんのぶっとび具合は最先端突っ走ってる気がしないでもない。


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鮎の友釣り

209
俳号 矢野リンド

雪うさぎさま 俳句と写真と写真俳句の3つを探求されている雪うさぎさんは素敵です。お会いした時いただいた写真俳句のミニ句集をあれから何度も見直しています。

俳号 いつき組に入ってから、たかこ → やのたかこ → 矢野リンドと変わりました。リンドは「赤毛のアン」に出てくる、おしゃべりで単純明快、人の面倒をよくみる女性です。そんな風になりたいと思ってつけました。その第一段階として今年なるべくいつき組のイベントに参加して勇気を出して自分から話しかけるようにしました。皆さんから暖かく受け入れていただいて本当に感謝しています。

次回…マイマイ様へ マイマイさんの詰め俳句計画のファンです。そのために100年俳句計画を購入しているといっても過言ではありません。お仕事忙しいと思いますがどうぞ長〜〜く続けてください。


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告知


HAIKU LIFE 100年俳句計画
第5回
大人のための句集を作ろうコンテスト
作品募集

主催 マルコボ.コム 共催 朝日新聞社 松山市教育委員会(予定)

 第五語回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」(通称「大人コン」)の作品募集がスタートしました。
 「大人コン」は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』が開催する俳句コンテストです。
 共催 朝日新聞社 松山市教育委員会(予定)

「受賞作品が句集になるってホントですか」
 最優秀賞作品は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』の付録冊子として読者諸氏に広く読んで頂きます。付録とはいえ、お洒落なデザインの句集だと評判です。
 受賞者には一切の金銭的負担をかけず、読者にとっても安価な句集をどんどん生み出していきたいという志を一つの形にしたのが、この企画なのです。

「俳句マガジンを購読してないんですが、コンテストへの応募はできますか」
 どなたでも応募できます。購読の有無は一切関係ありません。勿論、応募は無料です。

「審査は誰がするのですか」
 本コンテストの受賞者は、「大人コン」選考会員の投票によって決まります。「大人コン」選考会員は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』購読者の内、各総合誌等の俳句賞受賞者あるいは最終選考に残った実績のある人たち等によって構成されます。第四回の有資格者は三十二名。年々選考会員数は増えていくことになります。
 多くの目利きの力を借りて「百年先の未来に残したい作品と作家」を見い出し顕彰していくことが「大人コン」の目的。我こそは!という皆さんのご応募を、心からお待ちしております。

既作新作を問わず81句の作品集を募集。
最優秀賞作品は句集にし、本誌付録として配布します。

募集要項

応募資格
15才以上(高校生以上)の方なら、本誌購読の有無に関係なく、どなたでも応募できます。

応募方法
1:Eメールでの応募の場合
応募用のエクセルファイルに必要事項を全て入力し、Eメールの添付ファイルにして、応募して下さい。
応募用ファイルのダウンロード先
http://81ku.marukobo.com/

2:郵送の場合
B4判四百字詰め原稿用紙に81句とその表題、俳号、本名、年齢、住所、電話番号を必ず明記して応募して下さい。

締め切り 2015年12月10日(水)必着

賞 賞状および応募作品による句集20冊
*賞品句集は縦横135ミリメートル 36ページとなります。句集は本誌付録として配布します。

発表 本誌2016年4月号誌上(予定)

送り先
〒790-0022 愛媛県松山市永代町16ー1
有限会社マルコボ.コム
月刊俳句マガジン『100年俳句計画』編集室Eメール:81ku@marukobo.com



編集会議開催

 11月13日(金)100年俳句計画編集会議を行いました。
 現在進行中の南極疑似吟行について意見交換をしたり、英語俳句の募集や新しい俳句のゲームについてなど話し合いました。
 編集会議は、2ヶ月に1度開催しています。年間購読をされている方なら、どなたでも参加できます。また、Eメールなどでのご意見もお待ちしております。

次回編集会議
日時:1月29日(金)19時〜
場所:マルコボ.コム
   松山市永代町16-1
対象:本誌年間購読者
申込先:100年俳句計画編集室
E-mail:magazine@marukobo.com



俳句新聞いつき組
7月新規ご購読お申し込みの方には
3号(2015年7月号)よりお届けします!
※4号は2015年10月中旬発行予定です!

2015年「花の座」決定!&「蛍の座」ノミネート20句

大好評「プレバト!!」番組の前説芸人さんを紹介!

そのほか内容充実のフルカラー全8ページでお届け!

※ひとつ前の号からの購読も可能です。事前にその希望の旨をお伝えください。

A4サイズ8ページフルカラー仕様
参加登録料(※初回のみ)1,000円(税込)
年間購読料 3,500円(税込)/年4回発行
*年1回、夏井いつきの句集シングル付録あり。

まずは無料の0号「創刊準備号」と購読のご案内をお送りいたします!
※0号「創刊準備号」を既にお持ちの方は、0号に掲載しております案内にしたがって購読料をお支払いいただくことで、正式な購読の申込となります。

ご購読のお申し込みは……

「俳句新聞いつき組」購読希望の旨、本名(ふりがな)、俳号(無ければ不要)、郵便番号、住所、電話番号、生年月日を明記して、下記のいずれかの方法で申し込んでください。

 ハガキで申し込む
  790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
  有限会社マルコボ.コム
  「『俳句新聞いつき組』購読申込」係

 FAXで申し込む
 FAX番号:089−906−0695

 メールで申し込む
 kumi@marukobo.com
 (件名を「いつき組購読申込」としてください。)



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編集後記


 先月号の「スター ウォーズ展」吟行会の誌面には、「表紙を開いた瞬間ダース ベイダーが現れて驚いた」とか「俳句雑誌に見えないくらい派手で面白かった」などなど沢山の反響があった。スター ウォーズのキャラクターを紙面に掲載できたのは、個人的にも大変大きな出来事だった。
 本誌主催による美術館吟行会が始まったのは、ちょうど1年前。ちょうどその頃、愛媛県美術館に務めていた大学の先輩と後輩に相談し、何とか実現にたどり着いた。
 そしてできあがった誌面は、俳句と作品の相乗効果によって、奥行きのあるものとなった。
 「スター ウォーズ展」では、愛媛県美術館の協力だけではなく、企画運営を行っているNHKプロモーションの松崎さん、そして企画資料や見本の誌面を全て英訳してくれた姪っ子紗蘭のおかげ。交渉を含め約2ヶ月掛けてできあがったのが、先月号の誌面だった。
 先月号の雑誌を読んで松崎さんが、「スター ウォーズに俳句なんて、全く合いそうも無いと思っていたけど、とても面白い」と仰ってくれたことが、この企画で一番伝えたいことだったので、とても嬉しく思った。俳句でできることは、まだまだありそう。
(キム)


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次号予告 (218号1月1日発行予定)


次回特集

俳句対局 第四回 龍淵王決定戦

生まれてから現在までの代表句集2016

蕎麦打ち企画最終回など


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2015年12月号(No.217)
2015年12月1日発行
価格 617円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子