100年俳句計画10月号(no.215)


100年俳句計画10月号(no.215)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
10月になると 西条の針屋さん


特集
第18回 俳句甲子園体験記



好評連載


作品

百年百花
 高須賀あねご/きむらけんじ/山澤香奈/片野瑞木


新100年への軌跡
 俳句/浅川芳直/中山奈々
 評/亜桜みかり/とりとり


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/桜井教人


へたうま仙人/大塚迷路

自由律俳句計画/きむらけんじ

詰め俳句計画/マイマイ



読み物
愛媛県美術館吟行会/シャビ
Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
クロヌリ俳句/黒田マキ
お芝居観ませんか?/猫正宗
歳時記「無季」がバイブル/日暮屋又郎
実戦! 対戦型詰め俳句
百年歳時記/夏井いつき
近代俳句史超入門/青木亮人
mhm通信/暇人
句集の本棚

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




10月になると
西条の針屋さん

 西条市では10月になるとどこからともなく太鼓の音が聴こえ始めます。
 いよいよ西条祭りの始まりです。
 西条市では盆、正月に帰って来ない人でも西条祭りの時は帰って来て西条祭りには参加する人がいるような賑やかな祭りです。
 各地区のだんじりには綺麗な彫刻もされていますが提灯の灯りが点った夜のだんじりは特に綺麗です。
 そして、びっくりする事に西条市には10月から始まる暦があります。
 それだけ西条祭りが愛されているという事でしょうか。
 そんな西条市に一度来てみませんか。


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特集

第18回俳句甲子園体験記



 去る8月22日&23日に開催された、第18回俳句甲子園は、名古屋高校が2回目の出場で初優勝を果たし、会場を沸かせました。
 本特集は、審査員として参加された松本勇二さんとエルヴィン三木こと三木基史さんの体験記をお送りいたします。


俳句甲子園 審判体験記
松本勇二

 俳句甲子園の審判を担当して何年になるのか。森川大和さんがOBとして大会運営に携わり、神野紗希さんが最優秀句に輝いたときの記憶があるので第四回か、伯方高校優勝の記憶もあるので第三回かもしれない。いずれにしろ長く俳句甲子園を近しく眺めてきたことに間違いない。
 十八回大会予選リーグはBブロックに配置された。岸本尚毅、佐藤明彦、山縣忍、高岡周子各氏と筆者という審判メンバーである。五人が審判をするということは、必ずしも一致しない五人の俳句観が複雑に絡み合うということである。故に五対ゼロという結果は極めて稀なケースとなったことは選手にとってはありがたいことであろう。審判の多様性こそ国民文芸である俳句そのものが多様で奥深いものであることの証左と考えている。
 審判の姿勢として少し触れさせていただく。「相対的な評価でなく絶対評価」で、と主催者側は訴えるが実際の審判でそれが出来ていないケースも散見する。選手が提出した句が作品としてとても素晴らしいと思いつつディベートを聞いていると、作品自体が発している輝きとは全く掛け離れた詩的創造性のかなり低いレベルで一句を成していることがある。しかし、そこで俳句作品の評価を変更してはいけない。その句を先入観無しで読んだ時の評価を通さなくてならないと思っている。これぞ、絶対評価でなかろうか。このことは、大会当日の朝、夏井いつき氏が審判団を前に少しニュアンスを工夫しながら口を酸っぱくして話されていた。今後も訴え続けないといけない大切な審判の最低条件であろう。
 この、作者の思いとは全く関係なく俳句が良くなってくる理由を書いておく。一つに定型がある。言葉を五七五定型に嵌めこむと、途端に今まで何でもない言葉が輝き始めることがある。或いは途轍もなく荘厳な雰囲気を纏うこともある。これらはまさに、この定型による恩恵である。二つに季語がある。季語という歴史があり含蓄のある言葉を、歳時記というデータバンクから誰でも容易に引き出せるのである。この容易な斡旋により配置された季語は句の中で主役になったり名脇役になったりと多面的にはたらいて句を支えるのである。三つに切れ、があろう。切れがある(作者が意識するしないに関わらず)ことで俳句の読みがベタにならず、重層的になってくる。言語空間の広がりとはよく言ったものである。常識的なことを書いたが、このような要因により誰でも突然素晴らしい句を提示することができる可能性を秘めているのが俳句という文芸なのである。
 さて、当日の対戦では、昨年準優勝の洛南高等学校が敗退した。ディベートに絶対的自信をもって臨んだ感があったが、初戦の俳句作品が思ったように評価されなかった。因みに筆者は、例の絶対評価により洛南に二回、相手チームに一回旗を上げている。先ず、俳句作品からという基本を参加チームに周知徹底する必要があるのでないか。審判を意識するなと言っても無理かもしれないが、あまりにも表現への欲求を抑えたものが多く、その句を窮屈そうにディベートしているのである。選手諸君は本も読み、歌も聞いて、仲間と会話し、家族と生活し、喜びや悲しみを受け入れる感受性は十分に体に浸透しているはずである。ところが、彼ら彼女たちは妙に小じんまりとした俳句にまとめようとしている気がしてならない。単なる写生に終始したもの、常識的な概念から抜け出せず標語のようになってしまったもの、個人的な感激に嵌ってしまいその感激が全体的なものであるように勘違いしたもの、珍しい情景を書くことに執心して結果何が言いたいのか分からなくなったもの、など枚挙にいとまがない。もっと自分の感覚に従って、個性的であるべきで、そしてそれがある程度(50%くらいか)以上の読者に確かな実感を持って受け入れられることも必要だ。前者については「こんな句を出しても分かって貰えないやろうな、と思ったらゲームセット」などと句会などで良く喋っている。人は案外他人の感性を理解するものであることを認知すべきであろう。そんな気持ちで反故になった個性溢れる俳句こそ宝物なのである。後者は独りよがりの句である。前者と相反するようであるが個性と独善は違う。仮に、野球で満塁ホームランを打った句をにぎにぎしく書いても誰も寄り付かないであろう。それはその人の極めて個人的な感激で他者へ何も与えることはないのである。その辺りを踏まえて句を作ることでもっとのびやかで光り輝く俳句が現れると思われる。
 脱線したが予選リーグは慶應義塾湘南藤沢高等部というチームが勝ち上がった。先に述べた個人的感激を披露した句がままあったチームであるが、俳句 ディベートともに安定感があった。しかしながら、当日行事担当者にも進言したが、発言が三十秒をゆうに超えて話し続けることがあった。三十秒以内での発言を掲げている以上、長い時は即座に注意すべきと考えるが如何か。
 決勝トーナメント一回戦までが筆者の審判担当であった。Aブロックから済美平成高等学校、Bブロックから慶應義塾湘南藤沢高等部の対戦。済美平成が一組残して勝利した。勝敗決定後の大将戦、済美平成「蝉の声血の通ひたる下水道」をよくぞ提出してくれた。これぞ「分らんやろうなと思ったらゲームセット」の句である。嬉しかったが、結果は四対一で相手の勝ちであった。


松本勇二 略歴
1956年 愛媛県生れ 「海程」「吟遊」同人、愛媛県現代俳句協会会長
海程新人賞、現代俳句新人賞、愛媛県文化協会奨励賞、海程賞等受賞
句集「直瀬」



松山俳句甲子園体感記
エルヴィン三木

 松山の魚は美味い。『温石』で出される瀬戸内の白身魚に酒がすすむ。
「するとタロウさんが俳句甲子園を立ち上げた張本人というわけですか。」
「いやいや、夏井さんのおかげだよ。元々JC(=松山青年会議所)では、家族で句碑巡りをする事業を何年もやっていて、当時の理事長に『それに代わる新しい事業を考えてくれ。』と頼まれたんだ。」
「長年継続してきた事業を打ち切ることは勇気がいりますね。」
「だろ。でも文化的事業をやることには変わりがなかったから、やはり松山と言えば俳句しかない。そこで俺が考え出したのが『俳句クイズ、ハワイをゲット!』だ。これに一〇〇万円の予算をブチ込むつもりだった。」
「……そうですか……。」
「ちょうどその頃、経済同友会で講演に来ていた夏井さんと知り合って。この企画のことを話したら夏井さんに大反対されてね。それで夏井さんたちが既にやっていた今の俳句甲子園のスタイルをJCの事業としてやってみようということになったんだ。」
 松山俳句甲子園を夏井いつきと立ち上げた初代実行委員長の寺田太郎は、当時の思い出を事細かく話してくれた。おそらく夏井いつき最大の功績は『俳句クイズ、ハワイをゲット!』を廃案に追い込んだことではなかろうか。

 さて、私が松山俳句甲子園に携わることになった経緯も話しておこう。二〇一五年一月、句友の二人(伊藤弘高、曾根毅)と『まる裏俳句甲子園』に出場し、夏井いつき、加根兼光と出会う。イベント後の酒席で松山俳句甲子園への思いを熱く語ったのを覚えていてくれたのだろうか。後日、加根兼光から「地方予選の審査員をやってみないか?」というありがたいオファーを受けた。地方予選大阪大会の数日前、泰山浩一というスタッフから連絡があった。聞けば、彼は私が所属していたJCの先輩で、準備のため前日から大阪入りするとのこと。そこで私も前日の会場設営を手伝うことになる。いざ手伝いに行ってみると、地方予選大阪大会の会場設営は二時間ほどで完了。スタッフ全員で繁華街に繰り出した。その雰囲気のまま実行委員会に巻き込まれ、松山本選の審査員にも推薦される。つまり私は実行委員会メンバーとして、審査員として、JCのOBとして、二泊三日の松山俳句甲子園を体感することになるのだ。

 大街道の商店街を大規模に使用し、第十八回松山俳句甲子園が始まった。もちろんこの日は審査員として参加。心掛けていたのは句会と同じような鑑賞コメントをしないこと。高校生たちは決して俳句を楽しみに来ていたのではなかった。俳句甲子園という試合に出場し、本気で勝負しに来ている。高校生たちの真剣な眼差しに応えるためには、審査員のぬるい鑑賞など一切不要。なぜ白旗をあげたのか、なぜ赤が負けたのか。高校生はその明確な理由を審査員に求めていた。後になって振り返れば、今回優勝した名古屋の一回戦の審査を担当していたことになる。名古屋の技術は圧倒的で、私は二試合六対決の全てで名古屋に旗をあげていた。
 午後からは伊予銀行プレゼンツのチャレンジ俳句甲子園の審査。これは中学生以下のメンバーで構成されたチームが、俳句甲子園と同じ形式で戦いを繰り広げる。作品のレベルも鑑賞も高校生顔負けで、例えば、

 嘘つきを許して夕立に逃げ込んで みゆう
 夕立のにおいペダルに力込め 松岡希沙

皆さんが審査員ならどちらの作品に旗をあげるだろうか。
 翌日は実行委員会スタッフに戻り、こっそりと試合を観戦。見どころは旭川東対開成A。開成Aは思い切った作品を次々と相手にぶつけて、それを得意な鑑賞でフォローしていくという戦法。俳句甲子園では全体的に上手くまとまった作品が多いなか、王者である開成Aの戦いぶりは、この試合形式そのものに挑戦しているかのようで、非常に好感が持てた。

 松山俳句甲子園には大きく三つのボランティアスタッフが存在していた。実行委員会、OBOG会、そして一般市民ボランティアである。とくに一般市民ボランティアの年齢構成は幅広く、最年少は中学三年生、最年長は七五歳。それぞれが担当した学校の六人目の選手として、高校生たちと共に泣き、共に笑った。松山俳句甲子園は決して俳人(=俳壇)のためのイベントではない。『松山』というまちのためのイベントである。もちろん高校生への教育的側面も目的の一つにはあるだろう。しかし、それでは俳句をツールにしている理由が弱い。松山のまちづくりイベントだからこそ、ツールが俳句でなければならないのだ。実行委員会や一般市民ボランティアには俳句を作らない人たちがたくさんいる。それでも積極的にこのイベントに参画しているのは、愛する松山を盛り上げたいという熱い思いと、松山に集う全国の高校生たち並びにその関係者へのおもてなしの気持ちに他ならない。今回、私は様々な立場で俳句甲子園に関わった。その関わりのなかで、松山のまち、そして松山の人たちを愛してしまったのだった。


エルヴィン三木
出身地:関西。所属:ニューグランドホテルズ。俳歴:第13回まる裏俳句甲子園準優勝。



第18回俳句甲子園主な結果
優勝  名古屋高等学校(愛知県)
準優勝 北海道旭川東高等学校(北海道)
3位  開成高等学校A(東京)
    済美平成中等教育学校(愛媛)

最優秀句
 号砲や飛び出す一塊の日焼
  愛媛県立宇和島東高等学校  兵頭 輝


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2015年度 第二期 第三回


「蕎麦の花」 高須賀あねご

おぶわれて終戦の日の深眠り
背中掻くごとくに洗う父の墓
百八の炎に揺れる虫時雨
屍所らしき起伏や蕎麦の花
秋高し庭師欧州へ研修
西に手を広げ秋思のマリア像
鵙猛る人の形に引くチョーク
牛膝まみれとなりて撮影班
豊の秋仏蘭西語めく西諸弁
ほつほつと南瓜笑っている形
町内運動会中止千個の握り飯
こぽこぽと腑に新月の水の音


パート先に息子みたいな上司がいて毎日シゴかれている。口撃するとナイスな返しがくる。コンビを組んでよしもとデビューしたい。芸名は上司「デジタール」私は「アナローグ」。わりと本気なのを上司は知らない。




「妄想3」 きむらけんじ

振り向いたら振り向いていた
止り木より鳥落ちて死を告げる
介護ベッド解体して父を失う
月ならまた出る死にゆく時も
祖母曰く宇宙の果ては断崖絶壁
へなちょこ野郎に酒つぐ夜が長い
象にも悩みはあると子に諭す
河童の本籍埋めてしまって秋の川
新婚の妻爽やかに自転車盗られた
貧乏を箪笥の上から猫が見ていた
犯罪ほど話ねじ曲げて四角い顔
背面跳びのひとりの空をひとりじめ


自由律俳句結社「青穂」同人。第1回尾崎放哉賞他。現在、本誌「自由律俳句計画」選者。特技:妄想、泥酔。自由律、定型にかかわらず活動している。




「回遊魚」 山澤香奈

十月や体操服を漂白す
秋水にバンドエイドの剥がれゆく
どこへでも一緒に子供鰯雲
悪役のごとくに蜻蛉の中へ
いつも来る小鳥園長室の窓
騎馬戦の騎馬としていま天高し
うさぎりんごの片耳だった三角よ
回遊魚めきたる子等や秋の虹
鳳仙花ウォーリー探すことも飽き
いもたきくつくつ来客数未定
秋愁タルトののの字またのの字
虫の闇置けば泣く子と揺れている


夫が子どもの運動会の日に出張であることが判明しました。つまり、カメラも、親子競技も、子守りも、私が担当のようです。




「大胸筋」 片野瑞木

かくすならこの芒野のあの辺り
不等辺三角形なる鵙の声
きちきちや住所不明の骨董屋
明らかに過ぎたる量のぬくめ酒
天高し最大積載量二トン
簑虫に高所恐怖症の疑惑
症例のひとつコスモス愛でぬこと
今ひとつ足りぬ案山子の大胸筋
大人一枚子ども三枚美術展
妖術のごとく知らぬ間に草の実
知事賞の煮るには立派すぎる栗
急き立てる声の華やぐ秋祭


イソヒヨドリが毎日のように隣家の屋根で鳴いている。「イソ」と名のつく鳥がずっと山の中にいてもいいのか……。




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新 100年の軌跡


2015年度 第二期
第三回


 星今宵 浅川芳直

石垣の日かげれば鳴る青葉騒
草いきれ城跡へ日の斬りかかる
高原の日の粉となる風蝶花
向日葵が突つ立つてゐる外科医院
バスを待つ僧侶の灼くる腕時計
日の中へ出て日をはじく深山
の屍が眩しアスファルトの硬さ
講義なほみんみん五回一鳴きに
時雨教師優雅に動く口
不器用か否吹き出すなラムネ壜
ラムネ水吹くかろやかに下駄の鳴り
ラムネ水まづあぶくよりいただきぬ
いきいきと落つるビー玉ラムネ飲む
星祭る燈下まつすぐ遠まはり
自転車を押すこの歩調星今宵


浅川芳直
 平成4年生。「駒草」所属(平成10年〜)。蓬田紀枝子、西山睦に師事、世古諏訪に親炙。東北大学大学院在学。




 夏井いつき 中山奈々

夏終はるまでキャッチボール続ける
井戸に蓋して病葉の醸造所
いくつでも刺す押しピンや秋桜
つまらせるフライドポテト月の客
きき耳を立てて案山子の薄き眉
汝は波へ夏は秋へと淡路島
賢治忌や井に違へられてゐる
鈴虫やいつかはみづに戻るお湯
無花果につられたる神隠しかな
平仮名できしぼじんなり水澄みぬ
ペンは0.5や明くる夏季休暇
蛤となりし雀に井の痣が
檸檬持て余したる何日君再来
秋の海へと続くつぼに酒
横長に駐車禁止ときりぎりす


中山奈々
 1986年生まれ。俳句甲子園をきっかけに高校2年より作句。「百鳥」「里」所属。




僧侶ときどき案山子 亜桜みかり

バスを待つ僧侶の灼くる腕時計 浅川芳直
 僧侶がバスを待つというあまり日常的ではない光景。その僧侶の腕時計が灼けているというのだから、思わず逃れたくなるような晩夏の日射しを浴びているのだろう。しかし僧侶は微動だにせずバス停にいる。ある意味修行にも見て取れる場面をうまく切り取っている。
時雨教師優雅に動く口 浅川芳直
 こちらも作者以外の人物が出て来る。「優雅に」という措辞が、教師の話よりも蝉時雨に耳を奪われている作者を思わせる。「動く口」を追ってはいるがあくまでも視覚だけなのだ。読み手がその場にいるような感覚にさせる句である。

きき耳を立てて案山子の薄き眉 中山奈々
 きき耳を立てているのは案山子。虚の世界を匂わせておいて「薄き眉」というリアリティーを出す。このことにより、案山子は案外世の中のことを知っているのではと思わせる。案山子に出会うのが少しだけ怖くなった。
檸檬持て余したる何日君再来 中山奈々
 破調で語り、漢語でしめる構成の句。「檸檬」にある青春性。それを持て余しつつ「何日君再来」と問うのだ。字面にある抑制した感じと内面の熱い思いとのギャップが魅力。
 上五中七下五の頭を順に「夏井いつき」で揃えるというチャレンジも愉快。


亜桜みかり
 1961年俳都松山市生まれ。今治市在住。第2回、第7回、第8回選評大賞優秀賞受賞。第3回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞受賞。



おちゃめ とりとり

草いきれ城跡へ日の斬りかかる 浅川芳直
 厳しい日差しを「日の斬りかかる」と擬人化したことで城跡での昔の戦が想起され、昔も今も同じ「草いきれ」を感じることができました。
向日葵が突つ立つてゐる外科医院 浅川芳直
 古い外科医院ですね。白いペンキを塗られた木造医院の狭い前庭に立つ向日葵が目に見えるようでした。暇そうに向日葵に水をやる院長先生も見えますね。

きき耳を立てて案山子の薄き眉 中山奈々
 案山子の「へ」の字のあの眉は聞き耳を立てているんですね。なんだか納得でした。
平仮名できしぼじんなり水澄みぬ 中山奈々
 「きしぼじん」は「鬼子母神」より優しくて「水澄みぬ」の気分に合います。子供にも読める配慮でしょうか。

 浅川芳直さんの「星今宵」は、昭和のようなクラシカルな世界を鮮明に描いているところが魅力でした。
 中山奈々さんの作品は、どの句が「夏井いつき」??としばらく考えてから、おちゃめな仕掛けに気づいて笑ってしまいました。みなさん、わかりましたか? 全体に俳句の枠をはみだしてみたい意欲が見えて楽しい作品でした。


とりとり
 1957年生まれ。三重県在住女性。第1回選評大賞優秀賞。


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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。選者は、関悦史さん、阪西敦子さん、桜井教人さんです。

 「へたうま仙人」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は大塚迷路さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:藤


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 阪西敦子

 よく蚊に刺される。何人でいても、服の上からも刺される。虫よけスプレーとかゆみ止めは手放さない。ところが、涼しくなって油断をしたのだ。刺された時には1ミリ足らずの2箇所だったが、翌朝目覚めたら5箇所あって、それぞれ直径3センチある。一日我慢したが、刺されたところは赤黒くなり、エレベーターで一緒になった階下の皮膚科の看護師の一団に凝視された。新手の営業かもしれないけれど明日は皮膚科に行こうと思う。秋蚊はこわい。 


夏草の持ち上げしまま木のオール 春告草

 夏草が持ち上げているのはオール。とすれば、ボートは草原にある。持ち上げて、その反動で水に挿し、掻くことで前進していた木のオール。今は、その時とは勝手が違って、ボートを超えてくる夏草の力に負けて、力なく持ち上げられている。一見、その姿は、いかにもこれから漕ぎ出そうとする形であるのが、なんとも皮肉でかなしい。本来であれば波のあるべきところに隆々と立ち合がる夏草の力を思わせるばかりである。



こほろぎの跳ぶタイミングずれてをり 青萄
 タイミングはひとりでずれることはない。確かに何かとずれたのだ。しかし、この句の中でそれは明かされていない。二匹が互いにずれたのか、別の何かか。はっきりとはしないが、この絶対的な「ずれてをり」感がコオロギらしいとも言える。

すっぽりと路地に納まる大花火 かのん
 「すっぽりと納まる」とはあまりに素直すぎるもの言いだけれど、大花火で路地であれば何か新しい気持ち良さがうまれる。充分大きいのだけれど、それは路地の幅くらいに見えるという小さな比較が楽しい。

朝顔や運勢欄を真っ先に ゆりかもめ
 運勢欄のある新聞があるのだろうか。と思って、調べたところ、どうもあるらしい。新聞を取りに出て、朝顔の咲く中に家に入る間も待たずに運勢欄を見る。習慣なのだろう。新鮮な景色であるけれど、ずいぶん滋味もある。

竹林の小径さざめく夏の果 さざなみ真魚
 小径がさざめくとは、葉擦れであろうか。それであれば、竹林の小径はいつだってさざめいているのだけれど、それが夏の果であれば、夏の間の無風が思われる。風が戻ってきて、季節が動き出そうとしている。

熊蝉の鳴きつぐ夕日いますこし 鯉城
 熊蝉が鳴き終る勢いになって、何となく今日の昼間をあきらめたような心地のときに、また次が鳴き始めて終わるのが先延ばしになる。と、夕日もすこし長らえたようでもある。夏も盛りを過ぎたふとした安堵感。



天牛のひげの二寸を死ねず振る 青萄
門火焚くシャッター街の昼の熱 ほろよい
流木の龍匂い立つ秋の雨 てん点
内港の海すれすれの黒揚羽 瀬戸 薫
病葉の片鱗に血の色走る ターナー島
100歳を遊ばせている夏座敷 ミセスコナン
夏まつり群馬ナンバー呼び出され  エノコロちゃん
母よりの電話は遠く秋隣 ちろりん
亡びたる琉球のこと夕端居 鯉城
秋雨や見知らぬ貌が週刊誌 遊人



先選者 桜井教人

 職場がある地域の社会福祉協議会から広報誌の原稿を依頼された。俳句をやっていてよかったと思うことの一つは、この種の依頼が来た時に俳句ネタで原稿が書けるということだ。タイトルは「新涼や俳句おすすめする理由」にした。俳句をつくると脳が活性化され、認知症の予防や改善に役立つなどおすすめする理由を3つほどごく簡単に書いた。締めは「秋の空俳句やらなきゃ損するぞ」とした。
 この言葉通り俳句をやっていて得をしたと思うことしばしばである。


月赤き夜は角の痕ひりひりす 越智空子

 「月赤き夜は」という始まりから「角の痕」に続き、読者を一気に虚の世界に誘い込む。中でも「角の痕」のところに誰しもが立ち止まる。おそらくは自分自身が鬼だった時の角の痕なのだろう。普段は心の奥の深いところにしまい込んでいる「鬼」が、赤い月の力によって呼び起こされようとしている。「ひりひり」のオノマトペが虚の世界にリアリティーをもたらす役割を果たし、詩の世界を広げている。



天牛のひげの二寸を死ねず振る 青萄
 ほんの一語の工夫によって俳句は生きるということを見事に教えてくれる句だ。何げない写生が「死ねず」の一語によって、全ての言葉が生きてくる。それどころか死生観にまで及ぶ深みを生み出している。

敗戦を詰める袋や土灼くる 八木ふみ
 高校球児が持っているのは敗戦を詰めるための袋なのだとの表現にとても納得した。毎年毎試合同じ光景を見るが、飽きることのない感動がある。土を集める球児達の手の触感がリアルに伝わってくる。

あの朝も舎利舎利舎利の蝉しぐれ 元旦
 「舎利」3回リピートの字面とオノマトペの相乗効果は計り知れない。「あの朝」は私には8月6日が浮かんだが、読み手に任せてよいのだろう。あの朝が再び来ないことを祈る気持が「舎利」に込められている。

100歳を遊ばせている夏座敷 ミセスコナン
 擬人化がとても心地よい。100歳を遊ばせているのはどんな夏座敷なのだろうか。明るく涼しい風が入ってくる、広く開け放った部屋。高齢者の静かなたたずまいとその周りにいる曽孫の元気な声との対比も好感がもてる。

落ち鮎の曲がるところへ来てひかる  池田喜代持
 方向転換をする瞬間の光が、とてもきれいな映像となって目に浮かぶ。最初の「落ち鮎」と最後の「ひかる」が呼応し、句全体の映像をより鮮やかにしている。「来て」が一瞬の間合いをつくり、速度をより一層感じさせる。



夏空や木喰佛のごとく雲 迂叟
露天風呂蜘蛛の仕事を観て候 喜多輝女
すっぽりと路地に納まる大花火 かのん
鐘の音の余韻吸い込む桔梗かな のり茶づけ
高坏は対に白桃一つづつ ほろよい
七夕を歌わぬ子居る参観日 てん点
八月の墓百基その百の影 ターナー島
スターマインのおんまく花火来年も えつの
仏桑花父は軍歌を歌はざる 哲白
打揚花火誰も後を見ない空 遊人



後選者 関悦史

 先日、栃木、茨城から東北にかけて常識外れの大雨があり、鬼怒川その他が次々に決壊、洪水となりました。
 私の住んでいる茨城県南部も避難勧告が出たので、心配するメールを何通かいただきましたが、うちが台地にあるので浸水はしませんでした。ただし大震災のときに落ちて修理した屋根が、その後大雨の度に漏るようになっており、今回も一階の二間が天井板ずぶ濡れになりました。気疲れでまだ全身ゴチゴチに凝っています。

特選句
自転車の斜め整列秋暑し 幸

 何にでも付くので締まりがなくなりがちな時候の季語で二物衝撃的な効果が出ている句です。その中で「整列」のすっきりした感じと「秋」、「斜め」のノイジーさと「暑し」が、理に落ちない程度に響きあっています。

数列に悩む少女や蚊遣豚 小市

 「蚊遣豚」が面白いような、イラスト的に出来すぎのようなというふうに、「数列」「少女」もこの切り口でいいのか検討してみたくなる感じはしましたが、最終的に「蚊遣豚」がそれらを全部束ねているのでしょう。

背の疵は神の加護とや長崎忌 松ぼっくり

 いい意味で専業俳人臭くない素朴さがあり、採りました。他人の被爆体験を聴いている句で、被爆した当人はその事実を受容している。その経過と距離感全体が、押しつけがましくも抽象的にもならずに伝わってきます。


並選句
微睡みし終の栖や秋の空 みやこまる
汗に起き闘ふ一日となりにけり 凡鑽
群れ蜻蛉谷一帯を舞ひあがる レモングラス
水中花は「教師論」の傍に置く 迂叟
ビラまきをめぐる諍い甲虫 小市
熱帯夜核弾頭のごとき乳首 藍人
眠さうな小象率ゐて月下行く ヤッチー
新涼や地下階段を清酒の香 樹朋
盆の蝉こんなに生まれ夜もすがら 多満
野菜室の主となりぬ大西瓜 喜多輝女
亀美也さん窓から覗く夏地球 かのん
老犬と見上ぐる空に解夏の雲 南亭骨太
掃苔や先に置かれしワンカップ みちる
梅雨晴間木の葉やうやう深くなり 富士山
パンの香の満ちて避暑地の朝ぼらけ のり茶づけ
蒼天の大歩危小歩危合歓の花 一走人
毒茸や覆された玩具箱 ゆりかもめ
男子寮ここにも一つ秋思の灯 もね
日盛りを過ぎて妊婦のウォーキング ぴいす
生まれ出づ海へと帰る精霊船 おせろ
ふたごころなきことちかふ白桔梗 緑の手
蟋蟀や日ごと寂寥増す夕べ 八十八五十八
水軍の居ぬ夏潮に座礁船 八木ふみ
揚花火空の鼓動をき立てる 和音
空間の歪みより蚊の生まれけむ 越智空子
健やかな野菜えらびて盆の棚 うに子
祈る日や蝉の声より逃げられず 元旦
新涼の山山山を駆け抜ける カシオペア
土手道の絶えず導く黒揚羽 青柘榴
見つめられ堪えられなくて秋茜 ひでやん
時刻表錆びてきており秋入り日 台所のキフジン
緑陰や奥に図書館公民館 大阪野旅人
花木槿今日入籍の便りあり 瀬戸
夕焼の向ふの国は考の国 春告草
カナカナの声果てし空竜巻きが行く まんぷく
石榴得てギリシャ神話に身を置けり アンリルカ
蝉よ鳴けお前明日まで生きてるか ミセスコナン
石鎚山おくだりさんにおのぼりさん エノコロちゃん
簾越し火薬の匂ひ地の匂ひ 人日子
新涼のかがやきを組み棟上る 池田喜代持
見え透いた嘘ふはふはと吐く海月 さざなみ真魚
寒蝉を聞きて酒盃を選び初む ちろりん
見上ぐれば合歓の優しき姿あり 高木久美子
白昼をた走る水や広島忌 哲白
ありのみやあんぽ法制あやしきよ 未貫




関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

桜井教人(さくらいきょうと)
1958年愛媛県生まれ。松山市公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回、29回俳壇賞候補。



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へたうま仙人


文 大塚迷路

 すっかり秋ぢゃのう。
 空も風ももうとっくに夏を忘れとるみたいぢゃ。せめて心の奥の夏の風景は押しピンで留めておきたいものぢゃが、みなさまいかがお過ごしかの?
 今月も世界各地選抜の句が豊の秋ぢゃ。どうか食べ過ぎて十六夜にならんように、そこはそれ、大人の対応をしてくだされ。 


夏めくやキミと一緒に暮らしたい ケンケン
夏めくやキミの笑顔があればいい ケンケン
 どうも夏の亡霊がまだ彷徨っているらしいの。この句いつか見たぞ。
 愛の言葉は、自爆しようがどうしようが面と向かって言ったほうが効果覿面ぢゃ、と人が言っておったぞ。白き風に託したのではいつ届くかわからん。途中で灰色の風が混じるとも限らん。素うどんのようにストレートに、と人が言っておったぞ。
 で、中秋の候、夏めく頃の物語はその後どうなったのぢゃ??

弁当屋我は唸りて馬になった手 KIYOAKI FILM
噛んで食え顎がお皿に激痛だ KIYOAKI FILM
 八代続く弁当屋「我」の味に唸り過ぎて、手が馬になることは多々ある。そこらあたりの臨場感とエクスタシーは、昨日や今日の客が味わえるものではないぞ。いや、良い経験をされましたのう。
 いくら噛んで食えと言われても、さすがに皿まで食ったら激痛ぢゃ。昨今は年中ごちそうがざくざくで季節感が希薄になっているが、それでも秋は格別ぢゃのう。これからぞくぞくと出てくるぞ。それにつけても、皿は消化の良いものを選んでくだされよ。

公園の男子便所やちちろ虫 小木さん
公園の女子便所には昼の虫 小木さん
 公園の便所二部作とは句作意欲もりもりぢゃ。一句を授かるまで便所の前で粘りに粘っておったんぢゃろうな。感服ぢゃ。一句だけでは無機質な句でも連作となれば深い味わいが出てくるのう。おまけに夜と昼を使いこなし、ついでのことに虫の種類を変えるあたりが、永遠のへたうま俳人と万人が認めざるを得ん所以ぢゃ。くれぐれも秋の蚊と監視カメラには気を付けてくだされよ。

ゴールまで駅伝競争夏の川 真帆
お昼には早布袋草咲いており 真帆
 来年の川上り駅伝競走の標語はこれに決まりぢゃ。「ゴールまで」と言われたら途中棄権はできんようになるぞ。言葉のプレッシャーぢゃ。
 「お昼には」で時間の経過を表し「早」で驚きをさりげなく表す所はすでにベテランの域ぢゃ。「布袋草」に他の花を入れるといろいろなバリエーションの句が無数に出来るという効率的なところも、昨今のハイブリッド潮流にぴったりぢゃ。

極暑の日祖母のお通夜となりしかな 柊つばき
立秋や一人十キロやせました 柊つばき
 この夏、大変でしたのう。心労お察し申し上げますぞ。下五の「かな」で、深い悲しみの中にも現実をまだ受け入れきれていない作者の心がようくわかるぞ。極暑が十倍も百倍もこたえましたのう。秋本番となり少し落ち着かれたらゆっくりと体調を戻してくだされ。
 俳句で吐露できるものは吐露して、少しでも心の平穏を取り戻されることを望みますぞ。

満月や食用うさぎまるまると 誉茂子
 満月とうさぎは前人踏み倒しまくりの思わず誘惑に負けてしまいそうになる魅惑のコンビぢゃが、そこに「食用」が入るだけで予想とは全く違う倒錯の世界へいざなわれ、俄然盛り上がるのう。このような意外な要素で違う方向へ自然に誘導させるテクニック(奇術の世界では赤ニシン(ミスディレクション)というらしいが)を駆使すれば、まだまだ表現の世界は無限の詠み人知らずぢゃ。第四の要素までは入れないそのセンスに脱帽ぢゃ。

立秋の人こぼれそう甲子園 ひでこ
八月やわだつみの声上下巻 ひでこ
 そう言えば、野球甲子園は今年は八月六日からの開催ぢゃったのう。そして今年の立秋は八月八日。土曜日ぢゃったので甲子園は本当に「人こぼれそう」状態ぢゃったろうのう。大酷暑の中、ベクトルがほぼ二分される空間は何とも言葉には出来んのう。
 甲子園大会の途中にある敗戦日が、ベクトルの行き着くところとして考えさせられるものがあるようで全然ないかもしれんが、「上下巻」だけでは完結できないものが八月には潜んでいる、としたら作者の意に反する過剰読みになるのう。まっ、大目に見てくだされ。

抜歯後の痛みひきづる残暑かな 坊太郎
処暑入るや隣家の人の留守長し 坊太郎
 いつかは涼しくなるとはわかっていても、この暑さは際限なく続くのかも……と思わせるのが残暑の周到な作戦ぢゃな。抜歯後の痛みと残暑を天秤に掛けたら微妙に釣り合うところがやるせないのう。
 隣に誰が住んでいるのか興味のある人が少ない今の世に、隣人の留守を気にしている人がここに居ることに感動ぢゃ。入院か宝探しの旅かわからんが、処暑から白露あたりの暑さが和らぐ時期に早く帰ってきて欲しいものぢゃのう。
 いや待て、こんな人情噺のような句はへたうまの園の住人には至極失礼ぢゃ。隣家の郵便受けに溜まっているダイレクトメールを気にしつつ、三日で帰れる範囲内へ追放!

西方の浄土縁なし穢土ほたる 老兵
つぎつぎと雛喰う蛇の悲し目や 老兵
 わが身を「穢土ほたる」と言い「西方の浄土」には縁がないと謙るあたり、なかなかの手練れぢゃのう。現のほたるの点滅と点滅の間のまだ光の残る暗闇に浄土を見ているのかものう。
 生きるためにはしかたないことぢゃが「悲し目や」としたことで蛇に寄り添って現象を見ている作者の姿が現れたのう。「目や悲し」ではこうはいかん。主人公が逆転してしまう。そこらへんの塩梅がさりげないのう。
 自然界の悲哀を考えさせられるこんな句は、人間も生き物の一部的ノアの方舟へ一泊ご招待!的追放!!


 おっと、二ヶ月ぶりに追放者を出してしもうたわい。普段の不摂生のせいで、まことに遺憾に存じますぢゃ。
 俳句にはますます良い季節になるが、なあに、秋に句が出来んともすぐに冬があるし、春も待っておるぞ。未来は底無しぢゃ。
 ぢゃが、くれぐれも油断召されるなよ。



へたうま仙人
 年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
 好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き)
 嫌いなもの 上手な俳句
 将来の夢 大器晩成


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 瀬古利彦、中山竹通、高橋尚子、野口みずき……が世界のトップとして活躍したマラソン日本も、いまや昔日の面影なし。なんとかならんのか……と思っていたら、日本実業団陸上競技連合が、日本新記録を出したランナーに1億円、指導者にも5000万円のボーナスを出すことにしたらしい。まずランナーの底辺を強化して……というような悠長な計画より即結果、のなんとわかりやすいことか。馬に人参、マラソンに1億円!なのだ。まあ今の世の中、このわかりやすさが何よりかも。これで結果が出れば、「お金は1ばん、理屈は2ばん!」ということか……。



行き止まりなので行ってみる 遊人

 行き止まりなら、ふつうに考えれば行かない。「行ってみる」……というところにこの句の妙味がある。多分作者は、行き止まりの向こうに興味をそそられる自分だけの何かしらを見たのだろう。本人にしか分からない思いや感覚が、一見無駄とも思える行為を意味ある行為へと変えたのだろう。それはひょっとしてこれから先の人生の希望のようなものかもしれないし、行き止まりの先を見据える前向きの意識のようなものかもしれない。言い過ぎず淡々とした味わいが良い。深い詠み方ができる句だと思う。



増殖する監視カメラとタイムズ駐車場 ゆりかもめ
 「監視カメラ」と「タイムズ駐車場」の選択、対照が上手い。今の市井を鋭く斜めに切り取っているような感がある。「増殖する」という言葉も、必要不可欠ではあるがどことなく相容れないという心情をよく引き立てていると思う。

汚れても何度でも洗うから のり茶づけ
 いったい何を何度でも洗うというのだろうか。赤ちゃんのオムツなのか、愛する人の汗の下着なのだろうか……。まったく解からないが、その分読み手の妄想が広がっていく。底辺に流れているのは、最近薄くなってしまった献身的な愛なのかもしれない。

仰向けの熊蝉の脚に未練 もね
 地中で何年も過ごし、蝉として地上に出ればあっという間の一生。いまひと夏を終え地上に落ちて生を終えようとする蝉の身になれば、まったく未練はないといえば嘘になるのか……。そのふるえる脚に生への執着、未練を見たということでしょうか。

名月や妻とふたり 迂叟
 こういう状況を詠んだ類句は多々あると思う。悪く言えば無防備、平板に過ぎると取られがちだけれど無理な創意工夫や作意いっぱいの句より、よほど心に届く。シンプル イズ ベスト……今回の投句のなかでは鈍く光っておりました。

ストレスの貌山椒魚の貌 大阪野旅人
 自然環境が損なわれていく中、山椒魚の貌にもストレスが……という読み方と、ストレスを抱える人の貌はまるで山椒魚のようだ……という読み方とがあると思う。山椒魚には悪いが後の読み方をしたい。山椒魚の貌をストレスの貌と見たところの面白味。よく見れば小さい目で結構愛嬌あると思うけど。



匂う握りつぶした蛍 小市
ちちろ鳴く日本家屋の洋式便座 ヤッチー
炎天のカーテン固まる電柱ゆれる 多満
己の不徳と詫びて終わりか 南亭骨太
秋風に股関節が硬い 一走人
腹話術終えて人形は力抜く ゆりかもめ
もういやだ秋だ 小木さん
青鷺のどこにもそまらない蒼 緑の手
守宮の子紙ですくって外にポイ カシオペア
アスファルトに蛇の蛇腹融け 青柘榴


並選
血も涙もないけど愛がある ケンケン
うなだれない夏 幸
いんきくせえ桔梗なんぞを見舞にか 凡鑚
小さき者皆口たちて頼もしきかな レモングラス
火山灰埃そばの猫まで叩いちやつた 青萄
手首の傷跡よく見る癖や不知火 KIYOAKI FILM
安保改憲自己顕示欲 喜多輝女
五十年歩き慣らした道を戛戛と みちる
葛を掘介護食煮込む ほろよい
唐辛子に泣かされる 和音
青田風とみかん色の郊外電車 誉茂子
師匠と呼ばれおりられぬ踊り うに子
シート倒し深き口づけ無月 元旦
人ごとのような余生 藍人
MRI的豪雨 台所のキフジン
一番電車を鳴らすのはヒロシマの少女  松ぼっくり
まつ先に疑われるは氏素姓 坊太郎
ひかりを棄てし絵画ひぐらしの声降りやまず  まんぷく
八月は負の歴史鳩は青き空へ ミセスコナン
ケーナの音色は秋 エノコロちゃん
秋がおそろしくとおい さざなみ真魚
月出でて我輩も一人 鯉城



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。



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詰め俳句計画



文と出題 マイマイ


今月の問題
 次の(  )の中に共通する秋の季語を入れて下さい。

われ未だ野の人たらず(   )
この酔いどれに(   )とはまた粋な


 ご無沙汰しておりましたが、この度復帰致します。歳時記さえあれば簡単に投稿できるお気軽なコーナーです。ではまずルールの確認から。

われ未だ野の人たらず朧月
この酔いどれに朧月とはまた粋な
 緑の手さん。うーん残念。春の季語ですね。募集が秋の季語でしたので、今回は級外。またの投稿をよろしくお願いします。

われ未だ野の人たらず花野ゆく
この酔いどれに花野ゆくとはまた粋な
 坊太郎さん。前句かっこいい。後句の言い回しがやや不自然か。4級。ところでこの場合の季語は「花野」。「花野ゆく」とされているのでこれは季語をアレンジしたものとみなします。「歳時記を開けば誰でも解ける」が開始当初からのコンセプトですので、季語アレンジの場合は有段にしないをルールとして掲げておきます。エノコロちゃんは秋の石。「秋」という季語は入っていますが、私の持っている歳時記では「秋の石」という季語はありませんでした。これも一種の季語アレンジか。前句に少し感慨あり。後句は粋? 5級。

われ未だ野の人たらず霧雨
この酔いどれに霧雨とはまた粋な
 KIYOAKI FILMさん。わざとリズムを外してくるのはもちろんルール違反ではありません。前句後句ともリズムが合いませんが、前句の断ち切られたような字足らず感が内容に合っていると言えなくもない。5級。

われ未だ野の人たらず秋灯し
この酔いどれに秋灯しとはまた粋な
 ひでこさん。前後句ともつかみどころがない。特に後句、季語だけではどう粋なのかわからない。5級。人日子さんは温め酒。いやいや後句飲みすぎでしょう。同じく5級。ひでやんさん、大阪野旅人さん、池田喜代持さんは生身魂。このマニアックな季語に3人も来るとは。前句自嘲か。後句、もしそう言われたとしたら粋というより失礼では? 4級。

われ未だ野の人たらず夜這星
この酔いどれに夜這星とはまた粋な
 ヤッチーさん。後句、粋というよりも俗?5級。だりあさんの稲光は前句が劇画調になってびっくり。後句、粋かなあ。元旦さんは星の恋。前句「野の人」に対してロマンチック過ぎるか。同じく5級。凡鑽さんは月今宵。前句、秋の野を照らす月光が感じられる。後句、月今宵の強い感動が複合助詞「とは」によって弱められてしまう気がする。4級。越智空子さんは流れ星。後句は納得、前句やや甘いか。同じく4級。矢野リンドさんの星月夜は、前句広がりがあっていい。後句も自然。3級。笹百合さんは十三夜。後句、あえて仲秋の名月でないところが粋。前句もさりげなく月の光を感じさせて好ましい。2級。さざなみ真魚さんはいわし雲。前句、空の広がりと作中主体の「野の人」への憧れが呼応しあっていていい。後句、食べられないいわし雲がかえって粋かも。1級。

われ未だ野の人たらず虫の闇
この酔いどれに虫の闇とはまた粋な
 のり茶づけさん。前句、物思いに沈む人物が見えてきて面白かった。後句は粋というより怖いかも。4級。ゆりかもめさんはきりぎりす。前句は合っている。後句は粋かどうか?3級。小木さんのちちろ虫は後句、もてなしとして蟋蟀の虫籠でも置いてくれたとしたらとっても粋。2級。ちろりんさんはアキアカネ。前句は秋の空気感を季語が体現している。後句はアキアカネが体のどこかに留まっているところを想像して粋だと思った。1級。

われ未だ野の人たらず秋桜
この酔いどれに秋桜とはまた粋な
 一走人さん。前句はまさに「野」。ここから花の投稿が続きますが、後句が粋かどうかはもう個人的な好みなのかも。私の好みではやや粋。3級。おせろさんは酔芙蓉。後句はダジャレかとは思いましたが「粋」を「スイ」と読めば音も重なって面白い。前句「野の人」とどうか。同じく3級。小市さん、ほろよいさん、うに子さんは吾亦紅。渋みのある赤い色が私の好みで粋。2級。台所のキフジンさんは藤袴。喜多輝女さんは女郎花。どちらも秋の七草であるが主役を張らない地味さ加減が粋。同じく2級。迂叟さんは白桔梗。こちらは主役。前後句とも「白」の一字が効いている。1級。

われ未だ野の人たらず走り蕎麦
この酔いどれに走り蕎麦とはまた粋な
 青柘榴さん。前句確かに野の物ですが洗練された都会的な食べ物のようなイメージがやや損か。後句は間違いなく粋。2級。藍人さんはとろろ汁。正解に近いのですが、それでも野趣の点で正解が勝るか。1級。

われ未だ野の人たらず山葡萄
この酔いどれに山葡萄とはまた粋な
 青萄さん。この野性味が前句に合うし、後句珍しさもあって粋。初段。幸さん、ひなぎきょうさんは菊枕。後句の粋さがすばらしい。同じく初段。シャビさんは赤い羽根。想像もしていないところから飛んできたパンチに当たってしまった。後句はちょっと得意げな人の表情が浮かぶ。前句、都会にいながら「野の人」への憧れを捨てきれない、そんな複雑な心情が出ているように思った。同じく初段。


今月の正解
われ未だ野の人たらず零余子飯
この酔いどれに零余子飯とはまた粋な
 正解者なし。今回はど真ん中ストレートでどうだ。自己判定初段。


12月号掲載分の問題(10月20日締切)
 次の(  )の中に共通する冬の季語を入れて下さい。
森閑と佇つ(  )の家
(  )満つ家庭裁判所



マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回大人コン優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。




【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)、俳号(なければ本名の名前のみ)、本名、電話番号、住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙人」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、10月20日(火)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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美術館吟行10:愛媛県美術館


What's goinng on in this picture?
どうしてそう思う?
小学生のための美術鑑賞吟行会
文 シャビ


 8月29日土曜日、夏休みもあと少しで終わるという日程の中、小学生のための美術鑑賞に向かったのは、小学生のそうそう君を含む10人。(他のメンバーは、チャンヒ、ひかる、toku229、阿昼、恋衣、猫正宗、蓮睡、若狭昭宏、シャビ)10人中9人が大人という構図となった。
 さて今回の主役である小学生俳人のそうそう君は、キャリブーの群れが雪原を走る姿を、上空から捉えた白川義員さんの写真「キャリブー(1)」を見て

キャリブーも仲間といっしょにスケートだ そうそう

 真鍋博さんの作品で、同名の小説の表紙画としても有名な「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を見て、

なるんだよ電気ひつじに夏の夜 そうそう

という句を詠んだ。電気羊の絵に対して、大人たちはこのような句。

生き物の形に夢を見る晩夏 若狭昭宏
電気羊の夢オリオンの肩ごしに 猫正宗
こちら羊本日は満月である シャビ

 同じ絵を見て、このようにさまざまな句が出来上がってくるのが、美術鑑賞での俳句の楽しさである。
 今回の常設展は、美術館では珍しく「話しながら鑑賞をしても良い」という環境での美術鑑賞であった。また、コンセプトが似ている作品を2作品ずつ並べるなど、子どもたちに作品について考えさせる取り組みをしていた。大人たちも、小学生に戻ったつもりで作品を鑑賞する時間となった。
 矢野眞胤さんの「野球大会」という、野球大会をモチーフにしながら、中心部の選手の上半身がかろうじてわかるかなぁ、というモザイクのような表現の作品。前に後ろに見る位置を変えながら「どうにもわかりにくい作品だなぁ」と話していたらこんな俳句。

野球大会さっぱり解らん法師蝉 toku229

 今回の部屋の中心にはマリノ マリー二さんの「踊り子」という鉛の像が。ふくよかな肉付きで踊り子の生命感を表現しながらの、表情はお面のような顔であることが印象的であった作品にはこんな俳句。

爽やかの集まる像の踊り出す 蓮睡
踊り子の受ける光や涼新た 恋衣

 野間仁根さんの「兄弟と昆虫」。弟が猫を抱えている兄弟の姿と、その周りに蝶やクワガタやトンボなどさまざまな昆虫が描かれていた。

弟に渡せば逃がす鬼やんま 阿昼
兄弟も猫も溶けてくあの夏に 猫正宗

 近藤英樹さんの生命感のある芽をモチーフとした、作品を美術館の床にちりばめた「発芽/再生の種」、同じく近藤英樹さんの「発芽/種子の記憶」という作品にも5句の俳句が集まった。

土を出る芽の上にあり秋の空 阿昼
偽りの銀河へ魂が発芽する チャンヒ
めりめりと発芽の音や秋の風 toku229
さやけくも苦しむ大地より芽吹く ひかる
休暇果つる日再生の種に影 恋衣

 今回の写真掲載許可をいただいている野間仁根さんの「魔法の森」。ジャングルのような深い緑と、中心には鮮やかなライオン。その周囲には動物がいて、どこを見ても俳句になりそうな絵である。この作品には8人の9つの俳句が集まった。まずは作品を全体としてとらえた俳句を紹介する。

熱帯夜僕らも森の住人に 猫正宗
鳥獣も虫も出揃ひ秋祭り toku229

 絵の中心に目を移せばライオンが目立っている。

ひげに目に足に尻尾に月満ちて 阿昼
夏の夜思考にライオンを住まわせる シャビ
尾を立てて二百十日のライオンは 恋衣

 この絵では動物がどれも個性的である。

ジャングルの終はり垂れ目の小鳥来る 蓮睡
赤い糸引つ張り合うて小鳥来る 若狭昭宏
拍手を高らか穴に入る蛙 蓮睡
群青の魔法の森へ星降る夜 ひかる

 同じ絵を見ても、俳句として出来上がってきたものを見ると、さまざまな感性でとらえている。
 小学生のための美術鑑賞。大人たちも童心に戻れた気がした。何人かは小学生のための感想用紙に、小学6年生以上の欄に○をして記入して帰った。
 最後に自分自身のエピソードを。今回俳句もいくつか集まっている近藤英樹さんの「発芽/種子の記憶」という作品。その作品を見ての小学生の感想の用紙を壁に貼ってあった。小1の子が「たまねぎに見える」、5歳の子が「かいがらに見える」との感想であった。僕はその発芽という作品を見て、「これがダイヤだったらいくらぐらいするのだろう」と考えていた。

夏の美術館星の瞳と¥の瞳と シャビ

 僕が童心に戻るのはまだまだ先のことになりそうである。


シャビ
今治市在住の28歳。今治西高校から愛大俳句研究会を経て今治市役所へ。俳句甲子園ではOBOGボランティアとして活動。



取材協力:愛媛県美術館


次回美術館吟行会
いずれも『100年俳句計画』編集室までお申し込み下さい。(TEL089-906-0694)

愛媛県美術館常設展
日時: 10月24日(土)10時〜
場所:愛媛県美術館
参加無料(入館料は別途)
申込締切:10月22日(木)

http://www.iyokannet.jp/



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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.27


Death is at my door
Is it winter? No, Autumn!
Red leaves, cozy life.

紅葉の家や死はまだ戸の向う


(直訳)
死がドアの外に
もう冬ですか? いや、秋だ!
紅葉のこのささやかな暮し



 I love the Chopin Cello Sonata but that is not enough. It must love me, too, and it cannot be forced. It is like the cello itself. If you treat it right it will treat you right. Notes on a page and a wooden sculpture strung with gut: together they require proper preparation, an act of faith, and luck.

私はショパンのチェロソナタを愛する。だがそれでは十分ではない。曲も私を愛さなければ。そしてそれは強制できない。チェロという楽器も同じ事だ。我々がチェロを正しく扱えば、チェロも正しく答えてくれる。楽譜に書かれた音符と、羊腸の弦を持つ木彫品と、どちらもが相応しい準備を要求する。信念を持って立ち向かうのだ、幸運と共に。(訳:朗善)



ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第55話
「私の考えるジャズ」 クインシー ジョーンズ


 JAZZ句会のルール「艶っぽ過ぎる発言に罰金を課す」と「一番人気句を詠んだ人が次回のテーマを決める」に基づく義務と権利を同時に得てしまった夜市さんの初アルバム選びの条件が「ビッグネームの名盤」。ほとんど権利放棄と思えるこの要求に、僕は応えることとなった。

花畠クインシーという園丁 猫正宗

 標題はアッサリと決まった。弱冠23歳のクインシー ジョーンズが世に問うた初リーダー作「This is how I feel about jazz」。彼のジャズ アルバム中の最高傑作である。まず、ビッグバンドとダブルクインテットに登場するメンバーが凄い。トランペットがアート ファーマー、ジョー ワイルダー……、トロンボーンがジミー クリーヴランド、アービー グリーン……、サックスがフィル ウッズ、ジェローム リチャードソン……、リズム セクションがハンク ジョーンズ、ビリー テイラー、チャールズ ミンガス、ポール チェンバース、チャーリー パーシップ……。正に花畠である。クインシーは個性豊かに主張する名花達をペン一本で見事にアレンジした。

完璧な黄落を完璧なソロ チャンヒ
考えるな感じろ秋空のジャズ 照造

 アルバムに対する唯一の不満はテーマの邦題にある。Feelを「考える」なんてジャズっぽくない。「閃き」つまり即興性に欠ける。照造さんは、そこを突いた。かといって「感じる」では、何か弱い。いっその事「私のジャズ」で良い。

豊の秋第一人者といふ愁へ 破障子

 クインシーがジャズ界の第一人者、特に編曲者としてのそれを獲得したかどうかは評価の分かれるところ。しかし、彼が早々にポピュラー界で作、編曲家、また音楽プロデューサーとして大成功を収めたことは周知の事実である。マイルス デイヴィスやフランク シナトラをプロデュースする60年代のクインシーが、80年代にはマイケル ジャクソンとタッグを組み、アルバム「スリラー」をリリース。ギネス ワールド レコーズに「史上最も売れたアルバム」と認定された。

ボサノヴァじゃないジャズじゃない金風  蛇頭

 60年代から80年代のマイルスを“変貌”と表現すれば、クインシーのそれを“迎合”などと辛口評価するジャズファンもいるだろう。が、62年録音の「ビッグ バンド ボサ ノヴァ」を聴けば、ソウルもクロスオーヴァーもフュージョンも無い時代に、よくもこれだけ多様なサウンドを盛り込めたものだと思う。ジャズというジャンルにクインシーが居ることを、むしろ歓迎したい。



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。

次回のJAZZ句会は、10月23日(金)18時30分より。テーマは「モーニン/ボビー ティモンズ」(アルバムの名義はアート ブレイキー)です。句会への参加を希望の方は、本誌44ページの句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU vol.1』(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ


第55話
『短命』〜ギリギリの線〜


 町内の八五郎がご隠居のところへ飛びこんで「表通りの質屋 伊勢屋の婿養子がまた死にました。」と言う。“また”とはおかしな話だと尋ねてみると、養子に来る者来る者たて続けに一年もたたずに死ぬという。
 そのおかみさんは三十三の年増だがとても美人でどの相手とも仲も良いし、大きな店なので番頭に任せておけば切り盛りしてくれ、何の心配もいらない、どうも不思議だと八五郎。
 ご隠居、「夫婦仲がよくて、家にいるときも二人きり、飯を食うときも差し向かい。原因はそれだな。」と分析。
 八五郎にはこの話がピンとこない。
「なんでいい女だと短命に?」
隠居、川柳を例に出してみる。

 新婚は夜することを昼間する
 何よりも傍が毒だと医者が言い

 八五郎、これでも分からない。
 隠居が「考えてごらん。食事時だ、おかみさんがご飯を旦那に渡そうとして、手と手が触れる。白魚を五本ならべたような手だ。ふるいつきたくなるような、いい女なんだよ……短命だろう?」
 やっと理解が出来た八五郎、家に帰って自分の嫁と比べてみる。
 ごはんをついでくれと頼んだら、たらたら文句を言いながらよそい、こっちに放り投げようとするので、「ちゃんと俺に手渡ししてくれよ。」と願う。
 すると言われるとおり嫁は茶碗を邪険にこちらへ。
「手と手が触れる、そっと前を見る……」
八五郎、嫁の顔を改めて眺めながら
「ああ、俺は長生きだ。」



 バレ噺という、ちょっとエッチなジャンルが落語にはあり、この噺もギリギリその範疇といえます。ご隠居も直接そのことについては語りませんので、逆に聴いている者は想像がふくらみ、ドキドキしてしまいます。
 ご飯の味なんかこの二人にとってはどうでもいいかもしれませんが、僕はこの噺を聴く度に、つやつやに光る、とても旨そうな白米が見えてくるのです。きっとこの季節の、香りもふくよかな新米の炊いたやつが。
 だって、まずいメシのはずがない気がするのです。
 先日、ケーブルテレビのロケで西予市宇和町の稲田に行って参りました。
 米農家の担い手の男性四人がプロジェクトを立ち上げ、自分たちの米は自分たちでプロデュースして売っていこうという、その名も「男米」というプロジェクト。
 そう、「男前」とかけていて、なかなかユニークな動きをしております。
 無理をきいてもらい、田んぼの中にかまを置き、その場で飯を炊いてもらいました。
 十分間蒸らし、ふたを開けたときの感動たるや、筆舌に尽くしがたい。
 そのまま塩むすびにしてもらいパクッ……
 涙が出るほどの旨さ。
 あまり噛まず、半分ほどまだ米粒が形をとどめているくらいのをごっくんする食べ方が好きだという話をすると、男米のメンバーも「そうそう、それが新米はうまい食べ方なんです。」と賛同してくれました。
 えーと、僕ももちろん長生きですが、何か?

新米をむすぶ手を見る十四の眼


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新聞記事に隠された俳句を発掘する
クロヌリハイク


黒田マキ


新米と言えば三間米塩むすび
(愛媛新聞より)


タコのつぼ美輪明宏のお気に入り
(2014年11月6日朝日新聞より)


タレントのローラが、9月に涙ぐむ
(愛媛新聞より)


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第36回『国際演劇セミナー』

 '15年7月9日(木)〜12日(日)、シアターねこで「国際演劇セミナー」が行われました。国際演劇セミナーとは、世界各国の演劇人を講師として、体験型講座、講義等を開催するものです。今回の講師は、韓国で『ナンタ』を始めとするパフォーマンス、『キャッツ』等のミュージカル、ストレートプレイ他、多岐にわたる演劇活動で高い評価を受ける、ユン ジョンファン氏。今回の体験型講座は、講義等を通して氏の作品『ちゃんぽん』をダイジェストながら上演するというもの。私は、受講者ではなく、見学者として、しかも、4日間の内、所々つまみ食いするような形で参加してきました。そんなかかわり方だったにもかかわらず、今回の講義、体験型講座は、身震いするほど明晰でわかりやすいものでした。例えば、講義に曰く「認識は感覚(五感)を通して形成される。役者は観客の感覚を刺激し、認識を呼び起こす。一つの刺激で他の感覚を呼び起こすこともできる(ex. TVで観るラーメンに匂いや味を感じる)」「登場人物はそれぞれ役割を持っており、それがぶつかり合って衝突、けんか(対立)が生まれる。作品を観る時、テーマを考えるのではなく、登場人物が何を目的とし、どうしてぶつかるのかを観ていくと作品が分かる」、「観客を感じさせるのが役者。悲しい物語を役者が悲しいという感情で演じてしまうと、作品は役者のその感情を説明するものになってしまい、観客は悲しくない」等々。

涙など流さぬけれど草の花

 これらは、演劇をする、観るためのものとして語られました。でも、これ、他の表現にも通じることですよね。以降の体験型講座でも、ユン氏の一言一挙手一投足に目の覚めるようなことが目白押しで、大いに学ばせていただいた4日間でした。おそらく、この人は「伝える」ということを、考えに考えてこられた方なのでしょう。嗚呼、学んだことをきちんと実践できれば、このコーナーだって、もう少し皆さんに読んでもらえるものになるだろうに。それでも、これから表現に取り組むうえで、多くのものをいただいたように思います。

月動く音聞く考え抜いた果て

かつて手塚治虫は「漫画から漫画を学ぶのはやめなさい」と言ったとか。本誌読者諸氏、演劇の体験型講座などいかがでしょう?



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。


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歳時記「無季」がバイブル


プロローグ
文&俳句 現代俳句協会会員  日暮屋 又郎


やりたい放題の草に猪垣がやられている

 さすがにこれは、やめといたほうが……。妻のマーペーが止めようとするが、かまうものか、自分の本能から湧きあがった一句だ。しかも巨大な一本うんこのようにスルリとでてきた。送信!
 これまで、ほんの数度しか経験のないラジオの投句番組一句一遊の金曜句、しかも天そばだった。こんなんでいいのだろうか……。放送後、妻のマーペーと信じられないといった顔を見合わせた。そこから自分の俳句に対する概念が根本的に変わり始めた。季寄せすら持っていない、まずはそこからだろうとの思いで書店に。
 何でもいいやとばかりに無造作に手にしたのが現代俳句の歳時記、その中に無季とある。なんだこれはとパラパラめくってみれば、これまで人の俳句を読んでみても然程は感銘を受けたことがなかったのに、まるでビーンボールのような句がきら星の如く掲載してある。しかもその多くが、きちんと計算されたうえでのやりたい放題の自由律だ。出勤前だというのに心臓を打ち抜かれたようで、便座から立ちあがれない。いや、このままずっと見入っていたい。有給休暇という手もあるのだが……。
 それからというもの手垢、こぼした酒やコーヒーの染み、最初は角ばっていた本が丸みを帯び、もうボロボロになるまで何度も読みふけった。そしていつの間にかこの無季の歳時記が、僕にとってバイブルとなった。それはいまだに変わることのないよりどころだ。文語だらけの小難しい季寄せとは違い、たくさんの作者の句がするすると脳みそに入ってきて、それが混ざり合わさって消化され、五,七、五の定型を無視はしないが、あくまでもそれは一つの基準として、自由な韻律の句がこれまで以上に出てきはじめた。
やがて季語をそれほど強く意識しない句作が始まった。もちろん季語はいらないなんて言うつもりもなく、必要な時はこれからも便利に使わせていただくつもりだ。
                
マザコンは否定しないよプリン好き
                  
 無季であろうとも、そこはかとなく季節を感じる句ができたら今の自分にとってベストと思う今日この頃である。


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マイマイの詰め俳句復活記念

実戦!対戦型詰め俳句


企画&文 キム チャンヒ


 5月号にて紹介した「対戦型詰め俳句」は、ほとんどと言って良いほど、読者の反応がなかった。完全失敗企画か?とも思ったが、俳句対局だって、観客が少なくてもやり続けたお陰で、大きなイベントとなったのだ。
 まずはいろいろな方にやって貰い、新しい俳句の楽しみ方として、広めていこうと思う。
 そんなわけで、今回はまだ夏休み中の大学生2人を捕まえて、無理矢理対戦して貰った。

 バックナンバーを取り出すのが面倒な方に向け、対戦型詰め俳句の簡単な説明。
 参加者はまず、それぞれ出題する季語を決め、数句ずつ作る(今回は5句ずつ)。
 作句が済んだら、各俳句を季語を伏せて短冊に書く。これで準備終了。

対戦の進め方
1.出題者は、回答者に見えないように、審判に回答の季語を渡す。
2.出題者は回答者に一句ずつ短冊を見せる。回答者は一句ごとに一つ、制限時間内(2分程度)に季語を回答する。
3.審判及び出題者は、回答の季語の分類(時候 天文 地理 人事 動物 植物)が、正解の季語と合っているか否かを、回答者に伝える。
4.審判は、解答の季語と回答の季語を比べ、回答の季語の方がよいと判断した場合、その旨伝える。(出題者越え)
5.正解が出るまで、或いは短冊が無くなるまで繰り返す。
6.答えが出る前までの短冊の数が、出題者の点数となる。また、審判が回答者の季語の方が優れていると判断した場合、その短冊の数だけ回答者に点数がつく。
7.参加者全員が出題者と回答者と審判を行い、最終的に点数が高い人が勝ち。

点数の付け方
1.出題者は、出題した俳句の数の内、回答者が当てられなかった俳句の数が点数となる。(例)回答者が4句目正解した場合、出題者の点数は3点。
2.出題者は、回答者に出題者越えをされてしまった場合、その句は0点。回答者は1点。
3.回答者が5句までに正解した場合、正解した句の点数は出題者 回答者共に0点。
4.回答者が最後までに正解できなかった場合、その句の点数は出題者 回答者共に-1点。

ルール
 審判は明かされている短冊のすべてを参考に、出題者の季語と回答者の季語を審査する。

いざ対戦!

 今回対戦したのは、愛媛大学1回生(下岡)ベガ君と松山大学1回生(脇坂)脇々君。2人はそれぞれ、俳句甲子園に出場したことのある強者たち。20分の作句タイムに、それぞれ5句を作りいよいよ対戦。
 審査は、たまたま会場にいた岡田一実さんが行った。


1回戦
 出題者 脇々 回答者 ベガ

*読者の方も一緒に考えてみて下さい。

1 ことごとく洗濯物は[   ]に
 回答→秋風(天文) ×不正解
 季語が天文ではないことが分かる。
 不正解で、出題者脇々君が1点先取。
2 海を立つ[   ]なりや風は葉へ
 回答→太刀魚(動物) ×不正解
 季語が動物ではないことが分かる。
 不正解で、出題者脇々君にさらに1点。
3 泣いて泣いて[   ]逝ったように抱く
 回答→コスモス(植物) ×不正解(同分野)ここで季語が植物であることが判明。
 そして、出題者越えをしたので、回答者ベガ君に1点、出題者脇々君は0点。
4 [   ]の厨窓より逃げゆきぬ
 回答→朝顔(植物) ×不正解(同分野)
 出題者越えをしたので、回答者ベガ君にさらに1点、出題者脇々君は0点。
5 まなうらまで届ひてしまふ[   ]
 回答→黄落(植物) ×不正解(同分野)
 最後まで不正解だったので、共に-1点。
 脇々君の用意した季語は、「木犀」。結果、両者1対1の引き分け。
 出題の裏の「香りのイメージ」に近づけなかったところが、ベガ君の正解できなかった大きな原因。先取交代して2回戦。


2回戦
 出題者 ベガ 回答者 脇々

1 [   ]社を叩く大工かな
 回答→星月夜(天文) ×不正解(同分野)
ここで早くも季語が天文であることが判明。不正解で、出題者ベガ君が1点先取。
2 [   ]うつす古代の地層かな
 回答→秋の虹(天文) ×不正解(同分野)
 出題者越えをしたので、回答者脇々君に1点、出題者ベガ君は0点。一句目に季語の分野(天文)を当てられ、地味に追い込まれるベガ君。
3 [   ]島の抱きたる不発弾
 回答→昼の月(天文) ×不正解(同分野) 出題者越えをしたので、回答者脇々君にさらに1点、出題者ベガ君は0点。いよいよ追い込んできた脇々君。次の句で正解すると脇々君勝利となる。
4 [   ]ここも海底だつたのか
 回答→夕月夜(天文) ×不正解(同分野)
 残念ながら正解ならず。しかも、1句目不正解だった「星月夜」と被ってしまうミス。出題者を越えられず、出題者ベガ君に1点。
5 馬車の轍は[   ]うつすもの
 回答→秋の風(天文) ×不正解(同分野)
 最後まで不正解だったので、共に-1点。
 脇々君の用意した季語は、「秋の雲」。結果、両者1対1の引き分け。
 脇々君が、明るい空のイメージに、もっと早く気づいていれば、正解できたかも。

 作句タイムを含め、約1時間半。対戦者2人は、「こんなに真剣に季寄せを見たのは初めて」「今度俳句部でやりたい」などと好評だった。
 しかし、正解が出ないと、4句目で決着が付いてしまうという、決定的なルールの不備がある。今後も対戦回数を重ねて、さらにスリリングなゲームになるよう、改善をしたい。
 また短冊と採点用のメモ用紙があれば、いつでも誰でも出来るので、ぜひお試しあれ。


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百年歳時記


第29回 夏井いつき

 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。


青磁なる壺中覗かば桔梗の野 山上 博
 眼前にあるのは「青磁」の「壺」のみです。「壺」の中を覗き込むという発想の句もありますが、「青磁なる壺中」に「桔梗の野」が広がっているよという幻想に美しい眩暈を感じてしまいました。
 「壺中」に吸い込まれるようにたどり着いた花野には、「桔梗」が点々と咲いているのでしょうか、それとも一面にひろがる群生でしょうか。風のあるはずのない「壺中」ですが、下五「桔梗の野」という詩語が目に入ったとたん、我が身も「桔梗の野」の風に吹かれていることに気付き、美しい「桔梗」がこの「壺」と同じ「青磁」の色であることにハッとする。仮想の「野」にありて、季語「桔梗」を堪能させる手法に、静かな感動を覚えた作品です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』8月21日掲載分)

秋の蝶ほしはゆっくりうごくけど さな(3さい)
 「今度は秋の蝶々さんよ。何かお話聞かせて、といってできた五七五です」というお便りとともに届いた一句。さなちゃんは、お祖母ちゃんから「今度は秋の蝶々さんよ」と言われて、蝶々が秋という季節に急かされるように、せわしなく飛んでいるさまを思い出したのかもしれません。「ほしはゆっくりうごくけど」という言葉がどんな会話の流れででてきたのかはわかりませんが、悠久の動きである「ほし」と死を拒絶するように飛び回る「秋の蝶」の対比は、一句の世界に深い奥行きを作ります。「秋の蝶」も「ほし」も、時間の長さは違いますが、いつかは滅びていくもの。静かな滅びの影をも感じ取ってしまうのは、オトナの側の深読みではありますが。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』9月11日掲載分)

海彦の帯にわれから絡みおり 理酔
 「われから」とは、尺取虫に似た甲殻類の一種で海藻などに付着して生活する生き物です。傍題には「藻に住む虫」「藻に鳴く虫」もあり幻想的な季語として、歳時記の中でも異彩を放っています。
 その「われから」を表現するのに「海彦」を登場させるとは、成る程見事な発想です。一句一読した時、「海彦」が海中を浮遊している光景を想像しました。漁を生業としていた海彦の帯にわれからが絡み付くという幻想が美しくもあり、切なくもあります。海彦山彦のお話では、貧乏くじを引いてしまうような兄の海彦の嘆きが「藻に住む虫の音に泣く」という長い傍題のイメージにも似合います。「われから からみ」という韻の踏み方もさすがの一句です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』9月11日放送分)

蜉蝣に死後硬直のはじまりぬ 逆ベッカム
 「蜉蝣」という、あのふわふわした得体の知れない虫には強く興味を惹かれます。作者も同じ好奇心を持って「蜉蝣」を観察したのでしょう。勿論、「蜉蝣」の「死後硬直」という状態が目に見えるわけはないのですが、死んでいる「蜉蝣」にふと目がいった瞬間、作者の脳裏に「死後硬直」という言葉が浮びます。あの細い細い脚にかすかな痙攣を感じ取り、その死を認識し、さらに「死後硬直」を察知する作者の、俳人としての冷徹な観察が生み出した詩です。
 「蜉蝣に」の「に」という助詞が重要なポイントになります。今「蜉蝣」の骸に、まさに「死後硬直」が始まっているという生々しさが、この「に」によって読者の脳内に再生されていきます。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』8月28日放送分)

蟋蟀に寄れば沃土が匂ひけり 有櫛水母男
 「沃土」とは、地味が豊かで作物のよくできる土地を意味します。
 「寄れば」という措辞には三つの解釈が可能ですが、「蟋蟀」の声に誘われるように近寄るときはいつも豊かな土が匂うのだよ、と鑑賞したい一句です。「蟋蟀」はほとんどが夜行性ですから、この季語には夜の感触があります。鳴き始めた「蟋蟀」、夜のささやかな涼気、暗く湿った土の感触、そこに匂ってくる「沃土」。この土の豊かさがたくさんの「蟋蟀」が育っていく基となっているに違いないと思うのと同時に、この地における膨大な数の「蟋蟀」の死もまた、「沃土」の一部として循環しているに違いありません。じっくりと読めば読むほど、深みの増してきた作品でした。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』8月14日掲載分)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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会話形式でわかる
近代俳句史超入門


第16回
文 構成 青木亮人

 大学で俳句を研究する青木先生と、その教え子で俳句甲子園の出場経験もある大学生の俳子さんが雑談を交えながらの近代俳句史超入門。

青木先生高浜虚子の選句

 二人は大学食堂で高浜虚子について論じあっています。

「ホトトギス」雑詠欄
青木先生(以下青) 虚子の選句を知るには、「ホトトギス」と同時代の俳誌とを読み比べると分かりやすいかも。この二冊を手に取ってみて下さい。(鞄から取り出して渡す)
俳子(以下俳) わわっ、汚い! 「ホトトギス」と「都」、同じ大正五年一月号……前の千円札の伊藤博文さんが生きていそうな大昔の雑誌ですね。「ホトトギス」が虚子さんなのは分かりますが、「都」の方は?
青 「都」は東京の俳誌で、当時の著名な俳諧宗匠が選をしていたんですよ。大正五年といえば、伊藤博文は明治末期に暗殺されたので、例えば芥川龍之介が「鼻」を発表したり、今の千円札の夏目漱石が亡くなった年です。怪僧ラスプーチンが暗殺された年でもある……と、これはマニアックか。
俳 ああっ、ラスちゃん! 昔やりこんだゲームに出てきました。ロシア帝政末期に悪魔と契約した司教の名がザ ラスプーチンだったんです! 奴は強かった……事の重大さが飲み込めてきました!(雑誌を持った手に力が入る)
青 いや、理解がどうも違うような……まさかラスプーチンでスイッチが入るとは、油断していました。そうじゃなくて、芥川が生きていた時代の「ホトトギス」と宗匠選の「都」を比べてみようというわけです。まず「都」の上位句を見てみましょう。例えば……「無遠慮も咎めぬ仲の炬燵かな」。
俳 ぬるいッス。
青 「山茶花の日脚届きぬ縁の先」「木枯につまずく石の尖りかな」「人声の笹に残りて冬の月」「除夜の灯に見るや小袖の縫上り」。
俳 少し面白いかも。いかにも俳句でござい! という感じできちんとまとまっていますよね。「除夜」句なんかは昔という感じで、師走の雰囲気があります。
青 なるほど。では、「ホトトギス」大正五年一月号の雑詠欄に目を移しましょう。「出水や牛引出づる真暗闇 鬼城」「奥山に逆巻き枯るゝ芒かな 普羅」「詩にすがる我が念力や月の秋 蛇笏」「手燭して見る湖暗し雨の雁 泊月」。
俳 ……ヘン。
青 というと?
俳 どれも妙に生々しくないですか? 鬼城さんの「真暗闇」、普羅さんの「逆巻き枯るゝ」……念がこもっていそうで、特に普羅さんはゴッホの絵みたいな迫力があってコワイ。蛇笏さんの「月の秋」もヘン、泊月さんの「雨の雁」はムリに五文字に押し込んでいる感じが。「都」の方がうまくまとまっていて、「風流!」と安心して読めますが、「ホトトギス」側は不安定で、定型に言葉をぎゅうぎゅう押し込んだ感じで、それに暗いし、「精神状態は大丈夫? ちゃんと寝てますか?」と聞きたい感じ。

「ホトトギス」の奇妙さ
青 フッフッフ……。
俳 せ、先生までおかしくなった……前から心配していましたが、大丈夫ですか! 俳句研究の魔界から足を洗って、早くこちら側に戻ってきて下さい! ほら、好物のマタタビですよ!
青 うぅ……そ、その匂い……って、いつからマタタビに狂う研究者になったんですか。ヘンになったわけでなくて、例えるならワトソン君の迷解説の中にキラリと光る一言を聞いて「おぉ」と驚きつつ微笑んだ名探偵ホームズの心境、とでも申しましょうか。もちろん、ティーカップを片手にね……。
俳 むむ、上から目線攻撃で逆襲に出ましたね……負けませんよ、かかってきなさい、ラスプーチン!
青 いや、話が違う。悪魔に魂を売ったマタタビ好きの破戒僧が紅茶のカップを……って、どんなキャラクター設定ですか。話を戻すと、「ホトトギス」で虚子が上位に据えた句は、実は先ほどのように奇妙かつ強引で、不安定といえる句が多いんですよ。読者を戸惑わせるというか、「なぜそこまでそこに力を入れる?」と読者の常識を揺るがすタイプの句ばかりです。私たちがそれに気付きにくいのは、「史上に残る村上鬼城や蛇笏は教科書にも載る文学者だから、彼らの句は傑作なんだ」と先入観があるために「名句にヘンなところがあるはずがない」と思いこんで読むからです。句が発表された当時の一般的な俳句観も分からないので、蛇笏達がいかに規格外の句を詠んだかが感じにくいんですよ。とはいえ、詳しく調べなくても宗匠達の「都」と比べると「ホトトギス」のヘンさ加減が分かりますよね。
俳 正直、サプライズドに驚いています。宗匠さん側の「都」は上五からの進め方や季語の取り合わせもムリがなくて、よく整っているのに対し、「ホトトギス」側はゴツゴツしていて急展開だったり、妙な力の入れ方が多い気が。
青 プロ野球の長嶋茂雄さんの「きれいなクリーンヒット」みたいな驚き方ですね。「いわゆる一つのストライクワン」みたいな……。それはともかく、「ホトトギス」の他の虚子選も見てみましょうか。昭和二年一月号の高野素十の句で、「漂へる手袋のある運河かな」。
俳 う、怖い。その手袋は片方だけ水面に静かに漂っているんでしょうか。「運河」がまた淀んだ感じで何だかイヤな、居心地が悪いというか……巧いなとは思いますけど。それに、読み返すと「漂へる」が気になります。
青 どんなところが?
俳 いきなり「漂へる」と上五に置かれると、句を最後まで読んでも「漂へる」が頭に残ってしまって、人の手から離れた手袋が永遠にユラユラ漂い続ける感じがするというか……そもそも、運河の水面を手袋の片方が漂っている情景って妙にリアルですよね。先の鬼城さんの「牛引き出づる」や普羅さんの「逆巻き枯るゝ」の生々しさに近い。素十さんの「漂へる」はヤケに力強すぎる気がするんです。

素十句を見出した虚子
青 凄い! それだけ読みとれるとは、「俳句」を知る読者ですね。この句の妙な生々しさもさることながら、当時、こんな句が「俳句」と認められたのはたぶん「ホトトギス」だけ。他の俳誌ならアウトです。
俳 でも、ちゃんと有季定型ですし、内容もそこまで奇天烈でないような。
青 当時、「手袋」は「手袋をぬぎてあたれる焚火かな」「手袋の色の好みや編上げぬ」(解説1)等が定番の詠み方で、捨てられた「手袋」を淡々と詠む発想自体がなかった上に、「運河」に漂う句など前例がなかったんですよ。「運河」というのは「名月や運河の船の遅々として」「柳散り水静かなる運河かな」(解説2)等々、船や散った柳が浮かぶ所で、「手袋」が漂うような場所ではなかった。確かに、素十句のような情景は現実にあったでしょう。でも、誰もそれが「俳句」になるとは考えず、「手袋」らしさや「運河」らしさに沿った句こそ「俳句」と信じて詠み、読者はその予想の枠内で「ああ、『俳句』だ」と句を読んでいたんです。そういう時代に、虚子は「手袋 運河」のイメージと大きくずれた現実の「手袋」を詠んだ素十句を「俳句」と認定したんですから、凄い。普通の選者ならば、素十句を「俳句」でないという理由で選に落としたでしょう。虚子は素十句が「俳句」であることを発見した上に、一見従来通りの有季定型の姿を取りながら、それまでの「手袋 運河」観を揺るがすようなヘンに生々しい句を「俳句」と称えたわけですから、常識破りの野蛮な選句だったはずです。
俳 「選は創作なり」。
青 そう! 虚子にとって、「ホトトギス」雑詠欄は従来と全く違う「俳句」像を宣言し、俳句界に挑戦を突きつける場だったんです。
(続く)


青木亮人(あおき まこと) 1974年、北海道生まれ。現在、愛媛大学准教授。著書に『その眼、俳人につき』(邑書林)など。



解説


解説1
大正後期の句で、「ホトトギス」「山茶花」に掲載。
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解説2
明治と大正の句で、「卯杖」「ホトトギス」に掲載。
本文に戻る 解説2


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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第55回 文 暇人

第14回まる裏俳句甲子園イベント開催決定
 8月27日(木)、mhmの定例会が行われましたので、まずはそのご報告から。
 はじめに、8月1日に行われたエミフルMASAKIでのイベント「出張! こども文化体験教室」の報告です。mhmからは、あねご前代表を中心に、輝女、しんじゅ。mhm以外でも鯛飯さん、於六さん、けいこさんが協力してくれました。兼題は「夏休み」、優秀句から5句を選び、最優秀句を会場の投票で決定。最優秀句は小学生の作品でした。
 そして、先日mhm通信で紹介された地域福祉実践セミナーin徳島 阿波市や、古川町久兵衛会夕涼み大会の報告、先月号で特集されていた蕎麦打ち企画の報告がありました。
 さて、話は変わりますが、第18回俳句甲子園全国大会を、現地や中継でご覧いただいたでしょうか。全国優勝は名古屋高等学校、そして最優秀句は「号砲や飛び出す一塊の日焼」愛媛県立宇和島東高等学校 兵頭輝さんでした。じゃこ天句会の皆様は大変盛り上がったのではないでしょうか? ところで、高校生たちの俳句甲子園が終わったということは……そうです、第14回まる裏俳句甲子園開催を次の日程で開催いたします。

第14回 高校生以外のためのまる裏俳句甲子園
日時…2016年1月10日(日)
    9時30分受付開始
 どなたでも参加出来ます。高校生以外の方が1名以上いる3名1チームでエントリーしてください。
場所…松山市立子規記念博物館 講堂
エントリー料…1000円
       (当日1500円)
   入場のみの場合は500円
※詳細は公式ホームページへ
http://e-mhm.com/maruura/

 キャッチフレーズの募集はすでに締め切らせていただきました。決まり次第、公式ホームページとFacebookでお知らせします。また本誌では次号にて発表できるのではないかと思います。現在は司会者および審査員を選定中です。イベント内容が大きく変わることはございませんが、随時情報をお伝えしていきます。
 そして、これだけは第1回から決まっていることですが、決勝戦の兼題は「雪」です。毎年大会を観ていて思いますが「雪」っていう題は難しいですね。そういえば今年の俳句甲子園の題に「月」がありましたが、これもかなり難しい。実際、高校生たちが作品を提出したのは、ほとんど締切間際だったようです。高校生たちに与えられた時間は約1時間でしたが、まる裏に参加する皆さんはまだ3ヶ月ほど時間があります。自信作の「雪」の句を抱えて会場までお越しください。皆様のご参加をお待ちしています!


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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句集の本棚





『七曜』 奥名春江 著

 著者の第三句集は日常の身辺を俳句的な視点で新しく捉え直している。
  くづし字のやうに波寄る遅日かな
  竹夫人ほつたらかしにされてをり
  後押しをされて踊の輪の中に
  山澄むや奈良に贔屓の僧ひとり
  ひとところ揉めてゐるなり鴨の陣
 夫逝く
  骨壷のおもはぬ重さ木の芽風
 編年体で編まれたこの句集の初めの方に詠まれた追悼句。その後も一人居の孤独さを率直に描いている。
  ほたる待つ闇に額をおしつけて
  茄子を焼きさうめんを茹で夫の亡し
  飲食のひとりの音や麦の秋
  逝くときは祭囃子をききながら
  衣被つるりと余生おもしろき
  七曜をさくらさくらと過ごしけり
  秋うらら脚を大事に蛸干され
 醸しだされる寂しさと飄逸さ。角川俳句賞から二十一年を経た著者の今を感じさせる一冊である。帯を黛執、「晨」同人、「春野」同人、俳人協会会員。
(書評:岡田一実)

KADOKAWA(2014年初版)
定価 2700円(税別)
全199ページ



『泉』 杉山久子 著

 本句集は著者が日々の中にある詩に目を凝らし耳を澄ませ、俗語を正し新しみを見出すふくよかで細やかな感性で彩られている。過去十年間の作品を制作時期とは関わりなく八章に編まれた中には様々な気づきがある。
  白南風や鳥に生まれて鳥を追ひ
  露の世にボーカロイドのうたふ愛
  生きてゐる冬の泉を聴くために
  たれもなつかし柚子の湯に雨を聴き
  亀鳴くやかなしきものに袋とぢ
  蟻の屍を蟻の曳きずりつゝゆきぬ
  夕虹や路上ライブの果てしより
  夏至過ぎしより王宮の窓に猫
  合歓ひらくさゝやくやうに逝くやうに
  小鳥来る旅の荷は日にあたゝまり
  秋天やポテトチップス涙味
  ハチミツとバター溶けあふ神の留守
  枇杷咲いて喪中葉書をもて知る死
  人悼む白シャツにかすかなフリル
  冬眠の尻尾ときをりふれあへる
 「藍生」「いつき組」「ku+」所属。
(書評:岡田一実)

ふらんす堂(2015年初版)
定価 2667円(税別)
全168ページ



このコーナーで紹介した句集は、100年俳句計画編集室にて閲覧できます。


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俳句の街 まつやま
俳句ポスト365


協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


優秀句
平成27年8月度


【ハンカチ】
《地》
ハンカチの薔薇日輪のごと濡れし 紆夜曲雪
ハンカチをソルベのように選ぶ妻 ジャンク洞
夜の砂丘よりなめらかなハンカチ買ふ Y音絵
アイロンの蒸気に匂ふ花ハンカチ 山西琴和浦
ハンケチを花のごとくに使ふひと 大塚迷路
レースハンカチ老嬢めきて黄ばみゆく 雪うさぎ
あだ名は赤おに汗ふきはくしやくしや 雨月
小一にハンカチ大き過ぎまいか マーペー
忘れ物またタミさんのハンカチね らっこマミー

《天》
ハンカチになったかもめを胸に挿す ぼたんのむら


【蟋蟀】
《地》
蟋蟀や埃まみれの後ろ脚 凪 ひと葉
蟋蟀群れる蟋蟀という字のごとく とりとり
闇喰ふが故こほろぎの腹は膿む 三重丸
こおろぎや昼の太陽知らんぷり 麦花
銀ブラの果て蟋蟀の蕎麦屋かな ぐわ
店にこおろぎ鳴かせ常連一人 のり茶づけ
蟋蟀の取り巻く残照の鍵つ子 めいおう星
蟋蟀に雲梯の手の錆びくさし マーペー
こほろぎが三交替の中にゐる クズウジュンイチ
蟋蟀や屍洗ひの手の止まり  内藤羊皐

《天》
蟋蟀に寄れば沃土が匂ひけり 有櫛水母男


【桔梗】
《地》
たへきれぬかたちにならば咲く桔梗 凡鑽
瞬きを知らぬ桔梗や山雨急 めいおう星
ききょうからパチンと星がおちてきます ひろしげ8さい
桔梗や湖水を渡る馬一頭 蘭丸
はや朝を濡れきちこうの野の行者 ウェンズデー正人
桔梗や黒く描かれし雨の線 井上じろ
今日の死の数だけ投下する桔梗 初蒸気
桔梗にも眠りの時間ゆふまぐれ 今野浮儚
味噌売りや味噌と桔梗を売り来たる 丸山清子

《天》
青磁なる壺中覗かば桔梗の野 山上 博




俳句ポスト365作品集2015

冊子のお問い合わせは……
 松山市役所 観光 国際交流課
 TEL 089−948−6556



10月の兼題

投句期間:10月1日〜10月7日
秋刀魚 さんま【晩秋/動物】
北太平洋や日本海を大群をなして回遊する、体長30〜40cmの、青鉛色の細長い魚。8月頃より日本近海を回遊する。七輪などで焼くと煙がもうもうと立ち上がり、辺りに溢れる。

投句期間:10月8日〜10月14日
秋繭 あきまゆ【三秋/人事】
養蚕は本来夏のもので、年に3〜4回行われるものであるが、その最終回は立秋以降であることが多い。それを秋蚕といい、秋蚕から作られる繭のことをいう。春や夏に比べて収量や質にやや劣る。

投句期間:10月15日〜10月21日
葱鮪 ねぎま【三冬/人事】
葱、鮪肉、豆腐を醤油で煮たもの。椀に盛って食べるが、これを熱々の鍋物にしたものが葱鮪鍋(鮪鍋)である。鮪は中とろを使うため、脂肪分があって温まる。

投句期間:10月22日〜10月28日
ねんねこ 【三冬/人事】
乳幼児を背負った上から着る、防寒用の綿入れ半纏のこと。寝ることや赤子を意味する幼児語の「ねんね」からきている呼び名。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


※募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。



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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成27年8月度


【冷し中華】
冷し中華の具が多すぎて憂鬱 だんご虫
宝珠めく冷し中華の練芥子 ひでやん
まかないの冷し中華のあっけらかん 不知火
冷し中華午後の現場も外廻り ほろよい
冷し中華ニュースが頭上流れゆく 下町おたま
予想誌へ冷し中華をどんと置く 鯛飯
サヨナラや冷し中華の酢にむせぶ きとうじん
冷し中華李黎さんの飾り切り あおい
冷し中華すすり樺美智子を論ず ターナー島
この国の行方よ冷し中華伸びる 天玲

《天》
冷し中華まづ小賢しきチェリーから 雪うさぎ
ハネムーン見送って冷し中華でも 妙


【門火】
門火焚く雨の匂いの風立ちぬ 花水木
泣き止まぬ赤子門火を消さぬ雨 紀貴之
門火跨いでお袋に叱られる 理酔
石鎚は青から影へ門火消ゆ 妙
門火焚く四寸程の土焦げて 野薊
門火焚きおえたれかれのふりむきぬ 雨月
門火消え今も私はここにいる ドナルド駄句
微かなる土葬の記憶門火焚く 抹茶最中
門火焚けば闇ひた走る父や母 てん点

《天》
すまん親父未だ門無しなる門火 まるにっちゃん


【俳句甲子園】
句は放たれさざめきとなる俳句甲子園 小雪
先鋒の奇襲俳句甲子園 デラッくま
句帳なる戦友俳句甲子園 海田
放送部有志五人俳句甲子園 亜桜みかり
野球部から援軍俳句甲子園 ほろよい
内角を攻めたり俳句甲子園 雨月
俳句甲子園たとえば果実丸齧り 風
言葉てふ美しき武器俳句甲子園 小野更紗
龍を呼ぶ言葉よ俳句甲子園 マイマイ
冥王星さえ我が手中に俳句甲子園 紫水晶

《天》
退学の夏俳句甲子園眩し このはる紗耶


【硬】
硬めに炊く二百十日の握り飯 鯛飯
空瓶に一円硬化厄日過ぐ もも
旋盤の硬き火花や秋暑し こでまり
終戦日鍛えて硬き鉄となる 富士山
硬水の湧く森深き鵙の贄 まどん
星触れて硬き橡の実橡の森 太郎
夜更けの暴走残暑の硬き音 八木ふみ
ほうたるや空は真金の硬き音 篠原そも
南瓜が硬いんだか私が非力なんだか 雪うさぎ
抱くように桃持ちきたる硬き胸 鈴木牛後

《天》
蜉蝣に死後硬直のはじまりぬ 逆ベッカム



※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

投句締切:10月11日

季語ではない兼題です。「磨」という字が詠み込まれていれば、読み方、用い方は問いません。季語は当季雑詠を原則として、自由に選んでください。

ひしこ【三秋/動物】
片口鰯(ニシン目カタクチイワシ科)のこと。全長約15cmの小魚で口が大きい。背は藍黒色、腹は銀白色。本州中部より南の沿岸で多くみられる。

投句締切:10月25日
ななかまど 【晩秋/植物】
バラ科の落葉高木。高さ10mにも達し、山地や寒冷地に生ずる。晩秋に美しく紅葉し、それ以上に真っ赤な実は、小豆粒ぐらいの実が房状に集まり垂れ下がる。

乾風 あなじ【三冬/天文】
“乾”は北西を示す“いぬい”のことで、冬に吹く北西からの強い季節風の、西日本地方での呼び名。持続性のある寒冷で強烈な風によって、普段は穏やかな瀬戸内海でも大荒れとなる。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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100年俳句計画 掲示板



NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  10月13日(火)11時40分〜

あいテレビ(TBS系列、全国)
 『プレバト!!』
   隔週木曜 19時〜20時49分
※組長がゲストの俳句ランキングづけで出演! 放送日番組欄を要チェック!

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「秋の蚊/万年青の実」10月4日〆
   「鵙の贄/落花生」10月18日〆
 インターネットでも配信中。詳しくは番組webサイトへ。
  HP http://www.baribari789.com/
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)、住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。朝日新聞松山総局(790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。

愛媛県《吟行ナビえひめ》句&写真
 俳句選者:夏井いつき
 写真選者:キムチャンヒ
【募集期間】毎月1日〜 25日前後締切
【応募先】http://www.iyokannet.jp/ginkou/
【問い合せ】愛媛県観光物産課
TEL 089ー912ー2491

本阿弥書店「俳壇」(1月号より連載)
 『十二か月添削教室』
 10月号 9月14日発売
*誌上で俳句を募集しています。


句会ライブ、講演など

夏井いつきと巡る東平〜別子銅山産業遺産俳句ing Walking
 日時…10月3日(土)9時30分〜
 集合場所:マイントピア別子
※参加費無料。問合、申込は新居浜市観光協会0897ー32ー4208


関西現代俳句協会主催句会ライブ
 10月4日(日)受付13時30分〜
 場所…宝塚ソリオホール
※参加費1000円(保護者同伴の中学生以下無料)。問合、申込は関西現代俳句協会青年部 seinenbu@kangempai.jp


第21回たいしゃ芸術文化祭句会ライブ
 10月11日(日)10時〜
 場所…大社文化プレイスうらら館
※参加費…500円(全席自由)。問合、申込は大社町俳句協会0853ー53ー2206(上川)


笛吹市こども俳句教室
 10月18日(日)8時55分〜
 場所…笛吹市スコレーセンター
※参加費無料。問合、申込は笛吹市教育委員会「こども俳句教室」係 055ー261ー3399


群馬県桐生市夏井いつき文化講演会
 10月21日(水)18時30分〜
 場所…桐生市市民会館シルクホール
※参加費…1000円(全席自由)。問合、申込は桐生市市民文化会館 0277ー22ー9999


石鎚吟行バスツアー
 10月25日(日)JR松山駅7時50分
 場所…石鎚成就社近辺の散策〜ピクニック園地での句会ライブ
※参加費…8190円。問合、申込は愛媛新聞旅行 089ー933ー3564。バスツアー詳細は裏表紙参照。


俳都松山宣言2015
 10月31日(土)開場12時30分
 場所…子規記念博物館4F講堂
※9月17日現在、定員に達したため申込を締め切らせて頂きました。左記ツアーのみ新規申込可能となります。


俳都松山俳句三昧関西発着バスツアー
 日時10月30日(土)〜10月31日(日)
 場所…大阪梅田発8時〜大三島〜松山市内での句会ライブ(組長出演)〜泊〜市内観光〜俳都松山宣言2015参加〜梅田21時頃着
※金額 39,800円。問合、申込は毎日新聞大阪開発(株)06-6346-3830   定員に達した俳都松山イベントにこのバスツアー分のみ残席あり。



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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

マイマイさんへ!
うに子 マイマイさんの詰め俳句復活嬉しいです。季語によって句が化けるのを直視できるし同じ季語を選んだ方とは仲良くなれそうです。
青柘榴 詰め俳句復活、ありがとうございます。マイマイさんには、御苦労なことですが、しばらくまた、楽しませてもらいます。
台所のキフジン 詰め俳句計画!戻ってきてくれて、嬉しい!!です!
エノコロちゃん マイマイさん三度目の大復活の詰め俳句、心待ちにしていました。と〜ってもうれしいです。おめでとうございます。
編 屈指の人気コーナーが三度目の大復活。はじめての方もお久しぶりの方もどうぞお楽しみ下さい!

おせろ マイマイのコーナー復活うれしい。季語を意味を色々考えて当てはめるパズルのようです。中々正解はしませんが(笑)
編 「○○のよう」に何が入るかで嗜好がわかる気がする。パズルは親近感〜。

ひでやん マイマイさんの詰め俳句のコーナー復活おめでとうございます。二つの式を満たす連立方程式を解いているような楽しさがあります。
編 ひでやんさんは連立方程式。数学苦手人間的には思わず身構えるワードですが(笑)。

シャビ 詰め俳句へ。寄付をする、と言う行為に野の人ではないという生きている実感を感じ、+色彩の対比もあるのかなと。酔って歩いてきている人にも実は寄付をしていると言う場面が見えると助け合う文化を感じて粋かなぁと思いました。
編 今回シャビさんが選んだ季語は「赤い羽根」。結果は28ページにて。結構異色な選択だったけど…?

俳句甲子園を終えて
喜多輝女 猛暑の毎日が続きますが皆さんお元気でしょうか?もうすぐ熱い熱い俳句甲子園が始まります。毎年のことながら楽しみ! 応援してます!!
編 今年も暑い夏でした。輝女さんもお忙しい中試合見に行けたでしょうか。

新しい俳号
さざなみ真魚 九月から、「真魚」から、フルネームの「さざなみ真魚」に変更します。
編 俳句ポスト365ではおなじみ。こちらでもよろしく!

チーム裾野
みやこまる 俳句を初めて2か月が経ちました。いつき先生がおっしゃってくださったチーム裾野で遊ぶように歌うように楽しんで詠んでいきたいと思います。ご指導よろしくお願い致します。
編 原稿を書いてる現在、ラジオからNHK「午後のまりや〜じゅ」組長出演回が流れてます。パーソナリティ3人が作句中。どんな人も裾野から始めていくのね〜、とほのぼの。

目覚める男
元旦 またまたうっかり寝てしまい、夜中に目覚めて慌てて投句しました。お便りはまた改めて。ぺこり。
編 年中暁を覚えずの身としてはそこで起きて投句するのを尊敬。

映画人
KIYOAKI FILM 映画はやめられないと思い見る度に、一寸と思う。私は現代の人気作になぜか、肌が合わない為、マイナーか自分の好きなのを見るしかない。竹中直人監督の『無能の人』がことに好きだが、黒澤明の『夢』、今見ると現実のようだ。
編 竹中直人、俳優だけじゃなくて映画監督もやってたの? タイトルからしてクセモノっぽい。

近況あれこれ
春告草 10月より松山へ戻る予定です。
編 おかえりなさいませ。宮崎での俳句の種まき生活いかがでした?

柊つばき 四月から四ヶ月、私十キロ、娘十キロ、息子十キロ、孫十キロ、やせました。私、娘、息子はまだまだやせてもいいのですが、孫は標準な体重だったので十キロやせるとやばい。
編 健康なダイエットは月1〜2キロずつが良いとされています。図らずものダイエット、少し瘠せすぎ。

季語の写真館
真帆 鬼北町広見川で川登り駅伝がありました。
編 最近写真ありがとうございます。綺麗な夏の空と川〜♪


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鮎の友釣り

207
俳号 恋衣
みちるさま ご指名ありがとうございます。松山での生活の一つに俳句を選ばれた事、そして楽しまれた事、嬉しい限りです。みちるさんが怠け者だとは。誰もがびっくりしているはず。

俳号 こいごろもは、 高浜虚子「五百句」の巻頭句である『春雨の衣桁に重し恋衣』から頂きました。人生の全てに恋する心を忘れないでいたいなと。

俳句をはじめたのは 長女の中学校の国語のノートに書かれていた先生の朱書きの文字が、コメントが、美しすぎて。その夏井いつき先生に会いたくて。俳句らしきものをはじめて作ってカルチャー教室へ行きました。十年以上が楽しく過ぎて今の私。

写真 その感謝すべき長女と。

次回…雪うさぎ様へ 俳句新聞、雪の座の俳句に心を奪われました。いい俳句に出逢えるのは、限りない喜びです。いつか一緒に句会しましょう。


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告知


HAIKU LIFE 100年俳句計画
第5回
大人のための句集を作ろうコンテスト
作品募集

主催 マルコボ.コム 共催 朝日新聞社 松山市教育委員会(予定)

 第五語回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」(通称「大人コン」)の作品募集がスタートしました。
 「大人コン」は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』が開催する俳句コンテストです。
 共催 朝日新聞社 松山市教育委員会(予定)

「受賞作品が句集になるってホントですか」
 最優秀賞作品は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』の付録冊子として読者諸氏に広く読んで頂きます。付録とはいえ、お洒落なデザインの句集だと評判です。
 受賞者には一切の金銭的負担をかけず、読者にとっても安価な句集をどんどん生み出していきたいという志を一つの形にしたのが、この企画なのです。

「俳句マガジンを購読してないんですが、コンテストへの応募はできますか」
 どなたでも応募できます。購読の有無は一切関係ありません。勿論、応募は無料です。

「審査は誰がするのですか」
 本コンテストの受賞者は、「大人コン」選考会員の投票によって決まります。「大人コン」選考会員は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』購読者の内、各総合誌等の俳句賞受賞者あるいは最終選考に残った実績のある人たち等によって構成されます。第四回の有資格者は三十二名。年々選考会員数は増えていくことになります。
 多くの目利きの力を借りて「百年先の未来に残したい作品と作家」を見い出し顕彰していくことが「大人コン」の目的。我こそは!という皆さんのご応募を、心からお待ちしております。

既作新作を問わず81句の作品集を募集。
最優秀賞作品は句集にし、本誌付録として配布します。

募集要項

応募資格
15才以上(高校生以上)の方なら、本誌購読の有無に関係なく、どなたでも応募できます。

応募方法
1:Eメールでの応募の場合
応募用のエクセルファイルに必要事項を全て入力し、Eメールの添付ファイルにして、応募して下さい。
応募用ファイルのダウンロード先
http://81ku.marukobo.com/

2:郵送の場合
B4判四百字詰め原稿用紙に81句とその表題、俳号、本名、年齢、住所、電話番号を必ず明記して応募して下さい。

締め切り 2015年12月10日(水)必着

賞 賞状および応募作品による句集20冊
*賞品句集は縦横135ミリメートル 36ページとなります。句集は本誌付録として配布します。

発表 本誌2016年4月号誌上(予定)

送り先
〒790-0022 愛媛県松山市永代町16ー1
有限会社マルコボ.コム
月刊俳句マガジン『100年俳句計画』編集室Eメール:81ku@marukobo.com



選評大賞2015

今年も選評大賞を行います。300字以内でビシッと決まった選評をお寄せください。審査は例年通り、堀内統義、中西淳、夏井いつきの3名が行います。
 多数の応募をお待ちしております。

最優秀賞(賞金1万円)他
締切 10月20日必着

応募方法
 選句の対象となる句
  2014年10月号〜2015年9月号までに掲載された「百年百花」「100年の旗手(3月号まで)」の中から、心を打たれた俳句を1句選んで、選評をお寄せ下さい。

 記載事項
  掲載句1句(掲載号、作者名を必ず明記)
  選評 20字×15行(300字)以内厳守(多すぎても少なすぎても減点の対象となります)
  俳号、本名、住所、電話番号(必ず明記)

 最優秀賞 賞金1万円(来年の「大人のための句集を作ろうコンテスト審査委員会」への参加資格も得ます。)

 優秀賞(数名) 賞金3千円

 締め切り 10月20日(火)必着

 応募先 100年俳句計画編集室まで、ハガキ、封書、FAX、メール(magazine@marukobo.com)でお送り下さい。

送付の際、件名、タイトルに「選評大賞2015」と明記下さい。
ご応募の際、他の投稿とは別にお願いいたします。
結果は12月号にて発表します。



編集会議報告

 9月11日、5年半ぶりに読者を交えた編集会議を行いました。
 雑詠欄の新企画や南極疑似吟行、カラーページの増量など、やりたいことの目白押し。大いに盛り上がりました。編集会議は、2ヶ月に一回開催予定。紙面上でのご意見もお待ちしております。

次回編集会議
日時:11月13日(金)19時〜
場所:マルコボ.コム
   松山市永代町16-1
対象:本誌年間購読者
申込先:100年俳句計画編集室
E-mail:magazine@marukobo.com



12月の第1土曜日は恒例の……!!
100年俳句計画大忘年会のお知らせ!

毎年12月の第1土曜日は「大忘年会」の日。今年も盛大に開催致します。
抱腹絶倒まちがいなし。たくさんのご参加をお待ちしています。

日時
平成27年12月5日(土)
18:30〜21:00(予定)
※正式な時間は追ってご案内いたします。

場所
いよてつ高島屋
9F ローズホール
愛媛県松山市湊町5丁目1−1
089-948-2111(代表)

会費
 大人 6,500円
 大学生以下 4,000円
 小学生以下 2,500円

参加申込締切
11月20日(金)必着!

参加方法
 忘年会参加希望の旨と、〒住所、氏名、俳号、会費区分(大人/大学生以下/小学生以下)、連絡先電話番号を明記して、ハガキ、FAX、Eメール、または電話にてお申し込み下さい。ご家族等複数でお申し込みの場合は、代表の方の〒住所、連絡先電話番号に加え、全員の氏名、俳号、会費区分をお知らせ下さい。

【重要】投句、投稿に添えてのお申込はご遠慮ください。
※受付対応が遅れる場合があります。

 お申し込みをいただいた方には11月上旬頃より順次、ご案内のハガキを郵送いたします。
※締切までにお申込いただいた方で、11月27日(金)までにハガキが届かない方は、お手数ですがマルコボ.コムまでご連絡ください。

問い合わせ、申し込み先
(有)マルコボ.コム
〒790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
TEL 089-906-0694
FAX 089-906-0695
E-mail bounen@marukobo.com



俳句新聞いつき組
7月新規ご購読お申し込みの方には
3号(2015年7月号)よりお届けします!
※4号は2015年10月中旬発行予定です!

2015年「花の座」決定!&「蛍の座」ノミネート20句

大好評「プレバト!!」番組の前説芸人さんを紹介!

そのほか内容充実のフルカラー全8ページでお届け!

※ひとつ前の号からの購読も可能です。事前にその希望の旨をお伝えください。

A4サイズ8ページフルカラー仕様
参加登録料(※初回のみ)1,000円(税込)
年間購読料 3,500円(税込)/年4回発行
*年1回、夏井いつきの句集シングル付録あり。

まずは無料の0号「創刊準備号」と購読のご案内をお送りいたします!
※0号「創刊準備号」を既にお持ちの方は、0号に掲載しております案内にしたがって購読料をお支払いいただくことで、正式な購読の申込となります。

ご購読のお申し込みは……

「俳句新聞いつき組」購読希望の旨、本名(ふりがな)、俳号(無ければ不要)、郵便番号、住所、電話番号、生年月日を明記して、下記のいずれかの方法で申し込んでください。

 ハガキで申し込む
  790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
  有限会社マルコボ.コム
  「『俳句新聞いつき組』購読申込」係

 FAXで申し込む
 FAX番号:089−906−0695

 メールで申し込む
 kumi@marukobo.com
 (件名を「いつき組購読申込」としてください。)



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編集後記


 俳句甲子園も18回を迎え、参加している高校生だけではなく、新人発掘という点で俳句界の今後にも大きな影響を与える大会になってきた。
 俳句甲子園の創世記には、毎年この大会について扱う俳句雑誌はほとんど無く、子規新報と本誌(その頃はまだ「俳句新聞いつき組」)ぐらい。本誌が2004年にマガジン化した際、8月の松山で何が起こっているのかを広く伝えるべく、編集委員を集めて大街道のすべてのブロックについてレポートを掲載したことを懐かしく思う。
 現在ではその役目を俳句甲子園公式作品集が担っており、また、大会の優秀句などもホームページで簡単に閲覧できることから、今回は2人の審査員にお願いし、他の雑誌では読めないディープな俳句甲子園体験記を掲載することにした。同じ日に旗を揚げていた、松本勇二さんとエルヴィン三木さんのお二人。それぞれ異なる大会への関わり方が面白い。またそれを許容する、俳句甲子園の奥深さを、再認識して頂ければ嬉しい。
 週活句会の「WHAT」やmhm会長の若狭君の例を挙げるまでもなく、既に俳句甲子園世代の時代は来ている。それが18回という数字の重みなのだろう。
(キム)


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次号予告 (216号11月1日発行予定)


次回特集

日暮屋の蕎麦を食べよう!プロジェクト
第2弾 蕎麦の花吟行 ほか


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2015年10月号(No.215)
2015年10月1日発行
価格 617円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子