100年俳句計画6月号(no.211)


100年俳句計画6月号(no.211)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
紫陽花 宮下航


特集
俳句対局
第三回龍天王決定戦



好評連載


作品

百年百花
 灯馬/桜井教人/美杉しげり/都築まとむ


新100年への軌跡
 俳句/山下舞子/瀬越悠矢
 評/都築まとむ/樫の木


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/加根兼光


へたうま仙人/大塚迷路

自由律俳句計画/きむらけんじ



読み物
愛媛県美術館吟行会/南行ひかる
律川エレキの表装生活/律川エレキ
Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
クロヌリハイク/黒田マキ
お芝居観ませんか?/猫正宗
百年歳時記/夏井いつき
近代俳句史超入門/青木亮人
mhm通信/暇人
句集の本棚
リレーマラソン 報告レポート

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




紫陽花
宮下航

 4月末、東京での新入社員研修を終えて愛媛に帰って来る。新入社員は41人いるのだが、四国に配属されたのは私1人である。研修で習う事は悉く未知の事で、また東京も見知らぬ街である。そこから1人愛媛に帰ってきて、東京での研修が他人事のように思えてきた。研修の痕跡が何処にもない。そんな折、駐車場でナガミヒナゲシが咲いているのを発見し、『あぁ、東京でも見たな』と思い出す。苦労を知る友人に出会った気がして、研修に現実感が出てくる。6月、ナガミヒナゲシの代わりに紫陽花あたりが日本中で咲いてくれるだろう。また、育成期間の終わる10月が我々の開花の時である。同期も、開花に備えて土中でもがいていることだろう。社会は豊かな大地であって、広く根を張りさえすればいくらでも成長できる。根を張ることに貪欲に、しかし開花は焦らず、土中にて成長の日々を送る。


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特集

俳句対局
第三回龍天王決定戦


平成27年 5月2日開催


 俳句対局とは、囲碁や将棋の対局戦を模した、一対一の句合わせ対決の句会。100年俳句計画編集室では主に、秋の龍淵王決定戦と春の龍天王決定戦を開催している。
 今回三回目となった春の龍天王決定戦は、昨年秋の第三回龍淵王決定戦準優勝の土屋淘人さん、今回俳句対局2度目の参加の恋衣さん、第三回龍淵王決定戦準優勝のあねごさん、今回初参加の野兎さんの4名の出場者が参加した。また、審査員は、本紙「100年投句計画」自由律コーナーでおなじみのきむらけんじさん、昨年第4回芝不器男俳句新人賞を受賞された曾根毅さん、現在本紙「百年百花」を連載中の美杉しげりさんの3名。
 龍天王を目指し、例年になく緊迫した対戦が繰り広げられた。


時間点の変更について
 今回の大会の内容に触れる前に、時間点の変更について触れたい。
 昨年秋の第三回龍淵王決定戦の決勝戦において、対局者それぞれが5句の作句に掛けた時間が4分未満であったため、俳句の作品よりもスピード勝負の大会となる懸念から、時間点の比重の見直しを行った。
 そして今回は、それまでの残り時間を積み上げて時間点を決める方式から改め、制限時間を過ぎた時間によって減点する方式とした。
 従って今回は、7分未満で5句作句した場合を減点なしとし、それ以降1分過ぎるごとに0.5点の減点、最大1.5点の減点となるようルールの変更を行った。

俳句対局の進め方
1 トーナメント組み合わせにて、各対戦の黒白を決める。
2 まず先手(黒)が、その場で出された席題(俳句)から一漢字あるいは一単語をいただき、制限時間内に俳句を作る。
3 後手(白)は、先手の作った俳句から同様にいただき、俳句を作る。
4 それぞれ、五句まで繰り返す。
5 審査は、全ての俳句に10点満点で点を付け、その俳句点から残り時間によるペナルティを減算した合計によって行う。点数の大きい方が勝ちとなる。

 作句には特記事項を設け、試合は以下の規定に則るものとする。

特記事項
1 使用する季語は当季以外の季語でも構わない。(傍題可)
2 前の句から頂くのは、漢字、または、自立語。
3 前の句の表記のまま頂く。表記を変えてはいけない。(カタカナ表記の場合は、カタカナで)
4 前の句の季語および季語の一部を季語として頂くのは不可。
5 右記の作句ルールから外れた句を作ってしまった場合、逸脱の程度により1〜3点の減点が科される。
6 5句全ての俳句を7分未満に作り終えた場合、減点はなし。7分以上、1分毎に0.5点減点。但し、制限時間10分に達するとそれまでの得点に関わらず負けとなる。

対局開始
 組合せ抽選の結果、一回戦は以下の取り組みとなった。

 第一試合 土屋淘人 × 恋衣
 第二試合 野兎 × あねご

一回戦 第一試合
先手 土屋淘人 × 後手 恋衣
雨晴れて鶏陽炎の土を掘る 子規
月涼し土にかえれと雲が言う 土屋淘人
猫の子が雲梯にのぼりたがってる 恋衣

 土屋淘人さんの一句目は「土」の漢字一文字を頂いて作句した。恋衣さんの一句目は同様に「雲」の一字。両者ルールはばっちり。この要領で作句が続いていく。

子が子を呼んで虹のしずか 土屋淘人
海をみて呼んで答えぬサングラス 恋衣
ほうたるや海は遠くににじみたる 土屋淘人
まだ朝き遠くの日傘ふりかえる 恋衣
夏薊朝をたたんでゆく女 土屋淘人
ハンカチのたたみ方にも拘わって 恋衣
あやめあやめ方向音痴らし男 土屋淘人
花の雨忌野清志郎といふ男 恋衣

 全句が出そろうと早速採点に入る。結果は28.5対29で恋衣さんの勝利。時間は土屋淘人さんが6分19秒を残し、恋衣さんは2分4秒を残した。恋衣さんに時間ペナルティ0.5点がついたものの、作品点差を守り勝利。
 対戦内容としては3句目、土屋淘人さん「子が子を呼んで虹のしずか」が白眉。きむらけんじさん8点、美杉しげりさん8点、曾根毅さん6点の平均7.3点を記録した。自由律として評価が高いというこれまでの俳句対局には珍しい展開。


一回戦 第二試合
先手 野兎 × 後手 あねご
蝶飛ブヤアダムモイブモ裸也 子規
裸にて豪雨突き抜け哄笑す 野兎

 「裸も季語じゃないのか」
 観客に動揺が広がる。疑問ごもっとも。こういう時は解説員夏井いつきの出番。「この場合、前句「蝶飛ブヤ……」では「裸也」は宗教的事実を語っているに過ぎない、季語としては機能していない」と解説された。結果、減点はなし。セーフ!

山笑ふいたこの駈くる空也谷 あねご
採点の山に向かひてちやんちやんこ 野兎
点描のモナリザの絵にある秋思 あねご
似顔絵の睫毛やはらか卒業す 野兎
父の顔こわれてしまふ新走 あねご
母の日に醤油を探す父の声 野兎
痴漢です声はりあげる麻の服 あねご
麻の帆を張れ冬の海越えてゆけ 野兎
帆立貝薫製となる夕間暮れ あねご

 第二試合は時間をじっくり使った一局になった。残した時間は両者1分未満。先手野兎さんは16秒、後手あねごさんは21秒残し。10秒間近になると時間切れ負けになるんじゃないかと観客はハラハラだ。ペナルティは共に1.5点。作品点との合計は27.7対25で先手野兎さんの勝利!
 句の評価は共に個人採点8点を記録した作品があった。「点描のモナリザの絵にある秋思 あねご」「似顔絵のまつげやはらか卒業す 野兎」の二句がそれ。片や八句目「痴漢です……」は個人評価3点を記録。ここが足を引っ張ってあねごさん敗れた!?

第三代龍天王決定
 昨年の第二回龍天王決定戦ではトーナメントの最終戦は先代「龍天王」とのタイトルマッチを行っていた。が、タイトル防衛中の初代龍天王の瑞木さんは法事で欠席。なので自動的に最終戦の勝者が第三代龍天王となる。

決勝戦
先手 恋衣 × 後手 野兎
おとつさんこんなに花がちつてるよ 子規
夏来たるおっとさんの時計動きだす 恋衣

 あっ!? 文字が入れ替わってる! うーん、この場合は減点の適用規則が極めて微妙だ……。減点規則1「表記を変えてしまった」とするか、減点規則3「前の句から漢字または自立語を頂いていない」とするか……。人情としては試合の続きを見るためにも減点1点と判定したいところだが……? 判定は大会委員長に任せ、ともかくも試合を続行する。が、この地雷をうっかり踏んでしまった恋衣さんの精神的ダメージは大きかった……。

なごり雪今日の授業は二十時から 野兎
二十時から金魚と猫が話しこむ 恋衣
十二時の噴水二人にらめっこ 野兎
人魚なら泉の水を飲み干せよ 恋衣
酒瓶の琥珀飲み干す夜長かな 野兎
夜もすがら姪の琥珀の更衣 恋衣
朧夜に近所五周の長電話 野兎
長き夜のゴッホの青を栞とす 恋衣
青田風浴びて赤子の泣き止みぬ 野兎

 最終句まで出そろったところで採点……なのだが、八句目と九句目、気づいただろうか。

朧夜に近所五周の長電話 野兎
長き夜のゴッホの青を栞とす 恋衣

 「長電話」の一字を頂いて「長き夜」と繋がってきた……のだが、前句の季語が「朧夜」!! この場合減点規則2「前句の季語を季語として頂いてしまった」に該当してしまう。減点2点が付与されて試合の行方は……。
 各句の採点は順調に進む。白眉は互いの最終句。共に平均7.6点を記録した。特に野兎さんの最終句「青田風浴びて赤子の泣き止みぬ」は曾根毅さん個人評価9点と今大会最高得点。時間は恋衣さん1分19秒、野兎さんは2分4秒を残した。時間ペナルティの差は0.5点。作品点との合計は恋衣さん29.4点、野兎さん28点。この時点で両者の得点差は1.4点。「長き夜……」の減点2が恋衣さんに付されると、この時点で野兎さんが合計点で上回る。ということは、第三代龍天王決定戦の勝者は野兎さんに決定! おめでとう!


野兎さんの優勝コメント
 結果的には勝たせて頂いたのですが、自分の俳句点に関しては納得がいっていません。
 次回は、もっと良い点をとって勝ち上がりたいと思います。ありがとうございました。

新たな課題
 気になるのは減点の行方。一句目「おっとさん」の減点は結局何点の減点となったのか。
 当日の試合結果に触れると、当日、このケースは減点規則1「前の句の表記を変えて頂いてしまった」として処理された。明確に「おとつさん」を頂こうとしていた意志が見られるからだ。結果、恋衣さんの得点は26.4が合計となった。
 だがこのケースを引き金に、減点の仕方については俳句対局実行委員会において大いに考えるべきところとなった。
 元々この減点を決めたのは、例えば、漢字表記の単語を頂く際、ひらがなやカタカナにしてしまうと、頂いた箇所を明快にしづらいという理由から。また、元の単語のニュアンスも変わってしまうため、単語を頂くというのとは変わってしまうと判断した。
 したがって元々は、「俳句」、「はいく」、「ハイク」、「HAIKU」のように、頂く前の単語の音は、頂いた後の音と一致していることを前提としてルールを決めていた。
 しかし今回の事例、「おとつさん」と「おっとさん」は厳密には、音が一致しない。これを拡大解釈して、例えば「おとうさん」も同じ減点規則1「前の句の表記を変えて頂いてしまった」という基準に入れて良いものか? 更に「おとっちゃん」「お父さん」はどう判断するか?
 侃々諤々と話し合った結果、減点規則1「前の句の表記を変えて頂いてしまった」とは別に、「前の句の表現を変えて頂いてしまった」という項目を追加する案が浮上した。
 どれほどの減点にすべきかは、今後実際に練習し合いを行い、確定する予定である。



俳句対局が大阪&東京で開催されます!

お申し込み方法
「キャラバン大阪会場希望」または「キャラバン東京会場希望」と明記し、郵便番号、住所、代表者氏名、電話番号、申込人数を添えて、松山市役所文化/ことば課まで、郵送、電話、Eメールでお申込みください。
お申し込み/お問い合わせ先
松山市役所 文化ことば課
〒790-8571 松山市二番町四丁目7番地2
電話:089-948-6952
Eメール:haito@city.matsuyama.ehime.jp


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2015年度 第一期 第三回


「南風(ふぇーぬかじ)」 灯馬

聞き捨てのならぬ告白春日傘
ペンギンは横向く憲法記念の日
黄金週間ワニは薄眼を開いたまま
薄暑光かき分けピラルクー反転
目的地設定 干し梅を口中に
象撫でるやうに水無月の岬へ
夕凪(ようどれ)の丘を何処まで走ればいい
黒南風の沖なる島の話せよ
かりゆしウェアの胸より出す名刺入れ
この島の水で割るべし古酒(くーすー)は
学会余興控室の冷房効いてゐるか
白シャツの襟開け琉球独立論


1970年生、福岡育ち。01年に松山へ。「ざくろ句会」にて俳句を始める。10年3月より猫と正式に同居。「はじめて句会」に(時々)参加。




「菩提」 桜井教人

暁けがたの札所へ生気四方より
蛇穴を出て結縁の紐五色
草若葉子規虚子白象山頭火
明石寺さまのうぐひす「ケ」を啼かず
僧の子の僧に叱られ花衣
わたくしの咎ほど降れる桜蘂
満天星(どうだん)の花や万躰観音洞
摩訶般若波羅蜜多心経諳んじて
春夕焼背に山門へ一礼す
烏枢沙摩明王(うすさま)の御札を懐く遍路の夜
夏暁の海へ広げる遍路地図
鐘の音の近づく菩提まだはるか


愛媛に入ると、句碑のある札所が多くなった。本当は虚子の句碑は見なかった(香川にはあるが)。十善戒をまた破ってしまった。




「真つ平ら」 美杉しげり

怒声低しゆさりゆさりと花ミモザ
この家に人病む匂ひ遠蛙
朧夜の汽車を降りそこねしは父
巴旦杏咲けり港はまどろんで
麦青し泣くなよと言はれたやうな
たんぽぽの絮吹き地球真つ平ら
麦秋の石神さまへそそぐ水
買ひ食ひのコロッケさくと五月来る
薫風やアフリカゾウへ水の鞭
花みかん月下にうるむ猫の声
はつなつの月光に身を濯ぎたし
何を撃つ夏蝶に触れたる指は


1960年生。第8回俳句界賞受賞。4年ほど前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。




「蛍」 都築まとむ

わたくしの心音は海ほたる飛ぶ
母の指つめたし蛍火の色も
滝を見に行ってはならぬ恋になる
降り懸る夜気と蛍と水の音
強情や淡き蛍の火に泣いて
オカリナの響きのような蛍かな
蛍の夜水の記憶の生ぬるし
蛍見のいつか貝殻めく耳よ
金瘡のわずかに痒し昼蛍
手にのせて息よりかるき蛍かな
ほうたるや放てば楽になるいのち
湿りゆく火薬ほたるの匂い満つ


1961年愛媛県生まれ。第3回大人のための句集を作ろうコンテスト最優秀賞。八幡浜市日土町で柑橘栽培をしながら季語にまみれて暮らす。




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新 100年の軌跡


2015年度 第一期
第三回


 漆黒 瀬越悠矢 

漆黒の溝にジャズ生まれて涼し
六月の寺に吊らるるものあまた
遠雷や調律くづれたるピアノ
半分となりし汝はなほ蟻か
禅堂に連なる笠やかきつばた
手のひらの背に手相なき端居かな
求愛のの天地の背と背
いにしへの躰押し合ふ海月かな
死ぬるとは仰ぐことなり日日草
蛍火や生まれて何を忘れたる
夏や銭捨つれば水辺ありがたき
わくら葉の風のかたちに流れをり
旅寝より醒めて食ひたるトマトかな
熱帯魚浮かぶてふ死を憐れまず
静脈はいたるところに日の盛


瀬越悠矢
1988年、兵庫県生まれ。大学院より句作をはじめる。関西俳句会「ふらここ」所属。




 手まり寿司 山下舞子 

愛用は躑躅の色の紅でした
腹太し商店街の鯉幟
粽解くはたちの口も半開き
変顔の眉はハの字やさくらんぼ
白靴を見つめ謙虚な人でゐる
川床へゆく階段の深緑
左利きかまへてそうめん流しかな
青もみぢはがし水占みくじかな
夏落葉腕にかけたるカーディガン
打水や花見小路の白のれん
中年の微笑眺める梅酒かな
腰掛けるまでにしておくハンモック
手まり寿司素足正座の位置につく
銭湯の派手なのれんや月涼し
打ち明ける前に餡蜜片付ける


山下舞子
1994年生まれ。愛媛県松山市出身。第13回・14回 俳句甲子園出場。関西俳句会「ふらここ」所属。




日常の明と暗と湿度 都築まとむ

遠雷や調律くづれたるピアノ 瀬越悠夫
 「調律くづれたるピアノ」の音は不穏の暗示だろうか。遠雷もやがて近づいてくる不穏を予感させる。耳は不安を嗅ぎ取るのが上手だ。

蛍火や生まれて何を忘れたる 瀬越悠夫
 「蛍火」の記憶をたどるような動きと色を見ると「何を忘れたる」と思いになる。蛍に逢いに行ってしまうのは生前の記憶を探すためなのかもしれない。

白靴を見つめ謙虚な人でゐる 山下舞子
 「白靴」の眩しさにハッとしたのか。「見つめ」が「謙虚な人でゐる」 理由だろう。白にはそんな力がありそう。

腰掛けるまでにしておくハンモック 山下舞子
 「腰掛けるまでにしておく」のが「ハンモック」というところが可笑しくてリアル。自分の物でないハンモックにはそうそう寝っ転がることなんかできないものなぁ。特にホームセンターに陳列されているものなどには。


都築まとむ
1961年愛媛県八幡浜市生まれ。第3回選評大賞優秀賞。



旅と日常 樫の木

 「漆黒」には生と死を見詰める眼差しを感じた。

半分となりし汝はなほ蟻か 瀬越悠矢
 体が半分に千切れているのに動き続ける蟻。「汝はなほ蟻か」と問いかける視線は憐憫の視線か冷酷な視線か?

禅堂に連なる笠やかきつばた 瀬越悠矢
 禅堂には沢山の僧侶が籠っている。軒先に吊られた笠の湿り、かきつばたに降る雨、清らかな静寂が満ちる。

旅寝より醒めて食ひたるトマトかな 瀬越悠矢
 トマトは昨日道端で言葉を交わした農婦からもらったもの。齧り付けば瑞々しい果汁と旅の高揚感がほとばしる。

 「手まり寿司」には躍動する日常を感じた。

変顔の眉はハの字やさくらんぼ 山下舞子
 変顔という言葉が目新しい。眉のハの字とさくらんぼの軸のハの字の映像が読み手の脳内で重なって可笑しい。

腰掛けるまでにしておくハンモック 山下舞子
 腰掛けてみたらグラグラして不安定なので寝転ぶのは躊躇してしまう。でも「怖い」とは言えず強がっている。

打ち明ける前に餡蜜片付ける 山下舞子
 深刻な打ち明け話よりも餡蜜が気になってしまうのが乙女というものか。餡蜜の彩りの明るさが良い。


樫の木
1965年愛媛県生まれ。大分県在住の家具職人。第5回選評大賞優秀賞。


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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。今回の先選者は、阪西敦子さんと加根兼光さん。後選者は、関悦史さんです。

 「へたうま仙人」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は大塚迷路さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:藤


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 関悦史

 家の屋根の上にケモノの糞が五六個あって、大きさ、形状からするにどうもハクビシンか何からしい。天井裏に棲みつかれた場合、糞が腐って天井板が落ちるという惨事にもなる模様。
 私が住んでいる地の市役所や消防署は害獣駆除は基本的に対応してくれないので、無料調査してくれる業者を探し、その到着を待ちながら選句しましたが、果たしてどうなることか。


春泥に埋めたき人の二三人 てんきゅう

 普通、悪意や攻撃性を句に盛り込むと重苦しく、ヌケの悪いものになってしまうのですが、この句はイメージが奇抜な上、「春泥に」から順番に読んでいったら、すんなりととんでもないことを言い始めるところがおかしく、句自体はあまり怨念まみれにならずに済んでいます。
 悪意が先にあってできたというよりは、現物としてか、季題としてか「春泥」が先にあって、それを見ているうちに、ふと思いがそちらへ飛んだのでしょう。



綿棒の固まつて出る遅日かな ヤッチー
 一見、格段の新鮮味というほどのものはないが手堅いという作りの句ですが、固まってでてきた綿棒の感触が「遅日」そのものの触感に転じているような面白みがあり、じつは共感覚的な意外性もひそんでいます。

ファッショとは束を意味する水菜切る 小市
 「ファッショ」イコール「悪」というスローガン的な句ではなく、水菜の束を切るという日常の行為から不意にファッショを連想してしまう意識の空白感のようなものがあり、それを通して現在の状況をつかんでいます。

アクリルの雲形定規蜷の道 瀬戸 薫
 「蜷の道」の不定形な曲線から雲形定規への連想は意外性はないのですが「アクリルの」と素材を言いだしたことで二つがただの比喩関係ではなく、二物衝撃的になり、結果として奇妙な曲線のイメージだけが残ります。

ごつそりと空破れをり春嵐 鯉城
 上滑りしそうな誇張法で、具体性もなさそうなのですが、写生という考え方が入る前の江戸俳諧的な味わいが偶然出てしまったようなところがあり、自分も空ももろともに見えない力にかき回されたような実感あり。

咲きみちて桜沸きたちゐたるかな 省三
 満開の桜の一物仕立てという、やや難しいことに挑戦して成果を上げた句といっていいと思います。「咲きみちて〜沸きたちゐたる」という連続的な角度調整が、静止している桜に潜むダイナミズムを掘り当てています。



亀の部首亀のみありて亀鳴けり 藍人
新社員スーツの黒を溢れさす みちる
春竜胆やがて陽の射す斜面かな のり茶づけ
しわの手を繋ぐデートや菊人形 笑天
春耕のうなりやビルの谷間から ほろよい
囀の一つはラジオから聞こゆ 不知火
春深し男子トイレの窓開けて ポメロ親父
広報誌の山羊と目が合う春の昼 青蛙
Tシャツにストップエイズ風光る 雨月
復元の白鷺城にはたた神 池田喜代持



先選者 阪西敦子

 連休はずっと家に居てみた。大学一年の時は飛んで実家に帰ったし、勤務のために実家に住いが戻った時は東京の友人宅を転々し、東京に勤務が移ってからはメキシコ縦断旅行をして、ここではないどこかにいくのが黄金の時間の使い方だったが、今年は家にいてみた。いくらでもいられることに驚きながら、ある日思い立って本屋に行った。モディアノを2冊、マルケスを1冊、辞書のフェアでは吟味して古語辞典、世界史の訳本の文庫を上下巻。それらを紙の手提げ袋に入れてくれる。ここではないどこかを提げて、家に帰る。


通学路少しはずるる柳かな みさきまる

 かたちも、内容も特になんということもないシンプルな句。いつも通り続ける通学路があって、それをある日逸れたというだけ。たまたま入った道には柳があったという。しかし、この句の静かさと「かな」とだけ記されたことが、その柳の存在感の証になる。静けさに耐えうるだけの柳の柳らしさといったものが逆に際立ってくる、その色、清新さ、やわらかさに驚かされたのだ。買ったばかりの古語辞典によると「はずるる」は「はづるる」に。



地下鉄抜けてさわがしき夏柳 のり茶づけ
 偶然にもすこし似た状況だけれど、季節は移っている。柳も、町にすっかりなじんで揚々と吹かれている。地下から戻った人間に、地上の音を思い出させるようでもある。夏柳に我に返った人々は、空を仰ぎ、風も光も取り戻す。

いちごの数を揃えふたごの誕生日 ほろよい
 数を揃えるという行いに最もふさわしい果実は苺かもしれない。まずは一度にいくつか食べるものでなくてはならないし、蜜柑は大きいし、葡萄は細かい。苺だ。誕生日にも、ふたごにも、ふさわしい。

春爛漫真珠艶めくアンコール 小雪
 ただただ満ち足りた句。ではあるが、平板ではない。気持ちの良い言葉を並べて、気持ちの悪い句にしてしまうということがあるけれど、春爛漫と艶めく真珠とアンコールの質感の違いが、幸せな気分に奥行と実感を与える。

囀の一つはラジオから聞こゆ 不知火
 サスペンスドラマの中の携帯の着信音が自分のと一緒で驚くというのと同じ事であるけれど(iPhoneのおかげで最近は海外モノでもそういうことが起こる、グローバルだ)こちらは符丁のよう。つながっているということは本来もっと貴重で嬉しいことだったはずだ。

山村の春のストーブ雨の音 高木久美子
 転々としてとどまらないが、窮屈さはないし、慌ただしくもない。静かに降り始めた雨が葉に落ちて地に垂れ吸われてゆくようなリズム。春のストーブから雨の音への距離が、興味が屋外へ移ったようでも、イコールで結ばれるようでもある。



綿棒の固まつて出る遅日かな ヤッチー
もくれんの閑かに春を向いている 多満
本尊は格子戸の中沈丁花 樹朋
冬晴のデートきりんの睫毛かな 野兎
花冷の夜を現金輸送かな もね
薫風やお城の見える新校舎 八十八五十八
茅花噛む遊びならひし人の逝く 妙
菜の花や線路工夫のヘルメット 明日嘉
春行くや引き出物提げ夜行バス ひでやん
競り市の一段落や夏つばめ ターナー島



後選者 加根兼光

 余市に遊ぶ。ドラマの影響で人出は多い。しかし、倉の中はひんやりと静まり樽は眠りからまだ覚めない。ポットスティルの火も絶えることはない。この液体が私の心を満たしてくれるのはいつになるのであろうか。


特選句

虎の目に三日月棲みぬ暮の春 てん点

 虎は目の奥に三日月を抱いているかの如くいつも虚空を見つめている。春の終りの深さを湛えつつ光る目でもあるのだろう。

引鴨や喫水線を白く引く 緑の手

 鴨が北に帰る。海では新しい船が生まれようとしている。鴨の群れのように一文字に引かれる喫水線は新しい船の命でもある。

葉桜や踝あおきたけくらべ うに子

 踝の青さとは若さの象徴。日ごとに伸びる背を支える踝。すっかり葉となった桜は旺盛な夏の始まり。緑の深まりとともに伸びる背。

蒜のしみじみ晴れて引かれけり 人日子

 中七が空と大地の広がりを的確に現す。「しみじみ」は晴れを待っていた感慨でもある。成長した蒜は大地の黒さから引き抜かれる。

桜蘂踏んで何にもなかりけり 遊人

 散り敷いた桜蘂を踏みしめる足はいつもと変わりなく。そう変わらないことがいいことだ。蘂の下の大地に語りかけるように踏む。


並選句

老犬の鼻に割れたる石鹸玉 杉本とらを
匂やかな風の通える花の道 さくらがい
偲びつつ緑さす庭あて無しに レモングラス
水鳥や空を二つのシミュレーション 森 青萄
湯の町や花びらも乗る人力車 迂叟
刺青師の肩を動かざる黄蝶 幸
麗らかにライオンの子の哺乳瓶 てんきゅう
お別れのしずくは青く春の空 富士山
秘め事を五月の第五日曜日 ヤッチー
五月雨の土の匂いを起こす朝 南亭骨太
花盛美しき悪しきは紙一重 和音
夕霞顔の一部といふメガネ 小市
聖金曜日名もなき路地の狭き空 かのん
花弁に陰翳桜に二面性 樹朋
心まで丸くしてゆく春の水 ぴーす
今はまだ穢れを知らぬ三椏の花 おせろ
牡丹や小さきひとの寝ぬる蕊 凡鑽
廃校は土に少女は成人す 野兎
交差点の若者の群れ春の星 ゆりかもめ
ほろほろと頽れる肩けしの花 一走人
揚雲雀雲呼ぶ風となりにけり 一走人
春昼やライフマスクの実験台 蓼蟲
若葉風池の面を刻みけり 八十八五十八
のどけしや散りゆく辨の影を追ふ 緑の手
飛花そろり回す地球儀また会える 八木ふみ
花は葉に青空戦ぐ車椅子 八木ふみ
小火のごと煙るる杉の花日和 不知火
〆切とトイレ掃除と春嵐 あきさくら洋子
落花踏み山に獣の臭ひ嗅ぐ 妙
フェリーなら眠れる躯花の午後 うに子
終点に起こされてゐて一年生 雨月
ラジオから四月尽きると流れ出で  台所のキフジン
雪形の仏寝たるを大観峰 松ぼっくり
客待ちに若布干しをり渡し守 松尾千波矢
シフトA押して00目借時 明日嘉
風薫る羽生選手のエッジ音 みさきまる
涅槃図のだれかに似てる鼻のあり 春告草
見る者のなくて戦げる若楓 ひでやん
鶯のひとつの声のつぎを待つ ターナー島
うららかや代打ぶわんと大振りす 福花
初蝶に丸めし紙を放りたる 福花
桜前線人無き街を駆け抜ける ちろりん
眼裏に幾万の星月おぼろ ミセスコナン
平凡に手はとどかねど花の昼 アンリルカ
雪焼けて睫ばかりの美しき 州豚
総身にぶつかる桜吹雪かな 省三
名残花うす紅に道を染め まんぷく
春潮や生命生まれる匂ひする 北伊作
尾道や猫を尾行れば沈丁花 北伊作
深呼吸して番号をさがす春 柊つばき
常世波寄す来る山の花吹雪 エノコロちゃん
槍投げの脇腹にある暖かさ しんじゆ
石庭の蓮の浮葉の頼りなさ カシオペア



関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

加根兼光(かねけんこう)
映像 俳句プロデューサー。1949年、大阪府堺市出身。関西大学法学部法律学科卒業後、CM制作会社に勤務。CMチーフプロデューサーとして30年以上に渡り、1000本以上のCM制作に携わる。50歳を過ぎて始めた俳句で2007年秋、第9回俳句界賞受賞。映像と俳句のコラボレーション、俳句の新しい展開を目指す。俳句集団いつき組組員。現代俳句協会会員。




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へたうま仙人


文 大塚迷路

 立夏をこの前迎えたと思ったらもう梅雨間近な列島ぢゃが、皆様いかがお過ごしかの?
 黴の季節になるが、皆様の頭の中には黴は生えていませんかのう?一回生えるとなかなかに厄介ぢゃ。風通しを怠りなくぢゃ。
 今月も、作り立てから賞味期限すれすれまで色とりどりの作品が揃ったぞ。レンジでチンしながらゆっくりとご賞味くだされ。


巣に立ちて烏の叫ぶ春霖雨 だなえ
舞い上がる烏子猫の飛ぶ港 だなえ

 なんともリアルな句ぢゃ。七つの子烏が叫んでいるのか親烏が叫んでいるのかはどうでもよいことで、惷霖に滲む烏の影と声が不気味さを掻き立てるのう。おまけに烏が子猫を咥えて舞い上がる港とは、まるでヒッチコック映画か黒澤映画の幕開けのようぢゃ。くわばらくわばら。

春めくや芭蕉のようにはなれません ケンケン
蒼天や草津市役所そびえ立つ ケンケン

 作者は作者で、芭蕉は芭蕉ぢゃ。芭蕉のようになれんのは当たり前ぢゃ。ぢゃが「春めく」にかすかな光明を感じておるの。未来は明るいぞ。草津市と草津町では知名度の点で若干の差はあるが、草津町に若干後塵を拝しているかもしれないかもしれない草津市の息吹が、蒼天に息衝いておるぞ。
一年生色とりどりのランドセル 真帆
一年生下校する時先生と 真帆

 新一年生のはつらつとした姿が印象的ぢゃ。ランドセルに乗っかかられている背中が愛おしいぞ。何もかも初めての小学校でちょっと疲れて下校する一年生と先生の後ろ姿がユーモラスぢゃ。先生も新米かもしれんのう。

肩がノウおうつと重し花無聊 KIYOAKI FILM
花に宿無しけんどバスは三七分 KIYOAKI FILM

 四十肩か五十肩ですかのう? 本当に重そうですのう。花を愛でても無聊の心のままとは本当に気の毒ぢゃ。さて「三七分」をどう解釈するかのう。花さんは宿無しとなって「宿無し」という称号を与えられた。が、風呂に入る時間はいまだ三十七分にこだわっている。花さんの気概が凛と立つなかなかに良い句ぢゃ。

捨てられる蝌蚪かたまるや陽の中に 未々

 どんないきさつで蝌蚪が捨てられるのは知らんが、一塊になればなるほど憐みを誘うのう。完結しない下五に蝌蚪たちの運命が託されていて、読み手の想像力を試している挑戦的な句ぢゃ。「さて、蝌蚪たちの運命やいかに……」活弁士の声が聞こえてきたぞ。

美術館具象抽象菜種梅雨 元旦
曲間の無音漏れ聴く春の雨 元旦

 菜種梅雨はホント実体の有りそうで無い美術館のようぢゃな。始めと終わりは抽象で、中ほどは具象バンバンぢゃ。中七を「三・四」で区切るのと「四・三」で区切るのとではリズムが大きく変化するが、そのへんのツボを頃得ておるのう。そうなのぢゃ、無音こそが音楽なのぢゃ。春の雨の奥の無音こそが俳句なのぢゃ。

象の背に桜蕊ふるバスツアー ひでこ
連敗のあし毛の馬や青き踏む ひでこ

 桜蕊がふることで象の背に桜蕊が乗っているいることがわかり、その桜蕊によって象の動きもわかるという複層造りの句ぢゃ。下五のオチもツアーの様子を想像でき良い味をだしておるのう。「青き踏む」でいつの日にかの初勝利が見えてくるぞ。馬の目はその日を見ておるぞ。

擦り切れたカセットテープ春うれひ 小木さん
春愁や結局話し相手は妻 小木さん

 擦り切れたテープのノイズの奥から聞こえてくる声もまた良いものぢゃ。春のイメージはいつまでたってもアナログぢゃ。春のうれひもアナログでなくてはならん。デジタルの春うれひなんぞ想像もつかん。当然春愁もアナログぢゃ。人の心は二進法では計り知れん奇々怪々、傍若無人、石橋を叩いて渡る、なのぢゃ。

卵白の泡や卯月の風が吹く ゆーかり

 ホイップされた卵白の各頂上をそよそよ揺らす風は、卯月の生命力としなやかさを運んで来るのう。さりげなく「風が」と提示するとはなかなかにしたたかぢゃ。そのおかげでカーテンの繊細な揺れまで見えてくるぞ。

酔いしれて一夜桜となりにけり 森子

 酒に酔っているのか桜に酔っているのか、はたまた桜が酔っているのか作者が酔っているのか、どちらにせよ作者の心の豊かさを感じ得んぞ。散りゆく夜桜の妖艶な姿を眼裏に焼き付かせて、桜は過去と未来を行き来しているのぢゃろうなあ。こんな妖しげな句は一夜限りの逢瀬の国へ花筏に乗せて追放!

塩パンの塩は能登産夏の雲 誉茂子

 もくもくと育っていく夏雲と塩パンのもこもこ感が良い塩加減ぢゃ。能登の自然塩の斡旋が更に良い距離感で良い塩梅ぢゃ。能登の夏の風景まで目の前のスクリーンに映し出されたぞ。ぢゃが、思わずパン屋さんへ自転車で塩パンを買いに行きたくなるようなこんな句は、塩の取り過ぎに注意しなくてよい国へとっとと追放!


 今月も踏ん張りと勢いで追放者を出してしもうた。やれやれぢゃ。残った精鋭たちは日々益々へたうまへの道を邁進されていることを誇りに思うぞ。
 ぢゃが、くれぐれも油断召されるなよ。



へたうま仙人
 年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
 好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き)
 嫌いなもの 上手な俳句
 将来の夢 大器晩成


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 330億円というファイトマネーが動いたボクシングの世紀の一戦、メイウェザーとパッキャオ戦は無敗のメイウェザーが判定で勝った。負けたパッキャオは試合後、肩を故障していたと告白。一方メイウェザーは、俺も実は両手と両腕を痛めていたと語った。日本人の精神構造からすれば、負けたパッキャオは「言い訳」で、勝ったメイウェザーは完全な「蛇足」あるいは「死人に鞭」に過ぎる。そこには日本人が美徳とする潔さとか思いやりなど、微塵もない。ひょっとして日本人のアスリートが世界で実力を発揮しきれないのは、美徳とされる日本人特有の重い精神構造がネックになってるような気がしないでもない。ギャグではないが、勝負事はやっぱり欧米か!



畜産のトラック空にして悲しいと言うか しんじゆ

 高速道路などを車で走っていると、時に牛や豚を運んでいるトラックに遭遇する。あれが「畜産のトラック」なのでしょう。いままで不勉強にもこの「畜産のトラック」という言い方を知らなかったので、まず納得。作者オリジナルの言葉なら、みごとと言うしかありません。牛や豚などひと言も出てこなくても「空にして」と繋ぐことで、人間に供される彼等の運命がみごとに表現されています。また「悲しいと言うか」のように、余韻を残した大胆な終わり方も秀逸。言外に多くの感慨を起こします。まさに自由律ならではの味わい。



もそっと近う水平線の春夕焼け もね
 妙に緩んだ春の雰囲気がよく出ています。「水平線の春夕焼け」自体、取り立てて言及するほどの表現ではないとしたら、「もそっと近う」が、その妙に緩んだ雰囲気の源でしょう。「もう少し近くへ」では、この緩みは出ない。

あっちこちゆるんで春にいる 多満
 寒さで緊張していた冬を抜けて、ようやく春になった気分がよく出ています。のほほんとした春の気分を「あっちこちゆるんで」というひと言で切り取ったところが手柄でしょう。「春にいる」も上手い。

ハイヒール両手にぶらぶら新宿の夜明けだ  雪うさぎ
 有季定型の句では表現しづらい乱暴さが、句の力になっていると思う。作者としては、「ぶらぶら」がお気に入りかもしれないけれど、「両手にぶらぶら」は少しくどい。「ハイヒール両手に新宿の夜明けだ」または「ハイヒールぶらさげて新宿の夜明けだ」で十分だと思いますが……。

今ごろ帰って来ても筍飯はない ポメロ親父
 作者特有のつぶやきと言うか独白というか、今回もオモシロイ。俳句を跨いで詩への領分のギリギリのところの立ち位置に時々ハッとさせられます。この句の持っている物語性が興味深い。

子規に律フーテンの寅にさくら春惜しむ 藍人
 正岡子規と妹の律、寅さんと妹のさくら……全員出してきて句にしてしまったその強引さに敬服。自由律といっても「5 11 5」で、季語「春惜しむ」が全体を支えているという構造的には定型だけれど、こんな自由律があってもよいと思う。



酒臭き父の石鹸玉 杉本とらを
波音と思ふ夜明けの洗濯機 雪うさぎ
洗っても洗っても石鹸の汚れている のり茶づけ
朧なれど夜の手紙は夜に出す 野兎
電線を二度と越えぬ桜 だなえ
春愁のつかみそこねた影 一走人
お前まつあしのうらまで気もそぞろ  台所のキフジン
今朝は春雨よと看護婦の打つ点滴 鯉城
登り棒すとんと日が暮れた 北伊作
虎杖の帰路にはひと節も伸ぶ エノコロちゃん


並選
行けども行けども俳句がついてくる ケンケン
遺影にビール置きいまだ乾かぬ涙拭く  レモングラス
きらめきに溺れきつたる馬糞海栗 森 青萄
折り紙の象の耳動く昼寝覚 迂叟
牛乳飲んで点字盤かな赤ランプ KIYOAKI FILM
病む手放す治るつかむ 幸
ひとりで梅見 ヤッチー
年金生活者になり切れない吾 南亭骨太
女難の相出る花の夜 和音
ホームレスの合唱どこまでが春 みちる
短冊をめくりて若葉 ゆーかり
小春日の少女背徳感に溺る 笑天
沖に漕ぎ出すカヌーあきらめない 小市
「不機嫌」と友だちになった母 凡鑚
ノンアルコールビールの休肝日 ゆりかもめ
これでも本気藤の花 小木さん
眩暈の真中へ生まれる薔薇 緑の手
牡丹に隠す腐った言葉 あきさくら洋子
雛の夜焼き鳥八本分の愛 うに子
教科書にあの娘の名前を書く 元旦
島に日本語の破片 松ぼっくり
訃報また訃報桜蘂降る ミセスコナン
入学試験腕時計の落着き 人日子
桜満開カラスも来て止まる朝 まんぷく
人生は朧核心の揺れるや カシオペア



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。



【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)、俳号(なければ本名の名前のみ)、本名、電話番号、住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙人」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、6月20日(土)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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美術館吟行7
瓶泥舎びいどろ ぎやまん ガラス美術館
カラフル!ワンダフル!びいどろの神髄、色彩の魅力展


文 南行ひかる


 まさに躑躅満開の黄金週間真っ只中、美女美男の俳友七名が松山道後温泉に集結した。目指すは「瓶泥舎びいどろ ぎやまん ガラス美術館」。迷い迷いながらも洋館風の館に何とか到着。早速、入館すると珠玉のガラス工芸の世界が広がっていた。一同思わず息を殺し静寂に。
 今回の展示作品は38点、皿、茶碗、徳利、角瓶、盃、向付等のカラフルな作品が、お上品に並んで鎮座。時代は江戸中後期が中心の由。

 引率の麗人学芸員の教養深い案内が静かに始まった。
 「びいどろとは、ポルトガル語のガラスの意です。ギアマンとは、ギアモンド、即ちオランダ語のダイヤモンドに由来し、ギアモンドが転じてダイヤモンドカットされたガラス工芸品、つまりカットグラスを表すようになりました。それに対して、びいどろは吹きガラスの意味合いが強くなったと言えます…」 なあるほど。
 まずは一同その鮮やかな色彩に注目しまことに熱心に鑑賞。

ひと吹きの器を為せり夏の月 曽根毅
びいどろの角瓶三口明け急ぐ 恋衣

 紋様はまことに日本的だ。菊、木瓜、竹笹、葡萄唐草の和風紋様が見事に浮かび上がり薄明の中に息づいている。

夏蝶を閉じ込めたるや硝子蓋 恋衣

 その色彩は魔法のように怪しげに発光する。

びいどろの皿のむらさき春行かむ 鯛飯
初夏を瓶のしだいに透けてゆく チャンヒ

 気が付けば外ではにわか雨が……。

硝子の杯虚空を堪え緑雨なる 曽根毅

 その精緻な美は日本人ならではの繊細な感性、無限の向上心、真摯な鍛錬、による技術の賜物。改めて日本人としてまことに誇らしく思う。と同時に俗欲煩悩の吾輩としては、「このお宝、一体おいくら」、と思ってしまうのであった、アワワ。

 カットグラスと言えば薩摩切子が有名だ。展示作品が誰によりどこで何年に作られたものなのか説明書を見ても実は記載が無い。秘密のまま鑑賞は続く。
 そして想いは遠き昔のびいどろ発祥の異国の地へ…

頬白やギヤマン盃に透くペルシア 鯛飯

 日本を超えて宇宙にまで…

惑星のごとくゆらめく酒器涼し あねご
木星より注ぎ土星で受く冷酒 猫正宗

 そして

色彩の欲望に透明な火酒 猫正宗

 酒を注いで呑んでみたい!

 後半は更に精緻を極めた作品が登場。切子文房具、櫛、簪、笄等の婦人装身具類、雪洞虫籠等の展示物。一同またもや息をのむ。和洋の見事なマッチング、日本切子の最高芸、驚愕の精緻な細工。

笄ニ洗ヒ髪キシキシ巻キツケテ 恋衣
虫籠のねじり切子がりりと鳴く 恋衣

 重ねて重ねてその昔の日本工芸家達の技術力・芸術力のレベルの高さに吃驚。そしてまた吾輩は「こりゃあ、すごいお値段だ」と思ってしまうのであった。外は雨も止み緑が眩しい晩春、そして初夏の様相に

深海のごときびいどろの鼓動 あねご
ビードロに土星眠りゐる五月 ひかる
行く春を切子筆架に留め置く ひかる
ギヤマンの一口を残し去るは夏 チャンヒ

 一同大満足の美術館吟行であった。皆さんもぜひ鑑賞を!


南行ひかる
昨年4月、5年ぶりに松山に舞い戻る。俳都松山への移住計画を本当に実現し、いつき組俳句100年計画に鋭意参画中。



「カラフル!ワンダフル! びいどろの神髄、色彩の魅力」展は9月6日(日)まで開催中。(火/水 休館。要予約TEL 089-922-3771)

取材協力:取材協力:瓶泥舎びいどろ ぎやまん ガラス美術館 〒790-0847 愛媛県松山市道後緑台7番21号 http://www.bindeisha.co.jp/


次回美術館吟行会
いずれも『100年俳句計画』編集室までお申し込み下さい。(TEL 089-906-0694)

「金澤翔子展吟行会」展
日時: 6月13日(土)午前10時〜
場所:愛媛県美術館
参加費: 無料(入館料は別途)
申込み締切:6月11日(木)

愛媛県美術館所蔵品展吟行会(予定)
日時: 6月27日(土)10時〜
申込締切:6月25日(木)

http://www.iyokannet.jp/



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特別企画

律川エレキの表装生活




 本誌「俳人に捧げる愛のつぶやき」でおなじみの律川エレキ(桃ライス)さんが、今年で四回目のイラスト展、「俳人に捧げる愛の言葉展4」を開催中。大きな和紙に描いたシュールなイラストを、作者自ら(家族も含む)表装し、展示しています。
 作品展開催を記念して、律川エレキさん本人に、その制作過程をレポートして頂きました。いつかきっと表装をしたいあなたのための企画。


1 はじめに
 ワシ以外に、表装生活に巻き込まれる人の紹介。

1、家人
 表装は未経験で、本業は製本業。表装のために職場から刷毛を持って帰ってもらうが、刷毛は他人が使うと癖がついてしまうとゆうので、仕方なく表装の刷毛担当になってしまう。
2 書家の紀苑先生
 オリジナル落款印をお手頃な値段で作ってくれる人を紹介してくれた。紀苑先生が「落款印はどこにでも捺せばいいとゆうもんではないよ」とおっしゃるので、捺すのをお願いすることにした。


2 「材料」
 一年目、マガジン掲載のA4サイズのイラストだけ飾ってもらう予定だったが、にこちゃん堂の店長さんが「ここの広い壁も使ってもらっていいですよ〜」とゆってくださったので急遽思いつきで掛軸を作ることに。その帰りに図書館で表装関係の本をあるだけ借りて帰った。(二年目からは気に入った一冊だけを借りるように)

 にこちゃん堂の壁の大きさに合わせて五本作ることにした。
 百貨店の書道売場で「大きい紙ください」とゆってみると、「漢字用ですか? かな用ですか?」と聞かれたが、一瞬悩んで「破れにくくて滲まなくて安いのを」と。(一枚80円を五枚購入。余分に買えない)
 娘が学校で使ってる墨汁(イオンのトップバリュー製)を使うと「裏打ち」のときに滲んでしまったので、二年目からは純正の墨汁を使っている。
 布は、ならまちの書道用具屋さんで分けてもらう。二階で職人さんらが表装作業をされている。

 裏打ち用の刷毛は、三年目から使わなくなりました。
アイロンで簡単にできる紙を売っていたから。

3 「描く」
 紀苑先生に毎年「落款印を捺すことを考えて左下は空けといて。そして最後にマルをつけないように」と注意されるが、そのことをついつい忘れてしまう。
 ピッチャーの絵を描いたとき、写メを谷さやんさんに送ったら「俳人的には『に』は要らないと思う」と返事。描き直す紙がないので、朱で「トル」と入れた。結果、紀苑先生が「朱が入ってるとゆうことは、完成してないとゆうことやん。印は捺せません」と落款印を捺してもらえず。

 あと、ときどきファッション誌をパクる。

4 「裏打ち」作業 家人
 作品の裏に紙を貼り、丈夫にする。
 本来は、作品に水を霧吹きし、薄めた糊を刷毛で塗り、紙に貼り付ける。

 アイロンでできる紙を使うようになってからは、いかにアイロンを使いこなすかが重要に。

5 「作品のカット」
 作品の四隅をカット。
 綿の白手袋をつけると、やる気が出てくる。

6 「布裁断」
 パーツごとに裁断。(掛軸はパーツごとに名前がついている)

 これが一番面倒くさくて嫌いな作業。

7 「布の貼り合わせ」
 3ミリ幅重ねて糊付けしてゆく。竹串を使う。

 乾くまで待つ。
 先の細い手芸用ボンドを使用するが、なくなると木工用ボンドを詰め替える。


8 「耳折り」作業 家人
 貼り合わせた布を裏返し、両端5ミリ幅の耳折りをする。
 裏打ちの流れから、アイロンを使う作業は家人がするように。



9 「軸棒をつける仕込み」 作業 家人
 上下に、半円棒(八宗とゆう)と軸棒をつける仕込みをする。
 とても複雑そうなので家人に任せている。


 本来は和紙を使うが、洋裁用の芯を使用。
 アイロン活躍。


10 「軸棒カットと色塗り」 作業 カットは家人、サンドペーパーがけと色塗りはワシ
 工程9と並行して、半円棒と軸棒を掛軸の幅に合わせてカット。サンドペーパーをかけて、(見えるとこだけ)色を塗る。
 色は、アクリル絵の具の黒と紺を混ぜている。


11 「半円棒と軸棒をつける」 作業 家人
 掛軸の上に半円棒、下に軸棒をつける。
 軸棒は、巻きずしを巻いてる感じで巻きつける。


12 「落款印を捺してもらう」 作業 紀苑先生
 表装生活の一番のクライマックス。

13 「2ミリ幅追加」
 布が地味なので、急遽、作品の周りに赤い枠を入れることに。
 赤い布を2ミリ幅にカットし貼り付ける。少しメリハリができる。

14 「本裏打ち」作業 家人
 裏一面に洋裁用の芯を貼る。アイロンでしっかり熱をあてて貼る。本来は和紙を貼るらしい。


15 「家人やらかす」
 いつも落款印は掛軸が完成してから捺してもらうのだが、今年は都合により本裏打ち前に捺してもらった。
「朱肉の乾ききってない印に注意してね」とゆったし、家人本人も注意していたらしいのだが、しっかりアイロンをかけることに熱中したため、知らぬ間に印が派手に擦れてしまったと云う。どうしてくれんねん。
 翌日、別件でうちに紀苑先生がやってきたので、恐る恐る打ち明けると「完全ではないけどセロテープで取れるよ」と、解決してくれた。


16 「軸を金色に」
 急遽、軸を金色に塗り替える。明るくなるかな〜と思ったけど、仏具っぽくなったよ。

17 「金具 紐をつける」作業 家人
 家人の最後の作業。

18 「風袋」
一番大きい掛軸につける飾り「風袋」を、昨年の作品を参考に作り、つける。

19 「完成」
 完成。

20 「搬入」
 にこちゃん堂へ搬入。高いところに飾るので、梯子持参。

21(終) 「おまけ」
 参考までにおまけです。
 作業期間は約一週間です。ダイニングテーブルが作業台になってしまうので、一週間は床でご飯食べます。



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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.23


Black storm in dream
Calm day in Yamanaka
Where is my heart now?

晴れてなほ心に吹きぬ青嵐


(直訳)
夢の中の暗い嵐
山中の穏やかな昼間
私の心は今どちらにある?



We are looking into the future. My work is endless because it comes from inside. The printed notes are only a blueprint for self-discovery.

我々は将来を見据えている。私の仕事は終わりが無い。何故ならば、それは内から湧いて来るものだから。譜面は、ただ自己発見の青写真に過ぎない。(訳:朗善)



ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第51話
「イーズ イット」  ロッキー ボイド


目力の強きボイド也夏テナー いしき

 レコード ジャケット写生句の典型。JAZZ句会のメンバーは、これを「ジャケ句」と呼び珍重する。ジャケットの象徴が「目力」と言われ納得。彼の出で立ちが夏仕様じゃないことも十分に無視できる。

時満ちればはだしのease it 千栄子

 松山の大街道と三番町の交差点を東に百メートル程歩くと「古書ほやけん洞」がある。店の棚には古書があり、手を伸ばしたくなるタイトルも多い。だがここは、だし巻き卵が異常に美味い、そして充実の日本酒は銘柄毎に口当たりや味わいを店主夫人がちゃんと解説してくれる居酒屋なのである。店主の俳号は暮井戸。
 今回は「暮井戸御夫妻JAZZ句会入会記念」なんて冠を頂いてのテーマ設定となった。それほどロッキー ボイドというテナーマンは無名だったし、結局後にも先にも彼の名がアルバムにクレジットされたのは、この「イーズ イット」というレコードが唯一なのである。

蛇半地下を出でて行方杳たり 破障子

 第49話で紹介したウォルター ビショップJr. トリオの「スピーク ロウ」は幻のレーベルjazztimeに残された決定的名盤である。そのビショップがピアニストで録音もほぼ同時期、しかも共演者がトランペットのケニー ドーハム、ベースがロン カーター、ドラムスがピート ラ ロッカと豪華であったため同レーベルの「イーズ イット」もかなりの人気盤となった。謎のテナーマン、ボイドも好演しており以降の活躍が期待されていたのだろうが、何故かこの1作で姿を消してしまい幻のテナーマンとなってしまった。
 つまりボイドは、

名盤を残し薄暑へ消えた奴 チャンヒ

なのである。

香水やホワイ ノットと肩揺れぬ 俊坊

 東京からこの艶っぽい句を送ってくれた俊坊さんと久々に松山で語り合うことができた。聞けば行政職員向けの講演を依頼されたとのこと。JAZZ句会には大学の先生も数名所属しており「教員組合バーター疑惑」と称し、先生方が互いに選句しあう傾向が指摘されたりした。が、それはともかく我が句会は、かなりアカデミックな集団なのである。
 で、疑惑といえばこの「ホワイ ナット」。作曲はドラマーのピート ラ ロッカとされている。しかし、テーマメロディーはどう聴いてもジョン コルトレーンの「インプレッション」なのだ。なので、コルトレーンのそれに比べるとやや甘いが、アルバム全体としては「ステラ バイ スターライト」や「オルフェのサンバ」もあってスタンダード集の趣がある。

半熟に茹だれば薄皮は白夜  ま’

 ボイドやジャズとの関係がよく見えてこないけれど人気句につき掲載。何なんでしょう!?



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。

次回のJAZZ句会は、6月14日(日)15時30分より。メインテーマは、直前に開催される(13時開演)「古佐小基史&笹島明夫デュオ ライヴ!」です。句会の参加申込は、本誌44ページの句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU vol.1』(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ


第51話
『金明竹』〜 言い立ての部分に拍手?〜


あらすじ
 骨董屋に住まわせてもらっている与太郎、ちょっと物覚えが悪く、いつもおじさんを困らせている。
 店番をたのめば、雨宿りに来た見知らぬ男に新しい傘を貸してしまい、おこられる。
 おじさんは「そういうときは、“傘はみんな使い尽くして、バラバラになって使いものにならないから焚きつけにするので物置きに放り込んである”と断るんだ」と教えると、ねずみが暴れて困っていて店の猫を貸してほしいと来た人に「猫はつかいものになりませんから焚きつけに……」とやってしまった。
 そんなトンチンカンな間違いがつづき、いつも叱られている与太郎のところに、上方からの客がやって来た。
「わて、中橋の加賀屋佐吉方から参じました。先度、仲買の弥市の取次ぎました道具七品のうち、祐乗、光乗、宗乗三作の三所もの。並びに備前長船の則光、四分一ごしらえ横谷宗岷小柄つきの脇差し、柄前はな、だんなはんが古鉄刀木といやはって、やっぱりありゃ埋れ木じゃそうにな、木が違うておりまっさかいになあ、念のため、ちょっとお断り申します。
 次は、のんのこ茶碗、黄檗山金明竹、ずんどうの花いけ、古池や蛙飛び込む水の音と申します。あれは、風羅坊正筆の掛け物で、沢庵、木庵、隠元禅師はりまぜの小屏風、あの屏風はなあ、もし、わての旦那の檀那寺が兵庫におましてな、この兵庫の坊主の好みまする屏風じゃによって、かようお伝え願います。」
と早口で言われると、「何言ってんだかわからない。もう一ぺん言ってみろ。」と返す与太郎。
 結局同じ話を三回もさせられ、客は疲れて帰ってしまう。
 おばさんも聞いたがやはり分からず、帰ってきたおじさんに「仲買の弥市が気がふれて、遊女が老女で、掃除が好きで、…………中に坊さんがいて坊さんと中で寝たんです。」
と伝わり、余計話はメチャクチャ。おじさん「さっぱりわからねえ、どこかはっきり覚えている所はねえのか?」
「確か、古池に飛び込んだとか。」
「何? あいつには道具七品を預けてあるんだが、買ってったのか?」
「いいえ、買わず(蛙)です。」



 もともとは上方の噺だったのが江戸へ伝わり、今では東京の寄席では毎日といっていいほど演じられているポピュラーな噺になりました。
 全文書いてある、いわゆる“言い立て”の部分が早口で、「寿限無」のように長いセリフですので、ここの部分をリズムよく語ると、客席からは拍手が起きたりします。
 噺家さんの中には、この上方の客部分を東北弁にしたり名古屋弁にしたりしてアレンジ編として高座にかけている方も。
 ということは、ここを伊予弁でやってみても面白いかもしれません。夏に新居浜で全国から集まってくる落語の会があるので、僕もやってみようかしら?

 さて、ちょっとここで宣伝というか、お願いが2つ。

1 松山お笑いライブ「ハナヨサケ!!」第2回
 6月5日(金)夜7時〜 松山市緑町シアターねこにて。私と弟子の漫才コンビ“ハッピーコンビ”ほか、モストデンジャラス、三瀬賢太など出演します! 料金1000円。松山から笑いの風を起こそうと奮闘中です。ぜひお越しください。

2 新居浜市主催「笑顔甲子園」
 出場高校生募集中です! 漫才、コント、手品、ものまね、落語など、ジャンルは何でもOK! 高校生のパワーでみんなを笑顔に!! 周りにいらっしゃいませんか? 8月29、30日に開催します。詳細問い合わせは…新居浜市総合政策課0897(65)1210。

 よろしくお願いします!!

 傘貸してここに傘無くさみだるる


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新聞記事に隠された俳句を発掘する
クロヌリハイク


黒田マキ


午後8時〜9時ごろのホタルかな
(愛媛新聞より)


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第32回 「TAMHIM」

 TAMHIMとは東京都杉並区の公共劇場「座・高円寺」の演劇研修所「劇場創造アカデミー」修了生の、小嶋一郎、佐々木琢、高田斉、二宮彩乃、樋口ミユ、宮尾昌宏の6人の演出家からなる演劇創作団体。普段はそれぞれの創作活動を行っている彼らは、「共同創作で人と劇場を繋いでみせる」をミッションに、各地で共同創作作品を発表し、今後の共同創作者と出会い繋がる活動をしています。(その志は「TAMHIM宣言」として高らかに謳われているので、興味のある方は、フェイスブックでご確認を)

ケルン積む見えない星を見るために

 今回上演された『マハズレ』『果ては戦友になる』『地区Kのこと』('15年4月11日、12日、シアターねこ)は、それぞれ違うテイストながら、いずれも、予め何もかもセットされ、ただ黙って座っているだけでおいしくいただけるようなものではありませんでした。むしろ、やっとの思いでたどり着いた揚句、強引に調理に参加させられ、一心不乱に咀嚼しないとならないような……いや、もしかしたら料理されているのは私たち観客の方ではないか、そんな風に思わされる作品ばかりでした。
 今回、TAMHIMの面々は、公演の一週間前から松山に滞在。公演の準備だけでなく、参加者を交えての複数のトークイベントやワークショップ、観劇後の観客とのアフタートークなどを開催。作風と併せて考えれば、彼らの言う共同創作がメンバーやキャストだけでなく、各地の創作拠点や、観客をも巻き込んだものであるように思えます。

わたしとは違うあなたがいてはだし

 最近、同世代である本誌編集長と「子供の頃、子規ってそんなにメジャーじゃ無かったよね」「子規記念博物館の役割は大きかったのでは?」といった会話を交わした記憶があります。今回の共同創作プロジェクトがこの松山で実現したのも、シアターねこという拠点があったからこそだと思います。文化に限らず、何か大きな動きが起こる時、あるいは起こそうとするとき、居心地のいい「居場所」とは違う、同じ旗印の下(自分の内なるものも含めた)見知らぬ他者と出会える、そういった場所が必要なのかもしれません。



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。


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百年歳時記


第25回 夏井いつき

 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。


鯉と鯉ぶつかる匂ひあたたかし 小木さん
 季語「暖か」を表現するために、「鯉と鯉」が「ぶつかる」折に発する「匂ひ」に焦点を絞り込んでくるとは、実に鋭敏な感覚の持ち主だと感嘆致しました。「匂ひ」という3音の嗅覚表現が、作者の感知した光景を読者の脳裏に鮮やかに伝えます。
 「あたたか」くなってきた水辺に佇むと、「鯉」たちは餌が貰えるのではないかとざぶざぶ集まってきます。「鯉と鯉」が身を翻し「ぶつかる」時、池の水は大きく揺らぎ、水は「匂ひ」を放ちます。きらきらと春の日を弾く水面、「鯉」たちに揉まれる水の音、生臭い「匂ひ」。視覚と聴覚と嗅覚を、上五中七の12音で見事に表現し得てこその、季語「あたたかし」という実感です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』4月23日掲載分)


産気づく象舎や春の月は望 長緒 連
 上五中七「産気づく象舎や」で象舎内を描写し、「や」の強調からカットが替わり、象舎の上にのぼっている「春の月」がクローズアップされます。「春の月のぼる」ではなく「春の月は望」としたところも巧いですね。「望」は「望月」つまり満月のことです。「象舎」では母象が「産気」づいて、いよいよお産が始まるよ、折しも上ってきた「春の月」は、見事な「望」の月であるよ、という詠嘆が、いよいよ始まるお産への期待感を表現します。
 「産気づく象」ではなく「象舎」と述べることで、緊張感が満ちる象舎の様子や出入りする飼育員の表情をも想像させます。「春の月」が命の始まりのイメージとして表現された悠々たる作品です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』5月1日掲載分)


茅花流しやアトランタより巨船 緑の手
 「茅花流し」とは、茅花の銀色の絮を揺するように吹く風のこと。そして、「アトランタ」とはアメリカのジョージア州にある都市です。「アトランタ」という地名の響きが「茅花流し」という季語の世界に吹き込んでくることに、非常に新鮮な思いがありました。「アトランタより巨船」とは、アトランタを出発して日本に到着した客船でしょうか、貨物船でしょうか。茅花流しの風に乗って、という印象が優しくもありダイナミックでもあります。
 一読、リズムが気になる人もいるかとは思いますが、「茅花流しや/アトランタより/巨船」の773の調べが独特の味わい。足してみると17音になるという工夫も誉めたいところです。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』5月15日放送分)


初夏や跳ねては沈む野の兎 でこはち
 試みに「野兎の跳ねては沈む夏はじめ」と、語順を替えてみましょうか。述べている意味は同じですが、一句の勢いは全く違います。掲出句の上五「初夏や」という切字の勢い。中七「跳ねては沈む」という描写のリアリティ。下五「野」という広さを思わせてからの「〜の兎」という生き物への焦点の絞り方。この語順が一句の世界を生き生きと立ち上がらせているのです。あるべき言葉が見事に選択され、適所に置かれていることが手に取るように分かる作品。
 「跳ねては沈む野の兎」は「初夏」のひかりを弾きながら、あっという間に「野」のなかに消えていきます。その速さがまた「初夏」の躍動感となって、読者の心に清々しく印象付けられます。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』5月15日掲載分)


左手は和音右手は揚羽蝶 藤本智恵子
 「左手は和音/右手は揚羽蝶」と対句表現になっている一句です。最初は、ピアノにも「揚羽蝶」にも大いなる好奇心を持つ子どもの表情を詠んだ句かなと思っていたのですが、何度か読んでいるうちに、全く違った表情がみえてくるようになりました。
 この17音は、一つの詩的定義かもしれません。「左手は和音」を響かせるために存在し、「右手は揚羽蝶」を愛でるために存在するのだよ、という詩的真実。「左手」が奏でる厳かな「和音」とともに、美しい「揚羽蝶」が生まれでる瞬間を見せられたかのような静かな高揚感。「揚羽蝶」もまた、神の造化の「和音」によって生まれた類い希なデザインであるのかもしれません。
(平成26年度NHK全国俳句大会 夏井選および大会特選句)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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会話形式でわかる
近代俳句史超入門


第12回
文 構成 青木亮人

 大学で俳句を研究する青木先生と、その教え子で俳句甲子園の出場経験もある大学生の俳子さんが雑談を交えながらの近代俳句史超入門。

「ホトトギス」を売るために

 二人は大学の教室で高浜虚子について論じあっています。

虚子の才能

青木先生(以下青) ところで俳子さん、自分に才能があると感じたことはありますか。
俳子(以下俳) へ? 唐突ですね。そりゃもう、我ながら芸術なセンスを感じたことは一度や二度じゃござんせん。後は開花を待つのみ、そのため今は修行中ぞなもし……(目が泳ぐ)
青 突然のことで動揺したのか、言葉遣いの時空が歪んでいるような。確かに、正面切って問われると答えにくいかもしれませんね。
俳 正直なところ、自分にどんな能力があるかなんて分からないのが本当のところです。ドラゴンボールのスカウターとかで計測できればいいんですけど。
青 懐かしい……敵の戦闘力を数値で計れるアイテムですよね。でも、文才が数値に出ると残酷かもしれませんよ。百点満点で「蓄積35 論理力27 ひらめき9 思いつき79」とか、なかなか複雑です。
俳 ソレハ私デスカ?(目の周りに青白い炎)
青 怖い……お稲荷さんの化生みたいですね。そうじゃなく、例えばの話ですよ。こんなことをお聞きしたのは、虚子の小説家に関して考えたかったからです。
俳 (炎が消える)ほほう……虚子さんは自分のことをどう思っていたか、ということですか?
青 そう。ノイローゼ気味だった友人の夏目漱石が凄い勢いで小説を書き始め、そのいずれもが面白かったので虚子は驚き、自分も「ホトトギス」に小説を掲載し始めしまた。でも……
俳 「ホトトギス」の売り上げが急に落ちたんですよね?
青 ええ。それは虚子の小説云々というより、色々な原因が一気に重なってしまったんです。「ホトトギス」は経営危機の手前まで急減したとか。
俳 また凄い……ゲーム業界みたいですね。
青 「文学」がそもそも浮草稼業ですから、現代のゲーム業界とあまり変わらないかも。そういう浮き沈みの中で虚子は小説を諦め、嫌々ながら俳人の道を再び歩もうとします。その彼がドラゴンボールのスカウターで自分を診断したら、「……」と感じたでしょうね。
俳 「小説―凶 俳句―吉旅行―騒ぐな お産―安し 母子とも順調」とか?
青 それ、初詣のおみくじじゃないですか。違いますよ。虚子のスカウターには、「小説の才42 運11/俳人の才97 運99」等の数値が映ったように思います。夢見る小説家の方はどれも低く、俳人関連は望まないのに高い数値ばかり。やりたいことと自分の持っている才能が一致せず、虚子は面白くなかったはずです。
俳 えー、いいじゃない! 小説がダメでも俳句が凄ければ、文学者としてやっていけるじゃないですか。
青 他人から見るとそうかもしれませんが、憧れの道ではいずれもうまく行かず、特にこだわりのない俳句では大体が成功してしまう。宿命が定まっているかのように虚子は俳人の道を渋々歩まざるをえない出来事が次々に起こると、「『努力が報われる』なんて嘘だ、人は結局定められたように生きるしかないではないか」と諦めに近い心境だったのではないでしょうか。
俳 例えばどんなことが起きたのでしょう? ある夜、夢枕に俳句の神様が立って「明日からお前の話す言葉は大体五七五になるから、それで句を作るのじゃ」とお告げがあったとか。
青 そんなムチャな……日常生活ができなくなりますよ。例えばですね、夏目漱石が「ホトトギス」に『吾輩は猫である』等を発表したおかげで売り上げが急増し、虚子も勢いを得て自作小説を発表し始めたんですが、漱石が明治40(1907)年に朝日新聞社に入社してしまいます。

小説家虚子の不運

俳 別にいいじゃないですか。私は止めませんよ、どうぞ入社して下さいな。
青 そうはいかないんです。漱石が東京帝国大学教員を辞職して朝日新聞に入る時、相当の高給が約束されていました。当時の帝大教員は給与も名誉も凄かったので、朝日はそれ以上の高給を払って漱石を迎えたわけです。その代わり……
俳 地下に軟禁されて鉄仮面を被せられ、小説を書き続けるように鞭打たれた?
青 それ、軟禁でなくて完全監禁じゃないですか。そうでなく、他の新聞社に小説を書かないこと、雑誌等もあまり良くない、「ホトトギス」には例外的に発表してもよいが、できれば朝日だけで……と条件がありました。朝日専属作家になってね、ということです。
俳 「ホトトギス」は大丈夫なんですよね。なら、問題ないじゃないですか。
青 ただ、漱石は律儀というか真面目な人なので、朝日入社後は「ホトトギス」に主立った小説を発表しなくなります。その途端、「ホトトギス」の売り上げが落ちてしまった。
俳 うーん、虚子さんや他の作家さんの小説だけでは魅力がなかったということでしょうか?
青 そう。虚子は京都や奈良を舞台にした『風流懺法』(解説1)『斑鳩物語』(解説2)等を明治40年に発表し、それなりに評価もされました。若き日の志賀直哉は『斑鳩物語』に感銘を受け、作品に描かれた奈良を訪れたほどです。ただ、作風が地味な上に文章が冗長で、雑誌の売り上げを保つほどではなかった。それにこの頃の「ホトトギス」の主流は完全に小説で、俳句欄は脇役と影が薄くなり、明治41年に始めた虚子選雑詠欄も翌年には廃止。「ホトトギス」に集う俳人が次第に離れた上に、他の文芸誌と変わらない小説中心の誌面を見た一般読者は「それならもっと面白い小説が載る雑誌を読もう」となり、読者離れが加速します。
俳 泣きっ面に蜂どころか、熊や狼にも次々と襲われて逃げようと飛び込んだ沼はヒルの巣で、絶叫した口に鳥のフンが落ちてくるようなものね。
青 いや、そこまではひどくない気が……話を戻すと、虚子にとって「ホトトギス」の売り上げは生活に直結する大問題でした。彼は雑誌経営や俳書出版等(解説3)で生計を立てていたので、家族を養うために「ホトトギス」を売りさばく必要があった。だから良い小説を発表して雑誌を売ろうとするも、うまく行かない。ついに明治四五年、「ホトトギス」に雑詠欄を復活し、同年に大正と元号が変わった後は俳句専門誌として舵取りの変更を余儀なくされたんです。
俳 うーん。「夢破れて俳句あり」ぐらいの心境でしょうか。
青 そうですね。虚子は小説を散々書いた後に俳句界に戻ってきたので、俳句への過剰な想いが稀薄でした。過激な文学実験や斬新な概念等を表現したければ他の文学でやればよい、俳句は有季定型で表現できることだけを詠めばよいのだ、それが他ジャンルにはできない俳句独特の特徴……と冷静に判断できたんです。一言でいえば、虚子は俳句に醒めた専業俳人だったんですよ。ここが他の俳人とかなり違うところです。
俳 でも、虚子さんは俳句が嫌いではなかったんですよね?
青 もちろん。ただ、本当に好きだったのは小説で、俳句はそこまで熱中できなかった。虚子は小説を選びたかったのに、俳句に選ばれた人生を歩むことになったんです。
(続く)


青木亮人(あおき まこと) 1974年、北海道生まれ。現在、愛媛大学准教授。著書に『その眼、俳人につき』(邑書林)など。



解説


解説1
いずれも明治40年、「ホトトギス」に発表。虚子は明治40〜44年の間、小説執筆に集中し、俳句にはさほど関わらなかった。
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解説2
いずれも明治40年、「ホトトギス」に発表。虚子は明治40〜44年の間、小説執筆に集中し、俳句にはさほど関わらなかった。
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解説3
この時期、虚子は俳書堂を立ち上げて俳書出版も手がけ、「国民新聞」文芸部長にも就くなど、文学を本業としていた。
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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第51回 文と写真 暇人

mhm定時総会 〜新代表登場〜
 皆様いかがお過ごしでしょうか。気が付けばこのmhm通信も50回を過ぎていました。これも皆様のおかげです。ありがとうございます。
 去る4月28日、マルコボ.コムにてmhm定時総会が行われましたので、まずは総会を経て承認された今年度の主な事業をご紹介します。

日暮屋の蕎麦を食べようプロジェクト
 今年度の目玉事業かもしれません。最近めきめきと頭角を現している日暮屋さん、実は蕎麦打ちの名人で、俳号である「日暮屋」も趣味でやっていた蕎麦屋の屋号からきているとのこと。ならば蕎麦を一から育てて、日暮屋さんに蕎麦打ちをしてもらおうと企画しました。まあ以前本誌でやった「俳句米」の蕎麦版と考えていただければ……。この事業は8月頃に本格稼働する予定です。詳細は次号以降、本誌やmhmのブログ、facebookにてご案内します。

松山城歳時記化計画データ整理
 過去2年間、松山城の動植物を随時調査してきましたが、データベース化が遅れている状況でした。今年度は調査は休止し、データ整理を随時行っていきます。

季語当てゲーム(仮)のルール作り
 先月号に掲載された季語当てゲームのルール作りもmhmで随時行うことになりました。。
 その他、「白石の鼻夕日見学会吟行」、「白猪の滝まつり句会ライブ」、「まる裏俳句甲子園」、「内田パン句会ライブ」、「道後花見チャリティー句会ライブ」といった毎年恒例の事業も行います。また今年新たに計画したのが「日帰り旅行企画」。これは会員限定になりますが、開催できればいいなと考えているところです。
 次に新代表について。この一年、定例会等で新代表の人選を行ってきました。その中で挙がったのが、一年前に縁あって松山に移住してきた熱い若手俳人です。そしてこの度、新代表として正式に選出されたのが、若狭昭宏氏です。彼ならばmhmに新しい風を呼び込んでくれることでしょう。また、これまでにも活躍してくれていた游士氏が理事に昇格、4月より松山に移住した蓮睡氏が会計に就任と、若手たちを幹部に迎えました。今後のmhmが楽しみです。
 さて、従来mhmでは入会費のみをいただき、年会費は無料で活動を行っておりましたが、今年度より活動の充実を図るため、入会費を無料とした上で、継続参加意思確認の意味を込めて毎年1000円の年会費をいただくことになりました。現会員の方で継続希望される場合、今年度につきましては2016年3月31日までに年会費をお納め下さい。未納の場合は次年度に自動退会となりますのでご注意ください。新規入会希望の方は入会時に年会費のお支払いをお願いいたします。

 最後にこのmhm通信ですが、今年度も本誌のスペースをお借りして、時々著者を変えながら、継続してまいります。目指せ100回ということで、よろしくお願いいたします。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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句集の本棚





『犬の眉』 岡田由季 著

  父と子が母のこと言ふプールかな
  そら豆や楽しく終はるずる休み
 著者の第一句集は生きるということが楽しく感じられる瞬間や物事の交差の不思議を丁寧に掬い上げている。
  美術館上へ上へとゆく晩夏
  脳を横にしてゐるバレンタインデー
  卒業を小部屋に待つてゐたるなり
  抜糸の夜地につきさうな長なすび
  自宅兼事務所のまはり田水沸く
  糸蜻蛉出てくる立体駐車場
  祭の夜ひんやりとある地下のバー
 美術館そのものが立体的な美術品のような風合い。脳が横になるという感覚。卒業式を待つ別室の微かなそわそわ。祭の夜の喧騒と地下のバーの対比。それらが実にさりげなく洒脱に描かれている。
  手の届く範囲きれいに蟻地獄
  順々に良き日を選び鴨帰る
  飽きられて風船ほつとしてゐたり
  遠目にもにこにこ秋の田を来たる
 描かれるものに対して表現が独特の陽気さを纏っている。
日常を新しく感じられるようになるような気分をもたらしてくれる一冊である。「炎環」「豆の木」。 
(書評:岡田一実)

現代俳句協会(2014年初版)
定価 1500円(税別)
全183ページ



『昨日触れたる』 高勢祥子 著

  春宵の商店街は濡れて異境
  錆びてゆくものの味して花の雨
  空蝉の背より零るる記憶かな
 著者の第一句集は第三回北斗賞を受賞した「火の粉」を下に編まれたものである。その作風は清潔なエロチシズムに加え詩的感覚に溢れている。
  爽涼や机の裏の腿触るる
  弟の使はぬ茶碗夕野分
  砂時計裏返すとき柚子の香す
  秋風を行くは白紙の背中かな
  鶏頭の濃くて自づから崩る
  眉薄く描く木曜花芒
  鶏頭花休んでみたら長い昼
  冬の水の中でますます手の乾く
  探梅や拳くらゐな海見えて
  蝌蚪に脚豊穣の夜の始まりぬ
  暑き夜は木の根のあぐら組むやうに
 感覚的な手触りや観念的な思考をあるときは写実的にあるときは抽象的なままに読者に手渡してくれる一冊である。
 帯文は詩人の八木幹夫、序文は今井聖。「鬼」「街」。
(書評:岡田一実)

文學の森(2013年初版)
定価 1714円(税別)
全171ページ



このコーナーで紹介した句集は、100年俳句計画編集室にて閲覧できます。


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えひめ5時間リレーマラソン参加報告




 走ることで俳句を布教するという、100年俳句計画マラソン部。4月25日開催のえひめ5時間リレーマラソンに参加しました。
 当日は、初夏を思わせる快晴。部長兼監督の逆ベッカムさんの元、7名のランナーがたすきを繋ぎ完走を目指しました。
 1周900Mのコースをひたすらぐるぐる回りました。トラックコースの弾む感覚が新鮮で、気持ちよく走ることが出来ました。
 途中応援団にテレビの取材が来たりして、マラソン大会に「俳句」というだけで注目を浴びました。
 最終結果は、総合468チーム中128位、一般部門291チーム中78位とまずまずの成績でした。
 次回は10月10日(土)に開催のお城下リレーマラソンに参加予定です。興味のある方は、編集室キムまでお問い合わせ下さい。


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俳句の街 まつやま
俳句ポスト365


協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


優秀句
平成27年4月度


【水草生う】
《地》
水草と千の光の泡の生ふ こま
水草生ひ水草に雨の打つ音も  えらいぞ、はるかちゃん!
水草生ふボールは沼の臍となる とりとり
ほくほくと田の神笑い水草生う  カンガガワ孝川
水草生ふばん馬百貫越えてをり  三島ちとせ
水草生ふ情死のきはもそののちも とおと
わかれましよ水草生うてをりますし  渡辺郁子
引継ぎの一つ水草生う水槽 ぐわ
水草生う千代田区千代田一の一 四万十太郎

《天》
老頭兒の憩う長椅子水草生う  竹庵


【花種蒔く】
《地》
痒さうな土に花種蒔きにけり ハラミータ
花種蒔く遊具の影が届く場所  三島ちとせ
花種を蒔きて仔犬を睨む妻  ちびつぶぶどう
花種を蒔く件マロン去勢の件 隣安
新しき校歌斉唱花種蒔く うに子
花種を蒔く学校へ行けぬ子と 矢野リンド
几帳面に花種を蒔く鶴を折る こま
雲のやうに老いてふうせんかづらまく  紆夜曲雪
十四五本欲しくて鶏頭を蒔きぬ  ぼたんのむら

《天》
蒔き切つてまず花種の袋咲く  不知火


【花冷】
《地》
快晴の夜の青鈍や花の冷 野風
花冷えや湯気立ち上る中華街 加和志真
マウスの青き光芒花冷の書斎 鈴木麗門
採譜するペン先の音花の冷え  えらいぞ、はるかちゃん!
電気むさぼる花冷のドライヤー  中原久遠
彼方漂う花冷えの呼鈴 ミル
壁紙に天使の眠る花の冷え 紆夜曲雪
船便のタグの破れて花冷ゆる 小雪
花冷の太陽の塔唸り出す カリメロ

《天》
花冷やブルーチーズの黴ぴりり  トポル


【暖か】
《地》
朝鳥は水の声帯あたたかし めいおう星
暖こうなったと機関長手洟 理酔
暖かや造花は水を欲しがって 紗蘭
暖かやさざれ石とはこれなるか あい
暖かや畑へラヂヲの「のど自慢」  とうへい
あたたかや紙縒きれいに縒れました  小市
暖かや同じあだ名を子がもらふ  四万十太郎
二駅も乗り越したんだ暖かだ せいち

《天》
鯉と鯉ぶつかる匂ひあたたかし  小木さん



6月の兼題

投句期間:5月14日〜6月3日
六月(ろくがつ)【仲夏/時候】
陽暦の6月。立夏が5月上旬にあたるので、6月は仲夏の時候であり、いよいよ夏らしくなってくる。本州・四国・九州では中旬頃から梅雨に入り、蒸し暑くなる。

投句期間:6月4日〜6月10日
金魚玉 (きんぎょだま)【三夏/人事】
玉状に作られたガラスの器に金魚を入れ、軒先などに吊して、その涼感とともに楽しむ。最近では金魚鉢や水槽で飼うことが主流となり、見かけることが少なくなった。

投句期間:6月11日〜6月17日
南風 (みなみかぜ)【三夏/天文】
夏に南方から吹く暖かな季節風のこと。「みなみ」とも読む。また、地方によって「はえ」などというところもある。

投句期間:6月18日〜6月24日
目高(めだか)【三夏/動物】
体長約3cmのメダカ科の淡水魚。川や湖沼に群れ泳ぎ、観賞用として水槽で飼われたりもする。普通は背中が淡褐色をしているが、白色、緋色の変種もある。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)

※募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。



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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成27年3月度


【春帽子】
春帽子象のはな子に会ひにゆく てん点
キリン舎の前や小さき春帽子 伊佐
春帽子マシュマロのごと青空のごと  旧重信のタイガース
耳と尻尾がついている春帽子  ポメロ親父
何とまぁ春帽子にあるまじき匂い  だんご虫
春帽子モーツアルトの着信音 田山
ジムノペディかかるや春帽子はずす  天玲
春帽子ローランサンの乙女たち 流星
セザンヌの風来て春帽子ふわり 緑の手
お妃の名は花の名や春帽子 亜桜みかり
タラップ降りる首相夫人の春帽子  マミー
春帽子振り歓声の沸きあがる 雪花
黙祷の両手で掴む春帽子 逆ベッカム
キャパの撮るパリ開放の日の春帽子  太郎

《天》
春帽子大聖堂を駆け上がる  あねご


【石】
歩幅合わぬ石段海へ初蝶来 露玉
春夕焼河原の石は眠るころ のり茶づけ
石柱の魚の字跳ねて暖かし あねご
石筍に時の雫や鳥交る ほろよい
雪解けやころがる声のような石 牛後
朧夜の産み落とされたような石  亜桜みかり
石棺を開けば青む花の冷え 緑の手
棺に都忘れ入れ釘打てと石渡される  日暮屋
春の雲役目を終えし力石 波乃
路傍の石に菫はささやきました  逆ベッカム
春暁や化石となる死ならない死 鞠月

《天》
花びらを映して石もまた鏡  天玲


【海松】
ウエットスーツ打ち上げられた海松黒く  ちいち
潮を待つ海松へ雨粒叩きつけ 痛快
海松提げて危なき石を渡りけり 尽日子
ゆるゆると海松奉る禰宜の歩 マーペー
海松採るや先は葉山の御用邸 雪花
法皇の流刑の島や海松寂し  ミスター菊池
銅鑼運びたる風の中海松の房 てん点
松婆を信じるならばこれが海松  だんご虫
海松そよぎけり海底に日向あり マイマイ
海松食うて我も海より来しと思う 牛後

《天》
打ち上げられて海松はるかはるかに平壌府  ねこ端石


【アネモネ】
アネモネは空を掴みてまた眠る  矢野リンド
月蝕のアネモネひかりはじめるよ 鯛飯
アネモネや夜のピアノは闇の箱 樫の木
アネモネや心臓模型に蝶番 妙
婦人会分裂アネモネ散りました  亜桜みかり
アネモネはたくさん嘘をつきました  恋衣
アネモネは夜更かしする子に刺さります  マーペー
アネモネは赤おやゆび姫は叫んだか  鞠月
アネモネや箱舟を押す長き雨 ほろよい
アネモネや番犬の名はケルベロス 笑松
アネモネや獅子と呼ばれし王の墓 太郎
アネモネや第三婦人から手紙 まどん
砲声はいつしかアネモネの記憶  マイマイ
アネモネや兵士が人へ戻るとき  矢野リンド

《天》
アネモネやシルクロードに端ふたつ  ポメロ親父



※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

投句締切:6月7日
梅雨茸 (つゆだけ)【仲夏/植物】
梅雨の頃の、適当な温度と湿度によっていろいろ生える茸の総称。食用とはならないものが多い。

黒鯛 (くろだい)【三夏/動物】
暗灰色をしたタイ科の魚。全長約40cm。海釣りの中でも特に人気があり、四国や九州では「ちぬ」とも称される。成長の過程で雄から雌へと性が変わる。

投句締切:6月21日

季語ではない兼題です。「研」という字が詠み込まれていれば読み方は問いません。季語は当季を原則として自由に選んでください。

行水 (ぎょうずい)【晩夏/人事】
たらいに湯を入れて、その中で体の汗などを洗い流すこと。庭先、物陰、浴室などで行う。中世までは、神事や仏事などの前に清らかな水で体を清めることをいった。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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100年俳句計画 掲示板



NHK総合テレビ(四国県域)
 「しこくエイト」内
『学生俳句チャンピオン決定戦2015』
 6月5日(金)19時30分〜20時43分

NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  6月2日 16日 30日(火)11時40分〜

あいテレビ(TBS系列、全国)
 『プレバト!!』
   隔週木曜 19時〜20時49分
※組長がゲストの俳句ランキングづけで出演! 放送日番組欄を要チェック!

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「十薬/梅雨茸」5月31日〆
   「牛蛙/夏の日」6月14日〆
   「人参の花/朝曇」6月28日〆
 インターネットでも配信中。詳しくは番組webサイトへ。
  HP http://www.baribari789.com/
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)、住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。朝日新聞松山総局(790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。

愛媛県《吟行ナビえひめ》句&写真
 俳句選者:夏井いつき
 写真選者:キムチャンヒ
【募集期間】毎月1日〜 25日前後締切
【応募先】http://www.iyokannet.jp/ginkou/
【問い合せ】愛媛県観光物産課
TEL 089ー912ー2491

本阿弥書店「俳壇」(1月号より連載)
 『十二か月添削教室』
 7月号 6月14日発売
*誌上で俳句を募集しています。


句会ライブ、講演など

九州北部税理士会博多支部講演会
 6月4日(木)

済美平成1年生句会ライブ
 6月5日(金)

フォーラム祈りのかたち四国遍路と高野山〔パネリスト出演〕
 6月6日(土)13時30分〜16時15分
 ひめぎんホール(サブホール)

宇摩法人女性部会20周年記念講演会
 6月18日(木)

大阪 浅海電気100周年記念講演会
 6月19日(金)

平成27年度インガットホール活用事業 〜今、一番受けたい授業〜(久留米)
 6月27日(土)

白萩会主催「夏井いつきの句会ライブ」
 6月28日(日)13時会場
〈場所〉OCAT(JR難波駅上)4階 難波市民学習センター講堂
申込 090-3843-4000(時雨)
メール hakushu-kai@hotmail.co.jp



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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

中町とおと『さみしき獣』
みさきまる 貴誌スタッフの皆様、いつもありがとうございます。また、中町とおと様の「さみしき獣」を、大変ありがとうございました。
 このところ、難破気味のみさきまるだったのですけれど、新鮮な、素晴らしい燃料をいただいたおかげで、なんとか持ち直すことができました。貴誌の皆様、中町とおと様、心から感謝申し上げます。
「俳句新聞いつき組」様からもいただいたので、二冊になりました。
一冊は誰に贈ろうかと、楽しく思い巡らせているところです♪
 昨年の閏月の影響が残っているのでしょうか。まるでジェットコースターに乗っているような天候ですが、皆様どうか、御身ご大切にお過ごしくださいませ。
編 『さみしき獣』、すごくエネルギーをもらえる句集でしたね〜! もう一冊もどなたかのエネルギーとしてお手に渡りますように〜♪

桜はどこへ消えた?
エノコロちゃん スタッフのみなさん。先生方いつもいつもありがとうございます。さてさて、満開の桜には非情な菜種梅雨の長雨で散り急ぎ残念でしたね。もう〜今から、来年の桜に期待しましょうね。(切り替えの早い私エノコロちゃんでぇーす。)
編 季節が遅れて咲く枝垂桜なんかも散りが早かった気がしますね。山桜とかもかな?

うに子 今年の桜はあっという間に散ってしまいましたが……いつき組新聞花の句もいろいろな切り口で楽しいです。
編 今年の桜が早かった分、花の座の百花繚乱を愛でましょうぞ〜。そうこうしてるうちに蛍の季節がきて蛍の座が!?

おもしろアイテム
北伊作 伊予鉄土橋駅横の南海カメラさんで立体メガネを発見。撮影用のカメラも有ります。無料で見せて呉れますよ。カメラも貸して呉れます。昔を思い出して見てください。楽しいですよ。気さくな奥さんがカメラや写真の話をして呉れます。
編 立体メガネって赤と青のビニール貼ってるやつ? 昔マンガ雑誌の付録になってたような。え、最近のは違う?

ラジバリ「俳句チャンネル」
さとう七恵 こんにちは。本日、キムさんのイラストなるポップで素敵なワタクシの句入りはがきが届きました(2枚も!)。ありがとうございます♪ うれしくて早速ギャラリーファイルに収めました。これからもますますがんばってください。
編 FMラジオバリバリの「俳句チャンネル」ですね! 優秀作はイラスト化されてお届けされるのです。投稿は39ページの左上、FMラジオバリバリの項目をチェック!

へたうまラブレター
誉茂子 「ヘタウマ仙人」様  いつもヘタな句を目一杯褒めていただき本当にありがとうございます。お陰様で自信がついたような(?!)…今日この頃です♪
編 ローマは一日にして成らず、へたうまも……たぶん。

天の句いろはカルタ
南亭骨太 カルタの長い拙文を採用いただき有難うございます。初めて他の方の句について文章を書きましたが、掲載されてから冷や汗が出ました。ヤハリJAZZ屋はその場限りで宙に消えてゆくジャンルのほうが丈に合ってるような。
編 またまたご謙遜を〜!(笑)お互いに選びあうと選ばれた方も嬉しいし、幸せの連鎖なのであります。今後も機会あればぜひ!

ここだけの投稿の裏のウラ
元旦 昨晩投句するつもりが、うたた寝というか爆睡してしまい、21日になってしまいました。間に合えば、よろしくお願いいたします。ぺこり。
しんじゆ 遅くなっちゃいました。すみません。
編 ここだけの話、とりまとめを開始するのは翌朝ですからね、21日の朝ね。ここだけの話、ね……。

組員の生活
KIYOAKI FILM ゴールデンウイーク、一人で出かけるのが多かったボクであるが、父と歩いたりした。「子規歌集」読めなかった…。
編 子規の「毎年よ彼岸の入りに寒いのは」的な「父の言葉おのずから句になり〜」みたいなことが起きたり。しない?

柊つばき 高三になった孫と高一になった孫にお金がかかり、かなりきつい!! 食べたいものもがまんして三日で二キロへりました。(今までどんだけ食べてた?)お金をかけずにヤセれるかも?
編 わーお、図らずもダイエットに……。逆に、高校生はもりもり食べますからね……。

喜多輝女 暑かったり寒かったりの変な天気のおかげで冬には引かずに済んだ風邪を引いてしまいましたがあっという間に春は行ってしまったようです。梅雨までの暫しの爽やかなときを楽しみましょう!
編 あらら、お風邪はその後大丈夫でしょうか。梅雨寒なんて季語もありますしね。楽しみつつも養生してまいりませう。



100年俳句計画誌上編集会議

 先月号でお伝えしておりました。「100年の旗手」リニューアルのお伝えについて。今月号にてお伝えする予定でしたが、もう少々企画の練り上げが必要なため、次号以降でのお伝えとさせて頂きます。読者が作品を発表できる場として実りあるものとなるよう企画を進めておりますので、楽しみにお待ち頂ければ幸いです。 (編集室)


 この欄への提案、質問、要望、その他は、100年投句計画投稿時のフォームに書き添えてお送り下さい。また、メールでの投稿も可能です。メールで送る際は件名を「魚のアブクへ」としてお送り下さい。

メールアドレス
 magazine@marukobo.com(編集室)



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鮎の友釣り

203
俳号 こま
とおとさんへ 東京句会で美しく妖しい一句に出会ったら、それはとおと様の甘い罠。中毒性にご注意を。官能的な作風ですが作者は楚々とした着物美人。このギャップも魅力ですね。今後ともよろしくお願いします。

俳句との出会い 破障子さんの手引きで、6年前に仕事(オトナの補習授業)を契機に俳句と組長に出会いました。俳号は、本名の「真理子」から「理屈の理」を捨ててひっくり返して平仮名に開きました。本名の「私」は平凡な社会人で「銀化」の中原道夫先生に粛々と師事していますが「こま」さんは自由でやんちゃ。作風も違います。最近は日常まで「こま」さんに浸食されつつある「私」。社会人として大丈夫なのか? ほほほほほ(効果音→ゴゴゴゴゴ)。俳句ポスト365での五曜日達成2回がプチ自慢です♪

写真 松山城でよしあき殿と♪

次回…立待さんへ 立待ブラザーズの頼れるキャプテン。その懐の広さがすてきです。な、なんと? 学生時代の夏井組長をご存じですと!? 教えて、立待さん!


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告知


俳都松山宣言
〜十七音があなたを変える〜
大阪&東京にてイベント開催!

お申し込み方法
「キャラバン大阪会場希望」または「キャラバン東京会場希望」と明記し、郵便番号、住所、代表者氏名、電話番号、申込人数を添えて、松山市役所文化ことば課まで、郵送、電話、Eメールでお申込みください。

お申し込み/お問い合わせ先
松山市役所 文化ことば課
〒790-8571
松山市二番町四丁目7番地2
電話:089-948-6952
Eメール:haito@city.matsuyama.ehime.jp




俳句新聞いつき組
4月新規ご購読お申し込みの方には
2号(2015年4月号)よりお届けします!
※3号は2015年7月中旬発行予定です!

2015年「雪の座」決定!&「花の座」ノミネート20句

大好評「プレバト!!」のちょこっと裏話

そのほか内容充実のフルカラー全8ページでお届け!

※1号より購読希望の方は、事前にその旨をお伝えください。

A4サイズ8ページフルカラー仕様
参加登録料(※初回のみ)1,000円(税込)
年間購読料 3,500円(税込)/年4回発行
*年1回、夏井いつきの句集シングル付録あり。

まずは無料の0号「創刊準備号」と購読のご案内をお送りいたします!
※0号「創刊準備号」を既にお持ちの方は、0号に掲載しております案内にしたがって購読料をお支払いいただくことで、正式な購読の申込となります。

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「俳句新聞いつき組」購読希望の旨、本名(ふりがな)、俳号(無ければ不要)、郵便番号、住所、電話番号、生年月日を明記して、下記のいずれかの方法で申し込んでください。

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  790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
  有限会社マルコボ.コム
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 FAX番号:089−906−0695

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編集後記


2012年秋、俳句対局第一回龍淵王決定戦を開催してから、2年半。ついに、俳句対局が大阪と東京に進出することになった。
 今回の特集第三回龍天王決定戦では、その先駆けとして、大阪からきむらけんじさんと曾根毅さんに審査員として参加して頂いた。
 今回の龍天王決定戦では、時間点の付け方を変えた。久しぶりに参加されたあねごさんからは、「相手の速さに左右されないので、やりやすかった。これならまた参加したいし、人に勧めたい」という言葉を頂き、とても励みになった。
 俳句対局は、まだまだ改良の余地のある新しいゲーム。よりよいゲームにするためには、絶対的に試合数が足りない。
 そこで今回は、会場に来て頂いた方には、実際に誰でも俳句対局を行えるグッズを用意し配布した。実際に作句をしたり、審査をすることで、このゲームの魅力や改善点がよく分かる。沢山の方にやって頂くことで改善され、沢山の方に愛されるものとなって行く。
 この新しい俳句の楽しみ方が徐々に広まってゆく様を、お伝えできる喜びは発案者冥利に尽きる。応援して下さっている方々全員に、感謝の念が尽きない。
(キム)


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次号予告 (212号 7月1日発行予定)


次回特集

俳都松山大使
夏井いつき!

5月14日、組長が俳都松山大使に就任しました。
そもそも、俳都松山大使って何?


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2015年6月号(No.211)
2015年6月1日発行
価格 617円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子