100年俳句計画3月号(no.208)


100年俳句計画3月号(no.208)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
ふかし桃 越智空子


特集
第13回
まる裏俳句甲子園
報告



好評連載


作品

百年百花
 めいおう星/三津浜わたる/松本だりあ/加根兼光


100年俳句計画作品集 100年の旗手
 マーペー/一心堂/七草


百年琢磨 津川絵理子

新100年への軌跡
 俳句/堀下翔/晶美
 評/都築まとむ/樫の木


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/加根兼光


へたうま仙人/大塚迷路

自由律俳句計画/きむらけんじ



読み物
愛媛県美術館吟行会/猫正宗
Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
ホンヤクサイホンヤク/翻田訳蔵
お芝居観ませんか?/猫正宗
百年歳時記/夏井いつき
近代俳句史超入門/青木亮人
もうひとつの俳句のまちづくり/岐阜県大垣市役所 川元彩
mhm通信/暇人
第4回大人コン結果速報

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




ふかし桃
越智空子

 桃の花がさくのは、愛媛では四月初め、旧暦の桃の節句の頃だ。新暦の三月三日に飾る桃は、寒いうちに固い蕾のついた枝を切り、蕾の傷まないよう束ねて水に浸け、湿度の高い温室で暖房をして、ようやく咲かせた桃なのだ。この作業を、花業界では「ふかし」と呼んでいる。花屋の私は、冷たい作業場でふかし桃と菜の花のセット束を作り始めると、もう春はすぐそこだと実感する。
 旧町内の友人で花木栽培農家のS氏は、このふかし桃栽培の名人だった。少しコワモテで毒舌で、でも本当は正直で心の優しい、信念を持って農業をしていた彼を、私たち夫婦は敬愛していた。そして突然の訃報は、数年前のふかし桃の季節に来たのだった。
 ふかし桃の優しいピンクの丸い花の季節が、今年もやって来た。彼の山の桃の木は、本当の春に向けて、静かに蕾を膨らませているだろうか。


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特集

第13回
まる裏俳句甲子園報告



 去る1月11日(成人の日の前日)、第13回高校生以外のためのまる裏俳句甲子園(以下、まる裏俳句甲子園)が、松山市立子規記念博物館にて開催された。
 まる裏俳句甲子園は、高校生の俳句甲子園を応援する目的で、開催しており、俳句甲子園には出られない、大人や子どもが参加できる大会である。俳句甲子園と異なり、1チーム3名で参加できる。
 例年通り、当日朝10時から予選を開始。27チームの全参加者が午後のトーナメント戦に向け、席題「成人の日」の句を制限時間5分で作り投句。その全ての句を公開審査で1〜4点に振り分け、チームの合計点が高いチームから、本戦に勝ち抜ける。
 予選の結果、ぴとり、ドクトルマイみん、みっくすじゅーす、PKR、8823、ニューグランドホテルズ、カルチャーショック、今西αの8チームが、午後の本戦に挑んだ。


本戦の結果

第一回戦 第一試合
 席題 皹(あかぎれ)

紅 みっくすじゅーす
(紗蘭、未悠、ひまわり)

白 ぴとり
(ピアノフォルテ、とりとり、理酔)

 先鋒戦
○紅 皹は治らぬ魔女でいるかぎり
×白 炊き出しやあかぎれ隠すように列
 紅 3 × 白 2 紅の勝ち

 中堅戦
○紅 見習いは無口皹は勲章
×白 皹が静かに目蓋閉じていた
 紅 4 × 白 1 紅の勝ち

 大将戦
○紅 皹をさわるテロリストの決意
×白 鞄持つあかぎれ痛き夜の往診
 紅 4 × 白 1 紅の勝ち

第一回戦 第一試合
みっくすじゅーすの勝ち
 常勝チーム「ぴとり」に対し、十代ならではの視点で皹を読んだ「みっくすじゅーす」が勝利。十代女子に、シニカルさを封印し、優しい口調で語りかけた理酔氏の姿に、何故か観客の心が洗われた。


第一回戦 第二試合
 席題 皹(あかぎれ)

紅 PKR
(西連寺ラグナ、桜井教人、ポメロ親父)

白 8823
(鞠月、恋衣、樫の木)

 先鋒戦
○紅 表彰式終へあかぎれの手をしまふ
×白 看護師の皹点滴を待ちぬ
 紅 4 × 白 1 紅の勝ち

 中堅戦
×紅 皹や形見の時計の竜頭巻く
○白 皹や薬指より抜く指輪
 紅 2 × 白 3 白の勝ち

 大将戦
○紅 皹の手で絞り切るオロナイン
×白 皹や石榴のやうな朝が来る
 紅 5 × 白 0 紅の勝ち

第一回戦 第二試合
PKRの勝ち
 オロナイン世代のPKRが、実感の句でまとめ上げ勝利。


第一回戦 第三試合
 席題 皹(あかぎれ)

紅 ニューグランドホテルズ
(エバンス伊藤、エルビン三木、曽根コルトレーン)

白 今西α
(ちこどの、たっくん、みおたむ)

 先鋒戦
○紅 後継は背中で眠る皹よ
×白 皹や珈琲マグを磨きたる
 紅 4 × 白 1 紅の勝ち

 中堅戦
○紅 弔いの日の皹や顔洗う
×白 皹やトランプを取る手の細き
 紅 5 × 白 0 紅の勝ち

 大将戦
○紅 皹のなかなか覚めぬ夢のごと
×白 皹や弁当箱の一つ増え
 紅 3 × 白 2 紅の勝ち

第一回戦 第三試合
ニューグランドホテルズの勝ち
 関西からの刺客、ニューグランドホテルズが、俳句甲子園現役高校生を含む今西αを圧倒勝利。ジャズジャイアンツの名前を頂きながら、何故かブルースブラザーズのコスプレをしている「ニューグランドホテルズ」の正体や如何に?


第一回戦 第四試合
 席題 皹(あかぎれ)

紅 カルチャーショック
(福原音、武田歩、海成)

白 ドクトルマイみん
(ふじみん、マイマイ、ドクトルバンブー)

 先鋒戦
×紅 皹やあいつはまだ生きておる
○白 皹に顎乗せ妻の不在かな
 紅 0 × 白 5 白の勝ち

 中堅戦
○紅 皹や山脈少しづつ動く
×白 治りつつ皹のまた皹に
 紅 4 × 白 1 紅の勝ち

 大将戦
○紅 皹ができてもコーヒー缶をふる
×白 膝擦りむき母の皹傷庇ふ
 紅 4 × 白 1 紅の勝ち

第一回戦 第四試合
カルチャーショックの勝ち
 予選を第一位で突破し、昨年の現代俳句新人賞受賞者を擁する「ドクトルマイみん」が、中学生チーム「カルチャーショック」にまさかの敗退。敵は強烈な二日酔いだったか!? それとも世代交代の現れか!?


準決勝戦 第一試合
 席題 青

紅 みっくすじゅーす
(紗蘭、未悠、ひまわり)

白 PKR
(西連寺ラグナ、桜井教人、ポメロ親父)

 先鋒戦
○紅 青年団解散冬銀河のかたち
×白 散骨の海へ青き冬の月
 紅 4 × 白 1 紅の勝ち

 中堅戦
○紅 冬の朝明るい青を吸いこんで
×白 青海波模様の風呂敷の初染
 紅 4 × 白 1 紅の勝ち

 大将戦
○紅 青りんごは思ふ氷への距離
×白 天狼星のかの群青を掌に包む
 紅 3 × 白 2 紅の勝ち

準決勝戦 第一試合
みっくすじゅーすの勝ち
 「みっくすじゅーす」の快進撃が止まらず圧勝。優しく語りかけるPKRのおじさんたちが、全員学校の先生に見えてきたのは、私だけではないはず。


準決勝戦 第二試合
 席題 青

紅 ニューグランドホテルズ
(エバンス伊藤、エルビン三木、曽根コルトレーン)

白 カルチャーショック
(福原音、武田歩、海成)

 先鋒戦
○紅 青空と繋がっている冬菫
×白 冬空の青の絵の具が不足する
 紅 4 × 白 1 紅の勝ち

 中堅戦
○紅 冬鴉青き夜空へ羽ばたきぬ
×白 無機質な冬が過ぎゆく青果店
 紅 3 × 白 2 紅の勝ち

 大将戦
○紅 青天にして小鳥墜つ紙芝居
×白 死にかけの青鳴く冬の呼吸かな
 紅 4 × 白 1 紅の勝ち

準決勝戦 第二試合
ニューグランドホテルズの勝ち
 審査員の青木亮人氏に「第四回芝不器男俳句新人賞受賞者を擁するチーム」と次第に素性が明かされるニューグランドホテルズが、果敢に挑戦してきた「カルチャーショック」を大人の力を見せつけ勝利。


決勝戦
 兼題 雪

紅 みっくすじゅーす
(紗蘭、未悠、ひまわり)

白 ニューグランドホテルズ
(エバンス伊藤、エルビン三木、曽根コルトレーン)

 先鋒戦
×紅 暗殺の日の空の雪のひとひらと
○白 雪の夜の芯まで赤き燐寸棒
 紅 2 × 白 3 白の勝ち

 中堅戦
○紅 閉じこめるための雪だから静か
×白 子も親も眼鏡してゐる雪丸げ
 紅 4 × 白 1 紅の勝ち

 大将戦
○紅 新しい嘘の重さや雪ぼとり
×白 雪しまくときを怠けず鳩時計
 紅 4 × 白 1 紅の勝ち

決勝戦
みっくすじゅーすの勝ち
 事前に応援団から「大人の言葉の質問は罠だから、まともに答えるな」と、アドバイスを受けていた「みっくすじゅーす」メンバー。強者相手に議論を切り抜け、俳句勝負に持ち込んだとこに、勝機があった。対戦句はそれぞれ、点数ほどの差の無い、甲乙つけがたい、まれに見る好ゲームとなった。


みっくすじゅーすより優勝のことば
 紗蘭
 昨年までは本選にさえ行けなかったのですが、今年は三位通過できただけでなく、優勝することができて本当にびっくりです。ひまわりと未悠のマシンガンのようなディベートと手榴弾のような俳句のおかげだと思っています。私は二人の勢いに圧倒されつつ、胃の痛みに耐えつつ、皆様の応援のおかげでなんとか戦い抜くことができました。ありがとうございました。

 未悠
 今まで何度挑戦しても、(予選通過チームを決める)トランプに泣かされていたので、今年はステージに上がれると分かったとき、本当に嬉しかったです。ステージに上がれると分かったとたん、物凄く緊張してきて、出場したことを後悔しましたが、どうせ負けるなら今できる1番良い句で負けたいと思って、作句を頑張りました。的確な質疑応答が出来る紗蘭ちゃんと、しっかりきりこんでいくひまわりちゃんのお陰で、優勝することができました。頼もしい2人と応援してくださった方々、本当にありがとうございました!

 ひまわり
 今回、まる裏俳句甲子園で優勝できとても嬉しく思っています。私たちは四回目の挑戦でした。
 しかも私は最近は俳句を作っていなくてとても不安でした。でも、姉やいとこの未悠ちゃんの助けもあって優勝することができました。本当にありがとうございました!


第13回まる裏俳句甲子園随想(俳句バトルについて)
 ニューグランドホテルズ
 曾根コルトレーン

 一月十日(土)大会前日の午後十時、松山某所にて、大会出場前の最初で最後のミーティングを行った。ここで誕生したのが、ニューグランドホテルズである。チーム名も三人の俳号もここで決めた。約一週間前からメールで下打ち合わせは行っていたものの、仕事で疲れた平日深夜に互いの意見を投げ合っただけ。前日夜まで決定事項が持ち越されたというのが実情である。ちなみにチーム名は、泊まったホテル名の一部を拝借したもの。ホテル勤めの三人というわけではない。三人は偶然にも同じ1974年生まれ。関西在住で、たまに句会の場で居合わせるという繋がりである。実はこの中で、エバンス伊藤だけは、過去にこの大会に出場し準優勝した経験者である。大会の流れが掴めないエルビン三木と私は、彼から進行やルールなどを聞き出そうとしたが、エバンス伊藤に具体的な記憶は残っておらず、「予選突破の後はとにかく慌ただしかった」という印象だけが、唯一の経験者から得られた情報となった。
 我々世代は俗に団塊ジュニアと呼ばれ、同年生まれの人口が非常に多い。私の場合、中学高校ともに一学年に四十名程度のクラスが十五組もあった。また、その後の大学受験では、競争倍率が二十倍を超え、同級生の半数は年上の浪人組であった。就職については、バブル崩壊後の不況の影響もあって、就職超氷河期と呼ばれた。需要と供給のバランスが崩れ、就職浪人と呼ばれるフリーターを生み出した最初の世代にあたる。とにかく競争には飽き飽きしており、俳句にまで勝敗を求める気分はない。しかし、いざ勝負となると、無意識に頑張ってしまう性質を負っているのである。
 さて、年々注目度の高まる俳句甲子園だが、我々の高校時代にはまだ存在していない。これまで、テレビで俳句甲子園のドキュメンタリーを観るというのが、私と俳句甲子園との唯一の接点であったため、遠いところで行われている催しというくらいの印象であった。ところが昨年秋、「俳句ギャザリング」というイベントが兵庫県伊丹市の柿衛文庫で催され、関西六大学対抗俳句バトルという大学生による俳句甲子園形式のトーナメント戦が行われた。ここでひょんなことから私は審査員を仰せつかり、ディベートを含めた俳句バトルの採点をする機会をいただいた。目の前で繰り広げられる言葉の応酬に圧倒され、そこにあるゲーム性、チームワーク、舞台アピールと熱気に面白さを感じた。これがきっかけとなり、俳句ギャザリングの主催者であったエルビン三木が、大人の俳句甲子園があるという情報を仕入れ、我々も参加してみようということになったのである。
 常の句会では、俳句の瑕疵を探して攻撃することはなく、瑕疵があってもなるべく肯定的な読み方で句に接し、そこに感じる詩情を鑑賞批評する。しかしバトルとなれば、味方の瑕疵は擁護し、相手の隙は見逃さずに突くという、何とも嫌らしい構図になるものとばかり思い込んでいた。しかし、俳句甲子園のディベートをよくチェックしてみると、実はそのような見え透いた攻撃は、見え透いているが故に嫌らしくてつまらないものになるということに気付かされた。そのあたりが、今回ディベートについて初心者ながら意識したポイントとなった。もちろん、純粋に俳句としてダメな句であれば、直接的な突っ込みもあるだろう。しかし、俳句におけるバトルというのは、例えばジャズミュージックにおけるジャムセッションをバトルと呼ぶようなニュアンスで、会場の空気を取り込んだ舞台演出のようなところが大きいのではないかと感じた。
 スーツにサングラスという衣装だけを示し合わせて乗り込んだ第十三回まる裏俳句甲子園。結果は、女子中高生チーム「みっくすじゅーす」に実力で圧倒された。紗蘭さん、未悠さん、ひまわりさん、優勝おめでとう。


まる裏観戦記
レポート 天玲

 第十三回を迎えた高校生以外のためのまる裏俳句甲子園。
 重ねるということはその分、積み重なっていくもの、そぎ落とされていくものがあるもの。本家の俳句甲子園が年々進化をとげているように、まる裏俳句甲子園も、(高校生の進度には及ばないにせよ)なんらかの成長を続けている、ように見える。
 何といっても、今大会の一番の特徴は、本選出場の8チーム中、3チームが、中高生で結成されたチームであった点である。正確な数字はわからないが、エントリーチームの少なく見ても7割くらいは中高年であったはずだ。現役学生チームのこの予選通過率は驚くべき高さだと言える。
 対戦カードはくじびきなので、これこそ天の配剤であるが、一回戦の2試合目以外、みごとに大人チーム対学生チーム、という組み合わせになっていたことにも驚く。この後も、「大人対学生」のカードは最終戦まで続き、観客にとってもかなり面白い展開となった。
 優勝したみっくすじゅーすは、「夏休み句集を作ろう!コンテスト」などで毎回受賞者に名を連ねるメンバーから成る、女子中高生のチームである。子をもつ親である私などは、果たして大人を相手にどう戦うのか、という以前に、「ちゃんと発言できるのか」「言葉の意味を勘違いしはしまいか」などと完全親目線の余計な心配から入ってしまうような年頃だ。しかし彼女らのディベートの前でそんな心配は気持ちよくふっとんだ。何というか、淡々としゃべっているのだ。「自分たちがこの俳句で表現したかったのはこのことである」「この言葉を(動詞を、助詞を、オノマトペを)使ったのはこういうわけである」ということを、派手なジェスチャーも、大げさな抑揚も、観客ウケを狙ったサービスも一切なく。そしてそれは、俳句の骨子を理解し、自身が表現するべき核、のようなものをしっかりと把握することなくしては言えないであろう内容なのであった。
 彼女らが対戦した相手は、まる裏の歴史を作ってきたといっても過言ではない、作句、ディベート力ともに定評のある常勝チームぴとりであり、また見た目からして異彩を放つ実力派若手俳句グループニューグランドホテルズであった。こういう人たちを相手に、まったく臆することなく、淡々と自分の言葉でディベートを展開する彼女らの姿を見た私の頭には、「俳句のまわりで一喜一憂しわいわい言っている大人たちの背中を虎視眈々と眺めつつ育ってきた俳句ニューエイジの台頭」というタイトルが浮かんできたのだが、さて、他の観覧者の方はどうだろう。
 あらためて対戦データを見る。「皹は治らぬ魔女でいるかぎり/未悠」「青りんごは思ふ氷への距離/ひまわり」「新しい嘘の重さや雪ぼとり/紗蘭」……例えば兼題「皹」の回、「大人たちが季語の既成概念の中で句を作っていたのに対し、学生俳人はそんな既成概念をかるがると飛び越えた発想で作句している」、とは講評にもあった。意表をつく取り合わせをさらりともってきて一句の中に詩として成立させている。表現への意欲も感じる。
 では句の精度は、と言えば勿論、大人の句にも冴えるものはあった。「青天にして小鳥墜つ紙芝居/曽根コルトレーン」「天狼星のかの群青を掌に包む/桜井教人」「青空と繋がっている冬菫/エルビン三木」。
 チームみっくすじゅーすは本選の舞台に立ちたくて、4度目の挑戦というのだから、学生俳人といっても昨日今日のチームではない。出てくるべくして出、勝つべくして勝った、との感は強い。しかしそれでも勝負は水もの、である。今年の対戦を見て、では我々はこれからどう進んで行くか、との思いを抱いたのは私だけではないだろう。そして今大会が世代交代の分水嶺となるのか、中高年俳人たちの巻き返しへの発端となるのか、次なるまる裏が今から楽しみなのである。



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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2014年度 第三期 最終回


「春未完」 めいおう星

一月や日日忽然と八ヶ岳
冬木の芽揺れてゆび先むずむずす
青天や雪掻く音のひび割れて
雪かきの終のひと掻き空へ投げ
待春の翡翠ざぶり又ざぶり
鬼の子の遠く揺れゐて鬼やらひ
春立つや獅子唐どれも甘さうな
眠り猫梅醒む音を弾く耳
愛の日の愛されがちの煮つ転がし
春めける甲斐大和なる長停車
風統ぶる若草色の春コート
春未完まだ手付かずの言葉たち


1958年、松山生まれ、東京在住。
俳句の缶づめに漂着してよりいつき組組員。




「聖戦」 三津浜わたる

反日や水仙香りつつ黙す
だうだうと腹みせ限界集落の鷹
春の星とほくゴールドベルグ変奏曲
建国の日の軍手の湿りをり
切り返すハンドルに春泥の重さかな
バレンタインデー甘き香りのゴムであり
テーブルに名刺と春のイヤリング
春雨や猫まんなかに川の字に
恋猫のをんごらをんごら地球はまはる
さへづれる鳥に父母ありにけり
ニホン人死す東風は地球のうらがはへ
灰色の空へふうせん放ちたる聖戦


1969年生まれ。第4回俳句甲子園の神野紗希さんの作品を見て俳句をはじめる。第17回俳句甲子園実行委員長。




「昔ながらの」 松本だりあ

日脚伸ぶ石の蛙の背の苔
立春の宇治の小さき秘仏かな
わんさかと蝋梅しやうもない話
スカーフに包む黒髪鐘おぼろ
七十年目の春よ遺品のアコーディオン
浅春の疳虫は行こう兎堂
春の雪体温計のちちちちち
金縷梅や婿に贈りし推理本
かくかくとラジオ早口桜草
春風やカップの鳥の飛びたからう
優ちやん龍くん光くん有くんと黄水仙
初桜昔ながらのパイ齧る


1942年生まれ。双子座。句集『ダリア』(編集アトリエまる工房)。句集『海に遊んで』詩集『おばあちゃんの魔法の苺』(有限会社マルコボ.コム)。




「トゥルーカラーズのコード」 加根兼光

ゴルゴンゾーラチーズ溶けゆく春疾風
点と点結べばクレソンの水際
エルネスト闇ふるわせてカスミ草
チョーキングして春愁を一度だけ
センターのギター弾き止む夜半の春
足長蜂消えて愛の答など
フレットにキズあり蝶に波紋あり
竜天に登る地球を何色に
地球儀に金めく地軸ゆきやなぎ
鷹鳩と化すシートベルトのサイン
クレパスの赤がキライで養花天
春惜しむほどガム噛んで砂の味


1949年、大阪府堺市出身。映像、俳句プロデューサー。2007年秋、第9回俳句界賞受賞。映像と俳句のコラボレーション、俳句の新しい展開を目指す。




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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2015年1月号 〜 2015年3月号 3/3回目)


 サラ跳ねる マーペー 

春浅し8分音符の続く曲
ソの音で水菜サクサク切っており
独和辞典残る寒さを楽しまん
漢らの山風統べて畑焼けり
うらうらと進まぬ田螺眺めおり
ミモザ咲く笑み湛えたるマリア像
春の曙焼きたてパンの耳優し
紫雲英田の先にフランス料理店
縄文土器出でたる野よりつくづくし
野に跳ねる馬の名はサラ草青む


俳都松山にずっと暮らしながら、初めて俳句を詠み、2011年12月「一句一遊」に初投句。吟行と称しながら、日暮屋とともに旅に出かけるのが楽しみ。



 初蝶 一心堂

春待つやペンキの匂う造船所
蛤の海の遥かに工場群
春光の海へと長き参道は
霾や砂に埋もれし蒙古塚
朧夜の月読島に着く手紙
告別の朝の淡雪降り止まず
鳥雲や浜辺に拾うロシア文字
頬白の鳴く蛮国の民踊る
万国旗春一番の空ゆする
初蝶や未來はいつもおもしろい


1959年生れ、父は靴職人、父の屋号「一心堂」を俳号とする。福岡市在住、賞罰なし。



 きらきらす 七草

海の門を開けてけふから春の波
富士青みゆく春の水こぼしつつ
薄氷やラピスラズリを護符として
春昼を遊ぶ海猫きらきらす
野火を見し子らは燻べる匂ひして
雀の子パン屑分けて約やか
椿湯の燕の便り逢ひにゆく
幾重にも女優の睫毛チューリップ
ビル影の幾何学模様はるの服
君が手に笑ふ数だけスヰトピー


松山で俳句を始めて2年半。現在東京在住。そのうち地元長崎市に帰り、俳句を楽しみながら「若い老後」を送る予定です。



100年の旗手企画変更に伴う休載お知らせ

 「100年の旗手」は、本誌読者の作品発表の場として、2006年六月号からスタートし、総勢101名の作家の作品を掲載してきました。
 開始から九年が経ち、「大人のための句集を作ろう!コンテスト」の開催や、「百年百花」の連載、句集スタイルの発行など、読者の作品を発表する場が大きく変わりました。
 今後は新たな俳句作家の発表の場として、刷新をする予定です。
 企画変更に伴い、暫く連載をお休みさせて頂きますが、リニューアルした際には、変わらぬご支援をお待ちしております。

 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』
 編集長 キム チャンヒ



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百年琢磨



 沈黙と省略 津川絵理子

「炯眼」 七草

手水鉢ざらり寒雀ちちち

 「ざらり」は触覚、「ちちち」は聴覚が捉えている。手水鉢や寒雀は、今たまたま作者がいる場所にあるというだけなのだが、感覚を通して作者の中で両者が繋がり、世界が繋がる面白さ。

さう此処は樹海への道雪解風

 まず「樹海」からして妖しい雰囲気がある。しかも「さう此処は」ときて、いよいよ不思議の世界へ誘われていく感じが良い。「雪解風」の取合せは意外だが、ふと現実に立ち戻らせてくれる。

将門の首塚青きヒヤシンス

 変わった取り合わせで、「青きヒヤシンス」が意外。花が人の首に見えてきて、ヒヤシンスの美しさの中にちょっと不気味なものを感じさせる。


「春かたまく」 マーペー

冬萌のモンマルトルに売れぬ画家

 昔の映画にあったような気がするが、いつの時代も変わらないのだろう。モンマルトルの売れない画家にとって、冬萌は希望の象徴であるように思われる。

炭足して向かいの山を明るうす

 炭を足すと、少し部屋が暖かくなる。そして身体が、やがて心まで温もってくる。向かいの山が明るく見えたのは、温もった心で眺めたからかもしれない。

クレソンの萌黄色なる香を立てぬ

 クレソンの香を色で言い表し、共感覚による広がりを感じる句。萌黄色は初々しく、クレソンのようにピリッと辛みの効いた色でもある。


「冬鴎」 一心堂

連合市場極月の空青し

 普通の市場だと規模がまちまちだが、「連合」と付くからには大きな市場だろう。それだけ賑やかでもある。そんな市場の極月の空は、却ってしんと澄み渡っているにちがいない。

沈黙の伴天連島に冬の虹

 「沈黙の伴天連島」に、その土地の負ってきた歴史を感じた。それがどんなものなのかは「沈黙の」に現れているが、沈黙を強いる苦難の歴史であることは想像に難くない。「冬の虹」がそうした歴史を偲ばせて哀れである。

堂崎や信徒のごとき野水仙

 「信徒のごとき」は、野水仙の素朴さ、群生している様をよく言い表している。「堂崎や」としか述べていないけれど、天主堂のある土地の姿が見えてくる。



津川絵理子
1968年生れ。「南風」所属。句集『和音』。平成19年、俳人協会新人賞、角川俳句賞受賞。


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新 100年の軌跡


2014年度 第三期
最終回


 近うなる 堀下翔

行くときの楓が枯れてをり楡も
うをの尻こほらぬ水のこと思ふ
手袋にぶあつき雪の触れてゐる
並びたる鉢少しづつどれも雪
一日が向かうに暮るる冬の山
ふりかへる雪この先の雪に似る
見えてゐる屋内の絵や冬の草
雪沓のすぐにほどける太き紐
冬や雲のをはりに少し雲のつく
組まるるに使はぬ竹やどんど焼
寒晴のいま見えてをる端の白
増えてゆく忌日また会はなかつた冬
こんなに冴ゆることのJAXAだ後ろ
雪折のささくれに雪ついてゐる
考へてゐる粉雪の近うなる


堀下翔(ほりしたかける)
1995年北海道生まれ。「里」「群青」同人。筑波大学に在学中。




 今日はたのしい 晶美

懐手に見る人多し雛の市
鍬噛んではなさぬままの春田かな
桃の花のかたきもやがて開かるる
雛人形まづは両手に飾りけり
対といふ決まりのありし雛道具
足音をひそめて雛の間を過ぎぬ
白いものは汚れやすくて雛人形
ぼんぼりのふれればはぢけさうなほど
春風に灯りのずれて映りけり
金屏風の裏を秘密基地と呼ぶ
髪梳いてやれずに戻すお雛様
杯へ白酒残る深さかな
追いかけはしないつもりで流し雛へ
嫁し時をおぼゆる顔の雛人形
花と花と溢るるごとく雛の舟


晶美
1990年生まれ。本名、高岡晶美。
岡山大学大学院環境生命科学研究科在籍。第11回俳句甲子園児、週末活動句会句集『WHAT』に参加。




共感と既視感と類想 都築まとむ

組まるるに使はぬ竹やどんど焼 堀下翔
 どんど焼を詠むとき、その火ばかりに目が行きがちだが、視点を変えると「使はぬ竹」があるという発見。

雪折のささくれに雪ついてゐる 堀下翔
 これも実際に見た人でないと作れない。頭で想像しただけでは「ささくれについた雪」は詠めない。

鍬噛んではなさぬままの春田かな 晶美
 今日ジャガイモを植えた。鍬が土を噛んで崩しながらの作業だった。が、この句は鍬が噛んだのではなく「春田」が「鍬」を「噛んではなさぬ」のだ。この逆転の発想でスケールの大きな句になった。

髪梳いてやれずに戻すお雛様 晶美
 「髪梳いてやれず」こんな気持ちを持つのは、大人の女性こそだろう。大人になるとお雛様への思いも変わってくるのだ。


1961年愛媛県八幡浜市生まれ。第3回選評大賞優秀賞。



雪そして雛 樫の木

 過ぎ去るものと残されるものへの視線を感じた作品。

手袋にぶあつき雪の触れてゐる 堀下翔
 「ゐる」から「触れ」る動作は継続、進行中。「ぶあつき雪」は北の大地の雪か。「手袋」の指先はいつか冷え切り、感覚が麻痺し、「雪」と指との区別もなくなってゆく。

増えてゆく忌日また会はなかつた冬 堀下翔
 「会はなかつた冬」とは何か。作者の目の前の「冬」は、かつて体感した「冬」とはまるで違っていたのだ。作者は葬られてしまったかつての「冬」を思う。

 雛祭りに様々な角度からアプローチした作品。

足音をひそめて雛の間を過ぎぬ 晶美
 暗い「雛の間」に入ると人形たちの視線を感じる。雛達を刺激しないように自然と「足音をひそめて」しまう。

金屏風の裏を秘密基地と呼ぶ 晶美
 男の子の「秘密基地」は空地か裏山辺りにある。女の子の「秘密基地」は「金屏風の裏」。そのきらびやかさ、男子禁制、期間限定であることが「秘密」度を高める。

髪梳いてやれずに戻すお雛様 晶美
 「お雛様」の「髪」を「梳いてやれ」ぬ寂しさ。どんなに愛おしくとも人と人形との間には疎外感がある。


1965年愛媛県生まれ。大分県在住の家具職人。第5回選評大賞優秀賞。


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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。今回の先選者は、阪西敦子さんと加根兼光さん。後選者は、関悦史さんです。

 「へたうま仙人」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は大塚迷路さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:藤


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 関悦史

 私は元々SFやシュルレアリスムが持つ驚異感をつきつめて俳句にたどりつき、読み始めたのですが、最近SFはろくに読まなくなっていました。ところがグレッグ イーガン『プランク ダイヴ』をたまたま手に取ってSF熱再燃。傑作短篇「ワンの絨毯」は異星の海に広がる一枚の藻の群体のようなものが実は超高性能の自然発生コンピュータで、その計算能力が作り出す仮想空間内に生命体「イカ」がいるというヴィジョンが驚異的。


全地球測位システム鯨吼ゆ 藍人

 「全地球測位システム」はいわゆるGPS。カーナビや個人用携帯端末でもすでに馴染み深いものですが、軍事衛星を利用したもので、他の多くの先端技術同様もともとは軍事技術でした。句はそれと「鯨吼ゆ」とのズバッとした取り合わせだけで出来ていて、無駄がなく、格が高い。技術の進化による地球規模での知覚の変容と、大自然、生命圏との軋みが噴き出したような力強い緊迫感のうちに現代が把握されています。



雛あられチョコばかり取る媼居る レモングラス
 いるのだろうな、こういう人という「あるあるネタ」のような句ですが、季語「雛あられ」と、「チョコ」の軽い意外感、「媼」という語の選択が相俟ってあまり嫌味に落ちていません。「老婆」だったらやや陰惨に。

わらびもち九人の猛者の集まれり 一走人
 あまり腹の足しになりそうもない和菓子と、それに集まる猛者との対比が可笑しいという句ですが、ありがちな着眼を救っているのは、理屈では出てこない数詞「九人」の具体性と、句の姿のよさでしょう。

ふりむけば眠る原子炉凍る星 うに子
 原発事故は一向に収束しないまま、皆その話題や句に食傷し、無かったことにされているような昨今ですが、そうした時期に即した、押しつけがましくない詠み方を切り開いて、停止中の原子炉を再認識させてくれます。

さつきまで大き猫居し冬日向 みさきまる
 「猫」と「冬日向」。手垢のつきまくった内容に見えて実は陳腐でなく、幸福感の余韻がたっぷりとあります。「大き」い猫が不在となったことにより「冬日向」の性質が変わったという詩的変化が捉えられているからです。

鳥の声ほどの子の声冬日射す 遊人
 「鯨吼ゆ」とぶつかっていなければこちらを「天」にしたかった句。鳥の声とは悪意なき天界的な他者の語らいそのもの。それに例えられた、うるさすぎない子の声もまた同様。緩みがちな時候天文の季語も動きません。



初場所の番付貼らる厠かな 杉本とらを
滝凍る時間の洩るる音のして みちる
空っぽの製氷皿や山眠る 福花
静電気少し枯れ木になる身体 福花
籾殻をつつきつっつき寒雀 樫の木
合同の角ABの小春かな 紗蘭
古民家にも室外機あり凍る朝 青蛙
賀状の朱はみ出すほどに生きてゐる  松ぼっくり
次の旅想う朝餉の寒たまご 大阪野旅人
吊橋を渡って消えた雪兎 北伊作


先選者 阪西敦子

 例の腱鞘炎以来、いや、もっと前、ある日、口が開かなくなって以来、お世話になっている鍼灸整骨院の玄先生。「あらぁ、あなた顎、5年前から外れてたよ」「この鍼は鼻が高くなって顔中の空気の通りをよくするの」という見立ては大胆なのだけれど、口調に似あわぬ巨体に円満な顔で施される勝手な治療は効果覿面。今日もカーテンの奥から「先生の所に来るまで40分かかっていた道が今は10分で歩ける」という他の患者の声が聞こえる。仰向けになって顔の前をきらきら揺れる鍼を見上げながらそれを聞いている。


鳥の声ほどの子の声冬日射す 遊人

 鳥の声かと思ったら、子の声であった。家の外などで少し大きく出た声が、室内にいるものにも届いたのかもしれない。「きい」というほどの響きは、それでも静かなあたりには子の声と響く。そのほかにはただ、冬日が射している。冬日もまた細々とした光量をあたりに降らせている。ほかの季節ほどの力は持たない冬日であるが、しかしその存在はほかの季節よりもしっかりと光だ。ちいさなもののたしかさを逃さない俳句の器。



電線の動かぬ一羽寒の雨 和音
 寒の雨を、電線の一羽が動かない。動かないから、寒の雨が降るのがわかる。黒々とした一羽は、種類さえあまりよくわからない。寒の雨がすべての詳細を取り去ったあとなのだろう。

寒三日月飲物渡す手の白き 八木ふみ
 寒三日月もまた、細々としかし確かな光。しかし、それはあまねくさすというものではなく、ふとした細部に降るのである。寒そうな誰かを気遣って飲み物を差し出したその手を、意外なほどに月光が照らす。

今日いちばん明るき時間寒夕焼 みさきまる
 通常、日光が一番差すのは正午。日が最も高い時刻だ。しかし、明るさと言うのはそういう問題でもない。たしかに冬の日の午後は暗くなる速さばかりに気がゆき、諦めとともに眺めた夕焼に明るさをおぼえることもある。

一村に雲の翳りや実南天 香
 そんなに大きくもない村に少し大きな雲がやってきて、ちょうど村を飲み込むほどの影を落とす。村の家のあちこちに殺風景な季節を灯すように咲く実南天はもっともその陰りを受けやすい。晴れもまた、実南天より。

玻璃越しの光ふわふわ冬座敷 香
 光を冬にもいっぱいに受けるように作られた座敷だろう。低い冬の日を玻璃から取り入れて、四方をきちんと閉ざした部屋で壁にも障子にもあたって、しかし直角に反射するというよりは、部屋に柔らかく受け止められる。



人日や濃いめの珈琲淹れる妻 小市
深く切れば血は群青に寒オリオン 森 青萄
花なづな爆音に影なかりけり もね
初詣散歩嫌ひな犬連れて 雨月
産褥の母に恥じらふ冬帽子 越智空子
冬紅きインク爛れぬ一斗缶 紗蘭
湯婆も猫も朝には失せている しんじゆ
さつきまで大き猫居し冬日向 みさきまる
リハビリの点呼に返す大嚔 池田喜代持
冬の日の歩みは重し市の中 人日子


後選者 加根兼光

 もう12年も乗り続けている車。愛車と呼ぶほどには大切にしている訳ではないけれど気に入って買ったものだし、もう生産もしていないので朽ちるまでは乗ろうと思っている。先頃も荷物室のカバーが壊れて部品交換をした。大きな故障はなくここまで来たがさてこの先はどうか。そろそろタイヤも替えないといけないな。もう暫く機嫌良く走ってもらうためには。


特選句

鯛焼を頬張る口で宇宙論 みちる

 人の口は嘘も真実も語る。欺く誤魔化す。愛や恋を語る。信仰や戦を語る。そんな全てを鯛焼きを頬張る口が語る。その一つが宇宙論。ブラックホールのような口。

紅き声白き声囁く冬芽  かのん

 まだ枯れ色の広がる中、確実に春が近づくのを膨らみだした冬芽が告げる。やがて咲く紅や白の花の芽はささやくように冬の終わりを耐えている。

雪うさぎ青磁の底に河の音  ほろよい

 庭の隅に置かれた真っ白な雪兎。冬がまだ続いているのを見つめている眼。氷や雪の下で雪解けの水が始動するように青磁の壺の底でも水音が微かに。

風を読むたびに旋回冬かもめ 一走人

 寒風を受けて舞う鴎。羽はまるでグライダーの翼のように動くことはない。僅かの風向きの変化に回っては戻る。やはりグライダーのような静けさだ。



並選句
鼻声を心配さする初電話 杉本とらを
冬の朝母の荷物を運び出し 蓼蟲
水汲めば水澄み切つてゐる冬の墓 蓼蟲
口実は骨休めとか梅見月 レモングラス
はや三日カレーハウスの長き列 小市
正月の太陽一つのあったかさ 多満
髪切った辛味大根のざる一枚 多満
前髪へパツンと鋏初仕事 和音
冴返る端末に聞く母のこと 迂叟
人日や書込みのある古書を買う 迂叟
肩むき出しのハンガーの寒さかな のり茶づけ
炉明りに山の香纏う男達 のり茶づけ
眼差しの自虐薄れて春隣り 南亭骨太
朝凍のWAXのツヤ削るかな 南亭骨太
雪しまくシャーマンの声届かざる 幸
成人祭男子の眉の細かりし 幸
難儀やなあ伊勢海老なんぞ貰うても 藍人
北颪氷点下指す温度計 富士山
積もる雪轍の通り逸れぬよう 富士山
枯蓮を寂光土より引き抜きぬ 森 青萄
初春や福と名のつく拾ひ猫 恵馬
初夢の会いたい人は亡き犬で 恵馬
愛犬の自慢途切れぬ話初 ヤッチー
若者のどやどやと来て寒見舞 ヤッチー
ご隠居さま定食二つ春の雪 もね
城山の冬芽育む陽の光 喜多輝女
天心の星瞬いて冴返る 喜多輝女
白雲は羊の群れへ小正月 かのん
雲辺寺雪の羅漢に迎えられ 樹朋
奥の院五色の幕の淑気かな 樹朋
参拝の途絶えて縞の寒椿 小雪
参観日師も親も子もマスクなり 小雪
小姑の雁金額初点前 雨月
探梅や潮鳴りの瀬へ徒歩五分 八木ふみ
鼻歌のうたひたくなる初湯かな ぴいす
娘夫婦の到着を待二日かな ぴいす
うつむいてペダル踏み込む初時雨 ほろよい
初仕事空より惜しみなき光 八十八五十八
新年や玄関に靴十二足 八十八五十八
初夢の終了知らす電子音 おせろ
恵方巻のチラシ見比べ春隣 おせろ
半眼と目を合はす寺木の芽和え 七草
犬に見られ猫に見られて春ショール 七草
また聞くか餅は二つぞ雑煮かな ゆりかもめ
新品の雑巾下ろす初仕事 ゆりかもめ
フォーレ聞く少女の胸へ寒夕焼 てん点
冬薔薇一本挿して画文展 てん点
いいじゃない独りの夜の初湯かな  あきさくら洋子
湯たんぽのぽの字で夢に果てる子よ  あきさくら洋子
雪の野に犬掘り当つる旧世界 樫の木
皸のずきずき星屑の鼓動 越智空子
着ぶくれは昔の話街の風 青蛙
冬薔薇やちいさき嘘をかくす空 緑の手
蝦蛄葉仙人掌夢に光をくれる人  緑の手
十年をうめる電話や梅日和 うに子
訃報聞く大寒の朝の光よ 空山
生き物を抱え込みて山眠る 空山
七色の鯛焼き初日の手土産に まんぷく
風呂ふきを美味しと思えば怖き無し まんぷく
製作所の冬芽うおんうおん空へ しんじゆ
匂い立つ新しき春墨の黒 台所のキフジン
初詣り君に佳きことあるように 台所のキフジン
寒月の異郷に浮かぶ月兎 西条の針屋さん
初手水揺らぎし月を掬いをり 西条の針屋さん
毛皮の姉御茶髪の胸を空へ張る 松ぼっくり
担送車初湯の人を乗せにけり 瀬戸 薫
風花や色とりどりのチェロケース 瀬戸 薫
氷張りをりいのちもつ仲間かな 春告草
アミラーゼコパーゼならぶ大根畑 春告草
群生の片栗の花秘密基地 カシオペア
飯蛸の足ちぢみゆく残酷煮 カシオペア
霾や蒙古高原駆ける馬 ひでやん
雪形や年経るごとに痩せにけり ひでやん
初凪や鳴門大門のきらきらす 大阪野旅人
バイク族成人の日の目の澄めり あおい
舞ふように巫女の手捌き春きざす あおい
いとおしき日が風がゆく鶴がゆく アンリルカ
冬の昼ひとりぼっちのカラスかな アンリルカ
湯婆の母に抱れている如し ミセスコナン
悴んだ指それぞれに主張する ミセスコナン
雪催い20年前の悪夢かな エノコロちゃん
生の声ピアノが走った冬神戸 エノコロちゃん
飛機窓に初冨士仰ぎ引き締まる 高木久美子
初鏡恋せし頃を子と回想 高木久美子
一椀の湯気の大盛り大根焚 池田喜代持
オールドパー舐めて知人の冬葬儀 ちろりん
白き息発して犬と羊飼い ちろりん
帰る僧いくつも提げて冬菜かな 人日子
どつかりと座る妻の座去年今年 省三
久女忌やどきりと朱き寒椿 省三
冬の月帰って来ない斑猫 北伊作
イエスサーと答へるラジオ三日かな 未貫
人工管で呼吸する叔母一月尽 未貫
寒念佛行くやけものの息をして 鯉城
菩提寺は永遠にありけり冬の雨 鯉城
残照や凍てつく森へ鴉二羽 哲白
ずんぶりと朔旦冬至の湯につかる 哲白
考へてをれば寒さの増してをり 遊人



関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

加根兼光(かねけんこう)
映像 俳句プロデューサー。1949年、大阪府堺市出身。関西大学法学部法律学科卒業後、CM制作会社に勤務。CMチーフプロデューサーとして30年以上に渡り、1000本以上のCM制作に携わる。50歳を過ぎて始めた俳句で2007年秋、第9回俳句界賞受賞。映像と俳句のコラボレーション、俳句の新しい展開を目指す。俳句集団いつき組組員。現代俳句協会会員。



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へたうま仙人


文 大塚迷路

 春が出そろうのはまだ少し先のようぢゃが、みなさまいかがお過ごしかの?
とは言っても、仙人の国では梅は二分咲、裸足で野を歩くと下萌で足の裏がこそばゆくなっとるぞ。そう言えば佐保姫からも「そろそろ起きようかと思っています」と、おととい便りが来たばっかりぢゃ。佐保姫の顔を早うみたいのう。
 今月も余寒をものともせず句が集まっておるぞ。名残の雪を愛でる心もちで楽しんでくだされ。
(雪と格闘されている雪国の方々にはすまんことです)


この年で初体験のムカゴ飯 ケンケン
ニンゲンの顔もつ吾とネコの顔 ケンケン
 初体験の感激を句にできるというのは素晴らしいことぢゃ。あんな初体験、こんな初体験、それぞれの胸の奥に仕舞われておることぢゃろう。ぢゃが、秋の初体験を春に報告されてはせっかくの感動も鮮度が落ちてしまいもったいないぞ。季節は移ろうとるぞ。それよりも無季の句ぢゃ。「我思う、ゆえに我あり」「みんなちがってみんないい」を彷彿とさせて、なかなかの味わいぢゃ。

雛霰ぐたつと疲れほとときず KIYOAKI FILM
鷹の爪木の総て樹に記す「はつ!」 KIYOAKI FILM
 ひな祭りでぐたっと疲れ、某俳誌を読んでおるのか、雛あられが湿ってぐたっとしているところにほととぎすが飛んできたのか、シュール過ぎてさて困ったぞ。更なる当惑ものが鷹の爪ぢゃ。秋に赤く熟れる鷹の爪と木と樹とはつ! の因果関係を詮索しても詮無い気分ぢゃ。一足早く春愁のこころもちぢゃ。

悦びはマスクの下に帰り路 未々
 どんな佳いことがあったのかのう。マスクの下で微笑んでいる口元が見えてくるようぢゃ。早く家に帰ってみんなにこの悦びを伝えたい、という気持ちが端々に滲み出ておるぞ。
 冷静になって考えたら、マスクをしているのをいいことにニヤついている人もちょっと不気味ぢゃがの。

左手に朝日ジャーナル日向ぼこ 小木さん
もうすぐそこまで戦争日脚伸ぶ 小木さん
 ちょっときな臭い事柄にほのぼの季語を合体させる技がニクイのう。昨今のかの人たちの勇壮な発言をいま一度足を止めて再確認してみたいものぢゃ。右も左も上も下もみんな本当の事を言っているようで、ちょっとこはひ。「日向ぼこ」「日脚伸ぶ」さえうすら寒くなってくるぞ。

新聞が新聞紙となり冴えかえる ひでこ
旅をするアサギマダラに寒の水 ひでこ
 新聞と新聞紙との違いなど今まであまり考えたことなかったぞ。「冴えかえる」で新聞紙と新聞紙に書かれた文字の行く末を少し考えたぞ。はたしてどこのあたりの地域までの水が「寒の水」と言われるのかのう。旅立ちがちょっと遅れたアサギマダラと、普通の水から寒の水へと変化した水との出会いが鮮やかで神々しいぞ。

「こひすてふ」そのまま読みし歌がるた 元旦
袖触れ合うわが衣手に静電気 元旦
 なかなか面白いところに着眼したのう。ワシなんぞ「百敷」を「股引」だと思って、「百敷や〜〜」の歌が読まれるたびに笑い転げておったぞ。雪の代わりに静電気がバチバチしたとは風情もなにもないが、何もないところに現代の微風が吹いておる。歌留多をほんの少しずらしていく姿勢には共感したぞ。

こたつから出られぬトドは又ふとる 柊つばき
初夢は忘れちまった祖母だった 柊つばき
 自嘲もここまでくれば悟りぢゃ。この冬も全国で何人が何頭のトドに進化したことやら。来冬は何にまで進化するのかのう? 中原中也を微妙に思い出させる「忘れちまった」に追憶の情を禁じ得なんだぞ。投げやり的な言葉に、祖母との関係も垣間見えて人生短編ドラマを見たような気分になったぞ。

梅の木に置いた果物鳥啄み 真帆
玉の石道後の湯かけ旅はじめ 真帆
 ゆっくりと時間が流れておるのう。その流れに乗り無理をせず、それでいて積極的に遊ぶ心の余裕が素敵ぢゃのう。鳥たちが警戒を解いて一口啄むまでには結構な時間が流れているはずぢゃ。その間に、つぼみぢゃった梅もほころんで、淡い香りを漂わせているはずぢゃのう。そんな時の移ろいの中、道後からはじまる旅のほのかな昂揚感も、また良いのう。


 をっ! 今月は追放者を出さんかったぞ。これも日頃の鍛練と向上心の賜物ぢゃ。褒めておこう。
 ぢゃが慢心はいかん。油断大敵、油物厳禁ぢゃ。へたうま流泰山北斗への道は思ったほどは近くないのぢゃぞ。ぢゃが、それはそれ。今の調子を落とさず、また頼むぞ。
 ぢゃがぢゃが、くれぐれも油断召されるなよ。



へたうま仙人
 年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
 好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き)
 嫌いなもの 上手な俳句
 将来の夢 大器晩成


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 「春隣」という季語がある。なら、気分的に冬は無理にしても「夏隣」「秋隣」くらいあってもよさそうな気も若干する。隣の季節が気になるくらいだから「秋深き隣は何をする人ぞ」と芭蕉も詠んだように、隣の人はもっと気になるのだ。まったく付き合いのないうちの隣の若い家族の玄関ドアには、昨年12月初めからクリスマス飾りが掛かりっぱなしなのだ。ひょっとして新しい宗教なのか、どうしても気になる。



黙つて碁盤を跨ぐ のり茶づけ

 不思議な空気感が漂っている。これ以上言葉を繋ぐと、この微妙な空気感が多分壊れる。そういう意味では、自由律ならではのぎりぎりの表現と言えます。碁盤を跨ぐのは笠智衆、小さな庭に面した和室……モノクロ静止画のような小津映画のワンシーンをも彷彿とさせ物語が膨らんでいきます。こういう光景を切り取って句にするには、他人に分からなくてもよいと思う意思と、自分の視点、世界感にこだわりきれるかどうか。無駄のないよく抑制された表現が異彩を放っています。



震えているコツペパンほどの犬 北伊作
 コッペパンという比喩が良いと思う。今はどうか知らないけれど、むかし給食に出たコッペパンは今どきの手の込んだパンに比べ、なんと素朴であったことか。それゆえにあの当時の空腹を満たしてくれたあのパンに、愛おしさを感じる人は多いのではないかと思う。震える犬にコッペパンの愛おしさを見た……ということでしょうか。

人は人に何をしてきたかと嗤う みちる
 科学技術や医学の発達がある一方、相変わらず懲りもせず戦争も飢餓も人種差別もいじめも人類からは、なくならない。むしろ余計厭世観にさいなまれることの方が多い気もする。こんな哲学的なテーマを上手くまとめている。「嗤う」が効いています。

日向ぼこするように押され生く 台所のキフジン
 日向ぼこでもしなさいよと実際に背を押される……。という句意と、日向ぼこでもするかのように優しく励まされ生きている……という句意とがあると思う。いずれにせよ終盤の人生気負うことなく、しかし前を向いてという気持ちが伝わってきます。

丸餅の青黴に笑はれてゐる 小市
 正月などこれということもせぬ間に過ぎて、気がつけばまた愚かな日常を始めている……。餅に生えた黴から見れば人間なんてそんなとこかもしれません。視点が面白い。因みに「親戚のような顔して黴育つ(鎌田次男)」というのもあります。

水仙と海を見ていた昼下がり もね
 水仙と海と自分と、申し分のない三位一体。そこに時の経過として「昼下がり」……よい句だと思うのですが有季定型句です。あえて取り上げているのはなんとかならないか、もったいないと思うからです。例えば「水仙と昼の海を見ていた」でも意図するところはある程度通じると思います。このコーナーは自由律なので、ぜひ自由律でがんばってください。



日向ぼこ舟をこぐ エノコロちゃん
セーターの女から猫のにおい 和音
こちら側のどこからでもより無残 しんじゅ
ガード下で寒さのおさらひをしてゐる みちる
梅の香辿る仁王門の先 あおい
子供から取り上げた空と凧 北伊作
やさしい山ほどよく眠る もね
眼鏡をかけたままみる夢はすぐ忘れてしまいます  うに子
投函しなかったこの手紙春の虹 迂叟
餅の焦げをスプーンで削る 樫の木


並選
泣きながら話す初電話 杉本とらを
異星にでも来た気分です正月は ケンケン
雪化粧オイル交換ハタハタと KIYOAKI FILM
春田打広島風お好み焼き次々ならぶ  レモングラス
しっぽみたいに脳ミソが無くなる日 多満
浅き眠り見たくも無い夢の続く 南亭骨太
病める日の鏡への恐怖 幸
膝枕に冬のぬくもり 藍人
屈背してつくづく我は窓辺猫 森 青萄
成人式色褪せし晴着のペコちゃん ヤッチー
爆弾低気圧てふ凶器のやうな風と雪 喜多輝女
画面は砂嵐寒きパソコン ゆりかもめ
ひしゃげた冬の蚊会話なし あきさくら洋子
ひとりでも寒い 小木さん
新年のもずは無口 一走人
マンドリルの腕伸びたのは蝦蛄葉仙人掌だったらし  緑の手
大寒の扉開け締まる外気 元旦
妖怪と雪女似て非なるもの 空山
還暦を過ぎたら湯豆腐好物と成す まんぷく
雪は沈黙するほどに雄弁 松ぼっくり
番地へ来る賀状の束に雪 たま
気が付けば空き家の多き多きこと カシオペア
成人の日の朝薬指にパール ミセスコナン
去年今年禰宜白髪増毛中 人日子
大くさめ地軸傾きいたるかな 鯉城



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。



【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)、俳号(なければ本名の名前のみ)、本名、電話番号、住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙人」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、3月20日(金)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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愛媛県美術館吟行4
「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」


文 猫正宗


 「西暦2015年、チャンヒ、未悠、瑛翔、恋衣、ひでやん、猫正宗の6人は愛媛県美術館に。企画に戸惑う彼らは、そこで何を見、何を感じるのか。「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」。今月も、サービス、サービスゥ!」(『新世紀エヴァンゲリオン』予告風)
 この展覧会は「日本の伝統工芸技術の集合体である日本刀と、新しい文化であるアニメーションの雄、「ヱヴァンゲリヲン」の融合により、日本のものづくり、伝統技術の素晴らしさを、広く社会に知らせることを一つの目的としている」(展覧会図録より)とのこと。

 先ずは、日本刀の基礎知識がわかる展示から。

玉鋼鍛えらるるを待つ冬日 ひでやん

 そして巨大な人型決戦兵器が使う刀を、再び人が持つ刀として構成するというコンセプトによる「マゴロクソード(号オオムラサキ)」を皮切りに、「エヴァ×日本刀」の様々なコラボが始まる。

オオムラサキ産びしかたちこのクニが 猫正宗
紫の武器を朧にただ愛でる チャンヒ

 作中兵器をモチーフにしたもの、登場人物をイメージしたもの、「トイザらスにおいてあるような」(チャンヒ談)ものから、本格的なつくりの日本刀まで、いずれも、アニメ的なイメージと日本の伝統の技術、文化が絡み合い、融け合った刀達は、さながら宝剣に巻きつき、飲みこもうとする倶梨伽羅竜のよう。

初稽古諸撮巻赤茶けり 瑛翔
凍て星や人類用の小豆太刀 瑛翔

 諸撮巻とは、柄に巻いてある紐や革の巻き方の一つ。見た目が美しいため、現代の美術刀剣のほとんどがこの巻き方なのだそうだ。また、豆太刀とは、五月人形や雛人形用の、本物の刀同様に作られたミニチュア刀のこと。

冬天が痛くて大刀が冷たくて 未悠
ふたつめの太陽求め龍天に 恋衣

 作品には、携わった職人たちの写真も添えられている。

立春大吉鞘師刀匠皆男 チャンヒ
(前書き:刀匠川崎昌平氏の写真より)
工房の連子窓には春隣る ひでやん

 曇りなき刀身に映るのは職人の魂か、登場人物の想いか、あるいは観ている私たちの心だろうか。

鋒に触れたし春の雪激し 恋衣
切っ先は彼我いずれにや永遠の夏 猫正宗

 本展覧会の目玉、「ロンギヌスの槍」。
 キリストを処刑したと伝えられる槍の名を持つ、全長332cm、重量22.2kgのそれは、先ず物体としての圧倒的な存在感で迫ってくる。

神の子を貫く槍や冬の雷 ひでやん
武骨こそ槍の美である蝶の昼 チャンヒ

 その材質は、複数の金属を層にして鍛えられたダマスカス鋼。表面に浮かび上がる独特な文様。

火ヲ残ス槍ノ地肌ヤ春ニ入ル 恋衣
月冴ゆる槍より垂れる油模様 瑛翔

 さらに遺伝子構造を模したともいう形状、製作過程を紹介する映像。何れも観る者の眩惑を誘う。

ひとねじりひとねじりして夜は朧 恋衣
凍月に連れていけ二重螺旋よ 猫正宗
いびつな槍は寒月を突き刺して 未悠

 最後まで「アニメ×日本刀」という題には悩まされつつ、それでも俳句というコンパスでこの迷宮をたどる(迷う?)のは、楽しい体験だった。吟行だからこそ触れられた何かがあったようにも思うのだ。

日本刀がチューリップになりました チャンヒ


猫正宗
メガネ句会&JAZZ句会が主な作句場所。
「お芝居観ませんか?」連載中。


取材協力:ヱヴァンゲリヲンと日本刀展実行委員会(愛媛県、あいテレビ、テレビせとうち)、一般社団法人全日本刀匠会事業部、愛媛県美術館


*「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」は愛媛県美術館にて3月22日(日)まで開催。


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.20


Panorama train
Frozen river, icy lake
Raccoon eyes in face

登山鉄道雪焼けのかほ揃ひたり


(直訳)
展望列車
凍れる河 氷れる池
顔には雪焼け眼あり



Our travels have taken us to Italy and Switzerland. In Venice we waded through flooded streets and in St. Moritz we skied through snowy Alps. Italy is for art, Switzerland is for mountains.

(そゞろ神の物につきたる)我らの旅は、イタリアとスイスに及んだ。ヴェニスで我々は満ち潮に浸された通りを歩き、サンモリッツでは、雪のアルプスをスキーで巡った。イタリアには芸術があり、スイスには山がある。
(訳:朗善千津)



ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第48話
「枯葉」サラ ヴォーン


 昨年秋のJAZZ句会でマミコンさんが呟いた。「八十八さん、ダメみたいだね」と。そして11月19日、ジャズ レコードの名プロデューサー、伊藤八十八氏(やそはち)は逝ってしまった。雑誌「JAZZ JAPAN」VOL 53の特集「追悼 伊藤八十八」で氏の業績が4頁に渡り紹介された。昭和21年8月8日生まれ、その生涯で手掛けたレコードは約350作品。
 僕の伊藤氏の思い出は、何と言っても大型新人ヴォーカリスト、ティファニーを伴っての来松である。その圧倒的な歌唱力に向ける氏の眼差しが、とてもオシャレだった。

クリフォードとサラと浮遊する春風と  南行ひかる

 ティファニーの伴奏に村田浩のトランペットとは、まるで「サラ ヴォーン ウイズ クリフォード ブラウン」ではないか!! こんな感じだったのだろう当時のサラは、と思いが交差した。

淡雪の溶けて私のための歌 チャンヒ

 サラとクリフォードのセッションで唄われたジョージ シアリング作曲の「ララバイ オブ バードランド」は、後にB Y フォスターによって歌詞が書かれた。サラの歌唱は、この曲の決定的解釈とされ、以降多くの歌手が意識せざるを得なくなったという名唱。

託宣はスキャットでくる麗日も 破障子

 今回のテーマ アルバムを提案した破障子さんが人気句を詠み責任を果たしてくれた。我が国では必ずと言っていいほどジャズ スタンダード人気ナンバーワンとなる「枯葉」の歌唱としては異色中の異色。ジョー パスはテーマをなぞらず、いきなり華麗なギターソロを展開。続いてサラのスキャットが炸裂する。そのスキャットがギター的でジョー パスのギターがスキャット的に聴こえるのが面白い。正に神業。なるほど「託宣」とは上手い。

快唱に秘めた溜め息花かがり 千栄子

 千栄子さんがサラのアルバム「枯葉」のラストナンバー「ユー アー トゥ ビューティフル」にインスパイアされて詠んだ句!? この曲の決定的名演、名唱といえば僕的にも一般的にも「ジョン コルトレーン&ジョニー ハートマン」のB面のバージョンだろう。だが、ここでのサラの歌も素晴らしい。彼女は自分のテクニックを惜しみなく盛り込みながらハートマンとは異なる解釈で歌唱する。

あの女は火にも雨にもなり朧 猫正宗

 つまり、サラ ヴォーンってこの句の様な歌姫ってことで今回の一番人気JAZZ句。



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。
次回JAZZ句会は3月15日14時より。テーマは『タワーリング トッカータ&ブラック ウィドウ』ラロ シフリン。参加申込は44ページ句会カレンダー参照。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU vol.1』(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ


第48話
『長屋の花見』〜ビンボーを楽しむ〜


あらすじ
 どの家も、その日暮らしのビンボー長屋。ある日、大家から呼び出しがかかり、みんな家賃の催促だろうと決め込み行ってみるとどうやら違うらしい。
 貧乏長屋と呼ばれているが、その貧乏神を追いはらうため、みんなで上野の山に花見に出かけようということだった。
 酒も一升瓶で三本あると聞き、みんな喜んだのはいいが、これが「お酒」ではなく「お茶け」。番茶を煮出し、薄めたものだった。
 酒が本物じゃないので、花見の弁当も全部ニセモノ。
 玉子焼きは黄色い沢庵、かまぼこに見えるのは白い大根の漬け物。
 まあそれでも、上野に行けば何かごちそうでも転がってきてうまくいくかも知れないと、呑気に繰り出すことになった。
 上野の山に着くと桜は満開で、たくさんの人、人、人。
 毛せんの代わりのむしろを敷き、大家から「陽気に酔え」と言われても何せ「お茶け」ではひとつも酔えない。
「かまぼこでも食え」と言われるが、「大家さん、あっしはこれが大好きで、千六本にきざんで味噌汁に入れるとうまいんで」などという始末。
 熊さんは俳句をたしなむというので大家さんが「熊さん、一句ひねってみなよ」と言えば、
 長屋中歯をくいしばる花見かな
 花散りて死にとうもなき命かな
 など縁起の悪い句ばかり詠んでしまうので雰囲気がぶちこわし。
 そんな中、連中の一人が
 「大家さん、近々長屋に良いことがありますよ!」
 「何でわかるんだ?」
 「酒柱が立ちました。」



 江戸で「長屋の花見」、上方では「貧乏花見」。上方はストレートですね(笑)。
 上方では三味線や太鼓の「ハメモノ」が入り、花見のうかれた気分を演出します。
 落語にも色々なパターンがあり、言葉の間違いから大変なことが起きたり、SF的なものがあったり、客を泣かせるような人情噺があったり。
 その数え切れないくらいの噺の中で、この噺こそ庶民の生活をあっけらかんと描いた、ディスイズ落語ではないかと私は思います。
 大家もビンボー、店子ももちろんビンボー。しかしそれにもめげずニセモノの酒やつまみで応酬する場面は、客席は爆笑に包まれます。
 落語界初の人間国宝、味噌汁のコマーシャルでおなじみの先代柳家小さん師が得意にしていました。
 「笑わかそう」として演じるのではなく、人物描写に徹して演じると自然と笑いが起きるという典型だったような気がします。
 さてこの噺、我々にとってうれしいのが、熊さんが二、三句ひねって披露するシーン。演者によってはカットする人もいますが、いつき組に集うみなさまなら熊さんの俳句より縁起の悪い桜の句が詠めること間違いナシ!
 どうでしょう、大花見大会でわざと「縁起の悪い花の句」を詠むチャレンジ企画というのは(笑)。

四合瓶なかなか空かぬ花見かな


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ホンヤクサイホンヤク


翻田 訳蔵

 俳句初心者、翻田訳蔵がネット上の翻訳ソフトを使って名句を翻訳、再翻訳し、そこからインスパイアされた(パクッた)句を発表していこうという馬鹿馬鹿しくも実験的で図々しいコラムです。


今回の俳句
 折釘に烏帽子かけたり春の宿 与謝蕪村



 さっそくGoogle翻訳(英→日)から

Spring inn or over Eboshi to Orikugi

 再翻訳

春の旅館や烏帽子の上Orikugiする

 烏帽子の上からOrikugiする…。よくわかりませんが、痛そうな印象を受けます。

 エキサイト翻訳(英→日)

The inn a when nail lacks formal headwear for court nobles, and which is spring

 再翻訳

時の釘が法廷貴族のためのフォーマルな帽子を欠く宿屋および春である

 「時の釘」かっこいい表現ですね。春になって暖かくなるとフォーマルな帽子なんて必要ないよ。少し早めのクールビズです。

 最後に、Yahoo!翻訳(英→日)

Is worthy of a screw hook for formal headwear for court nobles; a spring hotel

 では、再翻訳

公家のために正式な被り物のためにねじフックに値します;春のホテル

 公家と正式な被り物のために、ねじフックに値するもの、それは「春のホテル」ということでしょうか?
 キャッチフレーズのようですね。ねじフックに値するホテルとは、いったいどんなホテルなのでしょう? 公家と被り物を被った人のための簡単便利でなんでもひっかけられるホテルということでしょうか???
 余談ですが、ねじフックの形は「?」に似ていますね。

 それでは、この3つを受けて一句。


ねじフック帽子かけたり春の宿? 翻田訳蔵


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第29回 「をんな善哉」

〔劇団青年座公演、作 鈴木聡、演出 宮田慶子、出演 高畑淳子、増子倭文江、手塚秀彰、他、'15年1月14日、ひめぎんホール(県民文化会館)サブホール〕

 バブル期、広告代理店で活躍していた諒子は、両親の死後、下町の老舗甘味処を継ぐ。小さなもめ事も起こるが気のいい商店街の人たちと送る、穏やかだがかわりばえのしない日々。結婚もせず子どももおらず、このままゆるゆるとこの古い店や商店街に埋もれるように生涯を終えるのか。「まだ、女を終わりたくない。」そんな思いも燻るある日、昔の恋人が店を訪れる。再びのときめき。それに呼応するかのように、大きなプロジェクトの仕事への参加を打診される。「もう一度輝けるのかもしれない」。だが、そのプロジェクトが商店街の再開発を伴うものだと知り悩む諒子。
 「こんな風にしか生きられない人間もいるんだ。」菓子職人一筋の老人の言葉に、諒子は決意する。

善哉の小豆艶やか春遅し

 今や、ドラマにバラエティに引っ張りだこの、高畑淳子が主演。皆さんもご存じの通りのさすがの芸達者。因みに筆者は、まだ無名の彼女が『仮面ライダーBLACK RX』で悪の幹部、諜報参謀マリバロンを演じた際、最終回近くで、指先と目の演技をしているのを観て、ジャリ番と見下される番組でちゃんとした演技をしていることに感動。この人は信用できる役者さんだと思ったものでした。
 閑話休題。本作は、客席から隠れたところでも演技を続ける、高畑に負けず劣らず芸達者な役者陣。よくできた脚本とそれに応える演出。作りこまれたセットに細々とした小道具。等々。大多数の人が最大公約数的に思う「THE 芝居」といった趣の作品でした。
 本作のテーマの一つ(などと書くと、いかにも無粋ですが)は、「どこでどう輝くか」ということではなかったかと思ったりもします。
 あなたは、どこでどう輝きますか?

冬の梅あなたはそこで咲け僕は

 さて、3月の松山市民劇場は劇団プーク公演『うかうか三十、ちょろちょろ四十』(3月17日)井上ひさしの作品を人形劇として上演。人形だからこそ表現できる世界に乞うご期待。



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。


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百年歳時記


第22回 夏井いつき

 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。


ぽけっとに兎とさばいばるないふ 葦信夫

 カタカナで書かれるべき「ぽけっと」「さばいばるないふ」が平仮名で書かれることで、一句に優しい表情が生まれるかといえば、逆にひたひたと怖ろしさを匂わせているのがこの句の凄さ。たった一字、季語「兎」が漢字表記されている視覚的効果も際立ちます。
 「ぽけっと」に入る小さな「兎」を想像しても良いし、「ぽけっと」に手を突っ込んで、その耳を引っ張り上げれば巨大な「兎」が出てくる虚構の映像を想像してもよいでしょう。「兎」を比喩的象徴として鑑賞することも可能です。ただのナイフではない「さばいばるないふ」という存在が、生き物としての「兎」の生臭さを読者の鼻先に突き付けます。怖ろしいけれど非常に好きな作品です。
(松山市公式サイト『松山俳句ポスト365』1月12日オフ会句会ライブ入賞句)


寒卵割り惑星を増やしけり 矢野リンド

 「寒卵」を割ると出てくる黄身を「惑星」に見立てた、と読むだけでは面白くありません。「寒卵」を一つ割るという現実の行為と、「惑星」を増やすという詩的行為が一瞬のうちにスパークし、言葉の火花を散らせるところにこの句の魅力があります。
 「寒卵」を一つ割る。その瞬間、宇宙のどこかで新しい太陽が生まれ、太陽の周りを廻る「惑星」が生まれ、一つの太陽系が形成される時間が動き始める。宇宙という名の生命が生まれる壮大なサイクルを想起させる力。その力を生み出しているのが、季語「寒卵」なのだと気付きます。「寒卵」は滋養に溢れる卵であり、その濃い黄身の色は生まれくる生命の象徴でもあります。
(松山市公式サイト『松山俳句ポスト365』1月12日オフ会句会ライブ入賞句)


しんしんとソムチャイさんの冬服に るびい 

 「ソムチャイさん」は、南方からの留学生でしょうか、観光客でしょうか。着慣れない「冬服」を着ている「ソムチャイさん」のぎこちない、それでも冬という季節を新鮮な気持ちで楽しんでいる表情までもが想像できる作品です。
 この句を非常にうまく演出しているのが「しんしんと」という上五のオノマトペ。冬の冷気と同時に、降ってくる雪のイメージを膨らませます。さらにそのオノマトペを受け止めているのが、最後の助詞「に」。この助詞が目に入ったとたん「しんしん」なるものが、今「冬の服」に降ってきたかのような印象を与えます。下五の「冬服に」の後の切れのない余情も、深い味わいを残します。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』2月6日掲載分)


タイワンリス冬芽を蹴つて翔ぶや翔ぶ 小泉ルリ 

 「タイワンリス」は台湾原産、伊豆大島をはじめ日本各地で野生化しています。漢字で書くと「台湾栗鼠」、この表記は重いですね。掲出句の持ち味は軽やかな躍動感。「タイワンリス」は「冬芽」の存在を描くための脇役ですから、カタカナ表記が正解でしょう。
 視界の端に動きだしたリス! 尻尾を揺らし、幹を駆け上り枝から枝へ走り出します。頭上の「冬芽」を「蹴つて」走る姿は、まさに「翔ぶや翔ぶ」の速さ。あっという間に見えなくなった後には、蹴られた「冬芽」のみが小さく揺れ、そのしなやかな芽はほんのりと赤みを増しています。春待つ心は、まさに秘めたる躍動感。強靱な「冬芽」と春を待つ楽しさがあふれる一句です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』1月23日掲載分)


白梅を挿頭しやりたし相撲取 きらら☆れい

 「挿頭し」は「かざし」と読み【上古の日本人が神事に際して髪や冠に挿した草花】を指します。「相撲」も元々は神事として始まったものですから、このあたりの言葉の選び方もよく工夫されています。「相撲」も秋の季語ですが、正月場所が終わる頃を思えば「白梅」との取り合わせに違和感はありませんし、「白梅」が主役の季語として描かれていることはいうまでもありません。
 贔屓にしている「相撲取」に「白梅」を「挿頭し」てやりたいとは、今場所の活躍への賛辞でしょうか。新入幕から気に掛けている力士の新十両を祝う思いかもしれません。堂々たる大銀杏を思うか、やっと結えた小さい髷を思うかで、一句の味わいも変わります。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』2月13日掲載分)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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会話形式でわかる
近代俳句史超入門


第9回
文 構成 青木亮人

 大学で俳句を研究する青木先生と、その教え子で俳句甲子園の出場経験もある大学生の俳子さんが雑談を交えながらの近代俳句史超入門。

「大根の葉」に見る虚子の俳句観

 二人は大学の教室で高浜虚子について論じあっています。

虚子の「大根」句
俳子(以下俳) 「流れゆく大根の葉の早さかな」(解説1)の「早さかな」は、ヘンだと思いませんか。
青木先生(以下青) それは「俳句」らしくない、ということですか。
俳 ええ。お母さんが「今日の晩ご飯は揚げ物よ」というから「やったぁ、鶏の唐揚!」とわくわくして待っていたら、オクラの揚げ物だった……という感じ。
青 オクラ、おいしいじゃないですか。というより、全く分かりません。
俳 肩すかしということよ。そのくらいお分かりにならなくて? ダメね、最近の男たちは……(首を振る)
青 窓辺にもたれて目を細め、どこを見ているんですか。で、大根は?
俳 あ、大根もおいしいです。いや、そうじゃなくて、「流れゆく大根の葉」とスルスル進めて、読者に「下五に何が来るんだろう?」と思わせながら「〜の早さかな」と軽くまとめた気がするんです。拍子抜けに近いのよね。
青 それは否定的な意味?
俳 うーん、否定か肯定かじゃなくて、不思議です。だって、大根の葉がさっと流れていったというのは上五「流れゆく」に任せてもいいかもしれませんよね。
青 今の「任せて」を補足すると、「流れゆく」から読者がそう想像してくれることを期待して、下五に「早さかな」と念を押さずに他の何かを詠んだりしても良かったということ?
俳 ブラボー! そうです、先生。
青 でも、下五に別の何かを詠むとすれば取り合わせの句になりますよね。
俳 そう、そこなんですよ、先生。
青 急にいきいきした表情になりましたね。ワトソンの質問に目を輝かせるホームズみたいですな。
俳 ほほ、私に追いついてこれるかしら、銭形警部!
青 それ、ルパン。
俳 ……で、いま思い出したんですけど、「虚子のまなざしには粘り強さがある」と以前に仰っていましたよね。この句を眺めていると、分かる気がしてきました。
青 む、それは?
俳 この句は川を「流れゆく大根の葉」がさっと流れていった、ということだけが印象的だった、という句ですよね。
青 そう。言い換えると、作者はそれだけを読者に伝えようとした、と。
俳 はい。でも、それだけを詠んで「俳句」だ、「詩」なんだと信じて作品にまとめるのって難しいように感じるんです。私もそうですけど、特別なことや綺麗なもの、かっこいい言い回しや思わせぶりな一言を詠んでインパクトを与えないと不安というか。でも、虚子さんはそんな小細工せず「大根の葉」の様子だけを具体的に詠んで終わらせちゃった。「流れゆく大根の葉の」と読者を引っ張って、それは早かったんだよ〜♪ とあっさり終わらせるから、「それで終わり?」と拍子抜けに近い感じなんです。最初に鶏の唐揚げと思わせて、出てきたのはあっさりしたオクラの揚げ物だった……という感じね。

スカスカな句
青 近年稀に見る分かりにくいオクラの例えでしたが、なるほど。虚子の句は一物仕立てといえばかっこいいですが、違う言い方をすると中身がスカスカ。実作者として、こう薄い内容を「俳句」として提示するのは勇気がいる、と。
俳 人によると思いますけど、少なくとも私はそうです。それに、「〜早さかな」といかにも「俳句」っぽい切字で終わらせていますけど、ヘンな内容と思いません? 川を流れていった大根の葉が早かった……だから何やねん! とツッコミたくなりますよね。
青 おっ、いい指摘ですよ、ミス マープル。
俳 ちょ、ちょっと、私はマープルさんほど年輪を重ねてませんってば! 花の女子大生に失礼ね。
青 何と、アガサ クリスティーの推理小説に出てくる探偵役の老婦人をご存じとは……脱帽です。
俳 感動するところがおかしい! 実は私、推理小説マニアで、昔の夢は「ホームズか金田一耕助と結婚する」でしたからね。
青 俳人を目指しながらホームズみたいに神経質な理屈屋と一生をともにする……ぼろぼろの人生になりそうですね。先ほどの話に戻ると、虚子句は「だから?」と感じさせる内容を詠みながら、「〜かな」と「俳句」らしい姿をしているところがヘンだ、と。そもそも、川を「流れゆく大根の葉の早さ」に作者は強烈な感銘を受けたらしいことはビシビシ伝わるが、そこまで情熱を傾けて詠む意義がイマイチ分からないですよね。
俳 ええ。「あなた、そこで何やっているんですか。川に流れるものを眺め続ける川面マニアですか?」と職務質問したくなる感じ。
青 そういう感想と、大根句が「俳句」らしくないのはつながるのでしょうか。
俳 たぶん。わざわざ「〜早さかな」と大見得切ることもない内容に思いません? なのに、大根の葉の一瞬のありさまを頭の中で粘り強く反芻し続けた感じもあったり、でも詠む時にはスラスラと詠んで、いかにも「俳句」らしく終わっているところが逆に「俳句」らしくないと感じたんです。
青 なるほど。それに、よく見ると巧いですよね。「流れゆく大根の葉」で言外に「川」を想像させ、どうオチを付けるかと思いきや、「早さかな」とそれ以上の説明は付け加えずに情景を簡潔に整えている。「俳句」を冷静に捉えた虚子ならではの技法かもしれません。
俳 といいますと?

醒めた目線
青 虚子は、俳句はそもそも小天地しか詠めない詩型である、と常に主張しました。人間や社会の複雑な状況を描きたければ小説を書けばよい、詩や短歌もあるではないか、俳句に固執せず他文学の道を歩みなさい、というのです。しかし、作者が季語と十七音という枷のある有季定型を選んだ以上、その器を超えるものを詠むことは諦めねばならない、と言い切ったんですよ。
俳 確かに……ケーキバイキングでも、調子に乗って自分のキャパを超えたケーキを食べちゃうと大変なことになっちゃいますよね。腹八分目と分相応を弁えなさい、ということかしら。
青 まあ、そんな感じでしょうね。虚子は俳句に多くを求めなかった。これは意外に凄いことで、普通は専業俳人ほど「俳句はあんなことやこんなことも詠める、こんな凄い特徴もある」とアピールしたくなるものです。それはそうですよね、自分が生涯を賭けた俳句がいかに素晴らしいかを強調したいのは当然。ところが、虚子は俳句を稼業にしたにも関わらず、醒めていました。俳句は小説や詩に比べ地味で、ささやかで、「不景気な顔」をした短詩であり、それを愛する「吾等は天下無用の徒」(解説2)と平気で言ってのけるんですよ。
俳 虚子さんはもしかしてM気質? 写真に映っている顔も、両方の眉毛がつながってそうな感じですし。
青 眉毛の手入れとM気質は関係ないのでは。それに彼は、どちらかといえばMと見せかけた慎重なるS気質かな……いや、そんな分析はどうでもいいんですよ。虚子は、「俳句」に過度の期待をしなかった珍しい専業俳人でした。大根の句はそんな彼だから詠めたと思います。特に「意味」があるわけでもない大根葉の一瞬に強く興奮し、そこにどのような「意味」も付けずに粘り強く観察しつつ、ほぼ無内容のまま詠んだ。それで「俳句=詩」が成立すると見なした虚子の俳句観は、多くの俳人が共有できたものではありません。それを、今度は彼の経歴から捉えてみましょう。(続く)


青木亮人(あおき まこと) 1974年、北海道生まれ。現在、愛媛大学准教授。著書に『その眼、俳人につき』(邑書林)など。



解説

解説1
「流れゆく大根の葉の早さかな」 昭和三(1928)年。『五百句』所収。
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解説2
「不景気な顔」「吾等は天下無用の徒」 ともに虚子講演録「花鳥諷詠」(「ホトトギス」昭和四年二月号)より。シニカルな目線と自信に満ちた彼らしい俳句論で、「花鳥諷詠」の元となった。
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もうひとつの俳句のまちづくり


岐阜県大垣市役所俳句文化推進グループ
川元 彩

第8回

 第8回目は、芭蕉生誕370年に際し、今年度より新たに始めた取り組みである「おおがき芭蕉交流句会」をご紹介します。
 私は今年度、学芸員として俳句文化振興グループに配属されました。このグループは「奥の細道むすびの地記念館」が平成24年にオープンしたことに伴い、主に記念館を拠点としながら、俳句文化の振興を担っています。私はこれまで俳句については全くの初心者でした。しかし今では、仕事を通して俳句に親しまれている方々とお話させていただくことで、少しずつ俳句についての理解が深まっています。
 さて、前述しました「おおがき芭蕉交流句会」とは、より多くの方に俳句に親しんでいただきたいとの思いから始まりました。1年を通して5回、1回につき2名の著名な講師をお呼びし、句会を開催しました。
 第1回は「流ryu」主宰である清水清風先生と、「栴檀」主宰である辻恵美子先生、第2回は「郭公」主宰である井上康明先生と、「群青」代表である櫂未知子先生、第3回は「濃美」主宰である渡辺純枝先生と、奥の細道むすびの地俳句協会名誉会長である田中青志先生、第4回は「紫薇」同人である正木ゆう子先生と、「海程」同人である田中亜美先生、そして第5回は「菜の花」主宰である伊藤政美先生と、「伊吹嶺」主宰である栗田やすし先生という錚々たる講師陣をお呼びしました。
 句会に参加される方は、俳句を何十年と続けていらっしゃる俳句上級者の方から俳句を始めて1〜2年のまだ日が浅い方まで幅広く、大垣市内の方はもちろん、市外や県外などからも多く参加されました。
 句会は、2つの部屋に分かれ、1人の先生に20名ずつの参加者で行います。事前投句2句、当日席題1句で1人3句ずつの投句をしていただきます。当日席題が発表になると、会場がざわめき、その後、水をうったように静かになり、句をつくられます。投句された句は事務局がパソコンに入力し、一覧表をつくります。それを配布するまでの間、メンバーが俳句を始めたきっかけなどのエピソードをまじえ、自己紹介を行います。そして、場が和んだところで、いよいよ句会が始まります。特選句1句、入選句4句を選句し、披講、点盛、交流と進んでいきます。そして最後に先生に、ご自身が選ばれた特選句についてお話いただき、その後、一句一句について講評していただきます。
 そして、句会が終わったあとには2人の講師と句会参加者を交えて俳句談義が行われます。こちらは句会のようにピリッとした雰囲気ではなく和やかな雰囲気で、俳句に関する自由な意見交換や句会で気になったことについて、講師、参加者の垣根を越えて楽しく話し合い、交流を深めました。
 このように大垣市の事業として交流句会を行うことで、市内外の方々が俳句を通して交流できたことを私たちも大変嬉しく思いました。
 さて、もうひとつの俳句のまちづくり大垣編の連載はこれで終わりです。私たち大垣市は、俳句文化の振興にこれからも力を入れ、俳都松山市と肩を並べられるようなまちづくりを目指していきたいと思います。最後までご愛読ありがとうございました。


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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第48回 文と写真 暇人

三年目にして定着!「Facebook審査員」

 まずは改めてFacebook審査員のご説明を。俳句でのまちづくりと、SNS(主にFacebook)の活用(融合)は三年前にスタートさせ、様々なイベントで活用してきました。その中で浮上したのが、審査員の一枠をFacebookに参加している人たちの投票で決める取り組みです。具体的にはFacebookで提供されている「質問をする」という機能を活用し、赤、白の俳句のうち投票が多い方に代表者が旗を揚げるといった内容です。初年度はFacebookページで提供できたため多くの方に参加していただけたのですが、二年目からFacebook側の機能変更によりグループ内でしか利用できなくなったため、グループ登録者を対象にこの二年間は行ってきました。Facebook審査員のおかげで、現地に行く人も行けない人も、自分の好みのチーム、俳句を応援できるということで、年々定着しつつあると思います。
 しかし、リアルタイムで俳句を掲載するシステムは三年経っても試行錯誤しております。基本的には一回戦から決勝戦の俳句のテキストデータを試合開始までの短い準備期間の間に作成してもらい、試合の流れに合わせて更新していきます。必ず試合がある先鋒、中堅戦はなんとかアップできますが、問題は勝敗が決まったために旗だけを揚げる大将戦の場合。準備も慌てますし、掲載してから旗を揚げるまでの時間も限られています。そのときは冷や汗をかきながらの作業となりました。
 Facebookの活用は審査員以外にもありまして、午前中からの現地報告、試合が終わってからの打ち上げの場面まで、まさに帰るまでが「Facebook」という感じで、諸事情で現地へ足を運べない方のため、そしてまだ関心が無い方に興味を持っていただくために配信を行ってまいりました。最近あるアイドルグループのGoogle+というSNSを観ておりまして感心するのは、当日色々な事情で足を運べないファンのために支配人自ら一眼レフカメラを持ち、模様やセットリストなど随時更新しておりまして、一ファンとしては大変ありがたい事です。このファンを大事にするグループの支配人をリスペクトすべく、mhmにも活用できることがないかと思い、今回企画倒れとなりましたが動画配信の試みや、裏側を含めた会場の模様をFacebookで随時お伝えすることに昨年以上に力を入れてみました。
 さて、次回もFacebookに「質問する」の機能がある限りは審査員を継続する方向です。まる裏をもっと盛り上げるため、出来ればまる裏の公式サイトを立ち上げて、わかりやすく案内したいと思います。さらにmhmはTwitterもやっておりますので、今後は「#まる裏俳句甲子園」のハッシュタグ(ツイッターにおいて、特定の話題であることを示すためにコメントに追記する目印)付けの協力をお願いして、双方向な「まる裏」にしていきたいと思います。あとは余裕があれば「まる裏実況中継」を、誰かお願いできないでしょうか? コンテンツとしては魅力有るとは思うのですが……。
 最後に広告特典変更について、キャッチフレーズの発表不備等、今回も色々と不手際があり、誠に申し訳ございませんでした。一月の定例会にて反省点を振り返り、今後次回大会までに反映させる予定です。
 なお、会場で皆様にご協力いただきました俳句甲子園への募金は、当日の総額が26291円となりました。厚く御礼申し上げます。
 
 次回は「松山城歳時記化計画〜バレンタインデー〜」です。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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第4回大人のための句集を作ろう!コンテスト


結果速報

主催:マルコボ.コム
共催:朝日新聞社、松山市教育委員会

最優秀賞は
中町とおとさんの
『さみしき獣』に決定!

 昨年募集を行った「第4回大人のための句集を作ろう!コンテスト」には、53作品の応募がありました。
 31人による大人コン選考会員の審査により、中町とおとさんの『さみしき獣』が最優秀賞に決定しました。また優秀賞は、井上さちさんの『水縹』、上田樫の木さんの『寒林』、マイマイさんの『鶺鴒と歩く』、初蒸気さんの『美顔器』、片野瑞木さんの『次女』、河野しんじゆさんの『てのひら』、中村阿昼さんの『駆け比べ』の7作品に決まりました。
 来たる3月29日(日)午前10時より、松山市立子規記念博物館にて表彰式を行います。(観覧自由)
 また、詳しい審査結果などは、4月号にて発表します。最優秀賞作品は、4月号の付録句集として配布されます。



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俳句の街 まつやま
俳句ポスト365


協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


優秀句
平成27年1月度


【福引】
《地》
福引器しぶしぶ吐ける玉は白 とおと
福引や廻しきらぬに赤い玉 井上じろ
厳かに引けど福引き外れけり しおあん
ろんろんとうたいたる福引の旗 緑の手
福引の品の埃のしらじらと 菜月
福引や張り子の干支を下げ帰る 銀命堂
福引や干支の張り子の中を鈴 はまゆう
議題一福引の景品の件 ポメロ親父
福引の一等の象当たらぬやう  クズウジュンイチ
ひょいと来て福引当てた京子ちゃん  みつこ

《天》
福引の玉に目玉がついてゆく  牛後


【寒蜆】
《地》
寒しじみ真水にすくふ朝の妻  有櫛水母男
寒蜆浸すきちんとした暮らし 鞠月
寒蜆集えど音の寂しかり カリメロ
青ベかの地をたづぬれば寒蜆  あつちやん
寒蜆墓標のごとく湖に杭 樫の木
井戸の神祀り大粒寒蜆 江戸人
初七日の庫裡の華やぎ寒蜆 雨月
殺生の歯にもかからぬ寒蜆 深呼吸
広言の断酒怪しや寒蜆 たんと

《天》
しみじみとお世話になろう寒蜆  春爺


【冬芽】
《地》
百万の冬芽の疼く大樹かな みちる
城山の空は冬芽に明け渡す 野風
鳥葬の部落幾千もの冬芽 中原久遠
牛の眼のひかりの先の冬木の芽 牛後
冬芽ほのあをし阿修羅のまだ愁眉 緑の手
炊き出しの湯気を仰ぎて冬木の芽 芭治留
御手植えの県の木冬芽恙なし  こりのらはしに
冬芽あえかに服部時計店の前 江戸人
冬木の芽ピカソと話できる人 バーバラ
ヒーローは泣かない逃げない冬木の芽  カリメロ

《天》
タイワンリス冬芽を蹴つて翔ぶや翔ぶ  小泉ルリ


【採氷】
《地》
氷切る鋸の鋼に湯気揺らぐ クラウド坂上
採氷の削り屑には火の匂ひ みちる
採氷のすれすれに在るただの水 大塚迷路
採氷てふ湖伐つて売る仕事 三重丸
採氷の鋸屑雪に足の跡 甘泉
採氷池の屋号はためく御空かな まどん
採氷や湖の棺となる谺 あつちやん
採氷夫にぺんぎんが混ざってゐる  中原久遠
百蔵は氷も挽けば豚も飼ふ 葦信夫

《天》
哈爾濱の空筒抜けや採氷す  もね



3月の兼題

投句期間:2月26日〜3月4日
水草生う【仲春/植物】
水がぬるむ3月から4月にかけて、池や沼、川などにさまざまな水草が生えはじめる。水底に根をおろすものや、水面に浮かぶものなど、様々な種類を総じていう。

投句期間:3月5日〜3月11日
花種蒔く【仲春/人事】
夏から秋にかけて咲く花の種を蒔くこと。「鶏頭蒔く」「朝顔蒔く」などと特定の花についていう場合もある。なお、季語において単に「種蒔」と言った場合は、花の種ではなく“籾”を蒔くことを指す。

投句期間:3月12日〜3月18日
草餅【仲春/人事】
蓬の葉をつき込んだ、野趣に富んだ香りを楽しむ餅。「蓬餅」ともいう。餡を包んで草大福とすることが多い。かつては母子草なども用いられた。

投句期間:3月19日〜3月25日
若草【晩春/植物】
早春の、萌え出て間もない草のこと。柔らかく瑞々しく、食用とされるものもある。


《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)

※募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。



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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成26年1月度


【初電話】
霊峰は今日鮮やかと初電話 風
初めての胎動知らす初電話 あおい
結婚を問う間に切れる初電話 妙
香典の相場尋ねる初電話 凪太
フロリダに着いたばかりと初電話 もも
初電話そろそろパリの日も昇る さち
初電話眼下に渋谷交差点 もね
帰郷せぬ寮生二人初電話 天玲
当直医は妻に戻りて初電話 樫の木
飛び出した家に初電話親父出ぬという  日暮屋
初電話さんざん笑わせ病棟からだったか  日暮屋
初電話敬語で取り次がれもう実家と言えず  日暮屋

《天》
牧仲間五キロ隣へ初電話  ぼうたろう
荒れ狂う海鼻腔刺す初電話  理酔


【初声】
締まりなき初声なれど良しとする 鞠月
初声や空から落ちてきしやうな 朗善
初声の小枝揺らして空へ青  江刺乃カナ女
初声や小さき鳩とパンを分く 青花
初声や烏巨大な喉仏 朝日
初声を遮って防災無線 ポメロ親父
補聴器に初声のありひよなりき きのと
勤行の鉦の余韻と初声と とうへい
初声や海の名残の鯨塚 みいみ
初声や黙を徹せる原子の炉 風
初声や鳥居に小石載れば吉 逆ベッカム

《天》
初声やだいだらぼっちの頬ゆるむ  紫水晶


【磁】
高らかに割れて小春の陶磁器は  のり茶づけ
白龍の鱗蠢く青磁かな きとうじん
木枯や磁針は赤き星の色 太郎
狐火や磁極はNを動かざる てん点
磁針止まらず背後に濡るる雪女郎  ひかるん
畦のあの花は百磁草というか 酋長
磁気帯びて闇は寒鴉を離れざる 天玲
正八面体磁鉄鉱めく冬の夜 海田
大いなる磁界の地球大旦 緑の手
惑星に磁場デコポンに剥きどころ  マイマイ

《天》
前照灯に地球の磁場を跳ねる雪  松ぼっくり


【九年母】
九年母の母の部分が甘くって 雪うさぎ
九年母や昭和九年の母の櫛 逆ベッカム
九年母や母に残った傷と弾 八幡浜発
義父にヤニ臭い九年母剥いてやる  ポメロ親父
隠居所閉じ九年母枝に朽ち香る 紫水晶
九年母や少年式の歌響く かなた
九年母や月の子どもという話 朝日
反戦の空に九年母のたわわ 一走人
君が代は暗し九年母ぼやきけり 下駄女
波音聞こえ出すジャングルの終わりに九年母  日暮屋

《天》
九年母や亀甲墓につづく道  笑松


【ずわい蟹】
ずわい蟹空の濁りの中揚がる  ターナー島
荒波の王となりたるずわい蟹  旧重信のタイガース
荒れる海漁は博打ぞずわい蟹 はまゆう
海溝も雪とや津和井蟹届く マイマイ
海底へ雪の音を積むずわい蟹 緑の手
家族に無職詰られずわい蟹の手なる断岸の山  海田
火酒酌めばロシアの歌やずわい蟹  樫の木
ずわい蟹炙れば荒神さま笑う 天玲

《天》
咲くように競りを蠢くずわい蟹  野風



※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

投句締切:3月1日

季語ではない兼題です。「確」の字が詠み込まれていれば、読み方は問いません。季語は当季を原則として自由に選んでください。

卒業【仲春/人事】
小学校から大学まで、一般的に3月上旬から下旬にかけて卒業式が行われる。

投句締切:3月15日
牧開【仲春/人事】
 春になって若草が萌える牧野へ、冬のあいだは小屋に入れていた牛や馬を飼育のために放つ、放牧地開き。

春帽子【三春/人事】
 夏のような日差し対策でも、冬のような寒さ対策でもない、春の訪れを喜び、おしゃれを楽しむ帽子。

投句締切:3月29日

季語ではない兼題です。「石」の字が詠み込まれていれば、読み方は問いません。季語は当季を原則として自由に選んでください。

海松【三春/植物】
「みるめ」ともいい、昔から食用にされてきた緑藻類ミル科の海藻。近年では食されることが少なくなった。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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100年俳句計画 掲示板



NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  3月10日(火)11時40分〜

あいテレビ(TBS系列、全国)
 『プレバト!!』
   隔週木曜 19時〜20時49分
  3月5日/19日(木)予定
※組長がゲストの俳句ランキングづけで出演! 放送日番組欄を要チェック!

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「黄水仙/観潮」3月8日〆
   「草餅/引鶴」3月22日〆
 インターネットでも配信中。詳しくは番組webサイトへ。
  HP http://www.baribari789.com/
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)、住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。朝日新聞松山総局(790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。

愛媛県《吟行ナビえひめ》句&写真
 俳句選者:夏井いつき
 写真選者:キムチャンヒ
【募集期間】毎月1日〜 25日前後締切
【応募先】http://www.iyokannet.jp/ginkou/
【テーマ(兼題)】3月のしまなみ
(当地周辺でみつけた季語なら何でも可)
【問い合せ】愛媛県観光物産課
TEL 089ー912ー2491

本阿弥書店「俳壇」(1月号より連載)
 『十二か月添削教室』
 4月号 3月14日発売
*誌上で俳句を募集しています。


句会ライブ、講演など

第4回写真俳句コンテスト表彰式
 3月14日(土)14時30分〜
松山市立子規記念博物館(13時30分開場)
入場無料、当日投句選あり

道後温泉祭協賛 土曜カルチャ合同吟行会
 3月21日(土)10時〜16時
 集合 10時(道後からくり時計前)
 一般参加 1000円(本講座受講者は無料)
申込 マルコボ.コム089-906-0694
申込〆切 3月16日(月)

滋賀県草津 句会ライブ情報
 3月22日(日)13時30分〜
会場 草津市立サンサンホール
【申込〆切】3月19日(木)参加無料
草津市勤労者福祉サービスセンター 077-567-4377

句会ライブ in しまなみアースランド
 3月28日(土)13時〜 参加無料
 しまなみアースランド(今治西部丘陵公園)
申込 今治おやこ劇場0898-33-4203

大人コン表彰式&大花見大会
 3月29日(日)8時〜20時
10時より子規博1F視聴覚室にて表彰式
終了後、道後公園内で随時花見



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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

新年に届いたハガキたち
小市 年末に届いた1月号はわたしにとって一足早いお年玉でした。雑詠俳句計画と自由律俳句計画の両方で天をいただいたからです。こんなことがあるなんて夢みたいです。ありがとうございました。
編 まるで海老2つ入った天丼のよう。

しんじゆ 某神社へ初詣に行き「福鳩」を季語と思い購入しました。これで俳句も縁起がええと思っていたのですが、鳩吹きながら調べたところなんと初秋の季語であることが発覚! こんな一年なのかとがっくし。でも気を取り直してほ〜ほ〜やっています。
編 そんな貴方に朗報(9ページ)。ほ〜ほ〜やってた縁起効果か!?

大忘年会と「俳句ソングス」
のり茶づけ 大忘年会での賞品の「俳句ソングス」受け取りました。ありがとうございます。俳句を音楽にして聴くという心地よさを実感しています。
編 俳句を音楽で聴く新しい企画。詳しくは俳句ソングスで検索!

俳句新聞いつき組 復活創刊号
喜多輝女 俳句新聞いつき組復活創刊号、届きました。隅から隅までずずずい〜と読ませて頂きました。いまから次号が楽しみです。
うに子 いつき組俳句新聞届きました。雪の座句……手触りの違う素敵な句が多くて選ぶの迷います。
編 年四回刊行ってことは花の座、月の座と続き……もう一回は?

表紙裏 美術館吟行
矢野リンド 小倉遊亀さんの絵をいつか自分の目でみてみたいとずっと思ってました。まる裏甲子園の会場でキムさんから応募していたチケットを渡して頂いて本当に嬉しかったです。会場へは一人で行ったのですが、憧れていた絵を見た感動を誰かに話したくて、買った絵葉書を友人に送りつけているところです。(絵葉書の)この絵は夏のものですが、一番好きなものなので送ります。いつかこの絵も本物を見たいです。そして安田靫彦さんも素敵でした。
編 お気に入りをありがとうございます! 帽子が柔らかい雰囲気で素敵。

俳号がグレードアップ
みさきまる 俳号を少し変えます。「みさき」に尻尾をつけて、「みさきまる」にします。どうぞよろしくお願いいたします。
編 船みたいでカッコイイ。

ジャ○ネット恵馬
恵馬 殿様ケンちゃん俳句をつくるヒントがわかりやすくって、とってもいいです。
編 俳句手帳? 小さいし便利ですよね。

天の句いろはカルタへ
北伊作 三島ちとせさん、ちろりんさん、「天の句いろはカルタ」の一票に感謝々々です。
ひでやん 三回連続無点は免れました。まる裏で「チーム√ズ」を結成するにはあと一人メンバー募集だなあ。そうだ、天の句いろはカルタの次は、√とかπとか記号を使った句にしません?
編 いいよー(怖いもの見たさで)。


突発企画『天の句いろはカルタ』

 北伊作さんの発案で始まった突発企画。先月号に掲載された投句への、選句&選評(互選)を掲載しています。不肖編集室一同も参加しています。

兼題「を」
選句結果

3点句

和音、瑞木、北伊作選
遠国と媼言ひをる里に春 ひでやん

和音 遠国の媼というと凄い山奥のイメージが。その里に来る春は待ちに待った「春」なんだろうなと思います。
瑞木 それって此処のことかしら。
北伊作 遠国、媼と韻を踏みながらまるで一茶か良寛の句のように里に春と結んでいます。肩の力の抜けた優しさと、作者のほのぼのとした作風に一票。

三島ちとせ、ヤッチー、ひでやん選
踊り女の神話を語る指の先 北伊作

三島ちとせ 踊り女はきっと火の周りを艶やかに踊るのだろう。人々が恐れていた昔の情景が指先から広がっていくようだ。
ヤッチー あ! フラダンスだ! ハワイに行きたい!
ひでやん 目の前で踊っている女性の指先までもなまめかしい動きが、天照大神が隠れている天岩戸の前で踊った天宇受賣命(アメノウズメノミコト)を彷彿とさせると読ませていただきました。


1点句

をとこありけり桜と酒を愛しけり 瑞木

正人 個人的に思い出したのは蕃さんのこと。お花見の度にこの句を思い出しそう。

緒は臍に戻らぬ冬の虹厚し 三島ちとせ

のり茶づけ 「緒は臍に戻らぬ」という表現に魅せられ?ました。確かにその通りなのですが改めて言われると新鮮に思えました。「戻らぬ」「厚し」ときっぱり言い切っているのに潔さを感じました。


今月の無点くん

鴛鴦静か浮かぶ水面の空に鳥 のり茶づけ
をんな居て大地蠢めくをとこ居て ちろりん
をかしきや雨粒背負ふ初鴉 正人




兼題「ゐ」
投句一覧

1 胃袋を食べては酒を小正月
2 ゐるゐないゐるゐないゐる散れる花
3 亥の子餅よいよいよいと納めけり
4 居住ひのぎこちなき様春小袖
5 井より風吹きあがるなり蕨狩
6 胃薬を飲み春寒の街へ
7 威勢よく福豆飛んで面飛んで
8 居住まひの美しき先生桜餅

次回兼題 「ゑ」から始まる句

〈参加方法〉
1:「投句一覧」から好きな句を選ぶ。(選句)
2: その句の感想を書く。(選評)
3:「次回兼題」の音から始まる句を一句書く。(投句)
※1〜3、俳号(本名)、〒住所、電話番号を明記して、編集室「天の句いろはカルタ」宛にお送りください。一人一句まで。選句は番号と俳句を共に記入して下さい。
※番号はお間違えなく!

 今回の締切は3月10日(火)必着です。
Eメール宛先 magazine@marukobo.com

※誌面の都合上、内容を抜粋する等、選評全文を掲載できない場合があります。あらかじめご了承ください。


〈編集担当 けんだいこぼれがき〉
 例によって調べてみました。

 1:故(「ゆえ」に同じ。)
 2:餌
 3:会(主に仏事または祭事の集まり。)
 4:恵/慧(仏教用語。真理を明らかに知る精神作用。)
 5:絵
 6:ゑ(感動を表す助詞。〜のことよ、に相当)

 ……マニアックすぎる。



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鮎の友釣り

200
俳号 蛇頭

りぼんさんへ 表面は上品で語りも美しい。けれど、いけしゃあしゃあと十数年前の写真で自分を紹介したり、しばしばオブラートで包んだような毒舌を吐き、時間差で同僚いじめをする「りぼん」さんが僕は好きです。 「ふくし句会」に巻き込み、あなたの老後に貢献しようとしている僕にだけは、いじめの手を伸ばさないで下さい。

俳句との出合い 当時のK助役と「お話のできる関係」になりたくて、つまり下心在り在りでZ句会に参加。しかし、K氏が無類のジャズ好きと判明。以来、JAZZ句会でのお付き合いとなり、今でも江戸からJAZZ句がメールで飛んで参ります。

写真 100年俳句計画マラソン部員として第53回愛媛マラソンに参加。写真は我がJAZZ句会の光海さんが12キロメートル地点で撮って下さいました。1時間後に迫る地獄絵図を知らず軽快な走り。

次回…破障子さんへ 40数年ぶりに同級会で再開した破障子さんが100年俳句計画とも浅からぬ関係とのこと。そりゃそうだ、NHK松山放送局のディレクターだもんね。JAZZ句会レギュラーメンバーへようこそ!!


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告知



4月26日(日)開催
南楽園句会ライブ

 今年も春の南楽園にて、夏井いつきの句会ライブを行います。と共に春の南楽園を訪れます。南楽園は数万株の花が開花期を迎え、最も華やかな季節での句会ライブです。優勝者にはキム チャンヒライブペインティングがプレゼントされます。
 また、昨年同様、バスツアーも計画中です。詳細は、次号にて発表いたします。



無料インターネット句会参加者募集

俳句を増産したい方のための
象さん句会
 「俳句を増産したい方」を中心に、毎週5句出しで4週間行う「本気モード全開」の句会です。

20代のための週末俳句活動句会、略して
週活句会
 20代の俳人を中心とした句会です。この句会から「100年への軌跡」連載者も輩出します。

どちらも3月5日(木)
一般募集開始
詳しくはブログマルコボ通信まで
info.marukobo.com



100年俳句計画
大お花見大会

日時
2015年3月29日(日)
8時〜20時(雨天決行)

場所
道後公園内(松山市)

今年もやります!!
奮ってご参加ください!



第三回瀬戸内松山写真俳句コンテスト表彰式イベント

3月14日(土)14:30〜16:00(13:30開場)
松山市立子規記念博物館4F講堂
入場無料、当日投句句会ライブ@賞品あり

スライドを使った入賞作品紹介と展示コーナー、森村誠一氏による講評(ビデオ出演)、夏井いつき組長による添削指導と当日投句ミニライブなど、盛りだくさん。
作品を応募していない方でも楽しめるイベントです。
お申し込み先:マルコボコム(089−906−0694)
       info@marukobo.comまで

昨年度自由句部門最優秀賞
愛媛県 松本だりあ
枯れきって花は海星になりたくて

イベントにあわせて『写真×俳句』日帰りバスツアーも設定
 広島/福山/倉敷/岡山 発着7500円
 四国中央/新居浜/西条/今治/宇和島 発着3500円
 ふなやさんの豪華ランチ、入浴付のお得なプランです。
 お問い合せ:松山はいく事務局089−945−6445まで



俳句対局
第三回 龍天王決定戦
5月2日(土)
開催決定!
詳細は次号!



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編集後記


 例年になく、今年のまる裏俳句甲子園は、観客からとても好評だった。
 元々は、十亀わらさんが「私も俳句甲子園に出たかった」という要望から誕生した大会。第二回大会からは、俳句甲子園の支援を目的にし、この日から俳句甲子園の協賛が始まるようになった。
 大会の当初から、俳句甲子園OBOGの参加はあった。しかし、大人の俳句力には全く歯が立たず、予選通過もままならない時代が続いていた。
 それが変わってきたのは、ここ2、3年。俳句甲子園の歴史が積み上がってきたのと同時に、壇上に十代の俳人が上がることは、珍しいことではないようになった。それに伴い、ここ数年、大人の議論も俳句甲子園的になってきたように思う。
 更に今回の大会は、チーム「ニューグランドホテルズ」が、様々な方法で俳句の議論を牽引し、それを十代の学生たちが、それぞれのスタンスで受け止め、戦いに挑むという、今までにない展開が、会場を大いに沸かせた。
 今年のまる裏俳句甲子園は、年齢性別を超え、俳句を楽しみ、俳句に挑む大会として、新たな一歩を踏み出した様に思えた。
(キム)


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次号予告 (209号 4月1日発行予定)


次回特集

第四回
大人のための句集を作ろう!
コンテスト
結果発表


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2015年3月号(No.208)
2015年3月1日発行
価格 617円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子