100年俳句計画12月号(no.193)


100年俳句計画12月号(no.193)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
鼓動 あねご


特集
選評という名の創作! 選評大賞2013



好評連載


作品

百年百花
 大塚迷路/谷さやん/マイマイ/行広遊人


放歌高吟/夏井いつき

100年俳句計画作品集 100年の旗手
 てんきゅう/蛇頭/哲白


百年琢磨 津川絵理子

新100年への軌跡
 俳句/川又夕/若狭昭宏
 評/都築まとむ/樫の木


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/加根兼光


へたうま仙女/杉山久子

自由律俳句計画/きむらけんじ

詰め俳句計画/マイマイ



読み物
Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
クロヌリ俳句/黒田マキ
お芝居観ませんか?
百年歳時記/夏井いつき
mhm通信/暇人
句集の本棚

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー


鼓動
あねご

 2006年の大忘年会は組長の句集「梟」の出版記念にちなんで「梟」の句を持って参加することになっとった。寝る前、作句のヒントになろかと買うただちの梟の句集を開いた途端、ページの真ん中に生身の心臓がドクドクと脈打って鎮座しとったもんでたまげて句集を閉じた。がいにリアルじゃったけん忘年会まで句集をよう開けなんだ。
 「梟」は伊月集の第二句集ということらしかった。第一句集は残念ながら今は手に入らんのじゃと。どんなもんが飛び出したんじゃろかなあ。
 それはそうとつい最近、小さな音の鳴る句集を手に入れた。開くとからからころと乾いた音がしてちょっと切ない。


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特集
選評という名の創作!

選評大賞2013




 毎年恒例の選評大賞も、今回で7回目。連載中の「100年の旗手」に掲載された360句の中から好きな俳句を選び、20文字×15行(計300文字)の書式の中で、選評という創作に挑む企画である。
 今回の応募総数は21点。審査は、詩人 堀内統義氏、愛媛大学教育学部教員 中西淳氏、俳人 夏井いつきの3名にて行われた。
 今年は様々なスタイルの質の高い選評が揃い、悩む審査員。果たして結果は。
(進行は編集長)


審査の方法

 審査は、各投稿作品に1〜21番までの番号を振り、作者無記名で行った。
 各審査員が事前に推薦する作品を選び、議論によって、入賞作品及び優秀作品を決定した。
(文中、応募者の名前の後にある番号は、審査に使用した番号) 

 入選作品

更紗 6

月涼しテトラポッドの底へ影 かのこ

 テトラポッドは波殺し。防波堤付近に無造作に積み上げられ「転落危険」の警告がある。
 渚の美しさを損なう無機質な人工物なのに心惹かれるのは何故だろう。近寄ってその暗い空隙を覗き込んでしまうのは何故だろう。
 夏の月が海岸一帯を明るく照らしている。
 引き潮の時刻、穏やかな波の音。昼間の炎熱のさめた防波堤に立つと、夜の海が心地よい風を運んでくる。太古から輝く月と現代の建造物とが調和して美しい世界を垣間見せる。
 テトラポッドに差し込む月明かり。自分の影が底へ届いたその時、ふいに心の封印が解けてしまった。過ぎた悲しみが呼び覚まされる。それを優しく包み込んでくれるのは頭上の涼しい月だ。今夜来てよかったと月を仰ぐ。


編 中西さんと堀内さんが選んでます。
夏井 一、二段落の重ねる語りは魅力。三、四段落の説明っぽさと読みの方向性が少々ひっかかる。原句はこういう読みを必要としてるのか? 後半段落と原句との関係に疑問の余地があった。
中西 だいたい同意見。一押しではないが残したい作品。私はこの句自体について、「へ」という方向性を持つ助詞と「影」との関係がわかり辛いと初読に思った。そんな句を解き明かすような選評の書き方が面白い。問題点については夏井さんと同意見。もう一つ付け加えるなら最後の「今夜来てよかった」の部分。この句、そんな風に思う句なのかな?
堀内 今回は傾向として、物語系の選評が多かった。自分の中に句を引き込んでストーリーを作ってしまうタイプの選評。
中西 前回の審査では選評のタイプについて明確に語ったんですよね。物語系の選評と、季語や効果についてしっかり踏まえていく解説系の選評とがあるよ、と。
堀内 この評は両方のスタイルが程よく調和してると思う。「心の封印」「来てよかった」等は物語系らしいんだけど、そのほかの部分でちゃんと解説してる。
夏井 私も違う作品にだけど同じ感想を抱いた。両方の味が溶け合った魅力は新鮮。



森本樹朋 9

着信の点滅木菟の耳立つ夜 ふづき

 寒い夜だ。突然机の上に置いてあった携帯電話が鳴りだした。こんな時間に電話してくる相手は察しがつく。そして電話の内容も想像できる。電話に出ず放置しておくと、しばらくして鳴り止んだ。その後は、海蛍のような青い光を放ちながら点滅を繰返している。
 外の闇の中では、木菟が耳を立て獲物のたてる微かな音に神経を集中している。橙色の丸い目は、視線を移動させながら周囲を窺っている。闇の中に微かな音と動きを察知したようだ。耳はさらに立つ。
 携帯電話の普段緩慢に見える点滅も、今夜は張り詰めた緊張感に満ちている。それはまるで、闇の中で獲物を狙っている木菟の押し殺した息遣いのようである。


編 夏井さんと中西さんが選んでます。
夏井 丁寧に光景を想像して描く良さ。長文にせず、少しずつ刻みながら描写するのも良い。惜しいのは三段落目。もう一押し描写するかと思いきや、一、二段落を統合して終わってしまった。もう一声味わいたい。でも臨場感はありましたね。
中西 句跨りの取り合わせを段落毎に丁寧に解説してその関係性を語る。締めの一文も無駄な言葉を付け足さないで語り終えている。句の緊張感に焦点を合わせているので語りの不自然さもない。もう一押しの魅力には欠けますが、丁寧にまとめられてますし候補に挙げたいですね。私は三段落のまとめも悪くないと思ってます。私自身の書く文章に近いので共感してしまう部分もある(笑)。
堀内 最初は残してたんだけど。僕は「こんな時間に電話してくる相手は察しがつく」のくだりから、軽い電話の相手を想像した。放っておいていいような電話の相手なのになぜ緊張感を感じるんだろう?と思ってしまった。僕の読みが違うのかもしれないけど、理解しきれなくて。
夏井 私は出たくない系の電話だと読んだ。またこの人だよ〜……みたいな。
中西 だけど出たくない(笑)。「海蛍のような青い光」もそう思わせます。
夏井 この選評の中にも6番と同じく物語系と解説系が溶けあってる部分がある。「電話の内容も想像できる」等の部分。でも一句の中にある緊張感はちゃんと表現できてる。後半出てくる木菟のくだりで無理なく含ませてきた。
編 どちらかというと好評価?
夏井 ダメという点がない、ってところですね。私的には三段落目でもっと盛り上がりが欲しいけど――
中西 僕は三段落目のまとまりを良しとしてる、と。お互い、自分の書く物がそんな傾向なんでしょうね(笑)



めいおう星 11

金色の河鹿の笛を拾ひけり かのこ

 どこまでも透明でいながら、少量の血液が流れているような河鹿笛は、かそけき金管楽器の手触りにも似て、今此処に在る山河に染み渡る。
 「拾ひけり」というそこはかとないたどたどしさを醸し出す詠嘆の余韻が効いている。微かなかなしびのような感慨とともに、自分自身すら心許なく透けていくような夕べ。そんな水辺で作者は金色の小さな笛を拾う。
 刹那、くらりと入れ替わる詩的世界の虚と実。作者の手の中に輝くひんやりとした象りこそ河鹿笛。この世のものならぬ河鹿の笛を拾った作者の体と心は、吹きすぎる水辺の風にひかり透けてゆく。そして誰もいなくなった。小さな金の笛だけを残して。


編 堀内さんと夏井さんが選んでます。
堀内 河鹿笛って河鹿の鳴き声を言うんでしょう? この作者はその笛を実在の物として設定しちゃって語るんだよね。違うとわかっていながらも、この人の文章を読んでいくうちに世界に引き込まれていた。謎はあるけどそれが魅力的。
夏井 句自体が不思議な虚の世界の句。だから選評もその世界に立って語り始める。提示の仕方の意外さに惹かれる表現が多くあった。「どこまでも透明でいながら」は河鹿の声だろうけど、その音に対して「血の流れる」という表現だとか、「かそけき手触り」の触感だとか。どっしりと詠嘆する「けり」を「そこはかとないたどたどしさ」と読むのも独特。だんだん手の中に「河鹿の笛」があるような気がしてくる。原句への読みをいちいち塗り替えさせられながら、時間をかけて読むことで魅力が増していく選評。三段落目の冷静な分析が入ってくる辺りはある部分感心しつつ、ある部分わかりにくいなと思いながら読んだ。最後のまとめは少し損。アガサ・クリスティーかよ!と。前半が面白いだけに最後の二文が少し勿体ない。が、捨てがたい味がある。
中西 本当の笛なのか、見立てなのか。判断をつけかねる微妙さがこの句の面白さではあるし、その本来の魅力は捉えてる。しかし選評としては、もう少し解説をしてほしかった。出来は悪くないんだけど。
堀内 さらっと一読でわからせる選評の書き方もあるけど、この作品のように何回も読み直して世界に入っていかせる手法もある。そこを僕は肯定的に評価したい。
夏井 「見立て」と限定しても、また「完全な虚の句」だと限定しても句の面白さが減ってしまう以上、読みを限定することはできない。そういう意味で、虚実入り交じる選評の書き方は正しい。しかし正しいだけに留まらず、謎を詩に仕立てながら進めている。力のある方があえて難しいものに挑んだんだろうと感じた。
編 一つ疑問が。この選評を読んで句が正しく伝わりますかね?
夏井 私は十分伝わると思う。
中西 ギリギリかなあ。雰囲気は伝わるけど「そこはかとない」「醸し出す」「かそけき」等の言葉の並び故に伝わるようで伝わってこないところがなきにしも……。



瑞木 19

ぶっちぎりで来てアンカーが平泳ぎとは 日暮屋

 なあ速いの揃ったんやろ、クラス対抗リレー。楽しみやな。一番手の田中、えらい色白いけど大丈夫なんか。へえ小六の時、市で一番なあ。ああ、本当や。きれいなフォームのクロールや。二番手の岡、サッカーだけやないんか。泳ぐのも速いのお。三番手の竹内はさすが水泳部のエースや。ぶっちぎりでもんて来よる。で、アンカーは村上か。島育ちで泳ぎは得意やて自慢しよったもんな。よし行け村上。っておい、あいつ平泳ぎやないか。何キロでも泳げるって、今日は25メートルが勝負やで。お前の犬かきクロールより速い言うても平泳ぎは平泳ぎや。ほれ二組が迫って来よるやないか。頑張れ村上、もう少しや。勝ったらジュースおごったるぞー。


編 中西さんと夏井さんが選んでます。
中西 意図的に物語系の選評。物語の中に埋没して語っていく。ただただ面白いですね。リアルに情景が浮んでくる。一押しではないけど(笑)。
夏井 今回の俎上に全てはあげられませんが、同系統の作品がいくつかありました。内容を他に解釈しようがないから、この句への選評がこうなるのは想定内。しかし原句の面白さ以上のものが選評に入ってきていないのは残念。句の底に隠しているものを選評が語り出すかどうかがこういう作品の選評の難しいところですね。……読んで単純に面白かったけど(笑)。
堀内 僕はぶっちぎりでこの選評落とした。当たり前すぎるじゃない(笑)。平泳ぎだって速い人は速いよ(笑)。
夏井 アイデアとしては面白いんだけどね。前回最優秀賞が物語系でしたけど、それを越えるかがこのタイプの選評に対するボーダーラインの一つでしょうか。



亜桜みかり 20

やはやはと崩るる椅子のカーディガン 香雪蘭

 真っ直ぐ戻ってきたワンルーム。木の椅子の背にかけるやいなや「やはやは」と崩れていくのはカシミヤの紺の「カーディガン」。椅子の座面へと崩れていきながら、小さな貝釦が泣き声のような微かな音を立てた。
 わたしの抜け殻そのものの「カーディガン」は、体温を残したまま脱力するように崩れるのだ。わたしはといえば、まだ眉間の堅さはとれず、安堵感の欠片も手にしてはいない。今日のプレゼンは及第点とは言えない。彼からの折り返し着信はまだない。
 インクブルーの独り掛けのソファに身を沈め、僅かな体温をゆっくりと手放す。ひんやりと「カーディガン」を掬い上げるために必要なのは、しばしの独りの時間のようだ。


編 堀内さんと夏井さんが選んでます。
堀内 着ている物を「自分の抜け殻」と語るのは詩の世界でもよくある表現・視線ではあるが、最後の「必要なのは、しばしの独りの時間のようだ」に孤独な時間の輝きを捉えたような魅力があった。
夏井 読者が句の登場人物になって、何気ない場面を追体験しているのが非常に素直に伝わってくる。工夫や驚くような視点があるわけではないが、実感に満ちてるのが好感。終わり方が自然で納得がいくのも珍しい。
中西 良さの理由はやはり最後の部分。だけど、プレゼンや彼からの折り返しのくだりはイマイチ。「インクブルーの独り掛け」とまで語ってしまうなど、世界に入ってはいるんですが多少の抵抗感を感じました。展開・内容自体はいいんだけど。
夏井 そこは私も初読で違和感を感じた。「ここから物語の中に入っていくのか」と意識してしまう。しかし読み返していくと一人暮らしのOLの実感を畳み掛けるような効果がこの二行にあるかなと。
堀内 同じく。句の世界を素直に受け止めて自分なりの物語を作っていってる。
夏井 今回、物語系の選評は強引なのが多かった。あるいは19番のように句をそのままなぞって面白がらせるだけか。そんな中、こんな二行をするっと入れることで作品の世界をふくらませている効果はある。
編 一人暮らしの女性の光景だと言われると納得感がありますね。
夏井 句に対して読みが正しいね。11番のような句とは全く違う世界で、多様な読みはさほど存在しない。「やはやは」の擬音や句の展開を思うと女性以外にも考え辛いし、語ってる内容にエラーはない。



鯛飯 7

立春のしづくを切つてたたむ傘 ふづき

 「立春」の雨を歩いてきた傘を玄関先でくるりと回す。祝祭のように弾け飛ぶ「しづく」が放つ微かな春の煌めきに、微笑みながら傘を「たたむ」。ありふれた光景でありながら、まるで映画の一場面のように、しなやかな所作と柔らかな光が映し出される。寒さは厳しいが何かに春の兆しを嗅ぎとりたい、「立春」の今日ならではの心持ちが伝わって来る。
 上五から中七へ続くイ音は、シャリシャリ尖る冬の音。一転して下五で畳込むア音は、冷えた掌に吹きかける春の息づかいだ。本格的な春へ出発する一日を、音韻で暗示する。
 たたまれた「傘」に残る、シャンパンの気泡のごとき微細な「しづく」もまた、作者によって掬い取られた春光の欠片なのだろう。


堀内 僕だけが取ってます。オーソドックスというか、王道な選評。
夏井 今回この手の選評が少なかったですよね。一段落目で俳句の世界の光景を言葉で書き加えながら展開する。二段落目で音韻の効果を押さえていく。二段落目、イ音・ア音へのこの人なりの感覚を書いて下さってるのがいい。句に対して、「こんな読みをすればこういう魅力が出てくるんだ」とプラスアルファを添えてる。三段落目も着地として無理なく美しい。光のイメージで全体を終え、句の光景と同じところに収斂していく。よく考えてらっしゃるんじゃないかな。
中西 特に最後の三行が気持ち良くまとまってますね。私が頂かなかった理由は、二段目のイ音のくだりに違和感を感じたから。「り」「し」を「続くイ音」と捉えられるのかな? 面白いとは思うんだけど。あと、一番ひっかかったのは「滴を切って」の部分。最初の景の部分を「くるくる回して水を切る」だと私は思わなかった。むしろシュッとしなやかに水を切ってるイメージだった。想像した景の違いで寄り添いきれず。
夏井 私は句を読んだとき、若い女性の傘だとイメージしたんですよ。だから一段落の「祝祭のように弾け飛ぶ」も自然に受け入れられた。
中西 よく考えれば「切って」「たたむ」んだから、回す姿でも自然なのか……そこまで考えなかったなあ。
堀内 マイストーリーに引き込む物語系選評が多かった中、この選評は気持ちいい。候補に残したいな。



樫の木 14

天狼あをあを仔牛の耳にバーコード ふづき

 牛の騒ぐ気配で牛飼は目を覚ました。時刻は午前一時少し前。寝巻にアノラックを羽織って戸外に出る。冷たい空気。しばれる夜。見上げれば満天の星。ひときわ明るく青いのはシリウス。「シリウスは中国では天狼星という。」中学の理科の時間に習った。昔この辺りには狼が出た。百年以上前の話。牛小屋に入る。牛達は昂ぶっている。明日は仔牛を競りに出す日。牛は知っている。仔牛の耳には黄色いタグ。バーコードのタグ。小刻みに揺れている。「今夜はもう眠れ。」「心配せずに眠れ。」一頭一頭に声をかける。やがて牛は静まる。牛飼は外に出る。シリウスはさっきより高い場所。青く青く瞬く。「あしたは晴れ……」牛飼は呟く。小さく伸びをする。


夏井 私しか選んでないけど、書き方が特徴的なので議論に挙げさせて下さい。
堀内 これも物語系。「子牛の耳にバーコード」にもっと着目して書いてたら良かった。売られていく牛の運命や存在の切なさに触れた方がより良いように思う。
夏井 牛飼いが見上げる天狼の青さに言葉を尽くしてますが、私はこれはこれで良いと思う。バーコードに深入りしたら、どうあっても同じような話になっちゃうと思うんですよね。ドナドナ的な(笑)。あと、この選評は物語系の中でも特異。どっぷりと原句の世界のストーリーを辿ってた作品が多い中、詩としての思いを表現しようとした意志が感じられた。
中西 あえて言うなら「中学の理科の時間に習った」の一文が純度を落してるよね。それがなければ候補に挙げてたかなあ。
堀内 僕もそう(笑)。
夏井 のっぺりと素顔が現れた感じがありましたね(笑)。



神楽坂リンダ 10

淋しさに名前をつける半夏生 むめも

 そうかそういう方法があったのかと思いました。淋しいときに「淋しさ」を持て余して落ち込むのでは辛すぎます。かたちなき「淋しさ」に具体的な「名前」をつけちゃっていいのですね。たとえばトリュフとか?ジュレも可愛いしポワレはおいしそう。ちゃんぽん麺は如何?お好みで何でも。「名前」をつけてやることで内なる「淋しさ」がほんの少し自分から離れるような気がします。どっぷり浸かるのではなく「淋しさ」と向き合えます。
 「半夏生」というどことなく水気を含んだ美しい季語が「淋しさ」と柔らかく響きあっています。名前つきの親しき「淋しさ」とそこそこうまく付き合っているうちに、梅雨が明け、晴れ渡った青天の夏が来るものです。


編 最後に、全員が選んでいる作品。
中西 読んでる人のつぶやきを素直に自然に丁寧に語っていくのが特徴的。それでいて本人の特色も伝わる。こんな風に物の名前を具体的にあげていくと「つけちゃっていいのですね」の口語的な語りも許せてしまう(笑)。「向き合う」というところも的確な言葉かな。一つ気になったのは最後「付き合っているうちに〜夏が来るものです」の部分。どういうニュアンスなんだろう?「きます」くらいでいい気もするんですが。
夏井 「来るというものです」みたいなニュアンスだろうとは思うんですけど。「来るのです」と断定をするのではなく「上手く付き合ってるうちに夏って来ちゃうんだよね」みたいな味を出したいんだと思う。かといって「来ちゃうんだよね」とも書けないし、「来るというものです」と書いちゃうと文字数越えちゃうし。
堀内 物の列挙が愉快で楽しいね。「向き合えます」「来るものです」などの素朴な文体の調子に好感を持った。
夏井 選評を書くとなったら「なのだ調」でやりたくなりがち。しかしこの形態で語るものは語りつつ、作者の人柄が文章の向こうから出てくる。おまけにその人柄が俳句に対して好作用を生み出してるよね。季語への把握も新鮮だった。単純に物を列挙して行数を稼いでるんじゃなくて、ピンポイントで必要な部分は押さえてるのがいい。中西先生の言う二行の部分も気にはなったんですが、繰返し読むうちにニュアンスに納得してきたというか、許容してもいいのかな、と。
編 半夏生ってこんな季語なんでしょうか?この句はこんな美しいことが言いたかったんだろうか、とも思いますが。
夏井 「淋しさに名前をつける」のあとにはどんな季語を持ってきてもある程度成立する。句の作者があえてこんなクセのある(と私は思ってる)季語を選んでいる効果については考えないといけない。半夏生に対する、この人なりの新しい魅力の提示をしてくれることによって、原句に新しい魅力を添えてくれる。今回の審査の中で何度か話題に出たけど、句に新たな魅力を加える選評が魅力なのであって、ただ原句を分解して説明してるだけでは選評の価値としては充分じゃないのでないかとこの選評に思わされた。



 最優秀賞候補三編

編 議論で感触が良かったのは、番号の若い順に10番、11番、20番あたり。10番は、この方ならではのとらえ方をした季語半夏生に対して、納得させる前半が特徴的。三人全員が選んだのはこれだけです。11番は解釈が多様な句に対して何度も読ませることで納得させる、魅力ある作品。20番は物語を展開をさせながらも句の世界をスムーズに納得させる、去年の最優秀作品に近い作品でした。それぞれ色合いが違います。
夏井 対照的な味わいになったね。ここまで完成度が高ければ最優秀賞を出すのに躊躇がない。かつてない良い迷いだね。
中西 文体や特徴が違う三編が残ったのが感慨深いですね。前回の選評会の時にも物語系と解説系との話はしましたが。
夏井 どちらのタイプもレベル上がってます。今回はさらにそのテイストをうまく一つに溶かしあわせた作品が出てきた。一年間皆さんが一生懸命工夫してこんな作品が出てきたことが大きな実りですね。
編 秀作が多いですが一本に絞って下さい。
夏井 順当に考えれば10番か。判定基準として三人全員が選んでるのは明確です。そう思いつつ、残りの二つが捨てがたくて困ってるんですけど(苦笑)。堀内先生は比較的20番を推してます?
堀内 迷ってる……(笑)。
中西 終わりの一文が本当にいいんですよね、20番は。俳句を膨らませてて。
夏井 それ言うなら3つともすごく豊かにしてますよ。10番の半夏生もそうだし、一見分かり辛い魅力を説く11番もすごい。最後の二文だけ少し気になるけど。
堀内 全員選んでる10番がベストかなあ。
夏井 10番のような、句の世界を広げるタイプの選評も最優秀賞として残しておきたいですよね、今後のために。今回物語系の作品が多かったのは、前回の最優秀賞を受けての影響が大きいと思う。応募作品がそのスタイルだけに偏ってしまうと、今後の方向性を限定してしまうことにもなる。悩みに悩みはしましたが、10番を選ぶにあたり「三人が選んだ作品」であることは作品の質として間違いないということでもあります。最優秀賞10番、11番と20番が優秀賞でいかがでしょう?この三つが登場することで、読者のみなさんがいろんなタイプの選評に挑む励みになってくれたらと思います。
全員 異議無し。
編 感想や次回以降への要望等があれば。
夏井 今回は一押しがないというより「どれか一つに絞れない」。いい意味での迷いを経験して、参加者のレベルアップを強く実感した。前回言った2パターンの選評の融合に挑んだ作品が生まれてきてるのもすごく嬉しい。
堀内 要望を言うなら、選んだ俳句の魅力を読者に提示しながら創造的な文章で書いて貰いたい。難しいことだとは思うんだけど、挑むことで力は育つ。さらに力をつけてもらえたらと思います。
中西 お二人の仰るとおり。これ以上というとかなり高度なレベルになるので申し上げたくはないんですが……あえて言うなら傷を無くす、ということでしょうか。文体・文の調子をもう一回見直してみると良いかと思います。たとえば10番の「来るものです」や、14番の中学の理科など、文の調子が変わっちゃう部分がある。それをなくすために、書き終えてから声に出して読んでほしい。耳で聞くと、調子の変化に違和感を感じることがある。そこで練り直すともっと良くなるはず。
編 誰にでもわかる解説も魅力ではあるけど、新たな読みを鮮やかに提示されると「選も創作」という言葉を強く実感します。
夏井 選評は基本的に二段構え。まずは俳句を正しく解釈してあげることが第一。そこがぶれると話にならない。そして、受け取った解釈からいかにプラスアルファを添えていくかが選評の技術。来年がまた楽しみです。


 最終結果

最優秀賞
 神楽坂リンダ

優秀賞
 めいおう星
 亜桜みかり

入賞
 更紗
 森本樹朋
 瑞木
 鯛飯
 樫の木


*各賞の表彰は、12月7日開催の100年俳句計画大忘年会にて行います。


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2013年度 第三期 1回目


「無かり」大塚迷路

水底の石を思へば鷹渡る
初めての人に会ふやう穴惑ひ
銀杏はレンジの中だけに爆づる
小さき火を小さき器に秋ゆくか
今朝の冬しんと食器に白き影
大根は減るは大根おろしは増えるは
北窓を塞ぐ貸す借る絞首台
白息と「卑怯」の下の助詞を言ふ
焚火透くこの世の記憶百に分解
(前書き:戦ふに挑みある神楽坂リンダ氏を思へば)
なにごとも無かり寒紅濃ゆく引こ
寒卵割つたときから中古品
薄紙が耐へ切れぬ夜の木菟よ


ここらで一発大逆転!といつも思っている。大逆転されたことはある。大器晩成だといつも思っている。長生きせんと大変だこりゃとぞ思ふ。




「つけ睫」谷さやん

露の秋子象駆け出しやすきかな
さまざまの殻寄せてくる秋の風
月光に返しそびれてゐる帽子
断念す地球のやうな檸檬手に
行く秋の夜の机に詰め寄られ
花束や十一月のつけ睫
つけまつげ青し茨の実もいまだ
秋の暮小さいけれど早い船
初時雨ナンにカレーの辛きこと
ひたすらに歩く靴底冷たくて
木枯一号ごめんなさいと言へ
冬が来る水は水しか呼んでないのに


1958年生まれ。句集『逢ひに行く』で、宗左近俳句大賞受賞。坪内稔典/谷さやん共編『不器男百句』(創風社出版)。評伝『芝不器男への旅』(創風社出版)。




「酷似」マイマイ

ベランダにあり石鎚山も立冬も
守秘義務や噛めばセロリの繊維なぞ
冬の雨唄でハワイに行かんかな
欠伸だって伝染るさ勤労感謝の日
ジェット機とねじれの位置に冬の帰路
特定秘密保護法案湯割四対六
山茶花に白あるようにすらすら嘘
鳶鳴き交わす海峡の冬麗へ
木漏れ日と海投げかえす陽の酷似
ミキサー食の冬至南瓜の色ですよ
千代さんの夢は枯野のどのあたり
金星を滅ぼす鯨浮上せよ


最近は鬼平犯科帳の再放送を録画してだらだら見るのが楽しみ。密偵の中では伊三次のいなせな感じが好き。旨いものが食べたくなって困る。




「救急箱」行広遊人

立冬の救急箱を点検す
黄緑の産毛のやうな冬田かな
ひとつひとつ鳥のごとくに冬菜畑
走り根の碧き海原神無月
小六月看板のなきレストラン
冬霞ヘリコプターを泳がせて
攫はれて来て梟の変はらぬ眼
子供等のあと老人等熊の前
鼻水や声掛けようか止めようか
木の葉髪大我儘と言はれたし
年上はいつもとしうへ冬あたたか
何処までもゆきたき道や冬の草


1945年愛媛県大洲市生まれ。松山市在住。主婦歴45年。俳句歴24年。牡牛座。趣味:散歩・テレビ・ラジオ。




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放歌高吟


最終回

露の力
夏井いつき

記紀の明るさにふえくる小鳥かな
神在の月こそ楽しけれ酒も
山彦をつかみ損ねて鳥威し
この光るものも鳥威しであるか
十方へ散るやひかりの飛蝗たち
菊人形となる前の首置いてある
松手入れ終えたり修羅の家深閑
さびしさに葦の穂絮を打ちに打つ
きゅんと鳴きそうに転びて露の玉
露ころがり出さんとひかり膨らみ来
しろがねの露たばしれる無音界
露は露の力をひかるばかりなり


 毎朝パソコンを点け、Yahoo!ニュースに目を通すところから一日が始まる。日本の出来事、世界の動静を一通り眺める。興味があるわけではないが、芸能ニュースも目に入る。先日報道された、タモリさんが『笑っていいとも』を降板するという話題。32年間続けてこられたと知り、唸った。我がラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』の12年なんぞはまだまだヒヨッコだ。
 来年3月で番組を引くタモリさんに触発されたわけではないが、私も来年の8月をもって我が社を引き、一人の俳人としての活動にシフトする。マネージメントは引き続きマルコボ.コムにお願いするが、会社組織からは完全に外れる。
 兼ねてから本誌は「オープンな月刊誌のふりした夏井の結社誌」と見られがちで、「そんなケツの穴のこまい俳誌ちゃうで」と主張するために月刊俳句マガジン『いつき組』の名を捨て『100年俳句計画』と誌名を改めた。が、「夏井の選句欄がある以上は結社誌」「主宰誌みたいに特別な欄に己の作品を載せてる」「組員じゃないから購読しない」等の声は根強いらしく、編集室サイドは、志を真っ当に受け止めてもらえないことに悩みを深めてきたという。
 その綿々たる訴えを聞き、どうしたものか……と私なりに悩みもしてきたが、よくよく考えてみれば、編集室が目指す方向性にとって「夏井いつき」の名が負荷を掛けるのであれば、『いつき組』の誌名を捨てたと同じにその名を消せばよいではないかと気づいた。あまりにもカンタンな方法だったので、拍子抜けするほどだ。
 編集室サイドが本誌で実現したいアイデアは沸々と渦巻いているに違いない。それをバックアップしてやることが年長者の務めではないかと思う。キム編集長が打ち出す企画を読者と共に愉しみたいと思う。
 となると、俳人夏井いつきはどこへ向かうのか。心配はご無用だ。俳句集団『いつき組』組長個人として、執筆活動と社会貢献に突き進む。我が作品は句集シングルの形で次々に発表していく。「俳句」を使った生涯教育に取り組み、「俳句」を軸としたコミュニケーションの輪を広げる。百年後を見据えて、やるべきことは山積みだ。
 その山積みの第一歩が、この連載をあっけらかんと終わらせることだ。100年俳句計画のために『いつき組』を失うこともないし、『いつき組』のために100年俳句計画が損なわれることもない。が、本誌の「地の塩」として、夏井いつきはこの誌面から去る準備に入る。本誌が立派に独立独歩踏み出す日がくれば、いつか夏井いつき個人に作品依頼が届くことだって有り得る。そんな痛快な未来を夢想しつつ、我が百年の志は「露の力」のごとく凜々と膨らむ。




夏井いつき公式ブログ「夏井いつきの100年俳句日記」

http://100nenhaiku.marukobo.com/


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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2013年10月号 〜 2013年12月号 3/3回目)


 小春 てんきゅう

聖堂に光の十字山眠る
冬苺潰して森の眠り解く
縄飛に打たれ大地のとばつちり
寒卵割る音空の青む音
羽根の裏痒いかゆいと白鳥は
冬の蠅弁財天の琵琶鳴らす
音読みと訓読みありて湯ざめの子
寒燈に御魂の如きガラス吹く
自転車に森の匂ひの冬帽子
万物に影あり小春日和かな


天使とキューピッドのハーフ。てんきゅうワールドの住人だが、2011年6月より木曜カルチャーに出没するようになる。人生に大切な三つは、酒と句友とサムマネー。たまに刺激を欲しがる。



 僕の昭和 蛇頭

情事めくマイルスを聴け冬ひばり
身の丈を生きる愉しさ花キャベツ
雪催い美に濁点があるように
凩やたばこのカンバンは赤い
皮衣僕の昭和とモダンジャズ
鮟鱇鍋赤坂見附下車十分
冬紅葉そのまま帰る女かな
風冴ゆる音叉の鼓動コルトレーン
冬木立良き魂の持主に
サックスの鈍き光の啼く枯野


1956年松山生まれの松山育ち。最近「ジャズさん」と呼んでくれる人が増えた。嬉しい。句座の酒が美味い。そして、ジャズ……。健康のため始めたマラソンにもハマり、毎日がワクワクで息苦しい。



 柊の花 哲白 

冷まじや出陣学徒の靴の音
唯ひとり雲に急かるる秋遍路
末枯やいまだ目覚めぬ蝶ひとつ
はぐれ猿人に媚びゐて秋深し
秋深むかに豆腐屋の笛尾を引きぬ
槇の実のほのかに甘し人遠し
分かち合ふ杯の温もり飛騨の古酒
うすらびや柊の花ついと落つ
母と子のお砂遊びや冬日向
畦道に座る猫の背暮早し


2007年12月号に初投句。身辺雑詠をコツコツ続けていますが、斬新な句風への脱皮は実現していません。身の丈に合った句作りを楽しみたいと思っています。



次回1月号〜3月号連載者決定

 8月から10月末までの期間、「この人の作品集を読んでみたい」という気になる俳人を、1人3名まで推薦していただきました。
 8月〜10月の推薦数を集計し、多くの推薦が集まった方に編集室より執筆を依頼した結果、連載を行う3名が決定しました。

 樹朋さん
 たまさん
 鞠月さん

 来月号より3か月間、こちらの3名が作品集を連載します。
 お楽しみに!

随時推薦募集中

 次々回連載者の推薦も募集しております。集計期間は1月末までとなります。集計は累積ではなく、毎回新たに集計しています。
 今回連載を行った3名の作品集の感想もお待ちしています!


読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(句会、誌面等)、推薦者ご自身の俳号(本名)、住所、電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ、FAX、Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、専用のインターネット投稿フォーム(http://www.marukobo.com/100kishu/)でも受け付けています。※投稿フォーム利用の場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 1月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 今回連載を行った3名の作品集の感想もお待ちしています!


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百年琢磨
 月光の連想 津川絵理子

「露万華」 哲白

仰向けに転がる蜂や秋陽沁む
 死期が近いのか、或いは既に死んでいるのか。秋の陽が非情なまでに濃く感じられる。

目覚めとは蘇ること露万華
 目覚めとは日々甦ることなのだ、という断定に納得する。そう思えると、毎日が新しく感じられるに違いない。そんな目で見つめる露は、まさに「万華」だろう。

秋霖や松の根太き母の里
 地にしっかり根を下ろして生きている松。その根の太さ、に母の逞しさを思う。秋霖の寂しさの底に息づいている母の故郷、即ち自身のルーツへと思いは広がる。


「挿頭(かざし)」 てんきゅう

秋晴の伊勢に始まるご朱印帳
 骨格がしっかりした句。秋晴が作者の心の晴れを表しているよう。「ご朱印帳」としたのは、伊勢という土地への憧れと親しみの表れか。神楽女の挿頭を揺らす千の月神楽女の挿頭に月の光が差して、キラキラ光っている。挿頭の飾のひとつひとつに月が宿っているかのようだ。月が揺らすと見たところが面白い。

鍵盤のごとく月夜の外階段
 階段が鍵盤に見えないことはないけれど、普段はこんな連想をすることは少ないのでは。月夜の外階段だからこそと思う。


「月光」 蛇頭

キャバレーの軋む舞台や文化の日
 文化の日でなくても良さそうな気もするのだが、上十二が面白かった。雰囲気が伝わってくる。

干柿や嫌な女に惚れる癖
 嫌な女、と言っても、本当に嫌な女ではないのだろう。小悪魔的な魅力があるのでは。そんな女に惚れる癖があって、今まで何度も辛い思いをしたのかもしれない。「干柿や」が「嫌な女」への皮肉に思えるのは、深読みに過ぎるだろうか。

すげ替える首見当たらぬ菊人形
 普通に読めば、菊人形の首、という実際の景なのだが、世相に対する批判にも思える。そこが面白い。


津川絵理子
1968年生れ。「南風」所属。句集『和音』。平成19年、俳人協会新人賞、角川俳句賞受賞。


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新 100年の軌跡


2013年度 第二期
第3回


いい婦の日 川又夕 

凩やプラチナに染む薬指
くちびるのしづかに待つて青蜜柑
時雨ゆく異国なら大胆になる
ハロウィンの仮面の窪みさへ淫ら
戻れなくなるやう痕の咲ける冬
マリッジブルー息白き空の底
日短や臀部のかたち歪めつつ
熊穴に入る肋骨を擽りぬ
ホログラム微かなる爪聖夜かな
太腿の領域は絹日記果つ
無駄となる言葉はなくて大晦日
新雪や結納飾り眺めをり
ウエディングドレスの乳房月の冴ゆ
ヴェールには世界の淡く冬薔薇
琉球の婚礼睦月十二日


川又夕
1987年愛媛県生まれ。愛媛県立今治西高校、同志社大学卒業。10年前より俳句甲子園に3年連続出場。第2回NHK学生俳句チャンピオン決定戦優勝。京都、神戸を経て、現在NHK松山放送局勤務。




展開図 若狭昭宏

冬の地球星の鎖にとらはるる
「未だ」といふ意味の確かさ冬ぬくし
迷ひ子を肩にオリオン目指しけり
地も空も国境開放せる聖夜
大人では出せぬ答えや山茶花
息白しこれつぽつちの骨となる
檸檬切る表も裏も展開図
子の欲しき家に幼き雪女
約束の時間更新霜雫
二人分着ぶくれてゐる二人かな
年守るや産声を待つ部屋広し
足して二で割つたやうな子玉珊瑚
氷晶に占ふペール・ブルー・ドット
「   」を全て埋めても春遠し
除夜の鐘星に戻れる地球かな


若狭昭宏
1985年12月8日生 広島県出身。安芸南高校より第6回俳句甲子園出場。俳句Webマガジン「スピカ」2013年8月連載。




季語と出合う 都築まとむ

凩やプラチナに染む薬指 川又夕
 「凩」だから「プラチナに染む」のだろう。薬指の指輪の違和感なのだろう。それは拘束の証であり、いつか感じなくなる違和感は安らぎかもしれない。

ウエディングドレスの乳房月の冴ゆ 川又夕
 この乳房は硬い肉体であり、固い決心だと思った。結婚式前夜の月はその硬い固い乳房よりも硬質で冴えている。美しい光景だ。

息白しこれつぽつちの骨となる 若狭昭宏
 「これつぽつちの骨」で納骨の一場面を想像した。人間も骨になれば本当に「これつぽつち」。今生きて白い息を吐いている私も、骨になれば小さな白い嵩になるのだ。

除夜の鐘星に戻れる地球かな 若狭昭宏
 除夜の鐘を聞きながら空を見上げる。地球が星だったという当たり前のことにふっと気付く。「星に戻れる地球かな」という詠嘆は自分が自分を取り戻す時間のようでもある。

 お二人とも冬の中に秋の季語が紛れ込んでいて、季節が行ったり来たりしたところがもったいなかったです。


1961年愛媛県八幡浜市生まれ。自分の句歴11年に驚くばかり。第3回選評大賞優秀賞。



やがて来る未来 樫の木

 川又さんの句は指、くちびる、臀部、肋骨、爪、太腿、乳房などの言葉により肉体を意識させられる。句は一つの場面で全体で一つのストーリーが見えてくる。

凩やプラチナに染む薬指 川又夕
 プラチナの指輪の輝きは薬指を染める。その幸福と同時に凩と指輪の冷たさを感じている。指輪は契約の印、その契約の重みは時として心をしばる。

ホログラム微かなる爪聖夜かな 川又夕
 ホログラムで飾りたてた爪。やがて表面が傷つき輝きは失われてゆく。聖夜の賑やかさも仮初めのもの。

息白しこれつぽつちの骨となる 若狭昭宏
 「白い息」と「白い骨」、「肉体の熱、重み」と「骨の冷たさ、軽さ」の対比。これつぽつちに喪失感がある。
 若狭さんの句「ペール ブルー ドット」は1990年にボイジャー一号が太陽系の端、約60億キロ離れた位置から撮影した地球の写真につけられた名称。

氷晶に占ふペール ブルー ドット 若狭昭宏
 「氷晶(ダイヤモンドダスト)」と「ペール ブルー ドット」、どちらともちっぽけで、けれど光に満ちた存在。そして氷晶は儚い。地球の未来は……。


1965年愛媛県生まれ。大分県在住の家具職人。第5回選評大賞優秀賞。


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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。今回の先選者は、阪西敦子さんと加根兼光さん。後選者は、関悦史さんです。

 「へたうま仙女」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は杉山久子さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:白鯨


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 関悦史

 中井久夫と吉増剛造の両氏が今年の文化功労者に選ばれました(他にももちろん大勢いるのですが)。
 中井久夫氏は精神科医・研究者としての感受性と洞察力が人間離れしていて「賢人」と呼ばれるにふさわしい存在。現代ギリシャ詩の翻訳などもしています。
 吉増剛造氏は世界中の他者の声を受信して驚くべき異形のテクストに刻み付けていく霊媒的な詩人。俳句を作るくらいの人にはどちらも読んでほしい著作家です。



ピータンのむにと潰れし星月夜 理酔

 「むに」が適切で愛嬌があって面白い。「牟尼」(賢者・聖者)や、「無二」にも連想がひろがり、潰されたピータンが弾力とともに奇妙な存在感を持ち始めます。擬人法的な表現ではないのに、たやすく潰される聖賢というキャラクター性を帯び、しかもそれが質感を通じた写実から発している。室内と「星月夜」の齟齬が写実と取るなら難ですが、キャラクター性への影響に鑑み、あえてマイナスには取りませんでした。



腕組みの六人が見るコンバイン ポメロ親父
 コンバインを運転する一人よりも、無為に眺める六人の方が偉そうに見えるというおかしみがあり、客観写生句ならではのナンセンスの味わい。機械の故障に手を拱いている図とも取れますが稼働中と見るべきでしょう。

集会所の鍵開けづらし秋の雨 空
 始終開けるところではないのでしょう。無人の時間の方が長い「集会所」に降る「秋の雨」、そしてその間に挟まった固い鍵の手応えが相俟って、日本の建物以外の何ものでもない情感と質感が立ち上がります。

三叉路は今から寒くなるポスト 大塚めろ
 ポストから寒さを連想・予感する、そのポストは三叉路にある、しかも毎年のこととして予感できるわけだからそこは馴染みの通りであるという複数の事柄を「は」でつなぎ合わせ、歩行感もあるという技と鮮度の佳句。

ふた粒の椎の実眼鏡ケースより さわらび
 「眼鏡ケース」はいかにも椎の実など入れそうでありながら意外性もあり、ほぼただ事なのに名状しがたい淡い感慨あり。それは椎の実と眼鏡ケースの取り合わせの距離感から来ています。「一粒」だと却って重くなる。



川たゆたゆと雲映し下り梁 のり茶づけ
首しめた人あまたゐて秋深む 藍人
団栗の二個転がりて本を読む 富士山
光る頭光る目玉のとんぼかな みちる
秋の旅自由は土佐の山間に こぼれ花
黒蜜の葛きり絶品古城跡 松ぼっくり
網膜に一匹の蟻九月尽 ターナー島
雲の間を光の帯や秋の海 香
商店の看板残し白木槿 あおい
ふるさとの蚯蚓鳴け鳴け鉄格子 浜田節
秋澄みて小田和正の歌声も エノコロちゃん


先選者 阪西敦子

 寒さが苦手な私にとって、苦しい季節がやってきた。けれども、和装がしやすくなったのは嬉しいこと。夏の和装は涼しげだけれど、なかなかの一苦労だ。十一月からがもっとも着物に適している。といっても、お金はかけられない。祖母や母、その友人たちから集まってきたものを取りあわせて、新たな発見を楽しむ。
 先日、関さんにお会いしたときに、洋装が珍しいと言っていただいた。お会いする機会が祝賀会などに多いためだけれど、句を褒められるほどには誇らしい。



二粒の赤い実三羽の小鳥 お手玉

 赤い実が二粒あって、小鳥が三羽いるというだけ。もちろんほかにも、葉があったり、風が吹いたり、しているのだろうけれど、このようにいわれるとそれ以外は色をなくしたようだ。艶やかな赤い実に小鳥の羽、そこに転がる秋晴の日ざしがもう一人の主役か。数字のバランスも、無造作に見えて心地よい。小鳥が実を食べると決まったわけではないが、一羽が食べ損ねる気がするのも、また楽しい。むずかしいことを考えず、唱える。



あきあかね谷狭ければ小さき環 樹朋
 作者の発見か、感覚か、それはもう分かつことはできないものだけれど、小さな谷に押し狭められたような赤とんぼの軌道。狭ければと、一見理屈のように述べながら、句の鮮度が落ちないのは、事実の切り取り方の妙。

胡桃割るジンはスカンジナビアの香 野風
 ジンてスカンジナビアの香なのか。いや、私にとっては、スカンジナビアの香ってジンみたいなのかということなのだけれど。ジンを傍らに胡桃を割るゆったりした時間に、スカンジナビアの記憶が戻ったのだろうか。どこにも着地しない木の葉のような句。

児の立ちて金木犀の零るるよ 七草
 小さな子が立ち上がって、体に触れてであったり、その服の隙間に積もっていたりして、金木犀がこぼれた。明るく清潔で凛凛とした句。ふと、まったく関わりなく、同じタイミングでこぼれたとしたらと思う。それが一番良いようにも思う。

星月夜水の生まるる村照らす 一心堂
 水の生まるる村とは水源のある村。その星月夜はさぞ星に埋め尽くされることだろう。村は、月の一点からさす光ではなく、空じゅうの星から照らされている。その中でひときわ明るいのが川。不思議な呼応でもある。

しんしんと黄落の日の地のおもて ターナー島
 地のおもてと言ったって、うらもないものだけれど、逆に広い地の全てが見える。日の当たる所も、黄落の影の落ちる所も、木の向こうも、こちらも。黄落が激しくなればなるほど、どこまでも静まりかえる地上。



焚火そば足跡小さし頬染めし レモングラス
鬼灯の心臓燃えてしまいそう 紗蘭
磧湯に妖怪もゐて十三夜 藍人
団栗の二個転がりて本を読む 富士山
色変へぬ松の曲がりや潮騒に はまゆう
牛の鼻きちきちばった高く飛ぶ 迂叟
だし汁の濾され十三夜の厨 不知火
吾亦紅活けていつもの美容室 お手玉
集会所の鍵開けづらし秋の雨 空
稲刈りの終えし田んぼに犬放つ ぴいす



後選者 加根兼光

 句集という響きが嫌いで、一生句集なんか出さないでおこうと思っていたんだが、自分で発表の場を積極的に作ることにした。「句集スタイル」というもので、これからは次々に出すつもり。タイトルにフランス語訳をつけたり(実はフランス語は分からないのだが)、章立てを今までにないものにしたり。ただ「句集」という名前にはしない予定。さあてどんなものになるか年末の発行なので、お楽しみに。


特選句
蓮の実の硬きが水を沈む沈む 空
 まず蓮の実の映像を提起し、その硬さを言い、落下を「沈む沈む」と映像化する。言葉を映像化する為の語順が的確。繰り返しはスローモーションのような効果をも併せ持つ。

蟷螂の鎌振り上げず後退す 瑞木
 「鎌振り上げず」と実写したことで生まれるリアリティ。対象の用心深い行動を思わせ、蟷螂の怯えと緊張感を上手く捉えている。人間の表情を見るかのようだ。

櫨の実の光るあたりに水の音 さわらび
 秋光に包まれる櫨の実の「中遠景」が浮かぶ。枝の先々に実が見えるがまだそれは光の玉としてだけ、位の距離。かすかに聞こえ始める水音もまた秋の水のものである。

洗いたての月へ子象は鼻伸ばす さち
 激しい雨が上がる。干されるように空に在る満月。眠りにつけない小象はまるで月を掴もうとするように長くはない鼻を伸ばしている。兎になりたいとでも。


並選句
参道に飲み屋三軒神の留守 杉本とらを
曼珠沙華赤子いまだに泣きやまぬ 小市
秋鯖を捌く手つきの上手さうな ヤッチー
奉納の背中八十後の月 笑吉
数独の七だけ埋まる菊日和 紗蘭
君が居り暮れ行く秋の海光る ペプチド
嗅ぎてのちなほ捨て難し蓼の花 樹朋
秋祭いま提灯と休みけり 蓼蟲
一等が嫌いで二等運動会 幸
日当たりの悪き部屋なり障子張る はまゆう
宵闇に猫の目きらり光りけり れんげ畑
大振りの葉をかき分けて柿を ぐ みちる
歯科医師のため息多しとろろ汁 あらた
行く秋や形見に古き借用書 青蛙
空の青色なき風の青く染む 輝女
ボール蹴り大好き秋の雲白い 八十八
瀬戸内の夕日サドルに赤とんぼ 八木ふみ
コスモスの丈に隠れて母の背 和音
深秋の亀虚ろなる下目蓋 てん点
後の月だるま湯を継ぐ余生なり もね
焼栗や路地に弾けるフラメンコ もね
虫篭に待ちくたびれた寝息かな ほろよい
完走のバイクに秋の雨やさし 小雪
神木に万の灯火曼珠沙華 一走人
金木犀風琴流れくる校舎 一心堂
船窓の真中に据える十三夜 樫の木
秋深し色重ならば増せる白 大塚めろ
九月尽素顔幼き小児科医 魔心地
骸脱ぎ秋の虹へと旅立てり おせろ
走る雲切れて薄野発光す 妙
猪討てと線香くさき五十万 うに子
蚯蚓鳴く最後も二着のサラブレッド 紅紫
秋時雨にビニール傘は似合わない 空山
新月に老いし蟷螂鎌を研ぐ まんぷく
秋麗の鏡の前へ寄す鏡 しんじゅ
火を囲む男の話種瓢 しんじゅ
はらはらとしとしとしとと秋は深めり  台所のキフジン
旨そうにぶらり下がるや烏瓜 カシオペア
干蒲団訛りは波で打ち消され ザッパー
糸とんぼ瑠璃一本の残像 香
夕凪の漁村に沈む時の鐘 明日嘉
無花果の五個め大事に味わって 青柘榴
頭上終電往けば秋の鼻すすり 理酔
草の花十一歳の警察犬 さち
秋澄むや風にのせたるリコーダー 緑の手
一番星だんだん太る秋の暮れ サキカエル
団栗の転げる速さいちにちは 親タカ
境内の子等の声消へ桐一葉 人日子
かなしみは朱のかたまりの烏瓜 省三
早朝の五時の殺生蚊を打てり ちろりん
十七夜ゆらゆら膝に眠る猫 ひなぎきょう
夜学の子夫は手酌で台所 まるにっちゃん
女神の名呼んでるやうな秋の風 アンリルカ
十六夜の光十字に放たれて コナン
一列に曼珠沙華の道標 ぎんなん
一切を笑ひたくなる花野かな 鯉城
ゆらゆらと秋明菊に思ふこと 未貫
農の背に一声かけて秋の暮 カラ嵩ハル



関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

加根兼光(かねけんこう)
1949年大阪生。俳句集団「いつき組」組員。第9回俳句界賞受賞。



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へたうま仙女


文 杉山久子

 寒くなってきたけれど、風邪などひいてないかしら? まあ風邪ひけば風邪で一句、へたうま句でも作って送ってくれると嬉しいわね。
 
秋遍路アンパンマンに問うてみよ  あきさくら洋子
 やなせたかし氏の大往生まことに立派。まあお遍路さんは多かれ少なかれ何かを抱えてるもんだからお遍路に出ている間も色々悩み迷ってるものよね。ここは一つ神様でも仏様でも弘法大師様でもなくアンパンマンに聞けと。わが身をちぎってそっと差し出してくれそうなアンパンマン。う〜んこのアドバイス、深いわ。

杖だけはつきたくないと決意せよ ケンケン
 こちらも命令口調。これがお遍路さんなら「みんなみんなついているんだ♪」で気にしなくてよいんだけどね。リラーックスとアンパンマンなら言ってくれるかもね。

赤い羽根つけて老人死んでくれ 小木さん
 これまた過激な命令口調。この赤い羽根はその赤さも一入、無機質な美しさが眼に残る。近未来映画の映像を見るような。

星月夜出雲神楽のお面舞う たっ君
 漢字季語のダブル攻め。神聖な空間で催される勇壮な舞の様子が力強く伝わってくるわ。

秋の雲らしいと思う天の幕 KIYOAKI FILM
 常人なら「天の幕らしいと思う秋の雲」とやりそうなところ、やはりここに投句してくる俳人たちは只者ではないはね。「天の幕」と言って物語の始まりそうな荘厳な空が現われる。

綿雲を舐めてさよなら秋夕焼 元旦
 こちらは夕方の雲。舐めてって綿菓子かと思っちゃったわよ。五感に訴えながら「さよなら」だなんて軽やかに言われて、流れゆく雲が綺麗に見えてくるじゃないの。

待宵や熱孕みたる吾が居て 未々
 単に体調が悪いのではなさそうな。何かを期待する熱なのかも。恋の句にも見えるアンニュイな雰囲気が漂ってるのが素敵。

金もくせい不登校の子の迷い道 柊つばき
 迷う道に本人は気づいてないかもしれないけれど、必ずこの金木犀のような存在があるのだとつばきさんはそっと呟く。ニクイわね〜。

ポケットの小さな木の実だれにやろ ひでこ
 これこそ小さな呟き。これ以上ないくらい素直な思いが一句になって、木の実の温かさがじんわり。きゅんとしちゃうじゃない。

秋陽射す象のあしうらまっ平 大阪野旅人
 足の裏のその形に焦点を絞ったところ、季語がかもし出すそこはかとない明るさと寂寥感が絶妙なマッチング。久々に言ってみる。追放じゃ〜。

 ほ〜ら油断してると追放よ。へたうまの道は一筋縄ではゆきませんことよ。へたうま仙人の決め台詞「ゆめゆめご油断召されるな」一度言ってみたかったのよね。



杉山久子(すぎやまひさこ)
1966年生まれ。第二回芝不器男俳句新人賞。句集『春の柩』、『猫の句も借りたい』『鳥と歩く』。


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 米経済誌フォ―ブスが「世界で最も影響力のある人々」番付を発表した。ロシアのプーチン大統領が1位。次いで米オバマ大統領、中国習近平国家主席……と続く。日本の安倍首相は57位。まあそんなものかなと思ったら、その上に黒田日銀総裁39位、トヨタ自動車豊田社長44位、ソフトバンク孫正義社長45位と日本人の名前がある。経済誌とはいえ仮にも、いや仮ではなく日本の首相が民間人より影響力小とみなされているということなのだ。なんかなさけないような寂しいような気もするが……。こうなりゃ、きゃりーぱみゅぱみゅなんかも、もうちょっと頑張れば日本の首相より影響力を持てるかも。しかしそうなりゃそれでなさけない……。



藤圭子蛇穴に入る 小木さん

 ノンフィクション作家沢木耕太郎×藤圭子引退直後のインタヴューが、そのまま本になった「流星ひとつ」が話題になっている。先日自死した藤圭子といえば、ある年代以上の人にとっては宇多田ヒカルの母というよりも強烈な印象を残した演歌歌手として記憶されているのだろう。十五、十六、十七と私の人生暗かった……に象徴されるように怨念のようなものをまとっていた気がする。そういう意味で彼女の死こそ、まさに「蛇穴に入る」ではないだろうか。この他にも彼女の鎮魂の句に複数出会ったけれど、これがいちばんコワイ。藤圭子に季語をぶつけただけという大胆さに脱帽。多分作者は、かなりの藤圭子フアンだったのではないかと想像する。



水鳥の片足ずつ濯ぐ 七草

 観察の力なのだ。そう言われてみれば、そうそう……そんな感じなのだ。泳いでいた水鳥が岸に上がってくる、あるいは岸から水に入ろうとする時の光景か。モノトーンの絵画をみているような静寂、落ち着き。派手さはないが十分な俳味がある。句にまったくの無駄がない。

おすすめはきのこ博士になれる本 あらた

 「きのこ博士になれる本」が句の心棒であり面白味だろう。それはそれでよいのだけれど、きれいな有季定型句なのだ。なにしろ日本人の脳には子供のころより培われた五七五が基盤としてあるのでフツーに句を考えれば定型になる。それでよいできであれば定型句としておけばよいと思う。しかしそこからもっとインパクトのあるものにならないかと考えて転がして行くのも自由律句の作り方のひとつです。例えば「騙されてきのこ博士になってしまった」でもよいと思うけど、あんまり出来はよくないので、もっと面白いの考えてください……。

着地する寸前秋茄子の曲線 和音

 秋茄子がりっぱに成長してその重みで、そろそろ土に触れようとしているところに着目しているのだろう。そういうフォーカスされた状況の秋茄子は、色もさることながらその曲線のなんと美しいことか……。着地寸前だけに、よけい曲線美が強調されるのだと思う。若干、律(リズム)が悪いので、寸前を、にすればどうでしょう。

駅弁を売る少年の眼鋭し 幸

 いまや駅弁売りの少年を見つけること自体、なかなか難しいように思う。そういう意味で、昭和の匂いのする句なのだ。その少年の眼が鋭い……のは多分困窮する暮らしを支え、やがては都会を目指す青雲の志を表しているのだろう。作者自身の脳裏に刻まれた昭和のフイルムかもしれない。

変えられぬ事ひとつ増え柿干す 不知火

 変えられぬ事とは、一体何なのか。おそらくそれは楽しいことではなく、日常のしがらみのなかで受け入れざるをえないものではないのか。それがまた日々を束縛していくのでしょう。しかし干された柿がやがて甘みをもつように、時が全てを解き放してくれる。そんな無言の意志を感じます。



草の実が飛んだ母が逝った のり茶づけ
洗濯鋏が干し柿つまむ 樹朋
老犬と大夕焼けを見る 迂叟
無口な鵯と海をみている もね
文句あるなら松茸めしを喰ってから ほろよい
征服の印に背高泡立草 空山
夜長の裏口に猫戻る しんじゅ
泥水も流れ流れて清水なる カシオペア
耳の中でかさこそ枯葉です ひでこ
たよりなく長きちちろの夜 ひなぎきょう
天辺に葛の花雲が動く 北伊作
掬ふては零し掬ふては零す月光 藍人


並選
秋水輝く小指切られると知る KIYOAKI FILM
朝一番ボク何処行くの口ぐせのボク レモングラス
夢でなら会える 小市
別にと言ふ君は秋 ヤッチー
チョコチップと冬の空美し ペプチド
木犀の香が椅子を独り占めしている 樹朋
メリケン波止場に立つ浦島太郎 かのん
くりくりとくちにくるくるくりようかん 富士山
数学者魔術師政治家大路をゆけり ケンケン
くものゐにさがる木の実の幸か不幸か 野風
アーレントあなたにはユダヤが似合う みちる
コスモスの波天国の母と見る 輝女
やり返さない草の花 あきさくら洋子
サインひとつなく近づいて来た秋をつかむ 一走人
心にちくちく月光が痛い ポメロ親父
コスモスみな自分勝手だ 樫の木
大事と思うと壊れる 大塚めろ
秋霖に罰ゲームのように正座す翁像 元旦
天命を継いでアンパンマンはゆく うに子
たてがみは有れど去りゆく羊雲 まんぷく
コスモスは雲に抱かれ陶酔 松ぼっくり
十一月の唇は乾いている たま
新米のおにぎりに行列 ザッパ―
虚しい空しい椋鳥群れる 青柘榴
鈴虫の骸を踏んだ 理酔
月夜の巴里のメトロやここにもアコーデオン弾きが  さち
野から空へと枯れ色とまわっていく 緑の手
空笑ふ日の木の実雨 あおい
誕生日は台風 柊つばき
プラスチックの仮面選る豊の秋 親タカ
婚活の失敗十月の蝉 ちろりん
じぇじぇじぇ沈下橋落ちたまま エノコロちゃん
石榴打ちて冷戦状態に入れり コナン
アンパンマンのお父さん逝く星月夜 ぎんなん
よくしゃべる家電とわたくし会話する ひでこ
風を自在に芒の引き抜 カラ嵩ハル



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「層雲」同人。句集『鍵の穴』(文芸社)、『鳩を蹴る。』(プラネットジアース)、『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)。特技・妄想、泥酔。


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詰め俳句計画


出題 文 マイマイ

今月のお詫び1
 手違いがあり読者の皆様にご迷惑をおかけ致しました。めげずに投稿して下さった方々に感謝感謝です。今回は秋の季語で投稿して下さった方も級外にはせず評価してみたいと思います。


今月のお詫び2
 10月号の回答に大阪野旅人さんの蛍草がありました。夏の季語(ほたるそう)だと思い、級外判定致しましたが、秋の季語露草の傍題に(ほたるぐさ)がありました。謹んでお詫び申し上げ、改めて判定し直します。


今月の問題
 次の(  )の中に共通する冬の季語(又は秋の季語)を入れて下さい。
殉教の野にとどまるや(  )は
(  )のつと土に触れ水に触れ

殉教の野にとどまるやおんごくは
おんごくのつと土に触れ水に触れ
 サキカエルさん。私の持っている歳時記にもネット検索でも季語としては載っていませんでした。級外。で、おんごくって何?

殉教の野にとどまるや秋渇きは
秋渇きのつと土に触れ水に触れ
 KIYOAKI FILMさん。音が合っていないし内容にも無理がある。7級。なおKIYOAKI FILMさんは1月号宛てに冬コーヒーで投句されているようですがこちらも新年の季語で差し替え宜しくお願いします。大塚めろさんは寒肥。格調とか台無し。同じく7級。

殉教の野にとどまるや鯖雲は
鯖雲のつと土に触れ水に触れ
 親タカさん。後句は影? 前句、「鯖」が「殉教」とは合わない気がする。6級。北伊作さんは冬空。「とどま」らないもの「触れ」ないものを持ってくるのは詩的だが、この場合季語が漠然としている。5級。理酔さんは冬星。ペプチドさんは寒星。小木さんは満月。いずれも後句「水に触れ」は映っていることの詩的表現として理解できるが、「土に触れ」が合わないか。同じく5級。笹百合さんは冬ざれ。ケンケンさんは冬の夜。人日子さんは冬の日。いずれも前後句とも矛盾なく収まっている。4級。コナンさんの行く秋は前句「とどまる」との関係が無理か。後句は作者が触れているようでもあり「行く秋」が触れているようでもあり面白い。同じく4級。輝女さん、ちろりんさん、牛後さんは初雪。あらたさん、七草さん、空さん、元旦さん、雨月さんは風花。ぎんなんさんは凩。ひでこさんは木枯。いずれも後句面白い。前句「とどまる」との関係にかすかな違和を感じた。3級。れんげ畑さんは玄冬。「玄」の字の重々しさが前句とよく合う。青柘榴さんは雪雲。前句、降り続く雪に鎮魂の思いが重なる。後句、山地なら雪雲が「触れ」ることもありうるか。2級。

殉教の野にとどまるや花柊は
花柊のつと土に触れ水に触れ
 さちさん。思い切った字余り。後句花の落ちる瞬間を捉えていて好き。ただ、前句の「は」後句の「の」の助詞がうるさく感じられる。5級。カシオペアさんは枯蔓、レモングラスさんは枯れ蔓。ひなぎきょうさんは枯萩。「枯」の字が寂寥感を演出。みちるさんの刈萱もうら寂しい感じが出ている。4級。台所のキフジンさんは白萩。白さが映像としてシャープ。樫の木さんの水仙には物語性を感じた。3級。植物は元々動きが少ないので前句「とどまる」が当たり前に感じられてしまうところが惜しかった。

殉教の野にとどまるや落鮎は
落鮎のつと土に触れ水に触れ
 カラ嵩ハルさん。前句鮎は一年で死ぬので「とどま」れないし、水の中のものなので「触れ」もおかしい気がする。6級。幸さんは冬雀。ふゆすずめと読むと音が合わないので、強引ですがとうじゃくと読むのでしょうか。内容は前句後句とも合っている。5級。かのんさん、大阪野旅人さんは白鳥。前句白さが「殉教」と響きあう。小市さん、不知火さん、だりあさんは冬蜂。後句冬蜂のよろよろした姿に「つと」がリアリティーあり。3級。エノコロちゃんは秋蝶。藍人さん、迂叟さん、一走人さん、緑の手さんは冬蝶。秋か冬かは微妙だが、盛りを過ぎた蝶にもののあわれを感じる。しんじゅさんは凍蝶。前句、「凍」の厳しい感じが「殉教」と合っている。後句も詩的。ただ、理屈を言えば動かない蝶を凍蝶と言うのでは? 2級。その点、のり茶づけさんの凍鶴は動いても問題ない。1級。

殉教の野にとどまるや綿虫は
綿虫のつと土に触れ水に触れ
 ヤッチーさん、未々さん、あきさくら洋子さん、おせろさん、妙さん、瑞木さん、やのたかこさん。蓼蟲さんは大綿。前句、幻想的。後句、瞬間を捉えていて見事。初段。
殉教の野にとどまるや玄帝は
玄帝のつと土に触れ水に触れ
 ポメロ親父さん。冬を擬人化した季語だが、前後句ともにそれが生きている。特に後句「触れ」ることで、霜柱ができたり、凍りついたりするのを想像して楽しくなった。二段。


今月の正解
殉教の野にとどまるや狐火は
狐火のつと土に触れ水に触れ
 ほろよいさん、魔心地さん、杉山久子さん。ちょっとホラーに挑戦してみました。初段。


2月号掲載分の問題(12月20日締切)
 次の(  )の中に共通する冬の季語を入れて下さい。
(  )の袋小路が待っている
(  )の地へ(  )の新しく



マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人。第一回大人コン「多面体」にて優秀賞受賞。句集『翼竜系統樹』マルコボ.コムオンラインショップにて販売中。将棋推定初段。棋友募集中。



【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)、俳号(なければ本名の名前のみ)、本名、電話番号、住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙女」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、12月20日(金)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.5

Soft cedar needles
Hiding the road, more golden
and brilliant than the sun

冬日より金に輝く杉落葉

(直訳)
柔らかな杉の落葉
街路を覆ふ なほ金色に
陽射しよりも輝き



We finally achieved the Subashiri 6th station on the route to the top of Fuji-san. It took us two hours and we climbed only 500 meters. Maybe next summer we can climb 1300 more to the summit. Our pace seems to be 250 vertical meters per hour and the mountain may get steeper. Are we the slowest hikers in history?

富士登頂をめざす僕らは、ようやく須走ルートの六合目に達した。二時間かけて、たったの500mだよ。来年の夏には多分頂上まで、残りの1300mを登り切るさ。僕らの今のペースは、垂直距離にして、1時間250mってところ、山道は益々険しくなるだろうしね。僕たち、史上最遅のハイカーかも?

訳:朗善



ナサニエル ローゼン チェロリサイタルin 松山
開催決定

2014年4月7日(月)19時開演
松山市民会館中ホール
★チケット発売は1月上旬予定



ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第33話
カウント ベイシー ジャズオーケストラ

伯爵のぽつりとピアノが呼ぶ霰 チャンヒ

 例えばカウント(伯爵) ベイシー楽団のアルバム、フランク フォスター編曲の「イージン イット」一曲目、つまりタイトル曲の冒頭、ベイシーのピアノがぽつりぽつりと4小節。5小節目からフレディ グリーンのギターとエディ ジョーンズのベースが加わり小気味よくリズムを刻む。ベイシーのファンであれば、この直後に現れるブラス群の粒だったサウンドを予感するだろう。この楽団は37年の結成以来、一貫してそれと判るスタイルを保持してきた。

スイングへゆだねるこの身冬ぬくし  神楽坂リンダ

 スウィング ジャズといえば、白人による大編成バンド、というイメージが強い。ベニー グッドマンやグレン ミラーは、その代表格である。しかし、ベイシー楽団には白人バンドを凌ぐ「スウィング感」とオリジナリティーがあった。素材をブルースに求め、強力なリフのアンサンブルの間に、バップ スタイルも熟す個性味ある優れたソロイストを配したことが功を奏し、50年代半ばに楽団の人気は急上昇した。

ベイシーや時々揺らぐ暖炉の火  ドクトルバンブー

 村上春樹氏の著書「ポートレイト イン ジャズ」(発行 新潮社)に描かれたカウント ベイシーの行に「ベイシーの音楽は事情が許す限り大きな音で聴いた方がいい」とある。この句の「揺らぐ」は、その音圧で揺らいでいるのであり、ゆったりとしたオーディオルームでまったりとホットコーヒー、なんて想像しているとエライことになる。ベイシー楽団のレコードに針を落とし、コントロールアンプのヴォリュームを12時近くまで上げ、パワーアンプの音圧レベルメータが振りきれた時、一種のエクスタシーを感じたあなたは、この楽団の半分を理解したこととなる。そして、動が静に転じグリーンのギターのカッティング音が浮き上がってきた瞬間、アドレナリンの分泌量が上がったあなたは、この楽団の魅力の大半を知ったこととなる。

皮膚鼓膜ブチ壊る冬「ヒーツ オン」 マミコン

 アルバム「ベイシー ビッグ バンド」の人気ナンバー「ザ ヒーツ オン」を聴いた時、ぶったまげた。動のベイシーの代表格である。テンポが240とはドラマー泣かせであるが、ドラマーが最も輝けるナンバーでもある。ジャズドラマーのマミコンさんが言った「これが成功したら『クーイ』だよ」と。

楽団を煽るドラマー波の花 蛇頭

 マミコンさんの説ではビッグバンドをリードするのは絶対にドラマーなのだが、ベイシー楽団は表のリーダーがベイシーで裏のリーダーがフレディ グリーンという人も多い。グリーンのギターが無くなると、たちまちバンドがスウィングしなくなったという逸話もある。何れにしろ、この楽団を大いに煽った立役者としてアレンジャーも挙げなければならない。アーニー ウィルキンス、ニール ヘフティ、フランク フォスター、クインシー ジョーンズ、サム ネスティコ、ベニー カーター等々綺羅星の如くである。今回2枚目のアルバムとしてベニー カーター編曲の「リジェンド」を紹介する。



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


第33話
『ふぐ鍋』
〜 せめぎ合いの妙 〜

あらすじ
 温泉旅行に出かけていた大橋さんという男性が、手に土産を持って旦那の家を訪ねてくる。
 旦那はこれからちょうど鍋を食べようというところ。大橋さんが「何の鍋ですか?」と尋ねても、ごじゃごじゃと言葉をにごし、本当のことを言わない。問いつめると「てっちり」、すなわちふぐの鍋だと答えた。
 旦那も大橋さんも、ふぐに当たるのが怖いので自ら箸をつけようとしない。おたがい、先に食べさせようと応酬するが、やはり口に入れられない。
 そこへやって来たのがおこもさん(物乞い)。旦那はこのおこもさんを毒味役にしようと思いつき、具材をよそってやると、喜んで持って帰ったようだ。
 そのあとをつけていった大橋さんが、どうやらおこもさんが食べてお腹いっぱいになり、居眠りをしていたようだと報告したので、これは大丈夫だと、二人でいよいよ食べることに。
 食べてみるとそのうまさにおどろき、二人とも次から次へとふぐ鍋を食べ尽くしてしまった。
 すると、そこへさっきやってきたおこもさんが再び現れ、「おあまりを」と言うので、旦那が「もう何もないで、食べてしもたがな。」と答えると、おこもさん、
 「それやったら、安心してこれからゆっくりいただきます。」



 どうやら十返舎一九が原作らしいです、この噺。その原作を上方落語家の二代目林家染丸がアレンジしたといわれています。
 「たまにあたる」ので、ふぐのことを「てっぽう」と呼び、そのちり鍋から「てっちり」と言うようになったという、とても勉強になる噺です(笑)。
 大橋さんも旦那さんも死んでしまうのが嫌なので、おたがいに先に食べさせてみようとするやりとり、これがこの噺の笑いどころ。
 そして「大丈夫だ」と分かったとたん、あまりに美味しいので競うようにして食べまくるやりとり。前半と後半とで、二人のせめぎ合いが爆笑を誘います。
 今でこそ調理免許が無ければふぐを料理することが出来ず、我々も安心して食べられるわけですが、噺が出来た時代は、本当にあたって命を失う人もいたのですね。
 「おつですと言うがふぐには手を出さず」という川柳も噺のマクラに登場します。
 今は亡き桂吉朝師が得意ネタにしておられました。現在はそれを若手の方が引き継ぎ、多くの噺家が東西で演じているようです。
 今月は私の句ではなく、芭蕉の一句でシメたいと思います。

あら何ともなや昨日は過ぎて河豚汁 芭蕉


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新聞記事に隠された俳句を発掘する クロヌリ俳句


黒田マキ


10月を81回繰返し
(愛媛新聞より)

秋の京来場入場点点。点
(2013年10月30日朝日新聞より)

北越に焼きアユ託す大相撲
(愛媛新聞より)


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第14回 『旅する劇団』

 今回から、毎月の連載となりました。市民劇場以外の芝居(や、それ以外?)にも触れていければと思っています。(え?『ホンヤクサイホンヤク』の方がよかった?)
 閑話休題。この秋二つの劇団の芝居を観ました。札幌ハムプロジェクト企画(以下「ハム」)の『パレパーレ星の新しい生き物』('13年10月12日、シアターねこ)と劇団どくんご(以下「どくんご」)の『君の名は』('13年10月27日、城山公園(堀之内)特設“犬小屋”テント劇場)です。この二つの劇団の共通点は、全国を旅して芝居を打っていること。むろん、市民劇場に来る劇団も旅公演をしているわけですが、大きな劇団と違い、彼らはほとんど手弁当、徒手空拳。「ハム」は北海道から「ワゴン一台に、舞台セット、音響、照明、役者を全部詰め込んで」(チラシより)、何組かのグループで「日本縦断興行」をし、「どくんご」は、鹿児島から、今や絶滅寸前の「テントで芝居をしながら全国を巡っている劇団」(H.P.より)です。

旅に遇う人に花散らしの雨に
 
 市民劇場では、観劇が日常のものとなることを目指していますが、この二劇団は、むしろ、巨大な日常を穿つ楔、いや、鋭い錐の如きものかもしれません。もし、その孔に気づき覗くことがあれば、あなたの世界はどこか違うものになっているのかも……。特に「どくんご」は、テント(というか掘っ立て小屋?)という空間に加え、ポップなアングラといった作風で、より、日常からの離脱、意味からの飛躍を体験できるように思います。

芝居打つ天幕指切りそうな月

 「ハム」も「どくんご」も、いつかはあなたの住む街に行くかもしれません。もし、この文章がその出会いの一助になれば幸いです。
 さて、一月の市民劇場の例会は、無名塾公演「ロミオとジュリエット」です。出演者には、あの仲代達也も!是非、お楽しみに。



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。


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百年歳時記


第7回 夏井いつき

 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。

秋分や夜へ祈りを捧げる木 根子屋
 「秋分」という季節の折り目を知っている「木」は、世界を支配していく夜へ「祈りを捧げ」ます。「夜」という名の神に向かって、世界が夜という時間に塗りつぶされてしまわないように、太陽の恵みを約束してもらえるように、敬虔な祈りを捧げ始める、それが「秋分」という時候なのだと一句は物語ります。「秋分」という季語に対するこの詩的把握のなんと美しいことでしょう。
 「植物は夜の長さを計って季節を知る」という説もありますから、科学を核として生まれた発想かもしれませんが、私の心に映るのは、世界の果ての美しい崖の上にある一本の「木」。時間を司る「夜」の神へ静かな「祈り」を捧げる、神話のような世界であります。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』9月27日掲載分)

葛の風はや月山を駆け上る あんみつゆか姫
 「葛」は秋の季語。秋の七草の一つに数えられ、その根は食材(葛粉)や漢方薬として重用される植物です。
 上五「葛の風」は、葛の原を駆け抜ける風を表現した言葉。野を駆け抜ける風は一面の「葛」の原を揺らしながら、山を駆け上っていきます。その「葛の風」が吹き渡る場所が「月山」であるよ、というこの地名の持つイメージの何と鮮やかなことでしょう。
 作者の眼前に広がる「葛」がバーッと動き出し、その風を目で追っていくと、「月山」という美しい名をもった山がそこにある。一読、宮崎駿監督が様々な作品で描いてきた「風」を、まさに言葉で体現していることにささやかな感動を覚えた一句です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』9月20日放送分)

水神の石を上座に秋祭 青萄
  「水神の石を上座に」据えるとは「秋祭」のどんな場面でしょう。私が想像したのは御旅所です。祭礼の日、神輿は何カ所かで休憩しますが、そこが御旅所です。
 御旅所の一つは、村の辻に祀られた「水神の石」の前だったのでしょうか。汗にまみれた担ぎ手たちは、暫しの休憩がてら「水神の石」を「上座」として座り込みます。ある者はそこに湧き出す水で顔を洗い、ある者は振る舞い酒を飲み、冷えた缶ビールを手にし、ここまでの無事な巡幸を喜び合います。氾濫することもなく今年の豊かな実りを支えてくれた「水神」に感謝する心が、「上座に」という表現にさりげなく読み取れる滋味のある作品です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』10月11日掲載分)

帰る群れに夜食の袋ぶんと当たる ミル
 「帰る群れ」とは仕事を終えて家路をたどる人々の「群れ」。広い交差点を、人々は駅へ向かって大きな波のように動いていきます。その波の真ん中に一人「夜食の袋」をさげたワタシは、家路につく人たちを横目で眺めながら逆行しています。
 この句の眼目は、下五「ぶんと当たる」ですね。コンビニで買った「夜食の袋」を振り回していたわけではないでしょうが、心は振り回したい気分。「ぶん」というオノマトペは、コンビニのビニール袋の感触であり、腹立たしい心の表現でもあり、さらに6音の字余りに恨みがましい気持ちが籠もっているかのようでもあり、現代の「夜食」の一コマを、実にリアルに切り取った一句です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』10月18日掲載分)

鵙鳴いて神宿りたる巨石かな 桜井教人
 ○○することによって○○したという構文は、一句に因果関係を発生させるため嫌われがちですが、「鵙鳴いて=鵙が鳴いたために」「神宿りたる巨石かな=今、神が宿った巨石であるよ」という句意は鮮やか。激しく鳴き渡る「鵙」の声によって、眼前の「巨石」に今、「神」が宿ったかのような心気を感受した作者がここにいます。
 「鵙」が「早贄」を作る行為の意味は科学的に解明されていないようですが、この句を読んだとたん、「鵙」は「神」のために贄を捧げているのかもしれないと思いました。「鵙」とは、この世に宿る森羅万象の神に贄をささげるアニミズムの巫女なのかもしれないと、そんな感興をかき立ててくれた作品であります。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』11月1日掲載分)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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句集の本棚





『白駒』文挟夫佐恵 著

 蛇笏賞受賞作を私ごときが云々しても始まらないが、今回は決定にあたり委員の間に一議論あったらしい。そこで還暦男に白寿の女性の世界がどう見えるかと興味が湧いて、読んでみたくなった。
  逆白波の川太りゆく茂吉の忌
  まだ生きるつもり湘南海びらき
  かたつむり殻に潜みて息詰めり
 生への欲望が匂う句である。
  六道の辻に咲く夜のからすうり
  河骨の灯いくつ昼の闇
  心奥に蛍生れしは何時ならむ
 死が匂う句である。それでは生と死が絡み合ってどんな景が生まれるか。
  あな踏みし華奢と音してかたつむり
  紫陽花の泣かむばかりの青の色
 これからも高齢者の俳句が次々に出てくるであろう。そこに前代未聞の景が生まれることを期待したい。
(書評:みちる)

角川書店(2012年初版)
定価 2667円(税別)
全250ページ



『仮生』柿本多映 著

  人の世へ君は尾鰭をひるがへし
  海は裸水底に人遊ばせて
  墓石をのぼる二匹のかたつむり
  理髪師が来る夕虹をしたたらし
  舟底に啜り終へたる桃ひとつ
  空をゆくのはキツネノカミソリ科のをんな
  左右から棒の出てくる秋祭
 あちらの世とこちらの世との境界は実は淡く、容易に往還できるのかもしれない。幻想と現実が等価な世界として描かれ、次第に読者はどちらの世界の属する者なのかわからなくなってゆく。
  二枚貝恍惚として紐がある
  銀漢や沖へ沖へと君らのロンド
  雨のポスト赤いポスト手をむポスト
  春の木に差しだす綺麗なみづぐすり
 此岸と彼岸の行き来に眩暈がしそうである。快楽に酔うとはそういうものかもしれない。
(書評:藤実)

現代俳句協会(2012年初版)
定価 1905円(税別)
全190ページ



『其中つれづれ』村上護 著

  其中雪ふる一人として火を焚く
 巻頭に山頭火のこの句を掲げる句集。
〔一の章 待つものかは〕
  ぽつとりと命にからむ椿かな
  四方見ゆる其中つれづれ日永かな
  初旅やいのちの峠越えて海
  春時雨買ひて荷物の傘一つ
  生き死にを持ち出すほどの桜かな
  甲斐信濃風の中なる青蛙
〔二の章 かつ消え、かつ結びて〕
  子猫あそばせ漱石の眠る墓
   法隆寺
  玉虫を籠めたる厨子の時間かな
  来し方の悔しい思ひ吹流し
〔三の章 つもりて遠き〕
  きざはしの螺旋をのぼる十三夜
  夜神楽の玉音は恋のほむらとも
 帯文を金子兜太。「命は、人を待つものかは。」山頭火を愛した作者の葬儀の行われた本行寺(月見寺)を訪ねてきた。
(書評:恋衣)

本阿弥書店(2012年初版)
定価 3000円(税別)
全236ページ



このコーナーで紹介した句集は、100年俳句計画編集室にて閲覧できます。


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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第33回 文と写真 暇人

道後おもてなし吟行(仮)はいかが

 まる裏まであと1ヶ月とわずか、皆様は優勝にむけて準備はなされてますか? そうそう、決勝の兼題は「雪」ですので、くれぐれも俳句のご準備をお忘れなく。
 さてmhmでは、毎年恒例になりつつある「まる裏」翌日(成人の日)の吟行会を今年もご用意いたしました。今回吟行する場所は「まる裏」の開催地でもある「道後」です。
 ガイドはmhmの頼りになるメンバー兼「松山はいく」の名案内人のしんじゅさん。皆様にまだまだ面白い道後を案内してくれる予定です。
 おそらくチラシ(定期購読の方)または広告が今回あると思うので、そちらも参考にしていただきながら軽くご説明いたしますと、午前10時に、まる裏の打ち上げの余韻も残る中、道後温泉駅に集合します。そのあとは、しんじゅさんによる「おもてなし」ガイドを受けつつ道後を散策。「瓶泥舎びいどろ・ぎやまん・ガラス美術館」へと向かいます。細かいことは当日のお楽しみとしますが、日本で数少ない和ガラスの美術館だそうです。
 朝からずっと歩いていると、お腹が空くことと思います。そこでmhmでは皆様を満足させる昼食をご用意しています。しんじゅさんによれば内容が凄いらしいです。場所はあえて伏せておきます。
 満腹になったところでいよいよ句会です。場所は「道後屋」、解散は15時半頃を予定しています。
 気になるのは今回の参加費ですが、3200円(入園料と食事代込み)を予定。mhmでは金額以上に皆様が満足できるよう「おもてなし」させていただきます。
 ところで皆様、今年の「まる裏」がどうなるか、気になってますよね。前回、facebookを利用した試みを行ったのを覚えているでしょうか? そうです。好評につき、昨年に引き続き今回もやります、「facebook審査員」を! 勝利の鍵を握る一旗をFacebook参加者が握ります。まずは今すぐmhmのfacebookページの「いいね!」ボタンを押して下さい。
 昨年以上に苦しい台所情勢のmhm、「まる裏」を成功させるためには皆様からの支援が必要です。是非、3000円〜5000円のパンフレット広告枠にご協力下さい。詳しい事は事務局までお問い合わせください。

次回予告
 まる裏直前!!


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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俳句の街 まつやま
俳句ポスト365


協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


優秀句
平成25年10月度


【秋高し】
《地》
筆洗に空のかけらや秋高し 花屋
カルデラに光返して秋高し マーペー
牛繋ぐ長きロープや秋高し 木よし
秋高し漢詩の如き暮らしなり 蘭丸
六尺を超す石棺や秋高し 魚水
豊胸の弁財天や秋高し みなと
秋高しカヌーの渦にへさきあぐ やにほ
秋高しカンバス上で乾く黒 もちずきん
ふられたというのにこの秋の高さ 鼓吟

《天》
荒馬を諌める神事秋高し  すな恵


【秋祭】
《地》
地下足袋に金糸の刺繍秋祭り  てんきゅう
雲散って秋の祭りになりにけり 木よし
火の粉浴ぶ異形の神や秋祭 樫の木
秋祭あとの星増えゆくふしぎ 大塚めろ
鎌鍬の泥を落として秋祭 はまゆう
秋祭り田の神様を見送りぬ ぽよむ
秋祭そろそろ天狗出るころか  ポメロ親父
秋祭りごろごろ産んだ子集まる 果林

《天》
水神の石を上座に秋祭  青萄


【夜食】
《地》
答弁案夜食のそばののびにけり ぐわ
大鋸屑のスープに浮かぶ夜食かな  樫の木
終い湯を落とし磨いてのち夜食 小市
手に残るドリルの震へ夜食食ぶ たま
おごそかに薬缶をまはす夜食かな  渕野陽鳥
夜食にするか角のポケットウイスキー  猫ふぐ
葱小屋の曲は三郎ちゃん夜食らし もね
警戒の夜食をすする雨合羽 妙
パイプ椅子に同僚眠る夜食かな  神戸鳥取
夜食とる励めランゲルハンス島 ゆきる
夜食くふ動点Pは待たせおき とおと
夜食なぜ夫人は殺されなかつたか  初蒸気

《天》
帰る群れに夜食の袋ぶんと当たる  ミル


【木犀】
《地》
木犀やうしろは誰もいないはず ichiei
やることリスト木犀に会いにゆく ミル
木犀と子象が同じ空の下 ゆきる
木犀匂う英検のリスニング かなぶん
小さき地震木犀の香のさらに濃し  きのと
木犀やピアノの放つ音の粒 せいら
鞄には音叉金木犀の駅 ぐわ
木犀の圏内に息あまくなる 野風
木犀や息も吸い続ければ死ぬ 初蒸気

《天》
木犀の流れて退路断たれゐる  鼓吟



12月の兼題

投句期間:11月28日〜12月4日
枯野【三冬/地理】
草がまったく枯れ果てた冬の野原の景色。枯れ色が広がる様は寂しく静かである。

投句期間:12月5日〜12月11日
橙【三冬/植物】
インドのアッサム地方原産の柑橘類。日本へは中国より渡来。熟した果実をもがずに残すと、翌年夏には緑色に戻り何年も枝にとどまることから、「代々」の語呂合わせで縁起物にもされる。

投句期間:12月12日〜12月18日
仏の座【新年/植物】
春の七草のひとつで、キク科の二年草であるコオニタビラコのこと。地面に張り付くように放射状に伸びる葉の様子を仏像の台座に見立てたところからこの名がある。

投句期間:12月19日〜12月25日
竹馬【三冬/植物】
古くからの子供の遊び。かつては笹の葉の付いた竹などを馬に見立て、跨って走る遊びのことを言っていたが、やがて足場を結わえた2本の竹に乗る遊びのことを言うようになった。


《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成25年10月度


【小鳥】
ガラス戸の音は小鳥のねだる音 睡花
小鳥踏む草の意外に高き音  ひなぎきょう
百歳の母には小鳥近付きぬ さくら
小鳥来る真民さんの大きな書 カナリヤ
小鳥群る象舎の隅のひとところ 風
像は土に小鳥は雲になりました 灯馬
ダンサーの広げる両手小鳥来る 更紗
小鳥の形ナースキャップの展開図  冬井いつき
水晶の震動小鳥の心臓  ドクトルバンブー
物乞いの掲げしコップ小鳥来る さち

《天》
サンクトペテルブルグの朝を連れて小鳥  マーペー


【葛】
葛よ葛四季は秋より始まりぬ  逆ベッカム
葛峠越え姥捨へ遠回り ひめばあちゃん
龍神池へ道の途切れて真葛原 樫の木
葛の葉至るコンクリートのザラザラへ  紅紫
葛の波押し寄せ静かなる倉庫 あやね
太陽光発電所百万坪の葛を刈る 太郎
足向けて寝てやる故郷真葛原  冬井いつき
葛の葉にザザと打ちつく太き雨  四万十のおいさん
死にに来た獣の匂い葛に雨 日暮屋
死に星降るやボタ山は真葛原 烏天狗

《天》
葛の風はや月山を駆け上る  あんみつゆか姫


【栗羊羹】
灯すごと一粒置かれ栗羊羹 樫の木
切り口は大きな雫栗羊羹 小雪
茶柱のゆらり定まる栗羊羹  風花会・山百合
坊様にお茶のお代わり栗羊羹  のり茶づけ
関取の墓栗羊羹の供えらる ターナー島
じいちゃんの闇市自慢栗羊羹 笑吉
投了や栗羊羹に刺す楊枝 大五郎
新築を褒めゆっくりと栗羊羹 笑松
栗羊羹嫁ぎし娘より朗報来 風花会・撫子
百歳を祝ふお使者来栗羊羹 妙

《天》
栗羊羹正座の痺れ甘くなり  案山子


【霜降】
霜降のケトルに満ちる水の音  てんきゅう
霜降をアルファベットで鳥が鳴く  亜桜みかり
霜降なりビオロンの出す女の声 菜々枝
霜降となればバッハの大音響 理酔
霜降や墨のようなる能登の夜 もも
霜降の街灯鎌のごとく痩せ 松ぼっくり
霜降や人柱なる巫女の舞 あねご
霜降や百年を経し獨和辞書 笑松
小龍包を自慢する霜降の赤い壁 日暮屋
霜降の錘あおぞらに垂れている 黒やぎ

《天》
石鎚は切り立ち霜降の朝だ  ポメロ親父


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

12月8日
鷲【三冬/動物】
タカ目タカ科の鳥のうち、大型のものの総称。鋭い嘴や爪を持ち、翼は長大。鳥獣を捕獲して主食とする。

社会鍋【仲冬/人事】
キリスト教の救世軍が、歳末に街頭で行う募金運動。鍋を吊して喜捨を求める。

12月22日
三日【新年/時候】
1月3日のこと。正月三が日の最後の日であり、正月気分に区切りを付ける日でもある。かつて皇居内ではこの日に元始祭が行われ、最もめでたい日とされた。

阿茶羅漬【新年/人事】
京阪地方独自の正月料理。大きなサイコロ切りにした守口大根や蕪の片面に、縦横に細かく包丁目を入れ、中心に小さく切った赤唐辛子を乗せ、三杯酢に漬ける。


《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  12月3日(火)11時40分〜
  12月17日(火)11時40分〜

あいテレビ(TBS系列、全国)
 『プレバト!!』2時間スペシャル
   12月5日(木)19時〜20時49分
※組長がゲストの俳句ランキングづけで出演!

NHKラジオ第一放送(四国四県)
 四国おはようネットワーク内「俳句ネットワーク」
   12月21日(土)午前7時43分
※現在そこで紹介する俳句をブログ「夏井いつきの百年俳句日記」(11月18日記事参照)で募集中。季語「冬帽子」・〆切は12月2日(月)朝9時まで。 http://100nenhaiku.marukobo.com/

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FM愛媛
 バニラビーンズの俳句っちゃお〜!
 毎週日曜日深夜0時〜0時30分
※夏井いつきが俳句指南で出演
※FM大分でも毎週月曜21時〜放送中

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「鎌鼬、侘助」12月8日〆
   「注連飾る、数の子」12月22日〆
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)、住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「白鳥」 締切 … 12月20日(金)


句会ライブ、講演など

今治市立波止浜小学校句会ライブ
 12月6日(金)

愛南町3校合同句会ライブin内海中学
 12月13日(金)



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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

12月7日は大忘年会
西条の針屋さん こんにちは。秋祭りも終わり早くも年末が近くなって来ましたが、年明けに携帯を落すし夏に手首を骨折するし、先日は財布を落してしまいました。1年に3回も悪い事があったので厄落としも終ったでしょう。年末の忘年会は最終まで居れる予定なので、今年は楽しみたいと思います。
編 今年の大忘年会の兼題は「じぇじぇじぇな出来事」。気の毒だけど句材豊富。

紗蘭 このお便り投稿時(11月)から数えて、あと18日で中3修了して日本に帰国します! 今年は忘年会に参加できるので、去年、一昨年に会う事のできなかった句友に会うのを楽しみにしています。
編 オーストラリアから忘年会に参加の紗蘭さん。なんて遠距離!

大塚めろ こんにちは。めろです。一気に冬ですね。紅葉もあせっています。我家の観葉植物も部屋の中に入れました。ささやかな冬支度です。で、百年百花の句です。よろしくお願いいたします。この冬は胃が痛むのは確実です。 P・S 忘年会に参加します! よろしくです!!
編 百年百花の原稿に寄せてこんなおたよりが。冬支度したり胃が痛んだり大変ですが四ヶ月の連載よろしくお願いいたします!

詰め俳句計画・先月の舞台裏
大阪野旅人 十月号に投稿した【蛍草】、露草(秋)、の傍題のつもりでしたが「夏」の季語にあったとは、調べませんでした不覚。季語は、4文字、殉教の野から厳しい環境に耐える を、連想。「……つと土に触れ水に触れ」は白鳥が一心に餌をついばんでる仕草を、連想。触れ、とどまるや、から動物を……。
編 まさかこんな傍題があるなんて! というわけで、今月号で再判定が行われてます。お見事、二段!

カシオペア マイマイさまへ。毎回頭悩ます問題をありがとうございます。歳時記をめくるのも楽しいものです。
編 電子辞書で調べてるとさらに鳥の鳴き声や花の写真が見えたりします(機種によっては)。延々楽しめちゃう。

蓼蟲 パソコンをXPから8に買い換え、慣れていないので、詰め俳句の回答(大綿)重複しているかも知れません。そのときは寛恕、寛恕。
編 Windows XPがサービス終了になるんですね。8の使い心地はいかがでしょう。(詰め俳句に関係ない返し)

チェンジ
幸 俳号のゆきを漢字の幸に変更いたしました。よろしくお願いいたします。
編 久々に俳号を変えたお知らせ。「幸」の字って美しい。いい名前。

ひさしぶりに
笑吉 久しぶりの投句です。これから少しずつ俳句に触れたり感じたりしている時間を増やしていけたら……と思っています。よろしくお願いします。
編 よろしくお願いします。12月という時期はまた季語の宝庫でもあります。ご健吟を!

アクティブ俳人
小雪 サイクリングしまなみ2013に参加を申し込み、練習を積み大会を楽しみにしていました。ところが、当日は朝からかなりの雨!雨の中を走ったことが無かったので、不安でいっぱいでしたが、何とか夫と110キロコースを制限時間内に完走しました。人間追い込まれたら何でもできるもんですね〜。俳句の種ができました!
編 そこで俳句の種にできるのが天晴れ!! ちなみに自転車は何乗ってらっしゃるんですか?(担当が自転車好き)

もの思ふ
元旦 変な疑問ですが、歴史的かな遣いと現代仮名遣いについては、よく論じられるのに、旧字体と新字体の関係は、あまり論じられないように思います。歴史的仮名遣いを使うのであれば、本当は旧字体になるような気がします。平仮名だけは昔の表記で、漢字は現代の漢字を使うのって、何だかバランスが悪くないですか。
編 たとえば俳句甲子園でもおなじみの中原道夫先生はご自身の作品を旧字で発表してらっしゃいます。自分も!と挑戦してみるのもいいかも。ただ、書くにも読むにも相当の知識が求められるような……。

輝女 今年の秋はいつまでも暑くってやっと涼しくなったかと思えば毎週台風で急に肌寒くなって、もうちゃんと風邪をひいてしまいました。みなさんもご自愛下さいませ!
編 年末に向けて忙しくなる時期。ちゃんと治してお元気に!


100年俳句計画誌上編集会議

編 本誌も十年目を迎え、様々なご意見を参考にしながらリニューアルをはかっていきたいと思っています。このコーナーでは、皆様のお便りを紹介しながら、さらにご意見を集めつつ、誌面に反映させてゆきます。
 沢山のご意見をお待ちしています。

今月の提案、相談
緑の手 マルコボの皆様、おはようございます。緑の手です。先ほど100年俳句計画マガジンの投句をさせていただきました。昨日からインターネットでの投句を試みていたのですが、いつもならずっと続けていけるのですが、途中からどうしても次へ進めなくなってしまって、ネットでの投句を断念し、メールにて投句をさせていただきました。本当に申し訳ございませんでした。次回からはまたできるだけネットでの投句をするようにしますのでどうぞ御容赦くださいませ。ではまたこれからもよろしくお願いいたします。

編 ご連絡ありがとうございます。他の方からも時折同様の症状を伺います。
 原因と対処法を探るべく、編集室でも数度に渡りテスト投稿を行っておりますが、状況を再現するには至っていないのが現状です。
 「私も同じことが起きた」という方がいらっしゃいましたら、お手数ですが投稿の際のお便り欄などでお知らせ下さい。
 その際、
「どの段階で起きたか」(何個画面が進んだ時に起きたのか)
「お使いの環境」(パソコン、スマートフォン、携帯電話など)
「起きた日時」(何日、何時頃)
 などの情報を添えていただければ幸いです。情報を集め、改善や対処に繋がればと思っております。お手数をおかけしますが、ご協力の程よろしくお願いいたします。
編集室


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鮎の友釣り

186
俳号 西条のユーホふき

旧重信のタイガースさんへ SNS以外のオフ会などでお会いしませう。

俳号の由来 「西条市民吹奏楽団でユーフォニァム(持っている楽器)を吹いている人」という意味です。以前、マガジンの人気コーナー「俳号診断」で「吹き」から「ふき」に改名しました。

組員さんにお願い 吹奏楽経験者の人がいたらいつき組お抱えのバンドを組んで句会ライブのオープニング演奏をしませんか?

次回…天玲さんへ 俳書道の部屋の再開を希望しています。


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告知


生まれてから現在までの代表句募集!

1月号特集は、毎年恒例、皆さんからの自選三句を掲載した「代表句集」です。沢山の方の参加をお待ちしております。

募集内容
 1:あなたの生まれてから現在までの代表句三句(一人一俳号まで)
 2:代表句についてのコメント
  ※コメント全体で100字以内厳守
 お名前、俳号(ふりがな)、年齢、住所、電話番号を必ず明記の上、宛先、件名を「代表句集2014」として本誌編集室までお送り下さい。

※俳号と俳句には、よみがなを付けてお送り下さい。年齢は鑑賞の参考とするため句集に掲載させていただきます。御了承下さい。

専用ホームページ
http://2014.marukobo.com

締切 11月30日(土)必着
なお、応募対象はハイクライフマガジン『100年俳句計画』定期購読の方のみとさせていただきます。ご了承下さい。



マルコボ.コムオンラインショップマガジン化10年目突入記念企画
HAIKU LIFE 100年俳句計画
企画別ワンコインバックナンバー集発売中

本誌は2013年6月号で、マガジン化してから10年目に突入しました!
マルコボ.コムオンラインショップでは10年目突入記念として、テーマ別のバックナンバーのお得なセット販売を行っています。

編集室のオススメセットは……?

3&4:大連風聞セットA&B
 夏井いつきです!
 ワタクシにとって、最も思い出深いのが、中国の大連市を訪れての連載「大連風聞」です。表紙折り返し部分(カラー頁)をつかっての連載だったので、同行した娘ふみ撮影の写真とのコラボ企画となりました。
 この連載をまとめ直したものが朝日新書『子規365日』なのですが、本になる前の生々しい部分を感じ取っていただけると書き手冥利に尽きるというものです。
 実はこの連載、ちょっとした苦心がありました。実際に大連を訪れた季節は六月頃だったのですが、企画としては12ヶ月の「一句+ミニエッセイ」という読み物連載。続き物のエッセイに寄り添いつつ、その月の季節的イメージを壊さないような一句に仕上げるという、ちょっとしたプロジェクトXでありました。個人的には、挑みがいのある連載でした。そんな苦労の隠し味を感じ取っていただけると嬉しいです。
(夏井いつき)

収録内容
2005年7月号〜12月号:大連風聞 第1回〜第6回
2006年1月号〜6月号:大連風聞 第7回〜最終回


10:○○な俳句
 嗚呼、これも刺激される企画だったなあ!
 このシリーズ4冊には、付録のミニ句集『戦争と平和の俳句集』『恋の俳句集』の2冊もついています。この付録句集は、本誌にて作品を募集したものを、『戦争と平和の俳句集』は夏井いつき選、『恋の俳句集』は小説家ねじめ正一さんに選をお願いしたものです。『戦争と平和の俳句集』は愛媛新聞の特集連載記事にも取り上げられ、 反響を呼びました。
 思い出深いのは『恋の俳句集』です。「夏井さんに電話もらって、うっかり引き受けちゃったけど、大変な作業だったよ」と苦笑いされてしまいました。選と共にお願いした文章も実に味があり、「さすがは、ねじめさんだ!」と唸った特集でありました。
(夏井いつき)


収録内容
2004年8月号:戦争と平和の俳句(付録:戦争と平和の俳句集)
2004年11月号:笑える俳句
2005年5月号:恋の俳句(付録:恋の俳句集)
2009年5月号:泣ける俳句


全27セット 各500円
但し、合計金額が3000円未満の場合は送料別途
お求めはhttp://shop.marukobo.com/まで




HAIKU LIFE 100年俳句計画
第3回
大人のための句集を作ろうコンテスト
作品募集

主催 マルコボ.コム 共催 朝日新聞社・松山市教育委員会(予定)

 第三回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」(通称「大人コン」)の作品募集がスタートしました。
 「大人コン」は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』が開催する俳句コンテストです。
 共催 朝日新聞社・松山市教育委員会(予定)

「受賞作品が句集になるってホントですか」
 最優秀賞作品は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』の付録冊子として読者諸氏に広く読んで頂きます。付録とはいえ、お洒落なデザインの句集だと評判です。
 受賞者には一切の金銭的負担をかけず、読者にとっても安価な句集をどんどん生み出していきたいという志を一つの形にしたのが、この企画なのです。

「俳句マガジンを購読してないんですが、コンテストへの応募はできますか」
 どなたでも応募できます。購読の有無は一切関係ありません。勿論、応募は無料です。

「審査は誰がするのですか」
 本コンテストの受賞者は、「大人コン」選考会員の投票によって決まります。「大人コン」選考会員は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』購読者の内、各総合誌等の俳句賞受賞者あるいは最終選考に残った実績のある人たち等によって構成されます。第二回の有資格者は三十二名。年々選考会員数は増えていくことになります。
 多くの目利きの力を借りて「百年先の未来に残したい作品と作家」を見い出し顕彰していくことが「大人コン」の目的。我こそは!という皆さんのご応募を、心からお待ちしております。

既作新作を問わず81句の作品集を募集。
最優秀賞作品は句集にし、本誌付録として配布します。

募集要項

応募資格
15才以上(高校生以上)の方なら、本誌購読の有無に関係なく、どなたでも応募できます。

応募方法
1:Eメールでの応募の場合
応募用のエクセルファイルに必要事項を全て入力し、Eメールの添付ファイルにして、応募して下さい。
応募用ファイルのダウンロード先
http://81ku.marukobo.com/

2:郵送の場合
B4判四百字詰め原稿用紙に81句とその表題、俳号、本名、年齢、住所、電話番号を必ず明記して応募して下さい。

締め切り 2013年12月10日(火)必着

賞 賞状および応募作品による句集20冊
*賞品句集は縦横135mm、36ページとなります。句集は本誌付録として配布します。

発表 本誌2014年4月号誌上(予定)

送り先
〒790-0022 愛媛県松山市永代町16ー1
有限会社マルコボ.コム
月刊俳句マガジン『100年俳句計画』編集室Eメール:81ku@marukobo.com




第12回高校生以外のためのまる裏俳句甲子園
キャッチコピー募集

締切 12月8日(日)
mhm_info@e-mhm.comまで

大会日時
 2014年1月12日(日)
 予選:午前9時30分集合
 本戦:午後1時〜(12時30分開場)

場所
 松山市立子規記念博物館
 松山市道後公園1-30

エントリー料 1000円

観戦料 500円


主催:まつやま俳句でまちづくりの会
共催:松山市立子規記念博物館

問い合わせ
 電話089-906-0694
 マルコボ.コム内 担当:キム




句集Style倶楽部
新作続々

句集Style作品第二弾の発表に併せ、本誌年間購読者を対象としたお得なプラン「句集Style倶楽部」シーズン3を受付開始します。

 ポイント1:オンラインショップ販売よりも早くお手元に届きます。
 ポイント2:一種類から注文可能。欲しい句集だけのお求めも可能に。
 ポイント3:郵便振替以外の方法も利用可能。
マガジンに同封しての発送のためいずれも送料無料。詳細は、本誌発送時に同封の直販定期購読者向け資料をご覧下さい。たくさんのお申し込みお待ちしています。


2014年1月号(1/1発行)同封分

・句集『海峡都市』 理酔
第一回「オトナのための句集を作ろう!コンテスト」優秀賞作品の完全版!

・句集『嫁入り支度』 川又夕
現在本誌「100年の軌跡」連載中の作者による、今しか読めない渾身の54句。

各定価 735円(税込 送料別)


2014年2月号(2/1発行)同封分

・俳優 勝村政信×俳人 夏井いつき 付句のある往復メール書簡集
NHKラジオ「オトナの補習授業」をきっかけにはじまった往復メール書簡。
俳優と俳人の日常も垣間見られ、思わずニヤリとさせられる情報満載の一冊。

定価 1,365円(税込 送料別)


全種同時注文で通常2,835円(送料別)が2,520円(送料込)




100年俳句計画投稿締切カレンダー

12/20(水)
 100年投句計画
http://marukobo.com/toukou/
 魚のアブク
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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編集後記


 去る11月18日、松山城本丸で行われた式典にてファン=ロンパイ欧州理事会議長にお会いすることが出来た。
 議長は俳句をたしなむことで有名な方。昨年EUに観光俳句ポストを設置した際、松山市からお贈りした議長の俳句による掛け軸を描かせて頂いたのが縁で、今年も議長の句集出版に合わせ、屏風を描かせて頂き、大変光栄に思う。
 思えば十数年前、会社を辞めてグラフィックデザインの道に歩もうとした時に出合ったのが俳句。俳句の取り合わせの面白さを知り、松山に住むすべてのデザイナーが俳句を手に入れれば、この地方都市からでも世界に打って出るのではないか、なんて夢のようなことを考えていた。その頃はまだ俳句甲子園もなく、俳句=お年寄りの趣味と思われていた時代。そんな話に付き合ってくれる人などほとんどいなかった。
 しかし今では、若い俳人を輩出し、世界に向かって俳句を発信する中心的な都市として、松山市が大きな役割を果たそうとしている。まだまだ志半ばではあるけれど、そんな時代に関われる喜びと責任を改めて感じている。
 そしてつくづく、この街に住んでてよかったと思う。
(キム)


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次号予告 (194号 1月1日発行予定)


次回特集
俳句対局 第2回 龍淵王決定戦
生まれてから現在までの
代表句集2014 など


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2013年12月号(No.193)
2013年12月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子