100年俳句計画9月号(no.190)


100年俳句計画9月号(no.190)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
コスモス 松ぼっくり


特集
俳人のための写真俳句入門



好評連載


作品

百年百花
 朗善千津/柊ひろこ/樫の木/亜桜みかり


放歌高吟/夏井いつき

100年俳句計画作品集 100年の旗手
 哲白/てんきゅう/蛇頭


百年琢磨 平敷武蕉

新100年への軌跡
 俳句/若狭昭宏/川又夕
 評/瑞木/キムチャンヒ


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/加根兼光


へたうま仙女/杉山久子

自由律俳句計画/きむらけんじ

詰め俳句計画/マイマイ



読み物
Letter from spider garden/ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
ホンヤクサイホンヤク/翻田訳蔵
お芝居観ませんか?
俳句対局道場/正人
百年歳時記/夏井いつき
mhm通信/暇人
句集の本棚

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー


コスモス
松ぼっくり

 福岡県朝倉市の7万平方mもの広大な畑に今、1000万本のコスモスが風に揺れている。
 ビール工場も近いので花を愛でる人々とビールお目当ての人々も混在して季節になると大勢の人たちが訪れる。
 我が家からもさほどに遠い距離でもないので、先日も出かけた。
 一日中いても退屈することはない。さて、一方でコスモスはゆらりゆらりと何だか頼りない雰囲気もあるのでどちらかと言えば弱々しい感じの花とされるが、こうして1000万本ともなればもはや群生、まさに集団の力を発揮しているようにも思える。
 それは人間とても同じこと、か弱き人間たちよ、集まろうではないか。もしかしてとてつもない大きな力になるかもしれないから……。


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特集
松山市、朝日新聞社、朝日カルチャーセンター主催
「第3回 瀬戸内松山写真俳句コンテスト」に向け

俳人のための写真俳句入門




はじめに
 写真俳句は、読んで、見て楽しめる表現として、各地でコンテストが行われています。そして、松山でも10月より、「第3回 瀬戸内・松山写真俳句コンテスト」の作品募集が始まりました。
 写真俳句は、本紙7月号で特集をした俳画と同様、取り合わせの仕組みさえ分かれば、簡単に作品を作れます。
 本特集では、簡単な写真の撮り方から、俳句の合わせ方までを解説します。

5分で分かる写真入門
 本誌読者にとって、写真俳句の最も高いハードルは、いい写真を撮ることだと思います。最近は、携帯電話やスマートフォンに付属するカメラの性能が高くなったので、気軽に写真を撮ることが出来ますが、いい写真を撮ろうとすると、難しいものです。ましてや、一眼レフのカメラを効果的に使おうとすると、絞りやシャッター速度、撮影時の感度の設定などに気を配らなくてはなりません。今回は、そんな難しいことはひとまず触れずに進めてゆきます。
 写真の撮り方を説明する前に、写真の読み解き方を説明します。写真を読み解くこととは、その写真を撮影した人が、何を撮りたかったか、つまり、その写真の主題を読み解くことでもあります。
 写真の主題は、大きく以下の3点によって表現されます。 

1.真ん中に写っているもの。
2.ピントが合っているもの。3.大きく写っているもの。
(左ページ参照)

 1〜3を使えば、自分の撮りたいものを読者に伝えることが出来ます。1〜3の写真の特徴を挙げると──
 1は、スナップ写真でよく見る構図です。観光地で人からカメラを渡されたときには、この構図でとると無難です。しかし、写真としての面白みは、あまりありません。
 2のように、ぼかしを生かした写真は、奥行きが表現され魅力的です。しかし、携帯電話のカメラやコンパクトカメラでは、背景などをうまくぼかせないことが多いです。コンパクトカメラでも、望遠側にズームして、近くのものを撮ると、背景のぼけた写真が撮れることがあります。
 3の写真は、被写体に対する撮影者の気持ちが、直接的に伝わります。このように、大きく撮るには、カメラのズーム機能を使う方法もありますが、おすすめなのは、被写体に近づいて撮るという方法。画面からはみ出すほど被写体に近づいて撮った写真は、それだけで大きなインパクトを生みます。
 ただ、写真俳句の場合、多少写真の出来が悪くても、作品全体を俳句が補ってくれることが多々ありますので、カメラが苦手な方は、あまりシビアに考えなくても構いません。質はともかく、出来るだけ沢山撮っておくことの方が、重要かもしれません。

5分でできる俳句入門
 写真があっても俳句がなければ写真俳句は作れません。簡単な俳句の作り方は、本誌の表紙5ページの「超初心者のための俳句入門」をご覧下さい。

写真と俳句の合わせ方
 写真俳句は、写真と俳句の組み合わせ方しだいで、作品の持つ世界の広がりが大きく変わります。
 次の写真は、先日行われた「しまなみ海道句会ライブツアー秋編」にて訪れた、大三島大山祇神社のご神木の写真です。この巨大な檜は、樹齢二千六百年と言われています。
 例えばこの写真に、
「神木が見下ろす子ども秋の風」
という句を組み合わせたとします。この場合、写真に描かれている素材で俳句が作られているため、俳句が写真の説明と読まれてしまう可能性があります。
 ではここで、もう一度写真を読み解き、別の俳句を作ってみましょう。
 例えば、この写真の主題は、大きく写っているご神木です。そのご神木の大きさや樹齢の対照として、小さな子どもの存在があると考えられます。ならば、
「樹齢二千六百年」という時間を俳句に描くと、写真のイメージが膨らみそうです。
「秋風に樹齢二千六百年の神」
という句を作り、組み合わせてみました。(1の作品)
 元の組み合わせに比べ、読者の想像を掻き立てるものになったのではないでしょうか。
 今度は、もとの俳句を生かしたまま、写真を変えて写真俳句を作ってみましょう。
「神木が見下ろす子ども秋の風」
という句は、ご神木を擬人化し、人間の営みを超越した雰囲気にも読めます。そういうイメージに合わせて、この日に撮った別の写真を探すと、木の影だけを撮った写真が見つかりました。この句と写真とを組み合わせてみたのが、2の作品です。
 ご神木の影に子どもの姿はなく、少し薄気味悪い雰囲気ではありますが、人の力を超越した雰囲気が生まれたと思います。
 このように写真俳句は、写真と俳句の出来もさることながら、その組み合わせ方が勝負とも言えます。その組み合わせによって、自分でも思いもよらない作品ができあがることもよくあります。
 写真俳句に興味のない方も、「第3回 瀬戸内松山写真俳句コンテスト」は、一つのよいきっかけになると思います。
 ぜひ挑戦してみて下さい。

第3回 瀬戸内松山写真俳句コンテスト公式サイト
http://matsuyamahaiku.jp/contest/


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2013年度 第二期 4回目


「ビバ!」朗善千津

小鳥焼いて食いそうな郵便夫来る
沢庵を漬く人々や雲の中
湖を一周二周ビバ !熟柿
公魚の背を草の葉の色に揚げ
ほうとうの南瓜溶けゆく山の午
青蜜柑一人になれる場所探す
留守番の電話短し猿酒欲し
ハム作り人ハム買ひ人や神の留守
馬の肉売らるる小春日和かな
馬の皮売らるる街や山葡萄
どう仕様もなく通草のぶら下がり
新潟へゆくトラックよ鍋焼よ


山中湖にて冬支度真っ最中、といっても主に結露予防です。カビとの戦いはネバーエンディング!




「鯨吼ゆ」柊ひろこ

檸檬買ふ何か失ふ予感して
ブラームス間奏曲集銀杏散る
銅鏡百枚倭国の水の澄めりけり
むかし悪僧ここに果てたり烏瓜
青虫の葉を齧る音冷まじき
あつけなき釣瓶落しの死なりけり
ふり返る冬の虹たつ音のして
夏目家の猫になりたき小春かな
木の葉髪ふりつみしかば暗き森
聖堂のパイプオルガン鯨吼ゆ
黒セーター脱がずに眠る無聊かな
馬の耳るると震へて風花す


2005年俳句と遭遇。2008年「銀化」入会、2011年同人。長く人間をやらせていただいております。俳句に安住してしまわないようにせねば。




「梨食みて」樫の木

梨食みてさりさり寂びてゆく夫婦
蓑虫のシーサーの尾に噛り付き
鵙の贄四肢の先より干からびて
ハザードマップの赤き辺りにいぼむしり
椿の実焼べよ火口の覚めるまで
色鳥やひらけば零る釦箱
健やかに妻のあれかし星月夜
秋霖や天満宮の赤き橋
曲水の庭閉ざされて秋寒し
表札の名は「不老」松色変へず
赤い羽根の反つくり返る知事の襟
秋刀魚ぐずぐず崩して病める義母(はは)よ


1965年、松山市生まれ。大分県在住、家具職人。妻と猫二匹と陽気に暮らす。俳句歴7年。合唱歴35年。




「ラ・フランス剥く」亜桜みかり

鰯雲るろんと動く風向計
錦秋の肩胛骨の可動域
波打つて去る鼓笛隊草の花
サルベージ船に曳かるる秋夕焼
満月を掲げ点検消防車
月の雨明日閉館の映画館
十六夜の波音厚くなつてゆく
ラ・フランス剥く言ひ含めらるる夜
産土神(うぶすな)より発てり秋の斑猫は
秋麗の底や眠りの深き猫
団栗を拾つて身ごもりし日日のこと
秋思ならんいびつな土耳古石ころん


愛媛県松山市生まれ。天秤座。ホームは今治三日月句会。趣味は卓球、絵手紙、そして健康情報収集。




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放歌高吟


色鳥
夏井いつき

秋晴やこちらは富士の見えぬ席
タイル絵の富士山敬老日の混雑
宝町公証役場なる糸瓜
枝豆やあれは夫婦でない二人
秋鯵も恋も腥くて困る
飛蝗さんざん飛ばして来たる崖っぷち
虫籠へ白き花など入れてやる
花のようにかまきりうすみどりに潰れ
色鳥はひかりを千切るように捷し
色鳥や野へ還りゆく音楽堂
木の実跳ね小鳥のようなイタリア語
赤い羽根百本くばり切って空


 最近あれこれ思い立つことがあって、身辺の整理を始めた。秋山好古の「身辺は単純明快でいい」と言い切るカッコよさに憧れはするものの、何もかも捨てきった一遍上人の真似はできない。仙人でも世捨て人でもないので、日々の小さな欲は人生の大事なスパイス。うっかりとそれらを手放すわけにはいかない。
 が、しかし、今の自分なりに捨てられるものを捨て整理できるものを整理していけば、この我が身だとて少しは軽やかになり、軽やかになった分だけ残りの人生を悠然と暮らしていけるのではないかと夢想する。
 まずは、不用意に増えてしまったカードを整理し、使ってない通帳の類いを解約し、無駄に掛けてきた保険を精査し、実家の土地問題を弁護士事務所に相談した。母の介護のため介護施設二社との契約を結び、訪問看護の段取りも整えた。それらと並行し、家に保管してある大量の資料や本やゴミや思い出の類いをバンバン捨て始めている。
 こんなことを日々実行していると、「句集を作る」とは「句を捨てる」行為なのだと改めて認識し直す。句集として整理し発表してこそ、他者に伝え得る芸術表現になるわけだし、捨てることによって新しい何かが生まれ始めもする。これは句集を上梓する度に何度でも実感する真実だ。
 先日ぶんぶく句会の席で、待ちに待った句集スタイルの一冊『からからころと』を手にした。村重蕃さんの句集だ。表紙は書道家でもある奥様ももさんの手による作品をデザイン化。青墨の滲みが実に美しい。

青墨もすだちも青く匂いたつ いつき
柿かめばからからころと動く顎

 ぶんぶく句会恒例の席題である「今宵饗される食材」を詠み込んで、作者蕃さんに捧げる二句。そして句集名「からからころ」は、彼のこんな一句にちなんでの命名である。

無患子のからからころと別れよか 蕃

 手に取って読んでみると、小憎らしいほど落ち着いた滋味と「からからころ」 と鳴りそうなほど軽やかな俳味に満ちた一冊。読後、思わずつぶやいた我が夫のこんな台詞を拝借しての一句を、再度、蕃さんご夫妻に贈りたい。

 柿食うて第二句集を待ち望む いつき & 兼光

 色鳥のひかりが押し寄せる明日への希望の糧として。




夏井いつき公式ブログ「夏井いつきの100年俳句日記」

http://100nenhaiku.marukobo.com/


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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2013年10月号 〜 2013年12月号 2/3回目)


 露万華 哲白

紺青の宙喨喨と月渡る
雲走るひた鳴き止まぬ草ひばり
仰向けに転がる蜂や秋陽沁む
眼裏を泳ぐ秋日や脈速き
目覚めとは蘇ること露万華
秋霖や松の根太き母の里
バス停に座る案山子や峡の村
投げ渡す毛槍の穂先秋天に
金色に揺るる草の実「帰りゃんせ」
祈らばや刈田の果ての夕明かり


2007年12月号に初投句。身辺雑詠をコツコツ続けていますが、斬新な句風への脱皮は実現していません。身の丈に合った句作りを楽しみたいと思っています。



 挿頭(かざし) てんきゅう

昔日の夢ふきこぼるぬかご飯
秋夕焼しみて地球は甘いはず
無花果のにちやりと重き猜疑心
傷口のごとく月よ夜空が痛いのか
水澄みて祭主は黒田清子さま
秋晴の伊勢に始まるご朱印帳
神楽女の挿頭を揺らす千の月
鍵盤のごとく月夜の外階段
ハープ抱く青年の目に霧流る
木彫に聴かす寒露の子守歌


天使とキューピッドのハーフ。てんきゅうワールドの住人だが、2011年6月より木曜カルチャーに出没するようになる。人生に大切な三つは、酒と句友とサムマネー。たまに刺激を欲しがる。



 月光 蛇頭

キャバレーの軋む舞台や文化の日
進駐のジャズと私語して風冴ゆる
深秋の池満面にモネの雲
干柿や嫌な女に惚れる癖
追い剥ぎが現たら椎の実くれてやる
すげ替える首見当たらぬ菊人形
暮の秋海にラテンが死んでいる
冬鳥の未亡人を抱いている
深秋の淵に霊歌の黒き熱
終演は月光というセレナーデ


1956年松山生まれの松山育ち。最近「ジャズさん」と呼んでくれる人が増えた。嬉しい。句座の酒が美味い。そして、ジャズ……。健康のため始めたマラソンにもハマり、毎日がワクワクで息苦しい。



読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(句会、誌面等)、推薦者ご自身の俳号(本名)、住所、電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ、FAX、Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、専用のインターネット投稿フォーム(http://www.marukobo.com/100kishu/)でも受け付けています。※投稿フォーム利用の場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 11月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。


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百年琢磨
先月号の「100年の旗手」に寄せて

 戦死者の声 平敷武蕉

「森千年」 蛇頭

待ち人のあるかのように熟柿在る
稲光ポップアートの毛沢東
ドラマーの恋の数ほど木の実降る

 一句目。熟柿は食べ頃、おいしく食べてくれる人を待っていると受け止めればなぜか健気に見える。
 二句目。稲光=革命の思想に一瞬映し出される現代中国。ポップアートのように大衆化し、資本主義化した現代中国を、毛沢東はどう見ているのであろうか。
 三句目。ドラマーを恋多き者と考えるのは俗見でしかない。一途の恋を秘めてこそ、ドラムは激しく叩かれる。


「折鶴」 哲白

生まれる音みな吸い尽くしヒロシマの夏
爆心地青きドットの裂けし服
骨を捧げ洞に蹲う敗戦日

 一句目。「生まれる音みな吸い尽く」すほどの深い静寂。爆死した死者たちの無念を思い喪に服する鎮魂の様子が伝わる。
 二句目。「ドット」は水玉模様のこと。爆心地に居ると、青い服の水玉模様が一瞬、目眩を呼び、爆裂したように見える。作者は、水玉から、水を求めてさまよう地獄絵を呼び起こしたのであろうか。
 三句目。この国は再び、戦争への道を志向しているかに見える昨今。戦死者の声に耳を傾けるのは大切なことだ。


「つながれて」 てんきゅう

網タイツよれて九月につんのめる
電線の空切り刻む唐辛子
白秋の夜につながれて象二頭

 一句目。老いた踊り子は九月で力尽きた。せっかく猛暑の夏を乗り切ったのに。今年の夏、何人のお年寄りが熱中症や孤立死で人生を閉じたことか。
 二句目。激辛の唐辛子の凄まじさを電線の「空切り刻む」と風景で表現した。電線「が」とせず「の」としたのがいい。
 三句目。秋の寂寥感を象で表現したのが手柄。象は大きいだけに、より哀愁が広がる。


平敷武蕉
1945年、沖縄県生。著書『沖縄からの文学批評』。俳句評論集『文学批評は成り立つか』で第三回銀河系俳句大賞を受賞。俳句誌『天荒』編集委員。文学同人誌『非世界』編集責任者。


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新 100年の軌跡


2013年度 第二期
第2回


将来図 若狭昭宏

神迎へ魚群を別つ集魚灯
巻耳や土地神さへも噂好き
秋茜世界脆くて触れられぬ
吸入の度に密やかなる子ども
残したき疵もありけり銀木犀
墨塗りの教科書勤労感謝の日
初冬の起こして欲しき庭のもの
今朝の冬校門に立つ半ズボン
木枯らしの又三遊具揺らしゆく
崩れつつ構へ解かざり枯蟷螂
冬めくや逆算したる将来図
新しき家族の話冬燈
離さざるために五指有り蔦枯るる
胎児抱く二対の腕新胡桃
綿虫や胎児の足裏触れてをり


若狭昭宏
1985年12月8日生 広島県出身。安芸南高校より第6回俳句甲子園出場。俳句Webマガジン「スピカ」2013年8月連載。




いい句の日 川又夕

薬指ふたすじ蔦の絡まりぬ
まどろみの乳房の求められ雨月
同じ場所戻れず芒揺れにけり
モノクロのシーツに溺れつつ石榴
秋桜十月十日を指折りぬ
たぶねして従順な肌豊の秋
付き合はず籍を入れたるやう紅葉
新しき姓の画数牧を閉づ
今朝の冬ひとりでなくて服を脱ぐ
初霜や裏切ってでも逢いにゆく
朝食のよく焼くる音冬日和
木の葉髪海の記憶のたわみをり
カーテンの縁のみ眩し玉子酒
首筋へ語りかけるといふ兎
霜月九日振りきれず幻


川又夕
1987年愛媛県生まれ。愛媛県立今治西高校、同志社大学卒業。10年前より俳句甲子園に3年連続出場。第2回NHK学生俳句チャンピオン決定戦優勝。京都、神戸を経て、現在NHK松山放送局勤務。




銀木犀の花 瑞木

残したき疵もありけり銀木犀 若狭昭宏
 人間も物も、少し疵があったほうが味がある。が、やはり癒えない疵はつらいもの。銀木犀のクリーム色の花と香りがそれを慰めてくれるだろう。

今朝の冬校門に立つ半ズボン 若狭昭宏
 40年前の小学校には一年中半ズボンで過ごす名物のような男子がいた。あのころの半ズボンは丈が短くて太ももが丸出しだった。20代の作者が詠んだのはどんな半ズボンだろう。

まどろみの乳房の求められ雨月 川又夕
 先月も無月と乳房を取り合わせた句があった。雨月も無月も、目の前に月がない分よけいに月の存在を意識する季語だと思う。中国の陰陽では、月も女も同じ陰に分類されるらしい。月と女性の象徴の一つである乳房を取り合わせたくなるのは、そんなことも関係しているのだろうか。

モノクロのシーツに溺れつつ石榴 川又夕
 ベッドルームを写したモノクロの写真の、石榴の実だけを赤く塗りつぶした、そんな不自然で芸術的な画像が目に浮かんだ。「溺れつつ」がアンニュイだ。


1963年生まれ。愛媛県八幡浜市日土町在住。第2回選評大賞最優秀賞。



季語の語ること キムチャンヒ

 俳句は17音しかないので、有季定型の俳句の場合、いかに季語に語らすかが、技の見せどころ。理屈だけじゃなく、心に感じるところで季語に語らせることが出来たらベストなのだけど。

残したき疵もありけり銀木犀 若狭昭宏
 残したい疵とは一体どんなどんな疵だろう。その手がかりが銀木犀。金木犀でも、単に木犀でもなく、銀木犀という選択に、作者の思いを感じ取ることが出来る。この疵は、ひっそりとしかし確かに香る、そんな疵。

離さざるために五指有り蔦枯るる 若狭昭宏
 不条理を感じた。「離さざるために五指有り」という強い意志に対して、季語の「蔦枯るる」の無情さ。

モノクロのシーツに溺れつつ石榴 川又夕
 艶っぽくなりすぎるところを、上五の「モノクロ」によって緩和されている。だからこそ、石榴の赤が鮮明に浮かび上がってる。

首筋へ語りかけるといふ兎 川又夕
 季語「兎」への挑戦句として読んだ。かつて狩猟の対象だったはずの兎は、今や愛玩動物と化して詠まれる存在。その兎が首筋に語りかけるという。色っぽくて、怖い。


1968年生まれ。松山市出身。本誌編集長。


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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。今回の先選者は、阪西敦子さんと加根兼光さん。後選者は、関悦史さんです。

 「へたうま仙女」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は杉山久子さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:白鯨


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 加根兼光

 春に左の踵が痛いなあと思って病院で検査を受けたら、足の裏の骨に突起が出来ていてそれが歩くたびに神経を圧迫するから痛い、という。「何か方法はありますか。」「まあ経年変化ですから。」ということで特殊なインソールを作ることになったがどうも合わない。仕方なく大阪の別の病院を受診して今の足に合う靴を作ることにした。陸上選手のように踵を立てて靴を履く。これが意外といい。痛みが減った気がする。まあ神経も経年変化ということか。



スペインの堅きリンゴのごとき君 青蛙

 スペインの堅いおそらく青い林檎だろう。そのような堅さと青さを持った人に作者は戸惑いと愛とを持った。直喩が「君」に対するストレートな目線を表現している。スペインの青い空とひたすら堅い林檎。まだ熟すには時間がかかるがその酸味故の味わいがある。作者の愛の目線もこれからの熟す時間を楽しむかのようである。林檎は焼き林檎になったりシードルになったりして熟成の時を迎える。作者と君にその様な時間が訪れるのだろう。



秋色をひそとまとひて身ごもれる 幸
 秋色を秘すがごとく静かに纏った受胎。いや秋色そのものを身籠もったのかもしれない。「ひそとまとひて」の思わせ振りな中七から秋の深まりと共にある作者の心と体に内包される秋色が明なのか暗なのかが思われる。

バッタにはバッタの都合跳びません  あきさくらようこ
 じっとバッタを見つめていた。飛び立つことを少し期待しながら。しかしバッタは一向に飛ぶ気配を見せない。その時ふと作者の心に浮かんだバッタの独白。そのままその場所を離れる作者。その瞬間にバッタは飛び立つ。

金曜の移動パン屋に来る小鳥 もね
 必ず金曜に現れる移動パン屋。作者もそのパン屋を訪れ、いくつかのパンを仕入れる。小鳥たちもパン屋の来訪を知るように集まる。きっと山からこの町に降りて来た小鳥。「来る小鳥」としたことで小鳥に焦点を当てた。

ブロンズの額ひろやか秋澄めり 野風
 髪をまとめた女の顔を思った。豊かに広がった肉体の上にある顔。額は秋の光を照り返すように輝く。「ひろやか」と表現されることで額の奥にあるこの人の知性も思わせる。益々澄んでゆく秋とブロンズの冷ややかさ。

鶏絞めし身に寒潮の遠き照り ターナー島
 食料とする鶏を絞め終えた。手にはまだ生温かい血の感触が残る。「身に」と言語化されることで作者の生活感覚が立ちあがる。手の感触が身の内まで浸みる。眼前の海は荒ぶりつつ遠くの海には日が当たり始めている。



壁抜けてきし秋蝶とその影と 朗善
腕抜きの黒く張り付く暑さかな ほろよい
蚯蚓鳴く記念切手ののり乾く 紗蘭
シャガールの羊の笑ふ秋日和 樹朋
赤き橋渡れば唐墨干されをり 七草
火竜の口に椿の実焼べよくべよ 樫の木
髪切つて秋を惜しまぬこととする 緑の手
墓洗ふ隔世遺伝らし皓歯 野風
秋蝶にさみしき鎖骨見られけり うに子
中年や子規忌の月のひりひりと さち
はつあきの羊混み合うゴール前 親タカ


先選者 関悦史

 「ku+」(クプラス)という俳句雑誌が年末をめどに創刊されます。執筆メンバーは高山れおな、山田耕司、上田信治、佐藤文香(以上四人編集人)、他に生駒大祐、阪西敦子、杉山久子、関悦史、谷雄介、野口る理、福田若之、依光陽子が参加。現在それぞれ鋭意担当原稿を準備中です。発行形態としては同人誌になりますが、内容的には総合誌を目指すというもの。ネットで盛んな俳句に関する言説が総合誌にはいまだにほとんど反映されず、高齢でパソコン、ケータイに触れない俳人も少なくないことから、その間を橋渡しする紙の雑誌は必要なのでしょう。私は野口る理と対談コーナーを持つことになっていますが、しめきりが重なりまくっている折から全然ネタが決まっておりません。どうしたものか。



壁抜けてきし秋蝶とその影と 朗善

 春の「蝶」や「夏蝶(揚羽)」でもそれぞれそれなりに成り立つ句ですが、その情趣はかなり違ってきます。この句の場合は、壁を抜けてきたという、実体と影とが同等の存在感(非在感)を持つ蝶の妖しさから、陰影に満ちた辺りの空気や、秋蝶とその影への共感のようなものまでが感じ取れます。華やかさも生命感も希薄になった秋の蝶の不意の出現ならではの、存在論的な連想に富んだ親密で不思議な世界。



雨音に目覚めて峡の青蜜柑 こぼれ花
 落ち着いた詠み方ですが、起承転結のような構成の妙あり。「雨音」から「目覚め」という自然な流れから転じて地形の「峡」に開け、それが眼前の「青蜜柑」に収斂。遠近、視聴覚を自然にまとめています。

八十路も半ばとなり
花木槿ふぐりのかるくなりしかな 省三
 金子兜太を連想させるような、高齢・局部・飄逸味の組み合わさった句です。薄く、軽い、飄然たる明るさは季語の「花木槿」の姿と、平仮名、用言+「かな」の止め方からで、自然ながら神経行き届いた詠み方。

名月や女体を金の楽器とす 藍人
 「女体」が「楽器」という連想はそう珍しいものではないし、それが「名月」によるとなると俗っぽくなりそうなのですが、「金の」が意外と曲者。オブジェ化した匿名性の強い女体が奇妙な魅力を発しています。

孫の名も子の名も忘れ秋の蝶 和音
 高齢による認知症を扱ったと思しい悲しい内容の句ですが、孫子の名すらわからなくなりつつ「秋の蝶」へと変じていく風情があり、個人の大切な記憶を失いながら、普遍的な命そのものに還っていく透明な哀切さあり。

ぱんと壊るる巴里の夜長の充電器 さち
 普通ならば些末事にしかならないことが、「巴里」「夜長」と結びつくと途端に異郷での不安に満ちた長い夜を演出してしまう。「壊れた」というコトではなく「充電器」というモノを結論にした手堅さで鮮烈に。



大瓶の置かれて長し月鈴児 のり茶づけ
蚯蚓鳴く記念切手ののり乾く 紗蘭
バッタにはバッタの都合跳びません  あきさくらようこ
痩せ犬や綱長々と花野行く てん点
スペインの堅きリンゴのごとき君 青蛙
シャガールの羊の笑ふ秋日和 樹朋
ブロンズの額ひろやか秋澄めり 野風
無花果の皮をたわしで剥く親父 ザッパー
黒猫の雨宿りして花芙蓉 明日嘉
手に遊ぶ備前の土や七竈 あおい



後選者 阪西敦子

 空も風も水も澄んで、月も鳥も虫の音もうつくしく、米も魚も果物もうまくて、体も頭も心も疲れている。どうなるかというと、すべてのことがだいたいまあまあ悪くもない感じになる。そんなぼんやりした目を覚まさせるのは、きらきらひらひらどきどきするものではなくて、実は淡々としてどっしり、かつすっきりしたもの。


特選句
秋暑し静かにひらく聖書かな 一心堂
 「秋暑」はもともと人の共感を得やすく、温暖化の平常化する近年は猶更。その一方、「秋暑」あるあるみたいになってしまいがちな題。この句は日常を淡々と描きながら、秋暑を深く言い留めて、新しい光を当てる。

工場の昼のサイレンさるすべり 北伊作
 休憩の前か、またはその終わりだろうか。いずれにしてもあまり切迫していなくて、哀しいサイレンが聞こえる。倦むほどの花期をもちながら、一花ははかない百日紅が動かない。

蜩の声コンパスで描いた空 ひなぎきょう
 コンパスは円形を描くもの。円とはある一点から等距離にある天の集まり。蜩の声の満ちる空をそう捉えた。円のような、点のような蜩の声を、一見感覚的で危く見えながら、すんなりとした飛躍は不思議に心に落ちる。


並選句
茗荷汁祖母の夕餉を孫輪番 藻川亭河童
国境の高きフェンスや昼の月 杉本とらを
よく笑ふ九官鳥や秋暑し 杉本とらを
長き夜をゴットファーザー観ませんか ヤッチー
風呂吹きの母の味とは似ぬと言ひ レモングラス
月光皓皓吉野家の牛丼 藍人
秋の朝ぴょんと跳び越す水たまり ペプチド
借り物は校長先生秋高し あらた
秋空に下辺そろえた雲三つ 小市
水筒のキャップの磁石秋の晴 小市
残業を迎えにきたる子に蛍 迂叟
赤い羽根回覧板とともに来る 輝女
秋の声足裏に聞く石畳 みちる
停車場のベンチに独り月明り 富士山
朝靄のホームの屋根や小鳥くる こぼれ花
車夫の引く銀輪するり秋の風 小雪
鯛焼きの列に入りて秋の暮 小雪
咲くように海月沖行く外国船 一走人
名月を告げずに帰る就寝介護 まんぷく
枝豆の湯気匂ひける一周忌 蓼蟲
兄弟は直立不動昭和の日 かのん
小鳥来るおおきな窓の懐に 紅紫
つくつくし夫は厨に入り浸り てん点
どの花にもあいさつをして秋の蝶 ぴいす
人肌の恋しき小犬秋黴雨 おせろ
萩乱れ咲いているこの庭が好き れんげ畑
大胆にかつ繊細に描く秋 八十八
胸の児の欠伸まあるく月明かり 八木ふみ
みどり児の呼気に混じれる金木犀 鞠月
目薬のしみてふるえる十六夜の月 妙
狛犬の尻に廻りてちちろ鳴く 元旦
十六夜を歩きてちょうど着く銭湯 大塚めろ
秋高し娘のジーンズに穴二つ お手玉
芋たきや川の字に寝るリクエスト 魔心地
終便は月光の海を横切りて 空山
ちちろ虫絹結ぶよな仏蘭西語 しんじゅ
箒の目を蟻の葬列ぞうろぞろ 松ぼっくり
あの言葉消去したしを大花火 香
葬礼の読経流るる葛の雨 カシオペア
ゴーヤ弾け午後より波浪注意報 さわらび
ずぶ濡れの案山子なだめてすそを刈る 青柘榴
秋高しさて饅頭の質を問う 理酔
立秋や空の真下の深呼吸 ぎんなん
ゆるゆると夫を看ている秋日和 コナン
宛先に幸福と書く良夜かな 浜田節
イワヂシャモコケニハリツクコクショカナ  サキカエル
秋出水大岩小岩並び替え エノコロちゃん
秋の香は甘く優しく囁く アンリルカ
身に添ひて寒露還暦迎へけり ちろりん
裂膾四角四面の父のこと まるにっちゃん
秋暁や静かに時の流れゆく むらさき
駅を出て川のやうなる日傘かな 人日子
わが呼吸狂はせ去るや法師蝉 鯉城
口笛が僅か先行く秋遍路 カラ嵩ハル



関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

加根兼光(かねけんこう)
1949年大阪生。俳句集団「いつき組」組員。第9回俳句界賞受賞。



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へたうま仙女


文 杉山久子

 あまちゃんロスも落ち着いて? へたの聖地にも実りの秋到来。隣は何をする人ぞ? 隣の人のことなぞおかまいなしのへたうま句が実ったわよ。

恥ずかしいがちゃがちゃが泣き止んでいる  猫ふぐ
 初々しい猫ふぐさん。がちゃがちゃのうるささに紛れていけないおしゃべりでもしてたのかしらね? でも恥ずかしがることはないわよ。次の句を見てごらん。

うんこ出てあっと祈れば父母の情  KIYOAKI FILM
 シモ俳句で申し訳ない……って私が謝ることもないか。日々のこんな卑近な営みの中にも父母の情に思いを致すとは。「あっ」の瞬発力もえらい! おぬし、ツワモノ。

 お口直しの一句を
露草や病院跡地に拡がれり 未々
 露草の青が目にしみる。爽やかな風が吹きぬけたわ。この跡地、このまま置いておいて欲しいような気もするわね。

殺生の限りをつくしてもう九月 ケンケン
 これは深い。みんな普段は殺生なんてしてませんって顔して暮らしてるけどそんな人この世にいないのだから。投げやりな九月で深刻さが軽減されているところがお見事。

長宗我部元親歴女に人気葉鶏頭 郁
 ぎちぎち詰まった漢字遣いが技ありね。彼、某アンケートで大河ドラマの主人公にしたい戦国武将1位に選ばれたらしいじゃない。葉鶏頭の派手なんだか地味なんだかよく解らない存在感が絶妙なバランスで長宗我部元親と歴女を支えてるわね〜。

(今月の居座り)
歌を忘る遊具よ極暑居座りて だなえ
猫の優雅に居座る風は ふーみん
 電池切れ遊具かしら? もう本来の遊具としての役割はないものの暑さの中居座る姿は天晴れ。
 猫はまあいつも好きな時好きな場所に居座るものだけど、あてどない「風は」がよいわ。七七で付け句のようなので何かの句に合わないかと思ったらよいのがあったわ。
温め酒ちびりちびりと人恋し たっ君
 猫の優雅に居座る風は ふーみん
 たっ君の居酒屋の宣伝に貼っておきたいような句にどうかしら。

(……と云う)
転勤は体が楽と云う次男坊 台所のキフジン
ふるさとは林檎村だと云うお方  台所のキフジン
 人の語りで二句も作ってしまったお方。転勤した方が楽になるなんてさぞや今まで過酷な仕事だったのかな、ブラック企業?などと妄想してしまう前句。後句は爽やかな気候の土地を想像させる。「と云う」句は読み手によって様々な世界が拡がる……と云う。

待つ車ちょこんととまる赤とんぼ 柊つばき
 誰かを待っている車にやってきた赤とんぼ。待っていた相手ではないけれど意外な来訪者も嬉しいもの。待つという時間が豊かになったかも?

虫売と呼吸を合わす虫仲間 小木さん
虫売の焦点合わぬ眼かな 小木さん
 虫売ってこんなだろうなと思わせる詩的リアリティがあるわ。小木さん自身が虫売りに似合いそうなんだけど。

秋の夜のベテルギウスは膨張す ひでこ
 超新星爆発だっけ? オリオン座を形成する星の一つ。さらっと付けられた「秋の夜」が宇宙の一大事(?)にはうるさくなくてよいわね。

秋出水アナウンサーの丸い鼻 ひでこ
 こっちは生活上一大事。一大事というにそれを読んでるアナウンサーの鼻なんぞに注目するとは……「俳」はどこにでも転がってるものよね。

 候補者はいたけどなんとか追放者を出さなかった今月、嬉しいような哀しいような。



杉山久子(すぎやまひさこ)
1966年生まれ。第二回芝不器男俳句新人賞。句集『春の柩』、『猫の句も借りたい』『鳥と歩く』。


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 呑んで久しぶりに記憶がなくなった。2軒目までは覚えている。そこから最寄りの駅まで歩いて電車に乗ったのも覚えている。気がつけば次の日の朝で、そばには記憶にない水のペットボトルがさらのままある。写真を撮ってたデジカメをチェックすると、3軒目に知らないショットバーが写っている。財布を確認すると2軒目くらいまでの残金がある。誰かにメイワクかけてるようなかけてないような……わけがわからん。どなたかにお世話になってたらこの場をお借りしてお礼申し上げます。トホホ。



銀杏を踏んだ靴が玄関にある もね

 臭ってくるような気がする。しかし銀杏を踏んでいやな臭いがどうのこうの……といっているわけではない。俳句は説明ではないし全てを言えばその句はそれでおしまいだろう。ただ銀杏を踏んだ靴がある、とだけ言っているのだ。それが玄関にある……屋外と生活の場の境界域とも言える玄関にある。なんとも微妙なシチュエーションではないだろうか。家人はまだ誰も気がついていない。そもそも作者本人の靴なのか、それとも客の靴なのか。抑揚のない抑えたようなトーンが、よりこの後の展開を妄想させてくれます。




囲われて伸びるキリンの首 たま

 「首長きキリンの上の春の空(後藤比奈夫)」、この句の主眼はキリンの上に広がる春の空だろう。一方揚句はキリンの首の長さ高さそのものだろう。動物園の柵と思える「囲われて」という言葉が「伸びる」という言葉と対比して、より伸びる長いキリンの首を強調しています。

ベランダに秋の日が干されてゐる みちる

 夏の間強烈過ぎて感じるどころではなかった日差しが、気がつけばベランダに秋の日として静かに入ってきている。秋の日が「干されてゐる」という表現が清々しい秋の空気感をみごとに言い表している。また「秋の日が」で切ってしまえば、干されているのは洗濯ものという詠み方もできる。いずれにしても気持ちのよいベランダの秋を感じます。

台風一過混み合ふ整形外科 うに子

 台風が過ぎたあと、なぜ整形外科が混んでいるのか。内科とか歯科医とかはどうなのか……という疑問よりこの句は、なるほどそう言われればそんな気がすると思わせる。それがこの句の手柄なのだと思う。多分腰とか膝の関節とか、とりたてて命に関わるほどでもない症状でお年寄りが通う整形外科の待合は……などと分析するのは野暮なのだろう。

籍入れてよと豆飯喰う 藍人

 自由律俳句は日常のナマの言葉は扱いやすいが、上手く扱わないと単なるメモとか感想とか俳句以前に堕落する。最初の7語(上7というのか?)で二人の関係はほぼわかる。あとは「豆飯喰う」をよしとするかどうかの推敲になる。ひょっとして「靴下脱ぐ」でもよいのかもしれない。なにしろこの際季語や文字数から解放されて、籍入れてよの関係をどう広げたり掘ったりするかが自由律の面白さかもしれない。

ペットボトルへこませながら秋 ケンケン

 秋の季語「愁思」を、かるく句にすればこんな感じかもしれない。物思い、鬱屈、寂しさ……はペットボトルへこませるという行為に集約されて違和感はない。最後に「秋」という単純すぎる語を、ぶっきらぼうに投げつけた感がなおさらよいのではないか。



水面を見つめる白鷺を見ている 北伊作
カラクリ時計秋空に ペプチド
満月が急いでらせん階段をあがる ひでこ
濡れた椅子に座る 朗善
少年置き去りにして夏 カラ嵩ハル
身に入むやラブホの湿ったシーツ あらた
石いつつ鳥居の上 小市
台風や蝋燭の灯に少年となる 迂叟
見つめあっても空蝉 緑の手
なめんなよはえたたきにはえとまる 富士山
衣被鼻の奥母さんのにおい 台所のキフジン


並選
雲水一人寺を持たない托鉢 ひでこ
曼珠沙華出番待ち 小木さん
虫かごに吐息をひとつ入リ日 親タカ
犬の糞踏んでUFO見逃す ちろりん
蜩の中心は鍬打つ土 ひなぎきょう
腹いたは仮病じゃないよ神経さ 柊つばき
朝顔はカナヘビつかまえた エノコロちゃん
月が出ている人生はケセラセラ コナン
斜めの案山子見上げる稚子 ぎんなん
台風気まま立上がる命 あおい
しつっこき虻のなんと無表情や さち
あっかんべえを土下座さす 理酔
深まり行く秋に熱く叫べ 青柘榴
求めよ月がこんなに明るい 瑞木
花手向け永久の別れに天も泣き カシオペア
新蕎麦啜り過ぎてしゃっくり ザッパ―
予後のことしばらく伏せておく夏 松ぼっくり
心にちくちく月光が痛い ポメロ親父
こらえ性なく夜長がつらい しんじゅ
時ならぬ電話や継子の尻拭い 空山
二次関数的に病む 大塚めろ
火山灰に屋敷埋もれて無月 元旦
火傷しそうなたこ焼きを飲み込む良夜 樫の木
阿修羅のごと霧中の尖塔 七草
濃紺の空に丸すぎる月 まんぷく
そうかそうかうんうんまつたけめし  あきさくらようこ
向日葵の眼差しの恐怖 和音
車中の盲導犬穏やかに秋は深まる 一走人
棚田は美し稲穂は血の匂い 郁
秋季皇霊祭真西に沈む日天子 輝女
天高く騎馬高く高く飛び上がり よひら
花野は素足で歩くべし 幸
夕立晴れ点滴の速くなる 迂叟
僕だけマスクをしてない 猫ふぐ
二百十日排卵日がどうのと言われても 藍人
テレビつければ吠える顔顔顔 レモングラス
タンドリーチキンお持ち帰りに月が出た  ヤッチー
何処へも行かず家となる のり茶づけ
名月はミソラと送電線を越えて来る  藻川亭河童
父という大河小説は牙じゃ KIYOAKI FILM



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「層雲」同人。句集『鍵の穴』(文芸社)、『鳩を蹴る。』(プラネットジアース)、『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)。特技・妄想、泥酔。


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詰め俳句計画


出題 文 マイマイ

今月の問題
 次の(  )の中に共通する秋の季語を入れて下さい。
専守防衛用の(  )二つ三つ
(  )の尖り求人情報誌


専守防衛用の洟二つ三つ
洟の尖り求人情報誌
 KIYOAKI FILMさん。つっこみどころ満載ですが、それ以前に冬の季語。級外です。

専守防衛用の月二つ三つ
月の尖り求人情報誌
 輝女さん。確かに前句十七音ですが、音節の切れ具合からすると上座を字余りにしても4音の季語の方が座りがいい気がする。しかしなにより前句の内容が無茶。後句は字足らずなりにまとまっているのだが……。鰹めしさんは虫。前句、気持ち悪い。後句も「虫」だけでは「尖り」に説得力がない。あきさくらようこさんは芋。前句は備蓄? 後句、やはりリズムを整えたい。しんじゅさんは早稲田。前句、早稲田で敵を迎え撃つ?? 後句、「尖り」に違和感。7級。猫ふぐさんは秋思。後句は心象風景としてアリとは思うがリズムがいまひとつ。前句もぼやっとして掴みどころがない。6級。

専守防衛用の菊襲二つ三つ
菊襲の尖り求人情報誌
 サキカエルさん。「重陽の日から着る着物の色目」と歳時記の解説にあったのだが……、よくわかりません。わかりませんがこのフレーズとは合っていないと思う。6級。ほろよいさんは藁塚。後句は納得できるが、前句がどうか。藍人さんは菱船。これまたマニアックな季語。後句「尖り」は舳先か。5級。のり茶づけさん、コナンさんは案山子。前句、納得。後句も確かに尖っている案山子はあるだろう。リズムがやや悪いか。笹百合さんは引板。前句いかにも専守防衛。後句「尖り」とどうか。ヤッチーさん、杉山久子さん、カシオペアさんは鹿垣。前句「二つ三つ」の数え方が変か。後句は有刺鉄線や茨などの「尖り」か。未々さんは鹿小屋。後句は屋根が尖っているのか。4級。蓼蟲さんは鹿威。前句は納得。後句の「尖り」も確かに先は尖っているし、音をそう感じたともとれる。3級。

専守防衛用の槿二つ三つ
槿の尖り求人情報誌
 理酔さん。前句、よく生垣に使われる樹種なので納得。後句のリズムがいまひとつ。「尖り」とどうか。ケンケンさんはコスモス。リズムは良いが、私には「専守防衛」「尖り」とイメージが繋がらなかった。空山さんは菱。後句、「尖り」は納得だがリズムが問題。「専守防衛」とどうか。5級。エノコロちゃんは菱の実。後句のリズムは良くなった。4級。

専守防衛用の赤い羽根二つ三つ
赤い羽根の尖り求人情報誌
 だなえさん。前句、寄付を求められないようにあらかじめつけておく訳で皮肉が利いていて好き。後句針の部分を「尖り」というのはやや強引か。だりあさん、緑の手さんは秋灯。後句は「尖り」が心理的情景として使われていて好きだった。前句は防犯としての秋灯? 親タカさんはとんぼう。後句、トンボの尻尾を「尖り」と捉えるのは面白い。前句はトンボを戦わせる遊びでもあるのでしょうか? いずれも3級。

専守防衛用の毬栗二つ三つ
毬栗の尖り求人情報誌
 今回最も多かった回答がこれ。あらたさん、よひらさん、樫の木さん、れんげ畑さん、北伊作さん、人日子さん。カラ嵩ハルさん、まんぷくさんはいがぐり。確かに防衛力は優れているが過剰? 後句「尖り」と言わなくてもわかるところがもったいない。4級。ぎんなんさんは唐辛子。郁さんは鳳仙花。辛かったり、実の弾けるところが「専守防衛」と合う。瑞木さんは椿の実。重いので投げて「防衛」か。これら5音の季語は前句のリズムがやや重い。迂叟さん、青柘榴さんは鬼灯。うに子さん、さちさん、小木さんは鶏頭。ふづきさんは衝羽根。一走人さんは杉の実。ちろりんさんは柿の実。いずれも「尖り」はわかるのだが「専守防衛」とどうか。同じく4級。その点朗善さんの渋柿は「渋」と「防衛」が響きあう。ポメロ親父さんの苦瓜も苦味が効いている。就職活動も「苦」いか。3級。おせろさんの草の実は渋い斡旋。大塚めろさんの数珠玉は投げるのではなく、祈りで敵を撃退? 後句がしみじみと情感深い。2級。魔心地さん、七草さんは椎の実。ほとんど正解に近かったのだが、ここでは正解の平凡さを推したい。1級。

専守防衛用のおなもみ二つ三つ
おなもみの尖り求人情報誌
 たかこさん、鞠月さん。いわゆる「くっつき虫」。投げ合って、三つくっつけられたら「死ぬ」なんて遊びもよくやりました。後句も粘り強い就活が期待できます。藻川亭河童さん、台所のキフジンさんは刀豆。これは技あり。「刀」の字が前後句ともに味わい深い。レモングラスさん、幸さんはべいごま。前句まさにぴったり。後句も大人が少年に戻って興じているようで求人情報誌が効いている。いずれも初段。


今月の正解
専守防衛用の団栗二つ三つ
団栗の尖り求人情報誌
 小市さん、みちるさん、妙さん、元旦さん、ひなぎきょうさん。何の変哲もないからこその味わいもあります。初段。


12月号掲載分の問題(10月31日締切)
 次の(  )の中に共通する冬の季語を入れて下さい。
殉教の野にとどまるや(  )は
(  )のつと土に触れ水に触れ

1月号掲載分の問題(11月20日締切)
 次の(  )の中に共通する新年の季語を入れて下さい。
髭剃機充電中の(  )
(  )蒲鉾の端繋がって



マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人。第一回大人コン「多面体」にて優秀賞受賞。句集『翼竜系統樹』マルコボ.コムオンラインショップにて販売中。将棋推定初段。棋友募集中。



【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)、俳号(なければ本名の名前のみ)、本名、電話番号、住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙女」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、11月20日(金)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.4

kabocha hoto
wakasagi tempura
eat more in autumn

南瓜ほうとう公魚天婦羅もっと秋



We are battling against mold.
We dry everything twice,
but the forest damp invades our home.
We will fight.

我々は冬の黴に立ち向かっている。
総てを二度乾かしてはいるが、
森の湿気が家に攻め込んで来るのだ。
さらに戦いは続く。

訳:朗善



ナサニエル ローゼン チェロコンサートin 松山
開催決定
2014年4月7日(月)
詳細は次号にて



ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第32話
「ザ トリオ」 ハンプトン ホース トリオ VOL.1

軍務明けピアノに向かう冬麗 投槍

 '54年7月27日の深夜、横浜伊勢佐木町のジャズ クラブ『モカンボクラブ』の入り口には、後にクレイジーキャッツのメンバーとなる植木等がいた。店内では、このセッションの世話人であるハナ肇が皮切りのドラムを叩いた。渡米前の秋吉敏子は出番を待っていた。宮沢昭や駆け出しの渡辺貞夫がセッションに加わった。そして我が国のビ・バップ創成の立役者、守安祥太郎のピアノが凄まじいフレーズを弾き出していた。最前列には秋吉と共に軍務明けのハンプトン ホースの姿もあった。彼は'52年〜'54年の間、米国陸軍の一員として日本に駐留していたのである。
 ホースは守安からプレイを引き継ぎ「テンダリー」を弾いた。しかし、誰がみても麻薬の禁断症状は明らかでソロは乱れた。弾き終わったホースはヨロヨロとステージを降り、そのまま姿を消してしまった。
星が飛ぶバップに手本があるように  チャンヒ

 '52年〜'54年といえば、ジーン クルーパ トリオやノーマン グランツのJATPなどが来日を果たしている。これらを契機として我が国に最初の本格的なジャズ ブームが訪れた。来日の大物ジャズマンと日本のミュージシャンとの交流に大きな役割を果たしたのがホースである。秋吉敏子をJATPのメンバーだったオスカー ピーターソンに紹介したのもホースであり、彼らの協力なしには秋吉のバークレー音楽学校への留学はなかっただろう。

行く秋へブルースからり転がって 蛇頭
 ホースは典型的なバップのピアニストでありブルースの名手であった。また、彼のフレーズは西海岸特有の軽快さと明快さを兼ね備えている。ウエストコーストの名レーベル「コンテンポラリー」の音づくりとの相性も良く、あの『モカンボクラブ』でのセッションの11ヶ月後に彼の最高傑作「ザ トリオ/ハンプトン ホースVol.1」をレコーディングしている。

秋深しブルースは基地眠らせる  ドクトルバンブー

 麻薬との縁は切れていなかったが、その後もホースは好調で次々とレコーディングをこなし、アルバムも好評を得た。しかし、58年の夏、おとり捜査によって逮捕され10年の刑務所暮らしが始まってしまう。

ピアノいま秋思の壁を明るうす  神楽坂リンダ

 幸いにもケネディ大統領就任による恩赦でホースは5年で釈放された。復帰1作目のアルバム「グリーン リーブス オブ サマー」のタイトル曲は、獄中の4回目のクリスマスに観た映画「アラモ」の挿入歌で「娑婆に出たらこれをレコーディングしよう」とホースが決めていた曲。他のナンバーも快調で、復帰後の代表作である。

月冴へて微に揺れし肩を抱く 蕪榴子

 今回のテーマと何処が関連しているのか未だに謎の句であるが、一番人気句につき掲載いたします。蕪榴子さん、「キム チャンヒ賞」初受賞おめでとうございます。



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


第32話
『時そば 時うどん』
〜 江戸は一人、上方は二人 〜

あらすじ(時そば)
 屋台の二八そば屋、ぐっと冷えこむ晩に客の男がやって来る。
 一杯のそばを注文し、「どうだ商売は? あきねえ(商い)というぐらいだから、飽きずにやんなきゃな。」など、調子のいいことを次から次に並べたてる。
 どうみても普通のそば屋だが、
「割り箸を使っていて気持ちいい」
「いい丼を使ってる」
「かつお節の出汁がきいている」
「そばは細くてコシがある」
と、ほめちぎる言葉を連発。
 そばを食べ終わると早速勘定。
「いくらだい?」
「十六文でございます。」
「細かいがかんべんしてくれ。」
と言いながら小銭で払おうとする。
「一つ二つ三つ四つ五つ六つ七つ八つ、そば屋、今何どきだい?」
「九つで」
「とお、十一、十二……」
こうして帰ってしまう。
 このやりとりを見ていたのが間抜けな男。
「みょうなところで時を尋ねやがったなあ……。」
 指を折りながら数えてみると、先の男はそば屋から一文かすめたことに気付く。
「うめえことやりやがったな! よしオレも。」
 翌日早い時間からそば屋を探して歩き、見つけたそば屋に昨晩の男のように話そうとするが、どうもかみ合わず、うまくいかない。箸は誰かの使い回しのようだし、出汁は塩っからい。そばは太くてうどんのよう。
 途中で食べるのもあきらめ、大事な支払いのとき。
「一つ二つ三つ四つ五つ六つ七つ八つ、そば屋、今何どきだい?」
「四つで」
「五つ六つ七つ……」



 十月中旬から急に風が冷たくなりました。こんなときはあたたかいそばやうどんが欲しくなります。
 寄席で落語を聴くと、日に一度は必ずと言っていいほどかけられるネタがこの「時そば」。ほとんどの噺家さんが出来るのでは?と思うほどポピュラーです。
 それぞれ演出に違いはあれ、ほとんどストーリーは一緒、でも何回聴いても笑ってしまうんですねえ。これが落語のすごいところ。
 で、寄席では「時そば」を聴くと帰りにうまいそばが食べたくなってきます。近所のそば屋さんは噺家に足を向けて寝られないのでは?
 さて、江戸の「時そば」はうまく一文ごまかす男も一人、真似て失敗する男も一人ですが、上方の「時うどん」(「刻うどん」と表記することも。)になると、金の無い二人の男がうどんを食いに行き、気転のきく男の方が一文ごまかし、それをもう一人の男が後で気付いて次の日自分一人でやってみる……という設定になっています。
 なので後半の演出がだいぶ「時そば」とは違っており、これはこれで爆笑を誘います。
 しかしやり方を江戸の「時そば」風に、一人ヴァージョンにして演じる方法もあります。故桂吉朝師はそうしておられました。吉朝一門では今でも江戸風に演る方もおられると伺います。
 その昔愛媛大学落語研究会の学祭の寄席に吉朝師をおまねきしたことがありました。その時のネタが「時うどん」。
 どんぶりの端が少しずつ割れてギザギザになっているのを、「これが有名なリアス式どんぶりやな。」というギャグで表しておられた吉朝師。
 今でもよお忘れません。

箸をほめ丼をほめ夜鷹蕎麦


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ホンヤクサイホンヤク


翻田 訳蔵

俳句歴1年? のど素人俳人、翻田訳蔵がネット上の翻訳ソフトを使って、名句を翻訳、再翻訳し、そこからインスパイアされた(パクッた)句を発表していこうという馬鹿馬鹿しくも実験的で図々しいコラムです。


今回の俳句
 野ざらしを心に風のしむ身かな 松尾芭蕉

エキサイト翻訳(英→日)

A wind uses being weather-beaten as the heart. Isn't it む身?

 いつも通り、エキサイト翻訳は日本語を残してきましたよ。しかも「む身」と残してきました。
 では、再翻訳

風は心臓として風雨に打たれていて使用します。
それはむ身ではありませんか。

 難解です……。「む身」ではなく、「むき身」ならなんとなく意味が分かるような……。

 モヤモヤ感を引きずったまま、続いてGoogle翻訳(英→日)

Kana only shim the wind in mind Nozarashi

 再翻訳

心Nozarashi風仮名のみシム

 「心Nozarashi」って、なんかカッコいいですねぇ。昭和のアイドルが歌う曲のタイトルのようです。

 最後に、Yahoo!翻訳(英→日)

Is it the wind のしむ body in a heart in a skull?

 お、「野ざらし」を「skull(スカル)」と訳していますね。
 では、再翻訳

それは、頭の心臓の風のしむ体ですか?

 おっと、「skull(スカル)」を「されこうべ」とは訳さず、単に「頭」と再翻訳しました。惜しいのか?それとも惜しくないのか?
 それでは、この3つを受けて一句。

 しむ身NozarashiふられてBANZAI 翻田訳蔵


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第13回 『モリー先生との火曜日』
[加藤健一事務所公演、作 ミッチ アルボム、脚色 ジェフリー ハッチャー、ミッチ アルボム、演出 高瀬久男、出演 加藤健一、加藤義宗、13年9月10日、ひめぎんホール(県民文化会館)サブホール]

 売れっ子スポーツライターのミッチは、仕事に忙殺される日々を送る中、偶然テレビで、大学時代の恩師モリー教授が、難病で余命幾許もないことを知る。一度限りの見舞いのつもりで教授のもとに訪れたミッチは、教授からの、毎週火曜日に会おうと言う提案を困惑しつつも受け入れる。こうして、「人生の意味」について、二人だけの講義が始まった。
 1997年にアメリカで出版されベストセラーとなったノンフィクションが原作。日本でも出版されたので読まれた方もいるかもしれません。本作は、それを二人芝居として劇化したものです。本公演は親子競演ということも話題の一つでした。

主の死添いて紅葉は色づきぬ

 さて、本作では、ミッチの人生に影響を与える死として、モリーの死ともう一つ、彼の叔父マイケルの死が登場します。彼は、若くして癌で亡くなります。それを目の当たりにしたミッチは、夢を追うことをやめ、より現実的な選択として、スポーツライターという職に就きます。そこから彼の、仕事に追われ、大切なものを見失ってしまっていることにさえ気がつかない日々が始まります。しかし、その日々は無駄なものだったのでしょうか。
 マイケルほどではありませんが、私の父と叔父も比較的早くに亡くなり、そのため、私もそう長くはないのだな、と思っています。にもかかわらず、夢にも現実にも向き合うことなく、日々をやり過ごしている。私のような人間は、例え死を目前にしても、良き師に出会っても、人生の達人になることは出来ないでしょう。例え方向性が違っていたとしても、必死で仕事に取り組んできたミッチだったからこそ、モリー教授の言葉や生き方が、胸に届いたのかもしれません。

草の花へ覆水盆に返らずも



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。


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俳句対局普及プロジェクト 俳句対局道場


最終回「実録!! 俳句対局 後編」
ナビゲーター 正人


「俳句対局道場」は俳句対局という遊びを楽しむためのコーナーです。

前回のおさらい
 俳句対局は「席題句から一漢字あるいは一単語をいただき、制限時間内に俳句を作る」ゲーム。
 10月27日開催の龍淵王決定戦に向け、有志による練習会が行われた。松山市内の飲み屋に集まったのは大隈みちる、恋衣、あねご、野風、夏井いつき、正人の六名(敬称略)。飲み会の余興のような練習会が始まった。

 ビール片手に肩慣らしの練習問題「俳句対局ルールに従い2分以内で作句」に挑んだ面々。もう一度やってみましょう。〇番句は初回の挑戦で作った六句の短冊の中からくじびきで選びます。
十方へ飛ぶはたはたの音はたはた いつき
 厄介な句が〇番句になってしまいました。「はたはた」が二回出てきます。一度目はバッタの傍題、二度目は擬音語ですね。この語を頂く場合は文脈での判断が必要そう。

飛行船春の野の上はたはたと みちる
はたはたとどよめくリレー秋の空 恋衣
木の実落つ高音域を保ちつつ いつき
テルミンの音色が呼ばう初嵐 正人
血だらけの二百十日の下ろし金 あねご
飛行機雲のみこむ夕焼けの太し 野風

 安全に漢字で作る人もいれば、擬音語の「はたはた」を取り入れる人もいるのが面白い。一句目、二句目共に「はたはた」の扱いはOKですね。全員無事2分で一句達成!


大隈みちる × あねご
 全員身体と脳がほどよく暖まったところで、いよいよ実戦形式の練習に挑みます。
 時間の計測には手持ちの携帯電話を使います。近頃の携帯であれば殆どの場合ストップウォッチ機能がついているのでバッチリ。
 練習会ということもあり、この場は作句点の評価は個別に行わず、時間点のみに焦点を置いて進めます。参加者が全員プレイヤーでもありますので、誰かが審査に回るのもなんだか具合が悪いのですね。

筆の穂にいとど髭うつ写し物 子規
写生帳だらだらと描く夏の果 みちる

 先手みちるさんの一句目。早速成果が出ているのか作句が早い! 41秒で仕上げてバトンタッチ。

帳面の隅に西瓜の染みふたつ あねご

 みちるさんの早さが特別かと思いきや、あねごさんも即吟。一分切りとまではいかずも1分1秒で初手を仕上げました。

染み多き白シャツ吾の半身なり みちる
半分は父の責任木の葉髪 あねご
半返し倍返しして蚊を叩く みちる
短夜の倍速で見るサスペンス あねご

 五句目六句目は半沢直樹? タイムはみちるさん4分9秒、あねごさん2分55秒を残しての決着。時間点は分の桁がそのまま加点されるので先手4点、後手2点という結果に。先手があと10秒遅ければ、後手があと5秒早ければ点差が変わる瀬戸際です。スリリング。


恋衣 × 野風

少しづつ洗ひ減すやかひわり菜 子規
少しづつ変わる心や秋日和 恋衣

 恋衣さんの一手目は所要時間わずか33秒! 表記を変えずにそのまま頂く上五「少しづつ」もばっちりルールを守ってます。つい「少しずつ」と書いてしまいそうですが、しっかり回避しました。

日和見な私草の実 野風
花野ゆく貞実という名の人と 恋衣
貞子てふ恋の手習ひすさまじや 野風

 野風さんの自由律めく二句目から「実」の一字を頂いての恋衣さん三句目。さらに「貞実」という人名から「貞子」へと人名が連続してきました。「貞子」って名前と「恋の手習ひすさまじや」のフレーズがなんとも凄絶。

恋こがれ鳴いているのがひよどりか  恋衣
亀鳴くや私の闇を訪ふ酒 野風

 最終タイムは恋衣さん4分20秒、野風さん3分4秒を残して決着。「私絶対できません」と言い続けていた野風さんが「お酒の席で遊ぶにはいいかも」と言って下さるようになったのが個人的には最大の収穫。


正人 × 夏井いつき
 取材で参加した以上、自分でも対局しないわけにはいきますまい。ということで不肖一局。

一行に画かきもまじる月夜かな 子規
一行の詩に蜻蛉の群れ来たる 正人
行人へたむける露草のひとつ いつき
たむけたる紅葉に虫喰いのひとつ 正人
喰ふといふことの安けき月見酒 いつき

 ここまでは互いにいいペースの試合運び。先手4分16秒、後手5分18秒を残しての五句目。自分の中でなにかの糸が切れました。

死ぬことも飯くふことも秋の鮎 正人

 駄、駄句……。なんだか勝手に自滅した気分。が、それに引きずられたのか最終句完成直前にぎくりと動きを止める夏井いつき。

鮎川こずえとは永遠へ立てる虹 いつき

 対局後に聞けば「『鮎』に気を取られてうっかり『秋』の字を入れそうになった」とのこと。ちっ。
 最終タイムは先手3分7秒、後手4分38秒を残しての決着。


飲み会の余興としての練習会
 最終戦を終え、一同お疲れ様でしたの乾杯!! 脳を使ったあとは魚の腸の苦みまで美味い。
 今回の練習会、各自に感想を伺うにつけ見えてきたのは「遊ぶには面白い」というご意見。「濡れ縁で将棋をさすような楽しみがあった」とはあねごさんの談。
 俳句対局の面白さの軸には三本の柱があります。「句の質」、「即吟」、そして「座の面白さ」です。練習会では「即吟」と「座の面白さ」を中心に楽しむべし、というのが今回の結論。
 夜も更ける頃にはみちるさん、恋衣さん、あねごさんの三者が本戦への参加を表明。龍淵王決定戦での活躍を誓いつつ、練習会を終えたのでありました。



第二回
俳句対局龍淵王決定戦
10月27日(日)13時より

 第二回 俳句対局 龍淵王決定戦の様子は本誌2014年1月号特集にて紹介の予定です。ご来場いただけない方も誌面にてお楽しみいただければ幸いです。



※俳句対局作句ルール
1:使用する季語はいつの季語でも構わない。(傍題可)
2:前の句から頂くのは、漢字、または、自立語。
3:前の句の表記のまま頂く。表記を変えてはいけない。(カタカナ表記の場合は、カタカナで)
4:前の句の季語、および季語の一部を季語として頂くのは、不可。



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百年歳時記


第6回 夏井いつき

 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。

竹の春スーチー女史の描く国 かのん
 「スーチー女史」とは、ミャンマーの女性政治家アウンサン スーチーさん。ニュース映像を通して見る彼女の凜とした表情や優美な微笑みは非常に印象的です。その「スーチー女史の描く国」とは、軍事政権に因らない民主的国家であります。
 ミャンマーとは、昔のビルマ。この国の産物の一つが「竹」なのだそうです。家も垣根も外厠も建設用の足場だって竹で造ってしまうという竹の国、生活の中に竹が息づく国、竹と共に生きる国の、「スーチー女史」が突き進む民主化への厳しい道。多くの犠牲を強いられた時代もありましたが、その「国」にもやがて「竹の春」が訪れるよ、という願いを込めての一句かもしれません。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』9月6日放送分)

椎茸をしづかにあぶつてゐる門出 稲穂
 「椎茸をしづかにあぶつてゐる」のは自分自身でしょうか、誰かの「門出」を祝っているのでしょうか。私は後者の読みを取りました。父が子の、学問の師が弟子の、長年の好敵手の……さまざまな「門出」が浮かびますが、いずれも決して派手な「門出」ではなく、苦難の道、茨の道を選び取った「門出」でありましょう。
 そんな想像を伝えるのが、形容動詞「しづかに」であり、「鰯」でも「秋刀魚」でも「餅」でもない「椎茸」を炙るという行為です。「椎茸」を炙り一献傾けることを餞とする「門出」は、まさに大人の決意を尊重し、声なき声援を送る座。地味だけれども滋味に富んだ「椎茸」ならではの味わいに満ちた「門出」の一句です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』9月13日掲載分)

初潮の光寄せ来る能舞台 八木ふみ
 「初潮」とは 陰暦8月15日の大潮のことで、「葉月潮」という傍題もあります。さらに「初潮」には【潮の満ちるときに最初にさしてくる潮】という辞書的意味もありますので、大潮の満潮のイメージが強い季語ではないかと(個人的には)受け止めています。
 満潮の高さを「初潮の光寄せ来る」と表現した一句は、宮島の「能舞台」を思い出させます。ひたひたと水位をあげてくる潮、海臭い風、たっぷりと翻るひかりの反射。それらが「能舞台」の臨場感となって、作者が見たものと同じ光景を読み手の心に再生していきます。「初潮」の「初」の一字のイメージが、一句の世界に瑞々しい「光」を満たしていく、静かな迫力が漲る作品です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』 9月27日放送)

秋の雷いざや男児を産みに行かん 小野更紗
 上五の季語に続く「男児を産みに行かん」という措辞に圧倒されつつも、「いざや」の心意気に快哉を叫びたくなります。我が腹の中の「男児」を、「秋の雷」の力を借りて、立派に産んでみせましょうぞ!と高らかに叫ぶ力強い母性! まさに天晴れな一句です。
  かたや、一昔前の家族制度の価値観で読むことも可能。「男児」を産むことを強要する声なき声。我が腹の子が男であることを願い、「いざや男児を産みに行かん」と叫び、祈るしかなかった時代。
  「秋の雷」の本意を「轟きも凄く匂いも強いが、夏の雷みたいにからっとしてない」と捉えると、この感覚はまさに「産み」の現場の腥さ。「産む」という戦いに挑む覚悟に「秋の雷」が轟きます。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』9月20日放送分)

神々しくも便器輝く良夜かな 冬井いつき
打ち上げは失敗良夜にロケット立ってなさい 日暮屋
 「良夜」とは、月の明るい夜のことを言いますが、俳句では特に、中秋の名月の夜を差します。格調高く美しい「良夜」の句は沢山見てきましたが、ここまで突き抜けた二句に出会い、思わず爆笑!
 前句、「神々しくも」輝いているのが「便器」であるという意外性とリアリティー。磨き上げられた男性用便器は、「良夜」の光を吸収するかのように、静かに発光しております。かたや後句、日本のロケットが打ち上げ延期した時事ネタからの発想でしょうが、「打ち上げは失敗」したから、お仕置きです!「良夜にロケット立ってなさい」と言い切る命令形の愉快! 二人の鬼才が放つ奇々怪々句ながら、ついつい口をついてでてしまう愛唱句であります。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』9月20日放送分)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第32回 文と写真 暇人

白石の鼻facebook吟行会
 松山近辺にお住まいで、自動車や二輪車の免許をお持ちの方なら免許更新のたびに訪れる松山市勝岡の運転免許センター。そこから高浜へ向かう途中で神秘的な巨石群を見かけなかったでしょうか。それが白石の鼻巨石群です。
 9月24日、「松山 白石の鼻巨石群調査委員会主催」の「2013白石の鼻フェスティバル」に昨年に引き続き参加&Facebookリアルタイム配信に挑んで参りました。改めて説明すると、昨年度よりmhm関係のイベント等でfacebookに現地写真や説明を載せ、それらを参考に俳句を捻る、いわばfacebook吟行という試み。まる裏関連イベントの後しばらくお休みを頂いたのですが、この試みを今回復活させました。その模様はmhmのfacebookページを探していただき、9月24日の投稿をご覧下さい。
 昨年の私はfacebookの写真を見て投句する側だったのですが、今回はなんとか配信する側で参加できることとなり、現地へ行って参りました。mhmからの参加者は、キム副代表とmhmの活動をアドバイスしていただいている前田 眞(俳号 ペプチド)さんと私の三人。
 当日はまだまだ夏みたいな陽気でしたが、海だけは秋になろうとしていました。天候は昨年の悪天候とは違い、晴れ。きっと白石の鼻の白龍石に夕日が差し込む風景を配信できると期待し、ポジションを確保。あとはその風景を待つだけに。その間に何度か現地の様子をfacebookに配信、なんとか送れている模様。
 いよいよその景色が見られると思った矢先、太陽を雲が覆いました。残念ながら期待していた光景は今年も見られず……ただ波際に光の線ができていたのですが、このページ、カラーではないので紙面で紹介できないのが残念。facebookかブログにて確認下さい。
 問題は、今回の試みにfacebookを覗いていただいた方はいたものの、誰も投句をしておらず、「俳句」を活動内容の軸としている団体の試みとしては今のところ順調とは言えないところ。今からでも遅くありません、ぜひfacebookを覗いていただき、コメント欄に投句をお願いします。

次回予告
 いよいよまる裏も近くなりました。毎年恒例と成りつつある翌日の吟行イベントをご紹介します。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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句集の本棚





『猫と薔薇』内野聖子 著

 かわいい句集。まず表紙。作者の娘さんの絵。題字は息子さん。家族に支えられた一冊と言える。
  輪郭をはみだして描く春の紅
  ゆるゆると夕陽受けとめ春の椅子
 季語の厳密性よりも、春の〇〇とゆるく描写するところに作者の個性。さらに猫好きの句がこの気分をバックアップ。
  シャウトする猫の鼻先春の風
  湯たんぽを抱えた猫がいってらっしゃい
 しかし、そこになにやら剣呑な影も。
  どろどろでぐちゃぐちゃの夏きみがすき
 だが、この坪内捻典推奨句の直後に、
  何事もなかったように紫蘇刻む
 と置く作者は実に女性的。最後に、大胆でオタク的な言葉遣いの一句。
  小春日や起立気をつけ綾波レイ
(書評:みちる)

創風社出版(2012年初版)
定価 1200円(税別)
全110ページ



『押し手沢』長田群青 著

 著者の第二句集。産土である甲斐の風土が端正な筆致で描かれている。
  いま点けて来し燈籠のはるかかな
  古井戸の底がまつくら涅槃西風
  赤子まだ胎内のいろ十二月
  芋虫の葉巻太りに蛇笏の忌
  てのひらを置けば押し上げ鶏頭花
  水霜や鶏鳴粘りつつ空へ
  夏至の空から桃色の鳩の足
  青空の芯の紺青鳥交る
  遠嶺みな襞を忘れて桃の花
  枝先に来し芋虫を囃すなり
  卯の花腐し雨音の改まる
  末枯れの土手にかぶさる八ヶ嶽
  酒少し撒いてどんどに火を放つ
  うねるまで風を離さず蘆の花
 生活のかすかな匂いと日常の中の非日常が交差し、情感豊かな詩情が醸し出されている。
(書評:藤実)

花神社(2012年初版)
定価 2600円(税別)
全238ページ



『冬の金魚』頓所友枝 著

 銀の箔押し背文字の冬の金魚が私を呼んだ。平成六年から二十二年の第一句集。
〔受験子〕
  受験子を黎明の駅に送りやる
  呼吸いまひとつとなりて浮く神輿
〔産土〕
  総立ちのポプラに届け卒業歌
  産土に父を還して粽解く
〔素顔〕
  桃咲くや薬箱より母子手帳
  一本の風となりきる野分かな
〔冬の金魚〕
  東京の死角に冬の金魚かな
  飲めばみな涙となりて朧月
〔パスポート〕
  白鳥来とうに切れたるパスポート
 作者は、美しき眼を持つ水底の金魚。一男二女の母の深く大いなる心の句集。序文を能村研三。跋文を池澤正夫。
(書評:恋衣)

ふらんす堂(2012年初版)
定価 2667円(税別)
全210ページ



このコーナーで紹介した句集は、100年俳句計画編集室にて閲覧できます。


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俳句の街 まつやま
俳句ポスト365


協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


優秀句
平成25年9月度


【飛蝗】 
《地》
ばったばったくさのたましいだいてとぶ  こま
タクシーの二台待つ駅飛蝗群 初蒸気
飛蝗来るレントゲン車のドアのそば  瀬戸薫
外野手の少ない出番飛蝗跳ぶ 不知火
頭から飛蝗まるかじりに子猿  ポメロ親父
きちきちや津波の跡の高さまで るびい
はたはたははぐれるために身を飛ばす  大塚めろ
はたはた跳ぶ覚めて忘れる夢くらい ミル
壁にバッタ張り付いて憂歌団な午後  冬井いつき
フロントガラスのバッタ時速65キロで飛んだ  猫ふぐ

《天》
飛蝗ばたばたバター色の夕陽  樫の木


【椎茸】 
《地》
あんなに立派な椎茸干している 猫ふぐ
椎茸干すや火曜は村に医者の来る  ふづき
雨音が肥し椎茸太りゆく 鞠月
椎茸に金剛力の夕日かな 甘えび
椎茸焼く月色のバターたつぷりに  初蒸気
七輪の椎茸じゆわりじゆわり泣く  めいおう星
さう悩むなよしひたけが生えちまふ  とおと
山賊のやうに椎茸むしりけり 神戸鳥取
椎茸を恋の奴隷のように食う ゆきる
少なくとも椎茸よりは干されてる  のひろ

《天》
椎茸をしづかにあぶつてゐる門出  稲穂


【秋の雷】 
《地》
龍を産む空の苦しみ秋の雷 たかこ
秋の雷なめとこ山に生まれるよ  天宮風牙
千枚の棚田震えよ秋の雷 カリメロ
赤松の脂吹く匂ひ秋の雷 ポメロ親父
秋の雷ストレッチャーの輪の歪む  緑の手
秋の雷ながしガーゼに胸の傷 すな恵
秋の雷水に交じらぬ強き酒 可不可
秋の雷ミック ジャガーに皺深し  くろやぎ
秋の雷自動ピアノの止まざるよ あい
秋雷やまんぼうの湧く北の海 魚水

《天》
秋の雷いざや男児を産みに行かん  小野更紗


【秋分】 
《地》
洛陽に無為の秋分過ごしけり 初蒸気
また天を地に秋分の砂時計 ほうじ茶
秋分の入り日巨石をまつぷたつ 野風
秋分の日を留めたる鎌の先 みなと
秋分に鳴らす形見の弓弦かな 樫の木
秋分のぼうずり真っ直ぐ立たぬわけ  冬井いつき
秋分や兎の耳に口づけて  ちびつぶぶどう

《天》
秋分や夜へ祈りを捧げる木  根子屋


《先月号での掲載漏れのお詫び》
「朝凪」の《地》の俳句で、以下の俳句の掲載が漏れておりました。お詫びの上、掲載いたします。
【朝凪】 《地》 朝凪や海は沖から目を覚ます  雪花



11月の兼題

投句期間:10月31日〜11月6日
枯葎【三冬/植物】
夏の間に荒れ地や野原で生い茂った葎の、蔓が絡みつき、もつれたまま、枯れ果てたもの。

投句期間:11月7日〜11月13日
蓮根掘る【初冬/人事】
秋半ばより蓮田の水が抜かれ収穫が始まるが、盛んになるのは初冬から。かつては農具で泥の中から掘り出す重労働だったが、最近では太いホースの水圧を利用する。

投句期間:11月14日〜11月20日
霜柱【三冬/地理】
地中の水分が地表にしみ出て凍結し、柱状になったもの。粒子の細かな柔らかい地質で形成されやすい。近年は温暖化や、主に開発の影響による地中水分の減少により見られなくなった地域が多い。

投句期間:11月21日〜11月27日
室咲【三冬/植物】
本来は春に咲く草木の花を、かつては土蔵作りの室に入れたり、現代では温室やビニールハウス入れたりして、暖房で温めることで冬のうちに早咲きにさせたもの。


《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成25年9月度


【竹の春】
竹春が腰折山の五合目に 不知火
地を蹴って空を食いたし竹の春  風花会 山百合
牧野先生の愛した竹の春 ポメロ親父
竹の春歩こう会の笛高し 松ぼっくり
鉈を研ぎ祭りの準備竹の春 鍛冶屋
竹の春天満宮の神隠し なおき
竹の春暗い影射す道祖神 あやね
斎王の下りし道や竹の春 妙
竹の春降りくるものはみな恵み  てんきゅう

《天》
竹の春スーチー女史の描く国  かのん


【裂膾】
父ちゃんの小さき大漁裂膾 ちろりん
朝市のこぼれ魚や裂膾 たま
絡み合う骨うつくしき裂膾  ひなぎきょう
槌握るぶ厚き指や裂膾 鍛冶屋
背の子にひょいとやりたる裂膾 太郎
厨房に我は味噌溶く裂膾 のり茶漬け
クビにするならしてみろ裂膾 あねご
裂膾くらいで惚れてなるものか  てんきゅう
裂膾父海軍の話など 一走人
裂膾独り更け行く小島の夜 四方田

《天》
髪結いの妻にはさせぬ裂膾  そも
虫も殺さぬ妻の膾となれば裂くこと裂くこと  日暮屋


【良夜】
青空のほのと残れる良夜かな めろめろ
澄みわたる良夜の青い雲不動 そも
良夜にワインハンガリー狂詩曲  ターナー島
熱き手を冷ます良夜の木のベンチ みいみ
わたくしの音たてず良夜の中に居る  不知火
わたくしは影のひとつとして良夜  マイマイ
空蝉に息吹き込んでいる良夜 烏天狗
仰臥の手白蛇に似る良夜かな 紅紫
良夜に痴呆すすむ母声高く ぼたもち
神々しくも便器輝く良夜かな  冬井いつき
打ち上げは失敗良夜にロケット立ってなさい  日暮屋

《天》
タクシーの良夜を告げる無線かな  太郎


【初潮】
初潮や船みな高き舫い綱 ターナー島
初潮や波止より高き船灯り 蓼虫
初潮や下船の橋の前のめり 樫の木
初潮の賑わい見せる潮溜まり 雪花
初潮を揺らしフェリーの胴震い ほろよい
苔玉のような小島や葉月潮 なおき
初潮を発ち黒潮のうねる魚場  ポメロ親父
韓国の夜や初潮の向こう側 七草
初潮や赤子は濡れて生まれけり 花菜
初潮へ荒々しくも赤き星 マイマイ
初潮や眠らぬ鳥の息ひそか てん点
初潮や清盛塚に渦の巻く 七の字

《天》
初潮の光寄せ来る能舞台  八木ふみ


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

11月10日
蒸饅頭【三冬/人事】
蒸籠から下ろして、熱いうちに食べる饅頭。起源といわれる中国のマントーは肉や野菜の餡が多いが、日本では小豆餡が多い。

冬北斗【三冬/天文】
冬の夜空の北斗七星。柄杓の形をしており、北極星をさがす手がかりになる。北極星のことをいう場合もある。

11月24日
冬眠【三冬/動物】
体温が外気温に左右される変温動物は、冬の低温期には活動を止めて眠ったような状態になる。一部の哺乳類にも冬眠をするものが居るが、栗鼠や熊などの場合は完全な冬眠ではなく、ときどき目を覚まして活動する。

寒林【三冬/植物】
広葉樹の葉が落ちて寒々とした冬枯の木々が広がる林。


《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  11月5日(火)11時40分〜
  11月19日(火)11時40分〜

あいテレビ(TBS系列、全国)
 『プレバト!!』2時間スペシャル   11月7日(木)19時〜20時49分
※組長がゲストの俳句ランキングづけで出演!

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FM愛媛
 バニラビーンズの俳句っちゃお〜!
 毎週日曜日深夜0時〜0時30分
※夏井いつきが俳句指南で出演
※FM大分でも毎週月曜21時〜放送中

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「スケート、冬眠」11月10日〆
   「鍋焼、冬の月」11月24日〆
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)、住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「落ち葉」 締切 … 11月26日(火)


句会ライブ、講演など

東海商業高校句会ライブ
 11月7日(木)

はぴかちゃん歯いく大賞句会ライブ
 11月10日(日)
  いよてつ高島屋8階スカイドーム
※今年は当日投句句会ライブ有り! はぴかに応募してない人にもチャンス!

徳島阿南市句会ライブ
 11月14日(木) 由岐地区小中学校句会ライブ
 11月15日(金) 日和佐中学校句会ライブ

トレッキング ザ 空海あいなん句会ライブ
 11月17日(日)

内子町立多渡小学校句会ライブ
 11月23日(土)

松山市議会場句会ライブ
 11月24日(日)13時〜15時(12時30分開場)
  市役所別館5階 市議会本会議場
〔申込期間〕 11月5日〜13日(平日 〜17時)
 議事調査課948-6650-6652
〔その他〕参加無料。申込受付後、入場整理券を送付します。必ずお持ち下さい。



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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

お詫び 

 先月10月号33ページに掲載されている「詰め俳句計画」の次回兼題に誤りがありました。

誤 秋の季語を入れて下さい。
正 冬の季語を入れて下さい。

 この修正に伴いまして、「詰め俳句計画」のみ投句締切を10月31日まで延長いたします。
 既にご投句がお済みの方については、お送りいただけ次第新しい投句へと差し替えさせていただきます。ご迷惑をおかけいたしまして誠に申し訳ございません。


平身低頭
うに子 マイマイさんの詰め俳句のファンです。選ぶ季語でがらりと句の姿が変わるのが楽しいですね。今ここで冬の季語は思いつきませんから今回はパスさせてください。(月末忘れずにいられるか自信ないなあ)
編 (お詫びに続いて)重ね重ねご迷惑をおかけして申し訳ありません。ぜひとも忘れずご投句頂けるとありがたく……。

祝、初「天」!
たま きむらけんじ先生、九月号の「天」ありがとうございました。まずびっくり! そして嬉しさが広がりました。俳句入門より数年入り口でうろうろ〜。なにしろ初めての「天」!これからも「たまたま」を期待して楽しんでいきます。
編 初「天」おめでとうございます! 各コーナーのタイトル制覇狙ってみるとかいかがでしょう? 詰め俳句の「参りました」とか。

ラクゴキゴ。
朗善 9月号も、ラクゴキゴ面白かったです。うちの犬の名は、かぼちゃんといいます。以前は、パンプキンも飼ってました。
編 じゃあ三世の名前は「南瓜(なんきん)」で。

時期の問題
のり茶づけ 雑詠俳句の投句ですが今回送った俳句(10月20日締切)は12月号の投句になりますね。ということは冬の季語での投句がのぞましいのでしょうか?
編 厳密な規定はありませんが、秋に「冬の句作らなきゃ」というのも酷な気がします。割と自由。

偉人の立った場所
元旦 10月20日、大雨の中、深川の芭蕉庵跡に行って来ました。裾も靴もずぶ濡れになり、傘も飛ばされそうでした。そんなところで、大川を見つめながらじっとしている芭蕉はエライ。
編 昨今の台風情報見てると笑いごとじゃない感。一句ひねったら即退去! 安全第一!

ケンケン 草津市俳句大会で入選しました。草津市は俳諧師「山崎宗鑑」の生誕地です。現在、市の「まちづくり」会議に参加しています。宗鑑を全面的にPRして、将来は松山のような「俳句でまちづくり」を目指しています。
編 松山の子規、大垣の芭蕉、草津の宗鑑。それぞれが俳句のまちとして育ったなら豊かな未来が開けるに違いない。

悲愴
藻川亭河童 パソコンがクラッシュして大切な数年分の作品が全て消えました。解ってはいたのですがやはりファイルはCDにきちんと外付けしておくべきでした。しばらく立ち直れないぐらい俳句集の原稿まで全てなくなりました。物覚えの悪い記憶力をフル稼働して再構築しています。ほんまにあほとしか言いようがない。
編 パソコンでの保存はそれが怖いですね、お悔やみ申し上げます……。各種パソコンショップには、消えてしまったパソコンのデータを復旧するサービスを行っているお店もあります。一縷の望みとしてお試しあれ。


100年俳句計画誌上編集会議

編 本誌も十年目を迎え、様々なご意見を参考にしながらリニューアルをはかっていきたいと思っています。このコーナーでは、皆様のお便りを紹介しながら、さらにご意見を集めつつ、誌面に反映させてゆきます。
 沢山のご意見をお待ちしています。

今月の提案
輝女 投稿のページがなかなか開かなくてなんか毎月困っております。もっと簡単に投句出来ないものでしょうか。

更紗 組長のブログをいつも楽しみに読ませて頂いてますが、リンク先が更新されないままなのが気になります。すでに終了した投句フォームや「俳句の缶づめ」等に替えて「100年投句計画」や「俳句ポスト365」をリストに載せてはいかがでしょうか……なんてことを片付け下手な私が言うのもおかしいですが……。

編 関連する内容につき、二つのご質問を同時に取り扱わせていただきます。

 まずは輝女さんのご質問から。お書き頂いた内容からは二通りの可能性がありますので、念のため二種類の回答をさせていただきます。
 まずは可能性の低い方から。「なかなか開かなくて困る」とのことですが、これを単純に「ホームページに繋がりにくい」と解釈してみた場合。お使いのインターネット環境や時間的タイミングによっては、投稿ページが開きにくい場合があります。お使い頂いているパソコン・インターネット環境が不明のため明確な回答はできませんが、グーグルクロームというブラウザをお使い頂くことで改善される可能性があります。「グーグルクローム」とインターネット検索をすれば無料で手に入ります。お困りの方はお試し下さい。
 もう一つ、こちらが本命の読みですが、更紗さんの仰る内容と同じく「投稿ページにもっとアクセスしやすくして欲しい」という意味だった場合。
 更紗さん、ご意見ありがとうございます。早急にブログのリンク先等修正させていただきます。
 「もっと簡単に投稿できるように」というご要望にお答えする方法の一つとして、「入り口をわかりやすくする」があると思います。
 「夏井いつきの100年俳句日記」をご覧頂いている方が多い現状、ブログのわかりやすい部分に入り口を作ることで、投稿しやすく、また締切を忘れにくくできるよう計画しております。
 実際にブログのどの部分に入り口が新設されるかですが、画面左端の文字がずらーっと書いている部分、「links」と書かれている項目の下に追加する予定です。
 その他「こうして欲しい」「ここが気になる」などのご意見、ご要望がありましたら随時お寄せ下さい。お待ちしております。


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鮎の友釣り

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俳号 旧重信のタイガース

ぼぽんたさんへ いつか、本当にお逢いしたいですね。

俳号は 長年、宅配の仕事をしているため、ラジオは相棒。朝早くから夜遅くまで南海放送のみ。阪神タイガース大好きで、東温市合併以前からラジオネームで使っているので、合併後に『旧』を付けました。

普段の句会 仕事が夜遅く、休みも殆どないので、参加したことはありません。なので、句会代わりではないですが、SNSでコミュを作って、仲間と楽しんでます。
 一句一遊に投句して丁度一年目に、組長から『天』のご褒美をいただきました。

次回…西条のユーホふきさんへ いつも、お世話になってます。まだまだ俳句の若僧ですが、宜しくお願いいたします。


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告知


生まれてから現在までの代表句募集!

1月号特集は、毎年恒例、皆さんからの自選三句を掲載した「代表句集」です。沢山の方の参加をお待ちしております。

募集内容
 1:あなたの生まれてから現在までの代表句三句(一人一俳号まで)
 2:代表句についてのコメント
  ※コメント全体で100字以内厳守
 お名前、俳号(ふりがな)、年齢、住所、電話番号を必ず明記の上、宛先、件名を「代表句集2014」として本誌編集室までお送り下さい。

※俳号と俳句には、よみがなを付けてお送り下さい。年齢は鑑賞の参考とするため句集に掲載させていただきます。御了承下さい。

専用ホームページ
http://2014.marukobo.com

締切 11月30日(土)必着
なお、応募対象はハイクライフマガジン『100年俳句計画』定期購読の方のみとさせていただきます。ご了承下さい。



無料インターネット句会新規参加者募集!
11月7日(木)参加者募集開始

 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』が運営しておりますインターネット句会「象さん句会」&「週活句会」の2013年6thシーズンの参加者を募集します。
 どちらの句会も参加無料。それぞれエントリー開始から定員まで、先着順で参加出来ます。

俳句を増産したい方のための象さん句会

「百年百花」や「100年の旗手」など、本誌に作品集を連載される「俳句を増産したい方」を中心に、毎週5句出しで4週間行う「本気モード全開」の句会です。もちろん一般参加も可能です。


20代のための週末俳句活動句会、略して週活句会
 俳句甲子園出身の方や、大学のサークルで俳句をやっている方など20代の俳人を中心とした句会です。この句会から「100年への軌跡」連載者も輩出します。また、交流の場としても楽しめます。

どちらも2013年11月7日(木)一般募集開始
詳しくはブログマルコボ通信まで
http://info.marukobo.com/



マルコボ.コムオンラインショップマガジン化10年目突入記念企画
HAIKU LIFE 100年俳句計画
企画別ワンコインバックナンバー集発売中

本誌は2013年6月号で、マガジン化してから10年目に突入しました!
マルコボ.コムオンラインショップでは10年目突入記念として、テーマ別のバックナンバーのお得なセット販売を行っています。

編集室のオススメセットは……?

1:一物仕立ての定義セット
「 『くろがねの秋の風鈴鳴りにけり 飯田蛇笏』
この句は「一物仕立て」のお手本として取り上げられることが多い。では、どうしてこの句が「一物仕立て」の代表的な句なのか。その根拠を論理的に納得のゆく形で論じている文献はあまりない。……」(08年5月号より)
 俳句の構造を大きく二つに分けると、「一物仕立て」と「取り合わせ」に分けられる。しかし両者の違いを明確に説明できる人間がいったいどれだけいるだろうか? そしてその認識は本当に正しいのだろうか?
 俳句集団いつき組・俳句部が難問に挑む三回シリーズの特集「一物仕立ての定義」。一年に及ぶ研究の末まとめられた結果は驚きの結論を導き出した。知的好奇心を刺激したい全ての俳人必読の三冊セット。
(正人)

トピックス
 北斎で分かる「一物仕立て」と「取り合わせ」
 一物仕立ては「一句一章」?「写生句」??
 「季語」を1カウントとする
 5600句全てを分類

収録内容
2008年5月号:一物仕立ての定義 その1 問題提起編
2008年7月号:一物仕立ての定義 その2 格闘編
2008年9月号:一物仕立ての定義 その3 完結編


27:いつき組選評大賞
 俳句は作るのも楽しいが、読むのもまた楽しい。だが中には己の理解が及ばない句もある。
「この句、なんだか好きなんだけどなんで好きなのかわかんないのよね……」
 そんな経験が誰しもあるのではないだろうか。だがそんな句を第三者がわかりやすく解説してくれたらどうだろう? しかもその語り口が面白く魅力に溢れたものだったら? 原句はもっと魅力的に輝きだすに違いない。
 選評大賞は直近一年間に「100年の旗手」で連載された360句の中から読者が気に入った一句を選び、選評の質を競うコンテストだ。審査を行うのは俳人、詩人、大学教授の三人。物を書くということにおいては一家言ある職人たちだ。本特集ではこの三人が応募作品に対して座談会形式で評価を行っていく。佳句を楽しむための選評があり、その選評を楽しむための座談会が繰り広げられる。三層構造の楽しみを味わっていただければ幸いだ。
(正人)


収録内容
2007年12月号:いつき組選評大賞2007
2008年12月号:いつき組選評大賞2008
2009年12月号:いつき組選評大賞2009
2010年12月号:いつき組選評大賞2010
2011年12月号:いつき組選評大賞2011


全27セット 各500円
但し、合計金額が3000円未満の場合は送料別途
お求めはhttp://shop.marukobo.com/まで




HAIKU LIFE 100年俳句計画
第3回
大人のための句集を作ろうコンテスト
作品募集

主催 マルコボ.コム 共催 朝日新聞社・松山市教育委員会(予定)

 第三回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」(通称「大人コン」)の作品募集がスタートしました。
 「大人コン」は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』が開催する俳句コンテストです。
 共催 朝日新聞社・松山市教育委員会(予定)

「受賞作品が句集になるってホントですか」
 最優秀賞作品は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』の付録冊子として読者諸氏に広く読んで頂きます。付録とはいえ、お洒落なデザインの句集だと評判です。
 受賞者には一切の金銭的負担をかけず、読者にとっても安価な句集をどんどん生み出していきたいという志を一つの形にしたのが、この企画なのです。

「俳句マガジンを購読してないんですが、コンテストへの応募はできますか」
 どなたでも応募できます。購読の有無は一切関係ありません。勿論、応募は無料です。

「審査は誰がするのですか」
 本コンテストの受賞者は、「大人コン」選考会員の投票によって決まります。「大人コン」選考会員は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』購読者の内、各総合誌等の俳句賞受賞者あるいは最終選考に残った実績のある人たち等によって構成されます。第二回の有資格者は三十二名。年々選考会員数は増えていくことになります。
 多くの目利きの力を借りて「百年先の未来に残したい作品と作家」を見い出し顕彰していくことが「大人コン」の目的。我こそは!という皆さんのご応募を、心からお待ちしております。

既作新作を問わず81句の作品集を募集。
最優秀賞作品は句集にし、本誌付録として配布します。

募集要項

応募資格
15才以上(高校生以上)の方なら、本誌購読の有無に関係なく、どなたでも応募できます。

応募方法
1:Eメールでの応募の場合
応募用のエクセルファイルに必要事項を全て入力し、Eメールの添付ファイルにして、応募して下さい。
応募用ファイルのダウンロード先
http://81ku.marukobo.com/

2:郵送の場合
B4判四百字詰め原稿用紙に81句とその表題、俳号、本名、年齢、住所、電話番号を必ず明記して応募して下さい。

締め切り 2013年12月10日(火)必着

賞 賞状および応募作品による句集20冊
*賞品句集は縦横135mm・36ページとなります。句集は本誌付録として配布します。

発表 本誌2014年4月号誌上(予定)

送り先
〒790-0022 愛媛県松山市永代町16ー1
有限会社マルコボ.コム
月刊俳句マガジン『100年俳句計画』編集室Eメール:81ku@marukobo.com




12月の第1土曜日は恒例の……!!
いつき組大忘年会のお知らせ

 毎年12月の第1土曜日は「いつき組大忘年会」の日。今年も盛大に開催致します。抱腹絶倒まちがいなし。たくさんのご参加をお待ちしています。

日時
 平成25年12月7日(土)19:00〜21:30(受付18:30〜)

場所
いよてつ高島屋9F ローズホール
愛媛県松山市湊町5丁目1−1
089-948-2111(代表)

会費
 大人 6,500円
 大学生以下 4,000円
 小学生以下 2,500円

参加申込締切
11月15日(金)必着!

参加方法
 忘年会参加希望の旨と、郵便番号、住所、氏名、俳号、会費区分(大人/大学生以下/小学生以下)、連絡先電話番号を明記して、ハガキ、FAX、Eメール、または電話にてお申し込み下さい。ご家族等複数でお申し込みの場合は、代表の方の郵便番号、住所、連絡先電話番号に加え、全員の氏名、俳号、会費区分をお知らせ下さい。

【投句、投稿に添えてのお申込はお控えください。】
※受付対応が遅れる場合があります。

 お申し込みをいただいた方には11月上旬より順次、受付完了をお伝えするハガキを郵送いたします。
※締切までにお申込いただいた方で、11月21日(木)までにハガキが届かない方は、お手数ですがマルコボ.コムまでご連絡ください。

今年の大忘年会は…桃ライス映画祭&大句会!
昨年、組員協力のもと撮影したあの「早朝電車」の映像をはじめとする桃ライス監督による、組員が出演しているショートフィルムを上映!

句会は事前投句! 参加者全員で互選! 兼題は「じぇじぇじぇ」……!?
俳句に自信が無くても豪華賞品のチャンスが!! 詳細は案内ハガキで。


問い合わせ 申し込み先(有)マルコボ.コム
〒790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
TEL 089-906-0694 FAX 089-906-0695
E-mail magazine@marukobo.com



100年俳句計画投稿締切カレンダー

11/20(水)
 100年投句計画
http://marukobo.com/toukou/
 魚のアブク
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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編集後記


 僕が写真俳句に初めて出合ったのは、1997年「写真と五七五のツーショット」という愛媛新聞の企画だった。僕の役目は、受賞作品をパネルに仕上げること。作品ごとにぴったりの書体を選び、俳句と写真とを組み合わせる作業は、まるで化学実験のようで、実に楽しかった。
 特集記事でも述べたが、写真と俳句の組み合わせ方次第で、作品の印象は大きく変わる。今振り返ってみれば、この作業によって、取り合わせの概念が、知らず知らずのうちに自分の体に入っていったのだと思う。
 この頃は、まだまだフィルムカメラが現役の時代。写真を撮るだけでもそれなりに費用がかかっていた。そんな写真とまだ年配の方の趣味だと思われていた俳句とを組み合わせて作品を作る人が、これから先どれほど増えるのだろうか、なんて考えたこともある。そして、その危惧は現実となり、このコンテストは数年後終了した。
 それから約15年。今では誰もが写真に親しみ、10代の若者たちが俳句を競う時代が訪れている。松山をはじめ、各所で写真俳句コンテストが開催されている現状を思うと、改めて時代が進んだのだと思う。
(キム)


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次号予告 (193号 12月1日発行予定)


次回特集
100年俳句計画
選評大賞2013
ほか

年間購読者のみの特典
2014年季語付スケジュール帳プレゼント!
2015年3月までの季語を掲載。
表紙が厚く使いやすくなりました。
*2013年12月号の発送の際に同封します。
*編集室より直接購入されている方のみの特典です。
*デザインが変わる場合があります。ご了承下さい。


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2013年11月号(No.192)
2013年11月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子