100年俳句計画10月号(no.191)


100年俳句計画10月号(no.191)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
秋麗の人 緑の手


特集
旅人と選手と審査員による俳句甲子園レポート



好評連載


作品

百年百花
 柊ひろこ/亜桜みかり/朗善千津/樫の木


放歌高吟/夏井いつき

100年俳句計画作品集 100年の旗手
 蛇頭/哲白/てんきゅう


百年琢磨 しなだしん

新100年への軌跡
 俳句/川又夕/若狭昭宏
 評/桜井教人/とりとり


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/加根兼光


へたうま仙女/杉山久子

自由律俳句計画/きむらけんじ

詰め俳句計画/マイマイ



読み物
Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
クロヌリハイク/黒田マキ
句集を作るドキュメント
俳句対局道場/正人
百年歳時記/夏井いつき
mhm通信/暇人
句集の本棚

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー


秋麗の人
緑の手

 画家になりたかった高校時代、その音楽教師に出会う事はなかった。
 それから約40年後、講師として勤務させていただいた松山盲学校の校長として私は彼に巡り会った。英知で統率力があり、いろいろなものにこだわっていた。例えば珈琲、炊飯でもその物だけではなく水にも火加減にもこだわっていた。56歳で胃癌となり全摘手術をされたが、完全治癒されたと想う。おりしもその約10年程後私も胃癌の全摘手術を彼と同じ年齢に受けた。
 彼は大変心配してくださり、何度も電話をいただいたり、手作りのお菓子を持ってきてくださったりした。なかなか連絡をする事が出来ず御無沙汰をしていたら、全く別の癌が見つかり、まだ若い66歳という年齢で、美しい寝顔の様な貌で逝ってしまった。
 この秋麗の美しさにただただ眼がくらむばかりである。


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特集

旅人と選手と審査員による
俳句甲子園レポート




 今年で16回目を迎えた俳句甲子園。俳句甲子園観戦のために東京からいらっしゃった笑松さん、選手として最初で最後の全国大会出場を果たした松山中央高校の藤岡亜沙美(俳号 嵐)さん、審査員を務めた桜井教人さんの3名によるレポートをお届けする。


俳句甲子園観戦記
笑松

 俳句甲子園は、これだけは何としても松山に戻らなければと思うイベントのひとつです。今年も、朝一便で松山に入り、大会を満喫してきました。
 大街道に到着すると、ちょうど開会式が終わったところ。全長約0.5キロのアーケードに並ぶ試合会場。行き来する選手やスタッフ。今年もやって来たという実感が湧いてきます。
 まず、掲示板で会場ごとの組み合わせを確認。予選リーグは十二会場同時進行なので、どこを観戦するかが悩ましい問題です。散々迷って、強豪開成と同じ有名進学校で、初出場の灘高と、優勝経験も含め十三回の出場を誇る熊本信愛女学院の対戦を選びました。
 ルールの紹介に続き、披講 質疑応答 赤白の旗による審査員の判定、と、いよいよ今年の試合の幕が開きます。
 片や青のTシャツに全員が黒縁眼鏡。片や夏セーラー服で眼鏡無し。机の上の様子まで対象的な両チーム。でも、質疑応答では、どちらも、ハッキリとした声で、疑問や提案を投げかけ、それに応えていました。
 質問者の言葉をしっかり聴き、うなずき、また、相手チームや審査員 観客に向け、自分の意見を的確に伝える。選手たちの、こうした真摯な質疑応答のぶつかり合いを目の当たりにできることが、私にとって俳句甲子園に足を運ぶ理由のひとつです。
ふと審査員席に目を向けると、審査員の先生方も、選手の発言にうなずいたり、身をのりだしたりと、こちらも真剣勝負。勝敗を決する旗が上がれば、観客席から歓声や拍手と、会場全体が熱気に包まれていきます。
そんな中で、まわりを見渡してみれば、ピンクのポロシャツのスタッフのよく統制された動きが目に入ります。進行する司会や行事はもちろん、タイムキーパー、採点用紙回収係、選手誘導、大短冊めくり、音響。連絡。当日の会場だけでなく、この大会を運営 開催するために、どれほどたくさんの仕事と、それに伴う苦労があったのかと思うと、頭が下がります。
 試合は3対0で熊本信愛女学院の勝ち。信愛と書かれた団扇が観客席で揺れ動きます。
 会場を移動して、昨年優勝の松山東Aと松山中央の、松山同士の対戦を観戦。「青春を賭ける」と書かれた黄緑Tシャツの松山東Aに対し、松山中央は、「一句入魂」の青Tシャツ。定番の、それぞれのユニフォームから気合が伝わってきます。
 迫力のある質疑応答、がっぷりよつの戦い。「見ごたえ、聞きごたえがあり、準決勝や決勝級のディベート」と審査員の高野ムツオさんが評された質疑応答を、たっぷり堪能しました。
 予選リーグを勝ち抜いた十二チームによる決勝トーナメント一回戦は、会場をはしご。私なりに考えた各勝負の勝敗を、今年から全試合五人になった審査員の判定と比べるのも、いろいろな気づきがあって楽しいものです。
敗退して涙するチーム、相手チームへの感謝とエール、「敗者復活戦で戻ってきます」と誓う主将。悲喜こもごもに試合が進行します。
 決勝トーナメント二回戦は兼題が「団栗」。洛南B対金沢泉丘を観戦しました。
 金沢泉丘が「理系女子」「きゃりーぱみゅぱみゅ」で意表をつき、洛南Bが「あれは団栗とは言わぬ」と居直る(?)対戦は、大将戦にもつれこみ、3対2で洛南Bが翌日の準決勝に駒を進めました。
 翌日曜日の朝は大雨。会場のコミュニティセンターには、会場入りする観客や、選手が乗るタクシーが続々と到着します。ピンクポロシャツのスタッフが、降車客に傘を掲げて迎えていました。
 選手団 一般観客混在の観客席は、ほぼ満員。準決勝に勝ち進んだ、開成A 松山東B 洛南Bの三チームが、スポットライトを浴びながら舞台に現れます。次いで、舞台の奈落がせり上がり、敗者復活戦のチームが登場。準決勝の残りひと枠を争う闘いの火ぶたが切られます。
 「蓑虫」の兼題が発表されてから締切までの一時間で詠んだ句を紹介し、審査員からの問いに応える敗者復活戦。とても一時間で詠まれたとは思えない良い句が続き、復活をかけた自句の解説は、どれも熱を帯びています。「真実の句」「一時間の作句でも、全人間 全人生が現れることを教わった」との審査員評を得た浦添高校が準決勝戦への切符を手にしました。

 蓑虫や爆音といふ子守唄  浦添高校

 準決勝第一試合は、抽選の結果、松山東B対開成A。私の観戦した過去三回の大会とも、両校は、準決勝か決勝で対決し、名勝負を見せてくれました。
 今回も、最初の取り組みから息をつかせぬ展開でした。よく通る声、鋭い指摘、真正面から受け止めての回答、抑揚をうまくつけた語り、迫力ある突っ込み、観客を引き込む話術、身振り手振りの説明、本質に迫る質問……。行司の「それまで。」の声とともに、ふうー、と溜め込んだ息をついてしまいます。
 ただただ、食い入る如くに観戦していましたが、勝負は、意外にも3対0ストレートで開成Aの勝利。
 披講だけされた副将戦、大将戦も、「これは、」という句で、質疑応答を三戦分しか聞けなかったのが大変残念でした。
 準決勝二試合目は、赤側が赤のTシャツの洛南B、白側が白の制服シャツの浦添。偶然ながら紅白の戦いにはぴったりです。
 洛南Bは、体格がよく、体中を使って熱気に満ちたプレゼンをする男子、しっとりと情のこもった語り方の女子、落ち着いて、噛んで含めるように話す男子、鋭い指摘や提案を次々と繰り出す女子、と、個性の違うメンバーが、チームワークよく質疑応答を行います。浦添も、敗者復活戦での復活直後の試合にも関わらず、全力で戦っています。
 大将戦までもつれこんで洛南Bの勝ち。ハイタッチする洛南B。
 決勝戦。開成A対洛南B。
 開成Aが「草田男忌」や「六条御息所」を詠んだ句を提示。洛南Bは「景を教えてください」とあっさりかわします。開成Aの、丁寧な言葉選びや、情景を的確に表現したいとする思いも見えてきます。洛南Bは、鋭い指摘をされても、じっくりと説明し挽回していきます。
 一進一退の闘いは、大将戦までもつれこみ、

 原稿は白紙でみんみんが近い

で勝った開成Aが優勝に輝きました。抱き合って喜ぶ開成Aチーム。
 
 表彰式に続いて、個人賞の発表。発表があるたびに、チームの歓声があがります。号泣して舞台にあがった広島高校の選手が、「(勝ち進めず披露できなかった句を)見てもらえるのがうれしい」と話したのが、強く印象に残ります。
 俳句甲子園で、これから生まれる句、これからなされる質疑応答にも、きっと、心を揺さぶるものがあるに違いありません。そうした場を、作り、磨き、運営されている多くの方々への心からの感謝を胸に、雨のあがった松山を後にしました。


俳句甲子園を通して
愛媛県立松山中央高等学校3年 藤岡亜沙美

 去年は先輩たちの補助員として、今年は松山中央高校の文芸部俳句部門の部長兼主将として俳句甲子園に出場した。私にとって、全国大会で優勝することは中学生の頃からの夢だった。投句審査通過ではあったが、全国大会への切符を得られて安心した気持ちとともに、地方大会よりもレベルの高い句を詠まなければならないという責任感も生まれた。
 オーダー締め切り日直前まで、私たちはひたすら詠んだ。夏の海を体感するために伯方島に行ったり、団栗を持ったまま句を作ったりして、季語と自分が一体化している感覚で毎日俳句と向き合った。 そして、私の準決勝と決勝の句は、3年間の集大成として、私が生まれ育った内子町を題材にして詠んだ。白壁で有名な町並みは日常的過ぎて逆に難しかったが、地元を詠むことで内子町がより好きになった。他の部員はそれぞれの感性で詠みたいものを中心的に詠み込んだ。こうして、選手の個性溢れる句が揃ったのである。
 プレゼン練習では、まず、時間の流れを意識しながら攻守を行うことから始めた。初めは時間を意識し過ぎて内容の薄いプレゼンになったが、慣れてくるにしたがって次第に中身の濃いプレゼンになった。大会一週間前になると、OB OGの先輩方が日替わりで指導してくださった。厳しくも優しい諸先輩方のおかげで、地方大会よりも格段にレベルが上がったことを実感した。残りの数日間は、プレゼンで不安な句をしっかり固めた。そして、大会前日は顧問の櫛部先生からありがたいお言葉をいただき、椿神社で優勝祈願をして、ウェルカムパーティーへ向かった。
 ウェルカムパーティーでの抽選会。くじ運の悪さは去年の部長の引き継ぎなのだろうか。インタビューで対戦したくないチームを聞かれた時、私はすかさず「松山東!」と答えたものの、私が引いたくじのDブロックに松山東Aがいた。その瞬間、笑いや驚きの声が会場を満たした。さらに、B Cブロックを見ると、開成A Bがいた。私は、それでも勝ってやると心に誓った。
 大会初日、Dブロックは松山東A対渋川女子(群馬)の試合から始まった。結果は2対1で松山東Aが勝った。さすが連覇を狙うチームの強 さだなと思った。次が、その松山東Aと松山中央との初戦である。先鋒戦は勝ったが、中堅戦では負けた。一対一の緊張した雰囲気の中、なぜか私自身は落ち着いていた。そして、大将戦、主将である私の句が登場した。
 農を継ぐ少年ゼリー光りけり
 私自身が農家の孫なので、屋外で食事を摂る機会が多く、その光景を詠みたいと思ってできたのがこの句だった。結果は5対0で勝利を収めた。しかも、審査員長の高野ムツオ先生にベタ褒めしていただいたので、この句を詠んでよかったと心の底から嬉しかった。続いて、渋川女子との試合。さすがは女子校、乙女チックな句や繊細な詠みぶりの句が多かった。私はあまり詠まないジャンルなので最初は戸惑ったが、試合を進めるうちに楽しくなった。結果は3対0で松山中央が勝った。私の句
 白蓮や微笑んでをる車椅子
がお年寄りになっても詠めると審査員の先生からご指摘をいただいて、大変勉強になった。ともかく、厳しい激闘を制し、予選リーグを通過できたことは、忘れられない出来事だった。
 決勝トーナメント1回戦では、宇和島東Bと対戦した。私たちの夕焼は心情を主体に詠み込んだ句であったのに対し、宇和島東Bは夕焼そのものを詠んだ実景句が多かった。先鋒戦は勝ったものの、最終的に3対1で負けた。私自身の反省点として、相手の句の理解不足と言葉の整理がつかなかった点が挙げられる。
 大会二日目の敗者復活戦。待機の間は緊張とプレッシャーで目眩がしたが、ステージに立つとそんなこ とも忘れていた。
 十七音や蓑虫と語らひて
 和やかな雰囲気を詠んだ句が私たちの最後の一句である。しかも、中学生の頃からムーミンの谷句会でお世話になっている夏井いつき先生の質疑だったので、大変リラックスした状態で応答できた。しかし、最後の一枠に選ばれることはなかった。「もう、終わったんだな」と思うと、涙が止まらなかった。
 決勝戦は開成A対洛南Bだった。個人的に句は洛南Bが好きだったが、決勝戦らしい見応えのある試合だった。
 俳句甲子園を通して、私は俳句が好きだと改めて実感した。確かに、部活で何度も挫けた。しかし、仲間が支えてくれたから最後まで諦めずにできた。顧問の櫛部先生や仲間、応援してくださった全ての方々に感謝したい。そして、今後もずっとずっと俳句と関わる人生であり続けたい。


私の俳句甲子園
桜井教人

 「最後に教人さんに初めて旗をあげてもらって嬉しかった」。俳句甲子園協賛イベント、小 中学生による「チャレンジ俳句甲子園」が終わった後、準優勝したチームのM君の言葉を人伝に聞いた。M君は3年間NHK番組「それいけ俳句キッズ」に出場している。東予地区予選、本戦と何度かM君の句を判定したが、ことごとくM君ではない方に旗を挙げていたらしい。今回も初戦では相手の句に旗を挙げたのだが、決勝で初めて私はM君の句に挙げたらしいのだ。審査員に作者の名前はわからない。しかし作者は審査員の顔を、旗を、選評の一言一言をつぶさに記憶しているのだ。小学生ですらこうなのだから、高校生が俳句甲子園のために一生懸命つくった句に審査員はどう向かえばよいのか自ずと答えが見えてくる。
正直に言うと、私に審査員を務められるほどの力がないことは自覚している。ただ「あなたは小 中学生、高校生と一緒に俳句をつくっている。句の中にある彼らの気持ちを汲み取ることにおいてだけは他の審査員に劣らない(かも知れない)」という某氏の言葉により、自分に可能な限りの責を果たそうと努めている。だから私は単に客観的な鑑賞者としてではなく、なるべく作者の立ち位置に近づいて句を理解しようとしている。作者の顔を、気持ちを見ようとしている。この考えに同意しない人もいるだろうが、俳句甲子園の本来の目的を考えた時、このような立ち位置の審査員がいることも許されるのではないかと思っている。
 今年の俳句甲子園で心に残っている判定がある。予選リーグでの土佐高校の「夏の海」の句である。上五に「ジョン万」をもってきた。高知なので「ジョン万次郎」だとすぐ理解できたが、「ジョン万」という表現が許されるのかどうか迷った。他の審査員もここが判定の分かれ目であったようである。しかし続く中七下五から、足摺岬に立つジョン万次郎の銅像が太平洋を見渡す句意だと分かった瞬間に、かつてそこで見た紺碧に輝く海、本当に丸く見える水平線の景の記憶が蘇った。これこそ私の夏の海であった。しかも時間軸的にも空間的にもスケールが大きい。迷い無く旗を揚げた。結果は一対四で負けだった。知っての通り、五人の中で一人だけ異なる旗を揚げた審査員は注目される。基本的に必ずコメントを求められる。そのコメントは、真剣に戦っている高校生にとっては、勝者、敗者ともに納得できるものでなければならない。審査員の俳句観のすべてが問われると言ってよい。何度かこのような経験をしたが、一つ分かったことがある。負けた句について話していると、明らかに目の力が違う子がいるのだ。聞き方が真剣なのだ。作者であることは想像に難くない。勝負には負けたが、自分の句をいかに愛しているのか、思いがこもっているのか、痛いほど伝わってくる。勝負は相対的評価であり、絶対的評価ではない。そのことを伝える義務が審査員にはある。(ちなみに「ジョン万」という省略語は高知では一般的であることが後日判明した。)
 前述の某氏からは「好きな句を選んでいいのは初心者と虚子だけである。俳句の八割はどんな主義主張をもった俳人でも同じ評価を下す。評価が分かれるのはどれくらい優秀かという上乗せの部分だけである。」と教えられている。
 ある意味通常の句会での選とは少し異なる質の選が必要だと感じている。今後も言葉の一つ一つをていねいに読み解き、不要な深読みは避けつつも作者の立ち位置に立つことを心がけたい。
 ただ一つ判定のシステムについて個人的に提案がある。それは柔道のように僅差判定を認めてもらいたいことだ。鑑賞のレベルが上がっているため差がつけられないことがある。作品点に同点があるのなら、鑑賞点にも同点があってもよいのではないか。(もちろんどうしてもの場合のみであるが)この場合、点数上は全く同じだが、例えば作品点に1点の差をつけるほどではないが少し上である作品の方に僅差判定として挙げるのだ。もちろん現実的に難しいことは分かっている。ただ、それほど接戦が多いということを言いたいのである。
 最後に同じ思いの人が多いと思うが、俳句甲子園で最も楽しみにしていることの一つは最後の審査員長の先生方の言葉である。今年もたくさんの名言に出会うことができた。仁平氏が話された正木氏からの返信メール「命がけで行け、但し感動は保証する」には笑ったが感動した。その正木氏の「俳句は止めるほどのものではない」は実に深かった。田中氏の「俳句を通じて人と人が出会える」は俳句のもう一つの本質を思い出させてくれた。そして夏井氏の「的確でシンプルな質問、相手の言葉を引き出す質問をすればいい」との言葉、会場にいた高校生、その指導者がどのように受け止め、気づき、考え、どう変化するのか。来年の俳句甲子園が今から待ち遠しくて仕方がない。来年の楽しみと言えば、準決勝 決勝の兼題。今年は第十六回で「指」と「紙」。となると来年度は第十七回なので「○」と「○」か。などと考えることも楽しい。


第16回俳句甲子園結果
優勝  開成高等学校
準優勝 洛南高等学校Bチーム
最優秀句
夕焼や千年後には鳥の国
広島高等学校 青本柚紀


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2013年度 第二期 3回目


「求憐誦(キリエ)」柊ひろこ

黙れ子よ夕蜩がきこえぬぞ
葛咲くや朱と紫の相悪む(にくむ)
コンビニに冷えた真水の林あり
銀漢の鳴るがごとくにSteinway&Sons(スタインウェイ)
星蝕や糸瓜の肉を啖へりき(くらへりき)
秋冷の鏡より出て鏡拭く
子を産んで誰に抱かさう草の花
いづくにか青き漏電秋の昼
デルフトの眺望宙(そら)の秋思かな
天高く滅びを急ぐ紙の本
寸尺の夢のひとつのとんぼ釣り
秋風に手を垂らし聴く求憐誦(キリエ)かな


2005年俳句と遭遇。2008年「銀化」入会、2011年同人。長く人間をやらせていただいております。俳句に安住してしまわないようにせねば。




「実石榴をこぼす」亜桜みかり

青鬼灯樋屋奇應丸の小さき粒
いつもいつも掴みたがつてゐる海月
白鳩出て来ぬよ秋麗のマジックショウ
がちやがちやや生家に開かずの間ひとつ
菓子箱をたたんで積んで厄日来る
白曼珠沙華はぐらかされたやうな顔
作図しても解けず秋思の角度は
実石榴をこぼすや火種とも知らず
耳朶をふたつぶらさげ秋燈下
月へ上りつめソプラノサクソフォン
朝霧やたつぷんと尾をゆらす馬
白帝や千里の草に馬待たせ


愛媛県松山市生まれ。天秤座。ホームは今治三日月句会。趣味は卓球、絵手紙、そして健康情報収集。




「颱風街」朗善千津

花束を飛ばさぬやうに颱風街
足生えてをり九龍の野分雲
運転士秋思の顔を撫ぜて消す
秋簾粥を分け合ふ男人街
女人街屋台の果へ星流れ
泥水のうへ澄みにけり雀鳥園
旧交や肉切り分けて秋灯下
血縁の箸の行き交ふ濁り酒
音殺しつつ太鼓打つ後の月
美しき老などいらん唐辛子
団栗の落ちて爆ぜたる南大門
魂を犬に食はれし朝の虫


命を削ってチェロを弾く、という意味が少しわかった。前半は香港、後半はソウルにて旅吟した。




「猛犬注意!」樫の木

拳骨ほどの新じやがなれどかぶりつく
門柱に「猛犬注意 !」白木槿
旧式のセリカ真つ赤な葉鶏頭
虫の夜の電話のベルの訃報めき
伯父逝くや八月尽の風の中
露草も園庭も濡れ日曜日
コスモスとゑのころぐさと詩人の碑
黒ひげのジャック赤ひげの玉蜀黍
病の妻に枝豆を茹でる
名残茄子鷲鼻めいて揺れてをり
「立小便禁止」と塀に白粉花
消印は東京檸檬の香の手紙


1965年、松山市生まれ。大分県在住、家具職人。妻と猫二匹と陽気に暮らす。俳句歴7年。合唱歴35年。




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放歌高吟


露草
夏井いつき

秋の蝉ぎゅいぎゅい鳴いた寺焼けた
焼け爛れた臭いの中を蟋蟀歩く
すっぱりと何もない露草がある
秋風を放ちて霊峰のうすずみ
老いて子に従うものか秋の蝉
好古の墓に蚊帳吊草たむく
鯊釣や桃仙人のような爺
唐国の秋の蝶とや斑なる
桐一葉壺中のくらがりへ落つるか
名峰や色鳥あさの色放つ
朝顔のことなど草子さんへ書く
いなごの目くるんと黒し海青し


 一遍上人の誕生寺でもある宝厳寺全焼のニュースが、全国に報じられたのは8月10日。その日の午後、私は愛媛新聞社カルチャー講座の仲間たちと句座を囲んでいた。ケイタイがブーブー震え続けていることは気づいていたが、それがモバイル松山消防の火災情報であり、句友たちからの「宝厳寺が燃えてる!」ことを知らせる緊急メールであったことに気づいたのは、句座が終わった夕方5時過ぎだった。
 自宅にいた夫は、我が家からも宝厳寺が燃える黒い煙が見えたといい、フェィスブック上で様々な情報を集めてくれていた。住職夫妻は無事なのか、宝厳寺所蔵の国指定重要文化財「木造一遍上人立像」は運び出されたのか、苛立ちが募る中、少しずつ状況が明らかになっていった。
 秋暑の晴天が続きカラカラに乾燥していたこともあってか、余りの火勢の速さに本堂も庫裏もあっという間に炎上。一遍上人像は一片も残さず灰になってしまった。着の身着のまま飛び出し九死に一生を得られた住職夫妻のご無事だけが、唯一無二の有り難い事実であった。
 9月8日、子規記念博物館主催『道後俳句塾』では、宇多喜代子 黒田杏子両先生を迎えて、今年も道後吟行会が行われた。毎年定点観測の場所として、全国の句友たちと共に集ってきた宝厳寺は、真っ黒な柱と梁を残し、見事に焼け爛れていた。宙吊りのままに焦げた梁はゆらゆらと秋風に揺れ、本堂の軒に吊されていた小さな釣鐘は炎の色をとどめるかのように変色していた。樹齢200年の銀杏二本は本堂側半分が焼け果て、残りの側には夥しい数のギンナンがその青を犇めかせていた。
 が、焼け跡に対峙した私たちの心に映ったものは喪失感というよりは、とてつもないシュールな芸術作品を前にしているかのような不思議な感慨だった。美しいものを目の前にして、言葉が見つけられない……とでもいうような感動に戸惑いつつも、その美しいものを皆いつまでもいつまでも眺めていた。すっぱりと何もないことの清々しさとは、こういうことであるのかと、すとんと腑に落ちた気がした。
 本堂の傍らの焼け焦げた棕櫚の根方には、うすみどりの蘖がびっしりと生えている。不屈の露草はその青を凜々と掲げている。何もない今日という日が、生きて在る私たちの手に瑞々しく在る。




夏井いつき公式ブログ「夏井いつきの100年俳句日記」

http://100nenhaiku.marukobo.com/


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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2013年10月号 〜 2013年12月号 1/3回目)


 森千年 蛇頭

貝殻を海に返すという秋思
フルートの即興に似て鱗雲
待ち人のあるかのように熟柿在る
空が雨でできている日の案山子
稲光ポップアートの毛沢東
ドラマーの恋の数ほど木の実降る
むかご飯アラブの偉いお坊さん
秋の虹回転木馬うなだれて
カンバスの瑠璃の透明星流る
月光や森千年に黒き詩


1956年松山生まれの松山育ち。最近「ジャズさん」と呼んでくれる人が増えた。嬉しい。句座の酒が美味い。そして、ジャズ……。健康のため始めたマラソンにもハマり、毎日がワクワクで息苦しい。



 折鶴 哲白

しんかんとクーラー唸る投票所
炎昼の海の底めく道ひとり
炎ゆる日を弾く肉塊黒き牛
生まれる音みな吸い尽くしヒロシマの夏
爆心地青きドットの裂けし服
幾万の折鶴空へ原爆忌
骨を捧げ洞(ガマ)に蹲う敗戦日
紺青の遠き年月魂迎
夜半の辻手拍子のみの阿波踊
笹の葉にそよぐ光や今朝の秋


2007年12月号に初投句。身辺雑詠をコツコツ続けていますが、斬新な句風への脱皮は実現していません。身の丈に合った句作りを楽しみたいと思っています。



 つながれて てんきゅう

網タイツよれて九月につんのめる
電線の空切り刻む唐辛子
初茸の数だけ木霊見たやうな
絢爛と鶏頭けふも強がれり
桃吸うて君吸うてまた桃吸うて
龍神のはらわた見たかつくつくし
月より甘くオペラ座のシャンデリア
バクの鼻へ色なき風のモノローグ
カピバラは秋の光に増殖す
白秋の夜につながれて象二頭


天使とキューピッドのハーフ。てんきゅうワールドの住人だが、2011年6月より木曜カルチャーに出没するようになる。人生に大切な三つは、酒と句友とサムマネー。たまに刺激を欲しがる。



読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(句会 誌面等) 推薦者ご自身の俳号(本名) 住所 電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ FAX Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、専用のインターネット投稿フォーム(http://www.marukobo.com/100kishu/)でも受け付けています。※投稿フォーム利用の場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 10月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。


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百年琢磨
先月号の「100年の旗手」に寄せて

 交感のかたち しなだしん

「金秋」 むめも

明け方の流星群を見る方法
 それは明け方まで起きていることです、などという答えで終わらせてはいけない。明け方の美しい流星群は、諸条件が整わなければならない一期一会の出会いなのだ。

朝刊は未明に届く大花野
 この句は上五の「は」がポイント。「花野」に「朝刊」が届くというファンタジーではなく、朝刊は未明に届くもの、という通念の提示と「大花野」の取合せ。この取合せの離れ方が不思議な世界を生んだ。

金秋や一角獣に触れて恋
 「金秋」は、五行の一つである「金」を季節にあてはめると「秋」に当たるところからある言葉。一角獣に触れて恋がはじまるのは空気の澄む美しい秋だから。


「風の色」 かのこ

デネブより葉書の届く夏休み
 デネブは、はくちょう座α星。こと座のベガ、わし座のアルタイルと共に夏の大三角を形成する。そのデネブから葉書が届くのは、「夏休」の夜ならではの物語。

月涼しテトラポッドの底へ影
 「テトラポッド」は一般的にも常用されるが、実は不動テトラ社の商品名で登録商標。だが「波消しブロック」ではこなれない。この句は「底へ影」によって夏月の明るさと海底の闇の対比が鮮明になった。

向日葵の空へピアノを開け放つ
 グランドピアノの天蓋を開いた場面だろうか。「向日葵の空」は真夏の昼を思わせ、果てしない明るさを感じさせる。


「八月」 睦

星の咆哮百日紅は眠る
 暑さのためか、今年の百日紅は開花が早かったように思う。この句は二物を並列にした作りと字足らずの音により、「百日紅」の句として新鮮味がある。

夏掛のさらりと老いてゆきにけり
 「夏掛の」を軽い切れとして「さらりと老いてゆく」のは作者もしくは対象者と読むか、夏掛自体が老いるという感覚と読むか。「ゆきにけり」からは前者とも思うが、いずれにしても不思議な手触りが残る句。

電話鳴る休憩室パイナップル匂ふ
 「休憩室」という言葉が「電話鳴る」「パイナップル匂ふ」という二つの事に挟まれて一句に成っている。ぶっきらぼうな表現にも思えるが、実際に休憩室に起こり得る、電話という緊張と、パイナップルの甘い香という弛緩、この二つの“事象”が休憩室という“空間”を言い得ている。


しなだしん
1962年新潟県生まれ、新宿区在住。「青山」同人、俳人協会会員。句集に『夜明』『隼の胸』。


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新 100年の軌跡


2013年度 第二期
第1回


俳句の日 川又夕

薬指囚はれ(とらはれ)葉月十九日
裏切った訳ではなくて花野かな
爪先は心のなごり夜這星
蛇穴に入る愛さるる罪の朝
小指のみ絡ませてゐる茨の実
龍淵に潜めば舌の馴染むまで
くちびるの離るる時の水の澄む
背中より乳房解放され無月
稲つるび躯に雨の音がする
助手席の欲深き膝九月尽
手繋ぎのプラネタリウムかりん熟る
撫子や寄り添ふひとの選び方
二十六歳の婚約小鳥来る
愛に因(よ)り生くるけだもの曼珠沙華
神無月五日結納してしまふ


川又夕
1987年愛媛県生まれ。愛媛県立今治西高校、同志社大学卒業。10年前より俳句甲子園に3年連続出場。第2回NHK学生俳句チャンピオン決定戦優勝。京都 神戸を経て、現在NHK松山放送局勤務。




相関図 若狭昭宏

白杖に右手差し出す藍浴衣
踊りたる鬼の面や瀬戸の凪
火恋し衣擦れの音遠ざかる
詰め物の外れて秋気飼ひ殺す
記録簿に無き配線や蚯蚓鳴く
夜学子を誘ひ望遠鏡担ぐ
謎解きの空気解れて秋うらら
布団からはみ出す髪や時に恋
しるしとは赤くなりたる林檎かな
可能性といふ駆引きに穴惑ひ
子を宿す躯に秋の満ちてくる
無花果食ぶ訂正おほき相関図
病棟の抜け穴見っけ初紅葉
いたづらのばれて団栗落ちにけり
ハロウィンや双子の声を聞き分けむ


若狭昭宏
1985年12月8日生 広島県出身。安芸南高校より第6回俳句甲子園出場。俳句Webマガジン「スピカ」2013年8月連載。




若い! 桜井教人

爪先は心のなごり夜這星 川又夕
 作品の中に身体の部分を示す語が十ほどあった。中でもこの「爪先」の使い方が面白かった。心のなごりの読み方は人それぞれになるだろうが、それが全て爪先に収斂していく。女性らしい感性である。

稲つるび躯に雨の音がする 川又夕
 そう言われたらそういう気がした。この身体のどこかに感じる音は雨の音だったのかと理解できた。普段は分からないが、不穏な稲光の夜ならば悟ることができたのだろう。

白杖に右手差し出す藍浴衣 若狭昭宏
 作品全体に優しさを感じるが、特にこの句が好きだった。平易な表現による写生に奥行きを感じさせる。色の対比も美しい。句に詠まれる人物も作者も優しい。

夜学子を誘ひ望遠鏡担ぐ 若狭昭宏
 この句も同様である。望遠鏡が実によい。誘う、担ぐの動詞により景や状況を明確にし、夜学子と望遠鏡を生かしている。作者のメッセージ性も十分に感じる。このような句を今後も読みたいと思わされた。

 その時、その年代でなければ詠めない題がある。今回の作家は二人とも今の自分に向かい、今しか詠めない作品に挑戦しているように思えた。若い時から俳句を詠むことはこんなに素敵なのだというところを、私たちの世代に見せつけ、うらやましがらせる作品を今後も期待している。


1958年生まれ。愛媛県今治市在住。このところ夜の会合が多く、コンビニのおでんを食べ比べてしている。第3回選評大賞および第4回選評大賞入選。



若いっていいですね とりとり

 川又さん。今回の十五句は日野草城みたいでしたね。オバサンはびっくりです。ただそのなかに、季語の生きている句と、季語が動きそうな句があったように思います。
くちびるの離るる時の水の澄む 川又夕
 くちびるの離れるとき、さあっと周りの秋の景色が目に戻ってきて、澄みきった水の透明感も今まで以上に感じられたのでしょう。秋の空気も感じられると思いました。
薬指囚はれ葉月十九日 川又夕
助手席の欲深き膝九月尽 川又夕
神無月五日結納してしまふ 川又夕
 これらは、自分史として大切にしてもらいたい句ですが、客観的には季語の必然性を感じにくいように思いました。

 若狭さん。
 きちんとした型に秋の気分をのせた、共感と好感の持てる十五句でした。
記録簿に無き配線や蚯蚓鳴く 若狭昭宏
 夜まで配線を調べているのでしょうか。配線のぐねぐねと蚯蚓の姿が重なって、また、記録簿の嘘っぽさと「蚯蚓鳴く」の嘘っぽさが重なって、ユーモラスでした。


1957年生まれ。三重県在住女性。第1回選評大賞優秀賞。


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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天 地 人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選 並選を選んでいます。今回の先選者は、阪西敦子さんと加根兼光さん。後選者は、関悦史さんです。

 「へたうま仙女」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は杉山久子さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:白鯨


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 阪西敦子

 仲間内で弁当部という活動をしている。年齢も生活も違うものが、それぞれに弁当を作り、出来上がったものの画像をメールで送り合うだけ。出来合いのおかずは「他力」、同じ材料の使い方を変えた場合は「食材組み換え弁」、あまりに代わり映えのしない既視感(デジャヴ)のあるものは「デジャヴェン」と申告するが、継続こそが最も讃えられる。くだらないが、仲間が見ていると思うと張合いも出る。茄子の違いにも敏感になった。十三名のメンバーの数通りの秋茄子のレシピが知れるのもまもなく。



蒲公英の絮飛んでくる滑り台 迂叟

 滑り台のどこに飛んできたのだろう、滑り台というくらいであるから、滑り台らしいところであろう。やはりスロープであろうか。スロープへ飛んできた蒲公英の絮は、どうなるのだろう。そこへ落ちたとしてとどまるのか、再び飛ばされるのか、滑り落ちるのか。絮は種を運ぶもので、種は地に落ちて芽吹くものである。余計な心配かもしれないけれど、蒲公英の絮と滑り台の質感の違いは、そんなこんなが思われてすごくスリリングだ。



青鷺やくちばし動き目線合ふ 樹朋
 青鷺が首を動かしたというのは首自体を見ていてもあまりわかることではなくて、やはりあの大きなくちばしが動いて、ああ、こちらを向いたと注目する。すると目が目が合う。青鷺を実によく捉えた自己の感慨である。

切通の光一条とんぼ来る てん点
 切通へ一条の光が差し込み、そこへとんぼが現れた。切通に光という割と句に読まれやすい舞台であるけれど、しずかな中へ現れたとんぼが句を生き生きとさせている。透き通る羽へ秋の日差がやさしい。

からからと炭酸水で割る夕べ 不知火
 ソーダ水の季感は、ハイボールの再流行もあって、だいぶ薄まってしまったけれど、こうみるとやはり夏のものである。からからと割るのは何かのアルコールかもしれないけれど、夕べそれ自体を割っているようでもある。

ブラウスの裾裏返す青田風 サキカエル
 青田の中をブラウスを着て通ってゆく。青田へゆくのではない、どこか違うところへお出かけ。そのブラウスの裾を風がはためかせる。じゃれているようなところもある。青田風の懐かしくも新鮮な景色である。

手を振って列車を送る月見草 むらさき
 手を振って、親しいのだろう。月見草が咲いて帰る、名残惜しいのだろう。待宵草の名を持つ花である、次に会うまでの時間の長さもすこし思われる。それが名前の観念に終わらないのは送ることが描かれたためだろう。



初秋の坊主頭の双子かな みちる
出窓開け放つかひなへ今朝の秋 野風
振り向けど素知らぬ顔の蜻蛉かな 未貫
青林檎銜えて記事に目を通す 紗蘭
別れのハンカチ手の中で薔薇となる 緑の手
川は水豊かに秋の蝉しぐれ ポメロ親父
先生は泣いていました合歓の花 人日子
真っ直ぐに土間抜け池の冷し瓜 香
炎天の底なり石に火の匂い ターナー島


先選者 加根兼光

  久しぶりにシューベルトの「ドイツミサ」を取り出して聴き始める。確か中学生のころ25センチLPで買ったウィーン少年合唱団の演奏で繰り返し聴いた。ドイツ語の意味は判らなかったが。なぜこの曲に惹かれたかを考えるとドイツ語の発音、子音と母音の美しさに行き着く。もちろんシューベルトの音楽の美しさが有ってのことではあるが美しく発せられる人声には惹かれる。亡くなったフィッシャー=ディースカウの抑制された発声にも。



中心の不透明なる氷菓食む 紗蘭

 よくある氷菓。真中にミルクが入っていたり果物のジェルがあったり。しかし「中心の不透明」という表現が何がしかの不穏感を内包する。澄むことなくそこにあるもの。溶けて液体となっても在る濁りが飲み込まれてゆくとき作者の中心にも不透明なものが生まれる。「氷菓」という季語の持つ透明な清涼感を裏切ったことで生まれる夏の中心にある不在感も表現される。刻々と減ってゆく氷菓。だが作者の中心には「不透明」なモノが増殖する。



銀漢へ流木あつめ船編まむ 野風
 「銀漢」の名は漢江の源流が天と繋がり天の川となるという伝説に基づく。流木を集めた船は眼の前の大河から天へと漕ぎ継ぎ牽牛と織女の逢瀬の船となるのであろう。1年をかけてその日のために編む船でもあるのか。

有明を月草のあを点り初む 空
 明け方の薄明りの中を道野辺の露草は薄らいでゆく月と入れ替わるように点り始めるという美しい景。月草の色は落ちやすく儚さの象徴とも。満月を過ぎた有明の月が日ごと細りゆく姿とも呼応するささやかな色合いが佳い。

木下闇穴の無数に指入れて 妙
 下闇に立つと明るさの中では見えなかった穴が眼に入る。大木の肌の穴、下の地に開く蝉や蟻の穴。「穴の無数」とした語順から穴の数の多さ、「手を入れて」と切れを無くしたことによる「指を入れた」後にある不安なども見えてくる。

温め酒レコード盤のジョンレノン カラ嵩ハル
 秋も深まる重陽の「温め酒」。健康を願い酒を酌むことも楽しむ。そんな歳にもなった。ジョンレノンを昔聴いたレコードは今でも大事に取ってある。亡きレノンを偲ぶための酒でもある。「盤」の字が効いている。

炎天の底なり石に火の匂い ターナー島
 「炎天の底」で雲ひとつ無い空の下に照りつけられる人が見えた。視線は空からのものか。ふと拾った石は今にも発火するかのごとくぶすぶすと匂いを発するという。「なり」の切れが上五下五の対立的バランスを鮮明にする。

油照る海を引き摺り出港す 理酔
 やり切れ無いじっとりとした暑さの籠もる海を引き摺り船は重い船体を動かし始める。垂れ込めた雲と黒ずんだ海。「油照」という季語からは感覚を麻痺させるような苦しさを感じる。出港する船は作者の一日の姿でもあるのか。



妹の方が欲しがる藍浴衣 のり茶づけ
青林檎銜えて記事に目を通す 紗蘭
からからと炭酸水で割る夕べ 不知火
水死者のニュース四行花カンナ 鞠月
地の熱を帯びたる茄子を粗く切る 空
先生は泣いていました合歓の花 人日子
猫ぢやらしもてあそびゐる無聊かな 省三
文具屋の窓の地球儀夏の月 浜田節
剥製の鷹の日月秋澄めり さわらび



後選者 関悦史

 最近面白かったのはバンジャマン ペレの『サン=ジェルマン大通り一二五番地で』(鈴木雅雄訳、風濤社、二〇一三年)。シュルレアリスム運動の主要メンバーで出鱈目さが爽快。《隣家の大時計が十一時半を知らせていた。何台かのタクシーがすました顔で通り過ぎ、ヒトコブラクダはまだ全員帰宅してはいない。遠くには潜水服を着た共和国大統領の姿があり、並んで歩くギリシャ王は、読み書きを教えたくなるほど年若く見えた。》


特選句
船首から歓喜の悲鳴船遊 和音
 語り手本人は後方にいるらしく、興趣極まった「歓喜の悲鳴」の高潮からは微妙に離れて全景を視野に入れながらもともに楽しんでいるという関係が浮かび上がります。自分の感興だけに終始しない余裕があるのがいい。

蓮の実の飛んで讃岐の山低し さわらび
 「蓮の実」の近 小と「讃岐の山」の遠 大の対比から土地柄が浮かび上がり、「低し」に抑え込まれたような鬱屈の気配もありますが、一方空の広さも思わせます。実が飛んだ後の景色から穏やかさがにじみ出てきます。

巨人強すぎ唐辛子は辛すぎ さち
 野球は好きで見ているのでしょうし、料理も好きで食べているのに違いない。不快を通して「好きなもの」に接しているのがわかる取り合わせで、言い方が単純明快で、しかも過度に攻撃的にはならない飄逸味あり。


並選句
夏色に大路を染めて鉦響く 柳葉魚
口実は快気祝ひの新走 レモングラス
イカロスの涙なのです噴水は 小市
草の香のするおかつぱの棒アイス 小市
魚屋の金魚売るのか売らぬのか 杉本とらを
孤独とはこういうことか大金魚 のり茶づけ
アリランを歌いし友や星月夜 迂叟
おほかたは喰われてをりぬ蝉の貌 藍人
秋兆す母のス−ツや参観日 幸
盆やすみ剥き出しの鉄安全旗 かのん
いつもより袖触れ合うぞ盆の船 ペプチド
ナンプラー匂ふ屋台に星月夜 ヤッチー
枝豆や今日の終わりに塩をふる あらた
緑陰てふ水の仕切の内に入る 樹朋
あさがほやまなざしはこころにむける みちる
秋に入るライフジャケット風に揺れ 富士山
夏の旅十機並んだ尻にANA 富士山
物干しの風鈴の声母のこえ こぼれ花
天高しホームラン球場外へ れんげ畑
仰ぎ見る大師の像や蝉時雨 輝女
桐一葉犬舎の跡の広きこと 小雪
東より蜩聞こゆ未明かな 蓼蟲
桔梗や母軽々と桐の下駄 てん点
夫の墓洗へば苔のみどりかな 未貫
近代化して県病院の小暑かな ほろよい
頭上から光湖底の半夏生 ほろよい
こおろぎの鳴くや瞬く朝の星 一走人
犬嘗める削氷となる氷 緑の手
丁寧語のメール茗荷の花淡黄 不知火
寺の煙り秋の雲へと吸はれ行く 七草
八月の怒つた河馬が止まらない ポメロ親父
光ごと両手に受ける夏の水 鞠月
流星や源流の地に寝転がる もね
秋の蚊が輪形陣の外便所 樫の木
竹の春嵯峨野の女という演歌 お手玉
街々の碑に折鶴や夏日影 元旦
自転車の荷台にふわり蛇の殻 ぴいす
無花果の爛れ地上に堕ちにけり 妙
ちゃん付けで母の呼ばるる盂蘭盆会 おせろ
留守番は2泊まで許可カブトムシ 魔心地
本当の雨を知らずに旱草 大塚めろ
初盆や嫁ぎし姪より阿闍梨餅 うに子
音立てて息を吐きたる残暑かな 空山
カステラのざらめ溶け出す秋旱 空山
城跡に白蓮薫るあさけかな 一心堂
夢に棲む母よく肥えしアッパッパ しんじゅ
人は皆サタンのしもべ八月尽 Tまんぷく
窮屈な襖取っ払って夏 サキカエル
コンサート余韻引き連れ夏料理 人日子
咲き満つる百日紅や「悪の華」 省三
レース着て最終便に走り込む 浜田節
八月は猛暑の中の祈り月 エノコロちゃん
祭壇の真中吹く風黒揚羽 北伊作
弦を弾く腕にヤブ蚊の膨らみぬ ちろりん
十五夜のなかなか取れぬ五十肩 まるにっちゃん
頂きし瓜は赤子の熱さかな 親タカ
ラベンダー君はいつの日も凜として アンリルカ
ぽろりぽろり歯を失って零余子飯 カラ嵩ハル
西日さす坊ちゃん列車頭振る 鯉城
平然と夕焼を来る僧侶かな 鯉城
事務机片付け盆の休みかな むらさき
自己の殻外はいのちの滝しぶき 松ぼっくり
生き様を大樹にからみ葛の花 カシオペア
帰宅してまず扇風機つけにけり カシオペア
青田風軽四白の埋もれる 香
連休は山芋博士背負子干す ザッパー
夏萩の控えめにおく紅なりし 明日嘉
鯉はねる音をうしろに夏書かな ターナー島
防空壕掘ってた母の敗戦日 理酔
寝付かれぬままに流星夢のショー 青柘榴
野良生えの朝顔だから水をやる 青柘榴
原発の浜鶏頭の猩々緋 さち
門柱を登りをるなり蝉の殻 あおい



関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

加根兼光(かねけんこう)
1949年大阪生。俳句集団「いつき組」組員。第9回俳句界賞受賞。



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へたうま仙女


文 杉山久子

 猛暑にもめげずへたうま修行に励んできた皆さん、いよいよ実りの秋、どんなへたうま句が実ったか楽しみね。

毒見したわたしはお馬鹿唐辛子 洋子
 ほんとに馬鹿だわね〜。と、下五まで読んで読者も共感すること間違いなし。洋子さんのように自分を客観的に見つめることの出来る人は俳句に向いてるわよ。まあ普通のお利口さんは毒見する前に客観視するんだけど。唐辛子でよかったわ。命が無事で。

台風に剣の舞がよく似合う 洋子
 台風の最中剣を振り回すほどお馬鹿とも思えないので、これはハチャトゥリアン作曲の「剣の舞」(運動会とかでかかるあれね)と推定。「合う合う」と共感を呼び起こしたら成功。ちなみに仙女は共感よ。合う合う!台風の中で舞ってみたいわね。

誰が知るキウイ生産日本一 匠磨
 確かに知らないわね〜ご当地ご当人くらいしか。……といいつつ非常に気になるのでググってしまったわよ。キウイ生産日本一は愛媛県。オメデトー、パチパチパチ。

 (少年少女)
八月尽少女決まって天女なり KIYOAKI FILM
少年に男の匂ひ休暇明け 未々
 どちらも夏の終り(ここでは夏休みの終わるころ)のある感慨を詠んでるのだけど、男は女に女は男に期待する(幻想する?)ものが微妙に反対なのねと思い、愉快だった二句。

 (愛)
分かち合う愛首を振る扇風機 猫ふぐ
甲虫の鉤爪愛は奪うもの だなえ
 これまた対照的な愛の形。猫ふぐさんのは、分かち合うと言っておきながら扇風機の風なんていうささやかなものなのが「うまうま」の領域に足を突っ込んでるわ。要注意。
 だなえさんのは奪う愛。昔、鷹女っていう仙女のライバルが詠んだ「鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし」って句を思い出したわ。俳句ではいいたい放題だけど友達としてはとってもいい人だったわ。(しばし感慨にふける)
鉤爪から、獲物をんで離さない貪欲さ、背中につける人の爪痕まで連想させるところ力が入っててよいわね。
 甲虫といえば今月はこんな句も来てたわ。

ただ虫の居所が悪いカブト虫 猫ふぐ
 きっと奪うどころか奪われたのね。お気の毒。虫も殺さぬ茶立虫とか虫唾が走る百足とか、苦虫を噛み潰したような黄金虫とか、(以下省略)色々バリエーションが出来そうだけど、やっちゃうと「虫がいい」って言われるからご用心。

福井銀行草津支店のチューリップ ケンケン
 これもいろんな吟行のいろんな支店のいろんな花で真似できそうだけど、この組み合わせは渋さと明るさのマッチングがなかなか巧くて、追放真近。

 (猫)
飼猫も野良猫ものびる熱帯夜 柊つばき
赤とんぼ目玉回せば猫わらう たっ君
おいでおいでのちあきなおみや猫じやらし 小木さん
 柊つばきさんのは沢山の猫達の長い肢体が見えてきて愛してしまうわ。たっ君のはシュールなアニメのような世界。笑う猫といえばアリスのチェシャ猫を思い出すけど、この猫はもっと自然に笑ってる感じね。中七までの緊張感が下五でがくっと抜ける小木さんのテクニックに脱力。「紅白歌合戦」でこれを歌ったちあきなおみは鬼気迫るものがあったわ。知らない人にはなんのこっちゃで最初から脱力か。
 ところでケンケンの同時投句…… 

ハイビスカスおどろおどろと咲いている ケンケン

……と並べてみると怖い感じになってきていいかも?

 (追放)
敗戦やあれから象舎あいたまま ひでこ
 その象舎はいなくなったその象のためだけに取ってあるのかしらね。明るいはずのア音の繰り返しがぽっかり空いた空間と時間を埋められないように響いてよけいしんみりしちゃうわ。追放。



杉山久子(すぎやまひさこ)
1966年生まれ。第二回芝不器男俳句新人賞。句集『春の柩』、『猫の句も借りたい』『鳥と歩く』。


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 コピーライターを永いことやってきた。コピーを書くのと俳句をつくるのと、どちらが大変ですか……などと訊かれる。ちょっとエラそーに言えば、コピーは市場調査の結果とかターゲットの思考とか商品べネフィットとか媒体特性とかその他諸々がんじがらめの条件のなかで書かなければならない。やっとこさ書きあげてもお得意に、こんなのキライ!とか言われればそれで終わりなのだ。その点俳句は、好き勝手書きたい放題なのだ。こんなラクなことはないが、お得意ではなくフツーの人や友人にまでヘタくそ!とか言われて傷つくのを覚悟しなければならないのだ。



夏の空が墜ちてきません 緑の手

 焼けつくような炎天を見上げる。毎日耐えがたい暑さが続くその下で繰り広げられる紆余曲折の日常の暮らし……わかっていても避けようのない焦燥感……そんなこんなを一気に洗い流してしまいたいが、高い空は相変わらず高い空のままで雨粒の気配もない。そういった出口のない気分を「墜ちてこない」と言う表現に凝縮させている。こういう句を一行詩という立場をとる人もいるが、りっぱな俳句であると思います。「星が落ちてこない落ちてこないと思う秋の宿(金子兜太)」を思い出した。




空き壜に月光を閉じ込める 藍人

 こういうメルヘンチックな句は、自由律には意外と珍しい。自由律は人の精神に深堀りしやすい形式なので視線が向きにくいからかもしれない。この句は「空き壜に月の光を閉じ込める」とすれば素直な定型の句なのだ。「月光」として定型を崩したことでメルヘンが薄まり、やや凛々しさが出たような気がします。

影踏む人の影の冷たさ 柳葉魚

 踏んでいるのはおそらく、全くの他人の影ではないだろうし太陽に照らされた日中の影ではなく月光に照らされた夜の影なのだろう。「冷たさ」という言葉が、影を踏む人と踏まれる人の、おそらく危ういであろう人間関係までも言い表している。

下品に喰らう物の一つに桃 妙

 この桃は多分、指で皮を剥いた丸ごとの桃なのだろう。指で剥けるくらいだから熟れて汁気たっぷりなのだろう。そういう桃に齧りつけば、口許から溢れる果汁をずるずる吸込みつつ……まさに下品このうえなく喰らうことになる。俳句というより説明文にちかいところが気になるが、妙に納得してしまえる。

それから蝉に止まられた人となった しんじゅ

 蝉に止まられた人とは、一体どいう人なのか。そういう人になるというのはどういうことなのか。現実と離れすぎた疑問は力を持たないが、「それから」というドラマ性を含んだ言葉が絡んで、不思議な想像空間をつくりだしている。涸れ切った爺さんなのだろうか、ひょっとして銅像のことなのだろうか……。

蜩の黒い山だ 北伊作

 離れて見ればそう大きくもない山だろうか。近づけば蜩がぐわんぐわん鳴いている。まさに山ごと蜩のような感じなのだろう。黒山の人だかり連想させつつ全体を、がつんと掴みきったような潔さがあります。



風の鳴る方へ歩み出す 柳葉魚
鳴きやまぬ蝉泣けない私 幸
何もない午後繰り返し年をとる みちる
ぐわしと掴んで芋虫放る 匠磨
回送のバスに秋思が乗っている もね
露天風呂遠花火をさがす 和音
くり返しくり返し啼いて今日蝉死す 元旦
灼熱のひなたで生命線をみる ひでこ
だと思ったら秋の風 小木さん
殴る拳がない 理酔
夜を牛耳っている鉦叩 青柘榴


並選
善人丸刈円眼鏡 KIYOAKIFILM
僕がいるから小蠅に怒鳴っている 猫ふぐ
パンの耳かじり賢治の逸話きく レモングラス
てふを喰ふすずめ 小市
落蝉が鳴く のり茶づけ
朝から蝉時雨熱中症を報ず 迂叟
宿題はいっつも朝顔日記 幸
夏の朝霧ぷかりぷかりの遊漁船 ペプチド
一等賞一等賞蚯蚓鳴く 洋子
鬼灯を鳴らす口付き淫ら ヤッチー
行けども行けども針の山 ケンケン
おそるおそる撫でる鶏頭 あらた
精一杯鳴いてころがる蝉あちこち 輝女
いよいよ汗浸む木綿ぬぐ 野風
昼下がりのサスペンス揺れやまぬひまわり 一走人
泣いた時は虹を捜す 緑の手
眉山の地鳴り阿波踊りの動く 七草
たらりらりたりらりらん河童がくるよ ポメロ親父
単線の駅員代わりの朝顔 もね
宝厳寺が焼けて悲しい 樫の木
百日紅赤子の頭ほどに咲く お手玉
夕立の只中に飛込む列車 元旦
足湯の中を足掻く結論 大塚めろ
予備校の駆け足過ぎる現代史 うに子
八月や眠れぬ女と眠る男 空山
目覚まし転がり秋告げる だなえ
黒酢しょうゆ冷し麺あした食べねば夏終わる Tまんぷく
踊子といっしょに燃えつきた 柊つばき
カモメもミミズも鳴く猛暑 エノコロちゃん
空蝉の中にナガサキあついあつい 親タカ
八月十五日きゃりーぱみゅぱみゅって言ってみて カラ嵩ハル
夕焼けに逆上がりの子浮く 台所のキフジン
みな脱ぎ捨てて汗と涙ぽろぽろ 松ぼっくり
瓦葺く太陽下から炎える如し カシオペア
雨戸引けば鶏頭枯れる たま
低燃費な新車秋茄子のどっさり ザッパ―



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「層雲」同人。句集『鍵の穴』(文芸社)、『鳩を蹴る。』(プラネットジアース)、『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)。特技 妄想、泥酔。


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詰め俳句計画


出題 文 マイマイ

今月の問題
 次の(  )の中に共通する秋の季語を入れて下さい。
酒の名に京の一字や(  )
(  )つやつや月の古譚集


 今月は後句「つやつや」が曲者。できれば季語もつやつやしたものを選びたいところ。

酒の名に京の一字や月見草
月見草つやつや月の古譚集
 あねごさん。私も調べてアッと思ったのですが、夏の季語です。大阪野旅人さんの蛍草もそう。おせろさんの実南天は冬の季語でした。残念、級外。

酒の名に京の一字や障子貼る
障子貼るつやつや月の古譚集
 ぎんなんさん。唐突でフレーズとの関連性が想像できなかった。6級。未々さんは星祭り。後句星と月が重なって損か。ひでこさんの獺祭忌も情報量が多すぎてごたごたする感じ。小市さん、幸さん、カシオペアさんは大文字。前句「京」と付き過ぎか。後句は「つやつや」の質感と合わない気がする。5級。洋子さんの菊供養は前句、お供えの酒ながら気合が入っている。後句がどうか。だなえさんは露の宿。人日子さんは菊の宿。どちらも前句の酒とよく合う。後句「宿」が少し取って付けた感じがするのが残念。たっ君の菊の宴も同様に「宴」がどうか。青柘榴さんは秋袷。前句少し色っぽくて好きだが、後句のつやつやとどうか。4級。ちろりんさんの秋簾、迂叟さんの秋扇は共に雅でいい感じ。3級。

酒の名に京の一字や月見月
月見月つやつや月の古譚集
 台所のキフジンさん。後句、月を重ねてきましたが、過剰? 6級。KIYOAKI FILMさんは稲光。劇画調? 後句つやつやの柔らかさと合わないか。エノコロちゃんは今朝の秋。酒だし、月だし、「朝」じゃない気がする。ポメロ親父さんは小重陽。重陽の翌日をこう呼ぶらしいがあまりピンと来なかった。カラ嵩ハルさんのそぞろ寒もそうかなとは思うがそれ以上が欲しい。ケンケンさんの秋の風、緑の手さんの星明り、元旦さんの夜半の秋も同様。5級。北伊作さんは秋彼岸。前句はお供えの気分が出ていて好きだが、後句がぼやっとしている。4級。笹百合さん七草さんの龍田姫は驚きの取り合わせ。この姫酒豪?3級。

酒の名に京の一字や温め酒
温め酒つやつや月の古譚集
 サキカエルさん。レモングラスさんは新走。前句、フレーズが季語の説明になっていて世界が広がらないのがもったいない。5級。ほろよいさんは山葡萄。うに子さんは黒葡萄。後句つやつやは分かるが、前句がどうか。4級。妙さんの月見豆は前句お月見の情景。後句、月が重なっているが、「つやつや」が豆の描写になっていて納得。れんげ畑さんの南京豆は前句面白い「京」の重ね方。3級。たかこさん、ヤッチーさん、鞠月さんは新豆腐。このシンプルさがたまりませんなあ。2級。

酒の名に京の一字や漆の実
漆の実つやつや月の古譚集
 牛後さん。し、渋すぎる。後句は分かるが、前句の情景がわからなかった。5級。ペプチドさんは蕎麦の花。前句、雅な一輪挿しを思った。後句の月とどうか。親タカさんは青瓢箪。前句酒からの連想? 後句がどうか。のり茶づけさんの貴船菊も前句「京」からの発想かと思うが、後句ちょっとごたごたした感じ。4級。匠磨さんは柳散る。この光景「京」にも「月」にも合いますなあ。あらたさんの柿紅葉も上品で好き。みちるさん、蓼蟲さんは竹の春。前句、旅館に着いて早速昼酒でしょうか。後句は竹取物語を連想します。3級。魔心地さんは曼珠沙華。前句活けてあるのか、窓から見えるのか。以外と「京」と赤が似合う。後句も月のイメージとよく合う。2級。瑞木さんは椿の実。後句まさにつやつや。存在感がいい。1級。

酒の名に京の一字や虫の声
虫の声つやつや月の古譚集
 猫ふぐさん。前後句とも安心できる取り合わせ。4級。輝女さんのちんちろりんは具体的に音が聞こえてきていい。3級。理酔さんの馬肥ゆるはびっくりの取り合わせだが、後句、馬もつやつやしているようで面白い。小木さんは穴まどひ。後句のつやつやが妙にリアル。前句、情景としてはいただけないが作者自身の自嘲と思えば納得できる。藍人さんのつくつくしは後句「つ」の音の重ね方が面白い。昼のイメージなので月とどうか。同じく3級。大塚めろさんのつづれさせも後句「つ」の繰り返しが楽しい。月のイメージとも合っている。2級。

酒の名に京の一字や菊膾
菊膾つやつや月の古譚集
 樫の木さん。前句の雅な感じ、後句の色の鮮やかさ共にうまい。初段。


今月の正解
酒の名に京の一字や衣被
衣被つやつや月の古譚集
 一走人さん、だりあさん。二段。前句の「京」とも響くし、後句実際の月を出さずにお月見の感じも出て技ありだと思ったのですが……。

酒の名に京の一字や茄子の馬
茄子の馬つやつや月の古譚集
 杉山久子さん。前句は帰ってきた霊と一緒に飲んでいるようで感慨深い。後句のつやつやも実感。異世界とのかすかな繋がり。参りました。三段。


12月号掲載分の問題(10月20日締切)
 次の(  )の中に共通する秋の季語を入れて下さい。
殉教の野にとどまるや(  )は
(  )のつと土に触れ水に触れ



マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人。第一回大人コン「多面体」にて優秀賞受賞。句集『翼竜系統樹』マルコボ.コムオンラインショップにて販売中。将棋推定初段。棋友募集中。



【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可) 俳号(なければ本名の名前のみ) 本名 電話番号 住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙女」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、10月20日(金)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.3

Pine trees cut and trim
Surrounding a golden house
Leaves of gold and green
(HAIKU: Sam and Nick Rosen)

金閣も金の葉持つや松手入

(直訳)
松の木を 切ったり 刈ったり
金の館を取り巻いて
金の葉と 緑の葉



Gion at night is busy with people looking to enjoy themselves : restaurants, bars, maiko clubs, lanterns, and a feeling of long ago. In the sleepy morning light, alley cats wander happily.

 夜の祇園は、楽しみを探す人々で賑わってた。料亭、バー、お茶屋、提灯、そして昔を偲ぶ風情。今朝、まだ眠い朝日の中を、野良猫が幸福そうにうろついてたな。

訳:朗善



ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第31話
「バード オブ パラダイス」 渡辺貞夫

モヒートにバップ飛込み秋に入る  マミコン

 「しまった、ラム買うの忘れた」と呟きながら第65回JAZZ句会に臨んだ。この句会のレギュラー ロングカクテルは、ジントニック蛇頭風「ジャズトニック」である。今回はこれにラムベースじゃなくジンベースのモヒートを加えることとした。
 グラスに入れたペパーミントをスプーンで潰す。これにクラッシュドアイスをたっぷりと入れ、ジンとライムジュースを2対1の割合で加える。甘みは砂糖かシロップを適量、仕上げはソーダ水ってのが一般的だが、蛇頭風はトニックウォーターでシンプルに決め、メンバーに試飲してもらった。
 「これ何てカクテル? ……。そう、夏にぴったりね。この葉っぱは何? ……。そう、いいねぇ!!」と、すこぶる好反応を示したのは、音楽業界と飲食業界の興亡盛衰を目の当たりにしてきたマミコンさん。句座にはナベサダの典型的バップフレーズが飛び交っていた。

月の舟優しい風の音がする 千栄子

 僕にモヒートのレシピを教えてくれたバーテンダーの千栄子さんは今回欠席投句だったが、こんなホッとさせてくれる句を送ってくれた。月の舟とは半月のことらしいが、森雪之丞作詞、中崎英也作曲の「月の舟」ってのがある。が、うん、これはJAZZ俳句である。

天高し笑う男のサキソフォン 光海

 完璧なジャケ句。センター前クリーンヒット。文句無し。

ビジネスを終えてバップに帰る秋  チャンヒ

 アメリカのボストン市バークリー音楽院への留学から65年に帰国したナベサダは、我が国のジャズのリーダーとして活躍しながらもボサノヴァの演奏に熱心に取り組んだ。70年代に入ると、彼はお気に入りのフュージョン系外タレを招聘してレコーディングに励んだ。そして国内外のコンサートツアーも積極的にこなし商業的にも大成功を収めた。
 しかし、一方でチャーリー パーカー直系のナベサダを愛したファンの多くは、この状況に少なからず落胆していたようだ。
 その一人だったマミコンさんが、当時ご自身の番組で「昔のように、バップはやらないのですか?」とナベサダに尋ねると「その気になれば、またやりたいね」と彼は屈託なく答えたそうである。

稲妻や終生一筋のバップ 蛇頭

 今回の2枚はナベサダの正にバップのアルバムである。「ナベサダって、こんなジャズっぽいのやってたんですね」と言ったのは大頭さん。「フュージョンでもナベサダのソロはバップだよ」と証明したい僕は「マイ ディア ライフ」をターンテーブルに乗せ、B面1曲目「浜辺のサンバ」に針を落とした。
 この句はバップのステージに出て行かんとするナベサダの背後を捉えた「パーカーズ ムード」のジャケ句と言えなくもない。



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


第31話
『仔猫』
〜 冴える、雨後の月 〜

あらすじ
 舞台は大阪の船場。大きなお店に、田舎から女中さん(おなごし)がやってくる。その名は“おなべ”。田舎の方言でしゃべるし、顔もおもしろいということで最初はバカにされるものの、根っからの働き者のおなべ、旦那さん女将さんから丁稚小者の端にいたるまで、衿あかがついたものを着ているのを見たことがないというくらい、自分から仕事を見つけては積極的に働く。
 ある日の夕飯の後、奉公人たちが集まって話をしているうちに、「おなべの怪しいうわさ」の話が出てくる。
 ある男が雨が降っていた晩、夜中に手水(お手洗)に行きたくなり、母屋から離れた裏の便所まで行くと、雨も上がっていて月が出ていた。その月明かりの中を動く者がいる。よく見たらおなべ。あたりをキョロキョロ見回し、「ヒヒヒヒヒ」と笑った。男はビックリしてお尻もふかず布団に入ったという。
 実は番頭も、ある晩におなべの部屋を少しのぞいてみると口にべったりと血がついていた……。
 こんなおそろしい女を置いておくわけにはいかんと、旦那と相談して番頭がおなべのいない間に部屋のたんすを開けてみると、赤や黒やまんだらの獣の皮がでてきたではないか。
 なんとか諦めてもらおうと番頭がおなべに怖々ながら話をしようとする。しかしなかなか本題へ進めない番頭。
 するとおなべの表情が一変し、「番頭さん、ワシの留守中何か見はせなんだかのお? 何か見たな〜」
 腰を抜かす番頭に、おなべは幼い頃からの話を始めた。
「ワシの父親は山猟師、生き物の命を取る報いがワシに来て、猫さえ見ると、つかまえて食べるようになってしもおた。猫の血がのど元すぎると正気にもどる。もう二度といたしません。ですからこの家においておくれ。」
 二度目にビックリした番頭、気を取り直し、「しかし昼間あんなにおとなしいおまはんが……ああ、猫かぶってたんか」



 上方落語の長編大作で、四十分くらいかかります。上方落語らしく後半のおなべが身の上話をする時には三味線で「四つの袖」というハメモノが入ります。
 怪談話のような展開になりますが、そこまで恐ろしくなく、サゲでは「なーんだ、こう来るか」と思わせます。
 おなべは不細工なんだけどどことなく愛らしく、奉公人たちもおなべをバカにしつつも頼っているという人情味がこの話を支えているのではないでしょうか。
 番頭は、旦那と奉公人の間で右往左往する大変な立場だなあと痛感します。学校でいうと教頭先生といったところでしょうか(笑)。
 さて、この噺によりリアリティをプラスしているアイテムが、“雨後の月”であります。
 男が便所に行って窓からふと外を見ると、雨は上がって月が出ている。ここでこの男の一言「雨後の月は、わるわる〜う冴えるモンやなあ……」
 この一言が、何か起こりそうな予感を聴き手に与えるのです。
 こういう、噺をスッと引き締めるようなワンフレーズがいかに大事なのかが分かります。
 まあその後、男は尻もふかず、布団に帰り、周りから「お前の話はきれいのかきたないのかわからんなあ」とツッコまれるのですが。
 どうします、アナタの周りに働き者だけど夜猫をかぶる(かじる)人がいたら……。

雨後の月噂話がほんたうに


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新聞記事に隠された俳句を発掘する クロヌリ俳句


黒田マキ


7月の出力9万キロワット
(愛媛新聞より)

パラソルも置けないほどのサミットに
(2013年8月26日朝日新聞より)

春の首都首脳まとめて閉幕し
(愛媛新聞より)


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マガジン化10年目記念?
句集を作るドキュメント


エピローグ キム チャンヒ

 前回最終回を迎えたにもかかわらず、印刷入稿直前にいろいろと変更をしたので、報告という言い訳をする。
 前回、紹介した章立てで俳句を分類するのは、それほど難しくはなかった。しかし分類した後、一つ一つの章を完成させるのは、思いの外骨を折った。
 僕が最初にまとめた章は、「冬の季語」という章。この章は、一般的な季語の使い方ではない方法で俳句を作れないかと模索した作品を並べたので、それほど句数がなく、手際よく仕上げられると思ったから。
 その次に取りかかったのが、「夏の月」という章。この章も、子どもを詠んだ句を中心に集めたので、スムーズにできた。
 しかし、それ以外の章は、それぞれの違いを明確にするのが難しく、取っ替え引っ替えしながら試行錯誤を繰り返した。どの章も、左ページで終えると決めちゃったのも戸惑った原因。1ページ3句表示なので、見開き6句ごと増減させなければならず、しかも、最終ページ数も決まっているので、調整が大変だった。最終的には、前回お知らせした章立てに、一つ章を追加し完成とした。
 本文ができたら、次は表紙。今回は、カバーもつけるので、デザインが二つ必要である。カバーは本誌裏表紙の広告通り、カラフルなものにした。自分の写真を表に出すのは、あまりに恥ずかし過ぎたので、中の表紙に使った。
 最後に価格も変えた。句集スタイルの倍のサイズなので、価格も倍に設定していたが、手に持った質感を考慮して1300円(税別)にした。
 初めて句集を編んだ今、やっと俳人として一区切りした感じ。今後、新しい自分の俳句を作るにはどうすればいいのか、模索中。


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俳句対局普及プロジェクト 俳句対局道場


第4回「実録!! 俳句対局 前編」
ナビゲーター 正人


「俳句対局道場」は俳句対局という遊びを楽しむためのコーナーです。

前回のおさらい
 俳句対局は“席題句から一漢字あるいは一単語をいただき、制限時間内に俳句を作る”ゲーム。
 俳句対局の勝敗は点数制で決まります。点数の要素は作品点 時間点 減点の三つ。早く作るほど時間点が多いこと、ルール違反があると1〜5点の減点が科されてしまうことをこれまで解説してきました。基本はこれでOK。では実際に対局してみましょう。

 10月27日(日)開催の俳句対局龍淵王決定戦への助走の意味で始まったこの企画。最後に待ち構えているのは実践編。練習会&プレ対局の様子をお届けします。


試合の前に〜練習法いろいろ
 9月14日(日)。実践編最初の挑戦となったのはmhmメンバーのしんじゅさん、雪花さん、野風さん。毎年恒例、まる裏俳句甲子園翌日に行う吟行会の下見をしていた時のこと。昼食候補地でランチの最中に話を切り出しました。
 「絶対ムリ!!」と猛烈に拒否する三人の前に取り出したのはこの日のために用意した「俳句対局練習用紙」(左図)。いきなり対局しろと酷なことは言いません。まずは肩慣らしで、時間無制限、一人一句作って次の人に回す、という練習をしてみませんか。
 格別の抵抗を試みる野風さんにお願いしますよと拝み倒しつつ、試遊開始。まずは0番句。かの有名な芭蕉の一句を題材に始めます。


まずは作ってみる

古池や蛙飛び込む水の音 芭蕉

 前回 前々回に掲載した俳句対局ルールをおさらいしながら作っていきます。季語=蛙をそのまま季語として使うとルール違反だから、他の漢字から一字とれば安全。例えば「飛」の一字をとって……

飛行機は雲間に消えて夏の海 正人

 続くのは同行していたキム チャンヒ編集長。「雲」の一字で……

秋雲の形になろうとしてる僕 チャンヒ
 動き出したら仕方がない。渋々ながらも腹をくくった様子の面々も順番に句を作っていきます。

稲妻のごとく僕の通り過ぐ 雪花

殺し屋の住まひに過ぎし芒原 しんじゅ

秋澄むやガラスを過ぐる影の美し 野風

 初回の挑戦での作句時間は1分程度から5分以上と様々。しかし作句ルールは全員ばっちり! 基本が理解できれば、あとは反復練習で慣れていくだけ。慣れるほど時間短縮が図れる=時間点を多く狙えるようになります。


時間制限に慣れる
 続いて時間制限を導入した練習をやってみましょう。幸いキム編集長を含めて四人がいることですし、チーム戦を行っていただきます。キム&雪花チームと野風&しんじゅチームに分かれ、一人一句を作ってもらう対戦です。何句も連続して作るのではなく、あくまで一人一句から始めよう、ってあたりが穏やかな練習です。(と説き伏せる。)
 持ち時間は各チーム4分間。0番句は松山らしい子規の一句から。

松山や秋より高き天守閣 子規
 先攻はキム&雪花チーム。

ミゼットの窓に真冬の天国が チャンヒ
 (残り時間 2分19秒)
 各チーム持ち時間4分ということは一人あたりは2分。順当に2分以内で仕上げてきました。作句順は野風&しんじゅチームへ。

木犀や窓をふるふる雲流る 野風
 (残り時間 2分35秒)
 さんざん「自信ない」と言ってた割にキム編集長より早い。「ふるふる」が木犀にも雲にもかかるようでいいですね。

江戸の香の静かに流るる十三夜 雪花
 (残り時間 6秒で〆)
 午前中に江戸の硝子器を観る吟行をしていたのでそこから着想? 十三夜が雅であります。

香木におそわれるよな震災忌 しんじゅ
 (残り時間 33秒で〆)
 「香」の一字を頂いての一句。よく咄嗟に「香木」って言葉が出ましたね。吃驚。

 対戦を終え、感想を聞いてみると「言葉が急には出てこない」「季語が思いつかない」「キツい」と苦悶の声が。えぇ、こんな立派に作ってるのに?
 俳句対局の面白さを布教するために始めたものの、こう苦悶されては面目が立たないなあと困っていたところ(後にしんじゅさんが夏井いつきブログで「意外にいいかも」とコメントしてた。先に言ってよ!)、野風さんから情報提供が。
「夕方6時から俳句対局の自主練習会に呼ばれてるんです」
 自主練習会!? それはぜひとも取材したい!!


飛び入りの自主練習会
 時刻は下り、夕方6時。やってきたのはJR松山駅近くの飲み屋「なが坂」さん。会場に集まったのは練習会の企画者みちるさん 恋衣さん。タイムキーパー役で呼ばれたあねごさん 野風さん。そして、普段は審査員してて試合に出場できないから折角の機会に野試合をしてみよう、と誘ったところ急遽参加することになった、愛媛新聞土曜日のカルチャー教室を終えて参戦の夏井いつき氏。
 まずはビールを一杯やりつつ肩慣らしです。兼題の短冊から一つを引き全員が同時に作句。制限時間は2分間。

色里や十歩はなれて秋の風 子規

木の実降るふるふるふるえる里心 あねご

色深く山装ひて伊予の里 みちる

江戸ガラスかんなの黄色まねてみる 野風

十方へ飛ぶはたはたの音はたはた いつき

色々なはなれありけり紅葉狩 恋衣

馬肥ゆる鉄工場の昼休み 正人

 全員2分以内に作句完了……が、しかし自分は大失敗。推敲の間に元の字が消えちゃう5点減点のケースをやらかしてしまいました。実戦の二分に追い込まれるとホントにミスるもんですね……己に不安を覚えつつ次回へ続く。



次回予告「実録!! 俳句対局 後編」
 練習会は本番さながらの野試合に。参加者が練習会を経て掴んだ俳句対局練習のキモをお伝えします。そしてこの中から本戦出場者が誕生!



第二回
俳句対局龍淵王決定戦
出場者&観覧者募集中!!

第二回龍淵王決定戦の続報です。開催時間と参加費情報を更新しました。優勝者には賞品も。

日時 10月27日(日)13時〜16時
場所 松山市二之丸史跡庭園内観恒亭
 *出場が決まった方は、当日はスーツや着物にてお越し下さい。観覧のみの方は、服装の指定はありません。
観覧費 500円
 *庭園入場料別途(大人100円)
参加申込 問い合わせ先
 『100年俳句計画』編集室



※俳句対局作句ルール
1:使用する季語はいつの季語でも構わない。(傍題可)
2:前の句から頂くのは、漢字、または、自立語。
3:前の句の表記のまま頂く。表記を変えてはいけない。(カタカナ表記の場合は、カタカナで)
4:前の句の季語、および季語の一部を季語として頂くのは、不可。



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百年歳時記


第5回 夏井いつき

 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。

ゆかた着る妹思い出は紅 芝田早希
大橋の波となりゆく浴衣かな 宮下喜久子
 妹の浴衣姿、浴衣や帯の「紅」を詠んだ句はいくらでもありますが、後半「思い出は紅」という詩語の新鮮さにハッとします。幼い頃の断片的な記憶の中に、「紅」という色だけが鮮やかに息づいているのだと読みました。「ゆかた着る妹/思い出は紅」とゆったりと畳みかける調べが、茫洋たる「思い出」を美しく描きあげます。
 「大橋の波」という表現は、大きな川の光景に違いないと読み進めば、「大橋」を行く「浴衣」の人々の「波」だという展開の鮮やかさ。前半の光景はその句意を裏切りつつ、陰画のように後半の世界に重なります。「波となりゆく」という群衆の動きの描写は俯瞰の視点。そこに一句の臨場感が生まれている仕掛けも見事です。
(愛南町2013年「俳句あんどん通り」特選句)

釜蓋朔日焔の如く花飾る ドクトルバンブー
 「釜蓋朔日」とは、陰暦七月始めの朔日に地獄の釜の蓋が開いて亡者たちが戻ってくるという伝説から生まれた季語です。
 この面妖な季語に対して取り合わせられた「焔」の一語は、蝋燭や迎火の印象と重なりますが、それだけで終わったのでは面白くありません。「焔」は火の印象を一瞬なげかけ、そのまま「焔の如く花飾る」と後半へ傾れ込みます。ここで丁寧に読まねばならないのが「如く」の一語。「如き」ならば単なる「花」の形容に終わりますが、「如く」は「飾る」にかかります。「花」を「焔」のように飾るという行為そのものが、「釜蓋朔日」に捧げる祈りとなるのです。残暑に咲くオレンジ色の花々が脳裏に浮かんでは消えていきます。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』8月16日放送分)

桐一葉すと身を起こす夜の猫 理酔
 上五「桐一葉」で、大きな葉が初秋の光を浴びながらゆっくり落ちていくさまを連想させ、中七で何が身を起こすのか?とささやかな疑問のさざ波を起こし、下五「夜の猫」と畳みかけます。昼間の光景だと思っていたのが、一気に「夜」の光景となり、「すと身を起こ」したのが「猫」だったと分かる、この展開が巧いですね。
 「桐一葉」は夜の真っ暗な静寂の中にあって、その姿は見えません。が、落ちる音でその存在はありありと感知されます。身を起こし、耳をそばだてる「猫」を宥めると、句中の世界には再び夜の静けさが戻ります。そして、深い夜の中へ落ちていく「桐一葉」の音だけが、いつまでもいつまでも響いていくのです。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』8月23日掲載分)

鯊釣をチリの女に習いけり 蘭丸
 「鯊釣」を誰かに習うという発想はありがちですが、まさか「チリの女」が登場するとは思いもしませんでした(笑)。
  「チリの女」は顔見知りでしょうか、なんでこんなとこで外国人の女が釣りを?と気になり声をかけたのかもしれません。話しかけてみると、片言の日本語はしゃべれるし、器用に釣ってるし、そのうち「アンタもやる?」なんて竿を持たされたのでしょう。
 上五は「鯵釣」「根魚釣」等も考えられますが、大した仕掛けもいらない簡易な「鯊釣」は一句の物語においてささやかな説得力を発揮します。釣り上げる「鯊」のユーモラスなようでそこはかとない悲哀もある貌が、「チリの女」の人生の陰影をうかがわせます。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』8月30日掲載分)

松虫や一遍像の炎上す 村重蕃
 8月10日に全焼した宝厳寺は一遍上人の生誕寺。国指定重要文化財「木造一遍上人立像」を収蔵していました。今回の火事による木像の焼失は大変な衝撃でしたが、9月23日の725回忌を前に、捨聖と呼ばれた一遍上人の遺志が真の意味で成就したのだと考え直すことにしました。何もかも捨てるという教義を唱えた一遍上人にとって「像」というカタチもまた捨てるべきものだったのだと。
 焔に立つ木像、合わせた両の手、踏みしめる徒跣、床下から這い上がる炎、逃げ惑う「松虫」。それらの断片が「炎上す」の一語によって一気に昇華するかの如き静かな迫力。「松虫」の音色は、七百年の果てに成就した志へ手向ける美しき葬送でありましょうか。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』8月30日放送分)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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句集の本棚





『さみしき水』掛井広通 著

 平成十九年より二十四年までの俳句全三00句からなる自選の第三句集。
  百鶏の百の声あり淑気かな
  錠剤に小さき文字ある朧かな
  海坂のその先も蒼更衣
  金魚飼ふとはさみしさを飼ふに似て
  噴水はさみしき水のシュレッダー
  百鶏の同じ向きなる大暑かな
  銀漢や水売る自動販売機
  月を踏むやうに砂丘を歩く秋
  プルタブの音も銀色クリスマス
  雪をんな海を恐れて海に来ず
 「人間の約七割は水であり、私自身さみしき水なのかもしれません。自分の丈を越えない自分の句を」と、思う作者。どの俳句にも水のにおいが、音がある。海を恐れる雪をんなのほとんどは、水。海もまたさみしき水なのである。
(書評:恋衣)

ふらんす堂(2012年初版)
定価 2476円(税別)
全172ページ



『蟲狩』大木孝子 著

  はつゆめのぎやまんぎせる水の色
  色變へぬ松ありんす國のありやなし
 巻頭の二句。吉原の花魁を思い浮かべさせて、きりりと、しかも嫋やか美しさ。
  蟲狩の色なき風に吹かれをり
 蟲狩とはスイカズラ科の落葉樹。虫に食われること屡々、ために秋風に軽く動く。何気ない句だが、蟲狩を的確に描出。しかし大木氏の句は更に自在な世界へ。
  輝血とは酸漿のことほツほツほツ
  空中幻華鶏頭の轟沈す
  二月さて鶴の子石でも買ふか
  三鬼の忌鷄冠びらびら放熱す
  老いらくの戀猫といふをへらる
  晦澁なり坂口安吾と鞘の味
 そして巻末近く、
  終戰生まれなり骨太俳句たれ
 ああ、私は「戦後派」。「終戦生まれ」にはかなわない。
(書評:みちる)

槐書房(2010年初版)
定価 3000円(税別)
全200ページ



『夏の谿』石井薔子 著

 『生きている自分のからだと心の「気づき」のようなもの」を俳句という形で留めておきたかった』と作者。
  檸檬絞るひとりの時の左利き
  立ち退きの跡の鮑の殻五つ
  日暮里の秋刀魚サドルを降りず買ふ
 生活を鮮やかに切り取った句達。左手で絞る檸檬の香りの向こう側にあるものを思い、立ち退き跡の鮑のミステリアスさに想像を掻き立てられた。
  初夏の中空にあり蝶の部屋
  人体に泡詰まり来る桜かな
  春暁の海岸線となる身体
 一方での感覚的な句にもまた心を揺さぶられた。
 中には介護や震災詠も。作者の「気づき」に読者もまた何かを「気づかされる」。じんわりと、読むものの中に沁み込んでくる句集だと思った。
(書評:山澤香奈)

かぷり(2012年初版)
定価 1500円(税別)
全196ページ



このコーナーで紹介した句集は、100年俳句計画編集室にて閲覧できます。


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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第31回 文と写真 暇人

特別編 ニコニコ生放送 × 俳句甲子園
 皆様いかがお過ごしでしょうか。俳句甲子園病という五月病に似た症状からやっと抜けて、そろそろ日常モードに戻りつつあります。
 さて今回はmhm的に特に報告事項もありませんので俳句甲子園をmhm目線で(強引に)語りたいと思います。
 昨年度facebookを担当してきた私にとって大変興味深い、もっと言えば悔しい試みを今回俳句甲子園は密かにやっていました。それはなんとあの「ニコニコ生放送」で俳句甲子園敗者復活から決勝戦(つまりコミセン会場)を愛媛CATVの協力で生配信を行っていたのです。俳句甲子園の広報及びブログでは全くふれられていませんでしたが、ある筋から事前情報を入れていましたので、当日実行委員会の仕事をこなしつつ配信を時々チェックをしておりました。俳句甲子園がニコニコ生放送のユーザーに受け入れられるのか注目しておりましたが、中継動画に流れるコメントの多いこと。中にはどう考えても関係者しか知らない情報まで書き込まれていました。最終的には来場者数6万人を超えて書き込みも2万7千ほどあるなど、俳句のイベントとしては異例な数字を記録しました。
 「まる裏」でもこの試みをやりたいと中継を見ながら感じておりました。昨年のfacebook審査員等の反響から見ても需要はあるはずです。まあmhmで最低限のシステム(定点動画のみ、音声なし、WiMAX回線)で配信をやろうと思えばできなくないのですが、昨年の経験から言えば、子規記念博物館周辺の回線状況はあまり安定していないのが現状です。
 そこでドワンゴさん(ニコニコ生放送の運営元)、もしよろしければまる裏俳句甲子園にご協力をいただけないでしょうか? まる裏に行きたくても行けない人もかなりいます。その人達にも試合ができなくても観客と同じ雰囲気だけでも味わえると思うのです。いかがですか?
 読者の方々でもアイデアや配信の協力をいただければありがたいと思います。お待ちしてます。
 まずはmhmでは猛暑にやられて休眠状態のfacebookでしたが、できれば9月末から再起動させまる裏に向けて発信していきたいと思います。ただし担当のやる気が続けばの話ですけど……。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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俳句の街 まつやま
俳句ポスト365


協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


優秀句
平成25年8月度


【朝凪】
《地》
市場はや無人となりぬ朝の凪 小市
朝凪やもと漁師らの集う店 のり茶づけ
朝凪や漁協の影の四辺形 マーペー
朝凪や島にひとつの藻塩小屋 ひろ志
朝凪や厳かに飯炊く煙 猫ふぐ
朝凪や剣ひたぶるに海光へ たま
朝凪に漁網千畳干す浜辺 稲穂
朝凪や寡婦の朝餉にありついて 蘭丸
朝凪や洗へる貌の夜の部分 牛後
安酒のまだ抜けずして朝凪ぎぬ 奈津

《天》
朝凪や鳴門は旅の途上なる 蓼蟲


【オクラ】
《地》
七日後は食らうオクラの花愛でる 不知火
こんなに大きくとんがるつもりぢゃなかったオクラ 亜桜みかり
オクラいっせいや不在の家ばかり たま
オクラ果てしなく実る逆縁の家 たかこ
アフリカにオクラと人類の起源 樫の木
さて諸君オクラを科学してみよう 理酔
星の尾を掴まえるようオクラ取る マーペー
粘り強き星のオクラよ誕生日 ミル
オクラが好きだったんですか現場主任 青萄

《天》
ここからがオクラの尻尾けなげなり 神楽坂リンダ


【桐一葉】
《地》
ゴッホならばこう描きしか桐一葉 大塚めろ
桐一葉くらいで何度でも故郷 ミル
桐一葉にはとり首を傾げをる もね
一葉落つちいさきものの墓の上 逸子
桐一葉大仏坐像のやや猫背 めいおう星
鉄柵は空へやじるし桐一葉 初蒸気
われのみの会議室より桐一葉 海音
桐一葉資源回収車の上へ みちる
桐一葉ひとり茅ヶ崎タンタン麺 ちびつぶぶどう

《天》
桐一葉すと身を起こす夜の猫 理酔


【鯊釣】
《地》
四男まで順に並べて鯊釣らす 初蒸気
鯊釣の棒竿貸して並ばせる 陽鳥
鯊釣のバケツ係を卒業す すな恵
東京湾てふ金盥鯊を釣る ハラミータ
鯊釣の河口聳ゆるラブホテル もね
歩いて行ける海がある鯊を釣る ポメロ親父
満ち潮のぬるき水飲む鯊を釣る ふーみん
鯊釣や女房任せの理髪店 天宮風牙
喪の明けて外は鯊釣日和かな 大塚めろ

《天》
鯊釣をチリの女に習いけり 蘭丸


10月の兼題

投句期間:9月26日〜10月2日
夜食【三秋/人事】
現在では夜に食べる軽食の意。元々は大正時代以前の“夜なべ”の習慣によるものであり、藁仕事や繕いといった夜なべ作業の後に摂る食事のことをいった。

投句期間:10月3日〜10月9日
木犀【晩秋/植物】
金木犀、銀木犀、薄黄木犀などの総称。江戸時代に中国より渡来したといわれ、多く観賞用に庭木として植えられた。甘い芳香が特徴。

投句期間:10月10日〜10月16日
鵙【三秋/動物】
秋を告げる体表的な鳥。小鳥ながら肉食で、昆虫やトカゲ、ネズミなどの小動物を捕食する。また、それらを木の枝に刺しておく“鵙の早贄”と呼ばれる習慣がある。

投句期間:10月17日〜10月23日
鵯【三秋/動物】
秋に山地から人里に渡る。翼をひろげては引き絞るように羽ばたいて波状に飛ぶ。「ヒーヨヒーヨ」という鳴き声が名前の由来ともいわれる。

投句期間:10月24日〜10月30日
初時雨【初冬/天文】
時雨とは、冬の初め頃によく降る通り雨のことだが、その冬に初めて降る時雨のことを「初時雨」という。


《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成25年8月度


【すててこ】
すててこや剣は二段の父である てん点
すててこの親父奏でるハーモニカ  ばくだん
すててこの胡坐の中にちょんと居る  とりとり
すててこの膝の記憶に缶ピース 日暮屋
すててこを穿いて夫の外煙草 ちいち
休戦してすててこのゴム入れ替えて  亜桜みかり
生家留守すててこ乾ききっている  不知火
両国に両手に余るすててこ屋 蕃
試着室よりすててこの足二本 冬井いつき
銭湯のすててこで飲むリポビタン  風花会 さくら
すててこやブラウン管に追う飛球  マイマイ

《天》
すててこや日本の明日を信じなさい  笑松


【氷室】
火の見櫓を左へ村の端の氷室 恋衣
霊山の風稜々と匂う氷室 緑の手
氷室何処と木霊に問うてみたけれど  流星
氷室まで半里荷車幅の道 だんご虫
やまびこのひとつ返りぬ氷室口  ターナー島
靄ふるえ氷室開きの触れ太鼓 妙
氷室開く禰宜の眼鏡も曇りたる 紫水晶
天井に龍の絵のある氷室かな 桜井教人
廃坑の三千貫の氷室かな 山野遊造

《天》
氷室開けば百年臭き匂いかな  お手玉
お静かに氷室の時が歪みます  殻嵩はるお


【釜蓋朔日】
釜蓋朔日ひれ伏す草も木も ターナー島
釜蓋朔日屋根緑青に反り返る マイマイ
体中しょっぱい釜蓋朔日かな そも
釜蓋を開けて見知りの顔二つ 蕃
深酒の頭上に遺影釜蓋朔日 日暮屋
釜蓋朔日破裂寸前月赤し 日暮屋
釜蓋朔日記憶の底のきのこ雲 菜々枝
釜蓋朔日西南西の星の色  風花会 なでしこ
空耳の幾度や釜蓋朔日 たま
釜蓋朔日納屋の奥より考の鎌 磯子
釜蓋朔日しこしこと強飯 日々草
釜蓋朔日空気吐き出す鯉の口 一走人

《天》
釜蓋朔日焔の如く花飾る  ドクトルバンブー


【俳句甲子園】
ポケットにお守り五つ俳句甲子園  風花会 こでまり
俳句甲子園表情硬いパイプ椅子  風花会 ぼたん
花のごとく円陣俳句甲子園  ドクトルバンブー
挙手少し遅れて俳句甲子園 藤実
俳句甲子園おずおず挙がる手が白い  マイマイ
俳句甲子園第一声の裏返る だんご虫
一文字の助詞に息づく俳句甲子園  ほろよい
俳句甲子園給水のポンジュース 一走人
青春の字余り字足らず俳句甲子園  冬井いつき
讃え合うこと松山俳句甲子園 亜桜みかり
俳句甲子園終え夜の星豊か ターナー島
昨日の敵と登る城山俳句甲子園 樫の木

《天》
俳句甲子園仁王のごとき主将なり  釣鐘娘


【松虫】
松虫の声銀や風の中 菜々枝
山の風谷風川風チンチロリン  エノコロちゃん
フラスコを透かし丸き夜チンチロリン  樫の木
松虫の騒ぐは星を食らうたか マイマイ
五百羅漢の泣いた口よりチンチロリン  冬井いつき
手術痕に軟膏を塗るチンチロリン ちいち
余命などいらぬこと松虫と飲み直す  日暮屋
松虫や誰に聞かせる唄でなく 日暮屋
横丁のおかめ食堂チンチロリン もね
地震来る誤報松虫鳴いている 太郎
チンチロリンまだ動かない三号機  ポメロ親父
牛楽しかろ小屋中にチンチロ鳴く そも
女系一族松虫を床下に 藤実

《天》
松虫や一遍像の炎上す  蕃


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

10月13日
霜降【晩秋/時候】
二十四節気のひとつ。陽暦では10月23日頃にあたる。冬が近くなり、寒さが増して霜が降りる頃。

鷹渡る【晩秋/動物】
鷹には様々な種類があり、冬が近づくと、冬鳥の鷹が北方から渡ってきたり、またその一方で、夏鳥の鷹は南方へと渡っていく。


10月27日
烏瓜【晩秋/植物】
ウリ科の蔓性多年草。秋になると、藪などに絡んだ蔓に、長卵形の長さ5〜7センチメートル程の実を結ぶ。実は初めは緑色から、熟すと朱紅色になる。

初時雨【初冬/天文】
時雨とは、冬の初め頃によく降る通り雨のことだが、その冬に初めて降る時雨のことを「初時雨」という。


《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  10月8日(火)11時40分〜
  10月22日(火)11時40分〜

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FM愛媛
 バニラビーンズの俳句っちゃお〜!
 毎週日曜日深夜0時〜0時30分
※夏井いつきが俳句指南で出演
※FM大分でも毎週月曜21時〜放送中

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「秋の水 えのころ草」9月29日〆
   「釣瓶落し 草の花」10月13日〆
   「暮の秋 狼」    10月27日〆
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名) 住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「秋深し」締切 … 10月22日(火)


句会ライブ 講演など

長崎国際文化協会句会ライブ
 10月3日(木)小島小学校
 10月4日(金)諏訪小学校

しまなみ海道句会ライブツアー〜大山祗神社の一人相撲見学〜
 10月13日(日)
  申込 … ツアーセンター
  電話 0898-52-3333
 http://www.oideya.gr.jp/irodori

第12回瀬戸内海俳句大会
 10月20日(日)
  午前 … 忽那島吟行会
  午後 … 表彰式
 問合 … 大会実行委員会
  089-997-1181

ふるさとふれあい塾〜松山観光文化コンシェルジェ講座〜
 10月23日(水)14時15分〜
  松山大学522教室
 問合 … 松山商工会議所地域振興部
  089-941-4111

第二回 俳句対局龍淵王決定戦
 10月27日(日)13時〜
 ※詳細は「俳句対局道場」のページを参照



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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

それ行け!俳句キッズ
魔心地 今年もNHK俳句キッズに参加させていただきました。年々レベルが上がる中、だいあ&のんのも頑張ってます。負けるな、父(苦笑)。
編 NHK「それ行け俳句キッズ」は愛媛県東 中 南予から選ばれた代表合計30名の小学生による俳句バトル番組です。先日放送がありましたが、仰るとおり毎年ぐんぐんレベルが上昇中。来年はどんな戦いが見られるのか楽しみです。

俳句甲子園が始まる前に
うに子 今年はことさら暑いせいか私の忘却力もパワーアップ! 月末〆から20日〆切になったのを先月はすっかり忘れていました。とにかく出すことを目標にしますね。俳句甲子園ももうすぐですね。……残念ながら見に行くことはできませんが熱いバトル楽しみにしています。
編 今年の俳句甲子園も無事に終わりました。詳しくは特集記事にて。今回のmhm通信にも記録がありますが、インターネットでの生中継もありました。現地に来れなかった人もそれら通じて見て下さってたらいいなあ。

俳句ポスト365×百年歳時記
妙 俳句ポスト365「夏野」の天ありがとうございます。投句はしたものの、私の携帯では選句結果を見られなくて、マガジン8月号で初めて知りました。うれしい選評もいただき、驚きと感激で、何度も読み返しました。その後選句結果も見られるようになったので、投句再開しようと……頑張ります。
編 百年歳時記は俳句ポスト365をはじめ、夏井いつきの目に触れた佳句を紹介しています。いろんなとこに投句してれば何かの拍子に紹介されるかも!

悩める自由律
元旦 自由律にしようと思っていても、気づくと五七五になっていることがあります。慌てて崩そうとするけど、これっていかがなものでしょう。それなら、無理に自由律にしなくてもよくない?と、なかなか自由になれないワタクシであります。崩し字のような、変拍子のような、足元のバランスを失ったような、不思議な感覚の自由律俳句に苦戦しています。
編 きむらけんじさんの選の中でちょこちょことコツ(のようなもの)が語られてるんだけど実践はなかなか難しいですね。酩酊してるような足下感。

季語の味な話
大塚めろ 白菜、キャベツ、レタス類は一枚一枚水洗いをしよう! こいつらを栽培したらわかりますが、こいつらは葉を巻いたまま大きくなるのではないのです。開いた葉を吾の中心に巻きながら大きくなるのです。虫の卵やらご近所の噂話やら姑の愚痴やらを巻きながら大きくなるのです。そこんとこを考慮して食そう! 毒を巻きながら大きくなるのは俳句だけで結構であります。
編 かつての食卓を振り返って暗澹たる気持ちになる……。そうかあの中には……。

北伊作 夏が苦手な私にとって楽しみのひとつが坊っちゃん球場の野球の予選です。毎年欠かさずに見に行きますが、不思議な事に必ずバックネットに黒揚羽が現われます。今年は決勝戦の日に現われました。ほかの蝶は見た事がありません。単なる偶然なのかあるいは……。蝉時雨の中に考えております。
編 揚羽も営巣したりするんですかね? 詳しい人教えて下さい。

残暑お見舞い
エノコロちゃん 残暑お見舞い申し上げます。どうぞくれぐれもご自愛下さいませ。今月も各コーナー投句します。よろしくねー。
編 どうもご丁寧に。ガンバル!


100年俳句計画誌上編集会議
編 本誌も十年目を迎え、様々なご意見を参考にしながらニューアルをはかっていきたいと思っています。このコーナーでは、皆様のお便りを紹介しながら、さらにご意見を集めつつ、誌面に反映させてゆきます。
 沢山のご意見をお待ちしています。

今月の提案
藍人 選句&投句欄のザ いつき組がなくなって、投句する側からすると少し寂しい。と言うか、自ら他人の句を選句して評することで100年俳句計画に参加していたと思えていたのに、現在は三名の選者の選評しかないから、えらく疎外感を感じている。自分が選句した句を他の人も選句しているのか、どのように評しているのか、あるいはこのような見方があるのかなどなど毎号わくわくどきどきしていたのに今はそれがない。句会と同じように参加者が選句して評する場を是非復活していただきたいのですが、そのような意見はないのでしょうか。

キム 実は、同様の意見は少なからずあります。そして、どういう形で復活させるかは、現在検討中でもあります。その説明の前にまず、「ザ 句会」のコーナーをなくしてしまった理由から説明します。
 一番の理由は、掲載する紙面が足りなくなってしまったということです。1997年8月に俳句新聞としてスタートした本紙は、沢山の実力ある俳人を輩出してきました。しかし本紙には、そんな俳人の作品を掲載する場が、昨年4月にスタートした「百年百花」の連載までありませんでした。この連載や「100年の旗手」のリニューアルなど、俳句作品に紙面を増やしたため、一番紙面を割いていた「ザ 句会」の連載をひとまず終わらせることにしました。
 また、句会というもの自体が、参加してこそ楽しく、読み物として楽しまれる方がどれほどいらっしゃったのか、判断しかねた部分もありました。「ザ 句会」の参加者が本誌購読者の4分の1未満であったことも、理由のひとつでした。それならばと、「ザ 句会」を終了するのと同時に、句会の楽しさを誰でも味わって頂けるように、無料のインターネット句会「象さん句会」を開始しました。
 しかし、月に一度の誌面句会を楽しみにしていた方は、沢山いらっしゃったようで、終了を惜しむ声を沢山聞きました。
 そこで現在、本誌の別冊として、誌上句会を復活できないかと検討をしています。句会カレンダーの句会と同様、句会に参加したい方だけが、実費(200円程度?)を負担し、誌面句会を楽しむというスタイルです。これなら、誌面の都合も、句会参加者とそうでない読者とのギャップもクリアできると思うのですが、いかがでしょうか?
 皆さんのご意見お待ちしております。
本誌編集長 キム チャンヒ


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鮎の友釣り

184
俳号 ぽぽんた

西条の針屋さんへ 又どこかでお会いしましょうね。

俳号は みかん農家なのでラジオは必需品。番組へのお便りはラジオネーム「じゃいこ」一句一遊は「日土ぽぽんた」です。

普段の句会 2ヶ月に一度のさえずり句会。全く進歩のない私ですが楽しく参加しています。
 4月の「さえずり句会の祝賀会」色々な場で大活躍のメンバーをほぼ全員参加で楽しく行いました。
 皆さんこれからも頑張って下さい!! 私も後ろをウロウロついて参ります(笑)

次回…旧重信のタイガースさんへ 南海放送SNSコミュで知り合いました。俳句の種まき運動頑張っておられます。いつかお会いしましょうね!!


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告知


選評大賞2013

今年も選評大賞を行います。300字以内でビシッと決まった選評をお寄せください。審査は例年通り、堀内統義、中西淳、夏井いつきの3名が行います。
 多数の応募をお待ちしております。

選句の対象となる句
 「一〇〇年の旗手」掲載句(2012年10月号〜2013年9月号)の中から、心を打たれた俳句を1句選んで、選評をお寄せ下さい。

記載事項
  掲載句1句(掲載号、作者名を必ず明記)
  選評 20字×15行(300字)以内厳守(多すぎても少なすぎても減点の対象となります)
  俳号、本名、住所、電話番号(必ず明記)

締め切り 10月21日(月)必着

応募先 100年俳句計画編集室まで、ハガキ 封書 FAX メールでお送り下さい。
送付の際、件名 タイトルに「選評大賞2013」と明記下さい。
ご応募の際、他の投稿とは別にお書き頂きますよう、よろしくお願いいたします。

結果は2013年12月号にて発表します。




マルコボ.コムオンラインショップマガジン化10年目突入記念企画
HAIKU LIFE 100年俳句計画
企画別ワンコインバックナンバー集発売中

本誌は2013年6月号で、マガジン化してから10年目に突入しました!
マルコボ.コムオンラインショップでは10年目突入記念として、テーマ別のバックナンバーのお得なセット販売を行っています。

編集室のオススメセットは……?

6:編集長渾身の企画!
 他の俳句雑誌では絶対にやらないような企画を堂々とやるのがモットーの本誌。そんな中でも、非常に人気の高かったのが「はいのり」。
 この企画でやりたかったことは、恋の句を軸にキラキラとしたページ作り。それを実現すべく、ロケの半年前から「見た目勝負」で知り合いをスカウト。俳句を作ったことがなければ作り方を伝授し、必要ならば俳句合宿まで行い当日に挑んだ。香雪蘭さんのレポートが妙にクールで、今読んでもかなり可笑しい。
 「はいのり」発表後、40代〜50代の俳人たちから、「なぜ私たちには企画してくれないの?」と猛攻撃を受け、翌年実現したのが「ばいのり」。夜の松山を満喫すべく、食事に、演劇に、テーブルマジックまで、大人のための吟行ルートを体験。
 蕪村や子規が絵の達人でもあった。「俳人画力対決」は、そんな彼らの意志を現代に蘇らせた、ねこ端石さんの企画。絵の得手不得手にかかわらず、季語の本意に迫った参加者の悪戦苦闘が見もの。ソウソウ(当時4歳)のかき氷の絵は必見!
(キム)

収録内容
2007年2月号:俳句で恋は生まれるか!?「はいのり」
2008年2月号:俳句で愛は生まれるか!?「ばいのり」
2010年7月号:俳人画力対決2010!


20:編集長選 企画倒れ特集
 この5冊は「企画倒れ」改め「企画倒れを恐れず挑んだ企画」と捉えて頂いた方がいい。
 たとえば、人生の3分の1を過ごす職場で、人として育まれるのなら、仕事を俳句に詠むことで、新しい俳句の発見があるのではないか?
 あるいは、実際には体験しづらい百物語という季語を、紙面上で再現することで、季語を深く味わうことはできるのか?
 あるいは、みんなは俳号をどういう風につけているのか? 俳号をつける意味とは?
 あるいは、涼を誘う料理が夏料理という季語であるが、21世紀の現在、「夏料理」という言葉から受けるイメージはもっと広いのではないか? 現代に相応しい夏料理の姿とは?
 あるいは、子規忌を記念したイベントは、俳句大会以外にはないのか? 単純に子規に似た人の顔を見たくはないか?
 どれか一つでも興味を持ってしまったなら、「企画倒れ」を覚悟で購入して頂きたい。
(キム)


収録内容
2005年7月号:俳句 ザ ハローワーク 働く俳句
2005年9月号:俳句百物語
2005年12月号:年末特番俳号スペシャル
2008年8月号:俳のエプロン 21世紀の「夏料理」対決
2010年10月号:正岡子規に変身コンテスト


全27セット 各500円
但し、合計金額が3000円未満の場合は送料別途
お求めはhttp://shop.marukobo.com/まで




HAIKU LIFE 100年俳句計画
第3回
大人のための句集を作ろうコンテスト
作品募集

主催 マルコボ.コム 共催 朝日新聞社 松山市教育委員会(予定)

 第三回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」(通称「大人コン」)の作品募集がスタートしました。
 「大人コン」は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』が開催する俳句コンテストです。
 共催 朝日新聞社 松山市教育委員会(予定)

「受賞作品が句集になるってホントですか」
 最優秀賞作品は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』の付録冊子として読者諸氏に広く読んで頂きます。付録とはいえ、お洒落なデザインの句集だと評判です。
 受賞者には一切の金銭的負担をかけず、読者にとっても安価な句集をどんどん生み出していきたいという志を一つの形にしたのが、この企画なのです。

「俳句マガジンを購読してないんですが、コンテストへの応募はできますか」
 どなたでも応募できます。購読の有無は一切関係ありません。勿論、応募は無料です。

「審査は誰がするのですか」
 本コンテストの受賞者は、「大人コン」選考会員の投票によって決まります。「大人コン」選考会員は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』購読者の内、各総合誌等の俳句賞受賞者あるいは最終選考に残った実績のある人たち等によって構成されます。第二回の有資格者は三十二名。年々選考会員数は増えていくことになります。
 多くの目利きの力を借りて「百年先の未来に残したい作品と作家」を見い出し顕彰していくことが「大人コン」の目的。我こそは!という皆さんのご応募を、心からお待ちしております。

既作新作を問わず81句の作品集を募集。
最優秀賞作品は句集にし、本誌付録として配布します。

募集要項

応募資格
15才以上(高校生以上)の方なら、本誌購読の有無に関係なく、どなたでも応募できます。

応募方法
1:Eメールでの応募の場合
応募用のエクセルファイルに必要事項を全て入力し、Eメールの添付ファイルにして、応募して下さい。
応募用ファイルのダウンロード先
http://81ku.marukobo.com/

2:郵送の場合
B4判四百字詰め原稿用紙に81句とその表題、俳号、本名、年齢、住所、電話番号を必ず明記して応募して下さい。

締め切り 2013年12月10日(火)必着

賞 賞状および応募作品による句集20冊
*賞品句集は縦横135mm 36ページとなります。句集は本誌付録として配布します。

発表 本誌2014年4月号誌上(予定)

送り先
〒790-0022 愛媛県松山市永代町16ー1
有限会社マルコボ.コム
月刊俳句マガジン『100年俳句計画』編集室Eメール:81ku@marukobo.com




100年俳句計画投稿締切カレンダー

10/20(日)
 100年投句計画
http://marukobo.com/toukou/
 魚のアブク
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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編集後記


 俳句甲子園の始まりと、この雑誌の始まりの時期は非常に近い。その頃は、俳句といえばお年寄りの趣味のイメージが強く、俳句を楽しむ高校生なんてほとんどいない状態。第1回の俳句甲子園出場9チームを集める(作る?)のに、スタッフたちは大変苦労した。
 それからたった15年。今年16回目を迎えた俳句甲子園には、全国から125チーム、600人を超える高校生からの応募があり、その中から地方大会などを勝ち抜いた36チームが全国大会にて優勝を目指した。現役の高校生だけではない。俳句甲子園を卒業したOBOG達も、各地で俳句甲子園をサポートする体制ができつつある。こんな規模で、俳句が若者の表現手段として受け入れられたことは、過去数十年でなかったことではないか。
 いまだに俳句甲子園を揶揄する声を聞く。俳句甲子園に賛否有ろうがなかろうが、今後たった十数年で、俳句甲子園出身の俳人たちが俳壇を背負ってゆくのは間違いない。
 そんな近い将来に向け、我々がすべきことは、新しい世代に相応しい、新しい俳句や俳壇の姿を提示すること。これが非常に難しいのだけれど……。
(キム)


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次号予告 (192号 11月1日発行予定)


次回特集
松山市 朝日新聞社 朝日カルチャーセンター主催
「第3回 瀬戸内 松山写真俳句コンテスト」に向け
俳人のための写真俳句入門


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2013年10月号(No.191)
2013年10月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子