100年俳句計画1月号(no.182)


100年俳句計画1月号(no.182)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
年の酒昼過ぎて日のあたる家 平山南骨


特集1
生まれてから現在までの代表三句による代表句集2013


特集2
俳句対局龍淵王決定戦 前編



好評連載


作品

百年百花
 高橋白道/森川大和/杉山久子/津田美音


100年俳句計画作品集 100年の旗手
 香雪蘭/蓼蟲/ふづき


百年琢磨 しなだしん

雑詠道場 くらむぼんが笑った

初学道場 へたうま仙人

放歌高吟/夏井いつき

新100年への軌跡
 俳句/原/岡戸游士
 評/桜井教人/とりとり


読み物
Letter from spider garden/ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
本家 慶弔俳句帖/桃ライス
お芝居観ませんか/猫正宗
一句一遊情報局
mhm通信

読者のページ
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
マルコボショッピング
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー



年の酒昼過ぎて日のあたる家
平山南骨

 若い頃は二年くらい帰省しなくても平気だったが、ここ十年ほどは実家で年を越すようにしている。本当は、例えば山小屋などで仲間達と新年を迎える方が楽しいに決まっているのだが、齢を重ねるごとに親と過ごす時間が貴重なものに思えて来たのだ。
 実家は古い新興住宅地の北斜面にある。いわゆる逆雛壇だ。入居当初は街区一帯が平屋だったが、今は実家のみとり残される形で悉く二階建にたてかわり、日の当たらぬしょぼくれた家になりはてた。
 土地の購入は父の独断即決だったので、その不手際を事あるごとに母に詰られていた。その父も五月に死に、喪の中に新年を迎える。
 狭く寒い庭にも日が射す頃には鳥たちがやってくる。実に頼りない日差しなのだが、触れるとじんわり温かい。お屠蘇代わりの朝酒とはいくまいが、せめて一合程度の昼酒は許して貰おう。上燗で。


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特集1

生まれてから現在までの代表三句による代表句集2013



 俳句マガジン「100年俳句計画」180号、181号にて募集した「代表句三句」をまとめました。
 各自、生まれてから2012年11月30日までに作った俳句の中から代表句を三句選び、送って頂きました。
 掲載順番はコンピュータでシャッフルし、ランダムにしてあります。
 各コメント中の数字(1.2.3.)はそれぞれ、一句目、二句目、三句目を示しています。



■駝楽(54)
こだわりも箪笥に仕舞えるような春
じじばばとじじばばがいて七五三
しんしんとカヌーは下る月二つ
なかなか代表句を入れ替えることができない、月一俳句の私ですが、継続は力なりで、来年もまたその季節季節に感じたことを切り取って、俳句という形で自分の記憶に残していきたいと思っています。

■桜井教人(54)
水の澄むやうな別れをたつた今
桃冷す四神眠れる野の水に
水打つて関羽の廟に人絶えず
最近気づいたことがある。句は作るのではなく、対象物が作れと語りかけて来てそれを句にさせていただくだけなのだ。もっともほとんどの場合形にすることができず、語りかけて来たものたちに謝ってばかりいる。

■お手玉(77)
水飯かっこみ寄合のどんじりに
谷いくつ越えてぽんぽん鳥飛来
生姜掘る鉄路のきしむ音の中
組長に選んで頂いた三句です。

■浜田節
クレーンのひつかけてゐる鰯雲
腸に父の匂ひや秋の鮎
野を焼いて焼ききれぬもの残りけり
1.マンデーさんと出会いまほろば句会を立ち上げた日。会場に向かう車の中で作った句。やっぱり私にははずせないと思い復活。

■七草(62)
尿瓶の並びてをりぬ秋燈下
阿波をどり隻腕の袖ひるがへり
満ち足りし乳呑児秋を動かざり
去年の夏に松山へ来て、秋に救急入院し、夫だけが頼りの心細い日々。その後、俳句と染めに出会い、少しずつ松山の生活にも慣れ、可愛い孫も誕生したこの一年。人生初めての俳句との日々でもありました。

■更紗(54)
黒南風や舳先に金の女神像
神馬図を三頭翔ける涼しさよ
百年の天井高し夏座敷
築百年過ぎた家の改修やら屋根の葺き替えやらでなかなか大変な年だった。でももう雨漏りにおびえないですむ。雨露をしのげるってありがたいことだとつくづく。

■Blanca(35)
噴水の陽と戯れて子を包む
コツコツと産廃物にたかる蟻
木犀や降って番犬くしゃみする
3.今は亡きポン太に捧げた思い出の一句です……。

■みちる(64)
樹根二千年埋もれて冬の海となる
海桐の実割りて微かに海を嗅ぐ
邯鄲の声を栞に書を閉づる
2012年は「一〇〇年の旗手」を経験させていただき、色々と勉強になりましたが、単独の句で、過去の代表句を凌駕できるところまで行きませんでした。2013年を期します。

■鞠月(35)
ドロシーも魔女も蜜柑を喰う楽屋
牛舎にて止まる漣大夏野
延長コード辿ればクリスマスツリー
句会での評価はともかく、自分らしいと思える句を選んでみました。

■ゆき(64)
斜線引く何万本の果ての春
しゃぼん玉息がたりずに生まれこず
生ぬるき記憶の中の砂糖水
実景ではなく、心象風景を詠みたいと挑戦した句です。しゃぼん玉も砂糖水も深く思い出に残っているものですが。

■元旦(54)
原爆忌死は生よりも永く在り
キヨスクに見出し聳ゆる秋の暮
空にピンホールカメラか朧月
代表句は自分の評価ではなく、まずは人に選ばれた句ではないかと思います。何で?と思う句が選ばれることもあるけど、自分では気づかぬ何かがあるのかもしれません。辛うじて選んでもらった句で総替えです。店主敬白

■蛇頭(56)
流星や音は帰らぬものである
鍵盤に薫風のある黒き指
何処かしらブルース味のりんご飴
チャンヒさんの俳画(大1、小2)に描かれたジャズ句を3本揃えることができた。彼には一生ついていこうと思っている。

■野風(57)
明滅の北辺にまた花林檎
宮内庁をゆるがす濠の藻刈かな
月今宵神事のごとく出汁を引く
2.は一句一遊で、3.はくらむぼんが笑ったで、それぞれ天を頂いた句です。

■山の雪(70)
盲導犬吐く息あらき大暑かな
老猫に一口の水漱石忌
副僧侶仮設の寺の秋彼岸
1.は全盲の先生と一緒に通勤していた盲導犬エフちゃんを思い出して。2.は実家の猫が病院から帰ると家族のみんなにあいさつして水を一口飲んでそれっきり……。3.は昨年の大津波であまりにも多くのものが失われました。

■とりとり(55)
忘れ物です赤ちゃんの春帽子
汗の子のきょうの冒険聞いてやる
ごきぶりでなければ美しい茶色

■だりあ(70)
一人住む母のダリアは赤ばかり
臍の緒の箱に父の字小鳥来る
芒折るは折るは男の意気地とや

■だいあ(9)
との様と天守で食べたいかき氷
ひまわりがさいたら一つお姉さん
ごち走の予感ススキがかざられた
妹のんのがライバルです。

■たかこ(54)
空豆の一つは椅子の下にある
乗れるだけ乗せて日焼の子を送る
軽口を積み上げてゐるレタスかな
最近松山の街を車で流しているとしみじみこの街が好きだなと思います。松山に帰ってきて組長といつき組を知ったからです。

■未々(65)
一輪の桔梗が放つ静かさよ
病む人と見上げる窓や遠花火
乳首吸ふ吾子の瞳や草田男忌
雑誌の購読を始めて1年の初心者です。「ザ・句会」に投句した中で選句していただいた句を3句選びました。

■ひまわり(11)
学校の朝は詩を読む桜の実
海霧見える日本の旗は赤と白
未央柳月をえがくときの色

■あらた(52)
冬晴れやにこりともせず旅立つ子
三寒四温迷ひ迷つてかま玉大
神無月尾長き猫の骨白し
昨年始めて教室で投句した句です。楽しい一年でした。

■烏天狗
我楽多な人生鈴虫と呑む夜
あっけらかんと死ねばあっけらかんと満月
清貧へ羊の毛刈り日和かな

■みゆう(12)
革命の終わり赤い赤いポピー
神様のけんか蟋蟀は鳴くだけ
折り紙は赤冬薔薇の作り方
二〇一二年は、今までとちがう作風の句をつくることが出来ました。

■人日子(66)
探梅や始めてご住職に合ふ
頬被牛の鼻穴開けて去る
田守して空の高さを確かめむ
一句一遊金曜日の句より。

■十亀わら(34)
火を焚きて指さびしがる春祭
椿まで息を止めあう遊びかな
かつて産みし仔かも知れずに水鳥は
火を見ると指をかざしたくなる。透かされるようで怖い気もするが、好きな素材のひとつになった。今年、大切にしたい一句ができればと思う。

■すな恵(46)
その雲を失ひながら秋天は
曼珠沙華かわけば割るる仏かな
雪積もる巣らしきものの名残にも

■柊つばき(64)
あこがれの君と真下に夏の海
物欲を半分捨てた星月夜
おばあちゃん大好きのてがみ冬ざくら
1.は初恋の人です。2.は病気になって思ったこと。3.はいつも末の孫がくれる手紙。

■加根兼光(63)
悲しみはスミレ踏みつけたら終る
沢温む楽器のように鳴らす櫂
遠雷や島が離れてゆく予感
今年は100年俳句計画誌上で「百年百花」を担当させていただいたので久しぶりに3句を新しくしました。さてこれが生涯の代表句と言えるかはさて置き、俳句を始めてちょうど10年になる記念の年でもあるので。

■神楽坂リンダ(61)
目薬は震へて春の日を集む
あすひらく鉄砲百合のごとくゐる
梟の風つよければ高く飛ぶ

■正人(26)
排気筒ふるはせ野焼見てをりぬ
刃を吸うて水蜜桃の輝くよ
千年を経巡りまたとなき虹よ
三句総取替え。自分なりに上出来なのを二つ、今年にしか選べない句を一つチョイス。個人的に昨年は激動ながらも良い年だった。今年も良い一年でありますように。愛と平穏と喜びの人生を!

■逆ベッカム(56)
百舌鳥鳴けばどこまでもどこまでも空
風は椿をささえているのかもしれぬ
鷹鳩と化してイマジン永久に問う
大人コン応募の中から……選んでみました。

■亜桜みかり(51)
落下するやうに桜の空へ鳥
ワタクシノ秋思ノタマゴトリオトス
星静か船首深秋へと傾ぐ
とうとう子育てを卒業し、「象さん句会」など新たな場所での俳句の勉強をさせていただいた年でした。句友の皆さまに感謝です。

■三月(51)
太陽をつつむ涼しき帆を上げよ
暑き夜を小鬼のやうに踊りけり
流星に掲げよアトムの心臓を

■まるにっちゃん(53)
母はただ父と遍路へ出たかった
古傷のひとつ語ろか五月闇
我もまた父の匂ひやタオル拭く
今年は、右肩下がり。来年は頑張ります。

■おむすび(9)
かなしい風車見つけたのは雲
風薫る目ざめよ公園モンスター
シロナガスクジラは小人ボクはリュウ

■八木ふみ(56)
若葉雨碧梧桐句碑なぞりおり
薬降るサナトリウムの雨量計
荷ほどきの新しき空釣忍
今年の句の中から気に入ったものを三句選びました。句作の難しさを感じつつも楽しみながら続けたいと思います。

■亀城(55)
枕木はつめたからずや春のてふ
枇杷の種その光沢を地に返す
コスモスや風にくたびれてゐる俺
これからもよろしくおねがいいたします。

■あねご(57)
法螺貝や瀑布のごとき二の鎖
排水に香る石鹸星月夜
木が枯れるやうに死にたき柿日和
何年か、同じ場面に出くわすたんびにどうにかしたいと思いよったのがやっと十七文字になった二句です。三句目をしみじみ噛みしめる今日この頃です。

■鯛飯(61)
冷そうめん明日ラオスへ発つ人に
耳深きまで十六夜のサキソフォン
小春日の鳥のくちばしから滴

■こぼれ花(64)
長崎の鐘春水の震えけり
さらさらと砂のこぼれて終戦日
どこにでもリア王のいて秋の暮れ
今年は少し心境の変化があり、代表句が変わりました。さて、来年はどうなっているでしょうか。

■もんきち(56)
子規の庭草花多し蚊の多し
うずらの子一人遊びや子規の部屋
炎昼の子規の小庭に涼ありし
今年八月に根岸の子規庵を訪ねました。

■鍛冶屋(47)
豆ごはんあした補助輪外そうか
金床の音爽やかに鎚を振る
軽トラを降りず水見る八月大名
今年は、俳句LIFE復活の年にしたい。

■小木さん(59)
たつたいちまい妻だけに賀状書く
妻の隠れてゐるところ山笑ふ
妻の分まで踏んで行く朴落葉
やっぱり妻ネタの俳句を代表句にしましたよ。昔も今も妻との会話は一方通行であります。定年まであと四ヶ月。「松山永住計画」はままならず。

■ケンケン(41)
学びたき大学院へ入学す
ご神木空へ広がり夏めきぬ
流灯を送り博士を志す
詩歌全般を専門的に勉強したくてネンテンさんのいる佛教大大学院に入学しましたが、今は毎日が楽しくて、私の向学心もどんどん空へ広がって気持ちはずっと夏めいています(笑)。

■西条の針屋さん(51)
水鉢に浮かぶ故郷や夏の月
冬ざれやつまづく猫の膝小僧
夫の背の定年間近冬隣
三句ともいつもお世話になっている「たんぽぽ句会」に出した俳句です。

■磨湧(15)
八さいのわたしとおわかれ夏の雲
霜月のおどかしてくる大きな木
苺ミルク混ぜなぜか今日も無口
それぞれ思い出のある句です。これからもマイペースに俳句をつくっていきたいです。

■理酔(51)
虚ろなる鮫の目玉よ愛国よ
鉄路煌々春夜の握り飯
蛮王の立ち上がるごと虹の立つ

■よひら(45)
歌う子の拳のマイク桃の花
掛けられし閂重く寒椿
冬立つやスコーンと地球を蹴飛ばして
1.8年前4歳だった娘が楽しげに歌っていたのを詠みました。2.母が亡くなった時に何気に詠んだ句です。2013年末に17回忌を迎えます。3.俳句人生8年を迎えようとしています。その転機となりそうな句です。

■なんなん禅師(50)
死の影のさす元旦の午前二時
浄土などいらぬ我には春炬燵
生き延びて鼻毛切りをり五月尽
今年の三句は直球勝負。

■大塚めろ(56)
初詣電車は三拍子で跳ねる
へっという顔で蜻蛉は死してあり
雪はまだ降り来る雪を相容れず
盛夏に「代表句」があったら違う句を選ぶかも……い、いかん、まだまだだ……。

■今比古(55)
菜をあらう母のけはいの障子かな
冬銀河少年兵の腕枕
橋はいつも帰ろうとして麦秋
なんだかなつかしい、でもかわいい胸キュンな、しかも忍者のようにカッコイイ……そんな句をめざしてマス。

■魔心地(42)
その口調ポインセチア色の記憶
ごみ置き場追われカラスは月食べに
銀杏黄落路面電車と旅に出る
今年初参加した象さん句会での数少ないオイラの秀作?(笑)

■さわらび(72)
一切をとどめず元朝の大河
熱帯夜はるかな底を人とバス
赤牛の乳たふたふと冬に入る

■なぎさ(57)
星涼し石は太古に還りたし
花火果て海は吐息を殖やしけり
暮るる海連れて車の中に桃

■樫の木(47)
星座みな涼し鉄鎖に繋がれて
白鳥の鞴のごとく哮りけり
芙蓉の実ひとつが魂の重さ

■都築まとむ(50)
緑へと憑かれたように父登る
雪を聴く塩辛色の補聴器よ
飛花落花朝十二錠夕六錠
今回は父を詠んだ句を並べた。俳句になりやすい人だった。

■なゝ(52)
雛あられのなかに飛行石の欠片
おたがひのからだをつかふ鞦韆に
太刀魚の銀は傷つきやすきいろ
丁寧に心をこめて暮らそうと思います。

■瑞木(49)
近頃は父擁護派や氷頭膾
席ひとつ空けて小春の父と居る
父老いてウサギのやうな心かな

■渡辺瀑(52)
海からの雪優駿の静養舎
虎落笛に雑じりて強き硫黄臭
降りそそぐ木霊や眠き袋角
やっと代表三句に最初から入っていた句を外すことができた。自然詠が中心のこの頃、その景を見た者でないとわからない感動を、上手く伝えられないもどかしさがある。

■空(57)
踏みて来し草に薄荷の混じるらん
秋麗や治水にその名留めたる
見上ぐれば万の蓮の絵冬の廟
一〇〇年の旗手に連載させて頂き、私の俳句人生の記念に残る年になりました。その中の三句です。

■むらさき(74)
踏まれても踏まれてもなほ鼓草
開け放ち潮騒近き夏座敷
星月夜なり屋上の一家族
1.中二の転校の折担任の先生から「これからは人生色々と困難なこともあるかも知れないが道端の雑草の如く強く正しく優しく生きていって下さい」とお別れの言葉を頂きました。先生いつも思い出し種々困難も乗り越へての年月でございます。

■いつき(55)
ことごとく水澄む国の民として
優曇華や日は月を追うことに倦み
アウシュビッツへ蝶はひかりをぬぐ速度
総入れ替えの三句は、2012年の国内外に満ちた不穏から生まれた句。心に澱むものを吐き出せる俳句の恩恵を、今更ながら有り難く思った今年。

■権ちゃん(63)
カタカナの雨が降ります目高の子
ひらがなの風が吹きます花蜜柑
じいちゃんのひざが好きです七五三

■有谷まほろ(36)
新涼や影の下地に塗る紫
桔梗の折鶴ほどに尖るかな
初星や連結解かれゆく列車
幻想的で、感傷的な切なさの中に希望を感じられるような俳句が好きなようです。

■銀猫(38)
繍線菊の下より猫の目の一途
水盤の響く夜猫の舌赤し
鈴音は働く誉れ田掻牛

■めいおう星(54)
牡丹の芽月の臍の緒かも知れぬ
鶯の遠音銀器の曇り初む
赤花水木白花水木金魚病む
自分に潜った密やかな一年でした。この一年の泡沫を無駄にしない年にしたいと思っています。

■杉山久子(46)
かほ洗ふ水の凹凸揚羽来る
糸とんぼ糸のからだをかさねをり
彗星のちかづいてくるヒヤシンス

■ポメロ親父(54)
ラムネしゅわしゅわ赤チンの膝小僧
大関が勝てば花氷を奢る
あまりに暑くて人の形で居られない

■太郎(65)
冬夕焼けリードに絡む犬の影
俄とはかくの如きか冬の雷
人の手の入らぬ野菊の吹かれをり

■おせろ(50)
亡き祖母も現はれ踊る盆踊り
葉脈に力漲る四月かな
よどみなく五の段言えし冷素麺
俳句だと日記より鮮明に記憶に残ると言われ始めた俳句。確かにその時の事が感情まで蘇ります。これからも日記のように自分を綴りたいと思います。これからもよろしくお願いします。

■しんじゅ(57)
男衆の鰯のように戦死した
いりこ干す歯科巡回の船着きぬ
色草やマダムの運ぶ籠の猫
「松山はいく」のガイドとなり2年目、昨年の道後俳句塾での吟行句を入れました。吟行すると俳句が生まれることを実感した一年でした。

■松ぼっくり(72)
厩出し鍵束を追ふ牛馬の眼
神父さまとさよならの朝花ミモザ
山頂の岩へ大の字夏半ば
1.厩出しの風景、2.神父さまの帰国なさる朝、3.私の幸せな一瞬です。今年もどうぞよろしくお願い致します。

■洋子(64)
頑なに時の風待つ芙蓉の実
失恋をちぎってちぎってパセリ食む
一日の家出浅漬大根かな
1.アラ還になると何事にも相応しい時のあることをしみじみ思います。2.へたうま仙人さんに追放されてうれしいやら、悲しいやら……。3.八年の軌跡、八年目の奇跡でした。いつかは天をの夢が叶った一句です♪

■ほろよい(63)
つぶ貝のしっぽのうずにある余寒
無傷とは言えぬ清和のゆでたまご
大花野荷台へ上がる牛の声
いずれも「ぶんぶく句会」で特選を頂いた句です。毎回おいしい料理とお酒を頂いています。

■コナン(63)
満月に吠えろ子犬は豹変す
亀の子を二匹残して店じまい
ライラック小象は砥夢と名付けられ
今年は動物三部作で選んでみました。

■八十八(56)
春雨にぬれて遊んだ日曜日
キャンプの子指より長き軍手かな
松山の冬穏やかや城に立つ
1.小学校六年の時、生まれて初めて作句。卒業文集に掲載2.平成九年しまなみ海道俳句大会で入選3.平成二十一年、NHK松山のご当地俳句(松山城)募集で組長に選ばるる。

■南行ひかる(58)
秋蝶の震へる脚の掴む地よ
かざはなのたがひはふれず地にきゆる
花びらのひとつひとつにくちづけす
現在、俳句からかなり遠ざかってしまっていますが、いずれまた……。

■久乃(27)
命日を忘れてはねる雪うさぎ
シャガールの青き性欲星月夜
ふくろうふくろう頭痛薬の苦き昼
1.今年もらった特選句。2.結婚式句集にのせた句。3.初リフレイン句。

■レモングラス(65)
目印は半世紀経しみもざかな
足守り鈴さらさらとしゃがの花
新豆腐太子屋だものとろけます
春からはじめる歩き遍路に参加。俳句の種をひろいたいと思っているが、下を向いてひたすら歩き前の方達を追うのが精一杯です。

■青柘榴(55)
ゴシックの影連れ歩く大暑なり
草むらの球を総出の夏帽子
冷奴日本一の低き山
入れ替えられる句は、出来ませんでした。

■雪花(61)
筍の溶岩のごと噴きこぼる
決めたのは歯並びでした秋麗
古椅子は尻の形に山眠る
初めて賞金を頂いた句を入れてみました。1年の終わりに代表句を選ぶのは来年に向けて目標が出来ます。今年はもっとじっくり観察できるようになりたいです。

■あき(44)
ゆれてゆれてカーテンは春潮
耳の水こぽんとあふれ原爆忌
鯨さわぐ子どもの夢を聞いた日の

■輝女(63)
梅の山登りて眺む梅の海
海に散る桜は貝になりました
秋天を映して海の碧く碧く
今年は二句入れ替えました。偶然どの句にも海の字が入っていますが、私の好きな句です。

■ともぞう(58)
夏の子ら汚す騒ぐなぜか投げる
二十歳の夏何にでも勝っていた
雪だった尾崎豊をまた歌う
ともぞう心の俳句。

■ふづき(51)
鶯やくれなゐを足す父の供花
鵜へ黒き波寄す全炉停止中
開幕を待つ月代の椅子の千
いろいろなことが重なった二〇一二年。新しい年に幸多かれ。

■KIYOAKI FILM (35)
冬青空アルハチャキーが第一声
コーンスープ出鱈目俳句恥にけり
言葉とはワイルド・ラブズ春の海
俳句は約二十年作っているが、難しい俳句は書けないと知った。シュールとギャグで行きたい思い。

■のんの(7)
日よう日てつぼうさみし春の空
夏の雲坊っちゃん列車せいぞう中
にわとりの足あとみたいもみじはく
お父さん、お姉ちゃんと楽しく俳句作ってます。

■朗善
砂漠より電話くれたる花の夜
男目覚めて蜘蛛の巣の朝を待つ
悲しみのごとし拳の中の雪

■えつの(79)
電線の鳩肩よせる雪あかり
リラの花モンテ・クリスト伯の香だ
さくらんぼスカウトされしころの夫

■州麻子(52)
冬のたんぽぽへ屈みて研修医
出棺す春の雪しづくへ夕日
すすき折る百年前の葬列へ
私の「生まれてから現在までの代表句」とは言えないかもしれないけれど、でも、今年はどうしてもこの三句にしたかったのです。

■すえきち(42)
雄大な山を揺らせし秋桜
叱りつつなほ母の手の温きかな
ブランコを揺らしひたすら母を待つ
1.俳句を始めて最初にできた記念の句です。翠波高原の景色です。2.3.末息子とのことを詠んでます。今、中学3年になりましたが、この句は7、8年前のものです。懐かしい限りです。

■信野(82)
合格す辛夷一輪ましろなり
辛夷咲く二十才の頬の光りいて
母のいてこそ故里よ母の日よ
1.庭に大きな辛夷の木がありました。ある朝一輪だけ大きく咲いたのです。合格通知がきました。昼働いて夜学に行きました孫の。2.きれいでした。振袖を着せてお祝いしました。私の俳句のはじまりです。3.八十二才になりましてまだそう思ふ私です。

■緑の手(57)
コンドルは遙か反戦めいて春
飛ぶ雲を繋ぐさるとりいばらかな
黴の白衣焼かるやジャンヌダルクの如
命をかけて俳句を作っています。ちょっと大げさだけれど、本気で作って命を燃やしています。

■岩宮鯉城(76)
空腹の狼とゐる夏休
朝顔や横綱牛の通る道
遺骨なき被曝の叔父の墓洗ふ
1.24年8月くらむぼんが笑った「天」入選。2.23年12月俳句界奈良文夫選特選。有馬朗人選秀逸。3.23年2月俳句界俳句ボクシング田中陽選チャンピオン。

■チャンヒ(44)
別れたい女と夕焼けを見てる
桜の夜奇異に巨大なのがピアノ
いつだって大蚊は誰かの手先
俳句作家として心掛けていることは、他の誰風でもない、自分独自の主題と文体で俳句を作ること。差しあたり、有季定型口語俳句だからこそ、表現できる世界を模索中。

■無窮花(むぐんふぁ)(44)
早朝の祭祀に添えるいさきかな
寒鯉の目透き通った空を見た
炎昼に父の魂あずけけり

■省三(83)
天空も冷たかるべし山ざくら
山ざくらのこまかきひかり魂しづめ
白梅やひかりのごとき鳥のこゑ
十二月一日で八十四才となる。心身の衰えは如何ともしがたく、新しい句ができないでいる。

■紗蘭(14)
不死鳥の羽より夏の生まれたる
バケットを浸す夕焼けのスープ
春愁を与えた苗は育たない
1.ザ・句会で初めての七点句を取った記念すべき句。2.誕生日に買ったミネストローネを読んだ句。3.理科のレポートの為のいんげん豆の芽が出なかった時に読んだ句。一日一句の大切さを知った一年でした!

■あおい(55)
記念日の新種の薔薇は空の色
原爆忌胸潤してゆく真水
朽ちながら減り行く瓦礫芙蓉の実

■ソラト(52)
ジーザスのごとくスキーの板担ぐ
啓蟄の鱗じみたるエスカレータ
ガソリンをかぶればむせる曼珠沙華
祈りや希望が物事を好転させるなんていう幻想にしがみつくことを誰かのせいにしない程度の自覚。

■一走人(62)
掛け算を孫に雑煮の餅の数
俳句甲子園前夜不夜城のホテル
晴れた日や山の匂いの円座干す
1.帰省俳句で最優秀を頂いた、実感の強い一句です。2.3.一句一遊で「天」を頂いた句です。もちろん円座は購入しました。

■笑松(56)
国若し町に蝿取リボン増ゆ
蓮の実や水豊かなる王の国
名刹の縁起に見ゆる柿のこと
松山から東京に転勤となりましたが、俳句生活二年目を楽しんでいます。初めて一句一遊の「天」と「あんたは俳人」にとっていただきました。

■まっことマンデー(62)
ハーレーのドッドドドドド花の風
夏近し十一匹の母強し
熱気球ぷあぷあと鷹鳩と化す

■蓼蟲(65)
五月雨や四十九日を容赦なし
霜踏めば墓にも薄き霜の華
線香の緩き崩落梅雨に入る
1.早世した義弟の納骨(2008年)。2.急逝した親友Kの三回忌、小諸(2009年)。3.養父を送った(2010年)。

■べんとう(13)
蟒草全治一年の悲しみ
コインの波紋ふるえない泉
吹雪吹雪自由になるため爆破せよ
2012年はほとんど作れなかったので2013年は頑張ります。

■美和(みわ)(50)
日本に鬼の伝説日雷
ヒロシマと片仮名書きをして晩夏
天高し胎動にはや嬰の意思
何をどう詠むのか、これからずっと考えてゆくことでしょう。そして、代表句も亦。

■睡花(48)
片方は神に捧げし袋角
春闘のビラ回し読む昼休み
パラフィン紙かさりと落ちる漱石忌

■山野遊造(72)
ほどほどのあくのをとこやうどもどき
大田螺無骨者にて御座候
三ツ星のレストランから防寒帽
ださい男の自画像です。

■郁(かおる)(53)
もらい湯をした頃あったゆすらんめ
逃げ水や土佐の札所は遠すぎる
胃の腑きしきしと八月の始まりぬ
予想外の事が起きた昨年の夏。句会でこれらの句を選んでもらい、勇気付けられました。

■樹朋(68)
白き蛾の芝生に死せり刈り進む
土叩き土に分け入る穀雨かな
花達の瞬きもせず見つめをり
1.句会で初めて特選を戴いた句です。下五を何度作り直しても納得出来ず、最後は開き直って感情移入することを止めました。蛾の死を、あえて無視することで出来た句です。



俳号一覧


駝楽
桜井教人
お手玉
浜田節
七草
更紗
Blanca
みちる
鞠月
ゆき
元旦
蛇頭
野風
山の雪
とりとり
だりあ
だいあ
たかこ
未々
ひまわり
あらた
烏天狗
みゆう
人日子
十亀わら
すな恵
柊つばき
加根兼光
神楽坂リンダ
正人
逆ベッカム
亜桜みかり
三月
まるにっちゃん
おむすび
八木ふみ
亀城
あねご
鯛飯
こぼれ花
もんきち
鍛冶屋
小木さん
ケンケン
西条の針屋さん
磨湧
理酔
よひら
なんなん禅師
大塚めろ
今比古
魔心地
さわらび
なぎさ
樫の木
都築まとむ
なゝ
瑞木
渡辺瀑

むらさき
いつき
権ちゃん
有谷まほろ
銀猫
めいおう星
杉山久子
ポメロ親父
太郎
おせろ
しんじゅ
松ぼっくり
洋子
ほろよい
コナン
八十八
南行ひかる
久乃
レモングラス
青柘榴
雪花
あき
輝女
ともぞう
ふづき
KIYOAKI FILM
のんの
朗善
えつの
州麻子
すえきち
信野
緑の手
岩宮鯉城
チャンヒ
無窮花(むぐんふぁ)
省三
紗蘭
あおい
ソラト
一走人
笑松
まっことマンデー
蓼蟲
べんとう
美和(みわ)
睡花
山野遊造
郁(かおる)
樹朋


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特集2 全酒類卸 山澤商店 杯

俳句対局龍淵王決定戦 前編



 俳句対局とは、囲碁や将棋の対局戦を模した、一対一の句合わせ対決の句会。10月21日に開催した、トーナメント戦「俳句対局龍淵王決定戦」を開催するまでの経緯とその結果を報告する。
文 キム・チャンヒ


はじめに
 ずいぶん前から、日曜日の午後に放送している、囲碁や将棋の対局のようなことが、俳句で出来ないかと思っていた。俳句甲子園のような団体戦ではなく個人戦で、対戦者は俳句の鑑賞などは一切せず、ひたすら俳句を作り、その俳句の出来を競い合う。対局している俳人たちの姿とその場で生まれた俳句を間近に見ているだけで、十分催しとして成り立つのではないか。
 そこで、ある一定の時間内に相手の俳句の一部を頂き、交互に俳句を作ってゆくという対局を考案。俳句の出来と残り時間の合計によって勝敗を決めることにした。
 ルール作りで一番の問題だったのは、俳句の出来をどのように競うかということ。それを解決したのが、昨年の俳句甲子園で導入した審査システム。詳しい採点基準の説明は昨年の本誌10月号の特集に譲るが、複数の審査員がそれぞれの立場で論理的に一定の基準で点数を付けられるようになった。この点数の付け方を応用すれば、その場で生まれた俳句を順次数値化できる。数値化できれば、時間点と合わせて勝敗を決められる。事前に練習試合をしながら、時間点と俳句点のバランスを調整し、龍淵王決定戦当日に挑んだ。

 ちなみに、「龍淵王」とは、秋の季語「龍淵に潜む」より頂いた。

いよいよ対局
 「俳句対局龍淵王決定戦」に出場した俳人は、烏天狗、加根兼光、瑞木、山澤香奈、蓮睡、渡部州麻子の6名。審査は、NPO法人俳句甲子園実行委員会のメンバーである、板倉卓人、中西淳、夏井いつきの3名が行った。(敬称略)
 約30名のギャラリーの見守る中、初の試み「俳句対局龍淵王決定戦」はスタートした。
 まずはルール説明。
1.先手と後手に分かれて、制限時間6分以内に、それぞれ交互に3句作句する。先手と後手を入れ替えて、再び3句作句する。
2.俳句は相手の前の句から自立語または漢字を一つ以上頂き作句する。
3.自立語を頂く際に、季語をそのまま季語として頂いてはいけない。
4.龍淵王戦なので、使用する季語は秋の季語のみ。
5.対局終了後、残り時間を1分1点として、俳句点(審査員の付けた点の平均点)との合計点が多い方が勝ち。
6.作句のルールから外れた俳句を作ってしまった段階で負け。

 実は、このルールに不備があり、あとで様々な混乱をきたすのだがそれは後ほど。
 くじ引きで対戦組み合わせを決め一回戦の開始。最初の席題の句は、子規の俳句から頂いた。

■1回戦 第1試合
表 先手 蓮睡 × 後手 州麻子
おしろいは妹のものよ俗な花  子
月光を眼にためる妹よ     蓮
眼底を秋風すぎし故郷かな   州
眼底の透き通りたり秋気満つ  蓮
カクテルの海色に透く良夜かな 州
海色に染まる足爪秋立てり   蓮
足跡は明日へつづきぬ草の花  州

 表面が終了し、この段階で俳句点時間点ともに勝っていた州麻子さんが、3点差を付けて折り返し。特に「カクテル……」の句は最高9点を付け、会場をうならせた。

裏 先手 州麻子 × 後手 蓮睡
句を閲すラムプの下や柿二つ  子
野良猫に名前の二つ空澄めり  州
秋気澄む床傷白き神楽殿    蓮

 ここで、「澄む」の字を季語としていただいた蓮睡君が、ルール違反で敗退。あっけない幕切れに、騒然とする会場。今さらだが、蓮睡君の2句目の句「眼底の……」も季語の「秋」がかぶっており、実はこの時点で蓮睡君の負けが決まっていた。

■1回戦 第2試合
先手 兼光 × 後手 瑞木
其人の名もありさうな花野哉  子
名も草も暮の秋へととけはじむ 兼
草の実や重要文化財たる小学校 瑞
小さきは秋の野にある人のこと 兼
秋深し他人と同じ服を着て   瑞

 そしてまたしてもここで、前の句の季語の文字「秋」を、季語として頂いてしまった瑞木さんが、あっけなく敗退。ルールの難しさに戦々恐々とする参加者達。

■1回戦 第3回戦
表 先手 香奈 × 後手 烏天狗
小刀や鉛筆を削り梨を剥く   子
鉛筆のアンパンマンも月も丸  香
鉛玉こめて殺したき奴破れ芭蕉 烏
木の実降るかつて殺陣師であった祖父 香
父の手や皺よりこぼる山葡萄  烏
行く秋の手にカラメルの匂いたる 香
鶏頭やカラメル色の猫の耳   烏

 表面は、俳句点時間点ともに勝った香奈さんが3点差を付け折り返し。

裏 先手 烏天狗 × 後手 香奈
名月や伊予の松山一万戸    子
草の名を問われ見上げる秋の空 烏
問題はそこじゃないんだ濁り酒 香
裏山に獣の気配ましら酒    烏

 ここで、またしても「酒」の文字を季語としていただいてしまった、烏天狗さんの負け。
 即吟とは思えない俳句が表示される度に、会場は歓声で包まれた。しかし、まともに一度も裏面の終わりまでたどり着けないまま一回戦を終えることに、会場は戸惑いを隠せないでいた。果たして、無事に俳句対局を終えることができるのか……。後篇に続く。  


●愛媛新聞 1月3日(木)
「俳句対局・ヘンデス俳談杯」
 現在、愛媛新聞で好評連載中の「ヘンデス俳談」。1月3日(木)の紙面にて、投稿者有志による新年俳句対局ロケの様子を掲載。


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2012年度 第三期 2回目


「根菜」高橋白道

鷹の輪の中に漁協と農協と
ぐづる子の靴の触れたる冬コート
人肌の蜜柑巾着袋から
心臓に耳の届かぬ小鴨かな
カードには強さの違ひ耳袋
根菜に敷く白布や感謝祭
着ぶくれて何時も何かが口の中
食欲の有る風邪ならば大丈夫
三秒以内ならおでん拾ひけり
比較的回る落葉は遠くまで
寒犬の敷居を跨ぐこともなし
襖全開雲龍の真つ二つ


1954年生。愛媛県出身。
生物、特に昆虫が好き。




「金」森川大和

ポポタムス冬の水よりこんなにも
冬木立駱駝の痒いかゆい痒い
蹠見せて伏すカイマンの冬日向
マタマタへ放つ金魚の百の冬
梟が吐息の果てた肺のよう
盛んなる落葉のオランウータン忌
手招きのサンタを真似て猿山中
地を叩く真猿亜目時雨けり
冬猿の手足をかたく閉じて瞑る
羽先を失する紅鶴の白息
大霙仰ぐや象の睫毛の金
獅子失せて枯野へ戻る区画かな


1982年生まれ。第二回俳句甲子園団体優勝、個人最優秀賞。第一句集『ヤマト19』(マルコボ.コム)。愛媛県立松山東高等学校俳句部顧問。




「水鳥」杉山久子

人類のはじめとおはりしぐれけり
ダメ出しの声のりんりん冬木の芽
冬の虫透けし体を土の上
悴みて無用なる詩を愛しをり
スコップの刺さりし砂場クリスマス
水鳥を映して閉づる鏡かな
ご飯炊きたて雪積もりたて
牛すぢのとろんと雪は嵩ふやし
足袋白く明日への道を踏みまよふ
いくたびも廻す地球儀風邪心地
数へ日や猫に嗅がるる微熱の手
去年今年本名知らぬ人あまた


1966年生まれ。第二回芝不器男俳句新人賞。句集『春の柩』、『猫の句も借りたい』『鳥と歩く』。




「冬至南瓜」津田美音

九の段でつまる子の来し亥の子かな
焼芋の熱きうわさが呑み込めぬ
凩の沸騰石になりたがる
ぜんまいもばねも磁石も冬眠す
紅葉ちるちる実直な鋸道よ
パンの耳くだきて十二月八日
枯庭や見知らぬ傘を干しておる
切干の数だけ自慢話かな
携帯も財布もファーも君も邪魔
冬ざれの竹輪の穴の奥の明日
また明日といえる明るさ毛糸編む
思春期の冬至南瓜の硬さかな


香川県さぬき市生まれ。松山市在住20年目。現在小学4年生を受け持つ教員。専門は音楽。
俳号 ピアノフォルテ




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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2013年1月号 〜 2013年3月号 1/3回目)


 未来明るし 香雪蘭

マフラーの踊り子つんと上げる顎
やはやはと崩るる椅子のカーディガン
闇雲の未来明るし日記買ふ
蝶番はずれて平らなる冬日
小きざみに揺るる機内や賀状書く
ポインセチアリボンの色は決めてゐる
放り出すコート足裏のファンダンゴ
ジプシーの血を鎮めたる寝酒かな
凍月や梯子はずしたのは我か
誘はれて行列にゐる二日かな


写真部所属。表紙写真も二年間担当。皮肉屋?と思われるふしもあるが実は「平穏無事」がモットー。現在は、山裾の野生児でいたかったのに突然都会に連れて来られた「狼少年ケン」のような心境。早く森に帰って安穏とした生活に戻りたい……。



 冬を見てゐる 蓼蟲

撞球のぶつかる音や冬来る
止り木の友責めてゐる冷たさよ
ペン軸のひつそり冷ゆる風の夜
鬱憤は三角定規の小さな穴
五合目で冬を見てゐる誰の墓
殺到する冬雲の底死者の街
小雪やさみしいと言ふ母と居る
抽斗の鉄錆匂ふ十二月
枯萩の刈り尽くさるる株白し
空の青冬蝶の翳帰らざる


焦土ノ余燼未ダ燻ブリヤマヌ頃、伊豫ノ國西條ニ生ル。長ジテ東京ニ遊学スルモ学ヲ遠ザケ遊ニ親シム。一勺ノ酒ヲ分ケ合フ友ヲ得ルモ今ヤ亡ク、一日一合ノ酒ト味噌ト少シノ麦酒ヲ友トシ日夜句作ニ呻吟ス。



 丘と谷 ふづき

竜の玉かろかろ墓地に区画線
冬日ひとすぢ野犬についてゆく野犬
犬放つ枯野へラジコン機降下 
たたまれていつか木の葉となる翼
着信の点滅木菟の耳立つ夜
火事遠しシャーレに卵子分裂す
ピペットを極月の血の昇りゆく
クリスマス医局に出前持ちの来る
四人部屋分かつカーテン室の花
荒星の砕け溲瓶に丘と谷


松山生まれの松山育ち。2007年9月土曜カルチャー入門。二匹の飼い猫のせいで我が家はジャングルのように成りはてましたが、困ったときの句材になってくれています。



読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

 「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(俳句の缶づめ等)/推薦者ご自身の俳号(本名)/住所/電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ/FAX/Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、誌上句会インターネット投稿フォームでも受け付けています。(アクセス場所は誌上句会コーナー末を参照してください。)なお、投稿フォームの場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 3月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。


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百年琢磨
先月号の「100年の旗手」に寄せて

取合せの醍醐味 しなだしん

「冬の金魚」 のり茶づけ
片方は陽当たらぬ道石蕗の花
 石蕗の花は冬季の花として目立つ花。「片方は陽当たらぬ道」は冬の日向と日蔭のコントラストを浮き彫りにしている。

水槽に吾が目と冬の金魚かな
 金魚の水槽に顔を近づけると、水槽に己の目が映り込んだのだろう。それにやや驚いた作者かもしれない。「冬の金魚」が心理的な寒さを如実に表している。

凩が五人の客を連れ入り来
 作者は料理屋をされているとのこと。店の戸ががらがらっと開き、凩と共に客が入ってくる。常連の客かもしれない。凩に冷え切った客たちの顔が、店の温かさに触れて緩む。作者ならではの視点の句。


「祈り」 稲穂
立冬の風は鈍色にがよもぎ
 「にがよもぎ」はキク科ヨモギ属の多年草あるいは亜潅木で、独特の臭いがあり、葉や枝を健胃薬、駆虫薬、防虫剤として使う。聖書やチェルノブイリとの関係が言われる他、いわゆるハーブとなる等、話題に事欠かない。「立冬の風は鈍色」というフレーズは「にがよもぎ」によって、にわかに別の意味を語るような気がしてくる。

小太鼓のてととで終る里神楽
 里神楽は、冬に諸社で行われる神楽。小太鼓の音としての「てとと」のオノマトペは絶妙で、余韻がある。

難産の牛の目ん玉冬きざす
 人間に近い十か月という妊娠期間だという牛。安産の牛はいいが、難産の場合は大仕事と聞く。「目ん玉」に焦点を当てたことで真実味に凄みが増した。


「らうらうと」 空
最果ての胡桃の家の子であらん
 「胡桃の家」とは胡桃の木のある家のことだろうか。小説のタイトルのようにも思えるが、それでは季語性に問題がある。解釈の難しい句。それだけに想像が広がる。

奥州の錦木の赤ほどの赤
 単に「錦木」といえば山野に自生するニシキギ科の落葉低木を指し、季語ではその美しい紅葉や実を愛でる。この句は「奥州」を付けたから話がややこしい。いわゆる「奥州錦木伝説」が前面に出てきて、季語性が薄れる。前句も同様、句全体が和歌や旧俳諧の隠喩のようにも思えてくる。

回廊の柱くろぐろ冬の海
 「回廊の柱くろぐろ」のフレーズは俳句では無くはないものだが、季語の「冬の海」で景が広がり、俳句としての格が出た。


しなだしん
1962年新潟県生まれ、新宿区在住。「青山」同人、俳人協会会員。句集に『夜明』『隼の胸』。



読者の感銘句

牛後 「受け取りて冷たき本と手のありぬ」のり茶づけ。本と手は冷たいかもしれないが、心の交流はあたたかそう。読んでほんわかする句でした。「雪虫を解き放ちたる牧の朝」稲穂。きれいな景です。牧の持ち主としては頂かずにはいられません。「琥珀なる一億年の秋思かな」空。私の秋思も琥珀のように閉じこめたいものです。そうすれば、一億年の後には芳しくなっているかも。


*その他お便りは、ブログ『マルコボ通信にて、掲載します。




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 雑詠道場は、「くらむぼんが笑った」か「へたうま仙人」か、どちらかへ3句1セットでの選択投句となります。選が厳しい「くらむぼん」に挑戦するか、必ず一人一句以上選評付きで載る「へたうま仙人」を相手に“巧すぎるのでへたの聖地追放”を目指すか。その選択も楽しんで頂けたらと思います。


雑詠道場 くらむぼんが笑った


夏井いつき選


今月の天
雪はまだ降り来る雪を相容れず 大塚めろ
 しずかな「雪」である。音なく降る「雪」は、尽きることなく天空から湧き出してくる。灰色の小さな影のように降ってくるものもあれば、白くひかる粒のように落ちてくるものもある。そんな雪を飽きずながめる豊かな時間が、この句の前提として在る。
 中空を降ってくる大きな雪片に目がいく。地面にたどり着くまでをじっと見つめる。その目が捉えた発見が「降り来る雪を相容れ」ない「雪」があるという詩的真実だ。すでに地にある「雪」の上に着地した雪片は、その光を異にし、その鮮度を異にする。同じ「雪」と呼ばれるものの秘やかな反発と親和。「雪はまだ」の上五が示唆する短い時間の果てに、やがて「雪」は静かな同化を遂げる。


今月の地
焚火待つ芥の中の唐辛子 朗善
 この手の写生句において、「焚火」と「唐辛子」は季重なりだという類いの批判は無用だ。掃き集められた「芥」の中にある乾いた「唐辛子」に小さな美を感知し、「焚火待つ」というささやかな時間に思いを至らせる心が、俳句という文芸の真髄だ。

火事を見るがらがらスーツケースゆく  えりぶどん
 「火事」の現場の喧噪をよそに、「スーツケース」を「がらがら」引きずっていくのは、旅人か、旅から戻った人物か。「見る」という行為に現れるささやかな好奇心と、「ゆく」という動作から読み取れるあっけらかんとした無関心にリアリティーがある。

霙ふる剛力に貸す女傘 お手玉
 「剛力」とは【力の強い人、登山者の荷物を背負い道案内する人、修験者に従って荷物を運ぶ下男】と3種類の意味がある。どれを採ってもそれなりのドラマが生まれてくる仕掛けを作っているのが、「女傘」の一語。「霙ふる」日のささやかな物語だ。

リンゴ剥くチャーリーブラウン似の夫へ  亜桜みかり
湯上りの林檎かじりて星きれい もね
 林檎二句。前句、可愛くて笑ってしまった。おおよそパッとしない男の子の代名詞のごとき「チャーリーブラウン」。そんな「夫」への愛情表現が「リンゴ剥く」という行為だ。後句、「湯上がり」の渇いた喉をうるおす「林檎」の果汁の冷たさ。「星きれい」の率直な措辞は、まるで愛すべきチャーリーブラウンの台詞のようでもある。

目貼して夜を隔てることとなる ソラト
 「目貼」をして隙間風を防ぐ行為に、別の意味を感知する発想。「夜を隔てることとなる」とは、逆に隔てられてしまった己に気づいたつぶやきでもある。滲み出る疎外感が疼く。

山猫先生に立たされてゐる団栗 緑の手
 宮沢賢治の童話から発想した一句か。「山猫先生」はなかなか厳しい先生。叱られて立たされている「団栗」の周りには、まだまだ言うことをきかない「団栗」たちが元気に騒いでいるに違いない。

干柿や簡単こそが難しい 和音
 なんとシンプルな真理だろう。「干柿」は柿を吊して干すだけの食べ物だが、それを丁寧に仕上げるのは面倒。「簡単こそが難しい」の代表として挙げられた「干柿」は、豊かに色を深めていく。

戦争の膝にいだかれて雑炊 カラ嵩ハル
 破調の一句。「戦争の膝にいだかれて」とは、憲法改正だ国防軍だときな臭い言葉が新聞紙面を賑やかせる情勢への危惧か。湯のように薄い「雑炊」を家族ですすった暗い時代が二重映しとなる。

冬帽をかぶりて母の完成す 未貫
 起きて顔を洗って歯を磨いてパジャマを脱いで服を着替えて、最後にお気に入りの「冬帽」をかぶると「母」の日常の姿が出来上がる。介護する視点の句かと思わせるのは、「完成す」の一語の力か。
寒北斗オペラ聞こゆる運河都市 一心堂
 「寒北斗」が冷たく光る夜空、流れてくる「オペラ」という情景は、「運河都市」という下五を得て息づき始める。縦横に伸びる「運河」を内包する「都市」は、光の海としていま眼下に広がっている。


今月の人(じん)
アトリエの硝子に薄羽草雲雀  ターナー島
湖光りけり足元のきりぎりす
溝蕎麦が咲いて沖ゆく船の笛
ロボットの無音で歩む室の花 大塚めろ
両手に大根やはり飛べそうな気がする
ドロップの欠けて鋭し冬の夕 鞠月
極月や号外朽ちる吹溜まり
石の影石の形に年暮るる 雨月
つりかわのじつと待ちゐる師走かな
顔料の百を眠らせ年暮るる さわらび
いと小さき千代尼の櫛や雪催い
耳たぶの近ごろうすし鶏頭花 すな恵
閉店のマネキンを積む時雨かな
初冬やひらがなすべて美しく 桜井教人
霜降や土佐打刃物求めける
物置は宇宙基地なり星月夜 迂叟
吊るし柿駐在所には誰も居ず
裸婦に在る輪郭線に注す冬日 野風
冬木立乾いて刺さる瓶に筆
嘘の意味美男かずらの色づきぬ 三竜
落葉積もり次第に古びゆく地球
黄落の真中抜け来て日本海 なづな
湯けむりの方へ方へと冬の旅
傷みたる冬薔薇あつめ猫とゐる  神楽坂リンダ
水掻きの葉のごとしづか冬うらら
放牧の牛に冬日の漲れる むらさき
祖母の手の仕草まざまざ寒昴
茶の花や檀家婦人部コーラス隊 不知火
ミュージシャンだった神父と室咲と
階段に時雨の膝をかばいけり ほろよい
紅葉散る画布に乾いてゆく絵の具
神在りの月へと走る寝台車 一心堂
名月を踏んで潰して低気圧 ちろりん
大根引く讃岐に富士の数多あり  逆ベッカム
苔むした枝も焚火の中にあり 朗善
海猫の鳴く浜を抱きて紅葉山 こぼれ花
稲光猫瞬きを忘れたり  青柘榴
甲州の伯母の墓石冷たかり ゆき
ポインセチア色の口紅その口調 魔心地
三匹の猫の序列や日向ぼこ ゆりかもめ
冬の雨独数パズル上級編 権ちゃん
枯枝に微塵の隙も無き真青 みちる
冬の日にかざす魚臭き手の平 一走人
1日だけともだちだった子小雪降る  紅紫
夜鳴きする犬を摩りし冬の星 ぴいす
前略と書き風花の窓を見る 空
白線の内側冬の朝を噛む 犬鈴
寒雷や司祭の捧ぐ銀の杯 樫の木
小春日のロバのパン屋はうるさいぞ  藍人
新郎は3曹新婦は士長冬の虹 さち
大根の白さと痒い土踏まず 実峰
内臓が暴れるほどに初雪白し 磨湧
放り出す足にギプスや日向ぼこ 蓮睡
冬帽子とれば眼下に青き島 八十八
首筋の寒しカレンダー最後 じろ
狐火や平和利用と声高に ソラト
雪晴れてベートーベンの鳴り響く  ぎんなん
十年の闘病日記や除夜の鐘 カシオペア
石鎚の釣瓶落しの下山かな あおい
寝起き悪し浅漬大根辛し辛し  亜桜みかり
半音を低く初冬の塔の鳥 緑の手
自滅せり泡立草の誤算かな コナン
割り算の九九も忘れし木の葉髪 えつの
血圧の折れ線グラフ石蕗日和 浜田節
田へ見合話を捨てにけり 人日子
雨の降る心に薫る金木犀 アンリルカ
山茶花や知らぬ猫来て犬吠えて 北伊作
初しぐれ雨読の耳に心地よし 樹朋
夕しぐれ哲人のごと五位の鷺 哲白
冬泉手でさざ波を立ててみる 省三
埴輪の眼空虚なりけり虎落笛 鯉城
野良猫の歩みを止めず冬の月 まくわ
凩は裏の海行く夜深し レモングラス
冬日さすユニクロの生む聖家族 うに子


今月の並選
冬夕焼潮目と潮目の帯黒し しんじゅ
何事も拒まず人生初御空
冬の灯にならん海峡の慰霊の碑
向かい合う昼餉の園児冬日向 青蛙
一献の頭上膝下に紅葉黄葉
散紅葉雨音つづく静けさよ
新婚の買い物かごの冬苺 空山
檸檬摘む忘れておりし棘のこと
ひび割れにコロスキン塗る勇気かな
振り向くこと許されず冬日輪 今比古
老いた夫ほめてもほめても枯小菊
停止ボタン霜月はふと深化せり
冬麗ら皇帝ダリアせり出せり 八木ふみ
宛先は皇帝ダリアの老夫婦
鳥獣残りが人か蜜柑採る
散りいそぐ頭に肩にもみじかな  エノコロちゃん
きょうもまた喪中葉書の菊の花
しぐるるやあおいけむりのひとすじと
蝋型の尖の脆さや十二月 カラ嵩ハル
寒月や音叉一打ち鉄の弦
冬帽子嬰児の黒目くりくりと 哲白
冬晴の林の温みひとり坐す
三寒四温大慈大悲の観世音 鯉城
広島に海の息づく生の牡蠣
熱燗や一人暮らしを決めし夜 あらた
冬うらら平成生まれと試験受く
銀杏はらはら読経の染みわたる 逆ベッカム
歯の裏にねぎのはりつく子規忌かな
夕暮れて聴く蟷螂の結末 こぼれ花
流星やさらりと嘘の言える歳
一匹の鯛焼に沸く女子句会 ゆき
あの頃の鰭酒ほんに苦かりし
手袋をはずし浦上の丘に立つ 七草
凍て月の世界のふちにつかまりぬ
正座して外見る子ども冬電車 和音
幸せの蜜吸うように牡蠣すする
本年もいただきし柿干せにけり 青柘榴
全て見透かしている皇帝ダリア
散りてなお銀杏黄葉の咲溢る 元旦
はとバスや銀杏落葉の首都ぐるり
父子子子母へと渡る風邪バトン 魔心地
月待つ娘沈む夕日に背を向けて
音もなく落葉の躄る遊歩道 樹朋
かいつぶり土竜叩きのごとく消ゆ
釈迦堂に師の笑顔見る元日草 レモングラス
ざぼんむく土佐の若き日友どちよ
富士の絵のある銭湯や冬に入る 輝女
マフラーを飲み屋に忘れて来たあいつ
大鳥居帰りの太き秋入日 松ぼっくり
七曲がりススキ伝いに登り来し
綿虫や引率の旗シニア塾 ゆりかもめ
気合込め初挑戦の第九かな
潦 地に天頂の冬の月 みちる
冬耕は獣任せや通し土間
秋蝶の懺悔スローなブギを聞け 一走人
ぬくもりを空にかえして冬すみれ
名を呼べばすぐ囚はるる冬の虫 えりぶどん
冬の虹うつつを抜かす尾てい骨
もう何も聞きたくないよ萩の声 Blanca
色違いのちゃんちゃんこ寄り添い掛ける
小雪いま黒いシミとなる友だち 紅紫
焼き芋屋本当の声を出しにけり
窓からのもれし明りや冬来る ぴいす
冬の月夫にささりし棘をぬく
冬の朝皇帝ダリアぬっとでかい 空
冬日和アンパンマンの歌が好き
三寒四温悶々十七音 犬鈴
白鳥の百羽に嘘のまぎれけり
マドンナは言ひ訳上手冬林檎 うに子
マスクでも笑顔とわかる子風を切る
唇に触れれば痛し冬の月 まくわ
手に携帯ゆだね眠れる蒲団かな
宝石は夢のまたゆめ割れ柘榴 お手玉
柊の葉の刺とげにさわりたし
保育士のマスクに描く笑ふ口 樫の木
皇帝ダリア青女に会ひて萎れけり
近道は谷中霊園銀杏降る もね
寒月や引き返せない地雷原
木枯らしや尻の凹みと片えくぼ 藍人
句に切れ字俺に切れ痔や冬すみれ
星の入東風ウエストミンスターの鐘 さち
スカイツリーは江戸の日時計冬に入る
君の嘘見つけた朝の似非マスク 実峰
初雪のニュース南の果てで聞く
豚に真珠美人にマスク 磨湧
午前五時寝起きの大根透き通る
一握をほどき匂へる散もみぢ 蓮睡
掠り筆にほふごとくに初時雨
冬将軍南の庭まで攻めて来し 八十八
蜜柑採る群れるカラスの監視下を
風花や海に明るき森のある じろ
飲んで別れたる五分後の霜夜かな
冬に入る早朝の月白く透け まんぷく
百均のハンドルカバーは夏仕様
冬銀河無菌室にでもいるような ぎんなん
くるくると三拍子に剥き柿を干す
寒空に明るい日差し青い国 ペプチド
あれこれとあってもできない師走かな
九条の密約交わす十三夜 西条の針屋さん
大西風やどこ吹く風の小学生
来る年はきっと良い年山眠る カシオペア
線香上げる二本となりて年の暮
戴帽式仮設学舎新松子 あおい
こどもホスピス色葉掌に舞ふ
ボール追う子等の歓声冬空へ オレンジ日記
集めても後から後へイチヨウ散る
小舟にも波立つ秋の渡しかな コナン
娘てふやつかいな者新米炊く
秋ともし古い日記のすかし入り えつの
炬燵してテラコッタ談義四老人
寒昴男龍馬になりたがる 浜田節
水鳥のもふ朝の日を抱きしめて
新蕎麦や方程式の解けぬまま 人日子
久しぶり家族揃ひて秋刀魚焼く
頑な父との黙契茶が咲けり 省三
肩の力抜けきてゐたり冬ざくら
「ありがとう」は楽しき言葉秋の虹  アンリルカ
美しき精はコスモスより出づる
薀蓄を語りて下手な障子張り ちろりん
ボージョレの薄き染み付く葉書出す
漣や冬鳥啼けど無言の碑 北伊作
俳人を評する俳句冬桜
初しぐれ紅葉もまたしぐれけり 未貫
KARIMOKUの椅子とテーブル文化の日
山頭火それは生きざま雪の嶺 三竜
止まるかに見えて飛び去る冬の蜂 なづな
初デートの小倉を過ぎる暮の旅 むらさき
星岡の水の豊かに冬ざるる 朗善
山茶花の音なく散って留守の家 権ちゃん
百匹の羊絡まり合う霜夜 さわらび
冬の薔薇剪りて深爪後悔す ラジオ体操
菊枕喜寿の翁の力瘤 ほろよい
庭先のたぬきの像や文化の日 権ちゃん
冬ざれの底をバランのへばりつく すな恵
湯を出れば重き身体や冬の月 鞠月
子の声のふいに遠のく小夜時雨 雨月
黄落の軟らかきまま拾ひけり 不知火
遠目には菓子とぞ見ゆる星羽白  神楽坂リンダ
霧氷林抜けてお伽の国に入る 一心堂
冬の月もて形式を疑はず 桜井教人
セントラルパーク斜めに紅葉散る ソラト
焼き芋や印のついた予定表 迂叟
雲に孔のあいてパレット冬ざるる 野風
等身大力士のパネル冬夕焼 亜桜みかり
鳥影の蒼く初冬を旅立ちぬ 緑の手



ちょっくらアドバイス講座

欠航のどよめき消えり冬の雷 七草
 「欠航」が決まったアナウンスのあとの乗客達の「どよめき」がやがて消え、「冬の雷」が轟く。佳い場面を切り取った句ですね。
 が、文法的な問題が一カ所。中七最後の「消えり」の部分、「消え」がヤ行下二段活用の動詞「消ゆ」の連用形、「り」が完了の助動詞「り」の終止形となりますが、ここで問題が発生します。「り」という完了の助動詞は、四段活用の已然形・サ行変格活用の未然形にしか接続できません。「消ゆ」はヤ行下二段活用ですから、接続できない動詞に接続していることになります。
 この場合は、別の完了の助動詞に替えるだけで問題は簡単に解消されます。例えば、完了の助動詞「ぬ」ならば、どの活用の動詞にも接続できますよ。

添削例  欠航のどよめき消えぬ冬の雷 七草


黄落を踏みし女の黒ブーツ 元旦
段々の山に入りし蜜柑摘む ペプチド
 どちらの句にも使われている「し」は過去(あるいは過去完了)の助動詞「き」の連体形です。この助動詞は、過去においてこうであった、という意味を表します。
 前句の場合、「黄落を踏み」という動作は、過去において踏んだことがあると解釈することも可能ではありますが、今、目の前で「ブーツ」が黄色い葉を踏んでいると解釈するのが妥当でしょう。

添削例 黄落を踏みて女の黒ブーツ 元旦

 後句は、過去において「山に入」ったと考えるのは不可解ですから、少なくとも「し」という助動詞はやめるべきです。「段々の山」という表現は段々畑のような形状を述べていると考えられますので、原句に忠実に添削するとすればこんな感じでしょうか。

添削例 段々の山に分け入り蜜柑摘む ペプチド



【雑詠句募集】
投句三句/俳号(本名)/〒住所/電話番号と、「○月末日締切分」を明記して、編集室「くらむぼんが笑った」または「へたうま仙人」宛にお送りください。
締切は毎月末日《必着》です。
※末日を過ぎたものについては、翌月分とさせていただきます。
※ひと月に複数の投句があった場合は、一番最後に届いた投句のみを有効とさせていただきます。同一内容での二重投句はご遠慮ください!
 投句は誌上句会宛のハガキ&メールとは別でお願いします。
雑詠専用Eメールアドレス zatsuei@marukobo.com
インターネットや携帯電話からも投句できます。
http://www.marukobo.com/kuramubon/


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初学道場 へたうま仙人


原案:大塚めろ
文責:編集室

 新しい年が始まりましたのう。去年はどうでしたかのう。「へたうま」の方々は今年も突っ走っておりますぞ。「へたうま」の未来は安泰ぢゃ。やれやれ。今月もどうぞ堪能してくだされ。

兎の野ちっとはわしにかまわんか  KIYOAKIFILM
冬眠や聞く唄全て滑走路  KIYOAKIFILM
去年今年本はいつぱいガスタンク  KIYOAKIFILM
 どうかまっていいのか困惑させる、ヘタウマ界超弩級スターの登場ぢゃ! 意味を破壊して産み出す詩は、ガスタンクの爆発の如き冬眠滑走路ぢゃ?!

小春日やお掃除日より頬被り たっ君
 「り」の脚韻が心地良く小賢しいが、言葉の関連性がわかり易すぎるあたり、ワシ好みのへたうま味ぢゃのう。

七色にクリスマスツリー光っている  どんぐりばば
 そのままの光景ぢゃが、なんのなんの素直な高揚感がびしびし伝わって来るぞ。赤鼻のトナカイも笑っておるぞ。

十二月でも冷房の那覇のバス ケンケン
 全く日本も狭いようで広いのう。堂々たる季重なりと散文臭。わしゃ、うっとりと脳内吟行させてもらったぞ。

野ざらしのコインロッカー俺様は 親タカ
 荒涼とした孤独感がたまらんのう。季語が無いのに冬っぽく見せる技は、昨日や今日のヘタウマではないぞ。

紅葉散る優先順位は決めなはれ 洋子
 今回は三句とも中八ぢゃったぞ。最高に難しい技ぢゃ。特にこの句は「は」の助詞の使い方に唸ったぞ。みごと!

冬近き雲のうねりを鳶の舞う だなえ
 クネクネした語順が、いかにももったいない所がヘタウマの真髄ぢゃ。食えそうで食えない玄人好みの味わい。

生姜掘る男はみんな無口なり 柊つばき
 無口になる理由をぜひ聞きたいぞ。大根や蓮根を掘る男はうるさいのか、そこの所も気になる的ヘタウマぢゃ。

綿虫や万力のある家なんて 小木さん
 綿虫のふわふわ感と万力のごわごわ感、なんて解ったような事は言わんぞ。解らんことは解らん的ヘタウマぢゃ。


以下、全て追放!

過去帳にひとり加へて畳替 未々
 生まれては消えていくのが世の常ぢゃが、「畳替」が悲しいのか快いのか、ちと深過ぎる句は、哲学的追放ぢゃ!

化粧水たっぷりとりて冬ざるる おせろ
 枯れた糸瓜に感謝を忘れない心に感激ぢゃが、冬ざれの風景と真反対の暖かさは苦手。隙間風的追放ぢゃ!

チュニジアの魔除百円冬うらら てん点
 この句の匂い、どこかで嗅いだことあるぞ。こんな強烈な残り香の句は、おしくらまんぢう的異国へ追放ぢゃ!

酒飲みは雪が降るとき酒を飲む  ポメロ親父
 降り止んだら降り止んだで、それを肴にまた飲む事を前提にした句ぢゃな。こんな輩は去年今年的追放ぢゃ!

 新年早々お騒がせをしてしもうた。一旦忘れて穏やかなお正月を迎えてくだされ。ぢゃがくれぐれも、油断は召されても風邪は召されるなよ。


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放歌高吟


宝船
夏井いつき

不眠症の猫に一枚宝船
宝船の波のいささか高かりき
あらたまや放水銃のぴっかぴか
お飾りの吹かれて羊歯の乾きよう
母刀自のいよよ猿めくお元日
おみくじの花咲け花さけお元日
弥栄や蔵に巨大な嫁が君
初夢の怒りは紅の紐か
真っ白な兎の耳にある淑気
あらたまのヨーヨーあがるさがるさがる
学校正門お飾りの蜜柑が取れてる
書初のこれはイタリア語であるか


 新しい年の一月号をお届けする。
 迎える2013年は、マガジン創刊十年目。「もう十年を迎えたか」との感慨に浸る……というよりは、「100年俳句計画の十年がすでに費やされたか」という事実にささやかな驚きを覚える。さらに修正すべきあれこれ、展開したいあれこれを列挙すれば暇がないが、ひとまずは十年を共に歩いてくれた組員句友の皆に感謝し、この十年の成果を言祝ぎたい。

 長年の細い句縁が続いている俳号志賀内サラリーマン氏から、今年も宝船の絵が届いた。白地に赤で描かれた宝船には、七福神やら金銀財宝やら米俵やらが賑やかに積まれている。帆には大きな「宝」の一字、「ながきよのとおのねふりのみなめざめなみのりふねのおとのよきかな」というお決まりの回文和歌も墨痕黒々と書き記されている。
 宝船の絵に添えて、もう一枚解説書が付いているのは、「宝船」がすでに絶滅寸前季語である所以か。「由来について」「絵に添えられている和歌について」という解説項目の他に、「ご利用方法について」ってのがあるのは、サラ金の注意事項みたいでちょっと笑える。「元旦の夜、もしくは二日の夜に、この絵を枕の下にそっと敷いて眠りについて下さい」とのご利用解説もほのぼのと可笑しい。
 七福神は文字通り、神仏の「神」である……かというと、ちと違う。『絶滅寸前季語辞典』を書く時に調べたことがあるのだが、お馴染み布袋さんは中国の仏教で、福禄寿・寿老人は道教。エビス顔の恵比寿さんは日本土着の信仰にして、大黒・毘沙門・弁才はインドのヒンドゥー教。といいつつ、大黒さまなんぞは【シヴァ神の化身マハーカーラ神と日本古来の大国主命の習合】だというのだから、もう何でもかんでも御利益ありそうなものをてんこ盛りしてみた!のが七福神だと思うしかない。が、それもそれで微笑ましい目出度さだ。
 インドも中国も日本もなく、神様たちは笑顔で一つの船に乗り合わせ、私たちに佳い初夢を下さる。国家も社会も家族も人も、さまざまな困難を抱えたまま迎えた2013年だが、私たち俳人の強みは、それもこれも全てを五七五に詠い、おおらかに笑い飛ばし、不屈の心で歩き出せることだ。宝船を囲む波はいささか高いが、マガジン創刊十年目なるあらたまの船出を、共に言祝ぎたい新年である。




夏井いつき公式ブログ「夏井いつきの100年俳句日記」

http://100nenhaiku.marukobo.com/


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新100年への軌跡


第4回


去る人へ 原

スリッパの踵のくぼみ冬銀河
大綿や宇宙船に似た病室
手の中の炎ほうほう青鷹
俯いて俯いてまた風花
白菜やこくこくと薄くなる血液
透明な線路の迫る寒木立
謝罪にはなり得ぬ別れ 冬の月
山茶花に溜まる光もついに落つ
向かいの椅子に蜜柑手は無し
寒菊に黙礼見慣れない喪服
透き通る棺に透き通る小指
線香の煙に揺れろ、室の花
幼子の右手のポインセチア 赤
氷柱には似ても似つかぬ骨の跡
冬桜言い損ねていたさよならを



俳号「原」。愛大俳句研究会所属2回生。短歌歴は4年。俳句歴は1年目。




日 岡戸游士

淡雲のすつかりはやし冬初め
咳けば枕の硬きことを知る
寒すずめ頭重きに飛び立てり
冬水の音なじませて顔洗ふ
枯山に来たりモノラックに憩ふ
翼突き出し冬の鳶旋回す
日の当たるところはすでに冬の山
山より蜜柑畑を仰ぐ
散り散りに固まる草に川涸れず
一天のしろさ枯葎に及ぶ
大鷹の獲物覆へる背の丸し
病床を囲ふマスクにうろたえし
濁流のまましづかなる冬の川
雲ひとつひとつに果てる千鳥さへ
欠伸して伸び伸びきれぬ日向ぼこ


岡戸游士
1993年生まれ。愛媛県松山市中島出身。中学生の時に興味を持ち始めて以来、のんびりと続けています。現在は愛大俳句研究会を中心にのびのびと活動させてもらっています。




透明感 桜井教人

スリッパの踵のくぼみ冬銀河 原
 現実的な踵のくぼみから冬銀河へのワープ感がとても心地よい。この句から始まり「去る人へ」には、透明感を感じる佳句が多かった。
謝罪にはなり得ぬ別れ 冬の月 原
 罪、別れという言葉を使いながらも、実に澄み切った句である。季語の力を信じることにより自分の心を表現することに成功している。
向かいの椅子に蜜柑手は無し 原
寒菊に黙礼見慣れない喪服 原
 この状況においてこれだけ冷静な写実ができるだろうか。静かだからこそ、客観的だからこそより読み手に問いかけるものは深みを増す。
 実によい作品を読ませてもらった。読んでいるうちになぜか涙が零れたのは私だけではないだろう。
冬水の音なじませて顔洗ふ 岡戸游士
 音感、質感のバランスがよく、それを見事に融合させている。冬に顔を洗うのは億劫だが、この句に出会うと洗顔そのものが聖なる儀式のように思えてきた。
濁流のまましづかなる冬の川 岡戸游士
 作者の得意とする写生が生きた句である。「まま」の使い方により静けさがより増している。


1958年生まれ。愛媛県今治市在住。趣味は温泉巡り。全国温泉制覇まであと6県。第3回選評大賞および第4回選評大賞入選。



発見と共感 とりとり

 お二人とも、意欲的に写生をされていて、毎日の生活が見えるようでした。

スリッパの踵のくぼみ冬銀河 原
 スリッパの踵のところ、履いていると凹みますね。そこから深遠なる大宇宙を連想したのでしょうか。あたたかいスリッパと冷たい冬銀河と。ユニークな発想が魅力的でした。

山茶花に溜まる光もついに落つ 原
 こういう、光景の丁寧な描写も良いと思いました。ただ、「光も」は「も」でないほうが力を持つのでは。

咳けば枕の硬きことを知る 岡戸游士
 咳がひどいと頭が持ち上がって、落ちるとき枕を感じますね。この感覚はあるある感満載でした。ただ、「知る」は無くても良いかもしれませんし、この句は破調にしなくても良いかもしれません。

日の当たるところはすでに冬の山 岡戸游士
 日の当たって明るいところを見ると、枯木立になっていて、ああ冬の山なんだと。明るいけれど寒々とした透明な空気が感じられます。


1957年生まれ。三重県在住女性。第1回選評大賞優秀賞。


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Letter from spider garden


ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
松山市在住の世界的チェリスト ナサニエル・ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.9

New flannel-lined jeans
Winter warmth for happy child
May I wear white ones?

冬なのに白いジーンズ毛の裏地

(直訳)
新しいフラノの裏つきジーンズ
子供に優しい冬の温もり
ねえねえ白いの、穿いて行ってもいい(マミー)?


Winter is really here. There is snow in the mountains and our landlord has paid his annual visit to our garden. He is trimming our trees and removing our weeds and it is hard to believe that they will all grow back in the Spring. My barber does the same to my head. They are both artists.

 冬本番。山は雪を冠り、恒例の大家さんによる庭木の剪定の時期が来た。彼は今まさにうちの木を切り、草を刈ってくれてる。信じがたいよ、これぜんぶまた春に元通り生えそろうなんてね!
僕の理髪師も、同じことを僕の頭にする。彼らはどっちも芸術家だ。

訳:朗善



ナサニエル・ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2011年より松山市在住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第22話
「THE IN CROWD」ラムゼイ・ルイス・トリオ

 人日の膝うごきだすジャズピアノ  神楽坂リンダ

 まったくもっておっしゃる通り、と膝を叩いた。こんなにストレートに「ジ・イン・クラウド」が俳句になってしまったら二の句が継げない。元日じゃなく普段着で聴ける季語も、このアルバムにはお似合いだ。
 ビリー・ペイジ作曲のナンバーがタイトルとなったLPレコードを66年度最優秀ジャズレコードのグラミー賞に仕立て上げたのはラムゼイ・ルイス率いるジャズピアノトリオである。大学の仲間がラムゼイを中心にトリオを組みハッピースタイルのジャズを10年間演奏し続けた。彼らは何処へ行っても熱狂的に迎えられた。その頂が65年のボヘミアン・キャバーンズでのライブだった。会場の入り口へ向かう数百人の行列がライブの大成功を予感させた。まるでジャケットの群衆と車の波のように。

手拍子は陽気な楽器春隣 むうん

 「ジ・イン・クラウド」のもう一方の立役者が聴衆である。むうんさんは、そこにスポットを当ててくれた。彼女は、まったくもって痒い所に手が届く俳人なのである。今回の一番人気句。

群衆の中の淑気とジャズの嘘 蛇頭
冬の雷ジャズと決別するために 蛇頭
 まったくもって図々しいのであるが、僕には久々の大漁旗句会だったので蛇頭句を2本揃えた。珍しく不調だったチャンヒさんの枠を貰ったことにしておこう。
 コルトレーンのサウンドに包まれ、その精神性に浸る。黒人排斥派の知事をこき下ろすミンガス・グループのオリジナル・ナンバーに共感しプレイに驚嘆する。ジャズは叫びであり主張であるなんてことになると、もうラムゼイのジャズなんて陳腐に映ってしまう。ましてその後フュージョン界に身を投じた彼からは完全にジャズは消えたと思った。

ラムゼイの“土”の匂いよ落葉焚 マミコン

 しかし、今回改めてラムゼイの音に触れてみて思った。マイルスやハンコックのエレクトリック・サウンドが、どこか大衆を寄せ付けない「謎」を孕ませていたのに対し、ラムゼイは常に大衆の中に居た。その屈託のなさやアーシーさはトリオからフュージョンの時代に至るまで一貫していた。
 72年にコロンビア・レコードに移籍したラムゼイは数々のフュージョン作品を世に送り出す。中でもファンク色の強い74年録音の「太陽の女神」はグラミー賞を受賞した。しかし、僕はその3年後レコーディングされたアルバム「ラブ・ノウツ」に魅力を感じている。A面1曲目「スプリング・ハイ」とB面1曲目「ラブ・ノウツ」はスティービー・ワンダーの作曲で彼はキーボード奏者としてもこのセッションに参加している。




http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


第22話 文/俳句 らくさぶろう

『御慶』
〜上方落語には出来ない!? 〜

あらすじ
 富くじ(宝くじ)にずっとハマッている八五郎という男。
 外れてもあきらめるどころか、「次は」と大金への欲でまた買ってしまう。おかげで商売は放ったらかしで、おかみさんからいくら「まじめに働いておくれ」と言われても聞く耳を持たない。
 年の暮、借金を申し込んでも誰も貸してくれる者もおらず、年越しの金も無いありさま……しかし富くじさえ当たれば全て解決すると信じる八五郎、むりやりおかみさんの半纏をむしり取り、質屋に入れて金に替え、富くじを買いに行く。
 実は夢に出たのが梯子の上に鶴が止まっている様子で、「鶴一八四五」の番号を買おうとしたのだが売り切れで、帰り道で易者にこう言われた。「梯子は下から上に昇るものだから、八四五ではなく逆に“鶴一五四八”にしなさい。」
 買ってみると何と千両の大当たり。現金だと二百両割り引かれるが、二月までは待てないのでその場で八百両を身に着けて家に戻った。
 たまっていた店賃を払って、正月には裃を着て年始回りに出かけることにした。大家さんに相談すると、長い口上は覚えられないので短い言葉を二つ教えてもらった。
 「おめでとうございます」には「御慶」と答え、「どうぞお上がりなさい」には「永日」と断るようにと。
 年も明け、得意になって行く先々で「御慶」「永日」のあいさつをくり返すが、友だちの辰っつぁんが外出から帰ったところで「御慶」と言ったら「何と言ったか分からねえ」と言われ、「ぎょけえったんだ」と言うと
「恵方参りの帰りだ。」



 あー、スミマセン、最後のオチの部分が分かりにくいと思いますが、洒落(酒洛ではありません)オチになっているんです。
 「御慶って言ったんだ」を「どけえったんだ(何処へ行ったんだ)」と聞いたから「恵方参りに」という答えになるのですね。
 ちょっとこれでも分かりにくいオチなのですが、年の瀬から年明けの江戸の庶民の生活が描かれた噺として残っていく噺だと思います。
 大家が八五郎に「御慶」の説明をする際に、
「長松が親の名で来る御慶かな」
「銭湯で裸同士の御慶かな」
という句を例に出しますが、「長松が」の句は「御慶」という季語では代表句といってもいい、江戸前期の俳諧師・志太野坡の作品です。
 オチの言葉が江戸前ですから、この噺だけはどうやっても上方落語には移しにくい。途中はともかく、「御慶」は絶対に変えられないので100%ムリといってもいいでしょう。ま、そこまでムリして移す必要もないと思われます。
 代々柳家小さん系列に伝わる噺ですが、亡き古今亭志ん朝師のこの噺はズバリ“かっこよい”一席だったと記憶しています。
 学生時代、江戸落語を演る者は一度は志ん朝にあこがれ、私の友人もこの噺に果敢に挑戦したのですが、部内で披露した時の反省会で、
「オチがよくわからん」と一蹴され、がっかりしていた顔が今でも忘れられません。
 あいつ、元気かなあ?


寄席小屋の幟の前の御慶かな


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本家慶弔俳句帖 第52回


文 桃ライス

もっと日本を褒めてほしいのよ
 ハワイ出身のルース・ジャーマン・白石さんが書かれた本『日本人が世界に誇れる33のこと』が話題になっている。
 本書は、著者が1987年に初来日し、長年日本の職場で働いてきた日々の経験から感じてきた“日本人のすごさ”について紹介している。
 例えば、「豊かな心をくれる駅に飾ってある生け花」の存在、「クルマのクラクションが鳴る機会が少ない」、「みんなに配れるようにお土産は個数の多いものを用意する」など。日本人にとっては当たり前のようなこと。さらに「簡単にYESを出さない」の項目では、日本人はYESと言うのに時間はかかったとしても、YESと言ったらやり遂げる安心感がある。と褒めたたえている。
 そうなのだ。日本人は最後まで丁寧なのだ。ホームドラマの早朝シーンでよく、チュンチュンと鳥の鳴き声とともに、自転車に乗った新聞配達員が郵便受けに新聞を入れてゆくのをみる。韓国ホームドラマの場合、チュンチュンの鳴き声と自転車に乗った配達員までは同じだか、配達員は自転車に乗ったまま、門の外から庭に向かって勢いよく新聞を投げ込む。弧を描いて飛んでゆく朝刊。最初見たときは「なんて粗末なことを!!」と驚いたが、新聞を毎朝家まで配ってくれる国なんてそうそうない。韓国も日本もすごいのだ。

元日の綺麗に箸をにぎりたる


お巡りさんがパチンコジャラジャラ
 勤務時間中にパチンコを繰り返していたとして、大阪府警は、南署刑事課の男性巡査部長(51)を戒告の懲戒処分にしたと発表した。
 ネット情報によると、巡査部長は今年8月下旬から10月5日までの間、土・日曜日を除いてほぼ毎日のように大阪市中央区内のパチンコ店に通い、勤務中に各日約1〜3時間、遊技をしたとしている。 巡査部長は暴力団事件を担当。「パチンコ店に出入りすれば暴力団情報が取れると思ったがのめり込んでしまった」と話している。別の警察官が捜査中にたまたまパチンコをしている巡査部長を目撃し発覚した。
 この巡査部長さん、会員カードでも作ってはったのかな? カードを入れて、慣れた手つきで暗証番号を打ち込む姿が思い浮かぶ。

初打ちや玉出たたまげた五十歳


桃ライス…自分のことをワシとよぶ婦人グループ会員


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第八回 『ミュージカル楽園』
[劇団スイセイミュージカル公演、作・演出・西田直木、出演・吉田要士、中村香織、他、'12年11月28日、ひめぎんホール(県民文化会館)サブホール]

 1940年代、ハワイ・オアフ島。日系二世の青年・星司はある晩、ハワイアンの少女・レイラーニと出会う。互いに魅かれあう二人。幸せな日々は、しかし、日本軍の真珠湾攻撃によって一変する。時代に翻弄されながら、やがて二人は、悲劇的な結末を迎える……。

夜の虹楽園は君の手の熱さ

 本作を観て気付かされたのは、自分の中で、真珠湾攻撃というのは、例えば、映画で言うなら、「ハワイ・マレー沖海戦」や「トラ・トラ・トラ」あるいは、悪名高き「パール・ハーバー」、いずれにしろ、日本軍や米軍の視点で見ており、恥ずかしながら、ハワイの日系人や、ハワイアンから見た視点というのが、すっぽり抜け落ちていた点です。
 本稿を書くために、少々調べてみたところ、当時のハワイは、島によっては、人口の半分程度が日本人であり、社会が成り立たなくなるため、強制収容も、指導者層など一部にとどめられたほどだったそうです。
 劇中でも描かれていましたが、当時の日系社会の失望、いえ、絶望は如何程のものだったでしょうか。
 勉強不足、というよりは、想像力の問題でしょう。ハワイに、大勢の日系人がいたことは、知っていたはずなのですから。ましてや、ハワイアンに関しては言わずもがなです。
 実のところ、ミュージカルという表現は、少々苦手です。自分から観ることはなかったでしょう。会員制でお芝居を観るということは、出会うはずのないものとも出会えてしまう。それは自分の中の未知なるものと出会える可能性を与えてくれるということなのかもしれません。

風呂吹や季寄せに真珠湾は無く



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。次回公演は表紙裏の広告をご覧ください。



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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第23回 文/写真 暇人

第11回まる裏俳句甲子園直前情報2
 あけましておめでとうございます。このmhm通信、紙面の都合による休載も挟みながらではありますが無事二度目の年越しを迎えることが出来ました。これも読者の皆様のおかげと思っております。今年も宜しくお願いいたします。
 今回お伝えするのは、「まる裏」の翌日1月14日(月・祝)。昨年度の「道後音風景」に引き続き今年度も吟行会を行います。題して「新年吟行会 松山城に遊ぶ」。
 坂の上の雲の主人公たちも駆け回った松山城にて吟行会を開催します。特に遠方よりお越しの皆様には、まる裏俳句甲子園を堪能された翌日、余韻に浸りながら松山を散策し、一句俳句ポストへ投じていただけたらと企画いたしました。
 作った俳句と写真とで制作したスライドショーを、後日インターネット上にアップします。
 当日は松山城ロープウェイ乗り場に集合し、ロープウェイで長者ヶ平まで登り、その後は、筒井門〜太鼓門〜松山城天守閣と徒歩で巡ります。ガイドは、松山はいく事務局の皆さんによるガイドを予定しています。地元の人間でもあまり知らない松山城ネタが聞けるかもしれません。
 2時間ほど吟行をしたら昼食。「すし丸」にて寿司天麩羅膳に舌鼓を打った後は、その場で句会を開催します。それぞれの自慢の吟行句で喜怒哀楽を。15時頃句会解散の予定です。
 さて、この吟行会の参加費ですが、ガイド料・ロープウェイ乗車券・天守閣入場料・そして昼食(アルコール飲料等は別途)込みで、なんと2200円です。皆様のご参加をお待ちしています。
 お申し込みは1月6日(日)までにmhm_info@e-mhm.comへ。
 ところで皆様。Facebookデビューはもうされましたでしょうか? 今年度、mhmではFacebookとの連携を進めていますが、まる裏俳句甲子園でも、Facebookを利用した試みを行います。詳細につきましてはmhmのブログとFacebookにて発表予定です(mhm会員にはメールマガジンでもお知らせします)。
 なお、第11回高校生以外のためのまる裏俳句甲子園は1月13日(日)です。皆様のご参加お待ちしております。


次回は「まる裏」か「吟行会」の報告の予定です。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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金曜日優秀句

一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成24年11月度


【文化の日】
東京駅を見に行く話文化の日 さわらび
議事堂へ向かうハトバス文化の日 灯馬
山頂の石棺光る文化の日 さち
文化の日世界の楽器鳴るラジオ 痛快
放課後の譜面台に影文化の日 ひまわり
文化の日海詰め込みしインク瓶  風花会・山百合
鳥は羽広げて青き文化の日 そも
押しピンの金のくすんで文化の日  マイマイ
ダンボールに屠る蔵書や文化の日  ドクトルバンブー
焚き付けのグラビアの裸婦文化の日  樫の木

《天》
からっぽの十四番壕文化の日  みいみ

【大西風】
大西風に筋状の雲二千キロ ポメロ親父
大西風や魚遡上する河に沿う 藤実
大西風の行く海道に朱き朝 可遊
大西風の殴りつけたる葬の列 お手玉
大西風や法衣の襞のあからさま  亜桜みかり
大西風の窓焼香を目の高さ めろめろ
大西風や月を転がす音らしい 八幡浜発
大西風や濤が研ぎ出す月の蒼 菜々枝
大西風や又三郎は大男 ジャム
大西風や煮え立つ五右衛門風呂の湯気  冬井いつき
大西風や仏画の象の目に狂気  ドクトルバンブー
大西風や鬼の子紛れているらしき あねご
高西風や主無き小屋に影が跳ね 七の字
大西風や豆食いながら人罵る 太郎

《天》
猫甘えさせ酒飲めと大西風が言う  日暮屋

【坂鳥】
坂鳥やここよりは土佐朝の声 ターナー島
坂鳥や木曽路のいまだ闇の底 樫の木
坂鳥やゆんべの星と別れ来よ 朝日
坂鳥の群れ過ぐ月の褪せるまま マイマイ
満月は巨大な瞳坂鳥に 紅紫
坂鳥の峰千体の石仏群 妙
坂鳥の朝の山門開きけり 花菜
坂鳥や早朝ミサに与りぬ 七草
坂鳥や新聞くわたりすべり込む  殻嵩はるお
真っ黒な波を描いて坂鳥来 あやね
坂鳥の万を見送る骸かな 痛快
坂鳥や工都を収むバックミラー だなえ
坂鳥の稗田阿礼の里明けし そも

《天》
坂鳥の転がるように朝の村  流雲

【生姜掘る】
寄り合いは生姜掘り機のスケジュール  ポメロ親父
生姜掘り山のようなる葉の残り もも
畝六つ残して今日の生姜掘り 蕃
生姜掘る昨日の軍手まだ匂う めろめろ
原発へ直線五キロ生姜掘る 風
生姜掘る鉄路の軋む音の中 お手玉
白壁の生薬工場生姜掘る  ドクトルバンブー
生姜掘る補聴器の聞く土の音  風花会・さくら
生姜掘るうどんは釜でゆがきつつ  大洲・山百合
禅の客寺は生姜を掘に行き そも
一畝の生姜を掘りて客迎ふ 不知火

《天》
地下足袋の小鉤色なる生姜掘る  烏天狗

【むささび】
むささびが飛ぶと噂の荒れ寺へ 一村
むささびも朝に帰る寺あらん 渓泉
議案其の一むささびを山に返すこと  冬井いつき
むささびが飛べど動じぬ御神木 鍛冶屋
校庭にむささびの木とて残しけり 樫の木
むささびの声かもしれぬ秘境の湯 甘泉
むささびへ剃刀色の夜は降りぬ ターナー島
友去りぬ千のむささび飛ぶ夜に 笑松
むささびは星の揃うを待っている マイマイ
むささび騒ぐ天狼が近すぎる 菜々枝

《天》
むささびも六代目とや山の寺  蕃


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

1月6日
鶏初めて交む【晩冬/時候】
古代中国における天文学による七十二候のひとつで、二十四節気でいう大寒の初侯。陽暦では、1月20日〜24日頃にあたる。

スケート【晩冬/人事】
氷上を滑走する競技または遊戯のこと。あるいはそのために使用するスケート靴のこと。

1月20日
鰭酒【三冬/人事】
干した河豚の鰭をあぶって焼き焦がし、湯呑みに入れて熱燗の清酒を注いだもの。しばらく蓋をして酒に香味を移す。揮発したアルコールに点火して飲むのが一般的。「河豚」(三冬/動物)の傍題とする場合もある。

雀の巣【三春/動物】
2月中旬〜4月上旬頃、雀は人家の屋根や石垣の隙間、橋の下、樹上などに、枯草や羽毛などで巣を作る。


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100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

テレビ/ラジオ
年始特番(NHKEテレ)
「祝20周年バンザイ! 天才てれびくん」
  1月3日(木)午後12時〜2時
 天才てれびくん20年を振り返るダイジェスト版。1999年に組長がレギュラー出演した「俳句道場」も紹介予定。

NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  1月29日(火)11時40分〜

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「寒鴉・火事」(1月6日〆)
   「息白し・立春」(1月20日〆)
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)・住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム・チャンヒのイラストポストカードが贈られます。



執筆
Pioneer Sound Lab. 音俳句
http://pioneer.jp/soundlab/
  ウェブサイト上に組長の選評が毎日一つ発表されます。投句も受け付けています。

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

東名高速「高速家族」冬号

愛媛新聞
 「集まれ俳句キッズ」毎週土曜日

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「寒椿」締切 … 1月22日(火)

愛媛新聞・新年号
「集まれ俳句キッズ2012年間賞」
「俳句対局ヘンデス杯」
 1月3日(木)掲載


句会ライブ/講演など

今治市吉海支所人権句会ライブ
 1月18日(金)

茨城県吉沢小学校句会ライブ
 1月31日(木)

イベント
1月12日、13日『子規記念博物館での俳句ざんまいの二日間』
 第6回「夏休み句集をつくろう!コンテスト」表彰式
  1月12日(土) 10時〜

 第5回日本俳句教育研究会研究発表大会
  1月12日(土) 13時〜 

 第11回 まる裏俳句甲子園
  1月13日(日)10時〜
  ※チーム参加も受付中!!

 ※14日にはmhm新年吟行会も。


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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

12月第一土曜は大忘年会!
四万十のおいさん 初めての参加です。大忘年会ではお世話になりありがとうございました、今後ともよろしく。
輝女 忘年会とっても楽しかったです! お料理も美味しくておなかいっぱい食べました。でも、おみやげのTシャツには戸惑いました……「いつき組」って書いてあったらそうとうに嬉しかったのに!と思いました。
まとむ 大忘年会お世話になりました。三年ぶりの参加でしたが、同窓会に行ったみたいな気分で楽しかったです。やはり年中行事としてまる裏、俳句甲子園、大忘年会ははずせないなぁ。あっ、お花見もあった。
ターナー島 「大忘年会」初参加でしたが、朗善さんと母上様そして、まっことマンデーさん、亀城さんらと楽しいひとときを過ごせました。信野さんから「あなたの優しい句が大好きで、ファンなんですよ」と言われて思わず赤面してしまいました。いつき組の皆さん、これからもよろしくお願いいたします。
編 12月1日の大忘年会に参加された皆さんからのおたよりを一挙紹介。今回からは事前投句制にして、当日ゆっくり歓談できる時間を増やしました。みなさま、来年もぜひお会いいたしましょう!

選評大賞、ついに最優秀が
すな恵 選評大賞、更紗さん、最優秀賞おめでとうございます!! 拙句への選評、大感激いたしました。また、改めて俳句を読む力の大切さを感じました。私も日々勉強していきたいです。
編 本誌指折りの難企画「選評大賞」。ついに二人目の最優秀賞が誕生しました。優れた成績を残した方々には今後「新・100年への軌跡」などでも選評を執筆していただく予定。

代表句集2013
エノコロちゃん 前略 私、エノコロちゃんとしてやり残したことがありました。それは毎年恒例となっていました一月新年号の「生まれてからこれまでの私の代表三句」に今年は応募しそびれてしまいました。あまりの月日の経つののはやいのと、つい、うっかりで出しそびれてしまい今はただただ悔しい思いがしています。これも歳のせいかなあ〜?? 「来年は、忘れずに、きっと必ず絶対にっ!! 応募するぞぉ〜!!」「おお〜っ!!」ひとりで気合いを入れ直しているところです。また来年もどうぞよろしくおねがいします。早いですがみなさんよいお年を!!
南骨 近頃失速気味で、代表句の入れ替えが出来ずに締め切りを過ぎてしまった。来年は頑張ろう。
編 まさに「今年こそはとおもふことなきにしもあらず」。

暮れの……
洋子 へたうま仙人殿へ。12月号に大追放の名誉句でうれしゅうございましたが、「定まらぬ方位磁石の暮れの……」最後の「秋」が盗れてましたのです。よろしくお願い申し上げます。へたうま仙人チャレンジャー洋子でした。
編 大変失礼をばいたしました。編集の最中に秋が迷子になってしまったようです。申し訳ありません。

「俳句の缶づめ」終刊、そして
更紗 俳句の缶づめが年内終了とのこと、寂しいですが、新たな遊び場ができることを期待しています。俳缶の楽しい仲間とまた会えますように!
編 長らくご愛顧いただいた「俳句の缶づめ」は2012年一杯で終了致します。愛読していただいた皆様、ありがとうございました! 2013年からは形を変えて別のサービスがスタートする予定です。詳細は本誌やブログなどで追ってお知らせしていきますので、今後ともよろしくお願い致します。

百年百花へ感想?
しんじゅ 百年百花どれも素晴らしいです。毎月感激しています。これで600円は安い。
編 テレビショッピングのお姉さんみたい。ジャ●ネットしんじゅ。

「編集後記」へ寄せて
元旦 12月号の編集後記での編集長の言葉が胸に響きます。「新しい号が届いたら一ヶ月前の号の内容が古びてゴミになってしまう俳句雑誌」という言葉に共感しました。何かを創っていくということは、そういう気概を持って臨むのかなと思うのです。何だか武者震いのするような編集長の言葉に、ハートに火をつけられたような気がします。同じことを繰り返したくない。アプローチを変えてみる。そんな気持ちでいたいと思うのであります。うーん、それでこの句かよ、とツッコミ入れられそうですが。
編 「ザ・句会」に寄せられたお便り。そんな折に申し訳ないのですが代表句集収録の為に今月号では「ザ・句会」お休みであります。

2012年の企画を振り返る
人日子 季語付スケジュール帳のお陰で日々充実した生活が送れ「くらむぼんが笑った」への投句も楽に出来ました。来年も是非お願いしたいと思っています。恐縮では御座いますがよろしくお願い致します。
編 2013年は定期購読ご利用の方への特典といたしました。実は大忘年会の参加特典としてカバー付き特別版が配られてたりも。

ぜぶら 去年の企画で一番好きだったのは「ロンドンオリンピック開会式吟行会」。どの国のどの句もステキだけど、緑の丘に吟行句の応援の旗を立てるなら、みゆうさんの旗を持ちたいです。Happy X'mas
編 よくぞあの三時間におよぶハイペース即吟をやりきったものです。参加者みんなよく頑張った!

企画の提案
松ぼっくり マガジンなどで、初級・中級用の添削コーナー(ここを変えればもっとよくなるというような)を設けて頂けないでしょうか? 例えば、毎月10句ほどでもいいと思いますが……。
編 一時期の「雑詠道場番外編・くらむぼんが困った」の拡張版のようなものでしょうか。誌面その他の媒体まで含めれば実現可能性もあるかも?

それぞれの生活
ケンケン 短歌人の私が、故郷の「おきなわ文学賞」俳句部門初応募初佳作を受賞しました。やっとみなさんと同じ土俵に立ったような気がしました。来年からが「俳句元年」です。みなさん、よろしくどうぞ……。
編 象さん句会のアイドル・ケンケンさんの朗報。随分前から俳句元年迎えてる気はするけど。

うに子 あっというまに十二月……今年の年末曜日配列は無情です。
編 1月4日が金曜日なのもビミョー。仕事始めにしても中途半端な……。


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鮎の友釣り

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俳号 久乃

朗善さんへ 熱しやすく冷めやすい人柄にはいつも振り回されつつ怒りつつ、一緒にいてとても楽しいです。

俳号の由来 本名です。

俳句をはじめたきっかけ 地元埼玉の中学で国語の先生が推進していたので、作句する機会はありました。愛媛に来てから、一物仕立ての句に出会って感動して十七音のすごさに惹かれてやってみようかと思いました。
鶏頭の影地に倒れ壁に立つ 林徹

写真 ガイドしたお客さんからもらったプレゼント。

次回…三竜さんへ 前回の高知まほろば句会での俳句は素敵でした。特に、遮断機が下りてきて悔しさを叫ぶ句はかなり好きです。


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告知


mhm新年吟行会松山城に遊ぶ

まる裏俳句甲子園の翌日に開催しております吟行会。昨年に引き続き2回目の開催となります今年は、坂の上の雲の主人公たちも駆け回った松山城にて吟行会を開催します。特に遠方よりお越しの皆様にはまる裏俳句甲子園を堪能された翌日、余韻に浸りながら松山を散策し、一句俳句ポストへ投じていただけたらと企画いたしました。
 作った俳句は写真とあわせて、スライドショーを制作し、後日インターネット上に公開します。

吟行の概要
日程 … 平成25年1月14日(月・祝)
    午前10時〜午後3時
集合 … 松山城ロープウェイ乗り場10時集合(ロープウェイにて移動)
*旅程など、より詳しい内容は38ページmhm通信を参照。

申込締切 … 1月6日(木)
申込先 … FAX【089-906-0695】
 E-mail【mhm_info@e-mhm.com
※お名前、電話番号、Eメール、住所を添えてお送り下さい。




「表があれば裏がある」 キャッチコピー考案・大塚めろ
第11回 高校生以外のためのまる裏俳句甲子園

日時:2013年1月13日(日)13時から本戦
場所:松山市立子規記念博物館
参加費:前売1000円(当日1500円) 観戦のみ500円
主催:まつやま俳句でまちづくりの会
共催:松山市教育委員会
平成24年度『坂の上の雲』フィールドミュージアム活動支援事業




無料インターネット句会本格始動!

 昨年より試験開催しておりました、二つのインターネット句会が、今年から本格始動します。
 どちらの句会も参加費無料。それぞれエントリー開始から定員まで、先着順で参加出来ます。
 多数の参加お待ちしております。

俳句を増産したい方のための
象さん句会
「百年百花」や「100年の旗手」など、本誌に作品集を連載される「俳句を増産したい方」を中心に、毎週5句出しで4週間行う句会です。もちろん一般参加も可能です。

20代のための週末俳句活動句会、略して
週活句会
俳句甲子園出身方や、大学のサークルで俳句をやっている20代の俳人を中心とした句会です。交流の場としても楽しめます。

どちらも2013年1月10日(木)一般募集開始
詳しくはブログマルコボ通信まで
info.marukobo.com




100年俳句計画投稿締切カレンダー

 
 12/31(木) くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 zatsuei@marukobo.com

 1/7(月)
  100年の旗手感想
  魚のアブク

 1/31(木)
 くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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マルコボショッピング


HAIKU LIFE 100年俳句計画
マルコボ.コムオンラインショップ
マガジン化10年目までカウントダウン企画

企画別ワンコインバックナンバー集発売!

本誌は来たる2013年6月号にて、マガジン化してから10年目を迎えます。
そこで、マルコボ.コムオンラインショップにて、10年目までのカウントダウン企画として、バックナンバーのセット販売を行っています。

一物仕立ての定義セット(3冊・発売中)←一物の句を論理的に分類できる、前代未聞の画期的な企画

子どもと俳句を作ろうセット(4冊・発売中)←5歳の子供も俳句が作れますっ!

大連風聞セットA・B(各6冊・発売中)←『子規365日』に掲載されたエッセイのオリジナル。写真も美しい。

俳句で表現しよう!アラカルト(4冊・1月10日発売)←俳句作家に目覚めたあなたに捧げるセット

編集長渾身の企画!(3冊・1月17日発売)←俳句で恋は生まれるか!? 俳人に画力は必要か!?

俳句と句会を楽しむ150ちょっとの方法(3冊・1月24日発売)←ひとりで俳句をでやっている人必読!

まる裏俳句甲子園セットA(4冊・1月31日発売)←まる裏未体験の方は是非

以下、順次発売予定

各セット500円
※但し、合計金額が3000円未満の場合は送料別途

詳しくはマルコボ.コムオンラインショップまで
http://shop.marukobo.com/




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編集後記


 今年の6月号で本誌もマガジン化してから、10年目を迎える。今月号の特集、「生まれてから現在までの代表3句による代表句集」は、初期からある企画だ。
 俳句初心者の方は、嬉々として3句を選ぶことができるが、俳句を始めて何年も経つと、これが難しい。毎年自分の成長を痛いくらいに知らしめる企画でもある。
 過去の自分を越えることの難しさ。個人的には、毎年、どこかの誰かのような俳人ではなく、自分以外の誰でもない俳人になるとはどんなことだろうか、なんて自問自答させる企画でもある。
 同じことが雑誌にも言える。『100年俳句計画』らしい企画とはどんな企画だろうか。恐らく、他の雑誌ではあり得ない、新しい俳句エンターテイメントを提案することもその一つ。
 今月号の特集の龍淵王決定戦はそれを端的に表す企画でもある。
 初の試みで当日かなりばたばたとしたが、企画としてはかなり手応えを感じた。その後、再度ルールを整理し、システムも簡素化して、学生達4人によるトーナメント戦として開催をした。その模様は、1月3日付の愛媛新聞に掲載される。
(キム)


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次号予告 (183号 2月1日発行予定)


次回特集
第6回「夏休み句集を作ろう!コンテスト」結果発表
小・中学生達が40句の句集を作り、装丁を含め応募する作品賞の結果を発表します。最優秀賞作品をはじめ、受賞作品を全て掲載する予定です。


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2013年1月号(No.182)
2013年1月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子