100年俳句計画10月号(no.179)


100年俳句計画10月号(no.179)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
芸術は秋だけじゃなかった 山ぐるぐる


特集
裏側から見た俳句甲子園レポート



好評連載


作品

百年百花
 松本だりあ/きむらけんじ/山澤香奈/桜井教人


100年俳句計画作品集 100年の旗手
 稲穂/空/のり茶づけ

百年琢磨 しなだしん


雑詠道場 くらむぼんが笑った

初学道場 へたうま仙人

放歌高吟/夏井いつき

新100年への軌跡
 俳句/岡戸游士/紺野
 評/桜井教人/とりとり


読み物
私たちの100年俳句計画
Letter from spider garden/ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
本家 慶弔俳句帖/桃ライス
ホンヤクサイホンヤク/翻田訳蔵
一句一遊情報局
句集の本棚

読者のページ
選句&投句欄 ザ・句会
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
くざとも
鮎の友釣り
告知
マルコボショッピング
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー


芸術は秋だけじゃなかった
山ぐるぐる

 今日は新潟の大地の芸術祭に行った。村全体がアートだった。ひとりの作家のこだわりは、たいがいとても小さなこと。でもそこに夢中になると、爆発だ! 人が住まなくなった古民家、子供のいなくなった小学校、そんな忘れられたものにも人の思いは詰まっている。古民家に繭ができていたり、廃校がモグラのお家になったり、校舎が物語絵本になったり「最後の教室」という廃校では心臓の音が鳴り響いていた。おもしろいのは、いろいろな作品を見た後に遭遇する道端の何でもないものがアートに見えてくること。置きっぱなしのドラム缶、軒先に干してある洗濯物……。うちは宿なので、よく写真を撮りにくるお客人に「どこか絵になる場所ありますか?」ときかれる。でもそれはきっとどこだって絵になる、感じる側の思いひとつにかかっている。それって俳句といっしょ! と、あらためて思った。


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特集

裏側から見た俳句甲子園レポート




 今年で十五回を迎えた俳句甲子園は、愛媛県立松山東高校が十一年ぶり二度目の優勝を飾り終了した。高校生が俳句に出合い、高め合う大会として、広く認められつつある。
 本特集では、そんな俳句甲子園を一年を通じて裏側で支えるスタッフのレポートを紹介する。


俳句甲子園裏方日記
吹野公郎(竜胆)

 俳句甲子園実行委員会(一般ボランティア委員会)に関わって丸二年、今年も暑い夏がやってきた。一年かけて準備した全国大会が今始まる。
 第十四回大会終了後、十五回大会の方向が決定し、十月には基本骨格、十一月には年間スケジュールが決定し、私たちの一般ボランティア委員会も新年早々の「まる裏甲子園」から、市民スポンサー募集、募金運動など、具体的な活動が開始となった。
 四月からはボランティア募集を始め、六月には大街道商店街一軒一軒挨拶回りと同時に、全国から集まる高校生のためのランチ・トイレマップを作り、各方面にボランティア応募を働きかけ、七月からは百名を超す応募者への事前説明会を合計三回実施……ようやく待ちに待った本番である。
 さて、全国大会第一日目、心配された天気もどうやら持ちそう。我々スタッフは朝六時四十分に大街道に集合し、長い一日の始まりである。
 七時過ぎからは学校担当のボランティアの受け付けが始まり、担当校、試合会場のアナウンス。去年まで十二種類あったスタッフのポロシャツが、今年から一種類となり、スタッフの受付も非常にスムースに運ぶ。全員受付終了しほっと一息。
 約一時間後、出場する生徒達が続々到着。プラカードを持ったボランティアが出迎えに向かい、試合会場・開会式場への誘導が続く。同時進行でタイムキーパーの受付も始まり、こちらも全員時間内に受付終了。
 その後各会場を回り、リハーサルが始まっていることを確認し、十時十分、ようやく第一試合が始まる。
 この三時間半が、一般ボランティア委員会メンバーの一番緊張し、一番忙しい時間であり、大街道の北の端から南の端へと何度も往復する。まさに体力勝負であり、大学生の若い力がありがたい。
 予選リーグ第一試合、第二試合と進むにつれ、学校担当もタイムキーパーも徐々に慣れてきて、委員会メンバーもようやく気持ちの余裕が出てくる。
 この後、各会場を見回りながら、夕方までボランティアのフォローをして……というつもりでいたのだが、今回、会場責任者が不足ということもあり、十二会場の内の一つK会場の会場責任者を引き受けることになってしまった。
 さて、担当するK会場、すでに準備万端の行司等のOGOBは、安芸南の若狭君はじめみんなしっかり者で心強い。会場のボランティア、タイムキーパーは、いつき組の佐莉さん、松山大の門田君、広島大の寺田君。学校担当は、最高齢の角田さん、昨年に続いて二度目の小田君、今回初めての松山大生四名で合計九名。十代から六十代まで、学生から一般の方まで、俳句をやる人もやらない人も、とにかくこの松山から発信するイベントを成功させようと集まってくれた、理想的な年齢構成、メンバー構成である。
 続いて審査員の先生方の登場。委員長は着流しがトレードマーク、『銀化』の中原先生、次席に『宇宙』の田島先生、そして我らが『いつき組』学級委員長のあねご、高須賀先生である。
 ところで中原先生、K会場に着くなり「今年は暑さ対策を考えてきたぞ」といつものカンカン帽を取り、周りが驚くのを尻目に着流しを脱ぎ始める。「今日はこれでやるよ」とおっしゃるその恰好は、上はグレーのタンクトップ、下は半ズボン!確かに午前中三試合、午後からも二試合をお願いしており、このくらいの対策が必要だろうと周りも納得。
 午前中のK会場は、出場十回目の旭川東高校、出場七回目の飛騨神岡高校、そして初出場の渋川女子高校の三校が、決勝リーグ進出を目指して対戦する。実は、六本木いつきさんをリーダーとする渋川女子高校、今年三月からの「新規参加校電話勧誘作戦」に応えて初参加してくれた高校。文芸部の顧問の先生とは合計五回は電話で話をしただろうか。自分が口説き落としたという思い入れのある学校が偶然にも担当する会場で試合をする。会場責任者としては応援はできないが、個人的には常連校に負けずにがんばれよと心の中で応援。
 いよいよ第一試合開始が迫ったところでトラブル発生。旭川東高校の引率の先生から、生徒一人が体調を崩しまだホテルいる、と聞かされる。続いて飛騨神岡高校の学校担当から、開会式の直前気分が悪くなった生徒を、病院へ搬送する手配中との連絡。選手欠場のため飛騨神岡高校は残念ながら不戦敗となったが、四名でも試合だけは進めることとし、第一試合開始にこぎつけた。
 熱戦の結果午後の決勝トーナメントに勝ち進んだのは、具合の悪かった生徒が試合に間に合った旭川東高校だった。
 この間、各校の句を鑑賞する間もなく、ディベートを楽しむ間もなく、審査員の選評もじっくり聞けず、頭の中はひたすら運営のことばかり。本当はもう少し俳句甲子園を楽しみたかったのだが……。
 午後の決勝リーグに入り、会場の責任からは解放され、夕方の敗者復活戦での学校担当との電話連絡に備える。これも無事に担当校の投句が終わり、後片付けが終了したのは午後六時半、長かった大街道の一日がようやく終了。この後のボランティアの方々との打ち上げのビールは、この夏最高の味だった。
 最後に今大会で感動したシーンを二つ。
 決勝の副将戦、松山東高校の「背景のなき向日葵や爆心地」を、チーム全員がこの句の力を信じてすばらしいディベートを展開し、優勝を引き寄せた瞬間。
 もう一つ、審査委員長講評の最後に有馬先生から「裏で支え、運営してくれている人たちに今から拍手を送りましょう」という言葉に、会場が割れんばかりの拍手に包まれた瞬間。
 第十五回大会は、いろいろなことがある中で、これからもこの活動を続けていくのだろうなという思いを一層強く感じた、自分自身の記念となる大会だった。(了)


質問は議論の起点〜俳句甲子園「評価の観点」について
夏井いつき

 毎月第四木曜日に開催されるNPO法人俳句甲子園実行委員会。その定例会の前週に各小委員会の委員長が集まるリーダー会、さらに先立っての各小委員会と、スタッフの面々は一年中大会開催に向けての活動を続けている。私は昨年まで、広報委員会に所属していたが、今年は審査委員会に移った。この大会の要となる「評価の観点」をさらに改善しておきたいという思いがあっての志望だ。この小委員会の委員長は、板倉卓人さん。NHK「俳句王国」の元司会者といえば、どなたもあの端正な姿と声を思い出すに違いない。
 私たちの試みは、今年一月に開催された「高校生以外の人のためのまる裏俳句甲子園」から始まった。まず取りかかったのは、「作品点」を「技術点」と「芸術点」に分けて評価できないか、という実験。俳句甲子園に勝つために、技術的に難のない句(芸術的魅力の薄い句)を出すチームが増えるとすれば、俳句の未来にとって大いなるマイナス……という危機感からの発想だった。板倉委員長にも、審査員として参加してもらい、私も審査員の一人として実際に体験してみる。
 結果からいえば、うーむ……無理があるなあ、というのが正直な意見。俳句という17音は、技術と芸術をくっきりと分けて評価するにはあまりにも短い。一見、下手そうに見える句の飄々たる魅力を、技術と芸術に分けて瞬時に評価することは至難の業だ。
 よし、それならとさらに立案したのが、今年八月の俳句甲子園本選で使われた新しい「評価の観点」。例えば、「作品点」の6点以上にはこんな文言が挙げられている。

6点… 類想が懸念されたり、句意が読み取り難いきらいはあるが、ひとまず句として成立している。
7点… 作品としての強い魅力があるわけではないが、技術的には可も不可もなく成立している。あるいは、荒削りで難はあるが、発想にみるべき点がある。
8点… 芸術的にも技術的にも、積極的評価ができる。
9点… 8点の要素に加えて、強い芸術的魅力がある。
10点… 歴代の最優秀句に匹敵する秀句である。

 このような形で、技術点と芸術点の考え方を「評価の観点」として取り入れてみた。実際にこの評価基準を使った審査員の声は、「分かりやすかった」「評価の軸をブレさせないための指標となった」等、概ね良好。満点の評価となる10点に関しては、色々議論もあったが、俳句甲子園という場での満点なのだから「歴代の最優秀句に匹敵する秀句」を基準とするのが妥当ではないか、という意見に落ち着いてきた。
 もう一つの評価となるのが鑑賞力。「鑑賞点」は、どちらかのチームにのみ1〜3点を入れるというシステムだ。
 例えばこんなケースを考えてみよう。

 「作品点」 赤8点 白6点
 「鑑賞点」     白3点
  合計  赤8点 白9点 

 作品点の8点「芸術的にも技術的にも、積極的評価ができる」句が、6点「類想が懸念されたり、句意が読み取り難いきらいはあるが、ひとまず句として成立している」句に負けるということは、鑑賞の上でよっぽどの差がある場合でないと認めがたい。なぜなら、俳句甲子園はあくまでも作品が優先されるべきで、下手な作品を議論で言い負かせば勝てる大会であっては断じてならないからだ。
 となると、作品点2点差をひっくり返してでも勝つ鑑賞点3点とは「相手チームが全く発言できないまま、自チームの句の鑑賞、相手チームの句の改善点の指摘、さらに相手チームの句の鑑賞を見事に展開した」ぐらいの圧倒的状況でなくては納得できない。このような考え方を積み上げつつさらに議論し、文言を練り、次大会までには「評価の観点」を完成させる予定だ。

 俳句甲子園での質疑応答に関して、未だにさまざまな意見はある。今年もご多聞に漏れず、「悪口を言い合ってる」的書き込みがネット上でも散見したと聞く。
 俳句甲子園で交わされる議論は、「より良い作品にするための作り変えの提案」だ。例えば、「作品点」6点7点の句だと、さまざまな改善点が議論される。「句意が読み取りにくいのは、下五の動詞の選択に問題があるのではありませんか」「一句にみえる因果関係が、作品の魅力を削いでいないでしょうか」といった指摘が飛び交う議論だ。
 が、8点9点10点の句となると、指摘できる改善点はどんどん少なくなる。同じ質問を延々と繰り返すのは、相手の句に改善点を発見できないケース。堂々巡りが始まり、議論は停滞する。
 相手チームが秀句を出してきた場合、質問は次の段階にシフトするしかない。この場合の良い例が、敗者復活戦で審査員が各チームの代表者に投げかける質問だ。「上五の切字『や』の効果はいかがですか」「傍題を使った意図について教えて下さい」といった、試験の設問形式だ。
 「ええー?!そんな質問したら、相手にアシストするようなもんじゃないですか」「やっぱり勝ちたいから、その手の質問はしたくないですよ」と言う人がいる。喩えていうならば、それらの発言は、内角も外角も高めも低めもどこでも打てる強打者を前に「投げると打たれるから投げたくない」と言ってるようなものだ。
 相手は鉄壁の秀句、問い掛けるべき改善点も見つからない。ならば、小さな質問で揺すってみるしかない。万に一つ、投げた質問に対して、「よくぞ訊いて下さいました」と語ったその内容に綻びや矛盾がでてくるかもしれない。相手チームが語り上げた鑑賞よりもさらに魅力的な読みに自チームの誰かが思い至る可能性だってある。ここは一か八か、投げてみるしかないのだ。
 矢のような質問が飛び交うのは、俳句甲子園の表舞台だけではない。十三人の審査員長が集まっての個人賞審査会。「この句の『眩し』は言い過ぎていませんか?」「『飛ぶ』という動詞がないのに、飛魚だと読めますか?」 最優秀賞候補が、さらに数句に絞られてくると、こんな言葉も出てくる。「敢えての質問なんですが」と小澤實さん、「議論を深める意味での質問だけどね」と高野ムツオさん。これらは全て、佳句を探し当てる作業として投げられる質問だ。俳句を愛する者同士、質の高い議論を交わした後の爽快感は、俳句甲子園の舞台上、勝者敗者ともに握手し健闘を讃え合う高校生たちの姿に重なる。

 質問とは、議論の起点である。
 教育現場としての俳句甲子園が意図する「言葉を楽しむ」ことの一つに「議論を楽しむ」という観点がある。佳き仲間と交わす質の高い議論は楽しい。それを聴く観客も楽しい。評価する審査員も楽しい。上質の「議論する力」を育てることによって得るものは無限だ。それを追求するための第一歩は、俳句を愛する気持ちから発せられる一つの「質問」から始まるのだ。


子どもたちが俳句甲子園を体験! 伊予銀行プレゼンツ「チャレンジ俳句甲子園」
三瀬明子

 俳句甲子園の熱戦が繰り広げられている傍らでもう一つの戦いがあった。子どもを一人以上含む3人一組の混成チームが、高校生と同じ試合形式で戦う模擬試合「チャレンジ俳句甲子園」だ。チャレンジしてくれたのは4チーム。ほろよい一家(なおき・小6/あやね・中2/ほろよい・大人)、トリプルK(建太朗・小4/孝樹・小4/安希子・大人)、ミックスジュース2(唯・小4/安理・小5/未悠・小6)、りんどうのうた(詩・小4/りんたろう・小5/道楽・小6)。句会ライブでの活躍めざましい子どもたち揃いだ。
 予選リーグが終了したK会場。高校生と同じ兼題「雲の峰」「涼し」で全3試合行われた。第1試合は、ほろよい一家vsトリプルK。子どもたちの発言を促し見守る大人二人の優しさが心にしみる試合だった。第2試合は、ミックスジュース2vsりんどうのうた。小学生対決にギャラリーも興味津々。ところがそんな観衆の予想を超える舌戦と鑑賞が繰り広げられ、会場は拍手と歓声に包まれた。最終的には、句歴・作品力ともに優勝候補だったほろよい一家の勝利。最優秀句は、ディベート王子・道楽くんの一句となった。
 子どもたちは大人が思う以上に作句力や語る力を秘めている。このイベントが、そんな子どもたちの背中を押すきっかけとなり、いつか俳句甲子園本戦を目指してくれるような、そんなイベントに育っていけば嬉しい。

■出場者全員の「雲の峰」句
恐竜の大腿骨や雲の峰 なおき
雲の峰剣道場の格子窓 あやね
雲の峰宇宙に浮かぶ「きぼう」棟 ほろよい
雲の峰鬼もおさめる勇者かな 孝樹
ラスト一秒シュートすいこめ雲の峰 建太朗
大筆をくい込み弾かせ雲の峰 安希子
貝殻が吹き出している雲の峰 未悠
城山で手をのばしたよ雲の峰 唯
雲の峰届かない夢はない 安理
現実を知らぬ男や雲の峰 りんたろう
トランポリンやってみたいな雲の峰 詩
城に立つ夢をいだきて雲の峰 道楽


第15回俳句甲子園結果

優勝  愛媛県立松山東高等学校

準優勝 開成高校

最優秀句
月眩しプールの底に触れてきて
開成高等学校 佐藤雄志



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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2012年度 第二期 3回目


「金の翅」松本だりあ

水運ぶ晩夏の蜂の金の翅
濯ぎもの白し八月十五日
大釘に吊られ残暑のフライパン
新涼やバーバー藤野のヘアトニック
大鬼蓮の花たたまれてゆく秋の日
壺の底の塩使ひきる厄日かな
せはしきは寡黙なる指大根蒔く
大き手を逃れ飛蝗の振り向かず
秋の鵜の喉のふるふる小屋に棲み
舟の綱曳く少年の秋の浜
反り返る人形遣ひの秋思かな
誰かさんの繰りごと秋の雨だれは


1942年生まれ。双子座。
句集『ダリア』(編集アトリエ まる工房)。




「丘に登る」きむらけんじ

几帳面の人泣く白いハンカチ
草原へつづく蒙古斑撫でてやる
周回遅れになる君に空高すぎる
丘に登る地平線まで三日半
ねこじゃらしのおいでおいでに騙される
悠々小銭数える女いてレジの列
嘘つく女の歯並び美し
不幸なのか爪割れているし
相席とは他人とめし食うことか
緊張の喉にひよこまんじゅうは無理
鹿にせんべい盗られて奈良が嫌いに
また遅刻おそ松くんなら許してやるが


1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。
自由律俳句結社「層雲」同人。句集『鍵の穴』(文芸社)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)、『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)。特技・妄想、泥酔。




「本能」山澤香奈

秋暑くして公園は遠きもの
ペットボトルガツガツ潰す秋の昼
月美しく走りたき衝動よ
軽トラの荷台の蟷螂の行方
子の何か歌っているらしき花野
いもうとのことばがわかる兄と鶉
水澄んで水愛している本能
台風一過弁当箱の乾きたる
糸瓜忌の銀行に押す判二つ
足裏にぶどうの皮のぺっしゃんこ
鰯雲今日も怒鳴ってしまったよ
夜半の秋アイロンいつも静かなる


1983年生まれ。愛媛県の岩城島出身。子育て奮闘中。息子の幼稚園のお陰で、久しぶりにお弁当作りに精を出す日々です。




「ひたにまつ」桜井教人

小さき罪あり陵(みささぎ)をつくつくし
斉明天皇(さいめい)の世や秋雷の異形石
一族の滅びし丘を葛嵐
猿顔の石秋麗の呪符として
秋蝉を来て月曜は休館日
初萩の宮趾に孔球(ゴルフ)禁止令
虫吹くや白鳳美女のふくれつ面
鐘楼の帰燕の糞を掃き固む
星宿(せいしゅく)の石の広場や秋茜
盗掘の穴や良夜をひたにまつ
星月夜万葉硝子工房痕
桃冷す四神眠れる野の水に


1958年生まれ。愛媛県出身。「日本俳句教育研究会」会員。




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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2012年10月号 〜 2012年12月号 1/3回目)


 水の熱 稲穂

あつちやんは子牛の名前秋麗
鉈豆のぶつきらばうに生きてみる
厄日来る猿候橋を渡り来る
毛見人のどぶどぶ歩み入る田靴
稲熱田の手首で測る水の熱
夜田刈おんびきさんが飛び込んだ
蚯蚓鳴くヒロシマ日記に引く朱線
月渡る被爆瓦の眠る川
この星は百億匹の蟲の国
ヒロシマの水の記憶のやうな月


食育の種まき職人がいつの間にやら俳句の種まき『季語のおじさん』へ。気がつけば広島へ強制移住。現在は絶滅寸前季語『毛見人』を隠れ蓑?に、広島高校三年連続俳句甲子園出場に向け『俳句甲子園養成ギプス』着装中。



 秋麗 空

分庁や秋の向日葵咲きやまず
踏みて来し草に薄荷の混じるらん
空も風も映して小さき秋の水
初秋のサイダー瓶の仙人草
時速百キロぶっ飛んで秋野
ビジネス手帳へ流星群の日を記す
ステージの秋草ソプラノ歌手を待つ
花びらを吹いて片寄す菊の酒
お鈴の音水澄む音と聞きなして
秋麗や治水にその名留めたる


東京の巣鴨生まれ。大学で知り合った夫のふるさと愛媛に来て30年。花の種苗会社勤務、花の生産を経て、今は花屋を経営しています。でも、本当は栽培もせず、売買もせず、道端の花を見て「まあ、きれい。」というのが好き。



 良夜 のり茶づけ

先頭のやがて分からぬ踊りの輪
旅の宿月光掴む左の手
秋の山リュックの中から出すリュック
走ればどくどくどく龍淵に
秋晴に干せば家族のにおいかな
立ち上るコスモス母の底力
開店が釣瓶落としに間に合わず
にごり酒結局許すという話
虫の音の上に仕舞いの布巾干す
灯を消して良夜と気付く流し台


松山の片隅で食堂(飲み屋)の女将をしています。知っていますか? 女将って結構孤独な稼業です。俳句と知り合ってから人生楽しくなりました。だからこれからもマイペースでこつこつと……。



読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

 「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(俳句の缶づめ等)/推薦者ご自身の俳号(本名)/住所/電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ/FAX/Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、誌上句会インターネット投稿フォームでも受け付けています。(アクセス場所は誌上句会コーナー末を参照してください。)なお、投稿フォームの場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 9月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。



百年琢磨
先月号の「100年の旗手」に寄せて

意外性からの詩心 しなだしん

「うぶ声」 ターナー島
沖を見しあと半眼の羽抜け鳥
 俳句は当然のことながら頭から読んでゆき、言葉を理解してゆく。この句は頭から読んでゆくと「沖を見しあと半眼の」までは人間(作者)の事と脳が勝手に理解する。だが最後に「羽抜け鳥」と種明しされる。そのギャップが心地いい。人間のようなしぐさの羽抜鳥の様子におかしみがあり、「沖」と「半眼」に技がある。

夜濯ぎの水ひびかせて母郷なり
 「母郷」という言葉は実は辞書にない。俳句独特の表現かもしれない。母方の故郷、または古里の想いを強める意味で使われていることが多いようだ。帰省していて「夜濯」をするという状況に意外性があり、逆に真実味も呼ぶ。「夜濯」という雑然とした日常と「母郷」という甘美な言葉の取合せに味がある。


「贄」 まりん
箱庭に月おきたくて待つ夕べ
夕かなかな少し細めるカレーの火
 「つぶやけば俳句」とは過日亡くなった今井杏太郎氏の言葉だ。掲出の二句はいつも「楽しく元気」という作者の、別な一面が窺える。一句目の「箱庭に月を置く」という俳句的発想は他にも無くはないように思う。だが俳句では省略されがちな「たくて待つ」という、この願望的行動が作者独特の「つぶやき」になっており、それが実はこの句の主眼になっているように思う。二句目の「少し」も、図らずも置いた言葉にも見えるが、ここにも作者のふとした夕暮れ時の吐露が漂っている。


「着陸機」 大五郎
乾きたる轍に乾きたる蚯蚓
 蚯蚓の行動は月齢と関係がある、という説があるようだが、その行動の大部分は未解明のようだ。古い轍は蚯蚓にとって果てしない丘を進むようなものかもしれない。蚯蚓はなぜ、その丘をゆくのだろうか。蚯蚓は己がもう乾びて死んでいることにまだ気がついていないのかもしれない。掲出句は二つの物を並べただけだが、どうしようもない渇水感が残る。

消毒液沁みる右膝墓参り
 この傷の膝は作者のものか、あるいは墓参に同行の、やんちゃ盛りの子供たちの膝だろうか。いずれにしても大いに遊んだ日の夕暮れ、一家の少し神妙な墓参の情景が想像される。膝の「傷」と直接表わさず、「消毒液」という道具が象徴的に使われている。


しなだしん
1962年新潟県生まれ、新宿区在住。「青山(せいざん)」同人、俳人協会会員。句集に『夜明』『隼の胸』。



読者の感銘句

亜桜みかり 「うぶ声を待つ月の夜の膝がしら」ターナー島。「天職は母であること西瓜切る」まりん。「言ひ訳のやうにこはれる蝉の殻」大五郎。

三月 3ヶ月楽しませて頂きました。「うぶ声を待つ月の夜の膝がしら」ターナー島。「原爆忌色あるものを贄として」まりん。「着陸機大西日より生まれけり」大五郎。



選評大賞2012 作品募集

今年で第六回目を迎えます、選評大賞2012のお知らせです。
選句の対象となる句は本誌2011年10月号〜2012年9月号の「100年の旗手」掲載句。詳しい要項は告知ページをご覧下さい。




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 雑詠道場は、「くらむぼんが笑った」か「へたうま仙人」か、どちらかへ3句1セットでの選択投句となります。選が厳しい「くらむぼん」に挑戦するか、必ず一人一句以上選評付きで載る「へたうま仙人」を相手に“巧すぎるのでへたの聖地追放”を目指すか。その選択も楽しんで頂けたらと思います。


雑詠道場 くらむぼんが笑った


夏井いつき選


今月の天
ダンサーの足裏黒し台風圏 みちる
 躍動的に優美にあるいは官能的に踊り始めた「ダンサー」。何かの拍子にその「足裏」が黒く汚れていることに気づいた作者の意識は、そこから離れられなくなる。踊りを楽しもう没頭しようとすればするほど、「足裏」の汚れを己の目が勝手に追ってしまうのだ。
 もとより「ダンサー」の種類を、モダンダンサーだ、バレエダンサーだ、ヌードダンサーだと特定する必要はない。「ダンサー」を追い続ける目と、近づきつつある「台風」。下五に出現する季語は、単に「台風圏」に入っているという事実を述べるだけでなく、「ダンサー」の汚れた「足裏」の動きに不穏なイメージを重ね、「台風圏」という暗く巨大なドームが作者の頭上を黒々と覆う。


今月の地
夏痩て崖下りゆく山羊のごと 朗善
 なぜか「サムサノナツハオロオロアルキ」という宮沢賢治の詩の一節が浮かんできた。「夏痩」た己の身を、おろおろとした足つきで「崖」を下る「山羊」のようだと比喩する作者の感覚に脱帽する。

八月のピアノは深き水をたたえ 樫の木
 「ピアノ」という黒い器に湛えられる「深き水」とは、重厚な音のイメージか。上五「八月の」は、「ピアノ」にかかるようでもあり「深き水」にかかるようでもあり。そこに湛えられているのは、生と死をおもう「八月」の深き鎮魂歌か。

冷房の通奏低音戦記読む 哲白
 「通奏低音」とは「バロック音楽の演奏における伴奏の低音部」あるいは「常に底流としてある、考えや主張のたとえ」を意味するのだそうな。「冷房」の低い唸りを「通奏低音」だと聴く比喩の感覚、その音を聴きつつ読んでいるのは「戦記」であるよ、という取り合わせの感覚。それぞれのイメージが複雑に絡み合う一句。

炎天のとつぱずれなりわが小家 省三
 「炎天」の下を歩いて戻ってきた作者の実感か、あるいは作者の家を訪れた客への措辞か。「とつぱずれなり」という断定が、「わが小家(こいえ)」の佇まいを彷彿とさせる。

家出するなら秋の日のトロッコで なゝ
 もし私が「家出する」としたら「秋の日のトロッコ」がいいな、なんて言ってる人は、結局のところ家出なんかしないまま窓辺でずーっとそんな「秋の日」を夢想し続けるだけなんだろう。切れのない型が、作者のぐるぐると回り続ける思いを示唆して。

ガソリンをかぶればむせる曼珠沙華  ソラト
 一読、ギョッとする。我が身が「曼珠沙華」となり、頭から「ガソリン」を掛けられたかのような生々しい詩的追体験。「むせる」という動詞の選択が一句の成否を決定づけ、「ガソリン」の強烈な臭いと「曼珠沙華」の赤が読者の嗅覚と視覚を刺激する。

荊棘線に鳩とまりをる終戦日  あらた
 「荊棘線(ばらせん)」とは「有刺鉄線」の俗称。棘のある鉄線にとまっている「鳩」は平和の象徴とされる鳥。偶々出くわしたささやかな光景に「終戦日」の思いを感知するのが俳人のアンテナだ。

故郷喪失金ぶん街灯に焼かれ 大中博篤
 「故郷喪失」という重い上五。戦火や津波、原発問題等なんらかの外部的要因による喪失もあれば、作者の個人的事情や心理的喪失もあるだろう。「街灯」に焼かれ、暴れる「金ぶん」を見上げる、作者の眼孔が暗く揺れる。

処暑の日の猫の寝相のあんまりな 灯馬
 「処暑」とは8月23日ごろ。暑さが落ち着き始める頃なのに、それにしても「猫」よ、その「寝相」はあんまりというものではないか。「猫の寝相のあんまりな」という愛猫家のつぶやきが、リアルにして可笑しい。


今月の人(じん)
盆の月往きて首輪の残りけり 逆ベッカム
からだつめたくなってゆく向日葵のうつむく 
流星の尻尾揺らしてるのは誰 依里
秋思ポキンとコーヒーカップの中
大敗を伝へるニュース凌霄花 亜桜みかり
キッチンの出窓や夜の枇杷熟るる
城塁の欅三本野分だつ みちる
夕暮は掠れ声なる花カンナ
カンナカンナ診察台にひらく脚 ふづき
独学や夜長を茶葉の沈みゆく
○付けて今日の始まり生身魂 洋子
カンナカンナ多田さんのレジが好きです
秋澄むや山路にひょいと鳩の貌 てん点
虫の音や百年廻る椅子の艶
悲しみは月に透く貝の薄片 樫の木
チェロは並ぶや秋麗の貌をして
夜風にも風の道あり唐辛子 神楽坂リンダ
金風やバターのかをるパンの中空
水槽の魚腐乱し夏終る ふーみん
鈴虫のこだます半身浴の夜
野良猫のぎざぎざ花野よこ切れば すな恵
汗にゐて歯医者の声が聞きとれぬ
かなかなや少年院の面会所 浜田節
キレンゲショウマ一本道を迷ひけり
無花果を横目に夜の爪を切る 実峰
流星はまだかグラスはすでに空
山唐黍がしがし噛んで夜が更ける   さわらび
薬二錠平穏な日に秋思あり レモングラス
夏痩せの始まっている海の色 ターナー島
さらさらと砂こぼれゆく終戦日 こぼれ花
四十九日の僧の法衣や初嵐 輝女
雲の色変はりし朝や休暇果つ 七草
向日葵の海をゆらゆら来る帽子  松ぼっくり
耳元に揺れて山の音夏の音 和音
稲雀一度に浮きてまた沈む 樹朋
病名は聞かぬまま置く黒葡萄 うに子
新涼の窓にまたがる少女かな 錫樹智
伏せ犬は首を遠くに法師蝉 よひら
ほつたらかしの嘘匂ふ残暑かな 犬鈴
野良帰りこそばゆきかな草虱 お手玉
人の波黙った無花果のように 磨湧
秋蝉や骨灰となる大落暉 蓼蟲
姉が吊るせる風鈴の安つぽき 紅紫
船虫のぞろり埠頭を喰いつくす 一走人
コキコキと首の後ろの愁思かな 権ちゃん
屑籠のはじく盛夏のはづれまで  えりぶどん
バナナは弧のくだもの航海日誌 なゝ
稲刈てお国の為になったろうか 空山
乗り出して秋水へ手が届きさう 空
膝を抱き鳩吹く真夜の独居房 一心堂
異邦なる街の朝虹追う男 八木ふみ
パレードのほどけて終はる赤とんぼ 鞠月
新涼の屋根付き橋に寝てみたし しんじゅ
八月や乾季の国の風の中 柱新人
マッチ擦る指の節くれ秋彼岸 なづな
花木槿ふぐりのかるくなりしかな 省三
台風圏新宿駅のジャンプ傘 北伊作
愛くるしいヤモリの時間夜深し  アンリルカ
汗拭ひて明日は祖国へ帰ります 人日子
月上る少年兵は海の底 哲白
鶏の走り抜けたる盆の家 炉草
太平洋高気圧ゆらゆらと汗 春告草
雨粒の太き八月十五日 瑞木
葉月潮月の裏側見る眼欲し 野風
真白なる幟は真直川施餓鬼 緑の手
向日葵や戦争の歌王様の歌 あねご
レンガ径右にカーブし黒揚羽 むらさき


今月の並選
なわとびの重しそろそろ秋近し 紗蘭
シャッターを切れば散りゆく花火かな
人ひとり呑みし花野の無音界 さわらび
倒れざまに掴んでおりし草の絮
秋暑しロン毛の次男の生返事 あらた
たたみ方知らずに開く朝顔や
糸瓜水瓶をかかえて腕まくり レモングラス
コスモスの中お薄受く至福なり
かまきりの祈りのままの骸かな 藍人
つくつくしおまへつくづく恩知らず
真二つに切れぬレモンは逃げ上手 ゆき
パラフイン紙たたみきれずに夏終わる
渓谷に両手をつけてきりぎりす 朗善
風鈴をよけて行ったり来たりかな
トラック一台の西瓜種五つ かのん
嫁業三十年過ぐ鶏頭供ふ
足元の涼しき事もプロペラ機 たかこ
夕焼や帰る場所無き乳母車
天涯の花清らかでありし頃 こぼれ花
帰省子の去りて我が家の広さかな
露天風呂夜風涼しくなり候 輝女
つくつくしなんぼ泣いても季は往く
フェニキアの貝紫や染めて秋 七草
身に入むや異郷の夕餉灯点し頃
備前焼に鎮座して咲く新豆腐 松ぼっくり
卒塔婆に無沙汰を詫びて秋の風
遠花火胸の鼓動を膨らます 和音
太陽に見捨てられたる青トマト
夏雲へ一本の松届きけり 青柘榴
田草取終えた地下足袋干しにけり
長き夜や電子時計は音立てづ 樹朋
松手入ひと廻りして鋏入れ
銀漢に星の零れる島である 錫樹智
秋の声キュンストレーキはずっとひとり
失語して もれだす心 鳳仙花 うに子
われさきに肉喰らふ子よ終戦日
太陽が凶器となりし処暑の昼 よひら
思春期の少女色なき風になり
赤チンの薄くなりゆく赤蜻蛉 犬鈴
さいごまで優柔不断秋桜
水引草咲いて婚約まとまれり お手玉
淋しさを告げて飛び立つ法師蝉
二つ三つ寄りて動かぬ秋の蠅 蓼蟲
薄墨の文字の滲みや夏果つる
ときどきは猫いる処おしろい花 紅紫
青葉つんざく子の声もわれ歩く
魂のこわれゆく音大暑かな 一走人
指差しのポイント通過百日紅
草の花ゆったり過ぎる島時間 権ちゃん
改札はいつもしんがり帰省の子
冬瓜の冬瓜らしく青臭く えりぶどん
海月来てハリセンボンの意気地なし
美しき残酷の様花木槿 理酔
じゅうじゅうと呻く秋刀魚にかぶりつく
土佐弁を真似ておらぶや夏怒濤 元旦
予土線の四万十廻廊涼しかり
文学と天気のことを秋来る 青蛙
動く手であいさつ交わす母の秋
友達以上恋人未満の梨 空山
注射跡血の滲みて八月尽
半月とふたり屋根付き橋渡る 空
伐り口の白く乾きて花煙草
いのちの灯川面にゆれる原爆忌 一心堂
満月やひとりつま弾くラブソング
秋うらら始発の窓に醤油の香 八木ふみ
数独に煮詰まる夕べカンナ燃ゆ
惜敗の夜に鈴虫のやたら鳴く 鞠月
八月尽貝殻風に鳴き始む
望月は雲を冷やして八月尽 まんぷく
太古より初風運ぶ野川かな
鳩笛の返答待ちて夕間暮れ Blanca
祖母食んで梨の香満ちる病室
新米や動脈のまだ透くがごと 大塚めろ
認めたり認められたり唐辛子
棟上げを見上ぐる夫の喉仏 柱新人
妻にフォーカスコスモスはぼかしけり
金ボタン胸に光らせ捨案山子 なづな
数珠玉や探し物して回り道
夏木立詩を読む我を覗き込む 北伊作
洗車機の滴り青き空くぐる
原爆忌燃料プールといふ矛盾 ちろりん
アンデスの風舌の上トマト喰ふ
上向いて青空向いて花へちま 八十八
くつろぐも仕事の一つ秋暑し
夏の宵金のうた歌うローレライ アンリルカ
入道雲見つめてゐるとヒコーキ雲
滝壷や飽きずに水は落ちている 三竜
天牛にたっぷり浴びせるキンチョール
箱庭の昭和の匂ひありにけり 人日子
仲人の訛なつかし夏座敷
嘘ついてよりの沈黙夕端居 岩宮鯉城
逝きし日は昨日のやうに曼珠沙華
三度目の正直マムシ退治する サキカエル
ヤマボウシ赤い実付けている景色
江田島の母への文や敗戦忌 えつの
虫干の江戸紫や母の声
ハングルの飛び交う街も終戦日 コナン
空の色やさしくしてる秋の風
公園の残暑ずるずる滑り台 ほろよい
かなかなや影踏みしめて下る坂
心太押し出されゆき口の中 たっ君
風鈴の音色清しき朝の風
異邦人カーヴィーダンスの娘の涼し  西条の針屋さん
いかづちや百の町やも走り抜け
日に真向く素顔八月十五日 ターナー島
餓鬼棚に夕日ささくれ立ち炎
アイス持つ指黒黒と動きをり 春告草
立ち話にまぎれ込みたる蚊の羽音
震災記念日ただ月を待っている 大中博篤
故郷喪失ラジオ皆同じ名を冬へ
人の世の朝露の如儚きや カシオペア
よたよたと蟷螂家路急ぎおり
食虫植物そつと触れたる天の川 もね
一日を泣いて笑って酔芙蓉
紗羅の花折り紙の犬水をのむ 迂叟
鍵穴を手探っている星月夜
新涼やたっぷりと粒マスタード 瑞木
秋高し粒のいびつな正露丸
猿股に野鯉潜りぬ溝浚え 藻川亭河童
川獺もおらをねらうか烏貝
まろまろと貌なき影の踊かな 緑の手
眠りゐしはずの手の打つ蚊のあたり
和蝋燭草鞋虫籠あたらし屋 あねご
これ以上切れぬほど切る髪残暑
周波数合はぬ大暑のカーラジオ 灯馬
砂粒のやうな土用蜆のやうな石
内子座の階段高し百合の花 信野
鵜飼舟豪華弁当運ばれて
三男子切に作りし茄子の馬 むらさき
終戦日真青の空へ鎮魂歌
新秋の放てば翔けて行きし夢 逆ベッカム
骨盤が歪んでますよ神の留守 依里
ツートンのソフトクリームにある迷ひ  亜桜みかり
立秋や棘呑み込みてわたくしの 洋子
高千穂のふる里便来菊百本 てん点
沈黙に惑わされたる残暑かな 磨湧
手術待つ残暑のわからぬ部屋にいて 実峰
大花野電子レンジにわすれもの なゝ
補導されし少女カンナを指さす ソラト
膝ならべ聴くサクソフォン月はやし  神楽坂リンダ
噎せし夏たこやき焼いて誕生日 ふーみん
捨てられぬ絵本をひらく端居かな すな恵
腕組みの俥屋眠る残暑かな しんじゅ
秋の蚊に食はれもすなり番外寺 省三
百日紅この家の主の長き留守 哲白
秋蜘蛛や天啓的な理数系 浜田節
風光る貝殻乾く堤防に 炉草
蜩や骸に聲の朽葉色 野風
秋麗の白線踏んで汽車を待つ ふづき



【雑詠句募集】
投句三句/俳号(本名)/〒住所/電話番号と、「○月末日締切分」を明記して、編集室「くらむぼんが笑った」または「へたうま仙人」宛にお送りください。
締切は毎月末日《必着》です。
※末日を過ぎたものについては、翌月分とさせていただきます。
※ひと月に複数の投句があった場合は、一番最後に届いた投句のみを有効とさせていただきます。同一内容での二重投句はご遠慮ください!
 投句は誌上句会宛のハガキ&メールとは別でお願いします。
雑詠専用Eメールアドレス zatsuei@marukobo.com
インターネットや携帯電話からも投句できます。
http://www.marukobo.com/kuramubon/


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初学道場 へたうま仙人


原案:大塚めろ
文責:編集室

 実りの秋真っ只中の列島ぢゃが、みなさまお変わりはありませんかのう? 今月も裏技表技満載で、秋の夜長の入口を退屈せずに過ごせたぞ。ありがたいことぢゃ。では、ゆっくりと楽しんでくだされ。


こんなに安くて良いのか扇風機 ポメロ親父
 をっ、現代の「社会性俳句」ぢゃ!! 一見口あたりの良い超辛口は後で効いてくる。ヘタ味の自問自答がエエのお。

止揚して私用してをり新居宅 未貫
 強引な頭韻が強烈ぢゃ。頭がジンジンして季語が無いことにさえ気が付かなんだぞ。大好物の一句ぢゃ。

曼荼羅高き岩襖秋の風 どんぐりばば
 見上げる曼荼羅の如き岩襖、爽快な秋の風、それを裏切る語順の悪さ、どうしてどうして中々のもんぢゃのぉ。

山梔子やしとどに濡れて匂ひ立つ おせろ
 目の前のものをじっと見る作者の目にきゅんとくるぞ。季語は見つめられても怒らない、じっくりと見て下され。

鶏頭に触れた手であそこをさわる 小木さん
 ほいほい、どこでも触ってくだされ。ぢゃが、あそこを先にさわった手では、鶏頭を触れるでないぞ!

夏過ぎてみらいいっぱい酒飲めや 豊原清明
 こんな底抜けな感じ、好きぢゃ。今年の夏に叩きのめされたんぢゃのう。たらふく飲んで、皆で忘れましょうぞ。

仏教大大学院に竜田姫 ケンケン
 場所設定がなんともいえんのう。ネンテン先生に呼び止められた龍田姫の顔を想像するのも、俳句の醍醐味ぢゃ。

秋蝉や今日も良好異性運 渡部五龍
 ワシと同じぢゃが、ワシは「秋蝉」のように儚くはないぞ。空威張りは「秋蝉」でばれるのぢゃ。ウォホッホ!

絡んでもかわいい人よ衣被ぎ 親タカ
 はいはい、それはようございましたの。「衣被ぎ」の艶っぽさを高田純三氏に少し見習ってほしかったのう。

違反切符切られし夜や赤い月 髪くろ子
 なんとなく色っぽいのは「赤い月」のせいかのう。句の出来はともかく、違反切符切られた理由を知りたいぞ。


以下、全て追放!

立秋や体の火照りそのままに ぴーす
 妖艶ぢゃ。夏の名残を受け入れ難い体は心とは裏腹に彷徨っておるのかのう。いやはや体感度100%にして追放!

午前二時月の光を招き入れ 未々
 艶っぽい句ぢゃ。はたして招き入れるのは月の光だけかのう? 深読みしてしまう「更待月」の空気感、追放ぢゃ!

十六夜や宛名を書かぬラヴレター ぎんなん
 十五夜の次の日という設定が泣かせるのう。出さなかったラブレターは、タイムカプセルそのもの、追放ぢゃ!

人は皆変われるんだと梨を食う 柊つばき
 当然良い方向へ変わるのぢゃろうの。手に受ける梨の果汁に未来が見える、こんな前向きの句は、追放ぢゃ!

新走水の底には水の虫 今比古
 新走と水は近しい間柄ではあるが、中七下五にはくらくら来たぞ。言えそうで言えないフレーズ、見事に追放!

背を伸ばす夜なべラジオにジョンデンバー カラ嵩ハル
 気の毒な亡くなり方をされたジョンデンバーさんの声が沁みるのう。沁みすぎるこんな句は堂々の追放ぢゃ!

お互いの傷を見せっこかりんの実 小木さん
 かりんの実のごつごつと、未だ癒えぬ心の傷が遠くでスパーク。えーい、こんな句はわしの辞書にはいらんぞ!

真夜中のキッチンの桃よく匂う ひでこ
 キッチンの広さ(狭さ?)や暗さまでよくわかるぞ。闇と桃の匂いはいつの世でもベストマッチング。追放ぢゃ!

蚊を潰す指の原発再稼動 だなえ
 昨日蚊を潰した指で再稼動のボタンは押されたのかもしれんのう。こんな深い句、浅はかなワシには無用ぢゃ!

手話の会部屋まで響く花火かな 渡部五龍
 花火の音が聞こえる人も聞こえない人も同じ響きの中に。みたことの無い切り口の句は、一目散に追放ぢゃ!!

秋めくやおにぎりにある名産地 不知火
きちきちを連れ来てしまふボンネット
 何となく食べたおにぎりの美味さにラベルを見直し産地を確認する表情、必死にしがみついてきたきちきちの顔。こんな些事をリアルに描く作者の手腕、二句まとめて永久追放ぢゃ!


 今月もいつもに増して追放者を出してしもうた。すまなんだのう。来月はどうなるか、来月にしかわからん。みなさま、油断召されるなよ。


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放歌高吟


爽やかな矢
夏井いつき

錫杖や処暑をかすかに風の芯
上がりたる砂塵は処暑の音である
有るまじき蒼さに空蝉の空は
上人の目は青葛原を捉う
濁流は足下や天の川の黙
るると草匂うてるると虫すだく
新松子美し雲の動かぬ日
子に挑む日やぎんなんの青し青し
とんぼ交めよとんぼ光れよ空もまた
雲食うたように曲がりし糸瓜かな
草の実をつけて総長たる男
君たちのことばは爽やかな矢である


 まずは、先月号「放歌高吟」エッセイについてのお詫び。松山東高に十一年ぶりに優勝旗が戻ってきた、と書くつもりだったのに、推敲の途中で文脈が交錯し「十一年ぶりに愛媛県に」となってしまっていた。第十二回大会松山中央高校の感動的な優勝を忘れるはずもなく、そこだけは言い訳させて頂きつつ、櫛部先生ごめん(松山中央高校監督)と、お詫びし訂正させて頂く。
 さて、俳句甲子園が終わって一ヶ月。すでに来年に向け、新メンバーでの活動が始まっているようだ。先日子規記念博物館で行われた「道後俳句塾」にも、二十人ほどの高校生の姿があった。いずれも来年の出場を目指す一年生二年生さらには中学生たちだという。宇多喜代子先生、黒田杏子先生の選にも多数が入り、彼らの好奇心とやる気が印象づけられた勉強会であった。

 「俳句は優劣を競うものではない」
 俳句甲子園が始まった時から耳にしてきた(もう耳にタコができちゃった)定番のご意見。この一文だけを取り上げれば全く異論のないご意見ではあるが、これをそのまま俳句甲子園に当てはめて批判するのは、ちと角度が違う。
 例えば、どの結社でも行われる定例句会では「特選、並選」「秀逸、佳作」等という呼び方で主宰による評価が示される。互選の場合も点盛りがされ優劣がつけられるが、その評価を指針として勉強するのが句会というシステムだ。つまり「俳句は優劣を競う」ことを目的とするものではないが、句会という場で下される「優劣」の評価が、俳句修行の重要な座標軸となる。
 俳句甲子園はもとより、私が全国の学校で展開している句会ライブも、形を変えた句会にすぎない。当然ながらそこには優劣が生まれるが、句会の持つゲーム性が児童生徒にとっての動機付けとなり、選ばれなかった悔しさが皆に愛される句を作りたいという意欲へ、俳句という表現を学びたいという意志へとつながっていく。俳句甲子園とは、そういう教育の場であるのだ。
 本誌今月号の特集に「質問は議論の起点〜俳句甲子園『評価の観点』について」と題した一文を書かせて頂いた。議論の起点となる質問とは、爽やかな言葉の矢だ。強く美しくしなやかな言葉の矢が、俳句甲子園の豊かな議論を生み出す。自信を持って、君たちの爽やかな矢を磨いて欲しい。その切磋琢磨の先に、豊穣な実りとしての作品群が生まれてくるのだから。




夏井いつき公式ブログ「夏井いつきの100年俳句日記」

http://100nenhaiku.marukobo.com/


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新 100年の軌跡


第1回


近づきて 岡戸游士

夏の海浸るロープの見え隠れ
卵つけ尾の垂れ進む目高かな
日の当たる遠き面は浮き朝の凪
舟虫の壁に突き伏し血を流す
傷つきてトマト黄色の筋ひろげ
吹きゆける路端の柵や草茂る
近づきてさらに遠くに雲の峰
前脚を舐めて巣作る蜘蛛二匹
脚折りて腹振りて蜘蛛巣をつくる
広々として鋭くすすむ揚羽蝶
さわさわと塩辛蜻蛉眼を回す
枕ごと壁に張り付く昼寝かな
夕蝉の声の長さのような夢
法師蝉ぎゅるりぎゅるりと鳴き止めり
石段の尖りに蟻は翅残し


岡戸游士
愛媛大学工学部2回生、愛媛大学俳句研究会部長
まつやま俳句でまちづくりの会会員




秋麗 紺野

魂の研ぎ澄まされて星月夜
爆音がリフレインする夜檸檬
晴れ晴れと子宮貫け稲光
下手くそなリコーダーの音 山葡萄
善きしらせ伝えるように小鳥来る
べたべたの唇の赤 地蔵盆
糸瓜忌やシャツのほつれの細くゆれ
カラフルな雨降りしきる美術展
メイク箱ひっくり返して星飛べり
秋晴れのむこうに神様の衣
後悔に身を苛まれ鵙日和
しゃくしゃくと秋刀魚を切って妻になる
竈馬かるがる涙海を越え
とつぜんに狐花の野 幻肢痛
水面に実家の庭の秋桜


紺野
愛媛大学俳句研究会2回生女子




玉虫 桜井教人

 先日藤原京・飛鳥方面を久しぶりに訪れた。旅の最後吉備姫王墓(猿石)でのこと、急にブーンという大きな羽音がしたかと思うと目の前の石柵に何かが止った。玉虫であった。古代ひめみこ姫王からの贈り物、ありがたく受け取った。玉虫の別名は吉丁虫。名の通り吉兆をあらわしている。今回から始まる二人の作家の作品が、俳句界の新たな吉兆となることを願っている。

枕ごと壁に張り付く昼寝かな 岡戸游士
 描写が明確である。枕ごとという措辞により事情が一気に解明する。壁まで転がるというような句ならあるだろうが、枕ごとという表現はオリジナリティーにおいて秀逸である。この光景、想像すればするほどおかしい。
昔なら多人数により壁に押しやられることもあるだろうが、今の句としてそれは考えられない。部屋が広いにも関わらず枕ごと壁なのである。

下手くそなリコーダーの音 山葡萄 紺野
 不思議な魅力をもった句である。艶やかな瑠璃色の山葡萄と下手くそなリコーダーの音、その間の距離は意図的な空白以上なのか以下なのか、またその音を聞いて実った山葡萄の味どうなのだろうか、想像が楽しい。 
 この句の他にも空白の句がある。読み手に空白の意味を問う以上、それに応えることができるクオリティーの高さが作品に求められるだろう。挑戦に敬意を表する。


1958年生まれ。愛媛県今治市在住。趣味は寺社巡り、仏像鑑賞。訪れた地の名物は必ず食べる。第3回選評大賞および第4回選評大賞入選。



近づきて とりとり

近づきてさらに遠くに雲の峰 岡戸游士
 近づいていったらさらに遠ざかったものは何でしょう。「雲の峰」かもしれないし、理想とする何かかもしれません。果てしない空の光景と心象風景がオーバーラップしたところに惹かれる句でした。

前脚を舐めて巣作る蜘蛛二匹 岡戸游士
 蜘蛛って自分の身体を使っていろいろ長さを測りながら「蜘蛛の囲」を張っていくそうですね。実直な写生句として好感を持ちました。

爆音がリフレインする夜檸檬 紺野
 爆音のひびく恐ろしい夜に、救いのように黄色く輝く檸檬。何の爆音でしょうか。争いの絶えない中近東の夜を連想しました。

メイク箱ひっくり返して星飛べり 紺野
 手元のメイク箱と、はるかかなたの星。星がメイク箱をひっくり返したわけではないけれど、なんだかそんな気のする夜ですね。

 岡戸游士さんの句は率直な写生眼が魅力でした。紺野さんの句には新しい挑戦があって今後が楽しみだと思いました。


1957年生まれ。三重県在住女性。第1回選評大賞優秀賞。


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私たちの100年俳句計画


俳句を使った試みをされている様々な分野の方を紹介します

第8回
八幡浜市日土東地区公民館
文化教養部長
宮下 靖弘
俳号 海田

まずは自己紹介
 八幡浜市は日土東地区公民館にて「文化教養部長」という、名前だけは大層な肩書を持つ、俳号海田と申します。
 以前自分が企画しました館報記事(地元公民館館報『館報ひがし』での一句一遊兼題紹介)をきっかけに今回本欄の原稿を依頼され、ありがたく思うばかりです。

現在の仕事について
 その「文化教養部」ですが、開催した地元イベントの写真やお知らせなど地元の情報を載せた地区公民館の館報を、ほぼ隔月ごとに作るだけという簡単なお仕事です。
 しかし簡単な仕事ながらも、文章を書くのが好きな人は当地区に私しかいないらしく、公民館主事さんからの文教部員への就任依頼を真っ先に引き受けました。
 そして唯一の文教部員になり、気が付けば部長。(結局後にはもう一人の方にも入って頂きました)。

原稿に俳句を取り上げて
 昨年から文化教養部には普通の部員として参加しており、館報に空きスペースが出来るたび、自分の書く記事で穴埋めをさせてもらったりしていましたので、地元局番組であり、地元日土は莚田の血を引くやのひろみさんも関わる『一句一遊』をいつか紹介できればと思っておりました。
 そして先日やっと兼題紹介という形でそれを掲載でき、一句一遊投稿経由で組長にも報告いたしましたところ、意外なほど大きく喜んで頂けましたことは望外の喜びです。まさかあそこまで喜んで頂けるとは思いませんでした。このようなことは、私が初めてなのでしょうか? だとしたらとても惜しい事です。

公民館活動のススメ
 お読みの皆さんも地元の公民館活動に参加して、館報などを編集するセクションに加わり、ふとした時にできる空きスペースを私物化……否、俳句の楽しみを宣伝する文化欄に生まれ変わらせてあげましょう。一句一遊の宣伝付きで。

地域に広がる俳句の種
 残念ながらまだ今回の『俳句の種まき』的試みは館報では今回一度しかしていないのですが、私以外にも地元句会『さえずり句会』の方々は八幡浜市内の小中学校へ俳句の授業の支援に出たりするなど、活発な俳句の種まき活動をされているようです。
 この活動がいつか芽吹いて、ほぼ運動部しかない地元中学に文芸部なり俳句部なりができて、そこからまる裏俳句甲子園へ出場するチームが生まれてほしいと願います。顧問が要るなら校外顧問(そんなのあるのか?)にでも何でもなりましょう。
 しかしそのためには五勤一休、その勤務日は13時間も拘束される今の仕事を転職しない限り……。給料が安くても時間の余裕ある仕事を探さなくては。失礼しました。



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Letter from spider garden


ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
松山市在住の世界的チェリスト ナサニエル・ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.6

Hechima growing
tiny fingers reaching out
becoming new life

新しきいのち糸瓜の手伸びゆく

(直訳)
糸瓜育つ
小さき指伸ばし
新しきいのちへ


We went to the revolving-sushi restaurant. A quick decision, a sharp pull, and we try to eat slowly. The sushi travels forward and backward, quickly and slowly, and my stomach does the same.

 回転寿司の初体験をしたよ。すばやい決断、鋭い(皿の)引き抜き、そして、可能な限りゆっくりと味う。
お寿司の旅は、前へ、後ろへ、クイック、クイック、スロー。
僕の胃腸もつられて踊る。

訳:朗善



ナサニエル・ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2011年より松山市在住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第19話
「ソウル・ステーション」
ハンク・モブレー

 巨大なる月よモブレーを指名せよ チャンヒ

 僕は “凡百のテナーの中の”を上五中七に置き、その最高峰という意味で“月明かり”を季語に添えモブレーらしさを狙ったのだが、この句を見て思った。パンチ力不足。これじゃ前々回、モブレーを“モブレイ”としてジョン・コルトレーンの脇役呼ばわりをした挽回にはならないと。
 モブレーは他のミュージシャンに大きな影響を与えるような偉大なスタイリストではなかったが、“名テナー”という称号が誠によく似合うサックス・プレイヤーであった。彼はブルーノート・レコードに多くのリーダー作を残し、サイドメンとしても数多のセッションに参加している。このレーベルの設立者、アルフレッド・ライオンはモブレーのコンポーザーとしての才能も高く評価していたようで、機会あるごとに作曲を進言していたらしい。確かに彼のリーダー・アルバムには実に多種多様なオリジナル・ナンバーが並んでいる。

たましひの格納庫たれ烏瓜 神楽坂リンダ

 その象徴的名盤として、ワンホーンでモブレーのソロをたっぷりと楽しめる「ソウル・ステーション」がある。リンダさんはタイトルをこのように和訳しJAZZ俳句に仕立てた。なるほど!! 上手い。烏瓜の名の由来は、カラスが好んで食べる、とか赤い実がカラスの食べのこしのように見えるなど諸説あるようだが、カラスと食用ではない実の不可思議さみたいなところが、ジャズやソウルと響き合っているのかもしれない。まさか挨拶句と解釈したわけではないだろうが、この日、選句から参加した烏天狗さんが特選でこの句に食いついた。老若男女多数食いついた。これを記念してJAZZ句会的には“ジャケ句系”に属するこの手の句を以降“和製タイトル句”と呼ぶことにしよう。

何処かしらブルース味のりんご飴 蛇頭

 JAZZ句会のことでリンダさんとEメールにて遣り取りしていたら、こんな句ができてしまった。100年俳句計画の愛読者ならどなたもご存じだろうが、「りんご飴」とはリンダさんの句集のこと。なので、立派なパクリなのだが、この句が意外とウケた。リンダさんのお陰で「りんご飴」という言葉がチューンアップされたのだろうし、モブレーのブルーステイストのオリジナル曲との相性も悪くはなかったのだろう。

リムショット刻む星降る夜のボッサ むうん

 さほどジャズに詳しくないむうんさんが、ヒットJAZZ俳句を量産できる理由の一つにインターネットの活用がある。リムショットとはスネアドラムの皮の部分だけではなく金属の枠の部分(リム)も叩いて歯切れの良い音を出すこと、と端末の画面で調べ画像も観たらしい。
 この句の語るナンバーは「リカード・ボサノヴァ」である。アルバムはモブレーの「ディッピン」。これを聴いて魂踊らぬ人は……まあ、ご一聴を。リンダさんは今、このCDにハマっているらしい。




http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


第19話 文/俳句 らくさぶろう

『八五郎坊主』
〜カラッと晴天、ピカピカの頭〜

あらすじ
 落ち着けぬ男、八五郎。いつもお世話になっている甚兵衛さんに「とにかく坊主になりたい。心安い坊さんをどっかで紹介してほしい」と無茶なお願いをする。
 まあそれならと心優しい甚兵衛さん、知り合いの寺に手紙を書いてやろうということになる。
 その手紙を持ってやってきたのは、大きな銀杏の木が目印の下寺町のずく念寺というお寺さん。立派な門から入ると釣鐘堂から石畳を裏手に回り、ガラガラと幅の広い戸を開け庫裏(台所)へ入ってゆく。
 住職に会うことが出来、手紙を読んでもらい何とか坊主になることを許される。
 となるとまず頭を丸めることからというわけで、住職が八五郎の頭をカミソリで丸め、名前もつけてもらうことに。何個か提案されるが気に入らず、結局「法春」はどうかということになり、これは「ハシカも軽けりゃ疱瘡も軽い」という言葉にひっかけ、「ハシカも軽けりゃほうしゅんも軽い」とシャレで覚えやすい、これはいい!ということで「法春」に決める。しかし何度言ってもすぐ忘れるので紙に書いてもらい、これまでの友達に坊主の姿を見せに行くと、寺を出る。
 十月の乾いた風が頭をなでて吹いていき、あらためて坊主になった実感を味わいつつ、大きな声で「坊主抱いて寝りゃかわゆてならぬ、どこが尻やら頭やら〜チョンコチョンコ♪」などわけのわからぬ唄を歌いだす始末。
 それを見つけた友人が八五郎を見つけ、「坊主になったんか、で、名前は?」と尋ね、紙を見せるが「法春」を「ほうばる」と読まれ、「ちがうちがう。」「じゃ、“春”は春日神社の“かす”で『ほかす』か?」「ちがう」「“法”は“のり”とも読む。『のりかす』か?」「いや、それもちがう」「なら『ほうしゅん』か?」
八五郎「ほうしゅん? ハシカも軽けりゃほうしゅんも軽い、そうやそうや」
友人「わかったか?」
八五郎「わいの名前は、ハシカっちゅうねん」



 この噺は、故桂枝雀(二代)の得意とした噺で、ひょうひょうと演じる八五郎はまさにツルツル頭の枝雀師にピッタリで演じているのを忘れそうなハマリ役だったと思います。
 元々のオチ(下げ)はもうすこし分かりにくいもので、「ハシカっちゅうねん」としたのも枝雀師の演出だと聞いています。
 あらすじでは分かりにくいのですが、八五郎のボケっぷりは時に爆発的で、どこまでも明るく派手な男は、普段の小さな悩みなどどこへやらと思わせてくれるほど。
 お寺の銀杏の件も深まる秋を感じさせてくれるのですが、僕がこの噺の一番好きなシーンが、頭を剃ってもらい友達に会いに行く場面。
 「アホが無茶言いまして表へポイッと飛び出しますというと、十月の乾いた風がヒャ〜〜〜ッ……」
八五郎「頭スカスカやなあ。空が青いなあ、わいの頭の色が映りよったんかいなあ……」
 高い高い秋の青空がくっきりと表れ、その下を大股で歩くピカピカ頭の八五郎の姿が何ともほほえましいではありませんか。
 僕の通ってた中学校は幸いにも坊主にしなければいけない校則も無く、生まれてこのかた一回もツルツルにしたことはないのであの気持ちはわからないのですが、この秋にやってみたら、風邪でも引きそうですねえ。想像しただけでくしゃみが……。


煩悩が袈裟着て歩き天高し


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本家慶弔俳句帖 第49回


文 桃ライス

非常ベルランプはBに限りなく近いAカップ
 非常ベルについているランプは何カップか? という疑問がツィッターで話題になり、ある人物が実際に調べてみたという。以下結果報告(ネット情報より)。
 今回はニッタン株式会社の「非常警報用表示灯」の設計図を基に計算してみた。設計図によると直径は95ミリメートル、高さは60ミリメートルである。ランプの丸い部分のみをバストとして仮定する。従ってアンダーバストのサイズは必然的に直径である95ミリメートルとなる。現物がないため、ティッシュで同じサイズの模型を作った。測ってみるとトップバストは約150ミリメートルとなった。ただし、胸は2つあるべきなので、これらを単純に2倍する必要がある。そして得られた結果が以下である。
『トップバスト300ミリメートル アンダーバスト190ミリメートル 結果300ー190=110ミリメートル』
 トップとアンダーの差は11センチメートルとなった。ちなみにAカップは10センチメートル、Bカップは12センチメートル。従って非常警報用表示灯のカップサイズはA〜Bという結果になる。ただ、残念なのは非常警報用表示灯は胸が1つしかないので、ブラジャーを付けることはできそうにない。

零余子飯55階に干すブラジャー


のび太が0点しか取れない理由
 ドラえもんに出てくる「のび太」は、毎度のごとく0点をとってしまう勉強のできない小学生だというイメージが強い。果たして彼が受けている問題はどれだけのレベルなのか。最近、実際にのび太が受けている問題がツィッターで話題となっている。以下、算数の出題内容(ネット情報より)。
『20+□=51 151+301+50=□ □−205+95=105』
 単純な数式の問題であるので落ち着いて解いていけば難しくはない。しかし問題なのはこれではなく次の問題である。
『次の問いに答えよ テレビの上にみかんが1つありました。さてテレビの上にりんごはいくつあるでしょうか』
 りんごという情報が一切記されていないのに、りんごの数を数えよと言うのか? 更に奇怪な問題は続く。
『君がここにいます。さて誰が何人ここにいるでしょうか?』
 もはや哲学である。

秋茄子の種がわんさかハズレだよ


桃ライス…自分のことをワシとよぶ婦人グループ会員


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ホンヤクサイホンヤク


翻田 訳蔵

俳句暦0年のど素人俳人、翻田訳蔵がネット上の翻訳ソフトを使って、名句を翻訳、再翻訳し、そこからインスパイアされた(パクッた)句を発表していこうという馬鹿馬鹿しくも実験的で図々しいコラムです。


今回の俳句
 柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺 正岡子規

 まずは、エキサイト翻訳(英→日)

「It is Horyuji Temple as soon as 柿食えば鐘 sounds.」

 前回もそうでしたが、エキサイト翻訳は諦めが早いですね。「柿食えば鐘」とまったく翻訳していません。

 さて、これを再翻訳しますと……
 
「柿食えば鐘が鳴るとすぐに、それは法隆寺テンプルです。」

 なるほど、「柿食えば鐘」という、一個の固有名詞と捉えたわけですね。

 さて、お次は、Googleで翻訳(英→日)

「As soon as the bell rings if Horyuji eat persimmon」

 再翻訳
「とすぐにベルが鳴るように法隆寺は柿を食べると」

 ちょっと意味不明ですが、もしかするとこちらも「とすぐにベル」という固有名詞でしょうか? あと、「食べると」ですが……博多弁ですかね?

 最後に、Yahoo!翻訳(英→日)

「If eat it, a bell sounds a persimmon; Horyu-ji Temple」

 再翻訳
「それを食べるならば、ベルは柿を鳴らします;法隆寺テンプル」

 なんだか注意書きのようになっています。ベルさんはどんな風に柿を鳴らしているのでしょうね?

 それでは、この3つを受けて一句

秋の空柿食えば鐘と名付けられ 翻田訳蔵


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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成24年8月度


【鵤】
木霊の学校今日は鵤の声を聞く ポメロ親父
鵤たのしや木の実ころがるよう笑う 藤実
杉の木のまっすぐ鵤の声ころがる マイマイ
杉の香の届いてきたる鵤かな 鯛飯
鵤鳴く月はお椀を伏せたよう 一走人
月齧りて鵤の嘴の黄色かな 樫の木
いかるがや埴輪の口は空に泣く ぼたん
勾玉の記憶群青鵤鳴く 烏
正夢の背中鵤に突つかるる もね
鵤鳴け鳴けオスプレイは鉄鳥 かのん
戦争放棄以来鵤鳴き方を変える 日暮屋

《天》
星呑み込み鵤は五角形の鳥 ドクトルバンブー


【藻刈】
川幅に進む三艘藻刈晴れ 菜々枝
太陽を割って藻刈の水しぶき はなみずき
船底に回りこむ藻を刈りにけり 一走人
水底にはるか届かぬ藻刈鎌 めろめろ
刈られたる藻の乾きゆく路肩かな 華緒
藻刈船乾く間もなき一日かな 樫の木
有線の藻刈る知らせや雲怪し ターナー島
雨後の藻刈はげしく纏いつく さわらび
藻刈船嫁取り船にゆずる水路 こでまり
嫁ぐ船藻刈の船も同じ船 しょうパパ
しんがりは実習生の藻刈船 だんご虫
藻刈班撤収横たう山の影 ほろよい

《天》
宮内庁を揺るがす堀の藻刈かな 野風


【俳句甲子園】
生意気を買われて俳句甲子園 だんご虫
電子辞書並べて俳句甲子園 たかこ
マイク置く指のこわばり俳句甲子園 更紗
前列は赤の親らし俳句甲子園 不知火
息合わぬタイムキーパー俳句甲子園 デビルマン
助詞ひとつ悔やみし俳句甲子園 句空
俳句甲子園気分を変えてレモネード 湯泉
手のひらの果実と俳句甲子園 紗蘭
言葉は櫂俳句甲子園は海 樫の木
言霊の木霊と俳句甲子園 針屋
今朝の風確かめ俳句甲子園 灯馬
風ときに強し俳句甲子園 逆ベッカム
俳句甲子園聞こえるはずのない鼓動 たんぽぽ
恋の句を掲げよ俳句甲子園 伊佐
俳句甲子園口中に塩の味 藤実

《天》
俳句甲子園前夜不夜城のホテル 一走人


【初嵐】
初嵐アルミニュームのような空 みいみ
初嵐背の子恐れる空の色 磯子
初嵐水新しき声上ぐる 菜々枝
鶏の爪食い込んで初嵐 藤実
鶏の飛翔は高し初嵐 まっことマンデー
初嵐僧の衣の鮮やかな 朗善
初嵐島に赴任の若き僧 風
初嵐僧が差し出す寄付趣意書 蓼蟲
初嵐訴状に十カ所の付箋 妙
初嵐馬券は馬場に呻き出す サライ
ファシズムの言葉は甘し初嵐 マイマイ
工場の酸っぱいサイレン初嵐 太郎
初嵐砂丘は夜を移動する ドクトルバンブー

《天》
流木に船食い虫や初嵐 ぼたん


【八月大名】
八月大名腰の座りし嫁迎ふ 菜々枝
八月大名乱れなき婚礼の列 藤実
八月大名十六名の大見合い ほろよい
餡子は一キロ八月大名 ぼた餅
八月大名豆の餡子の餅百個 もも
紫餅を蒸して八月大名たる祖母は 苺
八月大名ロマネコンティを舐めてみる 理酔
八月大名酒が酢になるころ ドクトルバンブー
軽トラを降りず水見る八月大名 鍛冶屋
八月大名白き鼻毛をながめおり 笑吉
八月大名源氏原文読破する ひめばあちゃん

《天》
八月大名親鸞を読む一日(ひとひ)かな はなみずき



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

10月14日
浅漬大根【晩秋/人事】
2〜3日干した大根を麹や薄塩であっさりと漬けたもの。

文化の日【晩秋/人事】
11月3日、国民の祝日。日本国憲法の公布日。文化功労者への勲章授与や表彰が行われ、文化祭なども開催される。明治天皇の誕生を祝う「明治節」だったが、昭和23年に改称された。

10月28日
大西風【晩秋/天文】
晩秋から冬季にかけて、太平洋で低気圧が発達し、大陸の高気圧が張り出すことで吹く、強く冷たい西寄りの季節風。

坂鳥【晩秋/動物】
早朝に山の向こうから坂を越えてやってくる渡り鳥のこと。『万葉集』では「坂鳥の朝越えまして」と歌われており、「坂鳥の」は「朝越ゆ」に掛かる枕詞とされている。


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句集の本棚





『ハイド氏の庭』石原明 著

 全300句を語るのは、ハイド氏か、ジキル博士か。心が浮遊する庭の世界。
  そこまでの岬と知りつつ蝶とゆく
 春の庭
  トマレトマレサビシイ桜ガアル
 夏の庭
  次の世も夢二の柄の浴衣着て
 秋の庭
  ハイド氏の肌荒れだしてイヌサフラン
 冬の庭
  木枯やメリー・ポピンズの傘は黒
 新年の庭
  初空や縞馬の縞引締まる
 季節なき庭
  昨日から目詰りの塩振つてゐる
  白木蓮中年と云ふ男振り
 「ある時は猫の恋人」の魅惑的な序文と帯を花森こま。装丁を文學の森装幀室。句集を読む楽しさを味わえる一冊。
(書評:恋衣)

文学の森(2012年初版)
定価 2000円(税別)
全189ページ



『大島雄作句集』大島雄作 著

  寒椿楷書の生き方しかできぬ
  ひくひくと動くホースや苗木市
  四万六千日麺棒の粉まみれ
  につぽんは水に浮く国鏡餅
 通読しておもしろかったのは、まるで子供のように率直で写生的でありながら、子供では作れないような景を作りだすこと。解説やあとがきでは「拙を守る」という言葉が度々出てくるが、そういう心情で三十年の長い間独自の作風を自由に追求されたのだろう。また、作者の好みで暗さを感じさせる句がないのも特徴だ。
  ゴリラ真剣春キャベツいてをる
  冬眠の熊ごと山の売られけり
  三越のライオンも暑に堪へゐたり
 独特のユーモアは微苦笑必至。温かい目で景を見たくなるような、そんな面白さがある。「青垣」代表。
(書評:匠磨)

ふらんす堂(2012年初版)
定価 1200円(税別)
全103ページ



『山繭』小川みや 著

  夜神楽の出を待つ神の息白し
  蕗の薹峡の光陰うすみどり
  春の夜の棺に添い寝の通夜二タ夜
 「俳句は私の生活の可能性を広げてくれるかけがえのない心の友です」とあとがきにあるように著者の第一句集には確かなひとの営みが詠まれている。
  うしろ手は歩きやすくて下萌ゆる
  ぜんまいを干して山家はどこも留守
  百姓の髭剃り蛙の目借刻
  初蝶の無垢の白さを眩しめり
 初蝶を「無垢の白さ」と表現し、さらに眩しいと感じる素直さに惹かれる。
  楮蒸す窯火の修羅を覗きけり
  霜柱踏んで地球を引き締める
 地を踏みしめるこの地球の確かさ。またこの一日を生きてゆきたいと思わせてくれる句集である。「夏爐」。
(書評:藤実)

ふたば工房(2012年初版)
私家版
全57ページ



このコーナーで紹介した句集は、100年俳句計画編集室にて閲覧できます。


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選句&投句欄 ザ 句会


 このコーナーは読者による誌上句会。先月号に掲載された投句への、選句&選評(互選)を掲載しています。不肖編集室一同も参加しています。

第177回兼題
 「オリンピック」をテーマに
 出題者 八木ふみさん

 今月の互選『鰯の歯ぎしり』

7点句
たかこ、ゆき、都、よひら、不知火、元旦、ソラト選
地球儀の上の平和よ聖火炎ゆ コナン
  たかこ  オリンピックの開催中もきな臭い事はいくつもあった。いろいろな国の選手がいろいろな事情を抱えてオリンピックにやってくる。人は戦争を完全にやめてしまうことはおそらく無理なのではないかと最近あきらめにも似た気持ちを抱いたりする。いろいろ問題はあるけれどそれでも人は生きて行かなくてはならない。100は無理かもしれないけれど、なるべく近づく努力はしなければと思う。
  ゆき  瑠璃色の地球には戦いなどありはしない。平和の象徴としての聖火が美しく、力強く燃えさかる。果てなき深き祈りを感じました。
  都  紛争も貧富の差や飢餓etcがない世界でのオリンピックはいつのことになるのでしょうか。この句にはそんな祈りが込められている気がしました。
  よひら  地球儀の上では至って平和な世界。聖火の下でも平和にいきたいものです。
  不知火  宇宙を感じます。遠い遠い未来には地球代表。平和を願っているはずです。
  元旦  平和の祭典オリンピック。しかし、その歴史は平和とは言い切れません。ここに詠まれたのも本物の地球の上の平和ではなく地球儀。かりそめの平和の祭典に興じる無常感も漂い、「聖火炎ゆ」がちょっと哀しく響きます。
  ソラト  地球を模した地球儀は宇宙空間から見た平和で美しき地球と本当にそっくりなのだろう。そこでは銃火の戦闘もスポーツの熱き競技も区別がつかない。

明日嘉、ふーみん、和音、ほろよい、権ちゃん、ポメロ親父、紫音選
まず母に手を振る汗のメダリスト 浜田節
  明日嘉  まず母にが良かったです。オリンピックの期間中、目にした光景が素直に表現されていると思いました。
  ふーみん  母に駆け寄る選手を見て涙してしまいました。
  和音  母という立場は幸せですね。 父には悪いですが…お腹の中で繋がっていた絆があるからでしょうか……。
  ほろよい  お母さんが応援に来ている選手がたくさんいましたね。花束を投げたり、メダルをかけたり……父親じゃ絵になりませんね(笑)
  権ちゃん  こんな選手が好きです。
  ポメロ親父  印象に残るシーンをうまく切り取っています。
  紫音  人間離れした技を見せてくれたメダリストの人間味溢れる部分…。心が温まりました。

清流子、今比古、朗善、こてぞう、たま、青柘榴、桔梗選
寝不足の朝も首振る扇風機 桜井教人
  清流子  規則正しく動く扇風機とぼうっとそれを見ている作者。対比がおもしろい。
  今比古  オリンピックの熱狂は言いつくされ、かえって何気なく応援しつづける扇風機の「ささやかさ」がクール!!
  朗善   きみらもご苦労さまーと言われてるみたい。
  こてぞう  そうそう、そんな朝やった。暑かった!
  たま  寝不足の本人はいささかグロッキー気味。でも扇風機は淡々と回っています。そこにひかれました。
  青柘榴  全く我が家の扇風機も同じで、一日中回され、まるで嫌々しているみたいでした。
  桔梗  なるほどこんな扇風機の使い方が。扇風機もものうげに参加しているようで面白い。

6点句
西条の針屋さん、樹朋、キミミキ、ペプチド、だりあ、八木ふみ選
棲むと言う魔物を見たり酷暑かな よひら
  西条の針屋さん  絶対本命ってのが勝てない。一回戦負けしたりする不気味な場所です……。今も昔も魔物が棲む場所ですね。
  樹朋  女子柔道46キロ級と52キロ級の選手に日本中が金メダルを期待していましたが、二人ともオリンピックの魔物に飲み込まれて敗退しました。その時、日本中の人がこの魔物を見たことでしょう。その日は暑い夜でした。
  キミミキ  体操の団体で、日本選手の失敗が続き、内村航平選手が言った言葉。「魔物」が、ロンドンの空気を感じるものであった。
  ペプチド  実力と成績は合致しないという魔物に翻弄されたアスリートたちもその魔物を受け入れている姿からみえる人の強さに共感しました。
  だりあ  う〜ん、そんな場面あったあった。戦いの裏側を詠んだのが良い。
  八木ふみ  「魔物がいた。」と言った選手の言葉が印象的でした。それをうまく俳句にまとめていると思います。結果はともかく、夢を追い全力で戦った姿に感動しました。

ちろりん、渡部五龍、えりぶどん、破障子、安、三月選
こんなにも汗の滴る平和かな しゅん
  ちろりん  時差があって深夜のライブを連日熱帯夜の中でクーラーのないわが家で、ハードな毎日でした。
  渡部五龍   汗が平和の象徴。素晴らしい発想だと思う。
  えりぶどん  どこの国も悩みの種は尽きないこのご時世。そんな中、手に汗握る応援をした世界中の人々。ピース。
  破障子  こんなに努力しても平和は成らぬのか、こんなに汗まみれにならなくては幸せは成らぬのか、こんなにも涙が滴るものなのか銀メダルとは。思えば、東京大会の開会式で五輪を描いたのはジェット戦闘機だった。
  安  汗の滴る平和……いいですねえ!! これこそオリンピック!!
  三月  競技中のアスリートの汗、TV観戦のこちらも汗、真夏の祭典を堪能しました。「平和」が屈託をもって胸に迫る一句。

ぎんなん、人日子、八十八、青蛙、すな恵、ゆりかもめ選
負けたって日本一の汗である  青柘榴
  ぎんなん  そうです。あなたたちより強い日本人はいないのですからどうぞ胸をはってください。
  人日子  メダルに届かなくても精一杯頑張る姿は美しい。
  八十八  たとえメダルに届かなくても、日本の第一人者として、それまでの努力や精神力は否定されません。健闘の汗と涙に、ただただ感動です。
  青蛙  勝てないと何だぁと思うけど、各国で一番でないとオリンピックには出場できないんだから、やっぱりすごいことだと思う。あの舞台に立つことは。
  すな恵  まったくそのとおりです! すべての選手におくりたい言葉。
  ゆりかもめ  メダルが取れなくても、気持ちのいい汗であって欲しい、爽やかな句です。

えつの、さかえ、カシオペア、洋子、逆ベッカム、もね選
聖火ひとつ地球一つを誓ふ夏 松ぼっくり
  えつの  ロンドンオリンピックを期に世界平和を願う気持がこめられていて好きです。
  さかえ  オリンピックの誓いだけでなく戦争も早く治まることを願ふのみ。
  カシオペア  聖火ひとつ地球一つを誓ふ夏&地球の何処で戦争をしている、悲しい現状がありジヤーナリストの方が亡くなる、悲しい事がありました。早く本当の意味のオリンピックが出来る事を願っています。
  洋子   本当に平和な地球一つになるといいですね。
  逆ベッカム  オリンピックは平和の祭典であり、メダルの数を争う国威高揚の場ではないはず……。ひとつの地球を願ってます。
  もね  聖火の下に、まさに地球は一つ!

5点句
親タカ、ぜぶら、兼光、杉山久子、猫ふぐ選
背泳ぎのためのふたつの耳揃う 町田美香
  親タカ  そっかー! 背泳ぎって、まず耳から着水するんだネ。ふたつの耳が、誰より何より「金」をねらっているんだ。
  ぜぶら  「背泳ぎのためのふたつの耳」は、背泳ぎのための背中の大切な大切な相棒だったんだね。スタートの位置についたふたつの耳は、心臓の音を聞きながら相棒の背中をグイッと押しやる準備をする。行くぜ!
  兼光  泳ぐために耳は帽子の中に畳まれるのだが前を見ることが出来ない背泳ぎのためには感覚器としての両耳を揃えなければならぬ。研ぎ澄まされたものとして。
  杉山久子  オリンピックでなくともいいかと思ったが、泳ぐということをこのような角度から詠んだ句を初めて見たので新鮮だった。祈りにも似た静けさに惹かれる。
  猫ふぐ  今回、背泳ぎは観てないけれどイメージできました。二つの耳がこんな役割を果たしているなんて知らなかった。人体の神秘に触れた感動的な句です。

平平、魔心地、未々、雪花、犬鈴選
八月や人の夢まで背負う人 あき
  平平  オリンピック選手たちはみんなの期待の星。 人々の思いを背負ってたたかってるのがよくわかる句だと思った。
  魔心地  マスコミの過剰報道のせいか。自ら掴んだ五輪切符。もっと楽しめば良いのに! でも、プレッシャーの中、結果を残す選手は凄いと思います。
  未々  頂点に立つ若者の晴れやかな笑顔は素敵! でも、私は敗者の姿に心惹かれます。どの若者も家族、仲間、コーチ、地元や国家の応援を背負って精進してきたのでしょう。ありがとう。
  雪花  本当に見てるだけで、夢を見させてもらいました。
  犬鈴  国民の期待を背負って立つオリンピック選手達の重圧感。それでも、やってやるぞという気迫を感じる一句。

4点句
遊人、浜田節、ひでこ、なゝ選
宣言は女王陛下夏手袋 ゆりかもめ
  遊人  オリンピック平和宣言の女王陛下の存在感とその美しさ。
  浜田節  夏手袋は普通私たちはしないものだけれど、女王陛下となれば、しなれた物だと思う。五輪と来てこんな所に目をつけた作者にお見事と言います。シンプルでいい句です。
  ひでこ   下五がきれいです。とてもいい開会式でしたね。
  なゝ  夏手袋に統べられるこの夏のさまざまなできごと。それに女王陛下も統べられているのだ。

3点句
たっ君、松ぼっくり、おせろ選
熱帯夜ザパッと切り裂く槍一閃 魔心地
  たっ君  熱帯夜をザバッと切り裂いてもらえば涼しいやろうなぁと思い拍手! また槍一閃で銀メダルもらった人にも拍手です!
  松ぼっくり  一投の一瞬のきらめきを切り取っている、素晴らしい。
  おせろ  元気選手の勢いのある投てきなら今年の熱帯夜も切り裂いて飛びそうです ザバッが勢いが出ていいと思いました。

まほろ、春告草、一走人選
夏惜しむ卓球台の海の色 雨月
  まほろ  「卓球台“は”海の色」の方が良いのではないかと少し悩んだが、作句の意図を汲み取って頂いた。卓球台の色だけでなく、選手の服の色などまで浮かんでくる。
  春告草  海の色と表現して四角い卓球台が大きな景になり広がりを感じたこととあと一年たっても読み返したとき色褪せない句だと思います。素敵な句ですね
  一走人  私事ですが、中二の孫が卓球をしております。卓球団体女子が銀メダルになった試合を必死で応援していました。球のスピードが速く卓球台の色までは確認していませんが、海の色だったのか!と納得しました。

大中博篤、いつき、あき選
泳ぎ終えし体をつつむ国旗かな 杉山久子
  大中博篤  勝者の静かな誇りが見えてくる。やはりこの景はプールでないと活きてこない感じがした。
  いつき  アジア大会でもなく世界選手権でもなく「オリンピック」の句って、考えてみると案外難しい。この句も微妙なラインだけど、中七下五の映像喚起力を思うと、やはり巧い一句。
  あき  競技後、国旗で包めるのはオリンピックならではだと納得。「走る」ではなく「泳ぐ」も、夏のオリンピック感ありありだ。

2点句
オパール、柊つばき選
泳ぎきり後輩を抱き悔いはなし もんきち
  オパール  金は取れなかったけれど北島康介、自分の為、後輩のために泳ぎ切った姿に感動しました。
  柊つばき  北島のすがすがしい顔がとてもよかった。すごい人だと思いました。

レモングラス、とりとり選
月涼し床の着地の決まりけり 桔梗
  レモングラス  微動だにしないあの着地はざわわと体中が喜びました。句も決まってますね。
  とりとり  体操の床の着地の決まった爽快感を“月涼し”としたのがお見事。

紗蘭、牛後選
白塗りの五輪の色を言えぬ夏 ちろりん
  紗蘭  一番同感できた句です。そしてここにも言えない人がひとり。
  牛後  ちょっとオリンピックの熱狂についていけない気分に共感した。作者の意図とは違うかもしれないが、私はついていけなかったので。

豊原清明、まんぷく選
ニンゲンに順位美しき夏の朝 なゝ
  豊原清明  味がある。なぜかニンゲン表記が怖い。
  まんぷく  秀でた者は称えられて当然でありそうで無い者はそれで良し。人生いろいろあって良いと思うのである。

藍人、みちる選
サイダー呷るボルトの指し示す宇宙 まほろ
  藍人   ボルトのあの指先は宇宙を指し示しているんですか。「燃えよドラゴン」でリーが月を指さして「don't think. feel!」と言っていたシーンを思い出しました。哲学的な雰囲気はよく似てますよね。
  みちる  あのボルト選手独特の大見得、良いですね。サイダー呷る格好と、よく調和します。そして彼が指し示すのは前代未聞の記録の宇宙。

コナン、ケンケン選
東スポにまつとうな記事黄金虫 破障子
  コナン  それ程オリンピックの感動が大きかったのでしょう。日本中が揺れていましたもの変な記事など書けますか。そして金への思いが黄金虫になったかな。
  ケンケン  いつも「宇宙人発見」のニュースが多いイメージなので、普通のスポーツ記事に、逆にビックリします。考えてみれば、それが本来当たり前なんですけど……。

エノコロちゃん、理酔選
西瓜の種飛ばせば父が金メダル 瑞木
  エノコロちゃん  いいですねえ。この父親とのカンケイ。人、だれだって絶対に、金メダル=得意なことがありますよねえ。たまたま「スイカのタネとばし」がオリンピックの(今の)種目にないだけですもんねえ。この父子愛に一票です。やられましたあー。
  理酔  この句が一番オリンピックから遠い句でしたのでいただきました。私、オリンピックとかマックとかディズニーとかが嫌いなんです。当然、良い句です。

こまりやま、迂叟選
身を槍に変えて炎天踏み抜かん 正人
  こまりやま  暑くて何もする気にならない気持ちにえいやっと気合を入れる感じがしました。身を槍に変えるというのがいいです。踏み抜かんもかっこいい。
  迂叟  表現の力強さがすばらしい。

1点句
夜濯や手を止めて聞くオリンピック 空山
  鞠月  ラジオの向こうのオリンピックの喧騒と、こちら側の静かな夜との対比がよく出ていると思いました。

熱帯夜眠られずにオリンピック見る エノコロちゃん
  多久美  まさにその通り昼と夜の時間帯が逆転、まあ昼間の眠い事、眠い事。

父超へた娘やロンドンの夏に立つ たま
  信野  ロンドンの夏に立つが好きです。涙が出て手がいたくなる程でした。

東洋の魔女見し頃や秋夕焼け 七草
  まるにっちゃん  当時5才知るはずもないが、今でも回転レシーブは得意。アタックNo.1を見て中学時代バレー部所属でした。

空中へメビウスの汗体操金 みちる
  唐草サ行  ミラクルな演技に驚くばかりのはらはらドキドキのオリンピックでした。

夏休暇オリンピックに合わせけり 清流子
  輝女  東京五輪が決まったら私も仕事休んで応援に行きたいです!

敗れれば闇が来るぞと汗は言う ゆき
  七草  頑張りの結晶である、味方の汗がそっと言うのですね。怖いですね。

イギリスの時間に添うて過ごす夏 たかこ
  ザッパー  時間に余裕がありそうで羨ましい(笑)

八月のメダル完璧なる着地 ぜぶら
  お手玉  予選で失敗した着地も決勝ではピタッと決めて金メダルおめでとう。

病む人と微笑む五輪今朝の秋 未々
  チャンヒ  「五輪」という単語を使って、こんなやさしい俳句が出来るのか、と感動。

204の国旗煌めく夏の空 権ちゃん
  依里  平和の象徴とされるオリンピック! 古代もオリンピックの間は戦いを休止していたという。204ヶ国の参加、煌く国旗が平和を祈っていると聞こえてくるようです。

夏の月焦がす聖火のめらめらと 人日子
  カラ嵩ハル  何年たってもすぐにロンドンとわかる実に印象的な聖火でした。

サングラス放りQちゃん金メダル 一走人
  クローズ   今、今Qちゃん……と思いつつも、好きだった選手たちの活躍や出来事は、いつまでも色褪せる事なく記憶に残っているものですね。私も過去の選手たちの活躍を思いだして懐かしくなりました。

金メダル級のまぶたよ大昼寝 猫ふぐ
  しのたん  同感! 共感! 実感! 時差を大昼寝で克服しての応援頑張りました。まさに金メダル!

とろろ、美味しゆうございましたと逝きし人 蓼蟲
  Blanca  誰の事を詠んでいるのだろうと知りたくなりました。そして、円谷幸吉さんの事を知りました。今までと違う俳句の形を教えて頂いたような気がします。また句読点がある事で間を感じ、その間が全体の重さを少し軽くしているように感じ選ばせていただきました。

輝きは皆一番の夏五輪 洋子
  一心堂  同感です、勝っても負けても選手は輝いていましたね。

聖火点火涼しき星をおどろかす いつき
  正人  なるほどオリンピックである。上五字余りの打ち出し方がグッド。

万緑や生まれただけで金メダル のり茶づけ
  山ぐるぐる  まさしく素直にそのとおり、今ここにいるすべてが奇跡だって、照れもせずに思いました。

眼光の薫にIPPON生ビール 殻嵩はるお
  ぐみ  まさに眼光が試合のときにはキラリとかわりすごかった! 生ビールで一杯もよくわかる

明易の実況テレビ絶叫す 樹朋
  瑞木  最近のアナウンサーは、絶叫し過ぎだと思います。

天高く五輪晴れとでも呼んじゃうか 藻川亭河童
  駝楽  テーマが収まりにくい中で、字余り気味ですが、天晴れです。

夏色に染まらせてをる五色の輪 ザッパー
  生糸  多くの種目の熱戦が、オリンピックが終わった今も思い浮かびます。

金メダルかじる夢みる天花粉 すな恵
  藻川亭河童  芭蕉先生の言われる如く【発句はただ黄金を打ちのべたるように作すべし】が、俳句の醍醐味だと信ずる。簡単にA+B≠Cでは無いのだ。この句の醍醐味、天花粉(天瓜粉、てんかふん)は動かない。一句一動詞の原則から言えば不安はあるが、体言止めで座りがよくなり安定している。かあちゃんの独り言を微かに聴いた。お風呂上りのぼくちゃんに、母さんは、ぼくの両足を屈伸させながら、口癖で祈るのだ。【ぼくちゃん!金メダルは齧らなくてもいいからね!お母さんに本当の純金メダルちょうだいね!】ぼくのふくよかな太ももをさらに豊かに仕上げる天花粉。ぼくはしあわせです。

ロンドン五輪中矢選手よありがとう えつの
  亜桜みかり  同感!!

干し柿もち美味しうございましたと書き遺し 元旦
  蓼蟲  高倉健主演の映画“駅STATION”のある場面で、円谷幸吉選手の遺書が淡々と朗読される。そのときの衝撃は今も忘れられない。掲句作者に、親愛の情の湧くを抑へ難し。

飛びこみの時空の歪みへと進む えりぶどん
  サキカエル  飛び込みをするまでは真青な青空がプール一面に写っていたはずが飛び込みと同時にどんどん歪んでいく様子が見える。「空の歪みへと進む」というところが好き。

今月の無点くん
倫敦やニッポンチャチャチァの暑き夏 まんぷく
北アイルシェイクハンズや夏五輪 駝楽
なでしこの闘いの夏始まりぬ 藍人
短夜を金へと願う五輪かな 西条の針屋さん
テムズ河わたる夢みて明易し ひでこ
世界中炎暑聖火の消えるまで チャンヒ
熱狂に遠き競技も夏季五輪 青蛙
天高し努力根性金メダル カシオペア
選手らの皆歯は白し雲の峰 鞠月
戦ひも文化ごとなり黒ビール じろ
マンゴーパフェもののけ姫の金メダル 明日嘉
夏五輪高さを競ふ広告塔 ソラト
虹よふたたび浅見八瑠奈の双眸へ 三月
踊りませ五輪音頭をロンドンで 輝女
選手皆メダルは重し酷暑かな 柊つばき
ゴーグルを外せば一人の人間に 八十八
西瓜食ぶ男子体操メダル提げ レモングラス
君が代を口ずさむ夜やハイボール 狸穴けら
白と青夏の夜かなしやわらみち こてぞう
何個目の金メダルなる今朝の秋 渡部五龍
ロンドンの平和な戦燃える夏 生糸
国旗ひるがへる走れ飛べ投げよ夏 だりあ
洗ひ髪オリンピックの始まりぬ 朗善
国歌斉唱ロンドンは白秋 依里
サングラス外してやさしアスリート 不知火
流れる汗内村航平金メダル 信野
奇跡ではなくこれこそ実力天高し 安
夜濯ぎの間に間にのぞく五輪かな とりとり
表彰台の天辺に立つ夏の星 雪花
玉の汗キラキラしてる金メダル たっ君
聖火台沙羅双樹の花灯し 都
国技でふ重きメダルや霧の街 ほろよい
退屈な太陽の夏金メダル 理酔
銀獲りて悔しいと言う小望月 紫音
ニムロッド奏で白夜の競技場 兼光
みどりの丘万国の旗ひるがへり さかえ
拳突き上げ熱帯夜のブラウン管 亜桜みかり
夏空に日本の槍の軌跡かな 迂叟
シャッターの囲む海女だった選手 紗蘭
走って日の丸を背負うなど夏の果 親タカ
白シャツに五輪の染みの遺りけり 大阪野旅人
ビスケット食べて英国人となる ケンケン
ただ強いだけじや届かぬ夏の果 ポメロ親父
ベッカム参上ロンドンオリンピック 逆ベッカム
目を見張る皆のための夏夜かな ペプチド
弧を描く10点満点天の川 まるにっちゃん
洋弓の呼吸七秒夏五輪 唐草サ行
健脚が絡み合っては国ぞ国ぞ 豊原清明
センターポールに日の丸揺るる水中花 おせろ
五十年五輪音頭の盆踊り もね
朝顔やアーチェリーの型真似てみる 遊人
寝不足はオリンピックよ熱帯夜 しのたん
おい河鹿聖火リレーに選ばれし 多久美
赤ちゃんのひと足からのオリンピック 今比古
風起これロンドン時指す熱帯夜 八木ふみ




第178回兼題
「銀」の字の入った句
出題者 不知火さん

1 爽やかや百歳といふいぶし銀
2 銀ぶらはとうに死語なり秋の暮
3 けんかして銀木犀の降る夜道
4 軽銀の銀婚記念宵月夜
5 秋の夜の銀の燭台悔い深し
6 銀の湯船をカトレアの香で満たす
7 銀杏まだ青しAKB48
8 裏切りの銀三十枚ユダの虫
9 金色の風銀色に秋遍路
10 金の鯉へ銀の鯉寄る秋の昼
11 秋彼岸父賜りし銀時計
12 もつれ糸のほぐれし思ひ大銀河
13 月涼し銀の粉さへ撒ひており
14 シルバーの高騰ニュース銀河の夜
15 特休で山芋掘りの銀行家
16 殿からの銀の盃古希祝ひ
17 銀環に古墳三百秋深む
18 ちひろ読むチョコの銀紙はぎながら
19 まち歩き先々で逢う銀やんま
20 鬼の子や天につながる銀の糸
21 女優なり銀杏絨緞颯爽と
22 星流るる知らせ銀座線車内
23 あと一歩銀メダルシブし行く夏や
24 銀漢や悪意に満ちた地上かな
25 銀舎利を高めに盛りて今朝の秋
26 芋の露古代ガラスの銀化玉
27 ふる里の鰯群れたる銀の海
28 説明のチョーク銀河をかき回す
29 冷ややかに水銀の銀昇りゆく
30 銀漢や受精行う海の底
31 白を銀黄色を黄金に良夜かな
32 月白や水銀は微熱に還る
33 銀紙に包む味覚や秋祭り
34 銀むくのスワトウメード蜘蛛の糸
35 秋晴の生家小さし銀の匙
36 つむぎ織銀糸沈めて秋の昼
37 汗光るなでしこジャパン銀メダル
38 露の夜玉なす前の銀世界
39 出自疑はれ銀杏睨みをる
40 銀世界まぁだだよ今夏の延長戦
41 水澄みて銀貨の旅のなほつづく
42 秋の風居住者一人の銀波荘
43 オリンピック銀を取るのもすごいこと
44 水銀燈現し世照らす夜長かな
45 新涼を掬いし今朝の銀の匙
46 桐一葉細き手首の銀時計
47 新涼や転がって来る銀のすず
48 とんがって銀の鎖や敬老日
49 見上ぐれば地球飲み込む銀河かな
50 こだわりて銀色グッズ揃う夏
51 銀漢や師匠似顔のハンチング
52 猫の子やしっくりいかぬ銀の鈴
53 曽祖父の一ドル銀貨月触るる
54 弔いの言つひに出ず冬銀河
55 吾の上に玉兎銀蟾音も無く
56 金打ちへ捨て身の銀や桐一葉
57 太刀魚の銀は傷つきやすきいろ
58 銀もくがねもけふの濁り酒
59 恋文は銀河に流してしまい候
60 折り紙の銀乱反射する月光
61 飛車角の縁台将棋銀と歩と
62 敬老日バターケーキに銀の粒
63 シャガールのふたりが消えた銀河かな
64 秋声や銀髪混じる歳となり
65 人の世や銀河の果てに色無き風
66 銀輪や秋風背負いバンク跳ぶ
67 恋舞いて銀色夏生夜長の詩
68 B面の銀の迷路をナメクジラ
69 鮭のぼる銀の裸身のフラメンコ
70 銀色の月の調べや夜のうみ
71 銀輪を駆れば来島瀬戸は秋
72 飛車角歩金銀王手放屁虫
73 銀色の鈴虫、哀しすぎるのは
74 会えなくてごめん月夜の銀ぎつね
75 アイロンの銀の航跡小鳥来る
76 百台の放置自転車月は銀
77 銀翼の眼下別れし竜田姫
78 かぶりつく銀鱈味醂秋の雨
79 初恋の銀チョコパンや秋の声
80 銀婚式助手席いつも秋茜
81 表彰の銀のカップやすぎし春
82 生活が必死か銀河高くあれ
83 雨上がり西日に輝く燻し銀
84 長き夜や銀座裏にギムレット
85 銀天街拡幅来たる夏に向け
86 九月の銀ホイルグチャグチャのボコボコ
87 銀漢に銀のピアスを置いてくる
88 鈴懸の実上へ上へと銀のさじ
89 日焼せし肩甲骨の銀色に
90 十六夜や銀の指輪と置手紙
91 銀の雨映す鏡台秋深し
92 大西日金波銀波の双海駅
93 音の無き悲鳴ながるる銀河かな
94 風鈴列車は銀河で終点なり
95 銀不服新米食うて目指せリオ
96 銀時計目指して今日も夜食かな
97 鰯雲きらきらきらり銀メダル
98 日銀の銀杏IEONの金木犀
99 ふところに銀の匙もつ鰯雲
100 銀色の空をはがれて秋しぐれ
101 秋来たる銀のフォークでスパゲティ
102 野分めく夜や水銀体温計
103 銀匙の掬う至福や熟柿食う
104 銀行の鈴虫鳴くや融資席
105 そう言えば銀婚記念日栗おこわ
106 撫子や曾祖母の名は小銀とか
107 猫じゃらし無くしたものは銀の鈴
108 銀竹のヌーンヌーンと泣く夜かな
109 鈴虫の羽根震わせて銀の鈴
110 銀幕に夏の引っ掻き傷がある


次回兼題「家族」をテーマに 出題者 ふづきさん
次々回兼題「好きな植物名をいれて一句」をテーマに 出題者 空さん

【兼題の扱い方】
季語「xx」 … 副題含む季語を入れる。
「xx」をテーマに … 内容に沿って詠む。
「xx」の字の入った句 … 単語そのものを詠み込む。



祝!大漁旗獲得!
ゆきさん
獲得点数 17点(174号〜179号)
 次号、ゆきさんの大漁旗獲得記念十句を掲載します。

〈参加方法〉
 1 「今月の投句」から好きな句を選ぶ。(選句)
 2  その句の感想を書く。(選評)
 3 「次回兼題」の一句を書く。(投句)
 ※1〜3、俳号(本名)、〒住所、電話番号を明記して、編集室「ザ 句会」宛にお送りください。一人一句まで。選句は番号と俳句を共に記入して下さい。
  番号はお間違えなく!

  今回の締切は10月8日(月・祝)必着です。
 Eメール宛先 kukai@marukobo.com
 インターネットや携帯電話から下記の場所にアクセスしていただくと、専用のフォームを使って簡単に投句&選句ができます。
 http://www.marukobo.com/kukai/


【最終捕れ高】

17点
ゆき

16点
いつき
しゅん

14点
杉山久子
とりとり
のり茶づけ
桜井教人
松ぼっくり

13点
ポメロ親父
コナン
青柘榴

12点
ひでこ


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100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

テレビ/ラジオ
NHK総合テレビしこく8(四国四県)
 「バトル! 五・七・五2012学生俳句チャンピオン決定戦」
  10月19日(金)19時30分〜20時43分

NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  10月9日(火)11時40分〜
  10月23日(火)11時40分〜

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)・住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム・チャンヒのイラストポストカードが贈られます。



執筆
Pioneer Sound Lab. 音俳句
http://pioneer.jp/soundlab/
  ウェブサイト上に組長の選評が毎日一つ発表されます。投句も受け付けています。

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

「星座ー歌とことばー」(かまくら春秋社)
 秋号で新作7句

東名高速「高速家族」秋号

愛媛新聞
 「集まれ俳句キッズ」毎週土曜日

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「団栗」締切 … 10月23日(火)


句会ライブ/講演など
南長崎小学校句会ライブ
 10月4日(木)

長崎市立矢上小学校句会ライブ
 10月5日(金)

河辺村龍馬脱藩の道イベント俳句吟行会
 10月7日(日)

宇和島東高OB会での講演
 10月13日(土)


イベント
瀬戸内海俳句大会
 10月20日(土)

俳句対局
 10月21日(日)

まつやまお城下ウォーク
 10月27日(土)

いつき組的秋季大運動会
 10月28日(日)

ふるさとふれあい塾 in 松山大学
 10月31日(水)


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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

第十五回俳句甲子園
うに子 俳句甲子園スタッフの方、お疲れ様でした。
魔心地 俳句甲子園の学校ボランティア楽しかったです。合間に観戦した「チャレンジ俳句甲子園」も面白かった。来年は、ボランティアかチャレンジ甲子園参戦か、悩みます〜(笑)。
編 今年の俳句甲子園へも多くのお便りをいただきました。今月号特集は俳句甲子園を裏方から見た記事が三者三様に書かれています。魔心地さんはスタッフ&観客、2サイドからの観戦の御感想!

安 今年は、子どもたちにとって貴重な経験ができた夏休みでした!! まず、チャレンジ俳句甲子園!! これは、こども二人はもちろん、連れて行った私も俳句甲子園を見るのは初めてで、三人とも雰囲気に呑まれてしまいました。もっと練習しておけばよかった……と後悔したのですが、言いたいことが上手く言えなかった子ども達は「このままでは終われない!」とリベンジに燃えております! この先の成長が楽しみです! また、ラヂバリにも出演させてもらい、そちらの方では子ども達は皆生き生きと自分の意見を述べることができ、俳句の楽しさを再認識できたようです。このような機会を作っていただき、本当にありがとうございました。
編 チャレンジ俳句甲子園に選手として出場したKKKの安さんからのお便り。子ども達の戦いは高校生に勝るとも劣らない素晴らしい勝負でした! チャレンジ俳句甲子園についてのレポートは5ページ参照。

先月号放歌高吟の間違い
読者多数 愛媛に俳句甲子園の優勝旗がきたのは松山中央高校に続いて三年ぶりなんじゃ……。
編 先月号18ページ一行目ですね。多くの方からご指摘を頂きました。大変失礼致しました。何度か書き直してる間に消す部分を間違えたのだとか。申し訳ありません。

表紙写真とリレーエッセイ
木琴 こっぱずかしい短文を書いてしまい、ひょえー状態です。が、ががが、香雪蘭さんの写真がすてきで、とにかく嬉しかったです! 選んでいただいたのか、偶然なのか、いずれにせよ、私としてはぴったんこの写真で感動〜。香雪蘭さま、ありがとうございます♪
編 先月号リレーエッセイを執筆していただいた木琴さんより。写真は偶然です!

百年百花への感想
えつの 9月号のだりあさんの「夏ききやう妥協許さぬ尖り方」の表現が凜としていて好きです。
編 現在連載中の四名は今月号で連載第三回目を迎えます。引き続き応援よろしくお願い致します!

祝・大漁旗獲得決定!!
ゆき 9月号の雑詠に名前がなく、投句を忘れていたことにショックを受け、力なくザ.句会を見たら、14人もの方が選んでくださっていていっぺんに暑さが吹き飛びました。嬉しかったです。ありがとうございました。
編 一気に14点獲得からの逃げ切り! 今期の大漁旗獲得者はゆきさんに決定致しました!! 来月号ではゆきさんの大漁旗獲得記念最新十句が掲載されます。お楽しみに。

ザ・句会取ったり取られたり
おせろ 初めての投句を西条の針屋さんにとっていただき思わず子供にVサインしました。ありがとうございました。いつか会える日を楽しみにしています。
サキカエル 久方ぶり魚のアブクへお便りします。とりとりさん、私の句を選んで頂きありがとうございました。「なんと言ってもこれが一番“眩しい句”でした」とコメントすごく嬉しかったです。
編 初めての人も久方ぶりの人もおめでとう、おめでとう!

へたうま仙人におたより
ポメロ親父 こちらはお初です。追放にしないでね。
編 よろしくお頼申しますぞ。

渡部五龍 仙人のコメントが大好き。コメントしてね。
編 今月は追放ぢゃ!

「大人コン」への質問
鞠月 「大人コン」について質問ですが、昨年の応募の際に入れた句を今年の応募に再び入れることは構わないのでしょうか?
編 OKです。ただ、全く同じ句稿だと通用し辛いと思われますので、その辺はご注意を!

投句再開!
紅紫 お久しぶりです。忙しさにかまけて投句を怠ってしまいました。毎月マガジン楽しみにしています。よろしくお願いします。
編 おかえりなさいませ。いつでもウェルカムですぞ!

特別な一号
えつの くらむぼんで「さくらんぼ」の句を「地」にとって頂きありがとうございました。選評がとっても嬉しいです。「くざとも」に載せて頂き「みかり」さまの温かいお言葉に感動しています。177号はたいせつな宝物です。暑さのためお礼がおそくなりゴメンナサイ。
編 いろんなコーナーに投句したり、句会に行ったりしていると、時折特別な一号が生まれることがあります。喜んでいただければなによりでございます!

組員の生活
藍人 魔女の一撃を食らって、生まれて初めて鍼灸院へ。注射が嫌いなのに1回に30か所も鍼を打って草臥れ果てている。どうも最近の魔女は、箒ではなくルンバに乗っているらしい。ご用心のほどを。
編 ルンバに魔女とはまたミニチュアな……想像するとかわいい。

Fin
すな恵 エノコロちゃん♂様、お返事ありがとうございました!! ときどきアブクに掲載される直筆のお手紙大ファンでした。あのスピード感がたまりません。てっきり女性かと勘違いしていましたが、今月号のザ句会の選評を見たらよくわかりました(笑)。こちらこそよろしくお願いいたします♪
編 ひょんなことから始まった誌上文通、ひとまず終結! 最後に久々載せてみましょう。すな恵さんのリクエストで「実録エノコロちゃん♂」です、どうぞー。


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くざとも

毎月たくさんの句会が各地で開催されています。それぞれの句座にそれぞれのカラーと名物キャラあり!! というわけでこのコーナーでは、句会の紹介とともに、句会の人気者、そして期待のニューフェイスを紹介していきます。

人気者
さえずり句会
俳号 海田(かいた)

 「南海放送・一句一遊に投句しよる海田さんゆうて、日土東の人らしいんやけど誰かなぁ?」「わかった、探してみろうわい。」これは、まとむとぽぽんたちゃんのメールのやりとり。
 「見つけたで。次の句会に誘うてみる。」海田さんは、ぽぽんたちゃんのご近所さんだったのだ。こうして平成二十二年九月、海田さんがさえずり句会に現れた。一句一遊に投句をはじめたのがきっかけで句歴は二年五ヶ月。さえずり句会では貴重な男性、しかも独身。どう見ても柔道部出身のような体型でありながら、まったくの文系。かなりの読書家。コーラス部の助っ人を頼まれるほど歌がうまく、カラオケでは「残酷な天使のテーゼ」を熱唱。アルコールではなく、キリンレモンがお好みというかわいいキャラクターの持ち主だ。句会参加当初から選句眼と選評には定評があり「これはさえずり句会の秘密兵器になる」と平成二十三年のまる裏俳句甲子園に初参戦。惜しくも本選出場は逃したが、近い将来まる裏の壇上で海田節が聞けるに違いない。海田さんの活躍に期待が高まるばかりだ。
(文・まとむ)


新人
じゃこ天句会
俳号 流星(りゅうせい)

 じゃこ天句会は宇和島東高校の生徒さんと大人との句会。現在「松山はいく」のガイドとして大活躍のしんじゅさんはじゃこ天句会出身。時々活を入れに来てくださいます。流星さんはそのしんじゅさんに誘われて昨年秋より俳句を始めました。

1 俳句を始めて良かったこと
 知り合いが増えたこと。句のなかでは誰にでもなれる、どこにでも行けること。自分自身を飛び越える翼ができたみたい。

2 俳号の由来
 大好きな中島みゆきの曲のなかでも一番好きな「流星」から。

3 特技は?
 誤字脱字の発見。学芸員だったせい?(なんと元学芸員の天玲さんとお知り合いでした)。

4 好きなことは?
 美術展に行くこと。県美術館の「二十世紀の巨匠」展も楽しみです。時代劇、とくに「鬼平犯科帳」。NHK「平清盛」にもはまっていて所縁の地を旅してみたいです。

5 お知らせ
 宇和島伊達博物館で不定期のボランティアしてます。特別展「政宗見参!」(10月8日まで)では、重要文化財の伊達政宗の具足など、貴重な資料を多数展示します。 是非、お越しください!
(文・更紗)


句会の開催日程等詳細は句会カレンダーのページをご覧下さい。


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鮎の友釣り

173

俳号 空(くう)

ふづきさんへ 永遠の少女的風貌に似合わず、どきっとする句を詠まれるふづきさん。一度ゆっくりランチでもしたいですね。土曜カルチャーの前とか〜〜。

俳号の由来 本名の久美子からくうちゃんと呼ばれています。でも、「くう」だと犬の名前みたいなので、わかりやすい漢字に変換してみました。

来し方行く末 大学を受ける時に、英文か国文か迷って逃避で園芸学部を受けたら、受かっちゃって、人生が変わってしまいました。学部の先輩と結婚して、愛媛県人になり、花屋をしています。5、6年前に友人のむめもサンを通じて州麻子さんに出会い、いつき組を知り、今日に到ります。いつき組の裾野の一石になるべく、楽しく精進していく所存です。

写真 極楽の途で天女の真似。幽霊ではありません。

次回…むめもさんへ 一緒に俳句を始めてから、実は「ともぞう一家」的人柄と知りました。はは。


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告知


全酒類卸 山澤商店 杯
俳句対局 龍淵王決定戦

 俳句対局とは、囲碁や将棋の対局戦を模した、一対一の句合わせ対決の句会。トーナメント戦で対戦を行い、優勝者「龍淵王」を決定する。

日時
10月21日(日)13時〜
(12時30分開場、16時終了予定)

場所
松山城二之丸史跡庭園内、観恒亭(かんこうてい)

参加無料
*松山城二之丸史跡庭園入園料は別途(大人100円、子ども50円)

試合の流れ
 先手と後手に分かれ、まず先手が、その場で席題として出された俳句に対し、その俳句の中の単語を一つ頂き、制限時間内に作句を行う。同様に後手は、先手の作った俳句から、単語を頂き作句。交互に数回作句を行うことで対戦する。審査は、それら俳句の点数と、残り時間の点数によって行い、勝敗を決める。

出場&観覧申し込み締切
10月15日(月)必着
*出場が決まった方は、当日スーツや着物にてお越し下さい。観戦のみの方は、服装の指定はありません。定員になり次第締め切らせて頂きます。

賞品
優勝・準優勝に賞品あり

問い合わせ先
『100年俳句計画』編集室

主催:俳句マガジン『100年俳句計画』編集室
協賛:(合名)山澤商店




今年もやります!選評大賞2012
選句の対象となる句
・「100年の旗手」掲載句
 (2011年10月号〜2012年9月号)
・ その中から、心を打たれた俳句を1句選んで、選評をお寄せ下さい。

記載事項
・掲載句1句(掲載号、作者名を必ず明記)
・選評 20字×15行(300字)以内厳守
・俳号、本名、住所、電話番号(必ず明記)

締め切り 10月14日(日)必着

応募先 100年俳句計画編集室まで、ハガキ・封書・FAX・メールでお送り下さい。
 ※送付の際、件名・タイトルに「選評大賞2012」と明記下さい。
 ※ご応募の際、他の投稿とは別にお書き頂きますよう、よろしくお願いいたします。

 お送り頂いた選評は、編集部で審査し、大賞を決定します。皆さまの選評、お待ちしております。




めざせ新記録! 俳人による俳人のための
いつき組的秋季大運動会

オリンピックイヤースポレク企画の今年最後のイベントです。純粋な運動会種目いくつか+詠みながら○○、○○中に何句!?などなど楽しい種目を企画中。めざせ俳人記録? ふるってご参加下さい。

日時 10月28日(日) 15時集合(15時30分〜17時30分開催)
場所 北条体育館 〒799ー2430 松山市北条辻1170番地6 電話089(992)1322
参加費 500円(イベント保険代含む)
申し込み締め切り 10月14日(日) マルコボコムまで




「私の俳句整理術」更に募集

 今度こそ来月号で、作った俳句の整理方法を特集します。自分だけの知っている効果的な整理方法がありましたら、教えて下さい。

送り先 本誌編集室「私の俳句整理術」係
 magazine@marukobo.com

締切 10月8日(月)必着




12月の第1土曜日は恒例の……!!
いつき組大忘年会のお知らせ

 毎年12月の第1土曜日は「いつき組大忘年会」の日。今年も盛大に開催致します。抱腹絶倒まちがいなし。たくさんのご参加をお待ちしています。

日時
 平成24年12月1日(土)18:30〜21:00(受付18:00〜)

場所
いよてつ高島屋9F ローズホール
愛媛県松山市湊町5丁目1−1
089-948-2111(代表)

会費
・大人 6,500円
・大学生以下 4,000円
・小学生以下 2,500円

参加申込締切
11月16日(金)必着!

参加方法
 忘年会参加希望の旨と、〒住所・氏名・俳号・会費区分(大人/大学生以下/小学生以下)・連絡先電話番号を明記して、ハガキ、FAX、Eメール、または電話にてお申し込み下さい。ご家族等複数でお申し込みの場合は、代表の方の〒住所・連絡先電話番号に加え、全員の氏名・俳号・会費区分をお知らせ下さい。

【投句・投稿に添えてのお申込はお控えください。】
※受付対応が遅れる場合があります。

 お申し込みをいただいた方には順次、受付完了をお伝えするハガキを郵送いたします。
※締切までにお申込いただいた方で、11月22日(木)までにハガキが届かない方は、お手数ですがマルコボ.コムまでご連絡ください。

問い合わせ・申し込み先(有)マルコボ.コム
〒790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
TEL 089-906-0694 FAX 089-906-0695
E-mail magazine@marukobo.com




100年俳句計画投稿締切カレンダー

 
 9/30(日) くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 zatsuei@marukobo.com

 10/8(月)
  ザ・句会
 kukai@marukobo.com
  100年の旗手感想
  魚のアブク

 10/31(水)
 くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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マルコボショッピング


マルコボ.コムのショップ店長まほろがアナタにオススメする逸品!
オンラインショップでは様々な商品を取り揃えて皆様のご来店をお待ちしています。


『俳句マガジンいつき組バックナンバーセット』
2004年セット(6月号〜12月号) 2000円(税込)
※マガジンとしての発行が始まった2004年6月号からのセットです。

2005年セット〜2007年セット 各 3700(税込)

2008年セット〜2010年セット 各 4400(税込)

*各号の内容につきましては、オンラインショップ内のそれぞれの号の商品詳細ページなどでご確認ください。
*本誌表紙裏のバックナンバー案内も参照してください。
*2011年は残部僅少の号が含まれる為、セットでの提供はございません。

オンラインショップ商品カテゴリ:俳句マガジン

コメント
過去の記事を読み返してみませんか
 本誌『HAIKU LIFE 100年俳句計画』の前身『俳句マガジンいつき組』バックナンバーを、大特価で各年毎のセットにしました。特に最近購読を始めた方にはオススメのセットです。過去の“あんな企画”や“こんな連載”に是非触れてみてください。もちろん、付録の句集もセットに含まれていますよ!



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編集後記


 俳句甲子園の俳句の点数について、昨年の本誌特集で問題提起を行った。それを踏まえて、約一年がかりで試行錯誤を行い、今年の大会では大きく改善することができた。実はこれは、俳句の審査に於ける、一つの大きな発明だと思っている。
 今回の点数の付け方を利用すれば、それぞれの俳句に対し、統一された軸の元、複数の審査員がそれぞれの立場で、短時間に採点することができる。つまりは、俳句を短時間に公正に10点満点で点数化できるということ。
 実は、ずいぶん以前から、囲碁や将棋のような俳句の一対一対決が出来ないだろうかと考えていた。チーム戦でなく、ディベートもない、一対一のガチンコ俳句勝負の「俳句対局」。しかし、今まで実現しなかったのは、納得のいく審査方法が見つからなかったから。それが今回、複数の審査員によって、合理的に点数を付ける方法が誕生し、実現することになった。
 10月21日に行われる初の俳句対局は、「龍淵に潜む」という季語になぞらえ「龍淵王決定戦」。
 俳句の質だけでなく、時間も競う俳句対局は、観戦するだけでもスリリングなイベントとなるはず。是非ご参加を!
(キム)


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次号予告 (180号 11月1日発行予定)


次回特集
大人コンに向け「俳句整理術&構成術」など


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2012年10月号(No.179)
2012年10月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子