100年俳句計画9月号(no.178)


100年俳句計画9月号(no.178)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
日光写真 木琴


特集1
季語「震災記念日」について考える


特集2
スポレク企画第3弾 ロンドンオリンピック開会式吟行会



好評連載


作品

百年百花
 桜井教人/山澤香奈/きむらけんじ/松本だりあ


100年俳句計画作品集 100年の旗手
 ターナー島/まりん/大五郎

百年琢磨 津川絵理子


雑詠道場 くらむぼんが笑った

初学道場 へたうま仙人

放歌高吟/夏井いつき

新100年への軌跡
 俳句/希望峰/宮下航
 評/樫の木/都築まとむ


読み物
私たちの100年俳句計画
Letter from spider garden/ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
本家 慶弔俳句帖/桃ライス
お芝居観ませんか?/猫正宗
まつやま俳句でまちづくりの会通信/暇人
一句一遊情報局
句集の本棚

読者のページ
選句&投句欄 ザ・句会
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
くざとも
鮎の友釣り
告知
マルコボショッピング
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー


日光写真
木琴

 ここ10年余りは、毎夏、八重山へでかけている。石垣空港についたら、まずはスニーカーから島サバ(ビーサンのことです)に履きかえ、足の指まで沖縄の太陽にさらす。凶暴な日射。
毎日、海とビールと洗濯の繰り返し。どんなに気をつけていても指の股以外は赤く灼け、足の甲には鼻緒のVの字がくっきりとつく。
 旅の終わりが来る。名残惜しくて島サバのまま搭乗する。
 翌朝、革靴を履いて駅まで歩く。靴下にくるまれた足の甲がまだ痒い。首筋にあたる東京の太陽の光のなんと柔らかく弱いことか。ものさびしくて、毎夜、風呂場で足の甲のVの字を確かめる。
 たった数日間だが、強い光へ、日光写真のごとく、私を晒す旅。焼き付けたものは、足の甲のVの字と思い出の感触。Vの字が褪せるころ、感触はようやく沈殿し始め、言葉にかえる秋となる。


目次に戻る


特集1

季語「震災記念日」について考える




 季語「震災記念日」(震災忌)は、大正12年9月1日に関東一円をおそった関東大震災の犠牲者の霊を弔い記念する日です。昨年の東日本大震災や、1995年の阪神・淡路大震災の記憶もまだ確かな現在、改めて「震災記念日」という季語を捉え直すことで、今後起こりうる災害(や事件)の日の「季語」と、どう向き合い、どう付き合うべきかが見えてくるはず。前回シリーズの「百年百花」を連載した四名が、それぞれの立場で考察を行います。


セピア色の悲劇ではない現実として
渡部州麻子

 数ヶ月ばかりの入院生活の末に三十六才という若さで父が逝ったとき、私はまだ小学校二年生だった。そんな子供にとって「死」は、たとえば童話の「悪い魔女はとうとう死んでしまいました」のように非現実的なものでしかない。本を開けばまた魔女が現れるように、何となく父もまた戻ってくるような気がしていたものだ。けれど、もちろん死者が戻ってくることは決して無い。その冷厳な事実は、水が沁み込むようにじわじわと私の心を浸していった。父の死とともに私は育ち、それはもう私の一部になっているのだと思う。
 歳時記に掲載されている「震災忌」は大正十二年九月一日の関東大震災を指している。もちろんそれは理解しているが、今を生きる人のほとんどが「震災忌」と聞いたときには同時に阪神・淡路大震災を思い、また、東日本大震災の記憶の生々しさに心をひりひりさせずにはいられないはずだ。私たちにとって「震災忌」は、単なる「防災の日」の由来でもなければ、防災訓練が行われるだけの日でもない。
 そしてまた私には、さらにその底に父の死が透けて見える。と言うより、父の死を通して、巨大地震という災害で突然失われた十万余という命を思う―と言ったほうがいいかもしれない。父の死越しに「震災忌」を思うとき、それは「ここではないどこかで、かつて起こったセピア色の悲劇」ではなくなる。不意にリアルな痛みと哀しみ、そして不条理へのやり場のない怒りのようなものを私のなかに生じさせる。「震災忌」のみに限らない。阪神・淡路大震災であったり、東日本大震災であったり、あるいは九月十一日。あるいは原爆忌。敗戦日。
 ならば、その痛みを、哀しみを、怒りを書きとめ、作品として昇華させたい。そう思う。
 けれど、お叱りを受けるかもしれないが、俳人としての使命感から詠まねばならない―と構えているわけではない。
 ただ、詠みたいことがあるのだから、それを句として結球させたい―いたって単純で自然な思い。
 とは言え、たやすくは言葉にならない。私には「震災忌」の句といえるものはまだ無い。己が未熟なだけなのだが、こういった句を詠もうとすると、いつも言葉が借り物めいてしまう。
 ありきたりのスローガン、読み手に届かないこちらの一人よがり、はたまた感傷過多。ああ違う違う、こんなんじゃないよなあ……と、句にならないままに消えていったたくさんの言葉たち。
 詠まない、ではなくて詠めない私。
 この原稿を書きながら、どこかで守りに入っているのかも、と今さら気がついた。詠みたいことがあるのなら、何度も失敗しながら恥をかきながら詠んでいけばいい。それだけのこと。
 今年もまた句にならないかもしれない。たくさんの言葉が消えてゆくだけかもしれない。でも詠むだろう。ささやかであっても、人として痛みや哀しみや怒りを覚える限り。

渡部州麻子
1960年生。第8回俳句界賞受賞。句集『黒猫座』。


いまここにある私として、震災忌を考える
加根兼光

 あれは成人の日をはさむ三連休の明ける朝だった。たまたま休みの間に風邪を引いて寝込んではいたが熱も下がってきていた。揺れは突然だった。家内の襟をつかみリビングのテーブルの下に押し込む。(まあ前の奥さんではありますが……ペコリ。)食器棚のグラスやカップが一斉に飛び出した。大阪の豊中だったので神戸のような被害はなかったが近所では落ちてきたテレビで赤ちゃんが亡くなったり同じマンションの一軒では家族四人が家具の下敷きになり助け出したり、そんな近所の騒動が一段落したところで町の様子を見ながら自転車で会社に向かう。当然、電車は止まりなぜか車も少なかった。道端で写真を気楽に撮っている人になぜだか無性に腹が立ったことを覚えている。
 会社にも大きな被害はなかったが社員の一人は東灘のマンションが住めなくなり、一緒に仕事をしていた仲間の中には生き埋めになった人の救出で一週間ほど仕事に出て来ない人たちもいた。
 俳句を始めたのは震災から七年以上がたった2002年の秋だった。
 五時十三分忘れざり阪神忌
 俳句を始めてから毎年、1月17日には神戸に行き「阪神震災忌」の句を何十句か作り続けることを自分に課した。
 2006年
 深爪の小指阪神震災忌
 2007年
 泡くぼむギネス阪神震災忌
 2010年
 阪神震災忌濡れた歩道に濡れ
 毎年毎年つくる「阪神震災忌」の句は年ごとに姿を変え、距離感を変えてゆく。年月が経ち「阪神震災忌」という季語が風化してゆくかの感に囚われることがあるが、年ごとに姿や形を変えて、年ごとに形を変えて、この季語は存在し続けるのだと改めて思う。
 阪神大震災は僕自身が経験している。しかし昨年の東日本大震災は、大阪市内で電柱が大きく揺れているのを眺めているだけだった。関東大震災については周りに経験した人すらもういない。いま改めて「震災忌(震災記念日)」という季語について考えることにやや違和感を覚えている。それはこの種の社会的季語=社会的広がりのある季語を他の季語と同列には考えにくい状況があるからだ。起こってしまった震災や戦争など、季語にとって大切な「季語の現場に行く」ということが困難な状況を前提として考えねばならない季語。そのような季語群にどう対峙すればいいのか。
 たとえば蝉は、生まれることによって季語となり、生きることによって季語となる。「震災忌」に代表される季語はどうか。その突然の惨事によって多くの死が多くの破壊が発生し、その現実によって生まれる季語。被災した人たちにとっては痛すぎる記憶として存在し続ける季語。季語と呼ぶには、あまりにも生々しすぎる東日本大震災、阪神大震災。
 が、その現実を「季語」という視点で捉え直したとき、個人の記憶を越えて社会的な伝達力のあるものへと変容を遂げてゆく。詠み手から読み手へ伝えられることで残ってゆくもの。それが俳句としての力、季語としての伝達力ではないのか。
 今回の東日本大震災についても詠む詠まないについての多くの意見が俳句誌上でも交わされた。実際に津波に襲われ、家族や友人を亡くし、家を無くし仕事を無くした方々の句は胸を打つ。
 が、ただ……と思う。遠く離れ、メディアであの惨状を見た全ての人にとっても、あの地震の震動は胸の中に届いた。あの津波に呑まれる絶叫が誰の耳奥にも響いたのだと思う。そう信じたい。
 繰り返されるニュース映像に慄きながら、東日本大震災の前の深秋に仙台や松島をご一緒に吟行した高野ムツオさんのご自宅数百メートル手前まで押し寄せたという津波が、見てもいないのに瞼に浮かんだ。
 見てもいないものを俳人のアンテナはとらえられる。心に留める。深く刻む。体験していないから離れているからと詠むことを避けることを、私は俳人として、潔しとしない。
 震災忌、阪神震災忌、東日本大震災の忌を過去のものとして封じ込めるのではなく、今ここに在る自分がその振動を受け止める覚悟を持って詠み続けるべきではないか。風化させずに伝えてゆくこと。すなわちその季語たちを詠み続けることを、私は己に課す。
 今年は9月1日には「震災忌」の句を詠もう。来年の1月17日には神戸の地に立とう。3月11日には「東日本大震災」を心に留めて句を詠もう。改めてそう思う日々である。

加根兼光
1949年生、大阪出身。第9回俳句界賞受賞。


季語「震災忌」復活の提案
キム・チャンヒ

 「震災記念日」(以下副題の「震災忌」)という季語を強く意識したのは、2001年の1月。阪神・淡路大震災の記憶がまだ生々しく残る中、「阪神震災忌」や「阪神忌」という季語について編集室で話をしている時だった。関東大震災による「震災忌」という季語がすでにあるため、阪神・淡路大震災を季語とする場合、「震災忌」に「阪神」を付加するのだけれども、そもそもの「震災忌」という季語に対して、どう付き合えばいいのか、当時は全く見当が付かなかった。大地震による被災者への鎮魂の思いを詠むのであれば、同時代の者として「震災忌」ではなく「阪神震災忌」という季語を選ぶ。「震災忌」という季語は、阪神・淡路大震災によって、完全に絶滅寸前季語になってしまったのだと、僕は勝手に決めつけた。
 それから11年。昨年3月11日、東日本大震災が起こった。まず我々に何が出来るのだろうかと考えた末、俳句の力でお金を集め被災地に送り届けることだと思った。そして、松山市社会福祉協議会の協力のもと、道後公園にて句会ライブを行い募金を集めた。その次に必要なのは、この大震災を風化させないように、俳句を作り続けること。遠く松山でも、被災地・被災者を想い、我々に出来ることを真剣に考えれば、後世に価値のある俳句を生めるかも知れない。それには、東日本大震災を表現する新しい季語が必要だとも思った。と、ここで「震災忌」のことを思い出した。
 もし、「震災忌」が絶滅寸前季語ならば、近い将来「阪神震災忌」だって絶滅寸前季語になりうる。現に、昨年11歳のうちの子は、阪神・淡路大震災のことはほとんど知らない。同様に今後、別の大地震が起これば東日本大震災だって絶滅寸前季語になってしまう。東日本大震災の記憶を受け継ぐには、まず、約90年前の「震災忌」を蘇らせる必要があると思った。
 関東大震災のことをはじめて知ったのは、小学校中学年の頃。地震による家屋の崩壊だけではなく、火災による被害で最も多くの方が亡くなったこと。また、デマによって謂われのない朝鮮人が多数虐殺されたことなど。在日三世の僕には、祖父の世代のことなので、ただひたすらに恐ろしかった。しかし、190万人が被災、10万5千人余が死亡という事実の重みを知ったのは、昨年の東日本大震災をテレビなどで体験してからかもしれない。
 抗えない天災とおぞましい人災、そして鎮魂と未来。それら人類にとって不変のテーマが季語「震災忌」に込められているならば、現代の俳人がもっと積極的に詠むべき季語であるはず。少なくとも、僕はそうしたい。

キム・チャンヒ
1968年生、愛媛県出身。『100年俳句計画』編集長。


辞退の弁
理酔

 今回の特集に執筆依頼があり、一度は引き受けたのですがどうもしっくり来なくて強引に降ろさせてもらいました。
 以下、しっくり来なかった理由を記します。
 この時期に震災忌について考察すれば当然、東日本大震災と阪神淡路大震災に思いをめぐらせます。
 そうなると、僕はこの企画に最適な執筆者なのかという疑問が頭を離れなくなりました。
 「いつき組」には多くの人が居ます。関東在住の組員や桃心地氏ら実際にあの大震災に巻き込まれ被災された方々に執筆願うのが「震災忌」に肉薄し将来を鑑みるに適切な人選ではないかと思ったからです。
 決して、安全圏内でテレビを通じて戦慄し涙しただけの僕ではないと思ったからです。
 その様な事情で今回の企画を僕は降りました。
 以上

理酔
1960年生まれ。性別「男」。年齢「51歳」。国籍「日本」。出生地「下関市」。所在地「福岡市」。賞罰「無し」。身体的特徴「内臓完全逆位」。



目次に戻る

特集2

スポレク企画第3弾
テレビを観戦して俳句を作る
ロンドンオリンピック開会式吟行会




 スポーツ俳句とオリンピック俳句とは違う。
 世界205を数える国や地域の人々が、一堂に会することは、4年に一度のオリンピック開会式以外にはない。この開会式をライブで観戦し、全ての国と地域に俳句を捧げてこそオリンピック俳句というもの。
 7月28日のまだ夜も明けぬ午前4時30分。そんな無謀な挑戦に賛同した方々のべ13人が、編集室に集合した。
 以下、都さんの作ってくれた出場チーム一覧を武器に、およそ3時間30分におよぶオリンピック開会式の吟行句の全てをお届けする。


開催前のCG
夏雲の走れよテムズ川ひかる  いつき
開会式スタート・CG映像
麦の穂を撫でソプラノの波起こす マイマイ
ショーの始まり
木の浮いて人湧き出でる盛夏かな 藤実
産業革命
夏の山笑わずすべてなくなった ひまわり
産業革命
革命の終わり赤い赤いポピー みゆう
五輪登場
炎天や五輪の鉄輪鋳られをり 正人
女王登場
銀河より女王陛下の到着す ねこ端石
国旗登場
夏深し国旗はこばれゆく月下 州麻子
シェークスピア
スタジアム真夏の夜の夢一幕や 都
おとぎ話
子どもらの瞳に短夜の悪夢 チャンヒ
おとぎ話
パラソルや空からはメリーポピンズ きとうじん
ベッド
子らの手の夏星つかむまで振れり 兼光
巨大なベビー登場〜マルコボ会場内騒然!
青白き胎児真夏の夜の夢 いつき
ミスタービーン登場
傘先で叩くレレレレレ夏の果  マイマイ
ロックンロール
ロックンロール弾けて恋を踊りけり 藤実
ショーの終り
カラフルな人たち夏の暁知らず ひまわり
選手入場スタート・ギリシャ
夏の月光ったギリシャはまだ来ない  みゆう
アフガニスタン
かんばせの黒く白南風吹き募る 正人
アルバニア
アルバニア臙脂のユニホーム夏の果て ねこ端石
アルジェリア
不ぞろひの行進夏の風どつと 州麻子
アメリカ領サモア
夏の月隣人に似た人みつけアメリカ領サモア 雪花
アンドラ
アンドラや赤牛たちの旱星 都
アンゴラ
白服を着てハンドボールが得意です チャンヒ
アンティグアバーブーダ
ポロシャツ縒れしアンティグアバーブーダ きとうじん
アルゼンチン
水色に夏空染めて進みけり 兼光
アルメニア
七月の明るさカスピ海の碧 いつき
アルバ
オランダ領アルバカリブの青き風 マイマイ
オーストラリア
南方に生まれ南半球泳ぎきる 藤実
オーストリア
赤と白の国旗オーストリアに風車 ひまわり
アゼルバイジャン
ネクタイの夏色アゼルバイジャン みゆう
バハマ
バハマバハマ青き衣装の薄暑かな 正人
バーレーン
バーレーンの少女の額の汗光る ねこ端石
バングラデシュ
太陽を掲げて来たり大南風 州麻子
バルバトス
シャツは黄ネクタイも黄夏暑し 雪花
ベラルーシ
ベラルーシ若干文様の夏木立 都
ベルギー
ベルギーの紳士の夏の夜の笑顔 チャンヒ
ベリーズ
唐突に眩ふベリーズの熱砂かな きとうじん
ベナン
なに下男?仏法僧なら知ってるよ 兼光
バミューダ
赤きパンツ跳ねるよ南風駆ける駆ける いつき
ブータン
山国の黄色美し夏の風 マイマイ
ボリビア
海抜五千メートル走るオレンジかじる 藤実
ボスニアヘルツェゴビナ
内戦を乗りこえ今雲のみね ひまわり
ボツワナ
旗の色うすくてアフリカの優等生 みゆう
ブラジル
ブラジルの行進速やかに名誉 正人
イギリス領ヴァージン諸島
昼寝して夢はイギリス領ヴァージン諸島 ねこ端石
ブルネイ
知らぬ国次々夏の月ぽかり 州麻子
ブルガリア
夏の朝ブルガリアヨーグルト食む 雪花
ブルキナファソ
ブルキナファソ革命の星や熱砂吹く 都
ブルンジ
夜は暑く過去には金メダルが一つ チャンヒ
カンボジア
海霧海霧カンボジアの夜明けかな きとうじん
カメルーン
眼の細き人ならぎしぎしを咲かせ 兼光
カナダ
掲げよ旗を赤き楓の光る旗を いつき
カーボベルデ
旗に星踊ってカボベルデってドコ? マイマイ
イギリス領ケイマン諸島
税金の右から右へ百合真白 藤実
中央アフリカ
赤いネクタイ希望をのせて月すずし ひまわり
チャド
ほほえみはすこし照れてる夏の風 みゆう
チリ
国旗そよがずも笑顔の極暑なり 正人
中華人民共和国
田水沸く人民大河のごとく行進す ねこ端石
コロンビア
選手百四人の笑顔夜の秋 州麻子
コモロ
夏の月昇り古代魚の歩く チャンヒ
コンゴ共和国
リボンは赤コンゴ共和国の夏帽子 雪花
コンゴ民主共和国
夏ともし赤のスラッシュ鯔背かな 都
クック諸島
月涼しクック諸島のおまわりさん きとうじん
コスタリカ
珈琲を濃いめにハンモック高めに 兼光
コートジボワール
紫の口紅灼ける大地あり いつき
クロアチア
戦火越えて笑顔の跳ねる夏である  マイマイ
キューバ
キューバリブレ乾杯歯の白く笑ふ  藤実
キプロス
白の中にオレンジ一つにじかかる ひまわり
チェコ
夏の星長ぐつをはいたチェコ みゆう
デンマーク
デンマークめいて筍にょっきにょき 正人
ジブチ
熱帯夜ジブチの少女の黒き目に ねこ端石
ドミニカ国
歓声やたちまち過ぎし夏帽子 州麻子
ドミニカ共和国
大リーガーの生まるるところ雲の峰 雪花
エクアドル
エクアドル三原色の夏来る 都
エジプト
混乱の社会に光る星涼し チャンヒ
エルサルバドル
エルサルバドルバナナ売りの朝御飯 きとうじん
赤道ギニア
炎昼のランナーの背のGの文字 兼光
エリトリア
紅海を北に緑の大地あり  いつき
エストニア
白夜を抜けて風は青いだろう マイマイ
エチオピア
陸上王国なる王国やメロン食ぶ  藤実
フィジー
青のアロハシャツきて世界平和 ひまわり
フィンランド
旗青と白服青と白ソーダ水 みゆう
フランス
フランス旗iphoneに蜥蜴のマーク 正人
ガボン
四万六千日ガボンの熱帯雨林 ねこ端石
ガンビア
夏服のさみどりゆるやかに旗手は 州麻子
グルジア
夏の空ミニスカートのワンピース 雪花
ドイツ
国旗色リボン夏帽子ドイツかな 都
ガーナ
漆黒の夜の漆黒の夏マフラー チャンヒ
グレナダ
風死すやグレナダの赤き星 きとうじん
グアム
大海は賞賛のごと夏の月 兼光
グアテマラ
水色の小旗へ青き風集う  いつき
ギニア
銀色の衣装に翡翠横切りぬ  マイマイ
ギニアビサウ
4人でもオリンピックに出てる夏 ひまわり
ガイアナ
ガイアナの服まっきっき麦の秋 みゆう
ハイチ
ハイチにて手を振りかき氷らしからぬ色 正人
ホンジュラス
ホンジュラス行きへ夏期休暇とる ねこ端石
香港
旗手のくちびるの夾竹桃色なりし 州麻子
ハンガリー
初回から参加せし国夏の星 雪花
アイスランド
涼やかな寒色系アイスランド 都
五輪個人参加選手団
応援のない僕らに夏の星数多 チャンヒ
インド
タージマハルコップに注ぐ虹二つ きとうじん
インドネシア
ラケットの暑しゴム底の薄し 兼光
イラン
旗手の目の鋭し炎ゆる地に生まれ  いつき
イラク
アメリカ軍てったい自由の夏 ひまわり
アイルランド
空蝉やアイルランドを凝視する みゆう
イスラエル
星型の剃り込み麦酒の泡ぱつぱつ 正人
イタリア
鉾稚児の祖父はイタリア移民とか ねこ端石
ジャマイカ・旗手ボルト
旗手の名に歓声わつと夏の星 州麻子
日本
日本や旗手のまなざしは静かに炎ゆ 雪花
ヨルダン
魔法使い五輪の虹かけヨルダンや 都
カザフスタン
夏草の国よりレスラーの来たる チャンヒ
ケニヤ
ハンモック揺れてケニアの青き月 きとうじん
キリバス
冠の緑の子葉五月闇 兼光
北朝鮮
百番目の入場みどりの冬の国 いつき
韓国
白いぼうしに夏の星ひかる ひまわり
クウェート
十人の選手率いる青葉かな みゆう
キルギス
キルギスの帽子の切れ込みの涼し 正人
ラオス
暮れ初めの空へ雷鳥飛ぶごとく 正人
ラトビア
ラトビア式土用鰻の捌き方 ねこ端石
レバノン・見られんかった
うつむいてをればもう過ぐ涼しさよ 州麻子
レソト
大国の影にかすかな夏の星 雪花
リベリア
五芒星輝く赤きリベリアよ 都
リビア
明易い道を新たな旗を掲げ チャンヒ
リヒテンシュタイン
ベランダの椅子やリヒテンシュタイン きとうじん
リトアニア
西に向く漁船の白し晩夏光 兼光
ルクセンブルク
金髪に風夏の星の光りあう  いつき
マケドニア
闘つて勝つための身や金玉糖 正人
マダガスカル
マダガスカル見のがして牡丹 みゆう
マラウイ
マラウイの綴りにWグラジオラス 正人
マレーシア
夕焼やマレーシアのスカートひるがえり ねこ端石
モルディブ
選手団五人夏空色のシャツ 州麻子
マリ
全身を真白き衣装星涼し 雪花
マルタ
地中海の風マルタの南風吹く 都
マーシャル諸島
蝉蝉蝉マーシャル諸島の土の色 チャンヒ
モーリタニア
月と星従へ熱砂なる国よ 正人
モーリシャス
髪洗ふモーリシャスにて髪洗ふ きとうじん
メキシコ
仙人掌の花競走の大腿部 兼光
ミクロネシア連邦
アロハ青し歩幅ぐんぐん伸びてゆく  いつき
モルドバ
三つの色に願いをきめて蝉鳴いて ひまわり
モナコ
モナコモナコモナコ蝸牛 みゆう
モンゴル
選手ただ一人モンゴル背負って炎ゆ 正人
モンテネグロ
合歓の花モンテネグロの理髪店 ねこ端石
モロッコ
汗の手と国旗火色にうねりけり 州麻子
モザンビーク
旗手は表彰台恋ふ梅雨の雷 雪花
ミャンマー
ミャンマーやスーチ女史の夏の天 都
ナミビア
ナビビアのフレデリックの黄金虫 チャンヒ
ナウル
玉の汗ナウルの旗手の腹太し きとうじん
ネパール
山脈を北に越えゆく夕焼ける 兼光
オランダ
チューリップを胸に掲げて歩きます  いつき
ニュージーランド
ラグビーが正式競技にハンモック ひまわり
ニカラグア
夏の山笑うとできるかたえくぼ みゆう
ニジェール
ウェルター級にしては穏やかなりし青芝 正人
ナイジェリア
熱風にナイジェリアの戦車錆びている ねこ端石
ノルウェー
北国の男ら涼やかに集ふ 州麻子
オマーン
ナシュターシュてふ民族衣装盛夏かな 雪花
パキスタン
パキスタン緑の胎動夏木立 都
パラオ
五人らに青く黄色い夏の空 チャンヒ
パレスチナ
木下闇和平独立未成立 きとうじん
パナマ
今生をななめに被るパナマ帽 兼光
パプアニューギニア
選手は八人夕焼色のユニホーム  いつき
パラグアイ
大きなぼうしは心糸とんぼ ひまわり
ペルー
両親の祖国代表月涼し みゆう
フィリピン
水汲んで鍛えられたる夏の星 正人
ポーランド
紙魚跡のかすかにショパンの旋律を ねこ端石
ポルトガル
夏帽に応へる夏帽のみどり 州麻子
プエルトリコ
カリブから25人来たる夏の海 雪花
カタール
カタール黒き豹の夏の日よ 都
ルーマニア
激動を抜けて真夏の妖精は チャンヒ
ロシア
花うばら暁のロシアンルーレット きとうじん
ルワンダ
夕闇の銃口に差す百日紅 兼光
セントクリストファーネイビス
新しき独立国に緑雨美し  いつき
セントルシア
水色の中に三角花火さく ひまわり
セントヴィンセントグレナディーン
山滴るセントヴィンセントグレナディーン みゆう
サモア
眼光の強し初老のアロハシャツ 正人
サンマリノ
サンマリノの片陰に恋の予感 ねこ端石
サントメプリンシテ
サントメプリンシテプリクラは夏の夢 ねこ端石
サウジアラビア
汗の身を風はらみたるシャツのなか 州麻子
セネガル
全身を黄に包みたる南風 雪花
セルビア
セルビアやからマンダリンの夏の雨 都
セイシェル
酷暑輝くインド洋の真珠 チャンヒ
シエラレオネ
復興のひかり微かに針槐 きとうじん
シンガポール
マーライオンに口あり夏に尻尾あり 兼光
スロバキア
黒きハンカチ振り喜びを表せる  いつき
スロベニア
灰色のスーツにつつまれ風かおる ひまわり
ソロモン諸島
ソロモン諸島ってドコダ夏帽子はドコダ みゆう
ソマリア
ソマリアや梅雨星を頭に戴きぬ 正人
南アフリカ
南アフリカの男の義足晩夏光 ねこ端石
スペイン・旗手でかし
飛び抜けて大きな男南吹く 州麻子
スリランカ
母の国てふイギリス盛夏かな 雪花
スーダン
棟の花白きターバンスーダンや 都
スリナム
スリナムの汗とは走ることだろう チャンヒ
スワジランド
砂日傘スワジランドの海静か きとうじん
スウェーデン
カールグスタフ敬礼す夏の果 兼光
スイス
笑顔颯爽ハイジの国の風青し  いつき
シリア
内戦で人数10人かぶと虫 ひまわり
台湾(チャイニーズタイペイ)
熱帯魚ふわふわチャイニーズタイペイ みゆう
タジキスタン
太陽の耳飾すや鬼灯市 正人
タンザニア
ユッカ咲いてタンザニアの夜ほのくらし ねこ端石
タイ
夏星やしんがりやけにふくよかな 州麻子
東ティモール
新参の国であるらし夏の朝 雪花
トーゴ
アロハシャツ国旗に染まるトーゴかな 都
トンガ
短夜を楽しく生きるための旗 チャンヒ
トリニダードトバコ
トリニダードトバコのキャンプファイヤー きとうじん
チュニジア
旗真紅三光鳥の鳴き止みし 兼光
トルコ
旗手美し黒く涼しき目じり美し  いつき
トルクメニスタン
青く青く長い服蟻の道 ひまわり
ツベル
白南風や島にメダルを持ち帰る みゆう
ウガンダ
人々の捧げる国旗月涼し 正人
ウクライナ
ウクライナの石畳の目地土用東風 ねこ端石
アラブ首長国連邦
三伏のかくも眉濃き男たち 州麻子
アメリカ合衆国
強き国やさしき国たれ夏の山 雪花
ウルグアイ
ウルグアイ夏の灯飛ばしキックオフ 都
ウズベキスタン
夏の果シルクロードの拳闘士 チャンヒ
バヌアツ
バヌアツの海はサファイヤ麦畑 きとうじん
ベネズエラ
ドゥダメルの指揮棒長しアマリリス 兼光
ベトナム
二百番目の入場アオザイの涼し  いつき
アメリカ領バージン諸島
2500万円の価値蝿叩 ひまわり
イエメン
イエメンの列がすかすか夏の空 みゆう
ザンビア
金と黒混じり夕立の行進団 正人
ジンバブエ
ジンバブエの陣羽織着て新松子 ねこ端石
イギリス
月涼しいま金色を身につけて 州麻子
聖火
あじさいのようなお花の聖火台 ひまわり
宇宙へ向け夏のにおいのする聖火 みゆう


当日の様子は、組長のブログ「100年俳句日記」でご覧になれます。


目次に戻る


百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2012年度 第二期 2回目


「あればなほ」桜井教人

うすものや清盛の海かと思ふ
白南風や影は異国の形して
炎昼の坂なり我と師との差は
水打つて関羽の廟に人絶えず
案内して淡海色(うすうみいろ)の夏帽子
メリケンは正しき発語港灼く
大西日第二ドックへ潜水艦
海底に経書きし石(いわ)暑に耐ふる
千年経つ塔や意中の蓮開く
白玉や都たうとう遷(うつ)らざる
夕涼み敦盛の笛あればなほ
虚も実も夏の果なる平家の夜


1958年生まれ。愛媛県出身。「日本俳句教育研究会」会員。




「島静か」山澤香奈

労研饅頭ぱかんと割って秋立ちぬ
新涼の両肩に貼るサロンパス
リビング中央蟋蟀死んでいる朝よ
爽やかに別れん通園一日目
クレヨンの匂いせる子よ猫じゃらし
散歩終盤秋蝉我が手より逃げる
ふり返り伊佐爾波坂の秋夕焼
葡萄ぷちりと何がさみしいのだろう
島静か秋の水着の干されいて
職歴に虫売ありそうな男
酒器になる土秋風になった歌
晩酌や月もチーズもまんまるに


1983年生まれ。愛媛県の岩城島出身。子育て奮闘中。秋から息子が幼稚園に通うようになりました。所謂幼稚園デビューにドキドキです。




「ねじ式」きむらけんじ

沖縄の空の青さを豚喰い尽くす
雲は動かず苦瓜は苦い
蝉のように子は泣き母は臨月
前世は毛虫かもしれぬ毛虫焼く
川床に女座りの女と居る
ねじ式の頭で積乱雲見ている
夏の座敷でリカちゃん脱がされたまま
手持無沙汰の乳房うちわで煽いでいる
花火上がる夜の君を転がす
賢治のまねして下ノ畑ニ居リマス
父さんのせいではないがトマトはナス科
猛暑日に猫ちゃんのちゃんはいらない


1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。
自由律俳句結社「層雲」同人。句集『鍵の穴』(文芸社)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)、『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)。特技・妄想、泥酔。




「海に遊んで」松本だりあ

初蝉やオ行ぶ厚くカルテ棚
草色の我鬼忌の虫を潰しけり
夏ききゃう妥協許さぬ尖り方
自転車の母の断髪夾竹桃
蝉時雨バイエルに引く赤えんぴつ
太陽になりたきトマト煮てしまふ
相棒の髭のごはごは田水沸く
夕焼や海に遊んで畑にも
積まれゐて水中眼鏡曇りたる
ビニールの空気みな抜け盆の月
笑ひ合ふときの過ぎゆく牽牛花
水へ触れたく蜻蛉の尾のくろがね


1942年生まれ。双子座。
句集『ダリア』(編集アトリエ まる工房)。




目次に戻る


読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2012年7月号 〜 2012年9月号 3/3回目)


 うぶ声 ターナー島

沖を見しあと半眼の羽抜け鳥
犬枇杷や鉄の匂いに熟れ果てぬ
夜濯ぎの水ひびかせて母郷なり
水底のはっきり見えて鵙高音
八月の空しんしんと岳樺
めはじきの軸ほの黒き偏頭痛
一片の朱鷺色の雲終戦日
去りがたき地や蜉蝣を払いつつ
稲光りして生ぐさき夜の川
うぶ声を待つ月の夜の膝がしら


団塊の世代。エッセイ・短歌・川柳・詩との相性は良いが、感性に乏しい私にとって俳句は苦手。愛媛新聞「へんろ道」友の会会員。近未来に「愛媛の随筆大賞」を獲るのが、目下の夢。



 贄 まりん

日盛りやスワンボートは血の臭い
空蝉の背中につめて捨てるもの
引き出しにまた夏を過ぐ青絵具
箱庭に月おきたくて待つ夕べ
夕かなかな少し細めるカレーの火
音も無くこころの爆ぜて星飛んで
天職は母であること西瓜切る
この家も皇帝ダリアの見張る家
秋暑し飛び出す絵本のしまいかた
原爆忌色あるものを贄として


広島から嫁いで早幾歳。あるときは今治三日月句会の重し(?)役。あるときはラジオバリバリの「俳句チャンネル」のちゃかし役。あるときは今治五七五実行委員会の下足番。楽しく元気に下手の横好きやってます。



 着陸機 大五郎

言ひ訳のやうにこはれる蝉の殻
乾きたる轍に乾きたる蚯蚓
遠雷や法要の足痺れたる
着陸機大西日より生まれけり
放流のサイレン夏川の空へ
穂薄や風待つハングフライヤー
ガス欠や盆の坊主のスクーター
枝豆や琉球硝子更に青
消毒液沁みる右膝墓参り
赤とんぼ留まらせ暮るる石の角


東京都あきる野市出身。松山に来て十八年、すっかり松山を気に入って永住を決意。営業の仕事の傍ら、俳句を作る豊かな日々を送っています。妻一人、息子一人、娘一人の四十二歳男性です。



次回10月号〜12月号
連載者決定

 4月から6月末までの期間、「この人の作品集を読んでみたい」という気になる俳人を、1人3名まで推薦していただきました。
 その中から推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行い、次回10月号〜12月号までの連載を行う組員が決定いたしました。

 稲穂さん
 空さん
 のり茶づけさん

 3名の方には10月号から、作品集を連載していただきます。
 お楽しみに!


随時推薦募集中

 次々回連載者の推薦も募集しております。集計期間は9月末までとなります。集計は累積ではなく、毎回新たに集計しています。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。



読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

 「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(俳句の缶づめ等)/推薦者ご自身の俳号(本名)/住所/電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ/FAX/Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、誌上句会インターネット投稿フォームでも受け付けています。(アクセス場所は誌上句会コーナー末を参照してください。)なお、投稿フォームの場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 9月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。



百年琢磨
先月号の「100年の旗手」に寄せて

柔軟な把握 津川絵理子

「ゆれる闘魚」 まりん
凌霄の花の悲鳴の届く窓
 凌霄花は強い生命力を感じさせる花だが、かと言って元気で屈託がない花、というイメージでもない。何となく気怠い雰囲気を漂わせるのは、酷暑の頃に花の盛りを迎えるからだろうか。凌霄花の悲鳴とはユニークな表現だが、花のありようを上手く捉えていて納得できる。

向日葵の元気を避けて裏門へ
 凌霄花と違って、向日葵はただただ元気なのである。その明るさに押しつけがましさを感じてしまうくらいに。こちらの元気を吸い取ってしまいそうな向日葵を避けて裏門へ。圧倒的な向日葵の黄色が目に浮かぶ。


「黒ビール」 大五郎
商談を纏めた夜の黒ビール
 仕事の後のビールは美味い。というのは当たり前だが、様々な苦労の後に纏めた商談ならば、ビールの味は格別だろう。芳醇な味の黒ビール。しかしその「黒」には仕事というものが持つ苦さが込められているのかも。

やはらかくて黒くてバナナかなしくて
 これくらいの完熟バナナが一番美味しいそうだ。美味しいけれどもう黒くなってしまったバナナは哀れな感じがする。バナナに託した作者の哀しみが伝わる。「かなしくて」を言わずに物悲しさが出せたらなお良かった。


「蟇の声」 ターナー島
蝉の森少年のシャツひかり過ぐ
 蝉取りの少年か。森の中を行く少年のシャツが木漏れ日に光っているのだ。「蝉の森」によってシャツの光が活きてくる。又、シャツを纏った瑞々しい少年の姿が思い浮かぶ。

石笛の穴まんまるし土用東風
 石笛は石に穴を開けて笛としたものだが、中には自然に穿たれた穴をもつ笛もあるらしい。原始的な楽器で、どこか縄文の匂いがする。縄文時代には祭祀などに使ったのかもしれない。いずれにせよ、土用東風の力強さと相俟って、「まんまるし」という健康的で大らかな響きが活かされた句となった。簡潔な表現が、句の素朴さを際立たせている。


津川絵理子
1968年生れ。「南風」所属。句集『和音』。平成19年、俳人協会新人賞、角川俳句賞受賞。



読者の感銘句

瑞木 「波静か臆病そうに梅雨の月」まりん。「四半期の業績は好し鰻食ふ」大五郎。「居残りの明かりがひとつひきの声」ターナー島。感銘句です。



選評大賞2012 作品募集

今年で第六回目を迎えます、選評大賞2012のお知らせです。
選句の対象となる句は本誌2011年10月号〜2012年9月号の「100年の旗手」掲載句。詳しい要項は告知ページをご覧下さい。
お送り頂いた選評は、編集部で審査し、大賞を決定します。皆さまの選評、お待ちしております。




目次に戻る



 雑詠道場は、「くらむぼんが笑った」か「へたうま仙人」か、どちらかへ3句1セットでの選択投句となります。選が厳しい「くらむぼん」に挑戦するか、必ず一人一句以上選評付きで載る「へたうま仙人」を相手に“巧すぎるのでへたの聖地追放”を目指すか。その選択も楽しんで頂けたらと思います。


雑詠道場 くらむぼんが笑った


夏井いつき選


今月の天
蛮王の立ち上がるごと虹の立つ 理酔
 一読、津田清子さんの「虹二重神も恋愛したまへり」を思い出したが、句の趣きはずいぶんと違う。「蛮王」とは【未開民族の王。また、野蛮な王】と辞書には書いてある。あの美しい「虹」をこう喩えるとは……というかすかなる違和感を抱いたとたん、「蛮王」と「虹」二つの言葉が、我が胸奥にて詩的火花を飛ばす。
 ある時代、天文のあらゆる事象は神に等しかった。天象を読み取る能力を持つ者が王と呼ばれ、神意を人々に告げる役目を司った。頭上に「虹」が立つ。「蛮王」の勇敢な戦意の如く、美しい残酷の如く、「虹」はその色を濃くする。人々が「虹」を見上げるのは、嘗てそれが神に近いものであったことを記憶しているからに違いない。


今月の地
バケットを浸す夕焼けのスープ 紗蘭
 「バケットを浸して」とすれば17音の韻律に入ってくるが、これがこの作家の表現したいリズムかもしれない。「夕焼けのスープ」は時間か、その色の比喩か。満ち足りた時間と読むか、淋しさの色と読むか。

夏至の夕交霊会に行くところ あねご
 「交霊会」という語の面白さ。霊魂と交流するとなれば、「夏至」という日も重要な意味を持つような気がする。「行くところ」の措辞には、おっかなビックリの好奇心も読み取れて。

手花火の草へ降らせるしゆぼばしゆぼば  すな恵
 最初はおとなしく「手花火」を楽しんでいるのに、だんだん飽き足らなくなって「草へ降らせる」なんてことをし始める子って、必ずいる。下五のオノマトペのなんとリアルなことか。

あまりに暑くて人の形で居られない  ポメロ親父
 今年の猛暑の実感だよね、はは!と笑った後で……じゃあ、アンタは今「人の形」じゃない何の形になってんの? ……と思う。水みたいなのか、凹んでんのか、萎んでるのか、考えるとますます可笑しい。

惜別もあくたもくたも走馬灯 依里
 「惜別」も「あくた(芥)」も何もかも「走馬灯」の絵柄になってやけにグルグル光ってんじゃないの……と、そんな呟きが聞える。「あくたもくたも」の自棄っぱちは、生きてる者の切ない意地ってヤツだ。

夏蝶の曳かるるままや土白し 蓼蟲
蟻の列棘のかたちを登りけり 緑の手
 前句、蝶の類が曳かれて行く句は沢山あるが、切字「〜や」の後の「土白し」が「夏蝶」の無残と炎昼の静寂を想起させる。後句、「蟻の列」がやがて直角に茎を上り、一つ一つの「棘」に沿って隊列を進めて行く。助詞「〜を」の使い方も的確。観察から生れるこのような二句は、作者の努力と根気の賜物だ。

ホエザルの檻や大暑の永き黙 ソラト
 「ホエザル」というのだから、普段は喧しく咆えまくっているんだろう。時候の季語「大暑」を巧く使いこなした後半の措辞を誉めたい。切字「や」の効果も確か。

蝉の尿散る総立ちのコンサート ふづき
 「総立ちのコンサート」の中にいて、やや醒めた視線の作者。あ、今「蝉」が「尿」しながら飛び立った……なんてことを思いながら、喧騒の外に自分を置く。

ガラス越し守宮の腹にあてる指 空山
 「ガラス越し」に見る「守宮」はいつも来る奴。こんばんはの挨拶がわりに、「ガラス越し」の「腹」にそっと指を当てる。当てた「指」に伝わるガラスの感触を追体験する。

牛乳の立たされてゐる冷蔵庫 なゝ
 あ、そうだったのね、「牛乳」のヤツは立たされてんのね。なんて納得してしまう自分が可笑しいし、大きな「冷蔵庫」の前でこんな句をぽつねんと吐いている作者を思うと、ますます可笑しい。


今月の人(じん)
空蝉や触れてはならぬ封じ札 あねご
なみなみとビール腰砕けの紙コップ
停車場に遺骨抱く母夏の空 蓼蟲
病廊に洩れる西日や空きベッド
萩へ萩揺れるや口に体温計 ふづき
深海魚群れて眠りぬ遠花火
来客を取り次ぐ声や夏祭 錫樹智
鯨幕の陰でソーダを飲んでいる
学校に呼ばるる母の白日傘 すな恵
柿の花ころころ工場のミシン
名は幸子藪蚊に曝すふくらはぎ 柱新人
腕を前から上にあげてひまわり
夕蝉や鞄にしまふ聴診器 犬鈴
せんべいの屑打ちはらふ団扇かな
俺も汗チャンポンも汗街も汗 理酔
なめくじら街に名も無き行き倒れ
結願の置きたる杖へ秋蝶来 さわらび
ふくふくと猫の毛匂う秋桜
暁の月と交わり蛞蝓 西連寺ラグナ
足首の仄かに白む藍浴衣
梅雨鴉群れいて何も始まらぬ ターナー島
雷わたる夜や一枚の未完の絵
夏風の色を映してゐる義眼 緑の手
開きはじむる梔子ゆるやかに尖る
向日葵の頸のたはみの力かな 省三
総身の鉛のおもさ餓鬼忌来る
蜘蛛の巣に怒りぶつけて出勤す 浜田節
白百合やシェイクスピアの悩み事
空っぽになった大空秋近し 北伊作
リチウム電池切れた夏蝶の心臓
虹立つや落人村は十里先 鯉城
余生なほ余白ありけり浮いて来い
黒胡椒がつんと振るや盛夏なり あらた
三日月よあんたに吠えても詮無いか  藻川亭河童
何鳥のぎしぎし啼くや夏の朝 みちる
妻にある怒りの周期夏カレー えりぶどん
蓋あけたごとき空から原爆忌 依里
背を伝ふ脱原発のデモの汗 未貫
夕焼やコンテナ船の太る影 もね
盛夏なり唸り続ける洗濯機 こぼれ花
ハンモック湖には飛べぬ鳥ばかり  樫の木
金盥すこぶる叩き夕立かな のり茶づけ
宅配の水を抱えた汗の顔 権ちゃん
コツコツと産廃物にたかる蟻 Blanca
新薬のききめ真昼の髪洗ふ 不知火
野良猫に名を付けている端居かな  ゆりかもめ
たおやかに百日紅の積もりけり てん点
田水沸く昔天下の大戦 元旦
向日葵振上げとまらない涙 ほろよい
炎天のマラソン給水所には塩 一走人
街はまた砂漠に似たり水中花 じろ
大南風百五歳なる新仏 しんじゅ
神さまに会ふ日の麻服を選ぶ なゝ
長き夜を自問自答の鍋磨き 空
マンゴーや父の戦争体験談 空山
夏座敷大魚の海に開け放つ 一心堂
冷房の下で会議は踊りけり うに子
流れ着くブリキバケツの中の虹  八木ふみ
ガレージの床に涼みし猫を踏む  ふーみん
雲海へ王のごとくに放尿す 牛後
寝る前の寂しき口に心太 八十八
白玉の浮きつ沈みつ光りだす  神楽坂リンダ
内腿の血管ちりり遠花火 唐草サ行
箱庭へ話し相手を届ける夜 野風
丑の日が賞味期限のサバ煮缶 瑞木
行き止まり白粉花の赤白黄 なづな
はつ夏の墨の香さらとはねはらひ  春告草
炎帝の転がしきたる巨石に罅  亜桜みかり
十棟の牛舎の虚ろ雲の峰 蕃
診察券投入口の大暑かな コナン
梅雨滂沱押し黙りゐる山家かな 哲白
桐箱の黄布をひらき切子出す えつの


今月の並選
耳痛き妻の一打や蝿叩 あらた
耳元でドロップ缶ふる夏終る
淡紅の恋と溶けゆくくらげかな 紗蘭
サングラスの中の自分の幼くて
かけつこは風と一緒になれる夏 松ぼっくり
白南風や鐘のぼさんと聴いてゐる
水筒の肩に喰い込む酷暑かな 藻川亭河童
褪せし葉を透かし色なき風のみゆ
冷や奴ごときで二合三合と 藍人
梅雨冷えやをんなの腹にメスの跡
向日葵は転校生の背を抜けし レモングラス
夏の宵カルメンの赤タクト揺れ
雲の峰キラキラ光る観覧車 かのん
サイコロ夏野菜キッシュでブランチ
夏深しラストオーダー後の二時間 みちる
揚げたてへ塩小気味よくビアガーデン
子燕の尻重なれり白と黒 青蛙
いつになく馬のいななく梅雨の明
眠るにも体力いるや熱帯夜 樹朋
揚花火海に映るは明かりのみ
掬ひたる十七匹の金魚かな 渡部五龍
ぎりぎりの乗車になりぬ晩夏光
宮内庁御用達といふ峰雲 えりぶどん
夏の月ときどき裏返してある
孫曾孫ひまわり入れる柩かな 輝女
桜花苑てふ焼き場まで蝉時雨
風強し風鈴一人でしゃべり過ぎ 洋子
空蝉や遺影にビンタの昼下がり
しんと過ぐ精霊船の小さきかな 七草
草の花早や実をつけよそを飛ばせ
腕組みの窓の向かうの蝉時雨 未貫
かき氷食べてひとまづ生きてをる
見舞終え猛暑へ向かう自動ドア 青柘榴
室温を昭和の夏にセットする
牛小屋に閉じ込められし大暑かな もね
洋食の陳列棚へ西日さす
車椅子押して男の玉の汗 こぼれ花
良き風のあらんと祈る合歓の花
少年の中にある海浮いてこい のり茶づけ
甚平のヴォーカル野外コンサート
清貧や窓全開の大昼寝 権ちゃん
滝行のごとくシャワーを浴びており
胡瓜生るときは毎日胡瓜揉み ポメロ親父
人も農地も移ろふよ早稲の花
結婚をするのしないの心太 Blanca
夏雲やふと湧き出るライバル心
魂の融点下がる大暑かな ソラト
夜濯ぎの細き流れの海に出づ
割れ瓦取り替へ灼くる鬼瓦 不知火
日盛りやフリーダイヤル待つ間合
草の花母の遺せし杖の傷 てん点
朝顔のねじれほどけて空の青
戦いの火蓋切り啼く蝉蝉蝉 元旦
三成の無念夏野のいくさ跡
一瀑や流れて止まらざる時間 ほろよい
青白きソーラーライト夜の秋
炎昼の揺りかごめける電車かな じろ
さまよひて都会は迷路サングラス
包帯を隠れてほどく竹牀几 しんじゅ
朝顔の鉢置き去りで転校す
父の歳越へし朝の夏椿 まんぷく
遥かなり20世紀の無知と朱夏
大楠の宇宙を統べて青葉木菟 空
日焼けの手の警察手帳ごつきこと
一湾の蒼を入れたる夏座敷 一心堂
短夜の枕に乱るる季寄せかな
日盛に犬も老母も舌を出し 和音
湯上がりとわかる首筋天瓜粉
嫉妬心こぼさぬようにかき氷 うに子
ひとなつはながきつかのま百日紅
縁側の昔話と蟻地獄 八木ふみ
球場のとんぼ縁まで浮かび来る
空青し裏の畑に蚊の集る ふーみん
雨降りて茹だる茹だるや草を刈る
点描のごとく糠蚊を纏ひけり 牛後
梅雨空をためらふたびに句読点
蛇苺母さんやっぱりあなたもか 実峰
夏草の中にiPhone震えおり
くどいほど言うて夏休みに入る 八十八
スクイズを決めて跳ね散る汗と泥
炎天の足の親指痛む爪 磨湧
自由な明日から逃げ惑えなめくじ
青芝を走るボールや審判も 神楽坂リンダ
この水の青唐辛子までとどけ
目を細め影踏む君と夏の海 ペプチド
腰据えて活きのいい鱧刻みをり
北斎のアヲ降ってこい砂日傘 唐草サ行
入り込む余地いっぱいの夏の空
曝書より君の葉書のセピア色 野風
雷光や骨格美しき奴笑ふ
花衣旅のみやげに紙人形 迂叟
緑雨降る人といふ字を説く教師
冷奴腰の据わった三枚目 西条の針屋さん
空蝉や過去の記憶も脱ぎ捨てて
電信柱の影に隠れる夏休み 瑞木
柔肌の熱き血潮に寄り来る蚊
大正町のバス停西日さすベンチ 春告草
ぱびぷぺぽばぴぷぺぽぽと守宮鳴く
冷ソーメン胸の支えも流れ行く カシオペア
漬茄子のキュキュと鳴るや口の中
伝言板の目撃情報ごきかぶり 亜桜みかり
電話機は気まぐれなんだ冷奴
石垣の石より垂るる梅雨の雫 サキカエル
断捨離も草刈りも中断になった梅雨
入梅の元帳重しペン重し 人日子
草むらの花になりたる蛍かな
密やかに鳴く蝉の声夜明け前 アンリルカ
銀色のチェンバロの音夏の昼
海月とて安穏としてをれぬ海 蕃
産土は伊予とつぶやき夏の果
秋澄むや楽譜をめくる白き指 なづな
炎昼の路面電車の皆無口
ツバメの子落ちそうなほど口あけて  エノコロちゃん
埋もれて夏の大草やっつける
天拭う碧夏山に谺充つ 哲白
四方の音みな吸い尽くしヒロシマ忌
ひとの粗すぐ出す男毛虫焼く 三竜
こがね蜘蛛なぜ君は下向きなのか
虹立ちて阿吽の呼吸足場組む えつの
百日紅家族写真の四世代
蛍光灯消して大暑の昼過ごす ラジオ体操
稲妻の直撃したる海馬かな さわらび
ががんぼや苦手な人来るどうしよう 依里
白樺の宿の裸足とコンピュータ 錫樹智
炎帝や遠き廃品回収車 柱新人
保険屋の団扇の闇に光りをり 樫の木
サングラス投げて勝負に出る時ぞ  ゆりかもめ
砂日傘閉じられてゆく歓声も 犬鈴
汗だくの着の身着のまま汗見川 一走人
虫捕りの網にひつかかるたましひ なゝ
ぐるぐると腸の鳴きだす熱帯夜  西連寺ラグナ
天牛を潰してお前が悪いと 空山
七月や手足はだけてシバの神 ターナー島
頭の中に鋸屑つまる梅雨最中 省三
井戸替の父の同僚巡査長 浜田節
泣いて見ろ生きざま見せろ雲の峰 北伊作
虹消えし空なお青く去りがたし コナン



【雑詠句募集】
投句三句/俳号(本名)/〒住所/電話番号と、「○月末日締切分」を明記して、編集室「くらむぼんが笑った」または「へたうま仙人」宛にお送りください。
締切は毎月末日《必着》です。
※末日を過ぎたものについては、翌月分とさせていただきます。
※ひと月に複数の投句があった場合は、一番最後に届いた投句のみを有効とさせていただきます。同一内容での二重投句はご遠慮ください!
 投句は誌上句会宛のハガキ&メールとは別でお願いします。
雑詠専用Eメールアドレス zatsuei@marukobo.com
インターネットや携帯電話からも投句できます。
http://www.marukobo.com/kuramubon/


目次に戻る


初学道場 へたうま仙人


原案:大塚めろ
文責:編集室

 今年の夏はどうでしたかのう。永遠に残暑が続きそうな勢いではあるが、秋は間違いなく、あんな所にやって来ておるぞ。暑さを惜しみつつかすかな秋の気配を楽しみましょうぞ。
 今月も粒揃いの句が目白押しぢゃ。ゆっくりとご覧あれ。

ひまわりやみんなむかしはそうだった  ケンケン
 そうぢゃそうじゃ! 何かわからんが、確かにみんな昔はそうじゃった、そうじゃった! 何かわからんが共感したぞ!!

長いはなほんまに長い夏の果 豊原清明
 夏にげんなりしている様が、中途半端な関西弁に見事に凝縮されておるぞ。冬にはこの暑さが懐かしくなるはずぢゃ。

飛ぶ前に必ずウンコこがね虫 小木さん
 この句は取り合わせと見たほうが良いかのう。ご立派な○ン○ですっきりして、元気にどこにでも飛び立って下され。うんうん。

コンビニに自転車の無く戻り梅雨  おせろ
 鍵をかけていてもダメな御時勢ぢゃ。戻り梅雨が切なく情けないのう。コンビニに自転車くらい売っとけよ。

どこからが皮か分からぬメロン喰う  猫ふぐ
 「喰う」の拍子抜けなヘタさが好みぢゃ。もう一工夫で、メロンの特徴が過不足無く伝わり、よだれたらたらで追放ぢゃったぞ。

粛静のつもりか激激辛キムチ 親タカ
 季語が無くても、なんとなく夏を連想させる所はさすがにへたうまの手練れぢゃ。ぶっ飛び方がたまらんのう。

合歓の花すこし魂胆ありまして 今比古
 魂胆というより、下心丸出しぢゃ。なかなか正直で良いぞ。正直者が泣きを見ん世の中になって欲しいものぢゃのう。

雨やんで日の差し始む半夏生 ぴいす
 格調高そうで、そうでもないようなこんな句は大いに好きぢゃ! 口語と文語の絡み具合が筑前煮のようぢゃ!

バオバブや星の王子の木下闇 都
 「大きなバオバブも、はじめは小さかったんだよ」バオバブの木下闇とはのう。完全に意表をつかれたぞ

あさがおそう言えば種を蒔いたはず  よひら
 あさがおでなくてはならない作者の主張に圧倒されたぞ。過去、現在、ほんの未来、の三者三様が愉快ぢゃ。


  追放直前。

濁流は母を拒むか梅雨末期 だなえ
 濁流が拒む理由がちと不明ぢゃが、それをへとも思わせない迫力に、有無を言わせず寄り切られたぞ。

映す顔とぎれとぎれや線香花火  髪くろ子
 線香花火の光のチロチロ感がよく表現出来ておるのう。「映す顔」で、闇に映っている顔が見えてくるようぢゃ。

蓮の葉やいのちの水を零しけり 未々
 W切字はわしの好物ぢゃが、素材が良いのが巧くて気に喰わん。追放間際の巧さぢゃ。

包丁を一気に入れて西瓜切る ぎんなん
 西瓜から滴る果汁がうまそうぢゃ。 西瓜に目が無いワシのくすぐりどころを心得ておるのう。催促はしておらんぞ。

最後までいのこりの子のたまの汗  柊つばき
 「の」の繰り返しがリズミカルぢゃ。なるほどこういう場所の汗もあるのう。夕方の教室の四角の不安が迫ってくるぞ。


    以下、追放!

我々の地球征服扇風機 まくわ
 他の生き物から見れば我々は征服者なんぢゃろな。他人事のように言い放つ作者に、愛を込めて追放ぢゃ!

手花火を老いに幼に持たせをり  カラ嵩ハル
 「をり」のさり気ない斡旋が心にくいのう。陳腐になりがちな情景をさらっと描くこんな輩はさっさと追放ぢゃ!

カクテルをほんの一杯夏やせて ひでこ
 夏やせの理由を言わず、カクテルを持って来る所なんぞ泣かせるのう。こんなテクニック持ちはとっとと追放!


 今月も追放者を出してしもうたわい。ワシはワシで少し寂しくはなるが致し方ない。
 この寂しさを吹き飛ばすようなへたうま句を更に熱望しておるぞ。
 皆の衆、油断召されるな!


目次に戻る

放歌高吟


発光
夏井いつき

きょう避暑地に木の実のような指輪買う
サングラスして翼竜のごとき爪
成田空港はるかに夕焼の骸
金曜のデモ唐辛子まだ青し
狙われし眉間にかなぶんの再び
振れば臭う浮人形の中の水
八月の鳩のたましい発光す
両陛下の写真夏座敷の昏し
さつま飯しゃふしゃふ掻きこめる残暑
お施餓鬼やかすかに濁る清汁
山怒れば海が濁るや施餓鬼幡
松明はぼうぼう盆の風あおる


 第15回「俳句甲子園」は松山東高が優勝し、実に11年ぶりに優勝旗が愛媛県に戻ってきた。
 閉会式を終え、会場の外に出てみると、辺りの空気がひんやりと濡れている。先ほどスコールのような雨が俳都松山を洗っていったという。タクシーを待つ間、興奮さめやらぬ闘いの余韻を語り合っていたら、偶々居合わせた某小学生俳人に率直な意見をぶつけられた。「いつきさん、私は松山東の『母の日』の句の方が良いと思った」「そっか、わたしゃ開成に旗上げたよな」と大笑しつつ、そういえば似たような話があったと懐かしく思い出す。
 第11回大会、愛光高(愛媛)が開成高(東京)に決勝で敗退した時、客席でお母さんと観戦していた某幼稚園俳人が「いつきさんは、ボクの考えと違って開成にばっかり旗を上げよる」と何度もため息をついていたという話を愉快に伝え聞いた。小さな俳人が、自分なりに俳句と対峙し高校生の舌戦に耳を傾け、自分なりの意見を構築し声にする。なんと豊かな言語体験かと感嘆する。やがてこの小さな俳人たちが俳句甲子園の舞台に立つ日を楽しく夢想する。
 今大会第一日終了後、某記者に本気か冗談か分からない質問を投げかけられた。「県勢2チームが準決勝に残ってますが、愛媛在住の審査員として地元高に旗を上げたい衝動に駆られたりはしませんか。」苦笑しつつ答える。「審査員のすべきはただ一つ。提示される作品と繰り広げられる議論を己の俳句観の篩にかけ吟味し、淡々と旗を上げるだけです。全ての試合が終わり、偶々地元高が優勝していたら、その結果を結果として皆さんと共に喜びます。」
 最終日、副将選にて松山東の優勝が決まった。残る大将戦二句は、作品のみの判断で審査員十三人が紅白の旗をあげる。

一日の終はり風鈴市に風 白・開成
日雷産めば脈打つ魚群かな 赤・松山東

 結果は、白に多くの旗が上がったが、私は赤。「白の句は傷なく仕上がった気持ちの良い佳句です」と語りつつ、赤に上げた理由を述べる。「産めば」という措辞は評価を左右する傷ではある。が、この句の奥底には表現者としての意志が確かに発光している。小さな傷を含めてその17音を愛さないではいられない作品を産み出すこと。それが私の希求する「俳句甲子園」だ。

月眩しプールの底に触れてきて 開成高等学校 佐藤雄志

 「俳句甲子園」十五句目の最優秀句は、瑞々しい詩性が言葉として結球した作品。そして表現者としての意志が美しく発光する作品でもある。




夏井いつき公式ブログ「夏井いつきの100年俳句日記」

http://100nenhaiku.marukobo.com/


目次に戻る



新 100年の軌跡


最終回


西瓜 宮下航

鉄骨痩せる夕立の匂ひかな
日矢零る子鴉の口赤きかな
胡瓜食う鼓膜の破れさうなほど
ベルベットの海月光を湛えをり
西瓜噛む明日老人になる前に
少年の翼たたみて烏瓜
八月の空へ翳すや銀の指
海門を巨船の過ぐる晩夏かな
キャベツ剥ぐ昨日の嘘を剥ぐやうに
蛾の死すや人は螺旋でできてをり
真二つの西瓜や原発再稼働
秋の蝶光へ十指伸ばしけり
巨大なる教棟の影曼珠沙華
秋の蠅邪馬台国の風を待つ
満月に濡るる入江や波平ら


宮下航
宇和島東高校弁論部で俳句と出会う。現在は、愛大俳句研究会で活動中。




それで? 希望峰

朝焼やガラスの皿に垂れる黄身
大皿にパセリの居場所添へてやる
木の家に木の椅子のある盛夏かな
高き音ピアノに任す立葵
チキンティカマサラぞくぞく盛る移民
風鈴を恋うて短冊ぶら下げる
滴りや鍾乳洞に棲む孤独
釣堀や世界一周してそれで?
○×の×寄りにペン西日さす
映写機が屠殺を見せる夏休み
砂時計寝かせて来たる青葉騒
Gペンは秩序を保ち扇風機
蟻の列ひとつは画家を志す
ビアガーデン拳に息を吹く手品
短夜のガラスに息を与へけり


希望峰
1990年生まれ、兵庫県神戸市出身。16歳より俳句を始め、現在はスウェーデンに留学中。俳句と教育が結びつく研究をしています。




匂い・臭い 樫の木

鉄骨痩せる夕立の匂ひかな  宮下航
 資材置場か建築中のビルか。鉄骨は赤錆び、所々は欠けている。上七の句またがりのスピード感が夕立の来る速さ、激しさと呼応する。土の匂いと錆臭さが立ち上る。

胡瓜食う鼓膜の破れさうなほど 宮下航 
 胡瓜を丸齧りしているのだろう。胡瓜を噛み砕く音が頭蓋骨に反響する。「鼓膜の破れさうなほど」に野生的な迫力がある。鼻の奥に瑞々しい青臭さを感じる。

映写機が屠殺を見せる夏休み 希望峰
 「いのちの食べかた」という映画の中で牛は電気ショックによって容易く殺され解体されていた。画面から血の臭いを感じた。「夏休み」で息を呑む子供達が見える。

ビアガーデン拳に息を吹く手品 希望峰
 酔いがまわってきた所で仲間の一人が手品を始める。彼が拳に息を吹きかけると見事! 拳の中のコインが消える。吹きかける息の生暖かさ、アルコール臭を感じた。

 最後に気になった点を一つ、十五句を一連の作品とした時には季語の順番に注意して下さい。宮下君、希望峰君とも季節が前後している箇所があります。


1965年愛媛県生まれ。大分県在住の家具職人。第5回選評大賞優秀賞。



赤と黄 都築まとむ

巨大なる教棟の影曼珠沙華  宮下航

 「巨大なる教棟」で縦に伸びる空間を、「曼珠沙華」で横に広がる空間を表現した大きな景だ。作者の立ち位置もはっきりとわかる。教棟の影を描いたところが良かった。「巨大なる教棟の影」は落日とともに伸びながら、鮮やかな曼珠沙華の赤をなぎ倒していくかのような不安を覚える。いつも見ている光景が、曼珠沙華という季語と出合うことによって作り上げられた不思議な世界だ。

朝焼やガラスの皿に垂れる黄身 希望峰

 朝食の光景だろう。ひんやりとしたガラスの皿と目玉焼(個人的希望)の温度差、質感の違いが良い。巧かったのは「垂れる黄身」。この言葉が目玉焼は半熟で、なまあたたかい状態であることを表現した。朝焼の曖昧な色合いや、天気が下り坂になるというサインも、どろりと「垂れる黄身」の気分と響きあう。

 今回取り上げたお二人の句の描写力に参りました。


1961年愛媛県八幡浜市生まれ。自分の句歴11年に驚くばかり。第3回選評大賞優秀賞。


目次に戻る


私たちの100年俳句計画


俳句を使った試みをされている様々な分野の方を紹介します

第7回
学校法人河原学園
河原デザイン・アート専門学校
デジタルデザイン科
池田 周五郎

お仕事について
 学校法人河原学園 「国際デザイン・アート専門学校」のデジタルデザイン科は「ありえないを表現する」というコンセプトで、主に映像・動画を扱う業界を目指す人のためのカリキュラムです。

俳句から映像作品を作る授業
 グラフィックデザイン科が、絵本のフリーペーパー「ましまろ」をNPOとして立ち上げ、漫画クリエーター科が、松山ゆかりの偉人漫画の雑誌「LINK」を発刊。じゃあデジタルデザイン科は? そこで注目したのが松山市勝山交差点の「ハタダ」の広告の俳句。知的で話題性もあって「俳句はいいぞ」と思ったのがきっかけ(笑)。
 まずは組長にお会いして、俳句と映像を繋げたいんだけれど、俳句は全く分からない、という話をしましたら、「句会に参加したらいい」といわれ、ぶんぶく句会にご一緒させていただきました。
 ゆっくり俳句を勉強しながら、習作として映像を作っていければと考えていたのですが、ちょうど組長の紹介で、NHK松山放送局の「おひるのたまご」という番組で、俳句コーナーの兼題ムービーを作れないかというお話をいただき、「やります!」ということになりました。
 学生の取り組みの課題としては、「俳句の意味が分かる」「言葉を映像に替える」という二つのハードルと、最終的に「番組に採用される」というハードルがあります。言葉の意味や俳句のイメージなどは俳人の兼光さんに解説をしていただき、電波に乗るという制約はひとまず忘れ、表現として面白いと思う映像を学生に作ってもらってから、兼光さんと番組ディレクターの平野さんに評価や指示、アドバイスをしていただきます。実際に放映してもらえるということで、学生のモチベーションにもつながっていて、お互い切磋琢磨しながら、楽しみながら作れているのかなと思います。

俳句に関わってみて
 自分は要点をまとめるのが苦手で、17音に伝えたいことをまとめられるのかと思っていたのですが、句会ライブに参加してから、「取り合わせ」なら自分にもできるかなと感じました。兼光さんの学生対象の句会ライブでは、自分が思っていた以上に学生たちが俳句になじんでいました。
 学生たちの普段の映像制作では、見る人に等しく同じように伝えられる映像が良くて、人によって感じ方が違う映像は失敗ということになってしまうのですが、映像俳句は、同じイメージが伝わってしまうと、作られる俳句も偏ってしまうので、普段と全く逆のことをやるのが面白いと思うし、学生もそれを楽しんでやっています。
 たくさんの情報から必要なものだけを取り出して、分かりやすくまとめる力がデザインだと思っています。ト書きまで書かれた文章を映像にするのは簡単だけど、俳句は感じたことを17音にまとめたり、それを映像として紐解いていくもの。俳句を映像にするだけではなく、俳句を作る力もデザインに通じるところがあるので、そういうことも勉強してほしいですね。
 俳句作りはイメージを具現化させる作業に似ているし、国語力のUPにもなるので、映像俳句はこれからも続けていきたいと思っています。


目次に戻る


Letter from spider garden


ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
松山市在住の世界的チェリスト ナサニエル・ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.5

Awa, thousands dance,
Millions, hypnotizing rhythm,
But we have tired feet.

めくるめく阿波の踊や眠くなり

(直訳)
阿波の 千の踊 萬の舞
催眠術めくリズム
足は疲れても


We were grateful guests at the traditional annual massed dancing at Tokushima. What a parade! Many dancers and musicians, all dressed beautifully, all doing the same things, and everybody happy to celebrate the spirit of Old Japan.

 ありがたくも、年に一度の、正統、阿波踊りの客となれり。素晴らしき行列! 大勢の踊り子に、お囃子。衣装の絢爛。めでたき顔と顔。揃いも揃いたり! 大和魂に祝福あれ!

訳:朗善



ナサニエル・ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2011年より松山市在住。


目次に戻る



JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第18話
「♯&♭(シャープ)の西村コルトレーン」

 白色の墓石にはサックスが描かれ「西村昭夫92年9月22日、ニューヨークより永遠のコンサートに旅立つ」と刻まれていた。享年56歳。

南海の夜長トレーンの影一つ 蛇頭

 西村さんのソプラノサックスが遺品となり間もなく20年。それは今、僕の手元に在る。松山では随分と懇意にしていただいた。その後、神戸・北野クラブの専属ミュージシャンとして活躍し渡米。実力者だったからニューヨークでも直ぐにユニオンの資格を得て良い仕事にありつけた。マイルス・コンボのテナー奏者だったジョージ・コールマンと共演した噂も聞いた。長女の結婚式でコルトレーンの十八番「アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー」を奏でる西村コルトレーン。パイプオルガンによる伴奏は奥さん。そんな映像の入ったビデオが松山に届いた。全てが順調に思えたのだけれど……。

モア・ミュージック無月の月を見つけた  チャンヒ

 句会では気付かなかったが、これは完全なジャケ句だ。迂闊だったよチャンヒさん。
 今年の薫風の頃に一枚のレコードを手に入れた。西村さん在籍時の原信夫とシャープス&フラッツのアナログLP。ジャケットの表面は黒一色。その片隅に白字で「dedicated Duke Ellington by NOBUO HARA and SHARPS & FLATS」とタイトルが描かれているだけ。松山のレコード屋「モア・ミュージック」で、僕はこの中古盤と出会った。

稲妻やサキソフォン吹くタキシード  神楽坂リンダ

 ジャケットの裏面を見て僕は歓喜した。そこには、いソノてルヲ氏のライナーノーツとともに西村さんの雄姿があった。A面の1曲目「サテンドール」のソロで雷が脳みそを縦断した。

秋刀魚焼く人の鼻歌Aトレイン 俊坊

 西村さんの生家と墓は高知県土佐清水市竜串にある。国道沿いの足摺海洋館から山際に数百メートル入ると西村さんを育んだ集落が見えてくる。相撲が強くアコーディオンを達者に弾く少年とジャズとの出会い。そして早大在学中の相撲部で学生選手権第2位という戦績。シャープス&フラッツを経て自己のカルテット「インプレッション」を結成し、西村コルトレーンと呼ばれるまで。僕は何も訊けていなかった。

Satin Doll小悪魔口説くなら檸檬 むうん

 今年の「四国地域福祉セミナー」は7月末に土佐清水市で開催された。交流会第2部で出前ジャズバー「Satin Doll」を開店。西村さんが松山で経営していたライヴハウスの店名である。店長(僕)の出来心で始めた交流の場は、既に四国を2周(8年)してしまった。
 で、今回の会場は足摺の某ホテル喫茶コーナー。店にジャズ仕様の飾り付けを施し、酒と肴を揃え、地域福祉コンシェルジュなるお接待役も配置した。その和子さん、良佳さん、尚子さんの求心力でバーは超満員。さすが四国の有名市町社会福祉協議会でご活躍の著名事務局長の御三方だけのことはある、と感心した。もちろん客は誰一人、彼女たちを小悪魔と呼んだりはしなかった。

流星の軌道唇にある疲労 てんきゅう

 今回の一番人気句。マスター、お疲れさんでした。




http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


目次に戻る



ラクゴキゴ


第18話 文/俳句 らくさぶろう

『夏の和尚さん』
〜祝 襲名 六代 桂文枝〜

あらすじ
 大工の親方が弟子のアパートにやってきて、あまりの暑さに驚く。
 クーラーも扇風機も故障、そして冷蔵庫まで故障していて、まともに使えるのは電気ストーブだけ。
 親方は、こんなことだろうと思って今日は暑気払いに誘いに来たのだという。スポーツ新聞に載っていたのがホテルの最上階でビールの飲み放題をやっていて、料金は1分30円という時間制。しかも今日は浴衣を着ていくと半額になるらしい。
 弟子が、行きたいが浴衣がないと言うと親方は昔あったホテルの浴衣を取り出して、これを着ろと言う。弟子は着たもののやっぱり恥ずかしい。これだったら道頓堀に飛びこんだ方がまだ涼しいと言って本当に飛び込む。
 そのせいで親方と弟子は警察につかまってしまう。親方の奥さんが和尚さんに説教するように頼み、和尚は「どんなに暑くても心がけしだいで暑さは感じない」と説教する。
 説教されて悔しい親方は、弟子の暑いアパートに和尚を呼んで、「暑い」と言わせてやろうと企む。本当はまだ生きている弟子の父親を死んだことにして供養をしたいからとアパートに呼ぶ。
 父が好きだった餅を焼いたり、プレゼントだったからと毛皮を着せたり……。最後までいったらお布施を払わなければいけないが、絶対途中で投げ出すから払わないでいいという親方。
 しかし結局最後まで和尚は「暑い」とは言わず、弟子はしぶしぶ千円をお布施として渡した。
 お寺に帰った和尚、暑くてたまらずクーラーをつけろと大騒ぎ。お布施を開けてみてあまりに少ないのでビックリして
「暑いけど、お布施は寒い!!」



 この夏、六代桂文枝を襲名した桂三枝師。なんと創作落語を二百本以上書いていらっしゃる。スゲー。
 「古典落語」に対して、よく「新作落語」と呼ばれることが多いのですが、文枝師は敢えてずっと「創作落語」と言い続けておられます。「新作」と言うと旬を過ぎれば急に古びてくるのですが、文枝師の落語の多くは後世にも残るもので、別の噺家が受け継いでいるのも多くあります。中には東京の噺家さんが手がけているものも。
 三枝時代、十二番目の弟子として入門したのが愛媛県松前町出身の桂三幸君であります。三幸君は僕の高校と大学(愛媛大学落語研究会)の後輩で、ウィキペディアによりますと「らくさぶろうの紹介で桂三枝に入門」となってますが、これは大マチガイ! ビックリしますわあの適当さ加減には。誰が書き込んだのでありましょか。
 さて、三幸君いわく文枝師はものすごく真面目に仕事に取り組み、後輩を育てようという情熱も強く持っておられるとか。
 現在行われている全国各地の文枝襲名披露興行にも同行させていただいてるようで、ものすごい機会に恵まれたものだと思ってます。
 愛媛でも9月13日(木)に松山市民会館大ホールで行われます。他に桂ざこば師、宮川大助・花子さんらがご一緒だとか。これは見に行かねば!!
 六代文枝としてこれからまた大きく大きくこの看板を育てていかれることでしょう。でも何歳になっても見たいですね「いらっしゃ〜い!」と椅子からコケるのは。


口上の主はしゃべらず秋暑し


目次に戻る


本家慶弔俳句帖 第48回


文 桃ライス

野田総理の散髪代がうなぎ登りだよ
 就任当初は10分1000円の激安理髪店を利用して庶民派をアピールしていた野田佳彦総理が、最近は高級理髪店を利用するようになっているという。
 ネット情報によると、月に一度のペースで散髪する野田総理。7月8日、潘基文国連事務総長との面会を終えた総理が向かったのは、首相官邸近くのキャピトルホテル東急内にあるヘアサロン「カージュラジャティアド」。エステやスパの設備を備えたサロンで、カットの基本料金は1万3800円、それもカットのための個室が用意されているという高級店だ。
 大手紙の元総理番曰く「就任後、総理が訪れる理髪店は、徐々にランクアップしている」。「昨年11月に、1000円カットから新宿パークタワー内にある料金4515円の中流店に変えたかと思うと、今年4月にはホテルニューオータニ内にある『ヘアサロンONO』(基本カット料金8400円)にて散髪。さらに5月からは『カージュラジャ』を利用するようになりました」。
 ドジョウなのにうなぎ登りするとは。

かの人の偽髪乗っけて野分かな


暴言を敬語に変えてみよう
 「うっせーな、てめぇ。死ね」という暴言を例えば敬語にした場合どのような表現になるのであろうか。その回答がネットで話題だ。
 暴言は、そもそも目上の人に使う言葉ではないため、回答のハードルは高い。まずはベストアンサーより。
 『たいそうにぎやかなご様子でいらっしゃいますところまことに恐縮でございますが、 ご逝去あそばしていただければ幸甚に存じます。』
 実に角が立たず、当たりさわりの無い表現だ。しかも、文章の意味合いを崩さず結果的にお亡くなりになってくださいという意味合いは見事に美化されている。以下は他のアンサー。
 『貴殿の御言葉が少々耳に障りますが、貴殿は急逝をお望みか?』『閣下お静かに。閣下死を持って償ってください』『静かにしてください、あなた。星になってください』『騒々しいですよ、そなた。はかなくおなりなさい!』

秋簾今宵は姫となりにけり


桃ライス…自分のことをワシとよぶ婦人グループ会員


目次に戻る


お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第六回 『東京原子核クラブ』
[俳優座劇場プロデュース公演、作・マキノノゾミ、演出・宮田慶子、出演・田中壮太郎、小野塚清江、西山水木、他、12年7月9日、ひめぎんホール(県民文化会館)サブホール]

 昭和初期、東京本郷の下宿屋「平和館」を舞台に繰り広げられる青春グラフィティ。
 本作には、第一回「父と暮せば」、第五回「樫の木坂四姉妹」に続き、原爆が影を落としています。ノーベル賞物理学者の朝永振一郎氏の若き日をモデルにしている主人公・友田晋一郎は、原子核の解放を夢見る若き学究の徒であるとともに、日本での原爆開発に従事していたことが描かれます。ただ原爆は、必ずしも本作の主題ではありません。本作はあくまで青春群像劇。毎日メザシだったり、キャッチボールの球がカレーに飛び込んだり、ニセ学生がばれたり、認められたり認められなかったり、無聊を囲ったり、酒で憂さを晴らしたり、野心を持ったり、増長したり、ほのかなロマンスがあったり、etc。そんな、馬鹿馬鹿しくも如何わしい、いい加減で、怪し気で……だからこそいい。多分いつの時代も変わらない、そんな青春が描かれています。

四畳半にも原子核にも大銀河

 それでも、時代の流れとか、大きな状況とか、世間の空気とか、(大概正しいものとしてやってくる)何かそういったものによって、時に青春というものは、押し潰されたり、捻じ曲げられたり、利用されたりしてしまいます。本作はそれに対して、静かに問い質すところこそあれ、直接的に弾劾や、非難、追及はしていません。最終的にどう受け取るかは、観客に委ねられています。
 とはいえ、ひたすらインチキに、逞しく、身過ぎ世過ぎしてきた富佐子という女性が、終戦から1年たって、ボロボロになりながらも帰ってくる終幕に、作り手の意志のかなりの部分は表れているように思えるのです。

焼野原キャッチボールの放物線



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。次回公演は表紙裏の広告をご覧ください。



目次に戻る


まつやま俳句でまちづくりの会通信


第20回 文/写真 暇人

大人の夏休み三津浜俳句フォトミュージック
 今年もダンサー三好直美(なお)さんの誘いを受けて参加した「三津浜アート蔵劇場」。mhmでは昨年の路線(吟行俳句+写真)に現地で音楽を付けてスライドショーを行う、名付けて「三津浜俳句フォトミュージック」を上演することに。
 朝10時、すでに気温は上昇、天候が不安定なため湿度も上昇という吟行には最悪な状況の中集まった18人の俳人。その中には愛媛大学俳句研究会の原さんや今回アート蔵で大活躍したしんじゅさんの妹・河野多映(肉球)さんの姿も。肉球さんはなんと現役のジャズピアニスト。今回のイベントのために遥々京都から駆けつけてくださった。
 松山はいくのガイドしんじゅさんの説明を聞きながら三津の歴史ある町並みを散策、堀本かまぼこでは簀巻きをいただき皆絶賛(ビール欲しい!)、それぞれ俳句の種を探した。
 吟行で集まった俳句、そして吟行中キム・呑志・そして私が撮った写真を約6分ほどの映像作品に仕上げ、準備完了。あとは上映時の肉球さんの演奏に期待が高まる。
 13時から始まった「三津浜アート蔵劇場」。ダンスや音楽、映画作品の上映後、いよいよ我々の出番。スライドショーの準備の傍ら、肉球さんはミュージシャン河野多映となり鍵盤ハーモニカとキーボードを調整。そして上映は始まった。あねご代表の司会でまずはキム・チャンヒ氏の俳句作品が肉球さんの即興音楽で上映される。その後はいよいよ今日の吟行会作品の上映。癒やされる旋律が流れる中、写真と俳句がクロスされ、昨年味わった感動以上に今年も感動した。この模様はすでにYouTubeで公開してます。mhmブログからご覧あれ。
 その後はなおさんの誘いをうけて、ダンスと音楽のコラボ(即興狂宴)に参加した肉球さん。どんな状況でも挑むダンサーと、それに応戦するミュージシャン。マリンバの鍵盤を取り外すミュージシャンもいたりして現場はある意味戦場。そんな中を鍵盤ハーモニカで戦った肉球さんの姿にまた感動。
 ところで前回の内容は「mhm×facebook」でしたね。このイベントでも、facebookに怒濤のアップを試みたにもかかわらず投句はほぼゼロ。今のところこの試みは失敗に。「白石の鼻吟行会」(9月22日)、「松山地方祭吟行」(10月6日)でも同様の試みを行う予定。ぜひ参加を。


次回内容は「未定」です。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


目次に戻る



一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成24年7月度


【未央柳】
光笑う未央柳の揺れるとき 紫水晶
一面は光の宝庫未央柳 ふじばかま
未央柳は風金色に梳くがため 海田
其は今も未央柳の野であるか 桜井教人
花嫁や未央柳の蘂の金 うさぎ
未央柳天文台の青き門 サライ
雫する白馬の睫毛未央柳 樫の木
その蘂へ地震の国の雨金糸桃 冬井いつき
触れたなら抱いてやる未央柳散らすように  烏
支那の歌路地這う未央柳かな そも
妃は民へ御手振る未央柳かな ふづき

《天》
未央柳月を描くときの色  ひまわり


【円座】
円座より連峰のぞむ青々し 朝日
生き変わりあるらし円座青臭し そも
積み上げてななめにずれる円座かな  のり茶づけ
譲られて座る上座の円座なり 不知火
蹴り轆轤陶土しみたる円座かな よもだ
沖見やりラバウル語る円座かな 菜々枝
半生記まだなかばなる円座かな 風
雨の降るフィルムオデオン座の円座  もね
キリシタン座せる布教の円座かな  しおみおばちゃん
西班牙の神父の椅子の円座かな  樫の木
人は尾を無くして久し円座かな 伊佐

《天》
晴れた日や山の匂いの円座干す  一走人


【蝿取リボン】
蝿取リボン吊る程蝿の待ちきれず 花菜
蛾の鱗粉の付きし蝿取リボンかな  あべかわもち
蝿取リボン一日垂れて仕事なく 甘泉
西窓の蝿取リボン熱帯びて 山野遊造
蝿取リボン見える角店右折せり ケソラ
蝿取リボン磯の匂いの店にいて  八木ふみ
蝿取リボン豚骨砕く手斧かな みいみ
寸胴鍋たぎる蝿取リボンゆれる 一竿
ブルースが蝿取リボンに張り付いた  太郎
蝿取リボン正義の味方に敵多し  ミズスマP
闇市を生きし手や蝿取リボン  まっことマンデー
蝿取リボンメチルの混じる酒のこと  マイマイ

《天》
国若し町に蝿取リボン増ゆ  笑松


【冷索麺】
びっくり水は子の役目なり冷索麺  さわらび
冷索麺さらせば真珠色に透く ふづき
ワサビは沢より冷索麺の贅 たま
流れ来る四本を掬う冷索麺 蕃
大皿に乾く冷索麺の残骸 だんご虫
噂話再燃冷素麺のびた 亜桜みかり
すすれ冷索麺あんな奴忘れろ  ドクトルバンブー
病廊の端の炊事場冷索麺 風
冷索麺ざっと食ろうて通夜に行く  不知火
逆縁や一色ばかり冷索麺 ターナー島
相続の小さき不満や冷索麺 妙
索麺の句をひねりをり異国の地 朗善

《天》
冷そうめん明日ラオスへ発つ人に  鯛飯



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

9月2日
白露【仲秋/時候】
二十四節気のひとつ。陽暦では2012年は9月7日。秋が深まり始め、冷気により野草などに朝露がつく頃の意。

溢蚊【仲秋/動物】
最盛期を過ぎて、人を刺すほどの力も無く、弱々しくさまよい飛ぶ蚊のこと。

9月16日
田守【三秋/人事】
鳥や獣が、収穫を控えた田に入って荒らさないように見張り番をすること、また見張り番をする人のこと。

葡萄酒醸す【仲秋/人事】
葡萄の果汁を適温で発酵させ、葡萄酒を醸造する。日本での醸造は明治期に入ってから行われるようになった。

9月30日
芙蓉の実【仲秋/植物】
芙蓉は、花が萎んだあとに、球形で硬い毛に覆われた実を結ぶ。乾いて熟すと、やがて弾けて種を飛散させる。

月代【三秋/天文】
月がまさにこれから昇ろうとして、月の光で東の空が次第に白く明るさを増してくる様子。「月白」とも書く。


目次に戻る



句集の本棚





『光まみれの蜂』 神野紗希 著

「これからも、昨日ではなく、明日でもなく、今ここで生きているということを、作品にしていきたいと思います」(著者あとがきより)
 初句集『星の地図』から十年。本書は、まさにそんな著者の折々の「今ここ」の息吹が詰まった、十年間の等身大図だ。
  ひき出しに海を映さぬサングラス
  寂しいと言い私を蔦にせよ
  飛び込みのもう真っ白な泡の中
  トンネル長いね草餅を半分こ
  虹見しと日記にありて覚えなく
 多くを飾らず、素直でいて鋭く、読み手の想像を楽しく掻き立てる。
  星空と星空の間の旱かな
  食べて寝ていつか死ぬ象冬青空
 こういう感性で森羅万象を捉えられたら、きっと今ここの生は輝くに違いない。
(書評:匠磨)

角川書店(2012年初版)
定価 1500円(税別)
全161ページ



『始祖鳥』 鶴濱節子 著

 春は見つけるものだと思う。あるときある瞬間に春を春だと感じる。
  ゆるゆるとゆらゆらゆらりあっ、春だ
 そう。春はゆるゆると、そしてゆらりと来るのだ。なんて素直な感覚なのだろう。その素直さに惹かれる。
 著者の第一句集は柔軟で豊かな感性が句として結集している。
  海月浮くあの世この世をふよふよと
  蕪抜く今日はお空の特売日
 「お空の特売日」という発想が面白い。きっと大きな蕪なのだ。ただの「空」ではなく「お空」。なんとも可愛らしい。
  ジューンドロップ駝鳥の卵割れる音
  大都会金魚の孤独まっかっか
  月見して月の匂いの地球の子
 読後、晴れやかな気分が残る一冊である。「船団の会」。
(書評:藤実)

ふらんす堂(2011年初版)
定価 2500円(税別)
全271ページ



『悠悠自適入門』山崎十生 著

  迷ひとは立派な悟り雨水過ぐ
  祠には木の芽を起す雨の神
  青田風何も考えない至福
 青田を吹き渡る風を全身で受け止め、今はただ無の自分でいる。この時間は神が与えてくれたものだろうから……。
  大海月ゆらりはるかに富士の山
  極上の余白としての望の月
  溌剌と且つ奔放に凍てし滝
  悠悠にして自適なる花筏
 句集名となった句。悠悠自適とは「俗事にわずらわされず心静かに暮らすこと」である。散った花びらは水の流れに逆らわず、時に立ち止まりつつその姿を成してゆく。目に見えない自然の力や神の力を信じていくことがまた自分の力になっていく。読者にもエネルギーを与えてくれる一冊である。「紫」主宰。第八句集。
(書評:なぎさ)

角川書店(2012年初版)
定価 2667円(税別)
全193ページ



このコーナーで紹介した句集は、100年俳句計画編集室にて閲覧できます。


目次に戻る



選句&投句欄 ザ 句会


 このコーナーは読者による誌上句会。先月号に掲載された投句への、選句&選評(互選)を掲載しています。不肖編集室一同も参加しています。

第176回兼題
 「眩しい句」をテーマに
 出題者 雪花さん

 今月の互選『鰯の歯ぎしり』

14点句
瑞木、明日嘉、しのたん、紗蘭、こてぞう、もんきち、猫ふぐ、ほろよい、不知火、安、狸穴けら、空山、ペプチド、まほろ選
トンボ玉かざして夏をとじこめる ゆき
  瑞木  美しい眩しさに一票。
  明日嘉  トンボ玉をかざしてとじこめたのは眩しい夏の思い出でしょうか。眩しい真夏の太陽でしょうか? 夏をとじこめるがいいと思います。
  しのたん  シンプルな句だけど、好きな句でした。トンボ玉大好きで何個も革紐通してペンダントにしてます。かざす、とじこめるを仮名にしたのも柔らかさや優しさが出てますね。
  紗蘭  トンボ玉をかざした時に、色とりどりの光輝いている様子を想像してきれいだなと思いました。
  こてぞう  ゆかた姿の女の子の絵が浮かんできました。肩の力がぬけた、いい感じの句という感じです。
  もんきち  最近とんぼ玉にはまっています。あの涼しげな透明感が大好きです。いろいろな模様や色があってとんぼ玉のお店に行くと時間がたつのを忘れてしまいます。小さなとんぼ玉の中にまさに夏が広がっているような気がします。
  猫ふぐ  夏を閉じ込めるがいいですね。その行為が眩しいなあ。
  ほろよい  今年の夏を閉じ込めたら、百年は輝き続けるんじゃないでしょうか? 眩しすぎる。
  不知火  夏を感じるトンボ玉がほしくなりました。
  安  あのキラキラしたトンボ玉の中に、キラキラした夏をとじこめる、その発想が好きです。
  狸穴けら  トンボ玉は宇宙を閉じ込めたような気がします。夏の太陽の光が閉じ込められても不思議ではありません。浪漫を感じます
  空山  眩しいという言葉はないけど眩しいだろうと思う。
  ペプチド  とんぼ玉を日にかざすことによって、輝きを増した夏をとんぼ玉にとじこめ、一人占めしたいという夏への思いに共感しました。
  まほろ  表現の手法としてはよくある表現かもしれないとは思うものの、決して均一ではないガラスの玉の中を、乱反射しながら抜けてくる、眩しく美しい光が感じられる。

5点句
殻嵩はるお、町田美香、杉山久子、依里、えりぶどん選
カナブンの光背負って次の空 親タカ
  殻嵩はるお  次の空が見えた。重そうに飛ぶ後姿のカナブンの、絵本の次のページには、きっと眩しい光景が展開されるに違いない。
  町田美香  次の空が秀逸だと思います。
  杉山久子  「光背負って」にも生き生きとした力強さがあるが、ここまでは他の人にも詠めるかもしれない。下五で一気に明るい世界が広がるところ、その先にも「次の空」がいくつもあることを予感させるこの言葉の力が凄い。
  依里  美しい黄金色の羽根を持ちながら、危険を感じた時は、すさまじく騒ぐ虫だけど、本当は天からの使者なのかも知れないと思った、大切な司令を運んで次の空に飛び立つのかも……。
  えりぶどん  次の空の表現がうまいなあ。

4点句
レモングラス、樹朋、一走人、権ちゃん選
ストロボや逝く夏に落とした記憶 犬鈴
  レモングラス  ストロボの眩しさがぼんやり思い出される、ほろ苦い記憶は封印しよう。そんな気分に同感。
  樹朋  ストロボは瞬間的に強い光を発して燃え尽きてしまう。作者は夏の間にそのような強烈な体験をしたのだろう。しかし夏の終わりにその記憶を意識的に落とした。それは何かの決意の表れだろう。
  一走人   眩しい句でした。どんな記憶だったのかな?
  権ちゃん  夏の思い出はストロボのように眩しいけれど一瞬のことで、夏が過ぎると忘れてしまうかもしれません。

迂叟、松ぼっくり、たま、のり茶づけ選
乳首吸ふ吾子の瞳や草田男忌 未々
  迂叟  農作業の合間に田んぼの畦道に腰を下ろして授乳を始めた母親、眼と眼を見詰め合う親子、強い絆が生れる瞬間であり、眩しく感じる。
  松ぼっくり  「乳母車揺るゝ林檎を持ちつづけ・草田男」を思い出しました。いい供養の句だと思います。
  たま  吾子といえば草田男! 子の無垢な瞳、母の豊かな乳房、まさに神々しい眩しさと愛を感じます。
  のり茶づけ  一読、真っ白なおっぱいに無心に吸いついている赤ちゃんの姿が……眩しいほど母なるうつくしい乳房ですね。草田男忌という季語も「万緑の中や吾子の歯生え初むる」の名句を思い出されすんなり心に響いてきました。

3点句
七草、青蛙、すな恵選
沖からの虹の直径四国ほど ソラト
  七草  虹写メ友の会会員です。直径四国ほどの虹! 何と雄大な。胸が高鳴ります。
  青蛙  虹のたもとまで波はキラキラしている。これは大きく出たなぁ、という感じですが、大景の気持ちよさが伝わってきます。
  すな恵  「沖からの」と、「四国ほど」で、リアルな大きさが出た。人生で一番眩しい虹に違いない。

まるにっちゃん、カシオペア、藍人選
朧なる眼底検査ただ眩し 輝女
  まるにっちゃん  二年前より左目ブドウ狭湾症。月に一度眼底検査の光の眩しさ、つらいよ〜!! で、あなたの目大丈夫ですか?
  カシオペア  九月○日、目の手術決定、眼底検査は本当眩しい! 秋には、はっきりくっきり!! また句会参加できる事楽しみにしています、たんぽぽ句会の皆さん忘れないでね。
  藍人  よくわかります。本当に眩しいんですよね。方言で眩しいことを「あばばい」って言うんですが、感じでしょ。

ひでこ、豊原清明、藻川亭河童選
すいか食む乳歯二本の眩しさよ カラ嵩ハル
  ひでこ  中七がとてもかわいい!! 赤ちゃんの全体がきらきらしています。
  豊原清明  美しく清潔な眩しさだ。すいかが平仮名なのは印象的。
  藻川亭河童   流れるような一物仕立てを最後の切字「よ」が、どっしりと受け止めています。家族の中心に座る幼子をみつめる眼差しが眩しいのでしょうね。二本の乳歯は健やかな成長の象徴と捉えられます。また、「すいか」の季語はここではひらがなで動かないと思います。漢字の「西瓜」では、句がでこぼこしてくると読みました。生後6ヶ月ぐらいから生え始める可愛い乳歯で顔よりも大きな「すいか」をかじっている幸せ。

破障子、桜井教人、三月選
ウルトラマン変身氷菓突き上げる 樫の木
  破障子  一番古い記憶では一本十円だった氷菓。ウルトラマンが放送され始めたのはもっと後だけど、気分は重なるな。太陽に突き上げるポーズをとってしまうのもうべなえる。でも他人が見ても眩しくないかしらん?
  桜井教人  想像するととても楽しい景。氷菓の光、ウルトラマンが変身するときの光、まぶしく感じます。
  三月  いました、こんな男の子。

2点句
コナン、八十八選
地下道を出るや夾竹桃の赤 もね
  コナン  地下道から出た瞬間の「ワァー眩し熱っーー」実感。「赤」が効いていると思いました。
  八十八  地下道を出たときのくらくらするような眩しさが、夾竹桃の赤い花によって一層強烈さを増している感じがします。

さかえ、たっ君選
褌の初々しさよ荒神輿 コナン
  さかえ  若々しいふんどし姿。暑さをふっとばします。
  たっ君  褌の白さ、初々しさ、共に眩しさ。神輿をかついで行く人々の眩しさが現れて良い句だと考えました。

朗善、桔梗選
日盛りやひらきて貝のしづかなる 杉山久子
  朗善  「ひらきて」がうまいなあ。目に見えぬほどゆっくりした動中の静。
  桔梗  日盛りやの詠嘆が効いている。日盛りの光の中にある貝の内側は、ただただしづかに美しい。

親タカ、駝楽選
噴水の流れて戻らざる光 一走人
  親タカ  戻らないのは森羅万象どれもだけれど、噴水にまとった微細な光達もやはり二度とは戻らない……とは。眩しくやがて深〜い句。
  駝楽   夏のワンショット切り取りを感じました。

今比古、渡部五龍選
マウンドへまっすぐに行く白き靴 ぎんなん
  今比古  もちろんマウンドにはジリジリ焼け付く闘いが待っているんだけど、決然とむかう白い靴と決意がマブシイ。直球勝負の句。
  渡部五龍  初戦は真っ白だけどすぐに汚れてしまうんだよね。それが「白」の運命。

蓼蟲、ゆき選
延命をことわり老父胡瓜もぐ 権ちゃん
  蓼蟲  延命、線引きが難しい? なーんも難しいことなんかないんじゃがね。要らんことはせんことよ。まあ、胡瓜でも食べてお行きんか。
  ゆき  毅然とした生き方に眩しさを見出した句。お父さんの日常のたたずまいと、それを見守る深い眼差しが交錯して、粛然とした思いにさせられました。 

浜田節、みちる選
炎天へサイレン主将泣き崩る 鞠月
  浜田節  「眩しい句」悩んでしまった。やっぱり季語は今現在のライブな季語を選んで欲しい。いい句であっても、季節がずれていたらマイナスと思う。ゲームセットの瞬間の主将の涙を眩しいと詠んだ作者、お見事です。青春を感じます。
  みちる  勝利か? 敗北か? いずれであろうと、青春の眩しさを感じました。

遊人、正人選
太陽くわつとプールの底は青く塗られ 南骨
  遊人  反射光は120%。青水底の水のきらめきも美しい。
  正人  太陽とプールの底。その間にある水面を言外に語っている。力強い上のフレーズに、揺れる水面がちかちかと眩しい。

青柘榴、ザッパー選
朝つゆできらめくドレス着たスギナ こまりやま
  青柘榴  一番映像が鮮明に現れました。ズームアップした、クリスマスツリーのイメージだったのも不思議でしたが、素敵だなあ。と思わされました。
  ザッパー  スギナが効いていますね(笑)。

逆ベッカム、紫音選
LED夜店の金魚まぶしかろ ひでこ
  逆ベッカム  母は金魚すくいが得意でした。白熱球の暖かさが懐かしいですね。
  紫音  LEDの登場で人間の生活は便利になったかもしれませんが、金魚からしたら以前より眩しくなって少し迷惑(?)かもしれませんね。そんなことを気付かせてくれた一句です。

ケンケン、なゝ選
滴りてダイヤはいらぬと言い放つ 洋子
  ケンケン  言い放つ、潔さがいいと思います。言った事も言われた事もないんだよな〜トホホ。
  なゝ  言い放てたらな。

生糸、雪花選
噴水の陽と戯れて子を包む Blanca
  生糸  子供の水遊びしている、うれしそうな声ときらきら笑顔が浮かんでくる。
  雪花  噴水の飛沫が眩しくて子供たちが眩しくて心地よい句でした。

人日子、多久美選
禿頭が床屋跳び出す梅雨晴間 みちる
  人日子  確かに眩しい! 跳び出せば尚更目にしみる。
  多久美  違った意味での眩しい句、禿頭の散髪てやりにくいと思います。

たかこ、まんぷく選
ビッグバンを見てきたような夜のヒマワリ  牛後
  たかこ  向日葵は、自分の事を木だと思っている。人間の世界を見おろして種に記憶を繋げている。そんな気がする句。
  まんぷく  ビッグバンの光を内に孕んだ夜の向日葵には凄みを感じます。

輝女、兼光選
網膜の印画紙に焼く雲の峰 藻川亭河童
  輝女  網膜に焼き付けるという句は他にもあったが印画紙に焼くという表現が気に入りました。入道雲の真っ白な眩しさが感じられます。
  兼光  網膜には全てのものが映り込むが夏の雲は特に強く焼き込まれるだろう。たとえそれが過去の記憶の中にあるものであっても。

エノコロちゃん、元旦選
君の背の下着の透けし更衣 藍人
  エノコロちゃん  遠い昔の中学2年の思春期真っ只中っ私もこれと全く同じ光景を、見たのでした。そして隣りの席の女子が手をあげた瞬間に見えた脇の下のヘアー。これも、眩しかったですね。同感の一票です。
  元旦  最近はクールビズで、なし崩し的に夏モード状態ですが、衣がえは、ある日一斉に白っぽくなる眩しさがありました。ま、眩しさの意味は、それだけじゃないですけどね。むふふ。ただ、下着という表現がストレートかも。

ぜぶら、信野選
二の腕も焦げて眩しき青春だ ちろりん
  ぜぶら  しょっぱくて甘い大切な夏を力の限り生きている感じがして、顔見知りでもないのにニコニコ笑いかけてしまいそう。「眩しき青春」のなんて美しいことか。
  信野   いいですね。ほら幸せがそこまで来ていますよ。眩しいね。

清流子、亜桜みかり選
夏来る平仮名ばかりの俳句たち 安
  清流子  平仮名ばかりの俳句どれも原石のように眩しく見える。作者の気持がよくわかります。
  亜桜みかり  なるほど若い感性の一句は眩しいです。初夏のどんな季語のどんな句なのか知りたいなあ。

1点句
初夏の金麦のひとキラキラす ぜぶら
  都  初夏のさわやかさに心うたれました。

帰省子の包みをほどく汽車の旅 春告草
  唐草サ行  汽車の旅が懐かしい高校時代を思い出しました。どんな中身なのかが気になります。

水眼鏡はずせば見える明日の空 兼光
  だりあ  眩しい煌めく海と未来が見えます。希望のある素敵な句です。

すれ違う少女の笑顔夏制服 和音
  柊つばき  今では想像もつきませんが、それなりにスタイルもよく、モテモテだった頃を思い出しました(笑)。

蜘蛛の囲のキラリ王冠のかたち えりぶどん
  じろ  蜘蛛の巣をさわやかにとらえている。

球児等の決意の頭夏旺ん おせろ
  西条の針屋さん  やはり今の季節は高校野球でしょうか……。試合に臨むにあたって部員が必勝を期して全員が丸坊主にした頭に高校生の眩しさが見えるようです。

夏蝶やそんなにひるがへらなくても だりあ
  いつき  真っ当に眩しい句を選んだ。「夏蝶」の眩しさの本質は「ひるがへる」ところにあるのだという把握。「そんなにひるがへらなくても」という呟きに表現される眩しさもまた。

捨てたのは安住の闇だった光の蛾 あき
  ソラト  闇に安住すれば生きながらえるとはいえど、蛾は人は一瞬の命の燃焼に焦がれる。

黴の椅子「吐け!」と刑事が怒鳴る眼前の電灯器  いつき
  チャンヒ  【眩しい】を辞書で調べると、「光が強く輝いてまともに見ることができない」とある。それに当てはまる句は、この句しかないのでは! あまりに眩しすぎて、刑事があまりに怖くて、五七五に収まるはずもない。

汗の子の瞳キラキラ初安打 ほろよい
  魔心地  学生時代、公式戦ノーヒットの私には、眩しすぎます。

過ぐる日の少年駆ける夏野かな 一心堂
  もね  夏野を走る少年時代が眩しく甦る。

居るだけでただ居るだけで夏の星 ペプチド
  洋子  一番眩しく感じました。鳥肌になるくらい。願望かも♪

花は葉に千の金環映しけり 迂叟
  えつの  葉桜のこもれ陽に千の金環日食を発見。天体の神秘。美しくも眩しい。

白壁の街に太陽こそ真夏 チャンヒ
  あき  白壁に反射する太陽光が、105句の中で一番眩しいと思った。文字通り目が眩みそう。

長々と純白ドレス秋惜しむ 人日子
  ゆりかもめ  花嫁に勝る眩しい存在があるだろうか。そんなことを考えてこの句にした。

闘魂の白球跳ねる熱き夏 西条の針屋さん
  おせろ  球児等の日焼け顔が白球を追いかける。見るものも暑くなる季節である。何も加えなくても皆がうなずける句であると思う。

眩しさは苦手蛍の里に住む もんきち
  ポメロ親父  類想の多い中で異彩を放っておりました。

遺骨抱き下車する母や夏の雲 蓼蟲
  未々  多分、父の遺骨を抱く母の記憶を詠んだ句でしょう。作者は父親を失った悲しみの中にありながら、喪服を着て夫をいだく母のしぐさの美しさを目に焼き付けてその後を生きていくのでしょう。悲しいのに美しい、その情景は映画のワンシーンのように心に残ります。

ビニールハウスの屋根反射する汗の玉 サキカエル
  とりとり  なんと言ってもこれが一番“眩しい句”でした。

六月の花嫁連れて来た息子 しのたん
  八木ふみ  初々しい花嫁の眩しさが伝わってきます。

美少女の飛込み台に息ととのふ なゝ
  しゅん  周囲の静けさが少女のまぶしさを引き立てているように思いました。

木漏れ日の似合ふ夏服あつらえる 瑞木
  理酔  「あつらえる」が良いです、効いてます。

道をしえ影なき道に我の影 猫ふぐ
  大阪野旅人  夏の山里の一本道の風景が見えます。夏ですね。

あこがれの君と真下に夏の海 柊つばき
  よひら  君(新妻)と南の島へ行き、パラセイリングをしている……のですね? 眩しすぎます。見下ろす海も眩しいですが、見上げている人には二人が眩しいです。十数年前の事を思い出しました。私にもあった眩しい思い出です。

投げ上げて炭酸水の空きらきら 正人
  鞠月  若さを感じさせますね。青春は眩しい。

母ちゃんの金歯は光る飯はすえる ふーみん
  雨月   夏の日に光る母ちゃんの金歯が眩しいです。

噴水の弾け冒険始まりぬ めろ
  ちろりん  夏休みの一人旅のスタートの公園にて……青春でしたね〜。

今月の無点くん 
長まりて日食仰げば風薫る 桃林
歩は軽く初ランドセル桜東風 魔心地
雨上がり斜陽背にして虹を見る まるにっちゃん
夕焼の犯人燃えながら墜ちる ちょっと横道
夏の夜を来てすぐ去りし対向車 すな恵
向日葵やミニスカートから生足 雪花
朝の陽にダイヤモンドに芋の露 生糸
網膜に焼き付くあの日アゲハ蝶 元旦
キャピキャピの声へごろ寝のサングラス 青柘榴
レンズ越し水着モデルの射る目線 樹朋
噴水のこぼすひかりをてのひらに とりとり
惜しげなき少女の素肌梅雨明ける 浜田節
クリニック青少年等の夏の脚 KIYOAKI FILM
春爛漫笑顔はじけるおさげ髪 多久美
滝壷の泡としぶきのきらきらと エノコロちゃん
ゼブラゾーン日傘のひとのクラビクラ 唐草サ行
夏至の朝亀石金の卵産む 明日嘉
夏館けふも窓辺に立つ少女 たま
赫赫たる陽に射られしや砂日傘 七草
スペシューム光線見上ぐ夏の夜 理酔
学生の美脚涼しき過不足なし ゆりかもめ
地を揺らす追い山眩し博多節 こてぞう
火の鳥の羽を休める泉かな 桔梗
歩調取る乙女の行進五月晴れ 松ぼっくり
透明のラムネA玉取り出せず みゆう
新緑へまた1cm沈む村 たかこ
羅や眦をさく歯科の椅子 破障子
白き歯が笑みから零る夏はじめ 都
前列の剃頭揺れて夏兆す 青蛙
炎天を弾く車の後走る じろ
校門の梔子の白眩しき日 えつの
色眼鏡たるには色の淡きかな まほろ
朝の五時金色朝日眩し眩し 信野
炎昼や象に踏まるるサングラス 亜桜みかり
死にそうな金魚の鱗きらきらす まとむ
勝ち進むビーチバレーの地区予選 ポメロ親父
カーネーション捧げ持つ子の笑顔かな 空
結願の笑顔と涙合歓の花 清流子
夏山や巫女の針先静かなる 漫歩
町中が金環食に汗かきし レモングラス
連れ添うて見慣れし横顔蝉の声 駝楽
さわさわと黄金まぶしく麦の波 さかえ
吊るされた舞台照明旱星 紗蘭
聖夜の恵比寿バカラ大シャンデリア かのん
夏空や白球に込めたる希望 しゅん
立葵より高くなる父の背に 今比古
上向きのライトに吠える夏の雨 ザッパー
閃光のあと無人なる薔薇の庭 三月
行動が思想そのもの青胡桃 山ぐるぐる
待ちかねしバスに手を振る夏少女 渡部五龍
リンゴ酢で脳みそ洗い梅雨明ける まんぷく




第177回兼題
「オリンピック」をテーマに
出題者 八木ふみさん

1 倫敦やニッポンチャチャチァの暑き夏
2 夜濯や手を止めて聞くオリンピック
3 北アイルシェイクハンズや夏五輪
4 泳ぎきり後輩を抱き悔いはなし
5 熱帯夜ザパッと切り裂く槍一閃
6 熱帯夜眠られずにオリンピック見る
7 なでしこの闘いの夏始まりぬ
8 月涼し床の着地の決まりけり
9 短夜を金へと願う五輪かな
10 棲むと言う魔物を見たり酷暑かな
11 父超へた娘やロンドンの夏に立つ
12 テムズ河わたる夢みて明易し
13 東洋の魔女見し頃や秋夕焼け
14 空中へメビウスの汗体操金
15 夏休暇オリンピックに合わせけり
16 白塗りの五輪の色を言えぬ夏
17 敗れれば闇が来るぞと汗は言う
18 世界中炎暑聖火の消えるまで
19 イギリスの時間に添うて過ごす夏
20 八月のメダル完璧なる着地
21 こんなにも汗の滴る平和かな
22 熱狂に遠き競技も夏季五輪
23 天高し努力根性金メダル
24 選手らの皆歯は白し雲の峰
25 戦ひも文化ごとなり黒ビール
26 地球儀の上の平和よ聖火炎ゆ
27 マンゴーパフェもののけ姫の金メダル
28 夏五輪高さを競ふ広告塔
29 虹よふたたび浅見八瑠奈の双眸へ
30 病む人と微笑む五輪今朝の秋
31 踊りませ五輪音頭をロンドンで
32 204の国旗煌めく夏の空
33 夏惜しむ卓球台の海の色
34 選手皆メダルは重し酷暑かな
35 夏の月焦がす聖火のめらめらと
36 ゴーグルを外せば一人の人間に
37 負けたって日本一の汗である
38 西瓜食ぶ男子体操メダル提げ
39 ニンゲンに順位美しき夏の朝
40 君が代を口ずさむ夜やハイボール
41 サングラス放りQちゃん金メダル
42 金メダル級のまぶたよ大昼寝
43 白と青夏の夜かなしやわらみち
44 泳ぎ終えし体をつつむ国旗かな
45 何個目の金メダルなる今朝の秋
46 とろろ、美味しゆうございましたと逝きし人
47 輝きは皆一番の夏五輪
48 背泳ぎのためのふたつの耳揃う
49 聖火点火涼しき星をおどろかす
50 ロンドンの平和な戦燃える夏
51 国旗ひるがへる走れ飛べ投げよ夏
52 洗ひ髪オリンピックの始まりぬ
53 国歌斉唱ロンドンは白秋
54 サングラス外してやさしアスリート
55 流れる汗内村航平金メダル
56 奇跡ではなくこれこそ実力天高し
57 万緑や生まれただけで金メダル
58 眼光の薫にIPPON生ビール
59 聖火ひとつ地球一つを誓ふ夏
60 明易の実況テレビ絶叫す
61 夜濯ぎの間に間にのぞく五輪かな
62 表彰台の天辺に立つ夏の星
63 玉の汗キラキラしてる金メダル
64 サイダー呷るボルトの指し示す宇宙
65 聖火台沙羅双樹の花灯し
66 国技でふ重きメダルや霧の街
67 退屈な太陽の夏金メダル
68 宣言は女王陛下夏手袋
69 銀獲りて悔しいと言う小望月
70 天高く五輪晴れとでも呼んじゃうか
71 八月や人の夢まで背負う人
72 夏色に染まらせてをる五色の輪
73 ニムロッド奏で白夜の競技場
74 みどりの丘万国の旗ひるがへり
75 拳突き上げ熱帯夜のブラウン管
76 夏空に日本の槍の軌跡かな
77 シャッターの囲む海女だった選手
78 金メダルかじる夢みる天花粉
79 走って日の丸を背負うなど夏の果
80 ロンドン五輪中矢選手よありがとう
81 干し柿もち美味しうございましたと書き遺し
82 白シャツに五輪の染みの遺りけり
83 ビスケット食べて英国人となる
84 ただ強いだけじや届かぬ夏の果
85 飛びこみの時空の歪みへと進む
86 ベッカム参上ロンドンオリンピック
87 まず母に手を振る汗のメダリスト
88 目を見張る皆のための夏夜かな
89 東スポにまつとうな記事黄金虫
90 弧を描く10点満点天の川
91 洋弓の呼吸七秒夏五輪
92 西瓜の種飛ばせば父が金メダル
93 健脚が絡み合っては国ぞ国ぞ
94 センターポールに日の丸揺るる水中花
95 五十年五輪音頭の盆踊り
96 朝顔やアーチェリーの型真似てみる
97 身を槍に変えて炎天踏み抜かん
98 寝不足はオリンピックよ熱帯夜
99 おい河鹿聖火リレーに選ばれし
100 赤ちゃんのひと足からのオリンピック
101 風起これロンドン時指す熱帯夜
102 寝不足の朝も首振る扇風機


次回兼題「銀」の字の入った句 出題者 不知火さん
次々回兼題「家族」をテーマに 出題者 ふづきさん

【兼題の扱い方】
季語「xx」 … 副題含む季語を入れる。
「xx」をテーマに … 内容に沿って詠む。
「xx」の字の入った句 … 単語そのものを詠み込む。



めざせ!大漁旗(174号〜179号)
 誌上句会「ザ 句会『鰯の歯ぎしり』」では、選んでくれた人の数をすべて集計し、半年間で最も点数の多い方が「大漁旗」を獲得します。大漁旗を得た方は「最新十句」を本誌誌上にて発表することができます。

〈参加方法〉
 1 「今月の投句」から好きな句を選ぶ。(選句)
 2  その句の感想を書く。(選評)
 3 「次回兼題」の一句を書く。(投句)
 ※1〜3、俳号(本名)、〒住所、電話番号を明記して、編集室「ザ 句会」宛にお送りください。一人一句まで。選句は番号と俳句を共に記入して下さい。
  番号はお間違えなく!

  今回の締切は9月5日(水)必着です。
 Eメール宛先 kukai@marukobo.com
 インターネットや携帯電話から下記の場所にアクセスしていただくと、専用のフォームを使って簡単に投句&選句ができます。
 http://www.marukobo.com/kukai/


【現在の捕れ高】

16点
ゆき

15点
いつき

14点
とりとり

13点
ポメロ親父
のり茶づけ

12点
ひでこ

11点
杉山久子
明日嘉

10点
しゅん
迂叟
蓼蟲
未々
犬鈴


目次に戻る



100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

テレビ/ラジオ
NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  9月11日(火)11時40分〜
  9月25日(火)11時40分〜

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)・住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム・チャンヒのイラストポストカードが贈られます。



執筆
東名高速フリーマガジン「高速家族」特別号&夏号Vol.30

Pioneer Sound Lab. 音俳句
http://pioneer.jp/soundlab/
  ウェブサイト上に組長の選評が毎日一つ発表されます。投句も受け付けています。

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

愛媛新聞
 「集まれ俳句キッズ」毎週土曜日

愛媛新聞「俳句の月審査会」
 9月14日(金)

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「夜長」締切 … 9月25日(火)


イベント
宇多喜代子・黒田杏子の道後俳句塾
俳句塾
 9月15日(土)13時〜17時
  会場 子規記念博物館1階
  参加費 4000円
  講師 宇多喜代子・黒田杏子

吟行会
 9月16日(日)10時〜16時30分
  会場 道後界隈〜
  参加費 3000円(昼食各自)
  講師 宇多喜代子・黒田杏子・相原左義長・夏井いつき
※参加申込・問合せは松山市立子規記念博物館(089-931-5566)まで。申込締切【8月25日(土)】


句会ライブ/講演など
南予いやし博句会ライブ in 松野
 9月30日(日)


各種締切
はぴかちゃん歯いく大賞
 9月15日(土)締切

夏休み句集を作ろう!コンテスト
 9月30日(日)締切


目次に戻る



魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

俳句甲子園、開幕!
唐草サ行 いよいよ8月の俳句甲子園ですね。今年もまた会場でお会いできることが楽しみです。
編 毎年恒例俳句甲子園、今年も無事に終了致しました。会場ではいろんな人に会えましたか?

ケンケン 俳句甲子園……いつも甲子園球場での野球観戦と重なるので残念ですね〜。日程がずれたらボランティア参加したいのですが……。
うに子 見に行くことはできませんが熱い俳句甲子園模様伝えてください。楽しみにしています。
編 こちらは会場に来られなかった方々。当日の様子は本誌来月号に掲載予定です。

オリンピックとスポレクイヤー
おせろ オリンピック始まりましたね。日頃の力が出せますように。がんばれ! にっぽん!
輝女 毎日凄く暑い日が続きますが、皆さん熱中症にはご用心! 早く寝なければと思いつつ、ついついオリンピック放送を見てしまって……にっぽんガンバレ!!
まんぷく ロンドンオリンピックの日本の健闘は大変嬉しい事です。
柊つばき いごっそうの父の性格をうけついだ私はオリンピックを見ませんが、それでも選手たちの精神力にかんしんします。
殻嵩はるお 笑わせて、驚かせて、泣かせる松本薫そのものがドラマチック! ええなあ、かおりちゃん。「あなたにとってオリンピックとは?」「うーん? ピカピカ?」はっはっはっおもろい。
編 観てる人から観てない人まで、オリンピック。そんな中、きとうじん部長率いるスポレク部ではこんな(↓)企画が行われました。

都 オリンピツク吟行俳句参加の皆様お疲れさまでした。
編 そう、オリンピック吟行! 早朝4時30分に集合しての開会式吟行がどうなったかは24ページ参照。

百年百花へ感想
瑞木 百年百花の香奈さんの「Tシャツの背にも胸にも子を泣かす」を読んで、ン年前の記憶が甦りました。2歳児と0歳児が同時に泣きだすと、どうにもならなくてどっちかが泣き疲れて眠るまでそのままジッとしていたこともあったな……。
編 母の実感句。百年百花への感想その他、随時お待ちしております。

mhm通信&イベント!
あねご mhmのフェイスブックの勉強会に参加しました。わかっとるげな顔して座っとりましたが、なんちゃわかりません。こんな人はしっかりイベントに参加してその場で投句しませう。各種イベントまだまだ続きます。
編 8月のイベントの様子は今月号mhm通信で。当日の映像はYou Tubeにて公開中。(↓のアドレス)
 http://www.youtube.com/watch?v=5Hum7kMSQwI

ザ・句会得点のあれこれ
樫の木 8月号のザ・句会「窓」、かのんさんにとっていただき有難うございました。かのんさんは佐倉市の社宅でしたか。私は小田原市の社宅でした。
西条の針屋さん いつも採用にはほど遠い俳句を投句していますが、8月号の「ザ・句会」において藻川亭河童さん、1点句ながらそれを細かく評して下さり有り難うございました。次回も投句しようと意欲が涌いてきました。これからも精進しますのでよろしくお願いします。
編 取って取られて、共感があったり喜びがあったり。

ゆき 毎月とても心待ちにさせていただいているコーナーです。お題に苦しむこともありますが、楽しみでもあります。
編 さて、そんなゆきさん今回怒涛の14点獲得で一気に首位に躍り出ました。今期の結果は来月号179号で決まります。大漁旗はだれの手に!?

誤植のお詫び
ひでこ 8月号「ザ・句会」での私の選評が「夜中」になっていますので訂正お願いします。正しくは「家中」です。
編 8月号35ページですね。大変失礼致しました。“ya”を“yo”とタイプミスしてしまったようです。申し訳ありませんでした。

物申す
三月 お便りという訳ではなく全くの私見なのですが……「高田純三の勝手にエロ句解釈」のコーナーはこの雑誌にふさわしくないと思います。表現がエロスを通り越して気色悪いです。未成年の子どもも「100年俳句計画」読んでいますよ。
編 高田純三反省。どのみちあと1回で連載終了なので何卒!

「いい俳句」ってなんだろう?
生糸 高校入学してすぐ国語の先生が「“ミーンミンミーンミンミンポプラセミ”いい俳句でしょ」と言われた。その時何も思わなかったんですけど40年経て忘れないという事は、いい俳句なんかなと思い出しました。むずかしい言葉を使って初心者にわからないような句と、どちらがすごい俳句なんでしょう?
編 いい悪いは別にして、とにかく印象に残る句ってありますよね。ある意味一本勝ち。

スマホ時代の俳句整理術
すな恵 スマホにしたら、Evernoteというクラウドサービスを知りはまっています。これを使って自分の俳句データベースにしようと格闘中。その前に一句でも多く作れよという自らのつっこみも感じながら……。
編 平たく言えば、どこでも開けるメモ帳みたいなものでしょうか。来月号特集でぜひ紹介してください。

ラジオを聴きながら
元旦 「オトナの補修授業」聴きながら、くらむぼんに投句してます。
編 7月31日の出来事。ライブだねえ。

エノコロちゃんの正体と由来
エノコロちゃん すな恵さんへ。お便りを「アブク」へありがとうございました。感心をもって見ていただけまして、本当に、うれしいです。ありがとうございます。私、エノコロちゃんは、57才になったおっさんです。申し訳ありません。俳号(私は一句ネームと言っていまして)をフルネームで表記しますと、「(一句ネーム)エノコロちゃん♂」で、ちゃんと♂=オスマークを入れています。と……言いますのも、7年ほど前の第2回イフイ本社(石手の)での句会ライブで女子高生にまちがわれたからです。以後よろしくねー。
編 先月号すな恵さんのお便りへの回答が届きました。そんな由来があったの!?


目次に戻る



くざとも

毎月たくさんの句会が各地で開催されています。それぞれの句座にそれぞれのカラーと名物キャラあり!! というわけでこのコーナーでは、句会の紹介とともに、句会の人気者、そして期待のニューフェイスを紹介していきます。

人気者
JAZZ句会
俳号 マミコン

 最近「せいぜいあと5、60年」を「余命宣告50年」と変更し、ネタの延命を謀っているマミコンこと堤宏文さん。昨年、古稀を迎えられた。多趣味!!というよりジャズ、マジック、カメラと、どれが本業か分からない。「JAZZ&MAGIC BAR WBGO」を経営し、数多くのジャズ・ライヴをプロデュース。自身もジャズ・ドラマーとして数多のセッションに参加。FM愛媛でジャズ番組のDJも務め、ジャズ・フォトグラファーとしても高名である。
 「一番遠いところに在った“俳句”に巻き込んだ悪い奴」と僕を責めるけど、けっこうハマってますよねマミコンさん。今や完全にふくし句会とJAZZ句会の中心メンバーとなっちゃいましたね。俳句に関しては堤さんをコントロールする(俳号の由来)二女の麻実子さんと奥さんの評判も悪くないようだし、ず〜っと“趣味”としてください。
 それと「僕の葬儀委員長頼みますよ」と言ったのは冗談ですよ。マジで弔辞文考えてるんじゃないですか? 縁起でもない。
(文・蛇頭)


新人
ぶんぶく句会
俳号 佐莉

 ぶんぶくは、季節のコース料理と美酒をネタに、松山に来たから俳句でも……っていう方をお誘いするに最高の句会。しかし、一度その扉を叩けば、個性派参加者による絶妙トークが可笑しすぎ、知らぬ間に俳句の虜となってしまうという薬物のような句会です。三人娘、選句数は一走人さんに、元俳句王国司会者の名披講、ともぞう一家、などキーワードは満載。そんなぶんぶく句会に今年から参加の佐莉さんをご紹介。
1 俳句を始めたきっかけ 娘が大学生になって家に一人、毎日寂しくてこのままではボケてしまうと思ったから。
2 変わったこと 毎日、せかせかと駅まで歩いていたのが、風の匂い、草花の成長など、日常のあらゆるものを注意深く観察するように。
3 俳号の由来 三蹟の一人、藤原佐理の書が、故郷の大三島の大山祇神社にあったのを思い出して、同じ藤原にあやかって。
4 ぶんぶくの魅力 毎月趣向を凝らしたおいしい食事。おまけにビックリするぐらいの量の多さ。ぶんぶくならではの先輩方。毎回軽妙なやりとりを聞きつつ幸せを感じながらひたすら食べている。
 ……そんなぶんぶくに是非お運び下さい!
(文・らまる)


句会の開催日程等詳細は句会カレンダーのページをご覧下さい。


目次に戻る


鮎の友釣り

172

俳号 ふづき

不知火さんへ 御家族で俳句を楽しまれている、心の優しい不知火さん。又句会を御一緒出来る日を楽しみにしています。

俳号の由来 誕生月から選びました。平仮名の方がより覚えて頂きやすいと思い、最近「文月」から「ふづき」と致しました。

俳句との出会い 父を看取り、新しい趣味を持とうとカルチャーを見学した事が始まりです。初めての句会はとても楽しく、俳句のイメージを一新させてくれました。以来、組長&皆さんから元気をもらえるカルチャー句会は、毎月の楽しみとなっています。

写真 我が家の二匹目の猫チビタです。

次回…空さんへ いつも笑顔の空さん。大胆な発想の空さんの句に驚かされ通しです。ジャズコンサート、又誘って下さいね。


目次に戻る



告知


今年もやります!選評大賞2012
選句の対象となる句
・「100年の旗手」掲載句
 (2011年10月号〜2012年9月号)
・ その中から、心を打たれた俳句を1句選んで、選評をお寄せ下さい。

記載事項
・掲載句1句(掲載号、作者名を必ず明記)
・選評 20字×15行(300字)以内厳守
・俳号、本名、住所、電話番号(必ず明記)

締め切り 10月14日(日)必着

応募先 100年俳句計画編集室まで、ハガキ・封書・FAX・メールでお送り下さい。
 ※送付の際、件名・タイトルに「選評大賞2012」と明記下さい。
 ※ご応募の際、他の投稿とは別にお書き頂きますよう、よろしくお願いいたします。

 お送り頂いた選評は、編集部で審査し、大賞を決定します。皆さまの選評、お待ちしております。




めざせ新記録! 俳人による俳人のための

オリンピックイヤースポレク企画の今年最後のイベントです。純粋な運動会種目いくつか+詠みながら○○、○○中に何句!?などなど楽しい種目を企画中。めざせ俳人記録? ふるってご参加下さい。

日時 10月28日(日) 15時集合(15時30分〜17時30分開催)
場所 北条体育館 〒799ー2430 松山市北条辻1170番地6 電話089(992)1322
参加費 500円(イベント保険代含む)
申し込み締め切り 10月14日(日) マルコボコムまで




「私の俳句整理術」募集

 来月号では、作った俳句の整理方法を特集します。自分だけの知っている簡単で効果的な整理方法がありましたら、教えて下さい。

送り先 本誌編集室「私の俳句整理術」係
 magazine@marukobo.com

締切 9月5日(水)必着




100年俳句計画投稿締切カレンダー

 
 8/31(金) くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 zatsuei@marukobo.com

 9/5(水)
  ザ・句会
 kukai@marukobo.com
  100年の旗手感想
  魚のアブク

 9/30(日)
 くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


目次に戻る



マルコボショッピング


マルコボ.コムのショップ店長まほろがアナタにオススメする逸品!
オンラインショップでは様々な商品を取り揃えて皆様のご来店をお待ちしています。


『鳩を蹴る。』
著:きむらけんじ
1050円(税込)
発行:プラネットジアース(2005年8月発行)
四六判 138ページ・ソフトカバー
ISBN4-89340-031-2 C0092

『昼寝の猫を足でつつく』
著:きむらけんじ
1260円(税込)
発行:牧歌社(2009年5月発行)
四六判 144ページ・ソフトカバー
ISBN978-4-434-13192-9 C0092

オンラインショップ商品カテゴリ:本

コメント
人間ってこんなに悲しくて愛おしい
 第1回尾崎放哉賞を受賞した、自由律俳人の句集2編です。自由律ならではの鋭い視点は、時に風刺的であり、また時に滑稽でもあり、人情味に溢れた生活感を感じさせてくれます。著者は現在、本誌「百年百花」で作品を連載中。



「慶弔俳句帖」挿絵ポストカード
100円(税込)

オンラインショップ商品カテゴリ:オリジナルグッズ

コメント
慶弔俳句帖のスパイス的存在
 本誌連載中「本家・慶弔俳句帖」の挿絵が、なんとポストカードに! 独特のタッチの絵は、額装してインテリアにもオススメ!? 2010年末〜2011年にかけての挿絵より6点が使用されています。



マルコボ.コムオンラインショップ
http://shop.marukobo.com/




目次に戻る

編集後記


 昨年3月11日、東日本大震災が起こり、世界中の人々が被災地のために出来ることを模索する中、世界のトップのミュージシャン達がいち早く動き出し「SONGS FOR JAPAN」というアルバムを発表した。このアルバムの全収益は、義援金として日本赤十字社へ寄付。僕自身、何かしらの力になればと、昨年4月に購入。アルバム発表から一ヶ月間で、500万ドル(約4億円)収益金があったという。
 収録された曲達は、被災地に対する励ましの想いの伝わる曲ばかり。その中で最も心に残ったのが、一曲目の「イマジン」。
 「イマジン」は、天国や地獄、国境も宗教も、貪欲も飢えもない世界を想像し、世界が一つになれることを夢見た曲。ジョン・レノン自身は戦争に行ったことも、飢餓に苦しんだこともない。それでもこの曲は、発表から40年が経っても古びることなく、世界中の人々の共感を生み、励まし続けている。
 昨年の秋、9月1日の「震災忌」という季語を使って、「イマジン」のような俳句が作れるかも知れないと思ったのが、今月号の特集のきっかけである。
 21世紀の今、「震災忌」という季語が見直されるきっかけになれば嬉しく思う。
(キム)


目次に戻る

次号予告 (179号 10月1日発行予定)


次回特集
俳句甲子園レポート&大人コンに向け「私の俳句整理術」など


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2012年9月号(No.178)
2012年9月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子