100年俳句計画6月号(no.175)


100年俳句計画6月号(no.175)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
蕎麦屋の二階 舞


特集1
こどもたちの書道作品展報告


特集2
演劇を観て俳句を作って句会をしました/レポート キム チャンヒ



好評連載


作品

百年百花
 理酔/加根兼光/渡部州麻子/キム チャンヒ


100年俳句計画作品集 100年の旗手
 朗善/みちる/緑の手


初学道場 へたうま仙人

雑詠道場 くらむぼんが笑った

放歌高吟/夏井いつき

新100年への軌跡
 俳句/希望峰/宮下航
 評/樫の木/都築まとむ


読み物
私たちの100年俳句計画

Letter from spider garden/ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
本家 慶弔俳句帖/桃ライス
ホンヤクサイホンヤク/翻田訳蔵
まつやま俳句でまちづくりの会通信/暇人

一句一遊情報局/有谷まほろ&一句一遊聞き書き隊
句集の本棚

読者のページ
選句&投句欄 ザ 句会
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー


蕎麦屋の二階


 「黒南風」という季語を知ったのは今から九年前のことだ。その年の四月に職場句会が発足。六月に初めて句会が開かれた。集まった十数名は皆初心者。会則により、俳号を持つこと、定期的に句会の場を持つことなどが決められた。「句会はどこでやるの」の問いに「蕎麦屋で粋にね」と応じる句友。以来「蕎麦屋のニ階」が我らの句会場となった。当時のTV番組BS俳句王国を見よう見まねで句会を進行していった。合評で忌憚のない意見を述べ合うことがとても新鮮に感じられた。俳句の面白さ、奥の深さ、句会のわくわく感、どきどき感を体験し、十七音の詩の世界にどんどん引き込まれていった。そしてあれから九年。その間に亡くなられた句友や退職された句友もいてここしばらく句会は開かれていない。久しぶりに蕎麦屋の二階で句会をしたいなぁ。兼題は「白南風」がいいかなっ♪


目次に戻る


特集

本誌1月号「代表句集2012」より子どもたちが選び、大きな書にした こどもたちの書道作品展報告




 今年の3月、いよてつ高島屋にて、小倉書道教室の子どもたちの書道の展示会が行われました。
 子どもたちの書の題材は、本誌1月号「代表句集2012」に掲載された俳句。自分たちで好きな俳句を選び、その俳句に新たな命を吹き込みました。
 本特集では、子どもたちのコメントと共に、それら作品を紹介します。


寺田めい 幼(年長)
しあわせは小さくていいねこやなぎ 柊つばき
「(ひらがなで)書けそうなので、楽しそうだったから選びました。」


高井紫月 小学2年
たんぽぽや二ひきの子犬はこかんだ おむすび
「犬が好きだから選びました。漢字がキレイに書けて良かったです。」


岡本麻鈴 小学4年
学校の朝は詩を読む桜の実 ひまわり
「沢山漢字があり、バランスがいいと思い選びました。」


桝田 拓 小学4年
春闘のビラ回し読む昼休み 睡花
「漢字が多く「春闘」の意味を知りたかったから選びました。2行にするか、3行にするかを気をつけて書きました。」


大政響生 小学6年生
ふらここを押しやる空の深さかな すな恵
「空という字に大きな広がりを感じて、この句を選びました。やさしい感じで書けてとても良かったです。」


佐伯雄二郎 小学6年
霾や*に続く文字 兼光
「字数が少なくてガッツリ書けそうだったので選びました。*は、文字ではないので、変化をつけて書きました。」


佐藤詩織 小学6年
亀の声まだ聞きたくて生きてゐる 鯉城
「発想が面白いと思ったから選びました。工夫したところは、最後の列を大きく書いたところです。」


矢野椎奈 小学6年
ハーレーのドッドドドドド花の風 まっことマンデー
「習字でカタカナを書いたことがなく、面白そうだったから。「ド」のかたちを色々変えて工夫しました。」


小倉嬉乃 中学1年
カエル鳴くたびに膨張する宇宙 ミズスマP
「カエルが大好きなので、すぐに決めました。また、科学的なことが好きなので、「宇宙」の部分も気に入りました。ほとんどの字が大きくて力強い感じになったと思います。でも、カエルが跳ねる様や、宇宙の偉大さを表せたらな、と思いました。」


佐伯剛太郎 中学1年
鉄路煌々春夜の握り飯 理酔
「漢字がいっぱいあって書けたらかっこいいなと思い選びました。字を特に大きくして、インパクトをつけてみました。」


藤岡南美 中学1年
ひょいひょいと蝶々右肩が重い 香雪蘭
「リズムがよく春らしい句だったから選びました。「ひょいひょいと」のところを軽いイメージになるように工夫して書きました。自分の個性がちゃんと生かされた作品にできあがったと思います。」


矢野歩美 中学3年
切なくて穴さえあれば巣箱 チャンヒ
「難しい句なんだけど、中学卒業&高校受験のこの時期に、何となく心に響いたので選びました。鋭角を作ることを工夫しました。直すところはいっぱいあるけど、頑張ってできたと思います。」



目次に戻る


特集

演劇を観て俳句を作って句会をしました


松山市民劇場句会体験/レポート キム チャンヒ


 松山市民劇場とは、営利を目的としない会員制の演劇鑑賞団体。2ヶ月に一回定例会として、演劇の鑑賞を行っている。
 毎回定例会の際に、演劇の感想を綴った会報が配られる。感想は演劇があってのもの。それだけでは成り立ちにくい。だからといって、のちのち読んでも成り立つ普遍性をもった演劇評を書くのは、難しい。それならば、感想文のように気楽に書けて、しかも演劇から離れて芸術性を持つ作品となり得るのが、俳句かも知れない。
 実は、僕も松山市民劇場に入会してから15年ほど経つのだけど、今まで一度も「演劇鑑賞句会」なるものをしたことがなかった。思いついたが吉日ということで、早速事務局の方に相談をし、句会の段取りをつけてもらった。
 鑑賞した演劇は、民藝公演「静かな落日」。ペン1本で「松川事件」の無罪を勝ち取った作家広津和郎の半生を描いた作品。娘・桃子の視点で物語が進むので、重苦しくなりすぎず、時には笑いがある展開で、最後まで楽しめた。
 芝居の記憶も生々しい、上演三日後に句会は行われた。
 句会の参加者は、チャンヒ、(本誌「お芝居観ませんか?」でおなじみ)猫正宗、しんじ、おけいちゃん、順扇、正ぼんの計6名。俳句初心者もいるので、まずは、最も簡単な俳句の作り方の説明。本誌裏表紙に折り込まれている、取り合わせの説明を教材として使った。今回は、演劇を鑑賞して心に残った場面や台詞を、12音にまとめて季語と合わせる方法。松山市民劇場は、会員が舞台の設営の手伝いなどもするので、裏方の出来事でも構わない。
 各自この12音を「俳句の種」として書き出してもらい、そのフレーズに似合う季語を選んで俳句を完成させ、3句出しの句会を行った。

 春宵の樫山文枝のまろき声 おけいちゃん
 どの父も淵に潜みし竜ありや 猫正宗
 冴返る死刑台より生還す しんじ
 終幕のお父さん好き春日さす 正ぼん
 静かな落日春の宵 順扇
 見出しには全員無罪ヒヤシンス チャンヒ

 演劇の世界が垣間見られる俳句もあれば、演劇を通じてその方が感じた思いが伝わる俳句もある。
 句会を通じて「静かな落日」という演劇を深く読み解くきっかけになった。そして、何より楽しかったという感想を頂いた。
 また機会を設けて「演劇鑑賞句会」をやりたいと、強く思った。



目次に戻る


百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠2012年度 第一期 3回目


「名はメリー」理酔

待針の頭欠けたる四月尽
巨船過ぐ先帝祭の朝かな
黒犬の齢尋ねる聖五月
駆け抜ける少女の如き新茶かな
夜間作業五月の雨の未だ硬し
くたくたの安全靴に緑さす
俺の為俺が筍飯を炊く
静寂がガリガリ君を舐めている
生と死と目合の御名において苺
手に取ってご覧下さい海女の脈
ワンショット干す間に開く水中花
夏川に拾う首輪の名はメリー


1960年生まれ。性別「男」。年齢「51歳」。国籍「日本」。出生地「下関市」。所在地「福岡市」。賞罰「無し」。身体的特徴「内臓完全逆位」。




「聖五月」加根兼光

山頂の岩をペトロと名付くる朝
花散り継ぐいつか湖底となる地平
春宵の空に迷っている
揺れながら探す都忘れは明るき花
ソマリアの瞳は赤し蝿生る
くくるくとおそ春巻いてゆく輪ゴム
おもかげの瞳は青し著莪の花
麦秋の五行目に引く二重線
突堤の五月は暗き木霊かな
海溝は国境の先くらげ浮く
遠雷や島が離れてゆく予感
ぺルノーの聖五月尽くユダの夜


1949年生、大阪出身。
第9回俳句界賞受賞。




「大き臍」渡部州麻子

につぽんに桜こどもに大き臍
さてこれは何の木だらう囀れる
猫の仔に止まるちからの足らざりき
ゆく春の書棚に入れてそれつきり
桜蘂降る野良犬のゐない街
春深しキオスクに買ふゆで卵
号外の首相が筍に湿る
薔薇くろぐろ一昨日よりのものもらひ
嫌さうに猫抱かれをる薔薇の門
雲を見てけふ夏服の警備員
椎の香どつとブルーシートが風に鳴る
夜の蜘蛛走り日記にすこし嘘


1960年生。第8回俳句界賞受賞。句集『黒猫座』。




「白馬」キム チャンヒ

不意に白馬に出合うとは夏野
葉桜の世界はみんな他人
心臓は食べられる肉聖五月
首夏にとろりとセロ弾きとなる過程
木苺に答えが一つまた一つ
同棲や氷水だった水を飲み
どうも仙人掌が歩きだしている
ミサイルを落とすミサイルだった茄子
初夏の地球は青く濡れた星
香水に振り向く、空を見るように
夏蝶が灰色のまま戻らない
夏草を鎮めて綱を渡り出す


1968年生、愛媛県出身。『100年俳句計画』編集長。



目次に戻る



読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2012年4月号 〜 2012年6月号 3/3回目)


 蜘蛛の巣の朝 朗善

オバマ嫌ひ納豆嫌ひ梅雨に入る
衣紋掛けばさりと倒れ黴の頃
川沿ひに下宿屋ならぶ暑さかな
お見合ひのやうに歩いて鵜舟まで
蟹を描くことに飽きたり蟹を捕る
粉々に轢かれて夏の落葉かな
山門を足長蜂の登りをり
木刀に蛇巻きつけて捨てにけり
迸る乳の如くに緑雨かな
男目覚めて蜘蛛の巣の朝を待つ


 松山はいくガイド。夫は、チェリストのナサニエル ローゼン。今一番やりたいことは、Beglarianの「Of Fables, Foibles and Fancies」(チェロとナレーションの曲)を翻訳して、ニックと共演すること。



 馬上公 みちる

いきりたつ青葉若葉や天城越え
蛇が呑み込んでゐるらし薬指
白亜館椎の香りに囚はれぬ
標本の蠍磔刑の基督
馬上公青銅の汗滴らす
赤子哭く機械仕掛けの蟻地獄
トラックの先は夏草パイプ拭く
屈強の男を掠め夏燕
プロぺラが五臓を揺する沖縄忌
荒梅雨を睨む招福神楽面


 1948年尾張生まれ。2001年から伊予に単身赴任。俳句は2006年から土曜カルチャーで勉強中。組長のエネルギーに魅力を感じています。尊敬する俳人は蛇笏。自分を捨てず自分の殻を破るのが目標。カワイイ俳号ですが男です。



 みどり 緑の手

パセリ摘んでピッコロの「ふぁ」の音になるのよ
アーチへも蝶番へも薔薇の風
きいーんと離陸見送るソーダ水
モンマルトルの月溶くる白夜へと
洗ひ髪かはかぬ人魚くる夜は
黒衣より揺るるクルスの銀の夏
パプリカを囓ればコルシカの風よ  
玉虫のたゆたゆたへて星となる
代掻を終へれば月は滑るすべる
あをあをと賢治の句碑やみどりの冬


 花を愛し歌を愛し俳句を愛し、そして人を愛し、命を輝かせたいと願っています。請い願わくば美味しいものをいただきながら優しい心にふれている時間を持ち続けたいです。



次回7月号〜9月号
連載者決定

 1月から3月末までの期間、「この人の作品集を読んでみたい」という気になる俳人を、1人3名まで推薦していただきました。
 その中から推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行い、次回7月号〜9月号までの連載を行う組員が決定いたしました。

 大五郎さん
 ターナー島さん
 まりんさん

 3名の方には7月号から、作品集を連載していただきます。
 お楽しみに!


随時推薦募集中

 次々回連載者の推薦も募集しております。集計期間は6月末までとなります。集計は累積ではなく、毎回新たに集計しています。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。



百年琢磨
先月号の「100年の旗手」に寄せて

若葉のころ 津川絵理子

「悠久」 緑の手
遠足の声がちやがちやと雲目指す
耕の鍬や入日をまつぷたつ
 それぞれ面白い見方の句である。遠足の声の「がちゃがちゃ」に意表を突かれた。例えば「わいわい」や「ぺちゃくちゃ」などよりも雑多なエネルギーが感じられて、これなら雲を目指せそうだと思う。耕の句は、「入日をまつぷたつ」なんてことは無いだろうと思うものの、線の太い絵のような光景が目に浮かぶ。振り下ろす鍬の勢いが出た。

春夕焼洗濯物は退屈色
 「退屈色」が良い。よく乾いた洗濯物が夕日に染まる。春駘蕩の気分と、ちょっとやるせない感じがミックスされた色。


「蛾を愛す」 朗善
町中に水溜りある若葉かな
 印象鮮明な句。雨あとの空気の清々しさが感じられる。町中の水溜りに若葉が映っていそうで、視覚的にも美しい。

地下室の窓開いてをり花いばら
 これは地下室の内外、どちらから見た景なのだろうか。どちらとも取れるが、もし自分が薄暗い地下室に居て、壁の上の方にある窓(そんな地下室を映画で観たことがある)から茨の花が見えたら、その明るい色に惹きつけられて愛おしく思うだろう。でも案外作者は外に居るのかもしれない。

草笛の顔を見せずに過ぎゆけり
 草笛の主はどんな人なのだろう、と作者と一緒に考えてしまう。何でもない事ながら想像が広がり、どこか懐かしい。


「天に水」 みちる
暁暗の春の厨に母潜む
 「暁暗の春の厨に母」までは普通だが、「潜む」が面白い。まだ暗いうちから朝食の用意、掃除と家事に勤しむ母。感謝しつつも、思わぬところに居たりして、ちょっとびっくりさせられる。母という存在の不思議さにまで思いが及ぶ。

語りつつ虻打ち落とす老農夫
 話に熱中していても、見事に虻を打ち落とす。長年農事に携わってきた人らしい、逞しい風貌が想像できる。

虚子ほどの男を語り春尽きず
 虚子ほどの男を語るには、季節は春が良い、そんな気がする。「春尽きず」は無理があるが、大きな気分が伝わる。


津川絵理子
1968年生れ。「南風」所属。句集『和音』。平成19年、俳人協会新人賞、角川俳句賞受賞。



読者の感銘句

三月 感銘句です。「遠足の声がちやがちやと雲目指す」緑の手。「亡き人の如き大きな蛾を愛す」朗善。「暁暗の春の厨に母潜む」みちる。春から夏への移ろい、楽しませて頂きました。

ほろよい 「耕の鍬や入日をまつぷたつ」緑の手。「幟売る店の縦横無尽かな」朗善。「天に水あるごと桜散りにけり」みちる。が好きでした。

もね 「笑ひすぎてはきらはれるちゆうりつぷ」緑の手。「地下室の窓開いてをり花いばら」朗善。「天に水あるごと桜散りにけり」みちる。が好きでした。

松ぼっくり 「発光の緑虫いつせいに初夏」緑の手。「薔薇咲いて父の形見の戻りけり」朗善。「蓮華王院亀鳴く朝の庭掃除」みちる。私の好みの三句です、お手本にさせて頂きます。



目次に戻る


初学道場 へたうま仙人


文責:大塚めろ

 雑詠道場は、「くらむぼんが笑った」か「へたうま仙人」か、どちらかへ3句1セットでの選択投句となります。選が厳しい「くらむぼん」に挑戦するか、必ず一人一句以上選評付きで載る「へたうま仙人」を相手に“巧すぎるのでへたの聖地追放”を目指すか。その選択も楽しんで頂けたらと思います。


 今月もこの道場に足を運んでいただき恐縮ぢゃ。さて、金環日食はどうでしたかの? ワシは雲の上で生活をして居るのでばっちりぢゃったわい。ウォホッホ。
 これから梅雨に突入ぢゃ。もったいないといって腐りかけのものは御法度ぢゃぞ。
 さあ、今月も力作(力技ともいう)揃いぢゃ。

日食に目を瞑りたる仔馬かな 豊原清明
 仔馬は瞑想しておるのかもしれんな。天と地との、ある日の物語が実に壮大ぢゃ。

越路吹雪のあ・うぃ777でなし落第歌 だなえ
 アナーキーな句にうっとりぢゃ。季語らしき「落第歌」に腹がよじれたぞ。パチンコの台の中でコーちゃんが「ろくでなし」を歌っておったか? そりゃ落第もするわな。

縄電車もロンドン行きや梅雨明ける 大阪野旅人
 泥縄の電車はいやぢゃがロンドン行きの縄電車はいいのう。梅雨明けの国を出発する高揚感に共振ぢゃ。

父母送り次は自分か木下暗 柊つばき
 下五は「木下闇」のことかと思うが、次は自分の番かと思ったら身も蓋もないぞ! でも、身につまされることを表現して心を落ち着けるのもまたひとつの手かものう。

色づいたキャンバス映す夏の風 炉草
 夏の風に夏色の風景が反射している様が良いのう。まるでワシの青春時代のようぢゃ。

大藤の香は六百畳に拡がりぬ 未々
 殿様の作った句か? 香りの粒子が広がっていく様子がハイスピードカメラの映像のようぢゃ。

平凡のまんまん中にいる五月 ケンケン
 「平凡のまんまん中」いる私と、一年で一番良い季節といわれる五月を対比するあたり、筋金入りのへそ曲りぢゃ。曲がったへその手入れを怠らず更に磨きをかけてくだされ。

スイートピー竹垣抜けて粒の風 カラ嵩ハル
 スイートピーの唐突さがたまらんのう。風の微粒子を感じる作者の五感と、竹垣のチープさとのアンバランスさがぐぐっと来るぞ。

あたりめをかじりドラマの春昼なり ゆりかもめ
 おおかた昨夜の残りの硬くなったあたりめぢゃろうて。詩がもうちょっとで出てくるあたりのもどかしさが春昼なんぢゃろな。

校長の留守の最中や蠅生る 桜井教人
 「最中」が「もなか」なのか「さなか」なのか判断に苦しむが、やはりここはぜひ「もなか」であって欲しい。校長と作者の位置関係を取り持つのが、ぜひ最中から這い出た蠅であって欲しい。とまあ、軽い願望ぢゃ。

あの花虻をまさか見失うとは 小木さん
 あまりにどうでもよすぎて、仙人ですら見落としそうになったぞ。絶対の自信が崩れていく様は、さまざまな題を抱え込んだ人類の業かも。「まさか」の正体の花虻はどこへ行ったんぢゃろうか?

春眠やスケジュール帳遅れまくり 洋子
 スケジュール帳に遅れたのではなくスケジュールに遅れたのだと思うのぢゃが、「遅れまくり」のまっすぐな表現に恋したぞ。「春眠や」の大仰な切れに、恐さを知らぬ春眠の本質が垣間見れたぞ。

清明やイクメンばかりの授乳室 郁
 イクメンなら授乳室に入れるのか?昨今の状況を詠み込んだ社会性俳句ぢゃ。「清明」と「生命」とのマッチングにより、より深い味わいを醸し出しておるのう。

春嵐集団登校乱れおり オレンジ日記
 春嵐が集団登校を乱れさせたという、因果を感じさせる、オーソドックスな下手な俳句じゃが、新入生を心配する上級生の目線がほほえましいぞ。

パンジーの幾色あるや判らざる 元旦
 「判らざる」の正直さに全身共鳴ぢゃ! そもそも、調べる気がないところが、へた俳人らしいぞ。

銅像を雀隠れに駆けさせよ しんじゅ
惜春の確信犯の付ける札
愛すべき徂春の土手の汽車になる
 しんじゅどのの今月の一連の句、どれも白眉ぢゃ! どれもはっきりとした意味はわからん!


へたの聖地追放

 連載が始まって、もう半年も経つのに、まだワシの好みを理解していない輩も居るようぢゃ。ワシはへたな俳句が好きで、特に、俳句初心者のうぶなへた俳句が大好物なのぢゃ。逆に、ベテランの巧い俳句がどうも苦手ぢゃ。
 これから、ワシにとっては巧すぎる、へたの聖地を追放する俳句たちを、淡々と紹介するぞ。
 来月からは、へたのふりをせず、堂々と「くらむぼん」に投稿されることを、願っておるぞ。

陽炎や電車は無人かもしれぬ 野風
 なんとも不思議で不気味な世界を描いたものぢゃ。もちろん、追放じゃ。

五月闇嘘うつくしく進行中 親タカ
 五月闇の中で進行する嘘は真っ平ぢゃが、うつくしすぎて追放。

和菓子屋の葬儀日時や紫木蓮 コナン
 全体的なトーンが「紫」に統一されているあたり、巧すぎて追放じゃ。

夕凪や工事現場の静かなる 雪花
 昼間の喧騒と夕まぐれの静寂との落差を感じるあたり、追放されるべき、真っ当な詩人ぢゃ。

水車の飛沫触れて著莪の花咲く かのん
 水車の音と飛沫の皮膚感覚と著莪の映像の取り合わせが、巧すぎて追放。

椎の花香ほりて目覚む萌黄色 輝女
 萌黄色がむくむくと生まれ出づる様子が眼前に広がってしまったぞ。追放。

美わしきものを見し眼や春の闇 まんぷく
 過去に見た美わしき物を反芻している眼を想像してしまった。追放。

春風を切り分けていく船にをり ペプチド
 「船にをり」で作者の存在を決定付けておるのが巧みすぎる。追放じゃ。

わたくしは涙がでない花は葉に ひでこ
 涙が出ない状況を思うと切な過ぎるぞ。ヘタと言えるはずがない。追放。

真っ黒な蕊さらけ出し牡丹満つ 和音
 牡丹の華麗さと引き換えの恐さを真正面に捕らえてしまって、追放ぢゃ。

 とまあ、大量の追放者が出てしもうた今月ぢゃったが、皆の衆、これからも何かと油断召されるなよ!


目次に戻る



雑詠道場 くらむぼんが笑った


夏井いつき選


今月の天
空似なり蜂の羽音の真昼どき 三竜
 「空似」とは【まったく血縁関係がないのに、顔つきなどがよく似ていること】を意味するのだそうだが、この句の「空似」は知り合いに似ているという程度の意味に受け取った。
 あ、○○さんだ!、もしかして彼女かも?と立ち止まったとたん、どうも違う?と気づく。上五「空似なり」はそのような断定の瞬間なのだろう。「空似なり」のはずなのに、どうも脳の芯がジンジンするかのように割り切れない思いが残る。面変わりしているけれど、随分年齢は重ねているけれど、やはりあの人なのではないかという逡巡に囚われる。甘やかな記憶か苦々しい経験か、「蜂の羽音」が次第に増幅されていくかのような密やかな「真昼どき」である。


今月の地
陽炎や部室は酢酸の匂い さち
 体育会系の部活が長かったワタクシとしては「部室」の「匂い」は汗!という固定観念があったが、成程「酢酸」の匂いもあって当然。ひょっとすると「陽炎」の匂いこそが酢酸臭かも……と思わせる言葉の化学反応にも惹かれる。

なみなみと切子を満たせ桜鯛 鯛飯
口上は唄うがごとし桜鯛 ほろよい
 なんとも豊かな「桜鯛」二句。酒という言葉を使わず、上五中七の表現でここまで馥郁たる酒を香らせる前句、「唄うがごとし」という措辞で「口上」の目出度さを表現した後句。共に見事な「桜鯛」が見えてくる。

犬死すや青蔦は夜の底を這ふ ふづき
 「犬死すや」という強い詠嘆から、一句は「青蔦」の光景へと切り替わる。さらに真昼の「青蔦」かと思った瞬間、「夜の底を這ふ」と表現する構成の巧さ。夜を這う青蔦の不気味と、「犬死す」の思いが共振する。

足守り鈴さらさらとしゃがの花 レモングラス
 お遍路さんが身に付けている「足守り鈴」を想像した。「さらさら」という音の優しさが、札所への小暗い急斜面を覆い尽くすように咲く「しゃがの花」の存在と響き合う。

眠さうな乳液こぼる春燈下 犬鈴
 「眠さうに」ならば「こぼる」に係るが、「眠さうな」だから「乳液」の質感をこのように表現したことになる。湯上りにして就寝前の手のひらにとるとろんと「眠さうな乳液」。季語「春燈」もまたとろりと艶めいて。

春愁を与えた苗は育たない 紗蘭
 己の抱える「春愁」を、「苗」に与えてしまったから、一向に「育たない」のだ、という詩的断定。ひねこびた「春愁」を持て余す、いかにも思春期らしい感興に共感する。

権瑞の釣れて痩せ月揺れにけり 逆ベッカム
 「権瑞」は、ナマズ目ゴンズイ科の海水魚。背鰭と胸鰭に毒の棘がある。うっかり釣れてしまった「権瑞」は、棘に刺されぬよう足で外して、海に蹴り戻したりする。折りしも「痩せ月」の頃の港の光景。

リラの花モンテ・クリスト伯の香だ えつの
 季語「リラの花」はかつて読んだ『モンテ・クリスト伯』のイメージだと、常々思っていたに違いない。実際に「リラの花」を嗅いだ実感が、思わず言葉にでたか。こんな詩的断定もあっていい。

きゅるるんとパン生地鳴くや黄金週間 唐草サ行
 「きゅるるん」が「パン生地」の音であるという意外性が楽しい。花の「黄金週間」を、パン作りの時間として楽しむ心の豊かさもまたいい。

御辞儀する角度になめる氷菓子 雨月
 「お辞儀する角度」というから、作法にうるさい内容の句かと思ったら、「〜になめる氷菓子」という後半のどんでん返しに読者はまんまと嵌る。愉快な発想にしてリアルな描写でもある。


今月の人(じん)
新しき句帳水色苺食む 空
柵越えて行かう羊の毛を刈らう なゝ
筍の純潔を包む剛毛 ソラト
初蝶や未来はいつもおもしろい 一心堂
空からの仏壇セール磯遊び もね
黒帯の少年空を蹴る立夏 まくわ
五階まで二人で担ぐ冷蔵庫 ポメロ親父
春筍や十六階のしづかなる 神楽坂リンダ
春山はトンネル開通日和なり あねご
ふたとせの地より転勤桜の実 じろ
花冷えの旗振るやうにワイパーは 不知火
蝸牛の航跡暗し終電車 蓼蟲
二回裏電光掲示板に虹 大五郎
春の土払い彼女の親に会ふ 八木ふみ
鍬ふるう教師八十八夜かな 八十八
飛花落下頭に乗りたがるをかわす  大塚めろ
ゴッホ語りてゴッホめく眼や夜の桜  樫の木
座り込む白山羊のモモ芝桜 一走人
石鹸玉飛ばしかねたる目を映す すな恵
飛行船ふわりと御室桜かな 青蛙
天向いて奥に闇もつチューリップ  Blanca
春陰の磁場マシンガンのごと骨へ きうい
囀へ溶けるリフトの絶え間なく  松ぼっくり
桜しべ降る蕎麦屋のライス・カレー喰う  えりぶどん
ミサイルの画面や初蚊すぐ消えて 未貫
長崎の鐘春水の震えけり こぼれ花
亀鳴くや左手のスプンくにゃり あらた
鳥雲に池へ蹴り込む憂さひとつ 蕃
観音のくびれし腰のおぼろかな 省三
丘陵の小松見上げて卒業す 人日子
新緑の凹凸山猫の憂鬱 北伊作
口中にスコーン崩る春の雷 なづな
家灯明日の早苗を待つ田面 ひなぎきょう
春立ちにけりからからと鍋の蓋 ターナー島
遠足の弾む列来て手を振るや カシオペア
夏足袋のそこだけ白き旅の夜 てんきゅう
ちゅーりっぷ並ぶあひるの尾のやうに  緑の手
行く春や沖に次々貨物船 亜桜みかり
春草を預かっている靴の紐 牛後
じつとしてをらぬ小さき鯉のぼり 朗善
樟脳の匂い飛ばして鯉のぼり ふーみん
三鬼忌のトローチ砕く親不知 ふづき
霾や黒糸と書く備忘録 さち
強東風の灘を逆なでして走る ほろよい
行く春の回転33と三分の一 鯛飯
閉校の時刻まれし巣箱かな 逆ベッカム
新緑の宵のひととき町内会 三竜
すべからくしゃぼん玉にもありし影  のり茶づけ


今月の並選
朝寝して蛻の殻に残される あねご
春愁を吐き出すピンクのドライヤー
スズメノエンドウウミカゼヲカンチセヨ  亜桜みかり
アスファルトを弾む花びら曇り空
昼休みと午後の間を囀れり 牛後
廃屋の大樹に寄り掛かる雪解
しづかなる雨の街なり花水木 じろ
もろもろを仕舞ひ封印して立夏
ひとつことくりかへし聞く肩へ花 空
新緑の爆発寸前なる静寂
関節の人工にして麦青む 神楽坂リンダ
一世紀近くゐる母木の芽和
春昼の飛行機雲の後にバス 不知火
吊革の揺れぬ地下鉄春の果
揚げ立てのコロッケかじる初桜 樫の木
喰はれたる羽毛降りくる春の庭
巻き舌の雲雀青空ひとりじめ 一走人
数式のアベコベ蛙の目借り時
風青し耳まで裂けし神楽面 さわらび
老い馬の背の暑かろう痒かろう
海市より静かの海に竜昇る 藍人
桜蘂降るとうに越えたり父の年
石像の手に石の書や囀れる すな恵
飛花落花つかむつめたき二三片
葉桜の覆うて園めく旧驛舎 木琴
楡若葉あと十分で太郎橋
花吹雪ハンドルゆるりと右へ切る あらた
ここだけの話にゆれるチューリップ
小姑の不意の来訪春疾風 蕃
霾るや再々婚の挨拶状
ふらここや少女は歌ふ恋の歌 なづな
草餅や産土遠くなりにける
啓蟄のひかりの中や風化仏 ターナー島
濡れそぼつ我に言いたき桜蘂
花冷えや巨き如来の指の反り 省三
山ざくらの白きはまれりいのち愛し
藤色に漣揺るる春の川 緑の手
バケツに猫の子軽トラで貰はれる
最初からつないだ右手夏に入る 唐草サ行
ばかと言えばカバと大きく入学児
薊生う図書館臨時休館日 紗蘭
磯遊びしゃがんで膝の傷を知る
柿若葉見上げる母の若き事 レモングラス
切幡寺腰のくだけし夏の雨
春の月ヌードのやうな嘘をつく 犬鈴
行く春や底にひと匙分のジャム
片隅をあつめれば立夏の宇宙 なゝ
避けて逃げて目のまへにある草いきれ
渋滞の車窓のもとでする田植 ソラト
薬莢を探す卯の花腐しかな
夏立つや酒屋の梁に太き墨 まくわ
フルートを職員室に聴く六月
春雷やたまに正義の負けること こぼれ花
春愁の猫の尾っぽの向きぐあい
靴墨を絞り出す朝夏来る 蓼蟲
傾きし表札直す五月かな
奔放になにわいばらの白弾け 浜田節
還暦を過ぎて気ままやバラの花
いづこよりきし一輪の罌粟の花 お手玉
ふらここをこげば悲しきこと忘る
長閑なる三界地蔵遷さるる 人日子
残雪を避けて図書館入りにけり
馬を連れ堤下りれば揚雲雀 青柘榴
トラクター試走良好なる穀雨
一山の百花従へ糸桜 樹朋
飛花落下風に遅れて届きけり
花吹雪路面電車の軋む音 哲白
朴の花少年兵は征きしまま
曇りなき子らの瞳や風光る 八十八
負けて泣くちびっ子力士夏近し
杭打ちの段取り上手雀の子 権ちゃん
舌を出すアサリは嘘をつき通す
油照り妄想癖の前頭葉 ちろりん
地下足袋のほこり払いて鍬始め
遺影の児セピア色なり花は葉に 鯉城
天と地と怒りのこゑか春疾風
春の夜たたかう相手は迷い猫 アンリルカ
春光にケセランパセランの行方問ひ
恋猫は刑事コロンボの口調で えりぶどん
花疲れオキシドールの染みてゆく
春惜しむ汽笛銅鑼の音紙テープ 柱新人
初蝶や飛び出し注意の手書き文字
蛍火を照らす闇夜となる決意 てんきゅう
それぞれの思ひで果てる夏の蝶
石鎚を背負い夫婦の春耕す あんばい
むしる手の草吹っ飛ばす春疾風
春の草候文の古葉書 迂叟
春の灯や開いたままの古語辞典
ミモザ降る祝婚の声響きあい ゆき
はつ夏のバックは白と決めており
武蔵寺や数珠千年をたぐる朱夏 松ぼっくり
読経果つを待ちて囀クレシェンド
スカンポや伸びきって川広がれり 今比古
ねはん西風猫まっすぐに行くばかり
代掻きも田植えも土佐は花の中 青蛙
雨漏りは不吉な音よ春の雷
蓬生や事件を起こす水廻 えつの
二筋の飛行機雲や紫木蓮
ハワイへと続く方位よ夏帽子 春告草
六人乗りのロープウエイゆく夏帽子
見はるかす桜の山に力満つ ひなぎきょう
濃闇に揺らぎ揺らぎて沈丁花
彼岸入る畑の花の間に合わぬ サキカエル
フィリピンの土産は皮製蛙二匹
老鶯にしばし微睡む読書かな カシオペア
故郷の過疎となりけり海老根咲く
黄水仙泣いているよにしほれけり 未貫
目に青葉風の囁く早出かな 西条の針屋さん
すれ違う男と女春の宵 ラジオ体操
葉桜やお地蔵さんの屋根となり 真鍋修也
谷渡るアワコバイモに会いたくて  エノコロちゃん
ほろ酔いや夜の桜に抱かれゆく 一心堂
生け簀よりひと掬い玉筋魚を買ふ  ポメロ親父
花鳥や本堂脇の両替機 雨月
映画館端の座席の春の風邪 大五郎
朧夜やどちら側にも空きの席 大塚めろ
よく変わるややの寝顔や山笑ふ 八木ふみ
クリームを足してみようか春の空 Blanca
ブランコや天を蹴りたる赤き靴 ふーみん
一坪を耕すへっぴり腰に虫 きうい
躊躇なく〆はうな丼二階建 もね
春月とタイヤに詰める窒素ガス 北伊作
川風の通り抜けたる鯉のぼり 朗善
坂駆ける車夫の刺青の竜に汗 ふづき
麗らかや四方耕作放任地 さち
花疲れさぐり弾きする流行歌 鯛飯
名水に百の行列山笑う ほろよい
母と見る地四国山の桜かな 逆ベッカム
小枝より落ちたる蜥蜴猫が待つ 三竜
耕して一番星と帰ろうか のり茶づけ



【雑詠句募集】
投句三句/俳号(本名)/〒住所/電話番号と、「○月末日締切分」を明記して、編集室「くらむぼんが笑った」または「へたうま仙人」宛にお送りください。
締切は毎月末日《必着》です。
※末日を過ぎたものについては、翌月分とさせていただきます。
※ひと月に複数の投句があった場合は、一番最後に届いた投句のみを有効とさせていただきます。同一内容での二重投句はご遠慮ください!
 投句は誌上句会宛のハガキ&メールとは別でお願いします。
雑詠専用Eメールアドレス zatsuei@marukobo.com
インターネットや携帯電話からも投句できます。
http://www.marukobo.com/kuramubon/


目次に戻る

放歌高吟


優曇華
夏井いつき

鉄味(かなあじ)の水や代掻はじまりぬ
みっしりと卵の中に蛙の目
田水張る思索を満たしゆくように
つまらん句みたいに筍が生える
ガザニアの陰口ききそうな黄色
孑孑のよくわきそうな甕ひとつ
優曇華や日は月を追うことに倦み
葉桜や一茶のことを聞きかじり
渡守に叱られている青葉かな
ネコにエサやるな金盞花を蹴るな
鯵何百裂けば夕日の発酵す
清盛の腸に湧く夜光虫


 ブログ『夏井いつきの100年俳句日記』にて「理系俳人友の会」の発足が宣言された。言いだしっぺにして代表は、ねこ端石くん。虫や植物の写真を折々送ってくれるので、その都度ブログにアップし、写真を見ながら私も一句ヒネったりしてるのだが、そんな彼が「優曇華(うどんげ)」の写真を送ってくれた。5月12日の記事だ。
 「優曇華」とは「仏教で三千年に一度咲くという想像上の花」のことだが、クサカゲロウの卵をこう呼ぶ。私は歳時記の写真でしか観たことがなかった。「優曇華」という呼び名のせいか、滅多に見られるものではないと思い込んでいたが、ねこ代表によると「バイクのシールドにクサカゲロウの卵を発見」したという。写真を撮る彼の、嬉々たるニヤニヤ笑いが目に浮かぶ。
 「理系俳人友の会」発足に刺激され、「野鳥倶楽部」も正式に活動を始めた。「新居浜たんぽぽ句会でやってみたら好評だったので」と語る鯛飯くんが部長だ。連休唯一の休みが、ちょうど最初の活動日と重なっていたので、私も参加してみた。鯛飯&夏井ブログのみでのお誘いだったにも関わらず十数人の組員が集まった。
 鯛飯部長制作の簡易鳥図鑑をテキストに、鳥を探す。耳を澄ませる。聞きなしの言葉を覚える。豊かな時間の中にいることを楽しむ。共に参加したねこ代表が掴んでみせてくれた蛙の卵に見とれ、傍らの溝で交尾する赤蛙のさまに皆の好奇心が動く。
 「野鳥倶楽部」の次回活動日が楽しみで、バードウォッチング用双眼鏡をネットで買った。買い物や散歩の道々で見かける鳥の名はまだ皆目わからないが、レンズの中に鳥の姿を捉えられただけで嬉しい。
 「理系俳人友の会」も「野鳥倶楽部」も、全ては大人の遊び。大人たちが大人たる威厳と余裕をもって遊んでみせるのも大事なことだ。仕事の憂さ、人生の辛さ、そんな大人にお前はなるなと教訓を垂れる大人ばかりでは、「大人になること」に夢は持てない。今の世に必要なことの一つは、「大人であることを真っ当に悠々と楽しむ大人」のモデルではないかと思う。カッコイイ大人が増えると、それを見て「大人になることに憧れる」若者も増えてくるはず。
 そういう意味において、俳人なんてのはその役目を最も担いやすい人種かもしれん(笑)。となれば、愈々もって益々、マジで遊んでみせにゃあなるまい!と、改めて双眼鏡を握り直す、今日の私はバーダー俳人である。




夏井いつき公式ブログ「夏井いつきの100年俳句日記」

http://100nenhaiku.marukobo.com/


目次に戻る



新 100年の軌跡


第3回


詩を知らぬ 希望峰

薄氷や手相は生きた傷と思ふ
手首手を支へて雪解待ちにけり
関節があるといふ快春一番
郵便夫も農夫も主夫も猫柳
また会おうといふいんちき雪柳
キッチンに「桜」と彼の置手紙
紙風船万国旗のアーチを潜れ
詩を知らぬ先史時代の死人たち
揺れたくて揺れる吊り輪もアネモネも
春帽をかけてやりたきバルトの塔
遠蛙歯ブラシは歯を慰めて
ひらがなもなやみたくなる花の冷え
てふてふや一喜一憂アコーディオン
ゆつくりと煙突を斬り鳥帰る
ヒッチハイクの返事は煙春の逝く


希望峰
1990年生まれ、兵庫県神戸市出身。16歳より俳句を始め、現在はスウェーデンに留学中。俳句と教育が結びつく研究をしています。




ZOO 宮下航

脈々と象の背骨や春の空
黒豹の尾のしなやかに春の星
群衆に皹を入れたる鶴の声
梟の前で呼吸を止めてをり
バイソンよ尻を向けるな春なかば
その猿はセガールといふ春夕焼
檻狭し春一番の上に猿
春光を抱いてコンドル膨らみぬ
ラマ一匹何の悩みもなくて春
蛇に蛇重なりて朧を食みぬ
鰐の背の皺まで黒し春の雷
檻眺むニンゲンの群れ春ショール
春寒しインテリ猫の欠伸かな
鮟鱇の骨より先に目覚めけり
廃船を跳ねる烏や卯波寄す


宮下航
宇和島東高校弁論部で俳句と出会う。現在は、愛大俳句研究会で活動中。




先史時代 生命への共感 樫の木

 先史時代とは文献資料を全く欠いた時代だそうである。「詩」はしかし、文字はなくとも語りとして歌として、口頭で伝承されてきたのではなかったか。

関節があるといふ快春一番 希望峰
 「関節があるといふ快」を意識したのは怪我などで暫くの間、体が不自由だったからであろう。季語「春一番」には春を迎える喜びと激しさがある。掲句には体を動かせる喜びと肉体それ自体が持つ荒々しさを感じる。
 動物や植物などの生命を詠み込むときに、私たちは彼らの持つ生きる根源のようなものに、表面的にではなく深く共感できているだろうか。(参考文献『語る 俳句短歌』金子兜太・佐々木幸綱・黒田杏子編)

廃船を跳ねる烏や卯波寄す 宮下航
 木造の小さな漁船を想像した。白茶けた船体の所々は黒く朽ちて穴が開いている。「廃船」と「跳ねる烏」は静と動の対比であり、また朽ちゆく物と生きている者との対比である。語順で廃船から烏にクローズアップした後で、その背景に「卯波寄す」浜を置くことで光景に広がりと奥行きが生まれた。映像的な一句である。


1965年愛媛県生まれ。大分県在住の家具職人。



詩が生まれるとき 都築まとむ

関節があるといふ快春一番 希望峰
 思わず手を握ったり開いたりしてみた。違和感なく動く指はまさに「快」だ。手首も肘も肩も……全身の関節とはよくできているものだ。春一番に身をさらしてみたい。

揺れたくて揺れる吊り輪もアネモネも 希望峰
 空中の吊り輪と地のアネモネ、素材の違う物二つが揺れている。しかも意思を持って揺れている。不思議な空間が描き出されている。

春光を抱いてコンドル膨らみぬ 宮下航
 飛び立とうとして羽を広げるコンドルだろうか。春光を抱くコンドルは希望に膨らんでいるかのようだ。コンドルの大きさがいい。

蛇に蛇重なりて朧を食みぬ 宮下航
 蛇に蛇が重なっているという光景に湿度を感じる。その湿度が「朧を食みぬ」なのだろう。実から虚への展開が巧い。

 「詩」はいつ生まれるのだろう。二人の作者の句を読んで気がついた。何かを感じるとき「詩」は生まれるのだ。いつも何かを感じることのできる人間でいたい。


1961年愛媛県八幡浜市生まれ。自分の句歴11年に驚くばかり。


目次に戻る


私たちの100年俳句計画


俳句を使った試みをされている様々な分野の方を紹介します

第4回
特別編 俳句ポストブリュッセルへ行く
松山はいくガイド
朗善千津

 100年俳句計画のみなさま、こんにちは。
 今日は私が四月に、松山市長のお供をして、ベルギー国へ参りました道中のあれやこれやを、ざっくり報告したいと思います。
 ちなみに、私は小学館の少年少女文学全集の中で「東海道中膝栗毛」が一番好きでした。今回の旅は、弥次喜多道中というより、あれです、西遊記。市長が三蔵法師で、秘書のIさんが沙悟浄、市役所のNさんが孫悟空、私は猪八戒、いやだよ。違いました。むしろ桃太郎。市長が桃太郎で、秘書のIさんが雉、市役所のNさんが犬、私が猿。つか、まー、感じ的にはそんな感じ? 小さな日本人が異国の地で助け合いながら、大きな成果を上げて参りました。それが言いたかった。辛抱強く粘って、目的を果たす。そう、むしろザ・ロード・オブ・ザ・リングス! 市長がフロドで……もういいよって?
 まー話をざっくり進めると、今回の旅の目的はですね。EU議長で俳人のファンロンパイさんに、俳句ポストの第一投句者になってもらうこと。そして、HAIKU TOWN松山の存在を世界に知らせ、世界中の人々に松山に来てもらうことです。
 たった三日間の滞在でしたが、その目的を果たすため、いろんな出会いがありましたねー。苦労もあったけど、やっぱ楽しかった! 大歓迎していただきました。
 飛行機に14時間乗り継ぎ、ベルギーに着いたのが昼間です。これが思いのほか寒い。四月も末というのに、私は冬コート着てスカーフと手袋して凍えてました。
 ブリュッセルへ着いて、まずご挨拶です。日本とEUのため働く大勢の皆様の中でも特に愛媛出身の方や、愛媛にゆかりの方々が今回の助っ人。プロデューサー的存在のT氏と、ご家族が愛媛ご出身のN氏は、情熱をもって、松山・EU俳句交流を共に語ってくださいました。観光部門の女性課長さんにもお目にかかり、瀬戸内・松山の魅惑的な島々の旅をご紹介。最後に市長が姫だるまをプレゼントすると、うちの子が好きそうだわー、と喜んでころがしておられました。
 日本領事館のビルディングの隣にある古いラブリーなホテルに荷をほどき、ホテル界隈をちょっと散歩。シャワーを浴びて着替えて、レストラン横丁へ行くともう夜です。時代物の石畳は、ハイヒールの先がいちいち食い込んで歩けないのです。EUの日本大使のおもてなしで、ベルギー春の旬ホワイトアスパラガスと、ベルギー名物マッスル(ムール貝)を味わうことができました。アスパラガスはバターみたいに濃厚で、辛口の白ワインとこれだけでもうじゅうぶん幸福、って気持ちになります。

アスパラガス白く切なくやはらかく 朗善

 二日目は、ルーヴェンという町へドライブ。ルーヴェン・カソリック大学の日本語学科で市長が講演をされました。ルーヴェン大は、なんと1425年創立! 日本でいえば室町時代。わあお! そんな時代にもう大学があったのー? とアホな私が聞くと、超しぶい学科長が完璧な日本語で、「でも日本には空海も行った大学寮がもっと前にあったじゃないですか。」と平然と言われたので愕然とした。あご落ちた。
 私は、日本語学科の学生たちと一緒に俳句つくりました。「取合せ」の参考として、100年俳句計画の少女俳人三瀬未悠さんの「たんぽぽのバスにまにあわなかったよ」の句を配りました。今も日本語学科でそのプリントが使われてます。みゆうちゃん、ご協力ありがとー!
 ユネスコの世界遺産の修道院の一室で、「HAIKU LUNCH」と名づけられたベルギー料理をいただき、感激も極まります。これはたとえば、東大寺二月堂の内陣で懐石料理をいただくようなものですよ! しかも学科長先生は、日本人も知らない漱石の俳句をご存知だし、松山人も知らない子規の研究をしておられ、ハンサムな教授も助手も日本語で俳句をすらすらと。思わずお三方を、まる裏俳句甲子園にお誘いしてしまいました。
 三日目はいよいよ、大使公邸にて俳句ポストの贈呈式です。EU議長が「俳句には感動や切れや諧謔など(人生に必要な)すべてがあるよ。苦境の時も俳句に救われたねー」みたいな素敵なスピーチをされ、俳句を短冊に書いて投函。劇的な瞬間。キム編集長の描いた俳画、「HAIKU掛け軸」を広げて、にっこり!! たくさんの取材陣が、坊っちゃん市長とロンパイ議長を囲んで、フラッシュがばちばち焚かれる。そのずうっと、ずうーーーっと後方でわたくし朗善はマドンナ衣装を着け、愛媛の地酒雪雀を愛媛の名産砥部焼のお猪口に注いで、ヨーロッパのお客様をお接待してました。
 議長が投句した後は、順々にヨーロッパの俳人やルーヴェン大の関係者が投句、私も最後に一句投じてきましたよー。いやーベルギーで飲む雪雀は格別の味でした。

バツカス神寝そべる街の上や虹 朗善

 ルーヴェン大学の学生さんは、日本に一年間の留学があるそうです。ぜひ松山にも一句詠みにきていただきたいものです。お待ちしています。オーヴォワール!



目次に戻る


Letter from spider garden


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
松山市在住の世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.2

Summer rain never
helps my cello stay in tune.
Too bad. Work harder.

調弦の苦労も知らず五月雨るる


Last autumn our landlord gave a short haircut to our garden and seven spider webs disappeared along with their spiders. What happened to them? It is better not to think about that. We smile and wait patiently for their return so that we may again watch them dine on the bugs caught in the webs.
Our landlord is not yet a haiku poet.


去年の秋うちの大家がやって来て、庭を短く刈ってくれた、ちょうど僕がいきつけの散髪屋の女の子にやってもらうみたいに。それはいいんだが、大家は立派な七つの蜘蛛の巣を、蜘蛛もろとも片付けちまった。蜘蛛達はどうなったかって? それは考えない方がいい。笑って待つさ、もう少しの辛抱だ。夏がきたらまた彼らが帰ってくる。そしたらやつらが巣の上にご馳走の虫けらを並べ、その上にかがみこんで晩餐を楽しむのを、また観察できるだろう。
何たって大家は俳人じゃないんだからさ、まだ今んとこは。

訳:朗善



ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2011年より松山市在住。


目次に戻る



JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第15話
チューン・アップ
ソニー・スティット

指先がバードを追って夏の空・大頭

 アナザー・バード(いま一人のパーカー)やパーカー・イミテイターなどと形容され、常にチャーリー・パーカーの影がつきまとうスティットだが、僕はそこがよいのだと思っている。パーカーは偉大であり、彼の絶頂期を捉えたダイアル盤やサヴォイ盤は今でもたまに聴く。でも、いかんせん音が悪い。50年代のヴァーブ盤などには十分に聴ける音源もあるが、肝心のパーカーが不調だったりする。
 その点、スティットはパーカーより少し年代が後ということもあって、好調期の良好な音質のレコーディングも多い。それにパーカーに酷似しているけれど、小節にきっちり収まる正確なフレーズが心地よい。

サックスの音色にとまる夏の蝶 てんきゅう

 だから今思うと、スティットに洗練された寛ぎのあるパーカーを僕は求めていたのかもしれない。「ソニー・スティット・プレイズ」は、そんな雰囲気をたっぷりと味わうことができるアルバム。サイドに名手を迎えたスティットが放つ伸びやかな音色と華麗なバップフレーズに夏の蝶!! これは頷ける。片面にはカウント・ベイシー楽団の至宝、フレディ・グリーンのギターが入っていてリズム・セクションの雰囲気がガラリと変わり、これも面白い。同ルースト盤でクインシー・ジョーンズの編曲が冴える「S・スティット・プレイズ・フロム・ザ・ペン・オブ・Q・ジョーンズ」も名盤の誉れ高いが、僕は小編成のこの盤が好きだ。

細胞がバップでできている郭公 蛇頭

 そんなこんなで僕は若いころからスティットのレコードを漁り続けた。手あたりしだい、といえば大げさだがジャズの基本、いや本質であるバップ・イディオムは彼のアルバムから学んだ。結果、レコード盤はジョン・コルトレーンとソニー・ロリンズに次ぐ枚数となった。
 この二人の巨人の名前が出たので言うが、スティットはパーカーにそっくりと評されることを嫌って、一時はテナーばかりを吹いていた。でも、これは正解だったと思う。パーカーの死後も彼は二本のサックスを駆使して、実に多種多様なセッションに参画し成果をあげる。ただ、先の巨人二人のテナーに比べると、音がほんの少しだけ軽い、かな!?

チューン・アップ完了真夏となった朝 チャンヒ

 僕が最初に買ったジャズの本は粟村政昭氏著の『ジャズ・レコード・ブック』(東亜音楽社/75年発行改訂新版)である。これは今でも愛読していて本棚に収まる時がない。自分なりに装備もしたが今では手垢もついてボロボロだ。内容は著名ジャズ・ミュージシャン別に名盤や問題作をかなりの辛口で紹介している。「基本的ジャズ・レコード・ライブラリィ」には氏の推奨盤が列挙されていて、これは大いに役立った。
 この著書で氏はスティットに対し数々の賛辞を贈っている。その後半、新しい録音(と言っても50年代後半から60年代前半)の好評を博したレコード3作を紹介しておいて「〜『チューン・アップ』はこれらを凌ぐ発溂たる演奏で、時を得たスティットが今でも第一級のソロイストたり得ることを劇的に証明した名盤であった」と絶賛した。
 これを読み、たまらず僕はレコードショップを廻ったが、「Tune-Up」は既に廃盤だった。県内外の中古レコード店にも通い続けたが、結局入手できたのは数年後の再プレスの時だった。その日までジャズ喫茶のリクエストで辛抱した。A面はもう何百回聴いただろうか? でも全然色あせる気配はない。




http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


目次に戻る



ラクゴキゴ


第15話 文/俳句 らくさぶろう

『金明竹』
〜芭蕉の一句がオチに〜

あらすじ
 お馴染み・まぬけな与太郎、店番を任されるが失敗つづき。旦那は呆れて外出してしまう。そこへやってきたのが、中橋の加賀屋佐吉からの使い。与太郎に、「わてナ、加賀屋佐吉から参じました。
 《はじめ丁寧に》先度、仲買いの弥市が取り次ぎました道具七品のうち、祐乗光乗宗乗三作の三所物。ならびに備前長船の則光、四分一ごしらえ横谷宗みん小柄付きの脇差ナ、あの柄前は旦那はんが古たがやと言やはったが、あれ埋れ木やそうで、木ぃ〜が違うておりますさかいにナ、念のため、ちょっとお断り申します。
 《だんだんと早口に》次はのんこの茶碗、黄檗山金明竹ずんどの花活、古池や蛙とびこむ水の音と申します……ありゃ、風羅坊正筆の掛け物、沢庵・木庵・隠元禅師張りまぜの小屏風、あの屏風はなァもし、わての旦那の檀那寺が兵庫におましてナ、ヘイ。
 《ひどく早口で》その兵庫の坊主の好みます屏風じゃによって、表具にやり、兵庫の坊主の屏風になりますとナ、かよう、お言伝え願いまぁ。」
 早口の関西弁で、まくし立てるので、与太郎にはさっぱりわからない。与太郎が解らないからと、もう一度同じ口上を言わせた。おもしろい乞食が来たとおかみさんに店に来て貰い、二人で聞いたが解らない。「これに小言を言っていたので、良く聞き取れなかった」と、いやがる使いにもう一度同じ口上を言わせたが、早口に言って逃げるように立ち去った。
 そこに旦那が帰ってきた。奥様は与太郎がうつったような言い方になり、思い出しながら言うには、「中橋の加賀屋佐吉さんの仲買の弥一さんとおっしゃる人が、気が違ったから……お断りに参られたと……。それで、遊女を買ったんです。それが孝女で、掃除が好きで……それで、千艘や万艘とか言って遊んでて、それで寸胴切りにしちゃった。タクアンにインゲンマメばかり食べてて、のんこのシャー……それで、あの……備前の国に親船で行こうと思ったら、兵庫に着いてしまったんです。兵庫にはお寺があって、そこに坊さんがいるんです。その坊さんと寝たんです」。
「なんだそりゃ。変な色情狂か。ちゃんと覚えてることはないのか」。
「ああ、思い出しました。それで、古池へ飛びこんだんです」 。
「古池に飛び込んだ? なんだいそりゃ。あの人には、道具七品の手金を預けてあるんだが、買ってかなぁ〜?」
「いいえ、買わず(蛙)でございます」。



 「寿限無」の子供の名前をペラペラと話すのと同じく、この噺の加賀屋佐吉から参じた男が言う口上のようなあいさつは、東京の噺家さんの前座が勉強のためにきちんと覚えて演じなければいけないということを聞きます。
 実際に噺を聞いてみると、寿限無よりも大変だなあと思います。ちなみに「道具七品」とは現在では値がどれくらいつくかわからないくらい、国宝級の品物だとか。
 東京の噺家さんが上方弁をつかうので多少ぎこちないところがありますが、それを逆手にとってこの人物を東北出身の人にしたり、名古屋弁にしたり、中には立川志らく師のように英語訛版なんかもあって、これは演者なりの工夫のしどころかと。
 俳人にとってうれしいのは、中に芭蕉の超有名な句が登場するところ。『風羅坊』とは芭蕉の雅号のひとつで、『正筆』ということなので本人が書いた掛け軸だということですぞ! これは他の国宝級の品よりもこの掛け軸を見てみたいものでございますよ。
 正しいことを聞いているのにトンチンカンな間違いをしてしまい、それが笑いを呼ぶという典型的な噺ですが、寄席では毎日のようにかかる楽しい作品です。
 愛媛弁でやってみようかなと思いますが、「ほじゃろげえ」とか「いんでこうわい」とか入ったらあまりにも生活感が出てしまい、どうかな?と、まだ手をつけておりません。
 そのうちに。

虎が雨金明竹を濡らしをり


目次に戻る


本家慶弔俳句帖 第45回


文 桃ライス

お札をばらまこう
 自分の肖像画がお札になる。そんな妄想リアリティーグッズ「大人銀行券」をユーモア商品を手がける会社が発売した。
 ネット情報によると、この商品を考えたのは「変態企業カメレオン」。ここに自分の顔写真を送ると、それを肖像画風にして印刷したお札を作ってもらえる。作ったお札を見せびらかしたりばらまいたりして、富豪になったような妄想に浸れそうだ。歴史上の偉人になった気分も味わえるかも。
 お札は千円札と同じサイズで、500枚(1万5000円)から注文可能。注文はWebサイトで受け付けている。
 ところでこのお札、計算したら1枚30円するではないか。見せびらかすのはできても、ばらまくのはム、ムリです。

千円のワタシ白靴に踏まれた


あなた〜今晩のおかずはガムよ〜
 Webサービスなどを手がける企業エスが、「鯖みそガム」の予約を開始した。
 ネット情報によると、この商品はブランド鯖「関さば」の味の再現を目指し、また八丁みそ、江戸甘みそ、北海道みそなど各地のみそを数種類掛け合わせた。DHAを使った、受験生が勉強しながら食べられるガムを作ろうという案から生まれたという。エスの商品ページには「革命的なコラボレーション」「二度と忘れられない味」「これまでに味わったことのないガム」といったコピーが並ぶ。1パック10粒入りで価格は500円。Webサイトで予約を受け付けている。
 ガムには可能性があるのだろう。わしも「季語ガム」というのを思いついた。例えば「梅雨味」。噛んで爽やかになるはずだったのに、気分はジメジメモード突入。ジメジメウジウジした句を詠まずにはいられなくなるのだ。

黒南風や国語算数ずる休み


桃ライス…自分のことをワシとよぶ婦人グループ会員


目次に戻る


ホンヤクサイホンヤク


翻田 訳蔵

俳句暦0年のど素人俳人、翻田訳蔵がネット上の翻訳ソフトを使って、名句を翻訳、再翻訳し、そこからインスパイアされた(パクッた)句を発表していこうという馬鹿馬鹿しくも実験的なコラムです。


今回の俳句
 りんりんと凧上がりけり青田原 小林一茶 

 まずは、エキサイト翻訳(英→日)

「りんりん and a kite going-up kick Aota field」

 りんりんは翻訳できないようですね。けりがkickになっています。Aotaもそのまんまです。
 さて、これをまた再翻訳します。

「りんりんおよびたこの上がるキックAotaフィールド」

 「Aotaフィールド」なんか、エヴァンゲリオンみたいでかっちょいいですね。
 さて、お次は、Googleで翻訳(英→日)

「Aota original kick up and the kite Rinrin」

 こちらは、Rinrinと無理やり訳しています。
 再翻訳

「青田元キックアップやカイトリンリン」

 最後に、Yahoo!翻訳(英→日)

「It is kite rise kick Aota Hara tinklingly」

 りんりんがtinklinglyに。そんな英単語はありません。
 再翻訳

「それは、tinklinglyに凧上り坂キック・アオタ・ハラです」

 それでは、この3つを組み合わせて一句

Aotaフィールドキックアップやカイトtinklingly 翻田訳蔵



目次に戻る



まつやま俳句でまちづくりの会通信


第17回 文/写真 暇人

女川町の桜を復活させよう! チャリティー句会ライブ

 昨年3月11日、未曾有の被害をもたらした東日本大震災。特に被害の大きかった宮城県女川町に、津波に負けず、上部3分の2ぐらいが引きちぎられてしまっても、花を咲かせ、枝を伸ばし生きている桜の木があります。そんな震災と津波に負けず生き残った桜の再生を助け、保護すること、および、女川町の樹木である桜を保護育成することを目的として、昨年「女川・桜守りの会」が発足しました。そして、「何年か後には桜の名所になって、たくさんの人に来てもらいたい」との志を掲げ、地元住民の方が10万本を目標に植樹を行っています。
 今回直接「女川・桜守りの会」を支援したい思いから、mhmがチャリティー句会ライブの企画をおこなうことになりました。
 4月1日、午後1時。「大花見大会」の会場で句会ライブが始まりました。当日の桜はやっと咲き始めたばかり。ただ会場は朝8時からスタートしただけあってもう熱気むんむんでした。
 席題は「桜」、制限時間は5分。「女川・桜守りの会」への善意の募金をいただきながら投句を受け付けました。
 お酒が入ってますます言葉冴える夏井いつき組長による句会ライブがスタート。まずは面白かった句を紹介。アシスタントに指名されたのは「ラクゴキゴ。」でおなじみらくさぶろうさんのご子息ゆうせい君。景品配りに一役買い、しかも本人の句も紹介されました。
 選ばれた優秀句10句があねご代表(赤)と正人副代表(青)に5句ずつわけられての句合わせ。観客に配られた「赤・青」2枚の札によって対戦の勝敗を決めます。最優秀句以外の勝ち残った4句は以下の通り。

幾万のつぼみの微熱朝桜 みかりん
じいちゃんの牛を見送る桜かな 桜井教人
弟子千人育て百年後の桜 津田美音
さくらをふんだおんながわらった そうそう(6歳)

 何故なのかあねご代表が受け持った俳句がほとんど選ばれていました。これも代表の力なのか偶然なのか……。
 そして最優秀句は全員の挙手で決定。

花酔ひの消へて自分に戻りたる ちろりん

 まさにこの会場、いや日本中の花見を楽しんでいる人たちが共感できる俳句が選ばれました。
 当日は、テレビ局や新聞社からの取材があり、その取材の中であねご代表は「女川に10万本の桜が咲く日が来たら皆で出かけたい」と語りました。
 ちなみに同時並行で開催された、しんじゅさんの『純喫茶・恋猫だった頃』のチャリティー喫茶と合わせて78604円集まり、先日無事「女川・桜守りの会」に送金しました。ご協力ありがとうございました。


次回は「特別編」
 昨年に引き続きあねご代表大活躍?


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)まで。


目次に戻る



一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


4月に開催されたイベントへの反響が、番組にも多く寄せられました。その一部をご紹介いたします。

大お花見大会(4月1日開催)

魔心地 おいらはかなりの晴れ男なので、貢献出来たと思います。
夏井 お陰さんで、晴れて非常に良い花見でございました。

十色 大お花見大会お疲れ様でした。昼間の2時間ちょいしか参加出来ませんでしたが、良いお天気で、桜も咲いていて、とっても楽しゅうございました。夜の8時まで居られたら、もっと楽しいんだろうなあ〜。
夏井 私は毎年、朝の8時から夜の8時まで12時間やっておりますが、ずーっといたら、腰と尻が痛くなりますね。

妙 良いお天気で桜も咲き始めて良かった。句会ライブも楽しくて。北海道から来ていた牛後さんにサインをいただきました。牛後さんがお若くて予想外でした。

 牛後さんは、花見と同時開催の「大人のための句集を作ろう!コンテスト」授賞式のために、わざわざ北海道からお越しくださいました(先月号参照)。
 また、句会ライブの様子は、今月号のmhm通信で紹介されているはずですので、ぜひご覧ください。


きさいや広場3周年記念 夏井いつきのきさいや句会ライブ(4月15日開催)

ぽぽんた 句会ライブ初体験の私でしたが、楽しく過ごしました。俳号とお顔を見ながら、「ほぅー」とか「へぇー」とか驚きながらの一日でした。
夏井 ぽぽんたちゃんと初めて会ったという人たちが、ぽぽんた取り囲んでね。賑やかな句会ライブでした。

マイマイ 妻のふぢみんが「地」に選ばれ賞品をたくさんいただきありがとうございました。朝からビールを飲んで幸せな休日でした。

めろめろ きさいや広場句会ライブ、堪能しました。久しぶりというか毎度のまったりした良い時間が過ごせました。スタッフの皆様にも最上級の感謝を申し上げます。宇和島を吹き荒れる風となってまたおいでくださいませ。

 番組内はもちろん、番組外でもラジオで大々的に告知された句会ライブとしては久々の開催でした。なんと会場である宇和島・きさいや広場へのバスツアーも組まれたりと、近隣の方はもちろん、遠方から会場へ駆けつけた方も大勢いらっしゃって、大変に盛り上がった一日となりました。


まほろの 兼題雑感

今回出題された兼題の中でも、曲者なのは、なんといっても「薬降る」。1年の中で、たったの2時間!! しかもその2時間の内に雨が降らなくては成立しないという、季語を実体験したい方にとっては、なんとも頭を悩ませなくてはならない季語なのです(笑)。2012年は、陽暦での6月24日がその日にあたります。さて、今年は「薬降る」となるでしょうか?
 その他の兼題についても、音で聴いただけでは正体が分かりづらい季語が並んでいますので、よくご確認を!



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

6月10日
薬降る【仲夏/天文】
薬日とされる陰暦5月5日の、午の刻(午前11時〜午後1時)に雨が降ること。その雨が伐った竹の節間に溜まったものを「神水」と呼び、薬の調合水として薬効があるといわれる。

いさき【三夏/動物】
日本の中部以南に生息するイサキ科の海魚。体長30cmほど。鱸を小さくしたような魚で、体側に三本の黄褐色の縞がある。

6月24日
未央柳【仲夏/植物】
オトギリソウ科の常緑小低木。中国原産。6〜7月頃、茎頂に、多数の雄しべが刷毛状に立ち並ぶ黄色の五弁花を数花付ける。

円座【三夏/人事】
藁、蒲、菅、藺、菰などの茎葉で、渦巻き型に円く平たく編んだ、座布団状の敷物。主に板間や縁側、縁台などで用いられる。


目次に戻る



句集の本棚





『月のこゑ』 植田珠實 著

 句集を開くと先ず月の句の数々が飛び込んでくる。
  声あげて月に居場所を知らせけり
  過去帳の三百年分月あかり
 月の句だけでも何とバリエーション豊かで素敵なんだろう、と思っていると、次々に表情豊かな句に出会い、ページを捲るのがとても楽しくなる。
  流星をひろつてもつていらつしやい
  笑ふたび冬の楽器となりゆけり
  海静か言葉をもてぬ水鳥と
  はなびらがはなびらでなくなりしとき
  春昼が駱駝の瘤のなかにゐる
  蓮の花てもちぶさたの愛ばかり
 枠に収まることのない自由な風のような句達に、心地よく感情を揺さぶられる一冊だと感じた。序文・黒田杏子。作者の第一句集。
(書評:山澤香奈)

角川書店(2011年初版)
定価 2667円(税別)
全175ページ



『けむり』 西原天気 著

  ゆふぐれが見知らぬ蟹を連れてくる
  紙袋鳴らしてレモン押し合へり
 読んでみると、なんともつかめない。温度や光加減、音などのイメージが妙にすんなりと想起できるのに、どこか煙に巻かれてしまうような俳句の数々に、気づくとにんまり笑っている自分を発見する。私は作者の顔を知らないが、句の響きからは老齢の達観が垣間見えたかと思うと、思春期の柔軟な視点も感じてはっとする。なんとも年齢不詳な方である。
  天窓に雲の流るるプールかな
  かき氷この世の用のすぐ終る
  空ばかり見てブースカが芋畑
 とてもうまく、そしてただ直感で「いい!」と思える「けむり」の元になる「火」は、一体どのように起こしているのだろうか。それをぜひ知りたいものである。
(書評:匠磨)

西田書店(2011年初版)
定価 1800円(税別)
全170ページ



『朝の虹』 田中清之 著

  捩花のねぢれすくすく育ちけり
  大熊手動く歩道を帰りけり
 著者の第一句集は見逃されがちな事物にも温かい眼差しが注がれ俳諧味となっている。捩花も大熊手もここではさりげないタッチで生気を吹き込まれている。
  春禽の全身で雨弾きたる
 堂々とした春禽がダイナミックにクローズアップされて描かれている。
  桜東風絵具一色使ひ切る
  雲の峰フラスコの水沸点に
 ぼこぼこと沸き立つフラスコに雲の峰が重なって思われ同時に理科室の匂いなども想起させる。
  風船の月の軽さとなり浮かぶ
  クレヨンのどの色よりも水澄めり
 描写がしなやかで心にすんなりと入ってくる心地よさがある。「百鳥」同人。
(書評:藤実)

本阿弥書店(2011年初版)
定価 2800円(税別)
全221ページ



このコーナーで紹介した句集は、100年俳句計画編集室にて閲覧できます。


目次に戻る



選句&投句欄 ザ 句会


 このコーナーは読者による誌上句会。先月号に掲載された投句への、選句&選評(互選)を掲載しています。不肖編集室一同も参加しています。

第173回兼題
 「本、書籍」をテーマに
 出題者 すな恵さん

 今月の互選『鰯の歯ぎしり』

5点句
たま、ソラト、あき、チャンヒ、兼光選
俯せの詩集の春を飛ぶかたち しゅん
  たま  まさに春の真中。野原の読書でしょうか。かたちのひらがな表記軽やかでいい感じ!
  ソラト  書籍という物自体をきちんと捉えてなお香る詩情。
  あき  俯せの本は確かに鳥が羽を広げたような形。ましてや春を飛ぶのだから、明るく軽やかな愛の詩集なのでしょう。
  チャンヒ  電子書籍と本の違いは、実際の物であること。俯せの詩集の質感と恐らく詩の内容とが「春を飛ぶかたち」なのだろう。この表現も詩的。
  兼光  途中で伏せられた詩集。力強く羽ばたいた一瞬は伏せた本の形。中の詩たちも飛ばんばかりの言葉を秘めているのだろう。

海田、鞠月、ほろよい、山ぐるぐる、こまりやま選
春光を雑誌に挟む途中下車 迂叟
  海田  広げていた雑誌に射していた細長い光をそのまま栞のようにして閉じる。たわんだ雑誌の合間には、春光の熱とそれに暖められた空気が残る。その穏やかな熱がこの途中下車した人に流れる緩やかな時間を連想させます。
  鞠月  春光の明るさが軽やかに詠まれていて好きです。小旅行に行きたくなりました。
  ほろよい  春光のなかの路面電車……雑誌なので、愛読書ではなく時間つぶしに見ていたのかな、ふと目を上げると懐かしい人が車窓に「えっつKさん」あわてて雑誌を閉じて電車を飛び降りた。そんな景色を想像しました。「春光を挟む」がよかった。
  山ぐるぐる  明るい春の光を挟んで降りたのは彼女の姿を見つけたから? なにか素敵なことが起こる予感のする句です。
  こまりやま  本と一緒に気ままな電車の旅に出たくなりました。

4点句
かのん、のり茶づけ、亜桜みかり、まとむ選
一束の本売り飛ばし卒業す ポメロ親父
  かのん  息子たちが社会人になる時、棚からスラムダンク他が、無くなっていたのを思い出し、小さな苦笑。
  のり茶づけ  「売り飛ばし」というぶっきらぼうな言いまわしの後の「卒業す」という下五が今までの自分からの決別であり新しい生活の始まりでもあるという本人の決意を感じられました。
  亜桜みかり  「売り飛ばし」の力強さに進路へ突き進む気概を感じる。一束しか本を持っていなかったという俳諧味も良かった。
  まとむ  未来への一歩が、一束の本を売り飛ばすことなのかもしれないなあ。

ケンケン、駝楽、柱新人、犬鈴選
ゴールデンウィーク・ドストエフスキー のび太
  ケンケン  私もこの時期(GW)に一週間かけて読んだ事を思い出しました。あれは難しいですね〜。
  駝楽  知る人ぞ知る、カタカナ好きでございまして、ツボにはまりました。そして、今年で言えば、GWの前半に読み始めるも、一気に読めず中休みし、後半にマキを入れて何とか読み終える感じです。
  柱新人   うまい。17文字。こういうやり方があったか。
  犬鈴  連休だ! さあ読むぞ! という強い意志を感じました。

逆ベッカム、狸穴けら、コナン、波留夫選
信介しゃん織江バ抱いて炭鉱の月 松ぼっくり
  逆ベッカム  「青春の門」は二十歳のころ筑豊篇、自立篇と夢中になった記憶があります。でも読んだのはなぜか第三部の放浪篇まで……私の人生にその先が無かったからだと思います。
  狸穴けら  信介、織江、炭鉱の月、フォーク狂いの僕には三角締めにあったも同じ。右手でマットを叩いてギブアップです。
  コナン   情熱な句が好きです。何故か涙がでてきました。「炭鉱の月」このフレーズも好きです。
  波留夫  青春の門の筑豊編は愛読書の一つです。とりわけ俳句に表現された「このシーン」にひかれます。

たかこ、猫ふぐ、漫歩、ポメロ親父選
抜きとりし本のすき間も花の闇 杉山久子
  たかこ  花の闇はどこにでも潜んでいるんだなあ。図書館を想像しました。
  猫ふぐ  ハッとさせられた句です。どんな本を読んでいるのか想像力を掻き立てられます。忘れらんない句がまた一つ増えました。
  漫歩  図書館の本の臭いと薄暗がりは花の闇とは同感です。
  ポメロ親父  その本の題名とか厚みとかによって、闇の暗さも違う気がします。

3点句
ペプチド、だりあ、Blanca選
ノルウェーの森を抱き込む山桜 狸穴けら
  ペプチド  森よりも美しい山桜、村上春樹を藤沢周平が飲み込んだり、長編小説を短編小説が飲み込んだりするように、柔よく剛を制するなど日本の生き方を感じさせる。
  だりあ  山桜の咲き満ちている窓辺に読む「ノルウェーの森」。
  Blanca  グッと世界に引き込まれました。

西条の針屋さん、旧重信のタイガース、多久美選
花粉症文法全書はとじたまま 柊つばき
  西条の針屋さん  花粉症で集中力が切れて難しい本は開く気力は無いのでしょうか……。
  旧重信のタイガース   私は、30年来の花粉症持ちなんで、どうしても、この俳句が気になりました。六法全書はあまり読みませんが。
  多久美  難しい六法全書を読む時もイライラ感があるのに花粉症であればなおさら六法全書を読む気さえ起こらないのに本をとじたままお察し申しあげます。

杉山久子、輝女、えつの選
目借時電車ガタゴト本ポトリ 生糸
  杉山久子  リズムと語感の楽しさ。私はこれ、一年中やっちゃいます。
  輝女  中七と下五のリズムが好きです。いかにも目借り時の感じですね。
  えつの  カタカナは音が聞こえます。私も経験した事があります。恥ずかしかった……。

青柘榴、権ちゃん、信野選
かぐや姫その後を問う子夜半の春 のり茶づけ
  青柘榴  かぐや姫と夜半の春に、生まれた竹のその後までも、気になってしまいました。
  権ちゃん  子どもでなくても「かぐや姫」のその後知りたいですね。夜半の春もいいです。
  信野  ねむる前のお母さんと子供さんのほのぼのとした様子が浮かんできます。

カシオペア、未々、さかえ選
花冷や寝る間も惜しき本に会ふ 子狐萬浪
  カシオペア  だんだん目が冴えて読んでしまわないと寝れ無いですね、若い頃覚え有ります。歳に負けず新しい発掘をしたい気持ちになりました。
  未々  明日は早く起きなければという晩に限っておもしろい本を読み出してしまいます。困ったなぁ、寝なければ明日は辛い、でもやめられない……。
  さかえ  時のたつのも忘れ朝方まで読みふけったことでしょう。

紗蘭、ぜぶら、エノコロちゃん選
磯巾着の飛び出しすぎた絵本 チャンヒ
  紗蘭  リズムを崩しているところや「飛び出しすぎた」と表現しているところがいいと思いました。
  ぜぶら  磯巾着がもしも縁側で生まれたとしたら、あのハデな色合いも持ち得なかっただろうし、まして飛び出しすぎたりしない。飛び出す絵本の一番かっこいい部分に張り付いて堂々としているところがなんかかわいい。
  エノコロちゃん   読んで思わず笑えてしまいました。興味津々で、顔くっつけて見ていたのでしょうね! あったかなカンジもよかったです。

三月、めろ、まほろ選
書庫満たす億の記憶や柳絮飛ぶ みちる
  三月  「柳絮とぶ」がいいですね。書庫深く眠る本もひとたび頁を開くとあふれるように語りかけてくる。下五に置いた季語が句全体をむせかえるほど圧倒的なものにしています。
  めろ  書庫の中の本もいつかは読まれなくなり忘れ去られる運命かも……本に眠る記憶も柳絮と一緒に飛んでいくのかも。
  まほろ  本というのは、それぞれを書き著した人の記憶の一部なのだと思うと、書庫に大量に並んだ本が存在感をもって迫ってくる。

雨月、今比古、遊人選
借りた本返せば終はりハルノソラ なゝ
  雨月   そんな乾いた関係が青春ですね。「借りた」「返せば」「ハル」とあ音が続くのも明るくて良いです。
  今比古   恋人も夫婦も親子も、実はこんな「シバリ」だったのかも。ましてや会社の上司なら……。「ハルノソラ」がまるで「ウハノソラ」のよう。もっと薄情に生きてよいのね!?
  遊人  新しい旅立ちの始まり。ハルノソラのカタカナ表記が思い切り良さと哀愁を漂わす。

2点句
紫音、お手玉選
春の旅ボストンバックの底に本 もんきち
  紫音  本を持って行ったのに結局読まずに帰ってきた、という自分の旅行のエピソードを思い出しました。着眼点がおもしろくて、とても好きです。
  お手玉  お友達と行くおしゃべりの旅ではなく一人静に旅をするとき、好きな本をいつもバックに忍ばせているあなたが見えてきました。

もね、桃林選
図書委員二人で整頓夏近し まるにっちゃん
  もね  なんて可愛い! 二人で力合わせてね。夏近しがぴったりです。
  桃林  図書委員が二人しかいないのだろうか、或は他の委員はさぼっているのか、二人だけでの整頓。ページ数の多い本は結構重いものである。額には汗がにじむ。

和音、生糸選
春の夜の完結しない愛読書 不知火
  和音  春は何かと行事が重なったり、行楽にでかけたり、忙しい日中を過ごします。夜は読書でもと思いながらも、知らない間に夢の中へ夢の中へと。完結するのはいつになるやら……。気持ちピッタリの句でした。
  生糸  春は昼夜問わず眠いので、大好きな本も同じページを読んで前に進まない。そういう事、春には特に多いですね。

レモングラス、雪花選
ぐりとぐらの歌覚えてる春の風 空
  レモングラス  子供たちと読んだ絵本、ぐりぐらシリーズは贈り物の定番だったのに家の孫達はあまり喜ばない。しかし懐かしい世界。
  雪花  『ぐりとぐら』のシリーズ、なんども読まされました。歌覚えていますとも。心があったかくなる句です。

えりぶどん、唐草サ行選
恋人は小説の中リラの花 雪花
  えりぶどん  いくつになっても架空の恋人はいるもの。
  唐草サ行  なんとも北の街の恋愛小説を思い出しました。リラの香る北大あたりを散歩したくなります。

藍人、しゅん選
教科書の裏のらくがき花の昼 とりとり
  藍人  「大学ノートの裏表紙にさなえちゃんと書いたの…」ではなく、教科書にですか。どんな落書きなんでしょ。私の周辺は、ぱらぱら漫画が流行ってましたよ。
  しゅん  進学して一人暮らしを始めた息子の部屋を片付けるお母さんが浮かんできました。もう使わない教科書の落書きを見て、元気でやっているかしらと思いを馳せる、そんな花の昼なのでしょう。

いつき、正人選
新刊とまぐはふ春の月置いて ちょっと横道
  いつき  「まぐはふ」は言い過ぎの感無きにしも非ずだが、本好き族にとっての紛れもない実感でもある。「春の月置いて」の措辞や佳し。
  正人  新刊はいつも「まぐはふ」ように楽しみたい! さらっと読み終えるなんて勿体ない! 春の月に明らかにされる己の姿が滑稽。

蓼蟲、理酔選
富士見ロマン文庫腋に夏兆す ソラト
  蓼蟲   70年代「隠すものなど初めから何もありはしない」と言ふ鮮烈なキャッチコピーと黒の表紙で登場したこの文庫、常識を覆すポルノ小説の一群だつた。そこに可愛く「夏兆す」。驚愕、脱帽。
  理酔  富士見ロマン文庫! 懐かしい。高校生の時に「背徳の聖女」を読みました、最近、読み直したら一人称のハードボイルドエロ小説の名作でした。俳句はまあこんなもんやろね。

樹朋、元旦選
紙の日の本の束ねや春時雨 蓼蟲
  樹朋  紙の日と言えども、雨の日に古本を出すのは躊躇するものです。本の束が春時雨に濡れている情景を思い浮かべると、本を出した人の生活に慌ただしい変化があったことが想像出来ます。
  元旦  ひと括りにされ道端に置かれた本を見かけると、リサイクルとは言え、少々複雑な気持ちになってしまいます。おまけに時ならぬ雨に打たれ、本から別のモノに変わり果てたような姿に見えてきて……(本捨てられない男)。

こてぞう、破障子選
本読みは大つきらいです春休み エノコロちゃん
  こてぞう  春休みの特殊な位置付けを懐かしく思い出します。ぶっきらぼうが楽しい。
  破障子  読書で人が死ぬワケぢゃないのに、私と本とどっちを選ぶの?なんて迫られたりしますよね。キライだけで放念してくれるとありがたいけど、ポーズだったりするからヤヤコシイ。春休の読書こそ最高なのにね。

松ぼっくり、サキカエル選
断捨離の始めは書籍蜆汁 ゆりかもめ
  松ぼっくり  まさにそうですね! 賛意の清き一票です。
  サキカエル  断捨離中断していた私にもう一度スイッチを入れてくれたこの作品を選ばせて頂きました。どうもありがとう。やっぱり書籍から手を付けますよねぇ?

迂叟、とりとり選
本の山崩るる音や春の風邪 すな恵
  迂叟  風でなく風邪がいいですね。読もうと思って枕元に積んでいた本が……。
  とりとり  うたたねしていて、本の崩れる音で目が覚めたのかもしれませんね。

不知火、親タカ選
昭和の日ケータイ小説てふ異国 桜井教人
  不知火  同感です。特に横書きされているものは読みづらいです。ハイ、昭和生まれです。
  親タカ  「昭和」と「異国」が来れば取るしかない。それにしてもケータイはいくつの顔を持つ? たかがマッチ箱二つ分なのに。ケータイが巾を効かす国は異国そのもの。

1点句
ど根性「人間失格」かかげ夏 豊原清明
  ソラマメの母  半世紀近く生きているに未だ人間失格を読破できません。自分の半生は失格なのに……。読んだあなたは偉い!

日曜の赤のバイエル苺煮る えりぶどん
  桜井教人  書籍かどうか微妙ですが、懐かしい言葉と光景に出会いました。苺を煮てるのはお母さんなんでしょうね。

春北風の忘れられゆく本に石 牛後
  ザッパー   文学文庫を思い浮かべた(笑)。

XとYがうずまく工学部 ケンケン
  オパール  XとYがうずまくというところでますます難しさを感じます。憧れの学部ですよね。

本棚に恋を見つけし春の宵 コナン
  ひでこ  昔読んだ詩集でしょうか。中七がいいですね。

お四國や経本誦してしばし黙 波留夫
  大阪野旅人  今回は非常に迷いました。「お四國」は四国の遍路寺の総称のことですね。そのお寺で遍路さんのお参りの姿だけでなく心まで見えてきます。いいですね! 一票です。

春眠に教科書忘れ登校す 人日子
  柊つばき  教科書ならまだかわいい? 息子と孫はランドセルごと忘れて学校に行ったことがあります。

教科書の一頁目の春うらら ぱむだ
  半角  何かうきうきする独特の匂いがあるんですよね。

三巻にて子規死すしろばな沈丁花 いつき
  もんきち  小説坂の上の雲を読んでいると三巻で子規が亡くなってしまう。とたんに小説ヘの興味を無くしてしまったことを思い出した。私にとっては子規の存在はそのくらい大きかった。白い沈丁花の花が寂しげで合っている。

行く春の深紫の蔵書印 月乃雫
  ちょっと横道  一瞬深があるので秋ではと思ったのですが、桜の花を持ってくれば、深紫はぴったりではありませんか。惜春でした。

穴を出てウォーリー探す地虫かな 犬鈴
  清流子  あのぎこちない動きは、ウォーリーを探していたのか。なる程納得。

ヲの文字を拾う春夜の汽笛かな 兼光
  青蛙  文選、植字という今は廃れてしまった活版の文字を拾う仕事。機械も止まった作業場での残業に汽笛が響くという、ノスタルジーを湛えた句と読みました。ヲは、例えば「雨ニモマケズ」の一節でしょうか。

散る花の消えゆく百科事典かな カシオペア
  まるにっちゃん  電子辞書とか文明利器の発明で10数万円かけて、百科事典を揃えることもなくなりましたよね〜!!

本棚を抜ければすでに春半ば ゆき
  朗善  薄暗くて居心地いい本棚を抜ければ、春たけなわの眩しい現世。映画館を出た時の気持ちにも通じる。春が効いてる。

犬ふぐり挟んだ本はどこだろう Blanca
  すな恵  本に挟んだことだけは確かな“あの”犬ふぐり。どんな犬ふぐりなんだろうか。思いがけない時に現れるのかもしれない、過去からの手紙みたいに。

ポケットに家出のすすめ夏に入る 猫ふぐ
  まんぷく  家を出て独り自由気ままに生きてみたいと思う事も時々あるが、自由とはより寂しくもあり、厳しくもあると思い直し、そそくさと帰宅の途につく自分を褒めてあげたいと思う。

花桐や朝日の当たる古本屋 もね
  カラ嵩ハル  高い桐の花越しに、朝日を浴びている、この古本屋に黴臭さは微塵もなくて、昭和の街角にふわり舞い降りたようだ。

春うらら本棚はみ出すじゃリン子チエ サキカエル
  一走人  昔、子供達と読んでいた「じゃリン子チエ」が懐かしく、字余りも楽しく好きな句でした。

うたた寝て歳時記落とす花疲れ 桃林
  しのたん  歳時記を詠んだ句が何句かあり、どれもいいなと感じましたが、この句は花疲れが効いてるし、うまくあってると思いました。これからもすてきな句作り楽しみましょう。

返却の本に花びら挟まれて 和音
  魔心地  その本が辿って来た道のりを想像するのも、ページをめくる楽しみのひとつ! オイラは、本好きの女の子から本を借りて読むのが日常(笑)。

天金の蔵書百巻春の月 遊人
  しんじゅ  金色の天を持つ本それも百冊も! 春の月が効いていてとてもうつくしいですね。

うりずんやエンデに金の箔の文字 正人
  白  最初にエンデの文字を探しました。

晩年の友は歳時記沙羅の花 浜田節
  人日子  小生も歳時記は親友の一人です。

本棚に住む人のあり春うらら 山ぐるぐる
  豊原清明  作者は本当に本が好きなのだ。本棚に様々な作者がすんでいる。

恋猫やもどりくるまで「三国志」 たま
  ふーみん   三国志私もゆっくり読んで待ちたいです。

中華屋の黄ばんだ漫画春暑し 十色
  浜田節  大変共感出来る場面ですね。あんまりきれいではない店内。当然、ラーメンなど食べているお客さんもネクタイ姿の人などいないんじゃないかな。そして何故かどきつい漫画本。春暑しの季語がぴったりですね。

古文書に地震の記録桃の花 藍人
  ちろりん  東日本大震災、原発事故、人類はわりと歴史に学びませんね。失敗を繰り返す。それは私の日常でもあります。

陽炎や推理小説増殖す ひでこ
  ひまわり  私は推理小説が多くなることを「増殖」と例えたことがすごいと思いました。

孫と見る飛び出す絵本象の鼻 お手玉
  一心堂  作者と孫の笑顔が目に見えるようです。

モノクロのこころまよわす春かすみ 祐子
  洋子  懐かしい思い出と共にあるモノクロ写真……やっぱりいいなあ。

今月の無点くん 
下巻のみ売られし伝記フリージア 紗蘭
花曇り古書の匂ひに酔ひし指 瑞木
署名本くせ字をなぞる春の宵 未々
春火鉢試合前日五輪の書 こてぞう
置き去りに僻む黄砂の求人誌 カラ嵩ハル
永き日の古書街漂流J・J氏 元旦
丸善の蒼い梟本の上 かのん
彼岸来て鶴見和子の強さ知る ぜぶら
亡国や「国家の品格」春遠し 西条の針屋さん
春光やまだ新しき句集あり ペプチド
一宿の御礼に置きし土佐日記 唐草サ行
パレアナの生き方が好き桜草 一走人
カビ臭き本を撫でたる春の風 ふーみん
背表紙の丸みを春光の沿えり まほろ
余花や『昭和元禄落語心中』 久乃
本屋の隅パフうずくまる花ぐもり 今比古
さくらさく夢をつなぐの直子さん えつの
麗かや古事記にキヌヌヒノエヒメ 三月
桜散るサイタサイタの思い出よ さかえ
春深しあさきゆめみし又ひらく あき
潮香る空鳶と闘う烏二羽 オパール
桜東風鞄の底に短編集 まとむ
ぬけぬけと書籍は飛ばさず鰆東風 親タカ
種本を失くし佇む花の下 まんぷく
雨雲を見て図書館へ行く決意 ちろりん
春眠や膝の歳時記落ち醒める 輝女
新書版5冊がよい枕とす 炉草
本置いて葉をたたえたる桜餅 しんじゅ
わ印の蔵書票春ともし 破障子
本棚に菜の花生けて部屋せまし 寿山八十
受けるより与える幸せ春の風 洋子
鴎外を手にする春のフェアーかな 逆ベッカム
冒険の始まりの本えんどう豆 漫歩
遺憾なる言葉のルーツ辞書の黴 樹朋
地図帳に喜怒哀楽句遍路かな 清流子
春愁や藤村に逢う千曲川 大阪野旅人
金次郎に電子書籍や草青む だりあ
ガレキ浜「モモ」に指示請え鳥雲に 青柘榴
定位置の赤毛のアンと梟と 明日嘉
店先の古書平積みに春惜しむ 柱新人
博識の夫本の山に埋もれり レモングラス
夢の中源氏諳んじ朧月 魔心地
花図鑑栞の項は白木蓮 ザッパー
「おはよう」に閉じる賢二や風薫る ほろよい




第174回兼題
「鳥」の字の入った句
出題者 まくわさん

1 鳥居千くぐりて春の別れかな
2 大仏をものともせずに鳥交る
3 夕日の絵描きて付け足す閑古鳥
4 五月闇鳥籠は肋骨めいて
5 子供の日鳩追いかける三歳児
6 恐竜の眼を受け継ぎて鳥交る
7 親鳥は素知らぬまなこ巣立ち鳥
8 鳥の巣の寝息のような羽毛かな
9 空き缶に集める会費愛鳥日
10 夏の白鳥魔法解いてさしあげる
11 ひな鳥がどうのかうのと聖五月
12 鳥葬の視線の果てや夏の空
13 じやあ鳥取で暮らすかいあいの風
14 百千鳥けふはくしゃみが止まらない
15 緑雨なる夜をねむらぬ鳥獣
16 百千鳥やさしく我を目覚めさす
17 鳥一羽ぶち込んで炊く立夏かな
18 そにどりのあをぬぎすべせ陶枕へ
19 蚊喰鳥大粒の雨避ける如
20 焼鳥の串と生れて明早し
21 帰る鳥飛行機雲と競い合い
22 枯木立烏百羽になりにけり
23 鳥になりたいと思つた夏帽子
24 水漬く椋鳥風の唄が聞こえる
25 夏帽の高きところに白鳥座
26 我が鳥は羽根なく過ごす立夏父
27 帰る雁峠見上げる三度笠
28 八重桜目白の揺らす枝の先
29 渓谷の奥の夏へと鳥の声
30 手のひらに鳥の重さの残りけり
31 金鳥渦巻に超緊張の蚊
32 性的人間の考察鳥交る
33 南風吹き込む先の鳥瞰図
34 残されしロッキングチェア夏燕
35 人の眼に似た眼の鳥の喰う毛虫
36 海に向く老人ホーム揚雲雀
37 太宰忌やブラック・コーヒー鴉鳴く
38 岩飛び過ぎてペンギンの玉の汗
39 鳥は涙初夏飛びまくる鳴きまくる
40 大屋根の鳥騒めける雲の峰
41 母の日や留守番の九官鳥黙る
42 鳥ですら飛ぶ気削がれるほどの夏
43 「はやぶさ2」もいつか発つ空巣立鳥
44 後ろ手にしまってからの鳥の恋
45 初夏の鳥籠はもう捨てました
46 春愁や汀に拾ふ鳥の羽根
47 森の国出湯は何処時鳥
48 来る鳥の声高らかや青嵐
49 万緑や怯えた鳥を解き放て
50 車覗く小鳥首をかしげて右左
51 帰る鳥見送る翼なき背中
52 南風や空になれずに鳥でいる
53 恐竜の遺伝子の鳥雲の峰
54 愛鳥週間ポスターばかり目につく日
55 青い時烏帽子山笑う君笑う
56 夏来る南鳥島風力3
57 雁飛ぶや新国劇の忠治さん
58 鳥のゐる枝を教えてゐる立夏
59 連休や長蛇の列に百千鳥
60 降るやうに鳩は五月の風となる
61 片付けぬままの鳥籠西日さす
62 薫風を飛ぶため拾う鳥の羽根
63 ひな鳥の口は火の色麦の秋
64 青い鳥やママのハミング初夏の空
65 子らの夢次々食らふ羽抜け鳥
66 アングリと嘴揃う燕の子
67 羽抜鳥自分を値踏みしておりぬ
68 駒鳥やいくつも谷を越えて来し
69 夏落ち葉鳥になりたきペンギンは
70 七月の勝利導け八咫烏
71 鳥風や吼ゆる玄海波荒らし
72 原発は大きな家電鳥曇
73 解き放つ朝待つ鳩の原爆忌
74 もう一度電線に来い水恋鳥
75 平泉見上げ眩しき百千鳥
76 母に嘘すこしつく夕時鳥
77 時鳥往生際を如何にせむ
78 剣道部梅雨の鳥居を鋭角に
79 青鷺が友達道後けふも雨
80 墓参の手順板に付く鳥雲に
81 新緑や鳥の世界も住宅難
82 春の山鳥類図鑑携えて
83 引鳥の波の間に間に影の落ち
84 今年又我が家に帰るつばめかな
85 鳥瞰のチチカカの舟夏つばめ
86 恋の歌練習中ですホケキョケキョ
87 電線の鳩さみしげに走り梅雨
88 乙鳥の巣を避けなからベル鳴らし
89 ホオジロを聴いて父への手紙書く
90 不死鳥の羽より夏の生まれたる
91 逃げ水や昨日潰れた焼鳥屋
92 燕の子飛べ鳥人間コンテスト
93 自治会を巻き込むゴミの親烏
94 黄砂ふる橋の真下のはぐれ鳥
95 大空をまう鳥こそが宙の神
96 山青葉鳥のさえずり求婚歌
97 アマリリス火の鳥現わる奥の底
98 鳥居くぐるや薫風に道ゆずる
99 人間を忘れてをりぬ三光鳥
100 虎が雨境界線の鳥居立ち
101 悲しみは鶏の羽ばたき鳥雲に
102 吾子泣くな天岩戸開け巣立鳥
103 夏鳩の目を合わさずに通り過ぎ
104 夏兆すゆらりゆらりと朱の鳥居
105 春虹を追へば鳥人族の村
106 生も死も夏のうしろにある小鳥


次回兼題「窓」の字の入った句 出題者 かのんさん
次々回兼題「眩しい句」をテーマに 出題者 雪花さん

【兼題の扱い方】
季語「xx」 … 副題含む季語を入れる。
「xx」をテーマに … 内容に沿って詠む。
「xx」の字の入った句 … 単語そのものを詠み込む。



めざせ!大漁旗(174号〜179号)
 誌上句会「ザ 句会『鰯の歯ぎしり』」では、選んでくれた人の数をすべて集計し、半年間で最も点数の多い方が「大漁旗」を獲得します。大漁旗を得た方は「最新十句」を本誌誌上にて発表することができます。

〈参加方法〉
 1 「今月の投句」から好きな句を選ぶ。(選句)
 2  その句の感想を書く。(選評)
 3 「次回兼題」の一句を書く。(投句)
 ※1〜3、俳号(本名)、〒住所、電話番号を明記して、編集室「ザ 句会」宛にお送りください。一人一句まで。選句は番号と俳句を共に記入して下さい。
  番号はお間違えなく!

  今回の締切は6月8日(金)必着です。
 Eメール宛先 kukai@marukobo.com
 インターネットや携帯電話から下記の場所にアクセスしていただくと、専用のフォームを使って簡単に投句&選句ができます。
 http://www.marukobo.com/kukai/


【現在の捕れ高】

10点
いつき

9点
のり茶づけ

7点
しゅん
ひでこ

6点
とりとり

5点
ポメロ親父
迂叟
チャンヒ
桜井教人
牛後
松ぼっくり


目次に戻る



100年俳句計画 掲示板


 夏井いつきの出演執筆一覧

テレビ/ラジオ
NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  6月5日(火)11時40分〜
  6月19日(火)11時40分〜

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。


執筆
フリーペーパー高速家族 新東名開通スペシャル特別号
5月31日発行

Pioneer Sound Lab. 音俳句
http://pioneer.jp/soundlab/
  ウェブサイト上に組長の選評が毎日一つ発表されます。投句も受け付けています。

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

愛媛新聞
 「集まれ俳句キッズ」毎週土曜日

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「心太」締切 … 6月26日(火)


イベント
重信川の自然再生・保全プロジェクト 第3回 松原泉句会ライブ
 6月2日(土)9時〜11時30分
 場所…重信川・松原泉(森松町)
  集合…重信橋松山市側駐車場「重信川緑地公園」
※清掃後きれいになった重信川松原泉で「泉」をテーマにした句会ライブ。参加無料。上位入賞者にはキム・チャンヒの絵が贈られます。
※雨天の場合、別会場で行います。

俳句甲子園地方大会
 6月16日(土)/6月17日(日)
 6月23日(土)/6月24日(日)

第七回ハタダ帰省俳句大賞
 6月25日(月)投句締切
※詳しくは36ページ告知をご覧下さい。


句会ライブ/講演など
西条市・徳田小学校句会ライブ
 6月7日(木)

島根県俳句協会俳句大会講演会
 6月10日(日)

済美平成4年生句会ライブ
 6月22日(金)

西条市・大町小学校句会ライブ
 6月27日(水)


目次に戻る



魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

今月号特集は書道!!
小倉揮代 こんにちは。3月に松山市いよてつ高島屋で開催いたしました「こどもたちの作品展」の際、皆様には句をお借りしたり、会場へ足を運んでいただいたりと、大変お世話になりました。素晴らしいそれぞれの句が、こどもたちの書によって、楽しい味付けがされていると感じていただけたならば、大成功だったと思っております。また来春にむけて、こどもたちの稽古はスタートしています。さらに熱い作品をお見せできるよう精進します。「100年俳句日記」への掲載、ありがとうございました。ひまわりさん、岩宮鯉城さん、お手紙をありがとうございました。ミズスマPさん、「魚のアブク」へのメッセージありがとうございました。
小倉嬉乃 はじめまして。カエル大好きな中2女子の嬉乃です。ミズスマPさんの句の様子を十分には表せなかったかもしれませんが、私は大好きなカエルと理科についての句が書けてとても楽しかったです。ありがとうございました。
編 今月号特集でご紹介の小倉書道教室の揮代先生と嬉乃さんより。当日の作品は2ページ参照!

桃ライス個展&B5→A3の巻
桃ライス にこちゃん堂での「俳人に捧げる愛の言葉展」が無事に終了しました。(いぢられ風)告知ありがとうございました。こさんぷうさんが、けふ奈良に用事で来られ、またまたにこちゃん堂にも寄って下さいました。をを、涙。写真は、そのあと2人で入った和菓子屋さんにて。こさんぷうさんは、大人句集コンの最終選考に残った8作品を拡大コピー→簡易製本→持ち歩いて電車とかで読んでいる。そうです。こさんぷうさんによると、B5サイズのマガジンをA3まで拡大コピーすることにより、句が読みやすくなって頭にすっと入るとゆうておられました。〔中略〕をを、涙のひと月半でした。そして、にこちゃん堂店長さんのご好意により、来年の同時期に「俳人に捧げる愛の言葉展2」をすることになりました。来年も頑張りまちゅ〜。
編 個展お疲れ様でした&第2回開催決定おめでとうございます!! そして何気に有用な情報が。いいね!

NHKで広がる俳句のご縁
和音 先日の俳句キッズの句会ライブのテレビを見ていたら、銀賞に輝いた小学生が二軒隣に住んでいる少年でした。勝手に仲間意識ができて、ラヂバリの投句をお願いに行ったところ、第一回今治五七五句会ライブからの俳句少年で、毎週土曜日に公民館にてミニ句会ライブ式の勉強会をしているとのこと! 組長の蒔いた種がスクスクと育っている様子を間近に聞いて、あ〜ハッピー! 嬉しい春のスタートです。
編 NHK『それいけ! 俳句キッズ』が生んだ思わぬ縁。種は育つね!

宇和島きさいや句会ライブで宣言
魔心地 長女だいあは「きさいや句会ライブ」で宣言したとおり自転車に乗れるようになりました。次女のんのも! 結構、感動です(笑)。
編 とろけた父の顔が見えるようだ。

ザ・句会の機知
蓼蟲 サキカエルさんペプチドさん、「ぬりたてのペンキを知らず青蛙」の選句ありがたうございます。選評の「青蛙の気持」「餓鬼も共感」の一言は嬉しい限りです。
編 先月号30ページ参照。餓鬼=餓鬼忌=芥川龍之介、てことですね。おお、なんか知的で格好良いぞ!

元旦 毎度のことながら「ザ・句会」で、兼題に皆さんがどうアプローチしてくるかを見るのが楽しみです。
編 兼題の扱い方を考えるのもプロセスの一つ。今回の『「鳥」を含んだ句』の場合は「鳥」の字が入ってる必要があるわけですね。その辺がもっとわかりやすくなるように文言を修正したのでぜひ35ページ左端をご覧下さい。以上、アブクに便乗しての解説でした。

雑詠道場投句の振り分け
未々 仙人さまに質問です。先月の投句は「へたうま仙人」さまに投句しましたのに、初学道場「へたうま仙人」のページにワタクシの句は一句も載っておらず、もう仙人さまにも見捨てられたのかと肩を落としておりましたら、なんと「くらむぼんが笑った」の並選に二句掲載されており、びっくり致しました。そのような事もあるのですか? 初心者の私は今月もやはり仙人さまに投句いたしますのでよろしくご指南下さい。
編 投句集計時に振り分けミスがあったようです。大変失礼致しました。投句フォームを使った投句以外は全てスタッフが手作業で集計しており、そのため集計ミスが発生してしまったようです。今後、こういったことがないよう注意して参ります。また、投句フォームを使った場合は機械的に正しく振り分けが行われますので、インターネットを使える方はぜひご利用下さい。http://www.marukobo.com/kuramubon/

ツイッター活用法・その2
海田 五月号43Pのツイッター句会が気になりました。自分も句会にではありませんが、俳句にツイッターを使っています。頭の体操にと過去の自作句を(翻訳サイト頼みで)英訳、「#haiku」のハッシュタグ付きでこの俳号のアカウントからぽつぽつ投稿しています。
編 原句→英訳→再翻訳とやると……。

俳号アラカルト
鞠月 十色から俳号を戻しました。また初心に戻って頑張ります。
紫音 初参加です。俳号を決めるのに何ヵ月もかかりました(笑)。皆さんがどのように俳号をお決めになったのかとても気になります。未熟者ですが、これからよろしくお願い致します!
亜桜みかり 「みかりん」から俳号を改めました。「亜桜みかり」でよろしくお願いいたします。
編 三者三様。最初につけた俳号が浸透しちゃって、俳号変えても以前の名前で呼ばれる人は多いとか。

組員の生活
八十八 どうしても職業俳句の域を脱せないでいます。少しずつ脱皮を図らねばと思う今日この頃です。
編 いっそ職業俳句を究めてみるとか。

白 最近といっても半年くらい前からパートに出始めた私、家事も俳句もおろそかになりつつ、これではいけないと久しぶり参加となりました。またよろしくお願いします。
編 ゆったりと楽しんで参りませう。

作品集へ感想
杉山久子 あきさん十句より。「深海に花の記憶を持つ魚」好きでした。そういえば昔のあきさんの句「植物の記憶どこかに髪洗う」も我が愛唱句。
しんじゅ 読み応えありましたね〜百年百花、百年の旗手。そして100年への軌跡。300点満点です。
編 各種作品集への応援、お待ちしております。


目次に戻る



鮎の友釣り

169

俳号 雪花

かのんさんへ 俳号どおり可愛くて優しいかのんさん。博多吟行行きますとも。松山にも帰って来て下さいね。待ってまーす。

俳号の由来 昔々、雪を追いかけた生活をしていました。今も雪を見ると心が騒ぎます。で、雪花とつけましたが、雪と花ですから、「上手にならんと許されん」と言われます。 2、30年待っていて下さい。

俳句との出会い 35年ぶりに松山に帰り、母を送り、ぽっかり穴の空いた心でみつけたのが、カルチャースクール『はじめの一歩をふみ出す人のための超俳句入門』「これだ!」と初めの一歩を踏み出してみました。其処が楽しい場所で笑い皺を作りながら、俳句を楽しんでいます。

写真 モナリザと一緒に笑ってみました。徳島大塚美術館陶板複製モナリザ。写真可。

次回…八木ふみさんへ 木曜カルチャーでいつも素適な折り紙の座席カードありがとうございます。御蔭様で皆の話が広がり、句座も和やかになります。


目次に戻る



告知


重信川の自然再生・保全プロジェクト最終回〜夏井いつきの泉句会ライブ〜

かつて重信川中流域の自然環境を支えていた「松原泉」。河川改修のため一度は姿を消しましたが、近年、地域住民、大学、行政など多くの人の努力でよみがえりました。この泉と周辺の自然環境を未来にわたって保全していくため、市民参加型のプロジェクトを実施しました。
最終回は句会ライブ。美しい泉、したたる緑に囲まれて気分もリフレッシュ。入賞句にはキム・チャンヒの俳画のプレゼントもあり。

第3回…松原泉句会ライブ
 松山市森松町「重信川緑地公園」
 6月2日8時30分受付
     9時〜11時30分
 ※雨天時は浮穴公民館で開催
 ※駐車場あり

申込先
愛媛新聞社営業局 企画事業部「重信川保全プロジェクト」係
089(935)2322



第七回ハタダ帰省俳句大賞

毎年恒例、いつき組と愛媛のお菓子メーカー(株)ハタダさんとのコラボ企画。
お盆はお正月と並んで、最大の帰省シーズン。ふるさとへの想い、家族の帰りを待つ想い、などなど、帰省での家族の再会や別れの句を募集します。

兼題:帰省をテーマにした俳句
投句締切:【6月25日(月)消印有効】

「帰省」は夏の季語ですが、この季語を使っても、それ以外の季語でも、はたまた無季の句でもかまいません。「帰省」にまつわる様々な思いを五七五に託して詠んで下さい。

投句方法
  【インターネット】 http://kisei.marukobo.com/
  【FAX】089(906)0695
  【はがき】〒790ー0022
愛媛県松山市永代町16ー1
(有)マルコボ.コム「帰省俳句」係
※必ず、住所・電話番号・お名前(俳号)・年齢を記入してご投句ください。
お一人様何句でもご投句頂けます。たくさんのご応募お待ちしております。


優秀句発表
8月中旬に掲載する(株)ハタダの愛媛新聞広告紙面にて2回に分けて発表。
 ・1回目発表… 帰りを待つ親の気持ちや、ふるさとに帰る子の気持ちをテーマにした句。
 ・2回目発表… ふるさとから離れる子の気持ち、見送る親の気持ちをテーマにした句。

優秀句の方には、(株)ハタダより3000円相当のお菓子詰め合わせをプレゼントします。奮ってご参加ください!

応募句は俳句掲示板にも掲出されます
ハタダさんがメセナ活動の一環として、松山城や道後温泉への観光ルートである勝山通りと一番町との交差点に縦3.2メートル、横1.6メートルのフルカラータイプの電光掲示板を設置。俳句や俳句イベントが随時掲載されます。
※掲載希望・お問い合わせ haiku@hatada.co.jp



100年俳句計画投稿締切カレンダー

 
 5/31(木) くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 zatsuei@marukobo.com

 6/8(金)
  ザ 句会
 kukai@marukobo.com
  100年の旗手感想
  魚のアブク

 6/30(土)
 くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


目次に戻る

編集後記


 今月は、俳句から書道作品が生まれたり、演劇から俳句が生まれたり、という企画。
 今回登場した小倉書道教室の子どもたちは、毎年俳句に挑んでいる。今年は本誌から、子どもたちが自分で書きたい俳句を読み解き、それを書で表現したとのこと。子どもたちが「書家」として俳句を選んだことに拍手を送りたい。
 演劇鑑賞句会では、俳句の初心者の方々に、俳句を作っていただいた。大がかりなセットの中、2時間を超える時間を掛けて表現する演劇と、たった17音の俳句とが、時間と空間を越えてコラボレーションするのは、思いの外スリリングな体験だった。また、演劇の鑑賞会を句会で行うのは、やってみないと分からない面白さがある。
 小説がドラマや映画になるように、俳句も他の芸術作品と非常に相性のいい文芸。昨年10月から半年間連載した「俳句+ART」のように、誰もが俳句を使って、新しい表現をするようになれば、今よりもっと豊かな俳句の世界が広がるはず。
 まぁ、そんな難しいことを考えなくても、「書きたい俳句」があると子どもたちが言ってくれることが、何より嬉しい。
(キム)


目次に戻る

次号予告 (176号 7月1日発行予定)


次回特集
句会ライブアラカルト
句会ライブは学校現場だけのものじゃない!
屋内屋外を問わず、また、愛媛県内外を問わず、様々な場面で多くの方が俳句に親しめる句会ライブの実例を紹介します。


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2012年6月号(No.175)
2012年6月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子