100年俳句計画5月号(no.174)


100年俳句計画5月号(no.174)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
書店の猫 すな恵


特集
スポレク企画 第1弾 愛媛マラソン&ゴルフ吟行会




好評連載


作品

百年百花
 キム チャンヒ/渡部州麻子/加根兼光/理酔


100年俳句計画作品集 100年の旗手
 緑の手/朗善/みちる


初学道場 へたうま仙人

雑詠道場 くらむぼんが笑った

放歌高吟/夏井いつき

新100年への軌跡
 俳句/希望峰/宮下航
 評/マイマイ/瑞木


読み物
授賞式を終えて/鈴木牛後
私たちの100年俳句計画
Letter from spider garden/ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
本家 慶弔俳句帖/桃ライス
お芝居観ませんか?/猫正宗
まつやま俳句でまちづくりの会通信/暇人
一句一遊情報局/有谷まほろ&一句一遊聞き書き隊
句集の本棚

読者のページ
選句&投句欄 ザ 句会
大漁旗獲得記念! 最新十句
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
マルコボショッピング
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー


書店の猫
すな恵

 自動ドアが開いて、五月の風とともに高らかに響く鈴の音。私の勤務する書店の飼い猫「梅ちゃん」の威風堂々たるご帰還である。
 梅ちゃんの主な居住スペースは書店奥の事務所。出入りは基本的に自由だ。書店の事務所というのは、運送屋など訪問者は意外に多く、その隙を狙って出て行くらしい。そして外を満喫した後は、いつ覚えたのか書店の自動ドアの方からお客様と一緒に入ってくるようになったのだ。
 我々従業員は、その鈴の音を耳にするや、飛んでいって事務所へのドアを開けてさしあげる。明らかに格はあちらの方が上である。
 そんな訳で、もしあなたの鞄や財布の鈴に過剰に反応する書店があったら、振り返ればメタボ気味の懐っこい猫がそこにいるかもしれない。


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特集

スポレク企画第1弾 愛媛マラソン&ゴルフ吟行会




第51回愛媛マラソンに向けて
レポート いつの間にか応援団長 あねご

*まつやま俳句でまちづくりの会代表兼愛媛マラソン応援団長のあねごさんより伊予弁スペシャルでお届けします。

 例年のいつき組大花見大会。女川に桜の苗木を送ろうというチャリティー句会ライブが終わったあと、なにげに始まったいつき組マラソン部結成式。グダグダ感満載で大丈夫かと思った人も多かったんじゃなかろか。
 二月五日に第五十回愛媛マラソンが行なわれ、前年に引き続きいつき組の有志が早春の伊予路を颯爽と(?)駆け抜けた。
 前年ゴールした直後に「もう走りませんよ!」と拗ねたような顔をして言うたキムさんじゃった。が、それから何日もせんうちに、「完走できなかった若い組員のためにもう一度一緒に走らないといけないでしょう」と、誰もそんなこと言うとらせんのにそう思ったのじゃそうで、あんまし練習できとらんと言うたわりに余裕の笑顔で駆け抜けて行った。
 たまたまなんじゃけど、タウン誌をめくったら、今回の愛媛マラソン完走者の参加の目的というのがあったんじゃがね。子供のためとか子供にええとこ見せたいいうのがけっこう多かった。そうなんよなあ、競技がすんで、堀之内を出る選手は、大きな参加バスタオルを肩に、どの人も足をひこずっとったけど、家族連れは決まって子供がそのお父さんの前を誇らしげな顔して歩きよった。うちの父ちゃんマラソン走ったんぞ!と言わんばかりじゃった。この日だけはお父さんはヒーローじゃったんよね。
 そして今大会では、私らいつき組にも新しいヒーローが生まれた。本人は昔スポーツマンじゃったというけど今はその面影のカケラもない蛇頭さん! ええ意味でみんなの期待を裏切ってさっさとゴールを決めた。
 今年は高知からまっことマンデーさんがお手製のいつき組の大きな幟数本と手旗を十本持ってかけつけてくれた。それにそれぞれの句会の幟もお借りして賑やかな応援ができた。
 俳号だけの付き合いの不便さをけっこう楽しんできたんじゃけど、今回くらいまぢで不便を感じたことはなかった。選手名簿があっても本名を知らんけん、なんの役にも立たん。競技がすんでから組長のブログ見てゴールのタイムを参考にして逆にこの人が○○さんじゃろと思うくらい。ろくに名前もわからんけんゼッケンも不明、走りよる時は普段と表情が違うけん、これまた見つけにくいのよ。こっちからは選手がわからんけん、選手から幟を見つけて声をかけてくれることを期待しながら応援した。
 スタートゴール地点にはわれらが夏井いつき組長、そして本町、平田町交差点付近、夏目フジ、折り返し地点に分かれスタンバイした。平田では、去年車道に出てしこたま怒られた交通整理のお兄さんに再会した。幟を見て我々を思い出してくれ、親切に応援しやすいポイントや帰りの近道を教えてくれた。
 選手が必ず言うセリフが「応援がうれしかった、励みになった」ゆうて、ほんとじゃろか、どんだけ力になるのか、自分が走って確かめてみたいのをこらえて応援に徹することに決めた。去年はつい選手について行きたい気持ちに負けて夏目まで移動して応援したのじゃが、疲労困憊しとっても、無意識に顔を上げていつき組の幟を探してもらえるよう、今回からは同じ場所で幟を立てることに決めた。いつか私ら応援隊を定点観測してもらえるように。
 去年は、たったいっぺんきりのいつき組の愛媛マラソンじゃと思とった。じゃけん終ったあと、もっとこがいにしとったらよかったとか、迂闊にトイレ休憩せにゃよかったとか、取り返せんいろんな後悔にシュンとなった。けど、うっかりマラソン部ができてしもた。後悔したことを来年に活かすことができるようになった。
 話をいつき組大花見大会の日に戻すと、マラソン部結成式の最中に新しい戦力が現れた。愛媛大学俳句研究会部長、俳号「游士」君が陸上やっとったと名乗りを上げてくれた。いきなり第五十一回の楽しみができてしもうた。
 テレビでマーチングの魅力は一人じゃできないことじゃとチームリーダーが語りよる。いつき組マラソン部も一人じゃ走れんところが魅力になるよう、選手と応援が一丸となって盛り上がれたらええなあ。マンデーさんに応援旗が足りんけん作ってと言えるくらいみんなで応援ができたらええなあ。
 選手のみなさん、待ちよるけんね! ちゃんとゴールにもんてきてやね。


手袋を脱いで幟の固結び あねご
着ぶくれて応援談義の沿道
わらわらと来たよランナー山覚める
来ないかもしれぬゼッケン花菜風
重き足乗せてやはらか春の土





ゴルフ吟行会報告
レポート ゴルフ初心者 キム チャンヒ

 「今年はオリンピックイヤーなので、スポーツ三昧の一年にしましょう」と、きとうじんさんに言われたのが2月のはじめ、愛媛マラソンが終わった直後。それからあっという間に、ゴルフ吟行の企画が持ち上がり、「まずは編集長も下見をしなくちゃだめでしょ」と2月18日、春の雪が吹きすさぶ中、初ゴルフ(とは言っても、ほぼグリーン上でパットだけ)を体験した。正直、ゴルフには全く興味がなかったのだが、野山を歩くのは気持ちが良く、凍えるほど寒くなければ、楽しい吟行会になるのだろうと思った。
 下見から2週間後の3月4日のゴルフ吟行の当日。集合時間の朝9時、吟行会場である伊予カントリーゴルフ(略してイヨカン)(伊予市大平甲1392)は時々土砂降りとなる天気。徐々に天気は良くなるという予報を信じ、吟行会は開催された。
 参加者は、福ちゃん、きとうじん、らまる、チャンヒ、夏井いつき、瀑、兼光、香雪蘭、まるにっちゃん、でんこママ、烏天狗、ともぞう、笑松、まことの14名(敬称略)。
 イヨカン常連の福ちゃんが今回のルールを説明。基本的にゴルフ初体験の方はグリーン上からパターにてプレー、各組に必ず経験者を配置し、ハンディはWペリア方式で行うとのこと。ほぼ初体験の僕には、「ハンディ」や「Wペリア方式」なんて言葉の意味はよく分からないので、流れに任すのみ。3〜4名のグループに分かれコースを廻った。
 イヨカンはショートコースのゴルフ場で、どのホールも3打でPARとなる。9つのコースをOUTとINの2度回り、最終的に順位を決める。
 僕は、よくゴルフをしているという香雪蘭さん(以下蘭ちゃん)と、約20年ぶりのゴルフだというまるにっちゃんとコースを廻った。蘭ちゃんは前回の下見でもご一緒して、その時はなかなか好調だったのに、今回は本領が発揮できてない模様。始終笑顔でぶつぶつ言っている。まるにっちゃんは、PARを取る度に周りの全員が嬉しくなるほど、喜びを表現する。自分のことはよく分からないが、ゴルフ終了後「ゴルフにはえらい冷めたチャンヒさん」と蘭ちゃんから感想が届いたので、そうだったのだろう。
 コースが進むうちに、雨も止み、空気も澄んできた。紳士のスポーツなので(少なくとも我々のグループは)お互いを褒め合いながら、約3時間で18ホールを回り終了した。
 思いの外豪華な昼食を終え、いよいよ結果発表。5位瀑、4位組長、3位チャンヒ、2位らまる、1位福ちゃんという結果となった。
 ほぼパターしかしなかった組長と僕とらまるが上位に入るとは、「ハンディ」や「Wペリア方式」の魔法なのだろう。誰が見たって、我らのグループでは蘭ちゃんがトップだったよ、元気を出して下さい。

 以下吟行句
自分には勝てたのですか?春の雨 チャンヒ
マーカーは白銅コイン青き踏む 烏天狗
念じても球止まらない春の芝 らまる
パット外すや鶯の谷渡り 瀑
歓声も悲鳴も春のゴルフ場 福ちゃん
きとうじん春のボールを張り倒す ともぞう
遼君はこう頭でっかち山笑う まるにっちゃん
春の雨俳人をバンカーを固く 香雪蘭
OBなど何するものぞ鳥交る 笑松
山笑ふ社長の声が転がつて きとうじん
パターころがす転がる曲がる山笑う いつき




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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠2012年度 第一期 2回目


「人類に」キム チャンヒ

人間が人間を抱くそんな春
ヒヤシンスさえ牢獄と気づかない
割れた鏡に政治家か俺か蛙か
アンネフランクほどに切なくチューリップ
黄砂降る日の札束を数えてる
人類に、権利、束縛、愛、桜
桜の夜奇異に巨大なのがピアノ
愛なんていらない海胆になったから
大半の大人が死にたがる春昼
春雷の町の地面に何を書く
タンポポの絮がランチに来て平和
風船を挟んで開く自動ドア


1968年生、愛媛県出身。『100年俳句計画』編集長。




「むらさきに」渡部州麻子

三鬼忌や煮つめてジャムのほの濁り
高卒と記す花ミモザの雨夜
猫の声満ちて春月錆びはじむ
椿濃し下りゆく膝のきしきしと
馬場跡地まで落椿たどりけり
野遊びに加はる若き木のあらん
喇叭水仙君は笑つてばかりゐる
光より拾うて蜷のむらさきに
春の雲ならばオカリナ聞きたかろ
赤ん坊泣け泣け豆の花ざかり
ちやんぽんのかまぼこさくらいろ遅日
さくらさくら千年かけて塔朽ちる


1960年生。第8回俳句界賞受賞。句集『黒猫座』。




「楽器のように」加根兼光

耳元へ椿の赤きこと告げる
結局は春の氷として生きよ
沢温む楽器のように鳴らす櫂
殺伐とメロディに会うきらん草
初花の息をふき込むように寝る
答うるにじゅうがつざくらとは知らず
春宵やカリンニコフの鐘の音
しんしんと花満月の明きこと
ひとつずつ離れ花びらの琥珀
強打殴打ガムランは花吹雪きつつ
おそ春のクルドの人を追いかけて
無言歌のようなる桜ちりゆけり


1949年生、大阪出身。
第9回俳句界賞受賞。




「ガガーリン」理酔

鞦韆やガガーリンより蒼き空
霾るや街はチクロのガムの赤
心地良き法螺話する春の人
春闘のビラに丸める犬の糞
鰹節踊るヤキソバ春嵐
シャンペンを干せば遠くに揚雲雀
橋を渡って橋を渡って春ハモニカ
アクリルの箱に眠たくなる子猫
椿寿忌の雑踏に買う猫イラズ
日の丸の陰踏みつけて蕨餅
野良猫と眼の合うリラのホテルかな
若冲を春夜の船に広げおり


1960年生まれ。性別「男」。年齢「51歳」。国籍「日本」。出生地「下関市」。所在地「福岡市」。賞罰「無し」。身体的特徴「内臓完全逆位」。



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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2012年4月号 〜 2012年6月号 2/3回目)


 悠久 緑の手

涅槃西風さらさら月は菫色
どうしても海へ帰ると亀の鳴く
悠久の空へプレパラートの蝶
春潮や数列の如墓石群
笑ひすぎてはきらはれるちゆうりつぷ
遠足の声がちやがちやと雲目指す
のぞきこむ湯釜薬師の額へ花
耕の鍬や入日をまつぷたつ
春夕焼洗濯物は退屈色
発光の緑虫いつせいに初夏


 眼は光を感じるくらいの視覚が残っている56歳の女性です。俳句をはじめてから、特に第7感くらいまでと言うのでしょうか、視覚以外のもので様々なものや事を感じるのが最高の幸せです。



 蛾を愛す 朗善

山頂に犬を集めて夏に入る
町中に水溜りある若葉かな
薔薇咲いて父の形見の戻りけり
地下室の窓開いてをり花いばら
葉桜や骨の透けたる母の指
祭太鼓胸毛にまじる白髪かな
亡き人の如き大きな蛾を愛す
幟売る店の縦横無尽かな
石叩き叩け信号かはる間を 
草笛の顔を見せずに過ぎゆけり


 松山はいくガイド。夫は、チェリストのナサニエル ローゼン。今一番やりたいことは、Beglarianの「Of Fables, Foibles and Fancies」(チェロとナレーションの曲)を翻訳して、ニックと共演すること。



 天に水 みちる

春一番大手門から八百屋まで
暁暗の春の厨に母潜む
うじゃじゃけしものを踏みしが落椿
蓮華王院亀鳴く朝の庭掃除
語りつつ虻打ち落とす老農夫
そら豆の花のことなど聞きその他
花蕾触るれば痛し痛からん
自傷せる蝶の影てふてふの影
天に水あるごと桜散りにけり
虚子ほどの男を語り春尽きず


 1948年尾張生まれ。2001年から伊予に単身赴任。俳句は2006年から土曜カルチャーで勉強中。組長のエネルギーに魅力を感じています。尊敬する俳人は蛇笏。自分を捨てず自分の殻を破るのが目標。カワイイ俳号ですが男です。



読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

 「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(俳句の缶づめ等)/推薦者ご自身の俳号(本名)/住所/電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ/FAX/Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、誌上句会インターネット投稿フォームでも受け付けています。(アクセス場所は誌上句会コーナー末を参照してください。)なお、投稿フォームの場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 6月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。



百年琢磨
先月号の「100年の旗手」に寄せて

3月11日以降 平敷武蕉

「花見虱」 みちる

はこべらやいつしか妻が来ておりぬ
 八月十六日、吉本隆明氏が亡くなった。戦後最大の先鋭な思想家として語られる氏であるが、奥さんや家族への無類の優しさを示した詩人でもあった。氏の詩に「あたたかい風とあたたかい家とはたいせつだ」という一節で始まるのがある。掲句はそのような優しさを想起させる温かい句である。

春疾風線香すでに火の柱
 今年の春嵐は各地に多大な被害をもたらした。その疾風でしかし火柱となる存在があることを知り得たというのは一つの発見。「春疾風」を3月11日の大地震と読めば、「火の柱」は被災地の人々の復興への熱い胎動である。

「神話」 緑の手

揚げひばり神話の峰を目指したる
 春は生き物たちの命の物語の始まりである。それはまさに神秘であり神話の始まりである。峰を目指して舞い上がる揚げひばりを見ているとその声が神話の幕開けを告げているように響いてくる。

コンドルは遙か反戦めいて春
 コンドルとは死肉を食べる獰猛な鳥。そのような鳥が遙かの空に飛んでいる光景は不穏。世の中の不穏な雰囲気を「反戦めいて」と表現したのがいい。

「砂漠より電話」 朗善
 朗善さんの句。「花椿落ちてはねたる水しぶき」など俳句の伝統的手法で安定した句を詠んだのもいいが、敢えて次の句を取り上げる。

大砲の隣に座る桜かな
砂漠より電話くれたる花の夜
 3月11日以降、どうしても、俳句はどう変わったか、という視点で見てしまう。桜の隣に大砲の座る風景というのは異常である。殺戮の武器と隣り合わせではゆったりと花見をすることもできない。今のフクシマがそうなのではないか。大砲とは原発のことである。
 二句目。「花の夜」とは夜桜見物の夜のことであろうか。平穏な楽しい夜のひと時である。そこに砂漠より電話がはいったという。「砂漠」とは街や村が大震災で破壊され、人の住めない砂漠のような荒地と化した被災地のこと。砂漠と花。被災地とそうでない所の距離はあまりに遠い。その意味でこの句は「絆、日本は一つ」などと言う言葉の空疎を抉る句とも成り得ている。


平敷武蕉
1945年沖縄県生まれ。著書『沖縄からの文学批評』。俳句評論集『文学批評は成り立つか』で第三回銀河系俳句大賞を受賞。俳句誌『天荒』編集委員。文学同人誌『非世界』編集責任者。



読者の感銘句

ほろよい 「蓬髪に花匂はせる春の雪」みちる。「揚げひばり神話の蜂を目指したる」緑の手。「陽炎の石段伸びてゆくばかり」朗善。が好きでした。

一走人 「花見虱潰し俳諧人生論」みちる。「揚げひばり神話の蜂を目指したる」緑の手。「砂漠より電話くれたる花の夜」朗善。が良かったです。

三月 感銘句です。「川端の顔なし地蔵目刈時」みちる。「薔薇の芽やヴィナスの髪の伸びる音」緑の手。「砂漠より電話くれたる花の夜」朗善。次回も楽しみにしています。

松ぼっくり 「貝殻の鍵墜ちた春星が砕けた」「薔薇の芽やヴィナスの髪の伸びる音」緑の手。ある時はエネルギーの迸るような、またある時は平気で虚構の世界や神話の中に遊んでいる句を作ったりする才能の持ち主。これらの句もその分類に入るのではなかろうか。



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初学道場 へたうま仙人


文責:大塚めろ

 雑詠道場は、「くらむぼんが笑った」か「へたうま仙人」か、どちらかへ3句1セットでの選択投句となります。選が厳しい「くらむぼん」に挑戦するか、必ず一人一句以上選評付きで載る「へたうま仙人」を相手に“巧すぎるのでへたの聖地追放”を目指すか。その選択も楽しんで頂けたらと思います。


 皆様の春はどうでしたかの? 田植えが終わったところから、根雪の残るところまで列島は果てしなく長いが、暦の上ではそろそろ立夏ぢゃな。聞くところによると、二十四節季を見直そうという話が気象関係のところから出ているそうぢゃが、あくまでも立夏は立夏で、芒種は芒種ぢゃ。大きなお世話ぢゃ。なあ。

大氷柱早く海へ帰りたし 炉草
 字足らずの表現に「早く帰りたい」という気持ちが込められておる。なるほど、大氷柱から離れる水滴の何粒かは、海が故郷である事を知っているのかもしれんのう。そしてそれは、作者自身の投影かもしれんのう。

涙腺のゆるむ二人の卒業式 柊つばき
 「涙腺」「ゆるむ」「卒業式」の因果関係がわかりやすいといえばわかりやすいが、「二人の」ということばで物語を作ったのう。いろいろな「二人」を想像してもらい泣きしてしまいそうぢゃ。

お天守で方向定め雁帰る コナン
 土地土地の真ん中に鎮座するお天守に集まった雁が、そのまま列になって帰っていく様子が良くわかる句ぢゃなあ。「定め」が少々使い古された言葉ではあるが、この句には方向を見定めるというベクトルがあるけん、帰っていく寂しさの中にも、前向きの未来と希望が見えてくるのう。

春寒をなんのこれしき麻痺の夫 えつの
 「なんのこれしき」と思っているのは夫ぢゃろうか、それとも常に夫を見守っている「私」ぢゃろうか。「なんのこれしき」の気持ちがあれば、暖かい春が春寒をすぐに追い越すぢゃろうなあ。

春ですね玉子スープに二人おり ペプチド
 「春ですね」が斬新ぢゃ。玉子スープのふんわかもじゃもじゃな感じは、まさに春そのものぢゃのう。春ですね、という問いかけと納得が朧感までも演出しておるようぢゃ。ぢゃが、上五中七の期待させる展開の流れの中でのこの下五はいかにももったいないのう。

宇和海の優しい風と初桜 オレンジ日記
 宇和海でも駿河湾でもいいのではないか、との意見もあるかもしれんが、長い列島にはいろいろな風景に溶け込んだ桜がある。そこには、気候に応じた独特の生活があり風景がある。宇和海を渡る春の風は本当に優しいのぢゃ。その風を受けて開く初桜のなんと神々しいことか。こんな地域限定の俳句もあって良いのう。
まつさらな朝まつさらな桜かな ひでこ
 「まつさらな朝」が、「まつさらではなかった夜」を呼び起こしているようで少し恐くなるが、「まつさらな桜」で救われるような気がするのう。朝の凛とした空気の中に開きだした桜はまさに「まつさら」ぢゃのう。

震えとも揺れとも違うさくらです 小木さん
 桜に対して過度な感情移入をせずに、感じたままをそのまま言葉にすることは、かえって難しいと思うが、こうあっさり言われたら桜も形無しですな。痛快痛快。「震えとも揺れとも違う」んなら、はたしてさくらの微妙な動きはなんなんぢゃろうな?

花びらを供へて久し桜地蔵 かのん
 郷愁で胸がきゅんとなったぞ。遠い日、純粋な気持ちで花びらを供えたお地蔵さん。あのころは大きく見えたお地蔵さんも、今見たら小さく見えるんぢゃろうなあ。「桜地蔵」で、まわりの景色が眼前に広がるのう。

一群の菜の花それも居間の跡 カラ嵩ハル
 群れて咲く菜の花の黄色と廃墟の映像が鮮烈ぢゃなあ。「それも」が句を若干解りにくくしている気配はあるかもしれんが、一群という大きな風景と、居間という小さな団欒の場所との落差が妙にさびしいのう。

春疾風石段たったかおじいちゃん 洋子
 なんと軽やかぢゃのう。春疾風という強い風をものともせずに登っていく石段がなんとも輝いておるのう。それと同じくらい、おじいちゃんを見る作者の目も優しく輝いておるのう。まるで、やがてやってくる本格的な春への賛歌のようぢゃ。

浜沿いの遊歩道行く春日傘 輝女
 春のひねもすのたりなひとこまが過不足無く表れておるのう。「遊歩道」という言わば人工的なものが良いスパイスとなっておるが、「行く」という言葉がはたして必要かどうか。こういう言葉が削れるかどうかが、結構重要なのぢゃ。読者を信じて、どんどん削り落として下され。

何が何だかよく分からない春の風 ケンケン
 「春の風」がよくわからないのではなく、ここでは「春の風」をメタファー(暗喩、隠喩)として見たほうがいいかもしれんな。あからさまな「〜のような」という比喩的表現はなかなか詩に成り難いのぢゃが、独立した全然違う言葉をもってきたとたん急に詩を感じることがある。そう、その、取り合わせとかモンタージュとかいうやつぢゃ。この句では「春の風」ということばで軽い批判や皮肉になっておるかもしれんのう。ぢゃがそのためには、明確な切れが欲しいと思うのはワシだけかのう?

冠にミモザ添ふるや一等賞 雪花
 決して大仰な一等賞でないことは「ミモザ」から想像できるが、本人にとったらどんな一等賞よりもうれしいんぢゃろうな。ミモザの花言葉「ゆたかな感受性」まで考えると、深読みが過ぎるかな?

うぐいすもちぱふんとみどりの息のでて
 和音
 うぐいすもちを頬張るときの様子が手に取るようにわかるぞ。よく観察しておるのう。ただ「でて」はいらんと思うぞ。「みどりの息」はたまた「みどり色の息」だけで状況は十分にわかるはずぢゃ。省略できるところは大胆に省略して、ことばの余韻をおおいに楽しみましょうぞ。

蝶の来て棒付き飴の色きれい ゆりかもめ
 「棒付き飴」ということばが、しみじみ良いのう。蝶が来たことと、棒付き飴の色がきれいなこととはなんの因果関係も無いのぢゃが、なんとなく納得させられるから不思議ぢゃ。飛躍の妙ぢゃな。

帰る術場所も知らずや春真中 まんぷく
 何か異次元の世界にでも迷い込んだような、不思議な気持ちにさせる句ぢゃなあ。まるで白日夢の中をさまよっているような気持ちにさせるのは「春真中」という言葉の力ぢゃのう。たまにはこういう彷徨い方もしたいもんぢゃ。

朧夜の自転車に鈴つけてやれ しんじゅ
 朧夜の自転車は、ひとりでどこへ行くかわからんけんのう。作者は自転車のことがよっぽど心配なんぢゃな。朧の闇から、ちりんちりんと自転車が顔を出したらそれは驚くぢゃろうが、その驚きは決して不気味という感覚ではないんだな。むしろトトロを初めて見たときの感覚なんぢゃな。それもこれも「朧夜」が成せる技ですのう。

大将がブランコ押してまた押して 親タカ
 なんとシュールな映像ぢゃ。「大将」が、ガキ大将でも居酒屋の大将でもそんな事はたいした問題ではない。大将である事が重要なのぢゃ。大将が「ブランコ押して」その上「また押して」する事が、意味の無い意味なのぢゃ。意味のない事に意味があるという事実の発見はこの上なくすばらしい事だし、それを表現するという事にも、意味も無くすばらしい意味があるんぢゃなあ。

金星に右手伸ばして「あああっあ」 豊原清明
 この春の金星はいつになく明るくて大きかったのう。幼子の目にもさぞかし大きく写っていたことぢゃろう。いっぱいに伸ばしもうすぐ金星に届きそうな右手の反対の手は、必死に親を掴んでおるのぢゃろうな。親子のほほえましい光景は「名月をとってくれろと泣く子かな 一茶」とはまた違った趣があるのう。

夏の恋暴走モード突入す 大阪野旅人
 暴走モードに突入すればするほど、いやでもやってくる秋の事はえてして考えておらんもんぢゃが、この作者はいたって冷静ぢゃな。三段切れの要所要所でいつも一呼吸置いて平常心を取り戻しておる。こういう作者にこそ、夏の恋を語る資格があるというもんぢゃ。

 今月もお付き合いいただいて恐縮ぢゃ。さわさわの五月の風に乗って、このコーナーも清清しく濃くなってきておる。ギヤチェンジを常に怠らず、この調子でこのコーナーから早く追放されるように更に頼みますぞ。


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雑詠道場 くらむぼんが笑った


夏井いつき選


今月の天
ご神木怒りのごとく蘖えぬ 朗善
 「蘖」とは、切り株や根元に生える若芽のこと。「孫(ひこ)」が生えるという意味でこの語が生まれた。樹木の勢いが旺盛になることから春の季語となっているが、老化や環境悪化等によって樹木本体が弱ると、命を繋ぐために「蘖」が多数生えてくることもある。
 一読、「怒りのごとく」という直喩があまりにストレート過ぎやしないかと、二読三読しているうちに、この「ご神木」のさまが生々しい存在として心に根を張り始める。その力の源泉は季語「蘖」にあるのだという納得が、一句の詩的感興となって心に響き始める。「ご神木」は一体何を怒っておられるのか。この「蘖」の徒ならぬ激しさと噴き出すような明るさに、読者の心もまた慄き始める。


今月の地
寒中や身を金色に溶鉱夫 ターナー島
 「寒中」の「溶鉱夫」に対する「身を金色に」という比喩に卓抜した個性がある。「金色」は溶鉱炉の熱気を受ける「身」の形容であり、溶け流れる金属が発する熱の印象でもある。

袖口の濡れをる夜のヒヤシンス すな恵
 「袖口」がひんやりと「濡れ」ていることに気づく。「ヒヤシンス」の水で濡れたと読んでもいいが、それとは関係のない「濡れ」と受け止めることで「夜のヒヤシンス」が置かれた空間が詩的真実として広がっていくように感じる。

生徒みな春の時雨へ送り出す 桜井教人
 下校時間になって生憎降り出した雨。「春の時雨」だから、降ったり止んだりの間に無事に帰宅するに違いないよ、と「生徒みな」が校門を出るまで見送る教師。「〜へ送り出す」がさりげなくも巧い措辞だ。

一句得んとし涅槃図をまじまじと 省三
 「一句」を手に入れようと季語「涅槃図」の前に立つ。釈迦を囲んでさまざまな生き物が声を上げて泣いているさまに見入る。「まじまじと」がいかにも俳人的挙動としての可笑しみがある。

立ち飲みの客の残せし春の泥 のり茶づけ
 一杯引っ掛けて出ていった「客」の残像としての「春の泥」。その靴跡を踏むように、次の客が新たな「春の泥」をつけ、「立ち飲み」の店先に酒を求めるのだ。

ミルク飲み人形春水をとほす  神楽坂リンダ
人形はママーと泣いて鳥雲に あねご
 「ミルク飲み人形」の体内には「春の水」が通っていくのだというささやかな発見、「ママー」と鳴く「人形」の視線の向こうには「鳥雲に」帰っていく空があるのだという認識。春の愁いにも満ちた二句である。

春光を浴びて東京歌いだす ゆき
 「東京」という固有名詞の持つ力が「春光」の新しい魅力を見せる。「歌いだす」かのように活気付く「東京」は、全身で「春光」を喜んでいるのだ。

佐保姫の荒ぶる河を従えぬ 木琴
 「佐保姫」という空想的な季語を空想に終わらせない中七下五の措辞。「荒ぶる河」を従え得る力を、たしかに「佐保姫」は持っているに違いないという確信が、詩として花ひらく。

しけもくを吸うて春雷気にもせず  西連寺ラグナ
 「しけもく」に火をつけ、ふうーと一息つく。「気にもせず」がやや分かり易すぎるが、指先を焦がさんばかりに貪欲に吸おうとする行為を描くことで、あえかな「春雷」をクローズアップする手法は巧い。

花冷えや児のたっぷりと泣く拳 今比古
嬰児の眼こそばゆきほど木々芽ぶく  哲白
 「花冷」の空気を吸って「児」の泣くさまを「たっぷり」と表現し、さらに「拳」へと映像を収斂させる手際。「嬰児の眼」がくすぐったがるほどに「木々芽ぶく」のだよという比喩の身体感覚。共に季語への信頼がある。



今月の人(じん)
大寒の満月のぼる産屋かな ターナー島
文鳥の嘴の桃いろ春惜しむ 西連寺ラグナ
革命は不発三色雛あられ えりぶどん
春の夜のスプンにくずさるる果肉 ふづき
春愁の砂溜まりゆく力瘤 神楽坂リンダ
山膚に張り付くお墓鳥交る ほろよい
春泥のあはひあはひの骨董市 雨月
春の虹栞を挟み忘れたる しゅん
ぞうキリンしたがえ龍や春の雲 恋衣
単身赴任の父のふるまう鰹かな みかりん
碧き帆へ浪縦書きに冴返る 緑の手
しゃぼん玉息がたりずに生まれこず  ゆき
フランス語講座流るる蝶の昼 犬鈴
ため息に色あると言ふ春の月 北伊作
花ミモザ木ぎれひとつの鳥の墓 浜田節
雀蜂男先生呼ぶ部室 のり茶づけ
二〇一二年三月一一日
午後二時四十六分の菜の花と あねご
月朧どんどん老いていく卵子 さち
白髪染めの酸っぱい匂い春寒し 木琴
母と子の影の離れぬ桜かな 朗善
初燕艇庫の扉開け放つ 一走人
卒業や日付変更線の窓 もね
若布刈舟陸に原子炉静まれり ソラト
野遊に揃はなくなる少女の数 なゝ
春の野をコンパスの針貫通す すな恵
夜糞峰榛の花夜明けの尿意 柱新人
春陰のぽっかりと空く右心室 紗蘭
アネモネが咲いたと紅茶淹れながら  樫の木
水温む鯨は円を描き眠る 桜井教人
ふらここや修司の句には空多し 蓼蟲
落椿かざりし髪や湖渡る 一心堂
お客様に答へる春の風邪ひいて じろ
目で笑ふほどには元気しじみ汁  ポメロ親父
眼帯の干されてをりぬ涅槃西風 錫樹智
引き潮に逝くなんて嘘花筏 こぼれ花
海外協力隊募る中吊り街薄暮 不知火
土筆つむ山とつまれしポンコツ車 お手玉
マトリョーシカほほえんでをり春の雪  アンリルカ
訃報聞く都忘れの深き色 なづな
春眠の船にゆらるる五体かな 春告草
春三日月水飲み鳥はぺこぺこと 子狐萬浪
石垣に手を当て春を確かめる あんばい
春一番百花繚乱娘のブラ あらた
暖かや口の滑るを注意せよ 八十八
引っ越しの大荷物揺る春の潮 八木ふみ


今月の並選
花朧どんどん遅くなる時計 さち
りうりうと二胡や月下の紅白梅
朝刊の匂い春の雨の匂い 樫の木
みちのくの空は青いか揚雲雀
涅槃西風土よりはがす石平ら みかりん
桜はと明日帰り来る子の電話
海にやや傾ぐ車輌や三鬼の忌 恋衣
をみなごの手を振るホーム桜東風
遺言の柩担うや養花天 さわらび
行く春や真一文字の手術創
新品のケトルに満たす春の水 雨月
春塵やどこか欠けをる皿ばかり
エイプリルフール目薬差し損ね しゅん
春はあけぼの夢の続きの始まりぬ
立春や音立て雲の光りだす 緑の手
蕗の薹おもひおもひの欠伸して
裏窓に哭く声のあり春の闇 犬鈴
花冷やただいま居留守にしています
花満つる少年院の固き窓 浜田節
花ふぶく獄舎の坂を下りる人
春の雪つかみそこねし尻尾かな 一走人
鈍行に初めて乗ったつくしんぼ
ムツゴロウ右往左往として日暮 松ぼっくり
味噌醤油分かち合ふ日々炭鉱の月
日輪のゆらぎ燃ゆるや竜天に 省三
紅梅の咲き満ちくらくなるばかり
春泥を覆いすり抜け鳶の影 きうい
鳥雲に入る兵棋動かすごとく
朧夜の思わせ振りに猫目石 柱新人
啓蟄の可も不可もなき目覚めかな
耳朶の春愁書は勘亭流 みちる
介護受けし母を記憶す藤の花
蕗味噌の残る器にアツアツ飯 青柘榴
初燕忙しく巣の良し悪し査定
春愁の捨て先カバの口の中 藍人
今あたし頭の中に春キャベツ
苦しきはにっこり笑う祖父の梅 樹朋
生若布磯の香凝る水揚場
春雨の響く陋屋わが砦 未貫
春雷やレトルトカレー準備中
返り血を洗ふ指より石鹸玉 ソラト
ロケットの沈みし海の蜃気楼
倉敷に下りて寂しき春の雨 実峰
荒城の月の口笛春日傘
濁水に残る温もり春の雨 磨湧
雀の子は消えて逃げて逃げて
自転車を選ぶ親子や新学期 青蛙
坦送車より何見えたるかミモザ咲く
江戸ありて東京のあり桜餅 じろ
老夫婦去りにし庭の初音かな
長き雨春日は入口見失ふ 春告草
春キャベツめくりて宇宙の入口へ
妖精も黒を着てをり春の葬 なゝ
エソラゴトキレイゴト舞フハルハヤテ
家々の一周忌の日の蘖や 安
幼子の筆の弾んで春の虹
草臥れたクツの春泥かき落とす 妙
真っ先に朝日さす場所クロッカス
春北風外階段の愛煙家 元旦
バコールの指より紫煙桜東風
神棚の恵比寿大黒春の闇 ポメロ親父
ワゴン車の来てわらわらと土筆摘み
初花の隙間の空の青さかな 錫樹智
透明な管潜りゆく春愁
先生と呼ばれし銅像養花天 不知火
外国のやうな名の駅春あらし
昼近し山の囀りきはまりぬ こぼれ花
春愁や猫は木の上高し高し
とばされて砂にささりし桜貝 お手玉
波うちて今散りそむる菜花かな
指先に風を確かめ白子干す 蕃
空腹に耐へかねて蛇穴を出づ
啓蟄の掃除ロボットまわれ右 ふづき
木洩れ日の椅子を子猫に空けてやる
花ぐもる下に軽四まどろみて 今比古
春寒も児の三輪車いそがせる
我儘に生きて老いけり春の雪 鯉城
竹の秋喜寿の余生をしなやかに
黒船やギター倒れて春雷す ちろりん
昨日とは違う風吹く桜地蔵
白木蓮旧街道を照らしけり 人日子
よわむしのおされてなくなふきのたう
春泥に溺れかかっている地球 えりぶどん
朧夜の水中バレーショウを観る
文字盤の秒針ま白ひよこ草 野風
なごり雪小耳に挟む店仕舞い
古池も新池もあり蓮華草 なづな
花は葉に錠前太き城の門
下萌や瞑想曲の雨光る 哲白
よなぐもりいづこともなく鳩の声
雛の箱四十四年よ赤茶けし むらさき
古雛となりても吾娘の人生路
縄のれん出づるや頬に春の雪 未々
老犬はあるじいたはり春の道
水温む棟梁鑿を研ぎ澄まし カシオペア
花過ぎて痴呆の母の恥じらうや
血液の数値上がりぬ韮の花 迂叟
ロボットの誤作動おこる春の宵
そぼ降るや千代紙匂ふ花みもざ 蓼蟲
除染てふ賽河原に流す雛
霞して富士の裾野の駅舎かな ほろよい
おにぎりをほおばる電車大試験
梅の香や獅子の守りし百度石 権ちゃん
春ショールふわっと掛けてまた明日
独りでに動くあん摩器蝶の昼 もね
雉鳴くやたんぽぽ色の峡の空
春嵐部屋いつぱいに吾がこころ 紅紫
春嵐あしたになればきつと変わる
つくしんぼ我一番と手を伸ばす ふーみん
もののけの影消し去りて春の風
案内にハングルの文字しだれ梅 三竜
ケータイで狙う梢の梅の紅
恋猫や足踏み外す日暮時 西条の針屋さん
乾杯のグラスの向こう春霞
小授鶏の初音晴れのち雨 サキカエル
まちかど市二ツ三ツ買う好きな蛙
三代の心あれこれ代田掻く レモングラス
朱の電車のフラッシュバック麦の秋
元気よく千年杉の花粉とぶ エノコロちゃん
きみのことおもってるだけであったかに
菜の花を髪に飾って黄泉の国 正雪
三月のメメント モリと囁けり 子狐萬浪
白梅の咲いて風の定まらず あんばい
孫誕生記念樹探す苗木市 八十八
約束の桜見上げる吾が見えるや あらた
初花や両手いっぱいあさひ受く 八木ふみ
花菜風魂浮遊するような ゆき
初桜保育器一つ新生児 紗蘭
青空の定義なんて鳥交る のり茶づけ
ビアノ弾く指しなやかに梅しだれ 一心堂
ゆすぐたび黒土こぼし蕗の薹 すな恵
トロ箱に眠る子猫や競りの声 西連寺ラグナ
白木蓮にやさしい風が吹きました あねご
佐保姫が拗ねてるピザが焼き上がる 桜井教人
日常は素晴らしきかな春浅し アンリルカ
春愁をパリパリ弾くカッパエビセン 木琴
藍甕のあぶく輝く春の昼 朗善
春月やタイヤに詰める窒素ガス 北伊作
アネモネの紫愛す操かな 神楽坂リンダ
燐寸の火ほのと匂えり雪の山 ターナー島


雑詠道場番外編「くらむぼんが困った」

勝手にアドバイス講座
ふはふはの仔猫三匹吹かれをり 鯉城
 「ふはふは」がいかにも「仔猫三匹」の感触で、猫好きがヨダレをたらしそうな可愛い句です。が、残念なことに、小澤實さんの句に「ふはふはのふくろふの子のふかれおり」がありますので、なかなかキビシイと言わざるを得ません。類想類句の存在は、俳句の宿命。この「仔猫」の様子をまた違った言葉で表現できるよう、もう一度仔猫に会いに行ってみてくださいね。



【雑詠句募集】
投句三句/俳号(本名)/〒住所/電話番号と、「○月末日締切分」を明記して、編集室「くらむぼんが笑った」または「へたうま仙人」宛にお送りください。
締切は毎月末日《必着》です。
※末日を過ぎたものについては、翌月分とさせていただきます。
※ひと月に複数の投句があった場合は、一番最後に届いた投句のみを有効とさせていただきます。同一内容での二重投句はご遠慮ください!
 投句は誌上句会宛のハガキ&メールとは別でお願いします。
雑詠専用Eメールアドレス zatsuei@marukobo.com
インターネットや携帯電話からも投句できます。
http://www.marukobo.com/kuramubon/


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放歌高吟


光年へ
夏井いつき

アウシュビッツへ蝶はひかりをぬぐ速度
幻灯機春逝くごとく鳴り始む
アルゼンチンタンゴ春泥跳べよ跳べよ
沈丁花白馬はすこやかに汚れ
ロシア語は蒼きすみれの匂いして
かなしびや春の噴水吹き曲がる
不敬罪とは蜜蜂の目の金色
遠つ国の王の清貧風光る
すみれは風に仏陀は哀しい人だった
贄となす椿なまなましき桃いろ
類人猿立つ日の春夕焼のごと
光年の無音へ蝶の砕け散る


 四月一日、松山市子規記念博物館にて第一回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」授賞式が行われた。一階視聴覚室をお借りしてのささやかな式だったが、第一回に相応しい清々しい式でもあった。(本誌6ページ、牛後氏ルポ参照。)
 「大人のための句集を作ろう!コンテスト」(愛称「大人コン」)の特色の一つは、最優秀作品を付録冊子として配布する点にある。受賞者に一切の金銭的負担をかけず、沢山の人に句集を手にとってもらうことを意図した、極めて希少な賞である。
 二つ目の特色は、本誌が内々に募集する賞ではなく、小中学生対象「夏休み句集を作ろう!コンテスト」の大人版として、朝日新聞社松山総局、松山市教育委員会(子規記念博物館)と共催しての賞であること。かつて正岡子規が新聞というマスメディアを使って俳句革新を進めた、その精神を引き継いでのパートナーシップでもある。
 三つ目の特色は、選考会員投票によって受賞者が選ばれるシステム。おそらく俳句界では初めての試みに違いない。選考会員選定は、本誌読者へのアンケートにて自薦を呼びかけた。「角川俳句賞」「俳壇賞」等の総合誌をはじめとする幾つかの賞を例として挙げ、それらの賞を受賞あるいは最終選考に残った実績を持つ人を募ったところ、31名が該当者として登録。当然のことながら、選考会員登録は毎年増えていく。
 ちなみに、同様の選考会員制度を採るアメリカ「アカデミー賞」は、1927年の発足。初年度のアカデミー会員は36名。第一回の授賞式は、仲間内のパーティーの余興として五分程で終わったという。それが今や選考会員6000人に迫る世界有数の賞として育ったというわけだ。
 「大人コン」は俳句界における初の試みとして、帆を上げた。第一回授賞式のあの日、子規記念博物館の一室に集った私たちは、俳句の歴史の一ページに今存在しているのだという強い思いを共有した。挨拶に立った竹田美喜館長が「いずれ選考会員だけで四階大講堂を埋め尽くす時代がやって来ます。『100年俳句計画』の志がまた一つ動き出しましたね」と力強く語って下さった。一瞬、ここに漕ぎ着けるまでの十年近い日々が熱く胸を過ったが、いやいや、感傷に耽っている場合ではない、スタートラインに立ったばかりではないかと己を奮い立たせる。俳句の歴史という光年へ、今やっと踏み出した実感を噛みしめる。




夏井いつき公式ブログ「夏井いつきの100年俳句日記」

http://100nenhaiku.marukobo.com/


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新 100年の軌跡


第2回


猫はどこでも寝る 宮下航

駐停車禁止標識春の猫
夜桜や真上を向いて笑いたり
天窓の光正しく余寒かな
三月や『今売れてます』ばかり買う
梅が香の舌の根に染み込んでゆく
感情の無加工発射春麗
春風の水色鼓動の柔らかし
人間や海月の匂う裁判所
退屈や蚯蚓の顎のよく光る
梅雨鯰鰓に本音を隠しをる
数学の板書少なし秋日和
毒茸の名にニセのあり雨の月
柿日和掃除中断してをりぬ
凍蝶のごとく右手を振る別れ
電線の撓んでをりぬ冬木立


宮下航
宇和島東高校弁論部で俳句と出会う。現在は、愛大俳句研究会で活動中。




たいていは 希望峰

春の雪白湯どこからか濁りけり
会えばハグ別れればキス竜天に
繰り返し茣蓙の石置く花の宴
代走と一塁話す揚雲雀
たいていは忘れてもよし桜餅
一番星!と思えば飛行機春の風邪
春の闇居間で着飾っても時計
笑うとは怒りよ春の湯沸かし器
紫木蓮両手に役立たずの壺
亀鳴くや手にも足にも指にも毛
似顔絵の顔より上手く鴨帰る
西暦を唱える歌や春の馬
タイ人の運びし菜飯かき込みぬ
取りきれぬ粘土の指紋遠蛙
海の神海が平らでつまらぬ春


希望峰
1990年生まれ、兵庫県神戸市出身。16歳より俳句を始め、現在はスウェーデンに留学中。俳句と教育が結びつく研究をしています。




実感とそれを越える何か マイマイ

天窓の光正しく余寒かな 宮下航
 本来、光に正しいも正しくないもないのだが、この句の「正しく」は読者に「ああ、あの感じ」と思わせる。まさにツボに嵌った表現。余寒という季語もすがすがしい。

人間や海月の匂う裁判所 宮下航
 五感に訴えてくる句が好きだ。読んだときにありありと追体験をさせてくれるような。だが、ただの「あるある」感だけでは物足りない。この句では「人間や」と大きく持ってくることで裁判所の生々しさが身に迫ってくる。

亀鳴くや手にも足にも指にも毛 希望峰
 亀が鳴いても鳴かなくても大勢に影響は無い。毛の方は多少必要な気もするが、剃ってしまう人もいたりして微妙。「や」の大げさな詠嘆が可笑し味を醸し出す一句。

紫木蓮両手に役立たずの壺 希望峰
 上五のところで切れているものとして鑑賞した。紫木蓮を活けようとしているのかどうか。ともかくこの人物のおろおろとした感じが伝わってくる。後半のたどたどしいリズムが効果的。


1966年愛媛県生まれ。2003年頃からラジオに投句を始め現在に至る。



今日この頃 瑞木

感情の無加工発射春麗 宮下航
 「感情」を「加工」して「発射」するという発想が面白い。その場の空気を読んで行動することが「好し」とされる事の多い今日この頃、なるほど私達の感情は日常、加工してから発射されているのか。その日常を解き放つ条件として春麗は相応しいだろう。

亀鳴くや手にも足にも指にも毛 希望峰
本来は必要だから生えているはずの体毛であるが、つるんとした肌がもてはやされる今日この頃、体毛の持つ意味合いは複雑である。亀が鳴くような春の夜に自分の体毛と向き合う作者からは、自分の肉体を持て余しているような、生きることへの戸惑いを抱いているような哀愁を感じる。

 日常生活の中から大切に句材を拾い上げている二人の作品には好感が持て、また今の若者の普段は表に出さない感情が垣間見れるようで興味深い。それにしても宮下くん、十五句で春夏秋冬は読んでいてやっぱりツライです。


1963年生まれ。愛媛県八幡浜市日土町在住。


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授賞式を終えて 鈴木牛後


 第1回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」(主催 マルコボ.コム、共催 朝日新聞松山総局、松山市教育委員会)授賞式参加のため、はるばる北海道から松山までお越し頂いた鈴木牛後さんの体験記をお届けします。


 いつき組に参加するようになって三年。松山に行ってみたい、組長や組員のみなさんにお会いしたい、と思いながら、おそらくかなり遠い未来のことだろうと漠然と思っていました。
 そんなある日、キムさんからの一本の電話がありました。「牛後さんの作品が最優秀賞に選ばれたのですが、表彰式には来られませんよね?」と。最優秀賞に選ばれたことはもちろんたいへんうれしかったのですが、それとともに、この機会に松山に行けるかも、という思いがふっと頭に浮かびました。
 それから、ネットでいろいろと飛行機のことなどを調べているうちに、どうしても行きたくなってしまったのですが、問題は家族の理解でした。妻は俳句にはまったく興味がないのですが、それでも、私がどれだけ俳句が好きかはよく知っています。その俳句で何か賞を頂くということの重みは妻にも伝わったようで、快く送り出してもらえることになりました。
松山に入ったのは表彰式の前日。組長や三瀬社長、キムさんらに前祝いをして頂きました。初めて食べる魚やじゃこ天はもちろんたいへん美味だったのですが、それ以上に、この賞の意義について熱く語る組長やキムさんの語り口が印象に残っています。受賞者である自分が考える以上に、この賞には意味があるということに、身の引き締まる思いがしました。
私は、句集を出すことなど、おそらく一生ないと思っていました。100万円とも言われる自己資金を出すことは、とてもできそうにないからです。いつき組には実力のある俳人がたくさんいるのに、句集を出したことのある方はそれほど多くはありません。それだけ市井の俳人にとって、句集を出すということはハードルが高いことなのだと思います。それを、雑誌の付録にすることで出してしまうという試みは、ある意味画期的なことです。自分が言うのはどうかとは思いますが、人気さえあれば、お金が全然なくてもこうやって句集を出してもらえるのですから。
 キムさんが花見当日も力説されていましたが、これを一歩進めれば、簡易な装丁で安く句集を作り、広く買って頂いて資金を回収するというやり方もできます。定価が千円程度なら、雑誌を買うほどの気持ちで買えそうです。そんな中から、いつき組の中に「俳句を読む」「句集を買って読む」ことが当たり前のこととして広がれば、それは素敵なことだと思います。
 前置きが長くなりすぎてしまいましたが、受賞の感激は言葉では言い尽くせないほどです。授賞式の中で、子規記念博物館の竹田美喜館長に「私たちが忘れようとしている土の感触があらわに伝わってくる作品」というような評を頂きましたが、この言葉を聞いたときは少し涙が出そうになりました。そのときはどうしてかはわかりませんでしたが、あとから考えてみると、そのとき自分の手、自分の足、そして自分の言葉がぴんと堅い紐で繋がったような気がしたのだと思います。そして、もう解けることはないのだと。
 最後になりますが、松山で大歓迎して頂いた組員のみなさん、ほんとうにありがとうございました。この感激は一生忘れることはないと思います。


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私たちの100年俳句計画


俳句を使った試みをされている様々な分野の方を紹介します

第3回
NHK松山放送局アナウンサー
塚原 愛(『俳句王国がゆく』司会)

新しくなった「俳句王国」
 『俳句王国がゆく』は、全国各地で公開収録し、その土地の魅力を俳句でアピールする番組です。新たに俳句に興味を持ってくれる人を増やしたくて、これまでの『俳句王国』でおなじみの句会はそのままに、新たなコーナーを加えました。
 たとえば、「ご当地俳句バトル」というコーナーでは、一般俳人が「地元チーム」と他県からやってきた「旅人チーム」に分かれてその土地の魅力を俳句に詠み、「どちらの俳句がよりその土地の魅力を表現できているか」を来場者が判定します。
 出演者は俳句のプロではなく、経験も年齢もバラバラですが、松前町での初回収録では、「初めて会った人同士なのに、なんであんなに仲良くなれるの?」ってビックリするくらいロケの最中も収録中も笑いが絶えませんでした。これが俳句の力なんでしょうね。
 一緒に司会をしている博多華丸大吉さんのツッコミも面白いですし、俳句を全然知らなくても楽しんでいただけると思います。
 楽しそうに俳句に携わっている人を見ているうちに、俳句に触れ、親しんでた。そんな人をジワリジワリと増やす番組にしていきたいです。

俳句は意外と新しくて自由
 松山に来るまでは、俳句に対して「古いもの、難しいもの」というイメージを持っていましたが、実際には、現代でも新しい季語が増えているなど、古いものを大事にしながら新しいものを取り入れていると知って驚きました。基本的なルールを守りさえすれば、許される表現の範囲も広く、意外と自由な世界なんだなと思いました。
 俳句の季語からは、日本語の表現の豊かさや深さを知りました。たとえば、「桜」を表現するにしても、いくつもの言葉がありますよね。それらを使いこなせたらオシャレだし、表現が増えると自分自身も楽しいです。どれもが生活に根ざした言葉なので、季語を知ると、物事をいろいろな目線で見られて、引き出しも増え、気持ちも豊かになるように思います。

俳句は時代を超えて
現代人の悩みにも通じる
 昔の女性の俳句を読むと、現代の女性が抱える恋愛や仕事の悩みに、時代を超えてつながるものがある気がします。
 俳句からは、詠み手の性別や年齢、詠まれた時代が容易に察せられない場合も多いので、だからこそ素直に共感できる場合もあるかもしれせん。時代背景が違っても、解釈の仕方次第で現代の女性の気持ちにピタっとはまるような句もあるんじゃないかと思います。
 こうした俳句を取り上げて、喫茶店で談笑するような気軽さで、詠み手の思いに共感したり、日常の悩み解決のヒントを探ったりするような番組があってもよいかもしれませんね。(談)


『俳句王国がゆく』
NHK Eテレ日曜日(年10回)午後3時〜4時
番組ホームページ
http://www.nhk.or.jp/haiku/


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Letter from spider garden


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
松山市在住の世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.1

Waiting in the rain
Spring waters run down my nose
Open, sake bar

わが鼻に春雨かかる立呑屋


The new sofa comes to our home.
The old one is outside to watch for spring.
I will take my nap inside and sit in the garden soon, I hope.

新しいソファがわが家に届く。
古いやつは庭先に、春を眺めるために置く。
中で昼寝して、じきに庭に座れるようになるだろう。
そう願いたいね。

訳:朗善



ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2011年より松山市在住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第14話
アウト オブ ジ アフタヌーン
ロイ ヘインズ

凍解に歳をとらない生命体 マミコン

 25年3月13日生まれ、御年87歳にして現役の超一流ドラマー、ロイ ヘインズへのオマージュ俳句。昨年古稀を迎えたマミコンさんも現役バリバリのプロドラマーだけど、ロイヘンにかかっちゃ「おい、若けぇの叩いてみるか」なんて言われそうだ。
 その彼が昨年「Roy-alty」というCDをリリースした。録音も良く演奏も上々の評価である。だが今世紀以降と限定すれば、ロイヘンの最高傑作は「ラヴ レター」だ。テナー サックスのジョシュア レッドマンとギターのジョン スコフィールドをフィーチャーしたツー ユニット構成。これが幸いしてか、ロイヘンは実に多様なドラミングをこのアルバムで披露する。そして、若手?共演者を煽り鼓舞している。

シンバルの一撃ささる夏の午後 うさ

 僕が初めてロイヘンに魅せられたのは、ジョン・コルトレーンのアルバム「セルフレスネス」(impulse!)に収められているマイ フェイヴァリット シングスでのパフォーマンスだ。
 当時の僕の部屋には初代JBLスピーカーが鎮座していた。今は無き某オーディオ店オリジナルのフロアー型エンクロージャー(箱)に口径38pのコーン型ワイドレンジ スピーカー ユニットJBL D130を埋め込み、ホーン型トゥイーター ユニットJBL 075を手づくりネットワークでつないだ代物。これをサンスイのアンプでドライブすると、とてもリアルな音が出た。
 このスピーカーが発する63年7月7日、ニューポート ジャズ フェスティバルのライヴ録音は決して良い音とは言えない。バランスもロイヘンのスネアドラムが強調され過ぎていて、やたらバチャバチャと鳴る。が、さすが名手の刻むリズム。これがやがて快感に変わってくる。そこにシンバルの一撃。ロイヘンって……イイ!!
 その後、僕の初代JBLは知人の部屋に居を移すことになったが、何だか今でもあの音はあのスピーカーにあるような気がしてならない。

ムーンレイ初夏に音符の放射線 蛇頭

 ロイヘン20世紀筆頭の名作は「アウト オブ ジ アフタヌーン」である。「ウイ スリー」(prestige)も高名だが、このアルバムが醸し出す圧倒的な個性に一歩を譲る。グロテスクとも形容されるローランド カーク(リード楽器)の演奏スタイルやフレーズを極上の即興歌に仕立ててしまうロイヘン トリオの実力に脱帽。A面の一曲目「ムーン レイ」にこのユニットのエキスが凝縮されている。

薫風のように裏切るドラムソロ チャンヒ

 随所に飛び出してくるロイヘンの表情豊かなドラム・ソロは、このアルバムの価値を大いに高めた。が、それは共演者のソロやバッキングに誘発されたものである。しかもそれは息の合ったやり取りだけでは生じない。時に意表を突き裏切る。放たれた異周波が閃きとなって予想外のリズムやフレーズを生む。
 A面の二曲目「フライ ミー トゥ ザ ムーン」のトミー・フラナガン(ピアノ)とヘンリー グライムス(ベース)の心地よいソロの後に展開されるロイヘンとローランド・カークの掛け合いは正にジャズの醍醐味。




http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


第14話 文/俳句 らくさぶろう

『鯉船』
〜「……」のセンス〜

あらすじ
 髪結いの仕事をしている磯七という男、世話になっている若旦那が船で網打ちに出かけるのを目ざとく見つけ、強引に同乗してしまう。
 元来この髪結い、「回りの髪結い」といい、呼ばれたらどこへでも出かけて髪を結う商売で、道楽者が多く、若旦那連中の遊び相手としてお供したりもする便利屋的存在。愛嬌はあるがおっちょこちょいという人物……。
 若旦那に「ホンマにお前網が打てるのんかい?」と訊かれ「そらもう小さい時分から。こないだなんか仲間で寄って博打してるとこに警察が来て……」「そら網がちがうがな」とやる始末。
 揺れる船の上ではどうにも網が打ちにくい。ごちゃごちゃとやりとりをつづけていると本当に鯉が網にかかった。これが思ったより大きく立派なもので、早速船の上で磯七が料理をすることになった。
 髪結いなので毎日カミソリは持って仕事をしているが、包丁とは勝手がちがう。若旦那に「ホンマに大丈夫か?」と言われると磯七は「鯉は「大名魚」ちゅうんです。こんな潔い魚はおまへん。まな板の上の鯉、ここまできたらもうあかんと思たら観念してしまう。この包丁で腹をスーッといっぺん撫でたら、もうピクッとも動かん。」などとペラペラしゃべりながら包丁を動かしているがカミソリとは違うのでどうにもうまくいかない。
 そのうち鯉のヒゲをいつもの仕事のように片側剃っていると鯉は尾でピシッと船端を一つ叩き、ドボーンと川へ。
若旦那「それ見てみい。何が大名魚や。」
磯七「おかしいなあ。鯉ぐらい潔い魚はおまへんのや。」
 すると一旦沈んだ鯉がまたズーッと水面へ上がってきた。
 顔を出した鯉が一言。
「磯はん、こんどはこっち側も頼んまっさ。」



 二ヶ月に渡って、人間国宝桂米朝師の得意ネタが続きます。得意ネタといっても、この「鯉船」は他にあまり演じ手がおらず、今はたまに桂雀々(かつらじゃくじゃく。桂枝雀師の弟子)さんが演じておられます。
 短い噺で、笑いどころも少ないのであまり演じられないのですが、そんな噺だからこそ演じ手の力量が問われるのでしょう。
 「回りの髪結い」という職業も他の噺ではあまり見ることがなく、初めてこの噺を聴いた時、なんとも粋な仕事だと思ったものです。磯七も、落語に出てくるようなおっちょこちょいな人物じゃなかったら、ひょっとしたら「必殺仕事人」にでも登場して闇で悪を斬っていたかもしれません。
 少ないギャグの中に、こういうのがあります。磯七が「鯉は大名魚」と言いながら包丁をあてるがなかなか鯉はおとなしくならず動きつづける。若旦那が「また動いたがな。」と言うと磯七が「……旗本かな?」
 この「……」の間が米朝師は絶妙で、ここだけ聴いても「ああよかった」と思えます。
 ううむ、同じことを言っても話し手によって全く違うものになるということをこの「……」が教えてくれているようで、勉強になるわ〜。「……」のセンス、ですね。
 さて今回季題として「鯉のぼり」を出したのですが、鯉のぼり自体が登場する落語はなかなかありません。しかしこの噺を聴くとこの時期、初夏を感じるのであります。

鯉のぼり男に出来ぬ仕事あり


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本家慶弔俳句帖 第44回


文 桃ライス

開発! 見たい夢をコントロールするアプリ
 英国の心理学者リチャード ワイズマン氏らの研究チームが、音声で夢をコントロールするiPhone向けアプリを開発した。
 ネット情報によると、アプリ「Dream:ON」は、iPhoneを通じてユーザーの体の動きを感知し、夢を見るとされるレム睡眠に入ったとき、特定の環境にいるかのような感覚を呼び起こす音風景を流す。現時点では、「西部劇」や「スペースシャトル」、「東京への旅」など20種類の音風景を選べる。
 また、氏によると、夢は目が覚める前の20分間で見ることが多いが、目覚めて10秒経つと内容を忘れてしまうため、同アプリにはレム睡眠が終わる時にアラームを鳴らす仕組みもあるという。
 今後ぜひ「俳句への旅」というのも作って欲しい。目覚めた時、はたして何句詠めているのか。10秒以内に書き留めなければいけないよ。

うたた寝やひこうき雲と花みかん


開発! ダイエット眼鏡
 食べているものを大きく見せかけることで満腹感を感じさせ、食欲を抑える眼鏡を、東京大学の研究チームが開発した。
 ネット情報によると、その眼鏡は、お菓子などを手でつかんで食べる時に、手の大きさはそのままで、食べ物の見た目だけを自在に変化させる映像処理システム。
 ビデオカメラが付いた眼鏡を着けると、1.5倍までの拡大と、3分の2までの縮小であれば、食べ物をつかんでいる指と指の開き具合も、不自然にならないように画像処理できる仕組み。カメラがとらえた映像は、ケーブルで眼鏡と繋いだパソコンで画像処理する。
 眼鏡を装着した20〜30歳代の男女12人に、クッキーを満腹になるまで食べてもらう実験を実施。クッキーを1.5倍に大きく見せた場合、食べた量はメガネをかけていない時より平均9.3%減少。逆にクッキーの大きさが3分の2に縮んで見えるようにしたところ、食べた量は平均15%増えたという。
ちなみに老眼鏡ではダメなのだろうか? 手も大きく映ってもいいので、身近な眼鏡で試してみたい。老眼鏡ダイエット始めます。

井戸端の時々小声夏に入る


桃ライス…自分のことをワシとよぶ婦人グループ会員


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第四回 『静かな落日』
[劇団民藝公演、作/吉永仁郎、演出/高橋清祐、出演/伊藤孝雄、樫山文枝、他、12年4月4日、ひめぎんホール(県民文化会館)サブホール]

 この物語は、小説家の家系であった広津家三代、中でも父、和郎と娘、桃子、二人の関係を中心に描いていきます。
 広津和郎は多数の著作のある、小説家、評論家、翻訳家ですが、戦後最大の冤罪事件とも呼ばれる、「松川事件」の真相究明に取り組んだ人物として記憶されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 家庭人としては破綻、戦中戦後には「鳴かず飛ばずのように見える」和郎。桃子は、そんな父を慕いつつも、ある時はあきれ、ある時は怒りを隠せません。しかし、やがて、和郎が松川事件と出会い、長い戦いを続ける中、次第に父に寄り添い、支え、より深い愛情を示すようになります。

父と娘の晩春静かに日は落ちぬ

 さて、来月号の特集では、この芝居を題材に開催された句会の様子が掲載される予定です。当たり前の話ですが、同じ作品を観ても、どこに惹かれどこを切り取るかは、人それぞれでした。私などは、松川事件と和郎(=大きな理不尽に立ち向かう個人)に目がいってしまうのですが、親子の情愛に目がいく人、会場の様子に目がいく人、等々……。
 それはもちろん、作り手(=観客)一人一人の個性の違いから来るものですが、また、芝居という表現の豊かさから来るものでもあるのでしょう。逆に言えば、数多の人の視線や思いの焦点が合ったところに、芝居という表現は存在する、というのは言いすぎでしょうか?
 もしかすると、世界そのものも、そんな風にして存在しているのかもしれません。

朧月君の見た夢やも知れず



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。次回公演は表紙裏の広告をご覧ください。



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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第16回 文/写真 暇人

新人来る

 3月号の「まる裏」特集ご覧いただけたでしょうか? まさかmhm通信が特集になるとは夢にも思わず……正直なところ某編集長に「やられた!」という感じで。例年どおりの「まる裏特集」を期待された方々に申し訳ない心境であります。mhmホームページなどでフォローをしないといけないのかなと思っている次第……。
 さて本題。この連載でも何度か呼びかけている「会員募集」ですが、実は少しずつではありますが、新規会員が豪腕あねご代表のスカウトにより集まってきています。新しい仲間たちを紹介します。
 今年度初めから参加してくれているのは野風(元、京子2号)さん。懇親会では「のんべえ」キャラなのですが、まる裏のパンフレットで多くのスポンサーを紹介してくださったのは彼女。頼もしい。
 つづいて前回の定例会から参加しているメンバーが、輝女さん、愛媛大学俳句研究会の游士さん、寺岡凜さん。
 輝女さんは松山城ロープウェイ降り口広場の売店に勤務中。松山を訪れる観光客が欲しがる商品を熟知しており、早速前回の会議でもご意見をいただきました。
 游士さん、寺岡凜さんはmhmが待ちに待っていた大学生会員。寺岡さんは俳句甲子園経験者。若者の視点からの意見、そして活動を期待しています。
 そして、さらにもう一人大変有能な新会員を……。その名は「正人」様。このmhm通信を支えてくれる大事な編集者、私は頭が上がりません。原稿に穴が空いたときは彼に任せよう……いやいや事務局でバリバリ動いてくれる頼もしい方です。
 引き続き会員を募集してますので、宜しくお願いします。


次回予告
「チャリティ句会ライブ報告」
 4月1日に「大花見大会」の場所を借りて「女川町の桜を復活させよう!チャリティー句会ライブ」をmhmの主催でおこないました。当日は多くの方々にご協力いただきありがとうございました。集まった募金は78,604円となり、「女川桜守りの会」に送金しました。次回はその句会ライブの模様をお伝えします。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)まで。


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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


先日の放送で、投句方法に関する問い合わせのお便りが紹介されていましたので、今月は、番組への投句方法について改めて確認しておきましょう。

兼題ごとに投句を分ける!
 一回の投句締切につき二題ずつ、二週間毎に投句を募集している一句一遊。締切日が同じだからと、ついつい二つの兼題への投句をまとめて一通のハガキやメールで送ってしまいがち。しかし、夏井いつき組長が選句をする際は、兼題ひとつずつ別々に作業を行います。もし二つの兼題への投句がひとつにまとまっていると、それを二つに切り分けたりだとか、片方の題が終わった後に、その中から次の題の投句をまた探し出したりしなくてはならなくなり、非常に手間がかかってしまいます。
 二題それぞれに投句をする際は、兼題ごとに一通ずつ、別々のハガキやメールに分けて投句いただきますよう、ご協力ください。

投句数は何句でもOK!
 一句一遊には、投句数の制限はありません。一度に何句投句しても構いません。過去には(現在もかもしれませんが)ハガキに何十句もビッシリと俳句を書いて投句していた人のエピソードもありました。ただ、ハガキで投句する方は、できれば大きく読みやすい字で書いていただけると、夏井いつき組長の負担が軽減されます。
 たくさん送った俳句からどの句が選ばれたか、そしてなぜその句が選ばれたかを考えたりする事で、俳句の腕を磨いてください。また、自分の選句眼を試したい方は、敢えて数を絞って勝負してみるのもいいでしょう。

 本誌2011年7月号では、一句一遊の収録現場を写真を交えて紹介しています。どうぞご覧いただいて、投句の際には、選句、収録を行っている夏井いつき組長に想いを馳せてみてください。


まほろの 兼題雑感

「石楠花」という花の名前を聞いたことはあっても、映像が浮かびませんでした。同感という方はぜひ調べていただいて、他の花ではない、石楠花を詠んでみてください。
「釣忍」と聞いただけでその正体が分かる貴方は風流人!? 忍草というシダ植物を束ねて作る飾り……実物を見れば「あぁこれか!」と納得するかも。
「仲夏」は、抽象的で「広い」季語。何か具体的な映像が欲しいところではありますが、季重なりには要注意!
「鵜」、たった1音の季語です。17音の中にどう置くかが悩みどころではありますが、その分、残り16音も使えるという、なんともお得(?)な季語。なお、「鵜飼」は「人事」に分類される別の季語なので、今回は「動物」の季語としての「鵜」を詠むのがいいでしょう。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

5月13日
石楠花【初夏/植物】
ツツジ科の常緑低木。高山に自生する。葉は厚い革質の長楕円形で光沢がある。初夏にツツジに似た、白や淡紅色の5〜7弁の合弁花を多数開く。

釣忍【三夏/人事】
忍草を束ねて、玉や輪、舟、井桁などといった様々な形を作り、軒先に吊るす。水をやっておくと葉がいつも青々と美しく、涼味を呼ぶ。

5月27日
仲夏【仲夏/時候】
夏の半ばで、陰暦5月のこと。陽暦ではほぼ6月にあたり、梅雨の時季である。田植や蛍、紫陽花、花菖蒲など、夏でありながらも、独特の趣を持つ。

鵜【三夏/動物】
ペリカン目ウ科の水鳥の総称。海鵜、川鵜などがおり、細長い頸で全身黒色。鵜飼に使われる。


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句集の本棚





『えれきてる』 前田霧人 著

  金色の蝶の飛びゆく枯野かな
 著者の句集は17歳のこのような青春性の高い一句から始まる。
 編年体に編まれており、その後28歳から29歳の句が「れ」30歳から56歳までを「き」57歳から60歳までを「て」61歳から65歳までを「る」といった構成である。その人生の機微が見える一句一句となっている。
  吾子と行けばわらびぜんまいつくしんぼ
  書きたいこと書いているなり青嵐
  反骨を養うている骨正月
 艶のある句も美しい。
  梅の香りにひとに逢いに行く
  そのひとの枝垂れておりぬ花の中
  ごむまりのような五月を愛しけり
 おおらかな作風がゆったりと読者に届く。「天街」「草樹」「杭」現代俳句協会会員。
(書評:藤実)

東京四季出版(2011年初版)
定価 1000円(税別)
全174ページ



『蜂の巣マシンガン』 竹岡一郎 著

 何ともインパクトのある句集名である。
  蜂の巣の俺人生はマシンガン
 人生というマシンガンに撃たれた自分は蜂の巣のようだと言う。強い意志と潔さがある。
  雪達磨動かんとして崩れけり
  冬眠のものの夢凝る虚空かな
  寒鯉の鱗剥ぐ音響きけり
 初期の頃の作品。静なるものより動を引き出して、その先に物語を想像させてくれる。
  トランクはヴィトン家出は雁の頃
  ひまはりの哄笑を聴けかつ戦へ
  蓑虫は一生ゆれてゐる俺も
 さまざまな切り口から作られた句たち。ゴージャスであり、かつ生の哀れであり、著者の美意識の結集された句集である。「鷹」同人。第一句集。
(書評:なぎさ)

ふらんす堂(2011年初版)
定価 2476円(税別)
全218ページ



『BABYLON』 青山茂根 著

 全三五一句。異郷の土の匂いが漂う巧みな季語の扱いで放つ十七音。彼の地へ作者は、立ち止まっては自己と対峙する。
砂塵 Kyzyl kum
  いはれなくてもあれはおほかみの匂ひ
  らうめんの淵にも龍の潜みけり
  ふらここを軛の重さとも知らず
  霾や行きて倒れしものの骨
壁龕 mihrab
  西へ西へと向日葵を倒しつつ
  羊の毛刈る砂粒に光あり
  移民には移民の端居ありにけり(後書 シンガポール)
  ミドルネーム空欄といふ涼しさに
尖塔 minaret
  アフリカの泥の重さの髪洗ふ
  握手せし手に三伏の砂少し
  バビロンへ行かう風信子咲いたなら
 バビロンの門が開く。序「バビロン考」と装釘を中原道夫。栞「喪失者の翼」を櫂未知子。
(書評:恋衣)

ふらんす堂(2011年初版)
定価 2381円(税別)
全198ページ



このコーナーで紹介した句集は、100年俳句計画編集室にて閲覧できます。


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選句&投句欄 ザ 句会


 このコーナーは読者による誌上句会。先月号に掲載された投句への、選句&選評(互選)を掲載しています。不肖編集室一同も参加しています。

第172回兼題
 「動物を詠んだ句」をテーマに
 出題者 牛後さん

 今月の互選『鰯の歯ぎしり』

9点句
親タカ、オパール、ひでこ、みちる、紗蘭、しんじゅ、のび太、ソラト、ぜぶら選
春鹿にしずかに囲まれて怖い いつき
  親タカ  こんな思いを時にして自分の動物度を確かめる……春はやはりドキドキ!
  オパール   私も経験あります。鹿はおとなしい動物と思っていましたが、囲まれると怖い不気味さを感じました。
  ひでこ  むかし奈良公園でこのような場面に遭遇したことがありました。中七のしずかに囲まれてというのが不気味です。
  みちる  私自身は春鹿に囲まれたことはないですが、この句には実感があると思います。「しずかに」が効いているかな。
  紗蘭  鹿に囲まれた時、例えばこの句の視点が大人ではなく小さい子供だったらたしかに静かに自分の周りに集まる鹿を怖く感じるのかもしれないと思った。
  しんじゅ  鹿の大きさがうまく表現されている。静かに囲まれるというのもうまい表現。参りました。
  のび太  こ、こわいです。
  ソラト  草食とはいえ野生の彼らのゆるぎなさは変なロマンなど失礼ですね。共感。
  ぜぶら  句の中に矢印があるとすれば5→9→3となる。声も出せなくて、SOSもできなくて、矢印の空間に押し込められていく。「怖い」は3文字なのに、心細さがあふれるよ。

6点句
柊つばき、寿山八十、コナン、迂叟、かのん、桃林選
野良となり被曝の牛や青き踏む ひでこ
  柊つばき  ほんとうに、まだまだ先は見えませんがたとえ半歩ずつでも進むしかないですね。
  寿山八十  牛もあわれですが飼主の心情も察するにあまりあるものですが青き踏むで少しすくわれた心持になりました。
  コナン  上五で問題提示、下五の「青き踏む」に生きて行く力強さ、でもその裏に憤りや悲しみを感じ、深い句だなァと思いました。
  迂叟  原発事故による被害は人間が神の意に逆らって原子力を完全に制御できないまま利用しようとしていることへの神の怒り(警鐘)と考えるべきであろう。
  かのん   やせ細った牛が、彷徨う映像が忘れられません。「青き踏む」は、楽しい野原を想像してしまうので、一層切なくなりました。
  桃林  冬枯れから青草の季節となってきた。長く生き延びてくれ。

カシオペア、たま、柱新人、すな恵、ゆりかもめ、まんぷく選
花冷や目合わせちまった捨犬と のり茶づけ
  カシオペア  可愛い捨て犬と目が合って三回三匹の犬を連れ帰り一番長くは17年の家族。残り一匹、目が合えば拾わずにいられません。
  たま  つと捨犬の哀願の眼差しと合ってしまいました。又作者もちょっと辛い日かもしれません。花冷が効いています。
  柱新人  「……ちまった……」のところに「あちゃー」との独り言が聞こえ、作者のこの後の葛藤が垣間見えました。
  すな恵  さあ、どうする? という場面だが、「〜と」という語尾に期待が持てる明るさがある。
  ゆりかもめ  駅前で里親探しの犬や猫を見ると連れて帰りたくなるけど、現在3匹飼っているのでせつないです。共感できた句です。花冷えが良く合っています。
  まんぷく  捨てられた犬が新しい飼い主に出会えた一瞬と読みたいが、犬を飼う事など出来ない私であるがノラよ、そうでなくとも強く生きろよ。寒くとも花は咲く。

4点句
猫ふぐ、ちょっと横道、のり茶づけ、不知火選
蛇穴を出でて動物園生まれ あき
  猫ふぐ  恐ろしい季語をほっとさせるテクニック。にんやり笑えます。
  ちょっと横道  春が来た。しかし動物園の動物はほとんどが動物園生まれなのだろう。地球のこの現実を静かに悲しむ。
  のり茶づけ  ですよね、飼われているわけでなくその場所がたまたま動物園であるという、そんな事は蛇にとって一向にお構いなしのことなのでしょうけど。そのおかしみに一票。
  不知火  「アミーゴ」と言ってブラジルに行こうとするかもしれない。

瑞木、まとむ、破障子、いつき選
陽炎を大蟻喰がなめつくす 三月
  瑞木  大蟻喰のあの長い舌でなめつくすものとして陽炎を選んだところが面白かったです。
  まとむ  「なめつくす」が巧いです。舌の動きが見えてきそう。大蟻喰の不思議さも陽炎と似合っています。
  破障子  アリとカゲロウ、地面につながりはあるけれど、極小のものともやもやしたものを「なめつくす」大蟻喰に納得させられました。ほじゃけんどしたんぞね、とは云わんときましょわい。
  いつき  「陽炎」という季語を使って「大蟻喰」という生き物を生々しく描き、「大蟻喰」という生き物を使って「陽炎」という季語の本意を表現する。お見事の一言!

空、ほろよい、桜井教人、三月選
希望とは子馬に名前付けること 牛後
  空  そうだったんだ。新しい命が希望だったんだ。感動。
  ほろよい  今、日本中が「希望」を待っている。そしてその子馬の名は「セバスチャン」……かな……?
  桜井教人  馬主になって馬に名前を付けることが夢でした。冠名も考えてました。希望なら「オーディーエスポワール」あぁ、いい馬名だ。
  三月  希望という言葉を聞くと辛くなります。明日をも知れぬ私達ですが、それでも命は生まれ立ち上がろうとするんですね。

清流子、浜田節、Blanca、チャンヒ選
ふるたびに菜の花ゆらすしっぽかな とりとり
  清流子  空気のよめる犬ですね。
  浜田節  普通、菜の花がゆれると風と思いそうだが、それが何かのしっぽだと思ったのか、実景なのか、きっととてもかわいい動物だろう。
  Blanca  しっぽに揺らされる菜の花の動きから、喜びの気持ちが伝わってきて、とてもほほえましく思いました。
  チャンヒ  特定の動物ではなく、「動物」というものを詠んだ句を選んだ。菜の花を揺らすしっぽの持ち主が、何かは分からないが、同じ地球に住む仲間としての愛情も感じた句。

唐草サ行、大阪野旅人、正人、久乃選
アルマジロのたりとほどけ春の昼 瑞木
  唐草サ行  なんとも春。アルマジロ好きな私としてはこの表現に惹かれます。
  大阪野旅人  猫が春の日差しの中で長くなり寝ている姿にドッキング。のどかですね。
  正人  中七のリアリティ。春の日差しに鱗めいた体表が綺麗だ。
  久乃  アルマジロと春の昼のぐにゃあとした感じがとても可愛い。

3点句
レモングラス、もんきち、雪花選
水温むキリンは五分だけ眠る 桜井教人
  レモングラス  大人になってもキリン好きの娘、しかしいつもキリンは住みかにひきあげたころ動物園に出かけるので見損ねてばかり。早寝なんだと思ってました。立って眠るのか足を折り曲げて眠るのか、気になる。
  もんきち  キリンが寝ているところは見たことがないが、5分だけなら立ったままでも寝られそうな気がする。眠くてたまらずつい立ったままうとうとしてしまったキリンがとってもユーモラス。水温むの季語ともあっている。
  雪花  「五分だけ寝さして」と言うキリンの気持ちわかります。眠そうなキリンの目が浮かびウフフ。

樹朋、ポメロ親父、山ぐるぐる選
湯気立ててつるんと馬の生まれたる カシオペア
  樹朋   臨場感たっぷりの句です。上五の「湯気立てて」、中七の「つるん」の表現は上手い。おそれいりました。
  ポメロ親父  誕生の瞬間の生々しさが感じられます。
  山ぐるぐる  目の前にとてもリアルに、あたたかな誕生の場面がうかびました。

2点句
人日子、お手玉選
キリン舎の窓よりキリン朧月 大五郎
  人日子  ぼんやりとしているキリンと朧月の光景がおもしろい。
  お手玉  キリン舎の窓は高く、キリンの首はそれよりも高いところに、もうすぐとどきそうなおぼろ月です。

杉山久子、あき選
朧夜に檻に入れられみんな動物 チャンヒ
  杉山久子  下五で一括りにされた「動物」という言葉にドキッとさせられる。動物園の動物達であるとともに人間も?と思わせる怖さ。字余りも効果的。
  あき  人間も、朧夜の檻にとらわれた一動物であった。

明日嘉、さかえ選
黒牛の睫毛の長し春の山 もね
  明日嘉  長い睫毛の少し淋しげな牛の目に春の山がいい感じに響きあっていると思う。牛をよく観察していないと詠めない句だと思う。
  さかえ   ゆったりと遊ぶやさしい牛の目を思います。

漫歩、兼光選
黒猫の目に春灯を見失ふ 犬鈴
  漫歩  猫の瞳に引き込まれ現実から引き離される感覚を覚えます。なんだか宮沢賢治の物語のように。
  兼光  春の宵の暗さの中でふと光る猫の目に捉えられた。瞬間、いままで視界にあった薄い灯を失う。春はそのようになくなってゆくものだ。

サキカエル、ペプチド選
ぬりたてのペンキを知らず青蛙 蓼蟲
  サキカエル  すっかり自分がぬりたてのペンキの上に上がってしまった気分。青蛙の気持ちや表情仕草が手に取るように分かります。
  ペプチド  周りの環境なんてなんのその、マイペースの生きざまをしている青蛙に自分の願望を重ねて詠んだ句に共感。餓鬼も共感してるかも。

洋子、まほろ選
朧夜のきりんの睫毛にためる水 しんじゅ
  洋子  私も涙がたまったらキリンさんに預かってもらいましょう。
  まほろ  朧夜をもたらす春の夜の湿気が、きりんの長い睫毛に集約され水滴となるかのような画が浮かぶ。「ためる」という能動形が、睫毛の存在感を詩的に際立たせる。

しゅん、だりあ選
ゴリラ舎の壁に森の絵春うれひ 十色
  しゅん  森の絵には確かに春愁がありそう。その絵を見つめるゴリラの目にも春愁がうかがえるように思いました。
  だりあ  故郷の森の絵を見て何を思ってるんでしょう、ゴリラくんは。

松ぼっくり、まるにっちゃん選
野良猫の寄らず離れず目借時 樹朋
  松ぼっくり  野良猫の警戒心は自らの立場、経験の積み重ねから獲得した知恵であろうか? うまい描写だと思う。
  まるにっちゃん  この時期野良猫の走る走る。人を見ても寄らず離れず、う〜んいい表現だと思う!

ゆき、魔心地選
走りたいときもあろうにナマケモノ ケンケン
  ゆき  限りない優しい視線を感じる。こちらの心の底まで包み込まれるような。今最も必要とされている姿勢だと強く思う。
  魔心地  ちょっと先の点滅信号で、走らなく(走れなく?)なって、年齢を感じています〜。ナマケモノの走る姿、すごく興味があります。

月乃雫、輝女選
ユニコーンの影かもしれぬ春の月 藍人
  月乃雫  朧であろう春の月、そしてユニコーンの影かもしれないという思いの発する波動みたいなものに惹かれた。
  輝女  ユニコーンが妙に気に入りました。確かにそんな気もする……。

逆ベッカム、犬鈴選
春愁は河童の沼に置いていけ 魔心地
  逆ベッカム  小二まで御荘(愛南町)にいました。池でよく釣りをしましたが、静けさの中で走って逃げたくなるような衝動にかられたことがあります。河童……でしたか。
  犬鈴  イタズラ好きな河童なら沈んだ気持ちを面白おかしな出来事に変えてくれそう。

祐子、藍人選
ほどほどの志なり亀鳴けり しゅん
  祐子  強い意志でなくほどほどがなんとなく現代人の心をとらえているとおもいます。
  藍人  昔、某ドラマの主人公が「志だよ、志!」と熱く叫んでいた。誰でも何かしらの志は持っているのだから、そんなにお仕着せがましく言わなくても、と思っていた。ほどほどでいいんですよね。

今比古、和音選
春眠をまたあの犬にじゃまされて 青柘榴
  今比古   夫=犬と認じている私は、「あの」と距離を持ち、チッと舌打ちする気もある夫婦生活(高田純三的解釈でどうぞ)。
  和音  実感の句です。春眠の頃に眠りを遮られるのは、決まって「あの犬」なんです。作者の眠りをじゃまされるいらいらした気持ちを春眠という季語が、まろやかに表現していると思います。

カラ嵩ハル、蓼蟲選
春の日のカバの前にて待ち合わせ 半角
  カラ嵩ハル  一時間くらい待たせても、待たされてもまあバカになっていられそうな、そんな春の日なんじゃ。
  蓼蟲  兼題は、動物を詠んだ句。動物ではなかつた。それで作句はともかく選句が難しかつた。しかし春風駘蕩、春には河馬がよく似合ふ。河馬と言へば坪内稔典さんだ。みんなして春の河馬を見に行かう。

エノコロちゃん、元旦選
カバの尻そろりとなでし春の風 大阪野旅人
  エノコロちゃん  本当にの〜んびりとしてていいですねー。カバのお尻もいいですし、そろりとなでるがいかにも春らんまんの感じがよく出ていていいと思いました。
  元旦  カバ子さんの分厚いお尻にそよぐ風。顔になら気づきもするのでしょうが、お尻では少々無関心。でも、少しはくすぐったくて「いやん、バカん」などと言ってたりして。「なでし」に、春らしい艶めかしさも感じます。

豊原清明、ぱむだ選
羽ばたきの空を見つめし子猫かな 朗善
  豊原清明  一読。さらっとしていて、気持ち好い一句。
  ぱむだ  猫には空がどんなふうに見えているのでしょう。鳥の向こうの青空が見えているのか。悔しくにらんでいるのか、それとも空にあこがれているのか。そんなことを考えていたら、子猫の背筋のかたちが見えてきました。

1点句
黒ヒョウの檻の空白春深む 兼光
  えりぶどん  しなやかな黒ヒョウにある秘密。深まる謎。深まる春。

わらべ等のあと追うチワワ春うらら さかえ
  えつの  リズムがよい。ほのぼのとした童話のようです。忘れられない句になりました。

亀鳴くや河馬のメガネはズレている 猫ふぐ
  一走人  亀が鳴く事も河馬が眼鏡をすることも実際にはありえない。架空の事を取り合わせた俳諧味のある作品で楽しいです。

春の宵そぞろ歩きの猫二匹 ペプチド
  生糸  暖かくなって、好きな者同士いつまでも一緒に居たくてあてもなく歩く。猫も人も同じかも。

春が来る象の耳には聞こえるか 和音
  十色  春と象は何故か相性が良い気がします。あの大きな耳なら春の来る音も聞こえそう。

耳ダンボ春の足音象に聞く しのたん
  西条の針屋さん  象が立ち止まって鳥や虫の囁きを本当に聴いているようですね。

立てかけた傘だけしらふ猫の恋 今比古
  狸穴けら  「酒飲んで、盛り上がって部屋に入って……しらふで雨でびしょ濡れの俺はここかよぉ〜!」何て傘の声が聞こえそう。まだ居酒屋には残された仲間が居たりして。

堂々と番犬の前孕み猫 コナン
  こてぞう  堂々とした、その立ち振る舞いがなぜかおかしく、春らしく。

垂直に登りし先は燕の巣 もんきち
  青柘榴   蛇が棒を伝って狙った年を境に、空き巣状態です。燕も身の危険を感じたのでしょうか。

同じ名の猫飼ふ家や雪柳 不知火
  ちろりん  わが家なら「ミルク」「ちゃちゃこ」という呼ぶ声に反応して家を見ると……その家の暖かさ穏やかさが浸みる句ですね。

長閑さやなれるものならナマケモノ 柱新人
  ケンケン  なれるものならナマケモノにワタシもなりたい! 決して走らないナマケモノになりたいですね〜。

モグラ穴通って春がやって来た りんご
  ザッパー  可愛い句ですね(笑)。

猿学を究めし夢の大朝寝 まんぷく
  牛後  「猿学」がとぼけていて面白い。そんな学問は朝寝の夢の中にしかないだろう。毎日見ていれば、そのうち教授になれるかも。

若草やうずくまり反芻の牛 ポメロ親父
  なゝ  若草と牛のお互いに優しい関係が心地よい。

流し目の猫のっそりとひな祭り ぎんなん
  波留夫  この猫は失恋したのでしょうか。仲の良いおひなさまを見て嫉妬しているのでしょうか。

弟は王様ペンギン山笑う 有花
  遊人  やっと歩き始めた弟の立ち止まる様子ですね。今しも春、ほほえみがこぼれます。

春光に吹かれて丸くなる羽毛 遊人
  とりとり  鳥を飼っているんでしょうね。「羽毛」にまで愛が感じられました。

春愁やゆるり眼を閉ずオオトカゲ 空
  子狐萬浪  悩みなど無ささうなオオトカゲと、春愁の取り合はせが面白いと思ひました。

クレーンの倒る倒れず鳥帰る ちょっと横道
  炉草  この最近ほど、人間の力の弱さを感じたことはない。空の鳥を見よ。

裸電球にぎらり出産牛の汗 松ぼっくり
  ふーみん  ぎらりと言うのが臨場感と緊迫感が伝わってきました。

遠蛙チャンネル権は父になく 月乃雫
  もね  遠蛙が切ない、同情します。

傷口をなめる陽だまり猫の恋 ほろよい
  未々  今月の兼題は悩ましいものでした。もの知らずな私にはもと句が分からないのです。そこで、身近な動物の句を選句しました。傷口を癒して体勢を立て直し再チャレンジするのだろう猫くんに一票です。

今月の無点くん 
猫二匹したがえる子は春を待つ 柊つばき
みずいろの猫の目雪解まぶしかろ すな恵
豪快に象糞落とす春隣 諒和
囀りや名のみの季節襟立てて 清流子
黒柳徹子はパンダ万愚節 漫歩
春雨に遊ばれている犬二匹 祐子
雀の子急いで渡れ青信号 未々
日曜のプードルなんで尿にする 豊原清明
牛魔王討つ石猿に黄砂降る 元旦
猫の子の天竺にさへいけさうな 正人
乳母車わんちゃん二匹日向ぼこ 信野
春近し猫が尾立て闊歩する 生糸
亀鳴くや涙の純度わかるかな かのん
シマウマになれるだろうか春の雲 のび太
硫黄泉跳ねる蛙の思案顔 ザッパー
猫の恋ねこなで声とはこのことか 輝女
雷蔵の円月殺法猫の恋 一走人
啓蟄や皆さん象のほうを見て めろ
春ざれや人相悪き猫のいて オパール
これから一歩一歩や蛇穴を出る だりあ
何侍る変色龍かや吊し雛 破障子
愛犬のロンと出かける小春かな お手玉
猿の子の手には届かず春疾風 安
ゴリラ歩いてくる春がやってくる たま
杉の花猫の治療費五万円 千子
猫の恋やロミオとジュリエットの仕組 紗蘭
尾を立てて霞へ伸びる塀を猫 じろ
直立の猿や桜の花の下 ソラト
犬二匹見送りに出る春未だ ゆき
鳥帰り鳥やってきて春つげる こまりやま
春駒や高峰秀子まだ死なぬ みちる
さえずりさえずり猫の耳ぴくぴく まほろ
亀鳴くや麒麟の首は長きまま 浜田節
亀鳴くや野菜もしっかり食べなさい ぜぶら
朝どれのさよりそのまま炭火焼 えつの
まんまるの冬眠ヤマネのみる夢は エノコロちゃん
猪の振りむくときのなにもかも なゝ
柴犬の吠え癖路地に春動く レモングラス
着ぶくれて私のシンはどこへやら 親タカ
恋猫の気持ち二宮金次郎 りんたろう
青葉食む夢食むバクのモノトーン すだれ
さまよえる恋の旅路やうかれ猫 西条の針屋さん
孕み猫そんな目をしてゆくところ えりぶどん
トイプードル名前はモップ日向ぼこ サキカエル
春愁やキリンの貌の迫りきて 杉山久子
顔見せず山頭火てふ屋敷蛇 迂叟
春の川こんなところに亀二匹 西原みどり
鳥交るもう振られまい日吉ミミ 子狐萬浪
蹴春を待ちたる砥部のウォンバット ちろりん
さわがにが川を横切る寒い朝 炉草
名を問わず駆寄る子犬木の芽晴 カラ嵩ハル
カピバラの憎めない顔花粉症 ゆりかもめ
山羊の子の乳房一撃山笑ふ 人日子




第173回兼題
「本、書籍」をテーマに
出題者 すな恵さん

1 ノルウェーの森を抱き込む山桜
2 下巻のみ売られし伝記フリージア
3 ど根性「人間失格」かかげ夏
4 日曜の赤のバイエル苺煮る
5 春北風の忘れられゆく本に石
6 XとYがうずまく工学部
7 花曇り古書の匂ひに酔ひし指
8 春の旅ボストンバックの底に本
9 本棚に恋を見つけし春の宵
10 署名本くせ字をなぞる春の宵
11 図書委員二人で整頓夏近し
12 お四國や経本誦してしばし黙
13 春火鉢試合前日五輪の書
14 置き去りに僻む黄砂の求人誌
15 花粉症六法全書はとじたまま
16 永き日の古書街漂流J J氏
17 春眠に教科書忘れ登校す
18 春の夜の完結しない愛読書
19 教科書の一頁目の春うらら
20 丸善の蒼い梟本の上
21 ぐりとぐらの歌覚えてる春の風
22 一束の本売り飛ばし卒業す
23 ゴールデンウィーク ドストエフスキー
24 彼岸来て鶴見和子の強さ知る
25 亡国や「国家の品格」春遠し
26 目借時電車ガタゴト本ポトリ
27 かぐや姫その後を問う子夜半の春
28 俯せの詩集の春を飛ぶかたち
29 春光やまだ新しき句集あり
30 恋人は小説の中リラの花
31 一宿の御礼に置きし土佐日記
32 パレアナの生き方が好き桜草
33 カビ臭き本を撫でたる春の風
34 教科書の裏のらくがき花の昼
35 三巻にて子規死すしろばな沈丁花
36 新刊とまぐはふ春の月置いて
37 行く春の深紫の蔵書印
38 ヲの文字を拾う春夜の汽笛かな
39 富士見ロマン文庫腋に夏兆す
40 背表紙の丸みを春光の沿えり
41 穴を出てウォーリー探す地虫かな
42 花冷や寝る間も惜しき本に会ふ
43 散る花の消えゆく百科事典かな
44 余花や『昭和元禄落語心中』
45 本棚を抜ければすでに春半ば
46 本屋の隅パフうずくまる花ぐもり
47 さくらさく夢をつなぐの直子さん
48 犬ふぐり挟んだ本はどこだろう
49 ポケットに家出のすすめ夏に入る
50 花桐や朝日の当たる古本屋
51 麗かや古事記にキヌヌヒノエヒメ
52 桜散るサイタサイタの思い出よ
53 春深しあさきゆめみし又ひらく
54 春うらら本棚はみ出すじゃリン子チエ
55 潮香る空鳶と闘う鴉二羽
56 桜東風鞄の底に短編集
57 信介しゃん織江バ抱いて炭鉱の月
58 ぬけぬけと書籍は飛ばさず鰆東風
59 紙の日の本の束ねや春時雨
60 種本を失くし佇む花の下
61 うたた寝て歳時記落とす花疲れ
62 雨雲を見て図書館へ行く決意
63 本読みは大つきらいです春休み
64 返却の本に花びら挟まれて
65 天金の蔵書百巻春の月
66 春眠や膝の歳時記落ち醒める
67 新書版5冊がよい枕とす
68 うりずんやエンデに金の箔の文字
69 本置いて葉をたたえたる桜餅
70 わ印の蔵書票春ともし
71 本棚に菜の花生けて部屋せまし
72 晩年の友は歳時記沙羅の花
73 磯巾着の飛び出しすぎた絵本
74 受けるより与える幸せ春の風
75 断捨離の始めは書籍蜆汁
76 鴎外を手にする春のフェアーかな
77 書庫満たす億の記憶や柳絮飛ぶ
78 本棚に住む人のあり春うらら
79 冒険の始まりの本えんどう豆
80 遺憾なる言葉のルーツ辞書の黴
81 地図帳に喜怒哀楽句遍路かな
82 恋猫やもどりくるまで「三国志」
83 春愁や藤村に逢う千曲川
84 春光を雑誌に挟む途中下車
85 金次郎に電子書籍や草青む
86 借りた本返せば終はりハルノソラ
87 中華屋の黄ばんだ漫画春暑し
88 本の山崩るる音や春の風邪
89 ガレキ浜「モモ」に指示請え鳥雲に
90 昭和の日ケータイ小説てふ異国
91 定位置の赤毛のアンと梟と
92 古文書に地震の記録桃の花
93 店先の古書平積みに春惜しむ
94 博識の夫本の山に埋もれり
95 陽炎や推理小説増殖す
96 夢の中源氏諳んじ朧月
97 孫と見る飛び出す絵本象の鼻
98 抜きとりし本のすき間も花の闇
99 花図鑑栞の項は白木蓮
100 「おはよう」に閉じる賢二や風薫る
101 モノクロのこころまよわす春かすみ


次回兼題「鳥」を含んだ句 出題者 まくわさん
次々回兼題「窓」を含んだ句 出題者 かのんさん

【兼題の扱い方】
季語「xx」 … 副題含む季語を入れる。
「xx」をテーマに … 内容に沿って詠む。
「xx」を含んだ句 … 単語そのものを詠み込む。



めざせ!大漁旗(174号〜179号)
 誌上句会「ザ 句会『鰯の歯ぎしり』」では、選んでくれた人の数をすべて集計し、半年間で最も点数の多い方が「大漁旗」を獲得します。大漁旗を得た方は「最新十句」を本誌誌上にて発表することができます。

〈参加方法〉
 1 「今月の投句」から好きな句を選ぶ。(選句)
 2  その句の感想を書く。(選評)
 3 「次回兼題」の一句を書く。(投句)
 ※1〜3、俳号(本名)、〒住所、電話番号を明記して、編集室「ザ 句会」宛にお送りください。一人一句まで。選句は番号と俳句を共に記入して下さい。
  番号はお間違えなく!

  今回の締切は5月8日(火)必着です。
 Eメール宛先 kukai@marukobo.com
 インターネットや携帯電話から下記の場所にアクセスしていただくと、専用のフォームを使って簡単に投句&選句ができます。
 http://www.marukobo.com/kukai/


【現在の捕れ高】

9点
いつき

6点
ひでこ
のり茶づけ

4点
瑞木
三月
とりとり
あき
牛後

3点
カシオペア
桜井教人


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大漁旗獲得記念! 最新十句


 167号〜173号の「ザ 句会」にて累計点数の最も多かったあきさんの大漁旗獲得を記念しまして、最新十句を掲載します。
 今回の十句に対しての感想をお待ちしております。寄せていただいた感想は、次号に掲載します。

夜の桜 三Pあき

佐保姫のふふふふふるさとのお味噌
残像に椿開けてはならぬ箱
パソコンはきうと壊れた亀鳴いた
導火線ついた椿が転がった
木乃伊の口ぽかりと春の凹みかな
春雨のしたたか動物園におう
沈丁の風を貪るように寝る
ゆれてゆれてカーテンは春潮
深海に花の記憶を持つ魚
沈黙は降りてくるのだ夜の桜


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100年俳句計画 掲示板


 夏井いつきの出演執筆一覧

テレビ/ラジオ
NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  5月8日(火)11時40分〜
  5月22日(火)11時40分〜

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。


執筆
高速家族〔Vol.29〕
 旬の句逸品三品〜金沢の春の巻

Pioneer Sound Lab. 音俳句
http://pioneer.jp/soundlab/
  ウェブサイト上に組長の選評が毎日一つ発表されます。投句も受け付けています。

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

愛媛新聞
 「集まれ俳句キッズ」毎週土曜日

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「麦の秋」締切 … 5月23日(水)


イベント
五十崎俳句凧表彰式
 5月5日(土)

パイオニア主催 教職員向け 音俳句句会ライブ実技講習会
 5月20日(日)14時〜16時30分
 場所 … パイオニアプラザ銀座
  (東京都中央区銀座2ー5ー11)
 申込 … info@marukobo.com
  089ー906ー0694
 パイオニアのハイエンドオーディ オ[TAD]で音俳句を体験!
 三省堂の創作指導ハンドブック 『俳句の授業ができる本』にも採 用された「音俳句」を体験しな がら指導法も学べる!
 先着30名限定での実技講習会!


句会ライブ/講演など
大和ハウスオーナー総会句会ライブ
 5月12日(土)

中島中学校修学旅行句会ライブ
 5月24日(木)

大垣市芭蕉元禄事業句会ライブ
 5月31日(木)… 静里小学校
 6月1日(金)… 宇留生小学校

重信川の自然再生保全プロジェクト 松原泉句会ライブ
 6月2日(土)9時〜11時
 場所…重信川、松原泉(森松町)
  集合…重信橋松山市側駐車場 
※清掃後きれいになった重信川松原泉で「泉」をテーマにした句会ライブ。参加無料。上位入賞者にはキム チャンヒの絵が贈られます。
※雨天の場合、別会場で行います。


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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

第一回「大人コン」結果発表
ケンケン 牛後さん、おめでとうございます! 来年は私も……。
藍人 「根雪と記す」、良かったです。ページを開いて第一句の「立春の春といふ字の飛びさうな」。うぅむ。いきなり頭をがつんとやられちゃいまして、しばらく、次の句に目がいきませんでした。すごい感性ですね。以前、「立夏といふ夏の一字のあらあらし」という句を作ったのですが、全然ダメですね。「飛びさうな春」にまいりました。すばらしい句集をありがとうございました。
のび太 先月号は付録もついて、すごい、かっこいい、きれい、おもろい、重い、軽い俳句がいっぱいで読みごたえがありました。
編 「来年こそは俺が、私が、句集を勝ち取る!」と、闘争心満々の声も早速届き始めております。第二回「大人コン」は2012年12月10日が応募締切!(7ページ参照)

お花見、そして転勤の季節
笑松 いつき組大お花見大会では、たくさんの皆さんに見送っていただき感激でした。ありがたさと、松山を離れる淋しさで、空港までのリムジンバスの中でぐしゃぐしゃになってしまいました。松山に赴任し、俳句に出会い、多くの素晴らしい方々にお会いできたことは、人生の宝です。一年間の松山俳句生活でしたが、思いっきり楽しませていただきました。本当に、ありがとうございました。また、お会いできる日を楽しみにしています。東京転勤の手荷物の中に入れるのは、まさにこの一冊という感じで、井上じろさんの句集『東京松山』を鞄に入れました。風景や出来事をさりげなく、でも正確に切り取った一句一句が、すっと心に入ってきて、感激しました。そして、句集の真っ白なカバーをめくり、そこに現れたモノを見たときの衝撃。あぁ、東京松山だ!と強く実感しました。
編 この春、東京へ転勤の笑松さんより。東京行っても俳句しよう!

くらむぼんでも聖地追放?
のり茶づけ 何だかシステム変更で恐る恐るくらむぼん投句をしておりますが〜「へたうま仙人」では「巧すぎるのでへたの聖地追放」があるらしいですが「へたすぎるのでくらむぼんの聖地追放」なんてのは、もしかしてあり?
編 追放にはなりませんが、選が厳しくなった結果、掲載されない句は多めになっている模様。

企画復活リクエスト
みゆう 私はおととしまでのっていた4月号のばんぐせつ新聞が、すごく好きで、去年なかったので今年楽しみにしていたのですが、今年ものっていなくて、すごく悲しかったです。チョコッとでもいいので、来年のせていただけないでしょうか?
編 「俳句に関する嘘みたいな新聞記事を書く」という、バカバカしさが一部から熱烈に支持されていた迷企画「万愚節新聞」。万愚節新聞社では編集委員を募集中です。

NHK「俳句王国がゆく」
北伊作 3月27日の「俳句王国がゆく」の収録大変楽しく拝見させて頂きました。タレントさんの軽妙なやりとりさすがですね。会場が爆笑の内に句会が続きました。オンエアが大変楽しみです。
編 第一回ということで、会場は大変そうながらも盛り上がっておりました。NHKにも感想を送ると制作陣が喜ぶと思われるのでぜひ!

写真部の目のつけどころ
すな恵 4月号の写真部「宙」のお題に宝塚歌劇のパンフレットが! もしかしてお仲間? ドキドキしました。
編 写真部、藤さんの一枚ですね。これを機に友情が芽生えたりして。

店主らくさぶろう
あねご ラクゴキゴが好きです。お店も持たれてせわしゅうなるかもしれんけどできるだけずっと続けてください。
編 プロに講釈してもらうと楽しい。知らない話も新たに知れますしね。

俳号変更&新メンバー
洋子 俳号変えても上達しませんが、まずへたうまから初心に返って頑張ります! よろしくお願いします。
編 へたの聖地追放を目指す人がまた一人。宜しくお願いします。

ぱむだ 初参加です。よろしくお願いします。
編 はい、よろしくお願いします!

代表句が書になった。
ミズスマP 小倉書道教室の小倉嬉乃様へ。わたしのカエルの句を大きな作品にしてくださってありがとう。でっかい筆の字はええもんですね。案内状のお手紙もうれしゅうございました。
ガマ君へカエル君からお手紙です
編 3月21日〜3月26日まで松山市いよてつ高島屋9階で公開されていた小倉書道教室へのお便り。 「代表句集2012」から子どもたちが好きな句を選んで書に書いてくれたのでした。来月号では会場の様子が記事になる予定ですので、お楽しみに。

ツイッター活用法
なゝ 離れて暮らす次女の提案により、家族5人のツイッター句会始めました。
編 どうやってやるのか興味津々。続報お待ちしてます。

組員の生活
輝女 今日4月8日は桜満開で店はとっても忙しくってもうへとへとでした。女川の桜、いっぱい咲いたら私もお花見ツアー参加します! それまでずーっと桜募金しましょうネ!!
編 輝女さんのお店は桜の名所、松山城にあります。いつか女川も桜で満ちますように。

カラ嵩ハル 先月折々のギャ句辞典を本屋で見付けおいさん作もあちこちにあり、ニヤニヤしながらついレジまで持って行ってしもた。
編 代表ギャ句でも選んでみては?

行方不明の電子投句
洋子 前回の投句、選句がEメール宛先で行方知れずになりました。
ゆき 4月号に自分の句が掲載されていなくて、くらむぼんか、へたうまかの指定をしなかったか、何かミスがあったかなあと考えています。これからは必ず、指定します。
編 稀に、送られたメールが正常に受信出来ない場合があるようです。明確な原因は不明ですが、締切直前のアクセスが混んでいる時間帯に投稿する、携帯電話で絵文字を使うなどした場合にエラーが起こりやすいようです。洋子さん、ゆきさん、ご迷惑をお掛け致しました。再度お送りいただけましたら、なんらかの形で掲載させて頂きますので、ご一報ください。


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鮎の友釣り

168

俳号 かのん

まくわさんへ まくわさん釣っていただきありがとうございます。「おらぶ俳人の会」では新人ですので、宜しくお願いします。

俳号の由来 「カノン」のメロディーを聴くと幸せな心持になります。好きな「カノン」をひらがなにしました。

俳句との出会い 四年前松山へ転居し、導かれるように木曜カルチャーの扉を開けました。その時、桂雪先生や烏天狗さんに親切にしていただき、気が付けば皆さんと大笑いしていました。心ならずも木カル中退ですが、(楽しい俳句)から始まりました。

写真 大きな大きなモネの絵と一緒に。

次回…雪花さんへ 道後在住の時は、公私共々甘えてしまいました。皆さんで博多吟行へ、来てください。


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告知


重信川の自然再生保全プロジェクト〜俳句が詠みたくなる泉を取り戻そう〜

かつて重信川中流域の自然環境を支えていた「松原泉」。河川改修のため一度は姿を消しましたが、近年、地域住民、大学、行政など多くの人の努力でよみがえりました。この泉と周辺の自然環境を未来にわたって保全していくため、市民参加型のプロジェクトを実施します。

第1回…自然観察と清掃活動
 ※終了しました
第2回…外来種について学ぶ
 5月12日 9時〜11時30分
 ※雨天決行。荒天時は順延
第3回…松原泉句会ライブ
 6月2日 9時〜11時30分
 ※雨天時は浮穴公民館で開催

詳細はチラシなどをご覧いただくか、左記へお問合わせください。
愛媛新聞社営業局 企画事業部「重信川保全プロジェクト」係
089(935)2322



100年俳句計画投稿締切カレンダー

 
 4/30(月) くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 zatsuei@marukobo.com

 5/8(火)
  ザ 句会
 kukai@marukobo.com
  100年の旗手感想
  魚のアブク

 5/31(水)
 くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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マルコボショッピング


マルコボ.コムのショップ店長まほろがアナタにオススメする逸品!
オンラインショップでは様々な商品を取り揃えて皆様のご来店をお待ちしています。


『100年俳句計画』
著:夏井いつき
四六判/ハードカバー/248ページ
ISBN978-4-88264-303-6 C8095
発行:そうえん社(2007年発行)
1260円(税込)

コメント
「100年俳句計画」は俳句の「種まき運動」の旗印
 句会ライブをはじめ様々な場面での、俳句を通しての多様な人たちとのふれあいや、俳句を中心にして巻き起こるエピソードの数々。そのどれもが、俳句に触れる楽しさ、俳句のある生活の楽しさを感じさせてくれます。各エピソードは、それぞれを象徴する季語を見出しにした、まるで歳時記のような構成になっています。「100年俳句計画」とは、正岡子規の時代からの100年に続く新たな100年を支える、沢山の「俳句ファン」を育てようという活動の旗印です。



『子供たちはいかにして俳句と出会ったか』
著:夏井いつき
四六判/ソフトカバー/232ページ
ISBN4-915699-93-5 C0092
発行:創風社出版(2000年発行)
1680円(税込)

コメント
俳句の魅力をどう伝えるか?
 「天才てれびくん」での俳句コーナーや、各地の小、中、高校での俳句の授業の様子を一挙に紹介。その状況解説はもちろん、遣り取りされた会話がふんだんに収録されているので、文章にライブ感があります。巻末には、夏井いつき、小西昭夫、三浦和尚による俳句の授業についての対談も収録されています。発行から10年以上経つ本ですが、内容は色あせていません。俳句の授業が広がりを見せている現在、改めて読んでいただきたい一冊です。



マルコボ.コムオンラインショップ
http://shop.marukobo.com/



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編集後記


 先月号の俳句だらけの号から一変して、今月号はスポレク企画2連発。初っぱなの伊予弁炸裂に驚いた方も多いのでは。
 本誌の編集精神は、前身の『俳句マガジンいつき組』の頃から変わらず「楽しくないと俳句じゃない!」。外に飛び出し、体を使い切ることだって、俳句を楽しむ方法の一つなのだ。
 僕は俳句を俳句で語る行為が好みではない。それは、正岡子規が俳句に西洋画の「写生」の技法を取り入れたのと同様、俳句を俳句だけで高めようというのは、ほぼ不可能だと思っているからだ。
 俳句が芸術として新しい時代の高みを目指す時、必要なのはそれまでの常識を越える新しい考え方。そのヒントになるのが俳句以外の文化。そういう思いで企画したのが、「JAZZ俳句ターンテーブル」や3月号まで連載していた「俳句+ART」などなど。芸術だけじゃない、スポーツだって人に感動を与えることを考えれば、俳句の高みとは無関係ではないはず。
 人々を熱狂させるスポーツを体験することで、俳句の新しい姿だって見えてくるかもしれない。そんなやりかたを一番喜んでくれるのが、野球に熱中をした子規じゃないかと思っている。
(キム)


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次号予告 (175号 6月1日発行予定)


次回特集
演劇を観て俳句を作って句会をしました
松山市民劇場句会体験
ほか


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2012年5月号(No.174)
2012年5月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子